2017年12月27日

12/26古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【プレリュード】

最近すっかり「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の別動隊(つまり盛林堂・イレギュラーズ!)として、お手伝いバイトをしまくっているのだが、本日も三年ぶりの日本最大最強の古本魔窟・日下三蔵邸の片付けお手伝いに同行する(2014/12/10参照)。

盛林堂・小野氏と西荻窪から一時間半ほど車を走らせ、神奈川県某市の高台の住宅街に到着する。すると邸宅前には、午前十時半の陽を受けて、にこやかに手を振る日下氏の姿が。今日の最大のミッションは、倉庫化している別宅マンションの一部片付けにあるのだが、やはりまずは本邸を見ないと始まらぬと、邸内に招き入れられる。ぬぉっ、そこには以前と寸分変わらぬ、古本&献呈本タワーに挟まれた廊下が、奥へ奥へと延びて行く魂の震える光景が展開。あぁっ!永瀬三吾の「白眼鬼」がまだここにある!ほぅっ!三橋一夫の見たこともないスリラー小説本が!などと早速虜になっていると、「まずは寝室の本を少し仕分けして運び出します」と日下氏が宣言を下す。あまりにも本が積み上がり過ぎ、本が崩れるのが恐くてうつ伏せにしか寝ることの出来ない布団周りを(うつ伏せに寝ていれば、背中の方が防御力が高いので、本が落ちてきてもケガが防げるという論理に基づく)、すっきりさせようという目論見である。と言うわけで、日下氏が寝室入口の本を退かして中に入り、そこから玄関までの中継を私が受け持ち、小野氏が玄関から運び出して駐車場に置かれたダンボールに詰め込む体勢を採る。寝室内に立ち、本の山を崩しながら日下氏が選別に入るが、もう「ちっ、めんどくせえな」という声が聞こえる。単行本やコミックはパッと見で要不要が判断出来るが、雑誌類は表紙に掲載されたタイトルか、目次を見ないとその判断が出来ないのだ。だが、逡巡する日下氏のスローペースに合わせていても、周りに積み上がる本の背を見ているだけで、充分暇がつぶせて楽しめるのが恐ろしい。また、本は相変わらず絶妙なバランスで積上げられており、おいそれと手を出せない状態なので、何の本だか気になるが、書名が分からない本が散見される。だが、ちょっと見えている帯文、例えば三笠書房の本で『死刑台を組み立てる音が…』などと読み上げると、日下氏が即座に「絶体絶命」!と書名を教えてくれるのである。驚異の帯文イントロでドン!…末恐ろしい能力である…。

そんな風に仕事をジリジリ進めながら、奥の階段の下層に古書が積み上がっているのが気になり、目を凝らしてみると、春陽文庫「売国奴/永瀬三吾」を発見!だがこの本は以前の訪問時に、マンション倉庫で奇跡の署名本を見せてもらっているので、即座にダブり本であることが判明する。スゴい本が、ダブって階段の礎となっている…全く持ってクレージーである。そのクレージーさを小野氏に報告すると、ダブっているなら!と即座に買取交渉に入るため、本を掘り起こして行く。するとその過程で、大阪圭吉「海底諜報局」の珍しい異装第三版までもが、階段の礎なっているのを発見してしまう…嗚呼!
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そして初めてこの日下邸で、日下氏以外の人と出会う。何と二階から、八名信夫+藤子不二雄Aと言った感じのモミアゲがナイスな父君が姿を現したのだ。他にも人が住んでいたんだ…外出する父君のために、一旦玄関から外へ出る。「本ばっかりですみませんね」とにこやかに穏やかに宣う父君と、庭先でしばし京浜急行とこの辺りの崖地特性について語り合う。

と言うような有様で楽しく午前中を費やし、比較的軽めな作業を終えて、昼食を摂った後にマンション倉庫に車で移動する。日下三蔵号は、相変わらず期待通りに後部座席に資料や古本を満載し、サスペンションを深く沈めている…。

3LDKマンションの扉を開けると、二年前にスッキリ整理開通させた面影は消え失せ、本の山が極限まで迫り、物品を満載してはち切れんばかりの紙袋が通路を埋め尽くしてしまっている。日下氏は玄関棚の中から、平井和正のポケSF「虎は目覚める」を見付け「あれ、ここにあったんだ。これで買わなくていいぞ」などと、自分家なのに本を見つけて喜んでしまっている…。そんな風に主(あるじ)にとっても魔窟化しているこちらでのメインミッションは、右側の台所・居間・和室・風呂場への通路を開通させ、さらに様々な物の詰まっている風呂場をどうにかして改めて本置場に変貌させることに決まる。廊下部分に天井まで積み上がるコミック類を、それぞれが狭い通路で身体を無理な体勢に捻りながら、午前中同様リレー型式で馬車馬のように最大稼動して、玄関外に運び出して行く。私は廊下で山の切り崩しをひたすら担当していたので、二時間後にすべてを運び出した後表に出てみると、そこには奇妙な現代芸術的光景が誕生していた。階段壁に沿って積み上がる、コミック階段である。
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マンションの住人が通りかかる度に、「すごいですねぇ、本がたくさん」と言われ、日下氏が「いや、年末の大掃除なんですよ」と軽く虚偽発言を繰り返しているのが、微妙に切ない。だがそんな苦難を乗り越えたおかげで、無事に廊下の撤収作業は終了し、壁が見え(しかもフットライトやコンセントや何も詰まっていない納戸が発見される)、奥への行き来ができる状態となる。
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※左が作業前。右が作業終了十五分前。
「いやぁ、通れるっていいな」と思わず呟くと、何故かこの言葉が日下氏のツボに入り、その言葉を繰り返しながら爆笑をしている。

そんな楽し気な氏はさておき、ここからがようやく折り返し地点で、表に出した本を要不要に選別し、お風呂場の荷物を退かして新たな一時コミック置場にして、再び邸内に本を運び込む作業に従事すせねばならないのだ。階段下で選別途中、謎の本「ミッキーの宇宙旅行」というA4判の児童本が見つかり、日下氏が「こんなの買った覚えないなぁ。ミッキーマウスなんて、まったく必要としてないんだけど」と訝しがりながらビニール袋から本を取り出すと、ミッキーはミッキーでもただの茶色いネズミで、原作がなんとフレドリック・ブラウンなのであった。「ブラウンだからか!」と納得しつつ「これが僕が持っている一番大きいブラウンの本です」と、何だかとても嬉しそう。色々ちゃんと整理すると、面白い発見があるものですね。そんなことがありながら、二時間ほどまたもや馬車馬の如く働き、表がすっかり暗くなった頃、ついに風呂場が美しい倉庫として完成にいたる。
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う〜む、見たことのない麗しい光景だ。「正直ここまで作業が進むと思いませんでした」と日下氏から最大級の労いの言葉をいただく。いや、確かに三人とも、とても頑張ったのである。

ようやく一息ついたところで、その頑張りの奇妙な副産物として、部屋内各所から発見されたレアなTOMOコミックスを、戯れに一堂に集めてみる、各所で発見時から、ダブりがだいぶあることが分かっていたのだが、恐ろしいことに九冊がダブり、そのうち四冊は三冊もダブっていたのである!それをすべて並べてみたありえない異様な光景に、全員で大爆笑する。そして超絶嬉しいことに「ダブり本、どうぞ差し上げますよ」と、突然九冊をいただくことになる…いや、最近書庫整理を手伝う度に、素晴らしい本をいただいてしまっており、もはや“古本ゴロ”のような役得に預かっているのだが、正直言ってとても幸せなのである!いただけるものは、遠慮なくいただいておこう!そして大事にします!

結局夕飯も食べる長帳場の一日仕事となり、東京に戻ったのは午後十時半。長い長い楽しい一日であった。この整理作業は、年始に第二弾を行う予定なので、どうかみなさま、日下邸の変貌をお楽しみに!

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これが本日の収穫。TOMOコミックスは、やはり小酒井不木原作の「少年科学探偵 消えたプラチナ」クイーン原作で望月三起也劇画の「クイーンの事件簿 恐怖の家」構成永島慎二の「赤い酋長の身代金」が嬉しい。都筑道夫「いじわるな花束」もダブり本ということで手渡される。だがさりげなく一番嬉しかったのは、春陽文庫「売国奴」のカバーをカラーコピーさせていただたこと、これを先日新保教授から拝受した裸本(2017/12/19参照)に巻く!カバーコピーは日下三蔵氏提供!本体は新保博久教授提供!ここに、ミステリ界最強の「売国奴」が誕生した!万歳!
posted by tokusan at 01:47| Comment(2) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
古ツア様、今日は某所からかいています。すごい!日下邸ですか、当方がお会いした時、3時間もお話で戦い(笑)、互いに写真嫌いで写真を撮りませんでした。そのかわり、本の書影をのせました(笑)、人よりも本!ますます本が増殖。当方も増殖中。報告を楽しみにしています。
Posted by 広島桜 at 2017年12月29日 09:01
今年も一年お世話になりました。そして色々いつも教えていただきありがとうございます!来年早々この続きは書ける予定なので、引き続きよろしくお願いいたします!
Posted by 古ツア at 2017年12月30日 05:22
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