すると店主が「隣りの二階に新しい本屋が出来たんですよ。すぐ隣りの急階段です。よろしかったら行ってみてください」と教えてくれた。そこで表に出てお店の横に目をやると、立看板が出ており、『日記・隨筆・文芸・写真など 本・記録の手しごと 新刊・古書あります 階段、上がって2Fです』と書かれている。その階段を見ると、空間が細く恐ろしく急角度の、階段というよりは梯子段なのであった。
こりゃぁかなりの難所だ。恰幅の良い人や上背のある人は、上り下りに相当難儀することだろう。早速手を掛けて這うように上り始めると、早速ゴチンと頭をぶつけてしまう。そして苦労して二階に這い上がり、短い廊下を少し進むと、突き当たりには三十冊ほどの古書が並ぶ百均箱がまずは出迎えてくれた。ちょっと良さげな景色なので、しばらくゴソゴソと真剣に漁り、二冊を掴み、右手のドアを開けていよいよ店内へ。頭上は木造の屋根や梁が丸出しだが、美しく懐かしい空間である。左壁には小さな棚が一本置かれ、ドア脇の壁一面は棚になっており、主に写真関連やセレクト文学の新刊がズラッと並んでいる。窓際や右奥にも棚が置かれ、フロア中央にはまるで富士塚のようなディスプレイがそびえ立ち、その裏にメガネのスマートな今時文学青年が隠れている。棚の所々に古本は混ざっているようだが、一番固まっているのは、入って正面奥の棚である。新刊類には目もくれず、その棚前にしゃがみ込み、熱い視線を注ぐ。文学・ルポ・資料・写真集…古本の値付はおしなべて安かったので、ここでも二冊選ぶ。海口書店「くだん草紙/小杉天外」騒人社書局「名作落語全集第四巻 滑稽怪談篇」實業之日本社「奮闘活歴 裸一貫から」鐵十字社「ヒトラー總統演説集/工藤長祝譯」(裸本。『東京池袋 真砂書店』の古書店ラベルあり)を計1040円で購入する。古書は少ないが、その質は良かったので、また見に来ることにしよう。精算を済ませると店主に「帰り、急なんで頭をぶつけないように気をつけてくださいね」と言われたので「上がる時にもうぶつけてしまいました」と答える。その帰りは、急階段に身を滑らせるようにして、慎重に一段一段下って行くが、途中で結局ゴチンと頭をぶつけてしまう。痛くはなかったので、何だか妙に愉快な気分になる。


店員さんやアルバイトさんも多くは継続とのことです。
これは朗報ですね。