そして寒さに震えながら家に帰り着くと、待望の古本が到着していた。沙羅書房「室内 山下三郎短篇集」である。EDI叢書「山下三郎 四編」を読んだことにより、本物への渇望という厄介な古本心に火が点いてしまい(2018/12/23参照)、打ち上げの酔いに任せて古本市の売り上げをつぎ込み、注文してしまったのである。「室内」は相場がだいたい五万円ほどのビックリ値なのだが、これは破格の一万五千円であった。なので相当な瑕疵があることを覚悟していたのだが、包みを開封してみると、函に汚れやイタミはあるが比較的しっかりしており、本体も背文字の掠れ以外はわりとキレイなものである。やった!こりゃぁラッキーだ!昭和十三年刊。本は菊判。本文紙はちょっと厚めのアート紙で、本文は青と墨の二色刷り。限定三百部のうちのNo.298。装幀は堀辰雄で、表紙に使われているネクタイ地(それぞれの本で異なるという)は緑である。後見返しには、渋谷「玄誠堂」の古書店ラベルあり(だが最後に営業していた『宮益坂上』ではなく、『渋谷 道玄坂』と記されている。古い時代には道玄坂で営業していたと言うことか?)。…う、嬉しい。しみじみと嬉しい。年末は年始はこれを読み、清新な昭和モダニズム小説に耽溺することにしよう。

そして皆様、明日の八王子でのトークを、よろしくお願いいたします!恐らく予約なしでも当日飛び入り可能だと思いますので、気が向きましたら、午後六時前に「古書むしくい堂」(2018/01/03参照)にお越しください。「室内」読みながらお待ちしております!