極悪な風が吹き抜ける炎暑の祖師ケ谷大蔵に、午後二時前に流れ着く。駅に戻りがてら、下北沢から移転して来た棚貸し本屋+新刊書店の「BOOKSHOP TRAVELLER」を見に行くことにする。駅からは北口に出て、西に向かって建つウルトラマン像に挨拶しながら『ウルトラマン商店街』を北に進み、二本目の脇道を東へ。すぐに目に入る、黒地に白文字の『本』の軒看板が目印である。店頭には安売本の木箱が数箱並び、立看板には『小さな本屋が集まった本屋に出会うための本屋あります』などと書かれている。自動ドアから店内に進と、すでに多くのお客さんが、小さな本屋と真剣に対峙している。左右の壁とフロア中央に白木の棚が組まれ、ディスプレイ棚や特価本棚も存在するが、およそ百以上の小さな本屋が軒を並べている。好みの新刊・同人誌・古本を並べ、テーマやコンセプトは人それぞれだが、その多くは新しい本で、全体的に端正で、とても清潔な棚造りが為されており、細かな細かなセレクトブックショップと言った趣きである。だがそれでも中には異端がおり、J・P・ホーガンだけで構成していたり、クトルゥで埋め尽くしていたり…お、ヒラヤマ文庫の探偵小説を並べている棚もある。「七月堂古書部」も出店しているのか…などとぐるぐる通路を巡り、文学と音楽の書店から、彩流社「現代作家ガイド3 ウィリアム・ギブスン」を350円で購入する。ちなみに二階はギャラリースペースとして使用されているが、そこにも本が並んでいるとのことである。さて、私にはどうしても古書のエキスが必要なので、祖師ケ谷大蔵駅から下北沢駅に向かい、若者だらけの人波を巧みに擦り抜けて「ほん吉」(2008/06/01参照)へ。右側の店頭棚は数人のお客さんが張り付いているので、左側から見ることにする。するとたちまち、半ページの破れがあり函ナシだが、アルス「現代美術全集16 実用カット図案集」が550円!HORIZON PRESS「THE SOLOMON R・GUGGENHEIM MUSEUM/FRANK LLOYD WRIGHT」が550円!と店頭にしては大物を手にしてしまい、ほどなくして空いた右側へ。フムフムフムと見て行くと、棚の最下段に眼を疑う本が挿さっていた。講談社 世界の児童文学名作シリーズ「迷探偵スベントン登場/オーケ=ホルムベルイ作 眉村卓・ビヤネール多美子 竹俣共訳」である。
おぉ、迷探偵スベントン!……って、知ってるスベントンシリーズとは違う本じゃないか。同じ講談社から『私立探偵スベントン』シリーズが発売されているのだが(ちなみに日下三蔵氏邸にはシリーズの揃いが所蔵されている(2021/09/02参照)、どうやらこれは単発もののようだ。函の背が割れているが、それでもちゃんとあるのはポイントが高い、そしてさし絵は湯村輝彦が手掛けており、口絵と本文ページに、洒落たテリー・ジョンソンのイラストが縦横無尽に踊りまくっている!これは感動の出会いである。実は私は十一年前に、福島県磐城棚倉の「BOOKランド棚倉店」(2012/12/21参照)で、函ナシの講談社「「私立探偵スベントン おばけ屋敷と四つの怪事件/ホルムベリイ作・眉村卓文」を見つけ、百円で買っているのだが、当時は貴重な本と知らずに、一読しただけで「フォニャルフ」に並べてしまい、すぐさま売れてしまった後に、盛林堂・小野氏から「スベントン、めったに出て来ない本なんだよ」と教えられ、悔悟悶絶したことがあったのだ。あれから幾年月…違う本ではあるが、ようやくまたスベントンに出会えたわけだ。今度は大事にしよう!と心に誓い、計1210円で購入する。
折込口絵はこんな感じ。

