
※これは開始一時間後の少しだけ落ち着いたところ。
人垣から離脱したところで、背後から「小山さ〜ん」と声をかけられる。振り返ると、駐車場を古本屋にしている本棚の脇から、「一誠堂書店」(2010/03/27参照)の番頭さんが笑顔で手を振っている。「店内一割引ですから、見て行ってくださ〜い」とのこと。まつりに歩調を合わせ、一誠堂も動いているのだなと感心し、二三言葉を交わし、店内も一巡する。その後は他ワゴンを軽めに流して行く。「古書ワルツ」(2010/09/18参照)で晶文社「ぼくのニューヨーク地図ができるまで/植草甚一」を300円で購入すると、お店のお姉さんが「植草、まだたくさんあるんですよ」と言って、ワゴンの裏側に姿を消す。しばらくするとスクラップ・ブック束一本を重そうに持ち出して来た。「いやいや持ってますんで、大丈夫です」と丁重にお断りすると「あ、やっぱり。ウフフフフ」と笑われる。ありがとうございます。続いて「よみた屋」(2014/08/29参照)のワゴンで原書房「鮪に鰯 山之口貘詩集」(昭和39年版)を500円で購入した後、戦記物の仙花紙本を大量に並べた「永森書店」(2012/11/28参照)ワゴンで足を留める。偶然にもあまり興味のない戦記物+読み難い背文字の中から、輝く一冊を視線が射抜いたのである。「姿なき空襲」…これは怪しい!“姿なき”と言えば、“怪盗”や“飛行機”が組み合わされる、ミステリやSFのキーワードでもあるのだ。スッと抜き取って味わい深い表紙をめくってみると、目次扉のタイトルの上には『科學小説』とあるではないか。パラパラ本文を捲ると、上海租界を舞台にした、中国秘密結社や各国諜報機関が鎬を削る、戦意高揚通俗科学小説らしい。キーワードは“放送局”…おもしろそうじゃないか!潔く買おう。新泉社「姿なき空襲/神宮寺晃」を二千円で購入する。未知の本に出会えるのは、本当にワクワクする。そんな思いを噛み締めながら、去年の神保町ツアーに参加してくれた(2017/10/07参照)北海道からわざわざまつり初日に駆け付けた強者と出会ったり、古本神・森英俊氏に見つけられたり、「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)鈴木氏と立ち話したりして、充実したあっという間の一時間半を過ごす。
家に帰ると面白い物が届いていた。本の雑誌社「絶景本棚」のオンデマンド印刷版である。なんとこれが、冗談みたいに大きなサイズのA4版なのだ。おかげで本棚に何が並んでいるか、さらに良く見える良く見える(ちなみにこの本、書店流通はなく、イベント時に販売したりプレゼントしたりするとのこと)。そして帰り道もずっと気になっていた「姿なき空襲」について調べてみると、どうやらこれがとても二千円で買える代物ではないことが判明する。やった!こんな本がひっそりと転がってるとは、さすが「神田古本まつり」!ワッショイ、ワッショイ!
