2019年04月30日

4/30平成最後の買い物は。

雨の三鷹に流れ着くと、住宅街のある民家のガレージ…いや、ここは車庫と言うべきか。そこに高校生が男女十人ほど集まり、バーベキューをしている。「次焼きそば作ろうぜぇ」などとやっているのだが、そこに流れている音楽が、妙に格好良い。ちょっと気になり耳をそばだててみると、何とYMOの『体操』が流れているのだ。曲の正体に気付いた瞬間、鉄板から煙を立て、紙皿で肉を食らう高校生たちを二度見してしまう。みな、それほどのお洒落感はなく、テクノ感も皆無な、極普通の高校生たちに見える…むぅ、なんとシュールな!これは何だか良い物を見たぞ!と、ひとり破顔しながら駅方面へ向かう。今日は火曜日…今までだと「水中書店」(2014/01/18参照)が定休日なので、即座にスゴスゴと三鷹を離れねばならなかったのだが、今は違う。新しく出来た「りんてん舎」(2019/03/30参照)は月曜が定休日なので、火曜でも安心して古本を買いに走ることが出来るのだ。というわけでタラタラ『三鷹通り』を北上していると、いつかのコメントタレコミにあった、「点滴堂」(2013/03/27参照)階下の「福田銘茶園」に古本が並んでいるのに気付いてしまう。
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本当だ。売ってる。立ち止まり中腰になり、ガラス越しに並んでいる本を注視する。『「小さな本屋さん」どの本も200円です!』とあるが、単行本・新書・文庫本、どの本も政治経済の本ばかりである。…こ、これは興味がなさ過ぎてとても手が出ない。早く自分好みの古本を買いに行こう。そして「りんてん舎」前。雨なのに均一棚を見ている人がいる。店内にも蠢いている客がいる。左側通路の窓際棚下に、床直置き100均単行本ゾーンが生まれている。入口右横のラック前には、結束本が積み上げられしまっている。そして空いている棚は、まだちょっとあるのだな。などと色々確認し、中央通路の右側手前の文学棚に集中力を向ける。三本目の中段に、古そうな本あり。まるで石焼き芋の皮のような背だが、うっすらと文字が浮かび上がっている。アンチックな太明朝体で『で…す…ぺ…ら』…で、で、で、で、「ですぺら」だとっ!と慌てふためき抜き出すと、途端に色鮮やかな表紙が目をバシッと撃つ。うわぁ、辻潤の「ですぺら」だ!敬愛するダダイストの「ですぺら」だ!函ナシ(もしくはカバーナシ。初版でも函とカバーの二種が存在するらしい)だが、奥付を見ると大正十三年の初版だ!値段はなんと千円だ!これを買わぬ手はないんだ!などと興奮しながら帳場に持ち込む。どひゃっほう!と心の中で何遍も唱えながら、新作社「ですぺら/辻潤」を購入する。というわけで、平成最後の古本購入は、九十五年前のダダイストの著作となった。こんな昔の本がサラリと買える古本屋さんは、やはりとても素敵な商売である。
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2019年04月28日

4/28東京・西日暮里 書肆田高

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線路下の改札を抜けたなら、目の前の『道灌山通り』を北に渡り、絶壁のような切り通しのコンクリ塀を口アングリと見上げながら、西南に進む。坂を上がり切り下り始めると、信号のある交差点。そこを北西に入ると、右手マンション一階に、青い日除けを張り出し、店頭に108均文庫台や木箱を積み上げ並べる、小さな古本屋さんを発見する。文庫は一般的であるが、木箱の中には詩集関連が新旧多く詰め込まれ、この古本屋さんの特性を垣間見せている。中に進むとこじんまりとした空間で、L字型に売場通路が形成され、右奥が帳場となっており、メガネにクルクル髪の毛の青年が、良さげな古書を整理している。入口左側には本日の特価本箱が並び、今は幻想文学が多めである。壁際にミステリ&探偵小説・林静一版画・句集・歌集・詩集と並んで行く。詩集棚には、高橋睦郎の「眠りと犯しと落下と」や、北園克衛の評論集「黄色い楕円」などがしれっと並んでおり、一筋縄ではいかぬ景色が魂を震わせる。その向かいにはショウケースと文庫棚があり、萩原朔太郎「猫町」や大正時代のイナガキタルホ本に涎を垂らしながら、角川文庫の横溝正史・講談社学術文庫に骨休めする。奥の棚には詩集が続き、さらに日本近代文学の佐藤春夫・谷崎潤一郎・夏目漱石・芥川龍之介・横光利一オリジナル本を渋く揃えて行く。帳場横の棚には文藝雑誌・文学評論・海外詩集・セレクト青年漫画や劇画が収まる。入口右横のゾーンには。海外幻想文学や海外文学が集められている。茶色い古書の多い…と言うか、そちらがスタンダードないぶし銀のお店である。しかも詩歌句に強く、好きを突き詰め過ぎて、図らずもかなり尖っているところが何とも好ましい。値段は普通。これで東京には、若手詩歌強化古本屋四天王が出揃ったことになるのではないか(後の三店は、三鷹の「水中書店」(2014/01/18参照)「りんてん舎」(2019/03/30参照)それに早稲田の「古書ソオダ水」(2018/01/28参照)である)!詩獣、歌獣、句獣は、心して駆け付けるべし!サイマル出版会「めりけんポルノ/小鷹信光」を購入すると、帳場奥棚に並んでい単行本「古本屋ツアー・イン・ジャパン」を指差され、すでに正体が露見していたことを知る。まだまだ欲しい本があるので、また来ます!
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4/28 第21回不忍ブックストリート一箱古本市

今年も光栄にも南陀楼綾繁氏から「第21回一箱古本市」のプレゼンターを仰せつかったので、力不足ながらも意気揚々と根津方面を目指して家を出る。今年の一箱は、「古書ほうろう」(2019/02/22参照)が池之端に移転したことや、少し市をコンパクトにしたため、根津〜谷中〜池之端が主戦場となっている。なので御徒町から一箱に初アプローチ!昭和な高架下駅舎の北口を出て賑わいの街路へ。日射しは暖かいが、風はちょっとひんやりしている。風で波立つ不忍池の立ち枯れた蓮の林を眺め、池之端方面へ歩を進める。旧岩崎邸の広大な敷地を囲む煉瓦塀を視界に掠め、テクテク進んで新店舗の「古書ほうろう」着。厳めしい裏門的な東大の池之端門と向かい合い、とても劇的なロケーションである。右のガラス戸内には、結束された本が積み上がり、まだ本日限定のプレオープン中であることを伝えている。左側の奥深クラシカルな店舗には、すでに本棚も立て込み、本もしっかりと並び、すっかり「新生古書ほうろう」と言った趣きであるが、正式なツアーは、後日ちゃんとオープンした時に行うことを決める。店前には二箱が並び、「古書ますく堂」は夏葉社新刊の「漱石全集を買った日」を基盤に、本に登場する本を集めて宇宙を形成している(何と「ますく堂」は、後にこの日の全体売り上げ二位を記録するのだ!)。隣りの「古本Plava Stablo」は手作りの旅先国別豆本が何とも可愛らしい。続いて「タナカホンヤ」に向かう途中、仙人のような助っ人さんに誘導され、面食らう。小さなお寺や神社が並ぶ『忍小通り』を進み、「タナカホンヤ」の三箱を覗く。ギャラリーで開催中の展示が無闇に強烈で、何故か孔雀の羽を模したソファに座らされ、あまつさえ金色の観音像を持たされ、写真を撮られてしまう(不忍ブックストリートtwitter参照)。さらに『不忍通り』を渡って静かな住宅街に入り込み、地図を良く見ながら複雑な小道をたどって進む。『HOTEL GRAPHY NEZU』では、表に出ていた「むゆう舎」から、本日初めて古本を買う。イプシロン社「復刻 海軍割烹術参考書」。う〜む、みんなとても美味しそうで、ついついレシピを再現してみたくなる未知の一冊である。続いての『ハウスサポート八號店』では、本を並べるバスケットも販売している「まにまに文庫」や、春陽文庫などを並べホラーよりちょっとミステリー寄りな「ちのり文庫」が大いに気になってしまう。お気に入りの本を持ち寄り、泣く泣く別れを惜しみながら販売している「トリとニワトリ」の押し売り朗読が、愛が溢れ過ぎていて素敵である。『アイソメ』では靴を脱いで上がり、四箱を鑑賞。いつも「みちくさ市」出店時に豆入りカレーパンを差し入れてくれる「はれとくもり」で、広論社「悪魔祈祷書/夢野久作」を購入する。次の「ひるねこBOOKS」では(「ひるねこ」さんの店内には、大混雑でとても入り込めない状況!)岩波書店的文学の並びを見せる「コローのアトリエ」に感心し、「ドジブックス」さんに挨拶し、強くなり始めた日射しに焦って日焼け止めを塗る「文庫善哉」から中央公論社「文学映画論/野間宏」を購入する。さらに『へび道』をたどり、『特養老人ホーム谷中』で塩山芳明氏の文庫&新書「嫌記箱」から光文社新書「松竹と東宝/中川右介」を購入。塩山氏、売り上げが好調なのか満面のえびす顔である。隣りに並ぶ「M&M書店」の店番中のモンガさんには、またお店に値切り買いに行くことを非情にも約束する。顔なじみの「ママ猫の古本や」では文春新書「日本プラモデル六〇年史/小林昇」を購入。ちょっと根津方面に戻り、『往来堂書店』前で二箱を見学。「古書アルマジロ」はなかなかマニアックな本を並べており、景色良し。最後に団子坂をヒイハア上り、『森鴎外記念館』に遠回りの静かな裏口から入り込み、「やまね洞」の地味な歴史本並びに親しみを覚えつつ、一箱最強の「とみきち屋」さんでちくま学芸文庫「武満徹対談選/小沼純一編」を購入して、任務を果たす。私の一位は、面白い本と出会わせてくれた「むゆう舎」さん。二位が岩波的文学一辺倒で溢れ出る文学知識が止まらない「コローのアトリエ」さん。三位が売れるのか?と心配になるほどの地味歴史本の「やまね洞」さんであった。あぁ、楽しかった。そしてこの後、午後三時から開店の「書肆田高」さんに出向いたり、重役出勤の岡崎武志氏と合流し、「古書ほうろう」に改めて挨拶に向かったりしたのであった。「書肆田高」については、別記事をご参照あれ!
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本日の古ツア賞受賞を決めた一冊。ちゃんと現代語訳されているので読みやすいのだ。
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2019年04月05日

4/5東京・国分寺 早春書店


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午前中の仕事をようやっと終え、昼過ぎに家を飛び出す。中央線で西に向かい、目的駅の北口に出ると、左右に離れたビル街の間に、青空と赤白の電波塔とクレーンと、まだ何も建っていない広い建築現場が眼前に広がる。階段を下り、『駅前通り』を北へ進む。『本町二丁目交差点』を通過し、すぐの『本町二丁目北交差点』で東へ向かう。しばらく歩いて一本目の脇道を北へ上がると、開店して二週間弱のお店が見えて来た…ようやく来られたぞ。「七七舎」(2016/02/06参照)が隣り店舗をぶち抜き拡張するため、役目を終えた「2号店」(2016/09/12参照)を、居抜きで古本屋さんを受け継ぎ経営してくれる人を募集していたのだが、わりとスパッと手を挙げる人が現れ、開店したお店である。代々受け継がれてきた『古書買入』の看板と、その下の本をモチーフにしたロゴマーク入り立看板を眺めてから、店頭の百均コミック・文庫・単行本を見て行く。店内は細長く、両壁際に高い本棚、中央に平台付きのラックと本棚、左奥に帳場と、居抜き物件なので当然以前と変わらぬ佇まいである。その帳場で本を寡黙に整理しているのが、この人通りの少ない場所に、新たな古本屋を開店させた、勇気ある青年である。秘かにその勇気を称え、感謝しながら、店内を経巡って行く。左壁棚には、映画・演劇・美術・建築・デザイン・音楽・実用・エッセイ・批評・サブカルが並び、帳場前の足元には小さなコミック文庫の棚が置かれている。批評評論関連がドバッと幅を利かせ、壮観である。しかも名著と言うよりは、現在進行形な本が中心なので、時代の先端を走る棚造りとなっている。向かいにはセレクトコミックが集まり、台の上には新刊が並んでいる。反対側には雑誌と海外文学文庫が収まる。右壁棚は、まずはオススメ本と新刊本が飾られ、図録・絵本・日本文学文庫・出版社別文庫・新書・文学・幻想文学・本関連・オカルト・民俗学・出版関連・心理学・哲学・宗教と帳場横まで続いて行く。不思議な清新さを秘めたお店である。人文に造詣が深いが、かと言って決して硬さ一辺倒というわけではなく、教養を背骨にしながらも、硬さから柔らかさへ積極的にアプローチしている感じが、取っ付き難さを上手く排除しており、何だか爽やかなのである。値段は普通で、良い珍しい本にはプレミア適価が施されている。創元推理文庫「千の脚を持つ男/スタージョン他」を購入すると、店主にあえなく正体を見破られてしまう。そこからしばらくお店の未来について、熱く面白く語り合う。この場所の、短所も長所も分かった上で、先の展開を考え進めている前のめりな感じが、とても若々しく清々しい。これからも振り切りながらも、時々は手探りもしつつ、面白いここにしかないお店造りを進めて行っていただきたい。開店おめでとうございます!

その後は「七七舎」に向かい、今日はツアーするつもりはないので予備偵察…と思っていたら、奥の部屋の古書群や、紙物に大いに気を取られてしまう。するとそこに、もはやヨガ行者の如き風貌の店主・北村氏が現れ、挨拶を交わし色々とお話しする。そしてある計画をひとつ進めることを約束する。平成四年の京都府古書籍商業協同組合「京都古書店案内圖」を500円で購入する。さて、帰ろうかな、それともちょっと離れているが、「古本 雲波」(2017/02/03参照)も見て行こうかな?と一瞬迷うが、せっかくなのでやはり「雲波」にも足を向ける。『国分寺街道』の坂を上がると、おぉ、やってる!久々の店舗との再会に店頭棚を見ながら喜びに浸っていると、ドアがガラリと開き「何やってんの?何しに来たの?中入りなよ。本なんかいいからさ。珈琲飲もう」と胴間声を響かせながら笑顔で話しかけて来た男性…首都圏で古本屋さんの内装を多く手掛ける『古本屋界の安藤忠雄』中村敦夫氏であった。すぐに店内に引き込まれ、奥さま店主が出してくれた珈琲を啜りながら、紹介されて色々とお話しする。様々な古本屋造作のお話を拝聴しつつ、新しいお店の情報も手に入れる。氏が先にお店を後にして、ようやく店内の本を見始める。国土社「電話がなっている/川島誠作 長谷川集平絵」を400円で購入したところ、奥さまがニコリとして「古いおかしな雑誌に載っている、珍しい片岡義男の記事見る?」と、ここから面白い本の紹介がたくさん始まる。新渡戸稲造譯の「ファウスト」、山田耕筰のド高値音楽本などを見せてもらい盛り上がっていると、何とちょっとだけバックヤードを見せてくれると言う。喜んで帳場奥に入って行くと、整然とした映画パンフの棚や、馴染みの貸本屋さんから貰って来たちばてつや漫画の山や大量の少女漫画棚や、昔趣味だった熱過ぎるF1コレクションなどが渦巻いていた。さらに「忍者武芸帖」のアケミになりたかった話や、石井聰亙や町田町蔵やプロレス話に打ち興じながら帳場に戻ると、帳場背後の棚の最下段に、とても気になる本を発見してしまう。うぉ!朝日ソノラマの金田一耕助シリーズだ。カバーアリとカバーナシが一冊ずつ。早速見せてもらい、さらに早々に「これ、売っていただけませんか?」と申し出る。するとあっさり「一冊千円でいいわよ」と素晴らしき交渉が成立したので、どひゃっほう!と購入させていただく。あ、あ、あ、ありがとうございます!朝日ソノラマ少年少女名探偵金田一耕助シリーズ「女王蜂/横溝正史作 中島河太郎文」「洞窟の魔女/横溝正史作 山村正夫文」(カバーナシ)を計2000円で購入する。今日はたくさんの古本屋さんとお話しした一日であった。そして「七七舎」を出たとき「雲波」に寄ってくかと思い、さらに店頭で中村氏に発見され声をかけられ、紹介していただいた奥さんと仲良くお話ししまくることにならなかったら、この奇跡の二冊を手にすることは、なかったはずである。国分寺に呼び寄せてくれた「早春書店」と自分の足と素晴らしき古本系人々との出会いとつながりに、大感謝!
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うむ、これを見ながら、すっぽろ飯を食べられるほど嬉しいぞ!
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2019年03月30日

3/30思い切って「りんてん舎」を見に行く。

寒さがぶり返している中、西荻窪と久我山の間に流れ着く。すでに疲れ果てているのだが、そう言えば今日は三鷹に新しい古本屋さんが開店しているはず…ええぃ、思い切って見に行くか!と足腰に鞭を入れ、西荻窪もわりと遠いので、いっそのこと『井の頭通り』を遡上して、吉祥寺までテクテク出ることにする…当然のことながら、さ、さらに疲弊してしまった。そして吉祥寺のこの恐るべき混雑はなんなんだ!と慌てて総武線内に避難して、どうにか三鷹駅着。北口に出て、ロータリー左側を断ずる横断歩道を渡り、『中央大通り』を北へ進む。すぐに大きく立派な『武蔵野警察署』前に出るので、西側に横断歩道を渡り、合流した『三鷹通り』をまたもや北へ。『井の頭通り』を越え、次の信号が見えて来ると、小さな白いビルの一階に、最新の古本屋さんが出現していた。
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おぉ、賑わっている。通りかかる人の注目を、一心に浴びている!店頭に立つ道路標識が、まるでお店の飾りのようだ!などと感じつつ、入口横にある単行本&文庫百均棚をまずは眺める。開店祝に奮発した古本が散見され、店内の棚の良質さを想像させる景色を見せてくれている。二段のステップを上がり中に進むと、奥に細長く展開する空間で、天井まで伸びる真新しい薄闇色の什器が、建材的匂いを発しながら、三本の通路を造り出している。一番左は、エンタメ系新刊・ガイド・セレクトコミック・エッセイ・映画・美術が並ぶが、奥の棚はまだがら空きである。中央通路では、日本文学文庫と海外文学文庫、それに本&古本関連と日本文学・海外文学が質高く睨み合っている。特に本関連と日本文学は殊更上質。棚のキモになる本が、そこかしこに姿を見せている上に、『こんな本、見たことないぞ』と、ついつい手を伸ばす回数が多くなってしまう細やかさが素敵である。右端通路には、児童文学・絵本・雑誌・詩集・歌集・句集・食・民俗学・音楽・ちくま学芸文庫・哲学・思想が集まる。詩歌句と音楽の、今後の充実を予感させる棚造りが、この嗜好が細分化した世の中に闘いを挑んでいるようで、何とも頼もしい。だが、やはり棚にまだまだ空きが多く、その全貌は見えて来ない。つまりは、まだこれからのお店なのである。と言うわけで、正式なツアーは、棚にビッチリと本が収まった後日に決行することにしよう。龜鳴屋「マンドレークの声 杉みき子のミステリ世界/杉みき子 戸川安宣編」を開店祝いに購入する。…こんな面白そうな本が出てたなんて、まったく知らなかったなぁ。ミステリファンで児童文学作家の作品を、戸川氏が作品にミステリ風味を感じつつ編んだ、二〇一六年出版の創作集である(表紙画はなんと高野文子!)。しかも帰りの車中で最初の『わらぐつのなかの神様』を読み始めると、この話知ってる!と背中に既読電流火花がビビビと走る!そして読めば読むほど、湧き上がる記憶と話が、ガキガキと噛み合って行く!恐らく子ども時代に読み、脳内の物語の地層の中に、沈殿させておいたものなのだろう。…あぁ、初っ端にこんな体験をさせてくれるなんて、早くも好きになっちまいそうだぞ、「りんてん舎」!
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2019年03月23日

3/23九時間の古本売り。

早朝午前七時二十分。のんびり朝ご飯を食べていると、北原尚彦氏をピックアップした「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏から連絡が入り、すでにこちらに向かっていると言う。本日の『本のフェス』の会場である市ヶ谷まで、盛林堂号に同乗させていただくことになっているのだが、予定よりおよそ二十分早いではないか。慌ててご飯をかき込み、身支度を整え、重い木箱を二つもって表に飛び出し、道路脇でゼエゼエ待機する。するとほどなくして盛林堂号が到着。お二人と挨拶を交わし、荷物を積み込み、車は順調に走り出す。午前八時半前に会場である『DNP市谷左内町ビル』は、奇妙な静けさと起伏のある官公庁的空間に囲まれ、すっくと空に向かって建ち上がっていた…なんだかトリフォ―の映画『華氏451』にでも出て来そうな、管理社会デストピアな未来的雰囲気だ。
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巨大な車寄せの直ぐ横が、ガラス張りのロビーで、そこがメイン会場となっている。我々が出店する『本の雑誌商店街』は、そこから左奥に入った広い空間である。せっせと古本を運び込み、領地である長テーブルに古本をセッティング…と思いきや、早速北原氏とともに、「盛林堂書房」と古本神・森英俊氏ゾーンのチェックに勤しんでしまう…あぁ、やはりスゴい本がそこかしこに紛れ込み、脳が白熱して蕩けるような安値で並んでいるではないか…よし、アレとアレを買うぞ!と心に決めて、ようやく古本を並べ始める。木箱を二つ使い、うまく立体的に並べて行くと、隣りの北原氏に「あ〜、何かプロっぽい」と冷やかされる。
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セッティングをどうにか終えて、後は開始時間を迎えるまで、ソワソワと過ごす。そして午前十時、開場の時間になると、たちまち盛林堂常連客チームが雪崩れ込み、あっという間にそこだけ黒山の人だかりになる。まぁ当分こっちにお客は来ないだろうと高を括り、その隙にこちらも目を付けていた古本の確保に走る。盛林堂からはぷろふいる社「血液型殺人事件/甲賀三郎」(函ナシで表紙はビニールコーティング)を2500円で。森氏のところからは、伝説のミステリ同人誌、鬼クラブ「探偵小説研究 鬼 No.9 創作特集」(これを最初小野氏が見た時、「「鬼」がある古本市って、どんな古本市だよ…」と思わず呟いていた)を、エイヤッと4000円で購入してしまう。
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まだ本を一冊も売っていないのに、い、いきなり派手に散財してしまった…だがこれで心はひとまず落ち着いた。後は古本を売ることだけに、九時間集中すればいい!というわけでその後は、このまま一冊も古本が売れないんじゃ…と心配になったり、隣りの荻原魚雷氏と釣りや街道の話をしたり、買ったばかりの「血液型殺人事件」を読み耽ったり、「鬼」が手に入ったなんて…とニヤニヤしたり、売り上げが伸びないので「「鬼」なんて買うんじゃなかった。このままじゃ足が出てしまう」と嘆いたりしながら、百均文庫も合わせ、どうにかおよそ三十冊強の古本を売ることに成功し、ホッとする。足を運んでいただいたみなさま、本を買っていただいたみなさま、お話ししたみなさま、本の雑誌社のみなさま、本当にありがとうございました。私と北原氏は本日限りの出店ですが、明日もこのフェスは開かれるので、本が大好きでお時間ある方は、ぜひとも市ヶ谷に足を運んでみてください。いや、それにしも九時間は長い…座っているだけなのに、とても疲れてしまった。
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2019年03月20日

3/20東京・神保町 虔十書林

朝からウンウン唸って仕事を片付け、午後に久々の神保町パトロール+移転した「虔十書林」(2010/01/27参照)を見に行くことにする。いつの間にかホーム屋根上の通路が開通していた御茶ノ水駅からアプローチし、午後の人出の多さに目を回しながら『明大通り』を南に下り、まずは『富士見坂』に入り込んで「虔十書林」旧店舗の様子を窺う。店舗部分はスッキリすっかりもぬけの殻だが、壁にはまだトレードマークの猫(やまだ紫の作)の看板が残されており、そこに移転先が英語と日本語で記されていた。再びいつものルートに戻り、「三茶書房」(2010/10/26参照)で岩波文庫「鹽原多助一代記/三遊亭圓朝」を300円で購入。続いて裏路地の「山吹書房」(2018/09/28参照)ではアサヒ芸能出版「みなごろしの歌《凶銃ワルサーP38》/大藪春彦」を200円で見つけてニタリニタリ。

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『すずらん通り』に入り、西の『白山通り』からおよそ五十メートルほど東にある「虔十」の新店舗に近付いて行く。ここは、以前は地方出版物を扱っていた「書肆アクセス」があり、その後に陶芸や骨董書専門店の「風月洞書店」(2013/03/25参照)が入っていた所である。軒下&袖看板には、すでにお馴染みの猫がお目見えしている。店頭には200均文庫箱や映画パンフプラ箱、ムック棚が置かれているが、旧店舗よりこじんまりとし、混沌さも薄まっている。店内は天井が高く、奥深く細長い。両側の高い壁棚には、右に「不思議の国のアリス」関連・幻想文学・稲垣足穂・高橋睦郎・澁澤龍彦・寺山修司・種村季弘・中井英夫・唐十郎・アングラ・海外幻想文学&詩集・辰野隆などが仰々しく続き、書肆ユリイカなどの稀少詩集を収めたショウケースが中ほどに現れる。それに続き、美術・詩集・天沢退二郎・宮澤賢治が並んで行く。宮澤棚は、童話や評論からビジュアル関連まで集め、なかなか良い景色である。左側には、特撮・武器・兵器・趣味・SF&特撮雑誌・美術と並び、奥半分には、映画関連と映画パンフが棚とショウケース織り交ぜ集められている。フロア中央には映画パンフ・小冊子・ミニカード・ロビーカード・絵葉書あり。旧店舗と変わらず、映画と幻想文学と宮澤賢治に強いお店である。顕在的な蔵書量は減ったようだが、その分とても見やすくなっている。店頭で文を掴み、奥の帳場まで持って行く…テクテクテクテクテク…という感じの長さである。引っ越し、おつかれさまでした。ちくま文庫「反芸術アンパン/赤瀬川原平」を購入する。
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2019年03月09日

3/9東京・西荻窪 benchtime books一階部分

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午後二時前に『善福寺公園』辺りに流れ着いたのを幸いとして、テクテク歩いて「モンガ堂」さんよりコメントタレコミのあったお店に、ブラブラと向かってみる。場所は西荻窪駅北口から『西荻北銀座』を北にグングン進み、歩道亜アーケードを抜け、坂を下り、善福寺川を渡り、再び坂を上がって、「中野書店」(2015/03/14参照)前も通過し、『青梅街道』手前のセブンイレブンのある交差点を西へ。しばらく歩くと北側歩道沿いの店舗兼住宅長屋の右側に、青い日除けテントを丸く張り出したお店が見えて来る。本当だ。これは間違いなく古本屋さんだ。店頭には100〜300円の安売本が上品に出され、小さな黒板に店名や営業時間や定休日が書かれている。中に入ると、窓から飛び込んだ光を柔らかにたたえる、小さな正方形の空間である。奥には薄暗いが同サイズの低めの中二階があり、木の踏み台に飾られた絵本や、奥の棚の上にドガッと積まれた古本や、シックなショウケースに収まった正宗白鳥や太宰治などが見え、そのケースの向こうに帳場があり、ジブリ映画『耳をすませば』のバイオリン職人を目指す男の子が大きくなったような青年が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。什器はすべてシンプルなアンティーク調に統一されている。入口付近には、木版ブックカバーやオリジナル木版詩集などが飾られている。左壁際には、セレクト文庫と児童文学や絵本が並び、中央の机には珈琲・パリ・食・博文館ポケット日記(激カワ!)などがディスプレイ。右壁際には、海外文学・「暮らしの手帖」関連・植草甚一・美術・民芸・工芸・茂田井武・洋写真集が集まる。ここには額縁を改造したケースが置かれ、そこに本がすっぽり収まる洒落た光景が展開している。そして奥の階段横に置かれた骨董関連のミニ棚を見て、奥のショウケースに熱い視線を向けていると、奥に座る青年が「まだ開けて一週間なんですよ。二階も本当はちゃんとしたかったんですが、一階の準備を手間ひまかけてやって、さらにブックカバーの制作や詩集の製本をしていたら、とても間に合わなくて…」というわけで、まだプレオープン状態らしいのだ。なので蔵書量はまだそれほど多くないが、棚造りにはしっかりとしたビジョンがあり、しかも深めなのが充分伝わって来る。古書にもかまけているのが、大いに好ましい。二階は四月には完成させるとのことなので、その時が今から楽しみである。本を選んで中二階に上がると、帳場と言うよりはほとんど職人の作業場である。むぅ、壁棚には古い文庫がたくさん並んでいるじゃないか。ますます二階の出来上がりに期待してしまう。世界文化社「山椒魚戦争/カレル・チャペック」を購入する。

一旦家に戻った後、再び忙しなく外出し、再び西荻窪へ。よく「みちくさ市」などでご一緒した、一箱系豆本作家の「暢気文庫」さんが、故郷に戻ることになったので、そのお別れパーティーが開かれているのである。今までお世話になりましたと挨拶し、ビールをグビグビ。物凄くたくさんの人が別れを惜しんでいる中、何故か坂崎重盛氏が飛び入り参加しており、面食らう。そして芳名帳への記名が「手抜きだ!」とお叱りを受けてしまったので、苦し紛れに猫の絵を描き足すと、打って変わって「うまいじゃないか!まるで生きているようだ!」と頬が赤くなるほど大絶賛される。すると突然「そのペンを貸せ!俺もそこに猫の絵を描く!」と言うことになり、写真のようなものが出来上がってしまいました。
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最下部の絵が坂崎氏の猫の絵である。

いやぁ、楽しいひと時でした。暢気さん、どうか、西へ行ってもお元気で。「暢気文庫」さんと言えば、思い出すのはこの豆本。「兵隊の死/渡辺温」(平成24年4月刊)である。18W×6Lで全8ページ。掌中に収まる渡辺温とは、なんとロマンチックな代物であろうか。
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posted by tokusan at 19:09| Comment(2) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月08日

3/7古本屋ツアー・イン・松坂健氏書庫!

昨日夜のことである。この三月に、ミステリ評論家の新保博久教授が、無事にすべての本とダンボール箱を東京から京都に運び出すことに成功し、一年以上の長きに渡り苦闘した、十万冊との闘いに終止符を打った(だが新たに、京都にて十万冊との闘いが始まるのだが…)。それを祝し、運び出しに貢献した「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と、“盛林堂・イレギュラーズ”たる私を招待し、一席設けたいとの申し出があったのである。その場所が大変奮っている。教授が上京する度に宿泊している、ミステリ研究家・松坂健氏の事務所兼書庫兼稽古場(演劇の)で、中華のケータリングをつまみつつ酒杯を傾けようとのことなのである。「当然書庫、見たいでしょう?」と教授が大いに水を向けてくれたので、酒宴に連なりつつツアーもお願いしてしまおうという魂胆で、小野氏とともに東京の東端辺りへワクワクしながら向かう。たどりついた巨大集合住宅の扉を開けると、出迎えてくれたのは松坂氏ではなく、笑顔で寛ぎジャージ姿の新保教授。そして我々を出迎えるように、『ようこそ古強様ご一行』と書かれた紙看板が置かれていた。
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玄関には早速本棚やドラえもんの渦やレアな創元推理文庫が並ぶ棚が!と興奮しつつ、まずは大きなリビングルームに足を運ぶ。主人の松坂氏が、これまたにこやかに迎えてくれたが、やはりここの壁一面も美しく本棚に覆われているのであった。整頓された空間が広くしっかりと確保されているので、いわゆる“魔窟感”などはゼロである。ここには、映画・演劇関連・ミステリリファレンス・みすず出版本・DVD・自著などが、和書&洋書含め収まっている。まぁまずは古本より、酒と中華である。教授の話と古本の話と、途中参加の松坂氏奥さまの演劇話などを肴に、楽しくビールとワインに酔い痴れる。古本関係の話で何かある度に、教授が席を立ち、それに関する本を書庫から持ち出して来るのが面白い。すっかりこの松坂書庫を、我が物のように知悉しているのだ。もうすでに仕事用のパソコンも常備されてしまっているのが恐ろしい。今にここは、漫画「魔太郎がくる」の“やどかり一家”みたいに、教授が乗っ取ってしまうのではないだろうか…。そして一時間ほど経ち、全員すっかり酔っ払ったところで、教授がえびす顔で「そろそろ書庫がみたいんじゃないですか?」と嬉しいささやき。では!と腰を上げると、松坂氏と小野氏も腰を上げ、書庫前に全員集合する。
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すると「ハイ、これ着けてね」とヘッドランプを手渡される。どうやら明かりが点かぬので、これを頭に着けて本を探すのである。本を見るのにヘッドランプ…ミステリ書庫あるあるであろうか。
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中は七本のしっかりしたスチール製の統一棚が立ち、まるで図書館のようである。通路ごとに、ペーパーバック・文庫・単行本・作家ごと・評論・研究・周辺と精緻に分類され、研究者に相応しいミステリの壮大な地層を見せている。松坂氏が先に立ち、まさにツアーよろしく、棚の有り様と意義とピンポイントの本をレクチャーしてくれる。う〜む、スゴい。これはスゴい。だがその翻訳系の深さとマニアックさに私の知識が追いつかず、何がスゴいのかよく分からぬ場面が頻出するのだが、小野氏は眼を輝かせ、自由奔放に楽しんでいる。「これ、珍しいよ」「これ、キキメだよ」「これ、帯あったんだ」「あっ、異装版」。その後に都筑道夫棚や乱歩棚などで、ようやく素直に興奮。ホームズ棚では、日本に三セットしかないと噂の「THE BAKER STREET JOURNAL」(結婚当時、新婚旅行代を犠牲にして購入したそうである…)も見せていただき、目が蕩けそうになる。
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さらにリビングに戻り、全集&雑誌書庫に入ると、「新青年」棚の列にちんまりと収まっていた小冊子が気になったのか、小野氏が引き出してみると、なんと新潮社新作探偵小説全集の付録「探偵クラブ」であった。ぬぉぉぉ!酔いと興奮の度合いを高めると「それ、揃い持ってるよ」と再び奥の書庫に引き返した松坂氏が、すぐに姿を現わし、小冊子の束を手渡してくれた。小野氏がすかさず全冊を床に並べ、揃いかどうか確認する。すると十冊ちゃんとあるのだが、番号が飛んでいる部分がある。「足りないのか?欠番なのか?」と議論が始まってしまったので、奥さまと話し込んでいた教授を呼び、裁定してもらうことにする。すると、「なんですかぁ」と現れた教授は、床に並んだ「探偵クラブ」の上を優しく踏み付け、話に参加し始めてしまう。「うわぁ、教授、踏んでる踏んでる踏んでる踏んでる!」…すでに全員かなり酔っ払っています。幸い本に被害はなく、恐らく欠番だろうということで決着する。
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すると、「そうだ、こんなのもあるんだよ」と松坂氏が三たび書庫に舞い戻り、一冊の緑色の本を手渡してくれた。ギョギョエ〜ッ!奇蹟の「探偵趣味」合本である!
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なんだ、これ!平凡社江戸川乱歩全集」の稀少過ぎる付録を、幻の「犯罪図鑑」まで合わせ、一冊に美しく製本されているのだ!状態が新品同様なのが恐ろしい!
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竹中英太郎の妖美な表紙絵に見惚れながら、後見返しを見てみると、『古書一般 協立書店 浅草東映側』の古書店ラベルが貼られていた(1976年の「古書店地図帖」を見ると、浅草六区の先、国際劇場向かい辺りにあったお店であることが確認できる。得意分野は、趣味の本・風俗雑誌・新刊書。松坂氏の日本の古いミステリは、ほぼここで買い求めたそうである)。このお店は以前から松坂氏に「良い本安く買えたんだよ。「新青年」とか買い集めたよ」と自慢されていたお店である…ほ、本当だったんだ…。「あの、ちなみにこれ幾らくらいで買ったんですか?」「う〜ん、確か千円くらいだったかな」…ギャォ〜ゥ、羨まし過ぎる!妬ましいほど羨まし過ぎる!などと大騒ぎ。
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最後には玄関の棚にこまごまと収まった、日本ミステリ研究の源流とも言えそうな、様々な大量の同人誌を見せていただき、もはや出来ることは唸るばかりになってしまった。恐ろしい、恐ろしいところだ。ここにあるのは間違いなく、全国五指に入るミステリ蔵書であろう。何たって、全ての本にしっかりとアクセス出来、直ぐに探している本が出て来るのが素晴らしい。一通り見終わったところで、再び酒宴に突入する。そしてその場で、せっかくツアーに来たので、何か手に入れたいものだと野心を膨らませ、恥を忍んでツアーの恥はかき捨てだ!と、ダブりの古本で良いから何か安値で譲っていただけまいかと、図々しく松坂氏に申し出る。その瞬間、何故か全員大爆笑。いや、いいんだこれで。これが私のやり方なのだ。だが松坂氏は徐に立ち上がり、悩みながら色々と探索してくれた。そして「これを差し上げましょう」と二冊の雑誌を手渡してくれた。
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久保書店「世界的ハードボイルド・ミステリィ雑誌 マンハント」1961年11月号12月号である。あれ?知ってる中綴じA5判じゃない。平綴じでB5判じゃないか。こんなサイズの時代もあったのか、と驚く。ありがとうございます!などとやっていたら、気付いたらホストの教授は全集部屋の床で、寝袋に包まり高いびきなのであった。
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2019年02月26日

2/26東京・西調布 喫茶 侘介

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本日は西調布駅北側の住宅街に流れ着くと、何の変哲もない運動場と遊具のある公園が、『鬼太郎公園』と名付けられているのを知る。公園自体に鬼太郎らしさは一切ないが、看板に水木しげるが書いた公園名とともに(大きく“水木しげる”のサインも)、鬼太郎が描かれている。少しだけ感動しながら駅に向かい、以前訪れたことのある古本も扱うリサイクルショップ「不思議屋」(2018/10/18参照)前を通りかかるが、残念ながらシャッターが下りたままである。お休みであろうか…せっかく安い古本を買う気満々でいたのに…。仕方なくそのまま駅方面に向かい、白けたように小綺麗な北口駅前の西側に隠れている、鄙びたお店が建て込む『西調布一番街』に進入する。だが、頼みの綱の「foklora」(2018/03/09参照)も、呆気なく定休日であった…くぅぅ、このままスゴスゴと帰るしかないのか…。気分を沈ませながら踵を返すと、その瞬間、奇跡のように古本が目に飛び込んで来た!うひょう!こんなことが起こるとは、俺は何たる幸せ者だ!と、古本に飢えていたので大げさに感激し、その感激の大きさの割には少なめの古本カゴに走り寄る。激シブな、スナックのような喫茶店の前に出された、古本カゴである。良く見ると、そのほとんどが「幽々白書」と「月刊ムー」なのであるが、傾向の掴めぬ単行本も十冊弱あり、カゴの縁には小さく『一さつ50円』と貼り出されている。それほど悩まずに、中央公論社「怪奇な話/吉田健一」せりか書房「路上のエスノグラフィ ちんどん屋からグラフィティまで/吉見俊哉・北田曉大編」を選び、木戸をガラリと引き開けると、優しい魔女のようなおばあさまが笑顔を出し、「あら、買ってくれるの。ありがとうございます。袋は?いいの?」と応対してくれた。二冊を計100円で購入する。とにかく古本に出会え、とにかく古本が買えたのは、とても目出度いことだ。買ったばかりの「路上のエスノグラフィ」を読みながら、京王線とすぎ丸を乗り継ぎ阿佐ヶ谷に帰り着く。そして「ネオ書房」(2019/01/06参照)に立ち寄り、箱ナシの小学館入門百科シリーズ10「まんが入門/赤塚不二夫監修」を300円で購入する。
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2019年02月12日

2/12東京・西国分寺 むさし結いの家

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本日は西国分寺南西の武蔵台という、お初の土地に流れ着く。悲しいことに西国分寺は、古本屋が絶えて久しい、絶望的に乾いた土地であるが、何の因果か偶然にも、小さな古本オアシスを発見してしまったのである!場所は駅から、武蔵野線西側を南に下り、国分寺崖線の高低差を感じながら、『武蔵国分尼寺跡』や、何だか古墳のような『黒鐘公園』通り過ぎた『東八道路』手前の北の裏路地に、そのワゴンは突然現れる。ビル一階の小さな福祉センターなのだが、そのセンター頭に、古着と共に文庫の古本ワゴンが出されているのだ。オアシスと言ってしまったが、雨上がりの水たまりのようなものである。だが、だが!この駅から半径一キロ以内に古本の姿など皆無だった西国分寺に、ひっそりと古本が並んでいたことが、とにもかくにも嬉しいのだ。俺は、水たまりの水を、喜んで啜るぞっ!と近付き、ワゴンを注視する。…赤川次郎…西村京太郎…赤川次郎…斉藤栄…草野唯雄…島田一男…赤川次郎…あぁっ!文庫は皆背が陽に焼け、砂にざらつき、ひしゃげているものもある。だが、何か買わねば、啜らねば…と、創元SF文庫「宇宙消失/グレッグ・イーガン」を選ぶことにする。おっ、入口左側の棚には単行本が……ふぅ、全部「ゴーマニズム宣言」か…。中に入ると、テーブルがたくさん並び、たくさんの人が着席し、活気のある室内である。一斉にみんながこちらを注視する。すると奥の事務所スペースから、ヒゲ&スキンヘッドの男性が「ちょっとお待ち下さい!」と飛び出して来て、本を受け取り布巾で拭きつつ「50円です」と教えてくれた。国分寺崖線の裾野で、古本が偶然に買えるなんて、思ってもみなかった。

坂を上がって中央線で阿佐ヶ谷に戻り、「ネオ書房」(2019/01/06参照)に寄り道。国立国会図書館「本の装幀 展示会目録 特別出品 芹沢_介装幀本」を150円で購入する。

※お知らせ
そろそろ発売の「本の雑誌 流れ雲ビーフン号 No.429」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では、大森の「松村書店」を大フューチャー!あのお店の人間サイズの小ささと古さを、今後も偏愛し続けるぞ!
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2019年02月08日

2/8東京・西荻窪 BREWBOOKS

早くから動き始め、午前十時過ぎの神保町に水道橋駅からアプローチする。『白山通り』を我が物顔に通過する冷たい風に抗いながら、まずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)で評論社「アイルランドの怪奇民話」を400円で購入し、良い滑り出しを予感する。続いて「日本書房」(2011/08/24参照)の店頭中央和本ツインタワーから、春陽堂「武蔵の名香 阿剌比亞の林檎 東西短慮之刃/尾崎徳太郎」を800円で購入する。これは明治三十五年刊の、尾崎紅葉の講談物語に関する講演を筆記したもの。タイトルにある『武蔵の名香』『阿剌比亞の林檎』二つの話を弁じ比べ、共通点を炙り出す趣向である。こんなものが店頭に出ているとは、さすが「日本書房」!と褒めたたえながら、さらに南下を進める。「アムール」(2011/08/12参照)では日本経営史研究所「未踏世界への挑戦 味の素株式会社小史」角川文庫「娼婦の部屋/吉行淳之介」を計100円で購入する。光の当たる『神保町交差点』から『靖国通り』に入り、「明倫館書店」(2012/04/04参照)前で立ち止まる。ワゴン上に積み重なった古本もしっかりチェックして行くと、ちゃんと函付きの三省堂「趣味の植物採集/牧野富太郎」を300円で購入する。昭和十年刊で、牧野の活動している写真が豊富に掲載されているのがたまらない一冊である。
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さらに「八木書店」(2013/07/24参照)の店頭プラ箱から日本雄辯會「實業界大秘史 三菱王国/大瀧鞍馬」(巻末に『日本のコナンドイルと謳はるる』とある筑波四郎「探偵十種」の広告あり。どうやら実録犯罪ものらしい)日本書房「ディオール/杉野芳子」を計400円で購入する。すっかり身体を冷やしたところで、『東京堂書店』に赴き、待ち合わせていた神戸から上京した知り合いと無事に出会う。本の雑誌社に行きたいのだが、一人ではその勇気がないので引率して欲しいと頼まれていたのである。というわけで、珍しくメンバー全員勢揃いの本の雑誌社に優しく迎え入れられ、三十分ほど楽しく歓談させていただく。無事に役目を果たした後は、さらに古本屋を巡ると言う知り合いと別れ、帰路に着く。その時、「小宮山書店」(2014/05/31参照)の角をふいっと曲がったところで、店頭棚最下段に挿さっていた本が目に留まる。実相寺昭雄の「星の林に月の舟」であるが、背の一番下に大和書房の名がない。ということは、実相寺の饅頭本(葬式時に配る非売品本)じゃないか!と引き出すと、見返しに奥さま(映画『シン・ゴジラ』では逃げ遅れたおばあちゃんとして遠影で出演している)の挨拶カードと名刺が、ちゃんと挟まっていた。買わねば!と静かな店内に踊り込み、1080円で購入する。

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一旦家に戻ってから、午後三時前に西荻窪へ。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に腰を据え、先月の売り上げを受け取りつつ、ひっそり出現している横田順彌棚に目を細めたり、打ち合わせや無駄話など。その中で小野氏が「そう言えばこの間、自転車で『西荻南児童公園』の脇道走ってたら、『本』って看板が出てる店が…」…!それって、もしかしたら遥か以前に「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)の天野氏が、その辺に出来るらしいって言ってたお店じゃ!と気付き、「ひとたな書房」から高知県立文学館「探偵小説の父 森下雨村」を800円で購入しつつ、とにかく急行してみることにする。駅南口から『西荻南二丁目交差点』まで南に下り、後は東南に延びて行く『神明通り』をズンズカ進んで行く。200mも行けば『西荻児童館交差点』に差し掛かり、その際には小さな『西荻南児童公園』が現れる。そこで北へ向かう通りを覗き込むと、おっ!右手公園横の建物前に、確かに『本』の立看板が出ているではないか。一階がレンガタイルで化粧され、窓枠&扉が真っ青なお店である。窓際にはキレイな本が並び、中には本が上品にディスプレイされているのが伺える。扉を開けてお店に入ると、奥のカウンターの向こうから、身だしなみがファッショナブルな野比のび太風青年が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。表の立看板から引きちぎったチラシによると、新刊+古本を扱い、クラフトビールやソフトドリンクも楽しめ、さらには二階は『書斎』という名の時間制寛ぎ読書スペース&イベントスペースになっているとのことである。一階は左に洒落てシンプルな飾り棚がカクカクと繋ぎ合わさり、中央には木製の平台棚が二つ据えられている、右壁下はカウンター席となっており、最奥にはビール冷蔵庫を備えた広々としたカウンターがある。その右側は二階への通路となっており、そこにも棚が設えられている。本はそれほど多くはないが、全空間に、余裕を持ち満遍なく行き渡るようなカタチで、新刊と古本、単行本と文庫が混ざり合い、並んでいる。食・絵本・台所・暮らし・自然・妖怪・民俗学・本関連・酒・文学・西荻窪・旅・シベリア…アイヌの本を見つけて手にしてみると、アイヌ語の練習本のようなもので、語りのカセットテープ付き。思わず食指が動くが、三千円の値に二の足を踏む。気付けば青年店主は、カウンターの向こうで美味しそうにズバズバと麺を啜っている。セレクトブックショップに近いお店である。店主の審美眼が隅々まで行き届き、無駄のない潔い並びを見せている。新たに西荻窪本文化の一端を担う場所が、いつの間にか誕生していたとは。講談社「夜翔ぶ女/中井英夫」を購入する。
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2019年02月01日

2/1東京・谷保 小鳥書房

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『次は、ヤッホ、ヤッホ』のアナウンスに痺れながら、南武線から降車する。北口のロータリーに出てからは、すぐに住宅街に分け入り、まずは駅北東の『谷保第一公園』を目指す。開けた縦長の公園では、安全性の問題から使用が禁止され、ブルーシートで梱包された遊具が、ちょっとアート的な異彩を放っている。そしてその向こうには、『国立富士見台第一団地』を背にした、短い二本の双子のようなアーケード商店街『ダイヤ街』が見えている。ここは、2018/10/17に偶然訪れた、昭和過ぎる商店街ではないか。北原尚彦氏からのタレコミによると、ここについ先日新刊と古本を扱うお店が誕生したらしいのである。まずは西寄りのアーケードに入り込んで行くと、おぉ!左手手前が、その件のお店であったか。古風なモルタル壁に、磨りガラスのウィンドウと木枠のガラス戸がはめ込まれ、そこには店名と小鳥のマークが描かれている。脇には『新刊・古書』の立看板と、お店の成り立ちと在り方を短く紹介した(ひとり出版社が母体の本屋であること。日用品を買うように本を買って欲しいことなど)黒板が置かれている。扉を開けて中に入ると、奥の高いカウンターの向こうに座る二人の女性が「いらっしゃいませ」と鈴を振ったような声で出迎えてくれる。余裕のあるシンプルで洒落た店内である。左壁に自社出版本と、まっとうで優しくて理知的な瞳で選んだ新刊が、軽やかに並んでいる。おっ、香川県・高松の完全予約制古書店「なタ書」のショップペーパーが置かれているじゃないか。何時の日か行ってみたいものだ。一枚もらっておこう。中央には自社本と雑貨類が集まる棚。そして右には二階へ上がる小さな階段があり、その下の壁に小さな棚が一本置かれ、どうやらそこに古本が並んでいる。しゃがんで見てみると、これが水木しげる&京極夏彦&荒俣宏の妖怪尽くし。棚二段分に、これでもかと揃えられているのが、新刊との奇妙なギャップを生み出している。他にもカウンター下の木箱三つに、文学・自然・一般書の古本が収まっている。どちらかと言うと自社出版物と新刊がメインで、古本はお店にちょっとした彩りを添えている感じである。だから冊数は少ないが、値段は安めである。おかっぱ丸メガネのお姉さんに、木製フレーム&ボタン電卓でカポカポ計算してもらう。角川ONEテーマ21「京都妖怪紀行/村上健司」角川書店「水木しげるの異界探訪記/水木しげる」を購入。あぁ、時代から取り残されたような素敵な商店街で、古本が買える幸せよ。開店おめでとうございます。その後は団地外れの一角で、洋菓子屋『白十字』の工場直営店を発見してしまったので、フラフラと蟻のように吸い込まれる。途端に襲いかかる、幸福な甘い匂い!ショウケースの向こうでは、白い調理服を来た人々が忙しく立ち働き、甘いものを次々と造り出している!まるで工場見学している気分になり、ショートケーキやシブストやト音記号のクッキーなどをわちゃわちゃ購入する。すると「これ、割れちゃってるんでサービスです」とサブレを一枚いただく。ありがとうございます!すっかり身体に甘い匂いをまとわりつかせながら、国立駅までの千五百メートルを歩き通す。
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2019年01月23日

1/23東京・御徒町 第一回 上野広小路古本祭

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そう言えば日曜の「みちくさ市」(2019/01/21参照)の受付時に、「立石書店」さんが意気込みながら「上野で古本市やるんですよ。来て下さい!岡島一族(「岡島書店」(2010/02/02参照)「立石書店」「古書英二」)全員出るんですよ!」と言われ、思わず笑ってしまったことを思い出す。と言うわけでお昼ご飯を食べてから電車に飛び乗り、秋葉原から京浜東北線と競り合うように走る山手線で、御徒町駅下車。礫が混ざった凝固土の手摺を懐かしく感じながら階段を下り、北口に出る。高架下から西側に抜けると、北には『アメ横』の南端ゲートがあり、平日なのに多くの人でザワザワとしている。さらにザワザワは、そこから街中にあふれ出しているようで、パワーのある賑わいが続いて行く。『春日通り』をそのまま西に進むと、たちまち大きな『上野広小路交差点』である。北側には上野のお山が見え、南東には爽やかな建材パネルに包まれてしまった『松坂屋上野店』が『中央通り』に沿って、南へと伸びて行く。そして南西の角地には『凮月堂』に並び、緑色の演芸場ビル『上野広小路亭』が建っている。おぉ!その一階の『ギャラリー+スペース36』で、赤い『古本市開催中』の幟をはためかせ、教えられた通りに古本市が開かれているではないか。しかもかなり賑わっており、常にお客さんが出入りしている。表に出されたコンビニコミックワゴンや雑誌ワゴンや文庫ワゴンを眺めながら、窓に貼られたポスターにチラリと視線を移すと、『上野に古本催事が帰ってきました。個性豊かな古今の良書を揃えてお待ちしております』と書かれていた。入口横のワゴンも念入りにチェックし、その横に置かれたプラ箱も覗き込むと、古本ではなく演芸場のスリッパが大量に入っていた…すぐ隣りは階上の演芸場への入口なのか…。中に進むと、横長でそこまで広くはないスペース。壁際を本棚と木箱で造られた棚が覆い、中央にはプラ箱でまとめられた平台、右奥にはワゴン&木箱棚がつながって行く。左に帳場があり、その脇には貴重紙物のラックも置かれている。並んでいる本は、民俗学・郷土・歴史・江戸風俗・近代・戦争・自然・落語・演芸・映画・北杜夫・時代劇文庫・新書などが主で、独特な硬さを見せている。そして会場内は古書ファンと言うよりは、一般客でにぎわっている印象である。こりゃスゴい。最初は函が壊れている300円の木下杢太郎「其国其俗記」を買おうと思ったが、何となく気乗りせずに、未練たらしく一度見た棚を眺めていると、先ほどは不覚にもスルーしてしまっていた嬉しい一冊が目に留まった。白揚社「16の横顔 ボナールからアルプへ/滝口修造」である。カバーナシだが540円なので、「其国其俗記」はそっと元あった所に戻し、一冊だけをニコニコと購入する。この市は1/27(日)まで。
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2018年12月31日

12/31東京・新宿 詩歌系古書店が選ぶ「わたしの5冊」

ついに大晦日である。さすがにこの日になると、開いている古本屋さんは、グンとその数を減らす。おまけに一年の疲れが身体に淀んでいるのか、どうも身体が重い。なので近場で一年の締めくくりをキメることにする。向かったのは古本屋さんではなく、老舗の有名新刊書店『紀伊國屋書店新宿本店』である。ここで現在『詩歌系古書店が選ぶ「わたしの5冊」』という、選書フェアが行われているのだ。古本屋さんが絡んでいることならば、何でも味わい尽くさなければならない。そういつも通り盲信し、普通に賑わっている地下道をずいずいと進んで行く。『創業116年の中村屋でございます』と重々しい呼び込みをする『中村屋』地下入口前を通過し、前川國男のトレードマークとも言える陶タイルで覆われた壁沿いに、書店へのエスカレーターを上がる。地下一階からは階段を右に巻上がり、多種多様な手帳を店頭販売中の正面入口に出て、さらにエスカレータを上がって二階店内へ。入ってしまえば場所はすぐにわかるだろうと高をくくっていたら、何処でそのフェアをやっているのかまったくわからず、しばらく店内を彷徨いまくる。結局エスカレータを上がってすぐ右に進み、奥に詩歌句がある通路の一番手前の通路棚で、そのフェアはこじんまりと行われていた。立ち上がる棚と平台に詩歌句新刊の二十五冊が並び、それぞれの解説が掲載されたフリーペーパーも置かれている。参加店は「古書ソオダ水」(2018/01/28参照)「葉ね文庫」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」134ページ参照)「水中書店」(2014/01/18参照)「七月堂」(2018/01/18参照)「りんてん舎(仮。2019年上旬に三鷹にオープン予定)」である。この新鋭中心で斬新なラインナップは、しっかりと古本屋さんに通い、その目で見極めていなければ決められないセレクトである。新刊書店で古本屋絡みのフェアをすることと、これらのお店を選んだ担当者さんの英断と慧眼に、まずは頭を垂れる。フリーペーパーを手にすると、並べられている本+オススメの絶版本も掲載されている。だが、これを最初に読んで、楽をしてはいけない気がする。もうすでに目の前に本が並んでいるのだ。まずは先入観なしに、己のフィーリングに合った本との出会いを、楽しむべきではないだろうか。通常、古本屋さんでは、専門店以外は様々なジャンルの本を並べている。そこには、店主の個性や営業意志が反映され、独特な棚造りが為されている。その棚は、ある種地図のようなものである。知識や思想や未来や過去や異世界や妄想などに踏み込むための、誰もが読み慣れた地図である。そこにあるのは答えではなく、ただ進む方向の指針となる古本の並びで、完成度の高い良い地図に古本屋さんで出会えた時は、身体に電気が走るほどの、素晴らしい装置なのだ。だが詩歌句は、通常の棚とは少し異なり、聞き慣れない出版社や作家が連続し、多少取っ付き難くマイナーな面を持っている。その取っ付き難い棚は、大抵のお店では片隅に追いやられ、小さくうずくまっているのだが、ここに並んだ四店+一(仮)は、大きく詩歌句に棚を割いているお店ばかりである。例えて言えばその地図は、通常の地図ではなく、海図や星図みたいなものではないだろうか。何処か大きな世界を予感させる、馴染みの無い地図たち。だがそれは、接することにより、ルールを把握することにより、いずれは馴染み深く、そして興味深くなるものである。この今目の前に展開している小さくささやかな棚も、そんな見慣れない地図の一枚である。だが、何処かに地図と親しむ手掛かりは含まれているはずである。まずは装幀を眺め、一冊一冊手に取り、ページを捲って行く。詩集・詩論・詩人エッセイ・歌集・句集………しばらくフェア棚の前に佇み、迷いまくる。ちょっと高値の本も多いので、そこもしっかり吟味する。結果、一編二編、三首四首、五句六句さらりと読んで、心にピリッと引っ掛かったものを買うことにする。思潮社「リリ毛/小縞山いう」2200円+税である。アカシックレコードから無作為に選んだ言葉の羅列のようで(作者の名前もそうだ)、リズム感が密やかにこなれて弾む文字列が、何か妙に引っ掛かってしまう。読んで意味は即座に掴みかねるが(まぁ大抵の現代詩はそうだ)、読み込むと脳内がキレイに掃除され、そこに予想外の一言がポツンと残されてしまっているような想像をしてしまう。フリーペーパーを繙くと、選書は「水中書店」さんであった。ゆっくりと、読み進めていくことにしよう。
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帰りに大晦日も絶賛営業中の「千章堂書店」(2009/12/29参照)に立ち寄り、岩波文庫「銀座復興 他三編/水上滝太郎」を350円で購入し、本年の古本買い納めとする。今年もたくさん古本を買いました。みなさま、来年もまたよろしくお願いいたします。それではよいお年を!
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2018年12月24日

12/24東京・荻窪 藍書店

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昨日の古本狂乱は過ぎ去り、すでに強風のクリスマス・イブである。舞い飛ぶ大量の枯れ葉に非日常を感じながら、いつもの月曜日のように、荻窪「ささま書店」(2018/08/20参照)へ定点観測に向かう。だが珍しく店頭では何もつかまず、店内で欲しい本は見つかるが購入にまでは至らなかった。大量の古本を売ったことに起因する放心状態だろうか。…そうだ、移転した「藍書店」を、いい加減に見に行かなければ!と思いつき、クリスマスに賑わう『南口仲通り』に入り、最初の脇道を東へ…あっ、「おぎくぼ古本市」(2018/05/02参照)をまたやってるのか。営業は12時から…後で見に来よう。そのまま道を抜けると『電話局前交差点』である。大通りを鋭角に南西に進み、こちらも最初の脇道を南へ入り込む。すると50mほど進めば右手にビル一階のお店が…営業しているぞ。看板が以前の選挙事務所からすっかり新調されており、『藍書店 Indigo Books 古書買取』の文字が輝いている。店頭には頭上にプラ箱を載せた三つの小棚が出されており、上部には映画・芸術関連、下には美術系の大判本を収めている。細長く小さめな店内に進むと、壁はほとんどが本棚で覆われ、奥へと伸びて行く通路棚が二本の狭い通路を造り出してる。本棚には古本がびっしりと収まっているが、良く見ると通路入口側の合わせて十五本ほどの棚には、背をこちらに向け整然と本が並んでいるが、奥に進むと結束本束や横積み本となり、バックヤード的に変化する。どうやら今のところ、奥のレジ近くの部分は、フロントなのだがバックヤード的な役割を果たしているようだ。と言うわけで、店舗として機能しているのは、前部分だけなのである。そこには、文庫・映画(これが目立っている)・芸術・文学・思想・社会・歴史・新書・洋書などが、大体100〜500円の値付で混ぜこぜに並んでいる。だが、質はかなり高めで、古書も混じっているのが何とも嬉しい。筑摩書房「カツドウヤ水路/山本嘉次郎」講談社少年版江戸川乱歩選集「三角館の恐怖」アスベスト館「アスベスト館通信第3号」が、合わせて千円!これから月曜日は、「ささま」とともに定点観測することにししょう。

そういえば昨日、古本市で残った良書を「フォニャルフ」に補充しておいたので、来られなかった方はぜひご覧あれ!家に帰った後は(ハッツ!「おぎくぼ古本市」に寄るの忘れた…)、大阪へ送る古本集めと、土曜の岡崎武志氏とのトーク来場者に配布するプレゼントセレクトを行う。貰って嬉しいもの、貰って困るものアリ!…フフフフ。そんな歳末ギリギリ限界の古本トークですが、お時間ある方はぜひ八王子にお越しください。「佐藤書房」(2009/08/26参照)の濃厚さと「まつおか書房」(2010/01/05&2016/08/29参照)の大外棚を楽しんだ後に、「古書むしくい堂」(2018/01/03参照)と『旅と古本』の世界(多くは古本屋さんと古本のことになると思いますが…)をお楽しみいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!

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旅について、古本屋について、古本について、青春18きっぷと鉄道について、縦横無尽に話しまくる予定です。八王子への小旅行を満喫した後、古本屋さんでのトークを、ぜひともお楽しみ下されば幸いです!冬の八王子でお会いいたしましょう!
【日時】12月29日(土)18:00スタート
【参加費】1,000円
【場所】八王子「古書むしくい堂」東京都八王子市横山町10-17グエルスクエア八王子102
【ご予約・お問い合わせ】info@mushikuido.com tel:042-698-3994 http://www.mushikuido.com/contact/
※二人のプレゼントが当たる抽選会あり
※終了後、有志で忘年会へ
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2018年12月16日

12/16東京・鶯谷 古書 木菟

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嫌気を覚えてしまう、粘っこく明度が低い曇天である。新宿駅から山手線の上半分を五分の二周し、昨日新しく出来た古本屋さんを見に行く。だが、間違えて南口で降りてしまった…本来は北口から改札を抜け、『言問通り』に上がって西を目指すのが正しいのだが、仕方ないのでこのまま歩き始めることにする。ぐるっと回り込むように、北西にある『言問通り』を目指して進んで行く。『寛永寺』の霊園と、『東京国立博物館』に挟まれた道に入り込んで行くと、人影はほとんどなく、タクシーが連なり憩っているほどの静けさである。整然とした情報の少なさと、空の広さが、まるで浮世絵を見るようである。こうなると嫌気を覚えた曇天も、俄然風雅なものに変貌して行く。徳川家綱廟の豪華な門や、威厳ある『東京文化財センター』前を通り、どうにか目的の『言問通り』へ出ると、浮世絵の面影は消え去り、下町の風景が広がり始める。通りを西にグイグイ進み、やがて『上野桜木交差点』。道を北へ入り込み、黄色い看板の『愛玉子』前を通過して、交番のある小さな交差点を西に入る。すると右手に、谷中の風景にベストマッチしたお店が見えて来た。小さく細長く新しく、三階建ての店舗兼住宅の一階がお店なのだが、大変に造作と意匠に手間をかけているのが一瞬にして見て取れる、驚きの店構えである。瀟洒な軒燈が可愛らしく、明り採りの小窓も美しい。上部がRになり、磨りガラスと透明ガラスを組み合わせた木枠戸は、まるで庵の入口のようである。そしてその左右には、何と龍と鳳凰のレリーフが飾られている。さらに左の店名看板が埋め込まれた部分は、いわゆる“梲(うだつ)”のようでもある。そんなこだわりの入口から中に進むと、おぉっ!これはまたまたスゴい!細長い店内は、両壁に造り付けの木棚を設え、七段×七列でずずいっと奥の帳場まで美しく続いている。足下には御影石のパネルが敷き詰められ、中央には細長い平台が三台縦列して行く。…完璧だ。完璧な空間造りだ!と感心しながら棚に眼を流し始める。右壁は、フランス・パリの歴史や社会や事件から始まり、東欧・ドイツ・ヨーロッパ全般・スペイン・ロシアと大きく広がり、やがて中国やアジアにも至る壮大な並びを展開し、見る者を圧倒する。それに続き、思想系エッセイ・民俗学・政治・思想・近現代史・上野英信・谷川雁・埴谷雄高・石牟礼道子・松下竜一・労働運動・抵抗運動・無政府主義・社会主義・共産主義などが、煉瓦の如く連続して行き、最後の棚は新刊書で埋められている。踵を返して左側の棚を帳場近くから眺め始めると、海外の思想書が集められ、それにつながるように大量の海外文学がきめ細やかに並び続ける…おぉ、ブルース・チャトウィンやジャック・ロンドンも網羅されているのが嬉しい。そして入口近くには、安部公房・大江健三郎・開高健・車谷長吉・金井美恵子・後藤明生・富岡多恵子などを核に、独特な日本文学の波が寄せ集まっている。平台には、カルチャー雑誌の揃い・海外文学・思想系雑誌の揃い等。とにかく体系的に並ぶ硬めの本(そこには松岡正剛の色濃い影が)たちに、圧倒されっ放しである。深く重い本棚である。こういう潔い古本屋さんを営むのは、とても勇気がいるのではないだろうか。値段は相対的にちょい高ではあるが、硬めの本にしては買い易いお値段と言えよう。帳場に近付き、ほんのちょっと高橋源一郎風と言えるような壮年男性に精算をお願いする。レジ操作に手間取るのは、開店二日目のご愛嬌である。大和書房「レムの宇宙カタログ/スタニスワフ・レム」(これは安値で、なんと喜びの六百円!)を購入する。表に出て、お店を視野に入れながら、辺りを見回してみる。長い白塀、墓場、木造家屋の裏側、蘇鉄、楠の巨木、反り返った寺の屋根…そんな景色の中に、新しい古本屋さんが出現していた。開店おめでとうございます。そしてあくまでも蛇足だが、その楠の巨木が生えている、南側の『大雄寺』の古めかしい境内に入り込むと、何と墓石と卒塔婆越しの古本屋さんと言う、奇景と言っても過言ではない幽玄な景色が拝めるのだ。ぬぉっ、素晴らしい!
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2018年11月23日

11/23タダで古本を手に入れる。

『早稲田大学坪内博士記念演劇博物館』で、ダブりの映画演劇関連書やパンフレットや台本やポスターなどを、無料で一人十点まで持ち帰られる青空市が開かれるというので、ワクワクしながら向かうことにする。阿佐ヶ谷駅に向かう道すがら、閉店した子供服店の店頭に、無料古本箱が置かれているのが目に留まる。浅ましく漁り、竢o版社「クリちゃんのアフリカ動物旅行/根本進」をいただくことにする…タダで古本を貰いに行く途中で、早速タダで古本を手に入れてしまった…。東西線・早稲田駅に到着すると、祝日なのにたくさんの学生が降車し、学校へと行進して行く。みな、燃え上がる学習意欲を、抑えられないのか…そんなことを勝手に思いながら、正門から『早稲田大学』内に突入し、大隈重信像手前の道を北に曲がり込むと、行く手に両翼を備えた近代建築の美しい博物館が見えている。そしてその正面広場には、すでに人垣が出来ているではないか!
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慌てて近付き状況を確認すると、長テーブルが並列して据えられ、その上に洋書・中文書・和書・映画・演劇と分けられ、二十個ほどのダンボールが置かれている。その量は思ったほどではない。そこを二十人ほどの列が三重四重に取り巻いている…こりゃぁ、人に対してブツが完全に足りないんじゃないか?現在午前十時五十分。スタッフが青空市についての説明を始める。「多くの人にお集りいただきましたので、五分前の午前十時五十五分にスタートします。最初は前二列の方々から。そして五分ごとに二列ずつ新たに参加していただくようになります」…なにかアバウトな感じがするが、大丈夫だろうか?そんなことを考えている間にも人は集まり続け、列の数は増して行く。程なくして開始時間となり、前二列の人たちが、ダンボール箱に襲いかかる。一部では喧嘩に発展しそうな、激しい競り合いが勃発している。そしてそれを見て血が騒いでしまったのか、順番を待つべき三列四列目の人たちの一部が、なし崩しに参戦して行く。スタッフが叫ぶ「あ、お待ち下さい。最初の二列だけです。まだあと五分…お待ちください…お待ち…おま……」叫びも虚しく、一度ダンボール前に吸収された人は、もはや戻ろうとしない。そしてちゃんと待っている人もいるのだが、気付かないフリをして列を抜かし、箱に取り憑く者も出始める始末…あぁ、嘆かわしい。きっと坪内逍遥博士も草葉の陰で嘆いているに違いない…。礼儀正しく十分後に参戦するが、一列のテーブルで、しかも箱の中に入っているものを、そうそう見られるものではない。とにかく人の隙間から腕を伸ばして本を引っ掴み、人塊から離れて掴んだ本を確認する作業を繰り返す…まるで地獄だ…。結果、丹生都比売神社「丹生都比売神社史」1916年のニューヨーク演劇雑誌「THE THEATRE」合本(写真満載で素晴らしいのだが、演劇とは別にカラーの広告ページやファッションページがとにかく素晴らしい!だが、尋常じゃなく重い…)日本アート・シアター・ギルド「アートシアター18・62(こちらは岡本喜八特集)」をいただくことにする。寄付金400円を募金箱に投入し、恐ろしい戦場を離脱する…ふぅ、疲れた。

重い本を携え高田馬場駅に向かいながら「平野書店」(2010/01/12参照)店頭に足を留めると、ひょいひょいたちまち三冊掴んでしまう。文雅堂書店「少年少女小説 源吾旅日記/赤川武助」大陸書房「図説・海の怪獣/ジェイムズ・B・スィーニ」至誠堂「旅から旅/加藤咄堂」を計300円で購入する。良い買物でした。さらに歩を進め、坂を下って「ブックオフ高田馬場北店」(2018/10/19参照)へ。ほほぅ、今日から三日間、本は20%オフなのか。これは何か買って行かなければ…当然奥の古書売場に赴き、まずは東京創元社 世界恐怖小説全集5「怪物/A・ビアース」を手にする。続いて何気なく講談社「女の踏絵/梶山季之」を手にすると、嬉しいことに献呈署名入りだったので、これもいただくことにする。合計で1336円。さらに古本で荷物を重たくし、西武新宿線で家路に着く。
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2018年11月08日

11/8東京・国立 古道具ニコニコ堂

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今日は国立北口の丘の上、日吉町に流れ着くが、その結果面白いものを発見する。場所は『国立駅北口』を出て真っ直ぐ北に向かい、『光町1交差点』を東へ。やがて北東にぐいんと曲がりながら蹴上がる急坂を丘の上まで登り詰め、直線道を三百メートルほど進む。すると右手白い雑居ビル一階の美容院の隣りに、いつの間にか恋ケ窪にあった古道具屋「ニコニコ堂」(2018/05/26参照)が引っ越して来ているではないか!店頭は恋ケ窪にあった時より、遥かにスッキリしており、木椅子や火鉢や少々の古雑貨類が出されているだけである。だが中に入れば、そこは以前と同じ古道具・古雑貨・アンティークが、圧縮陳列ながら秩序だって飾られた小宇宙である。古時計の音がコチコチ聞こえる、以前より狭くなった店内に、前回見覚えのあるものたちが、距離を縮めて並んでいる形である。奥にはこれもコンパクトになったガラス越しの帳場があり、老店主が文庫本に読み耽る横顔を見せている。紙物類は、レコード箱の上に乗ってプロマイド・切り抜き・切符ファイル・マッチラベルファイル。それに右側通路下の古パッケージ・小冊子・ハーモニカ教本・ノート類、さらに左側通路の絵葉書.手帳サイズ紙物・観光パンフ小箱。それにブルボン小林の「マンガホニャララ」サイン本。〆は帳場前の洋書三冊くらいであろうか。主に右側通路の紙物箱を漁り、昭和二十五年刊の教会系絵物語雑誌「はこぶね 1.2月合併号」を持ち出し、帳場の店主に差し出す。すると老店主は、読みさしの文庫本に何か栞の代わりになるものはないかと焦り探し、しばらく手と目を四方に泳がせまくる。…落ちついて下さい。いつまでも待ちますよ…と無事に紙を挟んだところで精算を済ませる。「ありがとうございます。これ、名刺」と、ハンコで作った名刺をいただく。無事の引っ越し、おめでとうございます。

すっかり暗くなり始めた阿佐ヶ谷の帰り道を歩いていると、「1960年代専門店 甘辛劇場 懐かし屋」(2017/02/22参照)の柔らかい光に誘われ、ドアを開けてしまう。たくさんのレアな玩具や駄玩具が飾られた店内に、古時計の音が重なり合い響いている。中央の二台のガラスケースに挟まれた部分に、見事に古本が横積みされ集められている。玩具関連本・「轟先生」・長谷川町子・テレビガイド雑誌・貸本漫画・西村賢太…おっ、晶文社「杉浦茂のモヒカン族の最後」が500円じゃないか。これを買おう。と、意気揚々と精算する。
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2018年11月03日

11/3前庭→屋上→ロビー!

午前九時に家を出て、まずは三鷹駅に向かう。駅南口に出て、一心不乱に南下していく。長〜い商店街を抜け、道を挟んで二つに分かれた『大成高校』の間を通過し、およそ二十分も歩くと『三鷹市立図書館』に到着する。ここで『第5回図書館フェスタ』が本日開催され、その一環として「サポーター古本市」と「一箱古本市」も行われるのである。場所は通りからも見える、石垣と生垣に囲まれた前庭である。時刻はちょうど午前十時で、今まさにフェスタが始まったばかりである。
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左側奥の風船ゲートを潜り、こじんまりとした芝生の庭に入り込む。入って直ぐ右から、長テーブルを並べた「一箱古本市」エリアが始まっている。参加者は五組ほどで、自作小説とオススメ本をパッケージしているお店や、絵本を取り揃えたお店や、自宅の本をそのまま持って来たようなお店や、近現代史本ばかりを並べたお店や、未だ本を並べていないお店が集まっている。左奥に進んで行くと、五本のラックと長テーブル一本、それにダンボールに本を詰め込んだ「サポーター古本市」である。一般小説・茶道関連・冒険小説・コミック・暮らし系雑誌&ムック・文庫・新書・絵本が、単行本・絵本・雑誌は100円、新書は50円、コミックは10円、文庫は三冊100円(海外文学文庫は三冊50円)で売られている。脇のステージで奏でられるジャズを聴きながら、出版芸術社「ふしぎ文学館 悦楽園/皆川博子」河出文庫「滑稽漫画館/宮武外骨」ちくま文庫「青空娘/源氏鶏太」を選ぶ。ご婦人が三人並ぶ帳場で精算をお願いすると、本を受け取ったご婦人が「文庫は二冊だと80円になっちゃうけど、いいの?いいならいいんだけど。つい主婦の感覚で、言っちゃうのよ。ウフフフフ」と言うことで、計180円で購入する。

古本を買うと同時に会場を離れ、またもや二十分ほど歩いて駅へと戻り、今度は荻窪駅に向かう。改札を抜けて地下から『ルミネ荻窪』に入り込み、エレベーターで最上階を目指す。今日はここの七階にある『グリーンテラス』で「あきぞらBOOK MARKET」と銘打ち、「TIMELESS」(2012/06/30参照)「百年と一日」(2008/09/25&2017/08/11参照)「旅の本屋のまど」(2009/06/30参照)「忘日舎」(2015/09/28参照)「にわとり文庫」(2009/07/25参照)「BOOK TRUCK」が集まり、太陽の下で古本を販売しているのである。ところがこの『グリーンテラス』への行き方が分かり難く、エレベーターで一旦八階の『ファーマーズテラス』に出て外階段を下るようにとある。八階の屋上に着いても、下の会場を見下ろすことは出来るが、下りる階段が見つからない…こりゃいったいどうしたことだ?
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仕方なく鎖で封鎖された階段から、コソコソと七階にたどり着く。フェンス沿いに立てられたテントの下に、古本が並べられている。絵本がとても多い。どうやらこの場所に合わせた選書を各店行っているようだ。…だが途中でおかしなことに気付く。お客さんが誰もおらず、みな何かバタバタと慌ただしいのだ。入口付近に近付き看板を見ると、開始時間が午前十一時からとなっている…いまは午前十時五十五分…ひえっ、開場前に会場入りしてしまっていたのか。そりゃ階段に鎖が掛かっているわけだ。と悄然とし、しばらくトイレの中に身を潜めて午前十一時を待つことにする…あぁ、バカみたい。その後無事に開いた会場に、正式にお客さんとして入場する。ちなみに屋上なので「BOOK TRUCK」のトラックは入って来られず、普通に自然&生物関連の本を並べている。そして「忘日舎」さんと色々お話ししていると、隣りが「にわとり文庫」さんで、その前に立つお客さんが「風書房」さんであることに気付く。「こんなこところにも朝一番に駆け付けて買いに来てるんですか!」と驚くと、にわとりさんが「こんなところだからこそ大事なんですよ。もしかしたらあそこに、◯◯の署名本がひっそりと並んでるかもしれないじゃないですか!」と、夢のあることを仰ってくれた。まさにその通りです。ただし、徒労に終わることがほとんどですが…。「百年」で座右寶刊行會「北滿民具採訪手記/染木煦 滿鉄総裁室弘報課編」を684円で購入する。

エレベーターで地階まで下りて、駅の南口に顔を出し、関東バスに乗り込んで芦花公園駅へ向かう。エッチラオッチラ『世田谷文学館』に向かい、一階ロビーで開かれている筒井康隆の蔵書即売会を覗く。午前九時半から整理券が配られ、整理券入場中は一人一冊の条件が付けられていたようだが、果たして本が残っているかどうか…と心配しながら自動ドアを潜り、一階ロビーに入り込んでいくと、ミュージアムショップ裏側の窓際に、黒布を掛けられた大テーブルが置かれ、その上に本がズラッと面陳されていた。並んでいるのは海外SF文庫・SF単行本・ハヤカワポケSFである。やはりレア本はとっくに捌けてしまったようだが、その代わり現時点では何殺でも買える模様。値段は500円or1000円のものがほとんどである。ふむむむと軽く悩み、ハヤカワ文庫SF「金星応答なし/スタニスワフ・レム」「ヒーザーン/ジャック・ウォマック」(こちらは『ギブスン絶賛、話題の大型新人』という三十年前の帯の惹句と黒丸尚訳に惹かれ)を計1000円で購入する。すべての本は扉に筒井康隆の蔵書印が捺されているためか、『転売お断り』が厳命されている。
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すべて本日限りの古本市や即売会である。
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