2018年10月02日

10/2神奈川・日ノ出町 雲雀洞

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最寄り駅は日ノ出町なのだが、みなとみらい線の馬車道駅から地上に出て、レンガで彩られた『馬車道』を、西南西に向かって歩いて行く。やがて根岸線の高架下を潜り、賑やかな『イセザキモール』に入り込んで行く。相変わらず西南西に進みながら、『イセザキ1st&2st』を突破。そこで突き当たる道は、日ノ出町駅から南下して来た道である。ここから『3st』に入り、ついには『4st』に進入する。ここの中間辺りでは、伊勢佐木町のランドマークと言える『伊勢佐木町ブルース歌碑』と『へびや』がほぼ向かい合っているのだが、その手前北側のマンション一階端に、今日から古本屋さんが開店していた。一箱古本市などで活躍後プロに転身し、主に催事をフィールドにしていた「雲雀洞」さん(2016/07/22参照)が、青天の霹靂の如く実店舗を電撃的に開いたのである。お祝いの立花が飾られた前には、安売ラックと三台の百均文庫ワゴンが展開している。中に進むと、そこはなんだかシュッと縦長にまとまった、街の古本屋さんの趣き。開店の午前十一時からさほど経っていないのに、たくさんのお客さんが蠢いている…と思ったら、一箱仲間たちがお祝いに駆け付けて、盛り上がっている模様。今日は平日だって言うのに、なんという麗しい光景!だがそれだけでなく、通りから飛び込んで来るお客さんも早速いたり、コミック関連について鋭く質問しているお客さんも出現したりしている…うむ、賑わっている。入口左横は100〜300円の安売棚で、映画関連の古書や古いコミックなどがチラホラ目立っている。右は一面の壁棚で、作家五十音日本文学文庫・ノンフィクション系&教養系文庫・映画関連文庫・海外文学文庫・純文系古書文庫・ちくま文庫・中公文庫・岩波文庫・官能文庫と文庫だらけになっている。入口側のフロアには平台付きの背中合わせの棚が置かれ、右に時代劇文庫・左にミステリ&SF文庫・ハヤカワポケミス・新書サイズミステリーを収めている。左の壁棚には、新書・新書サイズ本・温泉&ホテル・戦争などが並び、柱を挟んで奥に絶版漫画・SF・ミステリ・幻想文学・海外文学・田中小実昌が続く。奥はロフトを備えたバックヤードになっており、それを背後にしてエプロンを着けた雲雀洞さんが、直立不動で帳場に立ち尽くしている。帳場前には映画・音楽・近代・民俗学・文化が集まる棚も置かれている。安売棚にはなかなか面白い古い本が混ざり込んでいる。値段は安めなものが多いが、棚の各所にしれッと紛れ込んでいる目立つ本には、それほど隙なく値が付けられている。全体的には催事参加時の雲雀洞さんのワゴンを、お店サイズに拡大した感じと言えよう。足繁く通っていれば、面白い本に出会える確率は高そうである。鳳映社「恐龍 怪獣・猛獣・海獣・探検秘話/ロイ・アンドリュース」鱒書房「隨筆 探偵小説/高木彬光」(カバーナシ)モード学園出版局「北村信彦。1962年12月19日、東京生まれ。/上田美穂」カイガイ出版「死体置場へのお誘い/山村正夫編」東峰書房「ヨーロッパの旅/勅使河原蒼風」(カバーナシ。口絵にサインあり)を計1200円で購入する。こりゃあ伊勢佐木町が、古本屋的にざわついて来たぞ!開店おめでとうございます!

さて、今日もかなり立て込んでいるので一刻も早く帰らなければならないのだが、古書が多めで楽しい「活刻堂」(2009/10/12参照)には寄り道する。おかげで棚の最下段から、河出書房「前衛シナリオ集」を500円で発見する。やった!これでブニュエル&ダリ脚本のシュルレアリスム映画『アンダルシヤの犬』やダリ脚本『ババウオ』を活字で読むことが出来るぞ!『ババウオ』は、嬉しい瀧口修造譯。主人公が懐中時計を手にする度に、時計に対していちいち『(柔軟な)』とカッコ付きで説明が入るのがダリっぽい。二編とも、予想通りにシュールな情景描写の連続なので、脚本というよりはほとんど小説の態となっている。
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2018年09月19日

9/18古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第二章】

盛林堂・イレギュラーズとして早起きをし、午前七時には西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)前にてスタンバイ。小野氏がハンドルを華麗に捌く盛林堂号で、大渋滞の東京を抜け出して神奈川県入りする。本日のお仕事は、八ヶ月ぶりの日下三蔵氏邸書庫整理&買取である。日下邸に到着するや否や、氏のご母堂と遭遇し「本当にご苦労さまです」と挨拶される。玄関に入ったところで日下氏から小野氏に連絡が入り、仕事のメール送信を取りあえず済ませてしまうとのこと。その間、玄関に積み上がる古本タワーを高速で眺め、所々に潜むレア本を慈しむ。しばらくすると、本タワーに囲まれた玄関横の仕事場のドアがギギッと開き、「どうもどうも」と日下氏が姿を見せ、本タワーを跨いで玄関に下りて来た…斬新な登場の仕方である。そしてすぐさま車でマンション書庫に移動し、作業を早々と開始する。本日のミッションは、カラーボックス六本を組み立て、前回(2018/01/09参照)スペースを作った台所に配置し、床置き本をそこに収めるというもの。時間があればさらにカラーボックスを買い足し、リビング奥の窓際の単行本山脈を整理するとともに、さらに組み立てたカラーボックスにそれを収められれば御の字、というものである。カラーボックスの組み立ては電気ドリルで小野氏が行い、日下氏は仕分けと棚造りに専念、私はカラーボックス組立の準備や本の移動に時間を費やすこととなった。まずは狭い玄関と本が積み上がり曲がり込む廊下をクリアして、組み立て前のカラーボックスを運び込む作業。これが意外にしんどかった。進路は下の方が狭く、上の方が広がっているので、自然と肩に担ぎ上げて長い材料を運び込むこととなる。おまけに本などは決して崩してはならぬので、まるで黒部渓谷の山奥に建築材料を人力で運び上げているような気分になる。それを六回繰り返す間に、組み立て&仕分けも開始されている。
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しばらくは全員その作業に没頭しながら、およそ一時間半が経過する。あっという間に台所にはキレイにカラーボックスが積み上がり、日下氏が早速棚造りに取りかかり始める。部屋の奥から本を運び出し、氏の脇にそれをガシガシ積み上げて行く…「ワハハハハ、黒猫だ。本に塗り込められた!黒猫だ!」とテンション高めの日下氏。よほど本棚に本を並べる作業が楽しいらしい。「うおっ!」「これは!」「そう来たか!」「漫画みたいだ」「ダブってる!」「これもダブってる!」「これ持ってたんだ!」「十年ぶりに見た!」「ここにあったのか!」と、とにかく楽しそうである。
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それにしても、なんとダブり本の多いことか。いや、ダブり本どころか、トリプり本とか、クアドり本まで出現する始末なので、もう開いた口が塞がらない。そのため途中から、全員がレア本の発見よりダブり本の発見の方に注意を向けてしまうのが、何とも言えずおかしかった。

そんな風に日下氏がキャピキャピしている間にも、私は本の移動に全霊を傾け、小野氏は部屋奥の未開拓ゾーンを掘り起こし始めている。その行動力がパワフル過ぎるのだが、実はダブり本が見つかれば見つかるほど盛林堂が買い取れる確率が上がるので、驚くほど必死なのである。まさに商売人の鑑と言えよう。そんな中、あぁ!大河内常平の「夜に罪あり」が!
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見たこともない推理小説「暗い年輪/藤本明男」を見つけると「それはハードボイルドですよ」などと即座に日下氏が教えてくれる。教師の犯罪を描いているのに、ハードボイルド!?と激しく興味を掻き立てられたりしていると、たちまち下村明の「風花島殺人事件」などが出て来て、勉強になり過ぎて卒倒しそうになる…恐ろしい家だ、ここは…。
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そんなこんなで、午後一時過ぎには、ミステリー古書カロリーの高過ぎる棚が完成。見ているだけで鼻血が出そうになってしまう…あぁこれが古本屋さんだったら…。
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ここで一旦休憩となり、町に出て美味しいお寿司で英気を養った後、さらにミッションを進行すべく近所のDIY屋さんでカラーボックスを新たに十二本購入し、午後は部屋奥の壁一面をボックスで埋める作業に邁進することにする。またも小野氏が、もはや大工のように棚を組み上げまくって行く…その工作速度は、どんどん上昇しているようだ…。組み上げるや否や、それをソロソロと本の山を崩さぬよう担ぎ上げて運び、窓際に設置。と同時に、日下氏が単行本山の仕分けと棚造りを行って行く。私はコマネズミのように狭い通路を行ったり来たりして、二人の作業をフォローして行く。段々と体力を全員が消耗しながら、午後六時過ぎには作業が一段落。小野氏は、一日で計十八本のカラーボックスを組み立るとともに、十年間手つかずだった単行本山の整理を行った。日下氏は、およそ千冊以上の本を仕分け選別し、理想の棚造りを進めるとともに、およそ三百冊の不要本と計四十冊のダブり本を捻出した。本当に一日お疲れさまでした。最後に表から、またもソロソロと苦労して、とある場所に預けてあった、都筑道夫本箱を人足のように五箱運び込む。それもすぐさま棚に並べて行ったのだが、途中で本日最大の驚きが飛び出して来た。「ほら、これ見て下さい。スゴいのが出て来ましたよ」と日下氏。小野氏が受け取るや否や「うわぁ、何これ、ヤバい」、私が慌てて「何ですか何ですか」と近寄ると、手渡されたのは!都筑道夫の最初の単行本、若潮社の「魔海風雲録」であった!ぎょえ〜い、初めて見た!し、し、し、しかも献呈署名が入っている!何という恐ろしく素晴らしいものが飛び出して来たのか!あぁ、今日来て、激しく働いて本当に良かった。まさか生きている間に、この本が見られるなんて…。
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思わず「魔海風雲録」を、完成した素晴らしい棚とともに記念撮影!本もスゴいが、棚もスゴい!これはまるで、書庫じゃないか!まともな、書庫じゃないか!

日下氏に作業のお礼にと「ダブり本で欲しいのがあったら差し上げますよ」と言われたので大いに悩んでいると、小野氏が買取分から偕成社 世界探偵名作シリーズ7「OSS117の秘密/ブリューズ」講談社「随筆 猫/松本慶子」を分けてくれた。わぁい!と喜んでいると、日下氏が「それだけじゃ物足りないでしょ。まだいいですよ」と嬉しいことを言ってくれたので、玄関の棚にあった神月堂「悪魔の山 復刻版/高木彬光」を「ダブってるんですね。ダブってるんならいいですよ」と念押しされるがいただくことにする。ありがとうございます!
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すべての作業を終え、不要本を箱詰めして積み込んで、夜の街へ。焼肉をガツガツと食らって、本日の労働の成果を三人で褒めちぎり合う。そして、今年中に後一回は整理作業をしましょうと言うことになる。最後に、盛林堂号に積み込んだ不要本八箱を、突然降り出した豪雨のために屋根のある駐車場に入り、日下氏の車へとムリヤリ移動させる…傍から見ていると、何だか怪しい取引に見えなくもない。
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でも取引しているのはただの古本である。日下氏は、愛車のサスペンションをより一層沈め、テールランプを赤く光らせながら、雨の中を走り去って行くのであった。(つづく)
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2018年06月27日

6/27神奈川・山手 古書けやき

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ポンコツ具合がだいぶ快方に向かっているので、古本神・森英俊氏よりタレ込まれたのに放置していたお店を目指すことにする。中央線→湘南新宿ライン→根岸線と乗り継いで、一時間ちょっと。改札を抜け、線路下を潜って駅の東側に出て、細い坂道階段を、山の上目指して上がって行く。山全体を覆う住宅街の中を縫うように、喘ぎながら上昇して行く。階段が終わると『ふぞく坂』に抜け出るので、道なりに南東に上がって行くと、山の尾根を南北に貫く『YC&AC通り』。続いてうねる尾根道を南に歩いて行く。低い山とは言え、青い空が格段に近く広くなっている。左手にチラリとレインボーブリッジが見え、Suchmosを大音量で流しながら運動会の練習をする学校脇を過ぎ、道は東西二股に分かれる場所に出る。東の遠くには本牧の青黒い海と工場が見えている。だが西の住宅街に進路を採り、住宅街の中の坂道を下って行く。行き当たった三叉路で東に折り返し、さらに坂道を下る。下る。下る。小さな切り通しを通過し、ようやっと『本牧通り』に到達すると、そこは『閘門バス停』前(閘門は“こうもん”ではなく“くまかど”と読む)。東側の歩道に渡り、二つ先の『二の谷バス停』を目標に、東北に通りを進んで行く。テクテク歩いて『東福院前バス停』をクリアし、やがて目標の『二の谷バス停前』着。道路を挟んで、西の山沿いには巨大な集合住宅や商業施設が広がり始め、右の山沿いには昔ながらの住宅が集まっている。バス停手前の、その住宅街への小道を東にズンズン入り込んで行く。一軒家ばかりである。だが、横切る小道も無視し、奥の奥である行き止まり部分に達すると、庭に草木が咲き誇り、古民家や住居が建つ門に、「けやき」と大書した看板が現れた。これなのか?と訝しがりながら、お店への小道を伝う。途中パラソルの下に、カバーナシや文庫本を入れた無料箱が出現。本当にお店なんだ…と思いつつ、右に古民家と井戸を見ながら、さらに奥に足を踏み入れると、左手母屋の奥が古本屋さんに改造されていた。す、素晴らしい胸躍る光景!ウッドデッキに上がり込むと、椅子や台の上に百均の絵本や単行本が並べられている。目の前の大きなサッシ扉を開き、靴を脱いでから店内に上がり込む。六畳間ほどの空間で、右壁一面に100均文庫・一般文庫・時代劇文庫・時代小説・文学の棚、左壁に落語・歌舞伎・酒・料理・洋裁・暮し・映画・美術・横浜・大判本・美術作品集・図録などを並べた五×五のボックス棚。奥壁右に海外ミステリ・音楽・LPレコードが集まり、左側が児童文学&絵本棚をカウンターにした帳場が設えられている。その奥の手が届かぬ棚には、レコードプレーヤーとともに、シャーロック・ホームズ関連本が多く集められている。入った時はそこに誰もいなかったのだが、本を見ている途中で、暖簾で分けられた左奥の生活空間から、奥さんらしい人が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれ、続いてメガネを掛けた凛々しい小松政夫風男性店主が「いらっしゃいませ」と登場した。本の数はそこまで多くないが、古本屋があるとはとても思えぬアプローチと、民家の一部を改装した完全隠れ家店舗に、激しくトキメキを覚えてしまう。古い本はあまりなく、値段は安め〜普通。朝日ソノラマ「オールカラー版 ペパモ 紙で作るヒコーキ/田中愛望考案」サンリード「みんな とぶぞ/ささき まき」を購入する。とにかく駅から遠いので、バスで来ることをお薦めします。

車中の読書は、手に入れたばかりの文圃堂「宮澤賢治全集 第三巻」。コンコ堂の七周年記念ポーチを活用し、本が傷まないように大切に扱っている。往きに『銀河鐡道の夜』、還りに『グスコーブドリの傳記』を読了。『さあ、切符をしつかり持つておいで。お前はもう夢の鐡道の中でなしに本統の世界の火やはげしい波の中を大股にまつすぐに歩いて行かなければいけない。天の川のなかでたつた一つのほんたうのその切符を決しておまへはなくしてはいけない。』…ぅぅぅぅぅぅ……。
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2018年05月11日

5/11神奈川・追浜 おっぱま ぼちぼち書店

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メールタレコミを基に行動を開始して、品川駅から京浜急行快特に激しく運ばれ、午前十一時の追浜駅駅頭に立つ。東口に出て、小さな空中駅前広場を、北側階段で地上に下りる。そのまま『追浜駅交差点』を東に突っ切り、『夏島貝塚通り』という名の、屋根の架かる駅前商店街の北側歩道を、グングン歩いて行く。すると一つ目の信号脇に、情報通りに古本屋さんが出来ているではないか!シンプルな店頭には三台の小百均ワゴンが並び、小説・コミック・文庫を主に並べている。右端には電気立看板があり、ガラス窓には買取表やお店のお休みカレンダーなどが貼り出されている。『12:30〜13:30』は休憩時間になるのか…。横長な店内に進むと、左右の壁には本棚が据え付けられ、奥は帳場兼作業場となっている。フロアの左右ではそれぞれ四本の本棚が組合わさり、細かな通路を造り出している。左は時代劇文庫で固められ、右は教養系文庫・海外文学文庫・日本文学文庫で固められている。左側入口脇にはラックが置かれ、古雑誌・グラビア誌・ムックなどが面出しで並ぶ。左壁には歴史・近現代史・ドイツ・ナチ・ヒトラーなどが、古書も交えて集合している。奥にはアイドル系写真集が並び、最奥にはアダルト小部屋へ続く暖簾がユラリ。帳場右側にはミステリ&エンタメ・文学評論・社会・現代思想・文化・世相が並び、右壁には実用・旅・大判本・映画DVD・コミックセットが収まっている。新しい本が多めのリサイクル系古書店であるが、左奥のドイツ関連や、所々に紛れ込む茶色い古書に特徴がある。値段は定価の半額〜半額よりちょい高と言ったところ。本を帳場に出し出すと、少し年を食った嵐の大野智風男性が、ハキハキと応対してくれる。平凡社ライブラリー「細野晴臣インタビュー THE ENDLESS TALKING/北中正和編」を購入する。扉から外に出ようとすると、入口脇に置かれた、八千円で売りに出されている『ガチャガチャマシーン』に初めて気付く。この機械、値段は間違いなくこの倍以上するものなので、お買い得と言えばお買い得である。

お店を出て駅方面に戻り、『横須賀街道』を北にちょっと進んで、まるで歩道橋の下にあるような『北原のパン』(2014/07/21参照)で昼食を購う。ハムカツパン・サラダパン・カレーパン・ラスクを頼むと、おまけにロールケーキの切れ端を付けてくれた。京急車内でお行儀悪くモグモグ食べながら(ハムカツパン&カレーパンはかなりのレベルの高さである)、川崎駅で下車して軽く古本屋パトロール。「朋翔堂」(2008/09/07参照)では葦書房「夢野久作著作集4 梅津只圓翁伝」教養文庫「氷の涯」「爆弾太平記」ともに夢野久作を計700円で購入する。ビルの間を歩いていると、商店街放送で『古本を買うならマッキー。古本を売るならマッキー』と流れていたので、「Books McQee」(2008/09/07参照)に飛び込み、朝日新聞社の文庫型昭和十三年三コマ漫画本「家庭報國 思ひつき夫人/平井房人」を432円で購入する。思ひつき夫人の異名を持つ奥さんが、家庭内で節約と廃物利用の知恵を余すところ無く発揮して行く漫画である。それにしても、古いカンカン帽を縦につなぎ合わせて屑篭を作ると言うのは、何か鬼気すら感じさせる節約術である…。
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2018年04月15日

4/15埼玉・岩槻 さつき書店岩槻店

メールタレコミに基づき、大宮駅で東武アーバンパークラインに乗り換え、北関東の景色の中を十分ほど走る。東口に降り立てば、そこは雨上がりの『人形の街』。五月人形攻勢をかける人形屋が並び建ち、早くも鯉のぼりをヒラヒラはためかせている。ロータリーから南東に、『駅前通り』を真っ直ぐ歩いて行く。途中「古本・ビデオのドリーム」という看板の架かるお店を見つけ、『ぬぉっ!これは知られざるお店を見つけてしまったのか!』と一瞬興奮するが、正面に回るとそれは、意気消沈の古本屋遺跡であった…看板、架け替えましょうよ…。
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そんなことがありながら駅から一キロ強歩くと、『国道17号』と合流する『東町二丁目交差点』手前に、そのお店は存在していた。“本”の大きな文字看板があり、店頭はメタリックなパネルで覆われ、いかがわしい幟が林立し、ウィンドウには美女たちのポスターがズラ〜っ…何処からどう見ても完全無欠のアダルト店である。
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だが、邪な心をもたげずに、ただひたすらに清く正しい古本を望んで自動ドアを潜れば、すぐに右手には予想外の光景が展開し始めるのだ。左手は美少女コミックゾーン、正面には横向きのレジカウンターの奥に、ピンク色のアダルト空間が悩ましく広がっている。そして右手の結構広いフロアが、古着を並べた奥の壁棚に、アダルト空間にそぐわぬ古本を並べているのだ。…なんだこれは…。近付くと、セレクト文庫・美術系写真集(中山岩太までも)・性風俗・都市風俗・日本文学・海外文学・幻想文学・映画・カルト&モンド映画・食・サブカルチャー・アンダーグラウンド&カウンターカルチャー・思想・カルトコミック・漫画評論・田中小実昌・平岡正明・竹中労・松下竜一・水木しげる・杉浦茂・町田康・杉浦日向子・VHSビデオ…濃いなぁ、癖が強いなぁ…何と山田風太郎箱まであるじゃないか。お店とのギャップに魂消つつ、気になる本を手にしてみるが、良書や珍書にはしっかりとプレミア値が付けられている。他にも入口正面には、「ガロ」・漫画研究・音楽・野球・格闘技の集まるラック台が置かれているのだが、果たしてここを訪れる人の何割が、これらのゾーンに興味を示しているのだろうか。しかしこの感じとラインナップ、南与野にある「アワーズ」(2015/02/24参照)に酷似しているではないか。何か密接な関係でもあるのだろうかと頭を捻りながら、北宋社「幽霊の森」を購入する。

帰りに大宮で途中下車し、「橋本書店」に立ち寄る。旺文社文庫「掌の小説/川端康成」太田出版「伝言ダイヤル殺人事件/そのまんま東」読売新聞社「欽ちゃん つんのめり/萩本欽一」を計380円で購入する。
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2018年01月09日

1/9古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【第一章】

午前八時、西荻窪集合。新年早々ミステリ評論家&稀代のアンソロジスト・日下三蔵氏の書庫整理に、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とともに向かう。今回は古本社会科見学&助太刀を兼ねて、以前から「盛林堂」店員として活躍中の、小野氏の愛妻も同行。午前十時前には現地に到着し、まずは本邸で日下氏と合流する。その時玄関の書類&書簡山が消えているのに驚き、玄関上がり口から廊下へのアクセスが格段にスムーズになったことを大いに讃える。そしてすぐさま日下号と車列を連ね、ご近所のマンション書庫へと向かう。もはやここに来るのも三回目となると、街の景色や道筋や匂いさえも記憶しており、すっかり見知った書庫への通い路である。

到着すると、まず日下氏は玄関ドアをゲラや書類の入った紙袋二つをドアストッパーにし、皆を招き入れる。いつも通り本の渓谷のような通路をたどり、まずは前回作業整理(2017/12/27参照)したお風呂場を見に行くと、おおっ!日下氏のさらなる努力により、洗面所には新しい棚が入り、風呂桶の上には簀子が敷かれ、合理的に収納力を増加させていたのである。その自主的努力をさらに讃え祝ったのも束の間、ただちに気を引き締めて作業に取りかかる。本日のミッションは、キッチン部分とその周囲のコミック山&雑誌山を整理し仕分け、キッチンを作業が出来るほどに解放し、新しい棚を組み上げ据えるところまでを目標とする。
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午前十時過ぎに作業開始。小野氏が混沌の海に飛び込み、ブツを掘り出して行く。それを私が受け取り、コミックは風呂場で仕分ける日下氏に託し、たくさん出て来るVHSビデオを玄関側の小野夫人に託し結束してもらうこととなる(雑誌はひとまず後回し)。すぐに積み上がるコミックタワーを、日下氏の仕分け具合を確認しながら、小出しに渡して行く。仕分けが滞ると本が溜まってしまい、たちまち全体のスピードが低下することを日下氏は熟知しており、なかなかのスピードで仕分けをこなして行く。だが三十分も続けば「何でこんなにコミックばっかり」「どうしてこんなにたくさん」「あぁっ!三巻がない!」などと苦しみ始めるので、「何故ならこれはみんな日下さんの業なのです」と言い放っておく。途中、長年本の山に塗り込められたような冷蔵庫が発掘される。冷凍庫は空だったが、冷蔵庫には……ふぎゃぁっ!結局午後一時前まで、全員が未来の管理社会下で、コミックを掘り出す者・コミックを運ぶ者・コミックを仕分ける者となったように、ひたすらコミックとVHSの奴隷となる。だが、そんなに頑張った甲斐があって、キッチン部分はその半分が解放され、奥のリビングへの通路がさらに解放される。床が見える!人がぶつからずに擦れ違える!ここはまるで、ちょっと本が置いてあるだけのキッチンだ!とその成果を喜び、昼食と買い出しを兼ね、ひとまず南風の吹き荒れる外へと出かける。
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お寿司をお腹に補給し、メジャーを金物屋で購入し、午後は雑誌の仕分け&搬出作業を行いつつ、同時に第一次リビング解放作戦にも取りかかる。するとコミックばかりと言っていた区画から、おぉ、博文館文庫「猛犬燈台/押川春浪」がっ!九鬼紫郎の時代劇が次々と!極美の函バージョンの山田風太郎「笑う肉仮面」!城昌幸の「古城の秘密」だとっ!などが次々と見つかり腰を抜かしかけ驚いている最中、見たことのない楠田匡介の「フランダースの犬」を手にする…こんなバージョンもあったのか…と思っていると、すぐさま別バージョンの「フランダースの犬」を発掘する。よし、この二冊は取りあえず一緒にしておこう。リビングの整理と並行して雑誌の整理も進めると、嬉しいことに意外に手放す雑誌が多く出たので、さらに驚くほどのスペースが誕生してしまった。後はリビングのコミック・古本・献呈本・VHSの分類整理を行い、美しい山を新たに築いて行く。その過程で、壁棚にたくさんの付録本が横積みになっているのを目撃し、興奮する。
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そのなかのダブり本を「盛林堂」が引き取ることになるのだが、その仕分け過程で日下氏が、梶竜雄の「フィルムの秘密」を見付け出し「これ持ってたんだ。やった!梶竜雄の付録本が、これでようやく全部揃った」と喜んでいる…だがそれって『揃った』んじゃなくて、すでに『揃っていた』のでは…まぁ何はともあれ整理の結果、意外な喜びが生まれるのは素晴らしいことである。そして袋に入ったままの本を取り出していると、その中から驚くべき一冊が飛び出してきた。またも楠田匡介訳の「フランダースの犬」がっ!しかもちゃんとバージョン違いなのである。これで三人のネロと三匹のパトラッシュが揃ったことに!とそのあまりに馬鹿らしい光景に、全員大爆笑する。
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その後、おニューの棚を組み立て据え置き、空き部分の寸法を測り、さらなる棚の設置を計画する。時刻は午後五時半に至り、本日の目標を無事に達成し作業終了となる。いやぁ皆様、古本とVHSとの大乱闘、お疲れさまでした!清々しい気持ちで、夕食にハンバーグやトルコライスを食べながら、次回の作業について早くもミーティングする。(つづく)
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2017年12月28日

12/28家庭文庫に本を買いに行く。

総武線に一時間ちょっと揺られ、千葉の新検見川駅で下車。橋上駅舎から北側に出ると、階段の柵に店舗や住宅が間近に迫る、たて込んだ駅前である。階段を下りて家並の低い街に入り込んで行くと、すぐに懐っこい笑顔を浮かべたひとりの男が近付いてきた。移動古本屋さん「自動車古書店 いい日旅立ち」(2011/11/08参照)店主の石倉氏である。今日はその古本屋たる荷台を、オレンジの幌で覆い尽くした白いトラック・ボンゴにすぐさま乗り込み、近所の彼の自宅へと走り出す。途中、団地脇のミニミニ商店街で、営業しているのかどうか、いや店舗なのかどうかも定かでない古本屋さんを偵察した後、かつての新興住宅街の一角に建つ一軒家に到着する。階段を上がり、和風玄関から招き入れられ、スリッパを履いて廊下を進む。突き当たった右側の部屋に入ると、開いた本棚や机に囲まれた部屋。そこを通過して奥に進むと、本の詰まったダンボールと、まだ本がキレイに並ぶ色んな種類の本棚が立つ和室にたどり着いた。ここは石倉氏の母親が長年主催してきた“家庭文庫(自宅の一室を近所の子供たちに開放した小さな私設図書館)”で、残念ながらこの十一月にその役割を終え、閉鎖となってしまったのである。それを機に氏から連絡を貰い、児童文学がたくさんあるので箱に仕舞い込んでしまう前に見に来ないかと、嬉しいお誘いをいただいたのである。文庫の名は、息子二人の頭文字を並べた『TY文庫』。欄間には、かつて開かれた読書会などの写真飾られ、天井の際を名作絵本「やこうれっしゃ」の絵がぐるりと、列車のように取り巻いている。途端に岩波新書「子どもの図書館/石井桃子」が高速で頭を掠める。熱心に本を読みに来る子や、ただ遊びに来る子、ず〜っとひたすら本を読んでいる子、時間を潰しに来る子、新しい本を楽しみに来る子…色んな子供がここを居場所にして、やがては離れて行ったんだろうな、とかつての文庫の面影を想像する。ここを利用する時は、玄関から入るのではなく、左の庭先から直接上がり込むカタチになっていたそうだ。絵本や本の半分はすでに箱に詰められているが、奥一面だけは往時のままの姿である。私にとって懐かしい本から、最近の本までしっかりと集められている。気になる本は売ってもらえるとのことなので、子供に戻って棚を眺め、ダンボールの中も覗かせてもらい計四冊を手にする。その他にもサービスで、「いい日旅立ち」用の在庫古本棚も見せていただき、さらに二冊を選ぶ。途中帰宅した文庫主催者の母君と挨拶を交わし、「みんな子供たちが読んだ本ばっかりですみません」「児童文学の研究資料もだいぶあるんですよ〜」「最後の方は、みんなに本を読んでもらえるまでが、大変でねぇ〜」「残った本はどうしようかしらねぇ〜。この子が売ってくれるなら、それでいいんだけど」などとお話しする。いや、今まで本当にお疲れさまでした。この住宅街の中の、本好きの子供の居場所であった小さな文庫は、きっとみんなの心の中に、文字や物語の小さな種を宿し、何処かに受け継がれていることでしょう。理論社「かくれんぼ物語/今江祥智・作 長新太・絵」(カバーナシだがこれは嬉しい)宝文館「NHK放送 ヤンボウ ニンボウ トンボウ/飯沢匡」光信社「海底の探検/安川静夫」(カバーナシ)偕成社名作冒険全集「怪盗ルパン(1)/ルブラン 朝島靖之助編著」春陽文庫「無敵先生/小川忠悳」小学館てんとう虫ブックス「チャレンジ!名探偵カゲマンの推理クイズ/山根青鬼」を計2500円で購入する。
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そして来年一月、「自動車古書店 いい日旅立ち」は、クラウドファウンディングで資金の一部を集めた
『新刊書店の無い九州の自治体へ行き、古本を売りに行きたい!』という志高いプロジェクトを実行に移すそうである。
◆1月5日(金)熊本県合志市 ひのくにふれあいセンター
◆1月6日(土)熊本県南阿蘇村 ひなた文庫さんと共に。
◆1月7日(日)宮崎県串間市 あかつき荘
◆1月8日(月)鹿児島県垂水市 ベイサイドホテルアザレア

果たしてお客が本当に来るかどうかも分からない、あくなき古本販売チャレンジ!南の国の方々、ぜひこの多少オンボロトラックな移動販売古本屋をお楽しみに!
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2017年12月27日

12/26古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸【プレリュード】

最近すっかり「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の別動隊(つまり盛林堂・イレギュラーズ!)として、お手伝いバイトをしまくっているのだが、本日も三年ぶりの日本最大最強の古本魔窟・日下三蔵邸の片付けお手伝いに同行する(2014/12/10参照)。

盛林堂・小野氏と西荻窪から一時間半ほど車を走らせ、神奈川県某市の高台の住宅街に到着する。すると邸宅前には、午前十時半の陽を受けて、にこやかに手を振る日下氏の姿が。今日の最大のミッションは、倉庫化している別宅マンションの一部片付けにあるのだが、やはりまずは本邸を見ないと始まらぬと、邸内に招き入れられる。ぬぉっ、そこには以前と寸分変わらぬ、古本&献呈本タワーに挟まれた廊下が、奥へ奥へと延びて行く魂の震える光景が展開。あぁっ!永瀬三吾の「白眼鬼」がまだここにある!ほぅっ!三橋一夫の見たこともないスリラー小説本が!などと早速虜になっていると、「まずは寝室の本を少し仕分けして運び出します」と日下氏が宣言を下す。あまりにも本が積み上がり過ぎ、本が崩れるのが恐くてうつ伏せにしか寝ることの出来ない布団周りを(うつ伏せに寝ていれば、背中の方が防御力が高いので、本が落ちてきてもケガが防げるという論理に基づく)、すっきりさせようという目論見である。と言うわけで、日下氏が寝室入口の本を退かして中に入り、そこから玄関までの中継を私が受け持ち、小野氏が玄関から運び出して駐車場に置かれたダンボールに詰め込む体勢を採る。寝室内に立ち、本の山を崩しながら日下氏が選別に入るが、もう「ちっ、めんどくせえな」という声が聞こえる。単行本やコミックはパッと見で要不要が判断出来るが、雑誌類は表紙に掲載されたタイトルか、目次を見ないとその判断が出来ないのだ。だが、逡巡する日下氏のスローペースに合わせていても、周りに積み上がる本の背を見ているだけで、充分暇がつぶせて楽しめるのが恐ろしい。また、本は相変わらず絶妙なバランスで積上げられており、おいそれと手を出せない状態なので、何の本だか気になるが、書名が分からない本が散見される。だが、ちょっと見えている帯文、例えば三笠書房の本で『死刑台を組み立てる音が…』などと読み上げると、日下氏が即座に「絶体絶命」!と書名を教えてくれるのである。驚異の帯文イントロでドン!…末恐ろしい能力である…。

そんな風に仕事をジリジリ進めながら、奥の階段の下層に古書が積み上がっているのが気になり、目を凝らしてみると、春陽文庫「売国奴/永瀬三吾」を発見!だがこの本は以前の訪問時に、マンション倉庫で奇跡の署名本を見せてもらっているので、即座にダブり本であることが判明する。スゴい本が、ダブって階段の礎となっている…全く持ってクレージーである。そのクレージーさを小野氏に報告すると、ダブっているなら!と即座に買取交渉に入るため、本を掘り起こして行く。するとその過程で、大阪圭吉「海底諜報局」の珍しい異装第三版までもが、階段の礎なっているのを発見してしまう…嗚呼!
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そして初めてこの日下邸で、日下氏以外の人と出会う。何と二階から、八名信夫+藤子不二雄Aと言った感じのモミアゲがナイスな父君が姿を現したのだ。他にも人が住んでいたんだ…外出する父君のために、一旦玄関から外へ出る。「本ばっかりですみませんね」とにこやかに穏やかに宣う父君と、庭先でしばし京浜急行とこの辺りの崖地特性について語り合う。

と言うような有様で楽しく午前中を費やし、比較的軽めな作業を終えて、昼食を摂った後にマンション倉庫に車で移動する。日下三蔵号は、相変わらず期待通りに後部座席に資料や古本を満載し、サスペンションを深く沈めている…。

3LDKマンションの扉を開けると、二年前にスッキリ整理開通させた面影は消え失せ、本の山が極限まで迫り、物品を満載してはち切れんばかりの紙袋が通路を埋め尽くしてしまっている。日下氏は玄関棚の中から、平井和正のポケSF「虎は目覚める」を見付け「あれ、ここにあったんだ。これで買わなくていいぞ」などと、自分家なのに本を見つけて喜んでしまっている…。そんな風に主(あるじ)にとっても魔窟化しているこちらでのメインミッションは、右側の台所・居間・和室・風呂場への通路を開通させ、さらに様々な物の詰まっている風呂場をどうにかして改めて本置場に変貌させることに決まる。廊下部分に天井まで積み上がるコミック類を、それぞれが狭い通路で身体を無理な体勢に捻りながら、午前中同様リレー型式で馬車馬のように最大稼動して、玄関外に運び出して行く。私は廊下で山の切り崩しをひたすら担当していたので、二時間後にすべてを運び出した後表に出てみると、そこには奇妙な現代芸術的光景が誕生していた。階段壁に沿って積み上がる、コミック階段である。
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マンションの住人が通りかかる度に、「すごいですねぇ、本がたくさん」と言われ、日下氏が「いや、年末の大掃除なんですよ」と軽く虚偽発言を繰り返しているのが、微妙に切ない。だがそんな苦難を乗り越えたおかげで、無事に廊下の撤収作業は終了し、壁が見え(しかもフットライトやコンセントや何も詰まっていない納戸が発見される)、奥への行き来ができる状態となる。
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※左が作業前。右が作業終了十五分前。
「いやぁ、通れるっていいな」と思わず呟くと、何故かこの言葉が日下氏のツボに入り、その言葉を繰り返しながら爆笑をしている。

そんな楽し気な氏はさておき、ここからがようやく折り返し地点で、表に出した本を要不要に選別し、お風呂場の荷物を退かして新たな一時コミック置場にして、再び邸内に本を運び込む作業に従事すせねばならないのだ。階段下で選別途中、謎の本「ミッキーの宇宙旅行」というA4判の児童本が見つかり、日下氏が「こんなの買った覚えないなぁ。ミッキーマウスなんて、まったく必要としてないんだけど」と訝しがりながらビニール袋から本を取り出すと、ミッキーはミッキーでもただの茶色いネズミで、原作がなんとフレドリック・ブラウンなのであった。「ブラウンだからか!」と納得しつつ「これが僕が持っている一番大きいブラウンの本です」と、何だかとても嬉しそう。色々ちゃんと整理すると、面白い発見があるものですね。そんなことがありながら、二時間ほどまたもや馬車馬の如く働き、表がすっかり暗くなった頃、ついに風呂場が美しい倉庫として完成にいたる。
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う〜む、見たことのない麗しい光景だ。「正直ここまで作業が進むと思いませんでした」と日下氏から最大級の労いの言葉をいただく。いや、確かに三人とも、とても頑張ったのである。

ようやく一息ついたところで、その頑張りの奇妙な副産物として、部屋内各所から発見されたレアなTOMOコミックスを、戯れに一堂に集めてみる、各所で発見時から、ダブりがだいぶあることが分かっていたのだが、恐ろしいことに九冊がダブり、そのうち四冊は三冊もダブっていたのである!それをすべて並べてみたありえない異様な光景に、全員で大爆笑する。そして超絶嬉しいことに「ダブり本、どうぞ差し上げますよ」と、突然九冊をいただくことになる…いや、最近書庫整理を手伝う度に、素晴らしい本をいただいてしまっており、もはや“古本ゴロ”のような役得に預かっているのだが、正直言ってとても幸せなのである!いただけるものは、遠慮なくいただいておこう!そして大事にします!

結局夕飯も食べる長帳場の一日仕事となり、東京に戻ったのは午後十時半。長い長い楽しい一日であった。この整理作業は、年始に第二弾を行う予定なので、どうかみなさま、日下邸の変貌をお楽しみに!

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これが本日の収穫。TOMOコミックスは、やはり小酒井不木原作の「少年科学探偵 消えたプラチナ」クイーン原作で望月三起也劇画の「クイーンの事件簿 恐怖の家」構成永島慎二の「赤い酋長の身代金」が嬉しい。都筑道夫「いじわるな花束」もダブり本ということで手渡される。だがさりげなく一番嬉しかったのは、春陽文庫「売国奴」のカバーをカラーコピーさせていただたこと、これを先日新保教授から拝受した裸本(2017/12/19参照)に巻く!カバーコピーは日下三蔵氏提供!本体は新保博久教授提供!ここに、ミステリ界最強の「売国奴」が誕生した!万歳!
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2017年12月21日

12/21神奈川・日ノ出町 9Bricks

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以前から「たけうま書房」さんに開店をタレ込まれていたオカルト系ネット古本屋さんが、ついに昨日実店舗をオープンさせたので、早速駆け付けることにする。京浜急行で東京を抜け出し、横浜で各駅停車に乗り換え日ノ出町駅下車。南端の大きな改札を潜れば、そこは駅と線路の真下で、太いコンクリ橋脚が威圧的に林立している。階段を下りて『平戸桜木道路』を南に出ると、道の両側には古い雑居ビルと商店建築が連なる懐かしい街並。右手に野毛山の気配を感じながら道路を南下して行き、『日ノ出町一丁目信号』を通過したところで、右手のキレイなマンション一階前に、古本ワゴンが出されているのが目に留まる。おぉ!何と立派な路面店!まさかこんなにちゃんとしたお店だとは!と軽く度肝を抜かれる。化粧岩ブロックに飾り立てられた、中にガラスウィンドウが連続。看板などはなく、ガラスドアに紙の案内が貼られているのみである。店前には四台の銀ワゴンが出され、100〜300円の新書サイズ本・オカルト・児童文学・女性実用ムック・雑本・単行本・古書がギッシリ詰められている。古書や古い新書サイズ本が楽しい。そしてすでにオカルト系があふれ出してしまっている…大陸書房の本が多いなぁ…。店内は横長で、カーペットの上に白いスチール棚が並び、三本の横長通路を造り出している。壁棚は左壁のみで、右壁と奥壁にダンボール箱が積み上がっているのが事務所っぽい。右奥に帳場があり、『ひょっこりひょうたん島』のハカセ的男性が、慣れない接客に戸惑いながらも古本と格闘しておられる。お店は元々事務所店としてスタートするはずだったのだが、ひょんなことから嬉しいことに、実店舗としの機能も兼ね備えるようになったそうである。だから店内の本に値付はされておらず、ある程度のジャンルは固まっていたりするのだが、基本的にはネット用並びの、普通客から見たらカオスな棚造りとなっている。だが楽しい!以前から横浜の催事に出展しており、偏ったおかしな本を出す新星として注目していたのだが、UFO・幽霊・怪談・お化け・宗教・新興宗教・迷信・民俗学・民間伝承・疑似科学・心霊科学・恐怖・あの世・UMA・異次元・霊界・超能力・サンカなどがドバドバヅラヅラ続いているのだ。古書がかなり多いのも、楽しさに拍車を掛ける要因となっている。あぁ、棚の上に横積みされている本にも、気になるタイトルが散見される。この店内空間では、普段は弾かれたり蔑まされたり“科学的”にいじめられたりする、こちらの隠秘学の世界の方が、断固たる正統派なのである!ここがシールの剥がし目で、今にも世界がベロンと捲れてしまいそうだ…素晴らしいぞ!もちろんオカルト系以外の本も混ざり込んでおり、戦争・文学・ミステリ・歴史・将棋・山岳などが、世界の秘密と恐さに凍りかけた心をポッと温めてくれたりもする。この感じだと、今のところ実店舗として機能しているのは表のワゴンで、店内は従来の事務所店といった感じである。ちなみに値段の付いていない本は、店主に聞くとすぐ専用データベースを検索して素早く答えてくれる。帳場に気になる何冊かを持ち込み確認してみると、手堅い値段が付けられている印象であった。しかし、ジャンルのメーターを振り切ってしまったお店は、どうしてこうも輝いて見えるのだろうか。店頭&店内で、嬌声を上げながらオカルト本を吟味している女性客の出現も、またスゴい。開店おめでとうございます。日ノ出町に来る新しい喜びが生まれました!新教育研究会「怪奇傳説の科學/豊田清彦」荒地出版社「わが最大の事件/クルト・ジンガー」を購入する。

鶴見まで移動して「西田書店」(2010/01/07参照)に立ち寄る。店頭100均+税棚から、昭文社出版部「デザイン街路図/和田誠」(カバーナシ)ちくま少年文学館5「おっちょこちょ医/なだいなだ」を計216円で購入。ここからは京浜東北線で帰路に着くことにした途端、東海道線の事故に巻込まれ、駅間で車中に一時間ほど閉じ込められてしまう。
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2017年09月17日

9/17神奈川・石川町 るなぱあく古本街

東京ではさほど激しくなく、一定量でシャワーのように雨が降り続ける中、午後に外出。向かったのは、横浜の雨の馬車道で、地下から顔を出すと、改装中で封鎖された『県立歴史博物館』の威厳ある灰色の陰鬱な姿が視界に飛び込んで来る。そのまま伊勢佐木町に向かい、まずは「活刻堂」(2009年10月12日参照)に腰を据え、講談社「13の凶器」「13の密室」「13の暗号」三冊共に渡辺剣次編を計300円で購入する。そして時刻が午後四時に近づいたので、狭い横丁に飛び出して傘を開き、南東に向かってビルの谷間を歩き始める。目指すは寄せ場として有名な寿町の『寿町総合労働福祉会館』跡地で開催されている、劇団「水族館劇場」が企てた混沌とした野外イベントなのであるが、嬉しいことにその一環として古本市も開かれているのである。寿町で古本…まさに夢のような組み合わせである。台風接近のため人影の少ない街路を寂しく進み、羽衣町→不老町→翁町→扇町と、何だか昔話の世界に迷い込んだような町名を伝い、やがて寿町に至る。ビル化した現代的な安宿とコインランドリーと飲み屋が連続し、傘を差した老人が街角の所々に立ち尽くしている…確かに独特な雰囲気は今もって維持しているが、全盛期ほどの荒れた危なさは感じられない。町の南西に位置する福祉会館の跡地は、『安全第一』と書かれた工事現場用の塀にぐるりと囲まれ、さらに内部が工事用の足場や鉄骨で、武骨に荒々しく、俗っぽく言えば寺山修司or丸尾末広的見世物小屋空間として組み上げられ、どんよりとした雨空の下で、町からは完全に浮き上がった“ハレ”の日の空間として、堂々と怪しく存在していた。『盗賊たちのるなぱあく 娯楽の殿堂』と掲げられた入口ゲートの下には、すでにグッズや演劇の当日券を買い求める人々の列が、雨にも負けず出来上がっている。ゲートを潜り、礫と泥で出来た会場内に入り込む。様々なゲリラ的建築物には、鬼海弘雄のポートレートパネルが大量に貼付けられ展示されている。さて、古本市は何処で…と入って左方向に進んで行くと、左にはメリーゴーランドのような奇怪で巨大なオブジェがあり、すぐ下にはすでに池のように広がってしまった、暗褐色の大きな水たまりがある。その上を延びるようにして、三列のアルミニウム足場が橋として組まれ、その先には薄暗い空間を湛えたテントがあった。強い水気の中に古本の気配を感じ取り、ゆっくり慎重に足場の橋を進んで行くと、おぉ!やはりそこが古本市の会場だったのである。
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橋と同じくアルミニウム足場で作られた高床の足下三十センチは、すでに泥水に侵略された、水上古本市なのである!テント内は薄暗く、開かれた入口側以外は、棚や平台が置かれ、中央には背中合わせの本棚二本と古い冊子類や紙物の詰まったプラ箱が並んでいる。市としては小規模である。並ぶジャンルは社会問題・アングラ・サブカル・アウトロー・映画・和本・古い洋探偵小説雑誌・演劇・思想・ストリップ・性愛・日本近代文学・教科書類・田中小実昌など、奇怪な芯が通った世界である。だが、だが、何よりも、この台風が生み出してしまった、亜細亜バザール的空間がとにかくアナーキーで素晴らしく、上陸した瞬間からトキメキが止まらない!次々橋を渡って来る人も感嘆の声を上げながら、非日常的過ぎる空間の虜となって行く。たちまち混み合う会場。そんなお客さんたちと、池側では気をつけないと転落してしまうので、慎重に譲り合いながら、古本を細かくチェックして行く。その間に「古書 信天翁」(2010/06/27参照。店主・山崎氏は長靴を履き、池の中を自由に動き回っている!)「古書ほうろう」(2009/05/10参照)「古書 赤いドリル」のみなさんと、挨拶を交わす。普通の古本市だったら、台風接近の荒天は絶望的な状況なのに、皆一様に笑顔を浮かべ、この状況をマックスに楽しんでいる模様。なんと麗しい変わり者たち!いや、正直この奇跡の光景を生み出した、みなさんと台風と水族館劇場には、とにかく絶大なる感謝を捧げたい。今日来て本当に良かった!と喜びを噛み締めながら、嬉し過ぎ楽しみ過ぎて、会場を馬鹿みたいに三周はしてしまう。八雲書店「金泥/吉井勇」アルス「フレップ・トリップ/北原白秋」(白秋の樺太旅行記。昭和三年初版だが函ナシで口絵も二枚抜け落ちている。でもやっぱり嬉しい!表見返しには神保町「一誠堂書店」(2010/03/27参照)の古い古書店ラベルあり!)を計700円で購入する。
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再び橋をギシギシ渡り、泥と礫を踏み締めて、寿町の街路に舞い戻る。さっきより、雨と風が強くなり始めている。斜向いの角地ビル一階には、謎の酒屋があり、ちょっと怪し気な男女が嬌声を上げながらアルコールに酔い痴れている。途端にこちらもビールが飲みたくなるが、とてもその中に飛び込む勇気はない。水上古本市の興奮覚めやらぬまま、傘も差さずにワンブロック歩き、やたらと酒類の豊富な自動販売機で缶ビールを購入。グビグビ喉に流し込みながら、ようやく傘を差して元来た道をたどり始める。寿町→扇町→不老町→羽衣町と進み、ちょうど『国道16号』にぶつかったところで、缶ビールを飲み終わる。あぁ、台風の日の、夢の中のような古本市よ、さらば。この市は今日が最終日であった。
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2017年05月17日

5/17千葉・みのり台 smokebooksみのり台店

昨日は夕方に「西荻 古書モンガ堂」(2012/09/15参照)に歩いて向かい、富山房「ワイルド童話集/平井呈一譯」(函コワレ)を1000円で買った後、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に手堅く補充。そして店内で岡崎武志氏と合流し、「中央線古本屋合算地図」の打ち上げに雪崩れ込む。意外に本らしい本を作ってしまったお互いを褒め合い労いつつ、反省会に加え次の四冊目のアイデアもぶつけ合う。非常に楽しく大切な時間である。だがしかし飲み過ぎて、二軒目のバーでビールグラスを握ったまま、あえなく熟睡してしまう…。

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明けて本日、中央線→山手線→常磐線と乗り継ぎ、さらに新京成線で三駅進む。ホーム東端の改札から街に出て、すぐの踏切をしばらく電車待ちしてから南に渡り切る。これまたすぐの車通りの多い県道を東に曲がり込むと、通り沿いのリサイクル店のシャッターに「沖愛堂古書店」なる文字を発見し、しばしその前に佇む。上には『家具処分』などとも書かれているが、開くことはあるのだろうか?だとしたら見てみたい…。そんな突然の出会いに心を多少掻き乱されながらさらに歩を進め、通りの両側に飲み屋が続く地帯を抜けると、線路がたちまち丸見えとなり、三本目の南への脇道に『みのり通り商店会』のゲートが現れる。そこに入り込んで行くと、中規模三階建てくらいの集合住宅で出来た、ちょっと奇妙で静かな街となる。大きな箱の間を歩くような気分で100mも進むと、左手に今度は巨大な昭和的マンションが姿を見せる。その一階ミニ商店街の左端に、下総中山(2011/01/25参照)から移転して来た、新たな「smokebooks」が開店していた。表には立看板に加えて、左に大判本・児童文学・絵本のラック棚&絵本箱、右に単行本箱&単行本棚と雑誌ラックが、安売値で置かれている。そしてちょっと薄暗く洒落た店内に進むと、広い!かなり広い!そのためか通路も広く採られた余裕のディスプレイが展開して行くが、本の量はざっと見ても楽しめそうなほど並んでいる。道路側の右スペースには、窓際にオススメ絵本類が飾られ、大テーブルの上には建築・デザイン・アート関連の新刊が面陳。壁際の小さな棚には、新刊の絵本や「こどものとも」などが並んでいる。左側には日本文学・日本近代文学・文藝雑誌・詩集がディスプレイされた棚があり、裏に回ると日本近代文学・詩集・セレクト海外文学が、古書含有率高く収まっている。とても感じの良い眺めである。壁際にはいやに角張った変わったフォルムの自転車が、レコード箱とともに置かれている。奥のアートブック&リーフレット・和洋ファッション台をクリアして奥に進むと、左壁には遠い奥まで大きな棚が続き、洋書のイラスト集・タモリ・植草甚一・高平哲郎・平岡正明・小林信彦&泰彦・徳川夢声・赤本漫画・「グロテスク」・音楽・映画・テレビ・カウンターカルチャー・和洋アート・写真・工芸・建築が雄大に肩を並べて行く。向かいには棚が二本縦列し、手前には世界・文化・思想・自然・満州・山岳、奥にはデザイン・ビンテージ雑誌&絵本・紙芝居が集められている。奥右側部分のフロアには、料理島(古書あり!)と来店した子どもが読書を楽しむスペースが設けられている。そして大きな壁棚には、児童文学新書・和洋絵本・洋書絵本・児童文学が、大量に豊かに収まっている。最奥のこれまた広いバックヤードを備えた帳場には、ハンチングに黒縁眼鏡のオードリー・若林風青年が立ち、その前面を文庫棚が覆っている。アート・ファッション・絵本・文学・料理が小気味よいお店である。古書が目立つのもその小気味よさに拍車を掛けている。値段はちょい安〜ちょい高と、手頃なものからしっかり値まで様々なので、そのバランス感覚もまたまた小気味よい。二見書房「カナシマ博士の月の庭園/ピエール・ブール」を購入する。

帰りにご近所の「永末書店」(2010/05/11参照)にも立ち寄り、みすず・ぶっくす「ロシアの神話/G・アレグザンスキー F・ギラン」を200円で購入する。
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2017年04月24日

4/24神奈川・藤沢本町 藤沢本町で古書市。

『関東学院大学図書館』で卒業生でもある佐藤さとるの展示が行われているのを知り、逃すまじ!と午前のうちに、相変わらず古い変電所がホーム向かい側に建つ京浜急行・金沢八景駅に駆け付ける。駅から離れて、細長く人工的な平潟湾沿いに出た途端、冷やっとする海風と潮の匂いが顔にぶつかって来る。歩き始めると、すぐに橋でつながった小さな弁天島が姿を現わすと同時に、遥か昔の子供時代の記憶が甦る。母の親戚を近くに訪ねた折、家族全員でこの島に渡ったことがあるのだが、橋を渡った途端に、木陰で熱烈な抱擁を交わすアベックがいることに全員が気付く。母はその気まずさからすかさず「もう行きましょう」と言うのだが、父は徐に煙草を取り出し「まぁいいじゃないか。せっかくだから色々見て行こう」などとほざき、海に向かって腰を下ろしてしまったのである。動くに動けぬアベックに(向こうも当然こちらに気付いている)、島に釘付けになった五人家族…計七人が、小さな島の中に立ち尽くしていた…。そんなことを思い出しながら、湾沿いに長く歩き続けて現代的でピカピカな大学に到着。正門で守衛室に案内を乞い、校舎ビルに囲まれたまだ人影の少ないキャンパス中庭を突っ切り、図書館へ。だが入口から中に入ると、自動改札の如きゲートが立ちはだかり、学外人間の侵入を拒んでいる。そこでちょっと離れた場所にある受付のお姉さんに必死に合図を送り、展示を見に来た旨を告げると、シュパ〜ンと未来的な音を響かせてゲートが開き、二階への案内と手続きをレクチャーしてくれた。言われるがままに二階カウンターで入館手続き(もう入館しているのだが…)を済ませ、二階入口の三台のガラスケースに収まった、こじんまりとした展示を鑑賞する。一番大きなケースには、図書館所蔵の新しめの著書が飾られている…これならケースに入れずに、手に取って読めるようにした方が良いのでは…。他には「だれも知らない小さな国」の初版本、『すべては空想からはじまる』と書かれた直筆色紙、按針塚周辺の地図など。一番目を惹いたのは1970年発行の「わんぱく天国」の元本である。思えば今まで文庫版しか見たことがないので、おおっ!と感動してしまい、いつか絶対に手に入れてやる!とガラスケースの中に勝手に誓ってしまう。このようにすぐに見終わってしまったので、2006年の学報に掲載された佐藤さとるインタビューページのカラーコピーをいただき、受付のお姉さんに挨拶して図書館を出る。そしてちょっと時間は早いが、学食に潜入してカツ丼で昼食を摂る。満腹した後、再び潮風を楽しみながら駅に戻り、京浜急行→根岸線→東海道線→小田急線と細かく乗り継ぎ、藤沢本町まで一時間で移動する。

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単純なホーム端の改札を出ると、小さな駅前広場に地元的商店街が直結している。藤沢の名を冠し、一駅離れただけだが、あの大きな都会的街並とは正反対の、静かで長閑な郊外である。そんな緩めの街並とお店の並びをキョロキョロ見回しながら東に進むと、大きな県道に行き当たる。そこを北に進んで行くと、すぐに正面に立派な『白旗神社』の鳥居が臨め、その交差点脇には白いショッピングセンター『トレアージュ白旗』。ここで八月までの長期間、200円均一の古本市が開かれているのである。うまいこと何か買えるであろうか…。一階は塾や飲食店なので二階へ迷わず上がると、早速『神奈川県古書組合』の赤い古本まつり幟があったので、まずは一安心。中に入るとそこは催事場のような空間で、主に文具のワゴンが場を占めている。だが右奥には、やっぱり嬉しい古本棚の凛々しい姿が見えているではないか!近寄ると、二本の背中合わせの棚が並び、五本×四面の計二十本に、神奈川のお店が送り込んだ200均の古本が収まっている。まぁ200均だから…と失礼ながらさほど期待はせずに棚に視線を走らせるが、これがなんとなかなかに上質なのである。こ、これは!買える、買えるぞ!と、期待以上の本を見つける喜び(言い換えれば『200円でこの本が買える喜び』である)を味わいながら、たちまち腕の中に本が集まる。「海風舎」(2010/09/25参照)「文雅堂書店」「高村書店」が特に良い感じ。市が八月まで続くということは、補充も入れ替えも定期的に行われるのだろう。もしこれが家の近くだったら、相当マメにチェックを入れることになりそうだ…でもここは藤沢…本町…くぅ。雲井書店「日の果て/梅崎春生」六興出版「風眼抄/山田風太郎」中央公論新社「懐かしい未来/長山靖生編著」「砂の城/鮎川哲也」文藝春秋「諫早菖蒲日記/野呂邦暢」を計1000円で購入する。

「諫早菖蒲日記」は、見返し裏に『諫早花菖蒲』の言葉とともに署名落款が。さらに章扉には、この本の最初の購入者により『昭和五十二年十一月二十五日 長崎、諫早の街にてこの本を求む』と書かれている。「諫早菖蒲日記」の初版は五十二年四月で、これは八月発行の第三版。ということは、諫早では新刊書店で野呂のサイン本が売られていたのであろうか…そんなことを考えるのも楽しい一冊である。さらに「風眼抄」は写真ページ裏に毛筆署名入り。最初は本扉に作家名が入っていないので、ここに作家名が印刷されているのかと思ったが、細部を良く見ると、印刷では出せない墨の濃淡や掠れを確認し確信。でも実はまだ半信半疑…同じ本をお持ちの方、冒頭写真ページ裏に名が入っていますか?ご教授いただければ幸いです。というわけで今のところ、半どひゃっほう!
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2016年12月28日

12/28千葉・松戸 年末古本市

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日暮里から常磐線快速に乗ると、十七分で松戸駅。陽の当たらぬ底冷えするホームから橋上改札を抜けて、西口に出て空中広場を彷徨いながら、ビル街の樹冠に『ISETAN』のロゴを探す。すると、南西端の道の先に件のデパートを発見出来たので、階段を下り、コンクリ正方形タイルの敷き詰められた歩道を伝い、冷たいビル風に嬲られながら南に歩き、広場を通過して大きなデパート『ISETAN 松戸店』に吸い込まれる。一階大売場の隅にあったエレベータに乗り込み、十階の催物場へ。すると箱から出ると同時に、右側に細く長く奥へと延びる、古本ワゴンの列が視界に飛び込んで来た。昨日から始まっている、シンプル&ストレートな名が付けられた、四日間限りの(つまり三十日まで)、ワゴン約三十台の中規模古本市である。武蔵野辺の古本屋さんを中心にして、千葉と東北の古本屋さん九店が参加している。細長く連なるワゴン通路を、前後ろと交互に見ながら、ジワジワ奥へ進んで行く。市各所にはお粧しした古本屋さんが直立し、会場内のサービスに勤めている。お客さんは疎らな入り。郷土・美術・歴史・近代・風俗・雑本・絶版漫画・付録漫画・大判美術本・サブカル・芸能・映画・社会・人文・絵本・雑誌・文庫…ガラスケースもあり、文学・風俗・漫画関連のプレミア本が飾られている。会場の表側には銀フレーム飾り棚が巡らされ、そこには大判本を中心に、プレミア本や揃い本がディスプレイ。…生まれて初めて目にする肩書き“探偵将軍”とある本に心惹かれるが三千円か…この付録捕物漫画、“白い魔犬”とあり、表紙に大きな白犬が描かれているが、もしや「バスカヴィル家の犬」の翻案じゃ…ガラスケースの上の哈爾浜小冊子特集が素晴らしい。でもやっぱり高いな…この前の古本市で500円で売ったカルピスのオリンピックソノシート、二千円もするじゃないか…などと楽しみながらウロウロ。二冊を手にしてさぁ精算…あれ?何処のレジに行けばいいんだろう?近くに立つ古本屋さんに声をかけると、ガラスケース脇から奥まるバックヤード風小部屋に案内される。そこが催物場のレジになっていた。コミック・ペット異色名作シリーズ「恐怖のミイラ/楠高治 原作・高垣眸」(森下仁丹提供の昭和三十年代トラウマTVドラマのコミカライズ作品を復刻したもの。私は子供の時に懐かしの番組特集などで目にしたくらいだが、暗くて不気味で本当に恐かった。今でも思い出す、おどろおどろしい不吉なオープニングや、望遠鏡で目撃する無音の死体遺棄シーンは、眠れなくなるほど恐ろしいものであった。漫画は「少年クラブ」に同時連載されていたもの。当然子供っぽく恐さは微塵もないのだが、その恐怖の遺棄シーンがちゃんと描かれていたので、ちょっとだけ喜んでしまう)村松書館「地獄譚/長野祐二」(恐らく自費出版の私娼窟&悪所巡り短編小説集)を購入する。今年最後の古本市をありがとう!と心の中でお礼を言い、デパートの外に出て再びビル風に巻かれながら、そのまま裏手の線路際に出る。陽の当たる暖かな跨線橋を渡って「阿部書店」(2009/06/28参照)を見に行くが、残念ながらシャッターが下りてしまっていた…店内の蝙蝠、元気でいるかな。
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2016年12月20日

12/20埼玉・与野 三輪車

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古本神・森英俊氏より、本も少し売っている懐かし物系ショップを教えてもらったので、期待に胸を躍らせながら大慌てで駆け付ける。東口に出ると、小さく見どころなく雑駁とした駅前。すぐの駅前商店街を南南東に迷い無く進んで行くと、右手にほどなくして白い小ビル一階を、すっかりパッキングされた玩具で覆ったような店頭が現れる。それは、雑然としているわけではなく整然としているのだが、それでも何処か異様な光景となっている。たくさんのソフビ人形やフィギュアや企業ノベルティを並べたウィンドウには『古いおもちゃ買います!!』『1980年代までの!ソフビ・怪獣・ヒーロー物・超合金・ブリキのオモチャ◉旧玩具全般!』『あなたの家の押し入れや、倉庫に!古いオモチャが眠っていたら、お電話ください!』と、変なところに“!”が入る貼紙。手動扉を開けて中に入ると、結構広く通路が何本にも枝分かれし、上から下まで玩具に埋め尽くされた空間である。通路は広く歩き易く、棚やガラスケースや物の集合体が形作っているのだが、天井からは繋げた玩具や駄玩具が多数吊り下がり、棚下の通路には大判の本やブツが置かれているので、境目が曖昧な洞窟状となっている。左側奥の通路では、椅子に座った麿赤児風オヤジさんが、『あしたのジョー』最終回のようなポーズでスウスウ幸せな寝息を立てている…しばらくはソッとしておこうか。それにしても、恐るべき玩具に満ちあふれた店内で、触れたらそこからこの身も玩具と化してしまいそう。ソフビ・フィギュア・メンコなどの駄玩具・キャラ物・ヒーロー物・豆本漫画・ぬりえ・カルタ・ノート・ブロマイド・プラモデル…足元に絵本はあるが、古本はいったい…と奥へ入り込んで行く。すると左奥の中央の島の周辺に、付録漫画・特撮本・カード類・ヒーロー図鑑&百科事典・カバヤ児童文庫・「キンダーブック」・旧教科書・図鑑などが取り込まれているのを発見する。ふむふむ、おっ、野村胡堂の「悪魔の王城」がある…この少女クラブ付録の大判時代劇冒険漫画は読んでみたいなぁ…観光絵葉書もあるぞ…などとこっそり楽しんでいると、オヤジさんが「アッ!」と目を覚まし、こちらににこやかに駆け付けてきた。「すいません、寝ちゃってました」「いえいえ、大丈夫ですよ」「何かお探しですか」「あ、古い本を…」「本ですか。本は…この辺りですねぇ」「そうですね。ここに集中していますね」「どうぞゆっくりご覧になってください」…と言うわけで、しばらくじっくりと丁寧に掘り起こしたりしてみる…。基本は懐かし系玩具屋さんだが、少し本もあり。紙物は大いにあり。タイミングが良ければ、良い出物に出会えそうな予感を与えてくれる品揃え。相場より安めの値がまた嬉しい。…おっ、ここには和本が少々。すると値は付いていないが気になる一冊を見つけたので、すでに手にしていた本とともにオヤジさんに差し出してみる。すると「あぁ、値段ないですね。ちょっと待ってて」と奥の入り込めない通路に向かい、電話をかけ始めた。ところが相手は出ない模様。戻ってきて「いや、本はね、弟がやってるのよ。だから聞かないと値が分からなくて。う〜ん、どうしようかな。じゃあ近くなんで、ちょっと聞いて来ようか」と、一旦お店を閉めて自転車で急行することに。その間私は、入口外の椅子に座り、看板の上から顔をひょっくり出し、見知らぬ街を十分ほど眺めて暮らす。お!オヤジさんが自転車を華麗に疾走させ、カーブを曲がってきたぞ!自転車を停め、階段を駆け上がり、鍵を開けながら「すいませんでした」とにっこり笑う。聞けば作家物と言うことなので、値段は1500円。安くもあるし、せっかく自転車で行き来していただいたので、迷わず買うことにする。富里昇進堂 少女文庫「はかなき生立/ゆかり草著 紫峯画」小学館「機械の図鑑」を購入する。すると突然、「どっか悪いとこないですか?」と唐突に聞かれる。「い、いえ…」と答えると「いやなにね、気功をやってるもんで。体にいいんですよ。もし悪いとこが出たら、来て下さい」「ハイ。また何か買うついでに、参ります」と、当たり障りのない返答をしておく。うむ、楽しかった。こういうお店に出会うと、またレトロ玩具屋巡り(もちろん目的は古本である)に火が点いてしまいそうだ。

収穫はもちろん大正三年刊の「はかなき生立」であるが、奥付にあるシリーズ『少女文庫』の説明が可笑しくてたまらない。『少女文庫はお伽文庫の姉さんで悲惨、不幸等有とあらゆる各冊おもしろき事柄を涙の出るような著者独特の筆にて成りたるもの家庭教育として頗る趣味あり実益ある良書であります』とあるのだ。あらゆるおもしろき事柄を説明する語が、“悲惨”と“不幸”しかないのが、何とも恐ろしい…。ちなみに妹である『お伽文庫』のラインナップを見ていると、「探偵少女」「探偵少年」の気になる二冊を発見してしまったので、頭の中の『読みたい本リスト』に刻み込んでおく…いつか出会えるかなぁ…出会えない可能性の方が高そうだなぁ…。
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2016年10月08日

10/8神奈川・反町 10月古本まつり

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先日の苦汁をなめまくった「ヤミ市一箱古本市」(2016/09/17参照)では、「雲雀洞」さん(2016/07/22参照)が、せっせと本を売りつつも神奈川古書組合員として活動しており、私も青くなっていたところに、一枚のチラシを渡されていた。それは十月の古書会館(2011/09/19参照)の古本まつりで、初の試みに近い200均本販売を行うというものであった。神奈川にちょっとした新たな動きが!と喜びつつ、本日土砂降りの雨が上がったのを見極めて、家を傘なしで飛び出す。深い地下から上がって、『国道1号』から裏通りの『反町公園』沿いに出ると、公園の桜並木が、秋らしく黄色に色づき始めていた。いつも通り薄暗い会館一階のガレージには、大きな平台が二重に設えられ、そこに200均本が、背を上に見せてズラズラと並べられていた。遠目に左奥の帳場にいた「文雅新泉堂」さんと会釈を交わし、「雲雀洞」さんにも発見され言葉を交わす。肝心の200均群は、古い新書サイズ本が充実しており、さらにオカルト・横浜・歴史・文庫&古い文庫・絶版コミック・民俗学を目立たせながら、なかなかの嬉しい質の高さを見せている。何だかライバルも少ないし、これはいいぞ!と平台前でゆっくり蟹移動しながら、好みの本を吟味し続ける。するとたちまち腕の中には七冊の本が抱かれることになった。満足して平台ゾーンを通過して奥に移ると、縦に並ぶ四本の平台付き通路棚は、200均ではない通常値の古本まつりゾーン。そこでも一冊を手にして、帳場にて三人掛かりで精算していただく。大阪屋號書店「東海道中膝栗毛論考/三田村玄龍編」(三田村鳶魚を中心に、八人ほどのメンバーで「東海道中膝栗毛」について座談会風に議論を重ねる妙な本)学研高校生文庫「ステート・フェア/フィリップ・D・ストング作 常磐新平・文」芸文社アルファブックス「あり得ない話がある話/乾信一郎」自費出版「富士塚探訪/福井光治」(八十歳過ぎの老人が、突然火のついたように東京と神奈川の富士塚をフィールドワークしまくる、執念の三年間の記録をまとめたもの)FERNAND HAZAN「DADA 1915-1923」大日本雄辯會講談社「われ等若し戦はば/平田晋策」(函ナシだが、200円でなかなかの美本。そして、前の見返しには伝説のお店『本郷白山上 南天堂書房』のラベルがっ!だから、どひゃっほうと言わせてください!)宝石社「宝石臨時増刊 昭和36年度新人25人集」(蒼社廉三「屍衛兵」小林泰彦「夜はつぶやく」西村京太郎「黒の記憶」広瀬正「殺そうとした」などが目を惹くが、一番のトピックは灰谷健次郎「神々の悪事」…推理小説、書いてたんだ。急ぎ読み進めてみると、故郷神戸を舞台にした、ジメドロした家庭内事件を描いたものであった)を計1700円で購入する。なんだか反町で良質な安売台を見られたのは、新鮮な体験だったので、どうぞこれからもちょいちょいこの企画を実行して下さい。喜んで買いに来ます!この市は明日10/9も開催される。
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かなり嬉しい南天堂ラベル。噫、松岡虎王麿!
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2016年09月24日

9/24埼玉・浦和 浦和宿ふるさと市

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午後からは雨模様というので、午前十時に家を出て、毎月第四土曜に開かれる骨董市に急行する。湘南新宿ラインを降りて西口に出て、会場の神社をうろ覚えで来たことに己を憎みながら、駅前交番の地図とにらめっこする。確か…漢字一文字の神社だったな……これか、『調神社(つきのみやじんじゃ)』。すぐに交番裏から隘路に分け入り、『旭通り』を南に進んで行く。大きな通りを渡ると『骨董市』の幟が翻り始めるので、それをたどるようにして住宅街をさらに南に進んで行く。やがて行く手に鬱蒼とした森が…右手は二抱えもあるような巨木が林立する『調神社』で、その横の『調公園』にテントを立てた臨時の骨董店&古道具店が多数出現していた…その光景は、まるで骨董テント村である。お店は公園のほぼ全域に行き渡り、およそ百店を数える。『うんどう遊園』『わんぱく広場』『こもれび広場』『陽だまり広場』『じゃぶじゃぶ広場』など、バラエティ富んだ空間にお店が並び、骨董&古道具が並んでいるので、空間自体がオープンな迷路と化しており、その中を歩くのはなかなか楽しい体験である。それにしても、所々でメダカを販売しているのは、いったいどういう訳なのだろうか…?目指す古本は、それほど見つからず、和本・浮世絵・絵葉書・観光案内&地図は良く見かけるのだが、古本はほとんど見かけない…読み終えた文庫などもあるにはあるが…ぬぅ、三島由紀夫の全集・豪華本・スクラップを売る特異なお店が…。仕方ないので有望そうな紙物箱を、懸命に掘ることに集中する。『わんぱく広場』の一軒では、浮世絵に物凄い執着を見せる外国人女性と隣り合い、絵葉書中心の紙物の山を掘り進める…すると下層から小版のリーフレット類が出現。面白そうなのがありそうだぞと、気になる物を選り分けて行く。途中、隣の女性が精算すると、なんだかひとまとめで安い値段を告げられていた。…これは、一山で安く売ってくれるかもしれない。そう目論んで東京の建物絵葉書・復興絵葉書セット・山勝ブロマイド・アイヌ絵葉書・カメラ説明書などを「お幾らですか?」と店主に差し出してみる。しばらく精査した後に「六千円だね」と告げられる。くわっ!安くならなかったか。仕方ないのでどうしても欲しい一点に絞って値段を聞くと、仏頂面で「500円」。「いただきます!」と帝國ホテル「ホテル乃栞」を購入する。恐らく大正〜昭和初期の『帝國ホテル』の宿泊客用の案内である。いわばホテルの取扱説明書で、サービスの説明はもちろん、エレベーターの乗降方法や外国人客に対するマナーなども書かれており、当時のライト設計ホテルの様子を良く伝えている。入口前には人力車と乗合自動車があったり、家族以外の男女宿泊はお断り(男ひとりもしくは女ひとりの部屋に別姓の者がひとりで訪ねる時は、扉を開け放しにしておかなければならないのだ!)だったり、地下一階〜地上四階の館内見取り図と、とにかく心震える一冊なのである。「ありがとうございます〜。楽しんで下さい〜」の声を背にして、続いて『こもれび広場』の一店に取り憑く。ここには紙物箱が二つ…お、ひかりのくに昭和出版 テレビ絵本「わんぱくフリッパー」が出て来たぞ!それに雑誌グラビアの切り抜き「ボクたちは子どもの人気ものです!現代っ子を魅惑する怪獣スター50匹登場」は、良く見ると大伴昌司が監修してるじゃないか!慌てて値段を聞いてみると、「絵本は500円。そっちは…えぇい、サービスだ。ちょっと切れてるし、100円とか言ってもしょうがねぇ」とサービスしていただく。ありがとうございます!この切り抜き、映画・テレビの『地上怪獣』『地底怪獣』『宇宙怪獣』『水底怪獣』に分類し(水底怪獣って…)紹介しているのだが、何故かネッシーとウルトラマンも含まれてしまっている。解説文に児童心理学者の意見が載っており「怪獣に夢中になるのは強い者への憧れで、一種のハシカみたいなものなのです。だから騒いだり心配しないで、怪獣は社交のためのすばらしい道具であることを、お母さんとしては理解してあげることですね」と書かれている。…すみません、どうやらハシカにかかりっ放しなんですが…。とこんな風に、計千円でなかなか面白い物を手に入れられたので、気分を良くして会場を後にすると、新宿駅に着いたところで、酷い雨が降り始める。紙物には大敵の、雨である。少し時間がずれていたら、今日手に出来た物も、買えなかったかもしれない…。
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2016年09月14日

9/14神奈川・日吉 古書 ふもすけ堂

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ゲラの海から顔を上げ、コメントタレコミで知った最近開店のお店に向かうことにする。改札を抜け、巨大な球体モニュメントに己の歪んだ姿を映しながら、西口の放射状街路商店街前。緑色のゲートが建つ『普通部通り』に入り、南西へ。シャッターの下りた「ダダ書房」(2009/05/18参照)を左の視界に捉えながら、二つ目のゲートを潜る。次の北への脇道に素早く曲がり込むと、行く手には『TSUTAYA』が見え、その手前左手に新たなピカピカの古本屋さんがオープンしていた。あれ?ここって「エルダーズ」(2010/07/29参照)があった場所だっけ?己のあやふやな記憶に確信の持てぬまま、店内に入り込む。路面に近い部分は細長く、奥にはさらにスペースが広がる…結構広いな。壁際はすべて本棚で埋められ、フロアには路面側に小さな平台があり、奥に本棚ともうひとつの平台がある。左奥の遠い所に帳場があり、青年が横向きにパソコン作業をしている。右壁棚は中央奥までコミックがズラリと続き、平台には暮し系ムック類。左壁は時代劇文庫から始まり、その後は丁寧な棚造りの日本文学文庫が連なって行く。棚は中央辺りで左に折れ曲がるので追跡し続けると、その奥に隠れた小空間があるのを発見。そこにはレディコミ・100均文庫・官能文庫・新書サイズ本が集まり、そのまま右壁の新書・出版社別文庫・ノベルス・海外文学文庫と続く。ここからは広い奥のスペースとなる。フロアには片面が文庫で片面が単行本の100均棚があり、平台にはカルチャーなバーゲン本が揃っている。改めて左壁に向かうと、文学全集・村上春樹・日本文学・海外文学・ビジネス・アート・サブカル・音楽・民俗学と続き、帳場前の袖には細いDVD棚。右壁は民俗学が少し並び、後は大量の教育関連専門書が、硬く健やかさを放ち大集合している。奥壁には、本・古本・古本屋・新刊書店・出版の本が質高く幅広く並んでいる…「首都圏沿線」も「古本屋ツアー・イン・ジャパン」もあるじゃないか…。路面側はコミックと文庫中心にちゃんと官能文庫(少量だが)も並べた街の古本屋さんで、奥は教育書と本関連に強みを見せる個性店となっている。新しい本が多いが、品揃えはしっかり。だがこれが完全に固まった理想の形でないことは、少し伝わって来る。値段はちょい安〜普通で、プレミア値もあり。婦人生活社「くもんの算数/公文公」(表紙から本文までイラストはやなせたかし)を購入し、ささやかに慎ましく開店を祝う。何事もなく表に出ると、背後から人の迫る気配…店主が店から飛び出し、建物伝いにこちらに駆け付け、正体が露見する。恐縮して改めて挨拶を交わし、「今後ともよろしくお願いします」と笑顔で言われながら、頭に閃いてしまったの店主の印象…聡明で柔和なプロゴルファー猿…あぁっ、すみません…。ちなみに店主に聞いたところ、ここは「エルダーズ」跡地ではないとのこと。そうか、ここは「茂野書店」(2009/05/18参照)があった通りなのか。

帰りに渋谷で途中下車し、ついに解体工事の始まった『宮益坂ビルディング』を寂しく眺め、坂上の「中村書店」(2008/07/24参照)に飛び込む。入口右横のラックに、東京都古書籍商業協同組合南部支部「Rewind◀◀1969◀◀2004▶ 東京古書組合南部支部 創立35周年記念写真帖」を見つけてしまったので、940円で迷わず購入する。「月の輪書林」さん(2012/03/29参照)と「古書サンエー(渋谷古書センター)」さん(2008/07/24参照)が編集した東京古書南部支部の写真集である。時節ごとの「南部古書会館」の姿や、歴代古書店主たちの姿も素晴らしいが、在りし日のお店の姿には思わず目が血走ってしまう。
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これは「江口書店」(2010/03/29参照)「一新堂書店」(2011/02/07参照)「遠藤書店」(2008/10/17参照)掲載のページ。麻布十番の「笹間書店」や、大森「山王書房」の姿にも心ブルブル震えてしまう。
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2016年09月03日

9/3神奈川・横須賀中央 AMIS

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トンネルを抜けた途端に駅のホームに滑り込み、階段を下って西口から出ると、改札横ではジャズのビッグバンドが演奏中。迫力ある生音を背に浴びながら、『平坂』に足を掛けグングンと山の上を目指して南に上がって行く。急角度の商店街を抜け、山上の『上町1丁目交番交差点』にハアハアと息を切らせながら到着する。このまま真っ直ぐ道なりに進めば薄型店舗の「沙羅書店」(2009/06/02参照)にたどり着くが、今日は帆船のモニュメントが入口に据えられた『中里通り商店街』を西へと進む。ここら辺りにはその昔、古本と貸本の「栄文堂」というお店があったそうだが、今は影も形もなくなっている。だが四本目の外灯を過ぎると、右手に前面を陶板タイルで飾った小さなビルが現れ、その一階に真新しいブックカフェが開店していたのである。サッシ扉にはジャック・タチの映画ポスターや外国市街地地図、それに本棚のある風景が描かれたイラストポスターが貼り出されており、その前に小さな洋書絵本の安売箱が置かれている。恐ろしく滑りの良い戸を引き開けて中に入ると、左に小通路とこじんまりとしたカフェスペースがあり、右にはちゃんとした古本屋スペースが広がっている。その右スペースに奥から顔を出すようにしてレジが設置され、すぐにカフェにも対応出来る造りになっている。座るのは頭にタオルを巻いた年配で面長の武満徹風男性である。カフェ入口前の小通路には二本の棚が置かれ、ペヨトル工房本・自然・山岳・サッカー・旅・海外などがキレイに収まっている。入口右横の洋書絵本や、レジ前の洋書ビジュアル本に軽く視線を流してから、壁棚と一本の通路棚で造られた二本の行き止まり通路に対峙する。奥の通路には、哲学・現代思想・政治・社会・海外文学・日本文学・時代劇文庫・詩・澁澤龍彦・日記・戦争などが集合し、文庫を中心として棚に二重にビッシリ収まっている。手前通路には雑貨類・暮らし(お母さんと一緒にいた子供が「あっ!「暮しの手帖」だ!商品テスト載ってるかなぁ〜」とすかさず手にしていた…朝ドラ『とと姉ちゃん』、恐るべし!)・落語・江戸・料理・児童文学・絵本が並び、棚脇に美術や写真の小さめ棚が置かれている。硬めの良書を揃え、文庫本を主力とし、値段ちょい安な、フレッシュなお店である。これは完全に横須賀方面では、かつて存在したことのないタイプのスタイル!その勇気と行動力と健闘を称えつつ、ちくま文庫「私の絵日記/藤原マキ」旺文社文庫「ウスバカ談義/梅崎春生」を購入する。どうかヨコスカが、この新しいタイプの古本屋さんを受け入れてくれますように!と願いつつ、そのままの足で交差点へと戻って「沙羅書房」へ。今日は奥の通路に帳場前からしか入れないのかと戸惑いつつ、光文社文庫「シャーロック・ホームズに再び愛をこめて/ミステリー文学館編」音楽之友社「ぼくらのライブハウス/岩永文夫」を計550円で購入する。

『平坂』を下って『若松マーケット』を通り抜け、『米が浜通り』を南東へ進む。海は見えぬが匂いで分かる強めの潮風が、重たいがそれでもこの暑さには心地良い。やがて右手に先日全焼してしまった海軍御用達料亭「小松」跡地が姿を現わし、板塀の節穴から寂しくなった亭内の様子をうかがってから、愛しの「港文堂書店」(2010/05/08参照)に到着。店頭で100均本を一冊掴み、店内に入るや否や、郵便配達人が帳場前で話し込んでいる不思議な状況。これ幸いと棚に視線を走らせるが、すぐに「あ〜っ!」と発見され、元気過ぎる母&クールでニヒルな娘さんの、炎と氷の母娘コンビに歓待していただく。呼び名がいつのまにか“力也さん”となっているのに面食らい、店内の古本を見る間もなく手作りの梅干しやジャムをお土産にいただく。嬉しや嬉しや。これでどうにか厳しい残暑を乗り切れる気が…。後は楽しいヨコスカ・ディープ話と世の中には何故面白人間がたくさんいるのかを真剣に話しつつ(まぁ大体は聞き役なのだが…)、隙をうかがい古本探し。ちくま文庫「明治探偵冒険小説集1 黒岩涙香集」カッパ・ブックス「合気道入門/植芝吉祥丸」ロマン・ブックス「黒い白鳥/鮎川哲也」文園社「名月捕物噺/久我荘多郎」宝文館「やもめ貴族/川崎長太郎」(カバーなし)を計1500円で購入する。すっかり一時間ほど話し込んでしまったので、段々と横須賀の故郷となりつつある老舗店を、後ろ髪引かれて後にする。
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2016年08月23日

8/23埼玉・入間市 第1回 入間ペペ古本まつり

午前中の、レンタルしていたコピー機の引き取りに伴い、古本山で乱雑を極める部屋の片付けに汗を流す。玄関の本の山をコピー機のあった場所に収め、生活動線をスムーズにすることに成功する。そのまま思い切って外出し、昨日は台風のせいで盛大にダイヤが乱れた西武線で、狭山丘陵にまっしぐら。新しめの駅に降り立つと、ホームベルの『茶摘み』にまずは脱力。階段を上がって南口に出ると、通路がそのまま駅前の『入間ペペ』二階につながっている。ガラス戸入口まで進むと、『古本市開催中』の赤い幟と『古本市一階で開催中』の貼紙があったので、俄然やる気を出してペペ内階段を駆け下りて一階フロアに飛び出し、左右をキョロキョロ。すると入口内と入口外に十台ほどのワゴンが展開していたので、まずはそちらへ足を向ける。
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暑い外は時代劇文庫と一般文庫とコミックの布陣で、中は鉄道&自動車関連が多く並んでいる。手始めに春陽文庫「殺人狂想曲/水谷準」を216円で購入し、『別会場あり』の貼紙に胸躍らせながら、再び店内へ吸い込まれる。すると右側通路エスカレーター向かいのスペースに、古本ワゴンが四十台近く配置され、古雑誌・映画パンフ・コミック・絵本・レコード・岩波文庫・ちくま文庫・歴史・戦争・風俗・映画・文学・美術図録・少女漫画・東京・歌舞伎などが目立っており、値段札から「志賀書店」「大村書店」(2013/02/04参照)「ブック・ジャム」(2009/07/05参照)「文省堂書店」「キクヤ書店」「澤口書店」(2014/12/17参照)の出品を確認する。
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ちょっと見応えのある中規模の古本市である。「ジャム」と「文省堂」が品揃えで尖っているが、良い本の値段はしっかり。「キクヤ」と「澤口」はちょっと古い雑本vs新しめの雑本という展開だが、その安さにビリビリ痺れる。秋田書店「世界の機関車/本島三良」メディアファクトリー「昭和の怪談実話 ヴィンテージコレクション/東雅夫編」を計648円で購入する。市は8/31まで。
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2016年07月23日

7/23埼玉・みずほ台 岡本書店

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今回は久々に古本神のひとり、ミステリー評論家&翻訳家の森英俊氏に誘われ、未踏の古本屋さんを訪ねることにする。神保町駅ホームで待ち合わせ、有楽町線に乗り込み埼玉方面へ。その車中で本日訪問するお店について質問を重ねて行くと、なんと山梨県都留市にあった「岡本書店」が移転して来たものであることを知る。「岡本書店」…行ったことある!確か広い塗装屋さんの敷地内に、二棟の倉庫らしきものがあったお店だった記憶が…断然入れなかった記憶が…(2010/11/12参照)。森氏は目録でお店の移転と店舗営業していることを知り、一度苦労して訪れたとのことであった。その時はまだ大量のダンボール箱が山積みされている状態で、明らかに営業準備段階だったので、改めて本日、思いっきり探索するための二度目の訪問となったわけである。駅西口に出て、ロータリー端にあるライフバス乗り場から、ICカードの使えぬ小さなバスに乗車する。駅から『すずかけ通り』を南西にニキロほど進んだ四つ目のバス停『大日本印刷工場前』で下車。通りを少し戻り、横断歩道を渡って大日本印刷の広大な敷地沿いに北西へ工場街の裏道を歩いて行く。最初の脇道を東北方面に折れ、さらに工場と倉庫の殺風景な裏通りを歩き続ける。すると森氏が左に現れた、大きな運送会社の倉庫を眩しそうに見上げている。「ここです」「ええっ!倉庫じゃないですか。お店なんて何処にも」「ここの二階なんです。ほら、この前来た時はありませんでしたが、ここにお店のポストが」指差された人気のない一階倉庫柱下部に目をやると、確かにそこには「岡本書店」と書かれた札が…。倉庫脇の水色の鉄階段を、半信半疑で上がって行く。段々と、大きく開かれた倉庫の扉の中が見えてくる…ぐおぉっ!本棚!確かにそこには、周囲の工場街的ロケーションからはほど遠い、本棚が並んでいるではないか。緑の床の空間にそっと足を踏み入れると、凄まじく広大な体育館のようなお店で、左側には本棚が少し並んでいるが、後はナンバーを書かれた小さなダンボールの山が果てしなく続く、とても古本屋さんの店舗とは思えぬ光景が、ただただ圧倒的に広がっていた。森氏はすでに端の事務所スペースに半身をねじ込ませ、何やら交渉に入っている。まったく相変わらずの剛腕だなと苦笑しつつ、アクの抜け切った殿山泰司壮年時代的店主にご挨拶する。そして「森さん、これ店舗じゃないじゃないですか。完全に倉庫ですよ」「でも、この前来時、ここはお店だって言ってたんだよ」とヒソヒソ…いや、それでもこの状況は、どう見ても絶賛整理中の大倉庫なのである。三人で少し噛み合ぬ会話を交わしつつ、森氏が前回探していると伝えていた児童系の本の束を、まずは見せていただく。すべて裸本であるが、中には興味ある本も含まれている。ところが値段の話になると、バラでは売らぬ、束で買ってくれ、と言うことになる。その額が意外にちゃんとした値段だったので、私は取りあえず辞退。だが結局、森氏が値下げ交渉をいいところまで進め「じゃあ二人で半分ずつ出そうか」ということに、突然決まる。何だか巻込まれた感があるが、これはまずとにかく本を買い、相手に購入意志のあることを伝え、その後の探索&交渉を有利に進めるための、テクニックのひとつなのである…もちろん私ひとりではとても使えぬ技…。その後はリリースしていただき、広い店内(倉庫内)をウロウロ…いやこれが本当に凄い。ジャッキー・チェンが乗り込む敵のアジトを想像してもらえれば、恐らくそれが一番近いイメージである。私はただポカンとしながら、長い通路を行ったり来たり。その間にも森氏は、倉庫のあちこちから目欲しい本や束を集め、すぐさま店主と交渉に入っている。そのバイタリティに感心しながら接近すると、熱心にヒートアップしているのは児童学習雑誌付録本の束について。これもまたバラ売り不可とのことなので、八十冊余の小型本を一冊幾らにするかでのせめぎ合いが始まっている。結局全部で一万五千円で落ち着いたのだが、その瞬間森氏が、こちらに向かってニッカリと微笑み「よし、後で分け合いましょう」と宣告する。あぁ!知らないうちに、俺もその束を買っていたんですね。……今日俺は、ありえないほど自動的に、大量の古本を買ってしまったのだ。森氏がひとまず代金を支払い、大量の本を袋に入れて、恐るべき倉庫店を辞去する。これからもっと片付いたら、さらに様々な興味津々食指が動く本が現れそうな、そんな気配が濃厚な倉庫であった…。午後三時台はバスが皆無なので、駅まで古本を抱えて戻り、電車の中で本を仕分ける。まるでボスが差配する銀行強盗後の分け前を待つように、まずは森氏が欲しい本を抜き、余りがこちらに回ってくるカタチであるが、買った束は恐ろしいほどの有望株で、かなり良い本がポンポンと積み重なって行く。森氏は、賭けに勝ったのである。結局今日は連れて来てもらって良かったと、心の底からウットリしながら観念して、全代金の三分の一を支払う。いや、やっぱりこの人には適いません。また来週、ぜひとも面白いところに行きましょう。
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結局こちらに回って来たのは五十六冊。そのうちの素敵な収穫は上記の写真で、特に学研「6年の学習」付録の加納一朗のジュブナイル怪奇ミステリ「悪夢の追せき」「こうもり男」「影が歩く」「きょうふの人形」には歓喜の嗚咽が!
posted by tokusan at 21:08| Comment(6) | TrackBack(0) | 関東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする