2019年12月11日

12/11古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第五章】

昨日は盛林堂・イレギュラーズとなり、十一月に続き(2019/11/27参照)近々の日下三蔵邸書庫整理へと赴く。午前七時半に西荻窪に馳せ参じ、いつものように盛林堂・小野氏の操る盛林堂号で、およそ一時間半のドライブ。その車内で話のついでに、最近妙に気になってしょうがないフランス映画の『シティーハンター』について、超映画好きの小野氏に聞いてみると、原作への愛に溢れた面白い作品だと教えられる。とここからその話が呼び水となり、延々アニメやマンガの話に終始することとなる。『シティーハンター』『彼氏彼女の事情』『ザンボット3』『FATE』『化物語』『ガンダム』『イデオン』『巨神ゴーグ』『アリオン』『ロスト・ユニバース』『マジンガーZ対暗黒大将軍』『サイバーフォーミュラー』『マクロス』『エウレカセブン』『血界戦線』『キルラキル』『宇宙戦艦ヤマト』『幽々白書』などなど…まぁ九割は小野氏が話しているのだが、私は盛林堂・イレギュラーズなので、そのアニメへの熱い想いを存分に受け止めてあげねばイカンのである。というわけで、現地で無事に日下三蔵氏と合流し、まずは書庫マンションへと向かう。前回盛大に片付けたリビング書庫に入ると、おぉ!大量の文庫とノベルスがすでに仕分けられ右壁際が空き、おまけに大量の組立前カラーボックスが鎮座しているではないか!
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こういう素晴らしい状態だったので、午前中は小野氏がカラーボックスの組み立て、日下氏は仕分けた文庫&ノベルスの堅固な山造りと完成したボックスに本を分類収納ということに。私はと言えば、ほぼ日下氏の助手となり、分類した本を移動させたり、日下氏が棚に収め易いよう、さらに細かく出版社別やジャンル別に下分類する作業に従事する…これでは盛林堂・イレギュラーズというより、日下三蔵・イレギュラーズである…いや、なんでもいたしますよ!と懸命にコマネズミのように忙しく立ち回る。
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そうこうしているうちに、奥の和室の壁際には、物凄い物量の文庫&ノベルス建築が出来上がって行く…スゲェ。
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さらに出来上がり始めたボックスを、リビングの壁際に新たに設置し、そこに「探偵倶楽部」や「探偵実話」やポケミスなどを並べて行く。日下氏が「くそっ、全然ダブらないぞ」とおかしなことを呟いている。
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これはダブらないのが悔しいのではなく、ダブらないと本が減らせないから悔しがっているのである…複雑怪奇だなぁ。とは言ってもやはりダブりは見つかる。クライムクラブの「歯と爪」などは、箱帯付き・帯ナシ・箱ナシの奇怪な三種類のダブりが見つかった…後は箱ナシ帯付きがあれば完璧だな…。
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およそ四時間ぶっ続けで作業し、小野氏は組立と仕分けた本の結束を終わらせ、日下氏は仕分けた本の棚入れまで漕ぎ着けた。三人ともお腹がグゥグゥ鳴ってしまっているので、ひとまず昼食を摂りに街へ。いつものように美味しいお寿司でお腹を満たし、覚悟を決めて後半戦への作業に移る。向かう場所はマンション書庫ではなく、本邸和室書庫。ここに詰まっている本をドカドカと運び出し、だいぶスペースの開いているマンション書庫へ移し替え、本の掘り出しを進めるとともに、本邸の機能復帰の第一歩にするつもりなのである。作業工程はこうだ。まず日下氏が玄関横の駐車場側の窓を外から開け、外から室内に満載の本を掘り出し取り出して行く。それを私が受け取りエッチラオッチラ駐車場へ運び、小野氏が盛林堂号の荷台を利用して短期輸送用に軽めに本を結束するというもの。取りあえずは盛林堂号満載の量まで運び出すことに決める。
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作業を開始してみると、これがなかなかの難物。なにしろ和室に積み重なる本の量が尋常ではないのだ。いくら運び出しても、いくら結束しても、全然進んだ気がしない…ハァハァ、いったいこれはどうなるんだ。結局二時間半作業するが、目算でまだ六分の一くらいしか運び出せていないようだ。それにしても日下氏は「ここはコミックと雑誌しかないんですよ」と言っていたが、大阪圭吉「海底諜報局」(もちろんダブりである)の裸本が出て来るわ、松本零士が挿絵の「宇宙からきたひる」が飛び出すわ、宮敏彦の付録本がたんまり見つかるわ……あぁ恐ろしい。そして薄闇迫る中をマンション書庫に移動し、仕分け済み結束本を外に一旦プールして場所をあけた後、三人リレー方式で素早く運び出して来た本を書庫内に運び入れて行く。相変わらず玄関と廊下が蟻の門渡り状態なので大変だが、ここさえ突破すれば後はスムーズなのである。この作業をおよそ四十分。続いて仕分け済み本を車に積み込み、後はリビング書庫の新棚に、仕分けたノベルスを丁寧に作家五十音に収めて行く作業に突入する。
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その過程で、やはりと言うか当然と言うか、恐ろしいほどのダブり本が次々と発見される、特に東都ミステリー「光の塔」は十冊に迫る勢いである。香山滋の「地球喪失」も三冊…そして新たにまたもやの「歯と爪」がぁ…日下氏がとても嬉しそうなのは、気のせいであろうか。
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いつの間にやら時刻は午後六時半。この時点で三人とも疲弊し、昼間に摂取した寿司エネルギーも使い果たしているのだが、最後に本邸和室書庫に再び向かい、少し調整整理を施して、次回整理の端緒をつけておくことにする。現地作業終了は午後七時半。みなさまお疲れさまでした。夜はいつものように焼肉をジュウジュウ焼いて英気を養い、午後十時半に西荻窪に帰り着き、本を降ろしてようやく作業終了。そんな過酷な作業の本日の報酬は、色々ダブり本をいただいたのだが、一番嬉しかったのは誠文堂新光社「怪奇小説叢書 アメージング・ストーリーズ1」のカバーナシである。
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ちなみに1巻は三冊ダブっていました…。さらに日下氏激推しの創元推理文庫「あなたならどうしますか?/シャーロット・アームストロング」がとても気になる。「これ、スゴく面白いんです。面白いから、見つけると買っちゃうんです」と、とても不思議なことを言われるが、とにかくそんな理由で買われた本なのだから、まずは読んでみることにいたします。さぁ、段々と健全さを取り戻して行く日下三蔵氏の書庫!もう魔窟とは言わせない!作業は来年に続く。
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2019年11月27日

11/27古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第四章】

すでに昨日のことである。盛林堂・イレギュラーズとして、まだシャッターの上がっていない西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店頭に、午前七時半に立つ。およそ一年ぶりの日下三蔵氏邸の片付けに、うんとこやっとこ駆り出されるのである。程なくして、今日のハードワークのために昨晩の飲みを控え目に抑えた盛林堂・小野氏が現れ、ともに備品を抱えて盛林堂号の待つ駐車場へ向かう。その途中、二人とも同じ衣料量販店の同色同タイプパーカーを着ていることが判明し、期せずしてペアルックであることを認識する…まぁ、今日これが盛林堂の仕事ユニフォームということで…お互いにそうムリヤリ納得し、盛林堂号に乗り込み、いざ神奈川県某所へ。時々降る小雨と、強い風の中を突っ切り、一般道路と自動車道路を疾走して、およそ一時間半で目的地着…予想以上にスムーズだったので、ちょっと早く着いてしまった…というわけでマックで少し休憩した後、頃合いを見計らい日下氏に連絡を入れる。すると今日は本邸には寄らずに、直接マンション書庫を目指すことに決まる。数十分後、コンビの駐車場で日下氏と合流。書庫と同道する。一年ぶりのご対面である。あの通路を開通し、奥の和室まで片付けた魔窟と書庫の中間のような空間は、いったいどうなっているのだろうか…。「さぁどうぞ〜」。日下氏が鉄扉を開き、資料が詰まった紙袋をドアストッパーにし、招き入れてくれる。玄関&廊下は相変わらずの本棚と古本と紙袋とCD類の怒濤のがぶり寄りで、峻嶮な激狭通路となっている。おまけに、古本を詰めた新しい紙袋が通路に置かれ、所々跨ぎ越さなければ先へ進めぬ箇所が頻発する。だがそこを抜ければ、通路はちゃんと開通したままで、奥の和室までたどり着ける状態を、しっかりとキープしていたのである。所々新たな不安定コミックタワー&古本タワーが建立されているが、これはスゴいですよ、日下さん。感心しながら、まずは和室に残っていたブラウン管テレビを搬出する。そして本日のメイン作業は、リビングルーム書庫の中央にドでかく横たわり積み上がっている、巨大古本軍艦島を整理し、新通路をもう一本開通させること。だが一見したところ、絶望的な乱雑さと高さが、困難な作業を予想させる。
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聞けばこの上に乗り過ぎた資料袋やコミック山の崩れを退ければ、下部は文庫やノベルスで埋め尽くされているとのこと。「だから大したものはありませんよ」…日下氏は宣う。いや、絶対にそんなことはない。きっとスゴい何かが、忘れ去られて埋もれているはずだ!小野氏とともにそう信じて、早速決死の作業に取りかかる。まずは私が上に乗ったものを、下ろしたり引きずり出したりして、それを日下氏と小野氏がある程度仕分けた後、和室に逃がすことに決まる。身体と腕を必死に伸ばしまくり、上部をズルズルと崩して行く…パンパンの紙袋がすべて重い…引っ張ろうとした途端にプツンと紙の持ち手が切れ、閉口すること頻り。くぬやろ、くぬやろととにかく引き摺り下ろし、島の高度を低くして行く…人間やれば出来るものである。小一時間ほどの奮闘で、外郭の高度は危うくキープされてしまっているが、とにかく中央付近はへこみ、次第に奥の廊下も見透しが利くようになってきた。…おぉ、ついに下層から文庫の山が出現し始めた。本当に文庫やノベルスが、。けっこうしっかり積み上がり、土台を成していたのだ。ここで小野氏とバトンタッチし、氏が版型を揃えて文庫やノベルスを詰み直し、島を掘り進んで行くことになる。何故か簀子も発掘される…。
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私の次のミッションは、文庫を和室に控える日下氏に運び続け、必要・不必要の仕分けをひたすら促して行く作業となる。というわけで、文庫束を島からひっぺがし、働き蟻のように日下氏に文庫をお届けして行く。日下氏は「むぅ」「これは」「あぁ」「こんなものが」「上下が揃った」「ダブってる!」などと様々な叫び声を上げ、文庫本と楽しく格闘している。その間に、掘削作業に従事する小野氏も、奇妙な叫び声を上げることが増えて来た。「やっぱりスゴいのあるじゃん」「大倉Y子の『踊る影絵』が!」「佐藤有文「骨なし村」ぁ〜〜〜〜」「あまとりあのエロチック・ミステリーが大変なことに。ほら」。
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うひゃぁ、こりゃあ“あまとりあロイヤル・ストレート・フラッシュ”じゃないか!…やっぱり物凄い本が続々と発掘される、古本の底無し沼、日下三蔵邸…。などとやっていると、小野氏が興奮して掘り進め過ぎ、島の外郭の一部が崩れて雪崩落ちて来た。すかさず奥から現れた日下氏が、積み上がっていた一冊のコミックを掴み、こちらに向かって突き出した。手塚治虫の「落盤」である。「ハハハハハ、ここにちょうどあったんですよ。アハハハハハ」…このように、楽しく作業は進んで行く。
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さらに二冊のダブりを含む「新青年」付録の久生十蘭訳本束が発掘される。「え〜、ダブってるんじゃないでしょ。もう一冊は付録じゃなくて博文館文庫でしょ」と日下氏、小野氏から受け取りよく見てみると、これが見事にすべて付録本。ダブりは「ルレタビーユ」と「第二フアントマ」である。「何でだろ、なんで買ってんだろ…しょうがない。ダブりだから今日のお礼に小山さんに差し上げます」と、あっさりと今日の報酬が決定する。やったぁ!こりゃ嬉しい。お土産本が決まったので、奮起して作業を継続する。いつの間にかかなり掘り進み、段々と整理整頓が行き届くようになって来た。
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結局三人とも四時間余りを、ぶっ続けで作業。午後二時に休憩を入れ、車で街に出て、美味しいお寿司で栄養補給する。午後三時過ぎに書庫に戻り、しばらく小野氏は文庫の結束作業に入る。その間に、島の再建築作業を進め、結束が終わったら、エッチラオッチラと玄関外に本を運び出したりする。またもや作業にひたすら没頭。ようやく通路が開通し、。人が完全に書庫内で行き違えるようなった。台所側からも、リブング側からも廊下に出られるぞ!大きな軍艦島は三つに分離され、右壁下と台所壁周りと、周囲の棚下に低層に固められることになった
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。おぉ、更にスッキリ!日下氏も疲弊しまくりながら仕分けを続け、およそ六百冊ほどの不要本を捻出する。…気がつけば午後六時過ぎ。すっきりしたリビングを日下氏に見てもらい、「もうパーティーが出来ますよ」「ここで寝られますよ。大の字になれますよ!」などと報告する。すると日下氏が本当に通路に笑顔で大の字になってくれた。「あはははっは。こりゃスゴい」と言いつつも、その光景は完全に『古本殺人事件』と呼ばれるような、とても不可思議な光景であった…。
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あぁ、それにしても疲れた。だがお土産に件の二冊をいただき、さらに日下氏が編集したハルキ文庫「敗北への凱旋/連城三紀彦」ちくま文庫「紙の罠/都筑道夫」(名作面白日活映画『危いことなら銭なる!』の原作だ!)もいただき、ちょっと元気になる。その後書庫を離れ、夜の焼肉屋で肉をたらふくご馳走になり、かなり元気を取り戻して午後十時半には帰京する。大変におつかれさまでした。…実はこの作業の続き、近々にも行われる予定なのである。次回はいったいどうなることやら…。
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2019年06月30日

6/30神奈川・鎌倉 古書 アトリエ くんぷう堂

午前のうちに動き出し、湘南新宿ラインを使って一路鎌倉へ向かう。途中の新川崎〜横浜間において、対向電車で異音が発生したため十五分ほど停車してしまうが、どうにか午前のうちに、すでに観光客で混み合う鎌倉に到着する。東口に出て生暖かく湿った海風を浴びながら、本日で惜しまれながら閉店する「books moblo」(2011/10/10参照)を目指し進む。鯉の泳ぐ川を超え、『閉店』の貼紙がある立看板を唇を噛んで眺めてから、小さなショッピングモールビルの二階へ。
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店内はすでに別れを惜しむ多くの人で賑わっているようだ。通路に立錐の余地無く、みな楽しそうにおしゃべりに興じている。とても華々しい営業最終日である。本はすべて50%オフとなっているので、先客さんたちと位置を譲り合いながら、このお店での最後の買物となる一冊を求めて目を光らせる。すると左側の棚で、昭和十四年出版のアトリエ社「西洋美術文庫 ダリ/瀧口修造」を見つける。おぉ!戦前の瀧口本!とニヤつき、一も二もなく購入することに決める。奥の帳場にたどり着き、mobloご夫妻と挨拶を交わしながら、昔話に花を咲かせる。奥さまが当ブログをよく読んでくれていて、時系列で「moblo」が登場した記事について熱く語れるのに苦笑する。ここにお店を開いて八年。様々なことがあり、様々な事情があり、古本屋さんとしての役目を終えることになったのだが、ここで売られた本は必ず何処かで何かの花が開くのに役立ち、訪れた人々の心の中には、お店の記憶が朧げながらでも残り続けるはずである。古都鎌倉で、新しいタイプの古本屋さんを開いたことも、後に続くお店たちの指針として輝いていたはずである。さらば、そしてありがとう「books moblo」。ひとまずはおつかれさまでした。先ほどの「ダリ」を、半額の1750円で購入し、お店を後にする。

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西口に出てそのまま真っ直ぐ西へ向かい続ける。北側の歩道を、南にちょっと丹下健三スタイルな低層の『鎌倉市役所』見ながら、『御成隧道』を潜り抜ける。すると途端に緑が深まり、この鎌倉という街が、山に囲まれているのを教えてくれる。長く続く石垣をなぞるように、さらに西へ進んで行くと、突然目の前に椅子の上に本を積み重ねた看板が現れた。今年二月にオープンした、民家を改装した古本屋さんである。導かれるようにコンクリのステップを上がり、雨に濡れた紫陽花を眺め、回り込んで玄関で靴を脱ぎ店内へ。一階は玄関付近だけに本が並んでいる。百均文庫に百五十均新書、それに結構大きな千円以下の本が並ぶ単行本棚である…ちょっとクセと光のある並びだな…何故かミリタリー物が目立っている。階段をゆっくりと上がって二階へ。するとそこはかなり広めの空間で、壁際に棚が低めに張り巡らされ、中央に飾り台が二つデデンと置かれている。クルクルの髪の毛のご婦人が、本の補充を進めながら「いらっしゃいませ」と優しく華麗に囁く。階段上がって直ぐ横には、雑誌箱が床に置かれ、背後の棚には文庫本が並び、鎌倉所縁作家コーナーも設けられている。低く始まる壁棚には、「暮しの手帖」・神奈川&鎌倉関連本・郷土本がまずは並び、奥で高くなる棚に自然・詩歌・植草甚一・幻想文学・海外文学と渋く続き、折り返した棚は女流作家・女性関連の思想・社会・風俗などで一本が構成されている。中央の飾り台には、日本文学と古書が集まり、良い景色である。さらに奥の台には、アートブックや写真集・洋書絵本などが続いている。奥まで入り込んで壁棚に近付くと、そこはアートでびっしりと固められている。そして左壁棚には、ファッション・自然・文化全般・暮らし・児童文学・絵本と続いて行く。ビシッと背骨の入ったお店である。各ジャンルにしっかりと核となる本が混ざり込み、店主の趣味と気概を伝えるとともに、お店のしなやかな雰囲気を創出している。値段は普通。床に置かれた安売絵本箱の中から、箱ナシの講談社「オバケちゃんの本2 ねこによろしく/松谷みよ子・作 小薗江圭子・絵」を見付けたので、大喜びで購入する。足取り軽く階段を下り、靴を履こうとすると目の前のある貼紙が飛び込んで来る。『注意!靴の中を確認!!※虫が入り込んでいる場合があります。ご注意してください』…ひえっ!と慌てて靴を逆さに振るが、どうやら何も入り込んでいないようなので、安心して靴を履く。

その後混雑を極める『小町通り』に出て「藝林荘」(2013/02/17参照)に向かうが、あれ?お店がなくなってるじゃないか…場所、間違ってないよな…えぇ〜っ、いったいどうしたんだろう…?

またもや湘南新宿ラインに乗り込み、東京へ舞い戻る。新宿で間違って快速に乗ってしまったので、観念して荻窪まで足を延ばす。せっかくなので「竹陽書房」(2008/08/23参照)に入り込むと、何と、後見返しと本扉に蔵印ありだが、昭和十二年第二版の岩波書店「墨東綺譚/永井荷風」(本来はさんずいに“墨”)を発見。値段を見ると500円なのでウホウホと購入する。こりゃぁ、怪我の功名!予想外の素敵な買物だ!
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2019年06月28日

6/28古本屋ツアー・イン・細谷正充氏邸!

すでに昨日のことである。午前九時半に二日連続の盛林堂・イレギュラーズとして、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店舗裏の倉庫前に午前九時半に参上する。やがて裏口から姿を現した店主でボスの小野氏と近所の駐車場に赴き、盛林堂号を出発させる。街道を走り続け、まずはホームズ研究家&作家の北原尚彦氏をピックアップし、さらに街道をひた走り、水玉蛍之丞研究家の田中すけきよ氏をピックアップする。と言うわけで、同行四人のちょっとした小旅行スタイルで目指すのは、埼玉県某所にある、文芸&必殺技評論家の細谷正充氏の自宅書庫である。盛林堂チームは、大量のダブり本の引き取りに、北原尚彦氏は雑誌「読物と漫画」に掲載されたホームズパロディ作品を求めて。田中すけきよ氏は制作中の同人誌の資料を求めて。物凄い書庫を見る前に、ロードサイドの飲食店で昼食を摂る。すると会計時に北原氏が突然慌て始め、レジと座っていた席をアタフタと行き来し始めた…「財布がない!忘れて来た!」と、まったくの一文無しであることが判明する。会計は盛林堂さんに借りて済ませ事無きを得るが、この後コンビニに寄ったり「ブックオフ」に寄ったりする度に、「北原さん、飲み物おごってあげますよ」「北原さん、欲しい本あったら買ってあげますよ」などと、皆に面白おかしく嬲られ続けることになるのである…。そんな楽しいことがありながら、田園風景の中をロングロングドライブし、午後一時過ぎに細谷邸に到着する。ドアを開けて出迎えてくれた細谷氏に挨拶し、早速邸内に招き入れられる。すると廊下には棚が並び、映画DVD・時代劇DVDが大量に美しく収まる軽いジャブ的光景が広がっている。早速四人は「おぉ」「ほほぅ」などと感嘆の声を上げながら、棚を注視して行く。…初期必殺シリーズのDVDが端正に…。キッチン横の応接間に招き入れられ、飲み物を振る舞われるが、全員すでに気もそぞろとなっていたので、それを見抜いた細谷氏が「まぁ、たいしたことありませんが、じゃあ見に行きますか」と腰を上げる。すると全員の目が爛々と怪しく輝き、列となって足音を立てずに細谷氏の後に続く。ドキドキしながら階段下の横にある扉を潜ると、そこは無限のように本棚が整然と建て込む、恐ろしく広い空間であった。
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およそ四十畳強はあろうかという、何処かの道場のような空間に、壁際には本棚がぐるりビシッと据え付けられ、フロアには数え切れぬ背中合わせの本棚が立ち、壁際&中央に横断通路を設けた、十一本の通路が縦に並んでいるのだ。
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ふぉぉぉぉぉぉぉっ!もはや完全な図書館である!棚に並ぶのは、少年青年少女コミック・ラノベ・ティーンズ文庫・ボードゲーム・パソコンゲーム・レーザーディスク・切り抜き漫画資料・映画関連など。全員がその数と質に圧倒されつつ、各所に散らばる。すぐにあちこちから「おぉっ!」「あぁっ!」「すげぇ〜!」などと声が上がるが、もはや巨大迷路に紛れ込んでいる状態なので、誰が何処にいるか判然としなくなってしまう。だが細谷氏は、その声の上がった方に巧みに接近し、手にしたものや棚に並ぶ本について懇切丁寧な解説を施すのである。切り抜き漫画を見ていると、「これ見て下さい。三岸せいこの単行本未収録作品です」と数冊の切り抜きを取り出す…幻の漫画家の!と驚愕するが、こんなことをしていたら、いつまでも二階には上がれない。漫画も楽しく素敵だが、我々はやはり大衆文学を目指して来たのだ!と後ろ髪引かれまくりながら、全員二階へ。二階も一階と同じ広さで、構造もほぼ同じになっている。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!スゴイスゴイ!日本の大衆文学が、戦前から現代までドッサリだぁ!橘外男ゾーンには「双面の舞姫」や「怪猫屋敷」や「亡霊怪猫屋敷」もしっかりと混ざっている。おっ、楠田匡介「人肉の詩集」!大河内常平!ひえっ、水谷準の「薔薇と蜃気楼」が帯付きだ!永瀬三吾「鉄火娘参上」なんて聞いたこともない!などと騒いでいると、前に来たこのある小野氏が「小山さんはこっちがいいんじゃない」と右奥の薄暗い時代小説ゾーンに導いてくれた。げぇっ!愛しの九鬼紫郎!時代物ばかりだが、こんなに九鬼紫郎が並ぶ光景は、乱歩邸でしか見たことがない!
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あぁ、なんだ、この「怪剣鉄仮面」とか「旗本無法街」って…などと、興奮留まることを知らず…。それにしても、有名無名含め、大衆文学作家を何となく時代小説を核にしてまとめているのが(コミカライズ作品までも満遍なく!)、すこぶる見ていて楽しいのだ。これはちょっと明らかに他に見かけぬ視点&蒐集の仕方なので、細谷氏に対する畏敬の念が、ムクムクと湧き上がって来てしまう。細谷氏曰く「本は本棚に並べるもの。美しさと威圧感がそこに生まれる」「俺は安物買いだから」「本は一年五千冊ペースで増えている」「ある時から、本は処分しないと決めたんだ!」などの名言が次々とあちらこちらで炸裂する。それにしても、南條範夫で棚一本、菊地秀行で棚一本、とかは絶対に見られない稀少な景色だな…。「あぁ、北原さん、来て下さい来て下さい」「な、なんですか?」「こ、これ、博文館探偵傑作叢書の「魔の犬」を百円で買ってますよ!」「うわぁ、やめてくれぇ〜」。おぉ、その横の壁棚を見ると、横溝正史棚も時代物中心で芯を通しまくっている!
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別部屋の少女漫画雑誌棚群も花園のように美しいが、その奥には古い「週刊漫画TIMES」で棚が一本作られている!
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などなどと、とにかく驚愕の連続なのである。そしてその驚愕に対して、色々と細谷氏が本を手に入れた経緯や内容について解説を加えてくれるのだが、基本的にほとんどの本をしっかりと読んでいるのが恐ろしい。そして内容の賛否については「まぁ面白くないんだけど!」と毒を吐きまくるのがほとんど。そこで「じゃあ細谷さんが面白いって思う作家は誰ですか?」と聞いてみると「そりゃあ風太郎だよ」と即答する。そこで左奥の山田風太郎コーナーに向かうと、好き過ぎて高校時代に風太郎の自宅に押し掛け書いてもらった色紙や、献呈署名入りの数々の著作を見せびらかされ、気絶しそうになる。
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さらに怪し気なエロマンガ雑誌を取り出し、「これに風太郎の『夜よりほかに聴くものもなし』のコミカライズが載ってるんだよ。全部集めたいんだけど、まだ二冊しか見つかってないんだ」…恐る恐る手に取ると、谷口ジロー風の絵で、ちょっとシュールに描かれている…。などと時間の概念をすっ飛ばし、本棚にひたすら没頭してしまうが、それでもお仕事はしなければならない。そこで小野氏と廊下に泣く泣く脱出し、棚一本半分のダブり本を棚から取り出し、結束&運搬作業に取りかかる。その間に田中すけきよ氏は借りる本をダンボール二箱にまとめ、北原氏も目的の雑誌をほぼ自力で発見した後に、細谷氏のマンツーマン解説を書庫で受け続ける。気付けば外は雨が降り始めている。本を濡らさぬように、素早く玄関から本を運び出す。無事に作業を終えた後、最後に名残惜しく書庫内を一回りし、最後の最後に衝撃の九鬼棚を眼底にジリジリと焼き付ける。いつか、いつの日か、手に入れたいものだ。ここでしっかりと見ておけば、何処かで引っかかることもあるだろう!全員棚の虜になりながらも、無事にそれぞれのミッションを完遂したので、図々しくも再訪を約束し、午後五時過ぎに細谷邸を後にする。その後は往きのルートを逆にたどって行くのだが、同じ車に乗っている性故、すけきよ氏が現在懸命に探しているある文庫を手に入れるためのブックオフ巡りに、強制的に北原氏とともに参加させられる。何も買わないつもりだったのだが、一店目の「鴻巣吹上店」の単行本200円棚で、集英社「明智小五郎回顧談/平山雄一」を見付けたので購入。「何買ったの?」と聞いて来た小野氏と北原氏に見せると「200円ならそりゃ買うわ!」と同じことを言われる。結局西荻窪に帰り着いたのは午後八時半。これにて盛林堂・イレギュラーズの二日目が、無事に終了。
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2019年01月23日

1/22古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第三章】

早朝午前七時。盛林堂・イレギュラーズの誇りを胸に抱き、勇気を持って寒い寒い戸外に飛び出す。西荻窪「盛林堂書房」前で店主の小野氏と待ち合わせ、フロントガラスに美しい霜の結晶が張り付いた盛林堂号で、一路神奈川県下にある日下三蔵邸を目指す。渋滞の都内を潜り抜け、高速道路を走り抜け、二時間弱で本邸に到着。すっかり準備万端の日下氏が「どうも。よろしくお願いします」と姿を現し、相変わらず後部座席に荷物を積み過ぎサスが沈み気味の日下号の先導で、本の家である別邸に向かう。本日の難関ミッションは、右奥の十年間誰も踏み込めていない六畳のコミック部屋を、どうにか片付け、壁際&窓際に棚を据えるところまで漕ぎ着けること!まずは満遍なく部屋全体に胸高までコミックが積み上がる部屋に小野氏が突入。バンバンと本を運び出し、それを私が中継し、日下氏が元リビングルームの巨大な本の軍艦が幅を利かせる通路で、版型仕分け&必要仕分けを行うことにする。三人即座にエンジンフルスロットルで、作業に専念する。だがいつもなら「こんなのが出てきました!」「ここにスゴいのが埋もれてました!」などが連発され、単調で苦しい作業に潤いが生まれるのだが、今回はほぼコミックばかりなので、ひたすら受け取った物に目もくれず、機械のようになり、ただただ作業を効率的にスピーディーに進めて行く。そのせいか驚くほど作業は進捗し、瞬く間に本の山の下から十年ぶりに顔を出した敷きっ放しの布団や、本に全面を囲まれていたテーブルや、本の山の向こうからブラウン管のテレビが発見されたりする。そんな味気ない作業をどうにか噛み締め、午後十二時半に昼食を摂るため外出。美味しいお寿司をお腹に詰め込み、必要な備品を買い揃え、午後二時には別邸に戻り、作業の続きに取りかかる。途中、偕成社「スパイ17号/柴田錬三郎」や「探偵倶楽部」などが発見されたりするが、やはり基本はコミックばかりなのであった。そしてどうにか窓際まで道が開けると、そこには大量のゴミが積み重なっていることが判明。後半は、そのゴミを袋詰めする作業にシフトするのだが、何と十年と言う歳月は非常に恐ろしく、ポリ袋やペットボトルやビニール類が、射し込んでいた日光のために劣化し、触った途端にモロモロハラハラと崩れ落ちるのであった。何だか遠い未来で、前世の遺物を見つけたと思ったら、儚く眼前で霧散して行くような、ちょっとロマンチックな光景なのである。たちまち畳の上に、今話題のマイクロプラスチックがこぼれ落ちる!嗚呼、まさか日下邸で、こんな世界を悩まし始めている物質を目にすることになるとは…。
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だが、これらもしっかりと片付けねばならぬのだ!と言うわけで、ド大量の本を部屋の片側に寄せ、ベランダからここも長年人の踏み入っていなかった庭にゴミを出し、少しずつ本ではなく人間の領土を広げて行く。ついに日下邸内で、初めて腰を下ろせるようになったぞ!これで人間の文化的な生活が、この場で窮屈ながらも、営めるようになったぞ!
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途中棚の買い出しに行く小野氏と日下氏を見送り、独り別邸に居残り、本の版型を揃えて積み上げ、マイクロプラをハンディ掃除機で吸い上げ、ゴミを袋に積め、それを庭に出して行く。何だか今回は、古本の整理をしに来たと言うよりは、便利屋が遺品整理しているような具合である。午後五時からは、日下氏は仕分けに専念し、盛林堂チームは、買ってきたカラーボックスをひたすら鬼のように組み上げる作業。結果十一本を組み立てて、午後七時に作業を終了する。みなさま、大変に大変におつかれさまでした。今日のハードな作業のお礼として、片付け途中に発掘された、ダブりまくっていた怪の会「エンサイクロペディア アワサカナ 泡坂妻夫大事典」をいただく。
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そして帰り際、、マンションの掲示板にふと目をやると、しばらくしたら部屋内立ち入りで排水管の清掃が実施されることが書かれているではないか。「日下さん、これ大丈夫ですか?」「無理です。その日は用事があります」「…いや、そういう問題ではなくて、本が邪魔で作業員の方、入れないですよね」「それにもうシンクにも風呂場にも本や棚が積み上がってるんで、絶対に無理です」…断固拒否、というよりは、当然物理的に不可能なのであった…。解決するには、もっともっと地道に片付けていくしかないのである。その後はちょっと遅い晩ご飯に焼肉をたらふくお腹に詰め込みながら、何故だかマンガの話で大いに盛り上がる。弓月光「ボクの初体験」が海野十三の「超人間X号」に似ていることや(マッドサイエンティストによる簡便な脳移植手術から巻き起こる大騒動)、水島新司が「球道くん」を連載していたのは『マンガくん』だったことなどなど。…あぁ、それにしてもハード過ぎる一日であった。やはり本との格闘は、とてつもない重労働なのである。
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2018年12月14日

12/14神奈川・みなとみらい 第1回駅ナカ古本まつり

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横浜方面へ向かう車中、日本小説文庫「隠亡堀/國枝史郎」を読み耽る。表題作の怪談の意外過ぎる展開に『國枝って天才だ!』と膝を打ったりしてしまう。やがて東横線は、横浜駅からみなとみらい線へと入り込んで行く。目的駅で降車し、エスカレータで階上へスルスルと向かう。だだっ広い階上はまだ地下で、クイーンズスクエア側の改札を抜けると、右手の大きく白く細長く、録音されたカモメの鳴き声がエンドレスで流れる空間に、古本のワゴンが大量に広がっていた。…まるで未来世界の古本市だ。ちょっと無機質で荘厳ですらある感じが…だが近寄ると、ワゴンにびっしりと詰まっているのは、紛れもなく見慣れた愛おしい古本たちである。四つのワゴンが一つの古本島を造り、それが五つ連なる列島が、三列並んでいる。ここは『みらいチューブ』という名のイベント会場で、ここで古本市が開かれるのは初めてのことである。これだけのワゴンがあるのだから、ジャンルはバラエティに富んでいる。全体的に古めかしい本はそれほどなく、一般的に寄った品揃えである。今は午前中で人影はチラホラだが、通勤客が帰る頃になると、恐らく混雑を極めるのだろう。空いている時間の利を生かし、一ワゴン一ワゴンを、耕すように検分して行く。…それにしても、吹き抜けて行く風が骨身に沁みる。地下空間故の独特な空気の流れが、古本の上を流れて行くのである。だがそれでも、大量の古本と妙な空間で対峙するのは、心ざわめく体験である。途中帳場台に近付くと、座っていた「グリム書房」さんから「昨日来るかと思ってましたよ」と声をかけられる。じっくりゆっくり見下ろして、河出書房市民文庫「太宰治集/小山清編」を購入する。いつ何処でも、時間を気にせず太宰が気軽に読めるようにと編まれた、二十三の短篇集。巻末の小山による解説が、太宰を天使の如く純真に褒めちぎっているのが、何ともいじらしく微笑ましい。この市は19日(水)まで。会期中は古本の無料鑑定も行うとのことである。

帰りに自由が丘で途中下車し、「西村文生堂」(2013/09/10参照)に立ち寄る。お店の七十パーセントが洋書屋さんになりつつあることに面食らいながら、それでもまだ残る和書に目を光らせる。中公文庫「ジゴマ/レオン・サジイ 久生十蘭訳」ハヤカワ文庫「ファントマ/スーヴェストル&アラン」を計550円で購入する。「ファントマ」が250円なのは嬉しい!
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2018年10月02日

10/2神奈川・日ノ出町 雲雀洞

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最寄り駅は日ノ出町なのだが、みなとみらい線の馬車道駅から地上に出て、レンガで彩られた『馬車道』を、西南西に向かって歩いて行く。やがて根岸線の高架下を潜り、賑やかな『イセザキモール』に入り込んで行く。相変わらず西南西に進みながら、『イセザキ1st&2st』を突破。そこで突き当たる道は、日ノ出町駅から南下して来た道である。ここから『3st』に入り、ついには『4st』に進入する。ここの中間辺りでは、伊勢佐木町のランドマークと言える『伊勢佐木町ブルース歌碑』と『へびや』がほぼ向かい合っているのだが、その手前北側のマンション一階端に、今日から古本屋さんが開店していた。一箱古本市などで活躍後プロに転身し、主に催事をフィールドにしていた「雲雀洞」さん(2016/07/22参照)が、青天の霹靂の如く実店舗を電撃的に開いたのである。お祝いの立花が飾られた前には、安売ラックと三台の百均文庫ワゴンが展開している。中に進むと、そこはなんだかシュッと縦長にまとまった、街の古本屋さんの趣き。開店の午前十一時からさほど経っていないのに、たくさんのお客さんが蠢いている…と思ったら、一箱仲間たちがお祝いに駆け付けて、盛り上がっている模様。今日は平日だって言うのに、なんという麗しい光景!だがそれだけでなく、通りから飛び込んで来るお客さんも早速いたり、コミック関連について鋭く質問しているお客さんも出現したりしている…うむ、賑わっている。入口左横は100〜300円の安売棚で、映画関連の古書や古いコミックなどがチラホラ目立っている。右は一面の壁棚で、作家五十音日本文学文庫・ノンフィクション系&教養系文庫・映画関連文庫・海外文学文庫・純文系古書文庫・ちくま文庫・中公文庫・岩波文庫・官能文庫と文庫だらけになっている。入口側のフロアには平台付きの背中合わせの棚が置かれ、右に時代劇文庫・左にミステリ&SF文庫・ハヤカワポケミス・新書サイズミステリーを収めている。左の壁棚には、新書・新書サイズ本・温泉&ホテル・戦争などが並び、柱を挟んで奥に絶版漫画・SF・ミステリ・幻想文学・海外文学・田中小実昌が続く。奥はロフトを備えたバックヤードになっており、それを背後にしてエプロンを着けた雲雀洞さんが、直立不動で帳場に立ち尽くしている。帳場前には映画・音楽・近代・民俗学・文化が集まる棚も置かれている。安売棚にはなかなか面白い古い本が混ざり込んでいる。値段は安めなものが多いが、棚の各所にしれッと紛れ込んでいる目立つ本には、それほど隙なく値が付けられている。全体的には催事参加時の雲雀洞さんのワゴンを、お店サイズに拡大した感じと言えよう。足繁く通っていれば、面白い本に出会える確率は高そうである。鳳映社「恐龍 怪獣・猛獣・海獣・探検秘話/ロイ・アンドリュース」鱒書房「隨筆 探偵小説/高木彬光」(カバーナシ)モード学園出版局「北村信彦。1962年12月19日、東京生まれ。/上田美穂」カイガイ出版「死体置場へのお誘い/山村正夫編」東峰書房「ヨーロッパの旅/勅使河原蒼風」(カバーナシ。口絵にサインあり)を計1200円で購入する。こりゃあ伊勢佐木町が、古本屋的にざわついて来たぞ!開店おめでとうございます!

さて、今日もかなり立て込んでいるので一刻も早く帰らなければならないのだが、古書が多めで楽しい「活刻堂」(2009/10/12参照)には寄り道する。おかげで棚の最下段から、河出書房「前衛シナリオ集」を500円で発見する。やった!これでブニュエル&ダリ脚本のシュルレアリスム映画『アンダルシヤの犬』やダリ脚本『ババウオ』を活字で読むことが出来るぞ!『ババウオ』は、嬉しい瀧口修造譯。主人公が懐中時計を手にする度に、時計に対していちいち『(柔軟な)』とカッコ付きで説明が入るのがダリっぽい。二編とも、予想通りにシュールな情景描写の連続なので、脚本というよりはほとんど小説の態となっている。
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2018年09月19日

9/18古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第二章】

盛林堂・イレギュラーズとして早起きをし、午前七時には西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)前にてスタンバイ。小野氏がハンドルを華麗に捌く盛林堂号で、大渋滞の東京を抜け出して神奈川県入りする。本日のお仕事は、八ヶ月ぶりの日下三蔵氏邸書庫整理&買取である。日下邸に到着するや否や、氏のご母堂と遭遇し「本当にご苦労さまです」と挨拶される。玄関に入ったところで日下氏から小野氏に連絡が入り、仕事のメール送信を取りあえず済ませてしまうとのこと。その間、玄関に積み上がる古本タワーを高速で眺め、所々に潜むレア本を慈しむ。しばらくすると、本タワーに囲まれた玄関横の仕事場のドアがギギッと開き、「どうもどうも」と日下氏が姿を見せ、本タワーを跨いで玄関に下りて来た…斬新な登場の仕方である。そしてすぐさま車でマンション書庫に移動し、作業を早々と開始する。本日のミッションは、カラーボックス六本を組み立て、前回(2018/01/09参照)スペースを作った台所に配置し、床置き本をそこに収めるというもの。時間があればさらにカラーボックスを買い足し、リビング奥の窓際の単行本山脈を整理するとともに、さらに組み立てたカラーボックスにそれを収められれば御の字、というものである。カラーボックスの組み立ては電気ドリルで小野氏が行い、日下氏は仕分けと棚造りに専念、私はカラーボックス組立の準備や本の移動に時間を費やすこととなった。まずは狭い玄関と本が積み上がり曲がり込む廊下をクリアして、組み立て前のカラーボックスを運び込む作業。これが意外にしんどかった。進路は下の方が狭く、上の方が広がっているので、自然と肩に担ぎ上げて長い材料を運び込むこととなる。おまけに本などは決して崩してはならぬので、まるで黒部渓谷の山奥に建築材料を人力で運び上げているような気分になる。それを六回繰り返す間に、組み立て&仕分けも開始されている。
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しばらくは全員その作業に没頭しながら、およそ一時間半が経過する。あっという間に台所にはキレイにカラーボックスが積み上がり、日下氏が早速棚造りに取りかかり始める。部屋の奥から本を運び出し、氏の脇にそれをガシガシ積み上げて行く…「ワハハハハ、黒猫だ。本に塗り込められた!黒猫だ!」とテンション高めの日下氏。よほど本棚に本を並べる作業が楽しいらしい。「うおっ!」「これは!」「そう来たか!」「漫画みたいだ」「ダブってる!」「これもダブってる!」「これ持ってたんだ!」「十年ぶりに見た!」「ここにあったのか!」と、とにかく楽しそうである。
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それにしても、なんとダブり本の多いことか。いや、ダブり本どころか、トリプり本とか、クアドり本まで出現する始末なので、もう開いた口が塞がらない。そのため途中から、全員がレア本の発見よりダブり本の発見の方に注意を向けてしまうのが、何とも言えずおかしかった。

そんな風に日下氏がキャピキャピしている間にも、私は本の移動に全霊を傾け、小野氏は部屋奥の未開拓ゾーンを掘り起こし始めている。その行動力がパワフル過ぎるのだが、実はダブり本が見つかれば見つかるほど盛林堂が買い取れる確率が上がるので、驚くほど必死なのである。まさに商売人の鑑と言えよう。そんな中、あぁ!大河内常平の「夜に罪あり」が!
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見たこともない推理小説「暗い年輪/藤本明男」を見つけると「それはハードボイルドですよ」などと即座に日下氏が教えてくれる。教師の犯罪を描いているのに、ハードボイルド!?と激しく興味を掻き立てられたりしていると、たちまち下村明の「風花島殺人事件」などが出て来て、勉強になり過ぎて卒倒しそうになる…恐ろしい家だ、ここは…。
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そんなこんなで、午後一時過ぎには、ミステリー古書カロリーの高過ぎる棚が完成。見ているだけで鼻血が出そうになってしまう…あぁこれが古本屋さんだったら…。
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ここで一旦休憩となり、町に出て美味しいお寿司で英気を養った後、さらにミッションを進行すべく近所のDIY屋さんでカラーボックスを新たに十二本購入し、午後は部屋奥の壁一面をボックスで埋める作業に邁進することにする。またも小野氏が、もはや大工のように棚を組み上げまくって行く…その工作速度は、どんどん上昇しているようだ…。組み上げるや否や、それをソロソロと本の山を崩さぬよう担ぎ上げて運び、窓際に設置。と同時に、日下氏が単行本山の仕分けと棚造りを行って行く。私はコマネズミのように狭い通路を行ったり来たりして、二人の作業をフォローして行く。段々と体力を全員が消耗しながら、午後六時過ぎには作業が一段落。小野氏は、一日で計十八本のカラーボックスを組み立るとともに、十年間手つかずだった単行本山の整理を行った。日下氏は、およそ千冊以上の本を仕分け選別し、理想の棚造りを進めるとともに、およそ三百冊の不要本と計四十冊のダブり本を捻出した。本当に一日お疲れさまでした。最後に表から、またもソロソロと苦労して、とある場所に預けてあった、都筑道夫本箱を人足のように五箱運び込む。それもすぐさま棚に並べて行ったのだが、途中で本日最大の驚きが飛び出して来た。「ほら、これ見て下さい。スゴいのが出て来ましたよ」と日下氏。小野氏が受け取るや否や「うわぁ、何これ、ヤバい」、私が慌てて「何ですか何ですか」と近寄ると、手渡されたのは!都筑道夫の最初の単行本、若潮社の「魔海風雲録」であった!ぎょえ〜い、初めて見た!し、し、し、しかも献呈署名が入っている!何という恐ろしく素晴らしいものが飛び出して来たのか!あぁ、今日来て、激しく働いて本当に良かった。まさか生きている間に、この本が見られるなんて…。
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思わず「魔海風雲録」を、完成した素晴らしい棚とともに記念撮影!本もスゴいが、棚もスゴい!これはまるで、書庫じゃないか!まともな、書庫じゃないか!

日下氏に作業のお礼にと「ダブり本で欲しいのがあったら差し上げますよ」と言われたので大いに悩んでいると、小野氏が買取分から偕成社 世界探偵名作シリーズ7「OSS117の秘密/ブリューズ」講談社「随筆 猫/松本慶子」を分けてくれた。わぁい!と喜んでいると、日下氏が「それだけじゃ物足りないでしょ。まだいいですよ」と嬉しいことを言ってくれたので、玄関の棚にあった神月堂「悪魔の山 復刻版/高木彬光」を「ダブってるんですね。ダブってるんならいいですよ」と念押しされるがいただくことにする。ありがとうございます!
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すべての作業を終え、不要本を箱詰めして積み込んで、夜の街へ。焼肉をガツガツと食らって、本日の労働の成果を三人で褒めちぎり合う。そして、今年中に後一回は整理作業をしましょうと言うことになる。最後に、盛林堂号に積み込んだ不要本八箱を、突然降り出した豪雨のために屋根のある駐車場に入り、日下氏の車へとムリヤリ移動させる…傍から見ていると、何だか怪しい取引に見えなくもない。
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でも取引しているのはただの古本である。日下氏は、愛車のサスペンションをより一層沈め、テールランプを赤く光らせながら、雨の中を走り去って行くのであった。(つづく)
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2018年06月27日

6/27神奈川・山手 古書けやき

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ポンコツ具合がだいぶ快方に向かっているので、古本神・森英俊氏よりタレ込まれたのに放置していたお店を目指すことにする。中央線→湘南新宿ライン→根岸線と乗り継いで、一時間ちょっと。改札を抜け、線路下を潜って駅の東側に出て、細い坂道階段を、山の上目指して上がって行く。山全体を覆う住宅街の中を縫うように、喘ぎながら上昇して行く。階段が終わると『ふぞく坂』に抜け出るので、道なりに南東に上がって行くと、山の尾根を南北に貫く『YC&AC通り』。続いてうねる尾根道を南に歩いて行く。低い山とは言え、青い空が格段に近く広くなっている。左手にチラリとレインボーブリッジが見え、Suchmosを大音量で流しながら運動会の練習をする学校脇を過ぎ、道は東西二股に分かれる場所に出る。東の遠くには本牧の青黒い海と工場が見えている。だが西の住宅街に進路を採り、住宅街の中の坂道を下って行く。行き当たった三叉路で東に折り返し、さらに坂道を下る。下る。下る。小さな切り通しを通過し、ようやっと『本牧通り』に到達すると、そこは『閘門バス停』前(閘門は“こうもん”ではなく“くまかど”と読む)。東側の歩道に渡り、二つ先の『二の谷バス停』を目標に、東北に通りを進んで行く。テクテク歩いて『東福院前バス停』をクリアし、やがて目標の『二の谷バス停前』着。道路を挟んで、西の山沿いには巨大な集合住宅や商業施設が広がり始め、右の山沿いには昔ながらの住宅が集まっている。バス停手前の、その住宅街への小道を東にズンズン入り込んで行く。一軒家ばかりである。だが、横切る小道も無視し、奥の奥である行き止まり部分に達すると、庭に草木が咲き誇り、古民家や住居が建つ門に、「けやき」と大書した看板が現れた。これなのか?と訝しがりながら、お店への小道を伝う。途中パラソルの下に、カバーナシや文庫本を入れた無料箱が出現。本当にお店なんだ…と思いつつ、右に古民家と井戸を見ながら、さらに奥に足を踏み入れると、左手母屋の奥が古本屋さんに改造されていた。す、素晴らしい胸躍る光景!ウッドデッキに上がり込むと、椅子や台の上に百均の絵本や単行本が並べられている。目の前の大きなサッシ扉を開き、靴を脱いでから店内に上がり込む。六畳間ほどの空間で、右壁一面に100均文庫・一般文庫・時代劇文庫・時代小説・文学の棚、左壁に落語・歌舞伎・酒・料理・洋裁・暮し・映画・美術・横浜・大判本・美術作品集・図録などを並べた五×五のボックス棚。奥壁右に海外ミステリ・音楽・LPレコードが集まり、左側が児童文学&絵本棚をカウンターにした帳場が設えられている。その奥の手が届かぬ棚には、レコードプレーヤーとともに、シャーロック・ホームズ関連本が多く集められている。入った時はそこに誰もいなかったのだが、本を見ている途中で、暖簾で分けられた左奥の生活空間から、奥さんらしい人が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれ、続いてメガネを掛けた凛々しい小松政夫風男性店主が「いらっしゃいませ」と登場した。本の数はそこまで多くないが、古本屋があるとはとても思えぬアプローチと、民家の一部を改装した完全隠れ家店舗に、激しくトキメキを覚えてしまう。古い本はあまりなく、値段は安め〜普通。朝日ソノラマ「オールカラー版 ペパモ 紙で作るヒコーキ/田中愛望考案」サンリード「みんな とぶぞ/ささき まき」を購入する。とにかく駅から遠いので、バスで来ることをお薦めします。

車中の読書は、手に入れたばかりの文圃堂「宮澤賢治全集 第三巻」。コンコ堂の七周年記念ポーチを活用し、本が傷まないように大切に扱っている。往きに『銀河鐡道の夜』、還りに『グスコーブドリの傳記』を読了。『さあ、切符をしつかり持つておいで。お前はもう夢の鐡道の中でなしに本統の世界の火やはげしい波の中を大股にまつすぐに歩いて行かなければいけない。天の川のなかでたつた一つのほんたうのその切符を決しておまへはなくしてはいけない。』…ぅぅぅぅぅぅ……。
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2018年05月11日

5/11神奈川・追浜 おっぱま ぼちぼち書店

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メールタレコミを基に行動を開始して、品川駅から京浜急行快特に激しく運ばれ、午前十一時の追浜駅駅頭に立つ。東口に出て、小さな空中駅前広場を、北側階段で地上に下りる。そのまま『追浜駅交差点』を東に突っ切り、『夏島貝塚通り』という名の、屋根の架かる駅前商店街の北側歩道を、グングン歩いて行く。すると一つ目の信号脇に、情報通りに古本屋さんが出来ているではないか!シンプルな店頭には三台の小百均ワゴンが並び、小説・コミック・文庫を主に並べている。右端には電気立看板があり、ガラス窓には買取表やお店のお休みカレンダーなどが貼り出されている。『12:30〜13:30』は休憩時間になるのか…。横長な店内に進むと、左右の壁には本棚が据え付けられ、奥は帳場兼作業場となっている。フロアの左右ではそれぞれ四本の本棚が組合わさり、細かな通路を造り出している。左は時代劇文庫で固められ、右は教養系文庫・海外文学文庫・日本文学文庫で固められている。左側入口脇にはラックが置かれ、古雑誌・グラビア誌・ムックなどが面出しで並ぶ。左壁には歴史・近現代史・ドイツ・ナチ・ヒトラーなどが、古書も交えて集合している。奥にはアイドル系写真集が並び、最奥にはアダルト小部屋へ続く暖簾がユラリ。帳場右側にはミステリ&エンタメ・文学評論・社会・現代思想・文化・世相が並び、右壁には実用・旅・大判本・映画DVD・コミックセットが収まっている。新しい本が多めのリサイクル系古書店であるが、左奥のドイツ関連や、所々に紛れ込む茶色い古書に特徴がある。値段は定価の半額〜半額よりちょい高と言ったところ。本を帳場に出し出すと、少し年を食った嵐の大野智風男性が、ハキハキと応対してくれる。平凡社ライブラリー「細野晴臣インタビュー THE ENDLESS TALKING/北中正和編」を購入する。扉から外に出ようとすると、入口脇に置かれた、八千円で売りに出されている『ガチャガチャマシーン』に初めて気付く。この機械、値段は間違いなくこの倍以上するものなので、お買い得と言えばお買い得である。

お店を出て駅方面に戻り、『横須賀街道』を北にちょっと進んで、まるで歩道橋の下にあるような『北原のパン』(2014/07/21参照)で昼食を購う。ハムカツパン・サラダパン・カレーパン・ラスクを頼むと、おまけにロールケーキの切れ端を付けてくれた。京急車内でお行儀悪くモグモグ食べながら(ハムカツパン&カレーパンはかなりのレベルの高さである)、川崎駅で下車して軽く古本屋パトロール。「朋翔堂」(2008/09/07参照)では葦書房「夢野久作著作集4 梅津只圓翁伝」教養文庫「氷の涯」「爆弾太平記」ともに夢野久作を計700円で購入する。ビルの間を歩いていると、商店街放送で『古本を買うならマッキー。古本を売るならマッキー』と流れていたので、「Books McQee」(2008/09/07参照)に飛び込み、朝日新聞社の文庫型昭和十三年三コマ漫画本「家庭報國 思ひつき夫人/平井房人」を432円で購入する。思ひつき夫人の異名を持つ奥さんが、家庭内で節約と廃物利用の知恵を余すところ無く発揮して行く漫画である。それにしても、古いカンカン帽を縦につなぎ合わせて屑篭を作ると言うのは、何か鬼気すら感じさせる節約術である…。
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2018年04月15日

4/15埼玉・岩槻 さつき書店岩槻店

メールタレコミに基づき、大宮駅で東武アーバンパークラインに乗り換え、北関東の景色の中を十分ほど走る。東口に降り立てば、そこは雨上がりの『人形の街』。五月人形攻勢をかける人形屋が並び建ち、早くも鯉のぼりをヒラヒラはためかせている。ロータリーから南東に、『駅前通り』を真っ直ぐ歩いて行く。途中「古本・ビデオのドリーム」という看板の架かるお店を見つけ、『ぬぉっ!これは知られざるお店を見つけてしまったのか!』と一瞬興奮するが、正面に回るとそれは、意気消沈の古本屋遺跡であった…看板、架け替えましょうよ…。
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そんなことがありながら駅から一キロ強歩くと、『国道17号』と合流する『東町二丁目交差点』手前に、そのお店は存在していた。“本”の大きな文字看板があり、店頭はメタリックなパネルで覆われ、いかがわしい幟が林立し、ウィンドウには美女たちのポスターがズラ〜っ…何処からどう見ても完全無欠のアダルト店である。
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だが、邪な心をもたげずに、ただひたすらに清く正しい古本を望んで自動ドアを潜れば、すぐに右手には予想外の光景が展開し始めるのだ。左手は美少女コミックゾーン、正面には横向きのレジカウンターの奥に、ピンク色のアダルト空間が悩ましく広がっている。そして右手の結構広いフロアが、古着を並べた奥の壁棚に、アダルト空間にそぐわぬ古本を並べているのだ。…なんだこれは…。近付くと、セレクト文庫・美術系写真集(中山岩太までも)・性風俗・都市風俗・日本文学・海外文学・幻想文学・映画・カルト&モンド映画・食・サブカルチャー・アンダーグラウンド&カウンターカルチャー・思想・カルトコミック・漫画評論・田中小実昌・平岡正明・竹中労・松下竜一・水木しげる・杉浦茂・町田康・杉浦日向子・VHSビデオ…濃いなぁ、癖が強いなぁ…何と山田風太郎箱まであるじゃないか。お店とのギャップに魂消つつ、気になる本を手にしてみるが、良書や珍書にはしっかりとプレミア値が付けられている。他にも入口正面には、「ガロ」・漫画研究・音楽・野球・格闘技の集まるラック台が置かれているのだが、果たしてここを訪れる人の何割が、これらのゾーンに興味を示しているのだろうか。しかしこの感じとラインナップ、南与野にある「アワーズ」(2015/02/24参照)に酷似しているではないか。何か密接な関係でもあるのだろうかと頭を捻りながら、北宋社「幽霊の森」を購入する。

帰りに大宮で途中下車し、「橋本書店」に立ち寄る。旺文社文庫「掌の小説/川端康成」太田出版「伝言ダイヤル殺人事件/そのまんま東」読売新聞社「欽ちゃん つんのめり/萩本欽一」を計380円で購入する。
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2018年01月09日

1/9古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第一章】

午前八時、西荻窪集合。新年早々ミステリ評論家&稀代のアンソロジスト・日下三蔵氏の書庫整理に、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに向かう。今回は古本社会科見学&助太刀を兼ねて、以前から「盛林堂」店員として活躍中の、小野氏の愛妻も同行。午前十時前には現地に到着し、まずは本邸で日下氏と合流する。その時玄関の書類&書簡山が消えているのに驚き、玄関上がり口から廊下へのアクセスが格段にスムーズになったことを大いに讃える。そしてすぐさま日下号と車列を連ね、ご近所のマンション書庫へと向かう。もはやここに来るのも三回目となると、街の景色や道筋や匂いさえも記憶しており、すっかり見知った書庫への通い路である。

到着すると、まず日下氏は玄関ドアをゲラや書類の入った紙袋二つをドアストッパーにし、皆を招き入れる。いつも通り本の渓谷のような通路をたどり、まずは前回作業整理(2017/12/27参照)したお風呂場を見に行くと、おおっ!日下氏のさらなる努力により、洗面所には新しい棚が入り、風呂桶の上には簀子が敷かれ、合理的に収納力を増加させていたのである。その自主的努力をさらに讃え祝ったのも束の間、ただちに気を引き締めて作業に取りかかる。本日のミッションは、キッチン部分とその周囲のコミック山&雑誌山を整理し仕分け、キッチンを作業が出来るほどに解放し、新しい棚を組み上げ据えるところまでを目標とする。
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午前十時過ぎに作業開始。小野氏が混沌の海に飛び込み、ブツを掘り出して行く。それを私が受け取り、コミックは風呂場で仕分ける日下氏に託し、たくさん出て来るVHSビデオを玄関側の小野夫人に託し結束してもらうこととなる(雑誌はひとまず後回し)。すぐに積み上がるコミックタワーを、日下氏の仕分け具合を確認しながら、小出しに渡して行く。仕分けが滞ると本が溜まってしまい、たちまち全体のスピードが低下することを日下氏は熟知しており、なかなかのスピードで仕分けをこなして行く。だが三十分も続けば「何でこんなにコミックばっかり」「どうしてこんなにたくさん」「あぁっ!三巻がない!」などと苦しみ始めるので、「何故ならこれはみんな日下さんの業なのです」と言い放っておく。途中、長年本の山に塗り込められたような冷蔵庫が発掘される。冷凍庫は空だったが、冷蔵庫には……ふぎゃぁっ!結局午後一時前まで、全員が未来の管理社会下で、コミックを掘り出す者・コミックを運ぶ者・コミックを仕分ける者となったように、ひたすらコミックとVHSの奴隷となる。だが、そんなに頑張った甲斐があって、キッチン部分はその半分が解放され、奥のリビングへの通路がさらに解放される。床が見える!人がぶつからずに擦れ違える!ここはまるで、ちょっと本が置いてあるだけのキッチンだ!とその成果を喜び、昼食と買い出しを兼ね、ひとまず南風の吹き荒れる外へと出かける。
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お寿司をお腹に補給し、メジャーを金物屋で購入し、午後は雑誌の仕分け&搬出作業を行いつつ、同時に第一次リビング解放作戦にも取りかかる。するとコミックばかりと言っていた区画から、おぉ、博文館文庫「猛犬燈台/押川春浪」がっ!九鬼紫郎の時代劇が次々と!極美の函バージョンの山田風太郎「笑う肉仮面」!城昌幸の「古城の秘密」だとっ!などが次々と見つかり腰を抜かしかけ驚いている最中、見たことのない楠田匡介の「フランダースの犬」を手にする…こんなバージョンもあったのか…と思っていると、すぐさま別バージョンの「フランダースの犬」を発掘する。よし、この二冊は取りあえず一緒にしておこう。リビングの整理と並行して雑誌の整理も進めると、嬉しいことに意外に手放す雑誌が多く出たので、さらに驚くほどのスペースが誕生してしまった。後はリビングのコミック・古本・献呈本・VHSの分類整理を行い、美しい山を新たに築いて行く。その過程で、壁棚にたくさんの付録本が横積みになっているのを目撃し、興奮する。
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そのなかのダブり本を「盛林堂」が引き取ることになるのだが、その仕分け過程で日下氏が、梶竜雄の「フィルムの秘密」を見付け出し「これ持ってたんだ。やった!梶竜雄の付録本が、これでようやく全部揃った」と喜んでいる…だがそれって『揃った』んじゃなくて、すでに『揃っていた』のでは…まぁ何はともあれ整理の結果、意外な喜びが生まれるのは素晴らしいことである。そして袋に入ったままの本を取り出していると、その中から驚くべき一冊が飛び出してきた。またも楠田匡介訳の「フランダースの犬」がっ!しかもちゃんとバージョン違いなのである。これで三人のネロと三匹のパトラッシュが揃ったことに!とそのあまりに馬鹿らしい光景に、全員大爆笑する。
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その後、おニューの棚を組み立て据え置き、空き部分の寸法を測り、さらなる棚の設置を計画する。時刻は午後五時半に至り、本日の目標を無事に達成し作業終了となる。いやぁ皆様、古本とVHSとの大乱闘、お疲れさまでした!清々しい気持ちで、夕食にハンバーグやトルコライスを食べながら、次回の作業について早くもミーティングする。(つづく)
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2017年12月28日

12/28家庭文庫に本を買いに行く。

総武線に一時間ちょっと揺られ、千葉の新検見川駅で下車。橋上駅舎から北側に出ると、階段の柵に店舗や住宅が間近に迫る、たて込んだ駅前である。階段を下りて家並の低い街に入り込んで行くと、すぐに懐っこい笑顔を浮かべたひとりの男が近付いてきた。移動古本屋さん「自動車古書店 いい日旅立ち」(2011/11/08参照)店主の石倉氏である。今日はその古本屋たる荷台を、オレンジの幌で覆い尽くした白いトラック・ボンゴにすぐさま乗り込み、近所の彼の自宅へと走り出す。途中、団地脇のミニミニ商店街で、営業しているのかどうか、いや店舗なのかどうかも定かでない古本屋さんを偵察した後、かつての新興住宅街の一角に建つ一軒家に到着する。階段を上がり、和風玄関から招き入れられ、スリッパを履いて廊下を進む。突き当たった右側の部屋に入ると、開いた本棚や机に囲まれた部屋。そこを通過して奥に進むと、本の詰まったダンボールと、まだ本がキレイに並ぶ色んな種類の本棚が立つ和室にたどり着いた。ここは石倉氏の母親が長年主催してきた“家庭文庫(自宅の一室を近所の子供たちに開放した小さな私設図書館)”で、残念ながらこの十一月にその役割を終え、閉鎖となってしまったのである。それを機に氏から連絡を貰い、児童文学がたくさんあるので箱に仕舞い込んでしまう前に見に来ないかと、嬉しいお誘いをいただいたのである。文庫の名は、息子二人の頭文字を並べた『TY文庫』。欄間には、かつて開かれた読書会などの写真飾られ、天井の際を名作絵本「やこうれっしゃ」の絵がぐるりと、列車のように取り巻いている。途端に岩波新書「子どもの図書館/石井桃子」が高速で頭を掠める。熱心に本を読みに来る子や、ただ遊びに来る子、ず〜っとひたすら本を読んでいる子、時間を潰しに来る子、新しい本を楽しみに来る子…色んな子供がここを居場所にして、やがては離れて行ったんだろうな、とかつての文庫の面影を想像する。ここを利用する時は、玄関から入るのではなく、左の庭先から直接上がり込むカタチになっていたそうだ。絵本や本の半分はすでに箱に詰められているが、奥一面だけは往時のままの姿である。私にとって懐かしい本から、最近の本までしっかりと集められている。気になる本は売ってもらえるとのことなので、子供に戻って棚を眺め、ダンボールの中も覗かせてもらい計四冊を手にする。その他にもサービスで、「いい日旅立ち」用の在庫古本棚も見せていただき、さらに二冊を選ぶ。途中帰宅した文庫主催者の母君と挨拶を交わし、「みんな子供たちが読んだ本ばっかりですみません」「児童文学の研究資料もだいぶあるんですよ〜」「最後の方は、みんなに本を読んでもらえるまでが、大変でねぇ〜」「残った本はどうしようかしらねぇ〜。この子が売ってくれるなら、それでいいんだけど」などとお話しする。いや、今まで本当にお疲れさまでした。この住宅街の中の、本好きの子供の居場所であった小さな文庫は、きっとみんなの心の中に、文字や物語の小さな種を宿し、何処かに受け継がれていることでしょう。理論社「かくれんぼ物語/今江祥智・作 長新太・絵」(カバーナシだがこれは嬉しい)宝文館「NHK放送 ヤンボウ ニンボウ トンボウ/飯沢匡」光信社「海底の探検/安川静夫」(カバーナシ)偕成社名作冒険全集「怪盗ルパン(1)/ルブラン 朝島靖之助編著」春陽文庫「無敵先生/小川忠悳」小学館てんとう虫ブックス「チャレンジ!名探偵カゲマンの推理クイズ/山根青鬼」を計2500円で購入する。
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そして来年一月、「自動車古書店 いい日旅立ち」は、クラウドファウンディングで資金の一部を集めた
『新刊書店の無い九州の自治体へ行き、古本を売りに行きたい!』という志高いプロジェクトを実行に移すそうである。
◆1月5日(金)熊本県合志市 ひのくにふれあいセンター
◆1月6日(土)熊本県南阿蘇村 ひなた文庫さんと共に。
◆1月7日(日)宮崎県串間市 あかつき荘
◆1月8日(月)鹿児島県垂水市 ベイサイドホテルアザレア

果たしてお客が本当に来るかどうかも分からない、あくなき古本販売チャレンジ!南の国の方々、ぜひこの多少オンボロトラックな移動販売古本屋をお楽しみに!
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2017年12月27日

12/26古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【プレリュード】

最近すっかり「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の別動隊(つまり盛林堂・イレギュラーズ!)として、お手伝いバイトをしまくっているのだが、本日も三年ぶりの日本最大最強の古本魔窟・日下三蔵邸の片付けお手伝いに同行する(2014/12/10参照)。

盛林堂・小野氏と西荻窪から一時間半ほど車を走らせ、神奈川県某市の高台の住宅街に到着する。すると邸宅前には、午前十時半の陽を受けて、にこやかに手を振る日下氏の姿が。今日の最大のミッションは、倉庫化している別宅マンションの一部片付けにあるのだが、やはりまずは本邸を見ないと始まらぬと、邸内に招き入れられる。ぬぉっ、そこには以前と寸分変わらぬ、古本&献呈本タワーに挟まれた廊下が、奥へ奥へと延びて行く魂の震える光景が展開。あぁっ!永瀬三吾の「白眼鬼」がまだここにある!ほぅっ!三橋一夫の見たこともないスリラー小説本が!などと早速虜になっていると、「まずは寝室の本を少し仕分けして運び出します」と日下氏が宣言を下す。あまりにも本が積み上がり過ぎ、本が崩れるのが恐くてうつ伏せにしか寝ることの出来ない布団周りを(うつ伏せに寝ていれば、背中の方が防御力が高いので、本が落ちてきてもケガが防げるという論理に基づく)、すっきりさせようという目論見である。と言うわけで、日下氏が寝室入口の本を退かして中に入り、そこから玄関までの中継を私が受け持ち、小野氏が玄関から運び出して駐車場に置かれたダンボールに詰め込む体勢を採る。寝室内に立ち、本の山を崩しながら日下氏が選別に入るが、もう「ちっ、めんどくせえな」という声が聞こえる。単行本やコミックはパッと見で要不要が判断出来るが、雑誌類は表紙に掲載されたタイトルか、目次を見ないとその判断が出来ないのだ。だが、逡巡する日下氏のスローペースに合わせていても、周りに積み上がる本の背を見ているだけで、充分暇がつぶせて楽しめるのが恐ろしい。また、本は相変わらず絶妙なバランスで積上げられており、おいそれと手を出せない状態なので、何の本だか気になるが、書名が分からない本が散見される。だが、ちょっと見えている帯文、例えば三笠書房の本で『死刑台を組み立てる音が…』などと読み上げると、日下氏が即座に「絶体絶命」!と書名を教えてくれるのである。驚異の帯文イントロでドン!…末恐ろしい能力である…。

そんな風に仕事をジリジリ進めながら、奥の階段の下層に古書が積み上がっているのが気になり、目を凝らしてみると、春陽文庫「売国奴/永瀬三吾」を発見!だがこの本は以前の訪問時に、マンション倉庫で奇跡の署名本を見せてもらっているので、即座にダブり本であることが判明する。スゴい本が、ダブって階段の礎となっている…全く持ってクレージーである。そのクレージーさを小野氏に報告すると、ダブっているなら!と即座に買取交渉に入るため、本を掘り起こして行く。するとその過程で、大阪圭吉「海底諜報局」の珍しい異装第三版までもが、階段の礎なっているのを発見してしまう…嗚呼!
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そして初めてこの日下邸で、日下氏以外の人と出会う。何と二階から、八名信夫+藤子不二雄Aと言った感じのモミアゲがナイスな父君が姿を現したのだ。他にも人が住んでいたんだ…外出する父君のために、一旦玄関から外へ出る。「本ばっかりですみませんね」とにこやかに穏やかに宣う父君と、庭先でしばし京浜急行とこの辺りの崖地特性について語り合う。

と言うような有様で楽しく午前中を費やし、比較的軽めな作業を終えて、昼食を摂った後にマンション倉庫に車で移動する。日下三蔵号は、相変わらず期待通りに後部座席に資料や古本を満載し、サスペンションを深く沈めている…。

3LDKマンションの扉を開けると、二年前にスッキリ整理開通させた面影は消え失せ、本の山が極限まで迫り、物品を満載してはち切れんばかりの紙袋が通路を埋め尽くしてしまっている。日下氏は玄関棚の中から、平井和正のポケSF「虎は目覚める」を見付け「あれ、ここにあったんだ。これで買わなくていいぞ」などと、自分家なのに本を見つけて喜んでしまっている…。そんな風に主(あるじ)にとっても魔窟化しているこちらでのメインミッションは、右側の台所・居間・和室・風呂場への通路を開通させ、さらに様々な物の詰まっている風呂場をどうにかして改めて本置場に変貌させることに決まる。廊下部分に天井まで積み上がるコミック類を、それぞれが狭い通路で身体を無理な体勢に捻りながら、午前中同様リレー型式で馬車馬のように最大稼動して、玄関外に運び出して行く。私は廊下で山の切り崩しをひたすら担当していたので、二時間後にすべてを運び出した後表に出てみると、そこには奇妙な現代芸術的光景が誕生していた。階段壁に沿って積み上がる、コミック階段である。
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マンションの住人が通りかかる度に、「すごいですねぇ、本がたくさん」と言われ、日下氏が「いや、年末の大掃除なんですよ」と軽く虚偽発言を繰り返しているのが、微妙に切ない。だがそんな苦難を乗り越えたおかげで、無事に廊下の撤収作業は終了し、壁が見え(しかもフットライトやコンセントや何も詰まっていない納戸が発見される)、奥への行き来ができる状態となる。
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※左が作業前。右が作業終了十五分前。
「いやぁ、通れるっていいな」と思わず呟くと、何故かこの言葉が日下氏のツボに入り、その言葉を繰り返しながら爆笑をしている。

そんな楽し気な氏はさておき、ここからがようやく折り返し地点で、表に出した本を要不要に選別し、お風呂場の荷物を退かして新たな一時コミック置場にして、再び邸内に本を運び込む作業に従事すせねばならないのだ。階段下で選別途中、謎の本「ミッキーの宇宙旅行」というA4判の児童本が見つかり、日下氏が「こんなの買った覚えないなぁ。ミッキーマウスなんて、まったく必要としてないんだけど」と訝しがりながらビニール袋から本を取り出すと、ミッキーはミッキーでもただの茶色いネズミで、原作がなんとフレドリック・ブラウンなのであった。「ブラウンだからか!」と納得しつつ「これが僕が持っている一番大きいブラウンの本です」と、何だかとても嬉しそう。色々ちゃんと整理すると、面白い発見があるものですね。そんなことがありながら、二時間ほどまたもや馬車馬の如く働き、表がすっかり暗くなった頃、ついに風呂場が美しい倉庫として完成にいたる。
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う〜む、見たことのない麗しい光景だ。「正直ここまで作業が進むと思いませんでした」と日下氏から最大級の労いの言葉をいただく。いや、確かに三人とも、とても頑張ったのである。

ようやく一息ついたところで、その頑張りの奇妙な副産物として、部屋内各所から発見されたレアなTOMOコミックスを、戯れに一堂に集めてみる、各所で発見時から、ダブりがだいぶあることが分かっていたのだが、恐ろしいことに九冊がダブり、そのうち四冊は三冊もダブっていたのである!それをすべて並べてみたありえない異様な光景に、全員で大爆笑する。そして超絶嬉しいことに「ダブり本、どうぞ差し上げますよ」と、突然九冊をいただくことになる…いや、最近書庫整理を手伝う度に、素晴らしい本をいただいてしまっており、もはや“古本ゴロ”のような役得に預かっているのだが、正直言ってとても幸せなのである!いただけるものは、遠慮なくいただいておこう!そして大事にします!

結局夕飯も食べる長帳場の一日仕事となり、東京に戻ったのは午後十時半。長い長い楽しい一日であった。この整理作業は、年始に第二弾を行う予定なので、どうかみなさま、日下邸の変貌をお楽しみに!

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これが本日の収穫。TOMOコミックスは、やはり小酒井不木原作の「少年科学探偵 消えたプラチナ」クイーン原作で望月三起也劇画の「クイーンの事件簿 恐怖の家」構成永島慎二の「赤い酋長の身代金」が嬉しい。都筑道夫「いじわるな花束」もダブり本ということで手渡される。だがさりげなく一番嬉しかったのは、春陽文庫「売国奴」のカバーをカラーコピーさせていただたこと、これを先日新保教授から拝受した裸本(2017/12/19参照)に巻く!カバーコピーは日下三蔵氏提供!本体は新保博久教授提供!ここに、ミステリ界最強の「売国奴」が誕生した!万歳!
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2017年12月21日

12/21神奈川・日ノ出町 9Bricks

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以前から「たけうま書房」さんに開店をタレ込まれていたオカルト系ネット古本屋さんが、ついに昨日実店舗をオープンさせたので、早速駆け付けることにする。京浜急行で東京を抜け出し、横浜で各駅停車に乗り換え日ノ出町駅下車。南端の大きな改札を潜れば、そこは駅と線路の真下で、太いコンクリ橋脚が威圧的に林立している。階段を下りて『平戸桜木道路』を南に出ると、道の両側には古い雑居ビルと商店建築が連なる懐かしい街並。右手に野毛山の気配を感じながら道路を南下して行き、『日ノ出町一丁目信号』を通過したところで、右手のキレイなマンション一階前に、古本ワゴンが出されているのが目に留まる。おぉ!何と立派な路面店!まさかこんなにちゃんとしたお店だとは!と軽く度肝を抜かれる。化粧岩ブロックに飾り立てられた、中にガラスウィンドウが連続。看板などはなく、ガラスドアに紙の案内が貼られているのみである。店前には四台の銀ワゴンが出され、100〜300円の新書サイズ本・オカルト・児童文学・女性実用ムック・雑本・単行本・古書がギッシリ詰められている。古書や古い新書サイズ本が楽しい。そしてすでにオカルト系があふれ出してしまっている…大陸書房の本が多いなぁ…。店内は横長で、カーペットの上に白いスチール棚が並び、三本の横長通路を造り出している。壁棚は左壁のみで、右壁と奥壁にダンボール箱が積み上がっているのが事務所っぽい。右奥に帳場があり、『ひょっこりひょうたん島』のハカセ的男性が、慣れない接客に戸惑いながらも古本と格闘しておられる。お店は元々事務所店としてスタートするはずだったのだが、ひょんなことから嬉しいことに、実店舗としの機能も兼ね備えるようになったそうである。だから店内の本に値付はされておらず、ある程度のジャンルは固まっていたりするのだが、基本的にはネット用並びの、普通客から見たらカオスな棚造りとなっている。だが楽しい!以前から横浜の催事に出展しており、偏ったおかしな本を出す新星として注目していたのだが、UFO・幽霊・怪談・お化け・宗教・新興宗教・迷信・民俗学・民間伝承・疑似科学・心霊科学・恐怖・あの世・UMA・異次元・霊界・超能力・サンカなどがドバドバヅラヅラ続いているのだ。古書がかなり多いのも、楽しさに拍車を掛ける要因となっている。あぁ、棚の上に横積みされている本にも、気になるタイトルが散見される。この店内空間では、普段は弾かれたり蔑まされたり“科学的”にいじめられたりする、こちらの隠秘学の世界の方が、断固たる正統派なのである!ここがシールの剥がし目で、今にも世界がベロンと捲れてしまいそうだ…素晴らしいぞ!もちろんオカルト系以外の本も混ざり込んでおり、戦争・文学・ミステリ・歴史・将棋・山岳などが、世界の秘密と恐さに凍りかけた心をポッと温めてくれたりもする。この感じだと、今のところ実店舗として機能しているのは表のワゴンで、店内は従来の事務所店といった感じである。ちなみに値段の付いていない本は、店主に聞くとすぐ専用データベースを検索して素早く答えてくれる。帳場に気になる何冊かを持ち込み確認してみると、手堅い値段が付けられている印象であった。しかし、ジャンルのメーターを振り切ってしまったお店は、どうしてこうも輝いて見えるのだろうか。店頭&店内で、嬌声を上げながらオカルト本を吟味している女性客の出現も、またスゴい。開店おめでとうございます。日ノ出町に来る新しい喜びが生まれました!新教育研究会「怪奇傳説の科學/豊田清彦」荒地出版社「わが最大の事件/クルト・ジンガー」を購入する。

鶴見まで移動して「西田書店」(2010/01/07参照)に立ち寄る。店頭100均+税棚から、昭文社出版部「デザイン街路図/和田誠」(カバーナシ)ちくま少年文学館5「おっちょこちょ医/なだいなだ」を計216円で購入。ここからは京浜東北線で帰路に着くことにした途端、東海道線の事故に巻込まれ、駅間で車中に一時間ほど閉じ込められてしまう。
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2017年09月17日

9/17神奈川・石川町 るなぱあく古本街

東京ではさほど激しくなく、一定量でシャワーのように雨が降り続ける中、午後に外出。向かったのは、横浜の雨の馬車道で、地下から顔を出すと、改装中で封鎖された『県立歴史博物館』の威厳ある灰色の陰鬱な姿が視界に飛び込んで来る。そのまま伊勢佐木町に向かい、まずは「活刻堂」(2009年10月12日参照)に腰を据え、講談社「13の凶器」「13の密室」「13の暗号」三冊共に渡辺剣次編を計300円で購入する。そして時刻が午後四時に近づいたので、狭い横丁に飛び出して傘を開き、南東に向かってビルの谷間を歩き始める。目指すは寄せ場として有名な寿町の『寿町総合労働福祉会館』跡地で開催されている、劇団「水族館劇場」が企てた混沌とした野外イベントなのであるが、嬉しいことにその一環として古本市も開かれているのである。寿町で古本…まさに夢のような組み合わせである。台風接近のため人影の少ない街路を寂しく進み、羽衣町→不老町→翁町→扇町と、何だか昔話の世界に迷い込んだような町名を伝い、やがて寿町に至る。ビル化した現代的な安宿とコインランドリーと飲み屋が連続し、傘を差した老人が街角の所々に立ち尽くしている…確かに独特な雰囲気は今もって維持しているが、全盛期ほどの荒れた危なさは感じられない。町の南西に位置する福祉会館の跡地は、『安全第一』と書かれた工事現場用の塀にぐるりと囲まれ、さらに内部が工事用の足場や鉄骨で、武骨に荒々しく、俗っぽく言えば寺山修司or丸尾末広的見世物小屋空間として組み上げられ、どんよりとした雨空の下で、町からは完全に浮き上がった“ハレ”の日の空間として、堂々と怪しく存在していた。『盗賊たちのるなぱあく 娯楽の殿堂』と掲げられた入口ゲートの下には、すでにグッズや演劇の当日券を買い求める人々の列が、雨にも負けず出来上がっている。ゲートを潜り、礫と泥で出来た会場内に入り込む。様々なゲリラ的建築物には、鬼海弘雄のポートレートパネルが大量に貼付けられ展示されている。さて、古本市は何処で…と入って左方向に進んで行くと、左にはメリーゴーランドのような奇怪で巨大なオブジェがあり、すぐ下にはすでに池のように広がってしまった、暗褐色の大きな水たまりがある。その上を延びるようにして、三列のアルミニウム足場が橋として組まれ、その先には薄暗い空間を湛えたテントがあった。強い水気の中に古本の気配を感じ取り、ゆっくり慎重に足場の橋を進んで行くと、おぉ!やはりそこが古本市の会場だったのである。
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橋と同じくアルミニウム足場で作られた高床の足下三十センチは、すでに泥水に侵略された、水上古本市なのである!テント内は薄暗く、開かれた入口側以外は、棚や平台が置かれ、中央には背中合わせの本棚二本と古い冊子類や紙物の詰まったプラ箱が並んでいる。市としては小規模である。並ぶジャンルは社会問題・アングラ・サブカル・アウトロー・映画・和本・古い洋探偵小説雑誌・演劇・思想・ストリップ・性愛・日本近代文学・教科書類・田中小実昌など、奇怪な芯が通った世界である。だが、だが、何よりも、この台風が生み出してしまった、亜細亜バザール的空間がとにかくアナーキーで素晴らしく、上陸した瞬間からトキメキが止まらない!次々橋を渡って来る人も感嘆の声を上げながら、非日常的過ぎる空間の虜となって行く。たちまち混み合う会場。そんなお客さんたちと、池側では気をつけないと転落してしまうので、慎重に譲り合いながら、古本を細かくチェックして行く。その間に「古書 信天翁」(2010/06/27参照。店主・山崎氏は長靴を履き、池の中を自由に動き回っている!)「古書ほうろう」(2009/05/10参照)「古書 赤いドリル」のみなさんと、挨拶を交わす。普通の古本市だったら、台風接近の荒天は絶望的な状況なのに、皆一様に笑顔を浮かべ、この状況をマックスに楽しんでいる模様。なんと麗しい変わり者たち!いや、正直この奇跡の光景を生み出した、みなさんと台風と水族館劇場には、とにかく絶大なる感謝を捧げたい。今日来て本当に良かった!と喜びを噛み締めながら、嬉し過ぎ楽しみ過ぎて、会場を馬鹿みたいに三周はしてしまう。八雲書店「金泥/吉井勇」アルス「フレップ・トリップ/北原白秋」(白秋の樺太旅行記。昭和三年初版だが函ナシで口絵も二枚抜け落ちている。でもやっぱり嬉しい!表見返しには神保町「一誠堂書店」(2010/03/27参照)の古い古書店ラベルあり!)を計700円で購入する。
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再び橋をギシギシ渡り、泥と礫を踏み締めて、寿町の街路に舞い戻る。さっきより、雨と風が強くなり始めている。斜向いの角地ビル一階には、謎の酒屋があり、ちょっと怪し気な男女が嬌声を上げながらアルコールに酔い痴れている。途端にこちらもビールが飲みたくなるが、とてもその中に飛び込む勇気はない。水上古本市の興奮覚めやらぬまま、傘も差さずにワンブロック歩き、やたらと酒類の豊富な自動販売機で缶ビールを購入。グビグビ喉に流し込みながら、ようやく傘を差して元来た道をたどり始める。寿町→扇町→不老町→羽衣町と進み、ちょうど『国道16号』にぶつかったところで、缶ビールを飲み終わる。あぁ、台風の日の、夢の中のような古本市よ、さらば。この市は今日が最終日であった。
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2017年05月17日

5/17千葉・みのり台 smokebooksみのり台店

昨日は夕方に「西荻 古書モンガ堂」(2012/09/15参照)に歩いて向かい、富山房「ワイルド童話集/平井呈一譯」(函コワレ)を1000円で買った後、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に手堅く補充。そして店内で岡崎武志氏と合流し、「中央線古本屋合算地図」の打ち上げに雪崩れ込む。意外に本らしい本を作ってしまったお互いを褒め合い労いつつ、反省会に加え次の四冊目のアイデアもぶつけ合う。非常に楽しく大切な時間である。だがしかし飲み過ぎて、二軒目のバーでビールグラスを握ったまま、あえなく熟睡してしまう…。

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明けて本日、中央線→山手線→常磐線と乗り継ぎ、さらに新京成線で三駅進む。ホーム東端の改札から街に出て、すぐの踏切をしばらく電車待ちしてから南に渡り切る。これまたすぐの車通りの多い県道を東に曲がり込むと、通り沿いのリサイクル店のシャッターに「沖愛堂古書店」なる文字を発見し、しばしその前に佇む。上には『家具処分』などとも書かれているが、開くことはあるのだろうか?だとしたら見てみたい…。そんな突然の出会いに心を多少掻き乱されながらさらに歩を進め、通りの両側に飲み屋が続く地帯を抜けると、線路がたちまち丸見えとなり、三本目の南への脇道に『みのり通り商店会』のゲートが現れる。そこに入り込んで行くと、中規模三階建てくらいの集合住宅で出来た、ちょっと奇妙で静かな街となる。大きな箱の間を歩くような気分で100mも進むと、左手に今度は巨大な昭和的マンションが姿を見せる。その一階ミニ商店街の左端に、下総中山(2011/01/25参照)から移転して来た、新たな「smokebooks」が開店していた。表には立看板に加えて、左に大判本・児童文学・絵本のラック棚&絵本箱、右に単行本箱&単行本棚と雑誌ラックが、安売値で置かれている。そしてちょっと薄暗く洒落た店内に進むと、広い!かなり広い!そのためか通路も広く採られた余裕のディスプレイが展開して行くが、本の量はざっと見ても楽しめそうなほど並んでいる。道路側の右スペースには、窓際にオススメ絵本類が飾られ、大テーブルの上には建築・デザイン・アート関連の新刊が面陳。壁際の小さな棚には、新刊の絵本や「こどものとも」などが並んでいる。左側には日本文学・日本近代文学・文藝雑誌・詩集がディスプレイされた棚があり、裏に回ると日本近代文学・詩集・セレクト海外文学が、古書含有率高く収まっている。とても感じの良い眺めである。壁際にはいやに角張った変わったフォルムの自転車が、レコード箱とともに置かれている。奥のアートブック&リーフレット・和洋ファッション台をクリアして奥に進むと、左壁には遠い奥まで大きな棚が続き、洋書のイラスト集・タモリ・植草甚一・高平哲郎・平岡正明・小林信彦&泰彦・徳川夢声・赤本漫画・「グロテスク」・音楽・映画・テレビ・カウンターカルチャー・和洋アート・写真・工芸・建築が雄大に肩を並べて行く。向かいには棚が二本縦列し、手前には世界・文化・思想・自然・満州・山岳、奥にはデザイン・ビンテージ雑誌&絵本・紙芝居が集められている。奥右側部分のフロアには、料理島(古書あり!)と来店した子どもが読書を楽しむスペースが設けられている。そして大きな壁棚には、児童文学新書・和洋絵本・洋書絵本・児童文学が、大量に豊かに収まっている。最奥のこれまた広いバックヤードを備えた帳場には、ハンチングに黒縁眼鏡のオードリー・若林風青年が立ち、その前面を文庫棚が覆っている。アート・ファッション・絵本・文学・料理が小気味よいお店である。古書が目立つのもその小気味よさに拍車を掛けている。値段はちょい安〜ちょい高と、手頃なものからしっかり値まで様々なので、そのバランス感覚もまたまた小気味よい。二見書房「カナシマ博士の月の庭園/ピエール・ブール」を購入する。

帰りにご近所の「永末書店」(2010/05/11参照)にも立ち寄り、みすず・ぶっくす「ロシアの神話/G・アレグザンスキー F・ギラン」を200円で購入する。
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2017年04月24日

4/24神奈川・藤沢本町 藤沢本町で古書市。

『関東学院大学図書館』で卒業生でもある佐藤さとるの展示が行われているのを知り、逃すまじ!と午前のうちに、相変わらず古い変電所がホーム向かい側に建つ京浜急行・金沢八景駅に駆け付ける。駅から離れて、細長く人工的な平潟湾沿いに出た途端、冷やっとする海風と潮の匂いが顔にぶつかって来る。歩き始めると、すぐに橋でつながった小さな弁天島が姿を現わすと同時に、遥か昔の子供時代の記憶が甦る。母の親戚を近くに訪ねた折、家族全員でこの島に渡ったことがあるのだが、橋を渡った途端に、木陰で熱烈な抱擁を交わすアベックがいることに全員が気付く。母はその気まずさからすかさず「もう行きましょう」と言うのだが、父は徐に煙草を取り出し「まぁいいじゃないか。せっかくだから色々見て行こう」などとほざき、海に向かって腰を下ろしてしまったのである。動くに動けぬアベックに(向こうも当然こちらに気付いている)、島に釘付けになった五人家族…計七人が、小さな島の中に立ち尽くしていた…。そんなことを思い出しながら、湾沿いに長く歩き続けて現代的でピカピカな大学に到着。正門で守衛室に案内を乞い、校舎ビルに囲まれたまだ人影の少ないキャンパス中庭を突っ切り、図書館へ。だが入口から中に入ると、自動改札の如きゲートが立ちはだかり、学外人間の侵入を拒んでいる。そこでちょっと離れた場所にある受付のお姉さんに必死に合図を送り、展示を見に来た旨を告げると、シュパ〜ンと未来的な音を響かせてゲートが開き、二階への案内と手続きをレクチャーしてくれた。言われるがままに二階カウンターで入館手続き(もう入館しているのだが…)を済ませ、二階入口の三台のガラスケースに収まった、こじんまりとした展示を鑑賞する。一番大きなケースには、図書館所蔵の新しめの著書が飾られている…これならケースに入れずに、手に取って読めるようにした方が良いのでは…。他には「だれも知らない小さな国」の初版本、『すべては空想からはじまる』と書かれた直筆色紙、按針塚周辺の地図など。一番目を惹いたのは1970年発行の「わんぱく天国」の元本である。思えば今まで文庫版しか見たことがないので、おおっ!と感動してしまい、いつか絶対に手に入れてやる!とガラスケースの中に勝手に誓ってしまう。このようにすぐに見終わってしまったので、2006年の学報に掲載された佐藤さとるインタビューページのカラーコピーをいただき、受付のお姉さんに挨拶して図書館を出る。そしてちょっと時間は早いが、学食に潜入してカツ丼で昼食を摂る。満腹した後、再び潮風を楽しみながら駅に戻り、京浜急行→根岸線→東海道線→小田急線と細かく乗り継ぎ、藤沢本町まで一時間で移動する。

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単純なホーム端の改札を出ると、小さな駅前広場に地元的商店街が直結している。藤沢の名を冠し、一駅離れただけだが、あの大きな都会的街並とは正反対の、静かで長閑な郊外である。そんな緩めの街並とお店の並びをキョロキョロ見回しながら東に進むと、大きな県道に行き当たる。そこを北に進んで行くと、すぐに正面に立派な『白旗神社』の鳥居が臨め、その交差点脇には白いショッピングセンター『トレアージュ白旗』。ここで八月までの長期間、200円均一の古本市が開かれているのである。うまいこと何か買えるであろうか…。一階は塾や飲食店なので二階へ迷わず上がると、早速『神奈川県古書組合』の赤い古本まつり幟があったので、まずは一安心。中に入るとそこは催事場のような空間で、主に文具のワゴンが場を占めている。だが右奥には、やっぱり嬉しい古本棚の凛々しい姿が見えているではないか!近寄ると、二本の背中合わせの棚が並び、五本×四面の計二十本に、神奈川のお店が送り込んだ200均の古本が収まっている。まぁ200均だから…と失礼ながらさほど期待はせずに棚に視線を走らせるが、これがなんとなかなかに上質なのである。こ、これは!買える、買えるぞ!と、期待以上の本を見つける喜び(言い換えれば『200円でこの本が買える喜び』である)を味わいながら、たちまち腕の中に本が集まる。「海風舎」(2010/09/25参照)「文雅堂書店」「高村書店」が特に良い感じ。市が八月まで続くということは、補充も入れ替えも定期的に行われるのだろう。もしこれが家の近くだったら、相当マメにチェックを入れることになりそうだ…でもここは藤沢…本町…くぅ。雲井書店「日の果て/梅崎春生」六興出版「風眼抄/山田風太郎」中央公論新社「懐かしい未来/長山靖生編著」「砂の城/鮎川哲也」文藝春秋「諫早菖蒲日記/野呂邦暢」を計1000円で購入する。

「諫早菖蒲日記」は、見返し裏に『諫早花菖蒲』の言葉とともに署名落款が。さらに章扉には、この本の最初の購入者により『昭和五十二年十一月二十五日 長崎、諫早の街にてこの本を求む』と書かれている。「諫早菖蒲日記」の初版は五十二年四月で、これは八月発行の第三版。ということは、諫早では新刊書店で野呂のサイン本が売られていたのであろうか…そんなことを考えるのも楽しい一冊である。さらに「風眼抄」は写真ページ裏に毛筆署名入り。最初は本扉に作家名が入っていないので、ここに作家名が印刷されているのかと思ったが、細部を良く見ると、印刷では出せない墨の濃淡や掠れを確認し確信。でも実はまだ半信半疑…同じ本をお持ちの方、冒頭写真ページ裏に名が入っていますか?ご教授いただければ幸いです。というわけで今のところ、半どひゃっほう!
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2016年12月28日

12/28千葉・松戸 年末古本市

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日暮里から常磐線快速に乗ると、十七分で松戸駅。陽の当たらぬ底冷えするホームから橋上改札を抜けて、西口に出て空中広場を彷徨いながら、ビル街の樹冠に『ISETAN』のロゴを探す。すると、南西端の道の先に件のデパートを発見出来たので、階段を下り、コンクリ正方形タイルの敷き詰められた歩道を伝い、冷たいビル風に嬲られながら南に歩き、広場を通過して大きなデパート『ISETAN 松戸店』に吸い込まれる。一階大売場の隅にあったエレベータに乗り込み、十階の催物場へ。すると箱から出ると同時に、右側に細く長く奥へと延びる、古本ワゴンの列が視界に飛び込んで来た。昨日から始まっている、シンプル&ストレートな名が付けられた、四日間限りの(つまり三十日まで)、ワゴン約三十台の中規模古本市である。武蔵野辺の古本屋さんを中心にして、千葉と東北の古本屋さん九店が参加している。細長く連なるワゴン通路を、前後ろと交互に見ながら、ジワジワ奥へ進んで行く。市各所にはお粧しした古本屋さんが直立し、会場内のサービスに勤めている。お客さんは疎らな入り。郷土・美術・歴史・近代・風俗・雑本・絶版漫画・付録漫画・大判美術本・サブカル・芸能・映画・社会・人文・絵本・雑誌・文庫…ガラスケースもあり、文学・風俗・漫画関連のプレミア本が飾られている。会場の表側には銀フレーム飾り棚が巡らされ、そこには大判本を中心に、プレミア本や揃い本がディスプレイ。…生まれて初めて目にする肩書き“探偵将軍”とある本に心惹かれるが三千円か…この付録捕物漫画、“白い魔犬”とあり、表紙に大きな白犬が描かれているが、もしや「バスカヴィル家の犬」の翻案じゃ…ガラスケースの上の哈爾浜小冊子特集が素晴らしい。でもやっぱり高いな…この前の古本市で500円で売ったカルピスのオリンピックソノシート、二千円もするじゃないか…などと楽しみながらウロウロ。二冊を手にしてさぁ精算…あれ?何処のレジに行けばいいんだろう?近くに立つ古本屋さんに声をかけると、ガラスケース脇から奥まるバックヤード風小部屋に案内される。そこが催物場のレジになっていた。コミック・ペット異色名作シリーズ「恐怖のミイラ/楠高治 原作・高垣眸」(森下仁丹提供の昭和三十年代トラウマTVドラマのコミカライズ作品を復刻したもの。私は子供の時に懐かしの番組特集などで目にしたくらいだが、暗くて不気味で本当に恐かった。今でも思い出す、おどろおどろしい不吉なオープニングや、望遠鏡で目撃する無音の死体遺棄シーンは、眠れなくなるほど恐ろしいものであった。漫画は「少年クラブ」に同時連載されていたもの。当然子供っぽく恐さは微塵もないのだが、その恐怖の遺棄シーンがちゃんと描かれていたので、ちょっとだけ喜んでしまう)村松書館「地獄譚/長野祐二」(恐らく自費出版の私娼窟&悪所巡り短編小説集)を購入する。今年最後の古本市をありがとう!と心の中でお礼を言い、デパートの外に出て再びビル風に巻かれながら、そのまま裏手の線路際に出る。陽の当たる暖かな跨線橋を渡って「阿部書店」(2009/06/28参照)を見に行くが、残念ながらシャッターが下りてしまっていた…店内の蝙蝠、元気でいるかな。
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2016年12月20日

12/20埼玉・与野 三輪車

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古本神・森英俊氏より、本も少し売っている懐かし物系ショップを教えてもらったので、期待に胸を躍らせながら大慌てで駆け付ける。東口に出ると、小さく見どころなく雑駁とした駅前。すぐの駅前商店街を南南東に迷い無く進んで行くと、右手にほどなくして白い小ビル一階を、すっかりパッキングされた玩具で覆ったような店頭が現れる。それは、雑然としているわけではなく整然としているのだが、それでも何処か異様な光景となっている。たくさんのソフビ人形やフィギュアや企業ノベルティを並べたウィンドウには『古いおもちゃ買います!!』『1980年代までの!ソフビ・怪獣・ヒーロー物・超合金・ブリキのオモチャ◉旧玩具全般!』『あなたの家の押し入れや、倉庫に!古いオモチャが眠っていたら、お電話ください!』と、変なところに“!”が入る貼紙。手動扉を開けて中に入ると、結構広く通路が何本にも枝分かれし、上から下まで玩具に埋め尽くされた空間である。通路は広く歩き易く、棚やガラスケースや物の集合体が形作っているのだが、天井からは繋げた玩具や駄玩具が多数吊り下がり、棚下の通路には大判の本やブツが置かれているので、境目が曖昧な洞窟状となっている。左側奥の通路では、椅子に座った麿赤児風オヤジさんが、『あしたのジョー』最終回のようなポーズでスウスウ幸せな寝息を立てている…しばらくはソッとしておこうか。それにしても、恐るべき玩具に満ちあふれた店内で、触れたらそこからこの身も玩具と化してしまいそう。ソフビ・フィギュア・メンコなどの駄玩具・キャラ物・ヒーロー物・豆本漫画・ぬりえ・カルタ・ノート・ブロマイド・プラモデル…足元に絵本はあるが、古本はいったい…と奥へ入り込んで行く。すると左奥の中央の島の周辺に、付録漫画・特撮本・カード類・ヒーロー図鑑&百科事典・カバヤ児童文庫・「キンダーブック」・旧教科書・図鑑などが取り込まれているのを発見する。ふむふむ、おっ、野村胡堂の「悪魔の王城」がある…この少女クラブ付録の大判時代劇冒険漫画は読んでみたいなぁ…観光絵葉書もあるぞ…などとこっそり楽しんでいると、オヤジさんが「アッ!」と目を覚まし、こちらににこやかに駆け付けてきた。「すいません、寝ちゃってました」「いえいえ、大丈夫ですよ」「何かお探しですか」「あ、古い本を…」「本ですか。本は…この辺りですねぇ」「そうですね。ここに集中していますね」「どうぞゆっくりご覧になってください」…と言うわけで、しばらくじっくりと丁寧に掘り起こしたりしてみる…。基本は懐かし系玩具屋さんだが、少し本もあり。紙物は大いにあり。タイミングが良ければ、良い出物に出会えそうな予感を与えてくれる品揃え。相場より安めの値がまた嬉しい。…おっ、ここには和本が少々。すると値は付いていないが気になる一冊を見つけたので、すでに手にしていた本とともにオヤジさんに差し出してみる。すると「あぁ、値段ないですね。ちょっと待ってて」と奥の入り込めない通路に向かい、電話をかけ始めた。ところが相手は出ない模様。戻ってきて「いや、本はね、弟がやってるのよ。だから聞かないと値が分からなくて。う〜ん、どうしようかな。じゃあ近くなんで、ちょっと聞いて来ようか」と、一旦お店を閉めて自転車で急行することに。その間私は、入口外の椅子に座り、看板の上から顔をひょっくり出し、見知らぬ街を十分ほど眺めて暮らす。お!オヤジさんが自転車を華麗に疾走させ、カーブを曲がってきたぞ!自転車を停め、階段を駆け上がり、鍵を開けながら「すいませんでした」とにっこり笑う。聞けば作家物と言うことなので、値段は1500円。安くもあるし、せっかく自転車で行き来していただいたので、迷わず買うことにする。富里昇進堂 少女文庫「はかなき生立/ゆかり草著 紫峯画」小学館「機械の図鑑」を購入する。すると突然、「どっか悪いとこないですか?」と唐突に聞かれる。「い、いえ…」と答えると「いやなにね、気功をやってるもんで。体にいいんですよ。もし悪いとこが出たら、来て下さい」「ハイ。また何か買うついでに、参ります」と、当たり障りのない返答をしておく。うむ、楽しかった。こういうお店に出会うと、またレトロ玩具屋巡り(もちろん目的は古本である)に火が点いてしまいそうだ。

収穫はもちろん大正三年刊の「はかなき生立」であるが、奥付にあるシリーズ『少女文庫』の説明が可笑しくてたまらない。『少女文庫はお伽文庫の姉さんで悲惨、不幸等有とあらゆる各冊おもしろき事柄を涙の出るような著者独特の筆にて成りたるもの家庭教育として頗る趣味あり実益ある良書であります』とあるのだ。あらゆるおもしろき事柄を説明する語が、“悲惨”と“不幸”しかないのが、何とも恐ろしい…。ちなみに妹である『お伽文庫』のラインナップを見ていると、「探偵少女」「探偵少年」の気になる二冊を発見してしまったので、頭の中の『読みたい本リスト』に刻み込んでおく…いつか出会えるかなぁ…出会えない可能性の方が高そうだなぁ…。
posted by tokusan at 20:37| Comment(4) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする