2022年01月01日

1/1去年同様“ジゴマ”に驚かされる。

昨晩は八紘社杉山書店「劔の系図/横溝正史」(横溝の戦中昭和十九年出版の、戦意高揚防諜ミステリ短篇集。銃後の護りを推奨する「玄米食夫人」「ナミ子さんの一家」がミステリ+明朗小説のカタチを採っており、ギャグも冴えているので、横溝にこんな一面があったのかと感心してしまう)を読了後、やはり年越しは詩だろうと、読みかけのアルス「槐多の歌へる」に手を伸ばす。1917年の日記部分からスタートすると、たちまち十二月に差し掛かり、百四年前の年末と現在の年末が重なり合い、ツラツラ続く記述に奇妙な親近感を覚える。そして1918年。『ある嵐』という詩を読み進めていると、『惡者は薔薇の園に隠れて泣けり 美しく可愛ゆく照る物の中に その身を埋めてひた泣きに泣く この惡物こそわれなりき ジゴマよりも惡き者』という一節が出現する。おぉっ!これこそは、村山槐多も大正時代初めの『ジゴマブーム』に巻込まれた証拠!……って、あれ?以前にも同じような気付きを体験した覚えが…なんだこのデジャビュは…と感じてしまったので“ジゴマ”をキーワードにおのがブログに検索をかけてみると、なんと去年の大晦日に、まったく同様な体験をしていたことが判明する。2021/01/01『2021年の古本始め。』に、創元文庫「宮澤賢治童話劇集」を読んでいると『なるほどヂゴマと書いてあります。』というセリフを見つけ『うひゃっ!宮澤賢治の作品に、“ヂゴマ”なんて探偵小説の主人公が出て来るなんて!賢治も大正時代初めの、いわゆる『ジゴマブーム』にちゃんと巻込まれていたことを想像させる一節である』などと感想を漏らしているのだ。こんなことがあってよいのだろうか。何という一年越しのシンクロニシティ…それにしてもやはり『ジゴマ』恐るべし。宮沢賢治と村山槐多の作品に登場しているなんて、非常に羨ましい強烈な悪漢ぶりである。

などと楽しく年を越し、今日はお屠蘇ですっかり酔っ払ってから、中野の「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)に向かう。もちろん古本初めをするつもりなのだが、すっかりアルコールに酩酊している状態は、古本を買うには危険と言わねばならない。何故なら意識が緩まって気が大きくなり、『いいやいいや、買っちゃえ!』と財布の紐を盛大に緩めてしまい、素面では葛藤躊躇するはずの本を、勢いで買ってしまう恐れがあるからだ。まぁそれがわかっていたら古本など買いに行かなければよいのだが、これが私にかかった呪いであるからしょうがない。そんな気持ちをフワフワ心の中に漂わせながら、『中野ブロードウェイ』四階の、赤い棚の間をフワフワ飛び回る。『どうしても読みたい本を買おう。どうしても読みたいヤツを…』と呪文を唱えながら、二周ぐらいして目に留まったのは、六興出版局「遺書と銀鉱/F・グルーバー」である。綺想社「パルプ地獄變/フランク・グルーバー」を読んで以来、グルーバーの作品をとにかく読みたくてしょうがなくなっていたところである。日下三蔵氏の書庫で、見たこともない「叛逆者の道」なんてレア本がダブっていて、『読みたぁ〜〜〜〜〜い!』と心底で欲望が沸騰してしまったほどである。値段を見ると四千円……ふぅ、まずは落ち着いて…いや、もうそんなことは必要ない。もう読みたいなら買っちゃえばいいんだ。なんたって目出度いお正月だよ。よし、買うぞ!と予想通りに恐れていた結果となり、税込の4400円で購入する。さぁ、年が明けました。古本も買いました。今年もよろしくお願いいたします!
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※「日本古書通信 2022年1月号」のリレー連載『ミステリ懐旧三面鏡』は一周して、盛林堂・小野氏が東京書籍「幻影の蔵 江戸川乱歩探偵小説蔵書目録」について、思い出と考察を重ねております。そしてさらに岡崎武志氏の長期連載『昨日も今日も古本さんぽ』に驚くほど私が登場しておりますので、合わせてお楽しみいただければ幸いです!
posted by tokusan at 16:32| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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