2019年09月10日

9/10青春18きっぷ古本屋への旅2019・夏

古本神・岡崎武志氏に誘われ、『青春18きっぷ』の残り一枠をいただき、一緒に古本屋を訪ね回る小さな旅に出ることにする。言わば去年出版した「青春18きっぷ古本屋への旅」の外伝といったところか。ところが朝、出かける準備を進めていると、氏から着信が入る。「おはようございます!」と元気よく挨拶すると、氏は笑いながら「財布が見つからんのよ」と衝撃の報告!とにかく今必死に探しているので、見つかったらまた電話する、ということになる。あぁ、岡崎氏は、必死に地下の古本山を掘り返したりしながら、その周りを二匹の猫が「ナニシテルンデスカ。ナニシテルンデスカ」と鳴きながらじゃれついているんだろうなぁ…などと楽しく想像していると、再び電話があり、無事に財布が見つかったとの報告。それならばスケジュール通りに行動出来るはずだ!と、氏と午前九時二十分に阿佐ヶ谷駅で待ち合わせる。18きっぷにすでに捺された氏の分のハンコに加え、私の分を改めて捺してもらい、二人連なり有人改札を抜ける。中央線→湘南新宿ライン→両毛線と順調に進むはずが、湘南新宿ラインが遅れ、両毛線への乗り継ぎが上手くいかず、一時間ほど足止めを食らう。仕方ないので炎天下の街を少しだけ散策し、駅で昼食を摂り、ようやく両毛線に乗り込み、十分ほどで栃木駅着。高架下の駐輪場でまずはレンタサイクルを借り、駅前ロータリーの山本有三碑に挨拶。
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その後、駅近くのハンコ屋+古本屋の変わり種「長谷川枕山堂」(2011/03/02参照)に向かう。その激渋な佇まいは昔と変わらず、巨大なブリキ看板も健在。今でも果たして古本を売っているだろうか…と恐る恐るドアのガラスを透して店内の様子をうかがうと、おぉっ!まだちゃんと古本棚が並んでいるじゃないか!岡崎氏に「古本、売ってますよ」と報告すると、すぐさまドアを開けて入店してしまった。続いてスルリと滑り込むと、入ったところはハンコ屋スペースだが、右側に古本棚が見え、奥の二本の通路も古本が並んでいるのである。岡崎氏が、入店と同時にハンコ屋スペースのレジに座る店主に、このお店について、さり気なく色々な質問を投げ掛けて行く(これが非常にうまいのである)。たちまち店主とお客の垣根が楽しく取り払われて行き、自然と「今日はどうしここに?」の質問に行き着いてしまった。そして話には参加せずに、ひたすら古本を眺めていた私を氏が紹介したので、「古本屋ツアー・イン・ジャパン」ですと遅まきながら挨拶をする。実はこのお店をブログで取り上げた時に、店主といくらかのやり取りがあり、すでに交流を持っていたのである。店主は取り上げてくれたおかげで、お店の知名度が上がったことを盛大に感謝してくれ、大いに恐縮してしまう。こちらも改めて、今でもしっかり古本を扱われていることを感謝したりしながら、並んでいる本の核となっている世界関係の本は、世界史の教師であったお父様の蔵書であることを知る。なるほど、そうだったのか。そして奥の片隅にしっかり健在の推理小説コーナー前に跪くと、一冊の素晴らしい本を発見する。むぅ、今日はここに来て、本当に良かったぞ。ついでに時々サロンとして開放する二階のスペースも見せていただくと、美術全集や大判全集とともに、ハヤカワポケミスやクリスティーが多く並んでいるのが目に留まった。推理小説もまたお父様の好きなジャンルで、まだまだ自宅には色々あると聞いてしまったので、ぜひともお店に並べて下さいと、強くお願いしておく。これは二階から見た、巨大看板の裏側!
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その後、店主のお母様も現れ、来栃を大いに歓迎される。挙げ句、本の普及活動をこの地でされている知り合いや、「吉本書店」(2010/12/25参照)に「あの、今、古本屋ジャパンさんともうひとりの方が来ていてね、挨拶したいって言ってるの」などと慌てながら電話を掛けられ、次々に会う仕儀となる。…お母様はとてもパワフルである。栄光出版社「長編推理小説 死者の木霊/内田康夫」を500円で購入する。というわけで三人で自転車に乗り、炎天下の栃木の街を疾走して行く…お母様のスピードはとても早い。
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最初に向かったのは近所の市民活動推進センターで働き、そこで本に関する活動を展開している「読み書き堂」さんにお会いする。お仕事中にお邪魔してしまった形だが、岡崎氏との対面を喜んでいただき、ホッと胸を撫で下ろす。様々な活動のパネルを眺めながら、話の中に「駄々猫さん」「脳天松さん」「レインボーブックス」さんなど、一箱猛者たちの名前が挙がり、驚いてしまう。これからも本を武器に、頑張って下さい!再び街に出て三人で自転車を疾駆させ、「吉本書店」へ。
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ずいぶん中心部から離れた住宅街なのに、今日もしっかり営業中である。九十を越えた店番のお母様や、倉庫からわざわざ駆け付けてくれた姉妹店主のお一人と、お店の来歴や古本屋についての昨今や、猫の話に花を咲かせる。三一書房「デザインの発見/粟津潔」を300円で購入する。お店を後にして、「ここからは巴波川沿いに帰っていただきたい」との提案に従い、軽やかに自転車を走らせる。走りながら、お母様は色々とガイドしてくれるのだが、距離があり、風と前を向いて声を出しているので、良くは聞き取れない。「栃木高校です」「新しい幼稚園です」「市役所跡地です」「この旧庁舎は文学館になります」「駐車場です」「お壕です」「鯉です」「遊覧船です」「一方通行です」「鯉です」……あ、あ、ありがとうございます!などとやっていると、あっという間に二時間経ってしまった。「家はこっちなんです」と駅近くでお世話になったお母様と別れ、レンタサイクルを規定時間内に返却する。ふぅ、と駅のホームで一息入れる。
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岡崎氏は、リポビタンDでエネルギーチャージ!

ところがこの後乗り込んだ電車は、何と下りの高崎行き…途中でそれに気付き、佐野駅で下り電車を乗り捨て、引き返すことにする。待ち時間は四十分余り。もはや街を散策する余裕もなく、駅前の噴水前で、二人でガリガリ君をガリガリ齧り、涼をとる。ついでに本日の嬉しい獲物を噴水前で記念撮影。
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この内田康夫の処女作は文庫でも読めるのだが、栄光出版社の単行本は自費出版でなかなかに珍しいのである。枕山堂さん、ありがとうございます!

帰りの車中、気付けば茶色い電気機関車に牽かれた特別急行列車カシオペアが、銀色の車体を夕陽に光らせ、スルスルとスピードを上げながら車窓を長く横切って行く。何という美しい、夢のような光景。こんな風にして、栃木への短い旅は、美しく終わりを告げたのであった。
posted by tokusan at 19:06| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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