2020年07月05日

7/5太宰と小酒井。

古本屋とは何の関わりもないが、昨日午後八時に家のベランダから見た夜景。まるで夕方のような明るさが、空に垂れ込める雨雲と地表の間に出現しており、魂消てしまった。夏至も過ぎたと言うのに、まるで白夜を思わせる明るさではないか…。
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色々バタバタしてあまり動けず、今日ようやく西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に顔を出し、「フォニャルフ」売り上げを受け取りつつ、木馬社「太宰治の手紙/小山清編」を100円で購入する。河出新書の「太宰治の手紙」は、これが元本なのか。店主・小野氏は注文が殺到している盛林堂ミステリアス文庫新刊「孤島の花/香山滋」の発送作業に勤しんでいる。ちょっとだけ先の仕事の話をして、すぐさま阿佐ヶ谷に逆戻り。「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)で文藝春秋社「日本の黒い霧/松本清張」岩谷書店「別冊宝石31 世界探偵小説全集 L・J・ビーストン G・K・チェスタートン篇」を計640円で購入すると、奥から店主の天野氏が姿を現し(この時のレジ対応は奥さまだった)、今まさに棚に出そうとしていた最近とっても気になっている、古い探偵小説の一群を見せてくれた。今回は小酒井不木中心か…。全集・探偵小説関連・犯罪関連・医学関連と、不木の得意分野が過不足なくまとまった感じである。再版だが、ちゃんと函付きの京文社「殺人論/小酒井不木」が素敵なので、1050円で購入する。あぁ、家の至近で古い探偵小説関連が安値で買える幸福、ここにあり!
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というわけで、ちょっとの外出で嬉しい収穫二冊。「太宰治の手紙」の題字は井伏鱒二によるもの。「殺人論」には、冒頭の序文に森下雨村への謝辞あり。そして少しボロいが、函があるのはやっぱり嬉しい!
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2020年07月01日

7/1香山滋新刊を『海鰻荘』跡地に誘う。

連載原稿を仕上げてホッと一息。スッキリしてまだ風が吹き荒れる夕方、西荻漥へ向かう。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内「フォニャルフ」棚に真面目に古本を補充しつつ、帳場でカバーデザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫の新刊を受け取る。「海洋冒険連続小説 孤島の花/香山滋」である。併録作品は『眼球盗難事件』。ともに児童雑誌や少年新聞に連載された児童冒険&探偵小説で、「香山滋全集」に未収録の作品。貴重な復刊となったわけだが、全集から漏れたのには当然理由があるのだ。詳しくは発行者の『あとがきにかえて』をお読み下さい…。さて、何はともあれ、大好きな秘境探検家・人見十吉を生み出した、香山滋の新刊である。デザインを担当出来た嬉しさと、幻の作品を読める嬉しさを合体させ、早々に帰宅しつつある場所に足を向ける。およそ四十分後にたどりついたのは、中野区大和町『蓮華寺』墓地裏の、昭和十二年〜二十八年の十六年間を香山が暮らした寓居『海鰻荘』跡地付近である。『孤島の花』も『眼球盗難事件』も昭和二十四年に連載された作品なので『海鰻荘』で書かれたわけである。七十一年の時を経て、一冊の文庫本となり、創作の地に舞い降りたわけである。うぅむ、感激。本は7/4から「盛林堂」店頭販売開始(通販は予約部数に達しているため、現在予約停止中)。
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そんなバカなことをして家に帰ると、大阪「梅田蔦屋書店」から、営業再開後の先月分の古本の売り上げ表が届いていた。おぉぉぉぉっ、ちゃんと売れていて、これは非常に嬉しい。お買い上げのみなさま、誠にありがとうございます!よし、気合い入って来たぞ!もうすぐ面白い珍妙な補充本も送りますので、引き続き西の古本棚を、何とぞよろしくお願いいたします!
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2020年06月30日

6/30平井呈一の文字を見ながら団子を頬張る。

昨日受け取ったばかりの、ロバート・E・ハワード短篇集「地獄船の娘」を、ビュビュビュンと読了する。いやぁ、痛快で爽快で残虐でセクシーで面白かった。水夫で射撃手で密猟者であるワイルド・ビル・クラントンが大活躍する、腕力と閃きと行動力こそがすべての、マクガフィンを奪い合う暗黒の世界。そこにぐいっと割り込む勝ち気な美女たちとのラブシーン。1930年代のアメリカのラノベと言った感じか。文字を追ううちに、頭が空っぽになって行くのを実感…そして何も残らずに、目の前に本だけが残る。いずれ出る二巻目も楽しみにしておこう。

今日を最後に、阿佐ヶ谷の名和菓子屋「うさぎや」が一ヶ月半ほどの店舗改装休業に入ってしまうので、しばらくのお別れに団子なぞ買って来て食べることにする。平井呈一の揮毫した筆文字が踊る包装紙を剥がし(平井は店主の叔父にあたる)、三連のみたらし団子をパクリ。やはり、ウマいウマい。
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午後は原稿を書き進め、雨の降る前に少しだけ外出して高円寺に足を向ける。「大石書店」(2010/_03/08参照)で講談社「黒い秘境コンゴ 刺青と割礼と食人種の国/宮田文子」を200円で買ったところで(帳場では「「課長島耕作」と「男はつらいよ(DVDマガジンか?)」を探しているんだ!」と堂々宣言するおじいさん客が、高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪の古本屋巡りの楽しさについて熱く語っていた)、雨が降り始めてしまったので、慌てて家に引き返す。
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2020年06月25日

6/25昨日と今日の吉祥寺。

昨日は西永福に流れ着いたので、トコトコ浜田山まで出て、すぎ丸に乗ろうかと思ったが、思い直して京王井の頭線に乗り込み、吉祥寺へ向かうことにする。そう言えば、先日の「ゆたか。書房」での最後の買いもの(2020/06/18参照)、「燈火節/片山廣子」を大事にチロチロと読み進めているのだが、戦中戦後に片山が住んでいたのが濱田山で、土地に関する隨筆が何編か掲載されている。当時は畑の中に竹薮や椎や樫の大樹が茂る、いわゆる“武蔵野”的風景が駅の周りに広がっており、信濃に匹敵する空気の清冽さを誇っていたそうである。今は見えるのはびっしりと身を寄せ合う、人工物の家ばかり…そんな感慨に耽りながら、まずは「古本センター」(2013/07/01参照)へ。処分品棚からクレオ「秘する肉体 大野一雄の世界」を250円で購入してから「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。こちらでは300〜500円棚から、同盟出版社「黄菊の館/西條八十」を330円で購入する。昭和十八年刊の、悲し過ぎる嘆きの大政翼賛詩集で、装幀は藤田嗣治。

そして本日は井の頭公園の南側に流れ着いてしまったので、「book obscura」(2018/01/12参照)の店頭が安売写真集コーナーに変貌したのを目撃してから、公園をスパッと横断して、まずは「一日」(2017/08/11参照)へ。するとガレージの300均コーナーで、講談社「誘拐作戦/都筑道夫」が渋く輝いていたので、330円で購入する。真鍋博の装幀が抜群に決まっている一冊。
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その後、昨日もお世話になった「よみた屋」では、童心社「宮沢賢治 花の童話集」「宮沢賢治 星の童話集」岩波書店「星の王子さま/サン=テクジュベリ」を計330円で購入する。「星の王子さま」は、先日入手した裸本の初版本を入れる邪な目的のために購入。1974年の二十八刷なら、なかなかに古いしまぁ大丈夫だろう…と思ったら、あぁ!定価が違っている。初版は600円だが、こちらは値上がりしていて800円…もうちょっと古いヤツを見つけないとダメか…。
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2020年06月23日

6/23待ちあぐねて二冊の本を読み進める。

昨日から引き続き、仕事の連絡がない…設定の締め切りはとっくに過ぎているのに、まったく困ったものだ。と言うわけで、そんな頼りない連絡を待って家に閉じ篭り、あれこれやりながら、易風社「生/田山花袋」と竹書房文庫「幻綺行 完全版/横田順彌」を交互に読み進め(「生」は章ごとに、「幻綺行」は短篇一作ごとに…早稲田辺りが舞台で一家族の心情を詳細にドンヨリ描く自然主義文学と、ユーラシアを舞台にした痛快SF世界無銭自転車探検冒険小説…頭がどうにかなりそうな気もするが、これが意外にもギャップをそれほど感じることなく、二つの世界に素直に分け入れられるのが、不思議不思議)、本物と紛い物の明治の空気を深くじっくり吸い込み、脳髄にジワジワと毒のように浸透させる。ところで「幻綺行」には巻末にオマケとして、「SFアドベンチャー」掲載時の漫画家・バロン吉元による挿絵が収録されているのだが、この中村春吉が、癖になるほどの格好良過ぎのダンディー過ぎのバタ臭過ぎで、思わず心の中で『中村春吉、こんなんじゃないだろ!』と突っ込んでしまう。あぁ、バロン吉元の絵は、一級の芸術品だな…。
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これが世界無銭自転車旅行家・中村春吉の勇姿。ぜひバロン吉元の絵と比べてみて下さい。

そして痺れを切らして午後に一瞬外出し、高円寺まで出て「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)を覗く。春秋社「わが本籍は映画館/木村威夫」早川書房「ハリウッド映画特急/原田真人」を計400円で購入して家に戻ると、ようやくお仕事の返事か帰って来ていた。これで進行出来る。よかったよかった。
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2020年06月22日

6/22古本に擬態した新刊を買い求める。

朝から本日締め切りの仕事の連絡を待っているのだが、待てど暮らせど何も言って来ない。仕方なく、雨と風の音を憂鬱に聞きながら、春秋社「現代世界探偵小説傑作集」を読み進める。先日、アポリネエルの作品がSFであることを挙げたが、後半の一編『クリシイ街の遺書/モーリス・ルナール』は、W・W・ジェイコブスの『猿の手』の変形版と言える、なかなかドギツいモダンホラーであった。やはりこんなのを『現代世界探偵小説傑作集』に滑り込ませる水谷準は素敵だ!…などとやっていても、連絡は来ない。こんな調子ではとても古本屋さんをブラブラ楽しみに行くわけにはいかないので、雨のちょっと治まった午後三時過ぎに一瞬だけ駅前の書店に外出し、古本に擬態した新刊文庫を買い求める。驚異の明治の世界無銭自転車旅行探検家・中村春吉を主人公にした幻想冒険譚、竹書房文庫「幻綺行完全版/横田順彌 日下三蔵編」である。昭和二十年代のポプラ社の児童用『探偵冒険小説』の装幀を模し、古本的な傷みや破れやスレや汚れを印刷で施した、大変に愉快痛快な一冊。新刊が古本に擬態することに、いったいどんな意味があるのか?基本的に“擬態”の目的とは、攻撃や自衛のために、見る者を欺いたり警戒心を起こさせることであろう。だがこの場合、新刊書店で同文庫を見かけた時に『うわっ、これ古本じゃん。汚れてるじゃん。破れてるじゃん。なんで新刊書店にこんなのが並んでるんだよ』と、手を遠ざけさせるのが目的でないのは、明らかである。本を書店に並べるのは、お客さんに買ってもらうのが目的。ということは、たまたまブラッと新刊書店を訪れた古本修羅に、『あっ!こんなところに古本が売ってる!しかもポプラ社の少年探偵冒険小説じゃん!ラッキー!』と勘違いさせて、買わせるためではないだろうか…なんて下らないことを考えてしまうほど、小さな文庫サイズなのに、見事に古本のポプラ社児童本に擬態しているのだ。書店で平台にこれが並んでるのを見た時は、ハッとして、手にした瞬間ニヤリとしてしまった。つまりこの擬態は、マニアックな古本へのリスペクト&パロディなのである。手間ひまかけた。粋な遊び心の反映なのである。こんな楽しい文庫が出るなんて、二〇二〇年代も捨てたものじゃない。出版不況なんかなんのその!と声を大にして叫びたくなって来る。そんなこんなで家に素早く戻り、この小説の大元となった明治四十二年刊の博文館「中村春吉自転車世界無銭旅行/押川春浪編述」とともに記念撮影する。百十一年の時を経て出会う、中村春吉本二種!片や押川春浪、片や横田順彌!うぉぉ、興奮する!
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2020年06月21日

6/21西荻窪で明治の花袋を!

天気がコロコロ入れ替わる日曜日の午後に、松庵に流れ着いたので、フラフラ北に歩いて西荻窪に出て、まずは「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に顔を出す。早川書房「海外探偵小説作家と作品/江戸川亂歩」(函ナシ。いったいどんなミスなのか、本扉が上下逆になっている。そしてカットが北園克衛だ!と初めて知る)至誠堂「搦手から/長谷川如是閑」(函ナシ)を計200円で購入しつつ、新しく美しく機能的になった番台周りの揃いもの棚を愛でつつ、店主・小野氏とビニールカーテン越しに楽しく古本話をペチャリクチャリ。憧れの島田一男「猫目博士」を見せてもらい、小さく興奮する。さらに盛林堂ミステリアス文庫最新刊「中山忠直SF詩集 地球を弔ふ・火星抄/横田順彌・北原尚彦編」を献本していただく。受け取った瞬間に「あ!文庫サイズなんだ」と驚くと、「北原さんが編集なんだから、このサイズに決まっているじゃないですか」と当然のように返される。さ、さすがは小さい本スキー。そして“SF詩”とはいったい何なのか?恐らく初めて接する文学の一形式なので、心して取りかかることにしよう。
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その後は「古書音羽館」(2009/06/04参照)に足を向け、角川文庫「黒いトランク/鮎川哲也」創元推理文庫「黒いハンカチ/小沼丹」を計200円で購入し、“黒い”コンボだ!と他愛なく喜んだりする。さらに「忘日舎」(2015/09/28参照)の店頭棚前で足を停めると、最下段にパラフィンの掛かった裸本に古本心を搦めとられる。手にすると、明治四十一年再版の易風社「生/田山花袋」ではないですか!明治時代の花袋本が、カバーナシであるとは言え、百円で買えるチャンスなどそうそうそうそうあるわけではないっ!と思う存分いきり立ち、百円で購入する。うぅむ、表紙の箔押し文字が金キラキラなのに加え、石井柏亭のアール・ヌーヴォーな装幀にうっとりする。今から百十二年前の明治の自然主義文学、バンザイ!
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2020年06月19日

6/19世界こども名作館。

午後にBSで始まった映画『ウエスタン』の冒頭シーンを観て陶酔した後、買物のために外出。色々買い足しながら、最終的に中野にたどり着き、『中野ブロードウェイ』四階の「まんだらけ海馬」(2014/02/15参照)に古本的安らぎを求める。様々な形の本が挿さっているので、立体的な並びとなっている児童文学棚を一心に眺めていると、特異な作家名が目に飛び込んで来た。『ダンセイニ』…えっ?ロード・ダンセイニの児童文学本なんてあったの?と面食らい、引き出してみる。潮出版社 世界こども名作館6冒険と勇気編「ケイバー博士の冒険/ダンセイニ作他 亀山龍樹訳編」という本である。ダ、ダンセイニだ…どうやら短篇集の一編として収録されているようだが、それにしてもこの懐かしい装幀…何処かで見覚えが…ハッ!もしかしたらあの本の同シリーズかもしれない。そう気付いて1100円で購入し、そそくさと帰宅する。長尺なのでまだ放送していた『ウエスタン』を横目にしながら、取り出したのは光文社文庫「ミステリーファンのための古書店ガイド/野村宏平」。言わずと知れた2000年代前半の古書店名ガイドブックである。最後の方の楽しいオマケコラムページに『古本屋で見つけた珍品』というのがあるのだが、そこに掲載されている「正義のルパン」が、まさに『世界こども名作館』のうちの一冊なのであった。やっぱりそうだったか!ちなみに「正義のルパン」は『名探偵と推理編』で、このアンソロジーでしか読めない珍品が含まれているとのこと。いつか読みたいものだが、めったに出会うことのない本である。確か一度ジュニアミステリの城「青梅多摩書房」(2013/02/16参照)で見かけたことがあったが、なかなかのお値段だったので、とても手が出なかった。シリーズには他に『魔法とファンタジー編』『おばけと怪奇編』『動物と野生編』『いたずらとユーモア編』『スリルとスピード編』『なぞとふしぎ編』『SFと未来編』『友情とまごころ編』があり、国立国会図書館には一冊も保管されていないそうである。全十冊を追い求めるには、偶然の出会いを求めて古本屋さんをさすらう必要がありそうだ。
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2020年06月12日

6/12本を売ったり買ったり受け取ったり。

午後、空模様が怪しくなる前に、カートで不要古本を三十冊ほど「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に運び込み、買い取ってもらう。査定を待つ間、昨日見たばかりの店内を回遊していると、大下宇陀児コーナー周辺に新たな変化が生まれているのに気付く…これだから、少しも油断ならないな。色々目を付けながら、買取金を帳場で受け取るや否や棚に引き返し、まずは桃源ポピュラーブックス「GUN教室/大藪春彦」を530円で購入しておく。先日入手した宝石社「拳銃図鑑/矢野庄介」(2020/04/29参照)と同じく、「ヒッチコック・マガジン」に連載されていた『ガン相談室』を加筆訂正してまとめた一冊である。

夕方に再び外出し、駅頭でカバーデザインを担当した、出来立てホヤホヤの本を受け取る。綺想社「綺想紙漿雑誌 暴譯叢書壹 響尾蛇の復活/クラーク・アシュトン・スミス」である。ビジュアルをお手伝いした「Kの書」(2020/05/19参照)が縁で、楽しくお仕事させていただきました。1920〜30年代のパルプマガジンに掲載された、怪奇幻想作家の初訳多めのファン出版の短篇集である。怪奇!SF!SFミステリー!……あぁ、人間の魂は高尚なもので磨き上げ、昇華して行くべきものだが、そればかりではどうにも堅苦しくていけない、時にはパルプマガジンに載るような、低俗な怪作で、魂を慰撫慰安することも必要なのである。言わば観客の疎らな三番館で、紙コップのビールでポップコーンを胃に流し込みながら、三本立てのB級映画を観る感じ!たまりませんな。西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の店頭&ネット通販や、中野「まんだらけ海馬」(2014/02/15参照)で購入出来ますので、見かけたら手にとって吟味して下さいませ!ちなみに“壹”とあるように、すでに“弐”巻目の準備も着々進行中…そちらはどうやら大変なことになるようなので、情報が入り次第追ってお知らせいたします。
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2020年06月07日

6/7ひとりぼっちシリーズ!

所用で吉祥寺に出ると、目が回るような人々の賑わい…ここしばらく、人気のない街路ばかり見ていたので、人に酔ってしまいそうになる。用事を済ませたら、素早く古本の影を追い求める。この五月で閉店してしまった、井の頭公園際のフランス料理店の前を通り、中古登山用品のお店「mounga吉祥寺店」(2019/10/23参照9へ。営業を再開し、登山関連古本小箱もちゃんと表に出されている。立ち止まり覗き込むと、登山関連ではない一冊、ちくま少年文庫5「太平洋ひとりぼっち/堀江謙一」が目に飛び込んでくる。ついこの間、同じ著者のケイブンシャ文庫「世界一周ひとりぼっち」買ったばかりだ。これで二冊目のひとりぼっちシリーズ!と三百円で購入する。「太平洋ひとりぼっち」は未読で、市川崑監督・和田夏十脚色・石原裕次郎主演の映画を観たことがあるだけである。映画は面白いのだが、顔がまんまるになり始めた裕次郎のせいで、乗り切れなかった感が(演技は抜群で、関西弁も板についている…だが、極限の孤独と闘争中の顔としては、あまりにも富んでいるのだ…)。一番印象的なシーンは、航行中にケーキがどうしても食べたくなり、カップの中でバターと砂糖を混ぜて食べるところ。やはり美味しくないらしく『これはケーキなんや!』と自己暗示をかけて食べ切るのだ。原作には出て来るのだろうか?
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「太平洋」と「世界一周」。

続いて「よみた屋」(2014/08/29参照)に出現し、東京新聞「橋口五葉展」文藝春秋新社「死者の奢り/大江健三郎」角川文庫「新雪/藤澤桓夫」を計495円で購入する。「死者の奢り」は八版でカバーもちょいと傷んでいるが、やはりこのシュルレアリスト福澤一郎の装画を見逃すわけにはいかないのだ!と、ひとり興奮する。それにしても「ささま書店」亡き後、吉祥寺にその代わりを務めてもらっている気がしている今日この頃…。
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2020年06月04日

6/4安泰画集「ねこ」!

本日も吉祥寺と仙川の間に位置する新川に流れ着いてしまったので、トボトボトボトボヒイコラ歩いて吉祥寺に出る。「一日」(2017/08/11参照)はまだ開いていないのか…そして「古本センター」(2013/07/01参照)に入り、欲しい文庫を一冊見つけるが、保留してひとまず「よみた屋」(2014/08/29参照)へ足を延ばす。ついこの間来たばかりだから、さすがに何も…おぅっ、何だこれは?店頭棚の上段から抜き出したのは、大判の画集である。童心社「ねこ 安泰 画集」!安泰は、世界で一番ファンシーではないリアル系の可愛い猫を描く、偉大な画家である。猫絵本の金字塔「スイッチョねこ」や「どこからきたの」が有名であるが、このような猫好きの耳目を集めて止まない素晴らしい画集を出しているとは知らなかった。この画集用にキャンバスに描いた猫から、絵本の猫、スケッチ帳の猫、習作の猫、未完成絵本の猫までもが集められている。…あぁ、そのあまりの可愛さに、思わず店頭で身悶えしてしまった…。興奮をどうにか抑えながら、さらに学研の昭和32年「五年の学習 3月号」(水谷準の「連載少年少女すいりしょうせつ 四つのなまえ/コナン・ドイル原作」というホームズ物(言わずもがな「四つの署名」である)の最終回が載っているのだ。ご存知の可能性は高いが、案件として北原尚彦氏に報告しなければ…)を掴み出し、計220円で購入する。「よみた屋」さん、本日も面白い本を安値でありがとうございます!思わぬ本と出会い、古本心が高揚しっ放しなので、「古本センター」に引き返し、購入を保留していた、ちくま文庫「明治探偵冒険小説集4 検索短篇集 露伴から谷崎まで」を660円で購入し、早く帰って安泰の猫の絵を存分に楽しみたいので、急ぎ足で飛ぶようにして帰宅する。
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2020年05月30日

5/30今日も吉祥寺で古本を買う。

「第三の情事/園田てる子」を宣言通りに読み進めているのだが。予想以上に面白いので驚いている。心の襞まで丁寧に描く確かな筆力で展開される、ピカレスク青春少女スリラー小説!火のような激しい意志を白熱させる、主人公の少女がとにかく常軌を逸しており、何かことを起こすシーンが訪れる度に、グンと文章内に引きずり込まれ、本当にハラハラドキドキしてしまうのだ。身体の動きと連動する心の動きの細やかな描写は、野溝七生子や木地雅映子に匹敵すると言っても過言ではない…いや、決して伊達や酔狂で言っているのではないのだ。私は本気だ。昭和三十年代の探偵スリラー小説に、ガガンと感銘を受けてしまったのだ。本当に園田てる子がこんなに面白いなんて、思ってもみなかったのだ。本は、読んでみないとわからぬものだ…。

そして本日は吉祥寺と仙川の中間辺りとも言える新川に午後イチに流れ着いてしまったので、バスに飛び乗り、すでに大勢の人の賑わいを取り戻した吉祥寺まで出る。まずは「よみた屋」(2014/08/29参照)に駆け寄り、金の星社「少女・世界推理名作選集10 のろわれた屋敷/ラインバード作」ゼネラルプロダクツ「トップをねらえ!絵コンテ集 第六巻」学研「6年の学習 読み物特集号」「5年の学習 読み物特集号」を計440円で購入する。6年には加納一朗の推理物『百万に四つ』が、5年には大好きな須知徳平のユーモア推理『めい探偵出動』が載っている。こちらは表紙絵が湯村輝彦なのもスゴい。
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さらに「古本センター」(2013/07/01参照)にも立ち寄り、大塚巧藝社「ジュサブロー展」を150円で購入する。1992年に開かれた人形師・辻村ジュサブロー展の図録である。人形劇『新八犬伝』の伏姫・八房・犬山道節・犬阪毛野・犬村角太郎が載っているのが嬉しい。
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2020年05月28日

5/28高円寺の戦前のお店。

本日は三鷹市役所にほど近い下連雀の果てに流れ着く。マスクで息を荒らげながら吉祥寺駅にたどり着き、まずは「古本センター」(2013/07/01参照)で朝日新聞社「明石原人の発見 聞き書き・直良信夫伝/高橋徹」を80円で購入する。さらに「よみた屋」(2014/08/29参照)に足を延ばすと、おぉ!今日は店頭に古書がバラバラ出されているな、と気付く。おかげで古本心をトキメカせながら、二冊を選ぶ。伸展社「嶮しき快癒/ジヤン・ポオラン 堀口大學譯」(函ナシ。限定700部の563番)東都三笠書房「百鬼園隨筆/内田百闕」(函ナシ。昭和十年の改装初版)を計660円で購入する。「百鬼園隨筆」は、後見返しに古い古書店ラベルが貼り付いているのだが、「紙魚屋書店」というイカした名のお店である。『目黒区自由ケ丘本通り』と『杉並高円寺元町(通信学校)通』とあるので、どうやら二店あったようだ。『元町(通信学校)通』は、調べてみると、これは今の駅北口の『中通り』のことであった。戦前に陸軍の学校が『馬橋小学校』の辺りにあったからなのだが、昭和十四年には移転し、さらに戦後に『通信学校通り』は『馬橋中通り』に改められたと言う…ということは、この古書店ラベルは戦前のものの可能性が。どうりで「中央線古本屋合算地図」(昭和三十年〜平成二十九年の間に存在した古本屋さんを集めている)に載っていないわけだ。
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そして家に帰ると、物質感たっぷりのヤフオク落札品が届いていた。手洗いうがいを済ませ、中身を取り出す。光風社「犯罪の足音/岡田鯱彦」(カバーナシ。貸本仕様。傷みアリ)東京ライフ社「第三の情事/園田てる子」の二冊である。計4120円にて落札。魅力あふれる佇まいに、思わず笑顔がこぼれてしまう。元々両方とも落札出来るとは思わず、『まぁこのくらいまで入れておいて、どちらかが落ちればラッキーだろ』くらいに思っていたのだが、何の因果か二冊とも多少の競り合いの後、落札出来てしまったのであった…嬉しいのだが、なんだか予想外の結果である。ともに本の地・天・小口に貸本屋の印があり、「犯罪の足音」は背が取れかけているが、これはどうにか補修出来るだろう。「第三の情事」の状態は、それほど悪くない。さぁ、どちらから読もうかな…ここはやはり「犯罪の足音」からか…これでしばらくは、昭和三十年代のスリラー小説世界に、溺れることになりそうだ。ブクブクブク。
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2020年05月26日

5/26二か月ぶりに大阪に古本を送る。

国の緊急事態宣言は解除され、都の休業要請も次第に緩くなって行くので、古本屋さんも徐々に営業再開するお店が、増え始めて行くのだろう。元々休業要請が5/31までになっていたので、何故か前倒しになった緊急事態宣言解除に、急遽対応出来るわけもないので、古本屋さん巡りが自由に出来るのは、まだちょっと先のことになりそうだ。それに何だか疑似科学のようなデータを基にして、様々な事柄が強制スクロールされているので、どうも油断ならない感じが、常に暗雲のように身の周りに立ちこめている。…まぁ変わらず手洗いうがいを励行し、マスクを着用して、感染予防に努め続けるしかないか…。宣言が出されてから、やはり様々に行動が制限されたので、その記録も兼ねて、宣言が終了するまで毎日ブログを書き続けようと決心し、無事に一日も欠かす事無くアタフタと四十八日を駆け抜けられたのは、幸いであった。文章が長かろうが短かろうが、意味があろうがなかろうが、様々なことを書き連ねることにより、奇妙で緊張感のある非日常の中で生きるためのバランスを、保っていたのかもしれない。古本屋さんだけに限らず、読んだ本や観た映画について書くのは、なかなか楽しい行動であった。これからは、このコロナ禍のせいで、生活様式の変化を強いられるだろうが、ずっと持ち続けて来た、古本屋さんと古本と戯れたい気持ちは決して変わりはしないので、これからもそんな気持ちを偽らずに、なんやかんや書いて行くつもりである。

大阪ではすでに21日に緊急事態宣言が解除されていたので、古本販売をさせてもらっている「梅田蔦屋書店」も、すでに営業を再開した。だが駅ビル内では閉まっているテナントもまだ多く、客足も当然鈍いので、すぐに二ヶ月前の状態に復するというわけにはいかないようだ。だが、担当の古書コンシェルジュさんから、早速『起爆剤としての補充本を!』とご依頼いただいたので、五十冊ほどを厳選し、箱詰めして大阪に送り出す。良書・珍本がたくさん溜まっていたので、濃厚なラインナップとなる。署名入りもアリ。明日には到着し、近日中に古書棚に並び始めると思うので、西のみなさま、感染予防をしっかりと施し、おっとり刀で駆け付けてやって下さい!
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2020年05月25日

5/25四十八日目。

「聊齋志異」をチビリチビリ読み進めながらも、気分を変えたくてCBSソニー出版「イラストレーターは現代の絵描きだ/小林泰彦」(1979年)に手を出してしまい、読みやすいペーパーバックなので一気に読了してしまう。カット&挿絵描きや漫画家とは異なる、“イラストレーター”という新しい職業について、心構えやなり方や作品スタイルに加え、道具の選定や取材方法や仕事の取り方やギャラ交渉までを、独特の語り口で綿密に熱く語りまくっている。「MEN'S CLUB」「ヒッチコック・マガジン」「山と渓谷」「skier」などの仕事がたくさん掲載され(ヘビーデューティな半ズボンアウトドアスタイルで、アウトドア取材に勤しむ小林泰彦のモノクログラビアも多数…やっぱり似ているなぁ、小林信彦に)、それらを見ているだけでも結構楽しい。そして、雑誌類で一番最初に、自分の仕事に“イラストレーション”と付けたのは、小林泰彦らしいということを初めて知る。1961年の「ヒッチコック・マガジン」の目次クレジットを見てみると、確かにもう“イラストレーション”になっている。
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本日は午後に所用で中野へ。あっ!「古本案内処」(2015/06/13参照)の前を通りかかると、月曜定休日なのに営業しているじゃないか。そう喜んで、店頭棚にあった早川書房日本SFシリーズ「48億の妄想」「馬の首風雲録」ともに筒井康隆を計220円で購入する。そのままテクテク『早稲田通り』を伝って高円寺に出て、こちらも店頭にアルコールを常備し、感染拡大予防に努めながら営業している「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)へ。TBSブリタニカ「雑踏の社会学/川本三郎」を100円で購入する。家に戻ると、ポストにようやく厚生労働省からの布マスクが届いていた…緊急事態宣言が出てから四十八日目…そしてもうすぐその宣言は解除される予定………。
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2020年05月24日

5/24四十七日目。

さて、これからは、家で何をメインに読み耽ろうか…と、枕頭の古本山から抜き出したのは、読みかけのまましばらく放置していた、大正十三年刊の玄文社「世界怪奇叢書1 聊齋志異/柴田天馬」。古い古い支那を舞台にした、人と鬼(ゆうれい)が、理を超えて共存し情交する、妙に心温まる怪異譚を集めた一冊である。様々な怪談の元ネタであり、その面白さは無類である。この本では、訳文に漢文のような単語や故事が多く混じり、それぞれに言葉や故事の訳とも言える意味のルビが振られているのだ。
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なので多少は読み難いのだが(半分はルビを読んで読み進めているようなものだ)、それがまた当時の国と時代の風景を想起させ、貧弱な知識をフォローしてくれるので、大変に美味しい味が沁み出ているのである。…それにしても鬼(ゆうれい)にはやたら魅力的な美人が多いなぁ…。

そして本日は阿佐ヶ谷と高円寺の中間に流れ着いてしまったので、わざわざ高円寺方面に出て、もはや通常の人波が溢れる『庚申通り』の「DORAMA高円寺庚申通り店」を訪れる。おっ、今日は古本が20%オフなのか。そう喜んで、店内棚脇のちょっと古い文学本棚から、中央公論社「ミシンと蝙蝠傘/稲垣足穂」を選んで352円で購入する。
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2020年05月23日

5/23四十六日目。

またも「夜歩く/横溝正史」の話で申し訳ないが、昨晩無事に読了し、驚愕する。金庫の中に封印された妖刀村正を兇器として使用したトリックの種明かしに虚を盛大に突かれると同時に、こ、こ、この全体のトリックは、◯リ◯テ◯の「ア◯ロ◯ド◯し」ではないですか…横溝センセイ!と夜の曇り空に咆哮する。あぁ、面白かった。ちなみに読み進めていると、“鬼首村”の由来についての記述が出現し、『四道街道の事跡に由来しているのであろうといわれている。当時、将軍にはむかった賊はすべて鬼と目されていたところから、この地方でも、賊の首魁かなにかが首をはねられ、どこかに埋められたのだろうと伝えられている』とあった。映画『悪魔の手毬唄』で語られた鬼首村の由来とは異なっているようだ(都から来た呪言師が惨殺されて首をはねられ、その首が災いをもたらし、村を焼き尽くした…というようなお話だった気が…)。

本日はお昼過ぎに南阿佐ヶ谷に流れ着いてしまったので、もはやたくさんのマスク姿の人で賑わってしまっている『パール商店街』に入り込み、昨日の行動をなぞるようにして「ブックオフ南阿佐ヶ谷店」へ。光文社文庫「神津恭介セレクション2 神津恭介、犯罪の蔭に女あり/高木彬光」を110円で購入する。さらに駅前に出て、北口の、ここ最近お世話になりまくっている「千章堂書店」(2009/12/29参照)へ。店頭では何も見つからなかったので、店内を諦め悪くウロウロし、左壁棚奥の古書の多い文学本ゾーンで、六合書院「大江戸捕物秘帖/阪東逸平」という見知らぬ作家の戦中の捕物帳仙花紙本を見つけたので、千円で購入する。本文肩が右ページはタイトル通りの『大江戸捕物秘帖』になっているが、左ページには『捕物日本晴れ』と入っている。そんなタイトルなぞ、何処にも出て来やしないのに。
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果たして面白いのだろうか…。
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2020年05月22日

5/22四十五日目。

「夜歩く/横溝正史」を読み進めている。物語も後半に差し掛かり、舞台は突然東京・小金井から、岡山の山奥に移動することになった。突然横溝らしさが増した感あり。狂言回しの三流探偵小説家が汽車で移動中に出会う形で、金田一耕助がようやく登場する。そして目的地へと向かう駅前で、金田一がこんなことを言うのだ。「ひょっとするとあなたがたは、鬼首村の古神さんのところへおいでになるのではありませんか」…ありゃりゃりゃ、“鬼首村”だって!? 鬼首村って言ったら、「悪魔の手鞠唄」の舞台になる村じゃないか。ということは、由良家と仁礼家に加え、呪われた血統を持つ古神家もそこで勢力を奮っていたのだろうか?…あぁ恐ろしい三つ巴だ…そんなばかな!と、慌てて角川文庫「悪魔の手鞠唄」を引き出し、鬼首村について確認してみる。すると冒頭の『鬼首村手鞠唄考』にこう書かれていた。『そこは兵庫県と岡山県の県境にあたっており、瀬戸内海の海岸線からわずか七里たらずの距離だけれど、四方を山にかこまれて、あらゆる重要交通網から見はなされた、文字どおりの山間の盆地である』とあるではないか。「夜歩く」の鬼首村は、旧領主の古神家が岡山県と鳥取県の境にある山間部落などを所領地とし、姫路から伯備線の新見に出る姫新線(北寄りの山岳地帯を縫って県下を横断)のK駅から、さらに三里離れた山奥となっている。…これは、もはや全然違う村ではないか。同名異村というこか…。「夜歩く」が昭和28〜29年、「悪魔の手鞠唄」が昭和32〜34年の連載なので、「夜歩く」の鬼首村が先輩でということになる。横溝センセイが鬼首村を気に入って、名前だけ再登場させたのだろうか。ちなみに鬼首村は『おにこべむら』と発音するが、正確には『おにこうべむら』と読むのが本当だそうである(角川映画『悪魔の手鞠唄』で、湯に入っていた金田一が郷土史家のお庄屋さんに声をかけられ「鬼の首と書いて『おにこべむら』と呼ぶんだそうですね」「『お・に・こ・う・べ・む・ら』が正しい」とやり取りするのだが、私は一人でこの一連のやり取りを真似するほど、このシーンが大好きである)。
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そんなことに朝から思考をムダに巡らせながら、午後に郵便を出すついでに「千章堂書店」(2009/12/29参照)へ。偕成社「小さな町の風景/杉みき子」新潮社「アルプスの谷 アルプスの村/新田次郎」を計200円で購入する。「アルプスの谷〜」の後見返しには、熊本「舒文堂河島書店」(2008/12/21参照)の古書店ラベルあり。阿佐ヶ谷の小さなアーケード街の片隅で、ハロー熊本!
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さらに『パール商店街』をタッタカ南下して、珍しく「ブックオフ阿佐ヶ谷南店」に飛び込む。講談社文芸文庫「白兎 苦いお茶 無門庵/木山捷平」鹿島出版会「明治の夜明け クルト・ネットーのスケッチより/鹿島卯女編」を計630円で購入する。
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2020年05月21日

5/21四十四日目。

さて、昨日届いた、大元はドイル『六つのナポレオン像』である大下宇陀児『六人の眠人形』パチ物コミカライズ「なぞのねむり人形」について、早速ホームズ研究家・北原尚彦氏に報告すると、偶然にも最近入手したとの報告アリ…や、やはり、氏の案件アンテナの精度と確度、恐るべし!と心底恐れ入ってしまう。氏もやはり『タイトルで「まさか「六人の眠人形」が原作では……まさかね……」と買ったら、そうだったのです』ということであった。……この世界には、「なぞのねむり人形」というタイトルを見て、「六人の眠人形」を連想する人間が、少なくとも二人いることが判明したわけであります。ちなみに北原氏は、次号の東京創元社「ミステリーズ!」の『ホームズ書録』で、「なぞのねむり人形」+もうひとつの「六つのナポレオン像」を元にした新発見漫画について執筆されているそうである。これは、次号を刮目して待たなければ!それにしても『六つのナポレオン像』は、もしかしたら『赤毛連盟』に次いで、元ネタに使用されることが多いのではないだろうか…。

本日は吉祥寺の北に流れ着いたので、いつものように駅方面に出て、まずは「古本センター」(2013/07/01参照)に潜入する。いつものように処分品棚から二冊を掴み、素早く精算。エディター叢書「絵本の与え方/渡辺茂男」早川書房「アントニイ・バージェス選集2 時計じかけのオレンジ」を計160円で購入する。続いてさらにいつものように「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。店頭棚に結構人が食らいついているなぁ…と言うわけで人との距離に気を遣いつつ、本の背を精査して行く…ほっほぅ、函はないが新作社の小型本「四季旅行小曲詩集 水を歩みて/佐藤惣之助」なんていう大正時代の詩集が!…おぉ、300均棚に初版の筑摩書房「ちくま少年文学感館4 光車よ、まわれ!」が!といつものようにウホウホし、入口で手指をアルコール消毒してからカッパノベルス「雪の炎/新田次郎」とともに計550円で購入する。
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さあ皆さんご一緒に。光車よ、まわれぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
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2020年05月20日

5/20四十三日目。

いつも『何か面白い古本はないか?』『誰も気づいていなくて、スタートが安値の逸品・珍品はないか?』と、浅ましくヤフオクをパトロールしている。だがまぁ、例えそんなものを見つけたとしても、九割の確率で、たいがいは、終了間際にド強力なライバルがワンサカ出現し、あっという間に指の間から擦り抜けて行ってしまうのだ。だが、楽しい古本を求める心は、常に暗い頭蓋の中で、常夜灯のように輝いているので、そう簡単にめげたり、最初からニヒルに諦めたりするわけにはいかないのだ。今日もポストに、そんな愚かな苦労と闘いを経た落札品が届いていた。小学館昭和33年「小学四年生12月号ふろく たんていまんが なぞのねむり人形/斉藤あきら」である。
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斉藤あきらは杉浦茂のお弟子さんの漫画家である(なんと86歳の現在も現役で「まんだらけZENBU」に『漫画仕事人参上!』を連載している)。だが、そんなことはどうでもよい。問題はこのタイトルだ。「なぞのねむり人形」…これはもしかしたら、大下宇陀児の短編少女探偵小説『六人の眠人形』のコミカライズなのではないだろうか?そんなことを想像し、ライバルナシの1600円で落札する。表紙は主人公の女の子が、友達が襲われている場面の絵を支え持つという、シュールな構成。表2には登場人物紹介とともに『四つのねむり人形をめぐってつぎつぎにおこるかいじけん。人形にかくされたひみつとはいったいなにか??』と書かれている。ちょっと人形の数が少なくなっているが、付録漫画のページ数に合わせて削減したのかもしれない。杉浦茂タッチと劇画風タッチが入り交じる不思議な絵柄で、物語は古いギャグを挟んで進行…四人の少女が友情の記念にお揃いで買ったねむり人形が、次々と怪人に盗まれ奪われ壊されてゆく…少女たちが主人公だし、狙われる対象が何たって“ねむり人形(起こしている時は目が開いているが、寝かすと目瞼が閉じる、プチからくり人形)”だ。こりゃやっぱり『六つの眠人形』が元だろうな。ということは、ドイルのホームズ物『六つのナポレオン像』が、さらにその元ということになる。大下宇陀児のコミカライズ(まぁパチ物なのですが)というのも珍しいが、つまりは完全な北原案件ではないか。というわけで、ホームズ研究家・北原氏はこの付録漫画をご存知であろうか?早速御注進してみることにしよう。その結果やいかに!?
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壊されてますな…悲しんでますな…。
posted by tokusan at 16:56| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする