2018年12月23日

12/23山下三郎に始まり、山下三郎に終わった一日。

古本市が楽しみなのか、午前五時前に子供のように目を覚ましてしまう。夜明け前の暗闇と暖かな布団の中でしばらく粘ってみたが、どうにも再び眠れそうにない。仕方なく布団を抜け出し、お湯を沸かして、お茶を一杯入れる。それを啜りながら、先日買ったEDI叢書「山下三郎 四編」を読み耽る。未知の作家であるが、清新で爽やかで魘されるようで視覚的で衛生的な修辞と形容が散りばめられたモダニズム小説を書いている。川端康成・竜胆寺雄・横光利一・稲垣足穂・浅原六朗・堀辰雄などと通底するものを感じ取りながら、このような優れた物語が、復刻されるまですっかり埋もれていたことを不憫に思ったりする。いや、遥か昔から今の今まで、優れた物語は無数に生み出され続けているのだが、その中で脈々と残って行くのは、ほんの一握りなのである。この幽霊のような物語も、二〇〇一年には、読まれなくなった夥しい文字の集積の中から、こうして掬い出されたのだ。何はともあれ幸福である。午前七時にはこの薄い本を読了してしまったので、古本市に持って行くことにする。…そして思ってしまう。この物語を、本物で読みたい…。山下三郎は一冊の短篇集しか出していない。しかもそれは、恐ろしい程の古書価が付けられている。この本は手放しても、まだしばらくは、いつでも手に入れることが出来るだろう。だからそれに付けても、昭和十三年刊の沙羅書店「室内」を、俄然手に入れたくなってしまった。こんな風に、朝っぱらから一冊の本を読んでしまったために、古書熱に取り憑かれながら、忙しい一日が始まろうとしている…。

西荻窪、午前十一時。シャッターの表には、すでに多数の古本修羅&古本神が、シャッターを打つほどに集まっている。そして会場開放とともに雪崩れ込み、たちまち本棚たちが、嬉しく蹂躙されていく。
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そんな嵐が、いつもと違い二時間も続き、あっという間に私も岡崎氏も小野氏も消耗してしまう。しかしその後も、微妙な雨降りなのに、お客さんが途切れずに、例年より調子良く売り上げてしまう。結果、私は143冊を旅立たせることに成功する。会場にお越しの皆々様、本当にありがとうございました!また来年もよろしくお願いいたします。しかし実は古本を売るだけではなく、ちゃっかり盛林堂コーナーから古本も買わせていただきました。ともにカバー&外装なしだが、ポプラ社「白蝋の鬼/高木彬光」春陽堂「新空気/江見水蔭」(東京は奥多摩の洞窟探検もの!)を計五千円で購入する。
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冒頭に書いた山下三郎は夕方まで売れ残っていたので、『家に持って帰ってもう一度読もう』と思っていたのだが、フラリと折り畳み傘とともに現れた文庫善哉さんに「こんなのがまだ残ってるなんて!」と、喜んでお買い上げいただきました。良い所に嫁いだので、本望であります。だから、つい家に帰った後、『日本の古本屋』で山下のオリジナルの短篇集を検索し、最安値の本を注文してしまった…古本を売って新たな古本を買う…愚かな行為であるが、これもまた本望である。
posted by tokusan at 22:34| Comment(2) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
西荻のガレージセールはやや出遅れてしまったのですが、「日蓄コロンビア三十年史」を手に入れることできました。折しもこの暮れにコロンビア製の卓上プレイヤー、真空管ラジオと立て続けにめぐり逢いまして。これもまた何かのご縁かなぁと。巻末の年表は資料性も高く大満足であります。この1冊で積年のナゾがいくつか解けました。実はSP盤もコツコツ集めているのでした。またよろしくお願いいたします。
Posted by としのすけ at 2018年12月24日 21:57
お買い上げありがとうございました!そんなに喜んでいただけるとは、売りに出した甲斐があるというものです。それにしても、探し求めれば、縁が繋がっていく不思議で楽しい出来事が起こりますね。来年も引き続き、興味の範囲を繋いで広げて、良い物に出会ってください!
Posted by 古ツア at 2018年12月26日 13:48
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