2017年02月13日

2/13アニマル洋子〜反町茂雄〜海野十三

新高円寺での野暮用を済ませ、夜の兆候が頭上から舞い降りて来た『ルック商店街』を北へずんずん進んでいる。途中、緩やかな坂が始まる前の右手に、お店の入口すべてに防寒用ビニールを下げた「アニマル洋子」(2014/03/14参照)の冬の姿。店頭棚から、見たこともないシリーズ物B5版ムック、柳正堂書店「中部山岳放浪の記録 伝説と怪談」「甲・信・三河・秩父多摩・富士・昇仙峡をめぐる 伝説と怪談」共に泉昌彦を計200円で購入する。奥に座る店主と軽く挨拶を交わし、再び商店街を遡上して行く。
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ガード下の「都丸書店」(2010/09/21参照)では、店頭棚の隅に縦になっていた小冊子を引っ張り出すと、古書鑑定の権威であった反町茂雄の「弘文荘待賈古書目 第二十九號」であった。最近熊本より届いた「舒文堂河島書店」(2008/12/22参照)の目録に何冊か載っているのを見たばかりなので、素敵なめぐり逢いだと購入を決める。嬉しい三百円。門外漢な古文書や江戸版本が踊る目録なのだが、後学のために持っておくことにしよう。

そのまま歩いて家に帰り着くと、おぉ!ヤフオクの落札品が無事届いているではないか。多少息を荒くしながら封筒をひっちゃぶくと、現れたのは海野十三のラヂオ科学社「科学小説集 地球盗難」である!ふぅむ、こんなに厚い本だったのかと驚くと同時に、悲しみにも暮れる…予想外の安値で落札出来たのだが、もちろんそれには大きな理由があった。残念ながら背が消失しているのである。とは言ってもなんたって、戦前の海野のオリジナル本なのだ。松野一夫の無邪気とも言える装幀イラスト、横山隆一による著者シルエット、質感のある本文紙、そして活字で組まれた科学小説群…昭和十二年の風が本の中から吹き出してくるようではないか。小説は読んだことあるものばかりだが、この本でもう一度読めるのは、必ずや過分な幸福となるであろう。しかし本は、今にもバラバラに崩壊してしまいそうなほど、危うい状況。…これは、あの人に手術してもらうとするか。しっかり直ったら存分に読み込んで、さらに強く昭和十二年の風を浴びることにしよう。
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2017年02月12日

2/12必死に計三十六本の本束を縛り上げる。

今日は誠心誠意古本に一日を捧げることを決め、早朝午前七過ぎに家を出る。向かったのは門前仲町『富岡八幡宮』の骨董市である。『骨董市には開始時間の早朝から訪れるべし!』というのが猛者の定説であるが、時々当てはまらないことも起こり得る。それは!ゆっくり目に準備するお店がちょこちょこ見受けられるので、あまり早く着き過ぎると、目指すお店がまだ開いていないという悲惨な状況に陥ることがあるのだ。今日が案の定そんな日で、楽しみにしていた古本屋さんは、ダンボール箱すら開けていない悲しい状況であった開店を待ち望みつつ、冷た過ぎる早朝の空気を吸い込みながら、しばし境内フラフラ散策する。美術系古本のお店に、萩原朔太郎の「定本 青猫」が並べられているのに驚き、ある店では、家庭内ゴミ箱のような円筒ケースの中にソフビや人形消しゴムが詰め込まれているのを発見し、ガサゴソ漁ると、触角は折れて塗装も所々剥げているが、常に悲哀を誘う仲間外れライダー・ライダーマンをつかみ出すのに成功する。こんな状態だ、五百円くらいだったら喜んで買おうと思い、ちょっと高台にいる店主にソフビをグッと掲げ「これお幾らですか?」と聞くと「1500円」と苦虫を噛み潰したような顔で即答される。すまん、ライダーマン!と心の中で詫びながら、そっと円筒の中に人形を戻す。そんな風に楽しみながら時間を潰し、件のお店を再訪してみると、ダンボールは置かれているが、店主は他の店主と話し込んでしまっていた。主に雑誌付録や古い漫画が売れなくなって来たことを嘆いている。開いている箱の中を覗くが、紙物ばかりで収穫ナシ。早々にお店を離脱し、脇参道の開店中だったお店に行ってみる。すると先ほどより品物が増えており、見応えあり。古い郷土ガイド本の中から出版社も出版年月日も不明の「大東京百景寫眞帖」を千円で購入する。恐らく昭和十年代の、東京の名所や戦争記念物や街の様子を掲載した粗悪な写真集である。百景と謳っているが、実際に掲載されている写真は百六枚である。
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これはビルディングのページである。紙はわりと上質であるが、表裏で質感が異なっている。そこに戦争の影をユラユラと感じ取る…。

一旦家に戻って、再び外出。荻窪「ささま書店」を経由して、海文堂「帆船への招待/荒川博」朝日新聞社「ファディッシュ考現学/田中康夫」新潮文庫「昨日のツヅキです/都筑道夫」を計315円で震えながら購入してから、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。古本市の準備もそうだが、「フォニャルフ」を放置するわけにはいくまいと、ほとほとと補充する。後は店主・小野氏と市の打ち合わせや「中央線古本屋地図(仮)」の話や、市場で仕入れた垂涎の新入荷などを見せていただいたりする。だが、ここでいつまでもウカウカと楽しく話しているわけにはいかないので、早々にお店を離脱して帰宅する。そこから馬力をかけて、ひたすら古本の準備に没頭する。結局昼過ぎから夜九時まで休み休み続け、計三十六本(およそ千冊)の古本の束を作成する。
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…つ、疲れた…手の油が、すべて紙に吸い取られてしまって、カサカサだ…縛って積上げた本は、家にあるにはなかなか凶悪な量となったが、まだまだ本の山は減りそうにないな…根性で後千冊は用意しなければ…後半戦は残りの500均本とちゃんと値付する本の作成に傾注だな…疲れた身体と頭でそんなこと思いながら、本日の発掘した一冊を紹介。集英社の学習漫画「シートン動物記4 裏町の野良ネコ」。2015/02/07に牛久の「高島書店」(2009/04/23参照)で入手した、急逝した谷口ジローの超初期単行本なのである(名義は『谷口治郎』)。私にとっての谷口ジローは、「事件屋稼業」と「LIVE!オデッセイ」と「飢狼伝」と「坊ちゃんの時代」に尽きる。そして恥ずかしながら、本当は「事件屋稼業」の主人公・深町丈太郎のような大人になりたかったんだが、やっぱり、なれず終いだったなぁ。それでも諦められずに、せめてあんな高潔な精神で格好良く無様に生きられたらとは、今でもまだ思っているのだが…。
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2017年02月11日

2/11妙なスライドを買ってしまい早速持て余してしまう。

色々片付けつつこなしつつ彷徨い、気づいたら陽が落ちる瞬間の西荻窪駅北側。駅方面へと戻る途中で、裏通りの週末営業古本屋さん「TIMELESS」(2012年06月30日参照)の灯火に引き寄せられる。
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店内で暖をとりながら、主に入ってすぐ右側の棚を吟味。中間上段にちょっとだけ古い本が増えているな…おっ!背が少し壊れているが、新潮文庫の甲賀三郎「犯罪発明者」が…三千円かぁ。とため息をつき、隣りの筑摩書房「眞昼の暗黒/アーサー・ケストラー 岡本成蹊譯」を引き出してみる。見返しに『書き込みあり』ということで400円か。古本エネルギーを補充するために購入する。あれ?帳場に座る人が、ハンチングに白髪のナイスミドルだが、店主はもっと若い人ではなかったっけ…いや、それだけいつの間にか、時間がギュンギュン流れたと言うことなのかな…。後でセロハン袋から本を取り出し開いてみると、『書き込み』というのは、譯者が歌人夫婦に送った、献呈署名であった…。

阿佐ヶ谷に帰り着き、今日は覗くこと叶わなかった「J-house」(2015/12/26参照)朝市の残滓とも言える、店頭100均ダンボール箱を、すっかりあきらめムードでガサリゴソリ。すると予想に反して、面白気な物をいくつか発見してしまう。泰光堂「たのしいおり紙ときり紙/高橋春雄」とフジカラーのスライド箱を計200円で購入する。スライドは箱が可愛かったのと、中にちゃんとマウントされたスライドが詰め込まれていたので、好奇心が勝り購入を決意。家に帰ってから一枚一枚電灯に翳して目を凝らしてみると、昭和四十年代の、オヤジと少年(二人とも日本人)のアメ車旅行を撮影したものであった。面白いは面白いのだが、私はこれをいったいどうするつもりなのだろうか…。
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そして夜にまた古本市の作業をコツコツ進める。そんな今日の再読したかった発掘本は、講談社X文庫「ようこそ雪の館へ ルピナス探偵団/津原やすみ」である。現在、津原泰水名義の創元推理文庫「ルピナス探偵団の当惑」に収録された一話の、原型少女推理小説版文庫。確かまだツアーブログを始める前の、2006〜2007年辺りに、今は亡き鹿児島の「満遊書店」で100円で購入したものである。倉庫型店内にエスカレーターのある、大きなリサイクル系のお店であった。
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2017年02月10日

2/10「うつぎ書房」にて雪宿りする。

今日は中野で長々とお仕事。雪が散発的に降り始めた午後四時前に完遂し、フラフラフラフラと、時折風とともに舞い来る雪片を惚けるように楽しみながら、やがて新井薬師駅前広場…「文林堂書店」(2008/08/04参照)が開いている。店頭に出された本の悉くが、『強風のため置いています』と書かれた板きれに押さえられている。そう言えば今日初めて気づいたのだが、今の日除けはいつの間にか新調されたものであるなと、変わらず今は入れぬ二階と一緒に見上げていると、店頭棚の下段に目を凝らす素敵なオヤジさんがいつの間にか出現。お店のカオスさとマッチした、これぞ見事なまでの古本屋的光景である。
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オヤジさんを邪魔せぬよう店頭から二冊を手にして、中へ。じっくりすべての棚を、コックピット式帳場に座る店主のチラ見視線をあっけらかんと受け流し、見て回る。だが中では何にも手が伸びず仕舞い。早川書房「定本 半七捕物帳」講談社文庫「その夏の今は・夢の中での日常/島尾敏雄」を計400円で購入する。お店を出たらそのまま改札を抜けて西武新宿線下りに乗り込み、鷺ノ宮駅下車。橋上改札を抜けて階段を下り、南の妙正寺川前に出ると、突然恐ろしく雪が降り始め、まるで吹雪のようになる。ちょっとだけ雪を避けるために『中杉通り』を渡り、「うつぎ書房」(2008/08/06参照)にてしばしの雪宿り。
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店主は店内入口近くで、買取したコミックと文庫と同人誌の整理真っ最中であったが、飛び込んで来た珍客のために、作業を一時中止して、奥の座敷でやむを得ない一休みに入る、その隙にこちらは棚をキョロキョロと、服にこびり付いた粉雪を融かしながら楽しみ、奥の本の壁裏の棚にちょっと隠れていた、櫻井書店「北風ぞ吹かん/寒川光太郎」をどうにか引きずり出し、500円で購入する。外に出ると、おや、もう雪は消えている。

家に帰ってちょっと休んでから、ジリジリ古本市の作業に取りかかる。しばらくは地道な100均本作り…と手を動かしていたのだが、同時に目玉本を各古本山から取り寄せる作業も進めてしまう…楽しいが、悲しい…これを本当にお前は売ってしまうのか?と自問自答しながら生木を裂くようなセレクトを続ける…だが、これらの本を手にして喜ぶ人がいれば、それはそれで本望なのである。あっ!椅子の下から、再読したかった講談社現代新書「ファンタジーの世界/佐藤さとる」を発見!こんなところに紛れていたのか。やはり安針塚の思い出から始まる導入部、グッと来るなぁ…。
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まだまだまだまだまだまだ序の口な光景。しばらくここで仕分けをした後に結束し、ドバッと『銀盛会館』に運び込む予定なのである。
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2017年02月08日

2/8「なごやか文庫」の古本市と今年最初の「たけうま会」!

今日は楽しみにしていた「なごやか文庫」の「大古本市」(2012/02/15参照)初日である。午前十時からの開催に照準を合わせて家を出て、午前九時三十五分に東村山駅に到着。タッタカ歩いて文庫の入る『社会福祉センター』に突入すると、入口付近にはすでに常連の古本修羅&レコード修羅&絵本修羅が十人ほど固まっていた。なんとなく列が出来ているだけなので、奥の古本市会場に向かう態の、古本修羅の塊に何となく身を寄せておく。開場五分前に、職員の指示により確固とした列が形作られ、ラジオの音が流れ始めたのを合図に、列が突入を開始する。後から走って来て追い抜く、傍若無人な修羅もあり。私が目指すのはもちろん、入って右側の四本の古書棚である。パッと見た感じ良さげな並びで、期待に胸を膨らませながら、早くライバルが多数出現する前に見極めて行かなければと、さらに焦燥胸に渦巻かせて棚に張り付く。すると隣りに老年修羅が現れた。こちらが気になる本をスパスパ抜き出すのを見て「あぁ、いいなぁ。眼鏡がないと見えない。こりゃあ眼鏡をかけないと、何も分からない。いいなぁ、すぐ見えて」とつぶやき始めたので、「がんばりましょう!」と無責任に励ましつつ、手と目を素早く動かし続ける。今年は仙花紙本が多い気がする…ソ連関連も目立つな…。すると腕の中には、たちまち二十冊ほどの本が積み上がってしまった。古書は一冊二百円なのだが、これはちょっと買い過ぎだ。端っこに寄りつつ、抱いた本を改めて吟味し、必要なさそうなものを棚に戻しながら、もう一度じっくりゆっくりと棚を眺めて行く。すると当然の如く見逃した本がチラホラと見つかり、結局本が増えることに…阿呆か、俺は。もう一度端に寄り、さらに吟味してみる。それにしても、これだけ抱えてこれだけ迷うということは、今回の古書棚の質はかなり良いものであることの証明であろう(私にとってという意味で)。途中二階のレコード市を経由して現れた岡崎武志氏に、古本を抱えた姿を見つけられ声をかけられる。その後メイン会場も回ってみるが、文庫も単行本も新古書的な並びで、ちょっと手が出なかった。結局古書十七冊を計3400円で購入する。市は12日(日)まで。外の硬く浅いソファでお茶を飲みながら、岡崎氏と例の「中央線古本屋地図(仮)」について軽く打ち合わせつつ四方山話。富士塚話で小さく無邪気に盛り上がる。ちなみに私のお気に入りは、『品川神社』『代々木八幡宮』『十条富士神社』にある富士塚である。氏と別れ、二階を一周してから正午前には帰宅する。本日の特に嬉しい収穫は、森書房「歌姫物語/W・サッカレエ 平井呈一譯」東光出版社「少女小説 乙女ごころ/片岡鐵兵」(仙花紙本なのに二色の挿絵ページが所々に挿入されている)萬里閣「外地の魅惑/大宅壮一」(昭和十五年の大宅による南支・満蒙探索記。銀座「三昧堂」の古書ラベルあり)弘道閣パレット文庫「ロマンスグレー/平野威馬雄編」(新書サイズで箱に穴が空けられた造本を、何処かで見た覚えがあることに気づく…そうか、乱歩邸で見た楠田匡介の「能率的な事務の執り方」と同シリーズなんだ。内容は『ロマンスグレー』をテーマにした特殊なエッセイ集。嬉しいことに楠田が参加しており、オッサンの夢のような四人のギャルたちとの熱海旅行妄想小説を載せている)昭星社「開化飛龍車/宇井無愁」日本電報通信社「魔法の窓 テレビジョン/フランク・デンマン」(テレビ普及黎明期の啓蒙児童書。図版豊富で、最後はテレビジョンのSF的発展章で幕を閉じる。表4の『原子爆弾と並んで、世紀が生んだ奇蹟、テレビ!』とあるのがスゴい)岩波書店「プー横丁にたった家/ミルン作 石井桃子譯」(昭和十七年の初版である)久保書店昭和三十一年「かっぱ3月号」の八冊であった。それにしても、本を減らすために古本市を開くと宣言したばかりなのに、早速こんなに買ってしまった…。
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夜…というか午後五時から渋谷にて、今年初めての『たけうま会』。第一回目(2016/05/10参照)と同じく「たけうま書房」稲垣氏と「古書 赤いドリル」那須氏とお酒を酌み交わす。飲めば飲むほど無礼講となり、自己検閲せざるを得ない、古本屋界のお話盛りだくさん。でも最終的には、『古本屋稼業は苦しくはあるけど、とても楽しく人生を賭けるに値する!』という格好良いところに落ち着く。これからも迷わず付いて行きますので、引き続き楽しくもあり苦しくもありの古本屋さんの生き様を見せていただければ幸いです!
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2017年02月04日

2/4夜の「バサラブックス」で一日の疲れを癒す

日中を吉祥寺近辺で仕事して過ごす。気づけばすっかり夜となり、疲れた身体から気力を絞り出してズルズルと歩み、週末の賑わいを見せる駅周辺にたどり着く。すると突如、古本が買いたくなり、中央線高架南側に出て、ついこの間訪ねたばかりだが、棚の印象がすこぶる良かった「バサラブックス」(2015/03/28参照)に立ち寄り、己を慰めることにする。
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三角形の店内に入り、集中力をすっかり欠いたまま、棚に漫然と視線を注ぐ。河出文庫「贋作吾輩は猫である/内田百閨v洋泉社「ボンクラ映画魂/杉作J太郎」「幻の怪談映画を追って/山田誠一」を計1600円で購入し、お店のオリジナルプラ袋に三冊を入れてもらい(結婚式を迎えた花婿&花嫁の間に天上への階段が伸び上がるシュールなイラスト。こんなのあったんだ)、フラフラと帰路に着く。

もうこの『映画秘宝コレクション』の単行本1と3を、私は何冊買ったことだろうか。ともにもう二十年前の本なのだが、未だにこの二冊は、我が心の中に作るべき本のバイブルとして、燦然と輝いているのだ。片や東映映画出演男優の極私的&偏執的エンサイクロペディア(後に徳間書店からA5版の増補本として復刻されるが、本としては断然こちらの方が素敵なのである)で、片や大蔵映画や新東宝の怪談映画をマニアックに追跡したノンフィクション。この人たちが取り上げなければ、きっと時代の片隅に永遠に忘れ去られたであろう人や事柄についての集積が、見事な本になっているのである。己の独自の視点で、まさにその己にしかまとめえない仕事…いつか、いつの日か、この二冊に比肩する本を作ってみたいと、常に目指し願っているのである。だがやはり、その道のりは、まだまだ果てしなく険しく遠い…。
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2017年01月30日

1/29「音羽館」の楽しくもハードな長い一日

まずは28日土曜日の話から。仕事を終えて午後六時半過ぎの中野に駆け付け、駅近くの居酒屋で古本怪気炎を上げまくっている、古本神&魔神であると同時にド級のミステリマニアたちの飲み会に、畏れ多くも参加させていただく。新保教授の難問、親指と人差し指で作る小さい丸に通るポケミスは存在するのか…答えは、マーガレット・ミラーの「狙った獣」が、驚くほどクナクナシナシナの軟体本で、キュキュッと丸めると容易に通ってしまうのである…こんなおかしな紙のポケミスが、存在していたとは…(ちなみに教授は、この本だけが特殊なのかと思い、もう一冊「狙った獣」を買ってみたところ、やはり同様にクナクナだったという)。さらに話は北原氏のホームズ狂に及ぶや否や、東京メトロのCMで、すぐ近くの『中野ブロードウェイ』を探索するホームズ姿の石原さとみポスターの話になったのだが、目の前の三人(新保博久氏・三橋暁氏・北原尚彦氏)の三人ともが、まったくその名を思い出せない事態に陥っていた!「ほら、あの『シン・ゴジラ』でアメリカ帰りの変な英語を話す女の子!」などと、名は思い出せないのに、イメージだけを共有し合い、納得しているのである。しかも何故かみんな笑顔で、とてつもなく楽しそうなのである。仕方なくヒントとして「石!」と一言叫ぶと、「あ〜!石原さとみだ!」と北原氏が満面喜悦で記憶を引きずり出すのに成功した。古本やミステリに関する話題は、即座に回路が直結するのに、疎いところは大いに疎い…全く持って愉快な方々である。楽しくビールを飲み過ぎたが、明日は西荻窪「音羽館」で一日バイトしなければ!と、遅れて来たのに早めに退散してしまう。
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明けて29日、西荻窪に向かう前に、道すがらの「J-house」(2015/12/26参照)に当然の如く立ち寄ると、むぅ、今日も古めの映画パンフが少々出ているではないか!と途端に色めきたち、急いで繰ってみる。すると「ウエストワールド」と「夜の大捜査線」に目が留まり、計200円で購入する。早速電車内でパンフを開いてみると、「夜の大捜査線」の方には様々な当時のものが、楽し気に挟み込まれているではないか。フランス映画のチラシ二種、吉祥寺東映のガリ版ニュース。中でも嬉しかったのは、「007カジノロワイヤル」(丸の内東宝)の三つ折りチラシである!すぐさま頭の中に、バート・バカラックのあの軽快な曲が流れ始める…今日は何だかいい日になりそうだ。

正午前に「音羽館」(2009/06/04参照)に到着すると、店はまだシャッターを下ろして沈黙しており、待っていたのは古本屋内装のエキスパートである中村敦夫氏だけであった。挨拶を交わしつつ、何故か去年の「七七舎」バイト時に続き、またまた頑丈な特製木箱をいただいてしまう。木箱の差し入れ…決して通常では体験出来ない、異常な出来事である…。そうこうするうちに、店主・広瀬氏が現れ、先輩バイト氏も自転車で颯爽と登場し、ついに長い長い「音羽館」の一日がスタートする。シャッターを上げ、まずは店の中から店頭棚や箱類を引きずり出し、開店準備が進められて行く。その間、私は店頭を掃き掃除し、その後店内の木床に掃除機を満遍なくかけるのを、初めての「音羽館」仕事とする。
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するとたちまち開店を待ちかねたお客さんが姿を見せ始め、半開店状態の店内を、鋭い目で容赦なく観察し、本を買って行く。その後もお客さんは、ひっきりなしに訪れ、分かっていたつもりなのだが、「音羽館」が凄まじい古本屋であることを、改めて思い知らされてしまう。いわゆる古本好きの方々も多いが、メインの客層は二十代〜三十代の男女なのである。そして100均だけではなく、惜しみなく高額の本を買う人もコンスタントに登場する。葱を提げた主婦も本を買って行く。このお店に寄らないと調子が狂うと言う方や、地方から訪ねて来た人も登場し、結局店内は、常に活気を見せているのである。そんな怒濤の営業時間の中、主に受け持った仕事は、広瀬氏が次々値付けする本を、店内と店頭に補充することであったが、これがキリなく間断なく継続し、営業中はずっとずっと果てしなく続くお仕事なのである、特に均一棚の補充は、入れても入れてもブランクが生まれて行く、恐るべき回転率を誇っていた(そして本を並べるところを間違うこと、多々あり。均一と店内を間違え、さらには店内でジャンルは何となく分かるも、微妙な本を何処に並べたらいいのか迷うことしきり。普段は偉そうに店内棚のジャンル分けなどをしているが、とても一筋縄では行かぬことに、お店というものの奥深さを切々と感じ取る…)。
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途中そんな作業をずっと続けながらも、外に出した買取本の山を、先輩バイト氏と連携プレイで見易く整理した上に、ちょっとこの中からすぐ棚に並べられそうな本と、100均に並べる本の選別作業をいきなり任され、面食らってしまう。
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だがその作業は当然の如く楽しく、軽く偉そうに疑似古本屋さん的気分を、充分に味わってしまう。「サヨナラだけが人生だ」や木村伊兵衛の戦後すぐの粗悪紙写真集「TOKYO FALL 1945」(ただいま驚異の7000円で販売中。ヒィ〜ッ!)などを見付けて、大いに興奮してしまう。選別したそれらを、すぐ値付けしてもらい店頭に並べると、「ミコのカロリーBOOK」や写真家・井上青龍の図録が瞬く間に売れたりして、小さな感動を体感する。その後は品出しを続けつつも、帳場で本のクリーニングにも従事。
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そこから次第に恐るべきレジ作業にも参加して、緊張しながら慎重に愚直に売買の基本を取り扱う。夕方十五分、夜に一時間の休憩を終えると、今日初めて、店内にお客さんが誰もいない一瞬が生まれる。その間に広瀬氏と古本屋さんについて大いに話し込む。高原書店時代や近所の過ぎ去っていた古本屋さんの話、新しく出来るお店の話、などなど。先輩バイト氏とは、故郷いわきの古本屋話で盛り上がる。晩ご飯が済んだ頃とおぼしき午後八時過ぎには、昼間ほどではないのだが、再び人の流れが生まれ始める。その人の波が再び凪いだところで、お店の横で本の結束作業。不器用&不手際ながら五本ほどをグルグル縛る。そんな風にまじめに仕事し、気づけばいつのまにやら午後十時半。広瀬氏と先輩バイト氏は、車への結束本積み込み作業に従事、その間だけ、たった一人で心細くありながらも、ひとりでレジを受け持つ。
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いやぁ、古本屋さんの仕事はとても興味深く肉体労働も存分に混じりながらも、やっぱり楽しいものであるな。最後のお客さんを無事に送り出し、午後十一時を過ぎ、ついに店頭を撤収してシャッター下ろして、本日の営業終了。
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バイト代をいただく前に、さり気なく抜け目なく目を付けていた本を買うことにして、バイト代から遠慮なくさっ引いてもらうことにする。函ナシだが、春秋社「浜尾四郎随筆集」を1000円で並べたのに頭をかち割られたようなショックを受け、棚に並べた時点から「どうか売れないでくれ!」「ミステリファンなど、今日は一切「音羽館」に来ないでくれ!」と真剣に願い、無事に売れずに誰の目にも留まらずに、十一時間を駆け抜けたのである。さらに函ナシの國際文献刊行會「怪奇草雙紙畫譜/尾崎久彌」(和本の幽霊&妖怪絵盛りだくさん!)と一緒に計2000円で購入する。当然高らかに、どひゃっほうと叫べる案件である。

本日お越しいただいたみなさま、言葉を交わしていただいたみなさま、差し入れをいただいたみなさま、本当にありがとうございました。今後とも新生と言いつつ、それほどの変化はないがスッキリとして良い本をドドドと次々品出しし始めている「音羽館」さんを、何とぞよろしくお願いいたします!というわけで本日の嬉しい収穫を、いただいた木箱の中に収めてみました。…でも、やっぱり疲れたな。毎日これをやるのは、身体が慣れるまでは、とても大変なことである。しばらくは身体の奥にこの疲労を抱え、日々を過ごすことになるだろう。
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2017年01月28日

1/27阿佐ヶ谷〜南阿佐ヶ谷〜神保町経由、トークイベント

夜の「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏とのトークイベントに照準を合わせつつ、午後三時過ぎに家を出る。手始めに「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、日曜の「音羽館」でのバイトに従事する旨を、先輩たる天野氏にお伝えする。講談社文庫「ブラックウッド怪談集」創元推理文庫「恐怖の愉しみ 上・下/平井呈一編訳」を計309円で購入する。その後は駅前に出て『中杉通り』をグッと下り、区役所で野暮用を済ませた後、地道に閉店セールを続けている「あきら書房」(2016/03/28参照)に顔を出す。誠文堂新光社「忘れえぬ広告人/森崎実」(電通創始者の評伝。最近話題となった『鬼十則』を提唱した人でもある)東都書房「翳ある落日/戸川幸夫」創元社「岡倉天心 東洋の理想」ヨネザワ「ギミア・ぶれいく 史上最強のクイズ王決定戦」(ファミコンカセット。ちゃんと箱と取説付)を計200円で購入し、夕暮れの神保町に乗り込む。ブラブラとすっかり陽の落ちた街をパトロールするも、なかなか古本に手が伸びず、何も買えない時間が過ぎ去って行く。そんな午後六時に、生物科学と工学の殿堂「明倫館書店」の前を通りかかると、お店にそぐわないケイブンシャの大百科別冊や、八十年代の飛び出す絵本が店頭台に置かれているのに出くわす。誰も見向きもしないそれらに飛びつき、サンリオポップアップえほん「めいろ スヌーピーのうちゅうたんけん」「めいろ キキとララのうみのぼうけん」を計500円で購入し、奇妙な満足感を得る。共に新品同様で、壊れている箇所は見受けられない。スヌーピーは300円、キキララは200円と、安くはあるのだが、しっかりと値付しているのがなかなかニクい。
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その後は「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)二階の「ブックカフェ二十世紀」にて、ちょっと声の掠れた向井氏と一時間半トーク。氏のスリリングなイベントに賭ける半生を、たっぷりとマシンガンのように語っていただきました。花の金曜日においで下さったみなさま、本当にありがとうございました。荻原魚雷氏と浅生ハルミンさんが列席下さったのも、大変に嬉しかったです!トーク終了後、ハルミンさんに『俳画カレンダー』という、ハルミンさんと南伸坊氏と嵐山光三郎氏のコラボによるカレンダーを「もう、一月が終わろうとしているのにすみません!」を謝られつついただきました。
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とまぁ、こんな風に楽しく一日を過ごさせていただきました。帰りは懇親会ですっかり酔っぱらい、阿佐ヶ谷に帰りたかったのに、中央特快に乗ってしまい、気がついたら三鷹駅で呆然としている始末…。ではみなさま、次回は1/29の「音羽館」バイトでお会いいたしましょう。ひとまずはおやすみなさい〜。
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2017年01月25日

1/25色々お知らせと、あるひとつの決意

今日は仕事で様々な所を駆けずり回っていたので、悔しいことに古本屋さんに行けず終い…。そこで代わりと言ってはなんですが、これからの活動予定を少々お知らせいたします。

まずは近いところで1/27(金)に、「古書現世」店主であり、本を触媒としてつながる組織『わめぞ(早稲田・目白・雑司が谷』の首領である向井透史とトークいたします。神保町の「ブックカフェ二十世紀」で定期的に開催されるトークイベント『古本屋的!』の一環ですが、私は主に聞き役を務め、向井氏が何故あんなにイベントを行うのか?あの凄まじい人脈とブッキング力の秘密は何か?古本屋バブル時代はそんなにすごかったのか?などなど、根掘り葉掘り聞きまくるつもりです。お店ではいつも楽しく長話させてもらってますが、向井氏と公の場で話すのは初めて。何処まで深く切り込めるか、大いに楽しみなのです!恐らく当日直接会場に来ていただいても大丈夫なので、お時間あれば是非ともお越しください!

連続講座 古本屋的!! 第五回「店から街へー広げる古本屋」
■向井透史(古書現世)×小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
■1月27日(金)
■ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
■19:00〜20:30
■会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,000円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀まで、メール(jimbo20seiki@gmail.com)か電話(03-5213-4853)にてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c
「早稲田青空古本祭、外市、月の湯古本まつり、みちくさ市、LOFT9 BOOK FES. などなど、あれこれやってきた実感について話しますんでお願いいたします」とは向井氏の言。普段は早稲田に思いっきり腰を据え、出不精の向井氏を神保町で見るのもレアな機会ですので、私からも何とぞよろしくお願いいたします!

続いて1/29(日)に、本日25日にリニューアルオープンした西荻窪「音羽館」を自分なりに祝うために、お店で終日バイトさせていただきます!恐らく広瀬氏に鞭でピシンピシンしばかれながら労働していますので、みなさま新しく船出したお店と古本を楽しむとともに、哀れな私を冷やかしに来て下さい!あっ、良く考えれば、これで私は阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」や三鷹「水中書店」の後輩となるわけか…。

名付けて「勝手に古本屋ツアー・イン・音羽館!」
■1/29(日)12:00〜23:00(予定)
■西荻窪「音羽館」東京都杉並区西荻北3丁目13−7 ベルハイム西荻窪 1F

そしてさらに、昨年十二月から続いている大阪・梅田の「梅田蔦屋書店」での『古ツアお蔵出しフェア』は、未だに奇跡的に継続中です!そろそろ良い本からポロポロ売れ始めていますが、まだまだまだまだ相場より安めの良書や変な本がたくさん揃っております。古書コンシェルジェが、停滞せぬよう棚に風を吹かせていますので、引き続きよろしくお願いいたします!

『古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也のお蔵出しフェア』
■ルクア イーレ九階「梅田蔦屋書店」内カフェ『4thラウンジ』壁面

そして最後に、あるひとつの決意をお知らせします。大阪だけで『お蔵出しフェア』を行っていては、日頃お世話になりまくっている東京に申し訳ないので、二月の終り辺りに、超絶的な古本お蔵出しフェアを開こうと考えております。これは、自分自身への挑戦であり、また古本で埋まりつつある住居を、再び人間の住み易い空間に少しでも戻すための、決意なのであります。どこまで掘り起こせるか、どこまで値付出来るか、何処まで運び出せるか…すべては私の努力如何となるでありましょう。理想的には、掘れるだけ掘り出して、なるべく安値で販売しようと思っていますが、果たしてこの一月余で、何処まで出来るかが鍵…嗚呼!揺るがないでくれ、俺の決意!怠けないでくれ、本の準備!詳細は決まり次第お知らせいたします。そして、準備や古本発掘の様子は、当ブログでもお伝えしていくつもりである。…とこういう風に言ってしまえば、もうやるしかないので、粉骨砕身突き進みます!

閑話休題。お知らせだけでは味気ないので、先日買った古本「藝術寫真 作品と作法」(2017/01/20参照)の余話をひとつふたつ。伝説の写真家・安井仲治の写真技術論考掲載を大いに喜んでいたのだが、良く見るとちゃんと安井の写真も掲載されていた。しかも大胆な自画像が!その写真を使い、当時の最先端に近い加工技術を伝えているのである。これは、嬉しさ倍増である。
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もうひとつは久野久という作家について。目次に有名無名の作家の名が、ズラズラと羅列されいてるのだが、この名だけが妙に心に引っ掛かった。記憶を必死に探ったり、ネットで調べてみると、以前、日本の昭和初期の新興&前衛作家展のカタログで、この人の作品を見ていたことを思い出した。タイトルは確か『イルフ逃亡』となっており、腰まである草原の真ん中で、外に向かって円陣を組んだ背広姿の男たちが、四方に前傾して走り始める瞬間を捉えた、不思議で幻想的な味わいを持つモノクロ写真である。そのカタログを持っているはずなので必死に探したが、残念ながら見つからない…フェアのために掘り出して行けば、いずれ見つかるかも…。確か作家データは詳細不明で、ネットで調べても個人的な情報はほとんど浮かび上がって来ない。その代わりに、彼が所属していた九州の写真倶楽部は『ソシエテ・イルフ』ということが判明する。この倶楽部の結成は1939年。「藝術寫真 作品と作法」は1937年発行で、結成以前のものである。だからまだ尖る前なのか、写真に前衛的なところはなく、夜の家族団らん晩ご飯風景を写したほんわかした作品に仕上がっている。あの、まるでルネ・クレール監督の、シュルレアリストが大勢出演する実験映画「幕間」のような写真を期待していただけに、大いにがっかりしてしまう。だが、最後に掲載された『制作データ及び解説』を読むと、『展覧会用作品としてかねて考へて居た晩餐二部作の内の一枚である。小市民的な暖かい気分の晩餐と、シヤンデリア輝く豪華な然し冷たい上流家庭の晩餐とを以て二部作となすのであるが〜』などとあるではないか。おぉ!何だかやはり前衛が萌芽していたのではないだろうか!こうなると俄然その二部作で見たくなってしまう。ちなみにこの写真は、四晩通い詰め、ようやく撮れた一枚とのこと。背景は久野自身が手を入れているらしく、良く見ると、確かにこの日本間には似合わぬ、妙な写真や物体が、写り込んでいる。
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ああやっぱり、こんな風に昭和初期とダイレクトにつながれる古本は、素敵だな。まるで何時でも何処でも乗り込める、精神的タイムマシンじゃないか。
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2017年01月20日

1/19古本屋の買取を手伝い、古本市に行き、古本屋さんたちと呑む!

週ごとの慣例として、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の「フォニャルフ」棚に色濃く補充(只今意外にレア本を相場より安く並べておりますので、みなさまぜひお誘い合わせの上西荻窪へお越しください)。角川文庫「中央アジア秘法発掘記」を100円で購入する。そして今日はそのままバイトとして盛林堂さんの買取を手伝うのである。やることと言えば、主に古本束の運び出しと積み込み。家から廊下に出し、台車に乗せてエレベータ−で一階に下ろし、その後車にバンバン積み込む。それを素早く三往復繰り返し、すっかり車のサスペンションを重くして、百本ほどの結束本を午後三時前には無事に運び終える。とてもスピーディーに仕事を終わらせても、しっかりとバイト代をいただき、そのまま中央線から丸ノ内線を乗り継いで銀座に急行する。昨日が初日だった「第33回 銀座古書の市」に、館内で迷いながらもたどり着き、例年より落ち着いた感のある古本市をのんびりと楽しむ。わりと厳かで上品な会場を巡回し、「えびな書店」さんから、朝日新聞社「藝術写真 作品と作法」を800円で購入。イベントスペース最奥の、壁際に設置された本棚の最下段で見付けたものであった。昭和十二年刊で、写真作品としては桑原甲子雄などが掲載されており、アマチュアとプロを交えた作家の作品をまとめた一冊なのである。それらの様々な写真も嬉しいのだが、この本を買った最大の目的は、なんと巻末の技術紹介ページに、伝説の写真家・安井仲治の論考が入っていたのである。いや、これは嬉しい。文自体が、二人の人物が軽妙に話す対話形式なのも嬉しい。
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カバーの背はボロボロで、かろうじて一部で繋がっており、油断すると蝶の羽のように開いてしまいそうだが、丁寧に丁寧に扱い、現状をどうにか維持しながら特設レジで精算する。応対してくれたデパートのご婦人は、最初そのまま本を袋に入れようとしたが、はたとその手を止め「これは私の技術では…」とつぶやいた後、危ういカバーが切れることを恐れ、まず本自体を薄紙で厳重に梱包した後、改めて袋に入れていただく。お気遣いありがとうございます!

そして夜、西荻窪に舞い戻り、「盛林堂書房」に「ただいま!」と帰り着き、買って来たばかりの本にパラフィンをかけてもらう。その後の夜は岡崎武志氏の発案で、「音羽館」(2009/06/04参照)広瀬氏や開店準備中の「むしくい堂」さんや国分寺の「七七舎」(2016/02/06参照。もうすぐ開店一周年である)さん、それに「盛林堂」夫妻を囲み、新年会を開催。というわけで、「音羽館」さんは1/25(水)に営業再開予定なのだが、それを祝って何故だが1/29(日)に一日店員となって労働し、ちょっとでもお店を盛り上げる所存であります。みなさまどうか、お誘い合わせの上、古本を買いに来ていただければ!

とこんな風に一日を、古本屋さんにどっぷりと関わり過ごしてしまう。…私は果たして、何処へ向かおうとしているのであろうか……。
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2017年01月16日

1/16実相寺饅頭本!

夕方まで三鷹で長仕事。無事に終わらせ、疲弊して夕暮れの街を行く。北口に出て「水中書店」(2014/01/18参照)に誘い込まれる。ここのテント看板は、いつ来てもキレイで、ピンと張っているな、と感じつつその下で店頭棚を眺めてから店内へ。木床をギチギチと鳴らして歩き、棚から棚へ。映画棚から探し求めていた一冊を抜き取り、帳場にて精算する。「星の林に月の舟/実相寺昭雄」を600円で購入。通路でお客さんにお薦め本を尋ねられ、懇切丁寧に応えている店主・今野氏に、失礼ながら割り込んでご挨拶。あることをお願いしているので、とにかくよろしくとお伝えする。外に出ると、釣瓶落としに暗くなって行く時間帯。夜になる前にと、慌てて買った本を取り出し、お店の前で記念撮影。
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この本、ただの「星の林に月の舟」ではないのである。装幀や内容はほぼ同じなのだが、実は出版社名が無く、薄めで軽め。それに新たな写真や年表が加えられているのだ。これは、ウルトラシリーズや『帝都物語』の映画監督・実相寺昭雄が死去した時に、記念として復刊されて配られた、いわゆる“饅頭本”なのである。この本をひょんなことから知ったのは、去年の「しのばずくんの本の縁日2016」(2016/11/03参照)であった。本の雑誌社ブースにて、必死に「古本屋ツアー・イン・京阪神」を販売していると、やって来たのは日本古典SF研究会会員の妖怪大大大大大大大好きナカネ君。本を買っていただき、ちょっと話し込んでいると、お互いの古本成果を見せ合うことになった。そこで彼から見せられたのが、この饅頭本だったのである。境内横の古本台で目にした記憶があり、よくある普通の「星の林に月の舟」だと思って、当然スルーしていた。だから最初は何故これを?と訝しんでいたのだが、手渡されると感触がおかしい。薄くて軽いのだ。そして「これを見て下さい」とページを開いて取り出したのは、実相寺夫人からの挨拶葉書であった。うわっ!完全にやられた!こんなスゴい本を見逃していたなんて!と大いに悔しがり、頭の中に古本傷としてしっかり刻み込まれていたのである。あれから二ヶ月…こちらは残念なことにハガキは無いが、それでも確かに同じ饅頭本!ようやく我が手に落ちた本を開き、新たに追加されたグラビアページの、円谷プロ・怪獣倉庫前の階段に座る実相寺のモノクロ写真に再会の喜びを覚え、感慨深く見入ってしまう。
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2017年01月15日

1/15昨日をなぞり、違う一日となる。

昨日と同パターンで行動を開始する。まずは午前十時に「J-house」(2015/12/26参照)にいそいそと駆け付け、朝市箱の中に大正四年の雑誌を見出す。大正天皇御大礼の特集本、富山房「新日本 御大禮特集号」である。表紙の杉浦非水デザインは美しいが、普段だったら食指の動くものでは決してない。だが、この本の目次を見た瞬間『これは買わねばなるまい!』と心を躍らせ、結局100円で購入する。B5サイズの古雑誌を自宅ポストに投函しておいてから、軽く走りながら高円寺へ向かう。今日は昨日より寒さが厳しい。そして今日は誰にも会うことなく、「西部古書会館 大均一祭」(2013/09/08参照)二日目の100均祭会場に到着する。始まったばかりの祭の人出は、昨日より遥かに落ち着いており、各棚を容易に見ることが出来る。まぁほとんどが昨日の残りなのだ。さもありなん。だが今日もカゴ一杯に古本を詰め込んでいる人は、たくさんいる。なんたって全品100円なのだ。見たことのある棚をチェックしながら、昨日『100円だったら買ってもいいな』と思った本を探すが、案の定そのほとんどが姿を消していた。野田宇太郎編集の雑誌「文学散歩」、やはり買っておけばよかった…。後悔の念をぐっと飲み込みながら、無理せず二冊を手にしてウロウロしていると、ミステリ評論家・新保博久氏と遭遇。さらにカゴ一杯に本を詰め込み「タガが外れちゃった」と言いながら松坂健氏も合流。二人のミステリの鬼に挟まれ、昼食を共にすることとなる。騒人社「名作落語全集 第六巻 滑稽道中篇」スポーツ新書「プロ野球三国志 青春篇/大和球士」を計200円で購入する。「コクテイル書房」(2016/04/10参照)狩野氏は、今日は帳場で大忙し。駅前のルノアールに場を移し、昼食を摂りながら古本&ミステリ四方山話に花を咲かせる。新保教授、何と先日宇都宮の古本市に行かれた際に、ついでにと雀宮の「すずめ書房」(2010/04/10参照)を、ちゃんと電話して訪問したとのこと。店頭で風雨にさらされた本の山は消え去り、キレイになっていたが、二階から下りてきた店主は、そろそろ閉店するようなことをつぶやいていたらしい。そんなことになったら、宇都宮近辺の古本屋事情は、より一層寂しくなってしまうであろう。それにしても、教授のアグレッシブな行動には感心してしまう。普通の人は、あのお店絶対に行かないですよ!さすがは古本神!その後も書庫の話や007の話やミステリの話を間断なく続ける。このミステリ深度の深いお二人の話しにはとても付いていけず、曖昧な笑みを浮かべたまま、話に加われず目を白黒させてしまう。なんたって、ある作家名が出ると、すぐに作品名が羅列され、次にそれぞれの物語の内容、さらにはトリックの種類までが、ツルツルと淀みなく排出されるのだ。しかもそれらを、ちゃんと共通の情報として、即座に認識し合うのである。いったいどれだけ本を読んだら、こんなことになってしまうのだろうか…。一時間半ほどで解放され、二人と駅で別れ、昨日と違いタッタカそのまま家へと戻る。そしてさらに昨日をなぞるように、ワンクッション置いて西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)を目指すのだが、昨日「フォニャルフ」棚がわりと減っていたので、補充の本を抱えて家を出る。もちろんテクテク歩いての「ささま書店」(2008/08/23参照)経由は欠かせない。すべて昭和二十五〜六年の岩谷書店「宝石」三冊を計315円で購入し、さらに行進して西荻窪へ。「にわとり文庫」(2009/07/25参照)店頭に正月均一祭の名残のような100均棚が設置されているのを目撃し、ようやく盛林堂に到着する。キリッと補充をすませ、ちょっと印象が変わる。レア本、そこそこ並べていますので、引き続きよろしくお願いいたします!店主・小野氏とひとしきりお話しした後、今日は何処にも寄らずに阿佐ヶ谷に戻り、そのまま帰宅する。昨日をなぞったような一日だったが、買った本も、出会った人も違う、これは、今日という日であった。

ここで話は冒頭の古雑誌に戻る。いったい何を目次に見つけ、買ってしまったのか。それは、こんな赤いハンコが、ペタリと捺されていたからである。
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雑誌とはまったく関係ない、他社のハンコ。しかもそれは探偵小説「フアントマ」三版出来の宣伝ハンコだったのである!『村上静人編 探偵奇談フアントマ 定價金四十五銭 郵便六銭 大好評三版出来 東京神田裏神保町 發行所芳文堂』とある。もしかしたら「フアントマ」が載っているのか?と色めきたってページを繰るが、もちろん載ってはいなかった。芳文堂の人が、たまたま手元にあった雑誌に、試し捺しでもしたのだろうか。とにかくこんなハンコが存在したのにまず驚き、続いてハンコ本体をかなり欲しいと思ってしまう(「フアントマ」のハンコ!それだけで、うっとり)。国立国会図書館のデジタルライブラリーで検索すると、大正五年の本で290ページ。デジタルデータ(モノクロ)で全文読むことが出来るようになっている。…あぁ、いつか何処かの古本屋さんで、本物の実物に、お目にかかりたいものだ。それにしてもこのハンコは、どのような用途で使われたのだろうか?出版案内の郵便物や広告に捺されていたのだろうか?それとも書店などで、袋にペタペタ捺していたとか…?その「フアントマ」つながりで、現在所持の「ファントマ」を集めてみた。とは言ってもコーベブックスのものは見つからなかったので(取り出せなかったとも言う)、二冊だけである。博文館「新青年」附録の「ファントマ」と博文館文庫の「フアントマ」である。もちろん美文文語体の久生十蘭譯。両方ともちゃんと松野一夫の素晴らしい挿絵入りで、博文館文庫は「第二ファントマ」も合わせた分厚いものとなっている。
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2017年01月14日

1/14均一小僧に連れ回される

土曜日は、決まりきったいつものパターンで行動開始。外は極寒だが、だらしない部屋着に少しだけ上着を羽織っただけで飛び出し、まずは午前十時に阿佐ヶ谷の古道具屋「J-house」(2015/12/26参照)。朝市箱の中を覗き込み、郷土玩具の山の下から、PAN AMのトランプ二種(MoroccoとEngland)を発見し、200円で購入する。手ぶらで出てきたので、後ポケットにトランプを突っ込み、軽く走りながら高円寺へ向かう。これならそんなに厚着でなくとも、寒くならないのだ。途中『庚申通り』で、ぱりっとした身なりの「コクテイル書房」(2016/04/10参照)狩野氏と擦れ違いざまの挨拶を交わす。そんな風に「西部古書会館 大均一祭」(2013/09/08)に到着すると、ガレージはそれほどでもないのだが、館内は通常の二倍ほどの大混雑!これが『全品200円均一』の力なのか!棚前は古本修羅垣が二重になっているので、背伸びして透かし見たり、腰を屈めて覗き込んだり、隙を見つけて入り込んだり、素直に順番を待ったりと、200円の古本への接近をあれこれ試みる。すると入口近くで肩を叩かれたので振り返ってみると、そこには古本神・岡崎武志氏の姿があった。現在の時刻は午前十時二十分。こんなに早く氏が混雑を極める会場に姿を現すとは…さすが均一小僧!と思わず懐かしいニックネームで呼びたくなってしまう。その場で昼食を共にすることを約束し、一時間ほどフリー状態で会場を彷徨う。小冊子や古本屋の目録が目につく一日目である。洪洋社「アメリカ土人藝術」(函ナシで大正十五年刊。南米〜北米〜アラスカまでの主に仮面や人形の民具を集めた写真集である)日本建築学会「日本建築学会80年略史」(造家學會の「建築雑誌 第一號」縮刷版付き)福音館書店「日本伝承のあそび読本/加古里子」輝文館「薄化粧/武田麟太郎」(裸本で貸本印アリ)大同出版社「裸体ポーズ集/寺田政昭編」(出版自体は昭和三十二年だが、中の裸体写真はどうみても戦前のものである。しかも雑誌からの切り抜きが多く、まるで個人的なスクラップブック的合成具合が、雑過ぎて逆に面白い)を計1000円で購入する。嬉しかったのは「日本建築学会80年略史」のグラビアページ。なんたって、日本建築学会のレジェンドたちが、ズラリと掲載されているのだ。辰野金吾・横河民輔・佐野利器・岸田日出刀・妻木頼黄・片山東熊…たまらん!
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それにしても、見事にオッサンばっかりだな…。

出口で岡崎氏と合流し外に出ると、再びコクテイル狩野氏と鉢合わせ。二度目の挨拶を交わして歩き始める。さて、これから昼食に行くのかと思ったら、氏は「当然これから西荻窪に行くんやろな?」「えっ?いや、そのつもりはなかったんですが…」「この流れで、西荻窪行かないのは、あかんやろ」「はい。行きます…」ということで、電車に乗って西荻窪に向かうことになる。ちょっと出てきただけのつもりだったのに…。西荻窪では『日高屋』でまずは昼食を摂る。対面に座る氏は、注文した後は泰然自若としながら、買ったばかりの古本のクリーニングに入る…まるで目の前だけが、古本屋になってしまったようだ…。つるっと麺をたいらげた後は「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、たまたま店内にいた芦辺拓氏や、大山の「ぶっくめいと」(2009/08/05参照)店主と新年の挨拶を交わす。小野氏からは、まだ棚に並べぬレア本をホレホレと見せびらかされ、無様に心中に涎を垂らす。國枝史郎の日本小説文庫「隠亡堀」!こっちは保篠龍緒の「白狼無宿」!うわっ、なんだこの二重厚着カバーの同じく保篠の「七妖星」はっ!ぬぬっ?改造文庫クロス装の「血染めのパイプ」だっ!などと切歯扼腕。魂を弄ばれるひと時を過ごす。
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クロス装版の探偵小説文庫!初めて見た!初お目見え記念に、お願いして写真を撮らせてもらう。なので買ったわけではないのである。

もろもろ打ち合わせをして、氏とともにお店を辞去する。「せっかくだから、「音羽館」(2009/06/04参照)の様子、見にいこかぁ。広瀬くん、おるかなぁ」と、高架下を潜って北側に出て音羽館前に到着すると、ちょうど音羽館号がお店の前に横付けされるグッドタイミング!運転席から滑り出した広瀬氏と、これも新年の挨拶を交わし、休業中のお店にちょっとだけ入れてもらう。すると店内通路は、結束本の山となっていた。荷物が詰まり、左室には進めぬ状況である。そしてちょっと広くなった帳場スペースを見せてもらい、リニューアル開店日は1/25(水)であることを教えていただき、さらにコンビニ袋に入って積み上がった買入本の山を、「この辺古い本ありますから、どうぞ袋から出して見ちゃって下さい」と勧められる。お言葉に甘えて、十弱の袋から本を取り出し、浅ましく検分。毎日新聞社「チョップ先生/今日出海」を100円で購入する。するとお店に、見慣れぬ若者が入って来た。聞けば新しく入ったバイトさんとのことである。何となく「コンコ堂」(2011/06/20参照)天野氏や「水中書店」(2014/01/18参照)今野氏と雰囲気が似ている。もしや背が高く面長で丸眼鏡という容貌は、音羽館バイトの必須条件なのでは…。氏と二人で音羽館の未来を新バイトさんに託し、お店を出る。『西友』内を通って駅前北口に出ると、空から粉雪が舞い始めた。「岡崎さん、雪ですよ!」「ほんまや。雪や。初雪やなぁ」とオッサン二人が、しばし空から舞い落ちる雪片に見蕩れてしまう。

ホームで氏とお別れして、ようやく家に帰れると、電車に乗って阿佐ヶ谷駅。『中杉通り』を震えながら歩いていると、「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)がちょうど開店準備中で、オヤジさんとばったり。これもまた新年の挨拶を交わしながら、ついでにお店を見せていただく。創元推理文庫「フレンチ警部最大の事件/F・W・クロフツ 長谷川修二訳」を300円で購入し、ようやく朝の古本散歩を終えて帰宅と相成る。
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2017年01月13日

1/13神保町トーク『古本屋的』詳細判明!

お昼から吉祥寺で野暮用をこなし外に出ると、いつの間にやら夕闇が迫り、空には冬の雲が濃紺の宇宙をバックにして、美しく鮮やかに広がり、気温がとてつもなく急降下中。服の隙間から入り込む冷気に閉口しながら、久しぶりの「百年」(2008/09/25参照)。安売棚から一冊抜き取り、児童文学棚と対峙していると、ぬぉっ!これまた久しぶりに講談社「カポンをはいたけんじ/槇ひろし」を古本屋さんで見かけてしまう(恐らく2008/08/27にツアーした三鷹台の今は亡き「B-RABBITS」以来。実に七年ぶりの再会というわけか…)。愛らしい薄緑のミュータン人と、アイテムである姿を消す服が巻き起こす騒動を描いた、児童文学の名作である…だが、値段はしっかりか…さすが本の価値を見逃さぬ百年!取りあえず久しぶりのお店で、久しぶりの本を見られたのは幸せであった。雪華社「毒薬/保刈成男」を324円で購入する。そのまま13日の金曜日で賑わうアーケード商店街を抜けて、『五日市街道』沿いの「藤井書店」(2009/07/23参照)へ。城壁のように結束した本が美しく積み上がる店内をスルスル抜けて、奥の階段に足を掛けて踊り場の棚から文庫を一冊。徳間文庫「新・日本SFこてん古典/横田順彌 會津信吾」を180円で購入する。電車の中でようやく暖をとって阿佐ヶ谷に戻り、「千章堂書店」(2009/12/29参照)であかね書房「いたずらラッコのロッコ/神沢利子」(初版でちゃんとビニールカバー付)を100円で購入。最後に『中杉通り』の「銀星舎」(2008/10/19参照)に立ち寄り、店主ご夫婦お二人と新年の挨拶を交わす。二人とも古本屋の話が大好きなのでたくさんそんな話をするのだが、時々二人がお互いの記憶を巡り、軽く口喧嘩を始めるのが何とも微笑ましい。まったく新年早々仲の良いことである。ハルキ文庫「コナン・ドイルの心霊ミステリー/コナン・ドイル」を300円で購入し、何の変哲もなく古本を安く買った感じで、ようやく家に帰り着く。

そして着替えるや否やかぶりついたのは、昨日買ったばかりの雑誌「推理ストーリー」。宮野村子や樹下太郎や千代有三の読切りを楽しみつつ、ミニコラムの渡辺啓助が海女映画を撮った話などに驚きながら、一番楽しんでいるのは長編読切の「ふし穴/島久平」!アパートの二階に住む貧乏サラリーマンが、畳を上げた床板の節穴からのぞく、直下の部屋の、めくるめく女と金の世界!なんだこりゃ、まるで乱歩の「屋根裏の散歩者」を思わせる背徳&窃視な導入部じゃないか!と大喜びし、続きが読みたくてしかたなかったのである。いや、持ち歩いて電車の中などで読んでもいいのだが、雑誌はB5版で表紙がこんな感じなので、とてもとても車内で開く勇気は…。
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※昨日お知らせした、わめぞの首領「古書現世」向井氏とのトークですが、詳細が判明いたしました。
連続講座 古本屋的!! 第五回「店から街へー広げる古本屋」
■向井透史(古書現世)×小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
■1月27日(金)
■ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
■19:00〜20:30
■会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,000円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀まで、メール(jimbo20seiki@gmail.com)か電話(03-5213-4853)にてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c
「早稲田青空古本祭、外市、月の湯古本まつり、みちくさ市、LOFT9 BOOK FES. などなど、あれこれやってきた実感について話しますんでお願いいたします」とは向井氏の言。普段は早稲田に思いっきり腰を据え、出不精の向井氏を神保町で見るのもレアな機会ですので、私からも何とぞよろしくお願いいたします!
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2017年01月11日

1/11『本棚探偵の補充』と「ひるねこBOOKS」開店一周年!

午前中にまずは定番のコースと言っても良い、徒歩で「ささま書店」(2008/08/23参照)に向かい、駒込書房「石川善助作品集」青土社ユリイカ叢書「錬金術/R・ベルヌーリ 種村季弘訳論」文藝春秋「百日物語/中谷宇吉郎」を計315円で購入してから西荻窪に至る。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に気合いを入れて補充しつつ、店内にいた、もはやヤフオク古本神と化している塩山芳明氏(この時はグラビア誌「写楽」の転売について熱く激しく語られる)と新年の挨拶を交わす。小山書店少年少女世界文庫「街の少年/豊島與志雄」「アンデルセン マッチ賣の少女」「ピーターパン/ヂェイ・エム・バリ」(すべてカバーナシ)を300円で購入し、店主・小野氏と少し打ち合わせをしてから、今日は滞店時間短く、家へ引き返そうとスパッと別れを告げる。駅方面に向かって緩い坂を上がり、横断歩道を渡って歩道屋根の架かる駅前商店街に差し掛かると、あっ!正面から本棚探偵・喜国雅彦氏が、スカジャンの上に笑顔を乗せて歩いてくるではないか。聞けばこれから「本棚探偵のひとたな書房」の補充に向かうところだと言うので、貴重な『本棚探偵の古本補充』を目撃すべく、あっけなくお店に引き返すことにする。道すがら、手作りの箱に包まれた「紙魚の手帖」全揃いや「TOMOコミック名作ミステリー」などをチラ見させていただく。店頭にたどり着くと、喜国氏は何故か店内には向かわずに、店頭文庫台に対峙して一冊の文庫に手を伸ばす。それは、何の変哲もない春陽文庫の乱歩「緑衣の鬼」…「持ってるけど、何冊でも欲しくなっちゃうんだよな」…いや、もう絶対完全に買う必要ないでしょう!そんな突然の、古本者にしか分からぬ店頭ミニコントを終えて店内へ進み、いよいよ補充を目の当たりにする。床に赤いトートバッグを下ろし、TOMOコミックをガバッと掴み、収めた!小酒井不木原作の「少年科学探偵 消えたプラチナ」がっ!続いて「笑う肉仮面」(コピーカバー)やカーター・ディクスン原書を並べて行く。それを左斜め後ろから息を詰めて注視し、『本棚探偵が、探偵小説を並べている!』と秘かに欣喜雀躍してしまう。途中、函入り本を懸命に押し込もうとして、バコン!と言う音とともに函が壊れる悲しい一幕も。おぉ、本棚探偵の悲劇!などとそれすら一瞬楽しんでしまう。さらにそこに小野氏が顔を出し、「あっ、「笑う肉仮面」のカバー、コピーさせてもらえばいいじゃん」などと、私が裸本を所持しているのを知っているので(2016/11/19参照)、強制的アドバイス。だが、カラーコピーをさらにカラーコピーすれば、劣化するのは必至…それはまるで海賊版の様相を呈してしまうのではないかと逡巡すると、喜国氏が「コピーは100円ね」と追い討ちをかける。うぅん、どうしよう…。それにしても、本棚探偵がこんなにマメに補充を行うなんて、まったく想定していなかった出来事である。…いつかこっそり何か買おう…。

夜に再度外出し、根津の裏路地の、開店一周年を迎えた古本屋さん、「ひるねこBOOKS」(2016/01/11参照)に駆け付ける。するとお店では、これから始まる一周年記念パーティー準備の真っ最中であった。厚かましく中に入り込み、本棚をたっぷり眺めた後に、さらに厚かましくパーティーに参加してしまう。平日なのに、続々と集まる奇特で素敵な方々。「ひな菊の古本」(徳利&お猪口持参の日本酒担当)・パワフル「雨の実」一家・「レインボーブックス」・「ベランダ本棚」・「あおば堂」(2016/12/11参照)などなどなどなど(敬称略)が一堂に介し、平和な祝祭的時間を形成。そしてお店は、時間を追うごとにギュウギュウになって行く。そこはまるで一周年記念と言うか、お店の誕生日を心から祝うような優しさに満ちあふれた、幸福な空間と化して行く。そんな中で、「古本屋さんにおにぎりを置きたかった」と、新し過ぎる古本屋へのアプローチを試みる女子の登場に、大変カルチャーショックを受けてしまう(その試みは見事実現し、おにぎりは小ぶりで種類多数で美味)。日本酒をパカパカ飲みながら、存在をまったく知らなかった講談社「スイッチョねこ/朝倉摂・絵 大佛次郎・文」を800円で購入する。安泰・絵のバージョンはもちろん最強なのだが、全ページに白猫が躍動するこちらも、なかなか捨て難いものがある。頃合いを見計らい、まだまだ続くパーティーから離脱し、箱入大判絵本が入った袋をぶら下げて、冷たさを増す風が吹き付ける根津の街から、フラフラ帰路に着く。
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そんな楽しいパーティーの様子。みな幸せそうに食べ物に群がっています。
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2017年01月07日

1/7午前中の三手で満足を得る

■一手目:午前九時二十分
今日はどのように動こうか思案していると、小箱のゆうパックが届く。楽しみにしていたヤフオクの落札品である。品目はざっくりした『昔の子供の本』。十冊ほどの学習雑誌や歌本や付録などがまとめて出されていたのだが、その中に心を突き動かす一冊が、さりげなく紛れ込んでいたのを、しっかり見逃さなかったのである。おかげでライバルなく千円にて落札。その一冊とは小学館「女学生の友」昭和三十三年7月号付録「電光ヤマネコ娘/城戸禮」である。あの多作大衆活劇小説家の長編少女明朗小説!読みたかったんだ!つまりはこの一冊のためだけに十冊余の本を買ったわけであるが、嬉しさの方が遥かに大きく、後悔の念はまるでない。今晩ビールでも飲みながら楽しく読もう。
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■二手目:午前十時五分
そういえば、ご近所の古道具屋「帰ってきたJ-house」(2015/12/26参照)では、今年初めての土日店頭朝市が開かれている。これを見ずに年は明けないので、すでに猛者が群がるお店に向かってみると、端っこに猛者が見向きもしない一冊100円映画パンフラックが置かれていた。五十センチ左横の戦闘を他人事のように涼しく眺め、パンフを一冊一冊繰って行く…七十年代の物が多く、有望な鉱脈の予感…ぬぉっ!昭和四十年公開の東宝映画「クレージー・キャッツ結成10周年記念映画 大冒険」が出てきた!やったぞ!特技監督は円谷英二だ!今年も初っ端からありがとう、J-house!他にヘラルド「11ぴきのねこ」と小学館・音の教材「歌のおばさん・松田トシ・シリーズ」(四角いピクチャーレコード)を選び、計300円で購入する。
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■三手目:午前十時四十五分
一旦家のポストに戦利品を放り込み、そのまま手ぶらでテクテク歩いて高円寺。すでに「西部古書会館」(2008/07/27参照)の「杉並書友会」が、恐ろしいほどの新年古本市初めの熱気を漲らせていた。古本修羅の間に分け入り、あっという間に己も修羅の一員となる。だが、すでに「大冒険」パンフを掘り出した喜びが、心に異様なほどの余裕を齎しているので、たくさんのライバルに揉まれようがぶつかられようが、まったく意に介さずほとんど本も手にせず、通路を擦り抜けて行く。だが最後チェックした右壁棚手前の一本で、二人の修羅の尻越しに、気になる一冊を発見してしまう。手を伸ばして取り出すと、それは労働運動系の児童小説なのだが、帯には『少年探偵』の文字が!目次を開くと、そこにも『なんとか探偵をしたいもんだ』『五人の探偵はそろった』『もうひとり女の探偵がいた』『いよいよ探偵らしくなってきた』『ぼくらは探偵をしたんです!』と、やたらに“探偵”の二文字が踊っているではないか。これはもう、探偵小説好きにはたまらん!と抱え込む。新潮社「鉄の町の少年/国分一太郎」文芸評論社「近代作家/楠長之助・神津久人」紀元社「大陸をのぞく/寺本五郎」(函ナシ。銀行頭取の満州見聞記。滿鐵『あじあ號』についても、“流線汽關車流線型”との記述あり)を計1300円で購入する。ちなみにこの工場内少年探偵団、工場で起こった盗難事件を、地道で真面目で綿密な捜査をして証拠を集め、犯人を理詰めで追い詰めて行きます…。
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というように、幸せな古本三手を午前中に打ち終わってしまったので、「古書 赤いドリル」那須氏と「なごみ堂」(2016/08/14参照)店主と年始の挨拶を交わした後は、すっかり満足を得てそのまま家へと帰ってしまう。
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2017年01月06日

1/6音盤市に飛び入り参戦することになる

今日の古本的行動は、まず午前九時過ぎに家を出て、西武新宿線で東村山「なごやか文庫」(2012/01/10参照)の、文庫10円・単行本30円の棚卸しセールに向かうことから始まる。車中の読書は押川春浪「東洋武侠團」なのだが、主人公の蠻勇侠客・段原劒東次が、常軌を逸した強さを誇るのが愉快でたまらない。恐らく軍隊一個中隊(歩兵約200人)ぐらいは、一人で軽く蹴散らしてしまうだろう。あまりの狂った強さに、ついつい互角に闘える大人物を、頭の中で検索してしまう。…『刃牙シリーズ』の範馬勇次郎、『魁!男塾』の江田島平八、それに『北斗の拳』のラオウなら、充分に対抗出来るかもしれない…。そんな脳内与太話にうつつを抜かし、棚への補充真っ最中のお店に到着。
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見境なければバカバカ買えるかもしれないが、真剣に選ぶとそれほど多くは手が出ない。結局、新潮社「殿さま生活/星新一」山と渓谷社「バックパッキング入門/芦沢一洋」白揚社「数学マジック 数学を使う奇術全書/マーチン・ガードナー」光文社文庫「少年の眼/川本三郎選」を計100円で購入する。本は新たに作られたであろう、オリジナルビニールバッグに入れてもらう。

一旦家に戻り、昼食を摂りながら死蔵している音楽CD二十枚を、家の中から掻き集める。午後に再び外出。「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)で店主・天野氏と年始の挨拶を交わしつつ、ゼラチンシルバーセッション2008「SAVE THE FILM」東京こども図書館「おしらせ 東京こども図書館1〜20」(1974〜79年の四ページのペーパー群。石井桃子・瀬田貞二・中川李枝子・渡辺茂男らが一ページ目のコラムを執筆している)文藝春秋「文藝春秋六十年の歩み」を計309円で購入する。新宿を経由して雑司が谷へ向かい、『弦巻通り』の奥の奥の「JUNGLE BOOKS」(2010/08/20参照)にたどり着く。半地下の店内に入り込むと、ジャングルユキさんは占いの真っ最中で、ジャングルケンさんは明日の市準備の真っ最中であった。ここで明日から三日間「MUSIC FAIR2017音盤市」という、大の音楽好きたちがCDやレコードなどを放出するお祭りが開かれるのである。昨年のわめぞ忘年会時に、ジャングルユキさんが誘ってくれたので、畑違いではあるが、飛び入り参加することになったのである。それにしても、届いた荷物に目を凝らすと、己の持ち込んだ二十枚が、なんと貧弱なことか!そのほとんどが、八十〜九十年代のマイナー&忘れ去られた日本人アーティストやおかしなCDなのである。せめて一枚でも売れれば嬉しいのだが…というわけで、いつものように「フォニャルフ」の札入りで並べていますので、ご興味ある方はぜひとも雑司が谷へ!ハヤカワ文庫「日本SF古典集成U/横田順彌」を800円で購入する。
「MUSIC FAIR2017音盤市」について詳しくは→http://jbooks.exblog.jp/

CDを託してお店を出た後は、テクテク目白方面まで歩いて久しぶりの「貝の小鳥」(2009/06/14参照)。日本児童文学の良い出物はないかと、瀟洒な店内を一周するが、結局そんな思いとは真逆のような、なにわ塾叢書「われらが古本大学/天牛新一郎」を684円で購入してしまう。大阪「天牛書店」創始者の対話講座録である。塾生全員に配られたという『古書籍賣買生活八十年』の自筆色紙が羨ましくてたまらない…。大阪といえば、大阪「梅田蔦屋書店」の『4thラウンジ』壁面古書棚にて、場違いに変な本・おかしな本・良い本・ミステリなどが激しく自己主張する「古ツアお蔵出しフェア」が、ありがたいことに新年も奇跡的に継続中なので、引き続き可愛がってやってください。よろしくお願いいたします!
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2017年01月05日

1/5古本年賀を貰い、二種の二笑亭に頭を捻る。

戻ってきた冬の冷たい風に吹かれて、「ささま書店」(2008/08/23参照)で広済堂「蠅男/海野十三」を315円で買ったりしながら西荻窪に駆け付け、まずは「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に補充。あ、どひゃっほう本の宮本幹也が売れているじゃないか。などと喜び、店主・小野氏と、そろそろ本腰を入れなければならない古本屋本第三弾制作についてと、今年前半の『盛林堂ミステリアス文庫』デザインスケジュールなど、色々打ち合わせる。そしてもったいないことに、「年賀です。今年もよろしく」と古本をいただいてしまう。日本小説文庫「細君行状記/辰野九紫」!大好きな作家のひとりである。…これは、あれだな…今年も色々手伝えと、言うことだな…。というわけで、お店の前で嬉しい文庫を記念撮影。
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まだまだ家には帰らずに、中央線でさらに西に向かって立川下車。北口に出て『フロム中武』三階で行われている「立川フロム古書市」に向かうと、建物内が新建材でピカピカになっている。以前の地方デパート感は消え去り(2011/04/22参照)、古本市が開かれている場所も、階段近くの新たなL字型催事場であった。
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武蔵野近辺のお店が出店しており、およそ三十台のワゴンが並ぶ古本市…なんだか年末の松戸の古本市(2016/12/28参照)と似てるな…ということはもしかしたら……あぁ!やっぱり!付録漫画箱の中に「バスカヴィル家の犬」の翻案じゃないかと疑った捕物漫画が、ちゃんとあるではないか。ここで会ったら百年目ということで、一か八か買うことにする。スペースが少し小さいためか、ワゴン下にもたくさんの古本プラケースが置かれているので、しゃがんでいる時間が結構長くなってしまう。昭森社「二笑亭綺譚/式場隆三郎」桃源社「地球SOS/小松崎茂」講談社少年クラブ九月号ふろく「へのへの茂平次 白い魔犬/ふるさわひでお」を計2200円で購入し、粗品の黒ボールペンを一本いただく。今日は古本屋さんに、色々いただく日だな…。市は1/22(日)まで。そして「白い魔犬」は、残念ながら「バスカヴィル」の翻案ではなく、生類憐れみの令の禁を犯した籠屋が、島流しの途中に脱走して江戸に舞い戻り、逆にお上が手を出せない犬を手なずけて犯罪に使役するというストーリーでした…。

さらに「二笑亭綺譚」である。私はすでのこの本を所持しているのだが、会場で見かけた本に違和感を覚え、思わず購入してしまった。家にあるものとは、異なる感じがしたのである…。あ、やっぱり全然違う。まず大きさが違う。そして色が違い、片や赤系で片や緑系。そしてさらに函も違い、片やしっかりした函であり、片やホチキス留めのボール紙。本体も違い、表紙に箔押しタイトルがあったりなかったり。背の色も、片や柿色、片や青緑。意匠も微妙に違っている。見返しの紙も、片や青緑、片やカーキ。本文紙の質も違い、目次の位置も違っている。それでいて、両方とも昭和十四年九月五日再版のB版となっている。全体的には、今日購入した本の方が、遥かに質の良い造り…これはいったいどういうことなのであろうか?
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2017年01月04日

1/4思い直して踵を返し、本当に良かった…

正月明けに、なんとなく遠くに行きたくなってしまうが、どうやら遠くに行きたいというよりは、長い時間のんびりと、電車にガタゴト揺られたいのである。そこで片道三時間かかる長期的定点観測店、千葉県飯倉「クルクル」(2011/01/10参照)に狙いを定め、午前九時過ぎに家を出る。中央線と総武線を乗り継いで千葉駅に着いてから、三十分の待ち時間をクリアして、ガラガラの総武本線銚子行きに乗り込み、望み通りのガタゴトガタゴト。枯れ色の広大な田んぼをの中を、これも枯れ色な春陽堂文庫を読書し、成東駅を過ぎてからは、九十九里浜の六キロ内陸を北東に進んで行く。
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そして午後十二時半、ちょうど文庫を読了し終えたところで、無人駅に到着する。そもそも正月明けの四日に「クルクル」が営業しているかどうか定かではないのだが、とにかくちょっとした旅情を味わいたくて、ついついここまで来てしまった。まぁ開いている可能性は低いが、閉まっていたら茂原の「ブックセンターあずま 茂原店」(2010/03/21参照)に行けば良いと思っているので、気は楽なのである。小さな駅舎の外に出て、いつでも変わらず繁茂する四角い笹薮の間の道路を通り、坂道を上がって国道へ出て、おぉそこには「クルクル」…むっ、入口横に古いゲーム筐体が出ているな…右側にもなんか出ている…厚いガラスから天井を透かし見ると電灯が点いている…バンザイ!やってるぞ!とまずは見慣れぬ入口右横の長テーブル店頭台に接近する。
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ソフビや雑誌やムックなどが犇めいてるが、虫プロ制作の「ジャングル大帝」の紙芝居が500円だと!…紙芝居などまったく必要ないのだが、ついついお店がやっていた喜びに煽られて、調子に乗って抱え込んでしまう。広い店内に進み、レジ前50均ワゴンで仙花紙本を一冊掴み、奥の児童書コーナーに食らいつく…う〜む、やはりここは良いお店だ。そんな来る度に思っていることを改めて噛み締め、本を次々手にして行く。新入荷コーナーには、城昌幸時代物が、函入り単行本と仙花紙本を合わせて五冊ほど…仙花紙本は千円と安値である。単行本壁棚や、長い文庫棚+その上に積み上がる単行本山、それに左奥の古書ワゴンや、右端通路の古書ワゴン&ガラスケースもたっぷり捜索していると、あっという間に一時間が経過してしまった。一泉社「名作落語集」小学館入門百科シリーズ25「名探偵入門/加納一郎」講談社「Gen VoL.37 1977 推理・探偵トリック大全集」秋田書店まんが王8月号(昭和44年)ふろく「よみきり怪奇秘境まんが 吸血の谷/浜慎二」講談社カラーテレビ版ムーミン名作絵ばなし9「ほをあげろムーミンごう」ユニカ「原色版教育紙芝居 虫プロ名作劇場 ジャングル大帝下巻 レオの消防隊/原作・手塚治虫」(ちゃんと十六枚揃っているが、本当にこれどうするつもりなんだ…)を計2850円で購入する。満足してお店を出て、交差点のコンビニで昼食を買い、駅への坂を下っている…この時点でお店からは300mほど離れており、本当にこのままちゃんと帰るつもりであった…だが!やはりあの本がとても気になってしまう!むくむくと心の中で存在が大きくなって行く!その文庫棚の上にあった本は、薄手だが二千円と、ちょっと値の張るものであった…今日は買わなくてもいいだろう…だけど、いつまたここに来るか分からないんだから、買っておいた方が…そうか?また何処かで見つかるんじゃないか?…でも、でも、見かけたことないよな…と毎度の葛藤を繰り返すうち、ええい!悩んでいるなら買ってしまってから後悔すればいいんだ!とようやく決めて、思い直して踵を返してお店へ向かう。多少気恥ずかしいが、素早く入口ドアを開けて中の自動ドアを潜り、素早く目的の本を抜き出し、素早くレジへ。レジの女性が目を丸くしている。そして背後の下條正己風店主が「忘れ物ですか?」とニッコリ。「いや、すみません。途中でどうしても欲しくなってしまったもので…」と言い訳するように照れてしまう。新星書房「バリケード・一九六六年二月/福島泰樹」を2000円で購入する。店主はその黒い本を改めて手にして「「バリケード」…学生運動の頃のですか」「そうです。確か第一歌集です」「お近くですか?それとも千葉県外から」「東京からです。時々来て買わせていただいてます」「そうですか。毎度ありがとうございます。今度来る時は、電話されてから来て下さい。なにせ、老人なものですから、休んでることもあるんですよ」「ありがとうございます。次回はそうします。それにしても、正月明けから開けていただいて、ありがとうございます」「いやいや。またどうぞ」などとやり取りしてお店を辞去し、再び坂道を下る。今日はここに小さな旅をしに来て、本当に良かった。

そして帰りの車中で、すぐさま「バリケード」を紐解くと、何と献呈書名&歌入りであることが判明し、仰け反る。そのまま興奮しながら、一気に読了。校舎のバリケードの向こう側に、寒さに震えながら眠りを貪り、思想と恋愛と青春が、流れ蕩けて行く…。そして家に帰って調べてみると、昭和四十四年刊のオリジナル本は、桁がひとつ違うかなりのレア本であることが判明する…かっ、かっ、かっ、買っておいて良かった!偉いぞ、俺!無論、文句なしのどひゃっほうである。
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2017年01月03日

1/3ニワトリブンコ新春100円均一大会参戦!

昨日寝る時から&寝ている間も夢心地にずっと楽しみにしていた、西荻窪の「にわとり文庫」(2009/07/25参照)主催の店頭100均古本大会へ。ちょっと早めの午前十一時四十五分に店頭に到着すると、すでに古本神と古本修羅と古本中学生が入り乱れ、緑のシートに覆われた棚や箱を透視する勢いで、正午のスタートを今か今かと待ち構えている。ペコペコと十人弱の列と挨拶を交わしながら、その最後尾に付き、風は冷たいが日射しの暖かさに救われながら、じっと正午を待ち続ける。隣の八百屋の白黒猫デコポンも、ただならぬ気配を感じ取っているのか、落ち着きなく店頭と皆の足元を、チョロチョロと走り回っている…。
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そして時間が経つごとに、ライバルの列が後へと伸びて行く…ちゃんと何か買えればいいのだが…。やがて正午になって、にわとりさんが入口に立ち「今年は酉年なので……がんばります!」の素敵な脱力合図とともに、狂乱の大会がスタートする。入口付近には絵本机と新書棚、その右側を単行本棚が囲い込み、さらに右の『三人灯』店頭にも文庫箱列や紙物箱列、それに雑誌ラック・洋書椅子などが並んで行く…もちろんすべて100円となっている。まずは文庫箱に食らいつき、とにかく古い文庫を掴み取り、お気に入りを高速で選別して行く。目当ての文庫箱に必死に手を伸ばしていると、奇しくも前でしゃがんで小型本に血眼の北原尚彦氏を抱きしめてしまうカタチに…。文庫ゾーンである程度の満足を得て、入口側の単行本ゾーンへ。濃密な人垣の間から懸命に棚の古い本に照準を定め、ここでも手をピンと伸ばしてのチェックを繰り返す。こちらも一段落したところで、本を抱えながら、棚の上に乗った付録漫画や雑誌に注意を払いつつ、同じく小休止に入った方たちと、ひとしきりの感想戦に入る。森英俊氏・北原尚彦氏・松坂健氏・新保博久氏・古本中学生ケンタロウ君・トマソン社社主などなど。森氏からは嬉しいことに、香山滋関連を二冊分けていただく。そして松坂氏の浅草にあった古本屋「協立書店」の羨まし過ぎる話(国際劇場の向かいにあった、探偵小説関連が、恐ろしく安値で売られていたエロ主力店)に歯がみする。日本小説文庫「若き日の悩み/藤森成吉」「愛情の彼方に 前・後編/中村武羅夫」「紅蝙蝠 前・後編/長谷川伸」春陽堂文庫「花骨牌/湊邦三」春陽堂日本探偵小説全集「ソロモンの桃/香山滋」「短篇集/渡辺啓助・海野十三」(共にカバーナシ)錦城出版社「鯨の町/梶野悳三」(カバーナシ)「香山滋書誌/竹内博編」偕成社「海底牢獄/海野十三」(自家製改装版)映畫春秋社「映畫春秋 第四號」春陽堂「両美人/村井弦斎」博文館「東洋武侠團/押川春浪」(表紙&扉ナシ)を計1400円で購入する。大会は明日四日(水)も十二時から開催される。北原氏が店主に、明日どのくらい補充されるのか、さりげなく探りを入れていたが、すでに棚と箱の半分は消え去りガタガタになっているので、補充は必至であろう。
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今日の収穫の中でことの外嬉しかったのは、表紙や扉は取れてしまっているが、明治オリジナル本の押川春浪「東洋武侠團」!口絵から後はすべて残っているので、ちゃんと通読することが出来るのだ。書き出しが『空中戦闘艦は彗星の如く、神侠の英雄を乗せて雲間を飛行し、海底戦闘艇は奔龍の如く、稀代の怪傑を潜めて浪裡を駛馳す』となっており、初っ端からのトップスピードにシビレまくる。さらに嬉しかったのは、三度目に単行本棚を見た時にまだ残っていた、和本の村井弦斎「両美人」。何気なく手に取り、どうせ食関連の話だろうと高を括ってページを紐解くと、何とこれが謎の美人の復讐殺人から始まる、明治探偵小説風の、二人の美女の波瀾万丈ジェットコースター的物語。これが100円とは!無論二〇一七年最初のどひゃっほうである。今年もありがとう、にわとり文庫!
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