2017年11月16日

11/16「あばかれた秘密」と「青い魔術師」

映画『ニッポン無責任時代』の脚本を一読した青島幸男は、物語の骨子がハメットの「血の収穫」であることを、即座に見抜いたという。その鋭い洞察力に、ただただ頭を垂れるしかない、魂の震える極上のエピソードである。洞察力なくすぐさま物語に乗せられ欺かれてしまう立場としては、この話に限らず、何かを見たり読んだりして『この元ネタは◯◯だな』『あの話を翻案したものじゃあないか』などと気付く人全般を、常に尊敬し憧憬している。一度だって気付いたことはないのだ。良く明治〜大正の探偵小説を読んでいるので、登場人物の名を日本名に変えただけで、これは元の話があるんだろうだなあ…と鈍臭く感付くこともあるが、知識も調査力も不足しているので、決してその原作にたどりついたことはないのである。一度でいいから味わい、ニヒルに呟いてみたい…『あぁ、これは◯◯だな』…。ところがついに、そんな鈍い自分にも、元ネタに気付く日が訪れたのである。その話は、ヤフオクで落札し、つい昨日届いた一冊の本から始まる。ポプラ社 世界推理小説文庫(11)「あばかれた秘密/江戸川乱歩 原作ランドン」(昭和三十八年刊。貸本仕様。1400円で落札)。ニューヨークに出没する神出鬼没の怪盗『霧男』とその一味は、人々の度肝を抜くトリックを駆使し、鮮やかに目的を果たすことで、市中に悪名を轟かせていた。ところがそのテクニックは、かつて活躍した義賊『灰色の幻(グレイ・ファントム)』の手口と酷似していたのである。『霧男』が市中の金持ち七人を、唯一毒&唯一解毒剤(そんなのズルいぞ、霧男!)で脅迫する大仕事を始めたことにより、必然的に対決へと向かう『霧男』と『灰色の幻』…とまぁそんなストーリーが、「怪人二十面相」シリーズでお馴染みの柳瀬茂のドキドキする挿絵とともに展開して行くのだが、児童用にリライトしてあるので、スラスラと読み進めてしまう。笑い死にする唯一毒を金持ちに注射し、財産を脅迫する『霧男』…?この『笑い死にする毒』を注射…何か既読感が…。敵のアジトのひとつ『淡青荘』の秘密部屋に忍び入り、出たり入ったりしてゲリラ戦を繰り広げる『灰色の幻』…この秘密部屋を出たり入ったりする闘い方、何処かで…。悪の博士を捕え、解毒剤の在処を白状させるために、目に毒をさそうとする『灰色の幻』…!!!むむむむむ、この話を俺は知っているぞ!この博士の目に毒を目薬よろしくさそうとするシーンを、確かに以前に読んでいる。しかもそれは、極最近のことのように思われる。え〜っと、何の話だっけ…どんな話だっけ…。確かそちらの主人公は少年で、ゲリラ戦の舞台となる敵のアジトも城だったような気が…。だから児童文学の探偵小説だろうな…う〜ん、思い出せない。と考えつつ昨日は眠りに落ち、今日も外に出て仕事をしたりしながら考え続けてしまう。そうか、最初の事件は劇場で起こるんだったな。発端の舞台が劇場劇場劇場劇場劇場劇場…あ!もしかしたら、島田一男の「青い魔術師」か?少年俳優探偵・鏡海太郎が不可思議な怪盗・青い魔術師と…そうか!『青い魔術師』は『霧男』なのか!とようやく気付き、家に戻ってから二冊を照らし合わせると、やはりほぼ同じ話であった。つまり島田一男「青い魔術師」はハーマン・ランドン「あばかれた秘密」(博文館文庫では「灰色の幻」、論創海外ミステリでは「灰色の魔法」)の翻案なのである!だが「青い魔術師」には、そんなことは一行たりとも書かれてはいない。「あばかれた秘密」は、元々『世界名作探偵文庫』の一冊「灰色の幻」(昭和三十年刊)を、昭和三十八年に『世界推理小説文庫』として再出版したものである。つまり同じ年にこの二冊がポプラ社から出されているのだ…これは、いいのだろうか。たまたまこの二冊を買ってしまった子供は、混乱しなかっただろうか…。読了したら、十二月の古本市で売ってしまおうと思っていたのだが、これで何だか重要な本になってしまったので、まだしばらくは手元に置いておくことにしよう。う〜ん、それにしても気付き方が逆なのだが、それでも元ネタに気付くって気持ちいい!
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左の「あばかれた秘密」の表紙絵は、挿絵と同じ柳瀬茂だが、発注を間違えたか、それとも違う絵を間違えて入稿してしまったのかと思うほど、本文と全然関係ないものになっている。なんだ、この大航海時代のようなシチュエーションは!右がかつて喜国雅彦氏の「ひとたな書房」で購入した「青い魔術師」。カバーはカラーコピーである。

と言うわけで、来る12月9日(土)に、毎年恒例となっている古本市を、岡崎武志氏とともに開催いたします!ジャンジャン古本買いに来て下さい!お願いします!
【オカタケ&古ツアガレージ古本市】
◆日時:2017年12月9日(土)11時〜18時
◆会場:西荻窪 銀盛会館1階 JR西荻窪駅南口徒歩5分(杉並区西荻南2-18-4)
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posted by tokusan at 19:34| Comment(2) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
古ツア様、このところ、座談(?)が多いようですね。当方は当地の古書店をまわっていますが、100円均一で「蔵書印」が押されているもの、それも3名ぐらいの方、が大量にでています。そこで入手を試みていますので、毎日は日参出来ないので、見落としが多い。残念ですね。あきらめずに蔵書印のものを入手。あの頃の、探偵もの、翻訳が多く、またそのことも書いていないので、悩ましい。手放しにくい。
Posted by 広島桜 at 2017年11月18日 07:16
とにかく、古本と古本屋の話は尽きません。これからもボチボチ書き連ねて行きます。いよいよ年末に突入しかけておりますが、勢い落とさずひたすらに、探偵小説を求めて行きましょう!
Posted by 古ツア at 2017年11月18日 17:25
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