2018年12月28日

12/28年末年始はモダニズム小説に溺れよう。

ゴウゴウと、地の底から吹き上げて来たような、冷たい風に痛めつけられ、夕方の千歳烏山に流れ着く。治まる気配のない風に逆らいながら、駅北側に出て久しぶりの「イカシェ天国」(2008/09/23参照)を覗いてみる。相変わらず無人である。そして万引防止の警句が、派手に増殖してしまっている…無人故の疑心暗鬼が、外の強風のように吹き荒れているのだ。しかし本にはちょっと動きがあるようで、面白い古書がチラホラ目立っている。真剣に目を凝らして駿河台書房「動物園日記/福田三郎」中央公論社「七つの蕾/松田瓊子」を選ぶ。合計で千八百円だが、半額セールが常時行われているので、九百円になるはずである。そう信じて、本を携え一旦表に出て、斜向いの黄色い派手な不動産屋へ向かう。扉をカラリと開けて「すみません、本を」と言うと、座っていたメガネのオヤジさんが近付き値札を確認し「九百円」と一言。ホッとしながら精算する。

そして寒さに震えながら家に帰り着くと、待望の古本が到着していた。沙羅書房「室内 山下三郎短篇集」である。EDI叢書「山下三郎 四編」を読んだことにより、本物への渇望という厄介な古本心に火が点いてしまい(2018/12/23参照)、打ち上げの酔いに任せて古本市の売り上げをつぎ込み、注文してしまったのである。「室内」は相場がだいたい五万円ほどのビックリ値なのだが、これは破格の一万五千円であった。なので相当な瑕疵があることを覚悟していたのだが、包みを開封してみると、函に汚れやイタミはあるが比較的しっかりしており、本体も背文字の掠れ以外はわりとキレイなものである。やった!こりゃぁラッキーだ!昭和十三年刊。本は菊判。本文紙はちょっと厚めのアート紙で、本文は青と墨の二色刷り。限定三百部のうちのNo.298。装幀は堀辰雄で、表紙に使われているネクタイ地(それぞれの本で異なるという)は緑である。後見返しには、渋谷「玄誠堂」の古書店ラベルあり(だが最後に営業していた『宮益坂上』ではなく、『渋谷 道玄坂』と記されている。古い時代には道玄坂で営業していたと言うことか?)。…う、嬉しい。しみじみと嬉しい。年末は年始はこれを読み、清新な昭和モダニズム小説に耽溺することにしよう。
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そして皆様、明日の八王子でのトークを、よろしくお願いいたします!恐らく予約なしでも当日飛び入り可能だと思いますので、気が向きましたら、午後六時前に「古書むしくい堂」(2018/01/03参照)にお越しください。「室内」読みながらお待ちしております!
posted by tokusan at 19:12| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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