2017年07月25日

7/25 190km離れた古本屋さんの閉店を思う。

今日は久我山の北側に流れ着いたので、重く暑苦しい空気を掻き分けるようにして、ヒタヒタオアシスを求めるように歩き続け、荻窪「田中商店」(2013/07/26参照)にたどり着く。よし、今日はここで古本を買って行こう。頭上では不穏な雷鳴が響き始めたので、蒸し暑く薄暗く古道具の並ぶ店内に慌てて飛び込む。以前と変わらぬ左手前隅の暗がりに、50均文庫&単行本棚が潜んでいる。そこに神経を集中し、下がる古着はちょっと退かし、背の読めぬ本は取り出して明るいところで確認したりもする。河出書房「ダルタニャン色ざんげ/小西茂也譯」を50円で購入する。

…本当は、今日はこんなことをしている場合ではなかったのだ。長野・上田の「斉藤書店」(2010/04/24参照)が本日限りで閉店してしまうので、どうしても駆け付けたかったのだが…。清冽な青空の下、ダラダラと続く大きな坂を上がりるとたどり着ける、青く昭和的に古く静かな広い古本屋さん。店頭頭上に掲げられた『入手困難な貴重な本・珍しい本・定価よりぐんとお安く買える本』に心トキメキ、整頓はされているがわりと雑駁な棚造りが、そのトキメキをさらに加速させ、何かに出会えそうな予感を際限なく肥大させて行く…。私はこのお店で初めて、“掘出し物”を探し当てる体験を味わったのである。それまでは、読みたい本や、ちょっと安い本や、面白そうな本を買うだけの初心者的古本修羅であった。だが、いつかは自分もたくさん読んだ古本本の中にあったスゴい話のように、貴重な本を安く掘り当てたいと、常に思い願っていたあの頃の切ない日々。それがこの店を訪れ、右奥のちょっと安い古書が並ぶ棚の中から、大好きな作家・龍胆寺雄の新鋭文學叢書「放浪時代」を600円で見つけ出したのである。経年の汚れなどはあるが、古賀春江装幀の表紙もキレイ。昭和五年出版の、作家が生きた時代のオリジナル本を手に入れることは、とても重要で興奮する事態である。ついに自分にも掘出し物を見つけたぞ!そう感激すると同時に、古本屋に通い一生懸命探せば、いつかは探し求める本と出会えるんだ!という思いが、強く心に刻み込まれたた瞬間であった。つまり、私のある種の原点が、古本をいつでも貪欲に求めてしまう心が、この「斉藤書店」で生まれてしまったのだ。こんな気持ちを体験し、その後のブックハンティング人生を決定付けた古本屋さんが、今日閉店してしまうのである。慚愧の念に耐えない事態であるが、今は遠い190km離れた東京で、買わせていただき大事にしてる「放浪時代」を手にして、感謝の念を送ることしか出来ぬ、愚かな私なのである。「斉藤書店」さん、本当に長い間ありがとうございました!
saitou_hourou.jpg
posted by tokusan at 18:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック