色々と立て込みすぎ、机の前を離れてはいけない状況なのだが、しがらみの鎖を引き千切り、古本を買いに行くことにする。今日は以前から事務所を見せて下さい!とお願いしていた目録販売の雄「股旅堂」さんのところにお伺いするのである。何もかも忘れてウキウキしながら駅南口に到着する。ここで待ち合わせなのだが、少し早く着き過ぎたので「文林堂書店」(2008/08/04参照)でも覗いていようかと、お店に足を向ける。店頭棚を難しい顔して中腰で睨んでいると、「小山さん!」と店内から声をかけられる。通路から現れたのは、笑顔の股旅堂さんであった。やはり早く着き過ぎたので、ついついここに入ってしまったとのこと…あぁ、もはや笑い話の域である。早速事務所まで案内していただきながら、道々お話しする。ようやく過ぎ去った「股旅堂 古書目録19」の嵐のような発送作業や、催事のことや、これから訪れる事務所のあれこれ。棚の本に管理番号はなく、すべて何処に何があるか記憶していること。またそれほど広くない故に、催事や目録販売(年二回)を行うごとに、棚を新陳代謝していることなどなど。住宅街を縫いつつ進み、段々と細い路地に入って行く。五分強歩き、ある路地を曲がったところで「ここです」と二階建ての木造モルタル住宅を示される…渋い!激渋だ!外からは、とてもここに古本が大量に集まっているとは思えない。だが、開いたドアに導かれ、少し高くなった玄関に上がり込むと、そこは確かに見事な古本の世界であった。一階は一間なのだが、そこに二十本弱の棚が据えられ、薄暗い書庫となっている。玄関の端に積み上がる本の入ったプラ箱は、催事用の本とのことである。左右の壁に棚が連なり、真ん中に背中合わせの棚列、そして玄関右横からも右壁に向かって棚が続いている。「お邪魔します」と上がり込むと、股旅堂さんから二つの懐中電灯を手渡される。「こちらの大きいので全体を把握します。そしてピンポイントで見たい時はこちらを使うと便利です」…驚くべき懐中電灯の2丁拳銃!しかしこれでは古本に触れない。なにせ棚は二重になっているので、何処に何があるか分からない新参者は、やはり片手で本を移動させねばならぬのだ。そこでピンポイントの方だけを使用して、棚を見て行くことにする。

最初は馬鹿正直に両手に持って見ていたが、気になる本にすぐに触れぬジレンマが、次第に心の中で大きくなっていった…。この、LEDの方だけ、使います!
左側の通路には、壁棚にアジア・満州・旅・紀行・探検関連が集まり、右の通路棚には経済・財界・戦記が並んでいる。その下には、これまた催事用の均一本束が結束されて積み上がっている。右側通路は玄関横から、民俗学・都市・江戸風俗が並び、通路棚には性研究・性医学・性風俗・エロ雑誌・風俗雑誌、壁棚には犯罪・切腹・心霊・性愛・売春・SM・ストリップ・官能劇画・タレント・サブカルなどが濃厚に集合している。

これは玄関から右側を見たところ。
今はわりとスッキリ整理整頓が行き届いているのだが、目録販売前は棚はすべてパンパンで通路にも本が積み上がっていたとのこと。「でも少なくなった今でも、五千冊はありますかね」と股旅堂さんがつぶやく。都会の闇と人間の闇と世界の闇と、底知れない欲望が集められたような世界である。棚のそこかしこに開く、古書の妖しい花々。それは毒々しくもあり美しくもあり、とてつもない冥い魅力を放っている。私は主に都市関連の棚に食らいつき、まずは越山堂「創作 最期の東京/石丸梧平」という関東大震災小説を見つけたので、値段を聞いてみると千円。即座に買います!と答えつつ、二冊あった中央公論社「新版大東京案内/今和次郎編」について聞いてみると「六千円ぐらいですかね」とのこと。ちょっと大物買いになってしまうか…と未練タラタラながら諦めると、「あ、箱ナシもありますよ」と催事用のプラ箱からわざわざ取り出してくれた。これを千円にしてくれたので、大喜びで購入を決める。その後仕事場である二階も案内してもらい、ネット入力用の本や商品化を待つ本も見せていただく(ちなみに二階も整頓が行き届いていた)。元々は事務所なので、人を招くことは想定していなかったとのこと。そんな面白いところを特別に見せていただき、本当にありがとうございました!次回は飲むことを約束し、途中の路地まで見送っていただく。楽しかったぁ。

懐中電灯で照らし、通路を探索するとこんな状態に。なんだか忍び込んだみたい…あぁ、ドキドキする!
posted by tokusan at 19:46|
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