2018年01月10日

1/10古本屋ツアー・イン・新保博久邸【第二章】

昨日に引き続き、本日も『盛林堂イレギュラーズ』として立ち働く。2017/12/19の続きとなる、ミステリ評論家・新保博久教授邸のお引越しお片づけである。だが年明けに「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏が教授に電話したところ、恐ろしいことに、本に関してはほとんど作業が進んでいないことが判明する…前回あれほど要・不要本の仕分け作業をお願いしていたのに、ほぼ何もしていないとは!このままでは、案の定一月中に教授が引っ越せなくなってしまうではないか!と大きな危機感を抱き、多少遅刻してきた小野氏と最寄り駅で落ち合い、すぐさま教授邸に突撃して決死の突貫作業に取りかかる。本日のミッションは、本邸ではなくマンション内トランクルームの本の仕分けと、本棚の解体である。四部屋のうち、何部屋まで片付けることが出来るのか…。作業に取りかかる前に、教授から「これ、関西土産です」と、今や関東では買えなくなったカール(チーズ味)と七味唐辛子をいただき、脱力してしまう。

ここ数日の間に、教授には必要とする本を書き出してもらっていたので、それを元にしてそれぞれが本の選別を進めて行く。トランクルームの中に閉じ込められると、たちまち囚人気分に襲われる。あまつさえ、教授に金網越しに飴を手渡され、悲しい差し入れ気分も味わってしまう…。
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そして肝心な作業は、初っ端からかなり難航を極めることになった。まず教授のメモが書きなぐっているので読み難いこと、それに作家ごとに特定作品指定があったりすること、ルーム内が暗いこと、通路が激狭なことなどなど。
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※これが教授のメモである。各棚ごとに掲出されていた。だが抜けもかなり多くあり、結局不要本として出したものを、再び棚に戻す虚しい作業あり。

軟体人間に変化し、テレスコープ・アイ(by香山滋)を振り回し、棚の上段から下段まで容易く確認出来れば、どれだけ楽に作業が進むことか…。かなり苦心して選別を進めながら、手放す本は廊下に出しまくり、縛り易いように同じ高さに揃えて行くと、そこにはたちまち本の海が誕生してしまう…恐ろしい光景だ。
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それを小野氏が結束しつつ、私は右側二部屋の本を表に出し切り、スチール棚の解体を進めて行く。棚上のボックス棚から雑誌を抜き取り、下に下ろす。その後二本の棚を解体。ふぅ、続いて右側手前の部屋だ。こちらも棚上棚を下ろし、ツッパリ棒を外し、棚の解体に取りかかる…だがその瞬間、最初に背中にかなりの重量がもたれかかり、さらに次の瞬間、たくさんの本が上から降り注いで来た。壁際の本棚が突然こちらに倒れかかって来たのだ!咄嗟に必死に支えつつも、本の雨と大きな落下音が、心の中に恐慌を巻き起こす!これはヤバイ、ヤバイぞ!だが、背中に力を込めて踏ん張ると本の雨は止み、棚の傾きもひとまず押さえることが出来た。息を荒げながら棚の上を見上げると、雑誌がたっぷり詰まった棚が、かろうじてバランスを保ち乗っかっていた…これが落ちて来ていたら、確実に病院送りになっていたな…。九死に一生を得た思いで、「小野さん、小野さん!」と外に向かって呼び掛けると、駆け付けた小野氏が顔を青ざめつつも、すぐさま棚と崩れ落ちた本の復旧作業に入ってくれた。こちらはその間、動けぬ体で取りあえず懸命に棚を支え続ける。途中、そんな緊急事態に陥っているのに、教授がノンアルコールビールを持って現れ、にこやかな笑顔で「まぁ動けぬ状態なら、これでも飲んで一息入れて下さい」とキング・オブ・暢気な振る舞い。思わず気持ちが和んでしまう。結局二十分ほど倒れかかる棚を支え続け、体力を一気に削り取られてしまった。
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※必死に棚を支える己の手を激写してみました…。

そんなことがありながら、午後七時前まで作業を続け、どうにかトランクルーム右側二部屋の整理仕分け作業完了に漕ぎ着ける。また近日中に、左側二部屋&ドア前トランクルーム&本邸の急ピッチ整理仕分けのスケジュールを組み上げて、本日のお仕事は終了を迎える。教授。小野さん、お疲れさまでした。命の危険を味わった報酬に、共に函は傷んでいるが、光風社「墓標なき墓場/高城高」浪速書房「天狗の面/土屋隆夫」をありがたく頂戴する。(つづく)
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2018年01月08日

1/8東京・清澄白河 リサイクルサービス モトキ

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古本神・森英俊氏から、店名不明の「謎の店」としてタレ込まれたお店に向かう。だがその前に荻窪にタッタカ向かい、「ささま書店」で文林堂双魚房「武蔵野隨筆」(函ナシ)Thames&Hudson「THE GRAPHIC LANGUAGE OF NEVILLE BRODY」を計216円で購入してから、丸ノ内線と半蔵門線を駆使して、隅田川の東岸におよそ五十分で到着する。駅から地上に出て『清洲橋通り』を東に向かう。そしてわりとすぐに現れる『東深川交差点』で北に曲がり込み、小名木川に架かる『東深川橋』の袂を目指す。すると右手、打ち捨てられたガレージのようなお店が姿を現す。壁はブロックとトタンで出来ており、ややV字型の屋根は、木枠で押さえられたトタンである。その屋根の下には、ほぼ廃品のような生活用品や古道具が詰め込まれている。四本ほど短い行き止まりの通路があるが、そこに入るのにもグイと分け入り地面に転がる物品を踏み付ける覚悟が必要である(真ん中辺りで、お店の名を書いたホワイトボード看板とチラシを発見する)。所々に古本を確認するが、カバーのないカッパブックスだったり、雨水を吸った「塀の中の懲りない面々」だったり、バケツに詰め込まれた「あいつとララバイ」だったり…。『のぞいて見ればなにかあるかも』と書かれた看板のある左端には、薄暗く広そうな空間がわだかまっており、その中からバキバキと何か作業している音が聞こえて来る。おっ、棚に一列週刊誌が並んでいる。絵葉書箱も発見。レコード棚もあるぞと奥に踏み込んで行くと、ハンチング姿の西村真琴風ご老人が、木材パネルをバラしている真っ最中であった。その横では暖をとるためか、七輪に木材がぶち込まれ勢いよく炎が上がっている…。暗闇には棚が巡らされ、主に陶器類が並べられているようだ。奥に新たな週刊誌棚を見つけるが、作業中のご老人の奥なので、詳しく見ることは出来なかった。すると突然「その壺はねぇ、高いよ」と話かけられたので「壺?」と返してしまう。「そう、いい壺だよ」「つ、壺ですか?」…俺は壺なんか見ていないのだ。すると「ありゃ?違う人だ」と照れ笑い。どうやら行き止まり通路を探索する先客と、取り違えてしまったようだ。こちらもエヘラと愛想笑い。それにしても、買う物が何もない…本当にない…週刊誌も「あいつとララバイ」も買うわけにはいかないのだ!と久々に何も買えずに、申し訳なく思いながらお店から脱出する。

だがやはり古本は買いたし!と降り始めてしまった雨の中、清澄白河&森下の古本屋さんを訪ね歩くが、不幸にもこの辺りは月曜が定休日であった…。仕方なく帰りに高円寺で途中下車し、「都丸書店」の『中通り』側外棚から、山と渓谷社「マタギ奇談/工藤隆雄」晶文社「東京の坂/中村雅夫」を計500円で購入する。
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2018年01月04日

1/4東京・椎名町 新「古書ますく堂」+「二人古本市」

昨年末に渡し損ねた本たちをカートで引き摺り、今日から仕事始めの「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に持ち込む。新年の挨拶を交わし、さらに本の査定をお願いしておき、そのまま池袋へと足を延ばす。西口側の長い地下道をテクテク歩き抜き、まずは「八勝堂書店」(2013/07/31参照)近くに顔を出す。ここも今日が仕事始めなのだが、と同時に二月末の閉店に向けて30%オフセールが始まっているのだ。表にはいつものシングルレコード台と文庫棚と単行本台に加え、CDとVHSのワゴンが出されているが、店内は通常営業時と変わらぬ模様。ついつい左壁棚初っ端の探偵小説棚に血走った視線を走らせてしまう。割引値でも手が届かぬ錚々たるレア本たちにため息をつき、フィルムアート社「キング・コングは死んだ/石上三登志」を280円で購入する。

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裏町をたどって椎名町方面にトボトボ向かい、同ビル一階の二軒隣りに引っ越した、店舗としては三代目となる「古書ますく堂」(2017/07/26参照)を初めて訪れる。今度のお店は、スナックや小料理屋の居抜きではなく、元ギターのリペア工房だったほぼがらんどうの空間である。店頭には無秩序に古書やビジュアル本が並び、ガラスサッシには店名垂幕やテレビ出演時のスナップや古本市のチラシ類が、目隠しのように貼り出されている。扉を引き開け中に入ると、中には取っ手が付いていない…自然に閉まるのを待つしかないようである。様々なタイプの本棚や、本棚として代用されているカラーボックス・ダンボール箱・プラケースによって取り巻かれた、ちょっと薄暗い空間である。右側の八百屋的島台の奥に「ますく堂」さんがどっかと座り、「いらっしゃぃ〜」とガハハ笑いで迎えてくれた。取り囲む本棚には、以前の店舗に並んでいたり積み上がっていたりしていたものがごちゃごちゃと収まっている。詩関連・短歌関連・本&古本&出版関連・漫画研究・日本文学・広島カープ・絵本・水木しげる・雑本・文庫本・手作りボールペン…そして左側の未整理本の山&箱に挟まれた平台には、新刊やミニコミ類が並べられている。神戸「トンカ書店」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」 p170参照)と大阪「本は人生のおやつです!!」(同「京阪神」 p72参照)による店内『二人古本市』(2017/12/13参照)ゾーンは、右側の八百屋的平台で開催されている。面陳と箱に分かれ、手前が「トンカ書店」で、奥が「本は人生のおやつです!!」。ともに基本は女性寄りであるのだが、妙に剛直で癖の強いところが、不可思議な魅力を生み出している。「トンカ」さんには探検や民謡やキッチュさが目につき、「本おやさん」では文学的快速球が目に留まる…ややっ、「本おや」さんの本には、すべてショップカードが挟み込み済みなのか。そしてこの台を前にして「ますく堂」さんは「今月は休まない!このフェアやってる間は、ちゃんと店を開ける!」と堂々宣言。こ、こんな頼もしい「ますく堂」さんを見るのは初めてだ。本がビシバシ売れれば追加もあり得るので、みなさま、寒い一月は椎名町の「古書ますく堂」へ!市は2/4まで続くので、終り頃にまた見に来ることにしよう。角川ホラー文庫「歯車〜石ノ森章太郎プレミアムコレクション〜/石ノ森章太郎」INAX「斎藤佳三 ドイツ表現主義建築・夢の交錯」日本評論社「金銀讀本/渡邉萬次郎」を計1300円で購入する。「金銀讀本」は、カバーはないが銀の紙にタイトル金文字で造本された昭和九年刊の特異な本。鉱物としての説明より、鉱山の説明がその多くを占め(アメリカのゴールドラッシュについても)、読物として単純に面白い。同出版社から読本シリーズは何冊も出されているが、実は古本としてのこの本は高値の一冊なのである。やった!
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2017年12月19日

12/19古本屋ツアー・イン・新保博久邸【第一章】

新保博久教授邸引越しお片づけ大作戦の、早くも第二回目を迎える。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と午前中のうちに教授邸に突撃し、本日の作業のメインを、同マンション内にあり教授が四つの部屋とその通路を占領している、併設トランクルームの整理に据える。廊下の奥にある鉄扉を開けると、真ん中に短い通路があり、さらに四つの鉄扉が向かい合っている…なんだか警察署の留置場みたいな雰囲気である。
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奇しくもミステリ本にはとてもピッタリのトランクルームと言えようか。各部屋内は二畳ほどだが、本棚がしっかりと立て込み、主に日本ミステリの文庫本を作家五十音順に収めているのだ。だが当然ここにある本も、京都に持って行く本・東京の倉庫にひとまず置いて行く本・必要の無い本に選別しなければならないのである。選別するには作業スペースが当然必要となる。そこでまず、通路に積み重なったダンボールを引き出し、通路中央に立つ大きなスチール棚の整理&解体をしなければならないのだ。そのスチール棚にも当然本が並んでいるので、まずは本を出して教授に選別してもらわねばならない…とにかく色々と本格作業前の前段階作業が多いミッションなのである。というわけで小野氏と教授と力を合わせ、三時間強を黙々バリバリ作業する。すると本が出てくるわ出てくるわ。扉外側の廊下にはたちまち結束本の山が築かれ、まるで古書会館の市会場のような光景になってしまった。
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だがこれでもまだ氷山の一角の一角といったところ。なんたって目算ではおよそ八万冊がこのフロア内に犇めいているらしいのだ。なのでスピーディーに作業を進め、本を次々選別処理していかないと、教授はいつまでも京都に引っ越せないことになってしまうのだ!トランクルーム内にしゃがみ込み、懸命にヒヨコのオス・メスを選別するように、文庫本を目的地別箱に仕分けている教授の背中に、ビビビビと盛大にエールを送っておく。そして通路の邪魔な物が消えたことにより、扉を開けられるようになった四部屋をチラリと観察。むぅ〜、戦前から現代まで日本ミステリが文庫を中心に美しく形作られている。コレクションと言うよりは、生きた資料的棚造りが為されているのだ。教授はあまり高い本は買わぬ派なのだが、それなのにこの充実度は目を瞠るものがある。ちゃんと島久平とか楠田匡介とか鷲尾三郎とか三橋一夫とかも並んでるんだもんな。後の値段を見ると、確かにほとんどが千円以下の値段で見つけたものばかりなので、目を丸くして感心し、見習わなければ!とさらに今後も古本探しに血道を上げることを、勝手に決意する。午後一時半には無事にスチール棚の解体まで漕ぎ着け、前回と同じくとんかつ昼食休憩に入る。お腹を満たした後教授宅に舞い戻り、これまた前回と同じくノンアルコールビールを振る舞われながら、次の作業として雑誌の選別処理に入る。これを済ませて雑誌をたくさん運びだせれば、奥の二部屋にわりと広めの教授の選別スペースが生まれるのだ。こちらは前回粗い仕分けはしておいたので、かなりスムーズに進む。そして午後五時半、別のトランクルームに運び込む本を盛林堂号に積み込み(その際、マンション前に積上げた本の山を、悲鳴を上げながら豪快に崩壊させる不覚をとる。入口付近が少し傾斜しているのに、まったく気付かなかったのだ…だが結束は崩れなかったので、まずは一安心。気をつけなければ)移動。車内では教授に牛乳飴と乳飲料を振る舞われる。二台の巨大台車で本を運び上げて、本日の作業は終了となった。これで後は、教授がひたすら邸内&トランクルーム内の本の選別を進めてくれれば、来年からは本を縛って運び出すという、本来の作業に入ることが出来るようになる。教授!地道な作業と思い切りに期待しておりますので、来年も引き続きよろしくお願いいたします!そして今回も厚かましく本日の作業の記念品にと、春陽文庫「消えた娘/三橋一夫」「売国奴/永瀬三吾」(初版カバーナシ。教授、50円で買ってる!)をいただき、ピョンピョン飛び跳ねて喜んでしまう。いやぁ、これだったら、いくらでも手伝いし続けていたいものだ。よし、この「売国奴」には、来週うかがうはずの某所にて、カバーのカラーコピーをお願いしてみよう!………つづく
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2017年12月18日

12/18東京・鶯谷 古書ドリス

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森下から隅田川を超えて鶯谷に移転して来た「古書ドリス」(2012/12/03参照)が、本日オープン初日を迎える。何はなくとも見に行かなければと、午前中の山手線に乗って駆け付ける。島型のホームに降り立てば、そこは青空の下の墓場の下の崖際である。南口への階段を上がり、橋状の通路を長く歩いて改札を抜けると、南北に架かった橋の中間にある小さなロータリーのある駅前となる。北に橋を下り、集合住宅&雑居ビル街の中へ入り込んで行く。途中の階段を下り、東に橋の下のコンクリトンネルを潜ってさらに北に進めば。巨大な『言問通り』に突き当たる。しばし信号待ちして横断歩道を渡り、すぐの『うぐいす通り』に歩を進め、さらに北へ。通りの最初に古い看板を掲げた酒屋やお寺があったりするが、後は現代的なビルが建ち並ぶぼんやりとした商店街である。そんな通りが終わろうとする東側マンション一階に、立派な古本屋さんが端然とオープンしていた。自動ドアから中に入ると、奥に向かって縦長く広がる空間である。左右両壁をしっかりした棚が覆い、奥へ延びて行く。手前のセンターには背中合わせの棚があり、途中一旦くびれるようになり、さらに奥の空間には左に帳場、中央に低めの棚台、そして右壁はガラスショウケースを含んでいる。左側の通路に進むと、壁には村上春樹・詩集・古書・古書詩集・怪談・奇談・幻想文学・稲垣足穂・中井英夫・種村季弘・日影丈吉・海外幻想文学・レコード・妖精・魔法・魔術・オカルト・SFが続き、向かいには哲学・思想・心理学・自然科学・音楽・精神などが収まっている。右側通路には、入口脇に絵本・児童文学・文庫本が集まり、壁棚は下段に大判のビジュアル本をズラズラ並べつつ海外文化・昭和モダン・落語・芸能・南方熊楠・博物学・絵葉書・寺山修司・アングラ・全集を上段に集めている。向かいには絵本・美術図録・アートブック・ファッション・セレクトコミック・諸星大二郎・上村一夫・水木しげるが並び、棚脇には少女・ゴシック・人形・ロリータゾーンが設けられている。奥のゾーンに進むと。帳場下には澁澤龍彦を核にフランス文学が固まり、中央にはタロットーカードとその関連書物を集めた島が造られている。右壁のガラスケースには当然の如くレアな本が収まっているのだが、その中にイナガキタルホの「第三半球物語」や「天体嗜好症」が混ざり込んでいるのを見つけ、独り静かな店内で心拍数を上昇させてしまう。さらにはCD&SF文庫棚が置かれ、奥に向かってアート&美術・映画の幅広いゾーンが展開し、帳場脇に曲がり込んだ棚には奢灞都館本や国書刊行会の新刊が暗い額を寄せ集めている。…むむむ、完璧!と言って良いほどのきめ細かい棚造りは必見である。すべてのジャンル、すべての本が“幻想”をキーワードにして、まるで日常から非日常の扉を開く鍵として機能してしまいそうな気になる、そんな魔法に瞬時に掛けられてしまうのである。こうなればもはや、お店自体がシュールレアリズムを現出させる装置のようである。つまりここは、街という日常から続く古本屋さんではなく、空間的にはつながっているが、精神的には街という現実から高貴に隔離された古本屋さんと言えるのかもしれない。いや、とにかくこの古本で出来た幻想タペストリーは、かなりの迫力なのである。値段はしっかり目が多いが、時に優しい値段も付けられているので、執念を持って見つけるべし。そんな優しい一冊を嬉しく掴んで帳場に向かい、店主・喜多氏と言葉を交わす。お店は前店舗より広くなったそうだが、ちょっとまだ持て余しているとのこと。引越し当初、ダンボール100箱くらいと見積もっていたら、結局300箱になってしまったこと(このことから、並ぶ本をざっと眺めて何冊か把握出来る古本屋的能力が、自分に欠けていることを確信。だからやっぱり、一冊ずつ数えるしかないと、気持ちを新たにしたそうである…)。鴬谷に移転して谷根千や上野が近くなり、新たな流れが生まれそうなことなどなど。それにしても、「D.BOOK」(2009/04/05参照)がいつの間にか姿を消して以来、古本屋無風地帯であった鶯谷に古本屋さんを開いてくれたことは、歓迎すべき事柄である。移転開店、おめでとうございます!學進書房「ユーモア中篇小説集 雑音横丁/城戸禮」を購入する。

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まさかドリスでこんな本を買うことになるとは。昭和二十二年の再版仙花紙本。鬼多作小説家・城戸禮のわりと初期作である。『サイレン夫人』『明るい仲間』を収録。傷みと汚れがあるため1500円であった。
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2017年12月14日

12/14古本屋ツアー・イン・新保博久邸【プレリュード】

「盛林堂書房」(2012/01/06参照)のお手伝いで、ミステリ評論家&乱歩研究の権威・新保博久氏(通称:新保教授)のお宅の片付けに同行する。実は寂しいことに、教授が来年早いうちに京都に帰京することになっているので、そこに照準を合わせた、超迅速な片付けを行わねばならないのである。もちろん「盛林堂」さんの最終的な目的は本の買取にあるのだが、そこに至るまでには、本が一杯のマンション四部屋の整理と、本がいっぱいの同マンショントランクルーム(四部屋+通路)の整理と、ご近所のトランクルーム大小二部屋の整理を行い、本を処分するものとしないものに選別し、縛り上げるスペースを作り出さないと、にっちもさっちも進まないのである。そこで今日のミッションは、マンション奥二部屋の整理を行い、作業スペースを作り出すこととなる。都内某所のマンション四階に上がり、教授に邸内に招き入れられる。うぉぅ、本が棚やティッシュ箱や本ケースに詰められそこかしこに積み上がり、これでもかと合理的に適確に組み合わされている。なので通路は激細で、本があらゆる角度で視界に入って来ても、それほどの圧を感じないのが、なんだか不思議なところである。…いや、決して整理されているわけではないので、独自の積上げ論法がそう擬態させているだけなのかもしれない…。午前十時五十分から作業を開始し、盛林堂・小野氏が切り込み隊長を務めて積み上がるものを掘り起こし、そこから出たものたちを私が新たに積上げつつ出たゴミをひたすら袋詰めして行く。本当にこれをただただ六時間余マシンのように繰り返し(途中、とんかつ昼食の休憩を挟み、戻ってから教授にノンアルコールビールを振る舞われたりする)、大量の献呈本&雑誌・書類・ゲラ・プルーフ・原稿・プラケース・ティッシュケース・本ケース・新聞・パンフレット・書簡・シュレッダー・i-pod shuffle・パソコン・洗濯ばさみ・3Dメガネ・コート・靴下・VHSビデオ・ウェストバッグ(何か入っていると思ったら、中にはもうひとつのウェストバッグが詰められていた!)・財布・手帳などと格闘する。小野氏はもはや掘削ドリルのようである。本は書評用の九十年代以降のものがほとんどだったが、途中古本地層から発掘されたアンティーク棚脇の乱歩評論本ゾーンには、『さすが教授!』と大いに感動する。まぁ本日の私は、本と言うより紙ゴミばかりに触れていたので、本格的な教授邸ツアー(トランクルーム含む)は次回訪問以降に行えればと思っている。そして夜になり、ダンボール十二箱を携え、ご近所のトランクルームへ移動。そこに箱を運び込んで積上げ、さらに次回以降の作業効率を考え、トランク内の整理にも手をつける。
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トランクルーム通路で作戦を練る教授と小野氏。実は整理用に新たにもう一部屋を借り、合計三部屋が教授のテリトリーとなっている。

結局色々終わったのは午後七時過ぎ。だがこれで、一応全貌の確認が終るとともに、作業スペースが確保出来たことになる。教授がちゃんと、二十ほどのゴミ袋を指定日に出してくれていればの話だが…。それにしても片付け作業していると、古本より資料関係の方に物凄いものが含まれており、時々手を止めてしまう。資料としての滅多に見られぬ生原稿コピー類や、有名人からの書簡、ミステリ関連本の企画やイベント企画など、現在進行形の生な資料がわんさかわんさか出て来るのだ。う〜んスゴイスゴイ。そして今日の作業の記念にと、かつて吉祥寺にあったミステリ書専門店「TRICK+TRAP」の書皮と、復刻版の「少年探偵団B・D・バッジ」「少年探偵手帳」をいただく。ちなみに、すべて古本山の中からの発掘品である。
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「TRICK+TRAP」の書皮は連続したシャーロック・ホームズのプロファイルがモチーフになっている!

そんな風に疲れ果てて家に帰ると、癒してくれるように嬉しいヤフオク落札本箱が届いていた。3100円で落とした、小栗虫太郎の戦後仙花紙本群である。だがその中には一冊、昭和十三年刊の裸本だが、不盡書院「爆撃鑑査寫眞七號」が含まれていたのだ!ぬぐぅ〜嬉しい!これだけがとにかく欲しかったのだ!このオリジナル本で、『爆撃鑑査寫眞七號』『金字塔四角に飛ぶ』『皇后の影法師』『破獄囚「禿げ鬘」』『屍體七十五歩にて死す』が読める日が来るなんて…うひょぉ〜〜〜〜うっ!
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2017年12月08日

12/8東京・下高井戸 SOLID DESIGN

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大変に冷える一日ではあったが、どうにか雨には降られずに、世田谷の赤堤に流れ着く。そして偶然にも、雑貨屋のようなお店の店先で、映画パンフレットが売られているのを目にしてしまう。駅からは南口に出て、踏切から『プラザ通り』→『日大通り』と変化する商店街を、南西に歩いて行く。ズンズン進んで、『松原高』が右手に現れる交差点で左手を見ると、マンション一階の牛乳屋さんの隣りに、そのお店はスタイリッシュに存在している。店頭には古着や雑貨やアンティーク類が並び、左端に件のパンフ木箱が置かれている。『古い映画パンフ』の札があり、一律500円となっている。だがこういう『古い』という文句は、すぐには鵜呑みには出来ない。確かに古いは古いが、八十年代のものだったりすると、思わずがっくりしてしまう。いや、八十年代ももはや三十〜四十年前…充分に古いのではあるが、それが価値を持つ古さであるかどうかは、また別問題なのである。そんなことをうっすら考えながら、五十冊ほど薄手のパンフが収まった箱に手を伸ばす。むむむむ、でもこれは本当に古いものが多い。ロマンス映画・ヤコペッティの残酷映画・SF映画、それに『バンビ』や『白雪姫』や『ジャングルブック』など、ディズニー映画の数々…映画会社の出していた冊子・「映画の友」・グレムリンのアメコミ・ロスのガイド一式・アメリカのマイナーアトラクション施設のお土産本一式・バレエ&演劇関連のパンフレット…どれも魅力的な品々である。だが値段は500円なので、ポンポンと買うわけにはいかない…などと思いながら冊子を繰っていると、ぬぉう!スゴいのが出てきた!1970年、東宝チャンピオンまつり『モスラ対ゴジラ』のパンフレットだ!やったぁ!こんな偶然流れ着いたところで、こんなエクセレントなパンフレットが、俺を待ってくれていたとは!さらに藤城清治の木馬座ファミリー劇場・プログラム「カエルのぼうけん」(有名キャラ・ケロヨンの舞台パンフである)を見つけて喜びを重ね、アクセサリー中心の厳かな店内で、計1000円で購入する。
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このパンフを入手出来たのは劇的に嬉しい。本来の『モスラ対ゴジラ』は1964年に製作上映されたものであるが、この1970年の『東宝チャンピオンまつり』で上映されたのは、その短縮編集版である。同時上映は『柔の星』『アタックNo.1 涙の世界選手権』『昆虫物語 みなしごハッチ』。なので中身はすっかりお子様仕様なのである。モスゴジ『ものがたり』の、「ゴジラはついにモスラの卵をみつけました。「これは、おいしそうなごちそうだ、ひさしぶりに卵やきでもたべよう」ゴジラは、ほうしゃのうを卵にはきかけました。」「ゴジラとモスラおやこのだいけっせんは、いつまでもつづきました。ゴジラがんばれ!モスラまけるな!さあ、どっちが勝つでしょう」などが、大いに泣かせてくれます。
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2017年11月25日

11/25『物故探偵作家慰霊祭』に涙する。

午後の早い時間に吉祥寺の北に流れ着いたところで、『成蹊大学』が近くにあることにはたと気付く。ならば、大学図書館で開催されている『小栗虫太郎〜PANDEMONIUMの扉を開く〜』を見に行かない手はない!調べてみると、通常は月〜金の公開だが、本日25日はギャラリートークがあるため、偶々公開しているようだ。黄金色の枯れ葉が舞い散るケヤキ並木を抜けて正門から構内に入り、警備室に図書館の場所を聞くと、すぐ左手に見えるガラス張りの矩形の建物と教えられる。階段を上がって入館用紙に記入を済ませ、入館証を首から下げてゲートを通過する。するとすぐ正面に円形の明るい吹き抜けがあり、そこに沿うようにして展示物を収めたガラスケースが並んでいた。ぐわぉ!『完全犯罪』の生原稿!力強く勢いのある文字だが、非常に読みやすい。こ、こ、『黒死館殺人事件』の書き損じ原稿に創作メモ!もはや米文字並に細かい『白蟻』原稿!推敲が激し過ぎて何が何だかわからない『成層圏魔城』原稿!おっ、先日いただいた「ぷろふいる昭和十一年七月号」に掲載されていた『愛嬢、愛息を左右に、カメラに入った小栗虫太郎氏』の生写真までも!などと思う存分偉大な探偵小説家の遺物を堪能する。中でも虚を突かれたのは、昭和二十二年十月二十一日に行われた『物故探偵作家慰霊祭』のモノクロスナップである。壇上端に乱歩が立ち、慰霊の立花が並ぶその上に、小酒井不木・渡邉温・平林初之輔・牧逸馬・濱尾四郎・夢野久作・松本泰・蘭郁二郎・甲賀三郎・井上良夫・田中早苗・大坂圭吉・小栗虫太郎の名が貼り出されている。敬称はすべて“君”が用いられている。まるで、質の高いアンソロジーの目次を見ているような豪華さが、切なさと虚しさに拍車を掛ける…。この展示は12/1(金)まで。
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その後吉祥寺まで出て、『吉祥寺パルコ』一階の『吉祥寺通』に面した、小さなガレージのような『ポップアップスペース』を覗き込むと、小さな古本イベント「TOKYO BOOK PARK KICHIJOJI」が開催中であった。
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「rythm_and_books」(2011/08/10参照)「一角文庫」「ハチマクラ」(2012/10/04参照)「東京くりから堂」(2009/10/29参照)が参加しているようだ。簀子のようであるが、お洒落なの木製のパレットを積み重ねて会場を形成しており、絵本・洋絵本・ビンテージ広告・お洒落紙物・駄玩具・サブカル・アート・アングラ・文学などが、統一感のあるディスプレイでキュートな小宇宙を作り出している。それらに魅せられ、さんざめく女子たちの間を縫い、「rythm_and_books」の棚からプレイガイドジャーナル社「ピープルズクロニクル」を購入する。この催しは12/3(日)までとなっている。
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2017年11月13日

11/13東京・早稲田 早稲田青空古本祭

珍しく午前のうちに早稲田に向かい、今回から「青空古本掘出市」(2012/05/19参照)から「青空古本祭」へと名称を変えた、『早稲田大学』構内・大隈重信像近くの11号館・10号館・9号館に囲まれた中庭的場所で開かれている古本市に向かう。ゆっくりとした学生の人波に乗って大学へたどり着き、色づいた銀杏並木を通過すると、まったく変化のない緑の杉並木に見下ろされた、巨大白テントの古本市にたどり着く。樹と空と校舎が高いので、まるで白テントはアスファルトに張り付いているような低さに見える。
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すでに多くの古本修羅影がテントの中で蠢いているようだ。そんな修羅場に突入しようと近づいて行くと、森英俊氏&彩古氏の二大古本神と擦れ違い、挨拶を交わす。時刻は午前十時半、早々の神の離脱である…もはやミステリ方面でめぼしいものは残っていないであろう…。案の定テントの中は賑わっており、最奥の帳場もすでにその忙しさがピークを迎えてしまっている。物凄い活気であるが、日陰のためかテント内の空気は冬の冷たさで、手をかじかませるほどである。各ワゴンを巡り、時に張り付き、時に背越しに覗き込み、時に首だけ人垣に差し入れたりして行く。「玄書房」の硬めの古書が素敵であるが、これは!と思った本はちゃんと値段が付けられているので、今回は残念ながらパス。その代わりに「古書現世」(2009/04/04参照)スペースの片隅に、先日向井氏から聞いた黒い本の一部(2017/11/06参照)、サトウハチロー・石黒敬七などが固まっているのを見付け、裸本で安値なので一冊抜き取る。結局二十分ほど滞在し、求龍堂「二笑亭綺譚 五〇年目の再訪記/式場隆三郎・藤森照信・赤瀬川原平・式場隆成・岸武臣」六藝社「風流記/石黒敬七」(裸本)審美社「二人の友/小山清」(函ナシ)を計1200円で購入する。古本市チラシの裏に描かれた大学構内地図を参考にし、丘の上の西門から構外に出て、そのまま『早稲田古本街』をブラブラ散策。すると「飯島書店」(2010/04/14参照)店頭100均文庫ワゴンで、正進社名作文庫「虫のいろいろ・聖ヨハネ病院にて/尾崎一雄・上林曉」(収録作は、尾崎が『虫のいろいろ』『やせた雄鶏』『小鳥の声』『華燭の日』『退職の願い』、上林が『聖ヨハネ病院にて』『小便小僧』『薔薇盗人』)を見つけたので、そのまま地下鉄に乗って帰らずに良かった!と思い購入する。

さて、来る11/19(日)の、今年最後の「みちくさ市」に、いつもの如く勇んで参加いたします。家中から選びつつ引っかき集めた良書・珍書を並べていますので、ぜひとも雑司が谷でお会いいたしましょう!

鬼子母神通り みちくさ市
●開催日時
2017年11月19日(日)11:00〜16:00
雨天中止です。
・当日8:00に天候による開催の有無を決定します
・みちくさ市本部 携帯電話:090-8720-4241
●会場
雑司が谷・鬼子母神通り
東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺
東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
●お問合わせ
michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
●主催
鬼子母神通り商店睦会  運営/わめぞ http://d.hatena.ne.jp/wamezo/
協賛/雑司が谷地域文化創造館
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2017年10月29日

10/29東京・南砂町 くまねこ堂

大雨の神保町である。「神田古本まつり」(2008/10/28参照)の各ワゴンは、雨粒を一滴たりとも侵入させまじ!と厳重にブルーシートで梱包されている。それはまるで、青い巨人のソファが並んでいるような、シュールな寂しい光景であった。
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「神田古書センター」二階の「夢野書店」(2015/03/13参照)にテクテク向かい、店内で古本神・森英俊氏と合流する。これから南砂町にある、催事とネット販売の専門店「くまねこ堂」の事務所&倉庫探訪に向かうのである。先日の神田明神「古本感謝祭」(2017/10/04参照)で出店していた「くまねこ堂」さんに、森氏が巧みに取り次いでいてくれたのである。おぉ、我が古本メフィストフェレスよ、ありがとう!とまずは集英社明星文庫「二人のゴッドファーザー マーロン・ブランド アル・パチーノ」豊年社「接吻市場/邦枝完二」を古本まつり特別割引の計240円で購入し、地下鉄で東京の東へと向かう。途中愚かにも逆方向の地下鉄に乗り換えたりしてしまいながら、およそ四十分後に集合住宅で構成された町に到着する。氏の長いコンパスに合わせるように、必死に早足で、北に向かって歩いていると「「たなべ書店」(2011/02/25参照)、一応寄って行きますか」と、今まさに古本屋に向かっていると言うのに、氏が古本神たる所以を発揮される。一刻も早く「くまねこ堂」が見たいので、『仕方ないなぁ』と思いつつもつられて店内に進み、左通路奥の古書コーナーにへばり付いてしまう。だから、ここでとても素晴らしい一冊に出会うとは、微塵も思っていなかったのである。氏に続くようにして棚に視線を走らせていると、見たこともない一冊の本にグイッと惹き付けられる。磯部甲陽堂「幽霊探訪/大窪逸人」、大正五年の本である。それなのに新刊のように美しい…パラパラと繙いてみると、軍人のM中尉(もしくは少尉)が、幽霊話を収集する五話を収録している。その序文に目を向けると、作者の大窪逸人は若き日の山中峯太郎であることが判明!うぉっ!こりゃ凄い!ぜひとも買わなければ!と値段を見ると驚愕の300円!嬉しい、嬉しいよ〜と心中むせび泣きながら購入する。

お店に引き入れてくれた氏に掌返しで感謝しながら、多少迷いつつ「くまねこ堂」に到着する。氏が来意を告げ中に招き入れられると、そこは数人のスタッフが静かに立ち働く完全なる事務所であった。古本に囲まれた倉庫的事務所を勝手に想像していたので、仕事場的空間に多少面食らう。すぐに「くまねこ堂」さんが姿を現し、椅子を薦められお茶を薦められ、しばし歓談する。「くまねこ堂」さんは、古本以外にも骨董や玩具や絵画も扱う、オールマイティな事務所店である。お店の生命線である買取が、月に三十以上あると聞き、さらに面食らう。ブログにアップされる、時にレアミステリも混ざり込む潤沢な買取品は、その精力的活動の賜物であったか。その買取品の一部でもある、事務所内に飾られた石森章太郎&宮崎駿色紙や手塚治虫原画に目を奪われていると、森氏が付録漫画を蒐集しているのを聞き、早速奥の倉庫から四本ほどの付録漫画束が現れてしまった。買い取ってからもう二年ほど放置していたそうだが、その背を見て森氏がゾーン(お目当ての本に出会った瞬間、周りが目に入らなくなり古本だけにひたすら集中するモード)に入ってしまう。紐を解き、一冊一冊吟味し、さらにはi-padで所蔵本を検索し照らし合わせて行く…こうなると長い、長いのである。氏が見終わった付録本を回してもらい、興味ある本を一応選り分けたりもするが、いつしか飽きてしまったので、こちらは一足先に倉庫を見せてもらうことにする。すると森氏は手を止め、「私も」と付いて来てしまった…あぁ、身勝手な古本メフィストフェレスよ!サッシ扉を開けて入り込んだ倉庫は、相当に広い、手前に本棚が大量に並び、六本の通路を造り出し、奥は主に本を詰めたプラケースと結束本が大量に積み上がる構成。倉庫内に入り込んですぐ右の棚には、店主が買取して嬉しかった、愛でるに値する本が集められている。水木しげるの戦記漫画オリジナル・手塚古書漫画・北園克衛詩集・横溝正史レア本(あぁっ、こんな絵の「青髪鬼」見たことがない!)
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・「墓場鬼太郎」・貸本漫画…う〜ん、これは凄い。そして奥に進んで色々探ってみると、海野十三の古い全集や、「火星魔」の箱付き本、付録本「ラドン」、創元推理文庫の白帯ズラリ、竹久夢二大正オリジナル本、「のらくろ」戦前本、などが普通に見つかり、別に買えるわけでもないのだが、とにかく大興奮してしまう。古本以外にもゲームウオッチ・少年サイボーグ・古銭(金銀貨含む)・ナチス勲章・ライダーカードなどなどが集められ、結構何処を見ても楽しめる質の高い倉庫であるのを実感する。
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いつまでも興奮し、いつまでも滞留し、いつまでも掘り返していたいのだが、実はこの後二件の買取が入っているそうなので、泣く泣く断念する。それでも倉庫内から手の出せそうな二冊を握り締め、充実の探索を終了。隣りの事務所に戻り、再び付録漫画の吟味に入る森氏を尻目に、計四冊の精算をお願いする。そのうちの裸本の一冊は値付に時間を要するとのことで、ひとまずお預け、その他の三冊、小学館 小学五年生昭和三十二年九月号付録「怪魚のひみつ」(生きた化石シーラカンスを題材にした探偵漫画)集英社 小学五年生昭和三十三年三月号付録「まぼろしの衛星/三木一楽」(森氏に「面白いですよ」と勧められたので)愛育社「都市覆滅團/野村胡堂」(多少傷んでいるが、欲しかった読みたかった一冊!)を明らかにサービス価格の計二千円で購入する。帰りは、買取出発ついでに車で駅まで送っていただくことに。そのまま買取に同行したい気分であったが、それはさすがに叶わぬことなので、おとなしく本日の嬉しい獲物を鞄に秘し、氏と本日の感想戦を行いながら再び地下鉄で東京の西へと戻る。

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と言うわけで、とても嬉しい本日の獲物である。無条件にどひゃっほうである!「幽霊探訪」はカバー付きの本で、カバーは柳に火の玉がじゃれつく絵だが、表紙は花の横で裸の女が長い髪を梳る絵となっている。いやぁ、古本神と行動をともにすると、やはり嬉しい本に出会えます。次回は何処に誘ってくれるのやら…。
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2017年10月18日

10/18東京・中野 MANDARAKEなんや

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しばらく三つの仕事に、身を引き裂かれるように苛まれていたが、本日正午過ぎにそのうちの二つに決着を着け(ひとつは古本が報酬の盛林堂さんのお仕事。この後何事もなければ、近々楽しい何かが出るはずです…)、休む暇なく先日の続きとばかり過去のゲーム攻略本をカートに積上げ、ゴロゴロと外出する。向かうは『中野ブロードウェイ』。まずは長いエスカレーターで三階まで一気に上がり、「MANDARAKE買取処」で再び攻略本を買い取ってもらう。「GYARAXY」のリーダーに「あっ、この前の方ですね」(2017/10/11参照)と言われつつ素早く査定される。今回大物は一冊だけで、四十冊ほどが100〜200円の値段となる。と言うわけで軽く懐が潤ったので、四階に上がって「海馬」(2015/02/06参照)へ。先週見たばかりなので、それほどの変化は感じられなかったが、通路の百均棚から三冊を抜き取る。富士屋書店「きしゃのたび/木村定男画」(落書きアリ)松和書房「講談と実話 昭和二十三年十月號」博文閣「別冊 實話と讀物 夏の傑作讀切集」(表紙・扉は志村立美。長田幹彦『怪談讀物 油屋おせん』香山滋『怪奇小説 壺の中の女』など掲載)を計324円で購入する。ここから南に踵を返し、セル画ショウウィンドウ前を過ぎ。シャッターに挟まれたような狭い通路に入り込む。おぉ!今日はシャッターが閉まっている「ワタナベ古書」(2008/08/28参照)の隣りに、確かに小さい怪し気な新店がオープンしている。これでも「MANDARAKE」の仲間なのか?と戸惑うほど、それほど手が入っていない居抜き感とチープさが漂っている。もちろん扉はなく、広さは「ワタナベ古書」と同等。つげ&水木ポスターパネルや昭和アイドルポスターが所々に下げられ、壁際にはカゴ棚や飾り棚、中央にはゴチャリとした飾り棚、右奥に横長ガラスケースがあり、左奥には縦長正面ガラスなしガラスケースが置かれ、その脇にピンク色の服を来た青年が「いらっしゃいませ」と立っている。商品として置かれているのは、ポスター類・フィギュア・駄玩具・お面・美少女コミック・一般コミック・VHSビデオ・小ブリキ玩具・人形類・週刊誌などなど、ジャンルを超え過ぎた物たちが集っている…なんだか、「MANDARAKE」各店舗…いや、『中野ブロードウェイ』全店舗の、吹き溜まりのような雰囲気…風がここから起こるのではなく、様々な風がこの場所に吹き込んでいるのであろうか。古本も確かにあるにはあるが、私には手の出せないものばかりである。お店の性格をつかみ切れずにフワフワしていると、ピンク色の青年が「何かお探しですか?」と笑顔で話しかけて来た。聞けばこの店舗の商品には値札が付いておらず、すべては店員さんとお客の会話で決められて行く、けったいなシステムが採用されているそうである。しかも店員さんは日替わりなので、来店する度にお店のカラーが変化するらしい。ピンク色の青年は同人誌を得意ジャンルにしており、今日は同人誌箱を店内に設置していた。「何がお好きなんですか?」と聞かれたので古本である旨返答すると、「あ〜、今日は、ないですねぇ…では海馬の者が店員を務める時に来ていただければ、お気に入りの古書が並んでいるかもしれません」と勧められる。結局古本は買えなかったが、わりと楽しく会話し、他の「MANDARAKE」店舗に比べ、時の流れが別世界のように異様に鈍いひと時を過ごす。「またどうぞ〜」の声に送られ、二階の「古書うつつ」(2008/06/18参照)へ。店頭100均が秦恒平祭になっているのを目撃してから、店内で朝日新聞社「アサヒ相談室 読書/中島健藏」秋田書店 世界の名作推理全集「黄色いへやの秘密/ルルー原作 山村正夫訳」を計400円で購入する。そしてすっかり日が暮れて、冬のような冷たい風が吹き始めた阿佐ヶ谷では「ネオ書房」(2010/02/09参照)で角川書店「朝の歌〈中原中也傳〉/大岡昇平」を50円で購入し、安い古本ばかり購って家に帰り着くこととなる。
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2017年10月15日

10/15東京・千歳船橋 eco BOOK千歳船橋店

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日曜日なのに、仕事で千歳船橋にて缶詰気味。だが少し待ち時間が出来たのを幸いとし、屋根波の低い雨の住宅街を、ビニール傘を頭上に差し掛けて、ちょっとだけ散歩してみる。以前はこの地にも二軒の古本屋さんがあったのだが(2009/03/19&2015/03/02参照)、今は一軒もない寂しい状態。それでも何処かに古本の影はないかと、目を凝らしながら濡れたアスファルトの上を滑って行く。インパクト大な名である『森繁通り』をテクテク…むっ、駅から200mほど北に来た左手に、リサイクル系チェーン古本屋の「eco BOOK」があるじゃないか。茶色い古書狂いの心をつかむ何かがあるとは思えぬが、万が一何かあるかもしれないし、少し古本で心を潤しておこうと入店する。するとお店の奥から、子供たちの激しい歓声が響いて来る…その激しいやり取りからして、バトル系カードゲーム大会が開かれているのだろう。古本はほぼお店の前半に集中。右端がコミック・特価文庫・社会雑学文庫通路。真ん中が時代劇文庫・国内文庫通路。そして左端は黒い暖簾の掛かった完全なるアダルト通路となっている。右端通路を右に折れ曲がると、通り側壁棚に新書や単行本類が少しだけ集められている。古本以外にもバーゲン本が紛れている。入る前からわかっていたが、古い本など一切なく、近年出た本の古本ばかりである。値段は定価の半額よりちょっとだけ上で、精算時には表示価格に消費税がプラスされる。雑学文庫コーナーには新しめのちくま文庫がちょいちょい含まれているので、少し見応えあり。河出文庫「怪異な話 本朝不思議物語/志村有弘編」を購入したところで、少しだけ古本世界に触れたことに充足感を覚えて、短い散歩を切り上げ仕事場に帰還する。
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2017年10月04日

10/4東京・御茶ノ水 古本感謝祭

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聖橋直下のホームに降車し、階段を上がって『聖橋口』の改札を抜ける。ここから「三進堂書店」(2009/04/07参照)を経て、駿河台下へ流れ落ちて行くのが、いつもの尋常なコース採りである。だが今日は違う。徐に東に向かい、長寿命化工事(本当にこう書かれた横断幕が掛かっている)真っ最中の聖橋を渡って、線路と神田川を越える…まさか古本を買うために、橋を渡る日が来るとは…。踏みつぶされた銀杏の香しさに鼻をくすぐられながら、やがて『湯島聖堂前交差点』。少し坂になった『国道17号』を南東に下れば、すぐさま甘酒で有名な『天野屋』とともに、巨大な神田明神の鳥居が姿を現す。門前ビル通りの坂をスタスタ北東に上がると、豪奢で朱が眩しい『随身門』の脇には「10月4日 古書の日 古本感謝祭」の立看板が、堂々と誇らしく屹立していた。本日一日限りの五店が参加する古本市+200均&500均本販売が開かれているのである。午後には古本に感謝を捧げる『古本感謝のお祓い』も行われる。門を潜り石畳の境内に入り込むと、広い参道と広い空はいつも通りで、右側に古本ワゴン島が幟をはためかせて縦長に展開している。一番手前が参加店ワゴンで、奥に向かって500均島・200均島と続く。平日午前中だと言うのに、すでにしっかりとお客さんが群がっているのに驚いてしまう。曇りがちの秋空の下で、ちょっと冷たい風に吹かれながら、さらに将門公に見守られ、ゆっくりと幸せに古本を眺めつつ、実に多くの人と挨拶を交わす。「さすらいの十年展」を開いているからこその交流であろう。結局古本は「竹岡書店」のワゴンから500円の北冬書房「死風街/かわぐちかいじ」を買うだけに留まる。二十分ほどで神田明神を離れ、再び橋を渡って今度は尋常に神保町入りする。「田村書店」(2010/12/21参照)では600円の雄山閣「白山三業沿革史」を、釣り銭切れというので一時本を預け、慌てて『すずらん通り』のコンビニでチョコを買い、崩してきた百円玉で購入する。「日本書房」(2011/08/24参照)では背が傷んではいるが、500円で金星堂 先驅藝術叢書1「海戰/獨逸 ゲエリング作 日本 伊藤武雄譯」を購入。まさかこんな本に店頭で出会えるとは!さすが「日本書房」!と大いにお店を讃えたくなる一冊である。

一旦家に戻って昼食を摂った後、結構大量の本を抱えて西荻窪入りし、「盛林堂書房」(2012/010/06参照)内の「フォニャルフ」棚の大幅入れ替えを行う。三段の古本棚がわりとリフレッシュしましたので、お近くにお越しの際はぜひともお立ち寄り下さい!中央公論社「赤ちゃんはどこからくるの?/S・M・グルェンベルグ 村岡花子訳」を100円で購入する。
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というわけで本日の嬉しい嬉しい収穫はこの二冊である。「海戰」は大正十三年刊の表現派戯曲で、『築地小劇場』の第一回目の上演演目としても有名である。後見返しには「天牛書店」の古書店ラベルあり。凄く嬉しいのだが、あぁ…巻末の広告に載っている“未来派戯曲”「ロボット/カーレル・チヤペツク」と「電氣人形/マリネツツイ」の威力の凄まじさたるや…い、いつの日か同様に安値でこの手に…。「赤ちゃんはどこからくるの?」は昭和三十年刊の性教育絵物語である。カバー裏にはこの本の使い方などの両親への言葉が刷られており、本文にはすべてのことが分かり易く丁寧に隠すことなく説明されている。挿絵は原書のものではなく、日本人が忠実に模写したものを掲載。そのためかバタ臭さ+柔らかさが混じり合う、不思議で懐かしい味わいの紙面が展開して行く。その後、あすなろ書房から何度か復刊されているが、この初刊本とは表紙や挿絵が大きく異なっている。
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2017年10月02日

10/2東京・豪徳寺 nuibooks

昨日は「LOFT9 BOOK FES.2017」に参加。奥のトークスペースから、タブレット純の情念が籠ったリハーサルの歌声が流れる状況で古本フリマはスタート。無事に五時間を過ごし四十五冊を売り上げることに成功する。会場にお越しのみなさま、本を買ってくれたみなさま、販売で袖すり合ったみなさま、LOFT9のみなさま、わめぞのみなさま、ありがとうございました。ここぞとばかりに「さすらいの十年展」のチラシを配りまくったりしたのだが、すでに初日に観覧していただいた奇特な方が何人も出現し、感謝感激する。そして本日は袖すり合ったフリマ仲間の「つぐみ文庫」さんからのタレコミを基に行動を開始する。

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一つしかない高架下の改札を抜けて北に向かうと、左には踏切と東急世田谷線山下駅の一部が見えている。そのまま商店街に入り込み、道なりに北へ。山下駅へ向かう小さな商店街をやり過ごし、次の脇道で西北へ向かう。途端に深まる住宅地の気配を顧みず、ぐんぐん進んで行くと、前方にはちょっとだけ土手のように高くなった世田谷線の『山下1号踏切』が見えて来る。その二十メートルほど手前の、接骨院が入る白いアパート的集合住宅の角に、青白ダンダラの日除けが架かったお店があるではないか。近づくとこれが、つい昨日オープンした出来立てホヤホヤの新刊+古本+雑貨の小さなお店であった。入口脇には絵葉書の回転ラックが置かれ、ウィンドウ前には小さな文庫中心の100均台が出されている。少し高くなった店内に入り、年季の入った木床を踏み締めると、右奥の帳場前では通りかかった近所のおばちゃんが、開店を言祝いでいる真っ最中であった。帳場に立つのは満面の笑みから開店の嬉しさが弾け出している女性である。店内に流れているのはシャンソン(何処かで聴き覚えがあるなと記憶の底を探ったら、佳作NHK BSドラマ「薔薇の殺意〜虚無への供物」の最終回で、深津絵里のモノローグに重なる歌であったのを思い出す)。その帳場前の右壁沿いには児童文学と絵本棚が置かれているが、これはどうやら新刊らしい。中央には雑貨とともに真っ赤なタイプライターの置かれたテーブル。そして左壁と帳場左横に一番大きな本棚が置かれ、本&本屋系新刊・古本少女漫画&その周辺・古本新書・古本海外小説・暮し系新刊・新刊猫関連本・洋雑貨などが並んで行く。新刊&雑貨の方が品揃えと方向性がしっかりしており、古本はちょっと少なく少女漫画関連以外はまだまだ未知数である。だが、古本はとても安い!というわけでBankART1929「大野一雄 九十七歳の履歴書」を選んでレジに差し出すと、「ありがとうございます」と、一段と笑顔の度合いがアップする。純粋な古本屋さんではなく、古本も扱う小さく洒落たお店であるが、すでに街に小さな潤いを与えている模様。開店おめでとうございます。

この後は駅の南側に出て「靖文堂書店」(2011/09/06参照)に飛び込む。アルス「日本脱出記/大杉栄」がわりと良い状態で200円!口絵にはフランス追放状とともに、帰国後すぐに愛娘魔子を膝に乗せる写真が掲載されている。
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あぁ、大杉がパリで投獄された時に、魔子に送ろうとした電文の一部が、頭蓋に自動的に閃いてしまう!『おみやげどっさり、うんとこしよ お菓子におべべにキスにキス 踊って待てよ 待てよ、魔子、魔子』。裏側見返しには「巌南堂書店」の緑のラベルが貼り付いている。昭和四十七年十月の『神田古書店地図帖』で調べてみると、『神保町交差点』西側の『靖国通り』北側にあったお店で(今この辺りに路面店は皆無である)、取扱分野は『法経書歴史地方史料専門店』となっている。
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2017年09月12日

9/12東京・国立 丸信リサイクルショップ国立西店

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今日も国立に流れ着くが、だいぶ西寄りのほぼ立川との中間地点である。すでに空は夕暮れになるべくその色を、刻一刻と変えつつある。そして目の前には、三階建てのビルをお店とした、大きなリサイクルショップがあった…古本がありそうな予感…。駅からは南口に出て、中央線高架沿いを西にテクテクテクテク歩き詰め、『国立八小』の交差点を南へ。そして三本目の『国立音大附小』手前を再び西へ。500m弱進めば、スーパーに向かい合った左手に『激安販売』と看板に大きく書かれたお店を発見出来るだろう。洗濯機や冷蔵庫が並ぶ店頭から店内に進むと、家具や日用道具系が集まっている。たくさんいる定員さんの「いらっしゃいませ」を浴びるようにして、レジのさらに奥へ。すると右手に三段ボックスラックに、見事古本が入れられているのを発見!興奮しながら手を伸ばすと、和本・学術古書・美術図録・アメコミ・軍事系雑誌などである。むぅ〜、めぼしい本は見当たらないなぁ…唯一、安野光雅の1950〜1970年代の画集に食指が動くが、値段はしっかりめの千円が付けられていた。あきらめて棚に戻し、一旦店頭に出て右端の階段から、アンティーク&玩具&古道具が集まるらしい三階フロアを目指す。静かにゆっくり長い階段を上がると、そこには一階の半分ほどの店舗空間が広がっている。アンティーク・古雑貨・DVD・レコード・ゲーム・コミック・軍物関連…むっ、古本も少しだけあるじゃないか。写真家ユージン・スミスの図録もあるが、これも千円か…と色々諦めかけていると、軍物棚の下段に、四角い缶に詰められた500均の折り畳まれた地図を発見する。『明治時代から昭和の地図がたくさん!』と書かれているが、多くは国土地理院の地形図っぽい。だが、確かに古い戦前のものが多いな…と丁寧に探って行くと、おぉ!日本統治下の京城府の地図を発見!これが500円なら、大しためっけものだ!と己を褒めそやし、中央のレジでそそくさと精算する。十字屋(京城の地図屋である)「京城府管内圖」(昭和十三年五月五日発行、五萬分ノ一。裏は「仁川畧圖」一萬分ノ一)を購入する。

中央線沿いの屋根波を飲み込み、ビルの上だけに黄金の光が当たる、都会特有のマジックアワーに見蕩れながら帰宅する。そして買って来た地図を早速取り出し広げ、それに加えて韓国で出版された「京城の日本語探偵作品集」を古本タワーの中から探し出す。この本は、統治下当時に京城で出版されていた、日本語の雑誌に掲載されていた探偵小説を、複写復刻した探偵小説集なのである。もちろん中には東京や外国が舞台のものもあるのだが、これで京城を舞台とする小説は臨場感たっぷりに楽しめるはず!と期待に胸を膨らませ、地図と本に笑みを浮かべながら目を落とす。
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2017年09月01日

9/1東京・東京 TRAVELLER'S FACTORY

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今朝届いた、書皮狂の帰山健一氏が発信するメルマガ『本棚の溜息』で、東京駅のお店で古本が売られているのを知る。なので中野で所用を済ませた後、中央線で一直線に東京駅へ向かう。三階のホームから長いエスカレーターを下り、さらに地下一階へと向かい、『丸の内地下北口改札』を抜ける。すると直ぐ右手に、落ち着いた色合いの木材とガラスと花崗岩パネルで形作られた、シックでお洒落なミニ地下商店街が現れる。フラフラと近づいて行くと、手前右手が件の目指すお店であった。主に“旅”をイメージした統一感のある文房具類や雑貨を扱っているようだ。古本はレジ横の右壁奥隅に固まっているのだが、その棚が余りにも独特なので、つい笑顔が綻んでしまった。壁に錆びたレール二本と枕木が打ち付けられ、その上に本を並べた棚が貨車のように連なっているのだ。線路の幅は五十センチもないので、かなりの狭軌と言えよう。こんな素敵にやり過ぎたディスプレイは、「古書 赤いドリル」(2010/06/23参照)の旧店舗内にあった、侘しい昭和の街路を再現するための黒電柱と笠外灯以来ではないだろうか…。九台の貨車には、単行本と文庫本がほぼ交互に並んでおり、ヴォネガット・ブコウスキー・ブローディガン・シェパード・植草甚一・片岡義男・旅・紀行・旅情・自然・東京などが並び、透明感のある選書が為されている。文庫は300円〜600円くらいで、単行本も手頃な価格設定である(中にはプレミア値あり)。店内には若いお客が次々と吸い込まれ、それを若くお洒落な男女店員が接客して行く…なかなか人気のお店なのだな。岩波文庫「東京日記 他六編/内田百閨vを購入する。「八重洲古書館」(2008/07/03&2012/07/27参照)と「R.S.BOOKS」(2012/11/19参照)が閉店して以来、潰えていた東京駅の古本の灯りが、また復活する日が来るとは!小さいながらも、ここで古本を買って旅立てば、その旅は一層滋味深くなり、また有意義に暇も潰せることになるであろう!

帰りに高円寺で途中下車し「藍書店」(2014/01/14参照)の外壁大棚にへばりつくと、最下段に背のない大量の映画パンフが詰め込まれているのに気付く。その背群の所々に、明らかに紙質の違う古めのパンフが混ざり込んでいるので(とは言っても七十年代)、しゃがみ込んで一冊一冊夢中になって確認する。気になるものは取り出して地面に積上げて行くと、たちまち十冊以上になってしまったので、そこからさらに厳選。「アメリカングラフィティ」「デルス・ウザーラ」「フレンチ・コネクション」(これが一番嬉しい!)「オリエント急行殺人事件」「地球最後の男オメガマン」を計500円で購入する。

そして大阪「梅田蔦屋書店」での「夏の古書市2017」も、早いもので残すところ今日も含めて後三日!未見の方は、どうかカフェの壁面に並ぶ奇妙なセレクトの古本群を眺めに、ご足労ですが九階まで足を運んで下さいませ!

そしてさらに九月の「みちくさ市」にも大はしゃぎで出店いたしますので、9/17のもはや秋となる日曜日に、古本を介してお会いいたしましょう!
『鬼子母神通り みちくさ市』
■2017年9月17日(日)11:00〜16:00(雨天中止)
※当日8:00に天候による開催の有無を決定します
※みちくさ市本部 携帯電話:090-8720-4241
■雑司が谷・鬼子母神通り 東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺 東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
■お問合わせ
michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
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2017年08月27日

8/27東京・吉祥寺 善行堂in夏葉社

京都・吉田山の麓の古本屋さん「古書 善行堂」(2012/01/16参照)が、様々なイベントや上梓した「埴原一亟 古本小説集」出版に合わせて上京。さらにそれに合わせて本日限りの限定店舗が、吉祥寺の『夏葉社』にオープンするので、開店時間の正午前に会社前に駆け付ける。するとすでにそこには、古本修羅&古本神の十人ほどの列が出来上がっていた。皆買う気満々である。ガラスウィンドウの向こうには、帳場にスタンバイする洒落た派手なシャツを纏った山本善行氏と、忙しく開店準備に勤しむ夏葉社・島田潤一郎氏の影がひらめいている。ほどなくして開店時間を迎え、善行氏自らがドアを開き、待ちかねた皆を店内に招き入れてくれる。たちまち右壁棚四本に収まったダンボール十二箱分の厳選古本が、櫛の歯が欠けるように抜かれまくって行く…。それを目の当たりにして、遅れをとってなるものかと、懸命に皆の背後から棚に熱い視線を注ぐ。そんな必死過ぎる姿勢が功を奏したのか、まず憧れの本を一冊掴むのに成功し、感激するとともにホッと一息。するとその後も、思わぬ本を手に出来て、まさに京都の「善行堂」にいる思いを、この胸に掻き抱く。棚を懸命に二度チェックした後、新刊の「埴原一亟 古本小説集」も手にして精算してもらうべく善行氏の前に立つ。黒白書房「黄色い犬/ジョルジュ・シムノン」(いつでも憧れの黒白書房の世界探偵傑作叢書の一冊。この山下謙一装幀の、控え目な表紙の黄色い犬がとにかく可愛過ぎる!)柳香書院「矢の家/A・E・メースン」(再版だが函付きで500円!)三一書房「恐怖幻想映画論 映像の魔術師たち/石崎浩一郎」を計3000円で購入する。いや、ちゃんと時間通りに来た甲斐がありました。もうこれから、月に一度開いてもらえれば言うことありませんな。
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その後は都内某所に移動して、岡崎武志氏主催の、美味しい料理とお酒とともにお宝映像を鑑賞する『ネギシアター』に参加。『本の家』(吹き抜けの居間も台所も廊下も本棚でぐるり埋め尽くされている)として知られるNEGI氏邸がその舞台。本に関わる様々な人が集う中、手料理を振る舞われながら荒井由美がホストを務めた幻とも言えるテレビ番組『遠くへ行きたい』・東映アニメ映画『わんわん忠臣蔵』・五七五の文字に青春を賭ける『俳句甲子園』を鑑賞する。そんな風にお酒を飲み続けて五時間…案の定すっかり酔っ払ってしまう。あ!そういえばNEGIさんから、家の中から発掘された「天牛書店」のダンボール箱を貰うのをすっかり忘れていた。仕方ない、次回『ネギシアター』まで保管しといてもらうとしよう。
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写真は『わんわん忠臣蔵』を食い入るように鑑賞中の荻原魚雷氏の後姿である。
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2017年08月13日

8/13東京・新宿 花園神社骨董市

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午前七時前の新宿駅東口駅頭は、爽やかな朝の光に包まれながらも、どこか饐えた匂いを漂わせ、夜を街で明かした疲れた顔の人たちが、数少なく帰路に着いている。鳩が路上にゴミを漁り、『靖国通り』にはタクシーを捕まえるために、間隔を置いて手を挙げる人々が目に留まる。ようやく長い夜が終りを告げ、朝に入れ替わり、新たな一日が始まろうとしているのだ。そんな街中をヒタヒタと影のように歩き、『靖国通り』沿いの『新宿五丁目交差点』が目前に近づいた、ビルの谷間の『花園神社』参道前に立つ。その狭い入口両脇には『骨董市』の幟が、頼もしくはためいている。薄暗い参道に踏み込むと、すぐに両側に骨董露店が並び始める。だが、午前六時からのスタートなのに、まだ準備中のお店が四分の一ほど見受けられる。骨董市には、なるべく開始時間に駆け付けるのが良いそうである(もしくはお店の常連で可能なら、もっと早く準備時間中から顔を出し、品定めが行えることも…)。だが余りに早過ぎるとお店が始まっていないことも多いので、早く来て、なるべく長く市に腰を据えて、次第に開店して行くお店も徹底的にチェックするのが、効率の良いパトロール方法かもしれない…(もちろん達人や常連さんは、お店の市での大体の開店時間を熟知しているのだろう)。おっ!早速入って数歩の右手に、紙物&古本を二十ほどのダンボール箱に収めたお店があるではないか!箱横のテントの下では、常連さんたちが車座になり、絵葉書や手紙の念入りな品定めを進行させている。シートの上に上がり込んで、色紙・和本・漫画雑誌・手紙・教科書・古写真・地図・雑誌・古本などなどの箱を、すぐに群れよる蚊を警戒しながら、丁寧に漁って行く。むぅ、本当だ。早いと結構良いものが出て来るものだ。そんな風に胸をトキめかせながら、映画ポスターが重なり寝そべる長テーブルを回り込み、端に置かれたダンボールも覗き込んで行くと、常連さんのひとりが近寄り「その辺のは、もう箱ごと買い手がついてるものですよ」と優しく諭してくれた…すげぇ、箱買いか…。結局三冊を手にして、誰が店主か分からぬのだが、「これ、お幾らでしょうか?」と車座に声をかけ、奥の人に手渡す。するとみんなで相談しながら「千円くらいか?」と値付。と言うわけで、誠文堂「子供の科學 昭和六年五月号」龍河洞保存會「天の降り石」(昭和二十二年発行の高知県の鍾乳洞『龍河洞』を紹介する小冊子。平面図・洞内写真・探勝案内・洞内の生物&水質研究など、洞窟大好き人にはたまらない一冊!)日本週報社 週報文庫「ヂーキル博士とハイド氏/ステイブンソン著 田中宏明譯」(今日一番の収穫。昭和二十三年刊の、文庫サイズ横開き本。表紙には週報社社長からの贈呈印あり。口絵グラビアは野口久光画!この文庫は巻末広告を見ると、他に七冊が確認出来る)を購入する。すでに役目を果たした開放的な気分になり、石畳の脇参道を抜け出し、本社前のメインの明るい参道に抜け出る。露店は全部で三十ほどであろうか。その中のご婦人の出されている平台に、古い大正時代の医学雑誌が一冊500円で売られているのを発見する。パラパラ捲ると、田中香涯がどの号にも激しく寄稿している。何か他に面白い人は書いていないかと、目次をひたすら確認して行くと、何冊目かで小酒井不木の『醫学に関する初版本』という記事にたどり着いたので、喜んで購入することに決める。醫文藝社「醫文學 第十一號」を購入。満足して参道を抜け出すと、午前八時の新宿は、先ほどまでの疲弊した物憂げな感じは何処へやら、いつの間にか激しく運動を開始していた。ビルに運び込まれる物流、町に流れ込む働きに出て来た人々、ビル下にとぐろを巻く謎の行列。動き始めた街路を後にして、驚くほど空いた電車で家へと戻る。
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2017年08月11日

8/11東京・吉祥寺 一日

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駅から、北口でも南口でもどちらかから出たら、線路沿いを心がけて西へ進む。北口からなら、やがて『PARCO』前の『中道通り交差点』に行き着き、南口からならバス通りの飲屋街を通った挙げ句『吉祥寺駅前交差点』に行き着くだろう。ここから取る行動はひとつで、信号を渡り、高架北側の脇道にスルリと入るのだ。行く手の高架の向かいには酒屋があるのだが、ここには街頭灰皿が置かれており、いつでも喫煙者が道端に集う光景を作り出している。そこを通り過ぎると、アコーディオンフェンスが現れ、鋭角な角地のビル一階で、「百年」(2008/09/25参照)の支店がオープン三日目を無事に迎えていた。窓際に架かる黄色い飾り鉄格子と、何だか正体の分からぬ緑の蔓草が、外観の特徴である。思い鉄扉を開けて中に入ると、一段上がる木材で内装された、ちょっと複雑な空間となっている。入口左側窓際にギャラリー室があり、その奥が幻想文学・オカルト・海外文学・現代文学・映画・ミステリー・建築・アート・「洋酒天国」・「銀座百点」・串田孫一(超充実)・荒木経惟・図録類などの本棚に挟まれたような古本ゾーン。右側にはまずは洋書絵本が集まり、奥にシンプルで美しい帳場が据えられている。表から見ていただけでは、これで終りかと思っていたのだが、気付けば右にさらなる出入口があり、その奥に薄暗い空間が広がっているではないか。当然の如く惹き付けられて入ってみると、そこはあのアコーディオンフェンスの内側であった。ここもお店だったのか!ここにはテーブルとソファが設置され、とても薄暗いが落ち着いて古本を楽しめるようになっている。壁際には、324or108円単行本棚&平台、それに大体324円中心の文庫台が置かれ、「百年」が催事に参加するときのような、良書安売ゾーンとなっているようだ。ミニコミやリトルプレスも多く紛れ込んでいる模様である。左側ゾーンの古本は良い本がたくさん並んでいるが、値段はきっちりぴったり。左側ゾーンの古本には、大いに探す楽しみに溢れている(「百年」の入口右横の小さな安売棚が拡大した感じ)。桃源社「西洋 暗黒史外伝/吉田八岑」を購入する。同じ吉祥寺に新たなお店を出した「百年」。その狙いはいったいなんなのか?そして次に出すお店は「一秒」か「一時間」か「千年」なのか?とても気になるので、今度店主にさり気なく探りを入れてみることを心に決める。

※お知らせです。去年同様、またまた大阪「梅田䔍屋書店」の「夏の古書市」に参加させていただきます!いや、もう去年出させてもらって以来、棚が常設となってしまっているのですが、そこは新たに力の限り、部屋中から集めまくった二百冊ほどのおかしなおかしな古本をドバババと送り込んだので、大いに私の趣味が炸裂する異様な本棚が、あの洒脱な店舗内に展開せざるをえない楽しい状況と化していること請け合いなのです!早い者勝ちのレア本も紛れ込ませていますので、どうか西のみなさま西に足を延ばすみなさま、何とぞよろしくお願いいたします。
■夏の古書市2017(こだわりの絶版ミステリ・SFから絵本やサブカルチャーまで)
■2017年08月16日(水) 〜 2017年09月03日(日)
■7:00〜23:00
■梅田 蔦屋書店 4thラウンジ
■共催・協力 小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン) /古書 鎌田 /ジグソーハウス/ひなたブック
http://real.tsite.jp/umeda/event/2017/08/2017sf.html
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2017年08月08日

8/8東京・西太子堂 Cat's Meow Books

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路面電車の面影を残す世田谷線のホームから出て、踏切の南に立つ。そこからすぐに西に真っ直ぐ延びて行く、住宅街の細道に入り込む。ツツツツと百メートルも進めば、本日オープンしたばかりの、猫のいる新刊屋+古本屋+カフェな新店が左に輝き現れる。すでに店内は激しく賑わっており、何やら取材も入っているらしい。その小空間の喧噪にユラッと飛び込むと、左奥の帳場に立つ男女二人が「いらっしゃいませ」と迎えてくれて、女性の方が「こちらは新刊コーナーになってまして、奥は古本を販売しています。奥は靴を脱いで入っていただくんですが、猫がおりますので逃げ出さないよう素早い開け閉めをお願いします」とレクチャーされる。ちなみにこのお店の猫は、全員元保護猫の店員さん(店長さんもいるのだが、この時は二階に籠っているらしく姿を見せず…)という位置づけである。新刊コーナーにはテーブルを真ん中にして猫本が多く並び(犬本もあり)、帳場前には洋書の猫写真集や絵本が飾られている。また帳場背後頭上には、グロテスクなほど巨大な猫の顔面ぬいぐるみアリ。狭いカウンター前を通過して、奥の木の格子戸をスラリと開けて、素早く身を入れて閉めて、靴を脱ぐ。左右が猫も遊べる壁棚(棚の棚板や側板には、猫が通れるほどの大きな穴が空いているのだ。もちろんそこに本は置かれていない)となっており、中央には大きなテーブルが置かれている。おぉ!窓際に鯵虎猫が寝ている!そしてその姿をお客さんがかわりばんこに激写している!他にも黒猫がチラチラ姿を見せ、鯵虎猫の横に身を横たえると、控え目な歓声とともに激しいシャッター音が連続して鳴り響く。完全に猫カフェ的一幕が展開され続けている。本当は私も撫でたり話しかけたりしたいのだが、この大いなる猫人気者状況ではそれも叶わぬので、一心不乱に古本を眺めることにする。並んでいるのはすべてが猫に関する本なのだが、ボックスごとにテーマが何となく設定されているのが楽しい。『猫と文学』『猫とミステリー』『「我が輩は猫である」と猫』『猫と美術』『猫と科学』『猫と民俗学』『猫と歴史』『猫と怪談』『猫とパリ』『猫と海』『猫と島』『猫と町』『猫と犬』『空飛ぶ猫』etc.etc.etc.…と、かなりバラエティ豊かに展開して行くのである。私的には『猫と怪談』ブロックに注目し、もしや橘外男の怪猫物がしれッと紛れ込んでいるのではと、視線を何度も往復させるが、残念ながら最初から一ミリたりとも存在していなかった…。中には値段の付いていない本があるので、棚の整理をしているお姉さんに聞いてみると「今値付けしているところなんです。気になったのがあったらお調べしますよ」と言われたので、さっき目ざとく見つけておいた、サンリオSF文庫「猫城記」を差し出してみると、ネットでしっかりと調べられてしまい、4500円の値付が為されてしまった…大体ネット値付の中位を参考にしているらしい。と言うわけで、値付はわりとしっかりしております。裏表紙に値札の貼られた「猫城記」をそっと棚に戻し、別な本を取り出して、早々にスヤスヤ眠る猫店員さんたちに別れを告げて、格子戸の向こう側へ。人文書院「のら猫トラトラ/鴨居羊子」を購入する。まるで星新一の短編小説のように、猫にすべてが支配されているお店である。可愛い猫たちに振り回されたければ、この西太子堂の新店へどうぞ!

帰りに寄り道して、渋谷で『宮益坂』を上がり、「巽堂書店」(2008/07/04参照)で広済堂ブルーブックス「不連続殺人事件/坂口安吾」を100円で購入する。
posted by tokusan at 17:58| Comment(4) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする