2019年06月21日

6/21東京・西荻窪 トムズボックス

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改札を抜けて駅北口に出たなら、そのまま駅前から抜け出さずに西に向かい、高架下の『西友』内を失礼ながら抜け道にする。西端の出口から吐き出されると、高架から徐々に離れるようにして、一本の直線道が北西に延びて行く。「忘日舎」(2015/09/28参照)の前を通り過ぎ、さらに「古書音羽館」(2009/06/04参照への脇道もやり過ごす。そこからさらに百五十メートルほど進んで行けば、左手の曲がり角手前の店舗の軒下に、箱に“T”“B”のイニシャルとともに可愛らしい熊が顔を出す木の看板が下がっているのを発見出来るだろう。脇道に入り込み店舗前に回り込むと、白と赤枠の洒落た小さなお店である。吉祥寺にあった絵本の名店『トムズボックス』が、古本屋さんとして、ここ西荻窪で復活を遂げたのである。ガラス戸を開けて中に入ると、横長のこじんまりとした空間である。手前の窓際には新刊が入った小さな棚と、カードや雑貨類の棚が設えられている。フロア中央には新刊類を並べた大きなテーブルが置かれている。右奥には洋書の絵本&児童文学棚があり、それに続き帳場が造られている。そこに座るの二人の男性で、なんだかはるき悦巳の漫画に出てくる人たちみたい…「外をたくさんの女子高生が通って行きますよ。チラシでも巻きましょうか?」などと嬉しそうに会話中。入って直ぐの左壁はラックになっており、戦前戦中の古い絵本やお薦め絵本が飾られている。その奥から棚になっており、さらに奥壁は一面の棚。児童文学関連・イラスト・作品集・アート・絵本関連図録・絵本・漫画関連・絵本・児童文学・紙芝居・文庫本・長新太・和田誠・今江祥智などが並んで行く。所々にレアな児童文学と絵本が顔を出すのがスゴい上に、七十年代〜八十年代辺りの日本のイラストレーター&イラストアート関連が深く集められているのが面白い。値段はビシッとスキ無しである。福音館書店かがくのとも「ふしぎなきかい/安野光雅ぶん・え」を購入する。開店おめでとうございます!…あぁ、考えてみれば、これで三日連続で絵本の古本を買っていることになるのか…。

この後は駅南側に出て「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。「フォニャルフ」に補充した後、帳場横で出来立てホヤホヤの本と地図を受け取る。我刊我書房 覆刻「彩色ある夢」と盛林堂ミステリアス文庫「不思議な宝石」はともに石野重道の作品。稲垣足穂の盟友だった、知られざる作家の自費出版本の誌面覆刻と、同作家の新たに発見された童話をまとめた文庫本である。読みたくとも読みたくとも読めなかった作品たちが、二十一世紀に新刊として蘇った!二冊同時に石野重道本のカバーデザインを手掛けられる日が来るとは、全く持って驚きで、人生は何が起こるか分からない奇怪な楽しいものである、と改めて思う。「彩色ある夢」オリジナル本の装幀者は稲垣足穂なので、私が新しいデザインを施すなど余りにおこがましいのだが、巡って来たチャンスを思いっきり甘受し、まったく違うものを創ることを念頭に、依頼を受けたのである。大正十二年刊のオリジナル本は、タルホの無邪気とも言える図形や英単語や線形を散りばめた、シンプルでファンタジックなデザインであった。そこから離脱するために、本文から勝手に読み取った、『黄色』『孔雀』『三角』を素材にし、眼底に飛び込んで来る光彩のような文章のピーキーでクレイジーなな感覚を折り込み、ある種の読み難さを孕む特徴ある文体を追いかけ、デザインを組み上げて行った。「不思議な宝石」は、同じく素材のひとつである『黄色』の感覚を拡大し、大正末期のモダニズム感覚を、シンプルに包み込んだつもりである。フフフフフフ、しばらくはこの二冊で、文学史の地下深くに埋没していた、忘れ去られた宝石のような、1920年代の特異なモダニズム&アヴァンギャルドを、たっぷりと慈しめそうだ(「彩色ある夢」のアンカットも、不器用ながらに全部切り裂いたぞ!)。明日から盛林堂店頭でも販売されるので、気になる方はお早めに!
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/
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そしてさらに受け取った地図とは、構成を担当したA4サイズ『西荻窪古本屋マップ』である!西荻窪の十六店の愛すべき古本屋さんを地図と文章でご紹介!こちらも明日辺りから、西荻窪の各店舗で無料配布される予定なので、是非とも手に入れ、各店舗を経巡り、古本をバンバン買い漁っていただければ!
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2019年06月17日

6/17東京・三鷹 蓬BOOKS

昨日帰宅してからほったらかしていた、ゴロゴロ持ち帰った古本の整理を終え、頭上に晴れ渡る空と同じようなスッキリした気持ちで、古本を買いに街へ出る。荻窪「ささま書店」(2018/08/20参照)で月曜定例の定点観測…表で二冊を選んで店内へ。壁棚から中央通路棚に移ったミステリゾーンに視線を落とす。おぅっ!日影丈吉のノベルス数種とともに、岩谷書店「わが一高時代の犯罪/高木彬光」が並んでいるじゃないか。値段を見ると、とても嬉しい800円なので、迷うことなく東西文明社「假面と素顔 日本を動かす人々/大宅壮一」徳間文庫「猫に関する恐怖小説/フレドリック・ブラウン他」と合わせて、計1080円で購入する。ちょっと「わが一高時代の犯罪」を移動の車内で読み始めると、冒頭が駒場にあった『第一高等學校』の校風や寮生活(バンカラなのである)の説明に費やされ、それがなかなかに味わい深いので、ぐいぐい引き込まれてしまう…お、面白い。
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表紙写真は昭和十二年に撮影された、現在『東京大学 駒場教養学部1号館』として現役の『第一高等學校 時計台』である。格好良い!

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と言うわけで、荻窪駅から電車に飛び乗り三鷹へ移動する。昨日ママ猫の古本やさんにいただいた『ミタカフルホンヤマップ』に載っていた、古本も扱う絵本と本のお店へと向かう。南口を出て、空中デッキから幅狭なエスカレーターで地上に降り立つ。そこから繁華な直線道の『中央通り』を、ただひたすら南下して行く。東側の歩道に乗り、『三鷹駅前交差点』→『三鷹産業プラザ東交差点』とやり過ごして、さらに南へ南へ。途中には、三鷹に所縁ある三木露風や山本有三の作品にちなんだ銅像が建てられている。やがてハローワークの手前に、巨大な白い集合住宅が現れるのだが、その一二階が洒落たショップが集まる『三鷹プラーザ』となっている。二階…と言うか、一階が微妙に半地下なので二階の高さも中二階と言った低さである。お店の立看板が下に置かれた、宮殿的アプローチを見せる外階段を上がると、バルコニーのような場所である。そこから建物内の通路に入ると、左手奥が目指すお店であった。ほほぅ、店頭に古本棚がちゃんとあるではないか。近付くと、上部に絵本箱が二つ置かれ、下の棚に文庫本・石井桃子・「サザエさん」・単行本・ソフトカバームックなどが、安値で並んでいる。恐らく古本はここだけなのだろうな。そう感付いて、一冊の絵本を抜き取り店内へ進む。壁の半分は『ためしよみ』の絵本ラックになっており、絵の展示なども行われている。壁際の棚やフロア台には、さらに絵本・雷鳥社本・夏葉社本・児童関連本・ネイチャー関連などが新刊で並んでいる。帳場背後の高い壁棚に圧倒されながら、岩崎書店「図書館のすべてがわかる本2/監修・秋田喜代美」を購入する。
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2019年06月06日

6/6東京・柴崎 tegamisha

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強い暑さにすっかりうだりながら、柴崎に流れ着く。途中、自販機で清涼飲料水を購入すると、ルーレットくじでもう一本当たってしまう…嬉しいのだが、こういうところで運は使いたくないものだ。出来れば古本屋さんの店頭で発揮したいものだ…そんなことを考えながら京王線の駅へ向かっていると、以前から知ってはいたのだが、なかなか足が向かなかった「手紙舎」(2009/12/13参照)の支店を偶然発見してしまう。駅からは東端の改札出口を出て、踏切から道なりに北東へ進んで行く。すると『甲州街道』に出る手前左手に、洒落た二階建てレトロビルのお店を見つけることが出来るだろう。二階は「手紙舎2nd STORY」という雑貨と喫茶のお店だが、一階が「tegamisha」という書店+カフェとなっている。むぅぅぅ、カフェと喫茶の違いがよく分からぬが、とにかく突撃するのは一階だけで大丈夫だろう…と、お洒落な木戸を開けると、木材で形作られたナチュラルモダンな空間が、奥へ奥へと続いている。手前が書店ゾーンで奥がカフェゾーンとなっており、大手を振るって本が見られるので、まずは一安心である。それにしても、書店もカフェも女性で混み合っている…というか、お店の人以外は女性しかいない…。そんな風にちょっとだけ臆しながらも、古本を求めて眼をギョロギョロと血走らせる。書店ゾーンは右側と真ん中が文具や雑貨で占められており、主に右壁棚に大量の本が並んでいる。だがそれらは、とても丁寧にテーマごとや作家ごとにセレクトされた真っ直ぐで美しく優しく幸福そうな新刊群で、古本は見当たらない…間に混ざり込んでいるかと疑うが、本の天から飛び出しているスリップを見ると、やはりどれも新刊なのである。…ふ、古本は、な、ないのか…と焦りながら奥へ奥へと入り込んで行く。すると最後の最後のカフェーゾン手前の壁棚に、「古書モダン・クラシック」の棚があるのに気付く。あったぁ〜!と喜んだのも束の間、古い良さげな切手絵本の揃いがドバッと置かれ、分売は不可…よって手も足も出ずに、申し訳なさを胸に携え、コソコソとお店の外へ脱出する。駅へ一直線に向かい、電車に飛び乗り仙川へ移動して「文紀堂書店」(2015/03/31参照)にむしゃぶりつく。小学館「まんが家インタビュー オレのまんが道(2)/少年サンデー編集部編」講談社「鉄の城 マジンガーZ解体新書/赤星政尚編」など、決して「tegamisha」には並ばぬだろう本を反動のように計800円で購入する。
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2019年06月03日

6/3東京・早稲田 「丸三文庫」が一階路面店に!

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早起きして原稿をまとめ上げ、早めの昼食を摂ってから外出する。まずはテクテク歩いて荻窪に赴き「ささま書店」(2018/08/20参照)にて定点観測。店頭に詩歌関連が多く、店内文学棚に大量の長谷川四郎ゾーンが出現し、ちょっとした新鮮な風が吹いている。土曜美術社「評論集 機械的散策/関根弘」天平出版部「詩集 夜陰/北川冬彦」青英舎「楽園紀行/松山猛」日本近代文学館「死刑宣告/萩原恭次郎」を計432円で購入する。そのまま荻窪駅で電車に飛び乗り、総武線→東西線と乗り継いで早稲田に出る。地下駅から上がり、『早稲田通り』を西に進んで坂をグングン上がる。『西早稲田交差点』を過ぎ、100メートルも南側の歩道をさらに進めば、おぉ!ビル一階の「谷書房」(2018/02/28&2011/07/04参照)があったところに、「丸三文庫」(2010/05/31参照)が引っ越して来ている!九年間の二階店舗営業から、堂々一階路面店に出世したわけである。青い真新しい看板には、店名が艶やかに輝いている。広々とした店頭には、「鉄道ジャーナル」箱・少女漫画雑誌付録箱・安売文庫ワゴン・大判本ラック・単行本&漫画ラックが並ぶ。値段は100〜300円が中心である。店内は壁際にスチール棚が張り付き、中央に背中合わせのこれもスチール棚があり、広々とした日本の回遊式通路を造り出している。奥にはこれもスチール棚に囲まれた帳場があり、お手伝いの男性がパソコンとにらめっこ中である。入口左横には手塚治虫全集と児童文学が集まり、折れ曲がった部分には時代劇文庫や一般文庫が集められている。そのまま日本文学・竹中労・ミステリ・充実の映画関連(特に台本)・近代風俗・鉄道・歴史と奥に続いて行く。向かいには郵便&通信関連・講談社学術文庫・岩波文庫・ちくま文庫・新書が揃い、入口正面の棚脇には新刊の「名画座手帳」とともに、古めの奇妙な雑貨が集められている。右側通路はアメコミ箱を下に置きながら、通路棚に図録・美術作品集・アートが並び、向かいに海外文学・世界・社会・思想関連が続く。奥の帳場脇には、何枚も漫画の原画が張り出されている…などと観察していたら、帳場から「あぁっ!」という声が上がる。驚いてそちらを見ると、ついこっちも「あぁぁっ!」と声を上げてしまった。何とそこに立っていたのは、二月に閉店した「古書信天翁」(2019/01/25参照)の店主・山崎氏だったのである。聞けば閉店後の失意の日々から脱却し、他にもお仕事をしながら、ここで週三日働いているとのことであった。いやぁ、まさかまた古本屋さんでお会い出来るとは、何とめでたい!山崎氏はとても元気そうで、今は都電でここまで出勤しているとのこと。車中の読書も、面影橋駅からお店までの道のりも、そしてあれほど苦しかった古本データのパソコン入力作業も、すべてが楽しくてしょうがないと笑顔で語る。醒めてしまった愛が、一旦距離を置いたことにより、再び燃え上がったようなものだろうか。あぁ、それにしても驚いた。文春文庫「諫早菖蒲日記/野呂邦暢」創元推理文庫「文豪怪談名作選/東雅夫編」を計400円で購入する。その後はテクテクさらに西に歩いて谷へと下り、「古書現世」(2009/04/04参照)へ。新しく左側に据え付けられた催事の時は運び出される安売棚から、林書店「モデルガンの楽しみ/川野京輔・郡正史」(川野はテレビマンの推理小説作家。ひたすら本物気分を味わうためのモデルガン論が面白い!こんな本を出していたとは)を見つけて喜び、300円で購入する。向井氏から新宿支部新店の情報などをタレ込んでいただきながら、ニャオニャオ鳴きまくる店猫のコトにも挨拶し、いつものように楽しく愉快に長話する。
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2019年05月19日

5/19東京・町田 EUREKA BOOKSTORE


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「つぐみ文庫」さんからのコメントタレコミに基づき、土日営業の古本屋さんを目指し、午後に外出する。降り立った町田駅は、三十年以上前によく利用していたターミナル駅であるが、ほとんど神奈川の一部のような東京の片隅の一繁華街で、多少柄悪めに賑わっていたのを覚えている。だが今はどうだろうか!街は現代的に発展し、お洒落な洋服に身を包んだ人々で、ごった返しているではないか!まるで浦島太郎か長い懲役帰りのような気分を味わい、キョロキョロしながらそんな街に分け入って行く。お店の場所は、JR駅の北口からすぐの空中広場に出て、東側の『東急TWINS』の足元にあるスロープを下って行く。ビルとビルの間に延びる『パークアベニュー』に入り、東南へ。少しうねりながら続く化粧タイル敷きの道で、ひとつめの交差点を過ぎ、さらにズンズン進んで行くと、やがて『町田駅前通り』に合流する部分が見えて来る。その手前の北側には、奥が高くなる緩い斜面地に、古めかしい商店が長屋的に建ち並ぶ『町田仲見世商店街』。まだJR駅が『原町田』だった頃の、昭和の時代が染み付いた貴重な遺産である。小さなアーケードには入口が二つあるが、人気飲食店があるらしく、どちらも長い行列で塞がれてしまっている。だが隙間を見つけて仲見世内に踏み込み、最初の小さな十字路を西に。奥まで行き着くと、そこから北側に、お店の裏側と小さな飲み屋と二階への入口ドアが混在した、屋根のない小路地が延びている。目指すお店を見逃さぬよう慎重に進んで行くと、西側の途中に二階へのオープンな小さい入口があり、そこにノッポな白木の店名看板が出されていた。ここか。それにしても素晴らしいロケーションだ。古本屋さんがなさそうな場所にあるこの状況!全く持って素晴らしい!と喜びながら奥へ進む。目の前には、白い小さな急階段。ゴトゴト上がり切って扉を開けると、そこが小さな小さなお店であった。四畳半ほどの空間に、まずは左に、開け放たれた街の裏側が見えている窓をバックにカウンター式の帳場があり、ワイルドだが眉目秀麗なお兄さんが古本と静かに格闘している。その横の入口脇には、絵本・児童書・古書・カラーブックス・「暮しの手帖」が並ぶ棚あり。手前壁・右壁・奥壁はぐるっと棚に覆われ、古本が並べられている。この棚は最下段が面陳ラックになっている珍しいタイプである。入口右横から、幻想文学・水木しげる・セレクトコミック・日本文学・海外文学・民俗学・民芸・思想・詩集・街・建築・釣り・登山・歴史・科学・ファッション・神話・竹久夢二・写真集・美術などが並んで行く。冊数は少ないが、丁寧に選書されており、そこに意外なほど古書も混ざり込むので、なかなか見ていて飽きない。端や中央のテーブルには、古めの観光絵葉書・洋紙物・洋雑誌などが集まり、お洒落な彩りを添えている。値段も安めなものが多いので、初見から好印象を抱いてしまう。児童書棚から、学研ユアコースシリーズ「超科学推理 なぞの四次元/斎藤守弘」を購入すると、領収書に日付けも値段も但し書きも店名も住所も電話番号も、すべて手書きで渡してくれた。これから週末に町田に来ることがあったら、必ず寄ることにしよう。きっと面白い本に出会えるだろう。

お店を出た後は真っ直ぐ帰らずに、小田急線の線路を西に渡り、先日突然閉店してしまった「高原書店」(2009/05/03参照)の様子を見に行くことにする。あぁ、ビル前の看板が、半分になってしまっている。そして階段を上がったところにある扉には、黄色い紙に、素っ気ないほどの別れの挨拶が書かれていた。うぅううぅ…さらば、偉大なる古本ビル、「高原書店」よ!
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2019年05月01日

5/1東京・阿佐ヶ谷 謎の古本市

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なんだかハードな日々が続いてしまっているので、今日はゆっくり休むことにする。「ですぺら」を読み込んで、活字の上でダダイストに振り回されることにするか…。だがそこに、『阿佐ヶ谷パール商店街』に謎の古本市が出現している!との情報が入ってしまったので、軋む身体に鞭を打ち、阿佐ヶ谷駅方面に向かう。南口を出て東側の横断歩道を渡り、半円ドームの下から、モザイクタイルを踏み締め『阿佐ヶ谷パール商店街』に入り込んで行く。ずんずん南に進んで、一旦道路を横切り、さらにアーケードを進んで行くと、すぐに左側にプラ箱に入った古本や、緑の棚に並ぶ古本が見えて来た。『1DAY 1WEEK Rent Space 』という名のレンタル店舗である。それにしてもいったい何処のお店が…そう思いながら、明け透けな空間に飛び込む。足元にはビジュアル本箱・パンフ箱・古雑誌箱が置かれ、中央には文庫島がひとつ。両壁の棚には、セット本・全集・復刻本・映画・歴史・エンタメ・文学・ノンフィクション・ビジュアルムック・イラスト集・映画ビジュアル本などが並んでいる。どれどれと、試しに野末陳平のイタズラ系ノベルスを手にしてみると、値段札には「古書 ゆかり堂」と書かれていた。そうか、池ノ上の「由縁堂」(2008/09/02参照)が出しているのか。次々と気になる本を手にして行くと、札はすべて「ゆかり堂」のものだったので、どうやら単独イベントなのが判明する。そういえば奥の帳場に半眼で座るオヤジさんに見覚えがある。なんにせよ、普段古本の気配が皆無なところに古本が並んでいるのは、痛快な光景である。文庫島の端に隠れていた500円の「なめ猫 なめんなよ ポケット Part1」がかなり気になってしまうが、『絶対に必要ないだろ!』と己を説得し、創元推理文庫「スーパーアドベンチャーゲーム 城砦都市カーレ/S・ジャクソン」を購入する。市は5/4(土)まで。すぐに家に戻ってからは、日曜のイベントに出す古本の準備をゆっくり進める…店内なので、少数精鋭で行くことにするか…。
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2019年04月30日

4/30平成最後の買い物は。

雨の三鷹に流れ着くと、住宅街のある民家のガレージ…いや、ここは車庫と言うべきか。そこに高校生が男女十人ほど集まり、バーベキューをしている。「次焼きそば作ろうぜぇ」などとやっているのだが、そこに流れている音楽が、妙に格好良い。ちょっと気になり耳をそばだててみると、何とYMOの『体操』が流れているのだ。曲の正体に気付いた瞬間、鉄板から煙を立て、紙皿で肉を食らう高校生たちを二度見してしまう。みな、それほどのお洒落感はなく、テクノ感も皆無な、極普通の高校生たちに見える…むぅ、なんとシュールな!これは何だか良い物を見たぞ!と、ひとり破顔しながら駅方面へ向かう。今日は火曜日…今までだと「水中書店」(2014/01/18参照)が定休日なので、即座にスゴスゴと三鷹を離れねばならなかったのだが、今は違う。新しく出来た「りんてん舎」(2019/03/30参照)は月曜が定休日なので、火曜でも安心して古本を買いに走ることが出来るのだ。というわけでタラタラ『三鷹通り』を北上していると、いつかのコメントタレコミにあった、「点滴堂」(2013/03/27参照)階下の「福田銘茶園」に古本が並んでいるのに気付いてしまう。
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本当だ。売ってる。立ち止まり中腰になり、ガラス越しに並んでいる本を注視する。『「小さな本屋さん」どの本も200円です!』とあるが、単行本・新書・文庫本、どの本も政治経済の本ばかりである。…こ、これは興味がなさ過ぎてとても手が出ない。早く自分好みの古本を買いに行こう。そして「りんてん舎」前。雨なのに均一棚を見ている人がいる。店内にも蠢いている客がいる。左側通路の窓際棚下に、床直置き100均単行本ゾーンが生まれている。入口右横のラック前には、結束本が積み上げられしまっている。そして空いている棚は、まだちょっとあるのだな。などと色々確認し、中央通路の右側手前の文学棚に集中力を向ける。三本目の中段に、古そうな本あり。まるで石焼き芋の皮のような背だが、うっすらと文字が浮かび上がっている。アンチックな太明朝体で『で…す…ぺ…ら』…で、で、で、で、「ですぺら」だとっ!と慌てふためき抜き出すと、途端に色鮮やかな表紙が目をバシッと撃つ。うわぁ、辻潤の「ですぺら」だ!敬愛するダダイストの「ですぺら」だ!函ナシ(もしくはカバーナシ。初版でも函とカバーの二種が存在するらしい)だが、奥付を見ると大正十三年の初版だ!値段はなんと千円だ!これを買わぬ手はないんだ!などと興奮しながら帳場に持ち込む。どひゃっほう!と心の中で何遍も唱えながら、新作社「ですぺら/辻潤」を購入する。というわけで、平成最後の古本購入は、九十五年前のダダイストの著作となった。こんな昔の本がサラリと買える古本屋さんは、やはりとても素敵な商売である。
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2019年04月28日

4/28東京・西日暮里 書肆田高

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線路下の改札を抜けたなら、目の前の『道灌山通り』を北に渡り、絶壁のような切り通しのコンクリ塀を口アングリと見上げながら、西南に進む。坂を上がり切り下り始めると、信号のある交差点。そこを北西に入ると、右手マンション一階に、青い日除けを張り出し、店頭に108均文庫台や木箱を積み上げ並べる、小さな古本屋さんを発見する。文庫は一般的であるが、木箱の中には詩集関連が新旧多く詰め込まれ、この古本屋さんの特性を垣間見せている。中に進むとこじんまりとした空間で、L字型に売場通路が形成され、右奥が帳場となっており、メガネにクルクル髪の毛の青年が、良さげな古書を整理している。入口左側には本日の特価本箱が並び、今は幻想文学が多めである。壁際にミステリ&探偵小説・林静一版画・句集・歌集・詩集と並んで行く。詩集棚には、高橋睦郎の「眠りと犯しと落下と」や、北園克衛の評論集「黄色い楕円」などがしれっと並んでおり、一筋縄ではいかぬ景色が魂を震わせる。その向かいにはショウケースと文庫棚があり、萩原朔太郎「猫町」や大正時代のイナガキタルホ本に涎を垂らしながら、角川文庫の横溝正史・講談社学術文庫に骨休めする。奥の棚には詩集が続き、さらに日本近代文学の佐藤春夫・谷崎潤一郎・夏目漱石・芥川龍之介・横光利一オリジナル本を渋く揃えて行く。帳場横の棚には文藝雑誌・文学評論・海外詩集・セレクト青年漫画や劇画が収まる。入口右横のゾーンには。海外幻想文学や海外文学が集められている。茶色い古書の多い…と言うか、そちらがスタンダードないぶし銀のお店である。しかも詩歌句に強く、好きを突き詰め過ぎて、図らずもかなり尖っているところが何とも好ましい。値段は普通。これで東京には、若手詩歌強化古本屋四天王が出揃ったことになるのではないか(後の三店は、三鷹の「水中書店」(2014/01/18参照)「りんてん舎」(2019/03/30参照)それに早稲田の「古書ソオダ水」(2018/01/28参照)である)!詩獣、歌獣、句獣は、心して駆け付けるべし!サイマル出版会「めりけんポルノ/小鷹信光」を購入すると、帳場奥棚に並んでい単行本「古本屋ツアー・イン・ジャパン」を指差され、すでに正体が露見していたことを知る。まだまだ欲しい本があるので、また来ます!
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4/28 第21回不忍ブックストリート一箱古本市

今年も光栄にも南陀楼綾繁氏から「第21回一箱古本市」のプレゼンターを仰せつかったので、力不足ながらも意気揚々と根津方面を目指して家を出る。今年の一箱は、「古書ほうろう」(2019/02/22参照)が池之端に移転したことや、少し市をコンパクトにしたため、根津〜谷中〜池之端が主戦場となっている。なので御徒町から一箱に初アプローチ!昭和な高架下駅舎の北口を出て賑わいの街路へ。日射しは暖かいが、風はちょっとひんやりしている。風で波立つ不忍池の立ち枯れた蓮の林を眺め、池之端方面へ歩を進める。旧岩崎邸の広大な敷地を囲む煉瓦塀を視界に掠め、テクテク進んで新店舗の「古書ほうろう」着。厳めしい裏門的な東大の池之端門と向かい合い、とても劇的なロケーションである。右のガラス戸内には、結束された本が積み上がり、まだ本日限定のプレオープン中であることを伝えている。左側の奥深クラシカルな店舗には、すでに本棚も立て込み、本もしっかりと並び、すっかり「新生古書ほうろう」と言った趣きであるが、正式なツアーは、後日ちゃんとオープンした時に行うことを決める。店前には二箱が並び、「古書ますく堂」は夏葉社新刊の「漱石全集を買った日」を基盤に、本に登場する本を集めて宇宙を形成している(何と「ますく堂」は、後にこの日の全体売り上げ二位を記録するのだ!)。隣りの「古本Plava Stablo」は手作りの旅先国別豆本が何とも可愛らしい。続いて「タナカホンヤ」に向かう途中、仙人のような助っ人さんに誘導され、面食らう。小さなお寺や神社が並ぶ『忍小通り』を進み、「タナカホンヤ」の三箱を覗く。ギャラリーで開催中の展示が無闇に強烈で、何故か孔雀の羽を模したソファに座らされ、あまつさえ金色の観音像を持たされ、写真を撮られてしまう(不忍ブックストリートtwitter参照)。さらに『不忍通り』を渡って静かな住宅街に入り込み、地図を良く見ながら複雑な小道をたどって進む。『HOTEL GRAPHY NEZU』では、表に出ていた「むゆう舎」から、本日初めて古本を買う。イプシロン社「復刻 海軍割烹術参考書」。う〜む、みんなとても美味しそうで、ついついレシピを再現してみたくなる未知の一冊である。続いての『ハウスサポート八號店』では、本を並べるバスケットも販売している「まにまに文庫」や、春陽文庫などを並べホラーよりちょっとミステリー寄りな「ちのり文庫」が大いに気になってしまう。お気に入りの本を持ち寄り、泣く泣く別れを惜しみながら販売している「トリとニワトリ」の押し売り朗読が、愛が溢れ過ぎていて素敵である。『アイソメ』では靴を脱いで上がり、四箱を鑑賞。いつも「みちくさ市」出店時に豆入りカレーパンを差し入れてくれる「はれとくもり」で、広論社「悪魔祈祷書/夢野久作」を購入する。次の「ひるねこBOOKS」では(「ひるねこ」さんの店内には、大混雑でとても入り込めない状況!)岩波書店的文学の並びを見せる「コローのアトリエ」に感心し、「ドジブックス」さんに挨拶し、強くなり始めた日射しに焦って日焼け止めを塗る「文庫善哉」から中央公論社「文学映画論/野間宏」を購入する。さらに『へび道』をたどり、『特養老人ホーム谷中』で塩山芳明氏の文庫&新書「嫌記箱」から光文社新書「松竹と東宝/中川右介」を購入。塩山氏、売り上げが好調なのか満面のえびす顔である。隣りに並ぶ「M&M書店」の店番中のモンガさんには、またお店に値切り買いに行くことを非情にも約束する。顔なじみの「ママ猫の古本や」では文春新書「日本プラモデル六〇年史/小林昇」を購入。ちょっと根津方面に戻り、『往来堂書店』前で二箱を見学。「古書アルマジロ」はなかなかマニアックな本を並べており、景色良し。最後に団子坂をヒイハア上り、『森鴎外記念館』に遠回りの静かな裏口から入り込み、「やまね洞」の地味な歴史本並びに親しみを覚えつつ、一箱最強の「とみきち屋」さんでちくま学芸文庫「武満徹対談選/小沼純一編」を購入して、任務を果たす。私の一位は、面白い本と出会わせてくれた「むゆう舎」さん。二位が岩波的文学一辺倒で溢れ出る文学知識が止まらない「コローのアトリエ」さん。三位が売れるのか?と心配になるほどの地味歴史本の「やまね洞」さんであった。あぁ、楽しかった。そしてこの後、午後三時から開店の「書肆田高」さんに出向いたり、重役出勤の岡崎武志氏と合流し、「古書ほうろう」に改めて挨拶に向かったりしたのであった。「書肆田高」については、別記事をご参照あれ!
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本日の古ツア賞受賞を決めた一冊。ちゃんと現代語訳されているので読みやすいのだ。
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2019年04月05日

4/5東京・国分寺 早春書店


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午前中の仕事をようやっと終え、昼過ぎに家を飛び出す。中央線で西に向かい、目的駅の北口に出ると、左右に離れたビル街の間に、青空と赤白の電波塔とクレーンと、まだ何も建っていない広い建築現場が眼前に広がる。階段を下り、『駅前通り』を北へ進む。『本町二丁目交差点』を通過し、すぐの『本町二丁目北交差点』で東へ向かう。しばらく歩いて一本目の脇道を北へ上がると、開店して二週間弱のお店が見えて来た…ようやく来られたぞ。「七七舎」(2016/02/06参照)が隣り店舗をぶち抜き拡張するため、役目を終えた「2号店」(2016/09/12参照)を、居抜きで古本屋さんを受け継ぎ経営してくれる人を募集していたのだが、わりとスパッと手を挙げる人が現れ、開店したお店である。代々受け継がれてきた『古書買入』の看板と、その下の本をモチーフにしたロゴマーク入り立看板を眺めてから、店頭の百均コミック・文庫・単行本を見て行く。店内は細長く、両壁際に高い本棚、中央に平台付きのラックと本棚、左奥に帳場と、居抜き物件なので当然以前と変わらぬ佇まいである。その帳場で本を寡黙に整理しているのが、この人通りの少ない場所に、新たな古本屋を開店させた、勇気ある青年である。秘かにその勇気を称え、感謝しながら、店内を経巡って行く。左壁棚には、映画・演劇・美術・建築・デザイン・音楽・実用・エッセイ・批評・サブカルが並び、帳場前の足元には小さなコミック文庫の棚が置かれている。批評評論関連がドバッと幅を利かせ、壮観である。しかも名著と言うよりは、現在進行形な本が中心なので、時代の先端を走る棚造りとなっている。向かいにはセレクトコミックが集まり、台の上には新刊が並んでいる。反対側には雑誌と海外文学文庫が収まる。右壁棚は、まずはオススメ本と新刊本が飾られ、図録・絵本・日本文学文庫・出版社別文庫・新書・文学・幻想文学・本関連・オカルト・民俗学・出版関連・心理学・哲学・宗教と帳場横まで続いて行く。不思議な清新さを秘めたお店である。人文に造詣が深いが、かと言って決して硬さ一辺倒というわけではなく、教養を背骨にしながらも、硬さから柔らかさへ積極的にアプローチしている感じが、取っ付き難さを上手く排除しており、何だか爽やかなのである。値段は普通で、良い珍しい本にはプレミア適価が施されている。創元推理文庫「千の脚を持つ男/スタージョン他」を購入すると、店主にあえなく正体を見破られてしまう。そこからしばらくお店の未来について、熱く面白く語り合う。この場所の、短所も長所も分かった上で、先の展開を考え進めている前のめりな感じが、とても若々しく清々しい。これからも振り切りながらも、時々は手探りもしつつ、面白いここにしかないお店造りを進めて行っていただきたい。開店おめでとうございます!

その後は「七七舎」に向かい、今日はツアーするつもりはないので予備偵察…と思っていたら、奥の部屋の古書群や、紙物に大いに気を取られてしまう。するとそこに、もはやヨガ行者の如き風貌の店主・北村氏が現れ、挨拶を交わし色々とお話しする。そしてある計画をひとつ進めることを約束する。平成四年の京都府古書籍商業協同組合「京都古書店案内圖」を500円で購入する。さて、帰ろうかな、それともちょっと離れているが、「古本 雲波」(2017/02/03参照)も見て行こうかな?と一瞬迷うが、せっかくなのでやはり「雲波」にも足を向ける。『国分寺街道』の坂を上がると、おぉ、やってる!久々の店舗との再会に店頭棚を見ながら喜びに浸っていると、ドアがガラリと開き「何やってんの?何しに来たの?中入りなよ。本なんかいいからさ。珈琲飲もう」と胴間声を響かせながら笑顔で話しかけて来た男性…首都圏で古本屋さんの内装を多く手掛ける『古本屋界の安藤忠雄』中村敦夫氏であった。すぐに店内に引き込まれ、奥さま店主が出してくれた珈琲を啜りながら、紹介されて色々とお話しする。様々な古本屋造作のお話を拝聴しつつ、新しいお店の情報も手に入れる。氏が先にお店を後にして、ようやく店内の本を見始める。国土社「電話がなっている/川島誠作 長谷川集平絵」を400円で購入したところ、奥さまがニコリとして「古いおかしな雑誌に載っている、珍しい片岡義男の記事見る?」と、ここから面白い本の紹介がたくさん始まる。新渡戸稲造譯の「ファウスト」、山田耕筰のド高値音楽本などを見せてもらい盛り上がっていると、何とちょっとだけバックヤードを見せてくれると言う。喜んで帳場奥に入って行くと、整然とした映画パンフの棚や、馴染みの貸本屋さんから貰って来たちばてつや漫画の山や大量の少女漫画棚や、昔趣味だった熱過ぎるF1コレクションなどが渦巻いていた。さらに「忍者武芸帖」のアケミになりたかった話や、石井聰亙や町田町蔵やプロレス話に打ち興じながら帳場に戻ると、帳場背後の棚の最下段に、とても気になる本を発見してしまう。うぉ!朝日ソノラマの金田一耕助シリーズだ。カバーアリとカバーナシが一冊ずつ。早速見せてもらい、さらに早々に「これ、売っていただけませんか?」と申し出る。するとあっさり「一冊千円でいいわよ」と素晴らしき交渉が成立したので、どひゃっほう!と購入させていただく。あ、あ、あ、ありがとうございます!朝日ソノラマ少年少女名探偵金田一耕助シリーズ「女王蜂/横溝正史作 中島河太郎文」「洞窟の魔女/横溝正史作 山村正夫文」(カバーナシ)を計2000円で購入する。今日はたくさんの古本屋さんとお話しした一日であった。そして「七七舎」を出たとき「雲波」に寄ってくかと思い、さらに店頭で中村氏に発見され声をかけられ、紹介していただいた奥さんと仲良くお話ししまくることにならなかったら、この奇跡の二冊を手にすることは、なかったはずである。国分寺に呼び寄せてくれた「早春書店」と自分の足と素晴らしき古本系人々との出会いとつながりに、大感謝!
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うむ、これを見ながら、すっぽろ飯を食べられるほど嬉しいぞ!
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2019年03月30日

3/30思い切って「りんてん舎」を見に行く。

寒さがぶり返している中、西荻窪と久我山の間に流れ着く。すでに疲れ果てているのだが、そう言えば今日は三鷹に新しい古本屋さんが開店しているはず…ええぃ、思い切って見に行くか!と足腰に鞭を入れ、西荻窪もわりと遠いので、いっそのこと『井の頭通り』を遡上して、吉祥寺までテクテク出ることにする…当然のことながら、さ、さらに疲弊してしまった。そして吉祥寺のこの恐るべき混雑はなんなんだ!と慌てて総武線内に避難して、どうにか三鷹駅着。北口に出て、ロータリー左側を断ずる横断歩道を渡り、『中央大通り』を北へ進む。すぐに大きく立派な『武蔵野警察署』前に出るので、西側に横断歩道を渡り、合流した『三鷹通り』をまたもや北へ。『井の頭通り』を越え、次の信号が見えて来ると、小さな白いビルの一階に、最新の古本屋さんが出現していた。
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おぉ、賑わっている。通りかかる人の注目を、一心に浴びている!店頭に立つ道路標識が、まるでお店の飾りのようだ!などと感じつつ、入口横にある単行本&文庫百均棚をまずは眺める。開店祝に奮発した古本が散見され、店内の棚の良質さを想像させる景色を見せてくれている。二段のステップを上がり中に進むと、奥に細長く展開する空間で、天井まで伸びる真新しい薄闇色の什器が、建材的匂いを発しながら、三本の通路を造り出している。一番左は、エンタメ系新刊・ガイド・セレクトコミック・エッセイ・映画・美術が並ぶが、奥の棚はまだがら空きである。中央通路では、日本文学文庫と海外文学文庫、それに本&古本関連と日本文学・海外文学が質高く睨み合っている。特に本関連と日本文学は殊更上質。棚のキモになる本が、そこかしこに姿を見せている上に、『こんな本、見たことないぞ』と、ついつい手を伸ばす回数が多くなってしまう細やかさが素敵である。右端通路には、児童文学・絵本・雑誌・詩集・歌集・句集・食・民俗学・音楽・ちくま学芸文庫・哲学・思想が集まる。詩歌句と音楽の、今後の充実を予感させる棚造りが、この嗜好が細分化した世の中に闘いを挑んでいるようで、何とも頼もしい。だが、やはり棚にまだまだ空きが多く、その全貌は見えて来ない。つまりは、まだこれからのお店なのである。と言うわけで、正式なツアーは、棚にビッチリと本が収まった後日に決行することにしよう。龜鳴屋「マンドレークの声 杉みき子のミステリ世界/杉みき子 戸川安宣編」を開店祝いに購入する。…こんな面白そうな本が出てたなんて、まったく知らなかったなぁ。ミステリファンで児童文学作家の作品を、戸川氏が作品にミステリ風味を感じつつ編んだ、二〇一六年出版の創作集である(表紙画はなんと高野文子!)。しかも帰りの車中で最初の『わらぐつのなかの神様』を読み始めると、この話知ってる!と背中に既読電流火花がビビビと走る!そして読めば読むほど、湧き上がる記憶と話が、ガキガキと噛み合って行く!恐らく子ども時代に読み、脳内の物語の地層の中に、沈殿させておいたものなのだろう。…あぁ、初っ端にこんな体験をさせてくれるなんて、早くも好きになっちまいそうだぞ、「りんてん舎」!
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2019年03月23日

3/23九時間の古本売り。

早朝午前七時二十分。のんびり朝ご飯を食べていると、北原尚彦氏をピックアップした「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏から連絡が入り、すでにこちらに向かっていると言う。本日の『本のフェス』の会場である市ヶ谷まで、盛林堂号に同乗させていただくことになっているのだが、予定よりおよそ二十分早いではないか。慌ててご飯をかき込み、身支度を整え、重い木箱を二つもって表に飛び出し、道路脇でゼエゼエ待機する。するとほどなくして盛林堂号が到着。お二人と挨拶を交わし、荷物を積み込み、車は順調に走り出す。午前八時半前に会場である『DNP市谷左内町ビル』は、奇妙な静けさと起伏のある官公庁的空間に囲まれ、すっくと空に向かって建ち上がっていた…なんだかトリフォ―の映画『華氏451』にでも出て来そうな、管理社会デストピアな未来的雰囲気だ。
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巨大な車寄せの直ぐ横が、ガラス張りのロビーで、そこがメイン会場となっている。我々が出店する『本の雑誌商店街』は、そこから左奥に入った広い空間である。せっせと古本を運び込み、領地である長テーブルに古本をセッティング…と思いきや、早速北原氏とともに、「盛林堂書房」と古本神・森英俊氏ゾーンのチェックに勤しんでしまう…あぁ、やはりスゴい本がそこかしこに紛れ込み、脳が白熱して蕩けるような安値で並んでいるではないか…よし、アレとアレを買うぞ!と心に決めて、ようやく古本を並べ始める。木箱を二つ使い、うまく立体的に並べて行くと、隣りの北原氏に「あ〜、何かプロっぽい」と冷やかされる。
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セッティングをどうにか終えて、後は開始時間を迎えるまで、ソワソワと過ごす。そして午前十時、開場の時間になると、たちまち盛林堂常連客チームが雪崩れ込み、あっという間にそこだけ黒山の人だかりになる。まぁ当分こっちにお客は来ないだろうと高を括り、その隙にこちらも目を付けていた古本の確保に走る。盛林堂からはぷろふいる社「血液型殺人事件/甲賀三郎」(函ナシで表紙はビニールコーティング)を2500円で。森氏のところからは、伝説のミステリ同人誌、鬼クラブ「探偵小説研究 鬼 No.9 創作特集」(これを最初小野氏が見た時、「「鬼」がある古本市って、どんな古本市だよ…」と思わず呟いていた)を、エイヤッと4000円で購入してしまう。
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まだ本を一冊も売っていないのに、い、いきなり派手に散財してしまった…だがこれで心はひとまず落ち着いた。後は古本を売ることだけに、九時間集中すればいい!というわけでその後は、このまま一冊も古本が売れないんじゃ…と心配になったり、隣りの荻原魚雷氏と釣りや街道の話をしたり、買ったばかりの「血液型殺人事件」を読み耽ったり、「鬼」が手に入ったなんて…とニヤニヤしたり、売り上げが伸びないので「「鬼」なんて買うんじゃなかった。このままじゃ足が出てしまう」と嘆いたりしながら、百均文庫も合わせ、どうにかおよそ三十冊強の古本を売ることに成功し、ホッとする。足を運んでいただいたみなさま、本を買っていただいたみなさま、お話ししたみなさま、本の雑誌社のみなさま、本当にありがとうございました。私と北原氏は本日限りの出店ですが、明日もこのフェスは開かれるので、本が大好きでお時間ある方は、ぜひとも市ヶ谷に足を運んでみてください。いや、それにしも九時間は長い…座っているだけなのに、とても疲れてしまった。
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2019年03月20日

3/20東京・神保町 虔十書林

朝からウンウン唸って仕事を片付け、午後に久々の神保町パトロール+移転した「虔十書林」(2010/01/27参照)を見に行くことにする。いつの間にかホーム屋根上の通路が開通していた御茶ノ水駅からアプローチし、午後の人出の多さに目を回しながら『明大通り』を南に下り、まずは『富士見坂』に入り込んで「虔十書林」旧店舗の様子を窺う。店舗部分はスッキリすっかりもぬけの殻だが、壁にはまだトレードマークの猫(やまだ紫の作)の看板が残されており、そこに移転先が英語と日本語で記されていた。再びいつものルートに戻り、「三茶書房」(2010/10/26参照)で岩波文庫「鹽原多助一代記/三遊亭圓朝」を300円で購入。続いて裏路地の「山吹書房」(2018/09/28参照)ではアサヒ芸能出版「みなごろしの歌《凶銃ワルサーP38》/大藪春彦」を200円で見つけてニタリニタリ。

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『すずらん通り』に入り、西の『白山通り』からおよそ五十メートルほど東にある「虔十」の新店舗に近付いて行く。ここは、以前は地方出版物を扱っていた「書肆アクセス」があり、その後に陶芸や骨董書専門店の「風月洞書店」(2013/03/25参照)が入っていた所である。軒下&袖看板には、すでにお馴染みの猫がお目見えしている。店頭には200均文庫箱や映画パンフプラ箱、ムック棚が置かれているが、旧店舗よりこじんまりとし、混沌さも薄まっている。店内は天井が高く、奥深く細長い。両側の高い壁棚には、右に「不思議の国のアリス」関連・幻想文学・稲垣足穂・高橋睦郎・澁澤龍彦・寺山修司・種村季弘・中井英夫・唐十郎・アングラ・海外幻想文学&詩集・辰野隆などが仰々しく続き、書肆ユリイカなどの稀少詩集を収めたショウケースが中ほどに現れる。それに続き、美術・詩集・天沢退二郎・宮澤賢治が並んで行く。宮澤棚は、童話や評論からビジュアル関連まで集め、なかなか良い景色である。左側には、特撮・武器・兵器・趣味・SF&特撮雑誌・美術と並び、奥半分には、映画関連と映画パンフが棚とショウケース織り交ぜ集められている。フロア中央には映画パンフ・小冊子・ミニカード・ロビーカード・絵葉書あり。旧店舗と変わらず、映画と幻想文学と宮澤賢治に強いお店である。顕在的な蔵書量は減ったようだが、その分とても見やすくなっている。店頭で文を掴み、奥の帳場まで持って行く…テクテクテクテクテク…という感じの長さである。引っ越し、おつかれさまでした。ちくま文庫「反芸術アンパン/赤瀬川原平」を購入する。
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2019年03月09日

3/9東京・西荻窪 benchtime books一階部分

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午後二時前に『善福寺公園』辺りに流れ着いたのを幸いとして、テクテク歩いて「モンガ堂」さんよりコメントタレコミのあったお店に、ブラブラと向かってみる。場所は西荻窪駅北口から『西荻北銀座』を北にグングン進み、歩道亜アーケードを抜け、坂を下り、善福寺川を渡り、再び坂を上がって、「中野書店」(2015/03/14参照)前も通過し、『青梅街道』手前のセブンイレブンのある交差点を西へ。しばらく歩くと北側歩道沿いの店舗兼住宅長屋の右側に、青い日除けテントを丸く張り出したお店が見えて来る。本当だ。これは間違いなく古本屋さんだ。店頭には100〜300円の安売本が上品に出され、小さな黒板に店名や営業時間や定休日が書かれている。中に入ると、窓から飛び込んだ光を柔らかにたたえる、小さな正方形の空間である。奥には薄暗いが同サイズの低めの中二階があり、木の踏み台に飾られた絵本や、奥の棚の上にドガッと積まれた古本や、シックなショウケースに収まった正宗白鳥や太宰治などが見え、そのケースの向こうに帳場があり、ジブリ映画『耳をすませば』のバイオリン職人を目指す男の子が大きくなったような青年が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。什器はすべてシンプルなアンティーク調に統一されている。入口付近には、木版ブックカバーやオリジナル木版詩集などが飾られている。左壁際には、セレクト文庫と児童文学や絵本が並び、中央の机には珈琲・パリ・食・博文館ポケット日記(激カワ!)などがディスプレイ。右壁際には、海外文学・「暮らしの手帖」関連・植草甚一・美術・民芸・工芸・茂田井武・洋写真集が集まる。ここには額縁を改造したケースが置かれ、そこに本がすっぽり収まる洒落た光景が展開している。そして奥の階段横に置かれた骨董関連のミニ棚を見て、奥のショウケースに熱い視線を向けていると、奥に座る青年が「まだ開けて一週間なんですよ。二階も本当はちゃんとしたかったんですが、一階の準備を手間ひまかけてやって、さらにブックカバーの制作や詩集の製本をしていたら、とても間に合わなくて…」というわけで、まだプレオープン状態らしいのだ。なので蔵書量はまだそれほど多くないが、棚造りにはしっかりとしたビジョンがあり、しかも深めなのが充分伝わって来る。古書にもかまけているのが、大いに好ましい。二階は四月には完成させるとのことなので、その時が今から楽しみである。本を選んで中二階に上がると、帳場と言うよりはほとんど職人の作業場である。むぅ、壁棚には古い文庫がたくさん並んでいるじゃないか。ますます二階の出来上がりに期待してしまう。世界文化社「山椒魚戦争/カレル・チャペック」を購入する。

一旦家に戻った後、再び忙しなく外出し、再び西荻窪へ。よく「みちくさ市」などでご一緒した、一箱系豆本作家の「暢気文庫」さんが、故郷に戻ることになったので、そのお別れパーティーが開かれているのである。今までお世話になりましたと挨拶し、ビールをグビグビ。物凄くたくさんの人が別れを惜しんでいる中、何故か坂崎重盛氏が飛び入り参加しており、面食らう。そして芳名帳への記名が「手抜きだ!」とお叱りを受けてしまったので、苦し紛れに猫の絵を描き足すと、打って変わって「うまいじゃないか!まるで生きているようだ!」と頬が赤くなるほど大絶賛される。すると突然「そのペンを貸せ!俺もそこに猫の絵を描く!」と言うことになり、写真のようなものが出来上がってしまいました。
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最下部の絵が坂崎氏の猫の絵である。

いやぁ、楽しいひと時でした。暢気さん、どうか、西へ行ってもお元気で。「暢気文庫」さんと言えば、思い出すのはこの豆本。「兵隊の死/渡辺温」(平成24年4月刊)である。18W×6Lで全8ページ。掌中に収まる渡辺温とは、なんとロマンチックな代物であろうか。
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2019年03月08日

3/7古本屋ツアー・イン・松坂健氏書庫!

昨日夜のことである。この三月に、ミステリ評論家の新保博久教授が、無事にすべての本とダンボール箱を東京から京都に運び出すことに成功し、一年以上の長きに渡り苦闘した、十万冊との闘いに終止符を打った(だが新たに、京都にて十万冊との闘いが始まるのだが…)。それを祝し、運び出しに貢献した「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と、“盛林堂・イレギュラーズ”たる私を招待し、一席設けたいとの申し出があったのである。その場所が大変奮っている。教授が上京する度に宿泊している、ミステリ研究家・松坂健氏の事務所兼書庫兼稽古場(演劇の)で、中華のケータリングをつまみつつ酒杯を傾けようとのことなのである。「当然書庫、見たいでしょう?」と教授が大いに水を向けてくれたので、酒宴に連なりつつツアーもお願いしてしまおうという魂胆で、小野氏とともに東京の東端辺りへワクワクしながら向かう。たどりついた巨大集合住宅の扉を開けると、出迎えてくれたのは松坂氏ではなく、笑顔で寛ぎジャージ姿の新保教授。そして我々を出迎えるように、『ようこそ古強様ご一行』と書かれた紙看板が置かれていた。
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玄関には早速本棚やドラえもんの渦やレアな創元推理文庫が並ぶ棚が!と興奮しつつ、まずは大きなリビングルームに足を運ぶ。主人の松坂氏が、これまたにこやかに迎えてくれたが、やはりここの壁一面も美しく本棚に覆われているのであった。整頓された空間が広くしっかりと確保されているので、いわゆる“魔窟感”などはゼロである。ここには、映画・演劇関連・ミステリリファレンス・みすず出版本・DVD・自著などが、和書&洋書含め収まっている。まぁまずは古本より、酒と中華である。教授の話と古本の話と、途中参加の松坂氏奥さまの演劇話などを肴に、楽しくビールとワインに酔い痴れる。古本関係の話で何かある度に、教授が席を立ち、それに関する本を書庫から持ち出して来るのが面白い。すっかりこの松坂書庫を、我が物のように知悉しているのだ。もうすでに仕事用のパソコンも常備されてしまっているのが恐ろしい。今にここは、漫画「魔太郎がくる」の“やどかり一家”みたいに、教授が乗っ取ってしまうのではないだろうか…。そして一時間ほど経ち、全員すっかり酔っ払ったところで、教授がえびす顔で「そろそろ書庫がみたいんじゃないですか?」と嬉しいささやき。では!と腰を上げると、松坂氏と小野氏も腰を上げ、書庫前に全員集合する。
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すると「ハイ、これ着けてね」とヘッドランプを手渡される。どうやら明かりが点かぬので、これを頭に着けて本を探すのである。本を見るのにヘッドランプ…ミステリ書庫あるあるであろうか。
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中は七本のしっかりしたスチール製の統一棚が立ち、まるで図書館のようである。通路ごとに、ペーパーバック・文庫・単行本・作家ごと・評論・研究・周辺と精緻に分類され、研究者に相応しいミステリの壮大な地層を見せている。松坂氏が先に立ち、まさにツアーよろしく、棚の有り様と意義とピンポイントの本をレクチャーしてくれる。う〜む、スゴい。これはスゴい。だがその翻訳系の深さとマニアックさに私の知識が追いつかず、何がスゴいのかよく分からぬ場面が頻出するのだが、小野氏は眼を輝かせ、自由奔放に楽しんでいる。「これ、珍しいよ」「これ、キキメだよ」「これ、帯あったんだ」「あっ、異装版」。その後に都筑道夫棚や乱歩棚などで、ようやく素直に興奮。ホームズ棚では、日本に三セットしかないと噂の「THE BAKER STREET JOURNAL」(結婚当時、新婚旅行代を犠牲にして購入したそうである…)も見せていただき、目が蕩けそうになる。
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さらにリビングに戻り、全集&雑誌書庫に入ると、「新青年」棚の列にちんまりと収まっていた小冊子が気になったのか、小野氏が引き出してみると、なんと新潮社新作探偵小説全集の付録「探偵クラブ」であった。ぬぉぉぉ!酔いと興奮の度合いを高めると「それ、揃い持ってるよ」と再び奥の書庫に引き返した松坂氏が、すぐに姿を現わし、小冊子の束を手渡してくれた。小野氏がすかさず全冊を床に並べ、揃いかどうか確認する。すると十冊ちゃんとあるのだが、番号が飛んでいる部分がある。「足りないのか?欠番なのか?」と議論が始まってしまったので、奥さまと話し込んでいた教授を呼び、裁定してもらうことにする。すると、「なんですかぁ」と現れた教授は、床に並んだ「探偵クラブ」の上を優しく踏み付け、話に参加し始めてしまう。「うわぁ、教授、踏んでる踏んでる踏んでる踏んでる!」…すでに全員かなり酔っ払っています。幸い本に被害はなく、恐らく欠番だろうということで決着する。
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すると、「そうだ、こんなのもあるんだよ」と松坂氏が三たび書庫に舞い戻り、一冊の緑色の本を手渡してくれた。ギョギョエ〜ッ!奇蹟の「探偵趣味」合本である!
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なんだ、これ!平凡社江戸川乱歩全集」の稀少過ぎる付録を、幻の「犯罪図鑑」まで合わせ、一冊に美しく製本されているのだ!状態が新品同様なのが恐ろしい!
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竹中英太郎の妖美な表紙絵に見惚れながら、後見返しを見てみると、『古書一般 協立書店 浅草東映側』の古書店ラベルが貼られていた(1976年の「古書店地図帖」を見ると、浅草六区の先、国際劇場向かい辺りにあったお店であることが確認できる。得意分野は、趣味の本・風俗雑誌・新刊書。松坂氏の日本の古いミステリは、ほぼここで買い求めたそうである)。このお店は以前から松坂氏に「良い本安く買えたんだよ。「新青年」とか買い集めたよ」と自慢されていたお店である…ほ、本当だったんだ…。「あの、ちなみにこれ幾らくらいで買ったんですか?」「う〜ん、確か千円くらいだったかな」…ギャォ〜ゥ、羨まし過ぎる!妬ましいほど羨まし過ぎる!などと大騒ぎ。
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最後には玄関の棚にこまごまと収まった、日本ミステリ研究の源流とも言えそうな、様々な大量の同人誌を見せていただき、もはや出来ることは唸るばかりになってしまった。恐ろしい、恐ろしいところだ。ここにあるのは間違いなく、全国五指に入るミステリ蔵書であろう。何たって、全ての本にしっかりとアクセス出来、直ぐに探している本が出て来るのが素晴らしい。一通り見終わったところで、再び酒宴に突入する。そしてその場で、せっかくツアーに来たので、何か手に入れたいものだと野心を膨らませ、恥を忍んでツアーの恥はかき捨てだ!と、ダブりの古本で良いから何か安値で譲っていただけまいかと、図々しく松坂氏に申し出る。その瞬間、何故か全員大爆笑。いや、いいんだこれで。これが私のやり方なのだ。だが松坂氏は徐に立ち上がり、悩みながら色々と探索してくれた。そして「これを差し上げましょう」と二冊の雑誌を手渡してくれた。
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久保書店「世界的ハードボイルド・ミステリィ雑誌 マンハント」1961年11月号12月号である。あれ?知ってる中綴じA5判じゃない。平綴じでB5判じゃないか。こんなサイズの時代もあったのか、と驚く。ありがとうございます!などとやっていたら、気付いたらホストの教授は全集部屋の床で、寝袋に包まり高いびきなのであった。
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2019年02月26日

2/26東京・西調布 喫茶 侘介

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本日は西調布駅北側の住宅街に流れ着くと、何の変哲もない運動場と遊具のある公園が、『鬼太郎公園』と名付けられているのを知る。公園自体に鬼太郎らしさは一切ないが、看板に水木しげるが書いた公園名とともに(大きく“水木しげる”のサインも)、鬼太郎が描かれている。少しだけ感動しながら駅に向かい、以前訪れたことのある古本も扱うリサイクルショップ「不思議屋」(2018/10/18参照)前を通りかかるが、残念ながらシャッターが下りたままである。お休みであろうか…せっかく安い古本を買う気満々でいたのに…。仕方なくそのまま駅方面に向かい、白けたように小綺麗な北口駅前の西側に隠れている、鄙びたお店が建て込む『西調布一番街』に進入する。だが、頼みの綱の「foklora」(2018/03/09参照)も、呆気なく定休日であった…くぅぅ、このままスゴスゴと帰るしかないのか…。気分を沈ませながら踵を返すと、その瞬間、奇跡のように古本が目に飛び込んで来た!うひょう!こんなことが起こるとは、俺は何たる幸せ者だ!と、古本に飢えていたので大げさに感激し、その感激の大きさの割には少なめの古本カゴに走り寄る。激シブな、スナックのような喫茶店の前に出された、古本カゴである。良く見ると、そのほとんどが「幽々白書」と「月刊ムー」なのであるが、傾向の掴めぬ単行本も十冊弱あり、カゴの縁には小さく『一さつ50円』と貼り出されている。それほど悩まずに、中央公論社「怪奇な話/吉田健一」せりか書房「路上のエスノグラフィ ちんどん屋からグラフィティまで/吉見俊哉・北田曉大編」を選び、木戸をガラリと引き開けると、優しい魔女のようなおばあさまが笑顔を出し、「あら、買ってくれるの。ありがとうございます。袋は?いいの?」と応対してくれた。二冊を計100円で購入する。とにかく古本に出会え、とにかく古本が買えたのは、とても目出度いことだ。買ったばかりの「路上のエスノグラフィ」を読みながら、京王線とすぎ丸を乗り継ぎ阿佐ヶ谷に帰り着く。そして「ネオ書房」(2019/01/06参照)に立ち寄り、箱ナシの小学館入門百科シリーズ10「まんが入門/赤塚不二夫監修」を300円で購入する。
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2019年02月12日

2/12東京・西国分寺 むさし結いの家

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本日は西国分寺南西の武蔵台という、お初の土地に流れ着く。悲しいことに西国分寺は、古本屋が絶えて久しい、絶望的に乾いた土地であるが、何の因果か偶然にも、小さな古本オアシスを発見してしまったのである!場所は駅から、武蔵野線西側を南に下り、国分寺崖線の高低差を感じながら、『武蔵国分尼寺跡』や、何だか古墳のような『黒鐘公園』通り過ぎた『東八道路』手前の北の裏路地に、そのワゴンは突然現れる。ビル一階の小さな福祉センターなのだが、そのセンター頭に、古着と共に文庫の古本ワゴンが出されているのだ。オアシスと言ってしまったが、雨上がりの水たまりのようなものである。だが、だが!この駅から半径一キロ以内に古本の姿など皆無だった西国分寺に、ひっそりと古本が並んでいたことが、とにもかくにも嬉しいのだ。俺は、水たまりの水を、喜んで啜るぞっ!と近付き、ワゴンを注視する。…赤川次郎…西村京太郎…赤川次郎…斉藤栄…草野唯雄…島田一男…赤川次郎…あぁっ!文庫は皆背が陽に焼け、砂にざらつき、ひしゃげているものもある。だが、何か買わねば、啜らねば…と、創元SF文庫「宇宙消失/グレッグ・イーガン」を選ぶことにする。おっ、入口左側の棚には単行本が……ふぅ、全部「ゴーマニズム宣言」か…。中に入ると、テーブルがたくさん並び、たくさんの人が着席し、活気のある室内である。一斉にみんながこちらを注視する。すると奥の事務所スペースから、ヒゲ&スキンヘッドの男性が「ちょっとお待ち下さい!」と飛び出して来て、本を受け取り布巾で拭きつつ「50円です」と教えてくれた。国分寺崖線の裾野で、古本が偶然に買えるなんて、思ってもみなかった。

坂を上がって中央線で阿佐ヶ谷に戻り、「ネオ書房」(2019/01/06参照)に寄り道。国立国会図書館「本の装幀 展示会目録 特別出品 芹沢_介装幀本」を150円で購入する。

※お知らせ
そろそろ発売の「本の雑誌 流れ雲ビーフン号 No.429」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、大森の「松村書店」を大フューチャー!あのお店の人間サイズの小ささと古さを、今後も偏愛し続けるぞ!
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2019年02月08日

2/8東京・西荻窪 BREWBOOKS

早くから動き始め、午前十時過ぎの神保町に水道橋駅からアプローチする。『白山通り』を我が物顔に通過する冷たい風に抗いながら、まずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)で評論社「アイルランドの怪奇民話」を400円で購入し、良い滑り出しを予感する。続いて「日本書房」(2011/08/24参照)の店頭中央和本ツインタワーから、春陽堂「武蔵の名香 阿剌比亞の林檎 東西短慮之刃/尾崎徳太郎」を800円で購入する。これは明治三十五年刊の、尾崎紅葉の講談物語に関する講演を筆記したもの。タイトルにある『武蔵の名香』『阿剌比亞の林檎』二つの話を弁じ比べ、共通点を炙り出す趣向である。こんなものが店頭に出ているとは、さすが「日本書房」!と褒めたたえながら、さらに南下を進める。「アムール」(2011/08/12参照)では日本経営史研究所「未踏世界への挑戦 味の素株式会社小史」角川文庫「娼婦の部屋/吉行淳之介」を計100円で購入する。光の当たる『神保町交差点』から『靖国通り』に入り、「明倫館書店」(2012/04/04参照)前で立ち止まる。ワゴン上に積み重なった古本もしっかりチェックして行くと、ちゃんと函付きの三省堂「趣味の植物採集/牧野富太郎」を300円で購入する。昭和十年刊で、牧野の活動している写真が豊富に掲載されているのがたまらない一冊である。
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さらに「八木書店」(2013/07/24参照)の店頭プラ箱から日本雄辯會「實業界大秘史 三菱王国/大瀧鞍馬」(巻末に『日本のコナンドイルと謳はるる』とある筑波四郎「探偵十種」の広告あり。どうやら実録犯罪ものらしい)日本書房「ディオール/杉野芳子」を計400円で購入する。すっかり身体を冷やしたところで、『東京堂書店』に赴き、待ち合わせていた神戸から上京した知り合いと無事に出会う。本の雑誌社に行きたいのだが、一人ではその勇気がないので引率して欲しいと頼まれていたのである。というわけで、珍しくメンバー全員勢揃いの本の雑誌社に優しく迎え入れられ、三十分ほど楽しく歓談させていただく。無事に役目を果たした後は、さらに古本屋を巡ると言う知り合いと別れ、帰路に着く。その時、「小宮山書店」(2014/05/31参照)の角をふいっと曲がったところで、店頭棚最下段に挿さっていた本が目に留まる。実相寺昭雄の「星の林に月の舟」であるが、背の一番下に大和書房の名がない。ということは、実相寺の饅頭本(葬式時に配る非売品本)じゃないか!と引き出すと、見返しに奥さま(映画『シン・ゴジラ』では逃げ遅れたおばあちゃんとして遠影で出演している)の挨拶カードと名刺が、ちゃんと挟まっていた。買わねば!と静かな店内に踊り込み、1080円で購入する。

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一旦家に戻ってから、午後三時前に西荻窪へ。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に腰を据え、先月の売り上げを受け取りつつ、ひっそり出現している横田順彌棚に目を細めたり、打ち合わせや無駄話など。その中で小野氏が「そう言えばこの間、自転車で『西荻南児童公園』の脇道走ってたら、『本』って看板が出てる店が…」…!それって、もしかしたら遥か以前に「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の天野氏が、その辺に出来るらしいって言ってたお店じゃ!と気付き、「ひとたな書房」から高知県立文学館「探偵小説の父 森下雨村」を800円で購入しつつ、とにかく急行してみることにする。駅南口から『西荻南二丁目交差点』まで南に下り、後は東南に延びて行く『神明通り』をズンズカ進んで行く。200mも行けば『西荻児童館交差点』に差し掛かり、その際には小さな『西荻南児童公園』が現れる。そこで北へ向かう通りを覗き込むと、おっ!右手公園横の建物前に、確かに『本』の立看板が出ているではないか。一階がレンガタイルで化粧され、窓枠&扉が真っ青なお店である。窓際にはキレイな本が並び、中には本が上品にディスプレイされているのが伺える。扉を開けてお店に入ると、奥のカウンターの向こうから、身だしなみがファッショナブルな野比のび太風青年が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。表の立看板から引きちぎったチラシによると、新刊+古本を扱い、クラフトビールやソフトドリンクも楽しめ、さらには二階は『書斎』という名の時間制寛ぎ読書スペース&イベントスペースになっているとのことである。一階は左に洒落てシンプルな飾り棚がカクカクと繋ぎ合わさり、中央には木製の平台棚が二つ据えられている、右壁下はカウンター席となっており、最奥にはビール冷蔵庫を備えた広々としたカウンターがある。その右側は二階への通路となっており、そこにも棚が設えられている。本はそれほど多くはないが、全空間に、余裕を持ち満遍なく行き渡るようなカタチで、新刊と古本、単行本と文庫が混ざり合い、並んでいる。食・絵本・台所・暮らし・自然・妖怪・民俗学・本関連・酒・文学・西荻窪・旅・シベリア…アイヌの本を見つけて手にしてみると、アイヌ語の練習本のようなもので、語りのカセットテープ付き。思わず食指が動くが、三千円の値に二の足を踏む。気付けば青年店主は、カウンターの向こうで美味しそうにズバズバと麺を啜っている。セレクトブックショップに近いお店である。店主の審美眼が隅々まで行き届き、無駄のない潔い並びを見せている。新たに西荻窪本文化の一端を担う場所が、いつの間にか誕生していたとは。講談社「夜翔ぶ女/中井英夫」を購入する。
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2019年02月01日

2/1東京・谷保 小鳥書房

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『次は、ヤッホ、ヤッホ』のアナウンスに痺れながら、南武線から降車する。北口のロータリーに出てからは、すぐに住宅街に分け入り、まずは駅北東の『谷保第一公園』を目指す。開けた縦長の公園では、安全性の問題から使用が禁止され、ブルーシートで梱包された遊具が、ちょっとアート的な異彩を放っている。そしてその向こうには、『国立富士見台第一団地』を背にした、短い二本の双子のようなアーケード商店街『ダイヤ街』が見えている。ここは、2018/10/17に偶然訪れた、昭和過ぎる商店街ではないか。北原尚彦氏からのタレコミによると、ここについ先日新刊と古本を扱うお店が誕生したらしいのである。まずは西寄りのアーケードに入り込んで行くと、おぉ!左手手前が、その件のお店であったか。古風なモルタル壁に、磨りガラスのウィンドウと木枠のガラス戸がはめ込まれ、そこには店名と小鳥のマークが描かれている。脇には『新刊・古書』の立看板と、お店の成り立ちと在り方を短く紹介した(ひとり出版社が母体の本屋であること。日用品を買うように本を買って欲しいことなど)黒板が置かれている。扉を開けて中に入ると、奥の高いカウンターの向こうに座る二人の女性が「いらっしゃいませ」と鈴を振ったような声で出迎えてくれる。余裕のあるシンプルで洒落た店内である。左壁に自社出版本と、まっとうで優しくて理知的な瞳で選んだ新刊が、軽やかに並んでいる。おっ、香川県・高松の完全予約制古書店「なタ書」のショップペーパーが置かれているじゃないか。何時の日か行ってみたいものだ。一枚もらっておこう。中央には自社本と雑貨類が集まる棚。そして右には二階へ上がる小さな階段があり、その下の壁に小さな棚が一本置かれ、どうやらそこに古本が並んでいる。しゃがんで見てみると、これが水木しげる&京極夏彦&荒俣宏の妖怪尽くし。棚二段分に、これでもかと揃えられているのが、新刊との奇妙なギャップを生み出している。他にもカウンター下の木箱三つに、文学・自然・一般書の古本が収まっている。どちらかと言うと自社出版物と新刊がメインで、古本はお店にちょっとした彩りを添えている感じである。だから冊数は少ないが、値段は安めである。おかっぱ丸メガネのお姉さんに、木製フレーム&ボタン電卓でカポカポ計算してもらう。角川ONEテーマ21「京都妖怪紀行/村上健司」角川書店「水木しげるの異界探訪記/水木しげる」を購入。あぁ、時代から取り残されたような素敵な商店街で、古本が買える幸せよ。開店おめでとうございます。その後は団地外れの一角で、洋菓子屋『白十字』の工場直営店を発見してしまったので、フラフラと蟻のように吸い込まれる。途端に襲いかかる、幸福な甘い匂い!ショウケースの向こうでは、白い調理服を来た人々が忙しく立ち働き、甘いものを次々と造り出している!まるで工場見学している気分になり、ショートケーキやシブストやト音記号のクッキーなどをわちゃわちゃ購入する。すると「これ、割れちゃってるんでサービスです」とサブレを一枚いただく。ありがとうございます!すっかり身体に甘い匂いをまとわりつかせながら、国立駅までの千五百メートルを歩き通す。
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2019年01月23日

1/23東京・御徒町 第一回 上野広小路古本祭

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そう言えば日曜の「みちくさ市」(2019/01/21参照)の受付時に、「立石書店」さんが意気込みながら「上野で古本市やるんですよ。来て下さい!岡島一族(「岡島書店」(2010/02/02参照)「立石書店」「古書英二」)全員出るんですよ!」と言われ、思わず笑ってしまったことを思い出す。と言うわけでお昼ご飯を食べてから電車に飛び乗り、秋葉原から京浜東北線と競り合うように走る山手線で、御徒町駅下車。礫が混ざった凝固土の手摺を懐かしく感じながら階段を下り、北口に出る。高架下から西側に抜けると、北には『アメ横』の南端ゲートがあり、平日なのに多くの人でザワザワとしている。さらにザワザワは、そこから街中にあふれ出しているようで、パワーのある賑わいが続いて行く。『春日通り』をそのまま西に進むと、たちまち大きな『上野広小路交差点』である。北側には上野のお山が見え、南東には爽やかな建材パネルに包まれてしまった『松坂屋上野店』が『中央通り』に沿って、南へと伸びて行く。そして南西の角地には『凮月堂』に並び、緑色の演芸場ビル『上野広小路亭』が建っている。おぉ!その一階の『ギャラリー+スペース36』で、赤い『古本市開催中』の幟をはためかせ、教えられた通りに古本市が開かれているではないか。しかもかなり賑わっており、常にお客さんが出入りしている。表に出されたコンビニコミックワゴンや雑誌ワゴンや文庫ワゴンを眺めながら、窓に貼られたポスターにチラリと視線を移すと、『上野に古本催事が帰ってきました。個性豊かな古今の良書を揃えてお待ちしております』と書かれていた。入口横のワゴンも念入りにチェックし、その横に置かれたプラ箱も覗き込むと、古本ではなく演芸場のスリッパが大量に入っていた…すぐ隣りは階上の演芸場への入口なのか…。中に進むと、横長でそこまで広くはないスペース。壁際を本棚と木箱で造られた棚が覆い、中央にはプラ箱でまとめられた平台、右奥にはワゴン&木箱棚がつながって行く。左に帳場があり、その脇には貴重紙物のラックも置かれている。並んでいる本は、民俗学・郷土・歴史・江戸風俗・近代・戦争・自然・落語・演芸・映画・北杜夫・時代劇文庫・新書などが主で、独特な硬さを見せている。そして会場内は古書ファンと言うよりは、一般客でにぎわっている印象である。こりゃスゴい。最初は函が壊れている300円の木下杢太郎「其国其俗記」を買おうと思ったが、何となく気乗りせずに、未練たらしく一度見た棚を眺めていると、先ほどは不覚にもスルーしてしまっていた嬉しい一冊が目に留まった。白揚社「16の横顔 ボナールからアルプへ/滝口修造」である。カバーナシだが540円なので、「其国其俗記」はそっと元あった所に戻し、一冊だけをニコニコと購入する。この市は1/27(日)まで。
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