2020年10月14日

10/14『グレイシイ・アレン』と東天鬼について調べる。

基本的には安静にしているのだが、やはり古本は買いたくなり、足の痛みをこらえながら、ガックリガックリ近所の「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)へ。店頭棚に、店内にいた「別冊宝石」が五冊ほど押し出されているではないか。フムフムと吟味して、岩谷書店「別冊宝石41号 世界探偵小説全集 ヴァン・ダイン篇」「イギリス本格派三人篇」「本格派傑作8人集」の三冊を計330円で購入する。「ヴァン・ダイン篇」には『誘拐殺人事件』『グレイシイ・アレン』『巨龍殺人事件』が収録されているが、『グレイシイ・アレン』は植草甚一訳である。植草訳の『グレイシイ・アレン』、つまり『グレイシイ・アレン殺人事件』は、二〇一五年に盛林堂ミステリアス文庫から、“植草甚一翻訳コレクション”として『真冬の殺人事件』とともに覆刻されている。だがそちらの底本は一九三九年の雑誌「スタア」である。こちらは戦後の一九四九年刊行。つまり「スタア」の掲載された原稿を、ほぼそのまま流用したのだろう。中ページに載っている江戸川乱歩の『ヴァン・ダイン小傳』に目を通すと、文末に戦前戦後の邦訳作品がリストアップされている。『★「グレイシイ・アレン殺人事件」(植草甚一)「スタア」昭和十四年二月一日より四月十五日号まで。★同題(同氏補訳)本誌掲載。』とあるので、訳にはいくらか変動があるのかもしれない。
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ところで先日記事にした謎の探偵小説作家・東天鬼であるが(2020/09/15参照)、当方所蔵の大盛堂書店「探偵秘録 修羅の巷」(昭和二年)と盛林堂書房所蔵の香蘭社書店「淫魔捕物帳」(昭和十一年)を引き合わせて比べてみると、収録作はまったく同じ作品で、しかも同じ紙型(ノンブルや肩に手を加えられているが、本文の書体や字組は同一であった)を使用し、十年の時を経て出版していることが判明した。この二冊の他にも「蠢く処女」という新潮社の新作探偵小説全集のデザインをパクった一冊があるのだが、これもまったく同じ本と推察される。「淫魔捕物帳」の目次で、『淫魔捕物帳』が『蠢く処女』になっているのだ。どうやら東天鬼は、同じ作品をタイトルを変えて変えて出版していた作家らしいことがわかって来た。そしてさる情報では、北原尚彦氏が大正時代の東天鬼本を所蔵しているらしいので、何か新たな事実が判明することを期待して、いつの日か二冊と引き合わせてみたいものである。
posted by tokusan at 18:46| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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