2017年09月26日

9/26「怪盗ラレロ」に理性を盗まれる。

今日は入間に漂着…とは言っても埼玉ではなく、仙川と成城に挟まれたれっきとした東京の調布市の一部である。一瞬成城学園か祖師ケ谷大蔵に出ようかと思ったが、「文紀堂書店」(2015/03/31参照に行きたい気持ちがムクムクと大きくなってしまったので、キラキラ日を照り返す野川を背にして、駅に向かって歩いて行く。途中の道路上で、烏とカマキリが闘うリアルな『昆虫物語』に手に汗を握り(追いすがる烏の嘴を鎌で撃退するカマキリ!だが、所詮虫が大きな鳥類に敵うわけはなく、その命は風前の灯火に!すると突然そこに車が通りかかり、烏は慌てて飛び立ってしまった。車が通り過ぎた後の道路に残るのは。まだ両の鎌を高く揃えて戦闘態勢を取っている、緑のカマキリの姿のみ…)、どうにか「文紀堂書店」に到着。今日の店番はご母堂のようだ。フムフムと、ちょっと棚の入れ替わった雰囲気を楽しみながら、奥へ奥へと進んで行く。やはり注目すべきは、帳場両側の古書を含む棚だろう。左の詩集類も見応えあるが、右には塔晶夫「虚無への供物」がちゃんと帯付きで一万円!「世界のスチュワーデス」も気になるなぁ…。裸本の「怪人二十面相」が千円か…あっ!ラレロ!「怪盗ラレロ」のかなりキレイな元本があるじゃないか!セロファンに包まれた本を素早く棚から取り出し、値段を見ると5000円…本としては高いのだが、ラレロとしては安いっ!と矛盾した衝撃を受ける。う〜む、う〜む、う〜む、う〜む、う〜む、う〜む、う〜む。う〜む、う〜む、う〜む、と悩みながら店内を一周した挙げ句、当然の如く思い切って買うことにする。…まるで安値のラレロに、理性をあっけなく盗まれてしまったかのようだ…と心を落ち着かせるために、卑怯にも衝動買いをラレロのせいにしてみたりもする。だが、とにかく嬉しいのだ!買ってしまったからには、この新たな箱入児童文学本(優等生児童文学ではなく、胡散臭いダメな方だが…)の幸福性を(2016/12/26「箱入り児童文学本の幸福性について」参照)、喜んで迎え入れることにしよう!講談社「怪盗ラレロ/加納一朗」を購入する。
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手に心地良い重さと物質感を誇る、五十年の長い時を越えて来た箱入り児童文学本が、夕陽をバックに美しく輝いているじゃないか…。
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2017年09月24日

9/24恐るべき展示のポスター&チラシを携え知り合いの古本屋さんを行脚する。

不必要にドギマギしている。今日は頑張って「さすらいの十年展」の宣伝を兼ね、出来上がって来たポスターとチラシを、知り合いの古本屋さんに渡して来なければならないのだ。引っ込み思案で内弁慶で、社会人として不適格な私にとっては、なんとも言えず苦手な行為なのである。だが、それでも展示を少しは成功させるために、努力しなければならないのだ!と覚悟を決めて昼食後に外出。テクテク歩いて最初に向かったのは高円寺の「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)である。店頭棚を吟味していると店主の粟生田さんが「こんにちは」と現れ、しばし「中央線古書展」の話などする。よし、これでちょっとお願いしやすくなったぞ。と三冊をつかみ店内に突入。さらに店内50均文庫棚から一冊抜き出し精算をお願いする。文藝春秋「マリリンモンロー・ノー・リターン/野坂昭如」青樹社「弔辞大全 レクイエム57 1・2」ともに開高健・編、集英社文庫「乙女島のおとめ/田中小実昌」を計350円購入しつつ、チラシを置いてもらえないかお願いする。すると「あ、古書会館で見ました〜。でも何を展示するんですかぁ〜」と当然の質問が返って来た。「いや、取材ノートとか、店内の見取り図とか、色々です…」とあやふやに答えると「うわぁ〜、自分が書いた字、人に見られるの恥ずかしいですよね〜」と素敵な話に発展。確かに私の書きつけた文字は、サイコな連続殺人犯が書き残したノートみたいなので、人様に見せられるもんじゃないんです!とこっそり思いながら同意する。と言うわけで、無事にチラシを託してお店を離れる。そのまま高円寺駅に向かい、休日の総武線で西荻窪へ。ここではまずはお馴染み「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、出来上がった盛林堂ミステリアス文庫新刊「怪人ジキル/波野次郎」を受け取りつつ、ポスターとチラシを渡すと、実はすでに東京古書組合から届いていたらしく、ピラリと広げられたポスター返しを食らってしまう。店主・小野氏には積み上がった本の間に横たわる写真を大いに笑われ「ちゃんとした写真、お店で撮らせて上げたのに」と言われるが、時すでに遅し!次の機会に何かあったら、ぜひとも利用させてもらおうと、心のメモにその言葉を刻んでおく。さらに氏からは、大森「山王書房」の古書店ラベルいただき、大喜び。関口正雄氏が鉛筆で書いたであろう書名は、上林暁の「珍客名簿」600円である。安い!
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写真は復刻の希書!「怪人ジキル」と「山王書房」古書店ラベルのあり得ぬ組み合わせである。
続いて高架下を潜って「古書音羽館」(2009/06/04参照)に赴き、店頭棚を必死に眺めていると、「ジャジャ〜ン」と言いながら店主・広瀬氏がニヤニヤして「さすらいの十年展」のポスターを手に入口から姿を現した。こちらにもすでに組合から届いていたのか…あぁっ!恥ずかしい!だがそれでも勇気を出して、さらにポスターとチラシを渡し、厚かましく宣伝をお願いしておく。するとすぐさま入口扉にポスターを貼付けてくれた。大変ありがたいことであります。あぁ、でもやっぱり恥ずかしい!そんな風に、嵐の海に浮かぶ小舟のように心を揺らしながら、中公文庫「ジゴマ/レオン・サジイ 久生十蘭訳」を400円で購入する。
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さらに三鷹に向かい、「水中書店」(2014/01/18参照)で山梨シルクセンター出版部「取経譚/天沢退二郎」文春新書「三遊亭圓朝/矢野誠一」を200円で購入しつつお願いしようとレジに向かうが、残念ながら店主・今野氏の姿が見えない。ちゃんとした大人ならば、バイトさんに姓名身分を明かし、ポスター&チラシを手渡しつつ今野氏への伝言をお願いするべきなのだが、愚かにも言い出す勇気なく古本を買っただけでお店を後にする…俺のバカ!そして最後は阿佐ヶ谷に戻り「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)へ。表でイレギュラーに古道具などが売られているのに驚きつつ、ついついVHSビデオ箱に興味を示してしまい、徳間コミュニケーションズ「名探偵ホームズ劇場版」を手にして店内へ。帳場に向かうと、そこにはマスクをした風邪っぴきの店主・天野氏。ビデオを103円で購入しつつ、ポスターとチラシを託すと、奥から現れた奥さんとともに広げたポスターを見て呆れ笑い。いや、そんな風に笑っていただけるだけで、このポスターを作った甲斐があるというものです。そんな風にどうにか使命を完遂し、ようやく家へと帰り着く。というわけでみなさま、展示と神保町ツアーを、引き続きよろしくお願いいたします!

『古本屋ツアー・イン・ジャパン さすらいの十年展』
■9月30日(土)〜10月16日(月)
■10時〜17時 日曜・祝日休館
■東京古書会館 2F 情報コーナー 
■東京都千代田区神田小川町3-22
http://www.kosho.ne.jp

『小山力也と行く神保町体験ツアー トーク&ガイド』
■10月7日(土)
■最大12名 先着順 申込み制
■14時〜16時(予定)
■参加費1000円
■トークイベント(30分程度)後、小山さんに神保町を案内して頂きます。
※お申し込みは展覧会会場かこちらのホームページからどうぞ。http://www.kosho.ne.jp/tour/index.html
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9/23古本屋さんの軒先に紙垂

昨日は午後五時半過ぎの世田谷区松原辺りに流れ着いたので、明大前に行こうか下高井戸に行こうか、それとも世田谷線に飛び乗って、豪徳寺まで出てしまおうかとしばし悩むが、結局オーソドックスに下高井戸に向かうことにする。すると駅周辺の商店街には、賑やかなお囃子が流れる、秋祭りの光景が広がっていた。人波を掻き分けて、駅前踏切を北に渡って、市場商店街のゲートを潜って、早暮れなずむ街の古本屋さん「豊川堂」(2016/07/04参照)に入り込む。…ふぅ、やはりこの古本屋然とした空間は、心地良く落ち着けるな…。静かな店内の空気を引っ掻き回さぬよう、息を詰めて棚を眺めていると、時折店の前を通る地元民の足音と衣擦れの音が聞こえ、思わずそちらに目をやると、ガラス窓の向こうは店の灯りに照らし出された暗闇で、まるで舞台を横切るように人の姿が過って行く。しばしうっとりしながら、完全に古本を買いに来たのではなく、“古本屋”という空間をただ楽しんでいる己をそこに発見してしまう…。だから慌てて岩波文庫「LIVING TOKYO 東京に暮す 1928-1936/キャサリン・サンソム」を300円で購入する。そのまま文庫本を受け取り表に出ると、秋祭りのためか、軒先には紙垂が下がり、色鮮やかな造花も取付けられていた。
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そんな特別な日の古本屋さんの写真を一枚撮って、阿佐ヶ谷へ戻る。帰り道の北口商店街「千章堂書店」(2009/12/29参照)ではアミューズエデュテインメント「物には心がある。田中忠三郎」を100円で購入。生活から消え行く民具を全人生を懸けて蒐集した誇り高い男のエッセイ集である。2009年出版だがこんな本知らなかった。ありがとう千章堂さん!ようやく家に帰ると、出来上がった展示のポスターとチラシ(改めて見るととても気恥ずかしい…)が届いているではないか…日曜はこれを携えお店を行脚するか…。
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2017年09月22日

9/22小型本家庭内比較浅薄論考

外出はしたのだが、雨に祟られてしまったので、古本屋さんに寄ることもなくスゴスゴと帰宅する。だが気分を落ち込ませることなく、濡れた服を着替えて始めたのは、昨日手に入れたばかりの、柿色市松模様の山本文庫を読み始めること。買ってから何度も優しく手にしているが、薄くて小さくて儚くて愛おしい小型本である。現代の通常の文庫本は、105mm×150mmほどが標準サイズだが、山本文庫は95mm×135mmと二回りほど小型なのである。いつかは同文庫にラインナップされている、佐藤春夫譯(本当は平井呈一譯)の「吸血鬼/バイロン」(本当はポリドリ作)を手に入れたいものだが、あからさまにド高嶺の花なので、今は我が手の文庫で我慢我慢…。ふと思うのは、昭和十一年刊なので、同時代の日本小説文庫や岩波文庫や新潮文庫は105mm×157mm〜159mmの、少し背の高いトールサイズが主流である。果たしてこの時代に、同じようなサイズの本は出版されていたのだろうか?そんなことを気にしてはみたが、今確かめる術もなく、また調査して掘り下げる真面目な探究心も、怠け者の私には湧いて来なかったので、ひとまずこの家庭内で浅薄に調査してみることに決める。よし、時代に関係なく似たサイズの本を集めてみよう。ドサドサ、ガサガサ、ゴソゴソと、いつものように疲労する本の山との闘い。だが今回の相手は、文庫山のみなので、比較的楽な展開を見せる。探し出したのは以下の本(豆本は除く)である。
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左上から昭和四十三年の「中学生傑作文庫」98mm×135mm、上段真ん中が昭和十一年「山本文庫」95mm×135mm、右上は大正十五年刊の復刻版「勞働放浪監獄より」95mm×131mm、左下は昭和二十一年の「手帖文庫」91mm×126mm、下段真ん中は昭和三十九年「黒い招待券」89mm×115mm、右下は平成八年の「角川mini文庫」86mm×111mmとなっている。どれも正式な用紙サイズに該当する寸法は見当たらない。無駄のない用紙裁断や、デザインなどの理由でしかるべきサイズに設定されているのだろうか…それにしても自由過ぎるではないか。また文庫より小さいと勝手に思っていた「アテネ文庫」は、薄いだけでサイズはしっかり文庫と同じであった。そりゃそうだ、文庫棚に収まってると、高さは変わらないもんな。蒼土社の「探偵小説文学撰」もちゃんと文庫本と同サイズだったか…。山本文庫に並んで貴重な文庫シリーズの「手帖文庫」は、イメージでは同じ大きさかと思っていたが、実は山本文庫より縦横ともに少し小さめであることが判明。この二種の小型本と文庫本とのサイズ感、しかと覚えておこう。いつ何時、古本市や古本屋さんで奇跡の如く出会うかわからぬのだ。あるかないかわからぬ背文字が超絶読み難いが、似たようなモノを見つけたら、そこは面倒くさがらずつまみ出し、しっかりチェックすることにしよう。そんな馬鹿なことをしていたら、外の雨が、ますます激しくなって来ている。途絶えぬ雨音を聞きながら、ひとつ正直に言っておこう。小型本は、文字が小さくて、夜だと読み難いなぁ。年かなぁ…。
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2017年09月21日

9/21バイトで足をガクつかせた後、95mm×135の小型文庫を手に入れる

今日は午後から「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に付き添い、とある住宅街の中での買い取りを、荷運びバイトとして手伝う。ミッションは、車が一台しか通れぬ路地に盛林堂号を停め、アパート二階から四十本強の本束と二十箱ほどのダンボールを階下に運び、素早く積み込むというもの。私はバイトなので、階段を駆け上がり本を下ろし、また駆け上がり下ろしを、ひたすら繰り返す役目を担う。他の車が来ぬ前に、何とか短時間ですべてを終えねばならぬのだ!と早速作業開始。本束を二本〜四本手にして、ひたすら階下に運び下ろす。その間、幸い車は登場せず、自転車を一台通すために、少しだけ車を動かすに留まる。鉄の茶色い階段を、カンカンカンカン上がり下り。たちまち全身から吹き出す汗。だが、時間と盛大に闘っている今は、足と手を休めるわけにはいかないのだ。そんな風に歯を食いしばり頑張り、およそ三十分強で本束をすべて積み込むことに成功する。ここで一旦作業を中止して、ひとまず西荻窪に舞い戻り、本束を倉庫に入れた後、再び現場に戻ってダンボールを積み込むことにする。往復の復路車内で、アイスクリームでクールダウン&栄養補給を行い、今度はダンボール下ろしに従事する。こちらは二十分弱で終えることが出来たが、気付いたら腕はワナワナ、足はガクガクとなっていた…ふぅ、おつかれさまです。荷を再び倉庫に下ろした後「盛林堂書房」に立ち寄り、「フォニャルフ」に補充したりしながら、帳場脇で労いの和菓子に舌鼓を打つ。そうして午後五時には出来上がって来るはずの、盛林堂ミステリアス文庫新刊「怪人ジキル」を待ち焦がれるが、何だか搬入時間が遅れているようなので、諦めてお店を辞去する。陽が落ちるのが早くなった表は、もはや寂し気な秋の夕暮れ。段々と濃くなる紺の中を歩き、北側に抜けて「古書音羽館」(2009/06/04参照)へ。表で二冊をつかみ、ギシギシ賑わう仄明るい店内に身を滑り込ませる。お店の中で個人的に一番注目している、左側部屋左奥の古書棚に近づき、目新しい本や珍しい本がないか目を光らせる。するとパラフィンに包まれた、薄手で小型の背文字が読めぬ本が気になって、そっとつまみ出すと、おぉっ!市松模様(色はオレンジ)の山本文庫じゃないか!初版の平田禿木譯「蜜月・幸福/マンスフイルド」である。ドキドキしながら値段を見ると、歓喜溢れる500円なので当然ながらいただくことにする。毎日新聞社「夢の放浪者 江戸川乱歩/牛島秀彦」光琳社「VISIONS of JAPAN SHIBATA Toshio」とともに計1000円で購入する。レジでは奥から無理矢理身を乗り出した笑顔の広瀬氏としばしお話し。
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山本文庫が嬉しかったので、お店の前で記念撮影。帰りの車中で95mm×135mm・60pの蝶のように軽い文庫を開くと、たちまち昭和初期の世界文学の世界に没入してしまい、危うく阿佐ヶ谷駅で乗り越しそうになる。紙の蝶が何処かに逃げぬよう、両の掌に、隠してしまうように優しく挟み込み、バタバタと降車する。
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2017年09月19日

9/19八十の大人向絵物語が待ってくれていた

早い時間に上石神井に流れ着いたので、まだまだ余力の残る身体を動かし、そのまま『早稲田通り』の流れに乗って、家に帰ることにする。何百台もの車に追い越されながら、三十分ほどで『中杉通り』へと近づく。せっかくなので古本を買って行こうと立ち止まり、通り沿いの「古本ブック流通センター」(2008/08/09参照)のサッシ扉を右にスライドさせる。
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16年一月の雪の日以来の来店ではないだろうか…。相変わらず棚にはブランクが存在し、本も不動の構えを見せているが、店内はなんだかスッキリとしている。ちょこちょこと片付けたのだろうか。かつてない薄めの清々しさが、店内に漂っている…。奥から「いらっしゃいませ」と飛び出して来たご婦人店主と挨拶を交わし、既視感の強い棚を見ながら店内を一周する。だが、所々に小さな小さな変化あり!というわけで、中公文庫「マイアミ沖殺人事件D・ホイートリー」(解決編未開封)ひるぎ社 おきなわ文庫「オキナワ・マイ・ラブ/黒川修司」(京都から本土復帰前の沖縄に乗り込み、のらりくらりと腕を磨いたフォークミュージシャンの沖縄エッセイ集)を計200円で購入する。

家に帰るとレターパックの包みが郵便ポスト内に収まっていた。内容物は久々のライバルなきヤフオク落札品。部屋の中でボール紙封筒を引きちぎると、意外に大判の付録冊子が滑り出て来た。「家の光」昭和三十四年新年号付録「明朗お楽しみブック」である。表紙は獅子舞の大川橋蔵で、中身は芸能情報満載(スター俳優・歌手・落語家・漫才師・野球選手&相撲取りが大挙登場している)なのだが、西條八十のスリラー絵物語「奇怪な贈物」が掲載されているのだ。“八十ぐるい(2016/21/31参照)”の私としては、是が非でも手に入れたかった代物である。当初てっきり子供用の冊子かと思っていたが、よく考えたら「こども家の光」ではなく「家の光」の付録なのだ。中身は当然大人向けなのである。ということは八十先生の絵物語も大人向け!堂昌一の二色刷りのリアルなイラストが冴えまくる誌面に目を細めながら、四段組六ページの短く他愛無い物語を、綿菓子を食べるように楽しんで行く…。あぁ、どストレートな◯落ちとは、八十先生!
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スリラー絵物語の面目躍如。六ページ内に描き文字題字も含め、計13点の美麗なイラストが配置されている。調べるとこのお話、どうやら初出は昭和二十四年の雑誌「天馬」に掲載されたものらしい。こちらも絵物語だったのだろうか…?
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2017年09月18日

9/18地味に蒸し風呂のような部屋で蠢く。

台風一過で気温がグングン急上昇する中、家に閉じこもり『さすらいの十年展』の準備を進める。とにかくちゃんと展示しなければならないので、暑い部屋の中でそこら中を引っ掻き回し、思いつく限りの主だった物を手元に集めて行く。この時ばかりは、整理能力と分類能力が皆無の己を、独り言の悪態をついて呪いまくる。『確かあそこにあれがあったはずだな…』と大体の検討で本の山(色んな物が本の山と融合しているので、何かを探す時は、結局古本を探す時のように本の山を切り崩さねばならないのだ…)に挑み、失望と発見を阿呆のように繰り返す。そんなことをしていたら、たちまち五時間が経過していた。だがまぁ変な物(一見はただの紙くず!)がたくさん集まった。初期のフリペや、最初に「古本屋ツアー・イン・ジャパン」として世間に姿を現したリトルプレスは、なかなか見物である。とは言ってもこんなものを展示して、果たして誰が喜ぶのだろうか?やっぱり何だか気が重い…。
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すっかり埃に塗れた肺腑を清浄に復すべく、日射しの強い表に飛び出す。ヒタヒタ歩いて「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)。文藝春秋社「裸の王様/開高健」(三版)新潮社「南氷洋/きだ・みのる」(きだの南洋捕鯨船同船記)を206円で購入しつつ、店主・天野氏となかなか開かぬ古本を扱う新店について言葉を交わす。それだけで、ふうわりと心が軽くなり『展示がなんだ!』と奇妙な威勢が湧き上がって来る。古本屋ってやっぱり良い所だ。すぐさま家に戻り、再び奇妙な宝探しに没頭する。そんな今日の嬉しい発掘物は、深川の人形師・石塚公昭氏(人形を実景の中で撮影し、物故した人間を現代に召還する魔術師である)のオリジナル・ミニプリント群。江戸川乱歩・怪人二十面相・谷崎潤一郎・中井英夫・永井荷風・泉鏡花などをコレクションしていた。確か一枚千円くらいで、旧サイトや『東京たてもの園』のイベントなどで、ちょこちょこ買い集めた物である。左上の銀座上空をアドバルーンで逃げる二十面相は、ホント最高だな。いつかちゃんと額装しなければ…。
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2017年09月15日

9/15さすらいの十年!

朝から諦めずに日曜の「みちくさ市」の準備を進める…台風なんかに、負けるもんか…。と同時に、しばらくほっぽらかしていた「フォニャルフ」補充の準備も進める。午前十一時に日射しが強くカラッとした空気を身に受け、駅前の銀行で市用の小銭などを捻出しつつ荻窪へ向かい、開店と同時に「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭に到達。だが結局店内文庫棚から光文社日本文学選「酒ほがひ/吉井勇」を315円で購入する。そのまま西荻窪に向かい、途中神保町に向かう盛林堂・小野氏と出会ったりしながら、久々に「フォニャルフ」に補充する。一緒に引き返して来た小野氏とお店を出て、色々お話ししながら中央線で阿佐ヶ谷まで同道。「どう?展示の準備進んでる?」「まぁ展示する物はそれほど多くないし、近い日に搬入するつもりなんで。ポスターとチラシは作ったよ」……これはいったい何の話かというと、九月終りから十月上旬にかけて、恐るべきことに、今年でブログを開始して十年目に突入している私の展示が『東京古書会館』にて行われることになったのです!血迷ったか、東京都古書籍商業協同組合!私如き一介の市井人が、一体何を展示出来ると言うのか!と呆れ返りつつ戦きつつも、準備はカタツムリのようにジリジリと進み、焦りも大いに募らせ、早九月も半ばとなっているのです。恐らく私の人生で、最初で最後の展覧会となること必至なので、地下の古本市ついでに二階にも足を運び、鼻で笑っていただければ幸いです。10/7には展覧会開催を記念して神保町ツアーも行う予定なので、こちらも合わせてよろしくお願いいたします!ちなみにポスター&チラシは、林忠彦撮影の坂口安吾の写真を超えるべく、自演自作いたしました…。
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『古本屋ツアー・イン・ジャパン さすらいの十年展』
■9月30日(土)〜10月16日(月)
■10時〜17時 日曜・祝日休館
■東京古書会館 2F 情報コーナー 
■東京都千代田区神田小川町3-22
http://www.kosho.ne.jp

『小山力也と行く神保町体験ツアー トーク&ガイド』
■10月7日(土)
■最大12名 先着順 申込み制
■14時〜16時(予定)
■参加費1000円
■トークイベント(30分程度)後、小山さんに神保町を案内して頂きます。
※お申し込みは展覧会会場かこちらのホームページからどうぞ。http://www.kosho.ne.jp/tour/index.html

さらに午後二時過ぎになって高円寺を手ぶらで散策し、「ドラマ高円寺店」で光文社「新版 今日の芸術/岡本太郎」河出文庫「ジャンキー/ウィリアム・バロウズ」を計216円で購入し、『庚申通り』を北上して「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)では講談社「完全犯罪/加田伶太郎」を千円で見つけ、ささやかな喜びを抱く。
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2017年09月13日

9/13日曜の準備と打ち合わせ

早起きしたのを幸いに、日曜の「みちくさ市」のための古本準備を開始する。基本の骨子を組み上げて、後はあちこちの古本山から本を抜き出し、肉付け肉付け…そうして三時間ほどで、大体の形が完成する。ここまで漕ぎ着けてしまえば、後は微妙な入れ替えを繰り返しながら、クリーニングと値付けをすればいい。まぁその作業は、金曜辺りにするかと、一息入れる。日曜日、どうか台風が雨を降らせませんように。
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午後外出して神保町。普段通りにパトロールしているが、今日は「原書房」(2014/05/15参照)で岩波書店「田園銷夏漫録 並震後雜感/長岡半太郎」を300円で購入するに留まる。大正十三年刊の、物理学者が関東大震災の一年後に、神奈川・三浦で一夏を過ごす避暑随筆である。附録に「大震雑感」が付いているが、とにかく全体的に震災についての生々しい記述が多い一冊。そのたった一冊だけの成果を懐にして「東京古書会館」にてまたもや打ち合わせ。しばらくこちょこちょやっていたこちらについては、もうすぐ詳細が出せることになりますので、しばらくお待ち下さいませ!
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2017年09月10日

9/10緑色の古本に縁がある一日。

午後、友人の陶器展を見るために西小山へと向かう。道すがら、今日も阿佐ヶ谷の古本を扱うお店が開いていないのを確かめて、落胆しながらも西小山には直接向かわず、隣駅の武蔵小山で下車して二ヶ月ぶりの「九曜書房」(2009/03/26参照)にまずは寄り道。入口近くの500均棚にピタッと張り付き、すぐさま三冊を抜き出す。法政大学出版局「密林の神秘 熱帯に奇鳥珍獣を求めて/蜂須賀正氏」(カバーナシ)無明舎「最後のマタギ/朝日新聞秋田支局編」講談社「殿山泰司のミステリ&ジャズ日記」を計1500円で購入する。なんたって嬉しいのは侯爵の探検鳥類学者・蜂須賀正氏の著作が、500円で入手出来たなんて!と、カバーが無い故の緑の表紙をなで回しながら、高校グラウンド脇の小道で思わずスキップ!少し取っ付き難い、データ実見主義で独特な節回しの文章が、読み進めるほどに癖になる!足取り軽くそのまま西小山に徒歩で向かい、駅前商店街の「ハイカラ横丁まるや」(2015/02/18参照)にも寄り道。店内で店主と高校生が大橋巨泉について意見交換しているのに聞耳を立てながら、中央棚の奥側の棚脇で、雑誌列の中からとても良さげな一冊を発見する。これまた緑色の本の、大阪市動物園「大阪動物園アルバム」。昭和十一年の三版であるが、大阪市動物園の哺乳類〜鳥類〜爬虫類〜両生類〜魚類〜甲殻類までを、全56ページにモノクロ写真で収めた一冊である。『くろしやうじやう(チンパンジーである)』の人気者、リタとロイドが背広を着てクラシックなペダルカーに乗っている写真がワンダフル!1080円で購入する。たちまち鞄の中に収まった寄り道の収穫に、ウキウキしながら元カメラ屋の古びたギャラリーにたどり着き、本来の目的を果たしつつ、手に馴染んでくれたおちょこをひとつ購入する。
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「密林の神秘」口絵写真の蜂須賀侯爵尊影と「大阪動物園アルバム」。表紙もくろしやうじやう。一ページ目も樹陰に寝転ぶくろしやうじやうの群れの写真にトレーシングペーパーが重ねられ『樹蔭に嬉戯するくろしやうじやう』の言葉が刷られている。この当時はくろしやうじやう、つまりはチンパンジーが一推しの動物だったのだろうか。
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こちらがリタ&ロイド。調べてみると『天王寺動物園』には人気者だった二頭の象が建てられているとのことである。
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2017年09月09日

9/9当てが外れたので「銀星舎」でダベる。

今日はわりと早い時間に荻窪北の天沼辺りに流れ着いたので、「ささま書店」に寄って行こうかと考えるが、実は最近阿佐ヶ谷に古本を扱うお店が誕生したらしいので、そちらに大いに期待して、方向感覚を狂わせがちな迷路のような住宅街を擦り抜けて阿佐ヶ谷方面へ向かう。だが、そのお店はやっていなかった…昨日もやっていなかったが、土曜日に営業しないのはどういうわけなのか…こんなことなら「ささま」に寄って、店頭棚にかぶりついておくべきだった…。哀れにも後悔先に立たず!すっかり当てが外れてしまったので、慰めてもらうようなような心持ちで「銀星舎」(2008/10/19参照)へと向かう。角川文庫「カクテル・パーティー/大城立裕」を400円で購入し、奥さま店主と、火曜日が定休日になったことや、二万五千円の宮澤賢治の生徒たちの話を集めた本や(う〜〜〜〜〜ん、とても欲しい…でも、でも、二万五千円か…)、昨今の古本屋事情やamazon事情や、飼っている天才猫などの話題に花を咲かせる。

家に戻ってからは、仕事その他をおっぽり出し、いよいよ大詰めになってしまった黒白書房「トレント最後の事件/E・C・ベントリイ作 延原謙作(本扉には“譯”ではなく“作”と書かれているのだ。当時の価格は1.5円!)」を最後まで読む。ぐむぅ、探偵小説なのに、なんでこんなに切ない思いが胸に込み上げてしまうんだ!途中から探偵トレントが、衝撃の◯の告白をしたり、まさか英知の結晶である推理力が◯◯するなんて!二〇一七年九月九日午後六時十四分、読了。紛うことなき名作であった。読み終わってからこの松野一夫挿釘の函を見ると、読了時の感動と心地良さが、何度でも胸に去来してしまう!ありがとうベントリイ。ありがとう延原謙。ありがとうトレント!
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2017年09月07日

9/7あぁっ!

今日は経堂の南に位置する、桜辺りに、すでに日の暮れた午後六時過ぎに流れ着く。ちょっとした高台から下り、駅方面を目指しつつ、それならば「大河堂書店」(2009/03/26参照)を急襲して行こうとほくそ笑む。だが、お店は木曜定休で、見事なまでのシャッターアウト。仕方なく北口に足を向け、『すずらん商店街』をゆるゆると遡上して、夜の「遠藤書店」(2008/10/17参照)にたどり着く。
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一日中雨模様だったため、表に長テーブル均一台が出ていないのが何とも残念である。というわけで主に文庫に狙いを付けた結果、古く背が高めの岩波文庫「眞景累ケ淵/三遊亭圓朝」を180円で購入する。駅に引き返して小田急線各駅停車に乗り込み、車内で買ったばかりの怪談を読みつつ新宿駅。文庫を手に持ったまま、人差し指を栞代わりに軽く挟み、地下から連絡改札を抜け、中央線の12番線ホームに顔を出す。ちょうど中央線快速が滑り込んで来たところだが、ちょっと遅れているらしく、車内はたちまち人間の身体的縄張りを度外視したラッシュ状態と成り果てる。う…む、これではとても読書の続きは出来そうにない。だが、とにもかくにも早く帰りたいので、入口近くにかろうじて身体を潜り込ませ、発車を今か今かと待ち焦がれる。その時、ひとりの女性が慌てつつ「すいませんすいません」と連呼しつつ、私の横にある隙間に身体をグリグリ捻入れて来た。そして収まった瞬間、身体を勢い良く反転させ、外に向かっての正対を試みる。その時左に抱えていたハンドバッグが、私の文庫を持っていた手を痛打!たちまち軽く握っていた文庫ははたき落とされ、身体をなぞるように滑り落ち、ホームと電車の間にスローモーション映像で、消えて行った…。「あぁっ!」車内で思わず叫び声を上げた瞬間、周りの視線が集中すると同時にドアが閉まり、電車は急速にスピードを上げ、中野駅へと向かって行った…。と言うわけで、新宿駅12番線ホームに落ちている岩波文庫「眞景累ケ淵」は、私の本なのであります…スマン、初代圓朝。まだ10ページまでしか読んでいなかったのに…。
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2017年09月06日

9/6阿佐ヶ谷で早稲田の「萩原書店」を知る。

今日はある原稿に腐心しなければならないのだが、その前に古本を買って心に平穏を充満させておこうと、午前のうちに新宿へ向かう。JR駅から地下道を通り、さらに深い場所にある『サブナード地下街』に流れ込む。まだ開いたばかりの、きらびやかさしかないショップの間を抜けて行くと、スクエアな地下広場の隅に、たくさんの古本ワゴンと早速そこに群がっている、頼もしい同志たちの姿が見えた。今日から出店店舗を入れ替え始まった「古本浪漫洲Part3」である。署名本コーナー・映画DVDコーナー・100均コミック&単行本・500均ワゴンが際立っている。結構真面目に立体的に重なる古本を動かし背を確認しまくる。結果、500均ワゴンから晶文社「対談 植草甚一」を、100均ワゴンから扶桑社文庫「二十世紀鉄仮面/小栗虫太郎」「真珠郎/横溝正史」を見つけ出し、計700円で購入する。

さぁ、古本も買った。後は家で原稿を…というのが正しい人間の在り方であるが、『もうちょっと買いたいな』と興が乗ってしまい、そのまま荻窪へ直行して月曜日に訪れたばかりの「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。だがさすがに、定休日を挟んでの連続訪問では、そこまで棚に変化が起きているわけがない。珍しく何も買わずにそのままトボトボ阿佐ヶ谷へと戻ることにする。そんな帰り道の「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)で店頭棚を定点観測していると、入口右横のコミック&新刊&カルチャー系103均棚に、薄手の冊子が散見されるのでマメにチェックして行く。するとその内の一冊、冗談エクスプレス「畸人研究16号」が『古本道』をテーマに特集を組んでいるではないか。今柊二氏の妄想古本屋や全国さすらい古本日記(半分は今氏らしく食べ物の情報である…)などが載っているが、一番興味を惹かれたのはその表紙であった。小さな間口の狭い古本屋の写真が真ん中にレイアウトされ「実に古本屋らしいたたずまいだった萩原書店(早稲田・今はない)」と書かれている…知らない書店だ。
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というわけでこの冊子を購入し、家に帰って「萩原書店」について調べてみると、2001年7月発行「全国古本屋地図21世紀版」には『早稲田通り』北側の「金峯堂書店」(2010/10/19&2012/04/06参照)と「西北書房」の間にあった、一般書のお店として掲載されている。ということは、この「畸人研究」が2002年の12月発行となっているので、およそ一年の間に閉店してしまったわけか…。写真を見る限りでは、小さな店頭には台上にも足元にも雑然と本が積み上がり、かろうじて両脇の細い書棚に、早稲田らしさが見て取れる(お店の両脇に立て掛ける細い本棚、早稲田古本街ではスタンダードだったのだろうか?)。…この小さなお店に、入ってみたかった。今はただただ、お店の貴重な写真を撮ってくれていたことと、それを表紙に使ってくれたことに感謝するのみである。
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これは「萩原書店」について調べていたら偶然本の間から見つかった、「早稲田古書店案内図」。68mm×180mmの短冊型で、恐らく昭和四十年代前半のものと思われる。バス停名が『戸塚』になっており、「古書現世」(2009/04/04参照)はまだ誕生していない。
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2017年09月04日

9/4一日雌伏する予定

本日は些事をこなしたり、様々な準備を進めるために家に閉じこもるつもり。九月終り〜十月初め辺りに、あるおかしなことを行う予定なので、詳細が決まり次第お知らせいたします。だがやはり、閉じこもる前に古本は入手しておこうと、「ささま書店」(2008/08/23参照)開店時間参りにペタペタと出かける。午前十一時半過ぎの店頭は雨仕様で、先客はひとりのみ。素早く本の背に目を走らせ、背のない中綴じ本は抜き出し確認したりしていると、あっという間にお客さんが集まり始め、人影が少なかったのは束の間で、たちまちいつもの賑わいである。東京創元社「創元推理21 特集◎祝・百歳 渡辺啓助/温」平凡社「乱歩の時代」特別付録「犯罪圖鑑」晶文社「アメリカの鱒釣り/リチャード・ブローディガン」角川書店「雲のいる空/吉行理恵」(タイトル描き文字も含め金子國義の装幀に吸い寄せられる一冊)を計420円で購入する。外に出たらさっきまでの霧雨が本降りとなり、見事な濡れ鼠になって家へと戻る(古本は全力で死守!)。さぁ、がんばろう!
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そして大阪「梅田蔦屋書店」での「夏の古書市2017」にお越しのみなさま、短い間でしたが誠にありがとうございました。市は昨日無事に終了しましたが、売場がまた元のサイズに戻りつつも、引き続き『古本屋ツアー・イン・ジャパン』の古本コーナーは継続いたしますので、ふと思い出した時にでも、ぜひお立ち寄り下さい。売れた本リストが先ほど届いたのですが、まだまだ良書も駄本もたくさん残っていますので、よろしくお願いいたします!
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2017年09月03日

9/3下北沢の古本屋さんは殊更混んでいた!

今日は代田辺りに流れ着いたので、そのまま住宅街を縦横に抜けまくり坂を下ると、そこはいつもの下北沢の賑わいプラス、秋祭りで神輿が担がれる祭礼の賑わいで大混雑の南口商店街の尻尾であった。着飾った若い男女と、法被を纏った老若男女。そしてその間を、片足に茨の刺青を入れたミニスカートの外国人女性が、颯爽と闊歩して行く…。突然見知った街並に接続出来た驚きと、いつでも“ハレ”の場である街が、さらにパワーを増して完全なる祝祭空間と化しているのに圧倒されながら、神輿を避け人ごみを擦り抜け、遠目に店頭に人が鈴なりになった「古書ビビビ」(2009/10/15参照)を眺め、愛しの「ほん吉」(2008/06/01)へと向かう。うわっ!こちらも、店頭も店内も人で一杯じゃないか!と大いに面食らいながら、何だか古本市のように人の背越しに、店頭棚に視線を血走らせる。するとすぐさま新潮社「野獣死すべし 復讐篇/大藪春彦」(箱付き初版)を発見出来たので、それなりに満足して早々にレジに並んで100円玉で精算する。

「野獣死すべし」と言えば、思い出すのはやはり角川映画の村川透監督・松田優作主演の映画である。だから主役の伊達邦彦は、頭の中では永遠に松田優作として定着してしまっている。原作発表当時に近い、仲代達矢主演のモノクロ映画「野獣死すべし」(こちらの方が原作に忠実でピカレスクロマンとしても傑作の部類である。仲代がかなりコワイ)もあるのだが、やはり松田優作が日本映画に変革を起こすべく、全身全霊を込めて挑んだ角川映画の方が、私の中では優位なのである。日本に、正真正銘本物のハードボイルド作品を誕生させるべく、主演作品ごとに常に大奮闘する優作。だが、松田優作が本気になればなるほど映画は歪み(「野獣死すべし」では、当初伊達邦彦(原作の眉目秀麗な青年とは違い、街の片隅でひっそりと生きる男を想定)を演じるために、足を切って身長を低くしたいと願ったのだが、どう考えてもそれは無理なことなので、奥歯を抜くことで我慢した…)、本人の崇高な意志とは別に、何故かコメディ要素を胚胎してしまうのが、大いなる魅力のひとつとなっている。角川映画前作の「蘇る金狼」も、愉快な共演陣にとても楽しくすべてをぶち壊されていたが、「野獣死すべし」もまた例外ではない。相棒を演じる鹿賀丈史の危な過ぎるキレやすいアフロヘアキャラ。ヒロイン小林麻美の粘着的過ぎる喋り。伊達を勘だけで追いかけるしつこい刑事の室田日出夫。そして絶対演じるのに無理のあった、東大同級生の阿藤海と風間杜夫…。これらがなければ、恐らく優作理想の映画に近づいていたのかもしれない。だが、この綻びてしまったところが、残念ながらこの映画の輝きであり、優作自身が映画の中でひとり浮いてしまうところが、優作作品の絶大な魅力なのである。などとツラツラと思いながら、昭和三十五年刊の本を抱え、下北沢から浜田山まで移動し、すぎ丸に乗って帰宅する。
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賑わう「ほん吉」前にて。
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2017年09月02日

9/2昭和初期の本は私にとって麻薬である。

今日も疲労を抱え込み、成城の奥地に流れ着く。午後六時を過ぎると、辺りはもはやトワイライトで、日に日に陽が短くなっているのを実感してしまう。トボトボと駅への道をたどって行くと、やったぁ!まだ「キヌタ文庫」(2009/10/25参照)が頼もしく営業中じゃないか!
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と感謝しながら、表の200均単行本ワゴンから一冊掴み、店内に滑り込む…おや、帳場にいるのは初めて見る痩身中年の男性である。なんだかいつもより明度が高いような店内を、ゆるゆるとチェックして行く。すると左端通路の映画演劇関連棚で、少し背の傷んだ古い本を発見する。そっと取り出すと、昭和九年刊の第三書院「レヴユウ王コクラン自傳 見世物談義/中村秘一譯」と言う本であった。
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すかさず後見返しの値段を見ると500円。この独特の、昭和初期のきめ細かく重い紙の感触!活字を読む以前に、それに触れ、どっしりとした重さを味わうだけで、心はすでに本が出版された時空に、勝手にコネクトされてしまうのである。…あぁ、何故私はこんなにも昭和初期の本に、いとも容易く虜になってしまうのだろうか。その時代が好きだと言うのもあるのだが、恐らくは、決して手も身体も心も届かぬために、恋い焦がれている心が焦げ焦げ状態の過ぎ去った時代を、かろうじて味わうための健全な、私にとって必要な麻薬なのであろう…。さて、落ち着いたところで、店内でしばしページを紐解いてみる。十九世紀終り〜二十世紀初頭に米欧で活躍した、大興行師の自伝である。ショウマン・サーカス・レスラー・ボクサー・歌手・俳優、果てはマルクス兄弟までを奇跡の剛腕で呼び寄せ競演させる、ワールドワイドな呼び屋のお話が目白押し。おぉ!ジャック・デンプシー(日本ではボクシング漫画『はじめの一歩』で有名な技、“デンプシー・ロール”の始祖として有名である。後年はパンチドランカーになりながらもレストランを経営)についても載ってるぞ!と大喜びし、国書刊行会「オールバックの放送作家/高橋洋二」と共に計756円で購入する。帰りの車内は「見世物談義」を読み込み、すっかり百年前に気持ち良く没頭してしまう…。
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2017年08月31日

8/31よるのふるほんや

八月三十一日、夏休みの終りの日である。そんな学生的夏休みから離れること、早28年。かなりの疲労を背負って夜の三鷹に流れ着いてしまう。体力ゲージはゼロ。古本を求める心のゲージももはや一桁代なのだが、ここで流されて尻尾を畳んでは“古本屋ツアー”の名が廃る!とどうにか夜の「水中書店」にたどり着く。
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實業之日本社「鴎外文學/日夏耿之介」を100円で購入する。総武線に乗り込んで阿佐ヶ谷駅に帰り着き、いつものように「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄る。
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平凡社「古本屋の女房/田中栞」文春文庫「星の王子とわたし/内藤濯」講談社大衆文学館「奇想小説集/山田風太郎」を計109円で購入する。

ところで夜の古本屋さんは、なぜこんなに心を暖かくさせてくれるのだろう。そんなことをちょっと考えながら、古本を背のリュックに詰めて、トボトボと家路をたどる。昼間の店内は外より薄暗いのだが、夜は外の闇より遥かに暖かみを持ち明るい。それはまるで、登山道を登る途中の山小屋のようであり、帰り着くべき暖かい家庭のようであり、上映前の映画館館内のようであり、水族館の水槽を覗いているようでもある。それは店内に、外界とは違う確かな空間が存在する証拠であり、さらにそこから本と言う触媒を経由して、あらゆる世界の深淵にコネクト出来る可能性が秘められているためだろう。あぁ、なんだか今日はすっかり秋の気配である。
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2017年08月25日

8/25悪者と黒ひげ

午前十一時に御茶ノ水から、ここも例外無く炎暑の神保町に入り込み、久々のパトロールを開始する。長い『靖国通り』の横断歩道を渡り、まずは「三茶書房」(2010/10/26参照)店頭ワゴンに張り付き、すぐ目についた大日本雄辯會講談社キング第十巻第一號附録「新語新知識 附 常識辞典」を300円で購入する。キンキンに冷えた店内で武井武雄デザイン包装紙で包んでもらうと、新書サイズ+500ページ越えの直方体なので、なんだか札束の包みみたいになってしまった…。続いて「田村書店」(2010/12/21参照)店頭左側の100均ダンボール箱を漁るが、めぼしい物は特になし…だが視線を上げると、本の山に寄り添うようにして、ポケミスが積み上がっているではないか。気になるシメノンやハニーウェストを抜き出していると、素敵な物を下層に発見!ポケミスと同サイズではあるが、映画原作の「悪者は地獄へ行け」が混ざり込んでいるではないか!イヒヒヒ、ありがとう「田村書店」!ハヤカワポケミス「雪は汚れていた」「ベルの死」ともにジョルジュ・シメノン、「ハニーと連続殺人」「Gストリングのハニー」ともにG・G・フィックリン、潮書房「悪者は地獄へ行け/フレデリック・ダール 秘田余四郎訳」を計500円で購入する。五冊を鷲掴みにして再び箱前を通りかかると、その前に偶然立っていた「風書房」さんが振り向き、手の中を見て「や〜ら〜れ〜た〜」と呟く。まさに一足違いの収穫であった。さらに「神田書房」(2012/02/16参照)ではサラ文庫「懐かしいひと/つげ義春」エルモ社出版部「小型映画シナリオ集/伊藤紫英」博文館「天地有情/土井晩翠」を計200円で購入。さらにその先の「日本書房」(2011/08/24参照)では「勞働放浪監獄より 後藤謙太郎遺稿」(復刻版)を100円で購入し、暑さがより酷くなる前に、神保町を離脱する。
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一旦家に戻り、午後三時前にたくさんのデザイン・写真・アート関連の大型本を、小分けにして結束した後、剥き出しでカートに積上げ、「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)をゴロゴロ目指す。
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じわじわと進めている、居住空間を取り戻すための蔵書整理の一環である。大した量では無いのだが、この重さの分だけ、床の負担を解消したことを思って、心が少しだけ軽くなる。天野氏に査定をお願いし、涼しい店内でゆっくりと古本を見て過ごす。二十分ほどで「お待たせしました」と声がかかる。納得のいく金額で交渉成立し、所定の書類に必要事項を書き込み、お金を受け取る。そして本が減った分の心の穴を埋め戻すために、ジャンプコミックス「黒ひげ探偵長/ジョージ秋山」(初版で帯付きなのに安い!)を1030円で購入してしまう。家に戻り、「悪者は地獄へ行け」と「黒ひげ探偵長」をかわりばんこに愛でていると、「悪者〜」の背に酷い誤植を発見する。一番肝心な出版社名である『潮書房』が『潮房書』になっちまっている…。
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2017年08月24日

8/24蚊遣り器が守る店頭

酷い酷い暑さに、もしかしたら身体が少し溶けてるんじゃないかと心配しながら、夕方の上連雀に流れ着く。そのまま惰性で三鷹駅に向かい、帰宅客でごった返す橋上駅舎をどうにか通過して北口に出て、慰めてもらうつもりで「水中書店」(2014/01/18参照)へ。すると今日は嬉しいほどに相性が良く、たちまち店頭棚で四冊を掴み取る…そのまま帰らずに、来て良かった。店頭を眺めている人間の身体にまとわりつくのは、蚊取り線香の細く白い煙である。良く見ると、文庫棚の脇に豚型の蚊遣り器がちんまりと置かれ、大きく開いた口から煙を吐き出し、あの吸血昆虫を寄せ付けぬよう、健気に奮闘しているのだ。
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私はこの蚊取り線香の匂いを嗅ぐと、即座に子供の頃に親戚の家に泊まりに行き、電気を消して寝る瞬間を思い出してしまう。住んでいた団地では、蚊取り線香を焚く習慣が無かったせいか、なんだか甘く妖しい、人の家に泊まる行為の記憶と、今でも軽々と時空を飛び越え直結してしまうのである。なので、フムフムと煙を吸い込みながら、遠い夏の日の夜にたちまちブクブクと溺れてしまう…。涼しい店内に進み、ちくま文庫「超発明/真鍋博」中公文庫「本とその周辺/武井武雄」新潮新書「市川崑と『犬神家の一族』/春日太一」文藝春秋「落城記/野呂邦暢」を計400円で購入する。

先日十一月の予定を早々と発表しましたが、新たに時間を遡り十月の参加イベントお知らせいたします。去年同様(2016/10/02参照)『BOOKS 9 × 鬼子母神通り みちくさ市 presents「LOFT9 BOOK FES.2017」』の古本フリマ部門に、今年もめげずに参加いたします。思えば今年の二月に一人古本市を二日間行い、その後もことあるごとに古本を販売して来ましたが、まだまだまだまだ売るべき古本が、たくさんたくさん部屋に居座っているのです!だから私は、闘うように古本をこれからも売って行くつもりです(まぁ、その分やはりドカドカと買い込んでいるのですが…)。というわけで十月も、みなさまのお越しを、渋谷円山町にてお待ちしております!

★BOOKS 9 × 鬼子母神通り みちくさ市 presents
「LOFT9 BOOK FES.2017」
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/71625

■10/1(日)LOFT9 Shibuya 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS(キノハウス) 1F
■古本市:OPEN 12:00
■トーク:START 13:00
(古本市は19:00まで、古本フリマは17:00まで)
※軒先&店内の古本市は入場無料!
※トークイベントのチケットは前売り1500円/当日2000円 (+1オーダー)

【トークイベント】
■「闇を抱える読書」タブレット純×姫乃たま
OPEN 12:30 START 13:00(終了:14:30)
とても個人的で人には薦められない、心の闇に寄り添う暗くも楽しい読書経験を語る!

■「ヤクザと男色」鈴木智彦×山田参助
OPEN 15:30 START 16:00(終了:17:30)
ボーイズラブでは定番のヤクザものですが、実際はどうなのか。『ヤクザ1000人に会いました!』の鈴木智彦さん、『あれよ星屑』の山田参助さんによる男集団談義。

■「覚醒めよ!」能町みね子×サムソン高橋×石丸元章
OPEN 18:00 START 19:00(終了:21:00)
本人たちさえも当日まで何を喋るかわからない衝撃のフリートーク…

【古本市参加店舗】
ハナメガネ商会、にわとり文庫、BOOKS青いカバ、古書現世、三楽書房、立石書店、JUNGLE BOOKS、ブックギャラリー・ポポタム、ひぐらし文庫、北書店(新刊 From新潟)

【古本フリマ参加者】
小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)、とみきち屋、つぐみ文庫、ドジブックス、えほんやハコのなか、甘夏書店、レインボーブックス、雨の実、M&M書店、ロフトブックス、朝霞書林、嫌記箱(塩山芳明)
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2017年08月23日

8/23「盛林堂」でダベる。

早い昼食を食べ終えて、ペタペタとビーサンを引き摺り外出。足は荻窪に向き、雨仕様の「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭棚で、大塚書房「狂人の世界より歸りて/紀野親二」新潮社「六人の作家未亡人/野田宇太郎」荒地出版社「推理試験/二宮佳景編」を計315円で購入する。そしてそのまま判を捺したように西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、「フォニャルフ」棚にドバッと八冊の昭和三十年前後の「探偵倶楽部」を並べる。雑誌でしか読めない南沢十七&今日泊亜蘭訳小説や、大河内常平・楠田匡介・狩久・夢座海二・潮寒二などが各誌に跋扈。状態はわりと良くお安めになっていますので、早い者勝ち!などと補充を終えると、たくさんの本を抱えた夏葉社・島田潤一郎氏が登場。「最近よく会いますね」と挨拶を交わす。いよいよ出来上がって来た、山本善行撰「埴原一亟古本小説集」を納本しに来たのであった。今直ぐこの場で買いたくなるが、ググッと我慢して27(日)の『善行堂in夏葉社』で買うことを、意味もなく宣言しておく。埴原一亟は、亀鳴屋のアンソロジー「したむきな人々」で、芥川賞候補にもなった『翌檜(あすなろ)』を読んだことがあるだけだが(確か建て場回りの古本屋さんの話だったような…)、他の作品がどんなものなのか、今から楽しみでたまらない。なんたって『古本小説集』なのである。颯爽と他店へ自転車で納本に回る島田氏を見送り、こちらはだらしなくさらに帳場横でだべっていると、今度は喜国雅彦氏が「ひとたな文庫」の補充に登場したのでご挨拶。鞄から出した茶色い探偵小説が次々棚に並ぶのを、唖然呆然と心の中で涎を垂らしながら眺める…。そして店主小野氏も交え、乱歩の話・フェティッシュが高じ過ぎて踏み外す性犯罪話と漫画があったからこそそうならないで済む話(氏は頼まれているプロフィールを「俺がもし色々やってしまったら、これが新聞にそのまま載るのか…」などと妄想を飛躍させながら作成しているのだ!)・雑居房ではなく独居房への激しい憧れ(本来は懲罰であるはずの独居房だが、誰にも邪魔されずひとりで色々考え続けられるから絶対に楽しいはずだ!と力説)などの、エッジの立ちまくった話に花を咲かせる。全く持って素敵で面白過ぎる、日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞受賞漫画家さんですよ!と、ついつい濃厚な時間を古本屋さんの帳場で過ごしてしまう。このまま閉店までいても大丈夫そうなので、慌てて引き上げることにする。

ところで今日買った「狂人の世界より歸りて」は、完治した文学者(編集者&小説家)の元精神病者が、その発病から全快までを小説仕立てで著した、昭和二十三年の本である。『發病篇(妄覺・妄想篇』『治療篇(精神病院入院篇』『全快篇(雜篇)』の三章で構成され、病的な妄想が刻一刻とすべての出来事と思考に広がって行くのが、つぶさに読みやすく展開して行く。脈絡のあまり無い夢の話などとは全く違い、現実と妄想の境目がずぶずぶと浸潤して行く、まるで恐怖小説のようで、不謹慎ではあるがなかなか面白い。何故か厚着カバーになっており、人文書的シンプルカバーの下には、色使いの派手な狂的世界のイラスト(出版社名も『照林堂』となっている)が隠れている…。
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