2023年01月18日

1/18古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第二十五章】

すでに昨日のことである。午前七時半に西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)裏に、白い息を吐きながらたち、盛林堂・イレギュラーズに変身する。店主・小野氏と近場の駐車場に向かい、すでに六千キロをたちまち走破した、新・盛林堂号に乗り込み、神奈川県某所に出発。その目的は、今年初めての日下三蔵氏邸の書庫片付けお手伝いである。小野氏が些事を片付けた後の出発だったので、少し遅めとなってしまったが、優秀な最新ナビのサポートにより、午前九時二十分に現地に到着する。玄関から現れたにこやかな日下三蔵氏と新年の挨拶を交わし、本邸玄関に招き入れられる。するとそこには古本の詰まったダンボールが一箱。
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「それは、YOUCHANさんの個展で出す一箱です。全部山田風太郎で、八十冊ほど入っています」…オゥ、クレイジー!しかもほとんどが百円。「忍法相伝'73」も入っている…。「まだたくさんあると思うので、後で補充本を探しましょう」とのこと。そして廊下で小野氏と日下氏は、あるお仕事の打ち合わせに入る。
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冷たい冷える廊下に座り込み、意見を擦り合わせた後、まずは午前の軽作業を開始する。本邸書庫の第一通路に壁のように積み上がる単行本群を、裏の物置に運びつつ仕分けし、物置行きと不要本に分けて行くのである。それにより第一通路脇のビデオ棚通路が露出されるので、後にそのVHSを運び出し、SF関連をその棚に収めようという目論見である。だがその前に、入口脇のカラーボックに内に詰まった本がダブり本なので「好きなの持って行っていいですよ」とのことなのだが、まずは小野氏がスパスパ気になる本を抜き取って行く…あぁ!創元推理文庫「女郎ぐも/パトリック・クエンティン」(和田誠カバー)なんてのが!などと悔しがった後に、こちらも気になる本を少し抜かせていただく。その後、ようやく作業開始。小野氏が山を切り崩し、それを私が書庫裏口に積み上げ、日下氏が物置に運び入れつつそれらを選別。不要本がある程度堪ったら、それを私が玄関に運び、小野氏がタイミングを見て結束すると言う連携プレイで、およそ二時間作業する…結果、全員寒さと重労働に、あっという間にヘトヘトになる…軽作業じゃねぇ、重作業だ……。
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午後一時前、駅前に出て恒例の美味しい寿司昼食を摂り、後半戦はマンション書庫に移動。こちらでは和室とリビングに積み上がる文庫&ノベルスの山をひたすら選別し、なるべく不要本を出す、つまりは本を減らす作業に従事する。日下氏にとにかく選別スピードを上げてもらい、後は二人で本の山をタイミングを見て差し出して行くカタチである。
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その過程で、たくさん見つかる山田風太郎新書サイズ本…結局最後には百冊ほど集まり、過剰過ぎる補充本のプールに成功してしまった。これは、おかしい。それにもっとあるはずだ。さらに文庫本と単行本も混ぜると、とんでもないことになるぞ…日下氏は、もしかしたら単独で、「山田風太郎書店」を開店出来るかもしれない。そう戦慄した、新年早々の日下邸ツアーであった。
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そして嬉しいことに、文庫の山の中から、小野氏が新たな「女郎ぐも」を発見。本邸の翻訳ミステリ棚にもう一冊あるので、計三冊のトリぷりであることが判明した。というわけで、一冊は私の手に回って来ることになったのである。やった!そんな風にして、午後五時半には選別を終え、新たなスペースを作り出し、およそ八百冊弱の不要本を出すこことに成功した。新年一発目としては、まずまずの成果である。そして本日の労いとしていただいた本で嬉しかったのは、「女郎ぐも」と東都ミステリー「夜よりほかに聴くものもなし/山田風太郎」である。「夜よりほかに聴くものもなし」は、最初超ダブり本の中から東京文芸社版をいただこうとしたのだが、日下氏が「それ八坂刑事が活躍する短編連作なんですけど、どれも犯人の動機が異常なんですよ。『えっ、そんなことで!?』という感じの。昭和三十年代にそんなこと考えてたのは、本当に凄いと思います。面白いですよ。でも、それには入ってないんですけど、東都ミステリー版には、『あとがき』という形で、八坂刑事の独白が入ってるんですよ」「えっ、じゃぁ東都ミステリーじゃないとダメじゃないですか」「もし何処かでダブりが見つかったら出しますよ」と言うやり取りがあり、マンション書庫と入れ前の本の山を崩している時に、見事にダブり本を発掘したのである。ありがとうございます!
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2022年12月14日

12/14古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第二十四章】

すでに昨日のことである。午前七時に家の近所で「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏の操る盛林堂号に乗り込み、盛林堂・イレギュラーズとしての今年最後の日下三蔵氏邸書庫大整理に向かう。冷たい雨はひどくなる一方だが、まぁいつでも大量の古本&本が適所に収まるのを待ち望んでいるので、例え室内に籠ることになっても、やるべき作業は無限にあるだろう…そんな風に覚悟する二人を乗せ、都内の雨渋滞を潜り抜け、午前九時過ぎに現場のある関東某所の住宅街に到着する。日下邸に向かう前に、マクドナルドで栄養補給。そこで私は愚かにも、飲んでいるコーヒーのコップに指を引っかけ、己のズボンをコーヒーまみれにしてしまう小惨事を起こしてしまう…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜。仕方なくそのまま日下邸に移動し、玄関にて出迎えてくれた日下氏と挨拶を交わし、本日の作業行程ミーティングと、そこから少し脱線して、来年の日下氏の遠大な出版計画を拝聴する。そしてまずは家の裏庭に入った、新しい物置二棟を見学。
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質と容量の上がった物置にはすでにカラーボックスが入っており、そこに入る本を想像し、日下氏の笑顔がこぼれ落ち続ける。本来なら納戸部屋からここにバシバシ色々運び込みたいのだが、残念ながら雨がまだポツポツ落ち続けているので、午前中はマンション書庫の小作業に集中することにする。マンション書庫には、アパート書庫から一部の本が運び込まれ始め、少し雑然としていたが、台所から古書群をリビング壁棚に移動させ、すべてを自著棚に換えたことにより、だいぶスッキリとしていた。
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感心する我々を見て日下氏が「ようやく終りが見えて来ましたね」…と大量の本の山の向こうから、自信たっぷりにほくそ笑む………いや、まだまだです…。作業は、リビング壁棚の隙間や上や前に積み上がる単行本・一般文庫・ラノベ・新書コミックを掘り出し仕分けすること。いつものように小野氏が掘り出し、それを受け取った私が単行本を分離し、他は日下氏に手渡し、氏が要不要と分けて行く。これをお昼過ぎまで継続。
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その過程で、装幀家・栃折久美子の『ルリユール工房』が装幀した、世界に二冊しかない都筑道夫の「なめくじ長屋とりもの落語」特装本が発見される。革装もビューティフルだが、丸背の本が取り出し易いよう、函の口の上下に半円の部分が設けられているのがユニーク…こ、これが栃折久美子の装幀か…。
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十二時半に駅前に出て美味しいお寿司昼食。すると雨が上がったので、アパート書庫に寄って少し作業しつつ、雨の様子をうかがいながら本邸物置に手をかけることにする。と言うわけでアパートでは、二間の奥の部屋にはる単行本と新書を、撤収時に運び出し易くするため、手前の部屋に移動させて積み直す作業。いつでもどの書庫でも、本を積み上げる作業中の日下氏は楽しそうである(だが一番楽しそうなのは、やはり本を棚に並べている時であろう)。
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うわわ〜っ!一般単行本の下の下から、木村生死「新科学小説 秀吉になった男」発掘!色んなところにスゴい本が放置されているのは既に百も承知だが、見つけてしまうとやっぱりショックを受けてしまう。
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一時間弱作業して本邸に移動。いよいよ納戸部屋から窓を全開にし、向かいの新倉庫にアニメ特撮関連のムックや雑誌を運び入れて行く。
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三人とも機械のようになって立ち働くと、物置の中はたちまちまんだらけの棚のような光景に…ミステリ関連もスゴいが、この棚もハチャメチャにスゴい。よもや屋外にこんなマニアックな宝のような棚があるとは、誰も気づくまい……。
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一通りそれらを移動させた後は、小野氏は納戸部屋に残り、空いたスペースを生かして新たに単行本や文庫本の山を積み直して行く、我々はさらに奥の新物置に移動し、本邸書庫の裏口から新しめの単行本をドシドシ物置に移動させて行く…気がつけばいつの間にか夕闇が押し迫る。完全な闇が来る前の午後五時前に作業終了。
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ふぅ、本日もお疲れさまでした。このように物置が機能し、納戸部屋が空いて新たにフロアにカラーボックスが入れば、いよいよ本格的なアパート撤収作業も視野に入って来るわけである。そして本日のお手伝い労い本は、珍しくダブり本ではなく、日下氏の編集した自著をいただくことに。
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せっかくなのでその内の二冊に(本当は蘭郁二郎一冊だけだったのだが小野氏が「今日泊の方にしなよ。今日泊が絶対いいいよ!」と推すので、厚かましく二冊に入れてもらうことに)、識語署名をお願いする。すると、アンソロジストとしての真摯で朴訥な願いが書かれた素晴らしいものに。ありがとうございます!来年もまだまだ作業は続くので、引き続き片付けて参ります!
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2022年11月15日

11/15ブックオフで「220えんっ!?」と叫んでしまう。

本日は雨の午前七時に盛林堂号に交差点でピックアップされ、毎度おなじみ「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに、まずは一路北関東某所に向かい、水玉蛍之丞研究家・すけきよ氏をピックアップ。そこからさらに北関東某所の細谷正充氏邸(2019/06/28参照)に向かう。盛林堂・イレギュラーズとして、書庫整理のお手伝いをするのである。雨が小止みになり始めた午前十時過ぎに到着すると、家の手前にあるガレージに見なれない黒豆柴犬が繋がれており、警戒度マックスでギャウンギャウン吠えまくっている。
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以前はこんな子いなかったのに…と思ったら、新しく飼い始めたとのことであった(最初は吠えられまくったが、折りを見て何度も顔を出すうちに、終いには身体中を触らせてくれるほど仲良くなりました)。そんな嬉しい出会いがあり、細谷氏に邸内に招かれ、作業内容を打ち合わせる。まずは午前中は、三階にスチール本棚キットを五本運び上げた後組み立て、そこに二階書庫から搬出した雑誌や本を並べて行くことに決まる。まずは二階書庫に飾られた山田風太郎の色紙にご挨拶し、さらに藤村正太「星が流れる」のオリジナル本に感心した後、小野氏と私が本棚をゼイハァ運び上げ、ぎっくり腰気味で本調子ではないすけきよ氏がダンボールを開けたり本を並べて行く作業をして行く。
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本棚五本を抱きつくように運び上げた後は、必死に組み立て、所定の位置に配置したら、後は二階で小野氏は三階行きの本を掘り出しながら場を整理し、私がひたすら二階から三階へ本を地道に運び上げて行く。
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棚が二本雑誌で埋まった時点で正午を過ぎていたので、昼食を摂り英気を養う。そして午後は、二階書庫の床に直置きになった文庫本を一ヶ所に集めたり、細谷氏が苦労しながら三階行きと判断した本を運び上げ、残りの棚に収めて行く。私は広い書庫の各通路に散らばる文庫を集めたり、またもや本を三階に運び上げたり、二階廊下にプールしてあったダブり本や不要本を一階に下ろす作業に従事し、結局一日中一階から三階を階段で上り下りしていた気が…。
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そんな身体動かしっ放しのハードな労働だったので、午後四時の作業終了時には、もうヘトヘトであった。最後に茶の間で四人でお菓子を食べつつ色々話していたら、すけきよ氏が「いったい何冊くらいあるんですか?」と質問、すると細谷氏が「十六〜七万冊だよ」と答える。そこに小野氏が「いや、色々隠れていたりするので、二十万冊はありますよ」と分析。すると細谷氏が「いやぁ〜今日作業してわかったけど、全然減らないね。一万冊ぐらい、早く減らしたいよ。多分人間が所蔵する適量は、十五万冊くらいだと思うんだよね」…じゅ、十五万冊……完全に人間離れしていますよ。だが、本日の名言であります。

というわけですっかり疲労した三人を乗せた盛林堂号は、すぐさま帰ると思いきや、陽が落ちて明度を落としつつある北関東の広大な風景の中を疾走し、「ブックオフ」に寄り道して行くのであった(小野氏とすけきよ氏は細谷邸を訪れた後は、必ず「ブックオフ」を巡るのが慣例になっているのである)。寄らずにおられない二人の古本魂を多少恨みつつ、仕方なしに私も店内に吸い込まれる羽目に。だがせっかく入ったんだから何か買いたいものだと思い、「BOOKOFF SUPER BAZAAR17号鴻巣吹上」では、角川文庫「大藪春彦マインド 荒野からの銃火」左右社「ヒツクリコガツクリコ ことばの生まれる場所」を計330円で購入する。
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次の「BOOKOFF 東松山松葉店」では創元推理文庫「夜鳥/モーリス・ルヴェル」を110円で購入し、「ブックオフ」を苦手とする私にしては、そこそこ良い本が安値で買えたじゃないかと、ある程度満足していると、小野氏に声を掛けられ、奥の函本が並ぶコーナーに連れて行かれた。「ほら、国書の「ホフマン」があるんだよ。五千円だけど。他にも山尾悠子が並んでるね」などと言われたので、むぅー。渋くマニアックな並びだなと思いつつ。同じく国書刊行会の「山尾悠子作品集成」を興味本位に手にしてみた。その途端にギョッとして、「220えんっ!?」とデカイ声を出してしまった。函の裏面に、220円の値札ラベルが貼られていたのである。最初は「2200円」の見間違いと思ったが、よく見てもそれは220円…「お、小野さん、これ220円だって」「え〜っ?」「いやでも、函の表に貼られたラベルには『6800円(税込(7480円)』ってあるよ。何かの間違いなのかも」「でももしかしたら本当に220円かもしれないよ。レジで聞いてみたら?」「よし、そうする!」と興奮しながら勇躍レジへ。レジのお兄さんに函裏を見せながら「あの、これ、220円ってあるんですけど、本当に220円ですか?」と馬鹿正直に聞くと「ハイ、220円です」と明るい笑顔で即答された。「買います!」とこちらも直ちに返し、嘘のような220円で購入する。二〇一七年第六刷の帯付きで、何処にもおかしなところは見当たらない。俺、ブックオフで初めて大物を安値で釣り上げた気がする…今日このお店に立ち寄り、本当に良かった。小野さん、それにすけきよ君。心の中で「なんでこんなに疲れて帰る時間も遅くなるのに、ブックオフなんかに寄るんだよ」などと思ってゴメンナサイ!ブックオフに寄り道してくれて、感謝感激雨霰です!
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2022年11月08日

11/8古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第二十三章】

二か月半ぶりの日下三蔵氏邸書庫片付けに向かうために、家の近くで盛林堂号の到着を午前七時から待っているのだが、なかなか姿を現さない。一体何をしているんだ?いや、原因はわかっている。昨日の定例の古本屋さん飲み会で、恐らく楽しく飲み過ぎたのであろう…。結局十五分遅れで、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店主・小野氏が謝りながら登場。西荻窪を経由して、都心の渋滞の中に突っ込んで行く。いつもより行動が遅めなので、『環八』はもう大渋滞である。まぁ都心脱出の通過儀礼なので、そこは諦めているのだが、ナビがいつもと違う湾岸を通るルートを提示している。このまま『環八』をジリジリ進むよりは、コンピューターがこちらの方が空いていると指し示しているのだ。信じてみよう!と一路湾岸へ。すると下道から首都高に乗って、湾岸線に入るまではギュウギュウだったが、そこからは実にスムーズで快適なドライブとなった。キリン似のガントリークレーンがたくさん並ぶ港や、デストピアのような製鉄所、広大な工業地帯の向こうに煌めく海を眺めながら、およそ二時間後の午前九時半に日下邸に到着する。邸宅前で偶然であった日下氏のご母堂と挨拶を交わしていると、玄関から「お久しぶりです」と日下氏も登場。まずは仕事部屋の和室に招かれ、現在進行中の多数のアンソロジーについて、山と積まれた資料本を解説しながらレクチャーされる。いや、ここ最近書庫の資料本へのアクセスが格段にアップしたので、お仕事がスムーズに進むのは、お手伝いした身としては、大変に嬉しいことであります。ところが氏はそんな本来の仕事を進めると同時に、書庫の整理も確実に進めていたのであった。書庫の奥のコミック通路もすべて開通し、なんと勝手口から裏庭に出られるようになっているではないか!
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本来の家の機能覚醒、バンザイ!おぉ、この永井豪棚の並びが、1970年代で、年齢的にどストライクでたまらんぞ!
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というわけで午前中のミッションは、裏庭最奥の物置から単行本や漫画雑誌(大量)を引きずり出し、それを日下氏が選別し、空いた物置と勝手口から書庫に運び入れる作業となる。私は物置から埃まみれになって本を引っ張り出し、日下氏を経由して小野氏が書庫で処分本を結束して行くフォーメーションを採る。手前の単行本から作業開始すると、うわっ、城昌幸の若殿シリーズセットとか、桑山善之助(朝山蜻一)「彫金師の娘」とか横溝正史「旋風劇場」とか、早速出て来ましたよ。
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それに「PHOENIX」とか「GUILTY」とかミステリ同人誌も。良く見るとカラーボックス棚には、津原やすみの講談社ティーンズ文庫が大量に…ん?何だこの『GENIUS(天才)』とある紙袋は?うひゃぁ、ウルトラマン&仮面ライダーのカードとアルバムがギュウギュウに詰まってる。「日下さん、スゴいの出て来ましたよ!」「あぁ、これ。子供の頃集めたやつです」とこともなげに答える。「こ、こ、こんなに多種のアルバムが手に入っているなんて、どんだけカード買ってたんですか!」などと激しく嫉妬羨望してしまう。
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そんなことがありながらも、どうにか作業を順調に進め、単行本と漫画雑誌は無事に搬出に成功。と同時に、業者さんが新しい物置設置の下見に現れた。我々はそれをしばし静観した後、後片付けをして昼食に出発。美味しいお寿司をパクパク食べて、午後はマンション書庫に移動。リビング奥の棚と、台所の整理を驚くほど順調に進めて行く。こんなにも作業が滞り無く進捗するのは、広いスペースが出来、何処に何があるか把握出来るようになった、今までの地道でハードな作業のおかげなのである。嬉しいが、微妙に寂しくもある。何故なら、我々盛林堂チームのやるべきことが、段々少なくなって来ているからだ。まぁ当然それは素晴らしいことなのであるし、今での作業がハード過ぎたという一面もあるのだ。だがそれでも、まだまだ大仕事は残っている。臨時のアパート書庫の撤収作業と言う、一大難事が…。
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というわけで午後四時には作業終了し、本邸に舞い戻る。そこで一息つくために、ご家族が労いのために葉山のカフェで購入して来た、めったに買えない人気の『MARLOWE』のプリンをいただく。硬めで口にした瞬間、カスタードとカラメルの薫りが口中で濃厚に絡み合う絶品でありました。
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そしてお片付け恒例の最後のお楽しみ、労いの古本を何冊かいただく。今回特に嬉しかったのはこの二冊、早川書房ジュニア・ミステリ「赤いリスの秘密/エラリイ・クイーン」ケイブンシャ ジーンズブックス ヒッチコックスリラー・シリーズ「蜂」。とても本の開きが硬過ぎる「蜂」は、ノドが割れないようにそっと丁寧に軽めに開いて、苦労して読むつもりです。
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心地良い疲労感と古本を抱えながら表に出ると、家並みの上には、皆既月食前の月が、大きく明るく太陽の光をギラリと反射していた。本日もお疲れさまでした。
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2022年08月24日

8/24古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第二十二章】

すでに昨日のことである。一ヶ月ぶりに日下三蔵氏邸の書庫の片付けに、盛林堂・イレギュラーズとして向かうのだが、午前七時五分前に待ち合わせ場所に現れたのは、真っ黒く厳ついSUVの新盛林堂号であった。
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後部座席に乗り込むとするが、取っ手が何処にもない…あぁ!窓枠と一体化している、これか。と言うわけで新車の匂いを嗅ぎながら、気持ち良さそうにハンドルを捌く盛林堂・小野氏と新車の話をしながら、西荻窪を経由して、午前九時過ぎには現場に到着。駐車する気配を察知して玄関から姿を現わした日下三蔵氏も、挨拶もそこそこ「これが新車ですか」と興味津々であった。そして本日のお片づけミッションは、まずは本邸でスタート。第一は納戸にて仕分けされた推理・SF雑誌類を外に運び出し、階段下の新物置に収納すること。そんなわけで本を抱えて玄関から出て、前庭を経由して物置の日下氏に渡して行く…これはそれほど量もなかったので、三十分ほどで終了する。
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続いて家の裏に回り込み、すでに空になった第一物置を確認して感嘆した後、第二物置の本の運び出しに着手する。ここには文庫本やノベルスや新し目の単行本が詰められているのだが、日下氏によると朝日ソノラマのヤング・シリーズが何処かにあるとのこと…うぅっ、ダメですよ、そんなの外の物置に入れてたら!と嘆きながら作業を開始する。
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小野氏が本を物置から出し、それを私が受け取って勝手口のコンクリ足場に出来るだけ積み上げて行く。そしてそれを徐々に第一物置の日下氏に渡し、仕分けするというフォーメーションである。まずは扉手前に悪魔のように詰め込まれた文庫本を運び出すが、随分と埃と湿気でやられてしまったものもある。中のカラーボックスも有機的に変形していたり、ヤング・シリーズの消息が危ぶまれる状態である。そしてジリジリと襲い来る暑さと、静かに忍び寄る薮蚊に攻撃されながらも、忍耐強く作業を進めて行く。あぁ、中から早川書房「私だけが知っている」が出て来た!などとやはりレア本もチョコチョコ出現するのに驚きながら本を運び出し続ける。
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するとおよそ一時間で、文庫壁背後のカラーボックスの奥の二列目に、ヤング・シリーズの姿を確認!どうやら本は無事のようだ。取りあえず救出を急ぎ、玄関に移動させる。
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正午には文庫壁の運び出しにどうにか漕ぎ着け、物置内の全貌が判明し、文庫の仕分けも終了する。なかなかの進捗ぶりだが、やはり屋外での作業は三人の体力を激しく奪っていた。水分を補給し、駅前に寿司昼食に向かう。満腹した後はマンション書庫に向かい、まずは日下氏の「本の雑誌」連載『断捨離血風録』掲載用に、和室の天袋から出て来たレアなミステリ同人誌「黄色の部屋」「メデューサ」「サファイアー」などを撮影…いつ見ても魂が震える粗末で貴重で濃密な冊子たちだ…。
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それを終えた後は、リビングに山と積まれた同人誌を和室に移動させ、仕分けし易くすると同時に、リビング窓際棚を開放して容易なアクセスを可能とし、現在棚に詰め込まれている単行本を仕分けられる状態に持って行くことにする。というわけで、切り込み隊長の小野氏が同人誌掘削機となり、それを私が和室まで運び、日下氏がそれを積み上げて行くフォーメーションを採る。
0823-7.jpgところがこれが、やってもやっても終わらず、初っ端から無限地獄の様相を呈しているのだ。山は減らぬが、和室の山は増えて行く、そして体力はみるみる減って行く…作業開始一時間ほどして、ヒィハァ同人誌束を日下氏に手渡すと、氏が「ウソだろ…」と、その余りの大量さと先の見えぬ作業に呟くのが聞こえた。「日下さん、今なんて言いました。『ウソだろ』って言ったでしょ。ホントですよ。本当なんですよ。全部日下さんが買ったんですよ。まだあるんですよ!こんなに仕分けるの、もうライフワークと言っても過言じゃありませんよ。いや、きっとこれが日下さんのライフワークですよ!」と、厳しい現実を改めて認識してもらい、作業継続に鞭を入れる。おかげで午後四時にはどうにか見える所に会った同人誌の移動に成功する。全員疲労困憊…だがその甲斐あって、奥棚の四分の三の解放に成功した。
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すると早速都筑棚から見つかるヤング・シリーズの「蜃気楼博士」と「妖怪紳士」…予想はしてたがたくさんあるな…。そんなダブり本や一軍に値する本をピックアップして、本邸に舞い戻る。そこで始まるのはお楽しみのダブり本の確認である。階段下でヤング・シリーズを広げる日下氏は「なんでこんなのがダブってるんだ」などと、いつものセリフを呟いている。
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私の今日の労働の労い報酬で嬉しかったのは、東都ミステリー「飢えた遺産」朝日ソノラマ ヤング・シリーズ「妖怪博士」。言わずと知れた、ともに都筑道夫作品である。実は午前中の物置片付け時に隆慶一郎の面白さについて日下氏と話している時に、話が「鬼麿斬人剣」に至ると、「あれ、都筑道夫の「飢えた遺産」でしょ。「鬼麿〜」は師匠の造った刀を探して折って行く話で、「飢えた〜」は父の造った殺し屋を探して倒して行く話…」「えっ?「飢えた遺産」の殺し屋は、桔梗信治のお父さんが仕込んだって設定なんですか?確か岡本喜八の『殺人狂時代』では、天本英世演じる精神病院の溝呂木が黒幕でしたよね?」「原作と違うんですよ。あれ?じゃあ「飢えた遺産」読んでないんだ。面白いですよ〜」というような経緯があり、「飢えた遺産」を課題図書として与えられたのである。山田風太郎大学・日下ゼミに続き、都筑道夫長屋・日下寺子屋にも入ることになってしまった…よ〜〜〜〜し、読むぞ!
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それにしてもここら辺りに来てようやく、日下邸片付けの先が見えて来た気がする。本の移動だけではなく、出来る作業が増え、何より日下氏がひとりで作業を進められるようになったのは、大きなアドバンテージである。だがそれでも、完全書庫完成までの道のりは険しい。最大の難所がアパート書庫引き揚げにあることは、容易に想像出来るのだ。九月以降も気を引き締め、この日本最大級ミステリ関連書庫の完成目指して、お手伝いして行きたい。
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2022年07月20日

7/20古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第二十一章】

すでに昨日のことである。午前七時、およそ一ヶ月ぶりの日下三蔵氏邸の書庫整理に向かうのだが、実は今まで長年お世話になった、ステーションワゴンタイプの盛林堂号に乗車するのは、これが最後。もうすぐ新車がようやく納車されることになったので、「次回向かうときは、厳つい黒いSUVのハイブリッド車だよ」と「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏が宣うのだ。
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多少の感傷的な気分を乗せ、神奈川県某所に向けて、旧・盛林堂号は健気にひた走る。午前九時半に現場に到着し、出迎えてくれた日下氏と挨拶を交わす。本日の作業は、まずは本邸一階奥の納戸に積み上がる、雑誌・同人誌・コミックスを搬出し、車に積み込む。そして空いたスペースに、裏の物置からこれまた雑誌類をピストン輸送し、それらもマンション書庫に移動させる、というところからスタート。まずは日下氏が選別したものを次々玄関に運び出し、プールした後に車に積み込んで行く。
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だがこれが、選別を先頭にするとなかなかスムーズに作業が進行せぬのが世の常である。主に部屋入口から玄関へ、そして車への部分を担当する私には、なかなか出番が回って来ない。そこで手持ち無沙汰にしているのを見兼ねた日下氏が、書き上げプリントアウトした原稿の校正をお願いして来た。もはや何をしに来ているのかわからぬ状態であるが、快く承知し、白い紙の上の黒い文字に目を走らせる。ちなみに原稿は「本の雑誌」に連載中の『断捨離血風録』であるが、この連載のタイトルはいつも小説や映画などのタイトルにもじられている。今回のタイトルは『木々対宇陀児の決闘』…「なんだかわかりますか?」と詰め寄る日下氏。ちなみに私はすぐにわかったので、日下氏は「よし、やった!やっぱり伝わるんだ。いいぞ!」と大興奮。…いや、恐らく九割五分の人がわからないと思いますよ…。
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そんなことをしながら作業は進み、新たに仕事場に入ったベッドを観賞したり(完全に本棚に囲まれてますな…)、
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香山滋の稀覯仙花紙本「恐怖の不時着」が新たにダブりになったことや(パラフィンの掛かっている既蔵書は、奥付がコピーで補完されておりイタミもあるので、今回完本を新たに購入。それにしてもスゲェ!)、
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洗面台の下に大量の漫画切り抜きが隠匿されているのを目撃したりして、納戸の本は搬出に成功。
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続いて物置の本の運び出しに突入する。日下氏がまずは本に手をかけ、マンションに運ぶものと、取り置きするものと、そのまま物置内に残すものを洗濯し、それを私が受け取り室内に運び入れ、小野氏が積み上げるフォーメーションで作業を進めて行く。だがあらかた雑誌を出したところで、雨と風が強さを増して来た。
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上には一階と二階の庇があるとは言え、水に弱い本にとっては非常に危うい状況である。ひとまず雑誌を運び出したところで作業を中断し、本を満載した車のまま昼食に向かい、その後マンション書庫に直行して本を下ろし、この作業の間に天気の様子を見極め、午後の作業方針を決めようということになる。というわけで駅前に向かいお寿司を食べに行く。
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雨風はまるで台風のように激しくなる一方である。昼食後、マンション書庫に移動。雨に濡らさぬよう、素早く本を運び入れて行く。その途中、日下氏が単独で文庫本の山を整理していた時に発見した、さくら文庫「小桜少年探偵団/島田一男」を見せていただく。こんなもんを普通の文庫本の山に紛れ込ませて、放置しておかないでください!買った時の値段を見ると、「芳林文庫」で七千円で購入している…キィィィ、今なら0の桁が一つ違うのでは…。
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そして和室の整理が一ヶ月来ない間に目に見えて進んでいた。左の壁際に正面の棚に詰まっていた文庫本がキッチリ移動し、その正面の棚は新書サイズコミックの仕分け場として機能しているのだ。これは素晴らしい進捗ぶりである。「素晴らしい!」と日下氏を讃え、小野氏とともに拍手する。
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ところで荷物を運び下ろしても、風雨は一向に収まる気配がない。というわけで本の移動は今日は断念し、残りの時間は本邸書庫の整理をチビチビ進めることにする。棚脇に積み上がった本の山を分類整理後に棚に収めたり、左奥の行き止まり通路を開通させたり(この過程で、ひしゃげたミステリ同人誌「シャレード」の山や、「鬼」「密室」などが見つかる…)するが、実はこの時点で三人は、暑さと湿気のためにだいぶ体力を消耗しており、青色吐息状態。そんなに激しい作業はしていないのに、とにかく暑さを持った湿気に体力を削られているようだ。夏の書庫での作業は、とにかく注意が必要である。
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そんな厳しい間にも、本の山の下から都筑道夫の希書「魔海風雲録」元本の本体表紙のみが発見され、小野氏が「これはヒドい。これはなんですか!これはだめです!」と日下氏を厳しく指導。だが私がその離ればなれになった本体のある場所を覚えていたので、一緒にして事無きを得る。
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さらに二冊だったはずの博文館文庫「人間豹/ビーストン」が三冊に増殖しているのを発見。それを報告すると日下氏・小野氏共に啞然。まったく、いったいどういう書庫なんだ、ここは。実は本が本を生んでいるんじゃないのか?
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さらにさらに雑誌付録の「ゆうれい球団/武田武彦」がダブっているのを報告すると、日下氏が「あ、それは出せません。実は後半に風太郎が入ってるんですよ」「ええっ?」…本当だ。山田風太郎のユーモア探偵小説『青雲寮の秘密』がしれっと収録されている。「というわけで、それは風太郎棚に入れておいてください」「武田武彦のところじゃないんですね?」「風太郎です」…見た目は完全に武田武彦の本なのである…。
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そんな風に楽しく確実に疲弊しながら、ちょっと早めの午後五時に作業終了。小野氏はダブり本や供出本の査定に入るが、今回トリプり本が少なく、ということは私に送られる労いの分け前も少ない状態なのである。見兼ねた日下氏が「小山さんになんか出さなきゃな…」と書庫や納戸を探索した挙げ句出て来たのが、春陽堂の探偵双書「三面鏡の恐怖/木々高太郎」「悪霊島/香山滋」であった。「三面鏡」は五冊、「悪霊島」は…ヒィぃ。数えたくもない。でも嬉しい!「「厨子家の悪霊」は四冊しかないのか…これは五冊になったら出しますよ」と日下氏はダブり本を揃えて棚に収めてしまった。なにぃっ!「厨子家の悪霊」、探せばきっと見つかるはずだ!ぜひとも勝ち取っていかねば!と興奮し、書庫の怪しそうなところを見て回る…だが、見つからない…いや、見たような気がするんだけどな、「厨子家の悪霊」もっとたくさんあった気がするんだけどな…。そんな風に焦って探しまわる私を見た小野氏が「多分、というか絶対アパート書庫かマンション書庫にあるはずだよ。絶対あるから大丈夫。それは次回でもいいじゃん」と慰めた瞬間、和室に積み上がった本の山を見ていた目がキラリと光り「あった!」と叫んだ。うわっ、本当だ。五冊目の「厨子家の悪霊」発見!ありがとう、小野さん!「五冊、五冊になりましたよ!」とガッツポーズをとる私を見て、日下氏が笑いながら「約束ですから、出しましょう」と快く一冊渡してくれた。うわぁ〜い。「恐らく今日、日本で一番探偵双書を手に入れた人ですよ」と認定していただく。
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外に出ると、すっかり雨は上がり、雲が少し切れ始めていた。車に乗り込み焼肉晩餐へと向かい、いつもより早い午後九時四十五分に東京に無事戻る。
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2022年06月15日

6/15古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第二十章】

すでに昨日のことである。この身はすでに盛林堂・イレギュラーズとなり、午前七時の待ち合わせ時間ぴったりに盛林堂号に乗り込み、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店主・小野氏とともに西荻窪のお店を経由して日下三蔵邸へ向かう。都内は車の量がいつもより多いため、渋滞が甚だしい。時間潰しに、もう『本の雑誌』の取材に便乗した形のアルバイトで、初めて日下邸に潜入してから、七年半の月日が経つのだな(2014/12/27参照)などと、大量の本との闘いの歴史に思いを馳せつつ、フロントガラス越しに灰色の空を見上げながら『なんとか夕方まで保って欲しいのだが…』と願っていると、都内を抜けて快調に走り始めたところで、雨が降り始めてしまった…これでは今日は室内作業中心だな、と覚悟を決めて、日下邸に到着する。玄関に出てきた日下氏と「降り始めちゃいましたね」と挨拶を交わしつつ、本邸の側面外階段下に新たに設置された物置を見に行く。おぉ、ピカピカの頑強そうな大きな物置!
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しかも中にすでに大量のカラーボックスが入れ込んであるではないか!「カラーボックスは甥にバイト代を払って組み立ててもらいました。今日はまず、奥の古い物置からここに雑誌を運び込みましょう」「ええっ!でも雨降ってますよ」「まぁこのくらいなら大丈夫でしょ。多少濡れても平気なので、そんなに気にしないでください」…ということで、まずは『SFマガジン』『小説推理』『ミステリマガジン』『EQ』を移送することに。だがその前に邸内に入り、雨避け用のタオルと埃落とし用タオルの二種類を支給されつつ、先日日下氏がマンション書庫から冷蔵庫を運び出すために片付けた玄関から発見された大物を拝見する。永瀬三吾の少年西部小説!「拳銃の街」!その他にも少年冒険小説のソフトカバーが続々と…お、恐ろしい。こんなものが長年玄関に隠されていたとは。その昔、日下氏は故・西村賢太氏より「永瀬三吾の少年ものが存在するんですよ」と教えられたことがあり、それ以来ずっと欲しいと願っていたそうなのだが、「まさか自分の家から見つかるとは…まさか持っていたとは…」…何か届いたら、すぐ袋から出しましょうよう!
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と言うわけで、雑誌移動作戦開始!目的の雑誌を旧物置内から見つけ出し、埃を払ってから一抱えし、家の脇の狭い雑草だらけの通路を移動し、玄関と前庭を回り込み、日下氏の待つ新物置に次々と運び込んで行く。
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足場は悪いが、雑誌類はたくさん抱えても軽いのがアドバンテージ。およそ三百冊近く運び出す。その過程で、物置にあってはならぬ本、斉藤栄の少年科学ミステリー「ジャーネくんの赤いひみつ」が発掘される。これは、家の中に入れておきましょうよう!
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続いてマンション書庫に移動し、各所から先述の雑誌を掘り出して、運び出し易いようにまとめる作業に取りかかる。私はいつの間にか広くきれいになっていた玄関を担当し、靴箱に詰まっていた大量の雑誌や単行本を取り出し積み上げて行く。どうやら件の雑誌類は主にここに集中しているようだ。
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書庫内各所を飛び回る小野氏は、その隙に奥の和室をトランスフォームしており、バラバラに積み上がっていたコミック類を一気に壁状に積み上げ、大きなスペースを確保し、壁棚もその大部が見られるようになっていた。それを見た日下氏は、ほぅと嘆息し、棚前に思わず正座し、未来の棚の完成図を夢見ている。
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ここで作業を一旦中断し、駅前に出てお寿司昼食を摂る。そして満腹した帰り道にホームセンターに立ち寄り、カラーボックス十三本を一気に買い占める。
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午後はこれを組み立て、お風呂場と冷蔵庫置場に据え付ける予定である。マンション書庫に戻り、小野氏がリビング中央でカラーボックスを次々組み立てる間に、私は風呂場のコミック運び出しや、選別後不要コミック本をCD部屋に運び入れる役割を担う。そしてその過程で謎の探偵小説を発見!小野氏に聞くとクロフツの翻訳で、やはり珍しいものとのことであった。CD部屋の翻訳本棚送りに決まる。
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そんなこんなでコミックを全部運び出し、和室に溜めておいた組み立て完了カラーボックスを風呂場にダカダカ据え付ける…なんと異常な光景…この元住居は、元々本が異常なほど詰め込まれていたのだが、より機能的にさらに異常に詰め込む形に、成長変化しつつある…。
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そんな異常さのひとつの顕れが、冷蔵庫置場に発生した。冷蔵庫と置場とは言っても、元は洗濯機置場に冷蔵庫を置いていたのであるが、そのために壁からは水道の蛇口がニョキリと飛び出しているのだ。これを上手く処理し、デッドスペースの発生を避けるために、カラーボックスの背板の一枚を外し、カラーボックスを壁際に押し付けても邪魔にならぬようにしたのである。おかげで大変にシュールな光景が誕生してしまった。「絶対に蛇口は捻れませんね。ここには花瓶かフィギュアでも置きましょう」とアドバイスする。
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いやぁ、それにしても大量のカラーボックスは重かった。すっかり握力は弱まり、腕はフルフルである。結局雨は一日中降り続け、午後五時過ぎに作業は終了。本邸に戻り、ダブり本の選定や買取本の査定に入る。私の嬉しかった今日の労いの報酬はこれ!ついこの間まで『姫路文学館』で開かれていた『生誕100年記念 山田風太郎展』の図録は、日下氏が記事を多数寄稿しているので、著者献呈の一冊をいただく。薄手だが資料写真が豊富で濃厚な一冊である。さらに日本文芸社 世界秘密文庫3「襤褸の中の髪と骨 コネチカット捜査情報/R・フォンテーヌ作 陶山密訳」は、驚くべきことにレオ・ブルースの海賊翻訳本とのこと…し、し、し、知らなかった……。じゃあ、R・フォンテーヌって誰だ?という感じで、本日も無事に作業終了し、焼肉をたらふくご馳走になってから、雨の中午後十一時前に帰宅する。
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2022年05月24日

5/24古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十九章】

すでに昨日のことである。午前七時に盛林堂号で近所に駆け付けた「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と合流し、助手席に乗り込み盛林堂・イレギュラーズに変化する。月曜はお店が定休日なので、そのまま『環八』に乗り入れて、日下三蔵氏邸を目指す。車中では小栗虫太郎「黒死館殺人事件」について、楽しく無駄話を繰り広げる。都内はバイデン大統領来日の影響か激混みだったが、どうにか一時間ほどで脱出し、結局午前九時前には現地に到着する。玄関に立つ日下氏は、すっかり夏らしい白のTシャツ姿で、「今日もよろしくお願いします」と爽やかにニコヤカである。早速和室に招かれつつ、小野氏が秘密裏に持参した探偵小説レア本を「日下さん必要だと思うんですけど」と渡すと、「う〜ん、これは。買います」と即座に売買交渉が成立してしまう。本日供出されるであろうダブり本で相殺出来れば御の字というような、お値段である。その顛末やいかに…。そして先日の松本古本屋行脚の成果が壁際に積み上がっていたので見せてもらうと、おうっ。偕成社「黄金ミイラの謎/久米元一」も紛れ込んでいる。
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「裸本ですが、「アガタ書房」(2012/08/25参照)で二千五百円でした」…あぁ、これは羨ましい。やっぱり松本に行きたい!だがつい先日、杉江松恋氏も松本古本屋行脚を行ったそうなので、二人の古本神の業火により、すっかり焼け野原になっている可能性があるな。さて、そんなことはさておき、午前のミッションは仕事部屋の模様替えからスタート。もはや古本屋の行う仕事ではないのだが、すべては日下氏がすべての蔵書を把握し、スムーズにアクセス出来、仕事を円滑に行うための布石なのである。その過程でダブり本を発見し、買い取るためには、避けては通れぬ作業なのである。というわけで作業開始。仕事部屋にベッドを入れるために、テーブルとフレームラックが合体したパソコン棚を、右の壁棚前に移動させなければならない。まずはラック上に積み上がる山田風太郎塊群を下ろし、壁際に積み上げて行く。
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その後、最低限の必要機器はテーブルに残しつつ、位置を移動。恐ろし過ぎる蛸足配線をスッキリ解消し、機器を戻してシステムを復旧させるのだ。三人で仕事部屋に二時間ほど閉じ篭り、細々した動きを繰り返し、無事に作業は終了する。そしてその過程で素晴らしい発見があった。もう四ヶ月以上小野氏が探していた、ダブり本であるはずの宮野村子「流浪の瞳」が、ついに本棚奥から発見されたのである。「やったァアアアアア〜〜〜〜〜!」と宿願を果たした小野氏は、瞳を輝かせながらガッツポーズ。即座に日下氏と二人でそれぞれの奥付ページを開き、同じ仕様の本であることを確認し、無事に買取本とするのに成功した。
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いやぁ、この日下邸ツアー、毎回何かしら感動があって、本当に愉快である。ちなみに私も仕事部屋棚に蒼社廉三「紅の殺意」と「戦艦金剛」があるのを発見…あれ?これ隣りの書庫にあったはずでは?と確認しに行くと、何と見事に二冊とも冗談のようにダブっていた。あぁ恐ろしい。
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仕事部屋での作業に一段落着け、一時外出して電話線やLANケーブルを買物しつつ、駅前でお寿司昼食。満腹&エネルギー充填後にマンション書庫に移動し、午後はこちらの片付けに集中する。CD部屋の翻訳ミステリー本を、日下氏と小野氏が棚に収めている間、私は廊下や和室に散在するB6版コミックを、日下氏が選別し易いようにリビングに集め積み上げて行く。
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エッチラオッチラ、やっとこどっこいしょと集中して作業を行っていると、あっという間に二時間が経過。CD部屋の翻訳棚はだいぶ形を成し始めていた。
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小野氏がポケミスの山から「十三階の女」の箱付きを見つけ「これ、これ珍しい!」と興奮していたので、こっちにはこんなのがあるよと手渡す。ハヤカワ銀背「トリフィドの日」、箱が付いているのだが、何と「トリフィドの日」を映画化した名B級SF映画「人類SOS!」仕様になっている!珍し過ぎて涎が出るぞ!
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そんなこともありながら作業を順調に進めるが、どうやら翻訳本すべてが棚には入らないことが判明する。さらなる選別、もしくは工夫が必要なので、ひとまずここは棚前に本を積み上げ、問題を先送りにすることに決める。その前に、奥に積み上がるDVDを手前のDVD通路にすべて収めることにして、スペース生み出す作業に入る。小野氏がDVD通路を整頓し、そこにドカドカDVDをバケツリレーで運び込んで行く…途中、小野氏が素っ頓狂な声を上げた。「こりゃなんだ?」と十冊弱の本を手にして出て来た…ここは本当にDVDばかりで、本があるべき場所ではないのである。ぎゃあっ!大倉輝子「殺人流線型」の裸本!なんてこった!するとそれを見た日下氏が「「殺人流線型」…ダブってます…すみません」。まさかこんなところにも本が隠れているとは…この驚くべき事実に直面し、小野氏と私は、もはや日下氏の書庫には「ここには何もないだろう」という予断は通用せぬことを、心にしっかりと刻み込んだのであった。午後五時過ぎにすべての作業を終了させ、ダブり本・一軍本・論創ミステリを運び出し、本邸へと戻る。車中行く手の丘に美しく沈みつつある夕日を眺め「あぁ、〇〇団地に日が沈む」と呟くと、日下氏に「何詩的なこと言ってるんですか」と突っ込まれる。本邸ではダブり本を確認したり、論創ミステリを本邸書庫に収めたりしつつ、「殺人流線型」が本当にダブっていたのを確認する。
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さて、本日のクライマックスである買取本の査定であるが、計算してみると、わずかに日下氏が朝に買った本の値段に及ばぬことが判明する。すると「どうにかしたいな…」と呟きつつ、氏が書庫を徘徊し始めた…だいぶ長い時間悩んでいた。苦しんでいた。今棚を見回してもダブり本はたくさんあるのだが、日下氏の手放す基準には達していないものらしい。だがしばらくすると、「これなんかどうですか」と単行本二冊を持ち出して来た。ここに詳しく書けぬが、それは物凄い弩級の二冊!小野氏が本を見た瞬間、ポカンとしてしまった。そして「いいんですか?いいんですか?本当にいいんですか?」と顔は隠し切れない嬉しさに笑いながら念を押しまくっている。「いいですよ。もう私には必要ないですから」と日下氏。「いや、これなら充分ですよ。むしろこっちの払いがちゃんと出ますよ。マジか。驚きで吐きそうだ」と小野氏。おぉ、凄まじい終幕(カーテン・フォール)!そして私もダブり本の払い下げ品をいただき、盛林堂チームは、これからも日下邸の片付けに心底邁進しなければ!と心に固く固く誓うのであった。
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箱の背が割れているが秋田書店「ジュニア版SF名作シリーズ 黒い光/星新一」や、裸本であるが東方社「蓮華盗賊」「陰莖人」ともに山田風太郎(小野氏が「裸の「陰莖人」がありますけど」と日下氏に報告したら、氏が「裸の「陰莖人」、やだな。フフフフフフ」とツボに入っていた)が嬉し過ぎる。
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2022年05月11日

5/11古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十八章】

すでに昨日のことである。午前七時を境に盛林堂・イレギュラーズに変身し、家の近くの交差点で「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏運転の盛林堂号(実は随分前から新車に替わる予定なのだが、半導体不足などのあおりを受け、延び延びになっているのである。というわけで、まだまだ頑張れ、盛林堂号!)に乗り込み、西荻窪のお店を経由して、いざ恒例の日下三蔵氏邸書庫片付けに出発する。五十日のためか、何処でも車の多さを感じつつ、それでも順調にコースを踏破し、午前九時過ぎには現地に到着する。マックで一息入れてから日下邸に向かうと、すでに玄関先には、春の薄手のパーカー姿でにこやかに手を挙げる日下氏の姿が。「おはようございます。SFカーニバル以来ですね」と挨拶を交わし、まずは庭から家の側面へと回り、近々搬入予定の新物置についてレクチャーを受ける。これが入れば、だいぶ雑誌類を詰め込めるので、書庫各所に新たなスペースが生まれることになる。そして現在仮の仕事場として使っている玄関脇の和室に招かれると、そこはもはやスッキリとした普通の部屋と化し、いつの間にかテレビやレコーダー類も運び込まれ、仕事+映像の編集が出来る、優れた機能的環境を備えた空間となっていた。パソコン越しに見えるテレビ画面を眺めながら、「昔のレコーダーが見つかったんで、今中の番組を少しずつDVDに焼いているところです。十年前のだから、面白いのが色々入ってるんですよ。彩古さん(「古書いろどり」(2012/12/22参照)店主)が街頭インタビュー受けてるのもありますよ」と日下氏。徐にNHK情報番組での米澤嘉博氏追悼コーナーを再生し始めた。「小山さん、そこ閉めて座ってください」と、何故か突然皆で番組を見始めることになる…なんか、友達の家にでも遊びに来たみたいだな…などと思いつつ楽しく観賞するが、最後まで彩古さんは登場しなかった。「あれ?出てきませんでした?おかしいな?これじゃなかったかな?」と他のデータを懸命に探し始める日下氏。すると小野氏が「よし、また今度にしましょう。これやってると、今日一日これだけで終わっちゃいますよ」と神輿を上げる。というわけで本日最初のミッションは、長いカラーボックスの組立である。廊下に置かれた六段分(つまり通常のカラーボックスより長さが倍なのである)の見たこともない代物を、狭い廊下で組み立てるのだ。
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そ、側板が長い!と悪戦苦闘しながら、小野氏が電気ドリルを巧みに操り、板を次々はめ込んで行く。苦労して組み上げた棚は、まるで棺桶のようであった…。それを和室に運び込み、ミッション終了。続いてアパート書庫に移動し、A5版コミックスや同人誌を、ショートカットできる窓を利用し大量に運び出す。
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続いてマンション書庫に移動し、さらに各所に積み上がるA5版コミックを発掘して選別した後、壁棚に入っているVHSテープを結束して押入れに運び入れ、選別後のコミックを空いた壁棚に収める作業に突入する。ちなみに同人誌はこれでほぼマンション書庫に集約されたことになり(もちろん弩級に大量である)、後は日下氏の選別を待つばかりとなった。コミックの発掘は時に意外な場所に隠れていたりするので、なかなか困難であり、時に古本山脈に深い穴を穿ったりする。
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三人で上手く手分けし、リレー方式でひたすら本を動かし、選別し、収納して行く。今日はこの作業に集中し、昼のお寿司休憩を挟んで、午後五時まで懸命に続けると、リビング左側の壁棚前が開放され、新たなスペースも生まれ、さらに奥壁棚の都筑道夫ゾーン(恐ろしいことにほとんがダブりである)にかろうじてアクセス出来るようになった。うぅむ、これは素晴らしい。
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そんな作業の過程に発掘された本日のレア本は、波屋書房の『世界探偵文藝叢書』三冊である。「歴史顛覆者」「刺青夫人」「辯護士町の怪事件」である。ぬぉぉぉ、全部カバー付き!読みたい!序文は江戸川乱歩で、最後に『筑土にて』と書かれているのが珍しい。これは乱歩が筑土八幡に住んでいた時に書かれたものか。おや?「歴史顛覆者」の奥付は『大正十六年』になっている。これもなかなかレアですな。
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そして本日も地味だがハードだった作業の労いとして、お楽しみのダブり本を色々いただく。嬉しかったのはウィークエンド・ブックス「二年目のSOS/ハモンド・イネス 梶龍雄訳」(トリプり本で、ビニールカバーは前々回同様また小野氏に剥がされてしまった(2022/03/30参照))学習研究社「中学生傑作文庫 姿なき怪人/横溝正史」、そして岩谷書店「偽惡病患者/大下宇陀兒」のカバーコピーである。
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その後もはや常連の二階の焼肉屋に赴き、晩餐。こんがり焼いたお肉で失ったエネルギーをギュンギュン補充していると、日下氏が「小山さん、山田風太郎、今何読んでますか?」と質問が。うわわっ、山田風太郎学園・日下ゼミの抜き打ちテストだ!「い、今はこの間のSFカーニバルで買った「太陽黒点」をよ、読み始めたところです」「「太陽黒点」?幾らで買ったの?」「500円です。桃源社版です」「そりゃ安いな。昔読みたくてもなかなか手に入らなかったやつですよ。「太陽黒点」はね、風太郎の恋愛小説なんですよ」「ええっ?」「もちろん殺人は起こりますよ。でも恋愛小説なんです。で、それが、動機も何もかも前代未聞ですごいんですよ。目次見ましたか?」「はい」「『死刑執行・一ヶ月前』から始まって、ずっとね…でもね、そんな不穏な章タイトルなのに、恋愛小説なんですよ。フフフフフフフフ」「ちょ、ちょっと待ってください日下さん。あんまり話さないでください。ネタバレはごめんですよ」「しませんよ、そんなこと。とにかく面白いんですよ。フフフフフフフ」「なんか話したくてうずうずしてませんか?」「あぁっ!「太陽黒点」について話したいっ!だから次会う時までに、読んで来てください」「わ、わかりました」…というわけで五月後半の次回訪問時までに「太陽黒点」を読了することになってしまった。そこからさらに、有名人の名前と姓の一文字目を入れ替え、面白くする話になり、日下氏が例として出したのが、『うつい けん』の『けつい うん』。私が出したのは『くさかり まさお』の『まさかり くさお』。挙げ句『えどがわ らんぽ』を『らどがわ えんぽ』、『よこみぞ せいし』を『せこみぞ よいし』などとしてみるが、意外に盛林堂・小野氏の『おのじゅんいち』を『じゅの おんいち』にしてしまうと、なんだか呪われそうなコワい名に変化してしまったので、三人で大笑いする。そんな風に課題も与えられるとともに満腹し、午後十時過ぎには、無事に西荻窪に帰還する。次回もよろしくお願いいたします。
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2022年04月12日

4/12古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十七章】

すでに昨日のことである。午前七時に家の近くで盛林堂・イレギュラーズと化して、盛林堂号を駆った「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏を待つ。やがて到着した車にスッと乗り込み、今日月曜日は盛林堂書房は定休日なので、お店には寄らずに、そのまま買取現場へとハンドルを向ける。月曜と言う週始まりのせいか、早朝の都内の道はすでに激混み状態…だがめげずに辛抱に辛抱を重ね、一時間ほどで東京を脱出し、さらに一時間かけて神奈川県某所の日下三蔵氏邸に到着する。すると玄関ポーチに立ち、陽気に手を振る日下氏の姿が!車を降りて「おはようございます。本日もよろしくお願いします」と挨拶すると「よろじぐお願いじまず。今、アニメのDVDをヤブオグで落札じまじだ」…あれ?めちゃめちゃ声が潰れてる!すると小野氏が「どうしたんですか?声枯れてますよ。あっ!昨日の歌会(特殊なテーマに沿ってアニメや特撮のテーマソングを高歌放吟するワンダフルな集まり)ではっちゃけ過ぎたんですね!」とズバリ言い当てる。「いやぁ、ぞんなにビドイでずか?あっ、声が出てない」と口を押さえて日下氏苦笑い。さぞかし楽しい会だったのでしょう。そしてまずは、本日のミッション開始前に、物置新設計画のアウトラインについて、本邸周囲の“犬走り”の現場に立ちレクチャーを受ける。外階段の下にある、腰高の物置を撤去し、奥行きと高さのある一棟を据えること。そして裏手に回り込み、一棟の物置から納戸の窓に雑誌類を運び込む計画。さらには奥にある一棟を確かめようと、ちょっと雑草が繁茂した地帯に足を踏み入れると、日下氏が「うわっ、無理だ。この草棘がある」と育った雑草に行く手を阻まれる。
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まぁここはいずれ、物置設置&整理日が近付いたら、切り開くことにいたしましょう。鎌が必要だな…。そんな一幕があって、本日のミッションである。取りあえずはマンション書庫に移動し、日下氏の地道な努力によって立派に開放された、奥の和室の押入れ上段に、ひたすらVHSテープを詰め込んで行くのが、一番の眼目と宣言される。それさえ済めば、後はA5版コミックや同人誌の整理に集中し、さらなるスペース確保に努めることにいたしましょう!と方針決定。というわけで三人で盛林堂号に乗り込み、マンション書庫に移動する。VHS収納に取りかかる前に、押入れ下段の状況を探っておこうと、手前に積まれた文庫タワーをハヤカワ・創元・それ以外に分けつつ移動させる。それらを十分ほどで退かし、出て来たのは巨大な雛人形セットと、未開封の限定版「貼雜年譜」復刻…み、未開封じゃないですか…。でも包装紙にナンバーがデッカく捺されている…これは剥いで捨てられませんな…。
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そんな作業が一段落し、ようやくVHS大移動に取りかかる。リビング内各所にあるテープの山を切り崩し、それを和室にいる日下氏に手渡して行くのだが、一番量が多いと思われる結束したVHS群は、コミックや同人誌の壁の奥にある。そこで小野氏が本の上によじ登り、上からVHS束を掘り出すことに。
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一心不乱に作業し、午前中はこの作業のみに集中する。たちまち押入れはその半分がVHSの塊で埋まることとなった。正午過ぎに書庫を一旦脱出し、駅近くにて寿司昼食を摂る(西村寿行『君よ憤怒の河を渉れ』『化石の荒野』で盛り上がる)。そして帰りに百均ショップに立ち寄り、壁棚に入ったVHSを一時移動保管するための、大きな袋を日下氏が買い占めるかの如く大量購入する。その数16枚。レジに差し出したら店員さんに「おぅっ!」と言われてました…。
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マンション書庫に戻り、フロアないあのVHSはほぼ収納したので、壁棚の特撮番組VHSを買って来たばかりの袋に詰め込んで行く。それらはこんなカタチで和室に一時保管。
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そして空いた棚スペースに、A5版のコミックを並べて行く。この作業も、各所に積み上がる本を一時和室に持ち込み、日下氏の選別後に、棚行きの本を壁棚に収めて行く。この作業時、私に少し隙が生まれたので、整理作業に従事する小野氏の代わりに書庫内を探索し、ダブり本や本邸書庫行きの一軍本の探索に精を出す。…やはりすでに色々片付けているとは言え、細かくチェックして行くと、そこかしこにスゴい本が忘れ去られて眠っている…玄関棚・台所棚・CD部屋の奥の奥・和室壁棚の裏側…結果、こんな本たちが見つかってくれました。
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そんな風にそれぞれの作業を進めて行った結果、死体を転がせるほどのスペースも生まれ、これでこの先のさらなる作業のメドがついたところで、午後五時過ぎに本日の作業は終了。
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「いやぁ、お疲れさまでした」とお互いを労いつつ本邸に移動し、ダブり本の確認へと突入する。その過程で探偵小説雑誌「LOCK」をすべて合体させてみると、何とコンプリートしていたことが判明!おめでとうございます!これでより資料として使いやすくなったわけである。
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そして作業終了時のお楽しみ、ダブり本の選定に入り、労いとして色々拝受する。一番嬉しかったのは、小野氏がお店に在庫がまだあるでと言う理由で譲ってくれた、まひる書房「黄金の書日本探偵小説傑作集 第一輯/江戸川亂歩編」である。「それはいいアンソロジーなんですよ」と日下氏。「大坂圭吉が入ってるから、常に切らさないようにしてるんだよ」と小野氏。渡邊啓助『朱鶯春の皿』横溝正史『花髑髏』小酒井不木『闘争』大坂圭吉『三狂人』角田喜久雄『飛妖』江戸川亂歩『人間椅子』…ぬぉぉ、読むぞ!さらに裸本を持っていた講談社「大迷宮/横溝正史」のカバーカラーコピーも入手し、私にとっては万々歳の労働成果となる。
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いつものように焼肉晩餐後、驚くほど空いた道を疾走し、往きの半分の一時間ほどで帰宅する。
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2022年03月30日

3/30古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十六章】

すでに昨日のことである。やけに気温の下がった、花曇りと言うよりは、ちょっと冬に戻ったかのような陽気の午前七時。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と家の近所の交差点で待ち合わせをして、盛林堂・イレギュラーズとなり、一旦西荻窪を経由して日下三蔵氏邸に出発。前回日下氏が〆切地獄によりキャンセルになった前回分を取り戻すため、月末で交通量の多いアスファルト道路を二時間弱走り詰め、現地に到着。すると自宅前のガレージから、到着を待ちかねたように、ひょこっと日下氏が顔を覗かせている。車を停めて一ヶ月ぶりの挨拶を交わし、邸内に招かれて、まずはミーテイングに入り、「本日は納戸を片付けます」と日下氏が宣言。将来的に本低裏にある物置を片付けつつ新調するKとを見据え、そのためにはサッシ一枚で隣接する納戸の片付け&スペース作りは、必須なのである。というわけで、今日は三人でこの狭い空間に籠り、細々地味に作業することを決意する。
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最初はある程度場所を開けるため、小野氏が山を切り崩し、主に文庫を日下氏が選別し、私がそれらを後に積み上げ易いよう箱詰めして行く体制で作業スタート…だがその前にスペースを少しでも空けるために、廊下にマンション行きの単行本やコミック、それに重要な一軍探偵小説たち(ここにあるのは大下宇陀兒・木々高太郎・甲賀三郎・角田喜久雄・野村胡堂・国枝史郎が主)を廊下に避難させることにする。早速素早く取りかかると、のぁっ!大正時代の角田喜久雄の探偵小説集「探偵名作叢書 發狂」を発掘!
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うぅん、気絶しそう。なんたってこれは角田の初単行本なのである。巻末の『探偵名作叢書』の自社広を見ると、これまた気絶しそうな豪華なラインナップが目を惹きまくる!牧逸馬の「都會冒險」、いつかはこの手につかみたいものである…。
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というわけで、アッと言う間に廊下はこんな状態に。そして三人で順調に地味な作業を小さく繰り返しつつ、スペースを作り出して行くとともに、三方の棚の整理も進めていると、いつのまにやら午前十時一時半。
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廊下はこんな状態に。

早めに昼食をと外出し、近所の山中にある満開の桜並木下を走り、いつものようにお寿司昼食を摂る。
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そして帰りにマンション書庫に立ち寄り、宇陀兒・甲賀・木々・胡堂・角田の古書をピックアップ。これは棚造りの時に、より完璧な状態を目指すためである。紙袋六つにダンボール一箱の古書を携え、本邸に帰宅。だがこれらは邸内に運び入れるとスペースを喰ってしまうので、車内にそのまま残したまま、作業を続けることにする。午後は小野氏は同様な作業を継続するが、日下氏と私は棚造りに着手するため、「探偵倶楽部」と「探偵実話」の巻数揃えとダブり確認に着手する。二ヶ所に分けてあった扇情的表紙ばかりの雑誌を、リストをチェックしながらひとまとめにして行く…す、す、すると!なんと恐るべき数のダブり(トリプりもあり)が産み落とされてしまった!
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これが恐るべきダブり雑誌たちだ!まぁ雑誌は持っているかどうかわかり難いから、しょうがないと言えばしょうがないのだが…。その後は地味に片付け作業を進捗させ、午後五時に車から探偵小説群を持ち込み、廊下のものも運び入れ、ダブりを確認しつつ棚造りに取りかかる。作家ごとに仕分けする日下氏「宇陀兒すげぇあるな…なんでこんなにあるんだ。おっ、木々が追い上げてきました。木々がまくっております」と所蔵数実況中継をしながら、本を積み上げて行く…だが、なんと珍しいことに、ダブりがほとんど出ないのである。
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この意外なほどの正統派古本買い的状況には、には日下氏も小野氏も驚きを隠せない…普通のことなのに…。だが出来上がった棚はやはりと言うか、当然の如く壮観なのである。
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とにかく宇陀兒と木々の量が群を抜いております。あっ、カバーナシだが、久生十蘭の「魔都」がある!見返しを開くと、そこには茂田井武描く「魔都」の世界観が、華やかに定着されているではないか。はぁ、見てるだけで幸せになってくるぞ。
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そんな感じで、本日の作業は無事に終了。労いとして色々日下氏よりいただくが、一番嬉しかったのはトイレ横に積み上がった本タワーの中に、マンション書庫に行くべき翻訳本を発見したので、それを慎重に切り崩していると、最下層から出て来た講談社ウイークエンド・ブックス「愚なる裏切り/フランク・グルーバー」が見つかったこと。しかも三冊出て来たので「日下さん、これも出してください!」とお願いしたところ快諾していただいたのである。だが二冊はビニカバ付きで、一冊はビニカバ欠け。しかもビニカバ付きの一冊が蔵印アリだったので、一番きれいな本は当然日下氏が所蔵し、ビニカバを取り外し印ナシの一冊を小野氏が買い取り、ビニカバを剥ぎ取られた印アリの一冊を私が拝受することになった。とても儚い細帯が付いているので、これはパラフィンを掛けてもらうことにしよう。
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外に出るといつの間にか雨降り。29日は肉の日ということで、恐ろしく賑わう焼肉屋で晩ご飯を食べ、東京に近付くほどに雨が上がって行く夜を潜り抜け、午後十一時に帰宅する。本日も大変おつかれさまでした。
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2022年02月25日

2/25古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十五章】

すでに昨日のことである。およそひと月ぶりの日下三蔵氏邸書庫片付けのために、午前七時から「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに“盛林堂・イレギュラーズ”として、盛林堂号に乗り込み、神奈川県某所を目指す。道に車は多いが順調に走り続け、およそ一時間半後に、日下邸の車庫にバックで乗り入れると、すぐに気配を察知した日下氏が「お久しぶりです、本日もよろしくお願いします」と姿を現わした、すかさず二日前が誕生日だった氏に、誕生日プレゼント件案件資料として、先日手に入れてすでに読了した山田風太郎原作の舞台台本「幻燈辻馬車」(2022/02/19参照)を進呈する。「うわっ、なんですか、これ」「持ってませんか?」「持ってませんよ!」とのことで、風太郎学園・日下ゼミの生徒として、少しは恩を返せたのかなとニッコリ。さて、本日最初のミッションは、仕事部屋に積み上がるコミック&雑誌類を運び出し、マンション書庫に逃がすこと。いよいよ仕事部屋で仕事と居住をともにする第一歩なのである(今は緊急避難的に、懸命の努力でもぬけの殻になった隣りの和室で寝起きしてお仕事されているのだ)。運び出しはもちろん庭に開いた窓からで、リレー方式で盛林堂号に積み込んで行く。私は庭に面した窓の外で受け取り、それを車まで運ぶ役割。腰高まである本の山およそ三十本弱を、せっせせっせと勤勉に輸送する。
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すると午前十一時過ぎには作業が終了したので、珍しく早めに昼食を食べに行くことにする。

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今回の眼福その1。付録本よりも、函入り本よりも珍しい「ミルナの座敷」青い鳥文庫版!

というわけで駅前に出て、美味しい美味しいお寿司昼食。午後、満腹してからアパート書庫に向かい『論創海外ミステリ』シリーズを可能な限りピックアップして、マンション書庫に向かうこととなる。というわけで、本邸近くのアパート書庫に次は移動し、隣りの飼い犬に激しく吠えられながら作業開始。ある程度まとめられていた翻訳本タワーの中から、目的のシリーズのみを抽出し、箱に詰めていく。この間も小野氏の目は油断なく随所に光り、本邸に収めるべき一軍本や、ダブり本である可能性の高い本を見つけ出し、確実にプールして行く。それにしてもこのアパート書庫も、いつの間にかコミックが大増殖している。やはり日下邸書庫片付けの鍵は、コミックの処遇をどうするかということに、最終的にはかかってくるようだ…。
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マンション書庫に到着し、荷物を運び下ろす。本日第二のミッションは、各所に散らばっている『論創海外ミステリ』シリーズを掻き集め、CD部屋の奥の棚に並べること。小野氏は台所廻りをチェックしながら機能的に整頓する任務(もちろん先述した一軍本の発見、ダブり疑惑の本の発見も継続して行う)、私はCD部屋にプールされた翻訳本山脈の中から件のシリーズを発掘する任務、そして日下氏は奥の棚前に陣取り、集まったシリーズをチェックして棚に収めて行く任務となる。およそ六重ほどに立体的に並び積み上がる翻訳本山脈…手前から手を掛け、チェックした列を少しずつずらしながら、奥に奥にと進めて行くしかないか…幸い本を逃がすスペースはあるので、地道に進めて行けば、いずれは終わるだろう。
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翻訳本と地味に格闘しながら、次々シリーズ本を掘り出して行く。午後三時過ぎ、大体集まった本を棚に収めると、シリーズ全体の2/3ほどがキレイに二重に並ぶこととなった。だが、残りの1/3は何処に…日下氏によると「全部ちゃんとあるはずなんで、後は…本邸の納戸部屋が怪しいですね」と推察している。まぁ作業を進めれば、いずれ出て来るでしょう。
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さて、次はなにをしようかということになるが、台所部分の整頓整理を進めたり、ビデオテープの山を逃がしたりして、新たなスペース作りの作業に勤しむことにする。台所では、雑誌類を選別のために運び出し、コミックの山を頑丈に高く再構築し、スペースを生み出していく…ところがその過程で、恐るべき物が発見される。
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もほや何年物か不明な中身入りのペットボトルの数々…オレンジジュースなんかは激しく変色し、何か物体が液体の中に…うぅ、ホムンクルスでも生まれてそう……こわい、こわい…。

ビデオテープは、本の山に隠れデッドスペースになっていた、重い物の載せられぬインターホン棚に収めることで解決!まだまだ入りそうである。
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およそ二時間ほど作業を進め、各所に広いスペースを生み出すことに成功。やけに寒くなって来たので、本日のミッション終了となる。

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今回の眼福その2。「水曜日のクルト」がダブっているなんて!だが実は、片方は精巧に作られた手作り函なのである。これ作った人、本当にスゴい!

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今回の眼服その3。信じられないほどピンピンで印刷色も鮮やかな、海野十三仙花紙本群。奇跡である…。

すっかり暗くなった午後六時過ぎ、引き上げ本&ダブり疑惑本とともに本邸に戻って、お楽しみの答え合わせの時間。作業の労いとして何冊かの嬉しい報酬に預かるが、嬉しかったのはまたまた出て来たダブり本である(結局計四冊あったことになる)雄鶏社「騎士の陥穽/W・フォークナー」と、これはお願いしてコピーさせていただいたポプラ社「黒ばらの怪人/武田武彦」のカバー!本体だけは持っていたので、これで美しく装わせることが出来ることに。
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ちなみに余談だが、日下氏所蔵の「黒バラの怪人」は、二十年前に四千円で茗荷谷の「土屋書店」(何度もお店には行ってみたが、いつもシャッターが閉っており、私はついに入ることは出来なかったお店である)で購入したものとのこと。「これ、献呈署名本なんですよ」「えっ?」と見返しを開いてみると。香山滋宛の著者署名が……ワナワナブルブル…。何はともあれ、今日もおつかれさまでした。

そんなこんなで無事に東京に戻った午後十時半。なんと小野氏が晩御飯を食べた焼き肉店にお財布を忘れてきたことが判明。すぐさま慌てて電話すると、ちゃんと保管されていることが確認できた。あったからいいようなものの、何面白いことやってんすか!
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2022年01月13日

1/13古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十四章】

すでに昨日のことである。午前七時に盛林堂・イレギュラーズとなり、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏の運転する盛林堂号で、もはや通い慣れ過ぎの日下三蔵氏邸へレッツゴー!都内はどの道にもやけに車が多い朝だったが、東京を抜けてから充分に時間を取り返し、結局午前九時過ぎには現地に到着する。日下邸車庫にひとまず車を入れようとバックしていると、バックモニターにはすでに玄関前に立つ日下氏の姿が映っていた。車外に出て「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」と新年の挨拶を交わし、十三日ぶりの再開を喜ぶ。そして取りあえず本邸内に招かれ最初にしたことは、日下氏が単独納戸整理中に発見したダブり本の確認である。東方社の甲賀三郎や春陽堂「夜鳥/ルヴェル作」など数冊。奥付などをしっかりチェックし、今日の最低限の買取本を確保したところで、マンション書庫に移動する。本日のミッションは、リビングと和室に潜在するド大量のB5サイズ漫画雑誌を掘り起こし、それを日下氏が選別した後、前回チェストを運び出したことにより開いた脱衣所スペースに、必要な本をビッチリと積み重ねて行く計画である。小野氏がリビングを担当し、私は一番雑誌量が多いと思われる奥の和室を担当する。
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…さて、右壁のコミック棚沿いに、多量の雑誌タワーが見受けられるのだが、その前には文庫本やコミックが護るように積み上がっている…まずはこれを移動させねばならぬのか…と、作業を開始する。今日の作業を端的に言えば、漫画雑誌をひたすら見つけ、日下氏の元に運び、不要雑誌を受け取って玄関や廊下に積み上げ、さらに同人誌をリビングに移動させるというものである…これが、雑誌があまりに大量なために、延々延々と続いたのである。ひたすら漫画を移動させ、運び、積み上げる…何だかある種の刑罰みたいだ。おぉ、小野氏は本の山の上に昇り、壁棚際上部から攻めると言う大胆な作戦を敢行中。
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だがあちらはまだ良い、掘削していると面白い本や珍しいミステリがみつかり、またスゲェ本が並ぶ壁棚にアプローチ出来るのだ。対してこちらは、ひたすら漫画マンガまんが!なのである。お昼休憩のお寿司昼食で、座敷の畳縁が寿司ネタ模様になっているの気付き、漫画一色に染まった心が少し癒されたりする。
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そして午後も永遠に続くかと思われる漫画責めに遭う。だが、刑罰みたいな作業でも八時間ほど続けていると、その成果が目に見えて表れて来る。ようやく和室から漫画雑誌と同人誌を駆逐し(途中終わったぁと思ったら、押入れにたくさん入ってるのが発覚し、ガックリ気落ちしたことも)、日下氏が作業し続けた脱衣所を見に行くと、おぉ!レンガのように、建築資材のように、強固に美しく築き上げられた壁のような姿が!
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そして最後の仕上げに、台所への道を開通し、黒っぽい本が並ぶ棚にたどり着くと、未開封のダンボールが発見される、開けると何と佐野洋の春陽文庫セット!ワハハハハ、なんでこんなの注文してるんですか!と一同大笑い。
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「佐野洋面白いのにね。でも今はちょっと復刊は難しいかも」とは、そのセットを見た購入者たる日下氏の弁。いいや、いつか日下さんなら、きっと作るに決まってますよ!そして本日一番の発掘本は川野京輔「たそがれの肉体」だそうである。
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これは後に本邸でダブり本であることが判明し、無事に盛林堂が一冊を買い取ることになりました。河野典生のレア・ペーパーバック「残酷なブルース」と「三匹の野良犬」がダブっているのと、「ザ・サムライ」に至っては四冊あることが判明し、いつもながらに一同で楽しく呆れる。
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今回の重労働の労いとして、山田風太郎妖異小説集1〜6や双葉新書「運命の車」やもちろん「ザ・サムライ」などをありがたく頂戴する。定例コースの夜の焼肉パーティでは、何故か声優の話から古いアニメの話に移り、日テレ版『ドラえもん』のオープニングを日下氏とともに合唱し、楽しいひと時を過ごす…酒も飲まずに何やってるんだ、このオッサンたちは…。そんな風にすっかり満腹して帰京しつつ、車内で本日の買取品の一冊、春陽堂「夜鳥/ルヴェル」(函ナシ。函はかなり珍しいとのこと)を売ってはくれまいかと小野氏の交渉を持ちかける。すると今日の重労働を鑑みて、安値の二千円で交渉が成立する。あ、ありがとうございます!西荻窪にはかなりスムーズに移動出来、一時間強で到着。無事に一日のミッションを終える。家に疲れ切って帰ると、おぅ、ヤフオク策冊品が届いている!握力の衰えた手でボール紙を破り、古本を取り出す。昭和十二年刊の長編探偵小説、春秋社「鐵の舌/大下宇陀兒」(函ナシ)である。ライバルナシの三千円で落札。函ナシとは言え、春秋社の和製探偵小説本!見よ、この素晴らしい清水崑の水彩表紙画を!あぁ、今夜は「夜鳥」とこれを枕頭に、眠ることとしよう…。
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2021年12月30日

12/30古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十三章】

すでに昨日のことである。午前七時に自宅近くで盛林堂・イレギュラーズとなり、今年最後の日下三蔵邸片付け出発のため、すでに到着していた盛林堂号に乗り込もうとすると、いつも共にお店に向かうはずの奥さまの姿が見えない。助手席に滑り込んで小野氏に仔細を聞いてみると、何と足を負傷されてしまったとのこと。その後、病院の診察後に連絡があり、強度の打撲であることが判明したが、西荻窪のお店は急遽臨時休業に。年末は何かと何かが起こりますな。シャッターに貼紙をしていざ出発。
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やはり年の瀬とあって都内の道はすでに空き始めており、途中東名高速での帰省ラッシュにちょっとだけ巻込まれるが、午前九時半には無事に現地に到着する。本邸で日下氏と合流し、すぐにマンション書庫へと出発する。本日のミッションは、脱衣場にある木製のチェストを表に引きずり出すこと。そのためには廊下や玄関の古本タワーを何処かに逃し、チェストが通り旋回する道を造らねばならないのだ。というわけでまずは前回トイレ前に積み上げた本をリビングに移動させ、それを日下氏が要・不要に選別して行くことになったのだが、本が大量過ぎて意外に時間がかかることが判明する。すぐさま小野氏と日下氏が方針転換の協議に入ってしまったので、私はしばらくCD部屋をウロウロ……奥の翻訳ミステリ本棚の前で、何気なく視線を上げると、エンタメ系文庫の上に、いやに古い本が二冊揃って載せられているのを発見する。背伸びして取ってみると、ぬぉぉぉぉぉっ!宮野村子の「伝説の里」!
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すでにダブっているのはわかっていたのだが、そのダブりが何処にあるのか不明で(日下氏は「絶対CD部屋の奥にあるんですよ」と常々言っていた)、小野氏のブルドーザー作業を経ても見つからなかった代物なのである。喜び勇んで二冊を手にしてリビングに飛び込み「「伝説の里」見つけました!」と報告すると、「何処にあったの?やった!」と上がる歓声。いや、ミッションはいきなり頓挫したが、不明のダブり本が出て来るとは上々の立ち上がりである。そんなことが呼び水となり取りあえず選別は放棄して、まずはCD部屋の整頓をさらに進めてアクセスを良くし、そこに廊下の本を逃がし、何はともあれチェストを出すことにする。日下氏と小野氏がCD部屋にこもっている間に、私はひたすら廊下の古本たちを削いで行く…一時間二時間…かなりのスペースを確保することに成功。今までの魔窟状態をどうにか解消し、嘘みたいに廊下と玄関が通り易くなった。
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最後にチェスト前に積み上がった雑誌類をリビングに移動させ、引き出し類を引き抜いて軽量化を図り、それらを表に運び出す。そして小野氏を呼び、一度運び出しチャレンジをしてみようと提案。二人で駕籠屋のようにチェストを前後で支え、廊下を慎重に進む。玄関のクランクも無事に通過して、あっけなく表に出すことに成功。思わず全員から「やった、出たぁ〜」と喜びの声が上がる。運び出したチェスト跡地を見ると、大きなスペースがポカリと開いていた。「これはたくさん本が積めますねぇ〜」と日下氏がニンマリ。本を逃がす新たな場所が生まれたということは、この本だらけの書庫では、片付け作業がよりスピーディーに進捗するということなのである。
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というわけで本日のメイン作業が事無きを得て終了したので、午後はCD部屋の整理をさらにノンビリと進めつつ、ダブり本の探索に精を出すことに決める。お昼ご飯はいつものように美味しいお寿司。午後二時前にはマンション書庫に戻り、小野氏が見易いように整理を進め、日下氏が本を要・不要に分け、不要本を私が風呂場前まで運びプールして行く作業工程を採る。その合間に本邸一軍棚に加える本や、確実にダブっている本、ダブっているおそれのある本を選定する作業を進めて行く。その途中で日下氏が「これ見てください。赤川次郎「セーラー服と機関銃」の初版本です。何処か変だと思いませんか?」「変……うむむ?ちょっと見つからないですが…」「カバーの絵、セーラー服じゃないでしょう」「あぁあぁっ!」全く持っておおらかな本だったのである。イラストは鴨沢祐仁。発注ミスですな…。
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さらに作業は進む、ところが最初は楽勝だと思っていた作業が、段々とハードになって行く…何故なら、日下氏が不要本として出す本の量が、絶え間なく大量に続いて行くのだ。二百…三百…四百…いつの間にか七百冊。そのカウントを聞いて小野氏が「八百冊まで出しましょう」という。さらに加速するスピード…九百…「千冊越えましたよ」「まだもう少し出します」
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「千冊か。そろそろ縛らないとな」…千百…千二百…「まだ出るの?車に乗るかなぁ」「まぁ乗らなければ、置いて行けばいいですよ」…などとやっていたらついに千三百冊に到達!久々の大冊数を出す結果となる。奥を覗くと、棚が異様なほどスッキリしている。「これで本がたくさん入りますよぉ〜」と上機嫌の日下氏。すでに時刻は午後六時である。
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整理過程で見つかった面白い本。厳重にビニールで密封されたブリタニカの「きる」という絵本。
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日下氏も「なんでこんなの買ってんだろう?ちょっとどうしても開かないので開けてみてください」と手渡されたので、ビニールと全力で格闘しページを開いてみると「ぶん・こまつさきょう え・さとなかまちこ」というスゴいコンビの絵本であった。「うわぁ、良く買ってた。偉い、俺!」と日下氏。こんなの全然知りません!

そして本邸に引き上げ、お楽しみタイムの本日のダブり本確認作業に突入。
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写真は大量の小栗虫太郎戦中戦後仙花紙本(ダブりトリプり)が並ぶクレージーな状況を喜び記念撮影する日下氏の図。私もその余録に預かり、函ナシ本やトリプり本をいただくが、一番嬉しかったのは、驚異のクアドり本だった春陽堂書店 探偵双書「畸形の天女・十三の階段」である。
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本扉が切れているが、それでも身に余る一冊である!そんな結局はいつものようにハードな作業を終え、最後にアパート書庫に日下氏が明日のコミケ参戦に携える、コミケ用巨大バッグを回収して、本日の、そして今年の作業を完了とする。
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実はこの作業は来年も続くので、引き続き来年もよろしくお願いいたします。※この日下邸片付けに興味津々の方々は、「本の雑誌」の日下氏の集中連載『断捨離血風録』とともに当ブログ記事を読み込んでいただくと、よりハードな片付けの臨場感が味わえます!
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2021年12月24日

12/24神奈川・鶴見市場 古本屋さいとう

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いつもより早めの連載の取材を済ませてから降り立ったのは、京浜急行普通電車しか停まらぬ小駅。橋上改札を出て東口の階段を下り、外に出るとそこは線路際。東にちょっと進んですぐに南に入ると、駅裏手に固まる小ビルのひとつに古本屋さんが…ぬぉぉっ!営業開始時間の十三時はとっくに過ぎてるのに閉まってる。だが待てよ、閉ざされた入口横にキャリーケースが置かれ、その上にはピザの入った箱も置かれているではないか…これはしばらく待てば開くのかもしれない。よし、踏切を越えて「普賢堂書店」(2011/04/04参照)を見てから、戻って来ることにしよう。もはや十年前となる記憶をたどり、うろ覚えの道をテクテク。…ちゃんとたどり着けた上に、ちゃんと営業中だ。頼もしい限りだ!と店頭棚&ワゴンを見てから、中央通路一本きりの店内を奥に進撃し、講談社ノベルス「キマイラの新しい城/殊能将之」矢貴書店「銭形平次捕物控 捕物長編 怪盗系図/野村胡堂」(カバーナシ)を計300円で購入し、そそくさ駅へと引き返す。そしてお店の様子をうかがうと、今度はしっかりと開店していた。空振りせずに、本当に良かった。そう感動しながらお店に近づく、小ビル一階の小さなお店は、入口付近に台車に乗せた箱や小棚を多数展開させている。入口右側には絵本が多く並び、最上段にはクリスマス本がディスプレイされ、プレゼント用のラッピング見本まで飾られている。入口右側には新書&ノベルスの小棚があり、ちょっと見ただけで『期待が持てるお店だな』との予感が背中を奔る。ノベルスの中に古いものや後藤明生の文章指南書などが混ざっているのだ。左の文庫棚に目を移すと、並びは比較的新しめだが、一冊創作元推理文庫の白帯が混ざっていたりして、さらに期待を掻き立てる。とその時、ちょっと奥で棚の整理をしていた男性店主がこちらに気付き、「わっ!」とビックリして身を引いた。害意がないことを伝えるために「こんにちは〜」と挨拶しておく。看板を首から下げた鹿人形の横を通り中に進むと、外から見たままのお店で、ほとんど通路のような狭さと小ささである。左壁には相撲関連・児童文学・絵本・戦争・歴史・鉄道・文化・文学・美術・安部公房などが奥に向かって並んで行く。お店の外観と名前から、新刊系をメインに扱うお店を勝手に想像していたのだが、古書や七十〜八十年代辺りの珍しい本がしっかりと混ざっているので、完全に侮っていたことを心の中で謝罪する。そして右壁に目をやると、うぉぉぉ!と興奮してしまった古めの函入り児童文学が集まり、その下には女性・実用などなど。そしてさらに、棚上おススメディスプレイ・文庫本・哲学・思想・澁澤龍彦・幻想文学・海外文学・ビジュアル雑誌・図録と続く。奥には『さいとう』さん(恐らく)の詰める狭い帳場が造られている。本の数はお店の小ささに比例して少なめだが、見るべき本が潜んでいる楽しいお店である。値段は安め。創元推理文庫「完全殺人事件/クリストファ・ブッシュ」偕成社 新訳えほんシリーズ「まっくろネリノ/ヘルガ=ガルラーさく・やがわすみこやく」理論社・童話プレゼント「ノコ星ノコくん/寺村輝夫・作 和田誠・絵」(カバーナシ)を購入する。ここはぜひともまた見に来ることにしよう。アーリー和田誠の才気が迸る「ノコ星ノコくん」はすでに持っているのだが(そっちもカバーナシである)、千円なら買わずにおられないでしょ!
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というわけで二冊になりました。いわゆるひとつのダブりですな……。
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2021年12月16日

12/16古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十二章】

すでに昨日のことである。もはや毎月のレギュラー行事となった、日下三蔵氏邸の書庫片付けに、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに出動。盛林堂・イレギュラーズとなった私を自宅近くで盛林堂号にピックアップしてもらい、もはや走り慣れ過ぎた道を、多少渋滞に巻込まれながら疾走し、午前九時半には神奈川県某所の現地着。まずは日下邸・本邸に顔を出し、本の影の少なさをキープしている和室にて、本日のミッションの打ち合わせ。メインはマンション書庫の方となり、現在風呂場に据えてあるタンスを外に出したいとのことである…一聴、古本屋さんが手掛ける本の片付けなど無関係なように聞こえるが、書庫の状態を詳細に把握している我々はすぐに感付く。玄関から入って右に廊下を曲り、リビング手前をさらに曲がり込んだ、脱衣所のあの奥にある木のタンスを?いや、それには、玄関や廊下に壁のように建設された、古本+コミック+CD+DVD+紙物の重層を完全に撤去しなければならないじゃないか!むむむと三人が額を寄せ集め、その廊下の大量のブツを逃がすためには、玄関入って左のCD部屋の無作為乱雑CDタワー群を整理し、新たなスペースを生み出して、そこに運び込む他ないということで一致する。尚、この作業には「あの部屋の整理を進めれば、奥の奥に固まる黒い本が出せるはずです」と日下氏が証言した報酬がついてくることとなった。「よし、やるぞ!」と気合いを入れるが、「その前にこの家でもやることがあります」と言われ、まずはカラーボックス三つを組み立て納戸部屋に搬入。
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そしてそこに新たに探偵小説&ミステリ雑誌「幻影城」「ヒッチコック・マガジン」「マンハント」「耽奇小説」などを並べて行くので、その号数チェックなどの事務作業を行う…ふう。
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一時間ほどしてマンション書庫に出発。三人縦列で入り込み、入口の積み上がる物品を必死に跨いでCD部屋へ。左手にCD棚に周囲を囲まれた乱雑ゾーンがあるので、小野氏はいつものようにブルドーザーの如く整理に従事し、日下氏は右の棚が立て込むゾーンに侵入し必要雑誌の発掘と不要本の仕分けに従事、私は不安定な入口付近に待機し、手の届く範囲の整理を行い、さらに日下氏から本を受け取り、極狭廊下をひょいひょい伝って必要雑誌&発掘重要古本はリビングへ、不要本は風呂場入口に積み上げる役割となる。
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そんな風に作業を進めて行くと、たちまち恐ろしい古本が次々と発掘される。森下雨村「39號室の女」(これは確かダブりのはず)がっ!都筑道夫原作の映画台本がドッサリと!うわぁーーん、DVDの下から帯付きの宮野叢子「紫苑屋敷の謎」がぁん。見たことのない表紙の南澤十七「雷獣境」!フォークナーの「騎士の陥穽」が異装版で二冊!うわぁ〜〜〜〜〜、國枝史郎の探偵名作叢書第五編「沙漠の古都」がぁぁ〜〜〜〜!
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小栗虫太郎「探偵時代小説集」の戦時版!そして極め付けは、小野氏がCDの下から発掘した久生十蘭の「金狼」。その朗報を聞いた日下氏は「やった、ずっと探していたんです。あまりにも見つからないんで、五万円で買おうかと思っていたところです」と宣った……だ、だからダブルんですよ…。
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午前の作業で、リビング入口からCD部屋の奥まで見通せるように!

などとやりながら午後二時前まで作業し、プールスペースが出来たところで作業終了。駅前まで出て、美味いお寿司で栄養補給する。午後はいよいよ廊下の整理に突入。私があちこちに積み上がるCDを部屋入口まで運び、それを小野氏がスペースに運び込み、日下氏が選別積み上げという体勢。とにかくプラスチックのケースを見つけたら、がガッと腕に抱え込み、アリのように運び続ける…短時間でこんなにCDに触れるのも運ぶのも初めてですよ…。その作業が終わったら、現在紙袋の山で塞がれているトイレスペース前を空け、そこに廊下の本を積み上げて行くことにする。まずは大量の中身の入った紙袋を台所スペースに逃がす…たちまち台所に恐怖の山が出現。そしてコミック&文庫&雑誌をギチギチにトイレ前に美しく積み上げて行く。その間も、ここにあるべきじゃない本が次々と発掘…ほ、保篠龍緒「怪奇探偵 七妖星」(昭和二十四年)が封も開けずに……。廊下をスッキリさせた後は、小野氏は不要本の結束、私はCD部屋奥の録画DVD運び出し&結束本の積み込み、日下氏はDVD整理へと突入。…短時間でこんなにDVDに触れるのも運ぶのも初めてですよ…。その作業が終了すると、最奥の素晴らしい黒い本の山が出現!
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三橋一夫が大量発掘され、日本ルパンや少年探偵小説がドバドバリ…すげぇなぁ。ここで午後六時前となり、本日の作業はひとまず終了、本邸に場所を移し、お楽しみの発掘本ダブり確認作業に取りかかる。「小山さん、「39號室の女」何処にあります?」「確か仕事部屋の棚に……あれ、見当たらないな?勘違いだったかな?」すると探偵小説棚前に陣取っていていた二人から「あっ、こっちにあった。本当だ「39號室の女」ダブってる」と歓声が上がる。
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狭い通路に座り込み、楽しげに日影丈吉セットの確認作業を行う二人。

今回もハードな作業をこなした慰労として、ダブり本の三一新書「危険な標的 ソネ・タツヤ無頼帖/山下論一」鱒書房「若さま侍捕物全集1 舞扇の謎/城昌幸」文化出版局「フランス料理の秘密/日影丈吉」八紘社杉山書店「劔の系圖/横溝正史」(カバー&検印紙ナシ)を拝受する。ありがとうございます!そして最後に日下氏が「これヒドいんだ。インチキ「獄門島」」と笑いながら、東京文藝社「続刊金田一耕助推理全集10 獄門島./横溝正史」を差し出す。
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あぁぁぁぁぁっ!カバー裏表紙にとんでもない偽りがっ!と大笑い。ちなみにこの本には、これが書いてあるverと書いてないverがあるそうだ。すべてを終えたら焼肉屋に急行し栄養補給、午後十時半に西荻窪に帰り着く。昨日もお疲れさまでした!
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2021年11月25日

11/25古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十一章】

すでに昨日のことである。盛林堂・イレギュラーズとなり、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏がハンドルを握る盛林堂号で、午前七時過ぎに東京を発ち、神奈川県某所にある日下三蔵邸を目指す。継続して続けている書庫片付けの続きである(詳しい経緯は、当ブログの『古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸』記事、もしくは「本の雑誌」連載中の『断捨離血風録/日下三蔵』をご参照下さい)。都内で早めの渋滞に巻込まれながらも、車中でTVアニメ『超時空要塞マクロス』の『板野サーカス』についての考察を互いに発表し合っていたら、あっという間に現場着。午前十時前に作業を開始する。本日のミッションは、日下本邸一階奥の納戸部屋の本の整理を進めつつ、不要となる洋服ダンス一棹・タンス一棹、大型スライド本棚を屋外に搬出するという、もはや古本屋の作業を越えた、ほぼ引っ越し的作業なのである。すでに先日、私が不参加の片付け作業時に、小野氏と日下氏が力を合わせ、床の上に堆く散乱していた本や紙類は、美しく摩天楼のように積み上げられ、部屋の半分ほどが作業スペースとして使用できるよう確保されている。
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そして一部発掘されて棚に収められた仙花紙本群が欲望を刺激する景色を見せたりしている…。
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ただし問題は、巨大な洋服ダンスと大型本棚が、ちゃんと出てくれるかどうか…。というわけで、まずは部屋入口横に積み上がる六つのカラーボックスを本の上や作業スペースの奥に避難させ、さらにはタンスの上にあるカラーボックスや何が入っているかわからぬ箱類も下ろすことにする。洋服ダンスの上にある大きな箱に手を掛けると、これが物凄く重い。ゆっくりと下ろし蓋を開けてみると、「うわっ!特撮・アニメのカード類がワンサカと!」「こっちはゲーム音楽のCDがギッシリと」「わわ、これ、漫画の切り抜きがっ!」と、日下氏自身もすっかり忘れていた過去のコレクションが、白日の下に晒される。
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これは大量の漫画の切り抜き。左端の一番上は、青山剛昌のデビュー作とのこと。

うぅむ、これはスゴいと驚き喜ぶことしきり。だがこういうことで引っ掛かっていたら、タンス搬出作業と言う難事はなかなか進まぬのである。そっと蓋を戻して端に寄せ、まずは小さいタンスの引き出しを抜き、外に出すことにする…のはずが、突然ダブり本が見つかり、即座にカバーや背や奥付を確認し合う日下氏と小野氏…こうしてダブり本と認定されれば、キレイな方を日下氏が確保し、もう一冊が盛林堂の買取に回されるのである…って、今はそんなことしてる場合じゃないでしょう!
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というわけで、タンスは無事に部屋を出て、トイレ前を通過して廊下に曲がり込み、玄関を経由して無事に庭に出すことが出来た。続いて洋服ダンスである…これ、出るのか?いや、入ったから出るんだろう。良く見ると上下が分かれるようになっているので、これならどうにかなりそうだ。ところが上の大きな方が、トイレ〜廊下クランクのところで引っ掛かってしまった。「もうちょと上に上げましょう」「今だ、そっち捻って」「こっち角度ないよ」などと苦心しながら、どうにかこうにか搬出に成功する。するとその騒ぎを聞き付け、日下氏のご両親が姿を見せ、懸念材料だった不要家具類の搬出成功に、身に余るほどの感謝の言葉を浴びせかけてくれた。どうやら、もう一生出せないものかと、諦めていたらしい…そりゃあ本が部屋一杯の誰も踏み込めぬ状況を見ていたら、そう思いますよね。
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午前のうちに洋服ダンスとタンスの搬出に成功!

重度の肉体労働後、部屋に戻って次は事務作業に突入する。タンスの消えた壁際に避けておいたカラーボックスを積み上げ、そこに多種の探偵小説雑誌を並べて行くのである。元々この部屋にあった物や、本邸書庫のものを合わせ、年代順に揃え、欠号を後から埋めることも考慮し、棚に挿して行く。小野氏が雑誌を掻き集め揃え、日下氏がそれを棚に入れて行くのだが、私は揃った雑誌を日下氏作成のチェック表に照らし合わせて、欠号を炙り出す作業に従事する。
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「宝石(増刊別冊含む)」「探偵倶楽部」「探偵実話」「LOCK」「密室」「推理ストーリー」「推理文学」「黒猫」「奇想天外」「獅子王」「宇宙塵」「幻影城」etcetc…その果てしなく地味な作業を、午後二時まで行う。そして昼食のために外出した帰りに、マンション書庫に立ち寄り、「妖奇」「探偵倶楽部」「奇想天外」「宇宙塵」を引き上げて本邸に戻り、ダブりや欠号を確認しつつ棚に収めていく、次第に出来上がって行く棚は、やはり壮観である。進めば進めるほど、日本最高峰の探偵雑誌棚に近づいて行くのである。だが、今日はまだ後ひとつ、やらねばならぬ難事が残っている。そpれは本の山の向こうに隠れた大型本棚を出すこと!ならばもうその準備にかからねばならぬのだ。というわけで、すでに大量に発生しているダブり雑誌を和室に逃がし、小野氏が窓際に本の山を移動させつつ、さらに雑誌確認作業を進めて行くことにする…そしておよそ一時間半、本棚の端が見えて来たが、本棚と奥の棚の間に、本を満載したガラスキャビネットが発掘されてしまう。ここに入っているのは日下氏のお父様の本なので、ババッと取り出し要不要を確認してもらうとともに(日下氏が「これはいる?」と横のお父様に聞くと「いらない…あっ、その『雨』は必要」「これは大事」などとやり取りし、しっかり吟味していく…むぅ、この親にしてこの子あり!と言ったところか)、キャビネットを庭に運び出し、さらなる作業スペースを確保する。そしてついに、本棚の偉容がチラリと見えた。
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ふわぁ、たくさん古い探偵小説系の文庫本がズラズラズラリ!俄然他も見たい意欲が湧き上がり、三人力を合わせて山の移動に取りかかる。…さらに三十分後、端の大量の紙物山を退かし、全貌を出すことに成功する。スライド本棚なんだ…と手前側をスライドさせると、奥には大下宇陀兒や木々高太郎や角田喜久雄が収まっているではないか。
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グむむむむむむ。急いでそれらを慈しみながら取り出し、本棚を空にする。棚板を取り出し、スライド棚部分も外し、重量の軽量化を図った後に、決死の搬出作業に入る。これも上下が分かれてくれたので、とても重いが洋服ダンスほど難儀はしなかったの救いであった。全員肩で息をしながら、日下氏と小野氏は美しく開けた壁にメジャーを当てて、カラーボックスが幾つ積み上げられるか検討する。
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その間に盛林堂号に不要本やダブり本を積み込み、本日作業終了…おつかれさまでした。日下氏から作業の労いとして、城昌幸時代小説セットをいただく。同光社の函入り『若さま侍捕物手帖』が嬉しいが、特に嬉しいのは今日の問題社「ちりめん蜘蛛」と違う「宝石」に挟まっていた雑誌付録、岩谷書店「獄門島 完結篇/横溝正史」である。おかげで疲れがぶっ飛びました。
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「いやぁ、本当にありがとうございます。おつかれさまです。スゴく進みました」と喜ぶ日下氏とともに、焼肉夕食を摂りに行こうとお家を出ると、二階ベランダからも「本当にご苦労さまでした」と声がかかった。部屋の灯りで暗闇に浮かび上がるのは、日下さんのお母様である…なんだか『一本刀土俵入り』みたいじゃないか…とホンワカ思いつつ頭を下げ、焼肉を食べに行く。そして午後十時半、東京に帰投する。
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2021年10月29日

10/29古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第十章】

すでに昨日のことである。最近集中して行っている稀代のアンソロジスト&ミステリ評論家で、驚異の蔵書数を誇る日下三蔵氏邸の書庫整理に、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに急行する。盛林堂・イレギュラーズとなっての日下邸通いは、大いなる楽しみでもあるのだが、その作業のハードさは他に類を見ないものである。東京を盛林堂号で午前七時過ぎに出発し、午前九時半に現地着。本邸車庫に車を停めると、暖かな上着を羽織った日下氏が現れ、その服装の違い思わずに季節を感取ってしまう。「どうぞどうぞ」と招き入れられ、すでに本の影が少ししか残らぬ玄関廊下を通過し、脇の和室に入り込む…あぁ、初めて日下邸を訪れた時のことを思い出すと、この通常レベルのスムーズさはまるで夢のようである(2014/12/10参照)…あれからもう七年が経過し、コツコツコツ日下氏と小野氏と三人で力を合わせ、本の山の片付けに腐心して来たのであるが、人間諦めずに継続すれば、いつかは実を結ぶものなのだなぁ〜と実感する。その本当にキレイに片付いた和室に、三人で車座に座り「いやぁ、周りに何もないと、グッスリ熟睡出来るんですよ…さて、本日のミッションです」と日下氏が一枚の紙片を差し出した。
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「これは、一軍のリストです」「一軍?」「そうです。これらの本を本邸書庫に残し、もう必要としない本はすべて出して、その後さらに一軍の本をマンション書庫から本邸に移し、完全な一軍の探偵小説棚を作るのです!」と高らかに宣言した。おぉ、それは探偵小説マニアにとっては、究極の夢の書庫である!しかも日下氏の蔵書のレベルなら、恐ろしいことにそれが実現可能なのである!しかしこの“一軍”の一覧表…これに似たのを何処かで見たことがある気が……そうだ、ミステリ評論家・新保博久教授の書庫整理の時だ(2018/01/10参照)。教授も似たようなリストを作成し、貼り出していたっけ…などと魔窟から魔窟への連想を果たし、仕事部屋横の本邸書庫へと進む。作業に掛かる前に、通路が物品で塞がれていたので隠されてしまっていた、書庫最奥のコミックゾーンを見学。
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ここはあまりに入り込んでいないので、棚が九十年代でストップしいるのでありました…。作業は最奥通路の探偵&推理小説単行本ゾーンで行われる。日下氏が最奥に入り込み、不要本&一時避難本をガバガバ取り出し、それを通路途中の小野氏が中継し、玄関ゾーンに待機する私がそれを受け取り、和室に運び込んで本を仕分けして行くというカタチである。まぁ一度に運べる本は二十冊弱くらいで、その奥の通路だけでもおよそ三千冊の本があるのだから、およそ百回ほど地道に細かく繰り返せばどうにかなるのだろう。
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「朝山蜻一が奥に隠れてました」「ここ一帯九鬼紫郎だ」「飛鳥高がどっか行っちゃった」「水谷準これだけだっけ?」「三好徹は残す本です」「高木彬光がなんでこんなにあるんだ!」「香山でせっかく二段作ったのにずらさなきゃ」「島田一男の山を仕事部屋から持って来てください」「あそこに横溝の「探偵小説五十年」の裸本があったはずです」などの言葉が飛び交いながら、およそ三時間も作業すると、あっという間に和室には本の山が完成…それにまだまだ処分本が二百冊くらいしか出ていない。
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「う〜ん、本はもっと減らしたいんですよね。まぁ後でもっと出しますよ。でもおかげさまで棚はだいぶ形になってきました」と日下氏が言うので見に行くと、確かにそこには奥から素晴らしく濃厚な探偵小説世界が構築され始めていたのである。
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これはその一部の九鬼紫郎棚。これに匹敵するのは江戸川乱歩邸くらいであろうか…。

駅前に寿司昼食に出て、帰りにマンション倉庫に立ち寄る。「一軍の本を少し持ち帰ります。まぁ、ダンボール三箱程度でしょうか」と言うことで、極狭通路を進み、トレイ前に積み上がった空きダンボール数箱をリビング中央の空きスペースに重ね、出されて来た本を詰めて行く。本の選定は最初日下氏が行っていたのだが、途中から入り難いところに小野氏が勇猛に進むことになり、俄然次々と本を発掘して来てしまう。
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台所横で次々と一軍本を発見する小野氏とそれを受け取る日下氏の図。

「小栗です。これは可哀想だから持って行ってください」「日影も可哀想だから持って行ってください」「戸川も置いといたらダメでしょ」「楠田が出て来ちゃいました」「城は一緒にしとかないとマズいですよ」…これが延々続き、あっという間にダンボールは十箱を越えてしまった。終いには日下氏が「小野さん、そんなに向こうにまだ入らないよ!」と嬉しい悲鳴を上げ始める始末。予定時間も既に一時間オーバーしている。ようやくブレーキの壊れたダンプカーのような小野さんを宥め、マンション書庫を脱出。「小野さん、見つけ過ぎだよ。古本屋さん、コワいよ」「だってスゴい本がたくさんあるんだもん、止まんないよ」「小野さん掘り過ぎ!日下さん買い過ぎ!」というわけで本邸へと戻る。
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これはマンション書庫で見つけた酷い誤植本。さて、何処が間違っているのでしょうか?

ダンボールを玄関にドカドカ運び込み、日下氏は棚造りの続き、私は和室から入れ戻す本の選定&棚造り補助、小野氏は持ち帰ったダンボールを開梱し仕分けして棚造りに備えて行く。それからさらに三時間…ようやく最後に近い“鷲尾三郎”まで到達するが、実はまだまだ入れ戻しは残っている。だが遅いのでこの日はタイムリミットとなり、取りあえず残った本は通路に積み上げ逃がすことにして、次回の訪問まで日下氏が一人で地道に棚造りを進めることにする。それにしても、だいぶ目的の本へのアプローチがスムーズになり、書庫本来の機能を取り戻し始めたのは僥倖である。結果、処分本は計350冊ほど。そして一日の労働の労いとして、城昌幸の時代物四冊(これで日下藩の城道場に通うことになってしまった…)とカバーナシ扉ナシ目次ナシの「その鉄柵を残して/鷲尾三郎」「恐怖博物誌/日影丈吉」「暗色コメディ/連城三紀彦」を下賜される(当然すべてダブり本で、城に至ってはトリプり本であった…)。結束した本を盛林堂号に積み込み、疲れた身体を引き摺って、焼肉晩ご飯でエネルギー補給。環八で激しい渋滞に巻込まれながら、どうにか午後十一時には帰宅する。みなさんおつかれさまでした!
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2021年10月15日

10/15古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第九章】

すでに昨日のことである。朝七時前に家の近くで、ハザードランプを焚いて待機していた盛林堂号に飛び込み、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店主・小野氏と奥さまに挨拶しつつ盛林堂・イレギュラーズに変身。日下三蔵邸の期間限定古本移動大作戦に向かう。やけに車の多い環八や高速をどうにか突破し(ただし途中の高速ICで話に夢中になり過ぎて出口を間違うアクシデントあり)。午前十時前に現地に到着。すでに活動を開始していた日下氏と、一時倉庫のアパートにて合流する。先日の地震でも被害ナシと言うので中に入ると、おぉ!本当だ!全然本の山が崩れていない。壁などを上手く利用し、高く積まれた本の山脈は、揺るぎなく整然と聳えたっているのだった。もちろん多少の修正は施したそうだが、それでもこの成果は誠に素晴らしいものである。そんな風に各所を確認していると、何やら見慣れぬ本がいつの間にか棚の上に出現していた。光文社痛快文庫「冒險探偵 黒星團の秘密/大下宇陀兒」…しかもピンピンの新札のような美しさ…いつの間にこんな本が湧いて出たのだろうか?
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改めて日下邸書庫の深甚さを経験しつつアパートを後にし、本邸へと向かう。本日の重要ミッションは、本邸書庫の入口に長年立ちはだかる本の山を除去し、アクセスをスムーズにしつつ、各通路に入れるようにすることである。書庫入口スペースが多少広いのをいいことに、本を積み上げ始めたのが運の尽き。たちまちその山は高く厚く広がることになり、いつしか書庫への侵入を阻むまでに成長してしまったのである…まるで鍾乳石のようだ。「あそこにあんなに積むんじゃなかった。早めに棚を入れるべきだった…」と悔やむ日下氏を鼓舞し、早速作業に取りかかる。まずは日下氏がその山に取り憑き、本邸に残す本とアパート倉庫に運ぶ本とに仕分け、本邸本は仕事場に待機する私に手渡されて積み上げられ、アパート本は玄関廊下に待機する小野氏に手渡され積み上げられることに決まる。というわけで、渡された本を仕事部屋の中央に注意深く積み上げて行く。
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…何故注意深く行うのかというと、本がスゴい本ばかりなのだ!鷲尾三郎・三橋一夫・飛鳥高・香山滋・日影丈吉・水谷準・都筑道夫・高木彬光・九鬼紫郎・今日泊亜蘭…それらのレア本のオンパレードなのである。都筑訳(伊藤輝夫名義)の「銀のたばこケースの謎」が二冊も出て来たじゃないですか!うぎゃ〜〜〜〜ア!香山の「科学と冒険」が二冊っ!ななななななな、なんですか!この同シリーズの「ジャングルと砂漠」って!…う〜ん、気絶しそう。
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…などと大騒ぎしながら、およそ三時間、悪魔の古本の山と三人で格闘した結果、山が消え去り、奥の通路が見えるようになって来た。だが、通路には崩れた本などが未だ蔓延っているので、まだ足を踏み入れることはできない。そこで小野氏が切り込み隊長となり、足下の本を運び出しつつ仕分けしつつ、ブルドーザーのように通路を開拓して行く。
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途中、日下氏のお母様が挨拶に現れ玄関での紙ゴミを受け取る四人体制になる出来事も。そして一時間、ついにすべての通路に入れるようになったのである。「バンザ〜イ」と開通を喜ぶ四人。試しにズイズイ入り込んでみると、やはり棚はスゴいことになっていた。乱歩の「殺人万華鏡」!博文館文庫「人間豹」が二冊!あぁっ!ここにも「銀のたばこケースの謎」がある。しまも四冊!…悪夢だ…。岡田鯱彦が残存する本タワーの中に多数紛れ込んでいる!南澤十七「新奇嚴城」が計三冊!うひゃぁ、大河内常平タワーの後に、大量の水谷準が控えている!などともう大騒ぎ。
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だがいつまでも喜びに満ちあふれている訳にはいかない。玄関廊下にあふれ出した本を箱に詰め、アパートに運ばねばならぬのだ!と書庫に後ろ髪を引かれながら作業する。それにしてもよくまぁ、この大量の本たちがあの場所に収まっていたもんだ。素早く二十箱ほどのダンボール詰めを作成し、アパートに運んだ後、駅近くにてお寿司昼食。午後三時半、今度はマンション書庫に姿を現わす。玄関の棚の一部が地震で壊れたのか、傾きが酷くなっていたので応急処置を施し(ちなみにこちらも地震の被害はほとんど無かった…改めてスゴい!と感心する)、遅めの午後のミッションに入る。それはお風呂場にプールしてある大量のコミックスを、リビング中央の小スペースに運び出し、同じ作品をまとめて行くというもの…だが本の運び出しは単純作業で簡単なのだが、本を揃えるのがすぐさまとてつもない難行だということがわかり、千日手に入ってしまう。運び出すのは私の役目だが、揃えるのは日下氏と小野氏の二人がかり…「◯◯の一巻がありました。二巻はありませんか?」「五巻ならあります」「◯◯見ませんでしたか?」「こっちにはありません」「◯◯をそこで見たような気がするんですが」「××ならありますよ」……まるで数百種の札で神経衰弱をやっているようなものである。
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一時間ほど作業して、さすがにこれはこの短時間では無理だと悟り、作業は次回へ持ち越しとする。その後、玄関左側にあるCD部屋&書庫に突入し、必要とする本の発掘に入る。二人は奥の奥に入り込んでしまったので、私は入口付近で待機し、本とCDの混合山をほぇ〜と眺めることにする。「あっ、日下さん。柴田錬三郎の「狂気の白夜」がありましたよ」「白いヤツですか?黒いヤツですか?」「函が黒です」「やった!探していたヤツです。出しておいてください」…棚から牡丹餅の発見である。さらに山の下層に目を凝らしていると、まるで見慣れない裸本が一冊あるのに気付いてしまう。とても気になったので、慎重に山を切り崩し、手を伸ばしてみる。グランド社「現代探偵傑作集」…中を開いてみると、大正十三年刊の、田中早苗の翻訳短篇探偵小説集であった。聞くと小野氏も見たことのない本だと言う。ウ〜ム。読んでみたい。

そんな風に発掘を終え、アパートを経由して本邸に戻った頃はすでに真っ暗。だが、やはり開通した本邸書庫は、底無の魅力を持っていた。しばらく三人であちらこちら観察するが、当の日下氏が一番喜んでいる模様。「ここにあったのか」「こんなの持ってたのか」「げげげ」「ウハハハハハハハハ」ととにかくニコニコえびす顔なのである。いやぁ、まさに悲願の書庫開通なのである。よかったよかった。そして今日の作業のお礼にと、桃源社「幻の女/田中小実昌」東都書房「首/山田風太郎」ベストブック社「戦慄ミステリー傑作選 死体消滅/山村正夫編」をいただきつつ、さらに「何か他にないかな…」と探す日下氏に、「ロマン・ブックスの山風の「青春探偵団」がダブっているので、これをいただけませんか」と書庫棚から取り出してリクエストする。「あぁ、いいですよ、でもそこのは一番キレイなやつですから、こっちにしてください」と仕事部屋に引っ込んだ日下氏が抱えて出て来たのは、六冊の「青春探偵団」であった。
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ギャフン!ありがたく一冊を拝受する。風太郎学校・日下ゼミの生徒として、読み進めます(ちなみに先日いただいた「誰にもできる殺人」は読了し、日下氏に「山田風太郎版「めぞん一刻」ですね」と感想を伝え、苦笑いされる)!その後は焼肉食で書庫開通を盛大に祝い、古本屋話に楽しく打ち興じ、午後十時過ぎに西荻窪に帰り着く。
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2021年09月30日

9/29古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第八章】

さて、今月初めから怒濤のように進める日下三蔵邸古本大移動の第二回目である(作業理由の詳細は2021?09/02参照)。午前七時前に家の近くで「盛林堂書房」店主・小野氏の運転する盛林堂号にピックアップしてもらい、盛林堂・イレギュラーズに身も心も変身しつつ、いつものようにおよそ一時間半で、神奈川県某所の日下邸に到着する。やあやあと日下氏が出迎えてくれ、美しさがキープされた廊下にまずは感心し、さらに整理収納の進んだ仕事部屋に感心し(仕事机として使用しているラックの上に、山田風太郎の文庫&新書が、屋根の上に一夜で降り積もった新雪のようにどっかりと積み重なる凄まじい光景などもあるが…)、さらに小野氏は禁断のメイン書庫に実を無理矢理滑り込ませ、レア本の嵐に大興奮したりする。そしてまず本日の第一ミッションは、空けるべき本邸和室の文庫・コミック・単行本を、半年限定倉庫のアパートに運び込むこと。この部屋も素晴らしく整理が進んでおり、すでに出入り自由となっているので、作業はいたってスムーズである。部屋内で日下氏が本の山を切り崩し、残す本を仕分けてから窓の外に待機している私に渡し、それを玄関ポーチで待つ小野氏にせっせと渡し、箱詰めして車に詰め込むという流れ作業の布陣を採る。もはや十月になろうとするのに、夏のような強力な日射しに耐えながら、大量の本の移動に腐心する。作業は単純で肉体労働であるが、やはり時々見つかるレア本たちに鼓舞され、気合いで乗り切る。
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これは宮敏彦付録推理小説本の麗しい山。

途中、日下氏が、「うわっ、ここにあったのか!やった!これで仕事が進む!…あぁ!「ガールフレンド」も出て来たぞ!」と小躍りせんばかりに喜んでいる。仕事に必要なため長らく探していた柴田錬三郎「盲目殺人事件」と、ここ十年ばかり『いったちどこにあるんだろう?』と見かけていなかった伊藤人譽「ガールフレンド」を発見したのである。
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まだ作業して二時間も経っていないのに「これが今日一番の収穫です」と満足げ。釣られてこちらも嬉しくなる。おかげで和室も畳が見えたりスペースがもっと空いたりと、ある程度スッキリ状態に。そして力を合わせて生まれた三十ほどのダンボール箱を、盛林堂号と日下号に積み込み、アパート倉庫に出発。到着するや否やすぐにリレー方式で、窓からバンバンダンボールを運び込む。うひゃぁ、アパートの中もだいぶ本で埋まって来ているぞ。
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午前中後半戦は持って来た箱を開いて仕分けし、分かり易いように各所にひたすら積み上げて行く…こんなことをしていたら、いつの間にか午後二時前。ここで駅近くに出て美味しいお寿司をご馳走になり、満腹後は近くのホームセンターでカラーボックスやプラケースを購入し、久々に訪問するマンション書庫の方に向かう。こちらにはもう一年以上盛林堂組は足を踏み入れていなかったので、いったいどんなカオスな状態に…と心配するが、中に入ると意外や意外、本は確実に増えているのだが、各部屋に向かう通路はまだしっかりと確保され、どうにか破綻を免れていたので、ホッと一息。さて、続いてこちらでのミッションは、中央のフローリング間にある本をある程度運び出し、その中に埋もれている二本のカラーボックスを救出することである。こちらでも本を日下氏が仕分けし、それを私が玄関まで運び、小野氏がダンボール詰めするという布陣で作業に臨む。細く危うい古本獣道を、本束を抱えて身を横に細くして、六十回ほど往復する……ぜぇぜぇ。
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その過程で、本邸仕事部屋に集めた岩谷選書のダブり具合を確認するため、マンション書庫で岩谷選書グループを見つけ出し、持ち帰ることにする…すでにすげぇダブってるんですけど…。そんなこんなで午後四時半過ぎに作業は終了し、ここで生まれたダンボールおよそ二十箱を、またまたアパート書庫に運び込む。今回は仕分けはせず、運び込むだけで作業終了。不要本となって引き取られる三百冊ほどを小野氏が結束し、それを車に運び込み、ここでの作業は終了。
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窓際で作業する日下氏。なんかつげ義春の漫画的な良い情景。

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こちらは作業過程で発見されたレア本推理小悦「水の鎧」。三冊あるなんてありえない!

そして続いて本邸に移動し、カラーボックスを仕事部屋に運び込み、本日のお仕事無事に終了となる。いやぁ〜〜〜〜、おつかれさまでした。ここで日下氏から、「キミはもっと山田風太郎を勉強するように」と厳命され、ダブり本の山田風太郎忍法全集「外道忍法帖」と山田風太郎妖異小説「首」を下賜される…ま、まずは前回いただいた「誰にも出来る殺人」を早く読まなければ…。そしてさらに労いとして、双葉社「生島治郎の誘導尋問 反逆の心を取り戻せ」(生島の対談集。野坂昭如・戸川昌子・田中小実昌.吉行淳之介・森村誠一・井上ひさし・佐野洋)を手渡される。その後は焼肉を焼きに焼きまくり、消耗し切ったエネルギーの回復に努める。すっかり満腹し、「ごちそうさまです!」とお礼を言い、さて駐車場で別れる段になって、日下氏が「ちょっとマンション書庫に戻りませんか?岩谷選書がまだ合える場所を思い出しました」と言うので、再びすっかり夜のマンション書庫へ。三人で本のミニ山を乗り越えて台所付近に当たると、確かに二冊の選書を発見…おぉ、やはり見事にダブってますなと満足し、再び山を乗り越える。だが、日下氏が山を乗り越えようとした時、「だめだ、崩れる」と一部の山を崩してしまい、足の下には風太郎の「韋駄天百里」が。「あぁ、これは申し訳ない」と慌てて拾い上げ、山の上に積み上げる。あれ?その下にあるのは東京文藝社「悪霊の群/山田風太郎・高木彬光」!すかさず「「悪霊の群」ダブってますよ。ほらここに」と手近にあったもう一冊の「悪霊の群」を手渡すと、その馬鹿らしさに大笑い。「ワハハ、本当だ。ではこちら差し上げますよ。これで、風太郎をさらに勉強してください」。やった!“棚から牡丹餅”ならぬ“足元に「悪霊の群」”!ありがたく頂戴いたします。
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というわけで嬉しい今日の労いトップ2。

その後、『環八』で酷い工事渋滞に巻き込まれながらも、午後十時前にどうにか西荻窪に帰還する。本日も大変にお疲れ様でした。そして十月もまた二回ほど、こんな過酷な作業の様子をお伝えする予定なのです。
posted by tokusan at 00:04| Comment(2) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする