2017年05月17日

5/17千葉・みのり台 smokebooksみのり台店

昨日は夕方に「西荻 古書モンガ堂」(2012/09/15参照)に歩いて向かい、富山房「ワイルド童話集/平井呈一譯」(函コワレ)を1000円で買った後、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に手堅く補充。そして店内で岡崎武志氏と合流し、「中央線古本屋合算地図」の打ち上げに雪崩れ込む。意外に本らしい本を作ってしまったお互いを褒め合い労いつつ、反省会に加え次の四冊目のアイデアもぶつけ合う。非常に楽しく大切な時間である。だがしかし飲み過ぎて、二軒目のバーでビールグラスを握ったまま、あえなく熟睡してしまう…。

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明けて本日、中央線→山手線→常磐線と乗り継ぎ、さらに新京成線で三駅進む。ホーム東端の改札から街に出て、すぐの踏切をしばらく電車待ちしてから南に渡り切る。これまたすぐの車通りの多い県道を東に曲がり込むと、通り沿いのリサイクル店のシャッターに「沖愛堂古書店」なる文字を発見し、しばしその前に佇む。上には『家具処分』などとも書かれているが、開くことはあるのだろうか?だとしたら見てみたい…。そんな突然の出会いに心を多少掻き乱されながらさらに歩を進め、通りの両側に飲み屋が続く地帯を抜けると、線路がたちまち丸見えとなり、三本目の南への脇道に『みのり通り商店会』のゲートが現れる。そこに入り込んで行くと、中規模三階建てくらいの集合住宅で出来た、ちょっと奇妙で静かな街となる。大きな箱の間を歩くような気分で100mも進むと、左手に今度は巨大な昭和的マンションが姿を見せる。その一階ミニ商店街の左端に、下総中山(2011/01/25参照)から移転して来た、新たな「smokebooks」が開店していた。表には立看板に加えて、左に大判本・児童文学・絵本のラック棚&絵本箱、右に単行本箱&単行本棚と雑誌ラックが、安売値で置かれている。そしてちょっと薄暗く洒落た店内に進むと、広い!かなり広い!そのためか通路も広く採られた余裕のディスプレイが展開して行くが、本の量はざっと見ても楽しめそうなほど並んでいる。道路側の右スペースには、窓際にオススメ絵本類が飾られ、大テーブルの上には建築・デザイン・アート関連の新刊が面陳。壁際の小さな棚には、新刊の絵本や「こどものとも」などが並んでいる。左側には日本文学・日本近代文学・文藝雑誌・詩集がディスプレイされた棚があり、裏に回ると日本近代文学・詩集・セレクト海外文学が、古書含有率高く収まっている。とても感じの良い眺めである。壁際にはいやに角張った変わったフォルムの自転車が、レコード箱とともに置かれている。奥のアートブック&リーフレット・和洋ファッション台をクリアして奥に進むと、左壁には遠い奥まで大きな棚が続き、洋書のイラスト集・タモリ・植草甚一・高平哲郎・平岡正明・小林信彦&泰彦・徳川夢声・赤本漫画・「グロテスク」・音楽・映画・テレビ・カウンターカルチャー・和洋アート・写真・工芸・建築が雄大に肩を並べて行く。向かいには棚が二本縦列し、手前には世界・文化・思想・自然・満州・山岳、奥にはデザイン・ビンテージ雑誌&絵本・紙芝居が集められている。奥右側部分のフロアには、料理島(古書あり!)と来店した子どもが読書を楽しむスペースが設けられている。そして大きな壁棚には、児童文学新書・和洋絵本・洋書絵本・児童文学が、大量に豊かに収まっている。最奥のこれまた広いバックヤードを備えた帳場には、ハンチングに黒縁眼鏡のオードリー・若林風青年が立ち、その前面を文庫棚が覆っている。アート・ファッション・絵本・文学・料理が小気味よいお店である。古書が目立つのもその小気味よさに拍車を掛けている。値段はちょい安〜ちょい高と、手頃なものからしっかり値まで様々なので、そのバランス感覚もまたまた小気味よい。二見書房「カナシマ博士の月の庭園/ピエール・ブール」を購入する。

帰りにご近所の「永末書店」(2010/05/11参照)にも立ち寄り、みすず・ぶっくす「ロシアの神話/G・アレグザンスキー F・ギラン」を200円で購入する。
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2017年04月24日

4/24神奈川・藤沢本町 藤沢本町で古書市。

『関東学院大学図書館』で卒業生でもある佐藤さとるの展示が行われているのを知り、逃すまじ!と午前のうちに、相変わらず古い変電所がホーム向かい側に建つ京浜急行・金沢八景駅に駆け付ける。駅から離れて、細長く人工的な平潟湾沿いに出た途端、冷やっとする海風と潮の匂いが顔にぶつかって来る。歩き始めると、すぐに橋でつながった小さな弁天島が姿を現わすと同時に、遥か昔の子供時代の記憶が甦る。母の親戚を近くに訪ねた折、家族全員でこの島に渡ったことがあるのだが、橋を渡った途端に、木陰で熱烈な抱擁を交わすアベックがいることに全員が気付く。母はその気まずさからすかさず「もう行きましょう」と言うのだが、父は徐に煙草を取り出し「まぁいいじゃないか。せっかくだから色々見て行こう」などとほざき、海に向かって腰を下ろしてしまったのである。動くに動けぬアベックに(向こうも当然こちらに気付いている)、島に釘付けになった五人家族…計七人が、小さな島の中に立ち尽くしていた…。そんなことを思い出しながら、湾沿いに長く歩き続けて現代的でピカピカな大学に到着。正門で守衛室に案内を乞い、校舎ビルに囲まれたまだ人影の少ないキャンパス中庭を突っ切り、図書館へ。だが入口から中に入ると、自動改札の如きゲートが立ちはだかり、学外人間の侵入を拒んでいる。そこでちょっと離れた場所にある受付のお姉さんに必死に合図を送り、展示を見に来た旨を告げると、シュパ〜ンと未来的な音を響かせてゲートが開き、二階への案内と手続きをレクチャーしてくれた。言われるがままに二階カウンターで入館手続き(もう入館しているのだが…)を済ませ、二階入口の三台のガラスケースに収まった、こじんまりとした展示を鑑賞する。一番大きなケースには、図書館所蔵の新しめの著書が飾られている…これならケースに入れずに、手に取って読めるようにした方が良いのでは…。他には「だれも知らない小さな国」の初版本、『すべては空想からはじまる』と書かれた直筆色紙、按針塚周辺の地図など。一番目を惹いたのは1970年発行の「わんぱく天国」の元本である。思えば今まで文庫版しか見たことがないので、おおっ!と感動してしまい、いつか絶対に手に入れてやる!とガラスケースの中に勝手に誓ってしまう。このようにすぐに見終わってしまったので、2006年の学報に掲載された佐藤さとるインタビューページのカラーコピーをいただき、受付のお姉さんに挨拶して図書館を出る。そしてちょっと時間は早いが、学食に潜入してカツ丼で昼食を摂る。満腹した後、再び潮風を楽しみながら駅に戻り、京浜急行→根岸線→東海道線→小田急線と細かく乗り継ぎ、藤沢本町まで一時間で移動する。

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単純なホーム端の改札を出ると、小さな駅前広場に地元的商店街が直結している。藤沢の名を冠し、一駅離れただけだが、あの大きな都会的街並とは正反対の、静かで長閑な郊外である。そんな緩めの街並とお店の並びをキョロキョロ見回しながら東に進むと、大きな県道に行き当たる。そこを北に進んで行くと、すぐに正面に立派な『白旗神社』の鳥居が臨め、その交差点脇には白いショッピングセンター『トレアージュ白旗』。ここで八月までの長期間、200円均一の古本市が開かれているのである。うまいこと何か買えるであろうか…。一階は塾や飲食店なので二階へ迷わず上がると、早速『神奈川県古書組合』の赤い古本まつり幟があったので、まずは一安心。中に入るとそこは催事場のような空間で、主に文具のワゴンが場を占めている。だが右奥には、やっぱり嬉しい古本棚の凛々しい姿が見えているではないか!近寄ると、二本の背中合わせの棚が並び、五本×四面の計二十本に、神奈川のお店が送り込んだ200均の古本が収まっている。まぁ200均だから…と失礼ながらさほど期待はせずに棚に視線を走らせるが、これがなんとなかなかに上質なのである。こ、これは!買える、買えるぞ!と、期待以上の本を見つける喜び(言い換えれば『200円でこの本が買える喜び』である)を味わいながら、たちまち腕の中に本が集まる。「海風舎」(2010/09/25参照)「文雅堂書店」「高村書店」が特に良い感じ。市が八月まで続くということは、補充も入れ替えも定期的に行われるのだろう。もしこれが家の近くだったら、相当マメにチェックを入れることになりそうだ…でもここは藤沢…本町…くぅ。雲井書店「日の果て/梅崎春生」六興出版「風眼抄/山田風太郎」中央公論新社「懐かしい未来/長山靖生編著」「砂の城/鮎川哲也」文藝春秋「諫早菖蒲日記/野呂邦暢」を計1000円で購入する。

「諫早菖蒲日記」は、見返し裏に『諫早花菖蒲』の言葉とともに署名落款が。さらに章扉には、この本の最初の購入者により『昭和五十二年十一月二十五日 長崎、諫早の街にてこの本を求む』と書かれている。「諫早菖蒲日記」の初版は五十二年四月で、これは八月発行の第三版。ということは、諫早では新刊書店で野呂のサイン本が売られていたのであろうか…そんなことを考えるのも楽しい一冊である。さらに「風眼抄」は写真ページ裏に毛筆署名入り。最初は本扉に作家名が入っていないので、ここに作家名が印刷されているのかと思ったが、細部を良く見ると、印刷では出せない墨の濃淡や掠れを確認し確信。でも実はまだ半信半疑…同じ本をお持ちの方、冒頭写真ページ裏に名が入っていますか?ご教授いただければ幸いです。というわけで今のところ、半どひゃっほう!
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2016年12月28日

12/28千葉・松戸 年末古本市

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日暮里から常磐線快速に乗ると、十七分で松戸駅。陽の当たらぬ底冷えするホームから橋上改札を抜けて、西口に出て空中広場を彷徨いながら、ビル街の樹冠に『ISETAN』のロゴを探す。すると、南西端の道の先に件のデパートを発見出来たので、階段を下り、コンクリ正方形タイルの敷き詰められた歩道を伝い、冷たいビル風に嬲られながら南に歩き、広場を通過して大きなデパート『ISETAN 松戸店』に吸い込まれる。一階大売場の隅にあったエレベータに乗り込み、十階の催物場へ。すると箱から出ると同時に、右側に細く長く奥へと延びる、古本ワゴンの列が視界に飛び込んで来た。昨日から始まっている、シンプル&ストレートな名が付けられた、四日間限りの(つまり三十日まで)、ワゴン約三十台の中規模古本市である。武蔵野辺の古本屋さんを中心にして、千葉と東北の古本屋さん九店が参加している。細長く連なるワゴン通路を、前後ろと交互に見ながら、ジワジワ奥へ進んで行く。市各所にはお粧しした古本屋さんが直立し、会場内のサービスに勤めている。お客さんは疎らな入り。郷土・美術・歴史・近代・風俗・雑本・絶版漫画・付録漫画・大判美術本・サブカル・芸能・映画・社会・人文・絵本・雑誌・文庫…ガラスケースもあり、文学・風俗・漫画関連のプレミア本が飾られている。会場の表側には銀フレーム飾り棚が巡らされ、そこには大判本を中心に、プレミア本や揃い本がディスプレイ。…生まれて初めて目にする肩書き“探偵将軍”とある本に心惹かれるが三千円か…この付録捕物漫画、“白い魔犬”とあり、表紙に大きな白犬が描かれているが、もしや「バスカヴィル家の犬」の翻案じゃ…ガラスケースの上の哈爾浜小冊子特集が素晴らしい。でもやっぱり高いな…この前の古本市で500円で売ったカルピスのオリンピックソノシート、二千円もするじゃないか…などと楽しみながらウロウロ。二冊を手にしてさぁ精算…あれ?何処のレジに行けばいいんだろう?近くに立つ古本屋さんに声をかけると、ガラスケース脇から奥まるバックヤード風小部屋に案内される。そこが催物場のレジになっていた。コミック・ペット異色名作シリーズ「恐怖のミイラ/楠高治 原作・高垣眸」(森下仁丹提供の昭和三十年代トラウマTVドラマのコミカライズ作品を復刻したもの。私は子供の時に懐かしの番組特集などで目にしたくらいだが、暗くて不気味で本当に恐かった。今でも思い出す、おどろおどろしい不吉なオープニングや、望遠鏡で目撃する無音の死体遺棄シーンは、眠れなくなるほど恐ろしいものであった。漫画は「少年クラブ」に同時連載されていたもの。当然子供っぽく恐さは微塵もないのだが、その恐怖の遺棄シーンがちゃんと描かれていたので、ちょっとだけ喜んでしまう)村松書館「地獄譚/長野祐二」(恐らく自費出版の私娼窟&悪所巡り短編小説集)を購入する。今年最後の古本市をありがとう!と心の中でお礼を言い、デパートの外に出て再びビル風に巻かれながら、そのまま裏手の線路際に出る。陽の当たる暖かな跨線橋を渡って「阿部書店」(2009/06/28参照)を見に行くが、残念ながらシャッターが下りてしまっていた…店内の蝙蝠、元気でいるかな。
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2016年12月20日

12/20埼玉・与野 三輪車

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古本神・森英俊氏より、本も少し売っている懐かし物系ショップを教えてもらったので、期待に胸を躍らせながら大慌てで駆け付ける。東口に出ると、小さく見どころなく雑駁とした駅前。すぐの駅前商店街を南南東に迷い無く進んで行くと、右手にほどなくして白い小ビル一階を、すっかりパッキングされた玩具で覆ったような店頭が現れる。それは、雑然としているわけではなく整然としているのだが、それでも何処か異様な光景となっている。たくさんのソフビ人形やフィギュアや企業ノベルティを並べたウィンドウには『古いおもちゃ買います!!』『1980年代までの!ソフビ・怪獣・ヒーロー物・超合金・ブリキのオモチャ◉旧玩具全般!』『あなたの家の押し入れや、倉庫に!古いオモチャが眠っていたら、お電話ください!』と、変なところに“!”が入る貼紙。手動扉を開けて中に入ると、結構広く通路が何本にも枝分かれし、上から下まで玩具に埋め尽くされた空間である。通路は広く歩き易く、棚やガラスケースや物の集合体が形作っているのだが、天井からは繋げた玩具や駄玩具が多数吊り下がり、棚下の通路には大判の本やブツが置かれているので、境目が曖昧な洞窟状となっている。左側奥の通路では、椅子に座った麿赤児風オヤジさんが、『あしたのジョー』最終回のようなポーズでスウスウ幸せな寝息を立てている…しばらくはソッとしておこうか。それにしても、恐るべき玩具に満ちあふれた店内で、触れたらそこからこの身も玩具と化してしまいそう。ソフビ・フィギュア・メンコなどの駄玩具・キャラ物・ヒーロー物・豆本漫画・ぬりえ・カルタ・ノート・ブロマイド・プラモデル…足元に絵本はあるが、古本はいったい…と奥へ入り込んで行く。すると左奥の中央の島の周辺に、付録漫画・特撮本・カード類・ヒーロー図鑑&百科事典・カバヤ児童文庫・「キンダーブック」・旧教科書・図鑑などが取り込まれているのを発見する。ふむふむ、おっ、野村胡堂の「悪魔の王城」がある…この少女クラブ付録の大判時代劇冒険漫画は読んでみたいなぁ…観光絵葉書もあるぞ…などとこっそり楽しんでいると、オヤジさんが「アッ!」と目を覚まし、こちらににこやかに駆け付けてきた。「すいません、寝ちゃってました」「いえいえ、大丈夫ですよ」「何かお探しですか」「あ、古い本を…」「本ですか。本は…この辺りですねぇ」「そうですね。ここに集中していますね」「どうぞゆっくりご覧になってください」…と言うわけで、しばらくじっくりと丁寧に掘り起こしたりしてみる…。基本は懐かし系玩具屋さんだが、少し本もあり。紙物は大いにあり。タイミングが良ければ、良い出物に出会えそうな予感を与えてくれる品揃え。相場より安めの値がまた嬉しい。…おっ、ここには和本が少々。すると値は付いていないが気になる一冊を見つけたので、すでに手にしていた本とともにオヤジさんに差し出してみる。すると「あぁ、値段ないですね。ちょっと待ってて」と奥の入り込めない通路に向かい、電話をかけ始めた。ところが相手は出ない模様。戻ってきて「いや、本はね、弟がやってるのよ。だから聞かないと値が分からなくて。う〜ん、どうしようかな。じゃあ近くなんで、ちょっと聞いて来ようか」と、一旦お店を閉めて自転車で急行することに。その間私は、入口外の椅子に座り、看板の上から顔をひょっくり出し、見知らぬ街を十分ほど眺めて暮らす。お!オヤジさんが自転車を華麗に疾走させ、カーブを曲がってきたぞ!自転車を停め、階段を駆け上がり、鍵を開けながら「すいませんでした」とにっこり笑う。聞けば作家物と言うことなので、値段は1500円。安くもあるし、せっかく自転車で行き来していただいたので、迷わず買うことにする。富里昇進堂 少女文庫「はかなき生立/ゆかり草著 紫峯画」小学館「機械の図鑑」を購入する。すると突然、「どっか悪いとこないですか?」と唐突に聞かれる。「い、いえ…」と答えると「いやなにね、気功をやってるもんで。体にいいんですよ。もし悪いとこが出たら、来て下さい」「ハイ。また何か買うついでに、参ります」と、当たり障りのない返答をしておく。うむ、楽しかった。こういうお店に出会うと、またレトロ玩具屋巡り(もちろん目的は古本である)に火が点いてしまいそうだ。

収穫はもちろん大正三年刊の「はかなき生立」であるが、奥付にあるシリーズ『少女文庫』の説明が可笑しくてたまらない。『少女文庫はお伽文庫の姉さんで悲惨、不幸等有とあらゆる各冊おもしろき事柄を涙の出るような著者独特の筆にて成りたるもの家庭教育として頗る趣味あり実益ある良書であります』とあるのだ。あらゆるおもしろき事柄を説明する語が、“悲惨”と“不幸”しかないのが、何とも恐ろしい…。ちなみに妹である『お伽文庫』のラインナップを見ていると、「探偵少女」「探偵少年」の気になる二冊を発見してしまったので、頭の中の『読みたい本リスト』に刻み込んでおく…いつか出会えるかなぁ…出会えない可能性の方が高そうだなぁ…。
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2016年10月08日

10/8神奈川・反町 10月古本まつり

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先日の苦汁をなめまくった「ヤミ市一箱古本市」(2016/09/17参照)では、「雲雀洞」さん(2016/07/22参照)が、せっせと本を売りつつも神奈川古書組合員として活動しており、私も青くなっていたところに、一枚のチラシを渡されていた。それは十月の古書会館(2011/09/19参照)の古本まつりで、初の試みに近い200均本販売を行うというものであった。神奈川にちょっとした新たな動きが!と喜びつつ、本日土砂降りの雨が上がったのを見極めて、家を傘なしで飛び出す。深い地下から上がって、『国道1号』から裏通りの『反町公園』沿いに出ると、公園の桜並木が、秋らしく黄色に色づき始めていた。いつも通り薄暗い会館一階のガレージには、大きな平台が二重に設えられ、そこに200均本が、背を上に見せてズラズラと並べられていた。遠目に左奥の帳場にいた「文雅新泉堂」さんと会釈を交わし、「雲雀洞」さんにも発見され言葉を交わす。肝心の200均群は、古い新書サイズ本が充実しており、さらにオカルト・横浜・歴史・文庫&古い文庫・絶版コミック・民俗学を目立たせながら、なかなかの嬉しい質の高さを見せている。何だかライバルも少ないし、これはいいぞ!と平台前でゆっくり蟹移動しながら、好みの本を吟味し続ける。するとたちまち腕の中には七冊の本が抱かれることになった。満足して平台ゾーンを通過して奥に移ると、縦に並ぶ四本の平台付き通路棚は、200均ではない通常値の古本まつりゾーン。そこでも一冊を手にして、帳場にて三人掛かりで精算していただく。大阪屋號書店「東海道中膝栗毛論考/三田村玄龍編」(三田村鳶魚を中心に、八人ほどのメンバーで「東海道中膝栗毛」について座談会風に議論を重ねる妙な本)学研高校生文庫「ステート・フェア/フィリップ・D・ストング作 常磐新平・文」芸文社アルファブックス「あり得ない話がある話/乾信一郎」自費出版「富士塚探訪/福井光治」(八十歳過ぎの老人が、突然火のついたように東京と神奈川の富士塚をフィールドワークしまくる、執念の三年間の記録をまとめたもの)FERNAND HAZAN「DADA 1915-1923」大日本雄辯會講談社「われ等若し戦はば/平田晋策」(函ナシだが、200円でなかなかの美本。そして、前の見返しには伝説のお店『本郷白山上 南天堂書房』のラベルがっ!だから、どひゃっほうと言わせてください!)宝石社「宝石臨時増刊 昭和36年度新人25人集」(蒼社廉三「屍衛兵」小林泰彦「夜はつぶやく」西村京太郎「黒の記憶」広瀬正「殺そうとした」などが目を惹くが、一番のトピックは灰谷健次郎「神々の悪事」…推理小説、書いてたんだ。急ぎ読み進めてみると、故郷神戸を舞台にした、ジメドロした家庭内事件を描いたものであった)を計1700円で購入する。なんだか反町で良質な安売台を見られたのは、新鮮な体験だったので、どうぞこれからもちょいちょいこの企画を実行して下さい。喜んで買いに来ます!この市は明日10/9も開催される。
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かなり嬉しい南天堂ラベル。噫、松岡虎王麿!
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2016年09月24日

9/24埼玉・浦和 浦和宿ふるさと市

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午後からは雨模様というので、午前十時に家を出て、毎月第四土曜に開かれる骨董市に急行する。湘南新宿ラインを降りて西口に出て、会場の神社をうろ覚えで来たことに己を憎みながら、駅前交番の地図とにらめっこする。確か…漢字一文字の神社だったな……これか、『調神社(つきのみやじんじゃ)』。すぐに交番裏から隘路に分け入り、『旭通り』を南に進んで行く。大きな通りを渡ると『骨董市』の幟が翻り始めるので、それをたどるようにして住宅街をさらに南に進んで行く。やがて行く手に鬱蒼とした森が…右手は二抱えもあるような巨木が林立する『調神社』で、その横の『調公園』にテントを立てた臨時の骨董店&古道具店が多数出現していた…その光景は、まるで骨董テント村である。お店は公園のほぼ全域に行き渡り、およそ百店を数える。『うんどう遊園』『わんぱく広場』『こもれび広場』『陽だまり広場』『じゃぶじゃぶ広場』など、バラエティ富んだ空間にお店が並び、骨董&古道具が並んでいるので、空間自体がオープンな迷路と化しており、その中を歩くのはなかなか楽しい体験である。それにしても、所々でメダカを販売しているのは、いったいどういう訳なのだろうか…?目指す古本は、それほど見つからず、和本・浮世絵・絵葉書・観光案内&地図は良く見かけるのだが、古本はほとんど見かけない…読み終えた文庫などもあるにはあるが…ぬぅ、三島由紀夫の全集・豪華本・スクラップを売る特異なお店が…。仕方ないので有望そうな紙物箱を、懸命に掘ることに集中する。『わんぱく広場』の一軒では、浮世絵に物凄い執着を見せる外国人女性と隣り合い、絵葉書中心の紙物の山を掘り進める…すると下層から小版のリーフレット類が出現。面白そうなのがありそうだぞと、気になる物を選り分けて行く。途中、隣の女性が精算すると、なんだかひとまとめで安い値段を告げられていた。…これは、一山で安く売ってくれるかもしれない。そう目論んで東京の建物絵葉書・復興絵葉書セット・山勝ブロマイド・アイヌ絵葉書・カメラ説明書などを「お幾らですか?」と店主に差し出してみる。しばらく精査した後に「六千円だね」と告げられる。くわっ!安くならなかったか。仕方ないのでどうしても欲しい一点に絞って値段を聞くと、仏頂面で「500円」。「いただきます!」と帝國ホテル「ホテル乃栞」を購入する。恐らく大正〜昭和初期の『帝國ホテル』の宿泊客用の案内である。いわばホテルの取扱説明書で、サービスの説明はもちろん、エレベーターの乗降方法や外国人客に対するマナーなども書かれており、当時のライト設計ホテルの様子を良く伝えている。入口前には人力車と乗合自動車があったり、家族以外の男女宿泊はお断り(男ひとりもしくは女ひとりの部屋に別姓の者がひとりで訪ねる時は、扉を開け放しにしておかなければならないのだ!)だったり、地下一階〜地上四階の館内見取り図と、とにかく心震える一冊なのである。「ありがとうございます〜。楽しんで下さい〜」の声を背にして、続いて『こもれび広場』の一店に取り憑く。ここには紙物箱が二つ…お、ひかりのくに昭和出版 テレビ絵本「わんぱくフリッパー」が出て来たぞ!それに雑誌グラビアの切り抜き「ボクたちは子どもの人気ものです!現代っ子を魅惑する怪獣スター50匹登場」は、良く見ると大伴昌司が監修してるじゃないか!慌てて値段を聞いてみると、「絵本は500円。そっちは…えぇい、サービスだ。ちょっと切れてるし、100円とか言ってもしょうがねぇ」とサービスしていただく。ありがとうございます!この切り抜き、映画・テレビの『地上怪獣』『地底怪獣』『宇宙怪獣』『水底怪獣』に分類し(水底怪獣って…)紹介しているのだが、何故かネッシーとウルトラマンも含まれてしまっている。解説文に児童心理学者の意見が載っており「怪獣に夢中になるのは強い者への憧れで、一種のハシカみたいなものなのです。だから騒いだり心配しないで、怪獣は社交のためのすばらしい道具であることを、お母さんとしては理解してあげることですね」と書かれている。…すみません、どうやらハシカにかかりっ放しなんですが…。とこんな風に、計千円でなかなか面白い物を手に入れられたので、気分を良くして会場を後にすると、新宿駅に着いたところで、酷い雨が降り始める。紙物には大敵の、雨である。少し時間がずれていたら、今日手に出来た物も、買えなかったかもしれない…。
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2016年09月14日

9/14神奈川・日吉 古書 ふもすけ堂

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ゲラの海から顔を上げ、コメントタレコミで知った最近開店のお店に向かうことにする。改札を抜け、巨大な球体モニュメントに己の歪んだ姿を映しながら、西口の放射状街路商店街前。緑色のゲートが建つ『普通部通り』に入り、南西へ。シャッターの下りた「ダダ書房」(2009/05/18参照)を左の視界に捉えながら、二つ目のゲートを潜る。次の北への脇道に素早く曲がり込むと、行く手には『TSUTAYA』が見え、その手前左手に新たなピカピカの古本屋さんがオープンしていた。あれ?ここって「エルダーズ」(2010/07/29参照)があった場所だっけ?己のあやふやな記憶に確信の持てぬまま、店内に入り込む。路面に近い部分は細長く、奥にはさらにスペースが広がる…結構広いな。壁際はすべて本棚で埋められ、フロアには路面側に小さな平台があり、奥に本棚ともうひとつの平台がある。左奥の遠い所に帳場があり、青年が横向きにパソコン作業をしている。右壁棚は中央奥までコミックがズラリと続き、平台には暮し系ムック類。左壁は時代劇文庫から始まり、その後は丁寧な棚造りの日本文学文庫が連なって行く。棚は中央辺りで左に折れ曲がるので追跡し続けると、その奥に隠れた小空間があるのを発見。そこにはレディコミ・100均文庫・官能文庫・新書サイズ本が集まり、そのまま右壁の新書・出版社別文庫・ノベルス・海外文学文庫と続く。ここからは広い奥のスペースとなる。フロアには片面が文庫で片面が単行本の100均棚があり、平台にはカルチャーなバーゲン本が揃っている。改めて左壁に向かうと、文学全集・村上春樹・日本文学・海外文学・ビジネス・アート・サブカル・音楽・民俗学と続き、帳場前の袖には細いDVD棚。右壁は民俗学が少し並び、後は大量の教育関連専門書が、硬く健やかさを放ち大集合している。奥壁には、本・古本・古本屋・新刊書店・出版の本が質高く幅広く並んでいる…「首都圏沿線」も「古本屋ツアー・イン・ジャパン」もあるじゃないか…。路面側はコミックと文庫中心にちゃんと官能文庫(少量だが)も並べた街の古本屋さんで、奥は教育書と本関連に強みを見せる個性店となっている。新しい本が多いが、品揃えはしっかり。だがこれが完全に固まった理想の形でないことは、少し伝わって来る。値段はちょい安〜普通で、プレミア値もあり。婦人生活社「くもんの算数/公文公」(表紙から本文までイラストはやなせたかし)を購入し、ささやかに慎ましく開店を祝う。何事もなく表に出ると、背後から人の迫る気配…店主が店から飛び出し、建物伝いにこちらに駆け付け、正体が露見する。恐縮して改めて挨拶を交わし、「今後ともよろしくお願いします」と笑顔で言われながら、頭に閃いてしまったの店主の印象…聡明で柔和なプロゴルファー猿…あぁっ、すみません…。ちなみに店主に聞いたところ、ここは「エルダーズ」跡地ではないとのこと。そうか、ここは「茂野書店」(2009/05/18参照)があった通りなのか。

帰りに渋谷で途中下車し、ついに解体工事の始まった『宮益坂ビルディング』を寂しく眺め、坂上の「中村書店」(2008/07/24参照)に飛び込む。入口右横のラックに、東京都古書籍商業協同組合南部支部「Rewind◀◀1969◀◀2004▶ 東京古書組合南部支部 創立35周年記念写真帖」を見つけてしまったので、940円で迷わず購入する。「月の輪書林」さん(2012/03/29参照)と「古書サンエー(渋谷古書センター)」さん(2008/07/24参照)が編集した東京古書南部支部の写真集である。時節ごとの「南部古書会館」の姿や、歴代古書店主たちの姿も素晴らしいが、在りし日のお店の姿には思わず目が血走ってしまう。
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これは「江口書店」(2010/03/29参照)「一新堂書店」(2011/02/07参照)「遠藤書店」(2008/10/17参照)掲載のページ。麻布十番の「笹間書店」や、大森「山王書房」の姿にも心ブルブル震えてしまう。
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2016年09月03日

9/3神奈川・横須賀中央 AMIS

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トンネルを抜けた途端に駅のホームに滑り込み、階段を下って西口から出ると、改札横ではジャズのビッグバンドが演奏中。迫力ある生音を背に浴びながら、『平坂』に足を掛けグングンと山の上を目指して南に上がって行く。急角度の商店街を抜け、山上の『上町1丁目交番交差点』にハアハアと息を切らせながら到着する。このまま真っ直ぐ道なりに進めば薄型店舗の「沙羅書店」(2009/06/02参照)にたどり着くが、今日は帆船のモニュメントが入口に据えられた『中里通り商店街』を西へと進む。ここら辺りにはその昔、古本と貸本の「栄文堂」というお店があったそうだが、今は影も形もなくなっている。だが四本目の外灯を過ぎると、右手に前面を陶板タイルで飾った小さなビルが現れ、その一階に真新しいブックカフェが開店していたのである。サッシ扉にはジャック・タチの映画ポスターや外国市街地地図、それに本棚のある風景が描かれたイラストポスターが貼り出されており、その前に小さな洋書絵本の安売箱が置かれている。恐ろしく滑りの良い戸を引き開けて中に入ると、左に小通路とこじんまりとしたカフェスペースがあり、右にはちゃんとした古本屋スペースが広がっている。その右スペースに奥から顔を出すようにしてレジが設置され、すぐにカフェにも対応出来る造りになっている。座るのは頭にタオルを巻いた年配で面長の武満徹風男性である。カフェ入口前の小通路には二本の棚が置かれ、ペヨトル工房本・自然・山岳・サッカー・旅・海外などがキレイに収まっている。入口右横の洋書絵本や、レジ前の洋書ビジュアル本に軽く視線を流してから、壁棚と一本の通路棚で造られた二本の行き止まり通路に対峙する。奥の通路には、哲学・現代思想・政治・社会・海外文学・日本文学・時代劇文庫・詩・澁澤龍彦・日記・戦争などが集合し、文庫を中心として棚に二重にビッシリ収まっている。手前通路には雑貨類・暮らし(お母さんと一緒にいた子供が「あっ!「暮しの手帖」だ!商品テスト載ってるかなぁ〜」とすかさず手にしていた…朝ドラ『とと姉ちゃん』、恐るべし!)・落語・江戸・料理・児童文学・絵本が並び、棚脇に美術や写真の小さめ棚が置かれている。硬めの良書を揃え、文庫本を主力とし、値段ちょい安な、フレッシュなお店である。これは完全に横須賀方面では、かつて存在したことのないタイプのスタイル!その勇気と行動力と健闘を称えつつ、ちくま文庫「私の絵日記/藤原マキ」旺文社文庫「ウスバカ談義/梅崎春生」を購入する。どうかヨコスカが、この新しいタイプの古本屋さんを受け入れてくれますように!と願いつつ、そのままの足で交差点へと戻って「沙羅書房」へ。今日は奥の通路に帳場前からしか入れないのかと戸惑いつつ、光文社文庫「シャーロック・ホームズに再び愛をこめて/ミステリー文学館編」音楽之友社「ぼくらのライブハウス/岩永文夫」を計550円で購入する。

『平坂』を下って『若松マーケット』を通り抜け、『米が浜通り』を南東へ進む。海は見えぬが匂いで分かる強めの潮風が、重たいがそれでもこの暑さには心地良い。やがて右手に先日全焼してしまった海軍御用達料亭「小松」跡地が姿を現わし、板塀の節穴から寂しくなった亭内の様子をうかがってから、愛しの「港文堂書店」(2010/05/08参照)に到着。店頭で100均本を一冊掴み、店内に入るや否や、郵便配達人が帳場前で話し込んでいる不思議な状況。これ幸いと棚に視線を走らせるが、すぐに「あ〜っ!」と発見され、元気過ぎる母&クールでニヒルな娘さんの、炎と氷の母娘コンビに歓待していただく。呼び名がいつのまにか“力也さん”となっているのに面食らい、店内の古本を見る間もなく手作りの梅干しやジャムをお土産にいただく。嬉しや嬉しや。これでどうにか厳しい残暑を乗り切れる気が…。後は楽しいヨコスカ・ディープ話と世の中には何故面白人間がたくさんいるのかを真剣に話しつつ(まぁ大体は聞き役なのだが…)、隙をうかがい古本探し。ちくま文庫「明治探偵冒険小説集1 黒岩涙香集」カッパ・ブックス「合気道入門/植芝吉祥丸」ロマン・ブックス「黒い白鳥/鮎川哲也」文園社「名月捕物噺/久我荘多郎」宝文館「やもめ貴族/川崎長太郎」(カバーなし)を計1500円で購入する。すっかり一時間ほど話し込んでしまったので、段々と横須賀の故郷となりつつある老舗店を、後ろ髪引かれて後にする。
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2016年08月23日

8/23埼玉・入間市 第1回 入間ペペ古本まつり

午前中の、レンタルしていたコピー機の引き取りに伴い、古本山で乱雑を極める部屋の片付けに汗を流す。玄関の本の山をコピー機のあった場所に収め、生活動線をスムーズにすることに成功する。そのまま思い切って外出し、昨日は台風のせいで盛大にダイヤが乱れた西武線で、狭山丘陵にまっしぐら。新しめの駅に降り立つと、ホームベルの『茶摘み』にまずは脱力。階段を上がって南口に出ると、通路がそのまま駅前の『入間ペペ』二階につながっている。ガラス戸入口まで進むと、『古本市開催中』の赤い幟と『古本市一階で開催中』の貼紙があったので、俄然やる気を出してペペ内階段を駆け下りて一階フロアに飛び出し、左右をキョロキョロ。すると入口内と入口外に十台ほどのワゴンが展開していたので、まずはそちらへ足を向ける。
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暑い外は時代劇文庫と一般文庫とコミックの布陣で、中は鉄道&自動車関連が多く並んでいる。手始めに春陽文庫「殺人狂想曲/水谷準」を216円で購入し、『別会場あり』の貼紙に胸躍らせながら、再び店内へ吸い込まれる。すると右側通路エスカレーター向かいのスペースに、古本ワゴンが四十台近く配置され、古雑誌・映画パンフ・コミック・絵本・レコード・岩波文庫・ちくま文庫・歴史・戦争・風俗・映画・文学・美術図録・少女漫画・東京・歌舞伎などが目立っており、値段札から「志賀書店」「大村書店」(2013/02/04参照)「ブック・ジャム」(2009/07/05参照)「文省堂書店」「キクヤ書店」「澤口書店」(2014/12/17参照)の出品を確認する。
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ちょっと見応えのある中規模の古本市である。「ジャム」と「文省堂」が品揃えで尖っているが、良い本の値段はしっかり。「キクヤ」と「澤口」はちょっと古い雑本vs新しめの雑本という展開だが、その安さにビリビリ痺れる。秋田書店「世界の機関車/本島三良」メディアファクトリー「昭和の怪談実話 ヴィンテージコレクション/東雅夫編」を計648円で購入する。市は8/31まで。
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2016年07月23日

7/23埼玉・みずほ台 岡本書店

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今回は久々に古本神のひとり、ミステリー評論家&翻訳家の森英俊氏に誘われ、未踏の古本屋さんを訪ねることにする。神保町駅ホームで待ち合わせ、有楽町線に乗り込み埼玉方面へ。その車中で本日訪問するお店について質問を重ねて行くと、なんと山梨県都留市にあった「岡本書店」が移転して来たものであることを知る。「岡本書店」…行ったことある!確か広い塗装屋さんの敷地内に、二棟の倉庫らしきものがあったお店だった記憶が…断然入れなかった記憶が…(2010/11/12参照)。森氏は目録でお店の移転と店舗営業していることを知り、一度苦労して訪れたとのことであった。その時はまだ大量のダンボール箱が山積みされている状態で、明らかに営業準備段階だったので、改めて本日、思いっきり探索するための二度目の訪問となったわけである。駅西口に出て、ロータリー端にあるライフバス乗り場から、ICカードの使えぬ小さなバスに乗車する。駅から『すずかけ通り』を南西にニキロほど進んだ四つ目のバス停『大日本印刷工場前』で下車。通りを少し戻り、横断歩道を渡って大日本印刷の広大な敷地沿いに北西へ工場街の裏道を歩いて行く。最初の脇道を東北方面に折れ、さらに工場と倉庫の殺風景な裏通りを歩き続ける。すると森氏が左に現れた、大きな運送会社の倉庫を眩しそうに見上げている。「ここです」「ええっ!倉庫じゃないですか。お店なんて何処にも」「ここの二階なんです。ほら、この前来た時はありませんでしたが、ここにお店のポストが」指差された人気のない一階倉庫柱下部に目をやると、確かにそこには「岡本書店」と書かれた札が…。倉庫脇の水色の鉄階段を、半信半疑で上がって行く。段々と、大きく開かれた倉庫の扉の中が見えてくる…ぐおぉっ!本棚!確かにそこには、周囲の工場街的ロケーションからはほど遠い、本棚が並んでいるではないか。緑の床の空間にそっと足を踏み入れると、凄まじく広大な体育館のようなお店で、左側には本棚が少し並んでいるが、後はナンバーを書かれた小さなダンボールの山が果てしなく続く、とても古本屋さんの店舗とは思えぬ光景が、ただただ圧倒的に広がっていた。森氏はすでに端の事務所スペースに半身をねじ込ませ、何やら交渉に入っている。まったく相変わらずの剛腕だなと苦笑しつつ、アクの抜け切った殿山泰司壮年時代的店主にご挨拶する。そして「森さん、これ店舗じゃないじゃないですか。完全に倉庫ですよ」「でも、この前来時、ここはお店だって言ってたんだよ」とヒソヒソ…いや、それでもこの状況は、どう見ても絶賛整理中の大倉庫なのである。三人で少し噛み合ぬ会話を交わしつつ、森氏が前回探していると伝えていた児童系の本の束を、まずは見せていただく。すべて裸本であるが、中には興味ある本も含まれている。ところが値段の話になると、バラでは売らぬ、束で買ってくれ、と言うことになる。その額が意外にちゃんとした値段だったので、私は取りあえず辞退。だが結局、森氏が値下げ交渉をいいところまで進め「じゃあ二人で半分ずつ出そうか」ということに、突然決まる。何だか巻込まれた感があるが、これはまずとにかく本を買い、相手に購入意志のあることを伝え、その後の探索&交渉を有利に進めるための、テクニックのひとつなのである…もちろん私ひとりではとても使えぬ技…。その後はリリースしていただき、広い店内(倉庫内)をウロウロ…いやこれが本当に凄い。ジャッキー・チェンが乗り込む敵のアジトを想像してもらえれば、恐らくそれが一番近いイメージである。私はただポカンとしながら、長い通路を行ったり来たり。その間にも森氏は、倉庫のあちこちから目欲しい本や束を集め、すぐさま店主と交渉に入っている。そのバイタリティに感心しながら接近すると、熱心にヒートアップしているのは児童学習雑誌付録本の束について。これもまたバラ売り不可とのことなので、八十冊余の小型本を一冊幾らにするかでのせめぎ合いが始まっている。結局全部で一万五千円で落ち着いたのだが、その瞬間森氏が、こちらに向かってニッカリと微笑み「よし、後で分け合いましょう」と宣告する。あぁ!知らないうちに、俺もその束を買っていたんですね。……今日俺は、ありえないほど自動的に、大量の古本を買ってしまったのだ。森氏がひとまず代金を支払い、大量の本を袋に入れて、恐るべき倉庫店を辞去する。これからもっと片付いたら、さらに様々な興味津々食指が動く本が現れそうな、そんな気配が濃厚な倉庫であった…。午後三時台はバスが皆無なので、駅まで古本を抱えて戻り、電車の中で本を仕分ける。まるでボスが差配する銀行強盗後の分け前を待つように、まずは森氏が欲しい本を抜き、余りがこちらに回ってくるカタチであるが、買った束は恐ろしいほどの有望株で、かなり良い本がポンポンと積み重なって行く。森氏は、賭けに勝ったのである。結局今日は連れて来てもらって良かったと、心の底からウットリしながら観念して、全代金の三分の一を支払う。いや、やっぱりこの人には適いません。また来週、ぜひとも面白いところに行きましょう。
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結局こちらに回って来たのは五十六冊。そのうちの素敵な収穫は上記の写真で、特に学研「6年の学習」付録の加納一朗のジュブナイル怪奇ミステリ「悪夢の追せき」「こうもり男」「影が歩く」「きょうふの人形」には歓喜の嗚咽が!
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2016年05月28日

5/28埼玉・本川越 川越成田不動尊蚤の市

西武新宿線に揺られながら、昨晩チャンネルNECOで観た映画「顔役暁に死す」(1961年東宝映画。監督:岡本喜八 主演:加山雄三)についてアレコレ考える。未見の喜八映画ということで、冒頭パレード中の市長が暗殺されるシーンから、続いて加山(若過ぎて、なんだか満島ひかりに見えてしまう…)が車に乗って街にやってくるオープニングに、容易く引きずり込まれて行く。こういう昭和三十〜四十年代のアクションorスリラー映画で気になるのは、その原作や原案である。忘れられた探偵小説作家作品が案外映画化されているので、クレジットにそんな名を見つけた時は、まるで古本屋で探していた本に出会ったような、似た喜びを味わえるのだ。というわけで暗い画面の上に浮き立っては消えて行く、白い文字を注意深く見つめる。すると原作は、浪速書房「火制地帯/大藪春彦」!うひゃぁ。出版当時に盗作騒ぎになり、封印された小説が原作だったのか!知らなかった!それにしても、問題になったこの作品(出版は1960年。古本は高値である)が、岡本喜八により映画化されていたとは、と驚きながらほぼ原作通りに進む画面に集中する。雰囲気は大藪的ハードボイルドではなく、才気あふれるテンポが快感なアクション映画となっている。だがそれも、後の「独立愚連隊」などには遠く及ばない、佳作と言ったところであろうか。

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そんなことを偉そうに考えながら、終点で電車を降りる。駅前に出て、拡張工事中の『中央通り』を北上し、『連雀町交差点』で東へ。400mも歩けば『成田山別院』の脇にたどり着き、塀沿いと境内に百店ほどのお店が広がった、骨董市とご対面する。まだ午前十時なのに大量のお客が押し寄せ(外国人多し)、ただでさえ狭い通路を、牛歩戦術で埋め尽くしている。見たところ、今回は見慣れぬお店ばかりなので、古本心が激しくトキメキを開始。古本を探して、紙物の箱を漁り、各店舗の奥にも目を配り、市内では珍しいとも言える本の形を探し求める。「少年」付録の鉄人28号リモコンセット(6000円)やジャコメッティの細長〜い猫彫刻(複製。40000円)にもトキメキつつ、スークの如き狭い通路を行ったり来たり。まずは表の塀沿いに紙物箱を大量に並べたお店から、手製の保護表紙が付けられた春江堂書店「殺鬼太郎/寺谷大波」をつかみ出し、店主と値段交渉。すると「800円…と言いたいところだけど、500円でいいよ!」と積極的に値下げしていただく。この本、書き出しがクレイジーで『昔、有名なオーサー王の時代に、英吉利のコールンウォールと云う土地の、海際に近い所に太郎と云う名の子供を持って居る、正直な百姓が一人居りました』と、初っ端から大胆な和洋折衷が行われている。内容は…殺鬼太郎がその名の通り、イギリス中の鬼を殺りまくってます…。続いて境内のブルーシートの上に物品を並べただけのお店が、しっかりとした物質感を持つ古本を詰めた箱を置いているのに目を留める。そこから電光石火の早業で、牧陽社「冒險科學小説 化石の森/ジュール・ベェルヌ」フタバ書院成光館「童謡集 太陽と木銃/北原白秋」(函ナシ。戦中の出版なので国威発揚啓蒙詩も多く含まれるが、それでも都市や土木や鉄道に関する詩は、今読んでも一級品である。また頻出する独特な擬音に口あんぐり。ホラ、ラツルラルラ、ソラ、ラツルラルラ!)を取り出し、シートの上でくつろぐオヤジさんに差し出すと「おっ、いいところを…両方とも500円は欲しいところですが…」と言われたので即座に承諾し、千円札をビシッと渡す。他にも古書箱文庫箱などを見かけるが、そちらでは何も買えず。ちょっと古書に出会う確率が高かったので、満足出来る一時間となった。この市は毎月28日に開かれている。収穫を携え意気揚々と来た道を戻って行く。途中寄り道して「Agosto」(2013/04/14参照)を見に行くが、残念ながら今は閉店し、別な黒いレコードカフェに成り代わっていた…。
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本日の収穫。ベルヌの「化石の森」は実は全三冊の中巻。他に「怪鯨艇」「大渦巻」がある。どうにかして揃えたいものだ…。
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2016年05月11日

5/11さよなら閑古堂半額セール

鶴見の「閑古堂」さん(2009/04/05参照)から久しぶりに連絡が来たと思ったら、何と五月二十六日にお店を畳んでしまうという。ついては半額セールを始めるので、ぜひ一度ご来店下さいとのメールなのであった。あぁあぁ!ちょっと怪しくくだけた鶴見の東口で大衆文化を支え続けた古本屋さんが閉店とは!とまずは大いに嘆きまくるが、実はそのメールには、凄まじい驚くべき写真が添付されていた。うわわわわっ!ななな、なんだこれはっ?それは、この一月にお店の看板が、無惨にも外壁と共に落下している写真であった。
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※閑古堂撮影の衝撃の古本屋事故写真。大きなプラ看板が外壁もろとも…。現在夜間は店頭が真っ暗になってしまうので、工事現場で使うような投光器を煌煌と輝かせているそうである…。
あまりにも不意打ちに突然に、地震のような大音響と共に、落下してしまったとのこと。幸い怪我人はいなかったのだが、この看板落下は事故扱いとなり、警察・消防車・レスキュー隊・救急車も駆け付ける大騒ぎに。写真を見れば分かる通り、完全にお店の入口が塞がれてしまっている。そこでレスキュー隊の出動となり、店主の鈴木氏は救出されるという形になり、何処も怪我していないのだが、救急車に収容されてしまったのである。…この事故がきっかけのひとつとなり、店舗を閉める決意を固めて行ったらしいのだが…。

京急鶴見駅の東側に出て、雑居ビルの裏通りをたどると、すっかり化粧直しされた「閑古堂」前。
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ずいぶん印象が変わったことを感じつつ、雑然とした店頭を通過して店内に入り、鈴木氏に挨拶する。本を見る前にしばらくお話しし、この地で二十三年続いたお店についての万感の思いを聞かせていただく。だが、長年相棒だったお店と別れるのは寂しいが、逆にこれからは、店舗に縛られない生活を楽しみにしているとのこと(今後の古本屋としての活動は即売展とネット販売が中心)。何より大好きな古本屋巡りを再開できるという意気込みは、まるでウブな少年のように血気盛んなものであった…これはウカウカしていられない…。閉店セールは明日十二日からなのだが、ご好意で特別に前倒しでセール適用していただくことになり、店内をジロジロウロウロ。河出文庫「かぶりつき人生/田中小実昌」角川文庫「人民は弱し 官吏は強し/星新一」池田書店「盆栽入門/加藤照吉」潮出版社「黒鳥の旅もしくは幻想庭園/中井英夫」芸術生活社「芸術生活'74 8月号 さしえの黄金時代」を計700円で購入する。最盛期は十二店のお店が鶴見にはあったそうだが、「閑古堂」の閉店後は、西口の「ブックオフ」と「西田書店」(2009/04/05参照)の二店だけになってしまう。なんという寂しい状況だろうか。その辺りの裏道に、ひっそりと知られざる大衆店が、潜んでいたりしないものだろうか…。

機会があれば閉店までにまた来ようと思いつつ、大森で途中下車して「松村書店」(2009/09/25参照)にたどり着き、壁棚に挟まれた通路だけの小さなお店に心癒され、角川文庫「人外魔境/小栗虫太郎」ゆまに書房 天人社復刻版「現代映画藝術論/岩崎昶・武田忠哉・飯島正・袋一平」を計700円で購入する。
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2016年05月07日

5/7千葉・木下 木下駅南骨董市

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今日も懲りずに(というか味を占めて)骨董市を目指す。たまたまひと月前にテレビで目にしてから、毎月七日の開催が巡って来るのを、ちょっとだけ心待ちにしていたのである。強い風が吹き荒れる早朝のJR成田線は、田植えが完了した水面に細かなさざ波が立ち続けて止まない田園風景の中を、軽やかに滑って行く。『きのした』ではなく『きおろし』と読む駅に着いたのは、午前八時四十二分。南口に出ると人気のない寂れたロータリー。だが、そこから東に向かって三十メートルも歩くと、南に延びるシャッターを下ろした『木下駅南口商店街』に、およそ七十の骨董店が、かりそめのお店を広げていた。すでに多くのお客さんの姿があり、あらゆる古物に鷹のような蛇のような鋭い視線を照射している。一見すると、誰が店主で誰が客なのかよく分からない…。並ぶ品物は、定番の古雑貨に加え、ジャンク品・古布・古銭・大物骨董品(人間大の仏像までも!)・民具・絵画などがよく目につく。だが商店街を入ってすぐの所に、ダンボールに古本を詰めたお店が広がっていたので、早速古本心は有頂天に!エロ小説・エロ雑誌・獅子文六・書道和本・大型美術本・医学書・絵葉書…うぅぅん、古本があったのは素晴らしいが、完全に食指は動かない…。仕方なく百メートル弱の通りを南下しながら、両側に並んだお店をチェックして行く。300均歌本箱・カラーブックス箱・鴎外全集箱・図録箱などを見かけるが、やはりめぼしいものはナシ。中頃のお店の和本タワーを探索し、俳優座のガリ版刷り台本「未必の故意/安部公房作」「門 わが愛/夏目漱石作・早坂暁脚色」を計200円で購入出来ただけで終わりそうな雰囲気に、すっかり意気消沈し始める。途中、仮面ライダー&円谷系のソフビを山にして出していたお店があったので、古い2号・V3・アマゾンの値段を聞いてみると、1500円〜2000円。どうしよう?と一瞬悩むが、いや、俺は古本を買いに来たんだ!そう残り少ない闘志を燃やし、それなりの値段がするソフビの誘惑をすっぱりと断ち切る。意を決して最初のお店へ戻り、もう一度箱内をチェックしたり、絵葉書箱を漁って東京検事局肩書きの古い名刺を買おうかどうか迷ったりしていると、箱が寄せ集まる島の中央の大型美術本が置かれた隙間から、さっきは気付かなかった、なんだか雰囲気のある古雑誌の一部が覗いているではないか。慎重に上になった本を退かしてみると、A5サイズの64〜66ページと薄手の雑誌、スタア社「MEN 男だけの雑誌」が五冊キレイに重なっていた(昭和二十三年 新年號・二月號・3月號・五月號・七月號)。手にしてみると、聖林映画情報を中心に、翻訳探偵小説・風俗小説・スポーツ・ファッション・米仏風俗&世相などを掲載した男性誌である。おっ、辰野九紫の小説が!保篠訳「古城の秘密」はルパン対ヘルロック・ショルムスだ。野口久光・前谷惟光・横山隆一・小野佐世男・花森安治が挿絵を描いているが、長澤節と岡本太郎なんてのも!そんな風に驚き喜び店主のご婦人に値をうかがう。「それは…一冊400円」「ということは五冊で二千円…」「でも…一冊200円でいいよ。400円で売りたいんだけど200円でいいよ」「ということは五冊で1000円。ありがとうございます!」とめでたく購入。早起きして来た甲斐がありまくりとなりました。骨董市、門外漢でも楽しいな。だが、これで古道具&骨董にのめり込んだら、大変なことになりそうだと、軽く己を戒めて、当分は古本だけを追い求めようと心にそっと誓っておく。
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素敵にバタ臭い表紙絵は塚本茂。五冊とも経年劣化以外はなかなかの美本である。
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2016年04月23日

4/23神奈川・黄金町 古書 馬燈書房

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改札外の高架下で立食い蕎麦を啜ってから、ちょっと潮の引いた大岡川を、涼風に撫でられながら渡る。『イセザキモール』の西部に入り込み、まずは「博文堂書店」(2011/02/19参照)で肩ならし。歳月社「幻想と怪奇」黒魔術特集・幽霊屋敷特集・現代幻想小説特集の三冊を計900円で購入する。古本エンジンをふかし始めながら、『イセザキモール』を6丁目→5丁目と東進して行く。そして5丁目が終わろうとするその時、「なぎさ書房」(2016/01/23&2016/01/10&2015/12/17&2010/04/21参照)跡地に本日新規開店したお店が、頼もしく視界に飛び込んで来た。何故だか、おめでとうという気持ちより、ありがとうと思う気持ちの方が今は強い。やはりどんな形であれ、「なぎさ書房」の生きた証が残っていることが、嬉しいのだろう。大きな日除けが覆う歩道の光景は、以前とさほど変わらない。大きな100均文庫ワゴンと単行本ワゴン、それに100均単行本棚。入口脇階段横の隠れ棚は、今は一冊も本は入っていない。「近代書房」(2008/09/07参照)から送られた祝い花と左端に置かれた店名看板と、窓に貼られた『タクシードライバー』のポスターを眺めつつ店内へ。おぉ!什器レイアウトはそのままだが、床にはカーペットが敷き詰められ、棚の色は焦げ茶に統一され、シックですっきりとしている。実はわりと広いお店なので、まだまだ本棚にはブランクが見受けられる。入ってすぐ右には一般文庫が並んでいる。短めの通路棚には、右に中公文庫と岩波文庫、左にSF文庫・日本純文学文庫・海外文学文庫がほどほどに収まる。左壁棚を見ると、あぁ!『槇ひろし+前川欣三』黄金コンビ(「カポンをはいたけんじ」「くいしんぼうのあおむしくん」など)の知らない古い絵本が三冊も面陳されているではないか!驚きながら壁棚伝いに奥へ進み、さらに絵本・女性実用・100均本&300均本ゾーン・世界各国・自然・動植物・魚と眺めて行く。奥壁の左半分はカルト&エロ&絶版コミックが主に並ぶ。そして奥の空間を左右に分つフロア棚には、左に幻想文学・寺山修司・日本文学・海外文学・詩集・映画が収まる。右側には東洋の医術・占術・仙術・神秘・隠秘学・精神(むっ、西村晃のお父さん西村真琴の「大地のはらわた」発見(裸本)。表紙は発明したロボットの学天則だ!)伝統芸能と続く。右端の棚には、仏教・哲学・思想・政治など。奥壁の右半分には歴史・昭和史・社会などが集められ、右壁棚奥は美術・国内作家プレミア写真集・オリジナルプリントが並び飾られている。まだまだ開店したてホヤホヤのお店で、その全貌は姿を現してはいない。だが、面陳された写真集・絵本・東洋関連に、将来の片鱗が見え隠れしているようだ。値段は安め〜普通。三冊選んで右側中央の帳場に向かうと、準備中の古本の山に囲まれた、ライダースジャケットの女子とモジャモジャで丸眼鏡の男子の姿。まるでライブハウスの楽屋でも覗いているようで、時代の移り変わりをじんわりと意識してしまう。中央公論社 ともだち文庫「音のさまざま/栗原嘉名芽」日本出版社「動物渡来物語/高島春雄」「戦線の博物學者 北支・蒙古編/常木勝次」(函ナシだが、新進の昆蟲学者が軍務で赴いた北支那&蒙古について、昆虫中心に記録した研究記録進軍紀行。軍人ファーブル…と言ったら伝わるだろうか…。300円だったのでさりげなくどひゃっほうである)を購入する。今後、激しく変化&進化しそうなので、また見に来ます。開店おめでとうございます。
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伊勢佐木町ブルース歌碑裏にある『伊勢佐木町商店街地図』には、まだ「なぎさ書房」の名が残っている。

ブラブラとうらぶれた白昼の裏町を伝って野毛方面へ。すると街は大道芸祭の真っ最中で、表通りも裏通りも大変な人出である。慌てて「天保堂 刈部書店」(2009/07/20参照)に飛び込む。
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だが、普段は静かな静かな店内に、容赦なく表の戦前〜戦後懐メロバンドの演奏が飛び込んでくる。丸谷才一訳の小学館「猫と悪魔/ジェイムズ・ジョイス」(ビニールカバー&帯付)を400円で購入し、早々に退散。華やか過ぎる街の賑わいを避けるようにして、桜木町駅前の横浜一淋し気なショッピングビル『ぴおシティ』地階の立ち呑み屋の暖簾を潜り、ビールを一杯。土曜昼間のヨコハマに、カンパイ。
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2016年04月05日

4/5群馬・国定 エイト

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小山駅で両毛線に乗り換えると、穴蔵のようなホームの片隅には、去年閉店した立食い蕎麦屋の簡素な店舗が、まだ残っていた。碗を受け取ると、蕎麦の匂いとともに湯気が立ち上がる両手の中を思い出し、ボタンを押して電車に乗り込む。揺れる車体で、とても春とは思えぬ曇天下の北関東を東西に横断し、伊勢崎駅のひとつ前で下車。駅前に、駐車場と駐輪場と自動車屋しかない、小さなロータリー。目の粗いアスファルトの上をトボトボ歩き始め、まずは線路沿いに西南へ。踏切脇の『この先大型車両通り抜けできません』と看板のある小さな道に入ると、カーブ途中の街道と合流する。その先の、今度は頭上に『県立精神医療センター』と案内のある道に入り、西へ。約200メートルでたどり着く、大きな敷地の『県立精神医療センター』の桜並木と前庭は、まるで映画のワンシーンように隙無く美しく存在していた。そこを過ぎると、黒土の畑と工場と農家と住宅が立ち現れ、時折この地方特有の長い並木のような防風林が、道にクロスする。医療センターから1.3キロも来れば『市場町2丁目交差点』。ここから、だれもいないスロット店や焼肉屋、風俗路面店などを眺めながら300mほど南に進むと、左手に『ソニックランド』と掲げられた、明らかに元パチンコ店な巨大店舗が、ぬぬっと姿を現す。広い駐車場前には『焼きまんじゅう・焼きそば』の幟がはためき、建物の右横っ腹には確かにその販売所が付属している。しかしメインは古本やDVDを商っているはずなのである。ウィンドウには主婦向け&子供向けのメッセージが多数貼り出されているが、一番気になったのは『家族で楽しむ♪陸水空ラジコン』…確かに楽しそうだ、ラジコン一家…。広いエントランスに入り、天井が高くさらに広い店内に進むと、客の姿の皆無な空間に、電子チャイムの音が虚ろに鳴り響く。すると左手から、エプロン姿の会社役員風壮年男性が現れ「いらっしゃいませ」とバリトンボイスを聞かせてくれる。目の前には、高い白木の棚が横向きに林立している。左はおもちゃ・雑貨・帳場ゾーンで、右側は壁も含めて古本ゾーンとなっている。だが、そのほとんどが面陳の女性向けムック・ビジュアルムックで、惑わすように雑誌・漫画雑誌・ビジネス書・エッセイ・ゲーム攻略本・バーゲン本・絵本が紛れ込んでいるのである。左手にはコミックばかりがしっかりと集まっている。奥へズイズイ進んで行くと、右寄り五本目の通路に単行本&文庫通路をようやく発見。小野田少尉・有吉佐和子・歴史・ラノベ・ちょっと古めの日本文学文庫・五木寛之・山手樹一郎・松本清張・吉川英治・司馬遼太郎などなど。さらに奥には大量のシングルCD面陳棚と、またもやムック&LPレコードラックが続く。それに、奥の広大なアダルト空間入口周りには、アダルト序章的なソフトな本が集められている。ムックに物凄く力を入れた、珍しいお店である。何故こんなにもムック本を、ひたすら丁寧に執拗に面陳しているのだろうか。それは奇観と言って良いほどの、ある意味非効率な光景なのである。値段は安め〜普通。講談社「妹たちのかがり火 戦死した兄さんを悼む/仁木悦子編」(兄を戦争で失った妹たちの文集、筆者のひとりの献呈署名と、重い手紙が挟み込まれていた…)を購入する。
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2016年02月25日

2/25茨城・つくば 女子系古書部

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色々放っぽり出して、つくばエクスプレスで終点までの小旅行。月に数回しか不定期営業しない、現役なのにすでに幻であるかのようなお店を目指す。まずは駅南側のインフォメーションセンターでレンタサイクルを調達し、サドルをしっかり調整して、広く無機質で寒い街中へ漕ぎ出す。『県道244号』である『学園西大通り』をひたすら南下し始め、中心街を離れるとすぐに、小ビルと商業建築と集合住宅が余裕を持って建ち並ぶ景色が、ダラダラダラと続いて行く。漕いで漕いで、やがて左手に大きな『洞峰公園』が見える交差点に差し掛かる。そこを越えると、公園の向こうのビルの屋上に、天文台と球形の気象レーダーが見え始めたので、気分が高揚する。交差点から二つ目の信号手前で細い脇道に入り込んで南西に進むと、嘘のように開けた畑の中の一本道となり、またもや高揚。目の前には『産業技術総合研究所』の、低い金属柵に囲まれた恐ろしく大きな敷地が広がっていた。ここからはひたすらに、敷地沿いに西へ西南へとなぞるように進み続ける。ちょっと広めな道路と合流した所で、広大な畑を右にしてまだまだ先を目指すと、その右手に『小野川児童公園』が現れるので、すかさず西に入り込む。公園を過ぎるとそこは住宅街の端っこで、やがて右手の畑の間に、赤屋根の平屋で小さく可愛い山小屋風のお店を、無事発見する。駅からの所要時間は二十分強。それにしても、このお店の在り方はとても素敵だ。店前の植栽を回り込むようにして、ウッドデッキへの数段を上がる。木のドアとガラス窓、『GOOD BOOK GOOD LIFE』の立看板、台の上に置かれた店名看板。嬉しいことに軒からは『古本』の小さな吊看板も下がっている。金属製のドアレバーを下げて中に入る。暗い色調の木造空間で、軋む床板がわずかに明るい。入った所が小さな古本屋空間で、左右と奥に木製本棚やラックが展開して行く。右側の棚の向こうは『ミウコネアン』という器類を並べた空間になっている。入店の気配を察知したのか、奥の部屋へのカーテンが揺らぎ、木村多江風女性が「いらっしゃいませ」と顔を見せた。ホニャホニャと軟らかい音楽が流れている。入ってすぐ左には文庫・美術図録・エッセイ&ルポ系単行本が並び、その周囲や奥の壁ラックには絵本が飾られている。右には新書・図録・食・犬が並び、単行本やアート本がそれに続いて行く。奥の棚には、食・民俗学・思想・清貧・歴史・アート・詩・暮らし・地理などが集められている。新しめの本がメインで、冊数はそう多くないが、女子的に硬めな並びが、意外なところまで手を伸ばす感があり、一筋縄ではゆかぬ棚造りが面白い。その棚はそれほど好みではないのだが、自転車で見知らぬ土地を駆け抜けて、こんな意表を突く空間に出会うことになるとは、ツアー冥利に尽きる体験であった。値段は普通。「すみません」とカーテンの向こうに声をかけて精算すると、店主が勇気を持っておずおずという感じで、「普段あまりお店を開けていないのですが、こんなイベントに参加します。色んなお店も、出ます!」と、三月末に参加するという『御殿まるごとマーケット』のちらしをいただく。光文社知恵の森文庫「幻の時刻表/曽田英夫」を購入する。

表に出て、お店を振り返り、改めて畑の中の素敵なロケーションを堪能する。駅にエッチラオッチラ引き返し、せっかくなので北側に突き抜けて、学術的に硬い「学園都市古書センター」(2010/05/26参照)を訪問。朝日文芸文庫「十字街/久生十蘭」冬樹社現代作家入門叢書「埴谷雄高」福山書店「美術大講座 圖案科 5 装飾美術史」(今和次郎も執筆しており、函付美品で100円!)を計650円で購入する。
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2016年01月26日

1/26神奈川・金沢文庫 古本小屋 金沢文庫店

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京急快特で、速やかに三浦半島のとば口へ。東口に出て、溜まりのような駅前から抜け出して、商店や家やビルが建て込み、排ガスの吹き荒れる『国道16号』に出る。東側歩道に身体を預け、スタスタと南に向かう。やがて『君ヶ崎交差点』の歩道橋を潜れば、行く手のビル群の袖看板の重なりの中に、『本』の文字を容易く発見。主に神奈川圏東南部に進出していた、マイナーリサイクル古書店チェーンの一支店である。藤沢に本店(2013/08/09参照)が現存しているが、他の支店はまだ残っているのだろうか…。表にワゴンなどは出ていないので、旧式の古めなガチャガチャを眺めながら、比較的新しそうな看板下を潜り、白っぽい店内へ。横長でちょい広めの空間である。右奥に帳場兼作業場があり、入口付近のフロア手前側には、ゲームやコミック(絶版漫画コーナーあり)・79円均一本が集められ、古本は奥のフロアと左端通路にまとめられている。入口左横のウィンドウ沿いにはビジュアルムック類のラックが連なり、左壁棚にガイドブック・美術図録・日本文学文庫・時代劇文庫…おっ!最上段列に古書のコーナーが設けられているじゃないか!さすがに冊数は少ないのだが、それだけでも古本心は、たちまち油紙のようにメラメラと燃え上がる!そのまま上段には教科書類が続き、向かいのフロア棚にはラノベ・雑学文庫・新書・海外文学文庫・絶版文庫(少々)が並んでいる。奥のフロアは、横向きに平台付きの背中合わせの棚が二本縦列で計四本並んでいる。ムッ、柱の上にはさいとうたかをの『ゴルゴ13』色紙が飾られている…。一番手前には、海外文学・実用・言葉・映画・サブカルなど。次の通路には、ドイツ・ヒトラー・戦争・スポーツ・ペット・自然・オカルト・旅・ノンフィクション・ミステリ&エンタメ&日本文学(文遊社の野呂本が1400円均一で三冊も!)・資格・ビジネスが集合。その裏側は100均文庫と100均単行本で、奥壁棚には歴史・郷土・横浜・アイドル写真集が並んでいる。基本はリサイクル系古書店だが、小さいながらも古書コーナーがあり、所々に安値の古い本も紛れ込んでいるので、それがちょっと嬉しくてたまらない。値段はちょい安〜普通。農山漁村文化協会「農村演劇 やり方と脚本集/村山知義編」を購入する。こうなると他の支店の消息が気になって来るな…。

お店を出たらさらに南に歩き、ビル内型ショッピングモール『サニーマートB館』二階の「INFINITYぶっくす」(2011/06/05参照)を訪ねてみるが、哀れ『ダイソー』に取って代わられ、かつて、見捨てられたような古本ばかりが集まっていたほの暗い知の淀みは、明るい100均の物品に一掃されてしまっていた…誠に残念なり。
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2016年01月23日

1/23神奈川・伊勢佐木長者町 野球古書店 咲良本屋

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日ノ出町駅前から『横浜駅根岸道路』を南南東に下って行く。繁華で猥雑なビル街は、まるで新しい平成が、古い昭和に飲み込まれようとしているかのような、独特な土地の雰囲気を、昼間でも精力的に発揮している。大岡川を越え、『イセザキモール』を越え、『国道16号』を越え、大通り公園に至ると、そこには市営地下鉄『伊勢佐木長者町駅』の地上口。ここからさらに南南東に300mほど歩き、『長者町一丁目交差点』で西北西へ足を向ける。しばらくすると右手に、ロケットと着陸ポッドのイカした遊具が設置された『千歳公園』が現れるので、公園をナナメにザクザク横断して、一本北の裏通りに抜け出る。さらに西北西に進めば、左手大きなビルの一階に、明るい緑のテント看板を張り出した、野球古書専門店に出会うことが出来る。コメントタレコミで知ったお店である。寂しい裏道に古本屋さんの唐突感、そして野球古書という専門性が、微妙に足を竦ませる。だが、ガラスに貼られた長嶋のバッティングフォームに勇気を貰い、ガラス戸を引き開けて店内に入る…小さい。気持ちの良い、小ささだ。壁際に本棚、そして棚前にはラックや箱や小ワゴンが置かれ、通路スペースを不規則な形にしている。左奥に小さく狭いカウンター帳場があり、物静かな現役引退した野茂英雄風青年が座っている。それにしても本当に野球本ばっかりだ!入口左横の100均野球本二段ワゴンを見てから、そこに立ったまま奥の野球特集グラフ誌ラックと、セパ各球団広報誌がズラッと並ぶ棚を、ほへ〜っと臨む。帳場横のプロ野球選手名鑑と野球雑誌に視線を走らせ、奥の棚前にちょっぴり近付く。ジャンル外50均100均箱の向こうには、高校野球・大学野球・プロ野球・小関順二(スポーツライター)・メジャーリーグ・野茂英雄が収まっている。右壁には「number」などの野球を特集したスポーツ誌、それに野球関連の文庫と新書・長嶋茂雄・王貞治・野球漫画が並んで行く。入口右横の棚には、星野仙一・野村克也・原辰徳・落合博満・松坂大輔・イチローなどが勢揃い。小さなお店だが、それでも全部を野球本で埋め尽くされると、清々しいほどの意志の強さと野球愛が、遠慮呵責なく伝わって来る。古い本はほとんどなく、九十年代以降の本が中心だが、専門店なのに値段が安め〜普通なのは魅力的である。値段は本に書かれたり貼られたりしているのではなく、スリップ形式で挟まっている。講談社「早慶戦百年 激闘と熱狂の記憶/富永俊治」を購入する。

この後は『イセザキモール』に戻り、愛しの「なぎさ書房」(2016/01/10参照)を再度訪れる。閉店セール中の店内は、相変わらず賑わっており、棚はブランクなく補充がこまめに行われているようだ。恐らくここに来られるのは、これが最後となるであろう。…ならば、何を買うべきか…。店内をじっくり一巡して選んだのは、美術本棚最上段に場違いに挟まっていた、小山書店の少年少女世界文庫第十編「街の少年/豊島與志雄」であった。50%オフの2250円で購入する。三十年間、今まで本当にお世話になりました!

日ノ出町駅にいくばくかの寂しさを抱えトボトボ戻っていると、大岡川の手前で横浜市の公共掲示板に何気なく目が留まる。あっ!そこには、さっき訪れたばかりの野球古書専門店の宣伝ビラが、ルールを守って張り出されていた…渋い!なんと渋く奥ゆかしい宣伝方法なんだ。
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2016年01月14日

1/14千葉・市川真間 移転開店!春花堂

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そろそろ頃合いだろうと、すでに移転済みのはずの元通路古本屋さん「春花堂」(2008/09/20参照)を見に行くことにする。駅から南に出て『真間駅前通り』を南に下ると、左手の「春花堂」の入っていたビルは、まさに取り壊しの真っ最中である。さらに南に50mも進めば、右手に一階が通り抜けられる小さな商店街になったビル『プラザピコ』が見えて来る。すかさずその通路に入り込むと、左手に古雑誌のラックが!ここに移転したのか…近付くとやはりそれは「春花堂」であった…だが看板に『古書・古本』と共に『レンタルスペース』とあるのだが、これはいったい?引戸を開けて中に入ると、フロアは前後に二分されており、手前が古本屋さん、奥が引戸で仕切られたレンタルスペースらしい。戸の向こうから、賑やかに麻雀牌をかき回す音が聞こえて来る…。お店は少し横長で、左右の壁沿いに本棚、真ん中に背中合わせのスチール棚が二本置かれた構成である。そして突然足元に忍び寄って来たのは、首輪をしたアジ虎猫!か、可愛い!「アウ〜ン。アウ〜ン」と鳴き、もはや離れようとせず足にソフトアタックを繰り返し、何処までも付いて来るので、その天鵞絨のような毛並を撫でまくりながら、古本を眺め始める。あまり夢中になって触り過ぎると、猫が興奮状態に陥り鳴き止まなくなるので、ほどほどに、ほどほどに…。左端通路は壁棚に、旧店舗では奥の部屋にあった古書・日本純文学・随筆・全集・海外文学評論・文明がズラリと並び、向かいに新書・選書・詩集・戦争が収まる。中央通路は、左に児童文学・海外文学・登山・映画・音楽・レコード・日本文学、右に絶版文庫・海外文学文庫・一般文庫。右端通路は手前が広くなっており、そこに100均文庫・ミステリ&エンタメ・廉価コミック・時代劇文庫が集まり、奥でコミックと一般文庫が向かい合っている。当然の如く以前より本は少なくなったが、俄然その分明るく見易くなっている。カオス感も霧消しているので、今のところ猫のいる普通の古本屋さんとして楽しむのが良いだろう。本に巻かれた白帯に書かれた、独特な書体は健在である。店主に猫と共に近付き精算をお願いすると、足元から離れぬ猫を見て「すみません」と一言。角川文庫「ビュビュ・ド・モンパルナッス/フィリップ」四季新書「酒徒交傳/永井達男」を計800円で購入し、猫に涙の別れを告げる。

お店を出た後は「智新堂書店」(2008/09/20参照)を見に行くが、タイミング悪くお休み。なので線路際からぐるっと回り込んで「即興堂」(2011/11/23参照)へ。古書棚に出物はないかと漁り、ジリジリ帳場方面に近付くと、店主さんから優しく話しかけられ、哀れ正体が見破られていたことを知る。その後も所々に潜む古書に心を奪われ、モダニズム写真家・堀野正雄の作例たっぷりな技法書にうっとりするが、結局ウィンドウ際の児童文学列に挿さっていた、講談社「空中都市008 アオゾラ市ものがたり/小松左京・作 和田誠・絵」に惹き付けられ、函から本体を引き出すと、24版だが3000円とちょっと安値だったので、ええい!欲しかった本だ。この際買ってしまえ!と購入する。
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2016年01月03日

1/3千葉・我孫子 NORTH LAKE CAFE&BOOKS

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お正月も一日から営業している、メールタレコミのあったお店にのんびり出かけてみる。南口に出て、ロータリーから南に下ると、小さな神社のある『我孫子駅入口交差点』から先は、道が少し狭くなる。さらに南に進むと、辺りは駅前からあっという間に住宅街に早変わり。狭過ぎる歩道を伝い、人と道を譲り合いながら、うねる坂道の『公園坂通り』を下る。やがて坂を下り切ると、『手賀沼公園前交差点』となり、南に広がる公園の林の向こうに、煌めく沼影が垣間見えている。交差点に立つ名所案内には、『志賀直哉邸跡』『武者小路実篤邸跡』『白樺文学館』『嘉納治五郎別荘跡』『バーナード・リーチ碑』などとあり、この地がかつて様々な文人や文化人に愛されていたことを、うかがい知ることが出来る。そこから郊外型店舗の並ぶ大通りを東へ進んで行く。道が大きくカーブし、信号を過ぎてからさらに100mほど進むと、左手にレンガタイルで化粧された二軒長屋の商店建築が姿を見せる。その右側が、アメリカのロードサイドスタイルな、カフェと古本のお店であった。おっ、ちゃんと入口横に安売古本棚が出ているじゃないか。これならここで本を一冊でも手に出来れば、カフェに気兼ねせず堂々と中に入れるぞ…と心中に小さな勝利の凱歌をあげる。値段は100〜200円で単行本がメイン。ちょっと面白い本も混ざっており、単行本一冊と、絶対にここにあるべきではないと思えるプログラムを一冊掴み取る。そのまま店内に進入すると、L字カウンターの向こうから、大人の落ち着きとお洒落さを兼ね備えた男女が「いらっしゃいませ」と声をかけてくる。ちょっと会釈して、右側のカフェ席を一瞥した後、すぐに入口左横の頑丈で大きなスチール棚前に張り付くと、そのままフリーにしていただいた模様…本を買うだけの入店もOKなのだな。ありがたい。棚にはエッセイ・片岡義男・小島信夫・食・日本文学・詩集・大判美術本・美術図録・自然・山岳・児童文学・LPレコード・アート・ビートニクス・海外文学・植草甚一・野坂昭如・映画・文庫と、限りあるスペースに意志の流れのある並びが続く。棚前には木製絵本ワゴンと文庫ワゴンが置かれ、その下にはポスター箱や雑誌箱も置かれている。素直さと好みが手を携える、キラキラとキレイな棚造りである。真鍋博の「超発明」がしれっと並んでいたりもする。値段はちょい安〜普通。毎日新聞社「山族・海族/飯山達雄」恒文社「不滅の大投手 沢村栄治/鈴木惣太郎」シールズ親善野球普及會「親善日米野球 昭和24年10月(San Francisco SEALS GOODWILL BASEBALL TOUR of JAPAN SOUVENIR PROGRAM)」を購入する。

お店を出て、ロードサイドをしばし歩いて手賀沼へ出てみると、陽光煌めく水面で、カモメ・鴨・白鳥がギャアギャアクェクェガァガァと、三つ巴の大戦争の真っ最中。そんな騒ぎをよそに、本日の嬉しい収穫を記念撮影する。
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「沢村栄治」も嬉しいのだが、昭和24年(1949年)にサンフランシスコシールズが日本にベースボールツアーで訪れた時のプログラムが素晴らしい!GHQ占領下のためか、全124ページのうち94ページ分が英文で30ページ分が和文となっている。英文の方はほとんどが選手の写真とチーム歓迎の広告類なのだが、ペプシコーラ・コカコーラ・四輪の薔薇印ウイスキー(フォアローゼスだ!)・モービルオイル・ノースウェスト・レミントンなどの、懐かしいアメリカが盛りだくさん。対戦する日本の全日本軍・全関西軍・全関東軍・巨人軍の選手名鑑ももちろん掲載されている。来日したシールズの日程の中に、米軍野球チーム(極東空軍と極東陸海連合軍)との対戦が組まれているのは、新鮮な驚きであった。あぁこれが100円とは、間違いなくどひゃっほうである。それにしても1949年と言えば、黒澤明の『野良犬』が公開された年でもある。劇中に満員の後楽園球場で容疑者を捜すシーンがあるが、プログラムによると対巨人戦が10月15日に後楽園球場で開かれているのだ。球場のキャパシティは55000人か…確か劇中でも志村喬がそれに近い数字を口にしていたと思う。うむ、こんな風に一冊の古本が、違う世界とリンクするのは、実に実に楽しいものである。
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