わりと遅く起き出したが、少しは遠くの古本屋さんを見に行きたくてしょうがなくて、一週間前に乗ったはずの湘南新宿ラインで午後一時の高崎駅。立喰いそばで昼食を摂り、西口駐輪場で無料のレンタサイクルを借り受け、街に解き放たれる。すでに初夏の爽やかさ溢れる高崎市街を、エンジ色の自転車が快調に滑って行く。やがて、西側の住宅街に滑り降りるが、目標には近付いているのに、盛大に迷ってしまう。走って来た道を見失うほどに、盛大に迷ってしまう。そこで後ほど判明した、分かり易いルートをここに記すことにする。駅からは西に進み、『渋川街道』をぐんぐん北へ。もはや繁華街の外れとなる『本町1丁目交差点』で西に入る。『旧中山道』であり『赤坂通り』でもある道は、店舗営業を辞めた「赤坂堂書店」(2009/10/04参照)前から下り坂となり、南西に下って行く。古い商家や醤油醸造所の並ぶ景色を楽しみ、下り切った『常盤町交差点』で、今度は北西へ。しばらく行くと右手に大きな『パークレーン高崎』が現れるので、正面を通過して敷地沿いに北東へ。すると左手に、小さな駐車場があり、店頭に大きな瓶と目立たぬ看板を置いた、シックなお店を発見する。日光の加減か、大きな前面の窓はピカピカとこちらの景色を映し込んでおり、店内の本棚がなかなか見え難い。それにしても、横に大きなボーリング場&スポーツジムがあるとはいえ、こんな所に古本喫茶…たどり着けた喜びと、ロケーションの意外さを心の中で捻り絡ませ、自転車を停めて店内へ進む。左に仕切られた厨房と、窓際にカウンター。そこに座っていた、ゆず・岩沢風青年が慌てふためき「いらっしゃいませ」と立ち上がる。「本を見せていただいてもいいですか?」と断りを入れ、右に広がる古本屋的スペースへ。焦げ茶を基調にしたシンプルシックで抑制が効き、整った空間である。奥壁と右壁に大きな本棚が据えられ、中央のテーブル席を囲むように、低めの本棚が展開。入口から奥に向かう狭い通路には、幻想文学・澁澤龍彦・種村季弘・海外幻想文学・バラード・バロウズ・中上健次・野坂昭如・赤瀬川原平・諸星大二郎・植草甚一・伊丹十三・安部公房・開高健・吉田健一・山口瞳・セレクトライター本などと共に、回転式音楽CDラックが置かれている。奥の壁棚には、コバルト文庫もおさえた片岡義男・小林信彦・田中小実昌・後藤明生・函入り日本純文学・平岡正明・現代思想・文芸評論・ちくま文庫・河出文庫・講談社文芸文庫・セレクト女流作家・暮らしや雑貨類のビジュアルムック・雑誌が並ぶ。向かいには写真・アート・建築・犯罪・サブカル・カルチャー雑誌。右壁棚には、中公・新潮・集英社・旺文社・講談社などの出版社別セレクト文庫の他、ロマン文庫・探偵小説系文庫と共に、下段に映画・音楽・CDが固まっている。端正でよく練られた徹底的な棚である。好みを突き詰め集めて、そこに立ち止まらずに、ちょっとだけはみ出すような一冊にも手を伸ばしているため、棚に滋味が滲んでいる。古い本はあまりなく、値段は普通〜ちょい高。これからさらにもっと突き詰め、さらに徹底的に集め、さらなる高みに上がって欲しいお店である。河出文庫「ドラキュラ ドラキュラ/種村季弘編」ちくま文庫「定本 二笑亭綺譚/式場隆三郎・藤森照信・赤瀬川原平・岸武臣・式場隆成」を購入すると、店主に古本屋ツアーであることを看破される。ひいっ、恐れ入りました。そこからこの場所での経営の厳しさや、実は本業があり、今はそちらに支えられた土日営業であることを知る。店主は「いやぁ、いつまで保つのか…」と笑いながら言っているが、いつ何時化けることがあるか分からないのだ。棚の気配が素敵なので、ふんばって化ける準備を、これからも続けていただきたい。まずは店頭がシック過ぎてアピール性5%ほどなので、『珈琲と古本』をもっと目立たせて行きましょう!
しまった、珈琲を飲めばよかった、と後悔しつつ、自転車に跨がり市街へ戻る。「文京堂」(2014/05/25参照)にキキッと乗り付け、表紙写真の中村梅之助がナイスな巨朋社「伝七捕物帳 美女夜叉/陣出達郎」とボナンザ「本の本 1976年6月号ミステリーと名探偵特集」を計300円で購入。さらに「みやま書店」(2009/02/08参照)と久しぶりの「うさぎの本棚」(2011/01/29参照)を見に行ってみるが、残念ながら共にお休みであった。

