2019年09月18日

9/18水曜日の定点観測。

今日は午後前にようやく雨の降り始めた吉祥寺に流れ着く。傘を差しながらブラブラと古本屋さんを巡るが収穫ナシ。そう言えば月曜は定点観測が出来なかった…荻窪に移動して「竹陽書房」を覗いてから「ささま書店」(2018/08/20参照)に向かおう。そう決めて、総武線で二駅移動。荻窪到着前に上半身を南側の車窓に捻り、「竹陽書房」が開いているかどうか確認する…あれ、シャッターが下りっ放しだ。時刻は午後一時である。まだ少し早いのかな…と早々に諦めて、「ささま書店」へ一直線。雨が強くなり始めた。店頭はもちろん雨仕様。ビルの庇に守られた均一単行本棚二本に、じっくり視線を走らせる。ここ最近で何度も見ている本の間々に、昭和三十年代の大衆小説がふわりと浮かび上がる。二冊を確保して店内へ。左側通路に均一文庫棚が一本引き込まれ、奥の帳場斜め前にもう一本が置かれている。おっ、詩集棚の下では、つい先日逝去した池内紀特集が組まれている。それを横目に文庫棚からも一冊抜き取る。光文社「長編推理小説 蒼い描点/松本清張」(初版)東方社「はだか太平記/北町一郎」角川文庫「土屋耕一回文集 軽い機敏な仔猫何匹いるか」を計324円で購入する。
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うっとうしく降り掛かる雨も吹き飛ばす、なかなかの収穫である。テクテク歩いて帰宅すると、筑摩書房から何か届いている。どうやら本らしいのだが、筑摩から本が届く覚えなどないはずだが…とボール紙の封筒を開けると、出て来たのは岡崎武志氏の新刊、ちくま文庫「上京する文學」であった。岡崎さん、ありがとうございます!パラパラとページを捲ると、18の作家上京話に加え、新たに二編が追加されている。その内の一編が野呂邦暢の上京物語で、本文内では氏とともに編集した「野呂邦暢古本屋写真集」についても触れられている!…そうだ、東京と言えば、今楽しみにジワジワ読み進めている春陽堂「大東京・インターナシヨナル」は、やはりとてつもなく面白い。徳田直『裏切者』は、バクチ好きの写植工が、無意識の密告や警察への収監を経て、共産黨員として目覚めて行く物語。橋本栄吉『ゼネ・スト』は、印刷所での労働争議を組織の目から忠実に描いた物語。…ここまではまぁプロレタリア的に普通である。ところが、三人目の窪川いね子に突入すると、ギアがぐいっと何段か上がる。「東京一九三〇年物語」は、黨の通信員として働く少女が、当局に目をつけられぬよう、東京の様々な場所で手紙を投函するスケッチ風の物語なのだが、少女が東京内を細々と移動するとともに、自然と東京の街の風景も文章の中を流れて行くという、素晴らしい仕掛けが施されている。他に、乗合自動車のバスガールが変装して、ストライキをする同士と密会する物語。監視入院している若者が、病院から脱走する物語。王子の街の描写と、女工の暮らしが美しく絡み合う物語。そして、銀座のデモ行進で使われた催涙瓦斯を起点に、共産黨員の地味な草の根行動を描く物語。そんな小さな物語たちが連なり固まり、大きな一つの物語となっているのだが、労働者というよりは、東京のあちこちの街を主人公としているような展開に、シビレまくってしまう。窪川いね子は「私の東京地図」も名作だが、この小品も、負けないほどの東京への愛おしい情感が込められている!そして次の山田清三郎『求人廣告』はちょっと奇天烈なユーモア風(期せずしてそうなってしまった感あり)プロレタリア小説だが、そこから続く未読の、小島勗『アスファルト』、藤澤桓夫『首府の欲情』、武田麟太郎『淺草・餘りに淺草的な』黒島傳治『お化ケ煙突』、片岡鐡兵『アスファルトを往く』は、さらにボルテージがアップして行くようだ。特に最後の片岡作品は、まるで詩というか、プロレタリア新感覚派と言ってもいいような(ある意味めちゃめちゃである。何たってプロレタリア文学の隆盛が、新感覚派を衰退させたのだから…)、言葉が文章から先走りギラギラと煌めく掌編のようである。あぁ、スゴい!色んな昭和五年の大東京を渉猟して、早くここまでたどり着かなければ…。
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posted by tokusan at 16:19| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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