2017年02月05日

2/5東京・新宿 ホホホ座 at BEAMS JAPAN

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野暮用で横浜方面の実家に里帰りし、夜になって東横線で帰京する。東横線に乗り続けて渋谷駅を通過し、電車が各駅の副都心線に成り代わった後に、午後七時前の『新宿三丁目駅』で下車したところで、昨日から京都の「ホホホ座」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」P45参照)が『新宿丸井本館』裏の『BEAMS JAPAN』にて、3/5までの期間限定ショップを開いているのを思い出す。果たして古本が売っているかどうか定かではないが、念のため足を運んでみるかと『A2出口』から丸井前に出て、『明治通り』からその裏側に回り込み、若者で賑わいを見せるガラス張りの『BEAMS JAPAN』ビル前。通り側のウィンドウには、路面電車・嵐電が写る大きなポスターが貼り出され、横にはコラボショップのロゴマーク。そのガラスの向こうには、商品を品定めする、お洒落な若者たちの楽しそうな顔・顔・顔。角面の入口から中に入ると、異様にジャポニズムを意識した、モダンシンプル和匠な空間。入口近くのウィンドウ際には、ホホホ座がセレクトした独特な京都商品や雑貨・ZINEなどが集められ、ほぼ若者のためのニューウェイブなミニ京都が出現中。入口右側のカフェスペース前には、三方(切腹するときお尻を乗せるやつ)が巨大化して重層化したような台があり、京都の銘菓や新刊本などが並べられている。その裏側に回り込むと、おっ!三十冊ほどだが古本がちゃんと並んでいるではないか。すべては京都に関する本で、歴史・史蹟・寺社・人間・風土・祭事・庭・文化財・動物園などなど。値段はほとんどが千円以下で、リーズナブルな印象である。下の段には「月刊京都」というローカル雑誌が、三十冊ほど横積みされている。ふむふむと一冊選び、奥の全国を象徴的記号的に並列化したようなジャポニズム商品を集めた棚にぐるりと囲まれた、奇妙な神殿的レジで精算をしようとすると、お客をひとりずつ、丁寧過ぎる過剰な接待&包装を施しているので、大いに神殿外で待たされてしまう。京都新聞社「京都 滋賀 秘められた史跡」(京都と滋賀がワンセットになっているコンセプトがワンダフル!)を購入し、ホホホ座作製の『ホホホ座の考える京都エリア地図』も手に入れる。レジ待ちで瞬時にちょっと疲れてしまったが、古本をちゃんと売ってくれていて、本当に良かった…。
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2017年01月31日

1/31東京・下北沢 古書明日

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様々な方から「何故初日にちゃんと行かないんだ」とお叱りの言葉をいただいていた、元々都立大学にあった時々入れる事務所店(2013/01/22参照)の新実店舗に、冷たい風に巻かれながら駆け付ける。北口に出ると、仮改札はいつの間にやら北東に向いており、目の前はフェンスに囲まれた味気ないアスファルトの広場になっている。かろうじて懐かしい面影を残す『下北沢北口駅前食品市場』の無惨な残滓を横目に見ながら、狭く賑わう商店街を北東に進む。途中鍵の手に曲がりつつ、さらに歩き続けて短い坂を下ると、目前の小ビル二階に「CLARIS BOOKS」(2013/12/01参照)の強い明かりが輝く『下北沢一番街』である。緩い坂道の商店街を東南に下り、『茶沢通り』とつながる元小田急線踏切を目指して歩いて行く。すると左手の、ついこの間まで下北沢老舗の「白樺書院」(2016/12/23参照)が入っていた店舗に、カラフルな立花に祝されている古本屋さんが、すでに誕生していた。おぉ!出入口が、左右二ヶ所になっている!店頭ワゴンには木箱が所々はめ込まれ、100均文庫・安売本・変な新書・猫本などが並び、茶色く古い本が紛れ込んでいるのが特徴的。ガラス扉には店名含め、お店の情報が貼り出されているが、それはすべて半紙に墨で柔っと書かれている。左側から中に入ると、正面奥が帳場となっているのだが、白樺時代とずいぶん違い、後がぶち抜かれ、すっきりと広くなった印象である。その帳場には昭和の雰囲気をたおやかにまとう女性が店番中。左右の両壁は本棚で、左奥壁も本棚。そして真ん中に背中合わせの棚が一本立ち、すべての棚下に低めの平台が付属している。店内には、香水なのか花の香りなのか、古本屋さんにはあまり似合わぬ香しき匂いが漂っている…。左壁は新書サイズ本と文庫(大藪春彦多し)から始まり、少しカオス気味にサブカル・カルチャー・文学・社会・民俗学・近現代史・映画などが混ざり合い、続いて行く。平台は棚と近い並びで、単行本が背を見せて並んでいる。向かいは文庫棚で、講談社学術・岩波・ちくま・ハヤカワSFが幅を利かせ、平台にはちょっと古めのはみ出し文庫や、おかしな新書サイズ本が集まっている。右側通路へ移動すると、奥壁棚は民具や骨董・文学古書・歴史資料系古書・園芸古書がなどが集まり、一部は面陳となっている。右壁には映画・演芸・美術・思想・海外古典文学・西洋宗教が並び、下には紙物箱や雑誌や小冊子が置かれている。通路棚は、戦争・植民地・アジア・沖縄・東京・文学評論&評伝・大判本・図録類となっている。小さなお店である。そして結構な硬さを誇っている。まさか若者文化溢れる下北沢に、こんな硬めの正統派古本屋さんが誕生するとは、思ってもみなかった。新書・古書・紙物に奇妙なところがあり、どちらかと言うと軟派な私は、そこに惹き付けられてしまう。値段は普通。三井物産株式會社機械部「ライブラリ・ビウロウ 鋼鐵製書架 並ニ圖書館用品各種」大月書店「神奈川県の戦争遺跡/神奈川県歴史教育者協議会編」を購入する。凶暴インコはいないけど、店舗を引き継いで下さり勝手に感謝!そして開店おめでとうございます!

字面が物々しい「鋼鐵製書架」は恐らく昭和十年代の、米國ライブラリ・ビウロウ製造品の棚を中心とした商品カタログである。使用例の『大阪毎日新聞社圖書室』の写真や、強固で巨大な本棚やレミントンのタイプライターまでが掲載されている。中でもまるで巨大なビルディングのような『鋼鐵製カード凾』と青銅&ガラス製陳列箱の見開きページには、尋常ならざる魅力を感じてしまう。これはカッコいい!
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2017年01月24日

1/24東京・西八王子 ガレージランドHarps

前回の記事にあるように、西八王子「一歩堂」(2015/05/11参照)に何やら大変な変化が訪れているようなので、確かめに向かう。北口に出て、未だに銀杏の踏み付け痕が残る歩道を進んで『八王子市役所』方面へ。緩やかな坂を下り、交通量の多い『陣馬街道』を越えてさらに進むと、右手に『古本』の文字が見えて来た…サッシ扉にそっと近付くと、硝子に小さい貼紙があり、営業時間と“営業中”の文字を確認する。店内に100均棚が引き込まれているが、ちゃんと営業中のようだ…多数の猫の気配もとりあえずはナシ(古本神・森氏は誰もいない店内を歩き回る多数の猫を目撃したそうである)。扉を開けて中に入ると、お香の匂いが微かに漂い、店内は風がないだけで、外気温と変わらぬ極寒の室温である。帳場奥には老婦人が座り、小声で何やら話しかけているので、どうやら猫たちと会話をしているようだ。…まぁ、しっかり営業していて良かった。震えながらも棚に集中し、二冊を手にして帳場に向かい、奥に横向きに座る老婦人に声をかける。そしてそのスキに、奥の間に目を凝らすと、おぉ!いるいる。以前からいる白黒猫に加え、黒の多い白黒猫が毛を膨らませてジッと屈み、白地に虎柄猫が室内を闊歩しながら、こちらの様子をうかがっている…か、可愛いな。老婦人はにじり寄りながら本を受け取り、値段を確認。そして「今日はとても寒いですね。もうお仕事終りなんですか?」「いえ、今日は休みなんです」「そうですか。ずいぶんと早くからいらっしゃるから。ホホ、休みなのに、ちょっと寄って下さったのね」などとやりとり。すると、帳場の下に猫がスルリ。「そこ寒いでしょ。寒いでしょ」と老婦人。書肆ユリイカ「ユリイカ 特集・自殺 19587月号」講談社「鳥/庄野潤三」(帯はないが函も本もキレイで、これが200円とは拾い物!)を計700円で購入する。

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『日吉町交差点』のある『陣馬街道』まで引き返し、そのまま街道を『追分町交差点』に向かい東に歩いて行く。しばらく歩くと右手に黄色い看板が見え、そこが森氏にチラと教えられた、古本も少しあるリサイクルショップであろうか。店舗手前はガレージ状になっており、そこにすでに様々な物品が飾られている。右はアンティーク家具や古道具をお洒落にディスプレイし、左には工具や大工道具などが賑々しく置かれている。どうやら、アンティーク+古道具+リサイクル要素を併せ持つお店のようだ。中に入ると薄暗く、まずはアンティークショップの雰囲気。それが左に行くほど日用品度がアップし、左奥の駐車場側出入口へとつながって行く。何気ない風を装いながら、古本を激しく求めてあちことに視線を飛ばす。右端通路には、面子やソノシートやレコードなどを確認。紙物も幾つか飾られている。だが、ここではない。第二通路は物品ばかり…では第三通路は…右側に絵葉書などの紙物をを発見。おっ!そしてその向かいの棚の上に、古そうな小型本や大型雑誌が二十冊ほど集まっているじゃないか。ほくそ笑みながら手を伸ばし、セロファン袋に入った薄手の本を確認して行く。駄菓子漫画・雑誌付録・付録漫画・児童雑誌…幸せなラインナップだ。値段も800〜1000円
となかなかお手頃価格になっている。ずいぶん古い北田卓史の付録海賊絵物語が三冊あるが、続き物か…う〜む、榎本書店のターザン駄菓子漫画も気になる…しかしこれにしておこう!と一冊だけ選び、奥の方も一応見に行く。そこは生活用品+家具+楽器の世界で、古本はバンドスコアやグラビア雑誌を確認するのみであった。みくに書房「長編ポケット漫画 怪奇探検 冒険児/竹田文吾作」を購入する。
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「冒険児」の表紙はなかなか凛々しい紅顔の美少年。
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だが中身はやっぱりこんな感じ。一ページに上下二コマで、全32ページ。その中に探検地図争奪戦、船の難破と島への上陸、ライバルとの格闘、人食い人種との戦闘、巨大猛獣や未知の類人猿との出会いが、ギュギュッギュギュッと詰め込まれている。表3には広告が掲載され、1.魔島征服記 2.密林の王者 3.冒険児 4.古塔の魔王 5.白假面 6.ノンビリ名探偵 7.冒険太郎など、何処かで聞いたようなタイトル含めラインナップされている。
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2017年01月22日

1/22東京・吉祥寺 吉祥寺パルコの古本祭り

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駅北口からお洒落な人波に乗って、西にある『吉祥寺パルコ』にユラユラ向かい、セールで華々しく飾り立てられた一階女子世界を、何食わぬ顔で堂々進んでから、地下への一人幅エスカレーターに飛び乗る。地下一階でステップから離れ、ぐるりと上りエスカレーター側に回り込むと、その脇の一角で、およそ二十ほどのワゴンを並べた、『パルコブックセンター』主催の古本市が開催されていた。キャッチコピーは『若手店主が営む個性派古書店12店舗が吉祥寺パルコに集結!』である。それにしても『吉祥寺パルコ』は古本市が好きであるな。ついひと月前にも、七階で「ART BOOK BAZAR」(2016/12/12参照)が開かれたばかりなのに、またもやの古本市開催に加え、開催期間が2/20(月)までと長めなのである。あっ!良く見ると奥のレジに立つエプロン姿の男性は、「ARt BOOK BAZAR」で、たった一人で広い会場を守っていた人と同じ人じゃないか…恐らく永遠の古本市担当なのかもしれない…ありがとうございます。古本がいつもお世話になっております。会場内には家族連れや若い男女がワゴンに向かっており、なかなかの盛況を見せている。洋書絵本や近刊文庫が人気のようだが、映画系文庫や美術やCDやレコードも幅を利かせ、小さいながらもバラエティに富み、キレイ目な古本世界を展開している。一番心惹かれたのは代々木八幡「rythm_and_books」(2011/08/10参照)のワゴンで、完全にカルチャー変態度全開な新書サイズ本の並びに、この世の中におかしな本を撒き散らしてやる!という素敵な気概を勝手に感じ取る。そんな中から一冊を選び取ったのだが、なんと値段が付いていない。近くに並ぶ本の間や周辺を見回すが、スリップが落っこちている気配はない。だがその本がとても欲しかったので、あえて永遠の古本市担当男性に値段を聞くことにする。するとしばらく待たされたが、方々に電話を掛けていただき、およそ七分後に500円であることが判明する。「あっ、じゃあいただきます。お手数かけてすみませんでした」「いえ、こちらこそ申し訳ございませんでした。では税込で540円になります。今スリップを作りますので、少々お待ちください」などとやり取りし、新興音楽出版社「口笛の吹き方/金井セツヲ」を購入する。

この本、文庫サイズの音楽独習&名曲集の一冊なのだが、他はみなちゃんとした管楽器打楽器洋楽器和楽器なのに、これだけが何故か異色の人体楽器の一冊(附録として他にも「柴笛(木の葉を利用)」や、裏聲を必要とする「聲笛」、口の中に手を叩いた音を響かせ演奏する「マウス・シロホン(口の木琴)」の技法も紹介)として滑り込んでいるのである。内容はもちろん技術的なことにページが割かれているのだが、冒頭や合間合間に口笛の市民権を高めるための文章がしつこく挿入されており、それが悲哀を誘いつつおかしくてたまらない。口笛に関する石川啄木の短歌を引き合いに出し、口笛に潜むロマンチシズムを熱く語ったり、「二十有餘年來この口笛を吹き通して來たが未だ一度も泥棒に見舞われたこともなければ、又蛇が出て來たといふこともない」などと、口笛が好き過ぎて民間伝承などにも立ち向かう始末なのである。フフフフ、今日も古くて面白い古本が買えたぞ。
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ついでに最近開いているところにお目にかかれなかった、南口側凶悪極狭バス通り沿いにある「バサラブックス」(2015/03/28参照)を見に行くと、今日はちゃんと開いている!よかったと胸を撫で下ろし、小さな三角形店内の豊穣な棚を慈しむ。双葉社「ルパン殺人事件/野坂昭如他」の帯付きを400円で購入する。その後はテクテク西荻窪まで歩き、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)にちょこっと補充すると、帳場脇に古本神・森英俊氏がヌゥッと立っており、挨拶を交わしつつ古本屋情報交換。千葉・松尾「サティスファクション」(2012/12/19参照)移転や、西八王子「一歩堂」(2015/05/11参照)の猫多頭飼いに驚かされる…これはちょっと確かめに行かなければ…。
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2017年01月21日

1/21東京・水道橋 古書たなごころ

高円寺『西部古書会館』二階で、岡崎武志氏とともに、例の古本屋本第三弾のお仕事に従事。そこで、お店が出来てからずっと正体がバレていないと思っていた「古書サンカクヤマ」さん(2015/02/02参照)に、とっくに見破られていたことを知り、ガ〜ン!とショックを受ける。さっきもここに来る前に、100均雑誌を何喰わぬ顔で買って来たばかりなのに…これからはちゃんと挨拶することにしよう。買った雑誌は昭和三十年の「松竹歌劇 SKDファンの雑誌」二冊である。バタ臭い表紙写真に惹かれて思わず手に取ると、薄い冊子ながら小説も少々掲載されている。一冊に「新宿怪談/ミス・マナコ」というちょっと面白そうな一編が載っていたので、残りの数冊も詳しく見てみる。すると一冊に、山崎俊夫の「写真物語 レモン色の靴」なる小説を発見したので、慌てて購入した次第である。SKD女優が登場人物を演じた写真が添えられているが、内容は青春物語の皮を被った見事なまでの“足フェチ”の話……いいのか、松竹歌劇団!
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仕事を終えたら、そのまま駅から総武線に乗り、ガタゴト各駅で水道橋駅。東口改札から南にガード下を抜けると、背後から『東京ドームホテル』が、まるで自身が太陽であるかのように日光を反射している。だが、最初の交差点で西に入ると、たちまち日光は遠ざかり、雑居ビルの谷間の寒冷地帯。二番目の脇道を南に向かうと、右手に二つの入口が並んだ雑居ビルが現れる。一階のガラスウィンドウの向こうでは、大量の古本横積みタワーが丸見えになっている…だが目的はここではなく、左側の入口からビルの通路に入り込み、エレベーターで四階を目指す。扉が開いて通路を右に進むと、奥でガンメタ色の鉄扉が静かに待ち構えていた。
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ここは元来『紅茶研究所』という、その道のオーソリティーが紅茶のすべてと美味しい淹れ方を追い求める場所なのだが、何故だか去年裏路地十字路のお店を閉じた、ミステリ&SF&幻想小説の「古書たなごころ」(2010/11/24参照)が移転開店し、研究所と同居しつつ週末営業を行っているのである。今日はその貴重な営業日。小さな店名札がかかった扉をガチャリと開けると、たなごころさんがすぐ「いらっしゃいませ」と応対に立ち、土足厳禁の店内に招いてくれた。左三分の二が紅茶研究所で、右三分の一が小さな古本屋となっている。たなごころさんが笑顔全開で、早速店内を説明しながら案内してくれる。まず入って正面には細いプレミア本棚があり、左の研究所内に進むと、右が質の良い文庫と単行本が並ぶ100均棚となっている。小林信彦・ちくま文庫・中公文庫・ミステリ文庫が、かなり勇ましい輝き。すぐさま四冊を抜き取ってしまうが、100均棚は一月限りらしく、その後はポケミスで埋め尽くす計画を立てている。その裏側は探偵小説&ミステリ文庫棚で、一本の短い通路の右側には棚が奥の壁棚を合わせて三本横向きに置かれている。手前棚の上には仙花紙雑誌の「LOCK」や「MEN」が飾られ、その間の地帯は棚に並べられないSF&幻想文学結束本の山が占領している。向いの棚には古く茶色い探偵小説&雑誌が収まり、そのさらに奥には、翻訳探偵小説・ミステリ文庫&ノベルス・探偵小説評論、それにパソコンの置かれた作業スペースが展開している。お店は以前より遥かに小さくなり、本もだいぶ処分したそうであるが、あのレジ周りの濃密ぶりは健在で、エッセンスをギュギュッと濃縮した形を採っている。「値段のないものは聞いて下さい。付いてるものでも、ものによっては勉強しますよ」と、とても嬉しい甘い囁きが繰り返される。値段の付いてない一冊を選び値を聞くと、お手頃だったので購入を決意する。そして研究所スペースに移り、珈琲をごちそうになりながら、楽しくもある苦しくもある古本屋話に耳を傾ける。色々あってここに移転して来たわけだが、以前の実店舗一点に全力を注ぐ形ではなく、営業日は少なくとも、一人一人のお客さんに、丁寧にたくさん話をしながら本を譲って行く方が、性に合っているらしい。そこから、自分の古本屋人生(「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)に勤めていた時代から、「いにしえ文庫」「古書ひぐらし」とともに生きた小さな十字路時代まで。十字路店舗時代は、実質六年である)を楽し気に一気呵成に語っていただき、最終的には「古本屋よりおにぎり屋をやりたい!ごはん作るのが大好きで、古本よりそっちの方が絶対に楽!」との結論にいたる。それでも今現在売っているのが、やはり古本だと言うことが、古本好きとしてはとても嬉しいのである。珈琲を飲み干し、さて精算と、東京創元社「創元 海外推理小説特集」(新書サイズで、まだ創元推理文庫の出ていない時代のものである。)光文社文庫「絢爛たる殺人/芦辺拓編」「硝子の家/鮎川哲也編」「ミステリーファンのための古書店ガイド/野村宏平」集英社文庫「洲崎パラダイス/芝木好子」を差し出すと、全部で千四百円。ところが二千円を差し出すと、お釣りがないことが判明する。こちらも小銭の持ち合わせがなかったので、外まで崩しに行こうか、それとも百均の四冊を諦めるかと逡巡していると、「じゃあこういう時はしょうがない。千円で!」と予想外の嬉し過ぎる提案をしていただく。そしてそれを即座に飲み、改めて来店して、このご恩をリカバーするほどの客になることをその場で誓う。みなさま、たなごころさん来店の際は、小銭持って行きましょう。そしてまた、こんな形のお店を開いていただき、本当にありがとうございます!
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2017年01月10日

1/9東京・駒込 BOOKS青いカバ

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駅のホーム西側は、丸く植栽されたツツジの法面に挟まれた、浅い谷底になっている。その西の階段を上がり、改札を抜けて南に跨線橋を渡り、大きな『本郷通り』に出て、南に進む。すぐに鬱蒼とした林を抱える『六義園』のレンガ門を右に見てから、冷たいビルの足下をさらに南進して行く。右側からは常に、『六義園』の偉大な気配が、ビル越しに漂ってくる。やがて『上富士前交差点』で『不忍通り』にぶつかるので、南側に渡って通りを西へ。ちょっと歩くと、左手ビル一階に、本日オープンした古本屋さんが姿を現す。鮮やかな水色のテント看板には、店名通りの青いカバが、ロゴの一部として描かれている。その下には開店祝いの立花と共に、右に単行本棚、左に文庫棚が設置されている。値段は100〜300円の振れ幅圴一である。スライドドアを左に動かして店内へ入ると、どの通路にもお客さんが立つ、初日盛況状態。大変目出度いことである。床には板が張られ、棚はスチール棚とオリジナル木棚が共存している。手前は真ん中に平台+棚を置き、両壁は本棚。右側半ばの帳場を過ぎると、奥は右側に少し広がり、壁棚に囲まれた通路が三本形成されている。奥の通路はわりと狭く、一人が立つと譲り合わなければ擦れ違えない幅になっている。左壁には日本文学文庫・海外文学文庫・時代劇文庫・新書・ノートラック。右壁には絵本・児童文学・図鑑類・セレクト新刊が収まっている。中央の平台には夏葉社本などの新刊と共に、おぉ!城左門の署名入り豪華詩集が七千円!連結した棚はまだほぼ空いている状態で、赤瀬川原平・自由価格の珍本全集、それに大判のバンド・デシネが面陳されている。奥に進むと、左端通路には女性実用・食・生物・科学・建築・エッセイ・本&出版・詩集・辞典・笠井潔・ミステリ&エンタメ・日本文学が並ぶ。中央通路には、海外文学・美術・映画・サブカル・現代思想・政治・社会・資格・ビジネス。右端通路はコミック・民俗学・歴史が集まっている。開店当日だけあって、まだまだ棚にブランクが目立ち、奥壁棚には大きなバンド・デシネパネルが飾られていたりするのである。なので棚の構成は暫定的なものである可能性大。だが、ジャンル全方位で本を並べているようなので、通りがかりの人にも、地元の人にも、わざわざ訪れてきた人にも、古本修羅にさえも、楽しんでもらえる古本屋を目指していることは明らかである。値段はちょい安〜普通。書肆ユリイカ 今日の詩人叢書1「山本太郎詩集/編集大岡信」(300円!)南進社「南進叢書1 ニューギニア」洋々社「アイヌの歌人/湯本喜作」(カバーナシ)を購入すると、店主とは去年のわめぞ忘年会で擦れ違っていたので「古ツアさんですよね」と声をかけられてしまう。「山本太郎詩集」に無地の書皮を手際よく掛けてもらい、そこに『青いカバ』ハンコを捺していただく。恐らく今年初の古本屋開店、おめでとうございます!これから棚にさらにどんな本が並び、お店がどう変化&進化して行くのか楽しみにして、また必ず古本を買いに来ます!

店内でたくさんの古本を抱えた南陀楼綾繁氏と合流し、肩を並べて路線バスに乗り込み護国寺方面へ。夕闇迫る裏通りを歩き、三角寛の血族が経営する渋く立派な料理屋『寛』の存在を教えてもらったりしながら(敷地の角には、薄れて『三角寛』としか読めぬ棒杭の標識が!)、「JUNGLE BOOKS」(2010/08/20参照)の『MUSIC FAIR2017音盤市』を偵察する。居合わせた吉上恭太氏や文庫善哉さんと挨拶を交わし、市に熱中する南陀楼氏をほったらかし、この三日間気になっていた自分のCDカゴをチェックすると、何と九枚も売れている!うひゃぁ!小玉和文や『集団左遷』と『傷だらけの天使』のサントラやゲーム音楽やフィッシュマンズやTHRILLまでが売れている!いや、なんでも出してみるもんだなと、ホッと胸を撫で下ろす。その後はだるま市を絶賛開催中の「旅猫雑貨店」(2008/07/19参照)さんに顔を出したり(戦前の、目玉と口が飛び出る神戸のミニだるまが、すごく欲しい!…だが値段は五千円…)、「往来座」(2009/01/09参照)で駿河台書房「傳説パトロール/戸川幸夫」を300円で買ってのむみち嬢に挨拶したりした後、南陀楼氏と餃子屋でグビグビ数杯傾ける。年末の北海道トークツアーで雪に苦しめられた話や、雑誌「ヒトハコ」の未来について耳を傾けつつ、色々手札を見せ合って、お互いに何か出来そうなことをぶつけ合う。今年こそは、もっと二人で何かやりたいものである!すっかり酔っ払った後は、「JUNGLE BOOKS」さんまで夜道を引き返し、音盤市の打ち上げに紛れ込む。半地下の古本屋さんで、フロアに大きなテーブルを出し、古本棚に囲まれてお酒を嗜むのは、とても愉快でおかしな時間である。
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階段上から、陽気な皆さんを激写。「CD市」の次は「切手市」という噂あり。本当に開催されるのなら、必ず出品いたします!
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2016年12月27日

12/27東京・荻窪 Title 2Fの古本市

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二度目の雨が上がってから、表に飛び出す。今日もテクテクテクテク二本の足を存分に使い、雨上がりの『日大二高通り』を南西に下って、『青梅街道』と合流。そこは荻窪駅北口から西に500mほどの『四面道交差点』である。ここからさらに、北側歩道を西に400mほど歩き続けると、『八丁交差点』手前に、青い日除けを持つ瀟洒な新刊書店が現れる。青梅街道の光景を反射して、輝くような大きなガラスウィンドウから、ディスプレイラックや店内の様子をうかがい、扉を開ける。そこは、熟れ練られた新刊の並びが興味深い、奥に向かう空間である。面陳を効果的に使う壁棚が向かい合い、奥に向かってテーマ新刊島→両面文庫棚→左奥にレジ→最奥のカフェと連続して行く。だが、目的は新刊ではなく、二階で今日から始まった古本市なのである。左側半ばの、リトルプレス壁面ラックに囲まれた一階踊り場から、ミシギシ急階段を気をつけて上がると、普段はギャラリーの小部屋に、愛しの古本が密集していた。まずは上がった所に「えほんやるすばんばんするかいしゃ」(2014/09/11参照)棚があり、洋書絵本を中心にレア児童文学・絵本・安売絵本を並べている。そのまま窓際を見ると古いラックが置かれ、「Lospapelotes」(2008/07/14参照)がレア雑誌を「洋酒天国」などともに飾っている。そのまま「トムズボックス」や旧世代の女子本を極めたように切っ先が鋭い「ひるのつき」、今度駒込にお店をオープンする「BOOKS 青いカバ」、刺繍裁縫関連に特化したような「古書玉椿」と続く。左の壁際には、まだ木の香りが匂いたつ箱に本を詰めた「一角文庫」が、気合いを入れて洋書・本関連・コア文藝・映画・カルチャー関連を並べている。背後の壁際には、階段近くに「ハナメガネ商会」(2014/04/26参照)が乙女+子供+レア絵本+奇妙な本をバランスよく並べ、パンチを効かせている。その横には立体的に展開する「にわとり文庫」(2009/07/25参照)が、古書・復刻本・新東宝映画チラシ・乙女・絵本・詩集・昭和初期・風俗などを美しくカオスに並べている。キュッと凝縮された感じの、少ない冊数でそれぞれのお店の特色を最大限に打ち出した、なかなか濃厚な古本市である。傾向としては、女子濃度の方が高めであろうか。値段はピンキリで、良い本にはそれほど見逃しなくしっかり値が付けられているが、所々隙もちゃんと設定されているので、目を皿のようにしてお気に入りの一冊を見つけるべし。結局二回見直したので、結構長居してしまった。「一角文庫」と「ハナメガネ商会」のショップカードが手に入ったのも嬉しい。一冊を抜き取り、再び気をつけて階下へ。厚生閣「趣味の地理 學習旅行文庫 山めぐり/西亀正夫」(函ナシ。見返しには神田「三省堂」と「松屋呉服店」のラベルが貼付けられている。昭和初期に良家のお坊ちゃんが買ってもらったのだろうか)を500円で購入する。市は来年1/8(日)までだが、12/31(土)〜1/4(水)はお店自体がお休みなので注意が必要である。
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2016年12月21日

12/21今日も懐かし物屋に足を運んでしまう

昨日の懐かし物屋での、軽いがそれなりに甘い古本の夢が忘れられず、同じような店を自力で探し出してたどることにする。だが空振りに終わる恐れも充分にあるので、確実に最初に買うべきだと、高円寺『座・高円寺』のロビーで今日から始まる「本の楽市」(2010/07/18参照)にまずは立ち寄る。薄暗く天井が高くだだっ広い空間で、六つの古本島の周りをグルグルグルグル。絵本や紙物雑貨が多めだが、「rhythm_and_books」(2011/08/10参照)が箱に詰め込んでいる、六十年代周辺パンフ&小冊子類に釘付けになる。他には「にわとり文庫」が大量に並べていた、B5二つ折り一色刷りわら半紙の、チープ過ぎる新東宝映画チラシに惹き付けられる。もしや「九十九本目の生娘」(原作は大河内常平「九十九本の妖刀」)があるのではと、一枚一枚丁寧に繰ってみるが、期待に反して見つからずじまい。その代わり、同じ曲谷守平監督作品のヒドそうなヤツを見つけたので握り締める。「今日のNHK」(1963年刊のNHKの宣伝パンフレット。東京オリンピックを前に、ますます放送施設と番組の充実を図るNHKの野望が各ページに踊る。当時人気の番組「事件記者」や「夢であいましょう」「若い季節」などのスチールも掲載)トムズボックス「ねずみ花火 さしえ集/茂田井武」新東宝映画単色チラシ「「妖蛇荘の魔王」「明治天皇と日露大戦争」」(「妖蛇荘〜」のキャッチが卑しい想像を逞しくする。『半獣人の毒牙か邪教の呪いか?恐怖の惨劇を操る人物は誰?』『!地上百米を飛ぶ半獸人!』)を計1150円で購入する。この市は25日(日)まで。
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さて、古本…というか妙なモノたちも買ったし、これで安心して電車に乗り、改めて秋葉原駅で下車する。『電気街口』から雑踏中に踊り込み、『中央通り』を真っ直ぐ北に進んで行くと『蔵前橋通り』にぶつかる手前のビル一階に「ゴールデンエイジ」というお店があった。
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通路奥の扉を開けて中に入ると、“P”字型の通路を取り囲むように、懐かしのヒーロー系玩具がドッチャリ。『ニセウルトラマン』の玩具風ソフビが秀逸…うむ、古本は古本は…おっ、出っ張った“P”の下部に少し集まっているぞ。ヒーロー系児童書・特撮資料本・コミックがほとんどか…ううぅっ!ガラスケースの中に、小松崎茂大先生の「怪獣の描き方教室」オリジナル本が、函ナシだが並んでいるじゃないか!欲しいなぁ…高いんだろうなぁ…でも恐くて値段を聞けないなぁ…とそのまま表に出てしまう。何だかスキ無しな感じに、すっかり気圧されてしまった…。そのまま『蔵前橋通り』を西に歩き、坂を上がって『清水坂下交差点』。ここから北に進んで行くと、道はすぐさま急峻な『清水坂』となり、心拍数を倍に跳ね上げる。苦労して坂上にたどり着くと、道ばたに雑貨店案内立看板が置かれている。指示に従い脇道を東に入ると「王冠印雑貨店」は目の前だった。
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明らかに女子向けなお店であるが、チャレンジしてみて損はないはずだ…しかしどうも、キレイなデッドストックや、復刻&オリジナルもの&猫ものが中心で、古物独特の深度感や高揚感はそれほど味わえない。思わず心中の失点を取り返すために、復刻千代紙の男の子SFモチーフを買ってしまいそうになるが、必要ないだろ!と己を叱り、我慢してお店の外へ。残念ながら古本は見つからず…やはりそう甘くはなかったか。

大晦日に『夏越の祓』を行う『妻恋神社』に参拝し、坂を下って、坂を上がって、御茶ノ水方面へ。すると聖橋の上で、午後三時の夕陽が一瞬優し気に煌めく。思わず立ち止まり、厚みと丸みのある欄干越しに下を覗き込むと、神田川の谷底には、すでに冬の寂しい闇が立ち込めていた…早く帰るとするか。
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2016年12月19日

12/19東京・阿佐ヶ谷 ZAGURI

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大阪「梅田蔦屋書店」での『古ツアお蔵出しフェア』に、さらなる追加古本を発送し、そのまま外出モードに入る。とは言っても遠くに行くわけではなく、『旧中杉通り』の谷底に出来た、新しいカフェ&アトリエが目的地である。駅からは北口ロータリーを突っ切って『北口アーケード街』を通過し、レンガタイルの敷き詰められた『旧中杉通り』をさらに北へ。スタスタ歩いて「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)前を通過し、一段高いが空の抜けがとても良い墓地の脇を、緩いカーブを描いて谷底へ。足下のレンガタイルが終わってもさらに北へ進んで、貸本屋の「ネギシ読書会 中杉通り店」(2009/08/12参照)も過ぎると、右手に韓国料理屋→飲み屋→汁もの屋と変遷を繰り返し、現在カフェに落ち着いた小さな店舗が現れる。工事をしている時から、次に何が出来るのか気になっていたのだが、通りかかった時にふと店内に目をやると、壁際に本棚のようなものが造作されていたので、俄然興味を持ち続けていたのである。だが、明るく洒落たカフェが開店しても入るわけではなく、時々ドアの腰高ガラスから、ちゃんと本の並んでいる棚を眺めるだけに留まっていた。だがある日、店頭に置かれたショップカードを手に取ると、カフェの他に『グラフィックデザイン』『フォント開発』『WEB』『オーダメイド名刺』『活版印刷』などの言葉が並び、その中に『タイポグラフィ古書』とあるのを発見してしまったのである。ここは、古本を扱っているんだ!そう確信して、小さなお店の木製スライドドアを開け、ちょっと高い敷居を跨いで中に入る。縦長の、カウンター席+テーブル席二つの明るい空間。カウンター内には、若い人がいるのかと思いきや、壮年のファッショナブルな夫婦(想像である)が、落ち着いた佇まいで働いていた…これは想定外であった。最近、タイポグラフィ古書専門店や、デザイン事務所も兼ねた古本屋がポツポツ出現しているのだが、それらはどれも若い人の手によるものであった。良く注意すると、カウンターにいた先客二人は、男性店主と印刷物やWEBについて言葉を交わしているようだ…ただのカフェのお客さんというわけではなく、そちらのお客さんでもあるわけか。テーブル席に腰を下ろし、甘酒を注文して正面の壁に目を据える。細身の鉄鋼と木板で出来た壁棚や飾り棚が設置されている。上部には古い明治〜大正の教科書類がズラッと並び、中段には文房具・帆布トートバッグ・カメラ&カメラレンズ・タイプライター・旧式LSI電子卓上計算機・手回し計算機・計算尺・小型活版印刷機などが存在感大きく飾られ、下段二段に文字・タイポグラフィ・活字・篆書・レタリング・などが大型本を中心に多数並んでいる。壁面の飾り棚にもヘルベチカ専門書や作家作品集が飾られている。あの左の方の壁面にたくさん取付けられた、細長い木箱はいったい何だろうか?今はその表は閉じられているが、すべてに蝶番が付いているので、カッパリと開くのだろう。中にはいったい何が……。並ぶのはすべてはタイポグラフィ&文字関連の本である。そしてカウンター席背面の通路が狭いので、お客さんが座っていると、おいそれと気軽に見られないのが残念である。気を使い過ぎて、値の付いている本を見つけることが出来なかった…すみません。しかしこのお店の面白さは、むしろ並んでいる古本より、古い型の機械式計算機や重々しく分厚いLSI電子計算機にあるのではないだろうか。テクノロジーの激しい発達の中で打ち捨てられてきた、頼もしく頑丈な嵩張る未来的ボディたち。漆黒の小さく横長ディスプレイに浮かび上がる、緑の数字。その中に隠された、熱を持った電子装置群。すっかり古本のことなど忘れ、狭い通路を擦り抜けて、甘酒代450円を支払う。おっ、レジスターは、モスグリーンの重々しいがスリムな機械式。背に『Kunimatsu』のローマ字が踊っている。ジャカジャカ、チィ〜ンの音にドキリとし、LSI電卓に物欲を覚えてしまう己を、厳しく戒める。
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2016年12月13日

12/13京浜東北線で小さな箱をたどる

足を引き摺り、午前十時過ぎの寒い西荻窪。『銀盛会館』に赴き、古本市で売れ残った本の整理に従事する。持ち帰る分、再販売する分、手放す分にスパパパと仕分け、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏に査定してもらった後、小さなリヤカーでお店まで本を運び、まずは「フォニャルフ」をドバドバ補充入れ替えする。その後に「古本屋ツアー・イン・京阪神」に識語署名捺印。いよいよ盛林堂では残り六冊となりましたので、未入手のみなさま、何とぞよろしくお願いいたします!重い本を手に提げ背負ってお店を出て、西荻窪駅のホームに立った瞬間、日曜夜の打ち上げ後に酔っ払いながら、唐突に『あらしの白ばと會』を結成したことを思い出す。何をする會なのかまったく考えていない上に、本当に結成されたのか定かではないのだが、入会条件だけはとても厳しく、偕成社版「あらしの白鳩」を所持しているかどうかということになっている。しかし、結成を宣言し入会者を募ると、その場にいた四人が早速手を挙げてしまう…おかしい、まるで「あらしの白鳩」が、そこらの100均棚に転がっているかのようではないか…。こうなったらもうひとつ厳しい条件として、『白ばと組の歌』を歌えるというのはどうであろうか。盛林堂版編者の芦辺拓氏がそらで歌える(楽譜も存在するので、再現演奏してもらい覚えたそうである)ので、今度伝授していただこう。そんな他愛もないことを考え続けて古本の重さをごまかし、一旦家に戻って荷を下ろす。

午後に再び外出し、雨が降り出す前にと大森駅へ急いで向かう。東口に出て外階段を南に下り、さらに南へ進むと、二車線が仕切られた低空ガードとアーケード商店街『Milpa』が向かい合う異種交差点。東の『Milpa』に入り、すぐの脇道から南に出ると、歓楽街の裏通りといった雰囲気。そこを五十メートルほど進めば、右手に新しいお酒とお食事のお店「柴猫軒」が現れた。
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ここの店頭で小さな古本市が開かれているらしいのだが…恐る恐る入口に近付き、開店祝の花が置かれた辺りに視線を注ぐ。おっ、108均の古本箱を無事発見。だが中を覗き込むと、桜木紫乃・ムーミンシリーズ・伊集院静などの新しめの文庫が、十冊ほど並んでいるだけであった…ぬぬぬっと十五秒ほど凝視するが、どうしても手が伸びない…す、すみません、今回は、何も買えません!と懸命に詫びながら、お店から即座に離脱してしまう。だがその箱に貼付けられた『大森でもっと古本市をひらこう!』と書かれた小さくソフトなアジビラに、本への熱い愛を秘かに感じ取る。そのまま街中を南に下り「アート文庫」を一応確認してみるも、いつも通りのシャッターを下ろした姿であった…あぁ、俺は多分ここには、一生は入れないのかもしれない。すぐさま西に向かって踏切を渡り、商店街を遡上して「松村書店」(2009/09/25参照)に到着し、その煤けていじらしい店頭にホンワカ心を和ませる。値付中のおばさま店主に「いらっしゃいませ」と声をかけられ、ゆっくり極狭店内を四歩で制圧。池田書店「映画入門/双葉十三郎」雄鶏社「戀愛古事記/神崎清」日本文芸社「実録・女刺青師匠/彫純こと松島純子」を計450円で購入する。商店街に響き渡る霧笛のような時報を聞きながら駅に戻り、一駅南に進んで蒲田駅下車。まずは駅前の「一方堂書林」(2009/08/13参照)に飛び込み、早川書房「BAR酔虎伝/酒口風太郎」を700円で購入し、西の京急駅方面にどんどん雲が厚くなる空の下を、急いで向かう。アーケード商店街『京急蒲田あすと』に潜り込み、タレコミで店頭で一箱の古本が売られている洋品店を目指すが、残念ながら目的の古本は販売されていなかった…元々気まぐれな販売らしかったので、ちょっと時間の経ってしまった今、存在せぬのもむべなるかな…。あっさりと諦めて、アーケード中ほどにある中古ビデオ店と中古DVD店の間にある、おおらか過ぎる100均古本棚(店名不明)を見に行くことにする。
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…最近のコミックと、ちょっと前のエンタメ本ばかり…いや、何も買えないのは、とうに分かっていたのだ。でもどうにかして、店頭で小さく古本をささやかにひさぐお店を、京浜東北線上で、つなぎたかったのだ。だから、今日も古本を売ってくれていて、ありがとう…やっぱり買えないけど…。
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2016年12月12日

12/12東京・吉祥寺 さまよえる「ART BOOK BAZAR」

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朝、不注意からガスファンヒーターに左足爪先を強打し、「けぇ〜〜〜〜〜〜ん!」と上げたことのない叫び声を上げて、三十秒ほどうずくまる。どうにか痛みが去り、足指に力を入れてみると動くので、骨折はしていないようだ。それでも痛いことにかわりはないのだが、この程度なら大丈夫だろうと外出する。十二月のイベントが終わったので、日常に戻り荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)へテクテク向かう…だが、やはり左足中指が痛むな…この容態だと、長距離を歩くのは控えた方が良いだろうと、駐日ソ連通商代表映画部「ソビエト映画のすべて」土屋書店「日本の滝《東日本編》/佐藤安志」山梨シルクセンター出版部「うつむく青年/谷川俊太郎」(初版帯付き)を計315円で購入し、すぐさま電車に乗って吉祥寺へ。北口の『吉祥寺PARCO』に入り込むと、当然の如くクリスマス一色な、激しくきらびやかな店内である。エスカレーターを折り返し折り返し上がり、七階フロアに到着すると、以前は地下で開かれていたはずの古本市が、白枠ガラスの向こうで、静止写真のように静かに開催されていた。この市は、以前は池袋や渋谷で開かれ、ついに吉祥寺にたどり着いたのだが(2015/10/22参照)、ここでもまだ彷徨うように、移動を余儀なくされているのか…。閑散としてだだっ広い洋書バーゲン売場を経由して、右の角地に面した小部屋に進入する。ワゴンと木箱とプラ箱で形作られた空間である。中央台を中心に、壁際のワゴンと窓際の箱を見ることが出来る、短い一本きりの回遊通路。芸術雑誌&芸術ムック・洋書写真集・洋書絵本・アートブック・マッチラベル・絵本箱・「ミステリマガジン」箱・「かいけつゾロリ」箱・女性&子供実用…右側通路を進み、大判の本がほとんどなのを認識する。だが左側通路に進むと、嬉しいことに普通サイズの単行本も顔を出す。児童文学・漫画関連・幻想文学・落語・江戸風俗・役者・芸人・東京・映画・映画美術関連新書&文庫などなど。「文紀堂書店」(2015/03/13参照)と「古書明日」が『アートブック』という括りを多少無視しているようで、なかなかに頼もしい。毎日新聞社「二人で少年漫画ばかり描いてきた/藤子不二雄」を、バーゲン会場のレジにて精算。これが帯付きで千円とは、嬉しい拾い物である。バザールは今月25日まで。サッサと家に帰って痛む足指を観察してみると、派手にアザになっており、どうやら捻挫している模様…いや、突き指というのが、この場合正解か…。
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2016年12月11日

12/11東京・根津 あおば堂

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古本屋さんに対する抑え切れない情熱を、一風変わった形でゴウゴウ燃やしている「ひな菊の古本」さんからのタレコミにより、根津に新しいお店が出来たことを知る。昨日盛況だった古本市+トーク(お越しいただいたみなさま、毎度コンビを務めていただいた岡崎武志さま、そして主催の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)と『西荻ブックマーク』スタッフのみなさまに、心より感謝いたします!)の心地良い余韻と疲労を纏いながら、家を出る。駅に向かう途中「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に吸い寄せられ、国書刊行会「定本 何かが空を飛んでいる/稲生平太郎」(献呈署名入り。二年前に行きたくて行けなかった『東京堂書店』トーク時のものであろうか。読み始めたら案の定止まらなくなってしまった…現実と歴史の中に潜む隠秘学的世界を、輝ける理知のメスで生きたまま解剖する稲生平太郎は、やはり面白い!)岩波文庫「摘録 劉生日記/岸田劉生」「鏑木清方随筆集」を計2163円で購入する。…昨日あれだけ本を売って減らしたのに、早速三冊も増やしてしまった…。そして仕入れていただいた「古本屋ツアー・イン・京阪神」がついに売り切れたことを喜びつつ、オマケに商店街配布のキッチンペーパーをいただき、ようやく改めて駅へと向かう。電車を乗り継ぎ目的駅で下車し、『根津交差点方面改札』から強風に巻かれて地上に出ると、緩やかな谷底の街の上部に、白く日が当たっている。目の前の交差点から『言問通り』を北東に向かう。強い日射しに目を細める人々と擦れ違い、歩くほどに角度を増す『善光寺坂』をグイグイ上まで上がり切る。『谷中六丁目交差点』を通過すると、『デニーズ』向かいの新築小ビル一階に、スッキリした明るいお店がポカッと開店していた。表には店内で開かれている個展の立看板と、足の長い100均&300均箱。扉を開けて中に進むと、新しい木の匂いが漂う、こじんまりとした空間。右壁に四×八のボックス棚、入口左横にはディスプレイ棚。左壁は上部がギャラリースペースとして空けてあり、下に二×五のボックス棚が設置されている。フロア中央には個展主の着いたテーブルがあり、奥右側に帳場スペース。そこにはカジュアルな奥さま店主が座り、個展主と歓談中である。その左側にある、大きな白布で覆われた物体は、いったい何であろうか…未整理本だろうか?右壁にはハリーポッターシリーズ・猫・洋書・柳原白蓮・般若心経・本・書店・ビジネス・女性実用・自己啓発・社会・文学・塩野七生・「蟲師」など。左のボックス棚は、絵本・開店セール300均文庫・コミック・新刊となっている。ほぼ最近の本で固められ、量もそれほど多くはないのだが、値段が安めで実用系の本に強いこだわりが感じられる。これは古書店としてだけではなく、ショップカード裏に刷られた『コントラクトブリッジ教室』『プレゼン教室』『英文購読会』『速読教室』『読書会』などが関係しているのではないだろうか。集英社「タイタニックは沈められた/ロビン・ガーディナー&ダン・ヴァンダー・ヴァット」を購入し、捧げ持つトレイに丁寧に並べられた十枚弱のお釣りコインを摘み取りながら、ささやかな開店祝とする。それにしても、2016年の谷根千地帯の古本屋さん開店ラッシュは、とてもとても素晴らしかった。

お店を出て来た道を戻り、今度は自分が目を細めて坂を下って谷底に至り、そのまま『言問通り』を南西に歩き続けて、『弥生坂』の「緑の本棚」(2016/02/13参照)に立ち寄る。表で植物と混ざり合うようにして増殖した100均箱をのぞき込んでから、中へ。入口周りに小さな棚が増え、古本屋感が増している。ナカザワ「アルプス妖怪秘録/山田野理夫」を700円で購入すると、壁面の展示を観るよう店主に勧められる。…それは、多肉植物と海の生物が優雅に違和感なく融合したイラスト…聞けば海洋大学に通う娘さんに、『多肉植物』をテーマに描いてもらったら、こんな不思議な作品が生まれたとのこと…あぁ!前は多肉植物を食べさせられたが、今回は多肉植物イラストを観せられた!多肉植物ゴリ押しの揺るがぬ姿勢に、呆れながらも大いに感心する。
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2016年12月05日

12/5東京・福生 ブックスタマ福生店

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以前は新刊書店である同店に同居していた「ブックセンターいとう」(2009/12/06参照。つまりちょうど七年前の探訪…)が撤退したのに、ここではまだまだ古本が販売されているらしい。なのでポカポカした冬の日に、青梅線で見学に行くことにする。西口を出て、完全に郊外な駅前通りを進み、『新奥多摩街道』を北へ。左手の深い谷底の多摩川の向こうに、紅葉した段丘と薄靄のかかった連山を臨みながら、やがて『福生消防署北交差点』にある、ロードサイドの大型新刊書店前。「いとう」の痕跡はすでに皆無だが、その代わりに堂々たる『古本』の看板が立てられている。階段を上がってだだっ広い店内に進み、右側に目をやると、古本ゾーンは通路天井から多数垂れ下がる『中古』の紙札により、明確に示されていた。ちょっと長めな四本の通路と右の壁棚に、新しめの古本が集められている。右半分強がコミックに占められ、その他に写真集・DVD・雑誌・文庫本・実用・児童文学・ビジネス・新書・ノベルス・ミステリ&エンタメ・エッセイ・社会・カルチャーなどが並び、所々に108均棚が頻出している(恐らくは半分は108均なのでは…)。値段は定価の半額前後で、オーソドックスなリサイクル古書店スタイルである。奥の柱に貼られた『古本を買うと作者に著作権料(印税ではなくこう書かれている)が入らないので、ファンの作家の本は新刊で買うのがお薦めです』というようなことが書かれた大きな紙が、新刊書店が古本屋を内包するジレンマを、見事なほど浮き彫りにしてしまっている。文春ネスコ「映画主義者深作欣二/立松和平」河出書房新社「ゆみに町ガイドブック/西崎憲」を購入する。

そして時間は遡り、まだ電車に乗る前の阿佐ヶ谷「ネオ書房」(2010/02/09参照)前。仁木悦子蔵書本発見以来(2016/07/20参照)強迫観念のように棚をチェックする癖がついているので、今日も当然足を留め、店頭左側の100均棚に目を流す……む、む、む、む、…ここしばらくまったく動きはなかったのだが、久しぶりに上段に見慣れない仁木悦子の本を発見。単行本二作目の講談社「林の中の家」で、切れてはいるが乱歩推薦文の載った帯もちゃんと付いている。そして下の段にも、いつもの不動のラインナップからはみ出たような、見慣れぬ仁木本、毎日新聞社「青じろい季節」を発見して手に取ってみる。見返しに書評スクラップのコピーが挟まっているのに早速気づき、ドキリと他の本との違いを感じてしまう。次に扉ページを見ると、そこには『二日市蔵書』のハンコが、赤くペタリと捺されているではないか!おぉぉぉっ!こりゃぁ、仁木悦子の本名(結婚後、二日市三重子に)の蔵書印だ!あ、でももしかしたら、旦那さんの蔵書と言うこともあり得るのか。ん?最終の広告ページには、鉛筆で妙な書き込みがある。四種ほどの漢字と数字……あ!これもしかしたらページ数か。ちょっとそれぞれのページを繰って目を凝らしてみると、その数字のページには、書かれた漢字が含まれている…でも誤植とかそういうわけではなさそうだ。なんだろう?まぁとにかく、作家所縁の本が手に入ったのは、とても目出度いことである。それにしてもまたこんな本が100均で見つかるなんて、まだまだ何か出てくるかもしれない。そんな卑しい気持ちを新たにしたので、諦めずに性懲りもなく、このお店はチェックし続けることにしていこう。
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2016年12月01日

12/1いつの間にか新!たなべ書店 駅前店

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地下ホームから動作音のうるさいエスカレーターを経由して、『2a出口』から地上へ。目の前に広がる『南砂三丁目公園』を北に向かって、散歩するように歩き始める。園内中央の遊歩道をたどり、奥まった野球グラウンド脇も通り抜けると、公園から抜け出した街の裏通り。左手に目をやると、そこには新しくなった「たなべ書店 駅前店」(2009/12/24参照)が、古本棚を表に出して輝いていた…いつの間に新築されたのだろうか。古い商店建築は明るく現代的な小ビルとなり、壁面には緑と赤の店名看板文字が日の出のように架けられている。その下にはキッチリとした安売壁棚があり、端の隙間も木製オリジナル本棚でピッタリ埋められている。そしてその手前には、常設不動の両面文庫棚が四本…これには薄いプラ製屋根が、ボロボロになりながら何層にも積み重なり、剥落した部分が火山灰のように微かに路面に積もっている…まるで時の流れが創り出した、現代美術の作品のようでもあるな。そんなキッチリ棚にキッチリギュッと収まる文庫を二冊抜き取り店内へ。旧店舗とは異なる、見通しの良いちょっと横長の空間である。左には広い帳場&作業スペースがあり、今は赤木春恵風おばさまが店番中である。また、入口の向こう正面には『元八幡通り』に抜ける出入口があり、そちらに棚は出ていないが『古本』電飾看板がベカベカと昼間なのに輝いている。店内の、背が高く薄く、まるで『京王プラザホテル』の如き棚は、文庫本をピッタリサイズで気持ち良く収めるオリジナルで、高いところでは十二段を数える。実はこの特徴ある本棚は、岡山「万歩書店」(2015/01/09参照)に端を発するもので(同店もオリジナル木製本棚で構成されている)、以前「万歩書店」を取材した時に、棚について色々聞いていると「東京のたなべ書店はウチの出身なんですよ。だから棚も似てるでしょ」と教えていただいたのである。その薄い棚で、店内には六本の通路が縦に整然と造られている。右端は壁にBL文庫・ラノベ・CDが並び、向かいの低めの棚には新書がズラズラ続いて行く。第二通路は、右に新書・実用・全集が並び、向かいの途端に高くなる本棚にはちくま文庫・中公文庫・教養文庫・コミック文庫・官能文庫が収まる。第三通路は、左奥の日本文学文庫以外に、出版社別文庫・海外SF&ミステリ文庫、それに文庫サイズに近い多ジャンルの小型本が四段分集められている。残りの三本の通路は、左端通路の通路棚から始まる大量の作家50音順日本文学文庫にひたすら占領されて行く。左壁棚には、実用・ハーレクイン・囲碁将棋・講談社学術文庫・河出文庫・岩波文庫が続き、帳場脇壁棚には新しめのミステリ&エンタメ単行本が集められている。ほぼ文庫専門店で、七十年代〜現代のものが中心。値段は定価の半額である。角川文庫「芸人たちの芸能史/永六輔」春陽文庫「超人鬚野博士/夢野久作」河出文庫「捕物帳傑作選 夏の巻」を計490円で購入する。

そしてここまで来たならと、大河のような道路を渡り、「たなべ書店 本店」(2011/02/25参照)に接近する。ヒヤァ〜ッッ!何だ、この恐ろしく悪夢のように長い壁棚は!
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側壁のシャッターが開いているところを初めて目撃したわけであるが、八王子「まつおか書房」(2010/01/05&2016/08/29参照)壁棚を遥かに凌ぐ偉容である!上部に売り物の額絵が連続して掛かり、それが奇妙な収まりの良さを演出しているのが、どうにもおかしくてたまらない。トクマノベルス「世阿弥殺人事件」「忠臣蔵殺人事件」共に皆川博子を計210円で購入する。
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2016年11月27日

11/27東京・吉祥寺・西荻窪・上石神井 古本・古書 松田書店

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次号で終刊となるリトルプレス『BOOK5』を出していたトマソン社の社主・松田友泉氏が、小さいながらもついに古本屋をオープンさせたことを知る。出版社でありながら、同名で無店舗古本屋さんとしても活動し、催事や貸し棚で古本を販売していたが、これでついに一国一城の主になったわけか…。一刻も早く冷やかし祝うために駆け付けようと住所を確認すると、何だか鉄道路線から隔絶したような、都市の孤島のような場所である。上石神井駅・吉祥寺駅・西荻窪駅のちょうど中間…あれ?これ、家からは『早稲田通り』をまっすぐ西に歩いて行けば、距離はなかなかあるがたどり着けるのかも…と言うわけで酔狂にも、『阿佐谷北六丁目交差点』から西にテクテク歩き始める。環八を越えると、見知った風景から次第に離れて行き、武蔵野のしっとりとした面影が散見され始める。だが、都市の住宅街的色合いも、決して色褪せずに連続しているので、奥まり落ち着いた空間として仲良く融合し、人の生活を支えているかのようである。かなり歩き詰め、銀杏並木が美しく色づいた『青梅街道』に到達。道路の向かい側には、『井草八幡宮』の鎮守の杜が、樹冠の高い偉容を見せている。道路を渡り、水気の多い社の塀沿いに、まだまだ西へ歩いて行く。やがて道がぐんと谷底に落ち込むと、そこは『善福寺公園』の『上の池』と『下の池』を分つ、くびれの部分。そこから抜け出すように坂を上がって歩き続けると、『立野境バス停』手前の、一階が化粧レンガで覆われた建物右側に、小さな古本屋さんがひっそりとオープンしていた。店名看板は見当たらないが、壁には『古本』の文字があり、室外機の上にも小さな『古本』立看板が置かれている。ガラスウィンドウには、『本、買取します。』や、邦画チラシやイベントポスターが貼り出されている。中に入ると、本棚が押し迫る小さな空間。正面には小さな帳場があり、セット本を包みながらプリティーな女子店員さんが「いらっしゃいませ」と微笑む。すると奥から、マスク姿の松田友泉氏と切貼豆子嬢がいそいそと登場。帳場でギュウギュウになる彼らと挨拶を交わす。カーテンで仕切られた奥は、本棚の並ぶバックヤードのようだ。店舗部分は、五本の本棚で構成されており、右に大判ビジュアル本・映画・演劇・テレビ・カルチャーの並ぶ二本があり、左に最近刊文庫・児童文学・劇画・最近刊コミック・料理・サブカル・植草甚一・日本文学文庫・永島慎二・セレクトコミック・日本文学が並ぶ三本の棚がある。棚上にはコミックセットがドカドカ並んでいる。帳場前には自社出版物の「名画座手帳」などがディスプレイ。足元には永島慎二のイラスト集やCD箱・雑誌箱・機関車トーマスグッズ、それに開店祝いの振る舞い蜜柑カゴなども置かれている。このお店の型式は、倉庫&バックヤード部分がメインを占め、その一部を店舗とした「水たま書店」(2016/05/26参照)や「大村書店」(2013/02/04参照)と同じである。当然店舗部分の蔵書量はそう多くはなく、昭和的な漫画や映画や文学や癖のある本が特徴的に潜んでいるが、わりと雑本的な構成を採っている。値段はちょい安〜普通。二人とお話ししながら棚を見ていると、「暢気文庫」さんがお嬢さんとともに自転車で颯爽とご来店。途端に店内の密度が大幅に上昇したと思ったら、そこにさらに一人のお客さんが躊躇いながら入って来た。これはイカン。大人三人+小人一人で、たちまち店舗は飽和状態を迎え、みな本棚を見ることもままならなくなりそうだ。慌てて工作舎「稲垣足穂さん/松岡正剛」を購入し、蜜柑をひとついただいて辞去する。いやぁ、愉快なところに古本屋さんが誕生したものだ。さすがに帰りはバスに乗るつもりだったが、テクテク東に歩き始めると、上手く帰り着ける路線のバスに巡り会うことが出来ず、結局バカみたいに延々と歩き続けてしまう…往復合計九キロほどの、小さな、武蔵野の旅であった。お店は不定期営業なので、twitterなどで開店情報を確認しての来店が望ましい。

そして12/2(金)のトークに引き続き、12/10(土)の岡崎武志氏とのタッグによる、古本市&夜のトークも、何とぞよろしくお願いいたします!西荻ブックマークでの告知と予約がスタートしましたので、どうか、十二月はみなさんに、古本まみれになっていただきたいのです!

■「オカタケ&古ツア ガレージ古本市&トークイベント」
今年も性懲りもなく開催させていただきます。年末の古本的棹尾を華麗に飾ります。こちらはただひたすら能天気に楽しい古本市&トークイベントとなっておりますので、みなさま頭を空っぽにして、師走の一日をごゆるりとお過ごしください!
■12月10日(土)11:00〜17:00
■西荻窪 銀盛会館1階(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
そして夜はトークイベント
■「2016年古本・古本屋総決算」
■同日18:00〜20:00
■西荻窪 銀盛会館2階
■1000円 定員25名
■予約・お問い合わせは西荻ブックマーク http://nishiogi-bookmark.org/
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582
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2016年11月03日

11/3東京・本駒込 しのばずくんの本の縁日2016

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雨は何処かに去り、午前中から気持ちの良い秋晴れの空が広がっている。『本郷通り』から『向丘2丁目交差点』で東へ歩みを進め、団子坂方面へテクリテクリ。道幅は広く、チラホラと商店もあるが、ここいらは丘の上の寺町で、門柱の上に対の象がいる参道があったり、『墓地にいます。お急ぎの方は墓地にお越しください』と宮澤賢治的(下ノ畑ニ居リマス…)貼紙があったりと、多数のお寺が左右に連続して行く。『駒込学園前交差点』脇にある『光源寺』が会場だと思っていたのだが、広く爽やかな芝生の境内には、子供用イベントの準備が進んでいるだけで、本や古本の気配は皆無。裏の墓場まで行ってみたが、もちろんそんな所で本は売られていなかった…。少し焦りながら道に戻り、塀に貼られた本の縁日のポスターを良く見てみると、交差点から敷地沿いに北へ進むと、会場にたどり着けるらしい。会場のお寺の名は『養源寺』であった…。学園と塀に挟まれた道を奥へ進むと、やがて右手に大木を冠した境内が現れ、しのばずくんのボードを持ったスタッフが、にこやかに出迎えてくれた。中に進むと、本堂前の境内には出版社ブースが多数並び、落ち着いているが華やかな雰囲気。お客さんもたくさんである…あっ!正面に『本の雑誌社』のブースがあり、経理さんと編集さんが、こちらに向かい手を振っている!…取りあえずペコペコと頭を下げ、こうなったら仕方ない。後でまたもや売り子として参加することを約束し、目的の古本売場をキョロキョロと探す。石畳を伝って本堂左側に向かうと、まずは長テーブルの集中レジがあり、広場に十二の大きな平台を並べた、古本市会場が広がっていた…奥は墓場か。なかかなかイカすロケーションではないか。参加店の「たけうま書房」(2016/10/18参照)「古書ほうろう」(2009/05/10参照)「古書信天翁」(2010/06/27参照)「喜多の園」(2011/07/21参照)さん等と挨拶を交わし、気合いを入れて古本に齧りついて行く。映画・音楽・アート・海外文学・洋書ビジュアル本・洋書絵本・カウンター&サブカルチャーなどが目につくが、一際強力なのは詩集をたくさん並べていた「ソオダ水」と「書肆田高」で、特に「田高」はボロくて函ナシだが、堀口大學「月下の一群」が千円で売られているのに度肝を抜かれる。私は一冊城左門を抜き出し、ニヤリ。そして最後の「bangobooks」(2011/07/28参照)が古書を安値で多く並べているのに魂を奪われ、裸本だが怪談や探偵小説が収録された未知の本を一冊。集中レジで精算すると、顔見知りの古本屋さんたちが顔を寄せ集め、「何を買ったんですか?ちょっと見させてください。勉強させて下さい」と買った本を興味津々検分され、とても気恥ずかしい事態に…勉強になんて、なるわけないじゃないですか!真善美社「映画論入門/今村太平」湯川弘文館「秋風秘抄/城左門」大東書院「由来噺聞書/吉岡文次郎」(函ナシ。田中貢太郎の後輩が、鴻巣歌吉のペンネームで、春陽堂新小説・博文館文藝倶楽部・講談社に書いた、傳説情話・怪談・探偵奇譚・實説・怪異隠形などを集めた下衆で素敵な作品集である。大正十五年刊)を計2000円で購入する。

この後は本堂で行われる南陀楼綾繁氏と桑原茂一氏のトークを観覧する予定だったのだが、本の雑誌社ブースに飛び入りし、己の本を売ることに血道を上げてしまう。しかし『神保町ブックフェスティバル』とは真逆な幸せで落ち着いた雰囲気に、あのかけ声作戦はほとんど使えず。それでも小さく最小限の声を出し、一時間半ほどで五冊を売り、心安らかになる、南陀楼さん、スマナンダ……。かように売り子として楽しく過ごしてしまったので、会場隅の食べ物ブースで、ハヤシライスをビールで流し込んでから、昼間っからほろ酔いで帰路に着く。初めての開催のはずだが、非常に成熟して落ち着いた、楽しいイベントであった。
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2016年10月30日

10/30東京・東高円寺 「女と本のあるふうけい」1day bookstore

今日も『神保町ブックフェスティバル』で新刊を販売するために、午前十一時半に防寒を完璧にして家を出る。ブースに入る前に、昨日の雪辱を果たすため「古本まつり」の東側を見ておこうと、御茶ノ水から神保町に進入して行く。まず足を留められたのは、「田村書店」(2010/12/21参照)まつりワゴンの平台左側である。積み重なった本の下に、古い本が固まっているのだ。瞬時にハヤカワポケミス「殺人鬼/浜尾四郎」羽田書店こども絵文庫「まどからのぞくお月さん/野尻抱影」同光社「花嫁殺人魔/横溝正史」(函付きだが貸本仕様)を抜き取り、横にいるオヤッさんに差し出すと、値段部分を奥に手前に動かし注視しながら「これなんて書いてあるんだ?最近、店主がさすがに手が震えちゃってねぇ。いいや。これ600円にも500円にも見えるんで、500円で。だから、全部で千円でいいよ」と大胆発言。ありがたくその値段で購入する。サンキュー。田村書店!これだけでもすでに満足気味だったのだが、次に足を釘付けにされたのは「みはる書房」(2014/04/17参照)のワゴンで、最初に百円の旺文社文庫「鉄仮面/黒岩涙香」を引っ掴んだと思ったら、次々怪しい本たちが視界の中に飛び込んでくる、素晴らしき棚&台造りが目の前に広がっていたのだ。一冊も見逃すまいと、横に押し込まれた本までも、一冊一冊丁寧に検分していく。ワイズ出版「定本円谷英二随筆評論集成 資料編」出版社不明「南京町/鹿目省三」(大正十三年刊。序文は鈴木善太郎。朝日新聞に大正五年に連載された、横濱・南京町(今の中華街)を舞台にした陋巷探索随筆集である。こんな見た事も聞いたこともない素晴らしい本が買えるのが、古本まつりや古本屋の醍醐味!)青木嵩山堂「小説 何/仰天子」(明治の浅草を舞台にした、作者曰く、恋愛小説でも戦小説でもなく、はたまた探偵小説でも妖怪小説でもない新しい小説。ちょっと読み始めて見ると、死んでいたはずの女が甦ってくる、なんだかただならぬ展開。表紙絵も明らかに化け物のお歯黒女が笑う、不気味なもの。これが、300円!)を計800円で購入する。こんな風に、たった二十分ですっかりまつりを堪能し切ったと思ったら、その先のワゴンに、長年探し求めていた小峰書店日本童話小説文庫2「北斗物語/宮澤賢治」を発見して狂喜。しかも二冊あって、一冊は美本で元セロファン付き!迷わずそちらを千円で購入し、本日の憑物落としは終了。
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即座にブースに向かい、「神保町」「首都圏沿線」「京阪神」と並んだ我が三兄弟を、声を出して力の限り売りまくる。ちなみに私の呼び込みは「いらっしゃいませ、本の雑誌社です」「新刊サイン本多数取り揃えております」「どうぞお手に取ってご覧下さい」が基本パターンで、これに時折「SFの本、古本屋の本、餃子の本、旅の本、読書の本、本の本など色々取り扱っております」を混ぜて絶叫を繰り返した。途中「あれ、あなたは有名な古本屋ツアーさんじゃないですか」と、完全に冷やかしモードの岡崎武志氏が陣中見舞いに訪れたり、夏葉社・島田氏が嬉しいことに本を買ってくれたりする。本日も拙著をお買い上げのみなさま、誠にありがとうございました。二日間、とてもとても楽しいフェスであった。

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およそ三時間で神保町を離脱し、地下鉄を乗り継いで、すっかり夕闇の東高円寺駅下車。『蚕糸の森公園』から流れ出す冷気を、オーバーを着込んだ身体で受け止めながら、『青梅街道』を東に歩いて行く。三百メートルほど弱で現れる二つ目の『セブンイレブン』脇の小道を南に入り、女子学生の人波に逆らいながら歩を進める。すると右手に『喫茶店[ε]』が現れ、白く暖かな店内では、本好きの女子八人がそれぞれ二十〜三十冊ほどの本を持ち寄った、一日限りの古本店がオープンしていた。窓際に、壁棚に、机上に、主に文庫を中心にして少数精鋭の古本が面陳されたり並べられたりしている。お客も本も女子度が高く、オッサンには気恥ずかしい空間となっているが、読み終えた好きな本を並べたような、読書好き原理主義的ピュアさと緩さが、ホワンと心を和ませてくれる。アピエ社「APIED VOL.11 THEME:尾崎翠」評論新社「江戸時代の女たち/柴桂子」を購入。店内にいた出店者の「ひな菊の古本」さんと言葉を交わし、新作の新聞フリーペーパーをいただきつつ、緩やかな冬のイベント(やっぱり古本屋で酒!)開催をお願いしておく。お店を出て、さらに暗くなった路上へ。女子学生の人波に乗り、駅へと戻る。
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2016年10月22日

10/22東京・戸越 リサイクルショップZACK

古本神・田中栞氏に誘われ(命令され)、『戸越八幡一箱古本市』に参戦する。
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多くの人で賑わう『戸越銀座』から、南に200mほど下った住宅街の中に、取り残されたようにぽっかりとある、樹高のある鎮守の杜に守られた、古めかしい神社が会場である。第一回の開催ということで、お客はそれほど多くはなかったが、ロケーションが素晴らしい古本市だったので、今後もぜひとも継続していただきたいと願いながら、まったりと夕刻までゆっくり流れる時を過ごす。結局五時間で、新刊八冊(「京阪神」七冊、「首都圏沿線」一冊)と古本を十五冊売り上げる。終了後は、しばらくの時間を薄暗い情緒漂う参道で、境内猫のミィちゃん(三毛猫メス。ちょっとお腹がダル)と恋人のように過ごし、神社の社務所にて打ち上げ。そこで、とてもさばけた神社の宮司さんと、古本市主催者の真っ直ぐでキラキラした若者たちと、胸衿を開いて色々と話し合う。街や古い神社のために、何かしたい!という初期衝動が若々しく青臭いのだが、だからこそのフレッシュなエネルギーとへこたれない気持ちが、全員ダダ漏れになっているのが、大変に可愛らしい。もはや我々のような年寄りは、それを支え、小言を言って行くだけであることを、切ないが認識してしまう。この一箱古本市、もはやぐるんと巻込まれているので、これからも応援いたします!

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したたかに酔っ払って、ひとりで売れ残った本を引き摺りながら、まだまだ賑わっている『戸越銀座』。前から気になっていたリサイクルショップがまだ営業中だったので、ちょっと冷やかし半分覗いてみると、おお!何だか以前より古本エリアが増大している!駅からは『第二京浜』たる『国道1号』から東の『戸越銀座』に入り込み、ひとつめのゲートを潜った右手にしばらくすると現れる。店頭には、新しめの絵本や児童書が左にちょこっと並び、右の入口横の棚には、最近の実用本が並んでいる。入口入ってすぐ左にわりとしっかりした古本棚があり。小説・実用・文庫・コミックとリサイクル的表情を見せつつも、十分の一程度古書が混ざっているので、少しだけ色めきたってしまう。縦長の、生活雑貨や古道具がひしめく店内には、右側通路中央や、奥の棚の一部に、売れ線から外れた純文学や、ベストセラー本を確認する。本の値段はわりとしっかり目。函ナシで安値のアルス「少年少女日本歴史小説集」を324円で購入する。大して珍しい本ではないが、個人的には明治時代のハレー彗星接近にともなうデマ事件を基にした「空気がなくなる日/岩倉政治」が収録されているのが嬉しかった。オーソン・ウェルズの『火星人襲来』に比肩する、ちょっとSFチックな世界滅亡デマゴーグ。口絵の、五分間の空気を確保するために、ゴムチューブをたくさん身体にかけた金持ち子供のイラストが、情けない悲哀を誘う。
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2016年10月11日

10/11日本最高峰のジュニア探偵&ミステリ棚に垂涎する

『本の雑誌』巻頭には『本棚が見たい!』というグラビアページがある。蔵書家や書店の本棚を、それぞれの本の背が確認できるほどの詳細な写真で紹介する、本好きにとっては楽しい楽しいページである。その次号の本棚候補に挙がったのが、ミステリ評論家&翻訳家で古本神の、森英俊氏であった。ところがここで、何故か編集部から私に一報が入る。氏が取材を受ける条件として、私の同行を望んでいるので、ぜひとも取材に参加して欲しいと…なんだか奇妙な依頼である。まるで、誘拐犯から身代金の運び役に指名されたような、立てこもり犯から交渉人役に指名されたような、そんな青天の霹靂気分なのである。だが、前から見たい行きたい入りたい!と思っていた森氏の書庫に潜入出来るのだ。こんな、千載一遇のチャンスを逃してなるものかと、勇んで取材同行を快諾する。かくて本日、浜本編集長とカメラマンの後にくっつき、都内某所の斜面に建つ、四階建て豪邸前に到着する。…す、すげぇ…古本神…いや、俺にとっての古本メフィストフェレスは、こんな所に住んでいるのか…。思いっきり気圧されながらも、外に出て迎えてくれた森氏に案内され、まずは玄関横の応接室に招き入れられる。ぐっ、入口横に、時代劇&恋愛ものの春陽文庫が、ぎっしりと詰まった棚がある…白い背の、古い文庫が、存在感…人を迎えるには、なんとアンバランスな応接室!それに、玄関前の廊下に積み上がる古本入りのダンボールや、まだ控え目に剥き出しで横積みされた古本タワーが、とても気になってしょうがない…。まずは氏から、邸内の古本が置かれている場所のレクチャーを受け、少し打ち合わせた結果、四階の書庫から見始めることに決定。四人連なり階段に向かう途中、本の山から森氏が一冊の本を取り上げ渡してくれた。なんだこれ?うわぁ!小島剛夕が描いた、シャーロック・ホームズだっ!中は漫画なのに意表を突く児童文学全集的な装幀が為されているのと、見たこともない剛夕の上手いホームズに、早々にノックアウトされる。むぅぅと唇を噛みながら、二階三階と上がり、四階への階段に足をかけると、行く手には壁に沿った古本の山が見えて来た。主に付録漫画・貸本漫画たちであるが、テレビや映画や探偵&SF小説のコミカライズが多いのが特徴である。
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あぁ、乱歩ものもそこかしこに…とここで壁面を見上げると、今度は白い貸本小説がズラッと棚に収まっていた。城戸禮・宮下幻一郎・三橋一夫・竹森一男・鹿島孝二などだが、何十冊も白く並ぶ光景に、ただただあっけにとられてしまう…こんな異常な棚、古本屋さんでも見たことがない…。四階まで上がり、天井近くまで昭和三十年代大衆雑誌が積み上がり、本と荷物で屋上への階段が塞がれたゾーンを通過し、奥の書庫へ進む。足元には、東方社本がズラズラ並ぶ横溝正史棚…あ〜う、スゴい…でももう、こんなんじゃ驚かないぞ…。十二畳ほどの室内は、壁際は本棚で覆われているが、所々開いた窓前はちゃんと開けられている。フロアには背中合わせの棚が、一本縦に長く置かれている。壁際の本はそのほとんどがミステリーの原書である。そして通路の奥側は、所々に築かれた本タワーによって通行が困難な状況となっている。
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入口側の通路に入ると、奥には余り進めぬが、そこにはまたもや驚愕の光景が広がっていた。栗田信・宮野叢子・園田てる子・佐川恒彦・渡辺啓助・岡田鯱彦・日影丈吉・九鬼紫郎・鷲尾三郎・楠田匡介・山田風太郎・高木彬光・下村明などの稀覯貸本小説が、嘘みたいに大集合しているのである。作家によっては二十冊以上…あぁ、どうにかなってしまいそうだ。…なんだ、この渡辺啓助の「東京ゴリラ伝」って(森氏曰く、ゴリラが都会で暴れる話です)。
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※これは下村明棚…こんな嘘みたいな光景…。
隣のガラス戸棚には、鮎川哲也の春陽文庫激プレミア「海辺の悲劇」と「夜の疑惑」がしれっと並んでるし、島久作のお色気メチャメチャ本もたくさん並んでるじゃないか。さらには見たこともない聞いたことも貸本小説作家の本がドバリドバリ…原達也・三好彪吉・楢俊介・牧屋善三・江森達也・松浦達郎・西村忠美・近藤竜太郎…いったいこの人達は誰なんだ〜っ?読んでも面白いのか〜っ?それに室内のあらゆる場所に立つ、やわっとした付録本タワーや、カゴに入った付録本漫画束が、気になってしょうがないじゃないか。ぎゃお、窓際に付録本の「ラドンの誕生」がぁ〜…気絶しそう。この書庫には、四畳半のもうひとつの部屋が接続し、壁棚には装幀がみんな格好良いカーの原書がズラズラと並び、奥には創元推理文庫やポケミスなども収まっている。足元のタワーを見ると、少年探偵&冒険ものの仙花紙本がたくさん見つかり、熱血野球小説なども散見。きゃぁ、浅原六朗「怪船の恐怖」発見。知らない見たこともない本もたくさん、そこら中に蔓延っているので、とにかく興奮しっ放しなのである。だが、時々冷静な自分が、ふと戻って来る。何故なら、ここにあるのは、当然ながらすべて他人の本なのである。どうあがいても、人様のコレクションなのである。表紙にうっとりして、慌ててページをめくり、目次を注視し、巻末の広告などに目を血走らせても、ゆっくりと読むことも買うことも出来ないのだ。だから、ちょっとだけ妄想してしまう。こんな古本屋さんが、何処かにあってくれたら、最高なんだがなぁと。そしてそんな風にまで思えてしまう、森氏の蒐集の執念の成果に、心中で頭を垂れる。これだけの質でこれだけの本が。そしてその中にはたくさんの、評価も定かではない、見たこともない本も多々含まれていることに…。長い撮影がひとまず終わったところで、階下へと戻り、応接室にてしばし休憩する。だが、まだ取材は終わっていないのである。最後に玄関横から、ガレージなのに完成以来一度も車を収納したことのない空間へ案内される。パチパチっと電気が点くと、そこは縦長の二十畳ほどの堅牢な空間なのだが。右にはイナバの物置が三棟連なり、左壁には頑丈なスチール棚が連なっている。そこには、さらに目を疑うような光景が、広がっていた。棚にギッシリ並ぶのは、ジュニア探偵小説&ミステリの、揃いの列!もはや悪夢のような、コンプリートの列!
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ポプラ社・偕成社・光文社・講談社・東光出版社・講談社・大蔵出版・朝日ソノラマ・妙義出版・少国民文庫……もういいです。ごめんなさい。もう本当にスゴいです。あっ!大蔵出版の香山滋「科學と冒険」を発見(氏曰く「それは大蔵省が出版したシリーズですよ。恐らく香山が大蔵省にいたために動いた企画でしょう」とのことである)。ひぃっ、カバー付きだ。初めて見た…しかも中身は小説なんだ…てっきり科学学習書だと勘違いしていた…。
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棚前には、お仕事で使っている貸本系時代小説が積み上がっているが、ちょっと退かすと、奥でジュニア本がまだまだピカリと輝いている。本の山には、児童文学の良いところがたくさん含まれ、奥には貸本漫画の山が控えたりしている。物置には、明朗&大衆小説や横溝文庫・梶龍雄・古雑誌・絵物語・児童文学・漫画などが大量に詰まっている。おわっ、ボロボロだが大藪春彦の「火制地帯」が函付きで…。あぁ、分かってはいたのですが、やはりスゴかった。半端じゃなくスゴかった。まさに古本神の名に相応しい、探偵小説とミステリとコミカライズと貸本小説と貸本漫画と探偵漫画と原書に質超高く偏重した、日本指折りの書庫であった。たくさん貴重なものが見られて、叩きのめされると同時に、とても幸せでした。目と手にそれらの古本をジジジと可能な限り焼き付け、いつの日かこの手で何冊かは安値で手にしてやる!と、思わず小さな野望を燃やしてしまう。今日の記念にと、森氏から何冊かの本をいただくが、特に嬉しかったのは東邦のまんがホームランブックス「狼少年ケン 二本足の狼の巻/まんが・石川球太」と小学館昭和三十年中学生の友3月号付録「科学冒険まんが 怪星ガン/原作・海野十三 え・田中久」(補修アリ)であった。長時間に渡って貴重な書庫を見せていただき、お土産までありがとうございました!
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そして、もっと詳しく森氏の本棚を知りたければ、来月号の『本の雑誌』をお楽しみに。ちなみに私はまったく登場しないと思うので、悪しからず。
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2016年09月25日

9/25氷川神社骨董市の古本屋さん

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今日も懲りずに骨董市へ向かう。バスに乗って石神井方面へ向かい、『石神井公園』東端の『定禅寺』で下車。久々の、夏の名残の強い日射しの中を、テクテク西へ歩き始める。家族連れで賑わう、なんだか幸福そうな『石神井図書館』前を抜け一本裏道に入り込むと、大谷石の塀が懐かしい住宅街の先には、土塁の雑木林が迫る、水気の多い鬱蒼とした暗い小道が延び続けていた。そこをヒタヒタと進んで行くと、やがて右手に骨董市の会場である『氷川神社』が見えて来た…が、境内に足を踏み入れると、盛況からはほど遠い閑散さで、五軒ほどのお店しか出ていない、とても寂しい状況である。…これは、マズいな…。離ればなれに開いたお店を、飛石を伝うように覗いてみるも、古本は和本くらいしか見当たらない…残念だが、石神井の古本屋さんでも見に行き、心を慰めるとするか…そう白旗を上げた瞬間、右目の視界におかしな光景が飛び込んで来た。飛び出た能舞台の横手裏手に、ぬぉっ!見事な量の古本だっ!慌てて泥土を踏み締め近寄ると、カクカクした能舞台脇を利用して、もはや古本屋と形容しても間違いないほどの古本が並び続けているのである。犬走り部分には平台が造られたり、シートが敷かれたりして、100均文庫・文庫セット・『はじめの一歩』箱。そして大きな平台に図録・古雑誌・エロカストリ雑誌・ビジュアルムック・写真集・絵本・単行本が面陳されている。裏に回り込むと、平台には絵本が並び、さらにコンビニコミック箱・絵本箱・女性実用箱・300均単行本箱が並び続ける。そして板壁や巡り廊下がラックとして利用されており、絵本・洋書絵本・女優写真集・雑誌・美術図録などがキレイに飾られている。雑本的古本屋さんで、値段は総じて安めである。しかし、出店数の少なさから来た期待外れ感を、ものの見事に挽回してくれた古本屋感に大感謝する。河出書房新社「童謡でてこい/阪田寛夫」リム出版「ウルトラマン1 封印解けし時」「ウルトラセブン1 古都に燃ゆ」「ウルトラマンタロウ 悲しき妖精少女」(1992年刊。これらはすべて監修:円谷プロで、テレビ番組の新作を作る代わりに、漫画で新しいウルトラをとスタートしたプロジェクトコミックである。全40巻を出版すると豪語したが、第一回配本の四冊(購入した以外に「帰ってきたウルトラマン1」あり)を出しただけで会社が無惨にも倒産、大量三十六冊を残し未完に終わる。漫画は八十年代劇画タッチ…)を、ミニバンの後部扉を全開にして値付中のオヤジさんに精算してもらい、計600円で購入する。一日限りの神社の境内の古本屋さんに救われて、心晴れやかに石神井城跡を眺めて帰る。気付けば日が陰ると、もはやそこかしこに秋の気配が忍び寄っている…。
posted by tokusan at 14:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする