2019年07月02日

7/2「芳林文庫古書目録 探偵趣味」

今日は下高井戸南の松原に流れ着いたので、テクテク歩いて東松原まで移動し、「瀧堂」(2014/05/01参照)で新潮社「松本竣介とその友人たち/村上善男」を500円で購入する。夭折の洋画家・松本竣介を都会や有名画家を搦めての既存の論考ではなく、岩手・盛岡と東北の美術家や友人達を通し捉え直すルポルタージュである。帰りの車中でちょっと読み進めると、昭和十四年に竣介の絵の売却先が書かれているのだが、何とその中に吉行あぐりの美容室が含まれているではないか。昭和初期のあぐりの美容室と言えば、村山知義が設計したダダ建築!あの異様で斬新な船の艦橋のような建物に、松本竣介の絵が飾られいたなんて!二つの尖った才能が、ひとつの空間の中で共鳴し合っていたなんて!としばし想像を膨らませ、うっとりとする。

さて、話は変わり、最近ひょんなことから前から欲しかった「芳林文庫古書目録 探偵趣味」を、七冊手に入れることに成功した。私は今までほとんど「芳林文庫」(すでに閉店。2018/02/09参照)とは縁なく過ごして来て、本も一冊も購入したことはない。だから探偵小説に強いお店だと言うことも、最近までそれほど意識はしていなかった。だがツアーでは事務所店の前まで行ったことはあるが、怖じ気づいて入れず(2009/02/15参照)、神保町にあった「古書かんたんむ」(2011/12/31参照)で貸し棚の「芳林文庫」を見て涎を垂らしたくらいが、関の山なのである。それでも探偵小説好きとして日々暮していると、自然とお店の情報と接触する機会も増えて行くものである。例えば「盛林堂書房」(2012/01/06参照)では、店主・小野氏に虎の巻として使用している目録を良く見せてもらったり、また稀代のミステリアンソロジスト・日下三蔵氏の邸宅整理を進めていた時、不要の目録が何冊も出現したので「欲しかったら差し上げますよ」と言われ、その中に「芳林文庫古書目録(確か乱歩特集だった)」が一冊あったので、「じゃあこれいただいていいですか?」と氏に見せると「それはダメです」と即答されたり、本棚探偵・喜国雅彦氏に「芳林さんに本を買取してもらおうとダンボールに詰めて(それなりの本がちゃんと入っている)送ると、いつも電話で「喜国さん、開けてがっかりしたよ」と必ず怒られる」という面白話を聞いたり、はたまた盛林堂・小野氏が資料を受け取りに事務所店を訪れた折り、中には入れたが入口付近で「そこを動くなよ、本には触るなよ!」と厳命され直立不動で後に手を組み待機した話や、ミステリ評論家・新保博久氏旧邸の片付けのお礼としてやんわり強奪した日本公論社「紙魚殺人事件/バアナビイ・ロッス」が実は芳林さんで購入したものだったりと(教授、大事にしてます!)、遅ればせながらお店の魅力に触れることが多くなって行った。だから今回手に入れた七冊は、本格的に自分自身が「芳林文庫」の幻影と渡り合う、未知の世界への入口なのである。第十三号から終刊号となる第十九号までの後期七冊だが、やはり巻頭の特集がマニアックで微に入り過ぎ細に入り過ぎ重箱の隅突つき過ぎで、無類に面白い。『HPB』『小酒井不木』『内容見本・月報』『捕物帳』『児童書(高木彬光の児童書)』『へんな本』『終刊号(鮎川哲也について)』など、どの特集も勉強になるなる。おまけにこの特集を読んでしまうと、特集ページが終わった後に始まる目録掲載の本が、とっても欲しくなって来る魔法が盛大に掛けられているのだ。いやぁこれは、悪魔の目録ですな。だから、逆に知らなくても良かったのかもしれない。これじゃあ、お金がいくらあっても足りなくなるのは必至……いや、そんなのは、やっぱりただの負け惜しみなんだろうな。あぁ、買っていた人たちが、ただただ羨ましい〜〜〜〜っ!
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posted by tokusan at 19:03| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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