2020年06月18日

6/18いつまでも覚えていよう。

お昼過ぎに曇り空の下の高円寺に流れ着くと、住宅街の中にある、たくさんの老人たちが昼間っから日常的に酒盛りをしている公園を発見し、衝撃を受ける。何というアナーキーな公園…。世の中には様々な社会的空間があるのだな。そんなことを感じながら駅近くに出ると、「都丸書店」(2010/09/21参照)が本日から営業を再開していた。店頭棚で創元社「秘境への旅/大阪読売新聞社文化部編」を掴み、手指を消毒してから店内で購入する。帳場には感染予防のためのビニールカーテンが下がっているのだが、店主がレシートを渡そうとすると、下に潜らせるのではなく、そのままビニール越しにぬぬっと突き出して来た。当然受け取れるわけがなく、程なくして気付いた店主は、「あっ、すみません」と下から改めて渡してくれた。こういうのは、慣れるまでがなかなか大変ですな。取りあえずは営業再開ありがとうございます。

歩いて阿佐ヶ谷に戻って「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に滑り込み、探偵小説関連古書棚に熱視線を放射する…よし、今日はこれを買って行こう!講談社小説文庫「平賀源内捕物帳/久生十蘭」である。表4に貸本屋の印が捺されているが、それでも破格の1050円で購入する。
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『中杉通り』に出て北に向かっていると、「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)のシャッターが半分上げられ、店内では二人のご婦人が整理作業を進めている。これは最近良く見かけていた光景なのだが、コメントタレコミにより「ゆたか。書房」店主はご病気で、ついにこのままお店を閉めることとなり、お二人は今週土曜日の本の搬出の準備作業をしていることが判明する。というわけで、今日がお店に入る最後のチャンスなのである。店内にしずしずと入り込み、お二人に声をかけると、閉店と搬出の事情を丁寧に教えていただく。その上で「よろしかったら、ぜひとも本を見て行って下さい」とのことなので、お店とお別れをするために、作業の邪魔をせぬよう棚を見て行くことにする。…あぁ、そうか、もうオヤジさんとは会えないのか。お店にちょっと通ううちに、いつしか道で出会うようにもなり(本当に何故か良く『中杉通り』で擦れ違ったのだ)、お互いに照れながら会釈を交わしたなぁ。小さなお店だったけど、この棚の硬さがいつでも心地良かったなぁ。などと感慨に耽りながら、最後の一冊を選ぶ。カバーナシの暮しの手帖社「燈火節/片山廣子」を“お気持ち”価格の500円で購入。お二人にオヤジさんへの「どうかお大事に」の言伝を頼み、お店を後にする。このケヤキ並木の広い通りに、小さな古本屋さんがあったことを、いつまでもいつまでも覚えておくことにしよう。…あぁ、俺の頭の中は、次第次第に、忘れてはいけない古本屋さんの思い出で、いっぱいになり始めている…。
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posted by tokusan at 15:53| Comment(2) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ひさーしぶりに気になってブログ読ませていただきました。

ゆたか。書房さん、ずっとシャッターが下りていて気になっていたのですが閉店が決まったのですね。古ツアさんのこちらの投稿で知りました。
店主さんのお人柄がとっても好きでした。とても謙虚で、古本屋という働き方がなかったら、平成の世の中からはじき出されてしまったんじゃないかと思うくらい大人しくて、誠実なお人柄でした。
お名前は存じ上げませんが、書評家の女性がこちらへ書評済みの本を引き取りに出されていたそうで、良い本があったように思います。
足繁く通うほどではありませんでしがが、こちらでどの本を買ったかは覚えています。

私事になりますが、阿佐ヶ谷で生まれ育って、年配の方からお住まいはどちら?と尋ねられて阿佐ヶ谷ですと答えると、良いところにお住まいで、と答えられることが何度もありました。ゆたか。書房さんもその良い阿佐ヶ谷の名残の1つだったと思います。

ねじめ屋さんもなくなって、川口屋さんもなくなって、竹多屋さんもなくなって、もう自分の知る古き良き阿佐ヶ谷の姿は本当に痕跡程度になりました。うさぎやさんが頑張ってくれているくらいでしょうか。

書原が閉店した、、、と感慨にふけったのが昨日のことのようですが、跡地には東京に乱立するプラウド系のマンションが建ちました。庶民的で歩きやすかったミニストップも通路の狭い見た目だけきれいなお店になってしまいました。

新しくいいお店も参加してくれていますが、昔の阿佐ヶ谷を知る身としてはもう阿佐ヶ谷にこだわって住み続けなくてもいいのかな、と思い始めてしまいます。

かといってほかにどこにいく?という話なんですけども。

老人たちの半分ちょいくらいの年齢なんですが、いっそ老人たち世代に生まれて、老人たちと一緒に馬橋公園あたりでワンカップでもすすりながら古本談義したいです。
Posted by アサガヤン at 2020年07月11日 19:15
熱いコメントをありがとうございます。「ゆたか。書房」は覚悟はしていましたが、本当に突然の別れになってしまいました。最後にオヤジさんと挨拶をしたかった…。街の変化は急激で、色々惜しむことが確かに増えてきましたね。まぁ寂しいですが、それでも定点観測して変化を見届けて行くのも、なかなか乙なものです。私も阿佐ヶ谷周辺で暮らし始めて、もう三十年近くなりますが、まだしばらくは、一町民として、関わっていければと思っています。ここが好き!とかはっきり言えないのですが、なんとなく居心地がいいんですよねぇ。
Posted by 古ツア at 2020年07月13日 18:33
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