2019年01月23日

1/22古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第三章】

早朝午前七時。盛林堂・イレギュラーズの誇りを胸に抱き、勇気を持って寒い寒い戸外に飛び出す。西荻窪「盛林堂書房」前で店主の小野氏と待ち合わせ、フロントガラスに美しい霜の結晶が張り付いた盛林堂号で、一路神奈川県下にある日下三蔵邸を目指す。渋滞の都内を潜り抜け、高速道路を走り抜け、二時間弱で本邸に到着。すっかり準備万端の日下氏が「どうも。よろしくお願いします」と姿を現し、相変わらず後部座席に荷物を積み過ぎサスが沈み気味の日下号の先導で、本の家である別邸に向かう。本日の難関ミッションは、右奥の十年間誰も踏み込めていない六畳のコミック部屋を、どうにか片付け、壁際&窓際に棚を据えるところまで漕ぎ着けること!まずは満遍なく部屋全体に胸高までコミックが積み上がる部屋に小野氏が突入。バンバンと本を運び出し、それを私が中継し、日下氏が元リビングルームの巨大な本の軍艦が幅を利かせる通路で、版型仕分け&必要仕分けを行うことにする。三人即座にエンジンフルスロットルで、作業に専念する。だがいつもなら「こんなのが出てきました!」「ここにスゴいのが埋もれてました!」などが連発され、単調で苦しい作業に潤いが生まれるのだが、今回はほぼコミックばかりなので、ひたすら受け取った物に目もくれず、機械のようになり、ただただ作業を効率的にスピーディーに進めて行く。そのせいか驚くほど作業は進捗し、瞬く間に本の山の下から十年ぶりに顔を出した敷きっ放しの布団や、本に全面を囲まれていたテーブルや、本の山の向こうからブラウン管のテレビが発見されたりする。そんな味気ない作業をどうにか噛み締め、午後十二時半に昼食を摂るため外出。美味しいお寿司をお腹に詰め込み、必要な備品を買い揃え、午後二時には別邸に戻り、作業の続きに取りかかる。途中、偕成社「スパイ17号/柴田錬三郎」や「探偵倶楽部」などが発見されたりするが、やはり基本はコミックばかりなのであった。そしてどうにか窓際まで道が開けると、そこには大量のゴミが積み重なっていることが判明。後半は、そのゴミを袋詰めする作業にシフトするのだが、何と十年と言う歳月は非常に恐ろしく、ポリ袋やペットボトルやビニール類が、射し込んでいた日光のために劣化し、触った途端にモロモロハラハラと崩れ落ちるのであった。何だか遠い未来で、前世の遺物を見つけたと思ったら、儚く眼前で霧散して行くような、ちょっとロマンチックな光景なのである。たちまち畳の上に、今話題のマイクロプラスチックがこぼれ落ちる!嗚呼、まさか日下邸で、こんな世界を悩まし始めている物質を目にすることになるとは…。
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だが、これらもしっかりと片付けねばならぬのだ!と言うわけで、ド大量の本を部屋の片側に寄せ、ベランダからここも長年人の踏み入っていなかった庭にゴミを出し、少しずつ本ではなく人間の領土を広げて行く。ついに日下邸内で、初めて腰を下ろせるようになったぞ!これで人間の文化的な生活が、この場で窮屈ながらも、営めるようになったぞ!
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途中棚の買い出しに行く小野氏と日下氏を見送り、独り別邸に居残り、本の版型を揃えて積み上げ、マイクロプラをハンディ掃除機で吸い上げ、ゴミを袋に積め、それを庭に出して行く。何だか今回は、古本の整理をしに来たと言うよりは、便利屋が遺品整理しているような具合である。午後五時からは、日下氏は仕分けに専念し、盛林堂チームは、買ってきたカラーボックスをひたすら鬼のように組み上げる作業。結果十一本を組み立てて、午後七時に作業を終了する。みなさま、大変に大変におつかれさまでした。今日のハードな作業のお礼として、片付け途中に発掘された、ダブりまくっていた怪の会「エンサイクロペディア アワサカナ 泡坂妻夫大事典」をいただく。
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そして帰り際、、マンションの掲示板にふと目をやると、しばらくしたら部屋内立ち入りで排水管の清掃が実施されることが書かれているではないか。「日下さん、これ大丈夫ですか?」「無理です。その日は用事があります」「…いや、そういう問題ではなくて、本が邪魔で作業員の方、入れないですよね」「それにもうシンクにも風呂場にも本や棚が積み上がってるんで、絶対に無理です」…断固拒否、というよりは、当然物理的に不可能なのであった…。解決するには、もっともっと地道に片付けていくしかないのである。その後はちょっと遅い晩ご飯に焼肉をたらふくお腹に詰め込みながら、何故だかマンガの話で大いに盛り上がる。弓月光「ボクの初体験」が海野十三の「超人間X号」に似ていることや(マッドサイエンティストによる簡便な脳移植手術から巻き起こる大騒動)、水島新司が「球道くん」を連載していたのは『マンガくん』だったことなどなど。…あぁ、それにしてもハード過ぎる一日であった。やはり本との格闘は、とてつもない重労働なのである。
posted by tokusan at 00:47| Comment(6) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「ダブりまくっていた」に妙に受けてしまいました。我が家にも怪の会の会報が妙にダブっていたりもしますので。
「古書信天翁」さんが閉店セール中なんですってね。閉店セール、嬉しいような哀しいような(というか、やっぱり哀しい!)。
Posted by よしだ まさし at 2019年01月23日 14:37
嗚呼、何故みんなダブっているんですか!一冊でいいじゃないですか、一冊で!そして「信天翁」さん、早く行かねばなりませんね。どっちにしろ、お店で古本を買うことは良いことです!
Posted by 古ツア at 2019年01月23日 17:36
こんばんは。
物質を触った瞬間にモロモロハラハラと崩れ落ちる!!『ナウシカ』冒頭のユパ様登場シーンが頭をよぎり、うっとりしてしまいました。古ツアさんは『ナウシカ』好きですか?唐突な質問してごめんなさい。
Posted by かに座公園 at 2019年01月23日 23:14
かに座公園様。まさにあの儚い崩れ方は、そんな感じでした。『風の谷のナウシカ』は高校生の時に、友達と町田の映画館に観に行ったのですが、同時上映の『名探偵ホームズ』があまりにも面白かったので、友達に「『ホームズ』だけもう一回観てもいいか?」と聞くと、「俺も『ナウシカ』がもう一回観たいんだ」と言うことになり、結局六時間ほど映画館で過ごすことに…。
Posted by 古ツア at 2019年01月24日 18:11
こんばんは。
すごいですね!!ぶっ続けで、しかもお互いがお互いを思いやり、それぞれが観たいのをきちんともう一回ずつ!!!でも、もし『ナウシカ』の映画館上映をリアルタイムで体験していたなら、きっと絶対古ツアさんとご友人が取られた行動と同じ行動を取っていたと思います!なんかほんとしびれますもんね。ああ!姫姉様!
Posted by かに座公園 at 2019年01月24日 21:40
かに座公園様。ナウシカの話をしていると、自然と安田成美の歌う『風の谷のナウシカ』が流れてきます。いい歌なのになぁ…。
Posted by 古ツア at 2019年01月25日 17:00
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