2019年06月28日

6/28古本屋ツアー・イン・細谷正充氏邸!

すでに昨日のことである。午前九時半に二日連続の盛林堂・イレギュラーズとして、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店舗裏の倉庫前に午前九時半に参上する。やがて裏口から姿を現した店主でボスの小野氏と近所の駐車場に赴き、盛林堂号を出発させる。街道を走り続け、まずはホームズ研究家&作家の北原尚彦氏をピックアップし、さらに街道をひた走り、水玉蛍之丞研究家の田中すけきよ氏をピックアップする。と言うわけで、同行四人のちょっとした小旅行スタイルで目指すのは、埼玉県某所にある、文芸&必殺技評論家の細谷正充氏の自宅書庫である。盛林堂チームは、大量のダブり本の引き取りに、北原尚彦氏は雑誌「読物と漫画」に掲載されたホームズパロディ作品を求めて。田中すけきよ氏は制作中の同人誌の資料を求めて。物凄い書庫を見る前に、ロードサイドの飲食店で昼食を摂る。すると会計時に北原氏が突然慌て始め、レジと座っていた席をアタフタと行き来し始めた…「財布がない!忘れて来た!」と、まったくの一文無しであることが判明する。会計は盛林堂さんに借りて済ませ事無きを得るが、この後コンビニに寄ったり「ブックオフ」に寄ったりする度に、「北原さん、飲み物おごってあげますよ」「北原さん、欲しい本あったら買ってあげますよ」などと、皆に面白おかしく嬲られ続けることになるのである…。そんな楽しいことがありながら、田園風景の中をロングロングドライブし、午後一時過ぎに細谷邸に到着する。ドアを開けて出迎えてくれた細谷氏に挨拶し、早速邸内に招き入れられる。すると廊下には棚が並び、映画DVD・時代劇DVDが大量に美しく収まる軽いジャブ的光景が広がっている。早速四人は「おぉ」「ほほぅ」などと感嘆の声を上げながら、棚を注視して行く。…初期必殺シリーズのDVDが端正に…。キッチン横の応接間に招き入れられ、飲み物を振る舞われるが、全員すでに気もそぞろとなっていたので、それを見抜いた細谷氏が「まぁ、たいしたことありませんが、じゃあ見に行きますか」と腰を上げる。すると全員の目が爛々と怪しく輝き、列となって足音を立てずに細谷氏の後に続く。ドキドキしながら階段下の横にある扉を潜ると、そこは無限のように本棚が整然と建て込む、恐ろしく広い空間であった。
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およそ四十畳強はあろうかという、何処かの道場のような空間に、壁際には本棚がぐるりビシッと据え付けられ、フロアには数え切れぬ背中合わせの本棚が立ち、壁際&中央に横断通路を設けた、十一本の通路が縦に並んでいるのだ。
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ふぉぉぉぉぉぉぉっ!もはや完全な図書館である!棚に並ぶのは、少年青年少女コミック・ラノベ・ティーンズ文庫・ボードゲーム・パソコンゲーム・レーザーディスク・切り抜き漫画資料・映画関連など。全員がその数と質に圧倒されつつ、各所に散らばる。すぐにあちこちから「おぉっ!」「あぁっ!」「すげぇ〜!」などと声が上がるが、もはや巨大迷路に紛れ込んでいる状態なので、誰が何処にいるか判然としなくなってしまう。だが細谷氏は、その声の上がった方に巧みに接近し、手にしたものや棚に並ぶ本について懇切丁寧な解説を施すのである。切り抜き漫画を見ていると、「これ見て下さい。三岸せいこの単行本未収録作品です」と数冊の切り抜きを取り出す…幻の漫画家の!と驚愕するが、こんなことをしていたら、いつまでも二階には上がれない。漫画も楽しく素敵だが、我々はやはり大衆文学を目指して来たのだ!と後ろ髪引かれまくりながら、全員二階へ。二階も一階と同じ広さで、構造もほぼ同じになっている。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!スゴイスゴイ!日本の大衆文学が、戦前から現代までドッサリだぁ!橘外男ゾーンには「双面の舞姫」や「怪猫屋敷」や「亡霊怪猫屋敷」もしっかりと混ざっている。おっ、楠田匡介「人肉の詩集」!大河内常平!ひえっ、水谷準の「薔薇と蜃気楼」が帯付きだ!永瀬三吾「鉄火娘参上」なんて聞いたこともない!などと騒いでいると、前に来たこのある小野氏が「小山さんはこっちがいいんじゃない」と右奥の薄暗い時代小説ゾーンに導いてくれた。げぇっ!愛しの九鬼紫郎!時代物ばかりだが、こんなに九鬼紫郎が並ぶ光景は、乱歩邸でしか見たことがない!
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あぁ、なんだ、この「怪剣鉄仮面」とか「旗本無法街」って…などと、興奮留まることを知らず…。それにしても、有名無名含め、大衆文学作家を何となく時代小説を核にしてまとめているのが(コミカライズ作品までも満遍なく!)、すこぶる見ていて楽しいのだ。これはちょっと明らかに他に見かけぬ視点&蒐集の仕方なので、細谷氏に対する畏敬の念が、ムクムクと湧き上がって来てしまう。細谷氏曰く「本は本棚に並べるもの。美しさと威圧感がそこに生まれる」「俺は安物買いだから」「本は一年五千冊ペースで増えている」「ある時から、本は処分しないと決めたんだ!」などの名言が次々とあちらこちらで炸裂する。それにしても、南條範夫で棚一本、菊地秀行で棚一本、とかは絶対に見られない稀少な景色だな…。「あぁ、北原さん、来て下さい来て下さい」「な、なんですか?」「こ、これ、博文館探偵傑作叢書の「魔の犬」を百円で買ってますよ!」「うわぁ、やめてくれぇ〜」。おぉ、その横の壁棚を見ると、横溝正史棚も時代物中心で芯を通しまくっている!
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別部屋の少女漫画雑誌棚群も花園のように美しいが、その奥には古い「週刊漫画TIMES」で棚が一本作られている!
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などなどと、とにかく驚愕の連続なのである。そしてその驚愕に対して、色々と細谷氏が本を手に入れた経緯や内容について解説を加えてくれるのだが、基本的にほとんどの本をしっかりと読んでいるのが恐ろしい。そして内容の賛否については「まぁ面白くないんだけど!」と毒を吐きまくるのがほとんど。そこで「じゃあ細谷さんが面白いって思う作家は誰ですか?」と聞いてみると「そりゃあ風太郎だよ」と即答する。そこで左奥の山田風太郎コーナーに向かうと、好き過ぎて高校時代に風太郎の自宅に押し掛け書いてもらった色紙や、献呈署名入りの数々の著作を見せびらかされ、気絶しそうになる。
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さらに怪し気なエロマンガ雑誌を取り出し、「これに風太郎の『夜よりほかに聴くものもなし』のコミカライズが載ってるんだよ。全部集めたいんだけど、まだ二冊しか見つかってないんだ」…恐る恐る手に取ると、谷口ジロー風の絵で、ちょっとシュールに描かれている…。などと時間の概念をすっ飛ばし、本棚にひたすら没頭してしまうが、それでもお仕事はしなければならない。そこで小野氏と廊下に泣く泣く脱出し、棚一本半分のダブり本を棚から取り出し、結束&運搬作業に取りかかる。その間に田中すけきよ氏は借りる本をダンボール二箱にまとめ、北原氏も目的の雑誌をほぼ自力で発見した後に、細谷氏のマンツーマン解説を書庫で受け続ける。気付けば外は雨が降り始めている。本を濡らさぬように、素早く玄関から本を運び出す。無事に作業を終えた後、最後に名残惜しく書庫内を一回りし、最後の最後に衝撃の九鬼棚を眼底にジリジリと焼き付ける。いつか、いつの日か、手に入れたいものだ。ここでしっかりと見ておけば、何処かで引っかかることもあるだろう!全員棚の虜になりながらも、無事にそれぞれのミッションを完遂したので、図々しくも再訪を約束し、午後五時過ぎに細谷邸を後にする。その後は往きのルートを逆にたどって行くのだが、同じ車に乗っている性故、すけきよ氏が現在懸命に探しているある文庫を手に入れるためのブックオフ巡りに、強制的に北原氏とともに参加させられる。何も買わないつもりだったのだが、一店目の「鴻巣吹上店」の単行本200円棚で、集英社「明智小五郎回顧談/平山雄一」を見付けたので購入。「何買ったの?」と聞いて来た小野氏と北原氏に見せると「200円ならそりゃ買うわ!」と同じことを言われる。結局西荻窪に帰り着いたのは午後八時半。これにて盛林堂・イレギュラーズの二日目が、無事に終了。
posted by tokusan at 18:15| Comment(2) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おおっ、噂に名高い細谷くんの書棚! 噂通りで凄いなあ。
そして、「そりゃあ風太郎だよ」の即答で思わずニンマリ。彼、高校生の時に「風ちゃん」とか「フータリアン」と呼ばれていたのです。その高校生だった細谷くんが、これだけの書庫のある家を建てたんだから、本当に立派だよねえ。凄い!
Posted by よしだ まさし at 2019年07月01日 12:41
うぅ、なんだかいい話じゃないですか。『フータリアン』はわかりますが、『風ちゃん』だとまるで風太郎本人じゃないですか!とにかくあの、一冊一冊ジワジワ蓄積するように、安値で集めた結果の素晴らし過ぎる棚群は圧巻でした。
Posted by 古ツア at 2019年07月01日 19:01
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