東京から普通列車で立ったり座ったりしながら、三時間四十分…居並ぶ製紙工場を眺めながら清水に到着。そこは海の匂いが漂い、次郎長とさくらももこのイラストと清水エスパルスが出迎えていてくれた…そしてもう一つ、私の心の眼がその幻影を捉えていた…。

●清水「清水書店」
『江尻口』から駅舎を出て、ロータリーから大通りを真っ直ぐ西へ。人影の無い真夏のような街である。400mほど進み、四つめの交差点『大手町』を南へ。すると右手に豊潤な鎮守の森が姿を見せる。その前の信号を東に曲がり小道に入ると、すぐにお店である。開いている!GWなのに!緑色の看板も兼ねた大きな日除け、店頭台は無く、サッシ扉の前にスーパーカブが置かれているのみ。カラリと引き戸を開けて、表より遥かに明度の落ちる店内へ。奥の帳場に座る店主と目が合ったので、ペコリと頭を下げる。床はコンクリの土間、壁は天井までの造り付けの本棚…かなり年季が入っている。真ん中には同素材の背中合わせの棚が前後に一本ずつ。お店全体がスロープのように、入口に向かって緩やかな勾配を持っている。右壁はノベルスからスタートし、奥は帳場前までコミック。棚下にはアダルト雑誌が平積みされている。向かい手前には日本文学と青年コミック、奥はすべてがコミックとなっている。棚脇に、カレンダーを破ったような紙に描かれた地図が貼られている。どうやら『中矢部』と言う所に支店があるようだ…しかし描かれている地名や目印に全く見覚えがないので、私にとっては外国の地図のごとく解読不能である。左側の通路へ移動する。壁棚には児童文学・エッセイ・ノンフィクション・カルチャー・古典文学・宗教・教養系文庫・横積み海外文学文庫・社会・文学評論・仙花紙本・歴史・科学と並ぶ。向かいは手前に趣味・実用・エッセイ、奥に日本文学文庫・純文学文庫・海外文学文庫が収まる。帳場横には木製のアダルト雑誌ラックと、ビジュアルムック&雑誌棚がある。非常に興味深いお店である。コミックと文庫の一部以外は、時間が停滞しているようにも見える。下段はホコリも溜まっている。しかし面白い本も多く並び、特に80年代&90年代初めの本が拾い物。左奥には古い本も集まっている。そして手にする本手にする本、値段が付けられていない…何故?どこか判らない所に書いてあるのか?それとも店主は全ての値段を把握しているのか?もしや売り物じゃないとか?もしくは定価で販売していたら…とにかくこんなことは初めてだっ!ドキドキしながらスロープを上がるように帳場へ。そこには丸っとした白髪のオヤジさんが、絨毯のようなイカす服を着て座っていた。本を帳場に置きながら「すみません、これ値段が付いてないんですけど」と言うと、「あっ、付いてない?すいませ〜ん」と本を調べ始める。心の中で『ほとんどの本に付いてないスよ』と突っ込みながら見守る。そしてオヤジさんはニコッと笑いながら「これ何処にありました?」こちらも笑顔で入口近くの棚を教えると、即座に値段が提示された。場所?場所が基準なのか?しかも激安!やった!と心の中で喜んでいるところへ、「これ何の本なんですか?」と質問が。ゲームを紹介している80年代の本であることを伝えると、「ウチにそんな本があったんですね〜。すいませんでした〜」と古本屋さんらしからぬコメント。あぁオヤジさん、いつまでもそのままで!アスキー出版局「GAMEゲームげぃむ 幻夢年代記2/安田均」角川文庫「デルス・ウザーラ/アルセニエフ」を購入。ちなみに今日の旅のお供は、東洋文庫の「デルスウ・ウザーラ」。文庫を見ると知らない話が載っている!やった!

一旦清水駅まで戻り、巨大なアーケード商店街『清水駅前銀座』を南下していると、古本を満載した三台のワゴンを発見。しかもすべて100円均一である。経営・語学・思想など硬めな本が多いが、ジャズや映画の本もチラホラ…誰かの蔵書を売ってるのだろうか?晶文社「ぼくは散歩と雑学がすき/植草甚一」白水社「映画祭へのひとり旅/田山力哉」を抜き取る。『お会計は中屋で』とあるのでキョロキョロ辺りを見回すと、向かいの赤ちゃん用品のお店がそうであった。店内でマダムに200円を支払い、商店街の南下を続ける。新清水駅にたどり着き、駅近くのお店を探す。番地を一ブロック回る感じでお店を発見したが、何と閉まっている…別のお店に行ってから戻って来ることにする。さらに南下して『次郎長通り商店街』(侠客の名がっ!そしてロゴマークが可愛い)にある「大和文庫」を訪ねるが、新刊書店+切手+コインのお店と言うことで、ツアー対象とはならず!スゴスゴと引き返しながら、『さつき通り』と『エスパルス通り』の交差点近くにある、先ほど見付けてしまった異様な書店「エンゼル書店」に怖いもの見たさで向かってみる。書店と言うことは判るのだが、あまりにも装飾過多で、もはや今和次郎のバラック装飾の域に達している!そっと近付いてみると、並べられたコミックに50〜100円の値が付いている…これは古本屋だっ!と勇んで入ってみたら、中の異次元っぷりにまたもや驚愕!これではまるで、星飛雄馬がひとりで飾り付けた、クリスマスパーティー会場そのもではないかっ!銀紙・金紙を駆使した手作り装飾…そして並ぶのは官能&バイオレンス文庫とアダルト全般。それに天使さながらの老婆が一人!何も買えずに尻尾を巻いて引き上げる…負けた…。その後先ほどのお店に戻るも、やはり開いていない。仕方なく新清水駅から、二両編成の静岡電鉄に乗り込み、いざ静岡へ!

●新静岡「栄豊堂書店 古書部」
終点(始点でもある)の駅から出ると、目の前には『北街道』。片屋根付き商店街を北東へ進む。やがて『駿府町あおい通り』のプレートが現れ、『鷹匠二丁目』の信号を過ぎると、左手に小さなお店が姿を見せる。商店街の屋根の下に店名看板。店構えは左右対称。店頭には右に100均棚、左に200均棚、真ん中に雑誌の積み上がった平台、背後に硬めな単行本棚。右の出入口から中に入ると、コンパクトな昔の古本屋さんな店内。両壁は木製の棚、真ん中に背中合わせの平台付き棚。右奥の帳場では店主が本の壁にスッポリ姿を隠し、左側にあるテレビで巨人戦を観戦中。右の壁棚は海外文学文庫が並び、SFやミステリが多い。その奥は民俗学や古典文学など硬めな本が続く。向かいはコミックが並び、下の平台にもコミックとアニメ&特撮ムックなど。帳場前をそっと通り、テレビの邪魔をせぬよう背後の棚を眺める。そこには静岡資料本・映画・音楽(ビートルズ多し)・辞書。そのまま左壁に視線を移すと、大判本・山岳・文学評論・美術・日本文学と並び、下段には美術系の大判本が収まっている。向かいは宗教・教養系文庫・詩歌など。ふむぅ、小さいのにしっかり楽しめるお店である。ポツポツと合間合間に現れる古い本が心臓をドキっとさせ、手を伸ばして確認せずにはいられなくなる。値段は安めなのがさらに嬉しい!店主に声を掛けると、ニコリと笑い清々しく精算。静岡、いいぞ!新潮社「挿絵の描き方/岩田専太郎編」(志村立美の論文『小説が挿絵になるまで』がっ!)鎌倉文庫「まげもの/井伏鱒二」を購入。

●静岡「安川書店」
続いて『駿府公園』を回り込むように次のお店へ。…しかしそろそろ疲労&頭の中が一杯になり始めている…。北口から出てロータリーの左上隅『紺屋町交差点』から『両替町通り』に入り、ひたすら西に向かって進む。『青葉通り』も突っ切り、さらにさらに進むと、通りが終わる『本通り』の手前右手にお店がある。モダンな近代建築『静岡銀行』の裏手である。角地に建つベージュ色の建物の二階上部に店名文字。しかしこの文字も壁と同様ベージュに塗られてしまっているので、プレデターが透明迷彩を使った状態になっている。軒にはしっかりと白い店名看板があり、店頭にはスッカスカもここに極まれり!と言っても過言ではない、寂し過ぎる100均棚。背後で店を覆う、茶色のスモークガラスと併せ、先行きに不安を感じてしまう…。右側から店内へ…ふぅ、普通の古本屋さんだ…しかも均一棚とは裏腹に、物凄くしっかりしている!右の壁棚は新しいな…真ん中に背中合わせの棚が手前と奥に二本ずつ。その間に出来た通路は、奥は帳場で手前は本で通路が塞がれ、両方とも袋小路となっている。左壁&店奥は古い本棚で、左端にガラスケースあり。長身の老店主がゆっくりした動きで、帳場と住居部分を行き来している。よし、がんばるぞ!右壁は日本文学棚となっているが、作家やテーマごとに本の並びが工夫され、かなり神経を注いでいるのが伝わって来る…ハイブロゥな棚だ。奥には古典文学。向かい手前は随筆・文庫&新書(少量)・文化、奥は戦争が占めている。真ん中の通路へ移動するとここには何故か灰皿が置かれている。手前袋小路右側は丁寧な並びの文学評論、左は美術・工芸が収まっている。帳場側右側には江戸・風俗・評伝・自伝、左側は民俗学が並んでいる。左端通路には、復刻本の並ぶ棚が置かれており、少し邪魔っ気である。左壁には宗教・科学・思想・政治・歴史・古代史が、箱入り本を中心にドッシリと収まる。向かい手前には山岳・旅・自然・動植物・お茶・食。奥には東洋文庫・アジア・民俗学・戦国時代が並ぶ。帳場の背後には静岡関連本が硬くズラリと並び、端のガラスケースにはプレミア文学本が飾られている。蔵書量も多く非常にアカデミックなお店である。棚造りが美しく古い本も多い。値段は普通。本を持って帳場に近寄ると、老店主は煙草を一服中。「ああ、いらっしゃい」とゆっくり立ち上がった。そして本の汚れをブラシでシャシャシャと落とす。すべてを包み込むような笑顔で「ありがとうございます」。みんないい顔してるんだなぁ。スゴイぞ静岡!カッパブックス「東京の旅/松本清張・樋口清之」を購入。
ふと気付けば、清水は那須博之監督の「ビー・バップ・ハイスクール」が撮影された場所!清水駅前銀座に、静岡電鉄に、清水港に見覚えがっ!来たことないのに!途端に頭の中で中山美穂の歌がぐるんぐるん…。それにしても静岡はいい!それにまだまだ入れなかったお店や行けなかったお店がたくさん…また来なければと思っていると、駅のホームでポケットに穴が開き、小銭がジャラリジャラリ…おぉ、何たる醜態…。
posted by tokusan at 23:51|
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