2017年03月14日

3/14ついにトム・ブラウン・ジュニアを捕まえる!

午前六時に起床し、確定申告書類の、最後の仕上げに奔走する。神経をすり減らして午前九時半過ぎに家を出て、税務署の列に並び、どうにか滑り込みで申告を済ませる。すっかり現代的な集合住宅群になってしまった『阿佐ヶ谷住宅』跡地を切なく横目にして、阿佐ヶ谷駅までトコトコ戻り、そのままの足で高田馬場へ向かう。「ブックオフ高田馬場北店」(2012/11/15参照)の入口付近に、古い漫画が集まっているとのコメント情報にそそられての行動である。坂道を下ってコンクリで固められた神田川を渡り、石のステップを上がってお店の中へ。むっ、確かに正面右側の本棚脇ラックに、古い漫画本と漫画雑誌が一棚集められている。「ヤングコミック」・70年代劇画・手塚治虫・少年漫画・復刻漫画・漫画研究&評論・週刊誌の漫画特集…ビニールに包まれた雑誌以外は、古びたパラフィンが掛かったままなので、異様に古書店的雰囲気を醸し出してしまっている。確かに面白い光景ではあるが…とレジ脇の新入荷棚に何気なく視線を移すと、おっ!そこにも同様な古びたパラフィン本の壁が出来ているではないか。近づくとこれが映画本ばかりで、単行本・ムック・雑誌が結構な量で並んでいる。パラフィンの古び方がみな一様なので、恐らく漫画もこちらも一人の方の蔵書だったのだろう。それにしても、ピンク映画・成人映画・ロマンポルノ関連の本が大充実しているではないか!当時本がほとんどなので、恐ろしく貴重な資料と言えよう。ちなみにこの高田馬場北店は古書も扱う変わり種店舗なので、どれも値段はしっかりと付けられている。だが熱心に探すと、割安な本も見つけられるので、決して諦めない方が良いだろう。レジ前の平台には少量だが、貸本漫画系のコーナーまで出来ている。こんなにたくさんの買取…これは奥の古書コーナーにも同一の蔵書が紛れ込んでいるのでは…と足早に向かってみると、梶山季之・川上宗薫・青森郷土本などがパラフィンに包まれ紛れ込んでいた。しかしこの蔵書群、まだ出していないのかもう売れてしまったのかは分からぬが、かなり筋の良い本が含まれていたのではないだろうか…。一番最初に棚を見られなかったことが、返す返すも残念である。それでも熟考して、櫂書房「甦る名優たち 戦後映画史 新東宝編」津軽書房「北津軽郡東京村/三上寛」を計3120円で購入する、映画史の方はジャスト値だが、三上寛の方は安めで嬉しかった。
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そして映画史の方には、大河内常平原作の『九十九本目の生娘』や大坪砂男『私刑』橘外男『女吸血鬼』『亡霊怪猫屋敷』『怪猫お玉が池』などを筆頭に、妖しい貸本小説や時代小説を原作にした、キメキメで刺激的なスチール写真が満載なので、もう辛抱たまりません。写真は『九十九本目の生娘』の、若き日の菅原文太の勇姿。

家に戻って昼食を摂った後、日曜の「みちくさ市」に備えて、箱にイレギュラー的要素も加えておきたいので、東村山の激安福祉系古本屋「なごやか文庫」(2012/01/10参照)を偵察に行く。結果としては十一冊を計960円で購入し、まぁまぁの成果。だがそんなことより驚いたのは、本日気まぐれにここに来たおかげで、長年探していた本と出会う感激を味わうことになったのである。それは、徳間書店「ハンテッド/トム・ブラウン・ジュニア」!トム・ブラウン・ジュニアはアパッチ族の古老から、サバイバルやトラッキング(足跡を観察してたどることにより、何処へ向かっているのかということから、その動物や人間の心理状態や体調までを見通すを技術)を伝授され、時に行方不明者や犯罪者の捜索に携わることもある“トラッカー”である。この人が書いたトラッキングの本は、他に同じ徳間書店の「トラッカー」があるが、これらが読みたくて探し続けていても、ずっとずっと見つからず仕舞いで、探書リスト・ベストテンに常にランクインし続けて早六年…(他にスピリチュアルな本も出しているのだが、そちらにはまったく興味がない)。2000年代初めの新しめの本なのだが、ネットではわりと高値で取引されており、とにかく常日頃から注意していても、一度も古本屋で見かけることはなかったのである。つまり自分的には古本心の中で、次第にレア度が上昇してしまった本なのである。それが今日、150円の安値で手に入ったのだ!こちらは映画原案本で、トラッキングで扱った事件を、五編収録したものである。これは、蕨の「春日書店」(2010/06/19参照)外棚で、ブルース・チャトウィン「ソングライン」を見つけた時の感激と、似たものがあるな。古本屋さんに足を運び、本を掘り出す喜び、ここにあり!生きていると色々なことがあるが、私は今日、とても幸福である。
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2017年03月12日

3/12第2回『本のフェス』をどうにか完走する。

本日は神楽坂での第2回「本のフェス」内「本の雑誌商店街」に参加するため、早朝から準備OK…と思っていたら、ピックアップしてくれる盛林堂号が、思いの外早く午前八時前に到着し、本を木箱からダバダバこぼしながら、泡を食って車に乗り込む羽目になる。同乗者は北原尚彦氏と善渡爾宗衛氏である。すると神楽坂へ向かう三十分弱の間、トップギアで古本について声高に話し合うことになり、早速貴重なエネルギーを無駄遣いしてしまう。ほどなくして神楽坂の裏町といった場所に建つ『日本出版クラブ会館』に到着し、重い木箱をエッチラオッチラ二階の一室に運び込み、売場を設営する。「本の雑誌」のみなさまや、荻原魚雷氏や「古書いろどり」(2015/12/12/参照)彩古氏や「ますく堂」さん(2014/07/20参照)や「古本と手製本」のヨンネさん等と挨拶を交わした後は、しばし会場内の売場を偵察。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)は壁の如き売場を築き上げ、古本長者としての地位を盤石なものにしている。さらに森英俊氏は、あまりに大量の本を搬入してしまったため、無人売場が二つに分かれる結果となってしまっている。…加減を知らぬ、恐るべき古本神たちよ!午前十時の開始とともに、その恐れ&畏れは現実のものとなり、ただただ神たちの古本だけが売れて行く時間が吹き荒れて行く…唯一それに対抗出来ているのは、自著である新刊文庫を先行販売している北原尚彦氏くらいのものか…。しかしそんな神たちの超ハイペースを見て見ぬフリすれば、自ずから選んだアウェイジャンル(アニメ&特撮中心)ではあったが、ボチボチっと売れてくれていて、途中からビールを飲みながらも長丁場の午後七時を迎えた時点で、なんとか計39冊を売り上げることとなったのである。…まずは形になって、よかった。お買い上げのみなさま、おかしなジャンルに懊悩し手を出せなかったみなさま、そして通りかかって下さったみなさまに感謝である。特に印象的なお客さんを挙げると、コミック「装甲騎兵ボトムズ」を買ってくれたうら若き女性、SF映画パンフ三冊を歓声を上げながら購入したフランス人、怪談本&ゾンビ本&怪奇まんがを悉く立ち読み読破し去って行った小学生女子、「ぬいぐるみとの暮らし方」を存分に吟味して買って行ったお嬢様、「古本屋写真集」が改めて売れたこと、そして寄せては返す波の如く本を手に取り戻し手に取り戻しを繰り返した挙げ句(ボヤき付き)購入してくれた彩古氏に拍手喝采を送りたい。また、最後の最後に金沢から参戦していた古本カフェ「あうん堂」さんと挨拶を交わし、まだお店に行けていないことを詫びつつ、いつかは必ずうかがうことを約束する。そんな楽しい一日であったが、もちろん古本を買うことを忘れてはいなかった。次第に売れる古本で得られる懐具合に合わせ、会場内の古本を少しずつ時間差で、購入してしまっていたのである。北原尚彦氏からは大日本雄辯會講談社「怪奇境探検記/小山荘一郎」(裸本)、「盛林堂書房」では学風書院「劇書ノート/古川緑波」、森英俊氏からは光風社「童貞先生青春記/宮下幻一郎」東京ジュニヤー協会「火事の百科 東京文庫1」を……たくさんの古本を売ってまたもや古本を買う…なんて清々しくも馬鹿らしい行為なんだ…あぁだが、俺はこのために、きっと生きているのだな。そんな感慨に耽りながら愚かな私は、来週日曜にも「みちくさ市」に参戦いたします。こちらは今回の変態的並びではなく、いつものほどよい文学&ミステリ&変な本に戻る予定なので、何とぞ引き続きよろしくお願いいたします。今宵はこれにて、おやすみなさい…。
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ちなみにこれは、ほぼ終了間近の私のブースである。本以外はほとんどが売れ残り、シャプレー星人も仮面ライダーも、無事に家に出戻ることになりました…。
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2017年03月11日

3/11明日の準備を進めたらやはりヘンテコなことになる。

朝から明日の「本のフェス」参戦の準備を進めるが、やればやるほどヘンテコになって行く…なんだか全然売れない気がして来た…いや、どうせ明日は神楽坂中が本まみれになるのだ。ならば変態的性格を持つ俺は、変態的に猛進して、構わないだろう…でも売れないのはなぁ…。などと思考の隘路に嵌ってしまった感があるので、息抜きに午後に外出し、今月末でお店を閉店してしまうという下北沢の「オムライス」(2013/09/19参照)を偵察に行くことにする。深過ぎる地下ホームからようやく南口に出て、ガード前の明るい陽光に目を細め、まずは肩ならしに裏路地の「ほん吉」(2008/06/01参照)へと向かう。店頭棚を熱心に見ていると、左斜め後ろでガゴガゴと不穏な音が響き渡る。うぉっ!店頭の木箱を停車しようとした乗用車が、バンパーの下に巻込んでいる。不注意だなぁ…すぐさま車から助手席の人が出て来て、木箱を下から引きずり出し、元の位置に戻す。そんな出来事に気を取られながらも、金剛社「逆進化/辻野勤」(前にも買ったことがある、ダーウィンの進化論を逆にたどる珍SF小説である)朝日ソノラマ「狼少年ケン」(ソノシートナシ。だがやはり、森やすじの狼は、身悶えするほど可愛過ぎるのだ…)を計300円で購入する。お店を出て、気になっていたので轢かれた木箱を確認すると、おぉっ!何ともない!その武骨なタフネスさに拍手喝采しながら、テクテク若者だらけの商店街を抜けて、街の端にある「オムライス」に到着。ドアには3/26閉店のお知らせが貼り出されてしまっている。
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中に入れば、そこはいつもと変わらぬ懐かしい玩具だらけの光景。基本的に膝下に集まる、古本・漫画・紙物を丁寧に繰って行く。先客が一人おり、古本棚の前に立ち尽くし、懸命にカードを選り分ける作業に没頭しているので、なかなか棚を見ることが出来ない。それでも左右から回り込んでのぞき込み、結局博文館「少年少女譚海 昭和十一年十一月號」(裏表紙トレ)学習研究社「中をのぞいたら」を閉店セール価格の計500円で購入する。これからまだまだ面白そうなモノが出てくる予感がするので、26日までにまたどうにか訪ねることを決意する。

家に戻ったら、フェス準備のラストスパート。本はいつもとは大幅に異なり、特撮アニメ関連&変な本と粋な本を揃えつつ、その他には本以外のブツを掻き集めてしまう。ファミコンカセット・仮面ライダーソフビ・シャプレー星人ソフビ・成田亨フィギュア・パンナムトランプ・柳原良平団扇・ジャングル大帝紙芝居・キャプテンスカーレット小旗・王貞治&森永コラボ下敷き・駅馬車カセット教材・とびだす絵本・堀内誠一カレンダー・etcetc……。本を見るのに疲れたら、どうか『本の雑誌商店街』の当ブースをお訪ね下さい!古本屋+古道具屋の様相で、お待ちしております!
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『本のフェス2017 本の雑誌商店街』
■日時:2017年3月12日(日)10時〜19時
■場所:日本出版クラブ会館
〒162-0828 東京都新宿区袋町6
http://www.shuppan-club.jp/
■主催:本のフェス実行委員会/読売新聞社
https://ja-jp.facebook.com/honnofes/
http://www.cpfine.com/honnofes.html
昨年、京都造形芸術大学外苑キャンパスで初開催した「本のフェス」ですが、今年もパワーアップして開催決定! 時は3月、場所は神楽坂に移し、街全体を本のイベントにする予定です。そして今回も会場の一室を「本の雑誌商店街」として、著者、古本屋さん、古本者さん、出版社などなど、本好きみんなが集まり、売りたい本を並べ、その場でコミニュケーションを取りながら販売いたします。
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2017年03月10日

3/10天金と粘菌!

色々あって夕暮れ時に、阿佐ヶ谷と荻窪の間に流れ着く。陽が落ちるとともに、月の光が輝きを増すのを見上げながら、家とは逆方向の荻窪方面に寄ってしまい、「ささま書店」(2008/08/23参照)に古本を求める。
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昼間とは打って変わった、強く冷たい風に嬲られながら、百均棚から二冊、三百均棚から一冊。朝日新聞社「やさしさを教えてほしい/谷川俊太郎」講談社「日本の作家60人 太鼓判!のお取り寄せ/小説現代編集部編」岡書院「南方随筆/南方熊楠」を計525円で購入する。

本日の驚きの収穫は「南方随筆」である。大正十五年刊のオリジナル版で、蔵書印アリ&函補修アリなのだが、天金は美しく輝き、口絵写真に南方と写る、大正八年高野山への粘菌採集同行者である、小畔四郎の献呈署名アリ。ちゃんと柳田國男の、巻末の中山四郎による『私の知っている南方熊楠氏』への『事實に反し居り候』チラシも挟まっている!嗚呼、こんな風に憧れの博覧強記の天才奇人・南方熊楠氏に、本を触媒として近付ける日が来るなんて!などと喜びつつ、さらに後の見返しを見ると、薄紙に覆われた古書店ラベルがあるのに気付く、ペリペリペリペリ懸命に丁寧に剥がしてみると、大岡山工大前(つまり今の東京工業大学前)にあった「娯楽堂書店」と判明する。…学校の前にあるのに“娯楽堂”とは、良い度胸をしている素晴らしき古書店である。ちょっと手持ちの本で調べても何も分からない…いったいいつ頃のお店で、どんな本を得意としていたのだろうか…。とまぁこんな風に、一冊の本で色々楽しませてくれる「ささま書店」よ、今日も本当にありがとうございます!
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剥がしている途中の写真。まるで火山灰の中からポンペイの壁画が現れたように、次第に古書店名がっ!
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2017年03月07日

3/7地図、地図、地図、古本屋地図!

今日は昨日と打って変わって家に閉じこもり、ひたすら岡崎武志氏との共著「中央線古本屋地図(仮)」の、大事な古本屋地図作成に勤しみまくる。早朝から紙とモニターを行き来して、様々な時代に潜り込み、ひとつの平面にお店をコレクションして行く…それがすべて古本屋ばかりなのである。それにしてもこのお店の数…中央線はやはり偉大で豊穣で過剰である…。…楽しい…細かい…ツライ…前代未聞なものを作ってる感じが…だが頭がどうにかなりそうだ…。どうにか高円寺まで終えたところで一休みし、息抜きに日曜に参戦する「本のフェス」の準備に軽く取りかかってみる。今回参加店はプロが多いので、ちゃんとした古本はそちらに任せ、思いっきり逸脱する感じで各部屋から色々集めてみる……ぬぅ、分かってはいたが、何だか大変なことになってしまった。もうちょっと精査吟味が必要なのか。まぁ、まだ少し時間はあるんだ。ゆるやかに楽しく準備して行こう。というわけで、詳しい異常なラインナップは前日の土曜にでもお知らせいたします。さて、もうちょっと、頭の中の中央線に乗って、西を目指して行くとするか。
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2017年03月04日

3/4帯付きの浅原六朗に巡り会ってしまう。

色々こなして、本日流れ着いたのは中野駅。人間が川のように流れる土曜日の駅頭とアーケード商店街を突破し、自ら積極的に『中野ブロードウェイ』に迷い込む。と言っても目指すのは、当然の如く四階の「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)である。長いエスカレーターで一気に三階まで上がり、たくさんの外国人と擦れ違いながら、階段で四階へ上がると、次第に喧噪は遠ざかって行く。通路の100均棚を見て、北側の探偵小説ゾーンに目を凝らし、奥の壁棚の少年少女小説群に目を血走らせる。…良い物はあるが、懐と折り合いがなかなかつかない。あぁ、あの時の「ジゴマ」(2016/09/07参照)見たいな意外なものが、驚きの安値で見つからないだろうか…。だが世の中と「まんだらけ」はそんなに甘くなく、何も手にすることなくお気に入りのゾーンを見終わってしまう。仕方ない、垂涎恋い焦がれ古本群がディスプレイされた、ガラスケースでも虚しく眺めて行くか…。うふん、やっぱり欲しい本と読みたい本と見たことのない本がいっぱいだ!とたちまち虜になり、熱っぽく病的に目が輝いてしまう。いやぁ、だけど値段がほとんど五桁…宝物の域に突入しているな………んん?キレイな儚い帯付きの春陽堂文庫が…ぎゃお!浅原六朗の「モダンマダム行状記」じゃないか!他の文庫の巻末目録でその存在は知っていたが、俺は初めて見たぞ!値段は…三千円かっ!長年探し求めていた文庫と、今ガラス一枚を隔てて邂逅しているこの興奮!よし、買うぞ!ガラスケースを開けてもらおう!と意気込み、対岸のレジのお姉さんの接客が終わるのを待ち、声をかけてケースを開けてもらう。そのままレジに移動して、即購入してしまう。ついに、この手に入ったか!と喜び、通路で袋から取り出して記念撮影。日本小説文庫&春陽堂文庫は探偵小説でその筋の好事家に人気だが、実は今は読めない昭和初期の大衆風俗小説がだいぶ含まれている。探偵小説は当然の如く高値だが、大衆風俗小説はほどほどに安値なのが嬉しいところ。新興藝術派が書く大衆小説。果たしてあの文章の鉱物的な煌めきは、残されているのか…早く読まなければ!
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などと興奮していると、「まんだらけ」辻中氏に発見されてしまい、慌てて挨拶を交わす。その後は二階に下りて「古書うつつ」の通路ミニ100均棚に集中する。ここはマメに見ていると、面白い本がよく見つかるのだ。今日は河出書房新社「シンポジウム 発言/山川方夫・武満徹・羽仁進・谷川俊太郎・浅利慶太・石原慎太郎・大江健三郎・江藤淳・etc...」と国立劇場上演資料集68「東海道四谷怪談/国立劇場芸能調査室編」を発見し、計200円で購入する。この「東海道四谷怪談」は上演年表・解説・研究・型と演出・芸談・参考文献で構成されているのだが、明治や大正期の上演を中心にまとめられているのが面白い、俳優の怪談演技論から、戸板返しなどを含む舞台美術までが、縦横無尽に語られている。
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2017年03月03日

3/3古本で誕生日を祝される

午前七時に目が覚めてからずっと、鋭意制作進行中の「中央線古本屋地図(仮)」の住所リスト作りに専心する。十冊ほどの古本屋地図や古書店案内に、取っ替え引っ替え首っ引きになり、過去から現在までの古本屋を、紙の上と脳内とモニタ−内で必死に行き来し、夕方前に完成した時は、息も絶え絶えに疲れ果てる…。気晴らしに、家でまだまだのさばっている古本の一部を携えて西荻窪へ。一週間前にたっぷりとお世話になった「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に赴き、「フォニャルフ」にバタバタ補充する。そして帳場で恥ずかしながら、本日が誕生日であることを祝されてしまう。店主・小野氏はマメにプレゼントを用意しており、何とそれは三冊の古本だと言う。上中下のどれかから選択せよ!という妙なお題を与えられたので、真ん中を選択。すると何故か天の邪鬼にも、選んだ“中”ではない、上下二冊の本を渡してくれた。いや、でも、嬉しい!いただいた古本は秘するが(ダブり本の状態の悪い方とのことである)、心の底から読みたかったものである。それにしても、古本屋からタダで古本をせしめるとは、私もいっぱしの古本ゴロになったものだ…いや、とてつもなく引っ込み思案な古本ゴロであるが…。古本話と仕事の打ち合わせをしながら、先月の「フォニャルフ」の売り上げと古本市余り本の買取金を受け取る。途端に気が大きくなってしまったので、古本プレゼントもいただいたことだし、ちょっと大きな買物でもたまにはして行こうかと、棚の前で目を爛々と輝かせてしまう。國枝史郎の「怪談」か「隠亡堀」か、それとも憧れの博文館文庫の翻訳探偵物にするか…ど・れ・に・し・よ・う・か・な…としばし乙女の如く迷い、結局博文館文庫(66)「青い甲蟲/オースチン・フリーマン」を8000円で購入する。昭和十四年刊の妹尾韶夫譯のソーンダイク博士物短篇集である。すると小野氏が「こういう良い本買うんだったら、ちゃんと部屋に本棚入れないとダメだよ」と、釘をグサリと深く刺してきた…あぁ、色んな人に、部屋に本棚を入れろ入れろと言われてしまう…お母さんに「勉強しなさい!」って言われてるみたいだ…。分かりました。まずはこれを読んでから、ゆっくりじっくり考えます!
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帰りの阿佐ヶ谷では「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、五月書房「熊襲部落/松浦沢治」(函ナシ)福武文庫「上海読本/村松友視選」講談社「随筆人生相談/藤澤桓夫」を計721円で購入しながら、先日の古本市の話をひとしきり。…とこのようにして、また次第に古本が増えて行くのである…恐ろしや恐ろしや…。
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2017年03月01日

3/1手応えある空振りをして草分けデザイナーのモダンさに触れる。

先日の取材対談時に手に入れた情報を基にして、初めて東急池上線の大崎広小路駅で下車する。するとそこは広小路どころが、巨大な『山手通』に高層マンションの壁が連なる、巨人の世界である。裏通りにふいと入り込み、次第に住宅街となる道を歩いて、目的のお店を探すが、これがなかなか見つからない…おかしいな。『峰原坂』を下って再び駅前に戻り、もう一度周囲を精査して行く。すると、とある緑の日除けを持つ電機作業店の閉ざされたガラス戸の向こうに、古本が並んでいるのを発見する。おぉ、本当だ!町の作業場に古本が並んでいる!だがこれは、どうも閉じている状態らしい。場内天井を透かし見ると、電気は点いているのだが、扉がぴったりと閉ざされ人の気配も皆無なのである…本来はガラス戸が全開となり、古本棚に直接手を伸ばせるようになっているのだろう。仕方なく今日は諦めるが、シチュエーションが素敵過ぎる古本販売を発見出来たことに、満足を得る。要再訪。…よし、せっかくだから武蔵小山の愛しの古本屋さん「九曜書房」(2009/03/26参照)を徒歩で目指すとするか。そのまま坂をグイグイ上がり高台を西北に向かって突き進んで行く。横に流れ落ちる道の先には、下の町が見え、視線のちょっと上には中空のマンション群。そしてさらにその上には、天空とも言うべき異様な高さを誇る超高層マンション群が、現実離れした存在感でそびえ立っている。まるでアニメの未来都市のような立体感が、人間のスケールをゼロに近付けてしまっているみたいだ。蟻になった気分で歩き続け、アーチの角度が立派な『谷山橋』で、遥か下になった池上線線路を越える。これも大きな『第二京浜』と『中原街道』を越えたところで、ようやく住宅と商店街と小工場が入り交じる、人間の世界となる。ちょっと下町の迷宮に迷いつつ、どうにか「九曜書房」に到着。店内500均棚に熱い視線を注ぐとともに、今日は左側通路通路棚のプレミア文学本を集中的に漁り、大いに楽しんでしまう。青木書店「鬼遊び/かこさとし・永田栄一」文藝春秋「四十歳のオブローモフ/後藤明生」天人社「小市民街/北村小松」を計4000円で購入する。

本日一番の獲物は3000円の「小市民街」。昭和五年刊のオリジナルで、北村小松初の小説集である。主に活動写真界を舞台にした小説を多く収録。巻末の広告には、デイクソン・カー「夜歩く(怪奇密封版)」の広告(「〜物語の最後の部分を封して提供する。それまでに謎が解けたら、封を切らずに本社にお戻しあれ。代金返却を確約する。」とあるが、犯人が間違ってたらどうなるんだろうか?代金じゃなくて本が戻って来るとか?あ、犯人が当たってるかどうかは、別に問題じゃないのか。でも、犯人を知りたいのは、人情だよなぁ…)もあり。しかし何より素晴らしいのは、この装幀である。瀟酒でグラフィカルな四点のイラストを配し、かなり高度なクオリティを誇っているのだ。右下の手首のイラスト部分には『KOH』のサイン。気になって目次裏の装幀者の名を確認すると『河野孝』とある…知らないな…いや、でも、なんか知ってる…河野孝…河野タカシ…コウノタカシ…河野鷹思…あっ!河野鷹思の本名か!思えば北村も河野も松竹の人間である。そのよしみで、装幀を依頼したのだろうか。うひゃぁ、とにかくこれは、とても嬉しいぞ!
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早速店頭で袋から取り出して記念撮影してしまう。
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2017年02月28日

2/28三月四月も色々あります。

夕方にちょっと『五日市街道』の西荻窪に通りかかると、あっ!2016/08/06に店頭しか見られなかった古道具屋「CENTURY HOUSE」が、堂々開いているではないか。しかしお店の入口では、常連さんらしき男性と、初めて見るリサイクル的に砕けた植草甚一風店主が、熱心に話し込んでしまっている…ぐむぅ…お店の中も見てみたいのだが…。取りあえず店頭古本棚を熱心に眺めつつ、チャンスをうかがう。だが話が終わる気配はまったくない。仕方なく100円の創元選書「宿命/萩原朔太郎」を手にして、二人に近付く。すると会話が止まり、店主が手にした本に視線を移し「100円ね」と言われる。百円玉を渡しつつ、ここは思いっきり正攻法で「お店の中、見せてもらってもいいですか?」と聞いてみる。店主が移動して入口を開けながら「いいよいいよ」。ついでに「中にも本はありますか?」とさらに聞いてみると、何故か店主ではなく常連さんの方が「中にはないない」と答える。だがせっかくなので、入れてもらう。通路が二本の店内で、ケースや棚に様々な物品が詰め込まれている、まさに古道具屋的光景。棚だけ見ると、外からの印象と違い、わりとてが入っている感じ。だが!この通路に積み上がる古着の洪水はなんなんだ!入口から一メートル入ったら、もう進むことは出来ない。ちょうど通路の交差点を中心にして、古着が行く手を阻んでしまっている…とても踏み越えて行くわけにはいかないので、諦めて踵を返し、再び入口に立ちはだかっている店主の背に「ありがとうございました」と声をかける。振り返る店主。「中、入れないじゃないですか」と笑いながら言うと「そう。入れないんだよなぁ〜」と当然の如く返して来た。常連さんも、それを聞いてニヤついている。店頭前から、歩行者信号が青になった横断歩道を渡る途中で振り返ると、あ!店主が店の中に戻り、古着の山を踏み付けて奥に入って行くところ…あぁ、何かネジが緩んだような、おかしな夕暮れのひと時である。
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さて、三月四月も様々なイベントに参戦しますのでお知らせいたします。
1. 『本のフェス2017 本の雑誌商店街』
■日時:2017年3月12日(日)10時〜19時
■場所:日本出版クラブ会館
〒162-0828 東京都新宿区袋町6
http://www.shuppan-club.jp/
■主催:本のフェス実行委員会/読売新聞社
https://ja-jp.facebook.com/honnofes/
http://www.cpfine.com/honnofes.html
昨年、京都造形芸術大学外苑キャンパスで初開催した「本のフェス」ですが、今年もパワーアップして開催決定! 時は3月、場所は神楽坂に移し、街全体を本のイベントにする予定です。そして今回も会場の一室を「本の雑誌商店街」として、著者、古本屋さん、古本者さん、出版社などなど、本好きみんなが集まり、売りたい本を並べ、その場でコミニュケーションを取りながら販売いたします。

というわけで、著者&古本者として参戦いたしますが、古本+古本屋や古道具屋や骨董市で買ってしまった、買ったはいいが持て余し気味のおかしな物たちを持って行こうと考え中。ついついメーターを振り切り過ぎて、もしかしたらひとつも売れないかもしれません。そんなおかしなお店で、みなさまのお越しをまたもやお待ちしております。

2. 『鬼子母神通り みちくさ市』
■日時:2017年3月19日(日)11時〜16時
■場所:雑司が谷・鬼子母神通り
東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺
東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
■お問合わせ
michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
http://kmstreet.exblog.jp/

こちらはどうにか、やはり古本だけで参戦するつもりであります。私の蔵書は、二月の大放出古本市ですっかり枯渇してしまっているのか?それともまだまだ古本鉱脈は有望なのか?どうかその目で確かめに来ていただければ!

3.「ある怪書好き会社員の軌跡」 トークイベントvol.1
■『怪書探訪』著者 古書山たかしさん、古本屋ツアーインジャパンの小山力也さん、盛林堂書房店主 小野純一さんによるトークイベントを開催!
http://www.kosho.ne.jp/news/news_info170213.html
■日時:2017年4月7日(金)開場18:00 開始18:30〜20:00
■場所:東京古書会館 7階会議室
〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3丁目 東京古書会館
■入場料1000円(現金のみ) 事前申込 先着100名様
■3月6日(月) 午前10時 予約開始! http://www.kosho.ne.jp/event/2017/s/page2.html

あの天下の奇書「醗酵人間」が欲しいあまり、コピーをを手作り製本してしまった伝説の男が語る古本愛!…まぁ恐らく私は、古書山氏と小野氏の濃厚な話には、何光年も置いてけぼりを食らうと思うので、暴走する二人を御する司会的役目に徹する覚悟で臨みます。楽しそうだけど、疲れそうだなぁ…また、帯の話とか、カバー異装版の話とか、ず〜っとするのかなぁ…。何はともあれこちらもひとつよろしくお願いいたします!
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2017年02月27日

2/27 2DAYS

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一昨日は、一日目を終えたらすぐ家に帰り、ひたすら補充分の古本の堀り出しと値付作業に没頭する。何人ものお客さんに「明日は補充するんですか?」「どのくらい補充するんですか?」「全部入れ替えるんですか?」などと聞かれ、二日間開催という重圧を改めて感じてしまったので、その期待に応えるためにも、どうにかして本の量を増やすとともに新味を醸し出さなければいけない!と悲愴な覚悟を決めつつ、作業は深夜二時までにおよぶ。結局出来上がったのは大小十五本ほどの、ありったけの精鋭部隊(図録多め)であった。…これだけか…情けない…。布団の中にのめり込んで泥のように就寝し、二日目の朝に「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏に本と身体をピックアップしてもらう。相変わらず二月の冷え込みををシンシンと感じる西荻窪『銀盛会館』内で、独り補充分を棚につぎ込んで行く。気まぐれに新保博久教授が作った両サイドの『怪奇本コーナー』(こちらはわりと女性に売れて行ったので驚きました)『虫本コーナー』(香山滋の「悪魔の教科書」には『人間うじ』が載っているということで一員に)はそのまま維持し、午前十時半には設営完了。昨日同様館内の掃き掃除をし、今日はさすがに人は少なさそうだな…とボンヤリ考える。ところがそんな意に反して。十分前にはシャッター前に、あの頼もしい古本修羅&古本神が大集合してくれていたのだ!おぉ、みんな!みんなっ!と大きな感銘を受けてしまう。と同時に、彼らの古本を求める期待に応えられる棚を創り得たのか、まるで死刑執行を待つ絶望的気分にも陥ってしまう。シャッターがンガランガラ上がって行く途中で(上がりきったら入場可能になるシステム)、「本日二日目です。よろしくお願いします」と挨拶をすると、何故か暖かな拍手がバラバラと巻き起こった。私がなし得た、何かへの礼賛の拍手なのであろう。その奇妙な暖かさにここでも不覚にも、ちょっと感動してしまう(ちなみに拍手をしているのは、すべて見事なまでのオッサンなのである)。しかしその後はそんな感動を吹き飛ばす、昨日見た光景であるはずの、左奥での古本奪取戦闘シーン!…あぁ、でもこれでいいんだ。みんなが求める本を、どうにか再び並べることが出来たのだ。ホッと胸を撫で下ろし、死刑台からすっかり遠退き安堵する。その嵐が一時間ほどで過ぎ去ると、さすがに昨日とは違ったのんびりした時間が流れて行く。昨日今日での商店街の人の流れの違いもあるのだが、それでも通りすがりの人も陽気のせいかフラリと迷い込み、100・300・500均もそれなりに売れて行く。午後四時からは『500円以下100円タイムセール』も敢行し、最後にもうひと盛り上がり。ちょうど午後六時に流れが絶えたのを見計らい、冷たい夜気を断ち切るようにシャッターを下ろしてイベントを終える。ど、どうにかこうにか走り終えた…駆け抜けられた…。本当にみなみなさま、ありがとうございました!全国から集めて来た良書&駄書をお買い上げのみなさま、大事にしていた掘出し物を継承していただいたみなさま、何も買わずとも足を踏み入れてくれたみなさますべてに、心の底から感謝いたします。この二日間は、曲がりなりにも自分の夢である古本屋と言う店舗を持ったことになるのだが、そんな実感はさらさら皆無で、ただただ商品としての古本を掘り出し値付けすることと、それらをグルグル結束すること、会場に運び込むこと、並べること…これらだけで手一杯になってしまった感がある。本当はもっとしっかり本を吟味準備し、クリーニングにも手を施し、見せる棚造りもするべきだったのだが、時間がやはり圧倒的に足りなかったのだ。だからその時間の無さと手間の大変さから、当初は一回目に運び出した分プラス、キモの本をうまくディスプレイして、それっぽい会場にしようと、軽く考えていたのである。だが、今回のイベントの後援である盛林堂・小野氏から、常に「準備してる?」「これじゃあ本が足りない」「催事は甘くないよ」「思ったほど売れないよ」「もっとボリュームを」「この倍」「後二十本」「二日間とも補充しないと」「予備の本は?」「後何本作るの?」などとお尻をバンバン叩かれ続けた結果、あのそれなりの会場になったわけである。最初は「本職じゃないんだから」などと不遜に思い、そこら辺を巧く誤摩化そうとしていたのである。だが結果としては、誤摩化さないで良かったと、スパルタ的古本屋教育を施してくれた小野氏には、盛大に感謝している。何たってちゃんと売れた。会場内に人が長く足を留めてくれた。会場がちゃんと混み合った。そんな事柄がうまく重なり、二日間で計830冊を売る結果となったわけである。こうなると、もしかしたら頑張れば、これで食べていけるのではないか…などと愚かにも考えてしまうのだが、まぁそんな甘いものでないことは分かりきっている。だが、甘い夢を見ることは、とても楽しく幸福なのである。

市終了後は、フルスピードで撤収作業に入る。本を縛りやすい大きさに積み重ねて集め、縛って行く。同時に空きスペースを広げて行き、什器を片付けて行く。売れ残った本は、ほんの一部を除き、すべて買い取ってもらうことにしている。そんな風にして精算作業も含めすべてが終了したのは、午後八時前。二日間お世話になった会場に別れを告げ、駅近くで盛林堂夫妻とささやかに打ち上げる。

さて、それではこの古本市を開催した結果、肝心要の我が家は、『人間としての住居』を取り戻せたのであろうか?今回およそ二千冊余りの本を運び出したことで判明したのは、我が家の蔵書量である。消えた本は目算で、およそ四分の一くらいであろうか。つまり元は八千冊ほどで、現在はそれが六千冊くらいになったのではないだろうか。だが、これでは残念ながら、それほどの変化は起こらない。古本山は小さくなったり低くなったりしたが、山は山として厳然と存在しているのだ。取りあえずは小さくなった山を合体させて、少しは生活スペースをを奪還するようにしたいものである。…人としての住居が戻る日は、まだまだ遥か遠いようだ…。
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これは居間の西南角にある山。高度が下がりだいぶ安定性が増した。
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こちらは居間北東の山。扉の開け閉めがしやすくなった。
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キッチン隅の山。高度が下がり、圧迫感が消滅。
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仕事場の山1。「古本屋ツアー・イン・ジャパン それから」を見ていただければ分かると思うが、手前の文庫の壁が激減した。その後に隠れていた本体も少し低くなり、部屋の見通しが良くなった。だが、なんだがガタガタに採掘した採石山のような不格好さが悲哀を誘う。
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仕事場の山2。乱掘により、ガタガタのヒドい状況に。だが大きさにそれほど変化はないのが不思議である。まぁちゃんと整理すれば、それなりに縮小するのだろうと考えている。

とこんな風に本が減ったのに、朝一番で「ささま書店」(2008/08/23参照)に向かい気持ちよく買物してしまう。桃源社「極楽とんび(上)(下)/宮本幹也」(ともに帯付き)新潮社「ぬいぐるみさんとの暮らし方/グレン・ネイプ 新井素子・土屋裕共訳」K&Kプレス「光は新宿より/尾津豊子」となかなかの本たちと出会い、興奮。他に青林堂「「無能の人」のススメ/竹中直人責任編集」を手にして計525円で購入する。
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2017年02月25日

2/25 1DAYS

本当に、誰も来ないかとシャッターが開くまで、心は落ち着かず常にヒヤヒヤしていたのだが、午前十一時の開場とともに、素晴らしき古本修羅(いつものように古本神含む)がドドドと雪崩れ込み、古本が乱れ飛ぶ天国のような光景が目の前に見事に広がり、歓喜するとともにホッと胸を撫で下ろす。
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無事に旅立ち、収まるところに収まってくれた、全国から集めて来た古本たち。新しいお家で幸せになるんだよと、そっと心中でむせび泣く。本日会場にお越しのみなさま、切に大感謝いたします。だがしかし!今回の古本市は2DAYSなのである。無事にどうにか午後六時まで駆け抜けた後は、さっさと家に舞い戻り、補充分を準備して値付けする作業に没頭する。
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疲労も蓄積し、何度もアタックした自宅内の古本山から補充本を掘り出すのは困難を極めるが、明日のために、明日来られる古本修羅のために、良い古本をちゃんと準備しなければいけないのだ!そう自分に厳しく言い聞かせ、手を動かし続ける…というわけで、明日も西荻窪で手ぐすね引いてお待ちしております。そして明日は、二日間の感謝を込めて、市終了二時間前の午後四時から、500円以下の本をすべて100均とし、タイムサービスセールを敢行いたします!もうとにかく、人間としての住居空間を取り戻すために、最後の最後まであがく所存です。それにしても、もはや眠い…果たして無事に値付けを終えることが出来るのだろうか…催事ってものすごく大変だ…古本屋さんって大変な仕事だ…と言うわけでみなさま、明日も西荻窪にて、古本笑顔でお会いいたしましょう!

★人間としての住居を取り戻すための「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」2DAYS!
■2/25(土)・26(日)
■両日共AM11:00〜PM6:00
■西荻窪「銀盛会館一階」(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
■後援「盛林堂書房」
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582
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2/24準備完了っ!

今日は朝早くから「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏の手を煩わし、第二弾の古本市用の本を二十本強運び出し、後はひたすら『銀盛会館』に缶詰になり、命を懸けて誠心誠意値付けする。だがその前にちょっと開店直後の盛林堂に立ち寄ると、最近まったく目を離すことが出来ない、本棚探偵の「ひとたな文庫」に、新たな補充が為されている。『本棚探偵シリーズ』の挿画原画がしれっと並んでいるのに度肝抜かれるが、一番心を鷲掴みにされたのは、常に恋い焦がれている九鬼紫郎のグルメ探偵・白井青児シリーズの一冊「魔女を探せ」がラインナップされていたこと!裸本だが構うもんか!すぐさま手に取り値段を確認すると、破格の二千円!喜んで今回も本棚探偵に膝を屈し、本日の盛林堂の一番客となって購入する。
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その後はちゃんと会館に閉じこもり、およそ八時間を底冷えするガレージで震えながら、値付けに大真面目に従事する。すっかり夜になって、艱難辛苦してすべてを終えたところに、お店の営業を終えた盛林堂夫妻が姿を現し、すぐさま会場の設営に取りかかる。その結果、こんな風な立派な光景となりました。
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本は雑本的ではありますが、100均・300均・500均を大量に取り揃え、探偵小説・文学散歩・建築・写真を中心に、わりと強固な本も安値でディスプレイしております。なので、なのでみなさま、明日明後日はどうか西荻窪の、たったひとりの古本市を冷やかしに来て下さい!よぅし、こうなったら明日、目玉商品として稲垣足穂の手紙も持ってくぞ!ではではみなさま、明日お会い出来るのを、心の底から楽しみにしております!

★人間としての住居を取り戻すための「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」2DAYS!
■2/25(土)・26(日)
■両日共AM11:00〜PM6:00
■西荻窪「銀盛会館一階」(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
■後援「盛林堂書房」
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582
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2017年02月23日

2/23古本市2DAYSの準備はスパルタ式!

一週間前と同じく、国立で野暮用をこなすと、やっぱり陽の落ちた駅南口。当然の如く、ビルのエントランス通路を店舗としている「みちくさ書店」(2009/05/06参照)の明かりに吸い寄せられる。
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入口から奥までの壁棚を見た後に、地下一階の店舗にさらに吸い込まれる…相変わらず堅固な棚造りだ…。真ん中棚の上に500均の「古通豆本」が集まっているのを見付け、ちゃんと袋付きの日本古書通信社「明治の貸本屋/沓掛伊佐吉」を購入する。そしてユラユラと阿佐ヶ谷に戻り、「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)の店頭棚に目を凝らす。補充に出て来た若奥さまと挨拶を交わした後、入口右横の棚でコミックやソフト本に挟まれた、肩身の狭そうな古いハードカバーの裸本に目が留まる。引き出すと、アニメーションの専門書であった。ずっしりとしたその本を開くと、アニメ制作の理論と実践が横書きでしたためられているのだが、大量に掲載されているアニメの白黒写真がエクセレント!1930年代〜1950年代の見たこともない海外アニメのスチールばかりで、CMアニメを中心に劇場用CM&オープニングアニメや実験アニメや人形アニメまでもが余すところなく載っていて、見ているだけで楽しいのだ!と言うわけで、昭和三十八年刊の東京中日出版局「アニメーション 理論・実際・応用/ジョン・ハラス ロジャー・マンベル」を103円で購入する。…週末の古本市で売ろうと思っていたが、これはもうしばらく手元に置いて、じっくり愛でることにしよう…。
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家に帰ったらいよいよ今週末に迫った古本市の準備にしゃかりきになる。先ほども「盛林堂」小野氏から電話があり、第二弾として準備した本の大体の量を伝えると、あの会場でちゃんとした市にしたいのならば、もっともっと用意しなければいけないと、ビシビシ指示されてしまった。盛林堂は、わりとスパルタ式なのである。というわけで、もう何度目のアタックになるのか不明だが、自宅各所の古本山に挑み、根性で本を選り分けて行く…これも。これも。これも。これも。これも!完全に自分のキャパを超えた量の古本たち…まぁこのくらいやらないと、本は減らないし、確かに二日間古本を売ることもおぼつかないだろう。もっと、まだ、がんばるんだ!そんな風に作業をヒイヒイ進めながら、いよいよ明日は第二回目の本の搬入と、会場設営と相成ります。おかげで本の山はだいぶ標高を下げたが、まだまだ本が足りないって言われるかも……。古本市って、大変なんだな…。
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2017年02月19日

2/19「あやかしや」をもてなした後、「書原」に別れを告げに行く。

夜に、大市のために上京した広島の古本屋「あやかしや」さんをもてなすために荻窪へ向かう。おもてなしの発案者は古本神の森英俊氏である。午後七時が開始時間だったのだが、仕事が押して遅刻したのを幸いに、夜の「竹陽書房」(2008/08/23参照)をこっそりと訪れてみる。
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おっ、今日の店番は店主夫婦ではなく、時々帳場に座り留守を預かっている老紳士か。では、店主の鋭い視線を気にせず、おおらかに買物が出来るぞ。やけにすっきりした店内だが、通路には市で落札して札を入れる封筒が付いたままの古本束が積み上がっている。そんなものをちょっと気にしながら、扶桑社「大船日記 小津安二郎の思い出/笠智衆」日刊工業「宇宙2025年/パトリック・ムーア」を計800円で購入し、もてなし会場の串カツ屋に駆け付ける。もてなすとは言っても、当然のことながら古本者ばかりが集まっているので、延々果てることのない古本話に終始する。最終的には、いつまでも堂々巡りで出口の見えない帯の話にぐったりしてしまう…いや、確かに面白いのだが、よくもまぁ、帯だけで一時間以上も話せるものだ…。そしてドサクサに紛れて、野村宏平氏につい先日発掘に成功した(2017/02/16参照)動物推理小説「ピースランド殺人事件」に厚かましく署名していただく。
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やった!これで古本の格が急上昇!聞けばこれはゲームのノベライズで、編集部に無理矢理執筆を依頼され、苦しんで苦しんでどうにかでっち上げた小説ということであった。そんな黒歴史的著作に署名していただき、ありがとうございます!ちなみにこの文庫、誰も持っていないと思っていたら、同席した「古書いろどり」(2015/12/12参照)彩古氏が「ボク持ってるよ」とさらりと宣った。うぅむ、さすがは古本神…。

午後十時に散会した後は、通常の帰宅コースは採らずに、丸ノ内線に乗って南阿佐ヶ谷下車。すると大河のような『青梅街道』対岸に、古い昭和四十年代的ビルの「芝萬ビル」が、不夜城のようにそそりたっていた。
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思えばここはとても不思議なビルであった。屋上にフットサル場があり、かつてはアニメ制作会社の『MAD HOUSE』や、エロDVD制作会社が入ったりしていた、まさにキング・オブ・雑居ビルとして君臨した歴史が、杉並の一隅に存していたのである。そしてその一階には『靴流通センター』と、阿佐ヶ谷の文化をどっしり支え続けた新刊書店「書原」が入居していた。だが、その文化のリレーも、本日2/19日をもって、ビル取り壊しのための閉店を迎えてしまったのである…嗚呼。自転車留めの鉄柵が乱立する階段下を突破し、上に駆け上がると、『靴流通センター』はすでに営業を終え、ビルのエントランスは「書原」の天下となっていた。
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これは、一時期南阿佐ヶ谷に住んでいた者としては懐かしく、夜に本屋が開いているホッとする光景なのである。だが店内は当然の如く、平常時とは完全に異なる状況となってしまっていた。お店との別れを惜しむお客さんが大挙押し寄せ、いつもの五倍増しほどの混雑を見せていたのである。店内に突入し、人と擦れ違うのが困難なほどの通路を、どうにか擦り抜け棚を検分して行く。あっ!ちゃんと本屋&古本屋コーナーに『古本屋ツアー』シリーズが並んでいる!ちゃんと取り扱ってくれてたんだと、なんだかとても感激してしまう。そんな店内を楽しみながら彷徨し、最後に購入する一冊を吟味。結局大好きな“夢ちゃん”こと、平山夢明「デルモンテ平山の「ゴミビデオ」大全」を購入し、記念に原稿用紙モチーフの書皮を巻いていただく。感慨に耽りながら表に出て、柱に大きく貼られた閉店の挨拶に視線を走らせる。その閉店挨拶の書き出しは、『昭和四十二年の開業以来、約半世紀にわたり〜』…えっ!俺とまったく年が一緒ではないか!とさらに感慨を深くして、万感の思いを込め、ビルとお店に別れを告げる。
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2017年02月18日

2/18粛々と古本市の準備を進め、家に戻って佐藤さとるを弔う。

日々、身体も心も、2/25・26に開催する個人古本市のために追い詰められて行く。昨日は夜に仕事が終わった後に、古本市を後援していただく「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏に、第一弾の古本山を運搬しに来てもらう。文庫はどうにか運び出せ、二往復目の単行本山を台車の上に形作り、エレベーターに載せて階下へ。だが、箱から外に出ようとした時に、単行本の結束が無様に次々と緩んでしまい、入口付近で古本雪崩を巻き起こしてしまう。すべては私の結束が緩いために起こるべくして起きてしまった、情けない事態であった…。このままでは誰もエレベーターに乗れなくなってしまうので、急いで本を退かし、小野氏が本束の再生に猛スピードで勤しむ…本当に申し訳ないっす…。どうにか車に運び込んだ後、西荻までの移動間に、小野氏から古本結束の大事さを、切々と説諭される。私は本を簡単に一文字に縛り、少し持ち運ぶことしか想定していなかった。だが、古本束の積上げに加え、台車移動や車での運搬を経由するならば、移動距離や振動での緩みを計算に入れなければならないのである。おぉ、そうこうしているうちに、後に積み込んだ私の結束部分は、早速緩みつつあるのだった…。
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写真はマンションロビーにて、臨時結束作業中の小野氏である。…本当にすみません…。

そして本日は、会場となる西荻窪『銀盛会館』にお昼前から独り閉じこもり、運び込んだ古本の値付を、ただひたすらマシンとなって継続する。100均・300均・500均に分けた本に、それぞれの値札をペタペタ黙々と貼付け続けるのである。やはり古本屋さんは、商品をただひたすらにどんな時も、作り続ける職業であるな…。そんなことをボヤ〜ッと、値札貼り付けハイに陥りながら思い出し、午後六時までに三分の二を片付ける。次回は来週金曜に再び会館に閉じこもり、新しく運び込んだ本と共に値付を再開し、会場の設営までどうにか漕ぎ着ける予定である。というわけでみなさま、2/25・26は西荻窪で古本とともに心底お待ちしております。さらにたくさんの人々に来ていただけるようみなさまのお力も借り、情報拡散もお願いする次第であります。

★人間としての住居を取り戻すための「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」2DAYS!
■2/25(土)・26(日)
■両日共AM11:00〜PM6:00
■西荻窪「銀盛会館一階」(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
■後援「盛林堂書房」
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582

…ふぅ、疲れた。そんな息が詰まるほど古本と対峙した本日のご褒美は、先日手に入れた背の消失した「地球盗難」(2017/02/13参照)の、健康を取り戻した姿である!値付作業の始まる前に、小野氏に危うくすべてのページが離ればなれになる寸前の「地球盗難」を手渡し、普通に読める程度の回復を望んだ修復をお願いしておいたのである。ところが、およそ四時間後の手術後の姿は、予想を遥かに超えた出来映えであった!さすがに糸かがりをするほど手間をかけるわけには行かなかったので、まずは背をボンドで固めた後、本をギュギュッと金槌等で圧縮し、無線綴じの要領で本としての形をまずは取り戻す。その後、お店にあった同じラヂオ科学社「地球盗難」の背をカラーコピーし、紙板でさらに背を補強してから、その上にコピー背を移植し、無事手術完了と相成ったのである。このビジュアルがフランケン的科学小説集……無事に読める!読めるぞ!本を開いても大丈夫だ!これで思う存分昭和十二年の風を、浴びることが出来るのだ!と喜んだ後に、早く読みたい気持ちを抑えながら値札貼りに邁進していると、気づかぬうちに「地球盗難」に値札を貼付けてしまいそうになる…危ない危ない。
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家に帰った後は、自主的な弔いをひとつ。今日の『朝日新聞』朝刊には、悲しい悲しい敬愛する佐藤さとるの訃報が掲載されており、大変にショックを受けてしまう。すでに今月九日に、八十八歳で亡くなられていたとのこと。とにかく私にとっては、昔住んでいた横須賀の“谷戸”を原風景として作品に生かした『コロボックルシリーズ』と「わんぱく天国」が、児童文学の忘れ得ぬ金字塔として輝いているのだ。悲しみに暮れながら、家にあった児童文学本を掻き集め、自主的に敬愛する作家を弔う。佐藤暁名義の本たちは特別な宝物であるが、コロボックルシリーズが『冒険コロボックル』としてアニメ化された時の帯が付いた「だれも知らない小さな国」(昭和四十八年の十四刷で、絵は村上勉)も即物的だが、とても嬉しい本なのである。『だれもの心の中に住む愛らしいコロボックルたち!!』『いま、日本中のテレビで大評判の「冒険コロボックル」その香り高い原作です!!』『土曜日の夜の人気者「冒険コロボックル」の主人公たち』『土曜のテレビで大人気!! 「冒険コロボックル」の名原作』などなどの惹句が、アニメキャラとともに踊っている。箱周りには、合計七つの『コロボックル』という言葉が散りばめられた事態に…とにかく佐藤さとる先生、素晴らしい物語をありがとうございました。私は多分老人になっても、「だれも知らない小さな国」と「わんぱく天国」を愛で続けると思います。
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2017年02月16日

2/15中央線重鎮の話に耳を傾ける。

午後に「中央線古本屋地図(仮)」の取材があり、そこに照準を合わせて始動する。テクテク歩き始めて「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、店頭棚から角川文庫「黄色い犬/ジョルジュ・シムノン」「箱舟時代/長田弘」新潮新書「SF魂/小松左京」を計315円で購入し、先日BSの番組『TOKYOディープ』に「コンコ堂」が出て来た感想をひとしきり伝える。そのまま荻窪までさらに進軍し、「ささま書店」(2008/08/23参照)でTRIAL Books「東京路線バスの旅」日本地歴企画調査会「わたしたちの文京区」(学校で配布された、郷土教材的副読本。本郷古本屋街の記述があり)を計210円で購入し、駅近くの喫茶店で岡崎武志氏と合流し、一時間半ほどたっぷり取材。紐解かれる中央線古本屋さんの歴史話に、うっとりと聞き惚れてしまう。…これは早くどうにかまとめて、みなさんにお伝えしなければ…というわけで鋭意編集作業中なので、どうかお楽しみに!

夜はある会合のために三宿に向かい、そのついでに「江口書店」(2010/03/29参照)に突入する。創元推理文庫「思考機械の事件簿V/ジャック・フットレル」ベースボール・マガジン社秘境探検双書「謎の山 アムネ・マチン/レナード・クラーク 水谷準訳」支那文献刊行會「迷樓記 外十一種/田村初」を計700円で購入する。嬉しかったのは大正十四年刊の「迷樓記」で、中国の珍談奇談怪談を集めたアンソロジー集。帳場前の本の山の底から背文字に惹かれて取り出すと、見事大好物な本だったのでニンマリ喜ぶ。
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2017年02月13日

2/13アニマル洋子〜反町茂雄〜海野十三

新高円寺での野暮用を済ませ、夜の兆候が頭上から舞い降りて来た『ルック商店街』を北へずんずん進んでいる。途中、緩やかな坂が始まる前の右手に、お店の入口すべてに防寒用ビニールを下げた「アニマル洋子」(2014/03/14参照)の冬の姿。店頭棚から、見たこともないシリーズ物B5版ムック、柳正堂書店「中部山岳放浪の記録 伝説と怪談」「甲・信・三河・秩父多摩・富士・昇仙峡をめぐる 伝説と怪談」共に泉昌彦を計200円で購入する。奥に座る店主と軽く挨拶を交わし、再び商店街を遡上して行く。
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ガード下の「都丸書店」(2010/09/21参照)では、店頭棚の隅に縦になっていた小冊子を引っ張り出すと、古書鑑定の権威であった反町茂雄の「弘文荘待賈古書目 第二十九號」であった。最近熊本より届いた「舒文堂河島書店」(2008/12/22参照)の目録に何冊か載っているのを見たばかりなので、素敵なめぐり逢いだと購入を決める。嬉しい三百円。門外漢な古文書や江戸版本が踊る目録なのだが、後学のために持っておくことにしよう。

そのまま歩いて家に帰り着くと、おぉ!ヤフオクの落札品が無事届いているではないか。多少息を荒くしながら封筒をひっちゃぶくと、現れたのは海野十三のラヂオ科学社「科学小説集 地球盗難」である!ふぅむ、こんなに厚い本だったのかと驚くと同時に、悲しみにも暮れる…予想外の安値で落札出来たのだが、もちろんそれには大きな理由があった。残念ながら背が消失しているのである。とは言ってもなんたって、戦前の海野のオリジナル本なのだ。松野一夫の無邪気とも言える装幀イラスト、横山隆一による著者シルエット、質感のある本文紙、そして活字で組まれた科学小説群…昭和十二年の風が本の中から吹き出してくるようではないか。小説は読んだことあるものばかりだが、この本でもう一度読めるのは、必ずや過分な幸福となるであろう。しかし本は、今にもバラバラに崩壊してしまいそうなほど、危うい状況。…これは、あの人に手術してもらうとするか。しっかり直ったら存分に読み込んで、さらに強く昭和十二年の風を浴びることにしよう。
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2017年02月12日

2/12必死に計三十六本の本束を縛り上げる。

今日は誠心誠意古本に一日を捧げることを決め、早朝午前七過ぎに家を出る。向かったのは門前仲町『富岡八幡宮』の骨董市である。『骨董市には開始時間の早朝から訪れるべし!』というのが猛者の定説であるが、時々当てはまらないことも起こり得る。それは!ゆっくり目に準備するお店がちょこちょこ見受けられるので、あまり早く着き過ぎると、目指すお店がまだ開いていないという悲惨な状況に陥ることがあるのだ。今日が案の定そんな日で、楽しみにしていた古本屋さんは、ダンボール箱すら開けていない悲しい状況であった開店を待ち望みつつ、冷た過ぎる早朝の空気を吸い込みながら、しばし境内フラフラ散策する。美術系古本のお店に、萩原朔太郎の「定本 青猫」が並べられているのに驚き、ある店では、家庭内ゴミ箱のような円筒ケースの中にソフビや人形消しゴムが詰め込まれているのを発見し、ガサゴソ漁ると、触角は折れて塗装も所々剥げているが、常に悲哀を誘う仲間外れライダー・ライダーマンをつかみ出すのに成功する。こんな状態だ、五百円くらいだったら喜んで買おうと思い、ちょっと高台にいる店主にソフビをグッと掲げ「これお幾らですか?」と聞くと「1500円」と苦虫を噛み潰したような顔で即答される。すまん、ライダーマン!と心の中で詫びながら、そっと円筒の中に人形を戻す。そんな風に楽しみながら時間を潰し、件のお店を再訪してみると、ダンボールは置かれているが、店主は他の店主と話し込んでしまっていた。主に雑誌付録や古い漫画が売れなくなって来たことを嘆いている。開いている箱の中を覗くが、紙物ばかりで収穫ナシ。早々にお店を離脱し、脇参道の開店中だったお店に行ってみる。すると先ほどより品物が増えており、見応えあり。古い郷土ガイド本の中から出版社も出版年月日も不明の「大東京百景寫眞帖」を千円で購入する。恐らく昭和十年代の、東京の名所や戦争記念物や街の様子を掲載した粗悪な写真集である。百景と謳っているが、実際に掲載されている写真は百六枚である。
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これはビルディングのページである。紙はわりと上質であるが、表裏で質感が異なっている。そこに戦争の影をユラユラと感じ取る…。

一旦家に戻って、再び外出。荻窪「ささま書店」を経由して、海文堂「帆船への招待/荒川博」朝日新聞社「ファディッシュ考現学/田中康夫」新潮文庫「昨日のツヅキです/都筑道夫」を計315円で震えながら購入してから、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。古本市の準備もそうだが、「フォニャルフ」を放置するわけにはいくまいと、ほとほとと補充する。後は店主・小野氏と市の打ち合わせや「中央線古本屋地図(仮)」の話や、市場で仕入れた垂涎の新入荷などを見せていただいたりする。だが、ここでいつまでもウカウカと楽しく話しているわけにはいかないので、早々にお店を離脱して帰宅する。そこから馬力をかけて、ひたすら古本の準備に没頭する。結局昼過ぎから夜九時まで休み休み続け、計三十六本(およそ千冊)の古本の束を作成する。
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…つ、疲れた…手の油が、すべて紙に吸い取られてしまって、カサカサだ…縛って積上げた本は、家にあるにはなかなか凶悪な量となったが、まだまだ本の山は減りそうにないな…根性で後千冊は用意しなければ…後半戦は残りの500均本とちゃんと値付する本の作成に傾注だな…疲れた身体と頭でそんなこと思いながら、本日の発掘した一冊を紹介。集英社の学習漫画「シートン動物記4 裏町の野良ネコ」。2015/02/07に牛久の「高島書店」(2009/04/23参照)で入手した、急逝した谷口ジローの超初期単行本なのである(名義は『谷口治郎』)。私にとっての谷口ジローは、「事件屋稼業」と「LIVE!オデッセイ」と「飢狼伝」と「坊ちゃんの時代」に尽きる。そして恥ずかしながら、本当は「事件屋稼業」の主人公・深町丈太郎のような大人になりたかったんだが、やっぱり、なれず終いだったなぁ。それでも諦められずに、せめてあんな高潔な精神で格好良く無様に生きられたらとは、今でもまだ思っているのだが…。
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2017年02月11日

2/11妙なスライドを買ってしまい早速持て余してしまう。

色々片付けつつこなしつつ彷徨い、気づいたら陽が落ちる瞬間の西荻窪駅北側。駅方面へと戻る途中で、裏通りの週末営業古本屋さん「TIMELESS」(2012年06月30日参照)の灯火に引き寄せられる。
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店内で暖をとりながら、主に入ってすぐ右側の棚を吟味。中間上段にちょっとだけ古い本が増えているな…おっ!背が少し壊れているが、新潮文庫の甲賀三郎「犯罪発明者」が…三千円かぁ。とため息をつき、隣りの筑摩書房「眞昼の暗黒/アーサー・ケストラー 岡本成蹊譯」を引き出してみる。見返しに『書き込みあり』ということで400円か。古本エネルギーを補充するために購入する。あれ?帳場に座る人が、ハンチングに白髪のナイスミドルだが、店主はもっと若い人ではなかったっけ…いや、それだけいつの間にか、時間がギュンギュン流れたと言うことなのかな…。後でセロハン袋から本を取り出し開いてみると、『書き込み』というのは、譯者が歌人夫婦に送った、献呈署名であった…。

阿佐ヶ谷に帰り着き、今日は覗くこと叶わなかった「J-house」(2015/12/26参照)朝市の残滓とも言える、店頭100均ダンボール箱を、すっかりあきらめムードでガサリゴソリ。すると予想に反して、面白気な物をいくつか発見してしまう。泰光堂「たのしいおり紙ときり紙/高橋春雄」とフジカラーのスライド箱を計200円で購入する。スライドは箱が可愛かったのと、中にちゃんとマウントされたスライドが詰め込まれていたので、好奇心が勝り購入を決意。家に帰ってから一枚一枚電灯に翳して目を凝らしてみると、昭和四十年代の、オヤジと少年(二人とも日本人)のアメ車旅行を撮影したものであった。面白いは面白いのだが、私はこれをいったいどうするつもりなのだろうか…。
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そして夜にまた古本市の作業をコツコツ進める。そんな今日の再読したかった発掘本は、講談社X文庫「ようこそ雪の館へ ルピナス探偵団/津原やすみ」である。現在、津原泰水名義の創元推理文庫「ルピナス探偵団の当惑」に収録された一話の、原型少女推理小説版文庫。確かまだツアーブログを始める前の、2006〜2007年辺りに、今は亡き鹿児島の「満遊書店」で100円で購入したものである。倉庫型店内にエスカレーターのある、大きなリサイクル系のお店であった。
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2017年02月10日

2/10「うつぎ書房」にて雪宿りする。

今日は中野で長々とお仕事。雪が散発的に降り始めた午後四時前に完遂し、フラフラフラフラと、時折風とともに舞い来る雪片を惚けるように楽しみながら、やがて新井薬師駅前広場…「文林堂書店」(2008/08/04参照)が開いている。店頭に出された本の悉くが、『強風のため置いています』と書かれた板きれに押さえられている。そう言えば今日初めて気づいたのだが、今の日除けはいつの間にか新調されたものであるなと、変わらず今は入れぬ二階と一緒に見上げていると、店頭棚の下段に目を凝らす素敵なオヤジさんがいつの間にか出現。お店のカオスさとマッチした、これぞ見事なまでの古本屋的光景である。
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オヤジさんを邪魔せぬよう店頭から二冊を手にして、中へ。じっくりすべての棚を、コックピット式帳場に座る店主のチラ見視線をあっけらかんと受け流し、見て回る。だが中では何にも手が伸びず仕舞い。早川書房「定本 半七捕物帳」講談社文庫「その夏の今は・夢の中での日常/島尾敏雄」を計400円で購入する。お店を出たらそのまま改札を抜けて西武新宿線下りに乗り込み、鷺ノ宮駅下車。橋上改札を抜けて階段を下り、南の妙正寺川前に出ると、突然恐ろしく雪が降り始め、まるで吹雪のようになる。ちょっとだけ雪を避けるために『中杉通り』を渡り、「うつぎ書房」(2008/08/06参照)にてしばしの雪宿り。
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店主は店内入口近くで、買取したコミックと文庫と同人誌の整理真っ最中であったが、飛び込んで来た珍客のために、作業を一時中止して、奥の座敷でやむを得ない一休みに入る、その隙にこちらは棚をキョロキョロと、服にこびり付いた粉雪を融かしながら楽しみ、奥の本の壁裏の棚にちょっと隠れていた、櫻井書店「北風ぞ吹かん/寒川光太郎」をどうにか引きずり出し、500円で購入する。外に出ると、おや、もう雪は消えている。

家に帰ってちょっと休んでから、ジリジリ古本市の作業に取りかかる。しばらくは地道な100均本作り…と手を動かしていたのだが、同時に目玉本を各古本山から取り寄せる作業も進めてしまう…楽しいが、悲しい…これを本当にお前は売ってしまうのか?と自問自答しながら生木を裂くようなセレクトを続ける…だが、これらの本を手にして喜ぶ人がいれば、それはそれで本望なのである。あっ!椅子の下から、再読したかった講談社現代新書「ファンタジーの世界/佐藤さとる」を発見!こんなところに紛れていたのか。やはり安針塚の思い出から始まる導入部、グッと来るなぁ…。
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まだまだまだまだまだまだ序の口な光景。しばらくここで仕分けをした後に結束し、ドバッと『銀盛会館』に運び込む予定なのである。
posted by tokusan at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする