2022年03月17日

3/17二年ぶりの青空掘り出し市!

強い地震の恐怖に怯えつつ、夜中と早朝の時間を使い、崩れた古本の山の復旧作業に勤しむ。あぁ、いやだいやだ。地震は本当に恐ろしい。これ以上被害が広がらぬことを心底から願いつつ、午前の空いた時間を有効に使うため、神保町に駆け付ける。今日から『神保町交差点』を挟んだ『靖国通り』南側歩道に、113のワゴンを並べた「第61回神田古本まつり青空掘り出し市」がスタートするのである。午前十時過ぎとあって、まだそれほどの人出ではないが、『書泉グランデ』前の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)ブースは、早速古本修羅と古本神が入り乱れる黒山の人だかりで、とても入り込める余地がない…ここは後回しにしよう(ちょっと離れた隣りのワゴンの人たちがその人だかりを見て「なんであんなに人が?」「ミステリーだよ。ミステリーが売れてるんだよ」と囁き合っていた)。というわけで早足ながらも様々な知り合いにお会いしながら一往復すると、南北書園「ふらんす短篇集1/小林龍雄譯」(装幀が松本竣介なのだ!)が200円、講談社「透明な季節/梶龍雄」が250円、三笠書房「黒いハンカチ/小沼丹」(カバーナシ)が500円、集榮館「搭上の犯罪/黒岩涙香譯」(函ナシの大正十年縮刷版。表題作の他に『銀行の賊』を収録)を500円で購入してしまっていた。いやぁ、二年ぶりの青空掘り出し市、素敵に楽しいな。そして盛林堂ブースに再び差し掛かると、どうにかワゴンを覗き込めそうな状況になっていたが、ワゴンも木箱も所々ガタガタ状態…す、凄まじい…。そんな残った本の列に目を凝らし、雄鶏社ポケットブックス「アスファルト ジャングル/W・R・バーネット」を見つけ出して500円で購入する。
toujyou_no_hanzai.jpg
一番の収穫は「塔上の犯罪」!「水平書館」(2014/05/23参照)の古書だらけワゴンから、背の細い金箔文字に“犯罪”の二語を見出し、引っ張り出したのである。良く見かける扶桑社の縮刷本とは異なる縮刷本で、巻末広告を見ると、他には『玉手箱』『涙香傑作集』『有罪無罪』『人耶鬼耶』『片手美人』『海底重罪』が出版されている。
posted by tokusan at 12:59| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月13日

3/13東京・ひばりが丘 古書きなり堂

kinaridou.jpg
麗らかで暖かな花曇りの日曜日。まだ確定申告も終えていないのに、コメントタレコミにあった古本屋さんを見に行くことにする。件のお店は、西武池袋線・ひばりが丘&保谷と西武新宿線・田無を各頂点とする三角地帯の中心辺りに位置するとのこと。どうやら一番近いのはひばりが丘らしいが、地図で教えられた住所『住吉町1-6』を確認すると、西武柳沢からもどうにか歩いて行けそうなことがわかる。そこで電車に揺られて西武柳沢に出て、北口から平坦で空の広い住宅街を歩き通し、三十分弱で目的の住所にたどり着く。ひばりケ丘からは南東に位置する『フラワー通り』である。住吉町一丁目に沿うように、東北方面に移動して行く。すると6番地に突入。『宝晃院』という立派なお寺が現れた…この辺りか…と注意してさらに進むと、あぁっ!古本屋さん発見!しかも住吉町ではなく、この『フラワー通り』を挟んだ反対側の泉町二丁目にお店はあった。何はともあれ、こんな住宅街のお店にたどり着けて良かった。そして開いてくれていて、本当に良かった。スペイン風瓦屋根が一階軒に巡らされた、商店建築である。ウィンドウに下ろされた水色のシャッターが鮮やかだが、看板などは何処にも見当たらない。店内に本が並んでいるのは外からでも確認出来る…これは、入って良いのだろうか?と一瞬躊躇するが、結束本を持った、荻上チキ風青年店主の姿が見えたので、思い切って入ることにする。店主と目が合った瞬間に「こんにちは」と声をかける…目礼されたので、入っても大丈夫なようだ。パッと見、手前が小さな店舗で、奥は作業場兼倉庫となっている。この様子から見ると、ネットや通販がメインで、店舗部分では安値の雑本を販売する営業形態のようだ。結束本や所々に置かれた頑丈な木箱から察するに、組合に入っているお店なのだろう。正面真ん中の帳場を挟み、両翼に四本のスチール棚が置かれている。文学・思想・世界・カルチャー・鈴木志郎康・図録・大判ビジュアル本・函ナシ古書・写真集・文庫・児童文学・実用…ほとんどが千円以下の安値だが、並びにはスーッと芯が通っており、何かありそうな予感を覚えさせてくれる。まめに通えば面白い物が掘り出せるのではないだろうか。だが、飾り棚がまだ開いたままだったり、棚にも少し空いている部分があるので、まだまだ準備中と言った感じである。角川文庫「キング・コング/エドガー・ウォレス メリアン・C・クーパー」第一書房「森の小径 若山牧水隨筆選集」を購入するとともに「このお店はいつ出来たんですか?」と聞いてみると、元は通販専門で今年の一月に出来たのだが、買取が集中していたのと、あまりにも寒い日が続いていたので、ようやくここ最近開けるようになったことを教えてくれた。なるほど、それではまだまだこれからカタチになる前の状態なのか。「お店の名前は?」とさらに聞くと、「まだお店の名刺を作ってないし、看板も出していないんですが…」と、仕事の名刺を「“きなり堂”と言います」差し出してくれた。店名通りに、生成りの手作り感ある布のような紙に印刷された名刺であった。少し離れているが、保谷の「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)とコンボで訪れれば、充実した古本買いが出来そうな予感。しばらくしたらまた行きます!

家に帰ると、昨日ポストを見ていなかったので、「日本古書通信」の最新号が届いていたのに気付く。リレー連載『ミステリ懐旧三面鏡』は北原尚彦氏の番。吉祥寺の今は亡き古本屋さんで、ホームズ関連書を掘り出す十六才の自分に、思いを馳せておられます。
posted by tokusan at 16:44| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月09日

2/9東京・東村山 古本×古着 ゆるや

お昼過ぎに家を出て、西武新宿線下りに乗って東村山へ。西口ロータリーに出ると、明日雪が降るなんて信じられない暖かな陽気である。太陽の光を存分に浴びながら「なごやか文庫」へ。いつもならこの時期は古本市が行われているはずだが、二年連続で新型コロナのために中止となってしまっている。その憂さを晴らすように、今日はカウンター内にご婦人が座る有人状態の文庫をウロウロ。講談社「羊の宇宙/夢枕獏作 たむらしげる絵」創元推理文庫「穢れなき殺人者/ブリス・ペルマン」「謎物語 あるいは物語の謎/北村薫」を計450円で購入しようとすると、横合いから年配の職員さんに「古本屋ツアーさんですか?」と声をかけられる。諾と返事をすると、カウンターのご婦人に向かって「ほら、この人が古本屋ツアーさんだよ。ブログで書いてくれた。お礼言いたいって言ってたじゃん」と紹介していただいた。「軟派な感じになっちゃって、すみません」とお茶目に挨拶するご婦人としばし歓談する。これからも本を買いに来ますので、引き続きこの調子でよろしくお願いいたします!

yuruya.jpg
表に出て、斜向いの『諏訪神社』にお参りすると、手水の替わりに手水鉢に三つの消毒ポンプが置かれているのにびっくりする。そして西口ロータリーに戻り、『東村山駅西口交差点』から、真西にテクテク歩き始める。二車線の道路はこの辺りの主要道らしく、車が頻繁に行き交い、シャッターこそあまり開いていないが、店舗や事業所が多く並び続けている。緩やかな坂を下り、小さな川を渡り、緩やかな坂を上がり、テクテクテクテク…駅からおよそ一キロも来ると、行く先に『野口町二丁目交差点』の信号が見えて来る。そろそろだな…と思ったら、道路南側に、店の前面を青く塗り上げ、店頭に古本と古着を並べたお店が出現した。ここは岡崎武志氏が、自転車で「なごやか文庫」を訪れた帰りに、偶然見つけたお店なのである。氏が以前描いてくれた地図をポケットに収め、小さな幾つかのカゴや箱に入った古本に視線を落とす。表に出ているのは50均と、さらに背に貼られた三種のシールによって、10・30・50と分けられているようだ。文庫やコミックが主である。中に進むと、まずは細長い玄関フロアで、右壁側に棚があり、文庫がソロソロと並んでいる。海外文学文庫・エンタメ系文庫・岩波文庫など。奥に進んで一段上がると、そこがメインフロアである。古着と古本が混在し、手前に文庫と単行本と洋書が詰まった回転本棚が二本、そして右壁沿いに棚が設えられ、古本が並んでいる。奥からマスク姿のご婦人が、ハイトーンで「いらっしゃいませ」と出迎えてくれた。岩波文庫・哲学&思想・社会問題・洋書・芸術・桜庭一樹・恩田陸・スターウォーズ・バットマン・コミック・文学・ラヴクラフトなどなど、硬軟と新古と和洋が混ざった不思議な品揃えで、恐らく読了した本を並べたと思われる、商売気を抜いた個人嗜好の強いお店である。値段は激安から通常値まで様々。二見書房「3D怪奇スリラー館」ちくま文庫「猿飛佐助/杉浦茂」を購入する。
posted by tokusan at 17:07| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月28日

1/28「最後の古書市」を覗く。

朝からしっかりお仕事して、昼食を摂ってから取材のために外出。そして帰路、神保町に寄り道し、店舗ビル建て替えのために三月でひとまず営業を終了する『三省堂書店 神保町本店』八階で開催中の「最後の古書市」を訪れる。このビルで開かれる最後の古書市というわけである。いずれ本店ビルは戻ってくるとは言え、何だか至極寂しいタイトルである。正面入口脇のエレベーターの乗り込み、一気に八階へ。
saigo_no_kosyoichi.jpg扉がウィンと開くと、唐辛子のような形状の中規模スペースに古本島が連なり、すでに先客十人弱が通路に蠢いている。すぐさま仲間となり、端っこからワゴンと木箱と足元のダンボール&プラ箱に並ぶ古本を眺め始める。「楽生堂」の木箱に白水社「喪の銀嶺/アンリ・トロワイヤ」がカバーナシで並んでいたので、取りあえず確保。そして「古書あやかしや」前に来ると、木箱に古い翻訳探偵小説が貸本仕様なので安値で並んでいるのに興奮。黒白書房の「緯度殺人事件」が改変表紙なのが誠に惜しい。森下雨村譯「甲蟲殺人事件」は函ナシで背が手書き文字…みんな安いけどなぁ…としっかり悩み、結局手にしたのは同様に貸本仕様だが状態が比較的マシな博文館 探偵傑作叢書34「探偵怪奇 決闘/ビーストン著・妹尾韶夫譯」である。ちゃんと別刷りの表紙絵も付いていて1500円であった(そう言えばその昔、大阪の「中尾書店」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」p104参照)でこのシリーズが十冊近くズラッと並んでいたが、すべて表紙絵が取れた状態であった。確か値段は一冊四千円ほどであったと記憶する)。これにさらに角川文庫「愛の輪舞/ビクトリア・ホルト」を加え、計2150円で購入する。大正時代のビーストンの短篇集がこの値段で読めるのなら、万々歳である。この市は2/23までと、一ヶ月近く開かれている。
kettou_sanseidou.jpg
posted by tokusan at 17:49| Comment(2) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月02日

1/2東京・町田 町田古書市

machida_koshoichi.jpg
実家に日帰りがてら、町田駅にて途中下車。JR町田駅北口側にある、商業施設『町田東急TWINS EAST』に入り込み、正月客たちを掻き分けて、エスカレーターで六・七階にある『東急ハンズ町田店』を目指す。今日からそのフロアの何処かで、中古レコード&CD&古書市が開かれているはずなのである。まずは六階に到達してフロアを一回りするが、古本やイベントの気配はナシ。すぐさま七階へ移動すると、エスカレーター降り口に『まちだ昭和レトロ市』の立看板があり、その中に「町田古書市」というのも含まれていた。そこから顔を上げれば、赤い年賀状売場の向こうに、古本の気配を感じ取る。そこまで歩を進めると、フロア片隅の小さなイベントスペースに展開された、壁際と平台&木箱で構成された二つの島が、目指して来た小さな古本市であった。CD・DVD・レコード・新書・新しめの文庫本・古雑誌・実用系ビジュアルムック・絵本・児童文学・映画関連・「サザエさん」・図録・コミックセット・紙物・こけし等が並び、「がらんどう」(2011/02/25参照)や「古書カンカン」(2010/08/29参照)の名を確認する。絵本と児童文学が楽し気なので、そこに意識を集中して二冊を手にする。集英社 少年少女世界の名作24「シャーロック・ホームズの冒険/コナン・ドイル原作 藤原一生」(この本自体は珍しくもないのだが、ホームズ帯が付いていたのでセレクト)偕成社 名作冒険全集19「モロー博士の島/ウェルズ 一色次郎」を、レジの大行列に並んで計440円で購入する。「モロー博士の島」は、ちゃんと改造人間が挿絵化されているので、なかなか刺激的である。さぁ、古本買ったし、実家に向かうとするか。
moreau.jpg
つよい怪人vsよわい怪人!…うぅぅっ…。
posted by tokusan at 21:29| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月05日

12/5東京・江古田 百年の二度寝


hyakunen_no_nidone.jpg
駅北口に出て。まずは日芸前の「根元書房 日芸前店」(2008/10/07参照)を見に行くと、店頭は機能しているが、店内は精算のための中央通路しか入れない状況である…うーむ、凄まじい…と様子を窺っただけで退散する。そして再び駅前に戻り、背後に鬱蒼とした富士塚を控えた『浅間神社』前を通過し、『江古田きたぐち商店会』を北に進む。緩やかな坂を下り切ると、左手に雑貨屋さん『OILife(オイルライフ)』が見えて来るのだが、その店頭にはお店の立看板以外にも、赤文字で『本』と大きく書かれた立看板も出されている。このお店の奥に、間借りするようなカタチで、新刊&古本&雑貨のお店があるということなのだが…。ズイッとまずは『オイルライフ』に入り込み、通路をズンズン奥へと進む。レジ横も通過しながら店主に「いらっしゃいませ」と言われ、さらに奥へ。一段上がった小部屋を通過して奥に抜けると、そこには意外に広い空間が広がっていた。“J”を天地引っくり返したようなカタチのお店で、壁際に洒落た木枠のボックス型棚が展開している。もっと小さなお店を想像していたのだが、並ぶ本も多めで、かなりしっかりとした本屋さんとして目の前に立ち現れたので、ちょっと見くびっていたことを反省しながら、棚を順繰りに眺めて行く。猫・ペンギン・生物・建築・トマソン・旅・児童文学・ジェンダー・本関連・シブサワ・ウエクサ・テラヤマ・アート・カルチャー・思想・文学・手芸・女性・性愛・食・酒・暮らしなど細やかな棚造りが、新刊・古本(わりと新しめの本多し)とさらに雑貨を取り混ぜ展開して行く。値段は普通。さて、何を買おうかなと二巡目に入ったところで、壁にピンで吊るされた、異様なフォルムのフェルト細工人形に激しく興味を覚えてしまう…こ、これは、恐らく『マンドラゴラ』なのではないだろうか?そう、死刑囚の絞殺時に漏れ出た精液から育成する、地中から抜く時に放たれる絶叫が至近の生物を即死させるので犬に抜かせると言う、魔法植物である。うぅむ、これは是非家に連れて帰らねば、とピンから外し、レジに差し出しキャップを被ったカルチャー青年に「これ、マンドラゴラですよね」と聞くと「そうです、マンドラゴラです」と返される。やはり私の目は間違っていなかった!と660円で購入する。
mandragora.jpg
予想外のマンドラゴラを入手し、奇妙な満足感を覚えながら線路際に戻り、西へテクテク。「snowdrop」(2021/07/23参照)に到達し、こなれて独自に耕され始めた棚を端から楽しんで行く。うぅ、古めの児童文学が充実しており心がうずきまくる、三冊ほどを秤に掛けて、結局ポプラ社「たぬきのイソップ/小沢正・さく 佐々木マキ・え」(1976年初版)を1540円で購入する。そして正体が露見してしまう…あぁ、なんだかこういうのも、ずいぶん久しぶりな気がするなと、恐縮することしきり。しばらくsnowdropさんと楽しくお話しさせていただく。南口のパン屋さんで委託販売を始めたこと。これはいつか見に行こう。棚で香気を放つ古めの児童文学は、ご近所の名士である尊敬すべき老婦人からの買取であること、さらにはウズベキスタンのパンの不思議な美味しさや、江古田の街の素晴らしさ(その中で「百年の二度寝には行かれましたか?」と聞かれたので「たった今行って来てマンドラゴラを買いました」とポケットからフェルト人形を出すと大笑いされる)について情熱的に語られる。なんだかとてもキラキラしています!クリスマス仕様のショップカード(カードと言いつつも、表紙も合わせて全十ページの豆本スタイル!)とスタンプカードをいただき、お店を後にする。ここにはまた児童文学を偵察に来なければ…。帰りの中村橋で「古書クマゴロウ」(2018/03.21参照)に当然立ち寄り、朝日新聞社「大人のお洒落/石津謙介」宝石社「世界20の不思議 この謎はいつ解ける?/中山義秀」を計365円で購入し、帰宅する。
posted by tokusan at 17:34| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月26日

11/26結局二か所で盛林堂の古本を買う。

暖かな正午過ぎの西荻南に流れ着いたので、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に直行する。店頭木箱で勁文社マルチウェーヴ・コレクションvol.1「樹液すする、私は虫の女/戸川純」拾い出して顔を輝かせ、新樹社ぶらっく選書「第四の郵便屋」「怒りの審判」ともにグレーグ・ライスと一緒に計300円で購入する。
jyueki_togawajyun.jpg
そして表紙デザインを担当した「Re-ClaM vol.7 特集:書物狂森英俊の生活と意見」「Re-ClaM eX vol.3/F・W・クロフツ」を受け取る。ついに偉大な古本神・森英俊氏の特集が組まれる日が訪れるとは!世の中まだまだ捨てたもんじゃない。などと歩きながらちょっとパラパラ目を通して、そのまま吉祥寺方面へ進路を採る。住宅街を抜けて『井の頭通り』まで出て、後は吉祥寺駅方面へ真っ直ぐテクテク。およそ二十分でギャラリー『shell 102』にたどり着く。今日からここでイラストレーター&装幀家のYOUCHANさんの個展『本を巡る冒険2 古本タワー再び』が始まっているのである。個展らしからぬサブタイトル『古本タワー再び』の意味は、ギャラリー内に「盛林堂書房」が持ち込んだ日本近代文学・探偵小説・ミステリ・幻想文学の詰まった多数の木箱が、まるでタワーのように四面に濃厚な古本を晒しながら、フロア中央に屹立することから発している。『井の頭通り』側から小階段を下り、ガラス扉を開いてギャラリー内へ。すぐに古本タワーに取り憑きたい気持ちを『待て待て、これはYOUCHANさんの個展なのだ。決して盛林堂の古本販売催事ではないのだ。いきなり古本を見始めるのは無礼な行為にあたる。まず、まず絵をちゃんと見ようじゃないか!』とグッと抑えて、壁際に意識を集中する。あぁ、渡辺温の『影』が、まるで映画『カリガリ博士』のように表現主義的で、眩惑されるなぁ…やっぱり中井英夫「虚無への供物」の奈々村久生は凛としてプリティだな…などと眼の保養をした後に、ターンして古本タワーと対峙する。すでに十人弱の先客がおり、帳場には古本の山を抱えた精算待ちの人たちが列をなしている。そしてギャラリーの主人は値札の計算にてんてこ舞いである。なので、タワーにはすでにブランクが所々発生している。だがそれでも良さげな本たちが、まだまだ気持ち悪いほどの安値で並んでいるのだ。昭和三十年代の安部公房が軒並み千円以下…講談社「虚無への供物」が三千五百円!?函ナシの新潮社新作探偵小説全集「鐵鎖殺人事件」が千円!?春陽堂書店函ナシの甲賀三郎「琥珀のパイプ」が三千円!?…あぁクラクラして来た…。そしてタワーの最上段にはポプラ社の日本名作探偵文庫がズラッと並んでるじゃないか。…い、いつかは買って読みたいと思っていた「魔の宝石/水谷準」があるじゃあないか…幾らだろう……はっ、八千円だっ!た、た、た、高いけど安い!貸本仕様だけど、ちゃんとカバーが付いていて本の状態も悪くないので、この値段は完全に超お買い得と言えよう…どうする?買うか?買うのか?買っていいのか?買っていいんだよ!買うよ!買いますよ!と結局神経を鈍麻させ、列の最後尾に並んでおとなしく順番を待って購入する。この個展は12/7(火)まで。
ma_no_houseki.jpg
あぁぁ〜ぁあ、散財しちまった。しばらく昼食は食パンで凌ぐしかないな。
posted by tokusan at 17:12| Comment(2) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月25日

11/25東京・神保町 弐拾dB 東京出張所

というわけで、昨日のタンスと本棚の呪いに罹りながら、重い身体を引き摺って神保町へ。まずは「羊頭書房」(2014/05/02参照)に立ち寄り、緊張しながら色々物色する。創元推理文庫「義眼殺人事件/E・S・ガードナー」(四版の松田正久カバーver。カバーの背に傷みと、所蔵印あり)を450円で購入する。
gigan_satsujinjiken.jpg
このジャケverが喜びの安さで!

そしてそのまま裏路地を進み、「BIBLIO」(2013/10/02参照)二階で今日一日だけ開店している「古本屋 弐拾dB 東京出張所」に向かう。尾道の深夜営業古本屋さんが、本の雑誌社から新刊を出すので、上京の真っ最中なのである。「BIBLIO」が一階に入ったビルの階段を見ると、ちゃんと「古本屋 弐拾dB」と紙看板が貼り出してある。
20db_tokyo.jpg
階段を上がり折り返して二階に至ると、開け放しのドアにも同様の紙看板が。中に入ると、そこは「BIBLIO」の倉庫の半分に大テーブルを置き、バッグやオリジナルの紙物や薬袋に入った詩片を並べている、小さなお店であった。だが、店番をしていたのは店主ではなく、本の雑誌社の編集さんではないか。何と店主はただ今東京の雑踏に疲れ果て、「ぶらじる」に珈琲を飲みに行っているとのことであった…ところで肝心の古本は?と辺りを見回すと、開かれた革トランクに何冊かの詩集などの文学本が置かれ、テーブルにお色気トランプカードが飾られているのみであった。むぅぅ、これはやはりいつの日か、尾道を訪れ深夜のお店に古本を買いに行くしかないということなのだな。と決意し、ショップカードをいただき、本の雑誌社「頁をめくる音で息をする/藤井基二」を購入する。そうして再び路上に流れ出て、「東京堂書店」前を通りかかると、今週は「野呂邦暢 古本屋写真集」は三位に着けていた。どうか、長く確実に売れてくれますようにとお願いし、帰路に着く。そして家に戻ると、皓星社「古本マニア採集帖/南陀楼綾繁」が届いていた。ありがとうございます!『日本の古本屋メールマガジン』で連載していた、市井の古本を集める人(つまりは“リテレート(在野の研者)”たちだ!)三十六人の生態を詳しく調査した一冊である。実は南陀楼さんがこの連載を始める前、飲み屋で驕ってもらいながら、古本収集者たちのリストアップに協力したことがあったのだが、この本はその時のリストを遥かに超越した、小さな声を幅広く拾い上げたものになっているようだ。武藤良子さんの装画がまた『サイボーグ009』的でグッド!それにしても、ちくま文庫「野呂邦暢 古本屋写真集」と春陽堂書店「ハムレットを暗誦するドク・ホリデイ/岡崎武志」、本の雑誌社の古本屋関連三連発出版(「東京の古本屋/橋本倫史」「古本屋的!/中山信如」「頁をめくる音で息をする/藤井基二」)に加え、この「古本マニア採集帖」と、この初冬は古本屋関連本が活気を呈しているのが、なんとも嬉しい事態である。
posted by tokusan at 16:31| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月11日

11/11東京・新宿 TOKYO BOOK PARK×東急ハンズ

bookpark_hands.jpg
朝起きたら、左上腕の痛みとぬるま湯的倦怠感に身体を重く包まれ、残念ながらイマイチの体調。だがやるべきことはサッサと済ますかと外出して、新宿に姿を現わす。駅の宙空の『新南口』改札を抜けると、柱の多い上下にサンドイッチされたような空間が広がる。『高島屋』脇の空中デッキに出て、スタスタと南に進む。そしてどん詰まりの、午前十時を少し回ったところの『東急ハンズ新宿店』二階に入り込むと、目の前のイベントスペースで古本市初日がスタートしていた。二十一世紀世代の古本屋さんが集まり、各地「PARCO」で開催されている古本市「TOKYO BOOK PARK」が、東急ハンズと手を組み、新宿に進出したのである。参加店は「古本うさぎ書林」(2009/07/07参照)「にわとり文庫」(2009/07/25参照)「ハナメガネ商会」(2014/04/26参照)「徒然舎」(2012/05/24参照。ただし旧店舗)「folklore」(2018/03/09参照)「クラリスブックス」(2013/12/01参照)「東京くりから堂」(2009/10/29参照)「一角文庫」「リズム&ブックス」(2011/08/10参照)である。クロスなどで洒落た装飾を施された、テーブルや木箱や木棚が組み合わされ重ね合わされ、六つの島を造り出している。それにしても、ハンズは今開いたばかりなのだが、すでに島には数人の籠を持った女性が取り憑き、大量の洋書絵本を積み重ねている…すげぇな。くるくると島の間を満遍なく動き回る。「一角文庫」さんの建築本が良い味を醸し出している。また「くりから堂」さんの旅行系古書もたまらんなぁ…などと楽しむ。文化出版局「ミステリーは私の香水/小泉喜美子」を500円で購入し、「徒然舎」さんの開店十周年記念ポストカードをいただいて、フラフラと帰路に着く。この市は11/24(木)まで。
posted by tokusan at 12:56| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月04日

11/4東京・浅草橋 古書みつけ

昼過ぎに家を出て、中央線と総武線を乗り継ぎ浅草橋に出る。今日は贅沢にも編集さんにお蕎麦をご馳走になった後、筑摩書房に赴き「野呂邦暢古本屋写真集」180冊にサインするのである。テクテク北に群集とともに歩き、赤信号に引っ掛かると、後からグイと袖を引っ張られた。振り向くと岡崎武志氏の笑顔である。昨日はお疲れさまでした。信号が変わるとともに肩を並べて歩き始め、お店の前で編集さんと合流し、美味しい昼食。満腹した後に筑摩書房の会議室で、心を込めて、ひたすらマシーンのようにサインする。
noro_sign_chikuma.jpg
我々を待ち構えていた、“三億円の札束”と言った感じで積み上がった「野呂邦暢古本屋写真集」の塊!

私は主に署名と捺印だけだが、岡崎氏は植物や動物のイラストまで描き込む念の入れようである。最後の五冊は、鉄人28号→鉄腕アトム→古ツア→岡崎→野呂のイラストであった。何処に行くかはわからぬが、この五冊は当たりである。

kosho_mitsuke.jpg
およそ一時間半で作業を終了し、筑摩書房を辞する。岡崎氏とポツリポツリ話しながら浅草橋駅方向へと戻る。そして駅には入らずに、そのまま東側歩道を南進して、薄緑の『浅草橋架道橋』の下を潜る。さらにワンブロック南下し、セブンイレブンの前で東に曲り、雑居ビル街に入り込む。大通りから一本道を入ると、途端に静かになるのがこの辺りの特徴である。東に歩き続け、三本目の道を南に入る。すると右手のモルタル商店長屋建築の一階に、開店祝いの胡蝶蘭が置かれているのが目に留まる。近づくと、そこが先頃開店した古本屋さんであった。ちょっと奥まった小さな店のファサードは、白壁に木枠のガラス扉と、古風な造りが為されている。右端の縦長ガラスには、店名が緑の塗料で浮き上がっている。引戸をカラッと開けて中に進むと、しっかりと落ち着いた木材で作り込まれた、こじんまりとした空間である。左には百均箱が置かれているのみで、空の飾り棚が壁に展開している。右に縦横に入り組んだ棚があり、入口側から一般文庫・コミック・ミステリ&エンタメ・箱入り文学本・純文学文庫・海外文学・松本清張全集・台東区&文京区関連本・カルチャー・評論・児童文学・絵本・詩俳句・民俗学・鬼・宗教・柳田國男文庫などが並んで行く。棚の一部である小さな扉を開くと、そこには男色関連研究本が隠されており、岩田準一の研究文献もあり。また佐藤泰志の「移動動物園」が千二百円で燦然と輝いていたりもする。足元には大判写真集木箱があり、棚前の古い木製机には、喜国雅彦氏の本棚探偵シリーズが引き出しに入っていたり、大正時代の藤村小説集がディスプレイされている。中央にある柱の下には、店内の緩いルールを書いた紙がポツンと置かれている(現在は買い取りはしていないとか、店内撮影OKとか、店主は恥ずかしがり屋とか…)。新しめの本が多く、値段は普通。奥のカウンター帳場で声を掛けると、「いらっしゃいませ」と声はすれども姿は見えずの店主さんが、暖簾を潜って姿を現わしてくれた。ちくま文庫「舞姫/ヰタ・セクスアリス 森鴎外作品集1」福音館書店「がたん ごとん がたん ごとん/安西水丸」を購入すし、表の通りからもガラス越しに見える、欄間飾りをデザインした栞をいただく。新たに浅草橋の駅近くに誕生した古本屋さんに、万雷の祝福の拍手を!これでこの地では、「御蔵前書房」(2008/11/08参照)との古本屋ハシゴができるようになった訳である。岡崎氏と二人で新店に足跡を残し、総武線にて帰路に着く。
posted by tokusan at 19:59| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月30日

10/30東京・祖師ヶ谷大蔵 nostos books

nostos-books_sosigaya.jpg
午後三時半に、祖師ケ谷大蔵と二子玉川の間くらいの鎌田と言う町に流れ着く…コンクリで護岸されている仙川が、ドウドウと激しい音をたて流れている…。よし、「祖師谷書房」に寄って帰るぞ!と毅然と決意し、谷底から這いずり出て『世田谷通り』に到達する。この通り沿いは、駅からだいぶ離れているのに、いつでも賑わいを見せている不思議な通りである。駅に向かって進路を採り、テレビ撮影スタジオが集まる『メディアシティ』のある通りに入ると、西側にある化粧煉瓦マンションの一階店舗に、新たな動きを確認する。なんだかアート系のギャラリー的で、たくさんの人が出入りしている…ぬぉっ!ガラスウィンドウ越しに見えるグレーの壁棚にはたくさんのビジュアル系の大判本が並んでいる…あれは、もしや、古本?誘われるように中に入ってしまうと、なんとここが松陰神社前から移転して来た「nostos books」(2013/08/10参照)の新店舗なのであった。そうかそうか、もう移転して来たんですか。と偶然の出会いを喜び、三方をガラスウィンドウに囲まれた、右側スペース&中央フロアのギャラリー&新刊平台部分を横目に、左の壁棚にピタッと張り付く。最上段上部が緩やかな円弧を描き、その下に縦幅の広い五段の頑丈な棚が展開。それが手前と奥に凹凸に展開している。そのほとんどは重い大判本で、図録と作品集を混在させ、奥から建築・民芸・工芸・デザイン・イラスト・絵画・写真・幻想・版画・芸術文化・博物学的絵画というように並んで行く。レア本多数あり…おぉ「コリントン卿登場」にクラクラ。細かく蒐集された真鍋博にもクラクラ。こういうお洒落なアート系の中では門外漢とも言えそうな成田亨にもクラクラ…ただし値段はスキ無しのガッチリ目である。フムフムと品定めし、朝日新聞社「詩人の眼・大岡信コレクション」を税込の2640円で購入する。移転ラッシュとは言え、お洒落なお客さんの中に期せずして紛れ込んでしまった空手着の少年に、思わず微笑んでしまう。

その後は必死に駅まで出て、さらに駅を越えて商店街を北に遡上し、大好きな「祖師谷書房」(2009/03/05参照)へ。狭い店内の棚を遠慮せずにすべて見回し、オリエンタル・デザイン・プロダクツ「遠い昔のなきむしメルヘン/有賀忍」(1970年初版。有賀忍の挨拶折り込み付)KOEI「RAMPOヴァーチャル・ガイドブック」(今は昔のセガサターンの、松竹映画『RAMPO』を基にして、実写とCGを合成したアドベンチャーゲーム攻略本。江戸川乱歩役は竹中直人。横溝正史役は若き日の香川照之。乱歩が編集屋の横溝に原稿を催促されていて、そこはかとなく切ないっス…)を計1500円で購入する。
posted by tokusan at 20:03| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月07日

9/7東京・池袋 平和堂書店の光芳書店

kouhou_heiwadou2.jpg
夕闇迫る池袋に出たついでに、この間入れなかった、元「平和堂書店」(2008/10/30参照)の「光芳書店」を見に行く。『へいわ通り』をズラズラと北上し、やがて脇道のお店の前…扉が開いている。表に百均棚が出ている。やっている!と中に吸い込まれる。すると入ってすぐ左には、ネット管理が行き届いた歴史古書棚。右には垂れ下がるビニールカーテンに守られた帳場がある。そしてそれぞれ以前のように行き止まりの通路は、六本が四本に減少し、右側二本はアダルト通路。左端が時代劇文庫・一般文庫・出版社別文庫・囲碁将棋・大判本などが集まり(奥の一部は立入禁止になっている)、その隣りに、絶版漫画・コミック・二百均単行本・文学・映画・実用系&ビジュアルムック・雑本となっている。ふぅむ、街の大衆的な古本屋さんの雰囲気だ。上野文庫の古書ラベルのついた二百円の梅毒の本を買いそうになるが、思い留まり大阪府教育委員会「映画の見方 第6集 作家と作品 」を200円で購入する。発行元からわかる通り、若者の健全な成長と観賞眼を養うための映画読本である。昭和三十八年刊で、木下恵介・黒沢明・小津安二郎を特集。巻末には『大阪府教育映画等審査会審査映画一覧表』という名の推薦映画が寸評とともに載っているのだが、東宝特撮映画『妖星ゴラス』が“選定”作品に選ばれていて笑う。『細部に納得し難い個所もあるが(地球を南極に作ったジェット噴射器で軌道を変えるところか)国際的協力を描いて、科学の平和的使用を示した点に意義がある』というのが選定理由らしい。その後は池袋から中村橋に出て、「古書クマゴロウ」(2018/03/21参照)に立ち寄る。店頭で百均文庫を一冊掴み、店内のミステリコーナーと児童文学コーナーをつぶさに観察する。すると古く茶色い児童文学が何冊か入荷していたので、さらに詳しく観察すると、函ナシの大正八年刊、隆文館圖書株式会社 家庭自學文庫「寶さがし/自學奨励會編輯局編」という読みたくなる一冊を見付けたので、太田文庫「異星人遭遇事件百科/郡純」とともに計2110円で購入する。「寶さがし」は、いわゆる金銀財宝を探す冒険譚ではなく、小学校六年生の一群が、寶さがしゲームをしながら、地中に隠されている“資源”という名の寶について学んで行く物語である。つまりは、地学・鉱物の学習物語。見返しの叙情溢れる月夜の景色に、ちょっと胸が締め付けられる。
takara_mikaesi.jpg
何故子供の本の見返しを、こんなに切なくしたのだろうか。
posted by tokusan at 21:33| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月26日

7/26東京・国立 三日月書店

mikazuki_shoten.jpg
中央改札から南口に出て、ピカピカの三角屋根の旧駅舎に出迎えられて、『旭通り』を東南へ。狭い歩道を人々と擦れ違いながら伝い歩く…この道は、いつか来た道…。ひとつ目の信号を過ぎ、NTT前の横断歩道を過ぎると、右手に古本が表に流れ出した光景に行き当たる。ここは旧「谷川書店」(2009/06/23参照)のあった所。2014年に閉店してからおよそ七年の時を経て、何と今年の七月に新たな古本屋さんが開店したのである。あの独特のクセのあった谷川のオヤジさんも、きっと何処かで仕入れノートを広げながら喜んでいることであろう。木地の美しいシンプルな立看板があり、その周りに絵本・文庫本・新書・美術・洋書などを収めた木箱が展開し、中央には「ユリイカ」などを積み重ねた文学&思想軍艦が鎮座している。入口脇の単行本木箱棚には、澁澤龍彦・寺山修司・赤瀬川原平が目立っている。タゴールの洋書と講談社文芸文庫棚の脇を通って店内に進むと、頑丈な木棚が左右両壁を覆い、正面に立ち居振る舞いがそよ風のような女性店主のいるカウンター帳場、そしてフロア中央には棚と平台の組み合わせがコンパクトに置かれている。左壁には、岩波文庫・講談社学術文庫・美術・世界・アラビア・イスラム・アジア・アフリカなどがエキゾチックに展開し、その関連の洋書も多く集められている。平台にはアラビア&イスラム系の絵本が飾られている。右壁には、哲学・精神・道教・荘子・アメリカ文学・海外文学・詩集・セレクト文庫・科学・料理などが並び、入口脇には絵本・児童文学が固まっている。ユーラシア大陸の南西にスポットを当てた、エキゾチックなお店で、知と美で編まれたアラベスクが、我々をあまり馴染みの無い未知の世界に誘う。値段は安め〜普通。何と素晴らしいことに、絵本棚で盛光社「空とぶ自動車1〜3/イアン・フレミング 常磐新平訳」を発見!2と3は持っているので、1だけを買いたいところだが、残念ながら三冊のセット販売になっている…だが、かなり安値の三冊三千円なのだ!これはぜひとも買っておかねば!と福音館書店「ロボットのくにSOS/たむらしげる」とともに購入する。ご親切に手提げ付きの紙袋に入れて下さいました。そして家に戻って手持ちの「空とぶ自動車」を確認してみると、みな1967年8月20発行なのだが、カバーが見事に違っているじゃないか。今回の購入本は、巻数のマークがみな赤なのだが、以前から持っているのは2巻が青で、3巻が縹色(はなだいろ)なのだ。カバーを捲ってみると、本体表紙はどれも、1巻が赤。2巻が青、3巻が縹色となっている…つまり今回の購入本は、後から刷って巻いたカバーということか…。この盛光堂の「空とぶ自動車」のカバーにはいくつかのパターンが存在するそうだが、これもまたひとつのパターンなのだろう。
chitty_chitty_bang_bang.jpg
posted by tokusan at 16:29| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月23日

7/23東京・江古田 snowdrop

snowdrop.jpg
橋上駅舎から北口に出て、正面の『浅間神社』を横目にして、駅沿いを西に歩いて行く。塀一枚を隔てたホームから漏れ聞こえるアナウンスの声。やがて踏切を過ぎると『江古田ゆうゆうロード』という名の商店街に差し掛かるので、そのまま道なりに西北に歩き続けるが、最初の三叉路で西寄りの少し寂しい道に進路を変える。そこをそのまま百メートル強突き進めば、左手に今年の二月に店売りを辞めた「ポラン書房」(2021/01/31参照)の元店員さんが始めたお店が現れる。焦茶のテント看板の下の極薄スペースには、木箱や小棚やラックが展開しているが、ちくま文庫や人文系がスラッと並び、知的に厳めしい表情が目立っている。付箋で表された110円本以外は、最終ページに値段が書かれている。手指を消毒して、シャンソンの流れる横長の小さな店内に進むと、正面はカウンター帳場ゾーンで、左は壁棚とその下に木箱やラックや未整理本、右側は帳場横から連なる壁棚、そしてフロアに平台が置かれている。帳場内では当然マスク姿のショートカットの女性が壁際に置いたパソコンに向かい合っている。左壁棚の足元には、古めの婦人雑誌やその付録類。棚には料理・暮らし・美術・映画・児童文学・児童書・手品・科学・絵本などが並び、帳場下にはセレクト絵本ラックあり。帳場カウンター脇のセレクト文学棚を見ながら右側ゾーンに到達すると、奥壁は最上段のみに文庫が並ぶ珍しい光景で、その下にセレクト日本文学が丁寧に渋く並んでいる。最下段の未整理本の山の影に、海外文学がちょっとだけチラリ。右壁には日本文学文庫が集められ、さらに絶版漫画・カルトコミック・漫画研究と続いて行く。平台には児童文学+洋書ビジュアル本が固まっている。小さいスペースに、魂を込めて選んだ本が並ぶ、厳選・端正・尖鋭なお店である。日本文学と絶版漫画が特に目立つが、他ジャンルにも必ず核になるような本が滑り込ませてあるので、何処を見ても表情が見てとれるのが楽しい。値段は普通で、良書珍書にはプレミア値。これで、催事や「井草ワニ園」(2019/01/05参照)で活躍する「一角文庫」とともに、「ポラン書房」の新たな血脈が江古田に伸び始めたというわけである。改造文庫「支那游記/芥川龍之介」を購入する。帰りに中村橋の「古書クマゴロウ」(2018/03/21参照)に立ち寄り、雄山閣出版「東京埋蔵金考/角田喜久雄」を300円で購入してから、バスで帰宅する。
posted by tokusan at 16:26| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月09日

7/9東京・中野富士見町 本とおかし リコリコ

licolico.jpg
地下駅を出ると、目の前が大通りの、神田川を中心にした広めの谷底。横断歩道を渡って、右に大きなバスの基地を見ながら、最初の横断歩道を北へ。路面より少し高くなった水色の欄干の『高砂橋』で、護岸され切った神田川を渡る。するとすぐに小さな十字路が現れるので東側に目をやると、裏通りに本をたたえた古本屋さんの姿があるではないか。神保町からここに移転して来た、乗物文献専門店「菅村書店」(2012/09/25参照)が、いつの間にか新たな事業形態で店舗営業を始めていたのである。住居ビルの一階を店舗とし、手前のガレージ部分が『古本とおかし』の「リコリコ」、そして帳場より奥の部分が予約入店制の「菅村書店」となっているのだ。店頭には木箱やプラ箱が多数置かれ、一般単行本・乗物系雑誌・児童文学・絵はがき類などが入っている。店内は、右側には小さめの棚が集まり、児童大百科類・海外絵本・料理・暮らし・ビックリマン関連・コミックなどが並べられている。フロア中央のラックには児童文学や絵物語が収まっている。右奥はわりと広めの駄菓子&駄玩具ゾーンとなっており、子どもの社交場然としている。とその時、店前にさしかかった小学生軍団が、店内に向かって「こんにちは〜」と声をかけながら通り過ぎて行った。すかさず「こんにちは〜。今帰り〜?」と返す帳場の女性…むぅ、すでにご近所の子供たちには、認知されているのだな。そんなことに気付きつつ、左側の大きな二本の絵本棚に、気持ちを移す。図鑑や科学&恐竜系も固められ、五十音順にたっぷりと絵本が並んでいる。そして左奥の壁棚には、歴史・交通関連・社会・一般文庫本・植草甚一・寺山修司・幻想文学系文庫・山田風太郎文庫などが収まっている。帳場の背後には広く、スチール棚が整然と並ぶ「菅村書店」の光景が覗いている。「リコリコ」は、駄菓子と絵本がメインの、子供を楽しませるためのお店である。絵本の品揃えがしっかりなので、タイミングが良ければ古く面白いものに出会えそうな予感が背中を走る。値段は安め〜普通(古めの絵本はほとんどが200円なのが嬉しい)。冨山房「あなたも いますよ/市川さとみ画 矢川澄子文」福音館書店「まるのうた/A・ラマチャンドランさく・え たにがわしゅんたろうやく」を購入する。実は新宿以西の地下鉄・丸ノ内線沿線は、終点の荻窪を除き、方南町までの支線も含め、古本屋さんが枯渇して久しい所。新たなお店が誕生してくれるなんて、本当に喜ばしいことである!
posted by tokusan at 16:39| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月18日

6/18東京・代田橋 バックパックブックス

back_pack_books.jpg
阿佐ヶ谷から渋谷行きのバスに乗り、途中の『代田橋』で下車。京王線の代田橋駅にに向かうため、ビルの谷間の小さな地元商店街を通過して、駅横で南に踏切を渡る。すると駅南口の階段を上がったところは、道が広角に折れ曲がる、小さく短い地元商店街である。その中に、何だか白い小さなお店が、梅雨の晴れ間の日光の下で浮かび上がっている。メールタレコミで知った、新刊と古本を扱うお店である。店前の道路には、立看板と百均文庫&単行本棚。それに絵本を詰めたアタッシュケースがあり、他にも椅子やテーブルが続いている…さらにマスクをした白シャツの、若かりし頃の利重剛を思わせる細めの青年が、表で店番をしている。何故表に出ているのか?それは店内を見れば一目瞭然である。そこはちょっとした広めの玄関ほどの小空間で、壁際に棚が巡らされている。三人は入れるだろうが、コロナ禍のご時勢では、一人がベストである。現代思想&カルチャー・文学・新刊(リトルプレス)・映画・ヒップホップ・ニューヨーク・エッセイ・植草甚一・小林信彦・阿久悠・旅・セレクトコミックなどが並び、三百冊弱ほどで、現代的でクリエイティブな若者空間を造り出している。値段は普通。表の絵本アタッシュケースから、岩崎書店「まんだくんとマンガキン/矢玉四郎・作 井上洋介・絵」を購入する。聞けばこの四月に開店したのだが、すぐに緊急事態宣言の休業要請により店を閉めることになったので、本格始動したのはここ一ヶ月ほどとのことである。それにしても、これで代田橋近辺には、「プチニコラ」(2019/12/15参照)と「flotsam books」(2020/08/08参照)に続き、古本を扱うお店が三店に増えたことになる。駅北側の『リトル沖縄』に続き、小さな『古本タウン』になってくれると嬉しいのだが。とにかく開店おめでとうございます!「本の買取もしてますので、よろしくお願いします」の声に送られ、小さなお店を後にする。

そして『環八』に出て、ズンズンズンズン南へ歩く…やはり、昨日のあれを馬鹿みたいに買いに行くことにしよう。小田急線の世田谷代田駅から電車に乗り、祖師ケ谷大蔵駅で下車。サッサカ『ウルトラ商店街』を北に進み、十分ほどで「祖師谷書房」(2009/03/05参照)に到着する。すると先客が二人…だがそれをものともせずに、右側通路に進入し、昨日買おうかどうか迷った本を探す…おぉ、あった。春鳥會「特異兒童作品集」を2500円で購入する。昭和十五年三版の、精神に障害のある子どもの絵画作品を集めた一冊であるが、これが何と後の放浪の天才画家として全国的に有名になる山下清の、若かりし頃の作品集!と言っても過言ではない編集がされているのである。…こんなのが絵本の山の中に紛れ込んでるんだもんなぁ……。仮名の『清』の名で、昭和十〜十四年作成の色紙貼絵・鉛筆画が計四十七点(二十五点は原色刷り)。掲載作品を選んだのは画家の安井曽太郎で、床一面に児童の作品を並べて吟味したところ、自然と清の作品に集中してしまったらしい。解説にはちゃんとイデオット・サヴァン(サヴァン症候群)についての記述もあるし、少し載っている他の児童の作品(仮名“謙二”君の作品が、かなりアウトサイダーアートで圧倒される)も魅力的で、やはり買って良かった!と純粋に感じる一冊である。山下清は、養護園に入る前から、色紙貼絵に熱中し、熟練していたとのこと。彼の放浪生活が始まるのは、この本の初版が出た一年後からである。
tokujidou_sakuhinsyu.jpg
右は清の昭和12年作『お化け』。いいですなぁ〜。
posted by tokusan at 20:18| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月10日

6/10東京・西荻窪 ガレージショップ ネット蔵

net_kura.jpg
六月の炎天下、顔面に縦の棒線を発生させながら、西荻窪の住宅街を彷徨っていると、突如オアシスのように一般住宅のガレージを利用したリサイクルショップを発見する。場所は駅南口を出て、高架沿いに『平和通り』を東へ東へ。500m弱進んだ、二本目の高架下を突っ切る通りを南へ曲がり込む。ひとつ目の十字路を過ぎれば、左手に門の前に立看板を出した白い住宅が現れるだろう。ごちゃごちゃと棚が立て込み、多数のプラケースが混在する店内に目を凝らすと、ほぅ!奥の壁棚に古本が並んでいるではないか。手指を消毒し、突然の闖入者に疑いの視線を寄せるご近所の奥さま客の背後を通過し、突然出会った棚の前に立つ。新しめの本が五十冊ほど。大沢在昌・平岩弓枝・京極夏彦・今野敏・誉田哲也・小野不由美などなど。明らかに読み終わった趣味の本を並べている感じである。だが値段は30〜100円と激安。むむむむと、せっかく入ったのだから何か買って行こうと、趣味じゃない本に脂汗をかきながら、集英社文庫「弁護側の証人/小泉喜美子」を購入する。

ひょんな出会いは素敵だったが、古本心は満たされぬので、テクテク駅方面に向かい、「古書音羽館」(2009/06/04参照)の外棚と対峙する。右端文庫棚横の木製ラックから、大雅堂「大東亜玩具史/西澤笛畝」を見つけたので700円で購入する。昭和十八年刊の、亜細亜の玩具を蒐集&類似性を比較検討する研究書である。玩具からも東亜共栄圏を成立させようという胡散臭さに溢れているが、各国の似た玩具を並べた三十五ページに渡るグラビアは、魂をふるふると揺さぶって来る。後見返しに群馬県・伊勢崎市の古本屋さん「書肆いいだや」の古書店ラベルアリ。
posted by tokusan at 18:45| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月27日

5/27シュールなモドキ年賀状!

段々と本降りになる寒い雨の中を、午後に仙川と千歳烏山に挟まれた給田に流れ着く。…さて、古本を買うには、いったいどうしたらいいだろうか…そうだ!調布に出て、「本の楽市at調布」(2015/09/26参照)を見に行けばいいんだ!と千歳烏山から準特急に飛び乗り、あっという間に調布駅着。ガメラや大魔神のシルエットが壁に浮かび上がる地下コンコースを抜け、地上に出て『調布パルコ』へ。エスカレーターでスイスイ五階に上がると、そのエスカレーター脇の十メートル弱のスペースに、細長く古本が陳列されていた。うむうむと見て行くが、今回何だか凄いのは、スペースの三分の一ほどを占める、古玩具や骨董のお店「ベビヰドヲル」が並べている、多種大量の駄玩具である。ほとんどがデッドストックなので新品同様!人形も紙物もキャラもの(本物もあるにはあるが、ほとんどがパチ物のモドキ…)が多く、まるで昭和時代の祭りの夜店や駄菓子屋の店先を見ているようで、子どもの頃の高揚感が胸にズンズン迫り上がり、本当に楽しいのだ。そして衝撃の年賀状に、簡単に魂を引っこ抜かれてしまう。ウルトラセブン(モドキ)とゴドラ星人(モドキ)が組み合う、目出度さと宇宙人がチグハグに同居する、シュールなシュールな年賀状!ゴドラ星人の目が、ちょっと困ってる感じがまた堪らないのだ!…あぁ、子どもの頃、ぜひともこれで年賀状を出したかった…。透土社「フランス幻想短篇精華集/P・G・カステックス」とともに計1329円で購入すると、『パルコブックセンター』のお姉さんに、「年賀状、本の函に挟んでおきましょうか?」と気遣われてしまう。「いえ、大丈夫です」と丁重にお断りし、精算後に売場前で素早く取り出し、記念撮影する。
nengajyou_seven.jpg
他にもウルトラ関連ではギャンゴ(モドキ)絵柄もあり。今回この市は6/26までとロングラン開催なので、補充もされるだろうから、また面白い駄玩具に会いに来てみよう。
posted by tokusan at 17:48| Comment(5) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月10日

5/10東京・高円寺 ホワイトハウスのクリーニングまるや店

cleaning_maruya.jpg
朝から謎の“古本屋分布図”に関わる原稿書きを、ゆるゆると進める。〆切がまだまだ先なので、焦らずそれほど身が入らずと言った感じで、あっという間に午後になる(合間合間に読み進めてしまった、山田風太郎の「おんな秘牢抄」があまりにも面白いため…というのもある)。午後になってブラリと高円寺へ。「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)で同時代社「金庫破り かぎの開け方教えます/杉山章象」を100円で購入し、「ドラマ高円寺庚申通店」で原書房「仔犬のローヴァーの冒険/J・R・R・トールキン」を110円で購入し、初夏の暑さで気怠さが漂う高円寺パトロールを終えたつもりで、『庚申通り』を南下して『中通り商店街』を西に進む。するとあぁっ!駅北口から150mほど来た場所にある、ファミリーマート手前のクリーニング屋さんが、シャッターを右側半分だけ上げているではないか。「古書コンコ堂」さんにタレ込まれた、古本を置いていると言うクリーニング屋さんである。だがこれは、置いていると言うレベルではない。明らかに小さめの古本屋さんほどの規模で、古本をドバドバ並べているではないか!入口付近には50均&100均の文庫&新書ダンボールがたくさん。純文系や時代小説がメインである。100均ペーパーバック棚(ペンギンブックス多し)もあり。通路状の店内には、両壁際に様々な種類の本棚やダンボール箱が続き、歴史・経済・社会&世界情勢・歴史小説&時代小説・海外文学研究・隆慶一郎箱・曾野綾子箱・野坂昭如箱・藤沢周平箱・山本夏彦箱・池波正太郎ゾーン・佐藤優ゾーンなどを確認する。単行本は一冊二百円、三冊五百円となっており、紐で縛られたシリーズ物セット販売も。タレコミでは古本濃度薄しと言うことだったが、硬めではあるが蔵書量も多くて、なかなかどうしてイケる感じじゃないですか。と必死に本の背に視線を注いでいると、奥の方に座った白髪頭の引退した黒田総裁風オヤジさんが「これ、全部俺の本なんだよ」と話しかけて来た。その後、、とつとつと続く語りによると、学生の頃から大量に買い集めて来た本が溜まりに溜まり、去年クリーニング屋の取次ぎを辞めたことをきっかけとして、通りから二階への通路であるこの場所に、蔵書を並べて販売し始めたそうである。「もう、家族からどうにかしてくれって、毎日言われててね」「この先もうどうなるかわからないし、だから少しでも減らすためにここに並べたの。でも、まだまだあるんだ。まだまだたくさん。読まないのに買っちゃうんだよね。病気だけど楽しいんだよ。これが」とのことである。うむうむ、古本好きとしてわかりますよ、その気持ち。「学生時代は英文学専攻だったから、だからそこにペーパーバックが並んでるの。これはちゃんと全部読んでる。一応百円つけてるけど、英文学を勉強してる学生が来たら、ただで譲ろうと思ってる。でも、まだ来ないねぇ〜」などと、まだまだ本に囲まれた人生を存分に謳歌している模様。南雲堂「アメリカ一周バス旅行/石一郎」毎日新聞社「秘境ブータン/中尾佐助」「チベット潜行十年/木村肥佐生」の三冊を選んで差し出すと、「うわっ、古いの掘り出して来たね。昭和33年…オレが高校生の頃に買った本だよ。よし四百円でいいよ。買ってくれてありがとう」とおまけしていただく。

本日あたりから本屋さんに並び始める「本の雑誌 アメンボ張り込み号」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、店頭木製ワゴンに目を瞠る本が頻繁に大盤振る舞いに並ぶ、荻窪「竹中書店」を取材。毎日見張らないと気が済まない、老舗のお店なのです。現在コロナ禍休業要請のため臨時休業中ですが、早く、一刻も早く開かないかと、日々願っております。
posted by tokusan at 16:28| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月04日

5/4東京・高円寺 おもしろ古本市!!

朝もはよから謎の『古本屋分布図』の直しを進める。いよいよラストスパートで、五月にはデータを渡す予定。詳細が出ましたら当ブログでもお知らせいたします。その後は連載の原稿書きに従事。昨日に引き続き、GWなのに真面目にお仕事である。そして午後に息抜きに外出する。蒸すほどの五月の萌え出るエネルギーを感じながら、『馬橋公園』に今までに見たこともないほどの自転車が大量に停まり(百台近くはあったろうか)、公園内は行楽を楽しむ人々で、名画『グランド・ジャット島の日曜日の午後』状態に陥っているのに驚きながら高円寺へ。「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)で国書刊行会「新編 真ク・リトル・リトル神話大系1/H・P・ラヴクラフト」を300円で購入する。精算時に店主の粟生田さんがGジャン姿のこちらを見て「そんなの着てて暑くないですかぁ?」「暑いです。完全に読み違えました」と答えながら小銭を料金トレイに置き「ありますよね。大丈夫ですよね」と言うと「残念ながら十円足りません」…あぁっ、本当だ。ごめんなさい「ヒドいことをするところでした…」とさらに十円玉を一枚プラス。「フフフフ、そんなことないですよ」などと他愛もないが楽しいやり取りをする。その後は『庚申通り』を南に下り『中通り』に入って、古本も売っているクリーニング屋さんを見に行くが、残念ながら今日も閉まっていた。そのままトボトボ西に歩き続け、緩やかな坂道を下り臨時休業中の「コクテイル書房」前を通過する。すると小さな雑居ビルの前に、手作り感満載の「おもしろ古本市!!」と書かれた立看板を発見する。猫の絵や開催時間や『古本のほかCD・レコード・カセット・ビデオ。あるヨ!!』と書かれている。途端に興味を惹かれ、『階段のぼって奥』の言葉に従い、路面から直接続く古いコンクリの階段に足をかける。階段を上り切り、荒んだ感のある薄暗い廊下を奥に進んで行くと、どん詰まりに数人が屯している空間に行き着いた。ちょっと緊張しながらその奥を覗き込むと、開かれた扉の向こうに会場らしき小部屋が見ている。意を決してズイッと進むと、缶ビールを持った男性が「いらっしゃいませ」と近づき、「古本以外にもレコードやちょっとHなビデオテープもあります。古本は三冊で五百円。どうぞ掘り出していってください」と説明してくれた。小さな会議室的な白い殺風景な空間に、手前壁際に小さな台が置かれ、そこにレコード箱、左壁の小さな棚にカセットテープとCD。右壁沿いにはオリジナルな服が並び、中央の二台のテーブル手前には雑誌や台本やパンフが個別値付で平積みされている。奥のテーブルに文庫・コミック・単行本が二百冊ほど並び、奥の壁際にビデオテープ台が置かれている。聞けば先ほどの男性が主宰者で、週末にバンド仲間と私物を持ち寄り販売しているとのことであった。並んでいるものを見て行くと、八十〜九十年代のサブカル・アングラ方面が多く、なかなか良い趣味の私物である。古本としては一番多い文庫本を精査して行くと、うほぅ!角川文庫の恐怖小説「流砂/ビクトリア・ホルト」が、何故か二冊もあるじゃないか!これは、おかしく思われようともどうしようとも、二冊とも買うっ!と分厚い文庫をガシッと握る。そしてハヤカワポケミス「犯行以前/フランシス・アイルズ」を抜き出し、三冊五百円で購入する。思わぬところで古本市に出会い、良い本が買えてしまった。だいたい週末に市を開いているそうなので、柳の下の二匹目の泥鰌を狙い、またぜひ偵察に来ることにしよう。
omosiro_furuhonichi.jpg
posted by tokusan at 15:51| Comment(2) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする