2019年10月20日

10/20熊本〜島原〜博多・古本屋行 一日目

午前八時過ぎに家を出て、地獄のような満員電車を乗り継ぎ、曇り空の羽田空港へ。『保安検査場』では、上着も脱いで調べられるようになったことを初めて知る。搭乗口ロビーで、三日間旅を共にする岡崎武志氏と合流。遠くからこちらの姿を見つけ、大きく手を振っている。口では「電車だけでもう疲れたわ。帰りたいわぁ〜」などと言っているが、その瞳は熊本行きの飛行機を見つめ、小さく燃え上がっている。フライトはおよそ一時間半。機内ではハヤカワポケミス「ゆがめられた昨日」を読み進める。田中小実昌の読みやすい訳文に引き込まれ、パラパラとページが捲れて行く。『簡易食堂』のルビが『キヤフテリア』とはイカしてるな。黒人の主人公が、私立探偵を続けるか、安定のために郵便配達夫になるか、悩みに悩んでいる58pまで。正午に“火の国”熊本に到着し、今回我々を東奔西走して呼んでくれた「舒文堂河島書店」(2008/12/21参照)の若旦那に出迎えられる。駐車場でしばし舒文堂号を見失う微笑ましいハプニングもあったが、無事に車は市内に向かって突き進み、午後一時に市内『上通り』に到着する。雨が落ち始めているが、まずはお店に向かいつつ「汽水社」さんに挨拶をする。その昔、よく「なごやか文庫」の古本市の開始待ちの列で、お会いしたものである。後でまた見に来ることを約束し、まずは昼食を摂る。近くのラーメン屋さん『こむらさき』で、あっさりクリーミーとんこつの『王様ラーメン』+餃子を美味しくいただく。さぁ、お腹が満ちたら古本屋さんだ!と、仕事に戻る若旦那と一時別れ、この『上通り』のアーケード無し部分に集まる三軒のお店に向かう。まずは新進気鋭の、先ほど挨拶を済ませた「汽水社」へ。
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縦長で奥深く天井が高く、洒落た空間である。各ジャンルは品揃え&棚造りしっかりで、マイペースな雰囲気と若めの傾向がこの街ではなかなか新鮮な印象を受ける。奥のカウンター前のレコード軍艦島が異彩を放つ。他にも張り子の人形や、アンティークなショウケースや、オバQの鉛筆削りや、崎陽軒の醤油入れ『ひょうちゃん』などが売られている。散々何を買おうか悩んだ挙げ句、初っ端なのに古本ではない、件の醤油入れを500円で購入する。だがこれは、スタンダードな横山隆一作ではなく、何と原田治の絵入りなのである。うぅむ、これは嬉しい。こんな奇妙な物が出ていたのか。ミスマッチも甚だしいところが、全く持って愉快愉快。続いて「天野屋」(2008/12/21参照)に向かい、雑然とした空間と、頻出する古書をウハウハ楽しむ。
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ボール紙表紙本、おぉっ!九鬼紫郎の時代物!渡辺啓助!などと目の保養を済ませてから、河出市民文庫「上林暁集/山本健吉編」を300円で購入する。熊本に所縁ある作家の本が早々に買えたのが嬉しく、ちょっとした役目を果たした気分になる。「ちょっと地元喫茶店に入って一休みしよう」と岡崎氏が提案。賑やかなアーケードの下に入り、地下の喫茶店『珈琲人』に腰を据える。金沢碧のようなご婦人が一人で優しく切り盛りしているお店である。心と身体を小休止させた後に、「舒文堂河島書店」へ。
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来るのは三度目だが、相変わらず豊かな古本屋さんである。店頭+店内前部+店内中央部+店内後部と、まるで四つの異なるお店が連結しているような豊潤さなのである。特に熊本の歴史郷土関連はピカ一。店内前部の棚から、戦前の子供雑誌「幼年倶楽部」などからセレクトした物語をハードカバー合本にした私家本を千円で購入する。その後は近くのホテルにチェックインし、またも一休み(ちなみにこの間、岡崎氏はビールを飲み、サンドイッチで腹ごしらえし、トークに備えていた…)。ベッドに寝転び「上林暁集」の『天草土産』を読む。おぉ、旅先で収穫の古本を読み耽る幸せよ…。午後五時半、ロビーで岡崎氏と落ち合い、アーケード街をそぞろ歩きで抜け、地元デパート『鶴屋』の本館6階で開催されている「第50回鶴屋古書籍販売会」に突入する。ダンス衣装売場と紳士服売場と分け合った場所に、40弱のワゴンを並べ、右と左で老舗と若手がせめぎ合う感じの中規模の古本市である。
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老舗の郷土本の強度も凄まじいが、若手のデパート古本市には珍しい均一ワゴンも魅力的。「本々堂」が出す200均のワゴンから、雄山閣出版「虹男/角田喜久雄」(箱ナシ)を220円で購入する。買物を無事に済ませ、連絡通路からトーク会場へ向かい、午後七時から岡崎氏と縦横無尽に古本屋さんについて話しまくる。いや、やくたいもない古本屋大好きオッサンたちのバカ話をご静聴いただいた、三十人弱の素敵なみなさま、本当にありがとうございました。
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打ち上げでは新鮮なお魚をたくさん食べつつ、「河島書店」御大&若旦那「エターナルブックス」さん「タケシマ文庫」さん「汽水社」さん「グエル書房」さん「古書ワルツ」妹さん(2010/09/18参照。実家が佐賀で帰省中だった)「西海洞」さんらとワイワイガヤガヤ。そしてなんと、北九州からわざわざ古本乙女・カラサキアユミさんも駆け付けていたので、場は更に無闇矢鱈と古本話で盛り上がる。カラサキさんからは、古本市でさっき買ったばかりの、昭和の地元商店広告の裏に丁寧に書かれ綴られた郷土士伝を見せてもらう。もちろん目的は郷土士伝ではなく、その裏の広告チラシたちなのである。相変わらず古本&紙物好きにメーターを振り切っていて、期待を裏切らぬ活躍っぷり。また「西海洞」さんからは、「紙物の山の中に入ってたんだけど…」と、突然古い平成八年の中学生の生徒手帳をプレゼントされる。中を開くと、名前がなんと“古本”さん。嬉しいけど、私はこれをいったいどうすりゃいいんですか!と苦笑しながらありがたく拝受する。
posted by tokusan at 20:01| Comment(4) | 九州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
シワひとつない、まだピシッとシーツが敷かれたチェックインしたばかりのホテルのベッドで、数時間前に買ったばかりの古本を読むなんて、素敵すぎますね。車中ではなく、機内でポケミス(しかも古本!)を読み進める感じも!
Posted by かに座公園 at 2019年10月21日 00:09
どこにいても読書は楽しいものです。ポケミスではアメリカの下町を、上林集では一足先に島原半島を疑似体験しました。
Posted by 古ツア at 2019年10月21日 15:39
旅×古本、実に楽しそうですね。うらやましい限りであります。こちらは近場の古書クマゴロウ&根元書房を探索。クマゴロウは本当に良いお店ですね。沿線住民として末永く応援してゆきたいです。以前紹介されいた根元書房にも久しぶりに。うわさにたがわずカオス化する店内。店頭にてレコードを漁っていると、店員さんが来て無言で足元のお菓子の缶を開けるとそこにもぎっしりシングル盤が!当方の好物である雑多な世界音楽を中心に楽しく買い物させてもらいました。また個性的な古書店のご紹介よろしくお願いいたします。
Posted by としのすけ at 2019年10月22日 20:33
としのすけ様。旅×古本は、本当に楽しいです。もう、一生旅していたかったです。いや、せめて後四日は旅していたかったです!「クマゴロウ」もはや行きつけなんですね。これからも愛でて上げて下さいませ。
Posted by 古ツア at 2019年10月22日 22:04
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