すでに昨日の話である。一ヶ月に渡って続けて来た、ミステリ評論家&乱歩研究家・新保博久氏のお引っ越し片付けお手伝いであるが、いよいよ本日がタイムリミットの最終回である。午前十時に「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と某駅で待ち合わせ、いつものように盛林堂イレギュラーズとして教授邸に向かう。ぬぉっ!教授邸の什器類が、表にたくさん出されている…そう言えばメールに『粗大ゴミ二十連発』って、書いてあったな…。

チャイムを押しても、教授が全然出て来ない…寝ているのだろうか?と思っていると、エレーベーターが開き、木製の大きな椅子を持った青色吐息の教授が姿を現した。「旧式の電子レンジがこれほど重いものとは思いませんでした」などの搬出苦労談を聞きながら階上へ。だが部屋に上がり込むと、お願いしていた文庫本の仕分けがまったく行われていなかった…うわぁ、粗大ゴミを運び出すだけで、精一杯だったんだな…小野氏が「とにかく仕分けを進めましょう。最初から言っているように、蔵書量はかなり減らさなければいけないんですから、もぅ、思い切って手放すつもりで!素早く!そうしなければ間に合いません」が宣告する。すると教授「えぇ。ですが、まだその棚を。粗大ゴミに出さなければいけないんですよ」と恐ろしいことを言い始めた。恐る恐る「棚?どれですか?」と聞くと、指し示されたのは右奥の部屋の、ラックや箱やカゴが積み上がる山の向こうに見える、背の高い木の本棚であった。「え〜っ!あれ?あれを?それにもうすぐ回収が来ちゃうんじゃないですか?」「えぇえぇ…恐らく」…もはや取り出すしかないようだ。取りあえずすべての作業を中止して、我武者らに棚を奥から取り出すことにする。まずは手前の箱から退かして行こう…あれ?何だか連結したラックが出て来たぞ…うぎゃぁ、全部文庫がビッシリ詰まってる「小野さん、文庫が文庫が〜」「どんだけ出て来るんだ…」そんなラックを五本ほど根性と筋肉で取り出し、さらに棚の前に立ちはだかる取り外された木製ドア(激重)をニジニジと移動させ、部屋内箱山の上に乗せることにどうにか成功する。ゼイハァゼイハァ…よし、これで棚の中の本が取り出せるぞ。辞書や大判のリファレンスや分厚い洋書類や地図や古本屋地図をダカダカ抜き出し、緊急避難的にドアの上に乗せて行く。そして「ふんぬぅ〜!」と本棚を引き出し、小野氏と教授に引き渡す。二人は協力して階下へ本棚を運んで行った…ま、間に合った。ところがしばらくして、何やらたくさんの人の気配が廊下の方から伝わって来る。教授が、作業着の人たちとともに玄関に現れた。そして「あ、あの奥のヤツも出さなければいけないんです」…!げえっ!あの乱歩関連が並ぶ高い白い棚も!すると、疲労困憊した私を見兼ね小野氏が「僕が出します」と隙間に突入して行く。物凄いスピードで本を抜き始める小野氏。ガンガンドアの上に積み重ねて行く。後ろで本を受け取ったりしてフォローに回るが、その時突然ドアがバランスを崩し、今まで積み上げた本たちとドア自体がこちらに向かってスライドしてきたのである。「危ない!」と全員が素早くドアを受け止め、間一髪で事無きを得る。どうにか安定を確保した後、作業再開。高速で棚を取り出すことに成功し、廊下まで運び出して作業員さんたちに託すことに成功する。そして棚から出した本を棚のあった場所に積み上げ、危険なドアをベランダに移動させ、およそ一時間半遅れで通常作業を開始する。
部屋に散らばる文庫&ノベルス山と、左奥部屋の棚に入った文庫を抜き出し、教授に仕分けてもらうべく山を作って行く。教授は「もはや思考停止状態です」と呟きながら、結構スピーディーに仕分けて行く。教授の前に本の山を作り、仕分け後に送り出された本を同階のトランクルームまで運び、小野氏に結束してもらうので、かなり慌ただしい時を過ごす。

引越しで雑然となった家の中で、必死に仕分けをする教授の後姿。ガンバレ教授!
…そして午後一時半、部屋の本があらかた片付いたので「教授、そろそろ休憩して昼ご飯にしましょう」「そうですね。栄養を脳に補給しないと」「あれ?ホームズは空腹の方が脳が冴えるんですよね?」「山中峯太郎版ホームズは、ガンガン食べますよ…」…というわけで三人で、もはや常連となった豚カツ屋に赴き昼食を摂る。次の作業の相談をしていると小野氏が「そうだ、あの資料の山の下に、本がたくさん隠れてるんだった」と恐ろしいことを思い出してしまった。そういえば、一番最初の作業スペースを作る作業で、なりふり構わず積み上げたんだっけ(2017/12/14参照)。というわけで再掘削し、本の山と再びご対面。これも文庫本時と同じような体制で、とにかく仕分けを進めて行く。時刻はあっという間に午後三時を回り、段々先の見えない泥沼にはまっている気分になってくる。本を運ぶために借りたレンタカー(たくさん運ぶためにバンである)も、何度も借り出す時間を延ばす始末である。そして山の作業が終了に近付いたところで、間髪入れず押入れに並ぶラックの仕分けに突入。

主にSF・ホラー・海外純文・ノベルス(また!)が詰まっているのだが、これが十本ほど…そしてまたもや教授がポツリ「実はその裏にもダンボールに入った本があります…」うぎゃぉうっ!とにかく進めよう、進めるんだ!と三人の心はついにひとつになり、一心不乱に本と格闘しまくる。途中、押入れ前で無理な体勢でラックを引き出そうとした教授が、足をつってしまう。「痛い痛い」と後退する教授に代わり、同様の体制でラックを引き出しまくる…結果、私も足をつる。本の隙間で寝転ぶ教授と、足を必死に延ばす私の姿を、様子を見に来た小野氏が「なにやってんですか?」。本の仕分けは寝室の本を残したところで、残念ながらタイムリミットとなる。結局レンタカーを借りたのは午後五時半で、六時から結束本を階下に下ろし、本を運び込んで行く。たちまちバンはいっぱいになり、ひとまず西荻窪の倉庫へと運ぶ。再び教授宅に戻り、残った結束本と、別のトランクルームに運び込むダンボールが十箱と、盛林堂買取品の十箱を積み込み、西荻窪→トランクルームと移動。トランクルームでは、前回いただいた内田善美「星の時計のLiddell」の続き二冊を教授の指示通りに発見し、確保する。レンタカーを返し教授邸に戻ったのは、午後九時半であった。

だが、今日の作業はまだ終わらない!最後に書斎の壁を覆う、複雑怪奇な本棚の解体に着手しなければならないのだ!、なのに、棚には本が盛大に詰まったままだ!慌てて本を取り出し取り出し、様々な部屋の様々な隙間に積み重ねて行く…せっかく整理が付いてスペースが出来た各部屋が、いつの間にやら元の木阿弥…ええぃ、仕方ない。今は本棚の解体だ。小野氏と最後の力を振り絞り、上から棚を崩して行く…作業終了は午後十一時。今までで一番ハードな一日となってしまったようだ。だがこれで、少しでも本が減り、部屋が片付き、教授が引っ越せるのなら、何の悔いもない!その後、近所の居酒屋に移動して、教授の無事の引越しを祈り、乾杯する。結局運び出した本はおよそ二万冊…だがそれでも、教授の蔵書量のおよそ四分の一なのであった…お、恐ろしい。そして本日の拝受品は、集英社「星の時計のLiddell2・3/内田善美」新潮文庫「蜘蛛/トロワイヤ 福永武彦譯」グロービジョン「鬼警部アイアンサイド/S・スターン 加納一朗訳」ポプラ社 名探偵シリーズ(キャッチが「成長期のお子さまに勇気と希望を与える推理小説の決定版です。明智小五郎・金田一耕助・神津恭助等の名探偵が、次々と起こる怪事件の謎を解く長編推理小説」となっている)「呪いの指紋」「魔術師」(カバー付き)ともに江戸川乱歩の、計六冊。まさか教授から乱歩本をいただけるなんて!「それは、氷川瓏のリライトですね」と教えられる。
posted by tokusan at 20:50|
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