2017年10月29日

10/29東京・南砂町 くまねこ堂

大雨の神保町である。「神田古本まつり」(2008/10/28参照)の各ワゴンは、雨粒を一滴たりとも侵入させまじ!と厳重にブルーシートで梱包されている。それはまるで、青い巨人のソファが並んでいるような、シュールな寂しい光景であった。
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「神田古書センター」二階の「夢野書店」(2015/03/13参照)にテクテク向かい、店内で古本神・森英俊氏と合流する。これから南砂町にある、催事とネット販売の専門店「くまねこ堂」の事務所&倉庫探訪に向かうのである。先日の神田明神「古本感謝祭」(2017/10/04参照)で出店していた「くまねこ堂」さんに、森氏が巧みに取り次いでいてくれたのである。おぉ、我が古本メフィストフェレスよ、ありがとう!とまずは集英社明星文庫「二人のゴッドファーザー マーロン・ブランド アル・パチーノ」豊年社「接吻市場/邦枝完二」を古本まつり特別割引の計240円で購入し、地下鉄で東京の東へと向かう。途中愚かにも逆方向の地下鉄に乗り換えたりしてしまいながら、およそ四十分後に集合住宅で構成された町に到着する。氏の長いコンパスに合わせるように、必死に早足で、北に向かって歩いていると「「たなべ書店」(2011/02/25参照)、一応寄って行きますか」と、今まさに古本屋に向かっていると言うのに、氏が古本神たる所以を発揮される。一刻も早く「くまねこ堂」が見たいので、『仕方ないなぁ』と思いつつもつられて店内に進み、左通路奥の古書コーナーにへばり付いてしまう。だから、ここでとても素晴らしい一冊に出会うとは、微塵も思っていなかったのである。氏に続くようにして棚に視線を走らせていると、見たこともない一冊の本にグイッと惹き付けられる。磯部甲陽堂「幽霊探訪/大窪逸人」、大正五年の本である。それなのに新刊のように美しい…パラパラと繙いてみると、軍人のM中尉(もしくは少尉)が、幽霊話を収集する五話を収録している。その序文に目を向けると、作者の大窪逸人は若き日の山中峯太郎であることが判明!うぉっ!こりゃ凄い!ぜひとも買わなければ!と値段を見ると驚愕の300円!嬉しい、嬉しいよ〜と心中むせび泣きながら購入する。

お店に引き入れてくれた氏に掌返しで感謝しながら、多少迷いつつ「くまねこ堂」に到着する。氏が来意を告げ中に招き入れられると、そこは数人のスタッフが静かに立ち働く完全なる事務所であった。古本に囲まれた倉庫的事務所を勝手に想像していたので、仕事場的空間に多少面食らう。すぐに「くまねこ堂」さんが姿を現し、椅子を薦められお茶を薦められ、しばし歓談する。「くまねこ堂」さんは、古本以外にも骨董や玩具や絵画も扱う、オールマイティな事務所店である。お店の生命線である買取が、月に三十以上あると聞き、さらに面食らう。ブログにアップされる、時にレアミステリも混ざり込む潤沢な買取品は、その精力的活動の賜物であったか。その買取品の一部でもある、事務所内に飾られた石森章太郎&宮崎駿色紙や手塚治虫原画に目を奪われていると、森氏が付録漫画を蒐集しているのを聞き、早速奥の倉庫から四本ほどの付録漫画束が現れてしまった。買い取ってからもう二年ほど放置していたそうだが、その背を見て森氏がゾーン(お目当ての本に出会った瞬間、周りが目に入らなくなり古本だけにひたすら集中するモード)に入ってしまう。紐を解き、一冊一冊吟味し、さらにはi-padで所蔵本を検索し照らし合わせて行く…こうなると長い、長いのである。氏が見終わった付録本を回してもらい、興味ある本を一応選り分けたりもするが、いつしか飽きてしまったので、こちらは一足先に倉庫を見せてもらうことにする。すると森氏は手を止め、「私も」と付いて来てしまった…あぁ、身勝手な古本メフィストフェレスよ!サッシ扉を開けて入り込んだ倉庫は、相当に広い、手前に本棚が大量に並び、六本の通路を造り出し、奥は主に本を詰めたプラケースと結束本が大量に積み上がる構成。倉庫内に入り込んですぐ右の棚には、店主が買取して嬉しかった、愛でるに値する本が集められている。水木しげるの戦記漫画オリジナル・手塚古書漫画・北園克衛詩集・横溝正史レア本(あぁっ、こんな絵の「青髪鬼」見たことがない!)
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・「墓場鬼太郎」・貸本漫画…う〜ん、これは凄い。そして奥に進んで色々探ってみると、海野十三の古い全集や、「火星魔」の箱付き本、付録本「ラドン」、創元推理文庫の白帯ズラリ、竹久夢二大正オリジナル本、「のらくろ」戦前本、などが普通に見つかり、別に買えるわけでもないのだが、とにかく大興奮してしまう。古本以外にもゲームウオッチ・少年サイボーグ・古銭(金銀貨含む)・ナチス勲章・ライダーカードなどなどが集められ、結構何処を見ても楽しめる質の高い倉庫であるのを実感する。
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いつまでも興奮し、いつまでも滞留し、いつまでも掘り返していたいのだが、実はこの後二件の買取が入っているそうなので、泣く泣く断念する。それでも倉庫内から手の出せそうな二冊を握り締め、充実の探索を終了。隣りの事務所に戻り、再び付録漫画の吟味に入る森氏を尻目に、計四冊の精算をお願いする。そのうちの裸本の一冊は値付に時間を要するとのことで、ひとまずお預け、その他の三冊、小学館 小学五年生昭和三十二年九月号付録「怪魚のひみつ」(生きた化石シーラカンスを題材にした探偵漫画)集英社 小学五年生昭和三十三年三月号付録「まぼろしの衛星/三木一楽」(森氏に「面白いですよ」と勧められたので)愛育社「都市覆滅團/野村胡堂」(多少傷んでいるが、欲しかった読みたかった一冊!)を明らかにサービス価格の計二千円で購入する。帰りは、買取出発ついでに車で駅まで送っていただくことに。そのまま買取に同行したい気分であったが、それはさすがに叶わぬことなので、おとなしく本日の嬉しい獲物を鞄に秘し、氏と本日の感想戦を行いながら再び地下鉄で東京の西へと戻る。

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と言うわけで、とても嬉しい本日の獲物である。無条件にどひゃっほうである!「幽霊探訪」はカバー付きの本で、カバーは柳に火の玉がじゃれつく絵だが、表紙は花の横で裸の女が長い髪を梳る絵となっている。いやぁ、古本神と行動をともにすると、やはり嬉しい本に出会えます。次回は何処に誘ってくれるのやら…。
posted by tokusan at 19:11| Comment(2) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おお『幽霊探訪』!それは珍しい。
たいへん羨ましいです。
(シャーロッキアンにとって山中峯太郎は特別なのです(;^_^)
Posted by 北原尚彦 at 2017年10月30日 11:29
いや、本当にラッキーでした。まるで復刻本のように美しい本です。只今第三話を読書中。主人公というか、狂言回し的なM中尉は、どうやら峯太郎自身のようです。
Posted by 古ツア at 2017年10月30日 20:02
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