麗らかで暖かな花曇りの日曜日。まだ確定申告も終えていないのに、コメントタレコミにあった古本屋さんを見に行くことにする。件のお店は、西武池袋線・ひばりが丘&保谷と西武新宿線・田無を各頂点とする三角地帯の中心辺りに位置するとのこと。どうやら一番近いのはひばりが丘らしいが、地図で教えられた住所『住吉町1-6』を確認すると、西武柳沢からもどうにか歩いて行けそうなことがわかる。そこで電車に揺られて西武柳沢に出て、北口から平坦で空の広い住宅街を歩き通し、三十分弱で目的の住所にたどり着く。ひばりケ丘からは南東に位置する『フラワー通り』である。住吉町一丁目に沿うように、東北方面に移動して行く。すると6番地に突入。『宝晃院』という立派なお寺が現れた…この辺りか…と注意してさらに進むと、あぁっ!古本屋さん発見!しかも住吉町ではなく、この『フラワー通り』を挟んだ反対側の泉町二丁目にお店はあった。何はともあれ、こんな住宅街のお店にたどり着けて良かった。そして開いてくれていて、本当に良かった。スペイン風瓦屋根が一階軒に巡らされた、商店建築である。ウィンドウに下ろされた水色のシャッターが鮮やかだが、看板などは何処にも見当たらない。店内に本が並んでいるのは外からでも確認出来る…これは、入って良いのだろうか?と一瞬躊躇するが、結束本を持った、荻上チキ風青年店主の姿が見えたので、思い切って入ることにする。店主と目が合った瞬間に「こんにちは」と声をかける…目礼されたので、入っても大丈夫なようだ。パッと見、手前が小さな店舗で、奥は作業場兼倉庫となっている。この様子から見ると、ネットや通販がメインで、店舗部分では安値の雑本を販売する営業形態のようだ。結束本や所々に置かれた頑丈な木箱から察するに、組合に入っているお店なのだろう。正面真ん中の帳場を挟み、両翼に四本のスチール棚が置かれている。文学・思想・世界・カルチャー・鈴木志郎康・図録・大判ビジュアル本・函ナシ古書・写真集・文庫・児童文学・実用…ほとんどが千円以下の安値だが、並びにはスーッと芯が通っており、何かありそうな予感を覚えさせてくれる。まめに通えば面白い物が掘り出せるのではないだろうか。だが、飾り棚がまだ開いたままだったり、棚にも少し空いている部分があるので、まだまだ準備中と言った感じである。角川文庫「キング・コング/エドガー・ウォレス メリアン・C・クーパー」第一書房「森の小径 若山牧水隨筆選集」を購入するとともに「このお店はいつ出来たんですか?」と聞いてみると、元は通販専門で今年の一月に出来たのだが、買取が集中していたのと、あまりにも寒い日が続いていたので、ようやくここ最近開けるようになったことを教えてくれた。なるほど、それではまだまだこれからカタチになる前の状態なのか。「お店の名前は?」とさらに聞くと、「まだお店の名刺を作ってないし、看板も出していないんですが…」と、仕事の名刺を「“きなり堂”と言います」差し出してくれた。店名通りに、生成りの手作り感ある布のような紙に印刷された名刺であった。少し離れているが、保谷の「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)とコンボで訪れれば、充実した古本買いが出来そうな予感。しばらくしたらまた行きます!
家に帰ると、昨日ポストを見ていなかったので、「日本古書通信」の最新号が届いていたのに気付く。リレー連載『ミステリ懐旧三面鏡』は北原尚彦氏の番。吉祥寺の今は亡き古本屋さんで、ホームズ関連書を掘り出す十六才の自分に、思いを馳せておられます。

