なかなかにハードだったここ一週間の、抜け切らぬ疲労を背負いながら、それでも突然の肌寒さに抗い、ヨタヨタ雑司が谷へと向かう。『弦巻通り商店街』の外れにあった半地下の古本屋さん「JUNGLE BOOKS」(2010/08/20参照)が、同商店街の中心部に移転開店したのである。地下深き副都心線の駅から、何度もエスカレーターを乗り換えて『1番出口』から、都電荒川線線路脇に顔を出す。池袋方面に足を向け、『大鳥神社』脇の踏切から東に折れ曲がり、街中のうねった道を進んで行く。ウネウネグイグイ歩いて行くと、やがて右手に「旅猫雑貨店」(2008/07/19参照)が現れ、おっ!そのすぐ先左手に、ピカピカの「JUNGLE BOOKS」が出来ていた。古本を扱うお店が近接しているのは、誠に嬉しい限りである。ジャングルっぽく緑と焦茶を基調にしているのは相変わらずで、緑の日除けの下にはガラスウィンドウが曇天の下でも輝き、移転開店祝のお花が溢れ返っている。中に入ると、焦茶のウッディでシックな空間。奥の帳場に座るジャングル・ケンさんと挨拶を交わす。ここは完全でまともな古本屋空間と化しており、奥のガラス障子で仕切られたスペースが、占い空間として独立している様子である。その証拠に奥からは、ジャングル・ユキさんがフランクにフレンドリーに託宣を告げていたり、筮竹を鳴らしているような音が聞こえて来る。古本屋空間は、左右の両壁棚と、真ん中に平台棚が置かれたシンプルな構成。以前のお店とそんなに蔵書量は変わっていない感じである。左壁棚には、日本文学文庫・ちくま文庫・講談社文芸&学術文庫・ミステリ系文庫・SF文庫などが質高く並べられ、さらに性愛・映画・ミステリ&エンタメ・文化・占い関連・新刊・占いグッズ・CDなどが続いて行く。中央の平台棚には雑貨類とともに、幻想文学・アート・絵本が集められている。入口右横にはLPや奇妙なプレイヤーが置かれ、右壁棚に児童文学・絵本・古書・神秘学・オカルト・民俗学・海外幻想文学が並んで行く。質は高いがその分値段はしっかり目である。ケンさんに引越は近所だからと言ってまさか台車で?と聞いてみると、ちゃんと車で運んだそうである。旧店にあった時から買おうかどうか迷っていた、博文館「動物小説集 紅鱒/乾信一郎」がまだ残っていたので、心を決めてついに買うことにする。函ナシで1500円也。
帰りに新宿で途中下車し、『BERG』のカウンターに寄りかかり、ハーフ&ハーフを傾けつつ小林信彦「冬の神話」を読み耽る。山奥の鍾乳洞を訪れる下りで、連想した江戸川乱歩「妖怪博士」を長々と引用する箇所があるのだが、それを受けた文章が残虐な展開になっているのが何とも不思議である。あれ?二十面相こんなことしたっけ?まぁもう、四十年前くらいに、親戚の家の近くの図書館で借りて一晩で読んだのが最後だからなぁ。でもやっぱり、二十面相は、こんなことしないはずだが…小林信彦の秘められた妄想、いや願望なのであろうか。などと思考を余計な脇道に盛大に逸らせ、雑踏の地下道の片隅のお店で、緩い読書の時間を満喫する。

