2018年02月08日

2/8東京・吉祥寺 空と虹と古本市

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夕方午後五時過ぎに吉祥寺の西に流れ着く。段々と長くなり始めた陽に感謝しながら、『中道通り』を駅方面に向かって歩いていると、バッタリと偶然に、白墨で『古本市』と書かれた小さな立看板に出会ってしまった。う〜む、嬉しい。場所は『吉祥寺パルコ』前から件の『中道通り』を北東に五百メートルほど進んだ『中道公園』の向かいである。会場の名は『八月の空』で、小さな白いマンション一階の一室を改装し使用している。短く狭いエントランスには絵本箱が置かれ、その奥に開け放たれた入口。そこから中に上がり込むと、床は板敷きの縦長の小さなスペースがつながった空間である。什器や机に、古本が点在している。絵本・洋書絵本・鳥類・女流作家・紙関連・猫・妖精・自然・文庫本・大判ビジュアル本…全体的にキレイな本が多く、春のような爽やかさが小さな市全体に通底している。帳場に立つ女性二人が、客の私に遠慮してひそひそ声で会話しているので、早く買う本を決めて、小さな世界を常態に戻してあげようと、誠文堂新光社「山手線に眠る3億年探検記 東京化石地図/先崎譲一・文 安藤博・写真」を選んで帳場に持って行くと、あっ!本を受け取ったのは、よく「みちくさ市」でご一緒する「ママ猫の古本や」さんであった。「偶々通りかかって、「古本市がやってる!」って喜んで入って来たんですよ」と言うと「偶々?こんなところを?」と何故か疑われる。そしていただいたチラシを見ると、出店者は一箱でお馴染みのメンバーや、中野の「ブックス・ロンド社」さん(2008/08/28参照)であった。いやぁ、世の中、狭いですな。ママ猫さんに見送られ、外に出ようとした時、「その本、売れなかったら私が買おうと思ってたんです」と告げられる。400円の「東京化石地図」が、モテにモテた奇蹟の一瞬だったわけである。この市は2/12(月)まで続く。さらに帰り道で、「一日」(2017/08/11参照)のかなり薄暗いガレージに寄り道。雪華社「足穂入道と女色/小高根二郎」を324円で購入し、書肆ユリイカの伊達得夫が稲垣足穂&志代夫妻の仲人であったことを知る。

そしてそろそろ発売になっている「本の雑誌三月号 早春ふとん干し号」の連載「毎日でも通いたい古本屋さん」第三回では、蕨の「なごみ書店」(2016/08/14参照)でレポート&お買い物。正座して極める俄古本道をお楽しみください。そしてさらに、今月22日頃に発売されるであろう、本の雑誌社「絶景本棚」に『家に本棚がない曖昧な理由』という七枚半のエッセイを寄稿しております。この本は連載グラビアの「本棚が見たい!」をまとめた、本棚と本だらけの贅沢な一冊。実は以前、私のところにも本棚取材の申し込みがあったのだが「ウチに本棚はありません」と伝えると、見事に話は流れてしまったのである…。というわけで、何故本棚を使わずに本を積み上げてしまっているのか、その理由、もしくは言い訳を延々書き連ねてみたのであります。二冊まとめてよろしくお願いいたします!
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860114114.html
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2018年02月04日

2/4東京・国立 museum shop T

午後に古本を携え家を出て、昭和感満点の『阿佐ヶ谷区民センター』にて『古本屋ツアー・イン・阿佐ヶ谷』と題して二時間ばかり講演する。集会室を横向きにぶち抜いた会場に、寒い中を集まってくれた六十名ほどの奇特な皆様に、ただただ感謝を捧げ、演台に立ったまま、ひたすら古本屋と古本について、間隙が生まれるのを恐れるように話し続ける(まぁ、それしか出来ないのだが…)。静聴していただいた皆様、大変おつかれさまでした。

すっかり魂と体力を擦り減らしてしまうが、講演用の古本を携えたまま、電車に飛び乗り西に向かってしまう。南口から東側に回り込み、『旭通り』西側歩道を南東に下る。そして一本目のビルの間の脇道を西に入り、真ん中辺りの煉瓦で化粧された雑居ビルの直線階段を三階までストスト上がる。すると右側に扉が二枚現れるので、さらに右側の白い扉を選択してドアノブを捻る。左右の壁に大きなボックス棚が据え付けられ、中央にテーブル台や棚が続く、国立近辺の様々な作家や表現者の作品&雑貨類&本&リトルプレス類を取り扱う、文化的アンテナショップである。だが何故かここで、古めのSF文庫を売っているとの情報をキャッチしたので、駆け付けた次第である。入った左側すぐに、目的のSF文庫が固まってくれていた。二台の平台手前にはハヤカワSF文庫(八十〜九十年代中心)が面陳&積み上げられ、奥の台に創元推理文庫SF(七十年代中心)が面陳&並べられている。値段は一律270円となっており、じっと辛抱強く眺めて、読みたい二冊(いったいいつ読むのかは分からないが…)を選び出す。創作元推理文庫「自動洗脳装置/エリック・F・ラッセル」「山椒魚戦争/カレル・チャペック」を計540円で購入する。レジテーブルは一部がガラスケースになっており、藤田嗣治の本が修復され高値で販売されている。三階踊り場に出ると、階段袖手摺に『古書買い取ります』の貼紙もある…じゃぁしっかりと古本を扱うお店なのか。こちらに来た時は、なるべく足を向けることにしよう…などと考えつつ、携帯でお店の扉を写真に撮ろうと、左のポケットに手を差し入れる…あれ?ない、携帯がない!どうやら家に置き忘れて来てしまったようだ。じゃあこの携帯みたいな感触の四角い物体は…それはキャラメルの箱であった…俺はこれをずっと、携帯と勘違いしていたのか。なんと愚かな…。
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というわけで写真は撮っていないので、メモとキャラメル箱の写真でお茶を濁しております。悪しからず。
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2018年01月28日

1/28東京・早稲田 古書ソオダ水

昨日は夕方に下連雀に流れ着き、清冽な玉川上水の冬の流れに震えつつ吉祥寺に出る。「BASARA BOOKS」(2015/03/28参照)に入ると、店内BGMとしてECDが流されていた。狭い店内で本を選ぶ振りをして、二曲分を聴き入ってしまう。角川文庫「SFバカばなし おもろ放談」を230円で購入する。

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世界の果てのような曇天の本日は、午後に外出。都電荒川線駅から『新目白通り』に出て、東にちょっとだけ向かい『グランド坂通り』に入り、西南に坂道を上がって行く。すると『早稲田大学北門』手前の雑居ビル前に、新しい古本屋さんの立看板が出されていた。導かれ、二階への急階段を上がる。流れ落ちて来るデヴィッド・ボウイの歌声を掻き分けるようにして、緑の扉が開け放しの店内に入る。通りに向かった窓が、曇天の薄ぼけた光を室内に取り込んでいる。フロアに立つのは、顔ぐらいまでの高さの本棚ばかりである。入ってすぐ右に100均棚が二本。古めの戦後〜昭和四十年代の日本文学を中心に、とても魅力ある並びが展開している。一冊も見逃さじ!と気合いを入れて眺め、二冊を早速確保する。左壁棚には日本文学が100均棚をバージョンアップさせた形で並び、上林曉・小島信夫・小山清・後藤明生・庄野潤三・田中小実昌・永井龍男・野呂邦暢などをビシッと抑えている。そこから海外文学(詩集含む)・評論&本関連・女流文学と続き、左奥の引っ込んだスペースにはセレクトコミック・児童文学・絵本と続く。フロア中央には山本文庫などを飾ったテーブルを中心にして、窓側に二本の木棚が立ち、超セレクト文学系文庫・美術・映画・音楽・ちょっと硬めのサブカル&カルチャー・海外文化などが収まる。窓際には低く青いスチールキャビネットのような物が置かれ、その上にコクテイル文庫「貸家と古本/荻原魚雷」や電気グルーブの本が面陳されている。そして右壁際の棚には、満を持したようにこのお店の主力ジャンルである、日本人の詩集(棚二本分)と歌集が揃えられている。隣りではひと棚分の音楽CDも控え中。フロア全体を見渡せる奥の帳場には、若い男女が緊張しながらも楽し気に、ソーダの炭酸がブツブツ弾けるように初々しく店番中。誠に渋いお店である。なんだかとても京都的…というか、ヤング「善行堂」(2012/01/16参照)と言った雰囲気&クオリティの高さなのである。日本文学の趣味、そして詩集の蒐集っぷりには大いに感心させられる。…あぁ、開店初日に来たならば、どんな良い本が買えたのだろうかと、昨日ここに来れなかったことを、思わず悔やんでしまう。値段はかなりリーズナブル。早稲田古本屋街とは少しだけ離れているが、それでも足を延ばして足繁く向かいたくなるお店が誕生してしまった。相模書房「世間ばなし/武田麟太郎」(函ナシ)改造社「星の夜の廣場にて/橋本英吉」白水社「パタゴニアふたたび/ブルース・チャトウィン ポール・セルー」を購入する。この時流れていたBGMは、カジヒデキであった。

そして驚くことに、店内で偶然「たけうま書房」さん(2017/11/06参照)と遭遇したので、お店を出た後に高田馬場まで歩き、ちょっと早いが飲み屋に入って古本屋四方山話に花を咲かせる。その中の酔いに任せて出て来たゴシップ的噂話に、とある古本屋さんがキャバクラを経営してるかもしれないというのが…途端に色めき立ち「も、もしかしたら古本が並んでいるんじゃないですか!だ、だったらツアーしないと」と興奮すると「あるわけないじゃないですか」とあっけなく一蹴される。たけうまさん、今年もよろしくお願いいたします。
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2018年01月26日

1/25古本屋ツアー・イン・新保博久邸【最終章】

すでに昨日の話である。一ヶ月に渡って続けて来た、ミステリ評論家&乱歩研究家・新保博久氏のお引っ越し片付けお手伝いであるが、いよいよ本日がタイムリミットの最終回である。午前十時に「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と某駅で待ち合わせ、いつものように盛林堂イレギュラーズとして教授邸に向かう。ぬぉっ!教授邸の什器類が、表にたくさん出されている…そう言えばメールに『粗大ゴミ二十連発』って、書いてあったな…。
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チャイムを押しても、教授が全然出て来ない…寝ているのだろうか?と思っていると、エレーベーターが開き、木製の大きな椅子を持った青色吐息の教授が姿を現した。「旧式の電子レンジがこれほど重いものとは思いませんでした」などの搬出苦労談を聞きながら階上へ。だが部屋に上がり込むと、お願いしていた文庫本の仕分けがまったく行われていなかった…うわぁ、粗大ゴミを運び出すだけで、精一杯だったんだな…小野氏が「とにかく仕分けを進めましょう。最初から言っているように、蔵書量はかなり減らさなければいけないんですから、もぅ、思い切って手放すつもりで!素早く!そうしなければ間に合いません」が宣告する。すると教授「えぇ。ですが、まだその棚を。粗大ゴミに出さなければいけないんですよ」と恐ろしいことを言い始めた。恐る恐る「棚?どれですか?」と聞くと、指し示されたのは右奥の部屋の、ラックや箱やカゴが積み上がる山の向こうに見える、背の高い木の本棚であった。「え〜っ!あれ?あれを?それにもうすぐ回収が来ちゃうんじゃないですか?」「えぇえぇ…恐らく」…もはや取り出すしかないようだ。取りあえずすべての作業を中止して、我武者らに棚を奥から取り出すことにする。まずは手前の箱から退かして行こう…あれ?何だか連結したラックが出て来たぞ…うぎゃぁ、全部文庫がビッシリ詰まってる「小野さん、文庫が文庫が〜」「どんだけ出て来るんだ…」そんなラックを五本ほど根性と筋肉で取り出し、さらに棚の前に立ちはだかる取り外された木製ドア(激重)をニジニジと移動させ、部屋内箱山の上に乗せることにどうにか成功する。ゼイハァゼイハァ…よし、これで棚の中の本が取り出せるぞ。辞書や大判のリファレンスや分厚い洋書類や地図や古本屋地図をダカダカ抜き出し、緊急避難的にドアの上に乗せて行く。そして「ふんぬぅ〜!」と本棚を引き出し、小野氏と教授に引き渡す。二人は協力して階下へ本棚を運んで行った…ま、間に合った。ところがしばらくして、何やらたくさんの人の気配が廊下の方から伝わって来る。教授が、作業着の人たちとともに玄関に現れた。そして「あ、あの奥のヤツも出さなければいけないんです」…!げえっ!あの乱歩関連が並ぶ高い白い棚も!すると、疲労困憊した私を見兼ね小野氏が「僕が出します」と隙間に突入して行く。物凄いスピードで本を抜き始める小野氏。ガンガンドアの上に積み重ねて行く。後ろで本を受け取ったりしてフォローに回るが、その時突然ドアがバランスを崩し、今まで積み上げた本たちとドア自体がこちらに向かってスライドしてきたのである。「危ない!」と全員が素早くドアを受け止め、間一髪で事無きを得る。どうにか安定を確保した後、作業再開。高速で棚を取り出すことに成功し、廊下まで運び出して作業員さんたちに託すことに成功する。そして棚から出した本を棚のあった場所に積み上げ、危険なドアをベランダに移動させ、およそ一時間半遅れで通常作業を開始する。

部屋に散らばる文庫&ノベルス山と、左奥部屋の棚に入った文庫を抜き出し、教授に仕分けてもらうべく山を作って行く。教授は「もはや思考停止状態です」と呟きながら、結構スピーディーに仕分けて行く。教授の前に本の山を作り、仕分け後に送り出された本を同階のトランクルームまで運び、小野氏に結束してもらうので、かなり慌ただしい時を過ごす。
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引越しで雑然となった家の中で、必死に仕分けをする教授の後姿。ガンバレ教授!

…そして午後一時半、部屋の本があらかた片付いたので「教授、そろそろ休憩して昼ご飯にしましょう」「そうですね。栄養を脳に補給しないと」「あれ?ホームズは空腹の方が脳が冴えるんですよね?」「山中峯太郎版ホームズは、ガンガン食べますよ…」…というわけで三人で、もはや常連となった豚カツ屋に赴き昼食を摂る。次の作業の相談をしていると小野氏が「そうだ、あの資料の山の下に、本がたくさん隠れてるんだった」と恐ろしいことを思い出してしまった。そういえば、一番最初の作業スペースを作る作業で、なりふり構わず積み上げたんだっけ(2017/12/14参照)。というわけで再掘削し、本の山と再びご対面。これも文庫本時と同じような体制で、とにかく仕分けを進めて行く。時刻はあっという間に午後三時を回り、段々先の見えない泥沼にはまっている気分になってくる。本を運ぶために借りたレンタカー(たくさん運ぶためにバンである)も、何度も借り出す時間を延ばす始末である。そして山の作業が終了に近付いたところで、間髪入れず押入れに並ぶラックの仕分けに突入。
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主にSF・ホラー・海外純文・ノベルス(また!)が詰まっているのだが、これが十本ほど…そしてまたもや教授がポツリ「実はその裏にもダンボールに入った本があります…」うぎゃぉうっ!とにかく進めよう、進めるんだ!と三人の心はついにひとつになり、一心不乱に本と格闘しまくる。途中、押入れ前で無理な体勢でラックを引き出そうとした教授が、足をつってしまう。「痛い痛い」と後退する教授に代わり、同様の体制でラックを引き出しまくる…結果、私も足をつる。本の隙間で寝転ぶ教授と、足を必死に延ばす私の姿を、様子を見に来た小野氏が「なにやってんですか?」。本の仕分けは寝室の本を残したところで、残念ながらタイムリミットとなる。結局レンタカーを借りたのは午後五時半で、六時から結束本を階下に下ろし、本を運び込んで行く。たちまちバンはいっぱいになり、ひとまず西荻窪の倉庫へと運ぶ。再び教授宅に戻り、残った結束本と、別のトランクルームに運び込むダンボールが十箱と、盛林堂買取品の十箱を積み込み、西荻窪→トランクルームと移動。トランクルームでは、前回いただいた内田善美「星の時計のLiddell」の続き二冊を教授の指示通りに発見し、確保する。レンタカーを返し教授邸に戻ったのは、午後九時半であった。
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だが、今日の作業はまだ終わらない!最後に書斎の壁を覆う、複雑怪奇な本棚の解体に着手しなければならないのだ!、なのに、棚には本が盛大に詰まったままだ!慌てて本を取り出し取り出し、様々な部屋の様々な隙間に積み重ねて行く…せっかく整理が付いてスペースが出来た各部屋が、いつの間にやら元の木阿弥…ええぃ、仕方ない。今は本棚の解体だ。小野氏と最後の力を振り絞り、上から棚を崩して行く…作業終了は午後十一時。今までで一番ハードな一日となってしまったようだ。だがこれで、少しでも本が減り、部屋が片付き、教授が引っ越せるのなら、何の悔いもない!その後、近所の居酒屋に移動して、教授の無事の引越しを祈り、乾杯する。結局運び出した本はおよそ二万冊…だがそれでも、教授の蔵書量のおよそ四分の一なのであった…お、恐ろしい。そして本日の拝受品は、集英社「星の時計のLiddell2・3/内田善美」新潮文庫「蜘蛛/トロワイヤ 福永武彦譯」グロービジョン「鬼警部アイアンサイド/S・スターン 加納一朗訳」ポプラ社 名探偵シリーズ(キャッチが「成長期のお子さまに勇気と希望を与える推理小説の決定版です。明智小五郎・金田一耕助・神津恭助等の名探偵が、次々と起こる怪事件の謎を解く長編推理小説」となっている)「呪いの指紋」「魔術師」(カバー付き)ともに江戸川乱歩の、計六冊。まさか教授から乱歩本をいただけるなんて!「それは、氷川瓏のリライトですね」と教えられる。
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2018年01月19日

1/18古本屋ツアー・イン・新保博久邸【第四章】

中一日で、新保博久教授邸の引越しお片づけに『盛林堂イレギュラーズ』として向かう。昨日「古書いろどり」(2015/12/11参照)の店内整理お手伝いで本の雪崩が額を直撃した「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏といつもの場所で午前十時に待ち合わせ、颯爽と教授宅へ。するとなんと!教授宅前に、トランクルームや本邸内の本棚やラックが、一部粗大ゴミとして出されているではないか!
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これを一人で!教授、がんばったなぁ〜と小野氏と顔を見合わせ、四階へ上がる。ドアを開けてくれた教授は、すっかり疲労困憊の態。「ライヘンバッハの滝に落ちたホームズの気分です…」と、独特な例えで今の心体状況を表してくれた。

本日のミッションは、本邸の片付けなのだが、その前にトランクルームに詰め込んである、これまで仕分けて結束しまくった本束を運び出すことに決める。教授には取りあえず本邸の本の仕分けに専念してもらい、古ツア→本をトランクルームから階下へ運び出し、小野氏→その本を『盛林堂号』に積んで西荻窪の倉庫へ運び込む、ということになる。本束の内訳は、単行本が140本、ノベルスが55本、文庫本が105本…大体合計で7300冊ほどである。で、まずは階下に下ろすためにエレベータ脇に積み上げるとこうなる。
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で、『盛林堂号』に積み込むとこうなる。
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サスがガッツリ沈み込むほど積み込んでも、とても一回では終わらない。途中、あまりに大量の本束を玄関先に積み上げていると、通りかかった近所のオバ様に「この中には、図書館があるんですか?」と聞かれてしまう。本を読むことを生業とする個人の蔵書であることを告げると「私も本好きだけど、これはまぁまぁまぁまぁ…」と目を丸くしてニヤニヤ…まぁ確かに想像を絶する光景ですよね。結局この教授宅と西荻窪を四往復して、どうにか第一ミッション終了。時刻はすでに午後二時半…。

この後はいよいよ本邸の本の仕分け&結束に入る。【プレリュード】時に(2017/12/14参照)左奥の和室に積み上げておいた本の山があるのだが、これを新たに掘り起こし、袋に入ったままのものを袋から出し、サイズを揃えて隣りの部屋の教授にカゴ詰めして渡す。それを教授が仕分けた後、同じ右部屋にいる小野氏が素早く結束。激細通路に束がある程度溜まったら、それを私がトランクルームに適宜運び込む…これらを山が無くなるまでひたすら継続して行くのだ。
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本の詰まったカゴを流れ作業のように渡して行く…「なんでこんなに本があるんでしょう?」「もっと早く小野さんを呼んでいれば、こんなことにならなかったんですね」「果物の収穫みたいです」「今回は実りが多いですね」「まだ…ウッフッフッフッフ…無限」以上は教授のつぶやきである。作業はその後午後七時まで続くが、全員がライヘンバッハの滝に落ちたようにゼイハァ疲弊してしまい、単行本を後少しと、ノベルス&文庫本を残したところで終了となる。…でもまぁ、良くこの短期間でここまで漕ぎ着けたものだ。だが果たして、教授は無事に京都に引っ越せるのか?ちなみに教授はこの引越し準備で、なんと体重が五キロ減したそうである…。次回、いよいよ【最終章】(予定)。

本日の作業御礼拝受本は、本邸山掘り起こし作業中に確保しておいた、集英社「星の時計のLiddell 1/内田善美」論創社「新幹線大爆破/ジョゼフ・フランス+加藤阿礼」湘南探偵倶楽部叢書「白魔の一夜/ルウフワス・キング」河出書房新社「あたしが殺したのです/森田雄三」である。「あたしが殺したのです」は教授が学生時代に目白の古本屋で100円で買ったもの。長らく作家の竹本健治氏に貸していたそうで「私より竹本氏の元にあった時間が遥かに長い」とのこと。「それにしも何故その本が、あの山の中に…」。それは、返してもらってそのまま奥の部屋に放り出していたからですよ、教授!
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2018年01月16日

1/16古本屋ツアー・イン・新保博久邸【第三章】

今週も懲りずに『盛林堂イレギュラーズ』として活躍するので、午前九時半に都内某駅で「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と待ち合わせ、氏が今日も微妙に遅刻して来たことを即座に水に流しつつ、教授宅を訪れる。すると教授は二度寝の真っ最中だったらしく、インターホンの応答にいつもの三倍の時間を要してしまう。

今日のお引っ越し準備ミッションは、四階トランクルーム残り二部屋の仕分けと結束。それに加え、自宅部屋前のトランクルーム+新たに発覚した三階トランクルーム一部屋の本の整理を、どうにか終わらせることに心血を注ぐこととなる。まずは四階留置場風トランクルームの様子を見に行くと、おぉぅっ!左奥の部屋が教授の孤軍奮闘により、すでに仕分け済みの麗しい光景となっている。
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こうなれば話は早く、私が不要の本を搬出して棚の解体を進める間に、小野氏と教授は左手前の部屋の整理をひたすら進めることにする。と言うわけで今日の三人の役割は、教授→仕分ける人、小野氏→結束する人、古ツア→運ぶ人を徹頭徹尾務めることに決まる。本を懸命に運び出し積み上げつつ、当然の如く卑しい心を立ち上げて、欲しい本も品定めして行く。すると隣りの部屋で小野氏も、選別と結束を進めつつも、したたかに買取本を教授に申告しつつ確保してる模様。様子をうかがっていると、何だか羨ましい本ばかりなので、古本的嫉妬の炎が激しく燃え上がってしまう。そんな作業を三時間ほど進めた後、もはや常連になりつつある豚カツ屋で昼食を摂った後、三階トランクルームを偵察。
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ここの本はそれほど量は多くないが、教授の居住空間である四階でなはいので、さすがにここで仕分け&結束作業を進めるわけにはいかない(だが教授は「三階でも作業スペースはあるはずだ」と提案。その場所が、奥の狭いコインランドリーだったり、屋外の屋根の上だったり…教授、却下します!)。と言うわけで、地道に本を四階に運び上げることにする。その方法は、台車代わりに金属ラック棚に本を積み上げ、ひたすら運ぶことにする。何だかカーゴでトランク類を運ぶ、ホテルのポーターみたい…。
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五回ほどエレベータで上下し、どうにか役目を終えるや否や、次は四階の部屋前トランクルームの運び出しにかかる。ここには不要な本は意外に少なく、どれも教授が仕事に必要とする資料本ばかりなので、作業は比較的楽であった。それにしても棚に並ぶ資料本の素晴らしいこと!探偵小説関連・ミステリ関連・犯罪関連・警察関連・同類の地方出版物関連…良くぞここまで!と褒め讃えたくなる蒐集っぷりなのである。
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そんなこんなを結局九時間ほどぶっ通しで続け、午後七時にミッションをコンプリートする。結果、全員がゼイハァ完全疲弊。いやぁぁぁぁぁぁ、お疲れさまでした。これでどうにか本宅以外の整理にメドがつき、いよいよ次回は本邸に着手することになる…何が出て来るか楽しみ楽しみ。そして本日の超絶作業の報酬として、春陽堂日本小説文庫「盲目の目撃者/甲賀三郎」(イタミ、落書きあり)「血液型は語る/正木不如丘」「眞夏の殺人/大下宇陀兒」早川書房「オシリスの眼/オースティン・フリーマン」日本公論社「霧中殺人事件/ミニオン・G・エバアハート」を拝受する。(つづく)
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あぁぁぁ、でも今日は本当に疲れだぁ…。
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2018年01月13日

1/13東京・明大前 七月堂古書部

震えながら明大前に流れ着き、駅へフラフラ向かいながら、何処の古本屋さんに行こうか考える。「七月堂古書部」(2017/04/29参照)を見てから、ブラブラ歩いて東松原の「古書 瀧堂」(2014/05/01参照)に向かおうか。そんな風に漠然と考えながら、井の頭線線路の南側の、西第一番目の踏切を目指す。…あれ?もう古本幟がはためいているじゃないか。入口は裏通りのはずなのに…あぁっ!店舗が表通り側に移動し、しかも広くなっている!元は印刷会社の入口&受付周りに棚を置いて古本を並べていただけの、小さなお店だったのに、これでは完全に本格的な古本屋さんではないか!ついつい元の入口を見に行くと、こちらは完全に事務所の裏口と化していた…。とても嬉しいことだが、いったい何がそんなにも、古本屋稼業に火を点けたのだろうか?店頭右側には100均箱と100均カゴ棚が置かれ、左の壁際には100〜300円の単行本棚が置かれている。ドアベルを鳴らして店内に進むと、木材を基調に店舗としてしっかりと内装されており、左壁には日本文学・新書・日本文学文庫・海外文学・海外文学文庫、少し飛んで詩集・歌集・句集の集まる棚となり、これらは奥の五十センチほど下がった帳場&事務所フロアへアプローチする通路の低い壁にも取り巻いて行く。フロアにはフカフカのソファと、柱を囲む幻想文学・民族楽器・絵本・児童文学棚があり、オススメ本テーブルも接近している。入口右横はガレージセールコーナーになっており、ここには古本ではなく様々な雑貨類が集められている。そこから始まる奥にナナメに延びて行く右壁棚には、江戸・本・出版・料理・猫・動植物・コミック・映画・音楽・写真・芸術哲学・思想・民俗学・近現代史・歴史・中国・文学評論・詩評論と並んで行く。棚の上には尺八が飾られ、これもしっかりと販売されている。本当にちゃんとした、詩歌に強く真面目な古本屋さんである。新しめの本が中心だが、何はともあれ明大前に古本屋さんが帰って来たことを、言祝ぐべきであろう。奥の小階段を下り、岩波新書「過去と未来の国々/開高健」を100円で購入する。…ところが!お店の写真を撮ったはずなのに愚かにも撮れていなかったので、いただいた栞の写真をここに掲げておく次第です。
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★お知らせ三つ!

1. 「本の雑誌」で連載中の「毎日でも通いたい古本屋さん」。そろそろ発売になる二月号では、横須賀・県立大学の「港文堂書店」に秘密取材。横須賀の古本の火を守る母娘の生き様に感謝します!

2. 今年最初の「みちくさ市」に、やっぱりいつの間にか溜まって行く古本を運んで参戦します!いつものようにミステリと文学と変な本と珍しい本と古書を手にしたい方は、どうか寒くとも足をお運び下さい!元日に凶を引いた男と、新年の挨拶を交わしましょう!
『第40回 鬼子母神通り みちくさ市』
◆2018年1月21日(日)
◆11:00〜16:00(雨天中止。当日8:00に天候による開催の有無を決定)
◆雑司が谷・鬼子母神通り(東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺・東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ)
◆お問い合わせ michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
http://kmstreet.exblog.jp/

3. 地元・阿佐ヶ谷で開く古本屋さんについての講演会。申し込み締め切りまであと一週間となりました。恐ろしいことに80名も入れますので、どうかどうかどうかどうかどうかどうか奮ってご参加下さい。こちらもお待ちしております!
『古本屋ツアー・イン・阿佐ヶ谷』
◆開催日 平成30年2月4日(日曜日)
◆開催時間 午後1時30分 から 午後3時30分 まで
◆対象 一般、高齢者
◆定員 80名(抽選)
◆開催場所 阿佐谷地域区民センター(杉並区阿佐谷南1丁目47番17号 電話:03-3314-7215
阿佐谷地域区民センター)
◆申し込み締切日 平成30年1月20日(土曜日)
◆申し込み 往復ハガキ(1人1枚)に「講座名(古本屋ツアー・イン・阿佐ヶ谷)、〒・住所、氏名(フリガナ)、年齢、電話番号、返信面のあて先」を明記のうえ、1月20日(必着)までに、阿佐谷地域区民センター協議会(〒166-0004 杉並区阿佐谷南1丁目47番17号)へお申し込みください。
http://www.city.suginami.tokyo.jp/event/kuminseikatsu/chiiki/asagaya/1037376.html
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2018年01月12日

1/12東京・吉祥寺 book obscura

パンを早めの昼食とし、とっても寒い表に飛び出す。まずは荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)に詣で、表で読売新聞社「青島の意地悪議員日記/青島幸男」三一書房「にっぽん昆虫記 今村昌平作品集」評論社「韓国の怪奇民話/柳尚煕・監訳」を掴み、店内で東京創元社「わが夢と真実/江戸川乱歩」を掴み、計864円で購入する。

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続いて吉祥寺に向かい、『公園口』から街に出て、平日でもそぞろ歩きの人々で賑わう『丸井』の西寄り脇道を抜けて、降り注ぐ陽光にキラキラしている『井の頭公園』に到着。『井の頭池』はちょうど池の水を抜く“かいぼり”の真っ最中で、すっかり水深を浅くして、粘っこい泥を晒している。そんな光景を眺めながら『七井橋』を渡り、『井の頭自然文化園(水生物園)』とボート乗り場に挟まれた小広場を通り抜けて『狛江橋』も渡って、池の南岸に到達する。すると目の前にはカフェやレストランへの階段がズラリと並んでいるが、左端の階段を選択して、アパートと一軒家が混在する閑静な住宅街に入り込む。道なりに南に進んで行くと、その出口に黒く細身な鳥居が立っている。その下を潜り、寂し気な『井の頭公園通り』に入って西北へ。すると右手に『ファミリーマート』が見えて来たと思ったら、その隣りが写真集専門の古書店であった。白いマンション一階にはめ込まれた、シンプルに洒落たお店で、店頭にはちゃんと安売本が置かれている。ショップカードやポストカードや『写真集買取します。』札などが置かれたボックス棚に、100均の一般文庫&雑誌・二冊で500均単行本が並べられている。お店のショップカードには、店名の由来になっている『カメラオブスキュラ(乱暴に言うとデッカいピンホールカメラ。画家などが外の景色を下絵としてトレースするために使われた)』の投影図解が本と組み合わされたマークが刷り込まれている。中に入ると、木材を基調とした今時な空間。右壁の上下に二段の頑丈なボックス棚が据えられており、そこに大判の写真集が収められている。日本の写真家・ヨーロッパの写真家・アメリカの写真家・ニューカラー・スナップ・ポートレイト・報道写真・ネイチャー&アニマルなどにジャンル分けされ、注意深く愛情深くセレクトを進めた仕事っぷりが、ジワジワ伝わって来る。右端下段には、少しだけ絵本も置かれている。中央には大きなテーブルがあり、新刊とともに特集・写真集が面陳されている(この時は女性写真家の作品集が集められていた)。左壁はギャラリースペースとして機能しており、下の棚には展示と連動した新刊が並べられている。奥の帳場には横にガラスケースがあり、主に洋書写真集のプレミア本が飾られている。写真集の冊数はそこまで多くはなく、また洋書の配分が多くマニアックなのだが、その分全体的に眺めて楽しめる余裕が持てる。ピンポイントに良質な作家を集めているので、既知未知問わずに遠慮なく重い本を手にして、ゆっくりページを開いて行けば、いずれ好みの写真に出会う大事な時が訪れるだろう。…とそんなことを言いながら、結局写真集は買わずに、表から持ち込んだ100均文庫、ちくま文庫「大衆食堂パラダイス/遠藤哲夫」創元推理文庫「炎の眠り/ジョナサン・キャロル」を計200円で購入する。

ところで「ささま書店」で購入した「青島の意地悪議員日記」であるが、ページを開いたら思わぬ贈物が挟まっていた。まさにこの本の大元である、昭和四十三年に青島幸男が参議院選挙に初立候補した時の『選挙葉書』である。青島は全国区で、石原慎太郎に次ぐ2位で当選する。
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2018年01月10日

1/10古本屋ツアー・イン・新保博久邸【第二章】

昨日に引き続き、本日も『盛林堂イレギュラーズ』として立ち働く。2017/12/19の続きとなる、ミステリ評論家・新保博久教授邸のお引越しお片づけである。だが年明けに「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏が教授に電話したところ、恐ろしいことに、本に関してはほとんど作業が進んでいないことが判明する…前回あれほど要・不要本の仕分け作業をお願いしていたのに、ほぼ何もしていないとは!このままでは、案の定一月中に教授が引っ越せなくなってしまうではないか!と大きな危機感を抱き、多少遅刻してきた小野氏と最寄り駅で落ち合い、すぐさま教授邸に突撃して決死の突貫作業に取りかかる。本日のミッションは、本邸ではなくマンション内トランクルームの本の仕分けと、本棚の解体である。四部屋のうち、何部屋まで片付けることが出来るのか…。作業に取りかかる前に、教授から「これ、関西土産です」と、今や関東では買えなくなったカール(チーズ味)と七味唐辛子をいただき、脱力してしまう。

ここ数日の間に、教授には必要とする本を書き出してもらっていたので、それを元にしてそれぞれが本の選別を進めて行く。トランクルームの中に閉じ込められると、たちまち囚人気分に襲われる。あまつさえ、教授に金網越しに飴を手渡され、悲しい差し入れ気分も味わってしまう…。
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そして肝心な作業は、初っ端からかなり難航を極めることになった。まず教授のメモが書きなぐっているので読み難いこと、それに作家ごとに特定作品指定があったりすること、ルーム内が暗いこと、通路が激狭なことなどなど。
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※これが教授のメモである。各棚ごとに掲出されていた。だが抜けもかなり多くあり、結局不要本として出したものを、再び棚に戻す虚しい作業あり。

軟体人間に変化し、テレスコープ・アイ(by香山滋)を振り回し、棚の上段から下段まで容易く確認出来れば、どれだけ楽に作業が進むことか…。かなり苦心して選別を進めながら、手放す本は廊下に出しまくり、縛り易いように同じ高さに揃えて行くと、そこにはたちまち本の海が誕生してしまう…恐ろしい光景だ。
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それを小野氏が結束しつつ、私は右側二部屋の本を表に出し切り、スチール棚の解体を進めて行く。棚上のボックス棚から雑誌を抜き取り、下に下ろす。その後二本の棚を解体。ふぅ、続いて右側手前の部屋だ。こちらも棚上棚を下ろし、ツッパリ棒を外し、棚の解体に取りかかる…だがその瞬間、最初に背中にかなりの重量がもたれかかり、さらに次の瞬間、たくさんの本が上から降り注いで来た。壁際の本棚が突然こちらに倒れかかって来たのだ!咄嗟に必死に支えつつも、本の雨と大きな落下音が、心の中に恐慌を巻き起こす!これはヤバイ、ヤバイぞ!だが、背中に力を込めて踏ん張ると本の雨は止み、棚の傾きもひとまず押さえることが出来た。息を荒げながら棚の上を見上げると、雑誌がたっぷり詰まった棚が、かろうじてバランスを保ち乗っかっていた…これが落ちて来ていたら、確実に病院送りになっていたな…。九死に一生を得た思いで、「小野さん、小野さん!」と外に向かって呼び掛けると、駆け付けた小野氏が顔を青ざめつつも、すぐさま棚と崩れ落ちた本の復旧作業に入ってくれた。こちらはその間、動けぬ体で取りあえず懸命に棚を支え続ける。途中、そんな緊急事態に陥っているのに、教授がノンアルコールビールを持って現れ、にこやかな笑顔で「まぁ動けぬ状態なら、これでも飲んで一息入れて下さい」とキング・オブ・暢気な振る舞い。思わず気持ちが和んでしまう。結局二十分ほど倒れかかる棚を支え続け、体力を一気に削り取られてしまった。
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※必死に棚を支える己の手を激写してみました…。

そんなことがありながら、午後七時前まで作業を続け、どうにかトランクルーム右側二部屋の整理仕分け作業完了に漕ぎ着ける。また近日中に、左側二部屋&ドア前トランクルーム&本邸の急ピッチ整理仕分けのスケジュールを組み上げて、本日のお仕事は終了を迎える。教授。小野さん、お疲れさまでした。命の危険を味わった報酬に、共に函は傷んでいるが、光風社「墓標なき墓場/高城高」浪速書房「天狗の面/土屋隆夫」をありがたく頂戴する。(つづく)
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2018年01月08日

1/8東京・清澄白河 リサイクルサービス モトキ

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古本神・森英俊氏から、店名不明の「謎の店」としてタレ込まれたお店に向かう。だがその前に荻窪にタッタカ向かい、「ささま書店」で文林堂双魚房「武蔵野隨筆」(函ナシ)Thames&Hudson「THE GRAPHIC LANGUAGE OF NEVILLE BRODY」を計216円で購入してから、丸ノ内線と半蔵門線を駆使して、隅田川の東岸におよそ五十分で到着する。駅から地上に出て『清洲橋通り』を東に向かう。そしてわりとすぐに現れる『東深川交差点』で北に曲がり込み、小名木川に架かる『東深川橋』の袂を目指す。すると右手、打ち捨てられたガレージのようなお店が姿を現す。壁はブロックとトタンで出来ており、ややV字型の屋根は、木枠で押さえられたトタンである。その屋根の下には、ほぼ廃品のような生活用品や古道具が詰め込まれている。四本ほど短い行き止まりの通路があるが、そこに入るのにもグイと分け入り地面に転がる物品を踏み付ける覚悟が必要である(真ん中辺りで、お店の名を書いたホワイトボード看板とチラシを発見する)。所々に古本を確認するが、カバーのないカッパブックスだったり、雨水を吸った「塀の中の懲りない面々」だったり、バケツに詰め込まれた「あいつとララバイ」だったり…。『のぞいて見ればなにかあるかも』と書かれた看板のある左端には、薄暗く広そうな空間がわだかまっており、その中からバキバキと何か作業している音が聞こえて来る。おっ、棚に一列週刊誌が並んでいる。絵葉書箱も発見。レコード棚もあるぞと奥に踏み込んで行くと、ハンチング姿の西村真琴風ご老人が、木材パネルをバラしている真っ最中であった。その横では暖をとるためか、七輪に木材がぶち込まれ勢いよく炎が上がっている…。暗闇には棚が巡らされ、主に陶器類が並べられているようだ。奥に新たな週刊誌棚を見つけるが、作業中のご老人の奥なので、詳しく見ることは出来なかった。すると突然「その壺はねぇ、高いよ」と話かけられたので「壺?」と返してしまう。「そう、いい壺だよ」「つ、壺ですか?」…俺は壺なんか見ていないのだ。すると「ありゃ?違う人だ」と照れ笑い。どうやら行き止まり通路を探索する先客と、取り違えてしまったようだ。こちらもエヘラと愛想笑い。それにしても、買う物が何もない…本当にない…週刊誌も「あいつとララバイ」も買うわけにはいかないのだ!と久々に何も買えずに、申し訳なく思いながらお店から脱出する。

だがやはり古本は買いたし!と降り始めてしまった雨の中、清澄白河&森下の古本屋さんを訪ね歩くが、不幸にもこの辺りは月曜が定休日であった…。仕方なく帰りに高円寺で途中下車し、「都丸書店」の『中通り』側外棚から、山と渓谷社「マタギ奇談/工藤隆雄」晶文社「東京の坂/中村雅夫」を計500円で購入する。
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2018年01月04日

1/4東京・椎名町 新「古書ますく堂」+「二人古本市」

昨年末に渡し損ねた本たちをカートで引き摺り、今日から仕事始めの「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に持ち込む。新年の挨拶を交わし、さらに本の査定をお願いしておき、そのまま池袋へと足を延ばす。西口側の長い地下道をテクテク歩き抜き、まずは「八勝堂書店」(2013/07/31参照)近くに顔を出す。ここも今日が仕事始めなのだが、と同時に二月末の閉店に向けて30%オフセールが始まっているのだ。表にはいつものシングルレコード台と文庫棚と単行本台に加え、CDとVHSのワゴンが出されているが、店内は通常営業時と変わらぬ模様。ついつい左壁棚初っ端の探偵小説棚に血走った視線を走らせてしまう。割引値でも手が届かぬ錚々たるレア本たちにため息をつき、フィルムアート社「キング・コングは死んだ/石上三登志」を280円で購入する。

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裏町をたどって椎名町方面にトボトボ向かい、同ビル一階の二軒隣りに引っ越した、店舗としては三代目となる「古書ますく堂」(2017/07/26参照)を初めて訪れる。今度のお店は、スナックや小料理屋の居抜きではなく、元ギターのリペア工房だったほぼがらんどうの空間である。店頭には無秩序に古書やビジュアル本が並び、ガラスサッシには店名垂幕やテレビ出演時のスナップや古本市のチラシ類が、目隠しのように貼り出されている。扉を引き開け中に入ると、中には取っ手が付いていない…自然に閉まるのを待つしかないようである。様々なタイプの本棚や、本棚として代用されているカラーボックス・ダンボール箱・プラケースによって取り巻かれた、ちょっと薄暗い空間である。右側の八百屋的島台の奥に「ますく堂」さんがどっかと座り、「いらっしゃぃ〜」とガハハ笑いで迎えてくれた。取り囲む本棚には、以前の店舗に並んでいたり積み上がっていたりしていたものがごちゃごちゃと収まっている。詩関連・短歌関連・本&古本&出版関連・漫画研究・日本文学・広島カープ・絵本・水木しげる・雑本・文庫本・手作りボールペン…そして左側の未整理本の山&箱に挟まれた平台には、新刊やミニコミ類が並べられている。神戸「トンカ書店」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」 p170参照)と大阪「本は人生のおやつです!!」(同「京阪神」 p72参照)による店内『二人古本市』(2017/12/13参照)ゾーンは、右側の八百屋的平台で開催されている。面陳と箱に分かれ、手前が「トンカ書店」で、奥が「本は人生のおやつです!!」。ともに基本は女性寄りであるのだが、妙に剛直で癖の強いところが、不可思議な魅力を生み出している。「トンカ」さんには探検や民謡やキッチュさが目につき、「本おやさん」では文学的快速球が目に留まる…ややっ、「本おや」さんの本には、すべてショップカードが挟み込み済みなのか。そしてこの台を前にして「ますく堂」さんは「今月は休まない!このフェアやってる間は、ちゃんと店を開ける!」と堂々宣言。こ、こんな頼もしい「ますく堂」さんを見るのは初めてだ。本がビシバシ売れれば追加もあり得るので、みなさま、寒い一月は椎名町の「古書ますく堂」へ!市は2/4まで続くので、終り頃にまた見に来ることにしよう。角川ホラー文庫「歯車〜石ノ森章太郎プレミアムコレクション〜/石ノ森章太郎」INAX「斎藤佳三 ドイツ表現主義建築・夢の交錯」日本評論社「金銀讀本/渡邉萬次郎」を計1300円で購入する。「金銀讀本」は、カバーはないが銀の紙にタイトル金文字で造本された昭和九年刊の特異な本。鉱物としての説明より、鉱山の説明がその多くを占め(アメリカのゴールドラッシュについても)、読物として単純に面白い。同出版社から読本シリーズは何冊も出されているが、実は古本としてのこの本は高値の一冊なのである。やった!
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2017年12月19日

12/19古本屋ツアー・イン・新保博久邸【第一章】

新保博久教授邸引越しお片づけ大作戦の、早くも第二回目を迎える。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と午前中のうちに教授邸に突撃し、本日の作業のメインを、同マンション内にあり教授が四つの部屋とその通路を占領している、併設トランクルームの整理に据える。廊下の奥にある鉄扉を開けると、真ん中に短い通路があり、さらに四つの鉄扉が向かい合っている…なんだか警察署の留置場みたいな雰囲気である。
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奇しくもミステリ本にはとてもピッタリのトランクルームと言えようか。各部屋内は二畳ほどだが、本棚がしっかりと立て込み、主に日本ミステリの文庫本を作家五十音順に収めているのだ。だが当然ここにある本も、京都に持って行く本・東京の倉庫にひとまず置いて行く本・必要の無い本に選別しなければならないのである。選別するには作業スペースが当然必要となる。そこでまず、通路に積み重なったダンボールを引き出し、通路中央に立つ大きなスチール棚の整理&解体をしなければならないのだ。そのスチール棚にも当然本が並んでいるので、まずは本を出して教授に選別してもらわねばならない…とにかく色々と本格作業前の前段階作業が多いミッションなのである。というわけで小野氏と教授と力を合わせ、三時間強を黙々バリバリ作業する。すると本が出てくるわ出てくるわ。扉外側の廊下にはたちまち結束本の山が築かれ、まるで古書会館の市会場のような光景になってしまった。
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だがこれでもまだ氷山の一角の一角といったところ。なんたって目算ではおよそ八万冊がこのフロア内に犇めいているらしいのだ。なのでスピーディーに作業を進め、本を次々選別処理していかないと、教授はいつまでも京都に引っ越せないことになってしまうのだ!トランクルーム内にしゃがみ込み、懸命にヒヨコのオス・メスを選別するように、文庫本を目的地別箱に仕分けている教授の背中に、ビビビビと盛大にエールを送っておく。そして通路の邪魔な物が消えたことにより、扉を開けられるようになった四部屋をチラリと観察。むぅ〜、戦前から現代まで日本ミステリが文庫を中心に美しく形作られている。コレクションと言うよりは、生きた資料的棚造りが為されているのだ。教授はあまり高い本は買わぬ派なのだが、それなのにこの充実度は目を瞠るものがある。ちゃんと島久平とか楠田匡介とか鷲尾三郎とか三橋一夫とかも並んでるんだもんな。後の値段を見ると、確かにほとんどが千円以下の値段で見つけたものばかりなので、目を丸くして感心し、見習わなければ!とさらに今後も古本探しに血道を上げることを、勝手に決意する。午後一時半には無事にスチール棚の解体まで漕ぎ着け、前回と同じくとんかつ昼食休憩に入る。お腹を満たした後教授宅に舞い戻り、これまた前回と同じくノンアルコールビールを振る舞われながら、次の作業として雑誌の選別処理に入る。これを済ませて雑誌をたくさん運びだせれば、奥の二部屋にわりと広めの教授の選別スペースが生まれるのだ。こちらは前回粗い仕分けはしておいたので、かなりスムーズに進む。そして午後五時半、別のトランクルームに運び込む本を盛林堂号に積み込み(その際、マンション前に積上げた本の山を、悲鳴を上げながら豪快に崩壊させる不覚をとる。入口付近が少し傾斜しているのに、まったく気付かなかったのだ…だが結束は崩れなかったので、まずは一安心。気をつけなければ)移動。車内では教授に牛乳飴と乳飲料を振る舞われる。二台の巨大台車で本を運び上げて、本日の作業は終了となった。これで後は、教授がひたすら邸内&トランクルーム内の本の選別を進めてくれれば、来年からは本を縛って運び出すという、本来の作業に入ることが出来るようになる。教授!地道な作業と思い切りに期待しておりますので、来年も引き続きよろしくお願いいたします!そして今回も厚かましく本日の作業の記念品にと、春陽文庫「消えた娘/三橋一夫」「売国奴/永瀬三吾」(初版カバーナシ。教授、50円で買ってる!)をいただき、ピョンピョン飛び跳ねて喜んでしまう。いやぁ、これだったら、いくらでも手伝いし続けていたいものだ。よし、この「売国奴」には、来週うかがうはずの某所にて、カバーのカラーコピーをお願いしてみよう!………つづく
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2017年12月18日

12/18東京・鶯谷 古書ドリス

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森下から隅田川を超えて鶯谷に移転して来た「古書ドリス」(2012/12/03参照)が、本日オープン初日を迎える。何はなくとも見に行かなければと、午前中の山手線に乗って駆け付ける。島型のホームに降り立てば、そこは青空の下の墓場の下の崖際である。南口への階段を上がり、橋状の通路を長く歩いて改札を抜けると、南北に架かった橋の中間にある小さなロータリーのある駅前となる。北に橋を下り、集合住宅&雑居ビル街の中へ入り込んで行く。途中の階段を下り、東に橋の下のコンクリトンネルを潜ってさらに北に進めば。巨大な『言問通り』に突き当たる。しばし信号待ちして横断歩道を渡り、すぐの『うぐいす通り』に歩を進め、さらに北へ。通りの最初に古い看板を掲げた酒屋やお寺があったりするが、後は現代的なビルが建ち並ぶぼんやりとした商店街である。そんな通りが終わろうとする東側マンション一階に、立派な古本屋さんが端然とオープンしていた。自動ドアから中に入ると、奥に向かって縦長く広がる空間である。左右両壁をしっかりした棚が覆い、奥へ延びて行く。手前のセンターには背中合わせの棚があり、途中一旦くびれるようになり、さらに奥の空間には左に帳場、中央に低めの棚台、そして右壁はガラスショウケースを含んでいる。左側の通路に進むと、壁には村上春樹・詩集・古書・古書詩集・怪談・奇談・幻想文学・稲垣足穂・中井英夫・種村季弘・日影丈吉・海外幻想文学・レコード・妖精・魔法・魔術・オカルト・SFが続き、向かいには哲学・思想・心理学・自然科学・音楽・精神などが収まっている。右側通路には、入口脇に絵本・児童文学・文庫本が集まり、壁棚は下段に大判のビジュアル本をズラズラ並べつつ海外文化・昭和モダン・落語・芸能・南方熊楠・博物学・絵葉書・寺山修司・アングラ・全集を上段に集めている。向かいには絵本・美術図録・アートブック・ファッション・セレクトコミック・諸星大二郎・上村一夫・水木しげるが並び、棚脇には少女・ゴシック・人形・ロリータゾーンが設けられている。奥のゾーンに進むと。帳場下には澁澤龍彦を核にフランス文学が固まり、中央にはタロットーカードとその関連書物を集めた島が造られている。右壁のガラスケースには当然の如くレアな本が収まっているのだが、その中にイナガキタルホの「第三半球物語」や「天体嗜好症」が混ざり込んでいるのを見つけ、独り静かな店内で心拍数を上昇させてしまう。さらにはCD&SF文庫棚が置かれ、奥に向かってアート&美術・映画の幅広いゾーンが展開し、帳場脇に曲がり込んだ棚には奢灞都館本や国書刊行会の新刊が暗い額を寄せ集めている。…むむむ、完璧!と言って良いほどのきめ細かい棚造りは必見である。すべてのジャンル、すべての本が“幻想”をキーワードにして、まるで日常から非日常の扉を開く鍵として機能してしまいそうな気になる、そんな魔法に瞬時に掛けられてしまうのである。こうなればもはや、お店自体がシュールレアリズムを現出させる装置のようである。つまりここは、街という日常から続く古本屋さんではなく、空間的にはつながっているが、精神的には街という現実から高貴に隔離された古本屋さんと言えるのかもしれない。いや、とにかくこの古本で出来た幻想タペストリーは、かなりの迫力なのである。値段はしっかり目が多いが、時に優しい値段も付けられているので、執念を持って見つけるべし。そんな優しい一冊を嬉しく掴んで帳場に向かい、店主・喜多氏と言葉を交わす。お店は前店舗より広くなったそうだが、ちょっとまだ持て余しているとのこと。引越し当初、ダンボール100箱くらいと見積もっていたら、結局300箱になってしまったこと(このことから、並ぶ本をざっと眺めて何冊か把握出来る古本屋的能力が、自分に欠けていることを確信。だからやっぱり、一冊ずつ数えるしかないと、気持ちを新たにしたそうである…)。鴬谷に移転して谷根千や上野が近くなり、新たな流れが生まれそうなことなどなど。それにしても、「D.BOOK」(2009/04/05参照)がいつの間にか姿を消して以来、古本屋無風地帯であった鶯谷に古本屋さんを開いてくれたことは、歓迎すべき事柄である。移転開店、おめでとうございます!學進書房「ユーモア中篇小説集 雑音横丁/城戸禮」を購入する。

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まさかドリスでこんな本を買うことになるとは。昭和二十二年の再版仙花紙本。鬼多作小説家・城戸禮のわりと初期作である。『サイレン夫人』『明るい仲間』を収録。傷みと汚れがあるため1500円であった。
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2017年12月14日

12/14古本屋ツアー・イン・新保博久邸【プレリュード】

「盛林堂書房」(2012/01/06参照)のお手伝いで、ミステリ評論家&乱歩研究の権威・新保博久氏(通称:新保教授)のお宅の片付けに同行する。実は寂しいことに、教授が来年早いうちに京都に帰京することになっているので、そこに照準を合わせた、超迅速な片付けを行わねばならないのである。もちろん「盛林堂」さんの最終的な目的は本の買取にあるのだが、そこに至るまでには、本が一杯のマンション四部屋の整理と、本がいっぱいの同マンショントランクルーム(四部屋+通路)の整理と、ご近所のトランクルーム大小二部屋の整理を行い、本を処分するものとしないものに選別し、縛り上げるスペースを作り出さないと、にっちもさっちも進まないのである。そこで今日のミッションは、マンション奥二部屋の整理を行い、作業スペースを作り出すこととなる。都内某所のマンション四階に上がり、教授に邸内に招き入れられる。うぉぅ、本が棚やティッシュ箱や本ケースに詰められそこかしこに積み上がり、これでもかと合理的に適確に組み合わされている。なので通路は激細で、本があらゆる角度で視界に入って来ても、それほどの圧を感じないのが、なんだか不思議なところである。…いや、決して整理されているわけではないので、独自の積上げ論法がそう擬態させているだけなのかもしれない…。午前十時五十分から作業を開始し、盛林堂・小野氏が切り込み隊長を務めて積み上がるものを掘り起こし、そこから出たものたちを私が新たに積上げつつ出たゴミをひたすら袋詰めして行く。本当にこれをただただ六時間余マシンのように繰り返し(途中、とんかつ昼食の休憩を挟み、戻ってから教授にノンアルコールビールを振る舞われたりする)、大量の献呈本&雑誌・書類・ゲラ・プルーフ・原稿・プラケース・ティッシュケース・本ケース・新聞・パンフレット・書簡・シュレッダー・i-pod shuffle・パソコン・洗濯ばさみ・3Dメガネ・コート・靴下・VHSビデオ・ウェストバッグ(何か入っていると思ったら、中にはもうひとつのウェストバッグが詰められていた!)・財布・手帳などと格闘する。小野氏はもはや掘削ドリルのようである。本は書評用の九十年代以降のものがほとんどだったが、途中古本地層から発掘されたアンティーク棚脇の乱歩評論本ゾーンには、『さすが教授!』と大いに感動する。まぁ本日の私は、本と言うより紙ゴミばかりに触れていたので、本格的な教授邸ツアー(トランクルーム含む)は次回訪問以降に行えればと思っている。そして夜になり、ダンボール十二箱を携え、ご近所のトランクルームへ移動。そこに箱を運び込んで積上げ、さらに次回以降の作業効率を考え、トランク内の整理にも手をつける。
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トランクルーム通路で作戦を練る教授と小野氏。実は整理用に新たにもう一部屋を借り、合計三部屋が教授のテリトリーとなっている。

結局色々終わったのは午後七時過ぎ。だがこれで、一応全貌の確認が終るとともに、作業スペースが確保出来たことになる。教授がちゃんと、二十ほどのゴミ袋を指定日に出してくれていればの話だが…。それにしても片付け作業していると、古本より資料関係の方に物凄いものが含まれており、時々手を止めてしまう。資料としての滅多に見られぬ生原稿コピー類や、有名人からの書簡、ミステリ関連本の企画やイベント企画など、現在進行形の生な資料がわんさかわんさか出て来るのだ。う〜んスゴイスゴイ。そして今日の作業の記念にと、かつて吉祥寺にあったミステリ書専門店「TRICK+TRAP」の書皮と、復刻版の「少年探偵団B・D・バッジ」「少年探偵手帳」をいただく。ちなみに、すべて古本山の中からの発掘品である。
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「TRICK+TRAP」の書皮は連続したシャーロック・ホームズのプロファイルがモチーフになっている!

そんな風に疲れ果てて家に帰ると、癒してくれるように嬉しいヤフオク落札本箱が届いていた。3100円で落とした、小栗虫太郎の戦後仙花紙本群である。だがその中には一冊、昭和十三年刊の裸本だが、不盡書院「爆撃鑑査寫眞七號」が含まれていたのだ!ぬぐぅ〜嬉しい!これだけがとにかく欲しかったのだ!このオリジナル本で、『爆撃鑑査寫眞七號』『金字塔四角に飛ぶ』『皇后の影法師』『破獄囚「禿げ鬘」』『屍體七十五歩にて死す』が読める日が来るなんて…うひょぉ〜〜〜〜うっ!
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2017年12月08日

12/8東京・下高井戸 SOLID DESIGN

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大変に冷える一日ではあったが、どうにか雨には降られずに、世田谷の赤堤に流れ着く。そして偶然にも、雑貨屋のようなお店の店先で、映画パンフレットが売られているのを目にしてしまう。駅からは南口に出て、踏切から『プラザ通り』→『日大通り』と変化する商店街を、南西に歩いて行く。ズンズン進んで、『松原高』が右手に現れる交差点で左手を見ると、マンション一階の牛乳屋さんの隣りに、そのお店はスタイリッシュに存在している。店頭には古着や雑貨やアンティーク類が並び、左端に件のパンフ木箱が置かれている。『古い映画パンフ』の札があり、一律500円となっている。だがこういう『古い』という文句は、すぐには鵜呑みには出来ない。確かに古いは古いが、八十年代のものだったりすると、思わずがっくりしてしまう。いや、八十年代ももはや三十〜四十年前…充分に古いのではあるが、それが価値を持つ古さであるかどうかは、また別問題なのである。そんなことをうっすら考えながら、五十冊ほど薄手のパンフが収まった箱に手を伸ばす。むむむむ、でもこれは本当に古いものが多い。ロマンス映画・ヤコペッティの残酷映画・SF映画、それに『バンビ』や『白雪姫』や『ジャングルブック』など、ディズニー映画の数々…映画会社の出していた冊子・「映画の友」・グレムリンのアメコミ・ロスのガイド一式・アメリカのマイナーアトラクション施設のお土産本一式・バレエ&演劇関連のパンフレット…どれも魅力的な品々である。だが値段は500円なので、ポンポンと買うわけにはいかない…などと思いながら冊子を繰っていると、ぬぉう!スゴいのが出てきた!1970年、東宝チャンピオンまつり『モスラ対ゴジラ』のパンフレットだ!やったぁ!こんな偶然流れ着いたところで、こんなエクセレントなパンフレットが、俺を待ってくれていたとは!さらに藤城清治の木馬座ファミリー劇場・プログラム「カエルのぼうけん」(有名キャラ・ケロヨンの舞台パンフである)を見つけて喜びを重ね、アクセサリー中心の厳かな店内で、計1000円で購入する。
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このパンフを入手出来たのは劇的に嬉しい。本来の『モスラ対ゴジラ』は1964年に製作上映されたものであるが、この1970年の『東宝チャンピオンまつり』で上映されたのは、その短縮編集版である。同時上映は『柔の星』『アタックNo.1 涙の世界選手権』『昆虫物語 みなしごハッチ』。なので中身はすっかりお子様仕様なのである。モスゴジ『ものがたり』の、「ゴジラはついにモスラの卵をみつけました。「これは、おいしそうなごちそうだ、ひさしぶりに卵やきでもたべよう」ゴジラは、ほうしゃのうを卵にはきかけました。」「ゴジラとモスラおやこのだいけっせんは、いつまでもつづきました。ゴジラがんばれ!モスラまけるな!さあ、どっちが勝つでしょう」などが、大いに泣かせてくれます。
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2017年11月25日

11/25『物故探偵作家慰霊祭』に涙する。

午後の早い時間に吉祥寺の北に流れ着いたところで、『成蹊大学』が近くにあることにはたと気付く。ならば、大学図書館で開催されている『小栗虫太郎〜PANDEMONIUMの扉を開く〜』を見に行かない手はない!調べてみると、通常は月〜金の公開だが、本日25日はギャラリートークがあるため、偶々公開しているようだ。黄金色の枯れ葉が舞い散るケヤキ並木を抜けて正門から構内に入り、警備室に図書館の場所を聞くと、すぐ左手に見えるガラス張りの矩形の建物と教えられる。階段を上がって入館用紙に記入を済ませ、入館証を首から下げてゲートを通過する。するとすぐ正面に円形の明るい吹き抜けがあり、そこに沿うようにして展示物を収めたガラスケースが並んでいた。ぐわぉ!『完全犯罪』の生原稿!力強く勢いのある文字だが、非常に読みやすい。こ、こ、『黒死館殺人事件』の書き損じ原稿に創作メモ!もはや米文字並に細かい『白蟻』原稿!推敲が激し過ぎて何が何だかわからない『成層圏魔城』原稿!おっ、先日いただいた「ぷろふいる昭和十一年七月号」に掲載されていた『愛嬢、愛息を左右に、カメラに入った小栗虫太郎氏』の生写真までも!などと思う存分偉大な探偵小説家の遺物を堪能する。中でも虚を突かれたのは、昭和二十二年十月二十一日に行われた『物故探偵作家慰霊祭』のモノクロスナップである。壇上端に乱歩が立ち、慰霊の立花が並ぶその上に、小酒井不木・渡邉温・平林初之輔・牧逸馬・濱尾四郎・夢野久作・松本泰・蘭郁二郎・甲賀三郎・井上良夫・田中早苗・大坂圭吉・小栗虫太郎の名が貼り出されている。敬称はすべて“君”が用いられている。まるで、質の高いアンソロジーの目次を見ているような豪華さが、切なさと虚しさに拍車を掛ける…。この展示は12/1(金)まで。
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その後吉祥寺まで出て、『吉祥寺パルコ』一階の『吉祥寺通』に面した、小さなガレージのような『ポップアップスペース』を覗き込むと、小さな古本イベント「TOKYO BOOK PARK KICHIJOJI」が開催中であった。
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「rythm_and_books」(2011/08/10参照)「一角文庫」「ハチマクラ」(2012/10/04参照)「東京くりから堂」(2009/10/29参照)が参加しているようだ。簀子のようであるが、お洒落なの木製のパレットを積み重ねて会場を形成しており、絵本・洋絵本・ビンテージ広告・お洒落紙物・駄玩具・サブカル・アート・アングラ・文学などが、統一感のあるディスプレイでキュートな小宇宙を作り出している。それらに魅せられ、さんざめく女子たちの間を縫い、「rythm_and_books」の棚からプレイガイドジャーナル社「ピープルズクロニクル」を購入する。この催しは12/3(日)までとなっている。
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2017年11月13日

11/13東京・早稲田 早稲田青空古本祭

珍しく午前のうちに早稲田に向かい、今回から「青空古本掘出市」(2012/05/19参照)から「青空古本祭」へと名称を変えた、『早稲田大学』構内・大隈重信像近くの11号館・10号館・9号館に囲まれた中庭的場所で開かれている古本市に向かう。ゆっくりとした学生の人波に乗って大学へたどり着き、色づいた銀杏並木を通過すると、まったく変化のない緑の杉並木に見下ろされた、巨大白テントの古本市にたどり着く。樹と空と校舎が高いので、まるで白テントはアスファルトに張り付いているような低さに見える。
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すでに多くの古本修羅影がテントの中で蠢いているようだ。そんな修羅場に突入しようと近づいて行くと、森英俊氏&彩古氏の二大古本神と擦れ違い、挨拶を交わす。時刻は午前十時半、早々の神の離脱である…もはやミステリ方面でめぼしいものは残っていないであろう…。案の定テントの中は賑わっており、最奥の帳場もすでにその忙しさがピークを迎えてしまっている。物凄い活気であるが、日陰のためかテント内の空気は冬の冷たさで、手をかじかませるほどである。各ワゴンを巡り、時に張り付き、時に背越しに覗き込み、時に首だけ人垣に差し入れたりして行く。「玄書房」の硬めの古書が素敵であるが、これは!と思った本はちゃんと値段が付けられているので、今回は残念ながらパス。その代わりに「古書現世」(2009/04/04参照)スペースの片隅に、先日向井氏から聞いた黒い本の一部(2017/11/06参照)、サトウハチロー・石黒敬七などが固まっているのを見付け、裸本で安値なので一冊抜き取る。結局二十分ほど滞在し、求龍堂「二笑亭綺譚 五〇年目の再訪記/式場隆三郎・藤森照信・赤瀬川原平・式場隆成・岸武臣」六藝社「風流記/石黒敬七」(裸本)審美社「二人の友/小山清」(函ナシ)を計1200円で購入する。古本市チラシの裏に描かれた大学構内地図を参考にし、丘の上の西門から構外に出て、そのまま『早稲田古本街』をブラブラ散策。すると「飯島書店」(2010/04/14参照)店頭100均文庫ワゴンで、正進社名作文庫「虫のいろいろ・聖ヨハネ病院にて/尾崎一雄・上林曉」(収録作は、尾崎が『虫のいろいろ』『やせた雄鶏』『小鳥の声』『華燭の日』『退職の願い』、上林が『聖ヨハネ病院にて』『小便小僧』『薔薇盗人』)を見つけたので、そのまま地下鉄に乗って帰らずに良かった!と思い購入する。

さて、来る11/19(日)の、今年最後の「みちくさ市」に、いつもの如く勇んで参加いたします。家中から選びつつ引っかき集めた良書・珍書を並べていますので、ぜひとも雑司が谷でお会いいたしましょう!

鬼子母神通り みちくさ市
●開催日時
2017年11月19日(日)11:00〜16:00
雨天中止です。
・当日8:00に天候による開催の有無を決定します
・みちくさ市本部 携帯電話:090-8720-4241
●会場
雑司が谷・鬼子母神通り
東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺
東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
●お問合わせ
michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
●主催
鬼子母神通り商店睦会  運営/わめぞ http://d.hatena.ne.jp/wamezo/
協賛/雑司が谷地域文化創造館
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2017年10月29日

10/29東京・南砂町 くまねこ堂

大雨の神保町である。「神田古本まつり」(2008/10/28参照)の各ワゴンは、雨粒を一滴たりとも侵入させまじ!と厳重にブルーシートで梱包されている。それはまるで、青い巨人のソファが並んでいるような、シュールな寂しい光景であった。
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「神田古書センター」二階の「夢野書店」(2015/03/13参照)にテクテク向かい、店内で古本神・森英俊氏と合流する。これから南砂町にある、催事とネット販売の専門店「くまねこ堂」の事務所&倉庫探訪に向かうのである。先日の神田明神「古本感謝祭」(2017/10/04参照)で出店していた「くまねこ堂」さんに、森氏が巧みに取り次いでいてくれたのである。おぉ、我が古本メフィストフェレスよ、ありがとう!とまずは集英社明星文庫「二人のゴッドファーザー マーロン・ブランド アル・パチーノ」豊年社「接吻市場/邦枝完二」を古本まつり特別割引の計240円で購入し、地下鉄で東京の東へと向かう。途中愚かにも逆方向の地下鉄に乗り換えたりしてしまいながら、およそ四十分後に集合住宅で構成された町に到着する。氏の長いコンパスに合わせるように、必死に早足で、北に向かって歩いていると「「たなべ書店」(2011/02/25参照)、一応寄って行きますか」と、今まさに古本屋に向かっていると言うのに、氏が古本神たる所以を発揮される。一刻も早く「くまねこ堂」が見たいので、『仕方ないなぁ』と思いつつもつられて店内に進み、左通路奥の古書コーナーにへばり付いてしまう。だから、ここでとても素晴らしい一冊に出会うとは、微塵も思っていなかったのである。氏に続くようにして棚に視線を走らせていると、見たこともない一冊の本にグイッと惹き付けられる。磯部甲陽堂「幽霊探訪/大窪逸人」、大正五年の本である。それなのに新刊のように美しい…パラパラと繙いてみると、軍人のM中尉(もしくは少尉)が、幽霊話を収集する五話を収録している。その序文に目を向けると、作者の大窪逸人は若き日の山中峯太郎であることが判明!うぉっ!こりゃ凄い!ぜひとも買わなければ!と値段を見ると驚愕の300円!嬉しい、嬉しいよ〜と心中むせび泣きながら購入する。

お店に引き入れてくれた氏に掌返しで感謝しながら、多少迷いつつ「くまねこ堂」に到着する。氏が来意を告げ中に招き入れられると、そこは数人のスタッフが静かに立ち働く完全なる事務所であった。古本に囲まれた倉庫的事務所を勝手に想像していたので、仕事場的空間に多少面食らう。すぐに「くまねこ堂」さんが姿を現し、椅子を薦められお茶を薦められ、しばし歓談する。「くまねこ堂」さんは、古本以外にも骨董や玩具や絵画も扱う、オールマイティな事務所店である。お店の生命線である買取が、月に三十以上あると聞き、さらに面食らう。ブログにアップされる、時にレアミステリも混ざり込む潤沢な買取品は、その精力的活動の賜物であったか。その買取品の一部でもある、事務所内に飾られた石森章太郎&宮崎駿色紙や手塚治虫原画に目を奪われていると、森氏が付録漫画を蒐集しているのを聞き、早速奥の倉庫から四本ほどの付録漫画束が現れてしまった。買い取ってからもう二年ほど放置していたそうだが、その背を見て森氏がゾーン(お目当ての本に出会った瞬間、周りが目に入らなくなり古本だけにひたすら集中するモード)に入ってしまう。紐を解き、一冊一冊吟味し、さらにはi-padで所蔵本を検索し照らし合わせて行く…こうなると長い、長いのである。氏が見終わった付録本を回してもらい、興味ある本を一応選り分けたりもするが、いつしか飽きてしまったので、こちらは一足先に倉庫を見せてもらうことにする。すると森氏は手を止め、「私も」と付いて来てしまった…あぁ、身勝手な古本メフィストフェレスよ!サッシ扉を開けて入り込んだ倉庫は、相当に広い、手前に本棚が大量に並び、六本の通路を造り出し、奥は主に本を詰めたプラケースと結束本が大量に積み上がる構成。倉庫内に入り込んですぐ右の棚には、店主が買取して嬉しかった、愛でるに値する本が集められている。水木しげるの戦記漫画オリジナル・手塚古書漫画・北園克衛詩集・横溝正史レア本(あぁっ、こんな絵の「青髪鬼」見たことがない!)
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・「墓場鬼太郎」・貸本漫画…う〜ん、これは凄い。そして奥に進んで色々探ってみると、海野十三の古い全集や、「火星魔」の箱付き本、付録本「ラドン」、創元推理文庫の白帯ズラリ、竹久夢二大正オリジナル本、「のらくろ」戦前本、などが普通に見つかり、別に買えるわけでもないのだが、とにかく大興奮してしまう。古本以外にもゲームウオッチ・少年サイボーグ・古銭(金銀貨含む)・ナチス勲章・ライダーカードなどなどが集められ、結構何処を見ても楽しめる質の高い倉庫であるのを実感する。
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いつまでも興奮し、いつまでも滞留し、いつまでも掘り返していたいのだが、実はこの後二件の買取が入っているそうなので、泣く泣く断念する。それでも倉庫内から手の出せそうな二冊を握り締め、充実の探索を終了。隣りの事務所に戻り、再び付録漫画の吟味に入る森氏を尻目に、計四冊の精算をお願いする。そのうちの裸本の一冊は値付に時間を要するとのことで、ひとまずお預け、その他の三冊、小学館 小学五年生昭和三十二年九月号付録「怪魚のひみつ」(生きた化石シーラカンスを題材にした探偵漫画)集英社 小学五年生昭和三十三年三月号付録「まぼろしの衛星/三木一楽」(森氏に「面白いですよ」と勧められたので)愛育社「都市覆滅團/野村胡堂」(多少傷んでいるが、欲しかった読みたかった一冊!)を明らかにサービス価格の計二千円で購入する。帰りは、買取出発ついでに車で駅まで送っていただくことに。そのまま買取に同行したい気分であったが、それはさすがに叶わぬことなので、おとなしく本日の嬉しい獲物を鞄に秘し、氏と本日の感想戦を行いながら再び地下鉄で東京の西へと戻る。

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と言うわけで、とても嬉しい本日の獲物である。無条件にどひゃっほうである!「幽霊探訪」はカバー付きの本で、カバーは柳に火の玉がじゃれつく絵だが、表紙は花の横で裸の女が長い髪を梳る絵となっている。いやぁ、古本神と行動をともにすると、やはり嬉しい本に出会えます。次回は何処に誘ってくれるのやら…。
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2017年10月18日

10/18東京・中野 MANDARAKEなんや

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しばらく三つの仕事に、身を引き裂かれるように苛まれていたが、本日正午過ぎにそのうちの二つに決着を着け(ひとつは古本が報酬の盛林堂さんのお仕事。この後何事もなければ、近々楽しい何かが出るはずです…)、休む暇なく先日の続きとばかり過去のゲーム攻略本をカートに積上げ、ゴロゴロと外出する。向かうは『中野ブロードウェイ』。まずは長いエスカレーターで三階まで一気に上がり、「MANDARAKE買取処」で再び攻略本を買い取ってもらう。「GYARAXY」のリーダーに「あっ、この前の方ですね」(2017/10/11参照)と言われつつ素早く査定される。今回大物は一冊だけで、四十冊ほどが100〜200円の値段となる。と言うわけで軽く懐が潤ったので、四階に上がって「海馬」(2015/02/06参照)へ。先週見たばかりなので、それほどの変化は感じられなかったが、通路の百均棚から三冊を抜き取る。富士屋書店「きしゃのたび/木村定男画」(落書きアリ)松和書房「講談と実話 昭和二十三年十月號」博文閣「別冊 實話と讀物 夏の傑作讀切集」(表紙・扉は志村立美。長田幹彦『怪談讀物 油屋おせん』香山滋『怪奇小説 壺の中の女』など掲載)を計324円で購入する。ここから南に踵を返し、セル画ショウウィンドウ前を過ぎ。シャッターに挟まれたような狭い通路に入り込む。おぉ!今日はシャッターが閉まっている「ワタナベ古書」(2008/08/28参照)の隣りに、確かに小さい怪し気な新店がオープンしている。これでも「MANDARAKE」の仲間なのか?と戸惑うほど、それほど手が入っていない居抜き感とチープさが漂っている。もちろん扉はなく、広さは「ワタナベ古書」と同等。つげ&水木ポスターパネルや昭和アイドルポスターが所々に下げられ、壁際にはカゴ棚や飾り棚、中央にはゴチャリとした飾り棚、右奥に横長ガラスケースがあり、左奥には縦長正面ガラスなしガラスケースが置かれ、その脇にピンク色の服を来た青年が「いらっしゃいませ」と立っている。商品として置かれているのは、ポスター類・フィギュア・駄玩具・お面・美少女コミック・一般コミック・VHSビデオ・小ブリキ玩具・人形類・週刊誌などなど、ジャンルを超え過ぎた物たちが集っている…なんだか、「MANDARAKE」各店舗…いや、『中野ブロードウェイ』全店舗の、吹き溜まりのような雰囲気…風がここから起こるのではなく、様々な風がこの場所に吹き込んでいるのであろうか。古本も確かにあるにはあるが、私には手の出せないものばかりである。お店の性格をつかみ切れずにフワフワしていると、ピンク色の青年が「何かお探しですか?」と笑顔で話しかけて来た。聞けばこの店舗の商品には値札が付いておらず、すべては店員さんとお客の会話で決められて行く、けったいなシステムが採用されているそうである。しかも店員さんは日替わりなので、来店する度にお店のカラーが変化するらしい。ピンク色の青年は同人誌を得意ジャンルにしており、今日は同人誌箱を店内に設置していた。「何がお好きなんですか?」と聞かれたので古本である旨返答すると、「あ〜、今日は、ないですねぇ…では海馬の者が店員を務める時に来ていただければ、お気に入りの古書が並んでいるかもしれません」と勧められる。結局古本は買えなかったが、わりと楽しく会話し、他の「MANDARAKE」店舗に比べ、時の流れが別世界のように異様に鈍いひと時を過ごす。「またどうぞ〜」の声に送られ、二階の「古書うつつ」(2008/06/18参照)へ。店頭100均が秦恒平祭になっているのを目撃してから、店内で朝日新聞社「アサヒ相談室 読書/中島健藏」秋田書店 世界の名作推理全集「黄色いへやの秘密/ルルー原作 山村正夫訳」を計400円で購入する。そしてすっかり日が暮れて、冬のような冷たい風が吹き始めた阿佐ヶ谷では「ネオ書房」(2010/02/09参照)で角川書店「朝の歌〈中原中也傳〉/大岡昇平」を50円で購入し、安い古本ばかり購って家に帰り着くこととなる。
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2017年10月15日

10/15東京・千歳船橋 eco BOOK千歳船橋店

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日曜日なのに、仕事で千歳船橋にて缶詰気味。だが少し待ち時間が出来たのを幸いとし、屋根波の低い雨の住宅街を、ビニール傘を頭上に差し掛けて、ちょっとだけ散歩してみる。以前はこの地にも二軒の古本屋さんがあったのだが(2009/03/19&2015/03/02参照)、今は一軒もない寂しい状態。それでも何処かに古本の影はないかと、目を凝らしながら濡れたアスファルトの上を滑って行く。インパクト大な名である『森繁通り』をテクテク…むっ、駅から200mほど北に来た左手に、リサイクル系チェーン古本屋の「eco BOOK」があるじゃないか。茶色い古書狂いの心をつかむ何かがあるとは思えぬが、万が一何かあるかもしれないし、少し古本で心を潤しておこうと入店する。するとお店の奥から、子供たちの激しい歓声が響いて来る…その激しいやり取りからして、バトル系カードゲーム大会が開かれているのだろう。古本はほぼお店の前半に集中。右端がコミック・特価文庫・社会雑学文庫通路。真ん中が時代劇文庫・国内文庫通路。そして左端は黒い暖簾の掛かった完全なるアダルト通路となっている。右端通路を右に折れ曲がると、通り側壁棚に新書や単行本類が少しだけ集められている。古本以外にもバーゲン本が紛れている。入る前からわかっていたが、古い本など一切なく、近年出た本の古本ばかりである。値段は定価の半額よりちょっとだけ上で、精算時には表示価格に消費税がプラスされる。雑学文庫コーナーには新しめのちくま文庫がちょいちょい含まれているので、少し見応えあり。河出文庫「怪異な話 本朝不思議物語/志村有弘編」を購入したところで、少しだけ古本世界に触れたことに充足感を覚えて、短い散歩を切り上げ仕事場に帰還する。
posted by tokusan at 21:55| Comment(2) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする