
冬休みか…まるで冬眠みたいだな。来年改めて訪れることにしよう。というわけで脇道をス〜ッと抜けて「七七舎」(2019/05/06参照)へ。早川書房「ペイパーバックの本棚から/小鷹信光」を100円で購入する。ペイパーバックの歴史や概要と言った話ばかりではなく、学生時代から古本屋を回り、安値で買い集める楽しさや苦労や、そこで出会う人たちの話などが載っていて、古本屋好きにとっても興味深い一冊である。そして西荻窪で下車して、トコトコ『青梅街道』を伝う。『八丁交差点』近くの本屋さん「Title」では、第四回目の「2階の古本市」(2016/12/27参照)が開かれているのだ。狭い急階段をギチギチ上がると、平日午後なのに多くのお客さんが、狭い空間で譲り合い、時に独占しながら犇めいている。本のセレクトは回を増す事に女子度も増し、より先鋭化している感じである。その中で、「一角文庫」さんが田中小実昌をドバドバッと並べているのが大変見物である。筑摩書房「未来生活風景/ジョルジュ・デュアメル」福音館書店「年少版こどものとも いろいろないぬ/石井桃子」を計550円で購入する。市は2020年1/7まで。夜、水谷準の「瓢庵先生捕物帖」を読み進めていると、“北原案件”(シャーロック・ホームズに関するイラストや小説などの二次創作物のこと。イラストは、ディアストーカー・インバネス・天眼鏡・パイプなどを基本ラインとして判定される)っぽい一編が載っていたので、ホームズ研究家の北原尚彦氏に注進しておくことにする…果たして判定は?
そして本日は午前九時半に家を出て、まだ早朝の部類の神保町へ。今年最後のパトロールと洒落込んだわけであるが、御茶ノ水駅からアプローチして「三茶書房」(2010/10/26参照)の店頭ワゴンにへばりつくと、左から二番目の300均ワゴンに、文学全集のパンフレットがまとめられていた。丁寧に薄手のリーフレットを繰って行くと、風変わりな二冊を発見する。昭和十四年の渋谷「玄誠堂書店」の目録「玄誠堂新蒐書目 明治大正詩歌俳書文學絶版特殊本」と、昭和三十四年の上落合「文学堂書店」(2016/01/27参照)の目録「明治大正昭和文学書及各雜誌目録」である。

喜び勇んで計600円で購入し、お店のオヤジさんに包装紙で丁寧に梱包していただく。「玄誠堂新蒐書目」の表紙には、『澁谷區道玄坂』の文字がある。この時代は、宮益坂の上ではなく、道玄坂にあったのか。戦火をどうにか潜り抜け生き抜き、戦後に宮益坂に移ったのだろうか。それにしても昭和十四年と言ったら、軍靴の音がダッカンダッカン響き、のっぴきならぬ状況。あぁそれなのに、稀少詩歌書の売り買いがされていたなんて。啄木の献呈宛名入りの「あこがれ」が二十円!そして「明治大正昭和文学書及各雜誌目録」に目を落とすと、「文学堂書店」がどのようなお店だったのか、ようやく輪郭が朧げに見えて来た。しっかりした、文学稀少古書も扱うお店だったのか。作家五十音順に丁寧に並ぶ、本棚のような文字列を追いかけて行くと、見慣れぬ本がたくさん含まれている。ソログーブ「小悪魔」とか「捧腹絶倒 富村邸のクリスマス」、「家庭小説 小さなハート」、「全世界探検 爆裂艦隊」…「ヴェニスの商人」が「人肉質入裁判」という身も蓋もないタイトルに。明治の探偵小説も多数掲載。「ですぺら」はカバーなのか…。そんなものを見ていたら無性に古書が買いたくなって来たので、再び表に飛び出し、風の強さに逆らって逆らって、保谷の「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)へ。店内に引き込まれた均一棚に蟹歩きで接しながら、文寿堂「未明童話 赤い魚と子供そのほか」青磁社「舊詩帖/ポオル・ヴアレリイ」実業之世界社「縮刷解説 宇宙/三宅雄二郎著 青柳有美解説」を計330円で購入する。「宇宙」は明治時代の全知識と思考を駆使し、この世界を解明して行く壮大な書。思考は他の星の生物(つまり宇宙人や宇宙生物!)にも及び、さらに地球の“超人”や他星の“超人”にまで飛躍して行く。くぅ、刺激的。