2021年10月15日

10/15古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第九章】

すでに昨日のことである。朝七時前に家の近くで、ハザードランプを焚いて待機していた盛林堂号に飛び込み、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店主・小野氏と奥さまに挨拶しつつ盛林堂・イレギュラーズに変身。日下三蔵邸の期間限定古本移動大作戦に向かう。やけに車の多い環八や高速をどうにか突破し(ただし途中の高速ICで話に夢中になり過ぎて出口を間違うアクシデントあり)。午前十時前に現地に到着。すでに活動を開始していた日下氏と、一時倉庫のアパートにて合流する。先日の地震でも被害ナシと言うので中に入ると、おぉ!本当だ!全然本の山が崩れていない。壁などを上手く利用し、高く積まれた本の山脈は、揺るぎなく整然と聳えたっているのだった。もちろん多少の修正は施したそうだが、それでもこの成果は誠に素晴らしいものである。そんな風に各所を確認していると、何やら見慣れぬ本がいつの間にか棚の上に出現していた。光文社痛快文庫「冒險探偵 黒星團の秘密/大下宇陀兒」…しかもピンピンの新札のような美しさ…いつの間にこんな本が湧いて出たのだろうか?
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改めて日下邸書庫の深甚さを経験しつつアパートを後にし、本邸へと向かう。本日の重要ミッションは、本邸書庫の入口に長年立ちはだかる本の山を除去し、アクセスをスムーズにしつつ、各通路に入れるようにすることである。書庫入口スペースが多少広いのをいいことに、本を積み上げ始めたのが運の尽き。たちまちその山は高く厚く広がることになり、いつしか書庫への侵入を阻むまでに成長してしまったのである…まるで鍾乳石のようだ。「あそこにあんなに積むんじゃなかった。早めに棚を入れるべきだった…」と悔やむ日下氏を鼓舞し、早速作業に取りかかる。まずは日下氏がその山に取り憑き、本邸に残す本とアパート倉庫に運ぶ本とに仕分け、本邸本は仕事場に待機する私に手渡されて積み上げられ、アパート本は玄関廊下に待機する小野氏に手渡され積み上げられることに決まる。というわけで、渡された本を仕事部屋の中央に注意深く積み上げて行く。
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…何故注意深く行うのかというと、本がスゴい本ばかりなのだ!鷲尾三郎・三橋一夫・飛鳥高・香山滋・日影丈吉・水谷準・都筑道夫・高木彬光・九鬼紫郎・今日泊亜蘭…それらのレア本のオンパレードなのである。都筑訳(伊藤輝夫名義)の「銀のたばこケースの謎」が二冊も出て来たじゃないですか!うぎゃ〜〜〜〜ア!香山の「科学と冒険」が二冊っ!ななななななな、なんですか!この同シリーズの「ジャングルと砂漠」って!…う〜ん、気絶しそう。
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…などと大騒ぎしながら、およそ三時間、悪魔の古本の山と三人で格闘した結果、山が消え去り、奥の通路が見えるようになって来た。だが、通路には崩れた本などが未だ蔓延っているので、まだ足を踏み入れることはできない。そこで小野氏が切り込み隊長となり、足下の本を運び出しつつ仕分けしつつ、ブルドーザーのように通路を開拓して行く。
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途中、日下氏のお母様が挨拶に現れ玄関での紙ゴミを受け取る四人体制になる出来事も。そして一時間、ついにすべての通路に入れるようになったのである。「バンザ〜イ」と開通を喜ぶ四人。試しにズイズイ入り込んでみると、やはり棚はスゴいことになっていた。乱歩の「殺人万華鏡」!博文館文庫「人間豹」が二冊!あぁっ!ここにも「銀のたばこケースの謎」がある。しまも四冊!…悪夢だ…。岡田鯱彦が残存する本タワーの中に多数紛れ込んでいる!南澤十七「新奇嚴城」が計三冊!うひゃぁ、大河内常平タワーの後に、大量の水谷準が控えている!などともう大騒ぎ。
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だがいつまでも喜びに満ちあふれている訳にはいかない。玄関廊下にあふれ出した本を箱に詰め、アパートに運ばねばならぬのだ!と書庫に後ろ髪を引かれながら作業する。それにしてもよくまぁ、この大量の本たちがあの場所に収まっていたもんだ。素早く二十箱ほどのダンボール詰めを作成し、アパートに運んだ後、駅近くにてお寿司昼食。午後三時半、今度はマンション書庫に姿を現わす。玄関の棚の一部が地震で壊れたのか、傾きが酷くなっていたので応急処置を施し(ちなみにこちらも地震の被害はほとんど無かった…改めてスゴい!と感心する)、遅めの午後のミッションに入る。それはお風呂場にプールしてある大量のコミックスを、リビング中央の小スペースに運び出し、同じ作品をまとめて行くというもの…だが本の運び出しは単純作業で簡単なのだが、本を揃えるのがすぐさまとてつもない難行だということがわかり、千日手に入ってしまう。運び出すのは私の役目だが、揃えるのは日下氏と小野氏の二人がかり…「◯◯の一巻がありました。二巻はありませんか?」「五巻ならあります」「◯◯見ませんでしたか?」「こっちにはありません」「◯◯をそこで見たような気がするんですが」「××ならありますよ」……まるで数百種の札で神経衰弱をやっているようなものである。
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一時間ほど作業して、さすがにこれはこの短時間では無理だと悟り、作業は次回へ持ち越しとする。その後、玄関左側にあるCD部屋&書庫に突入し、必要とする本の発掘に入る。二人は奥の奥に入り込んでしまったので、私は入口付近で待機し、本とCDの混合山をほぇ〜と眺めることにする。「あっ、日下さん。柴田錬三郎の「狂気の白夜」がありましたよ」「白いヤツですか?黒いヤツですか?」「函が黒です」「やった!探していたヤツです。出しておいてください」…棚から牡丹餅の発見である。さらに山の下層に目を凝らしていると、まるで見慣れない裸本が一冊あるのに気付いてしまう。とても気になったので、慎重に山を切り崩し、手を伸ばしてみる。グランド社「現代探偵傑作集」…中を開いてみると、大正十三年刊の、田中早苗の翻訳短篇探偵小説集であった。聞くと小野氏も見たことのない本だと言う。ウ〜ム。読んでみたい。

そんな風に発掘を終え、アパートを経由して本邸に戻った頃はすでに真っ暗。だが、やはり開通した本邸書庫は、底無の魅力を持っていた。しばらく三人であちらこちら観察するが、当の日下氏が一番喜んでいる模様。「ここにあったのか」「こんなの持ってたのか」「げげげ」「ウハハハハハハハハ」ととにかくニコニコえびす顔なのである。いやぁ、まさに悲願の書庫開通なのである。よかったよかった。そして今日の作業のお礼にと、桃源社「幻の女/田中小実昌」東都書房「首/山田風太郎」ベストブック社「戦慄ミステリー傑作選 死体消滅/山村正夫編」をいただきつつ、さらに「何か他にないかな…」と探す日下氏に、「ロマン・ブックスの山風の「青春探偵団」がダブっているので、これをいただけませんか」と書庫棚から取り出してリクエストする。「あぁ、いいですよ、でもそこのは一番キレイなやつですから、こっちにしてください」と仕事部屋に引っ込んだ日下氏が抱えて出て来たのは、六冊の「青春探偵団」であった。
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ギャフン!ありがたく一冊を拝受する。風太郎学校・日下ゼミの生徒として、読み進めます(ちなみに先日いただいた「誰にもできる殺人」は読了し、日下氏に「山田風太郎版「めぞん一刻」ですね」と感想を伝え、苦笑いされる)!その後は焼肉食で書庫開通を盛大に祝い、古本屋話に楽しく打ち興じ、午後十時過ぎに西荻窪に帰り着く。
posted by tokusan at 07:59| Comment(4) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
風太郎学校の日下ゼミに先日から在籍されている古ツアさんに質問です!これまで様々な作家の本を読んでこられたはずの古ツアさんが、あまり山田風太郎を読んでこられなかったのには何か理由がおありなのですか?こんな質問をする僕は、全く読んだことがないのですが!!
Posted by かに座公園 at 2021年10月15日 17:49
風太郎は、今まで私の精神年齢が低過ぎたせいか、描かれる強烈な毒と人間の欲望の生々しさに、あまり馴染めなかったんです。ところがさすがにこの年になると、それも受け入れることができ、楽しく読めるようになってきた…とまぁ、簡単に話すとそんな次第です。まぁ、とにかく面白いですよ、山田風太郎!
Posted by 古ツア at 2021年10月16日 17:32
お答えいただきありがとうございます。そうだったのですね!今までなんとなく敬遠してきているのですが、その漠然としたなんとなくが、古ツアさんのおっしゃる毒と生々しさなのかもしれません。そうですか!おもしろいですか!
Posted by かに座公園 at 2021年10月16日 20:46
さぁ、ともに読み始めましょう!
Posted by 古ツア at 2021年10月17日 17:29
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