2016年12月23日

12/23女子に怖じ気好き酒屋の軒先に救われる。

昨夜はわめぞの大忘年会に参戦。様々な人に様々な古本屋タレコミを囁かれ、非常に刺激的な夜となるが、一番過激に刺激的だったのは、石丸元章氏に子母澤寛について説明したり、トイレにたどり着けぬ氏を素早く案内した瞬間であった…。

明けて本日、駅に向かう途中の「千章堂書店」(2009/12/29参照)100均ワゴンで文春文庫「落城記/野呂邦暢」を見つけて喜んでから、「「白樺書院」(2008/06/01参照)は、すでに十二月初めにお店を閉めちゃいましたよ」と、忘年会で隣席だった「むしくい堂」さんにタレ込まれていたので、悔恨の念を噛み締めながら下北沢に到着する。『下北沢一番街』のお店の前に立つと、あぁぁぁぁぁ、本当だ。シャッターは下ろされたままで、看板が、看板が取り去られている…。2016/11/01にお店に入ったのが、最後となってしまったか。長い間、本当におつかれさまでした。そしてやはりどうしても思い出すのは、店の中を我が物顔に飛び交っていた、あのインコのこと。幸い三年前の「南部支部報第48号」に、その強烈な出会いをレポートした拙文があるので、お店の追悼のつもりで、ここに少々抜粋する。

『…大きく日除けが張り出しているせいか、ここだけ商店街の中で少し闇をまとっている。その薄暗い領域に踏み込むと、確実に何かの視線に射抜かれているのを感じてしまう…決して店主のものではない。もっと、純粋で凶暴な…それは、入口近くに居座る、緑色のインコの視線であった。このインコは店内で放し飼いににされており、足下の文庫本をおもちゃにしている。店内に入って棚を見ていると、横で『ピィーッ!ピ〜〜ッ!』と激しく鳴き立てる。あぁ、愉快で素敵な古本屋さんだ…そのとき突然奥の帳場で店主が立ち上がり「ダメだよ!」「えっ?」「いや、その子が今飛びかかろうとしていたもので…」。危うく古本屋さんでインコに襲われるところであった。可愛い凶暴な店番がいるお店、それが「白樺書院」である』
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これは三年前に店の外から激写したインコ。その足が掴むのは、啄んでボロボロになった文庫本である!

インコの感慨に耽りながら、人波の多い方に引き返し、途中「ほん吉」(2008/06/01参照)に立ち寄る。古書混じり気味の店頭棚から、岩谷選書「綺堂怪奇小説集/岡本綺堂」(表紙破れアリ)学研4年の学習2月教材「おもしろ交通館」を計200円で購入した後に、南口商店街の終りにある、これもタレ込まれた本を少々扱っているらしい「三叉路」に到着。…だが、思いっきり入りづらい。完全に女子向けの三階建て小店!ぬぅん…このプリティーな祝日の女子空間に、オヤジが闖入するわけには、ちょっといかぬ。とすっかり怖じ気づき、また別の日にチャレンジするかと、逃げるように歩き出し、横道に入って久々の「オムライス」(2013/09/19参照)に入店。なんだか貸本漫画が増えているなと思いつつ、古本ゾーンをガサゴソする。値段の付いてない二点、帝國教育出版部「コドモノヒカリ第五巻第二號 カゾヘカタ號」(ページ欠け。昭和十六年刊の教育絵本)婦人画報社「男のお洒落実用学/石津謙介」を店主に差し出すと、絵本は1000円だが石津本は破格の300円!ということなので、喜んで購入する。さらに坂を東に上がって池ノ上に向かうと、南側商店街の閉店した酒屋の軒先で、無人ガレージセールが行われているのを発見。
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一冊十円古本箱(当然両方とも酒の空き箱)が二つも出ているじゃないか!と無邪気に喜び、五木寛之・吉行淳之介・石川達三・語学関連の多い並びを集中して眺め、角川新書「一万一千メートルの深海を行く/J・ピカール R・S・ディーツ」を購入する。
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本日のささやかな収穫。下に敷いてあるのが「コドモノヒカリ」で、武井武雄エの『ウメノセック(ケンコクサイノウタ)』である。欠けのページがあるのが誠に残念だが…と表4の『本編の内容について(お母様方へ』を読んでいると、欠けたページの詳細が書いてあった。そしてその中に恐るべき名が!何と『動物の駆けっこ』を描いているのは谷中安規!ええっ!と驚き慌ててないはずのページを繰ってみると、なんと半分だけがかろうじて残されているではないか。あぁっ、悔しい!でも、嬉しい!動物が、やっぱりかわいいっ!
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2016年12月18日

12/18「魔法入門」と植草甚一譯!

風邪がどうにも治りきらないので、ワチャワチャと動き回らずになるべく休養することを心がけ、「フォニャルフ」のささやかな補充にだけ向かうことにする。それでも通り道の古本屋には吸い寄せられ、ボケラ〜ッとしながら「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)店頭右端の文庫棚前に立ち止まり、漫然と棚を上から順に眺めて行く…今日はちょっと暖かいな…立っているのになんだか眠いな…などと集中力を欠きながら文庫の背を追いかけていると、脳天をぶっ叩かれたような衝撃力を持つ文庫を発見!角川文庫「魔法入門/W・E・バトラー」である。『超自然の謎シリーズ』と銘打たれたオカルト文庫の中でもレアな一冊を、103円で買える日が来るとは!と気怠い風邪を瞬間吹き飛ばし、店内で四枚の硬貨と無事に交換する。初版だか、カバーは後版の異装となっている。見つけた瞬間に興奮してしまい、棚に挿さった状態を一枚。
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いつもだったらこのまま歩いて荻窪に向かうのだが、今日は日和って大事をとって電車で西荻窪入りし、「フォニャルフ」に古本の補充を果たす。そして「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とちょっとだけ来年の岡崎武志氏と共同で作り上げる古本屋本について打ち合わせる。店内が次第に混み合ってきたので、程よいところで辞去。だが改めて店頭に蔓延る100均箱に吸い寄せられてしまうと、見慣れぬ古く良さげな単行本を発見してしまう。昭和十五年発行のスタア社「亞米利加作家撰集」である。裸本らしく、中を見るとヘミングウェイやスタインベックなどの知られた作家も並んでいるが、大半が見知らぬ名である。だが、二篇の譯者に植草甚一の名を見つけたので、即座に購入を決意する。再び店内に舞い戻り、「これなんで外に出してるの?」と聞くと「売れないんだもん」とのシンプルな答えが返ってきた。そして裸本だと思っていたのが、実は中に挟まっていた薄っぺらなパラフィンのような紙がカバーであり、それならばと改めてカバーを掛けてもらい、さらにパラフィンも巻いていただくことにする。すると小野氏が「こうしたら、何だか売りたくなくなってきた」とボソリ。いや、時すでに遅し。手のひらで踊らされつつも、どひゃっほうです。
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連日の安値良書入手に、喜び戸惑いつつも、今日も上出来な古本人生を歩めていることに、どこかに潜んでいるはずの古本の神に、盛大に感謝を捧げる。
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2016年12月17日

12/17古ツアin古典SFワンダーランド!

風邪がまだ治りきらないので、今日も夜の予定までは家に閉じこもり過ごすつもり。だがやはり古本は買いたしと、午前十時の開店時間に照準を定め、今日は古本が出ているかもしれないと薄い望みを賭けながら、ご近所の「帰ってきたJ-house」(2015/12/26参照)の土日朝市に向かう。開店と同時に100均箱に群がり貪る猛者の隙を見出しながら、自分のペースで店頭のチェックを進める。おぉっ!今日は歩道反対側に置かれた箱に、ソングブック系とは言え、古本が並んでいるではないか!と色めきたち、ガサゴソガサゴソ。日本専売公社「たばこ専売五十年少史」二玄社「CARグラフィック 72号」年代不明の小学六年生1月号付録「ハッピーゲームカード」を300円で購入する。そんな風に首尾良く古本を買えたこともさることながら、「たばこ専売五十小史」に挟まっていた紙物に、午前中一番の喜びを覚えてしまう。それは昭和二十八年発行の「たばこのはなし」という日本専売公社のパンフレット。基本は二色刷りなのだが、ベラベラと開いて内側を見ると、何とカラー印刷の明治三十七年から昭和二十八年まで発売してきた、煙草のパッケージがズラズラリ!
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ぬっ、乱歩の『屋根裏の散歩者』に登場する『Air Ship』も、頻繁に探偵小説に登場する『敷島』も、しっかり掲載されているではないか!そんな小さな喜びを噛み締めつつ家にそそくさと戻り、今は夜のために、傷を負った野生動物のように身を隠し、ひたすら体力の温存に努める…。

そして午後四時半に家を出て、暮れなずんでいる神保町着。この街に来たならば、当然お気に入りの各店頭を見て回るつもりなのである。まずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)店頭で、意外な児童本を見つけて、これは幸先が良いぞと店内に駆け込んで精算する。秋田書店ジュニア版怪奇サスペンス全集4「世界の怪奇七不思議/庄司浅水」を300円で購入。続いてすっかり暗くなった「日本書房」(2011/08/24参照)の店頭で、つい先日も見たばかりの柔々和本タワーを掘り返すと、心の琴線に触れまくる薄い冊子を発見!出版社不明「人面類似集 全/宮武外骨編」(背に製版テープで補修アリ)である。ドキドキしながらページを繰ると、人間の認識能力の高さ故の本能として、無意味な図像に人の顔を見出してしまう(つまりは心霊写真と類似の現象)現象のオンパレード!
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平家蟹から始まり、人面魚や人参や人面瘡などを経由して、妖怪関連にまで至ってしまう、昭和六年刊のある意味オカルト本である。これを五百円で購入し、どひゃっほう!と『白山通り』に雄叫びを上げる。さらに「明倫館書店」(2012/04/04参照)で武田薬品化學株式會社の非売品本「化學大家略傳」を300円で購入し、本日のメインイベントである『日本古典SF研究会』の忘年会に向かう。ひょんなことから盛林堂ミステリアス文庫の新刊、横田順彌氏の「荒熊雪之丞大全」のカバー周りデザインを引き受けたことにより、研究会会長である北原尚彦氏からお誘いがかかり、恐縮しながら末席を汚すことになったのである。地下の会場に滑り込むと、畏れ多いお歴々が集合しており、ひたすら縮こまりながらも、二時間半を楽しく過ごしてしまう。それにしても、『古典SF研究会』なのに、一切SFの話が出ずに、古本話に終始したのは、どういうことなのだろうか…。
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2016年12月16日

12/16箱入り児童文学本の幸福性について

気が緩んだのか無様に風邪をひいてしまう。一晩寝て快方に向かっているのだが、今夜は万難を排して参加しなければならない「古本屋ツアー・イン・京阪神」の打ち上げがあるので、日中は大事をとって寝て過ごすことにする。というわけで、古本屋には行けそうもない…古本も買えそうにない…。そこで、布団の中でツラツラ考え出したことでも、書き留めておくことにする。

私は小学生の時は非常に病弱で、よく高熱を出しては、学校を二日三日と休んでいた。親は共働きで家にはいなかったので、午前と午後に一回ずつ、団地の三階のおばさんが様子を見に来てくれたりしていた。だから熱に魘されながら、もっぱらひとりで過ごすことが多かったのだが、寂しかったり嫌な思い出と言う印象は持っていない。何故なら誰に気兼ねするでもなく、一日中本が、心置きなく読めたからである。まず午前十時くらいまではNHK教育テレビの子供番組を視聴し、その後は学校を休んだ背徳感に襲われながらの、ひたすらの読書読書読書!しかも読んでいたのは、団地上階のお兄さんからお下がりとして受け継いだ、ポプラ社の乱歩本と偕成社のホームズ本であった。つまり一日中、焼跡の残る東京や一度も行ったことのない霧深い倫敦での、怪盗の暗躍や殺人などにうつつを抜かし、エヘラエヘラ過ごしていたのである。今日は三冊も読んだぞ!と、もう話の筋もトリックも知っているはずなのに、繰り返し同じ本を読み続ける、愚かな熱を出した小学生…。そんな風邪っぴき小学生だが、いつまでも寝ても覚めても二十面相と言っているわけはなく、ある日、ロフティングの『ドリトル先生』シリーズに出会ったことにより、さらなる読書の楽しさに開眼してしまう。恐らく最初は四年生の時に学級文庫で出会った「ドリトル先生の郵便局」だったと思うが、とにかく動物と話せる(動物語を勉強して理解している)特殊能力に羨望を覚え、話せる故そして医者故に、動物たちから頼りにされての不思議な世界治療旅行に、あっけなく魅せられてしまったのである。学級文庫にはその一冊しかなかったが、学校図書館にはシリーズ本が何冊か置かれていたので、次々と借りて貪るように読んだことを良く覚えている。さぁ、こうなってくると、当然その本が欲しくなる。いつでも好きな時に読めるように、手元に置いておきたくなってくる。だが確か一冊千円前後していたので、小遣いでおいそれと買える代物ではない。だからまずはクリスマスプレゼントとしての、長期的な計画で入手を目論んだのである。それまでは学研のひみつシリーズや漫画や玩具などが主たるプレゼントだったのだが、それがいきなりまともな児童文学本を欲しがったので、親もさぞかし驚いたことであろう。辛抱強く待ち続けた12月24日に、プレゼントしてもらうのではなく、お金をもらって自分で町の本屋へ向かった。団地の商店街の小さな本屋の片隅には、児童文学のコーナーがちゃんとあり、上の方の棚の一列を、岩波書店『ドリトル先生』シリーズの箱入り本が占めていた。怪獣や怪人やロボットや二十面相から一歩離れたことを生意気に意識しつつ(決して卒業したわけではないのだ…)、その優等生的に幸福な並びを背伸びして眺め、悩みに悩んで選んだのは「ドリトル先生と秘密の湖」…シリーズ内でも一番の厚みを誇る、ノアの方舟や進化論を搦めた、ちょっと難解な大作である。何故これを選んだのか…それはやはり厚かったからであろう。その大きな物体に、ページに広がる未知の世界と深い物語を感じ取り、選択したのであろう。しかも、文庫や図書館では無かった、箱が本には付いていたのである。

箱入り本は、子供からすれば高級な本である。もっとも児童文学の箱は、いわゆる函ではなく、ボール紙を太いホチキスで留めただけの、薄っぺらなものではあるが、それは、自分が良い本を読んでいるという優越感に浸れる、単純で幸福な装置であった。おおよその物語を感じさせる四角い物体から、丸い背を紙の匂いとともにスッと抜き出し、箱と違った絵が描かれた、読むべき本に変化した物体を展開。見返し→口絵→目次と通過して、やがて物体から離れた、印刷された文字が脳内に投影する物語に、ひたすら没入して行く、その行為。この紙の装置による厳かな儀式が、自分は今、本を読んでいる!頭が良くなるはずの、本を読んでいる!という、誰に対してなのかも判然としない優越性と、その幸福性に陶然と酔い痴れる時間を、創り出してくれていたのである。さらに読書を中断し、再び箱に収めて物語を閉じる決意と達成感が、静かなファンファーレとして、己を褒めそやしていたのである。また箱入り本は、単純に親受けもよく、ひょんなことから気まぐれに買ってもらえるということも、多かった気がする。あぁ、本好きの子供としては、これを幸福と言わずに何と言おう。

布団の中でそんな思い出に浸りながら、ちょっと起き上がって家中に散在していた箱入り児童文学本を集めてみる。悲しいことに、それはすべて大人になって買った古本ばかりであったが、こうして並べると、前述のもはや薄れてしまった幸福性が、そこはかとなく、懐かしく立ち上がってくる気がする。それにしても、やはりこの物質感は、迫力あるな。箱はまるで、勢いのある物語が弾け飛ばないよう、キュッと固めて、拘束しているみたいだ。
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そして、そろそろ発売になる、22号で惜しまれながら終刊となる「BOOK5」連載『古本屋ツアー・イン・ドリーム』最終回は、伝説の白山上の「南天堂書房」を訪ねております。巻頭のアンケートとともにお楽しみいただければ幸いです!
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2016年12月14日

12/14非情の買取を江見水蔭が吹き飛ばす!

昨日西荻窪から持ち帰った本の中には、レアなプロレス本が含まれていた。レアであるが、やはりあの古本市ではちょっと筋違いなジャンルだったので、売れ残ったのであろう。すでに読了済みの本であり、さほどプロレス本に執着はしていないので、そのまま盛林堂さんに買い取ってもらっても良かったのだが、そこはセコい欲が働き、専門店の方が高く買い取ってくれるに違いないと考え、本日某格闘技系専門店に赴く。帳場で「買取をお願いします」と声をかけて五冊の本を渡すと「しばらくお待ちください」と査定に入る。新書サイズの、相場が四千円の本が三冊、一万円前後の本が一冊、そして千円ほどが一冊…という布陣である。まぁだいたい売値の二割〜三割と考え、四〜五千円くらいであろうかと、捕らぬ狸の皮算用。店内の棚に目を凝らすと、持ち込んだ本と同じ本が並んでいたので値を見てみると、ちゃんと四千円の値段が付けられている。マニアックな本に、正当な値を付けているなら安心だと、大船に乗ったつもりで待ち続ける。だが「買取お待ちのお客様」と呼び出され帳場に向かうと、告げられた値は合計で1900円であった…予想の半分以下…だいたい売値の一割…な、なんという非情な買取なのか!派手に意気消沈しながらも、さらに他店に持ち込んで査定してもらうのは面倒くさかったので、このまま本を手放すことにする。どうか、探し求めている人に、無事に買われるんだよ…。

すっかり気持ちを腐らせながら神保町入りし、こうなったら今受け取った金で、古本を買ってやる!と小さく息巻いて店頭を覗き込み始める。店頭の右がまだ雨仕様の「丸沼書店」(2009/12/17参照)では有光書房「偏奇館閨中写影/亀山巌」を500円で購入する…これで残りは1400円。ズンズン通りを進んでこちらも未だ雨仕様の「日本書房」(2011/08/24参照)店頭木製ワゴンを吟味しつつ、店内右側通路に進んで格納された柔々和本ツインタワーに丁寧に挑みかかる。すると、左側タワーの中ほどに、分厚いしっかりした小型本が一冊(押川春浪「海底軍艦」と同サイズ)…取り出してみると「避暑の友」とあり、モノクロ写真グラビアページと三十編近い小説、超短篇的小品が三十編ほど、それに時代小説や雑文が十編ほどの構成となっている。中には奇談怪談系が多く含まれており、読み応えが…ありゃ!これ書いたの江見水蔭じゃないか!そう気づいた瞬間に、すべての憂さは神保町の果てまで吹っ飛んで行った。これは、読むのがハチャメチャに楽しみだぞ!と帳場に向かい、博文館「短編小説 避暑の友/江見水蔭」を500円で購入する…これで残りは900円。通りをスイスイ足取り軽く南に下り、今日は妙に古い文庫の多い「神田書房」(2012/02/16参照)で角川文庫「銃器店にて/中井英夫」籾山書店「春泥研究會句抄」(小村雪岱装幀!)を100円で購入する…これで残り800円。最後に『神保町交差点』を経由して『神田古書センタービル』前の「みわ書房」外売り(2013/01/18参照)で、新太陽社「連續探偵小説 詩と暗號/木々高太郎」(初版)を840円で購入する…40円オーバーだが、まぁいいか。
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今日の嬉しい収穫二冊。そして「避暑の友」には、東京の作家陣が神奈川の片瀬にある江見水蔭宅を訪れ、大騒ぎする顛末が綴られた一遍があるのだが、なんとその時の記念写真がグラビアに掲載されているのだ!
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左上から江見水蔭・巌谷小波、二列目が左から泉鏡花・石橋思案・小栗風葉、最前列が左から柳川春葉・尾崎紅葉・広津柳浪となっている。一部メンバーも参加する、もはや仮装大会の『怪談百物語』ダイジェストが、愉快愉快のどひゃっほうである。
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2016年12月09日

12/9色々フライングした後にみなさまのお越しを心よりお待ちしております。

明日の古本市のために大量に作った古本束を、盛林堂・小野氏に引き取りに来てもらい、台車に山と積んで百メートルほど移動の後に車にドサドサ放り込み、西荻窪『銀盛会館』に搬入する。すでに岡崎氏と盛林堂の分は準備万端整っている。なので私も早く荷を下ろして棚にガンガン並べて行かなければいけないのだが、身体が言うことを聞かずに、涎をジュルリと垂らしそうになりながら、フライング品定め。うううう〜ん、欲しい本がたくさんある…盛林堂さんは思ったより文学寄りだが、恐ろしい本が恐ろしい安値で…あっ、でも奥にスゴいミステリ本たちが…それにしても、棚の上にズラッと並んだ岡崎氏の描き下ろし原画イラストが壮観!大瀧詠一が欲しいぞ!などと役得ずくで、最初に思いっきり楽しんでしまう。だが途中でさすがに心を入れ替え、古本束の紐をジョキリジョキリと切り離し、棚に家から離脱して来た古本をダカンダカンと並べて行く。…ふむ、なかなか悪くないんじゃないかと、心の中で自画自賛。そして奥の上段に署名本をコーナーを作り、やった、完成!…と言いたいところだが、やっぱりちょっとだけ本が足りないじゃないか!かなり大量に用意したつもりだったのに、結局こうなってしまったか。明日少し補充することにして、後は再び二人の本を見続ける。すると嬉しいことに小野氏が、「欲しい本があったら、場合によっては先に売ってもいいよ。たいていはダブってる本だから、また補充すればいい」と宣う。いよっ!さすが在庫豊富な古本屋っ!と大喜びして即座に二冊を選ぶと「両方ともダブり本だから大丈夫」とのフライング買いお墨付きをいただく。再びの役得である。筑摩書房「小さな町/小山清」(カバー痛みで蔵印アリ)今日の問題社「天明大捕物/國枝史郎」(函ナシ)を計2000円で購入する。そして岡崎氏とともに会場に所用で顔を出した原書房の編集者さんから、岡崎氏の新刊「気がついたらいつも本ばかり読んでいた」を献本していただいたので(実は拙著「古本屋ツアー・イン・ジャパン&それから」と同じ担当編集者さんなのである)、すかさず氏に署名をお願いしてしまう。本は何処から読んでも良い感じで、そしてどのページにも確実に、真面目な・C調な・哲学的な・怒り心頭な・ニヒルな・素敵な・詩的な・大人な・子供な・精神的貴族な・低俗な・高尚な・茶目な・短気な・暢気な・愉快な・愚かな・立派な岡崎氏が顔を出しているので、まさにこれはバラエティブックの面目躍如!というわけでみなさま、明日は色々ひっくるめて楽しむ心持ちで、ぜひとも西荻窪にお出でください。よろしくお願いいたします!
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2016年12月08日

12/8今年最後の「たけうま会」!

大好きな古本屋さんと、ただお酒をのんべんだらりと呑む会「たけうま会」(2016/10/18&07/22&05/10参照)に参加するため、横浜に急行する。今日のメインゲストは、下北沢「ほん吉」(2008/06/01参照)修業時代を経て、ひょんなことから「なぎさ書房」(2016/01/10参照)の跡地を引き継ぐことになった、神奈川のホープ「馬燈書房」さん(2016/04/23参照)。開店当日にツアーした時より、だいぶお店の様子が変わっているはずなので、ちょっと早めに現地入りして、古本屋さんをたどりつつ、会合前に偵察しておこうと、まずはすでに夜の帳に包まれた『馬車道駅』地上に顔を出す。そして『県立歴史博物館』横の「誠文堂書店」(2010年02月28日参照)の階段を上がり、二階外棚を反応の良過ぎる自動ドアがひたすら開閉してしまうのに閉口しながら、一冊選んで帳場へ向かう。角川文庫「狂熱のデュエット/河野典生」を100円で購入すると、なんと店番をしていたのは、超ド級のミステリ本コレクター・石井女王様(喜国雅彦氏の本棚探偵シリーズ参照)であった。待ち合わせ時間までそれほどないので、早くお店を出なければ行けないのだが、ついつい古本屋話やミステリ本話に盛大に花を咲かせてしまう。そんな今日の女王様の名言は「このお店はミステリ本がないから、物欲が湧かないので、心穏やかにのんびり働ける」でした。意外な出会いを喜びつつも、最後に女王様の口から出た「「活刻堂」(2009年10月12日参照)が最近開いてないんだけど、もしかして…」の言葉に驚き、早速『馬車道』を駆け抜けて『イセザキモール』に突入し、暗い小道に入り込んで「活刻堂」前。ふぅ、良かった。ちゃんと営業中じゃないか。そのまま店内古書棚に耽溺してしまい、皇國青年教育協會「あすのすまゐ/山田守」(モダニズム建築の大家による戦時中の住宅研究本。個人的にどひゃっほうである)私家版「放火団/ハロルド・ディアデン」(1930年前後にイングランドで暗躍した放火団事件の自費出版的訳本。元本は1934年イギリスで出版)を計1500円で購入したところで、「馬燈書房」まで足を延ばしたら遅刻が必至となることが判明したので、そのまま待ち合わせ場所の『日ノ出町駅』に向かう。改札前に集まったのは、たけうまさん、雲雀洞さん、そして馬燈さんである。すぐさま近くの焼き鳥屋に腰を据え、楽しく愉快だがドロドロもしている、古本屋業界話に耳を傾ける。それにしてもやはりスゴいのは、いきなり伊勢佐木町の二十坪のお店を、二十代の若さで引き継いだ馬燈さんである。最初は新宿、もしくは町田辺りにお店を開こうと考えていたらしいのだが、ある日組合で働いていると、「なぎさ書房」さんがお店を閉めることになり、棚も全部壊して原状復帰してしまうという話を聞き付け、すぐさま休みを貰ってお店に駆け付け(なぎささんにはそれまで、一度も行ったことはなかったそうである)、そこで商売を始めることを電光石火で決心したのである。それからすでに八ヶ月が経過。実はただ闇雲に借りたわけではなく、お店を始めると決めた時から、あの程度の広さは必要だったと考えるほどの、堅実経営派。市では本を買いまくり、街や人と濃密に交わる実店舗営業の酸いも甘いも早々に味わいつつも、商売はまずは順調とのこと。非常に喜ばしいことである。そんな話を聞くと、やはり改めて開店時より進化した、お店を見に行かなければという思いに駆られてしまう。よし、年内にどうにかして再ツアーしに行きますと約束し、濃いめのハイボールにしたたか酔っ払って、京浜急行各駅停車で帰路に着く。
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左から雲雀洞さん、たけうまさん、馬燈さん。今年、たくさんの古本屋さんとお話しする機会をあたえてくれたたけうまさんに多謝!来年も良き「たけうま会」をよろしくお願いいたします。
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2016年12月07日

12/7部屋に古本屋の光景が出現する。

今日は古本屋にも行かずに、仕事をしながら、昨日からの古本市用準備の続き。午後にギリギリギリギリ本を縛り上げて二〜三十冊の束を十本ほど作り上げ、他に署名本や薄手の本を詰め込んだ大型バッグをひとつ。さらにはトークでの抽選プレゼント用ささやか物品を三つ…これで搬出準備が完了したわけであるが、実際に会場に運び込むのは明後日なのである。さて、それまでこれらの大物を何処に置いておくべきか…。結局部屋に薄くグイグイ積上げると、まるで古本屋さんの通路の如き光景が、我が家の中に出現してしまった。横積み本タワーとは違う緊縛な趣きが、きっとそう感じさせているのだろう。それにしてもこの束々が、かなりの量と重量なのは明白であるが、各部屋から古本が減った気配がまったく感じられないのは、いったいどうしたことであろうか。自分では、まだまだそこまで多くはないと常に思っているのが、やはり間違いの元で、各所の本の山を日常の景色とし、恐ろしいほどの量の本を、屋内に内臓していることから目を逸らしている結果が招く、だらしない悪魔のような重大な錯覚に、常に騙されているに違いない。もうこうなったら、毎月一回くらい、同規模の古本市を開いてみるか。そうすれば少しは目に見えて、古本山が削れて行くのでは……いや、そうなったらそうなったで、毎日恐ろしい量の古本を買い込むことになりそうな予感が…あぁっ!俺はいったいどうすればっ!懊悩していたその時、「だから本棚買いなよ」という北原尚彦氏の突っ込みが、耳の奥に微かに聞こえて来た…。
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2016年12月06日

12/6師走の一日を費やして古本市の準備に着手する。

今週土曜日の古本市&トークに備え、家中で静かに横積みされて眠っている、精鋭古本を選り抜き集める。毎年会場に搬入すると「あぁっ!足りない!明日また補充分を持って来なければ!」と愚かに失敗しているので、それに懲りて多めに、自分が思っている以上に量を多くして、まずは初の試みとなる署名本コーナー作りに腐心(集めてみたら十八冊。並びは見てのお楽しみ!)。続いて全体の、本のクリーニング→値段札作成→値付け→札挟み込みと作業を進めて行く。だが、背を上にして床を埋め尽くす、古本量の多さに自ら辟易し、文庫の値付を終えたところで、気晴らしに外に逃走してしまう。強い風が吹き荒れる、まだわりと暖かな午後。ケヤキ並木の道を歩いて行くと、落葉が舞い散るのではなく、すでに地面に積もった落葉がカラカラと舞い上がり、砕けた草の匂いを振りまいている。踝まである落葉の吹き溜まりに沈み込みながら、あの家の床で待ちぼうけを食らっている古本群に、新たな彩りを加えるため、古本屋さんをちょっと回って来ようと考える。
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※これが家で主の帰りを待つ値付け前の古本群…。
まずは都合良く期待しながら「ネオ書房」(2010/02/09参照)に足を向けるが、さすがに今日は出物はナシ。そのまま高架下を伝って高円寺まで出張り、「藍書店」(2014/01/14参照)外壁棚から宝石社「別冊宝石78号 久生十蘭・夢野久作読本」徳間書店「毒舌文壇史/今東光」を計500円で購入する。続いて『あづま通り』の「越後家書店」(2009/05/16参照)を見に行くと、店頭文庫台に光る二冊の集英社コバルト文庫「海外ミステリー傑作選」「メランコリックな犯罪」共に武田武彦編が並んでいたので、計100円で購入する。今日は火曜日で、たいがいのお店が休みだからこんなもんかなと思い『庚申通り』まで出ると「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)が営業している…そうか、定休は水曜日だったな。すかさず店頭店内に目を光らし、キリンレモン文庫「ミッキーマウスのグリーンライフブック」映画「ディア・ハンター」パンフ、新潮社「アメリカ青春小説特集」学研M文庫伝奇ノ匣4「村山槐多耽美怪奇全集」を計1800円で購入する。おぉ、なんだか意外に良い釣果であった。と喜び家に戻って再び値付け作業に戻るが、まだまだ全然終わりそうな気配が、生まれないのである……。

というわけで、土曜の西荻窪で、昼も夜もみなさまとお会い出来るのを楽しみにしております!当日は岡崎武志氏の文筆業集大成とも言える新刊、原書房「気がついたらいつも本ばかり読んでいた」も会場で販売。そして発売からすでに二ヶ月弱になろうとする拙著「古本屋ツアー・イン・京阪神」も、恥ずかしながら並ぶ予定であります!
■「オカタケ&古ツア ガレージ古本市&トークイベント」
今年も性懲りもなく開催させていただきます。年末の古本的棹尾を華麗に飾ります。ただひたすら能天気に楽しい古本市&トークイベントとなっておりますので、みなさま頭を空っぽにして、師走の一日をごゆるりとお過ごしください!
■12月10日(土)11:00〜17:00
■西荻窪 銀盛会館1階(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
そして夜はトークイベント
■「2016年古本・古本屋総決算」
■同日18:00〜20:00
■西荻窪 銀盛会館2階
■1000円 定員25名
■予約・お問い合わせは西荻ブックマーク http://nishiogi-bookmark.org/
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582
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2016年12月04日

12/4大きな二つの市で古本を追い求める

早起き出来たのをいいことに、午前九時前には家を出る。そして有楽町で電車を降りて、『国際フォーラム』横の、谷間のように日影で寒い三日月型中庭で開かれている『大江戸骨董市in国際フォーラム』に突入する。二百店近いアンティークショップ・骨董店・古道具屋・古着屋・古布屋などが縦横に通路を造って並び、すでに多くの人でにぎわっている。
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目的は古本一点張りなので、視線を地べたの物品に落としつつ、奥まった店の中も鋭く精査しながら、日影の冷気に首を竦ませ早足で市を切り裂いて行く。洋絵本や革装洋書、それに洋紙物などはあるのだが…う〜む、ようやく本に出会えたと思ったら、和本だけか…ここは美術系の本ばかり…絵葉書も多いなぁ。などとなかなか古本には出会えずに北側に伸して行くと、おっ!シート一面に古本を面陳しているお店を発見。店主の名札を盗み見ると「古書・道具 イタガキ」とある。骨董市ではマイノリティな古本だが、こんな風に並び、物質としての存在感を発揮している姿は、古本修羅の心に安らぎと興奮を充分にもたらしてくれる。しかも値段はなかなか安め。中央公論社婦人公論昭和八年新年號附録「讀んで面白い名曲物語」(挿画カット執筆陣が小村雪岱・佐野繁次郎・山六郎ととても豪華!)を400円で購入する。良し、この調子だ!と気を良くして次々にお店を渡り歩くが、今日はなんだかなかなか古本には出会えない…まぁ、こんな日もあるか。四十分ほど彷徨い、最後に北端の昭和紙物屋で、文部省「動物は人の役にたっているか」ABC商会INSTRUCTION MANUAL「DIGI-COMP1」を計千円で購入し、会場を離脱する。

近くにある、かつての『一丁倫敦』を少しだけ復元したような『三菱一号館美術館』を、色づいた銀杏並木越しにポォッと眺め、地下鉄有楽町線で次の目的地所沢へ向かう。車中で「探偵小説通」を読みながらおよそ五十分。駅東口に出てロータリー向かいの『くすのきホール』に足を向けると、擦れ違う家族連れのお父さんが「また古本市やってるんだな」とつぶやいている。今年最後の「彩の国所沢古本まつり」(2010/06/02参照。市は12/6までで、来年は三月開催とのこと)のことである。日曜日とあってか、ビル外の50円ワゴンに早速人が群がり、一階エントランスもかなり賑わっている。だがここでは何も買えないまま、展望エレベーターで八階のメイン会場へ運ばれる。
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相変わらず人間の限界を超えた、広過ぎる会場だ…だが、決して心を折らずに、古本を見るのは楽しいのだが、連なるワゴンの多さにすでにうんざりしながら、矛盾を抱えて義務を果たすかの如く丁寧に本の背に視線を走らせて行く……………一時間半で、すべてに目を通し(あくまでもつもり)いつものようにすっかり古本に精気を奪われて、恒文社「悪魔のようなすてきな奴/松浦健郎」河出書房新社「妖怪仙術物語/駒田信二編」(函ナシ)潮文閣「ハルピン夜話/奥野他見男」(函ナシ)を計1620円で購入する。…分かってはいたが、大きな市を二ついっぺんに見ると、当然の如く疲れてしまった。たくさん歩く+集中する時間が長い+様々な古い物品にエネルギーを吸い取られる(想像)ということであろうか…ふぅ。

そんなでっぷりした疲労を抱えつつ嬉しかった本日の収穫は、珍品とも言える「DIGI-COMP1」の取扱説明書!サブタイトルに『first real operating digital computer in plastic』と書かれた、1960年代にアメリカで販売された、プラスチック製機械式手動コンピューターの邦訳マニュアルである。冒頭の『はしがき』には、「あなたはいまコンピュータを持っています!」「このデジ・コン1型は巨大な「電子頭脳」のようには大きくないことははっきりしています。でも電子計算機と理論的には同じなのです。あなたはこのデジ・コン1型で大型のデイジタル・コンピュータにやらせるようにしてゲーム遊び、謎解きや数学の計算を行うことができます」「デジ・コン1型は機械式ですから、電子式のコンピュータにくらべて非常にスピードが遅く、形も大きくなる」…つまりは「バベッジエンジン」のプラスチック製超小型版ということではないか。うひょう!格好いい!説明書後半には、プログラムの実践編として『自動エレベータ』『金庫の組合わせ数字式錠』『宇宙船の発射前点検』『宇宙船カプセルの再突入』などがあり(すべて絶対に恐ろしいほど単純なのだが、その単純さを補うために想像力を孤独にフル回転させると、未知のデジタル世界への扉を開けてくれたのが、初期コンピュータゲームの素晴らしさ&楽しさでもあるのだ)、初期パソコンゲームのさらに前のポケコンゲームのさらに前時代の息吹が伝わり、2進法機械の話などチンプンカンプンなのだが、結構楽しく読み込んでしまう。後で調べてみるとこのコンピュータ、紙パーツで復刻されていることが判明する。ちょっと欲しいが、果たして使いこなせるだろうか…。
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2016年12月03日

12/3西より早めのクリスマスプレゼント!

昨夜は神保町「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)二階の「ブックカフェ二十世紀」で古本屋さんについてたっぷりとトーク。新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」と古本屋バイト話から、お店の魅力や楽しさについて語り、おかしなところや社会から逸脱しているところについてもさらに語り、果ては万引についてまで…ピンポイント&マニアック過ぎる話を辛抱強くご静聴のみなさま、本当にありがとうございました。聞き手を越えてもはや完全に語り手となっていた「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と、稀少な場を提供していただいた「@ワンダー」鈴木氏にも多謝。そしてこの日一番驚いたのは、三河島の映画書専門店「稲垣書店」(2009/10/26参照)の中山信行氏が奥さんとともに、フラッと会場に現れたことである。始終苦虫を噛み潰したような表情で後席にいるのが目に入り、内心ブルブルと震えてしまう。だがトーク終了後に、打ち上げにも参加していただき、私の活動や文章について、こき下ろしながらも褒められてしまったので、目を白黒させながら大いに恐縮する。また、お店にうかがわせていただきます!

明けて本日、ブラブラ古本屋をたどって古本を買いながら西荻窪に至り「フォニャルフ」に補充。目立った収穫は、「ささま書店」(2008/08/23参照)のソノラマ文庫「盗まれた表札/藤村正太」315円と、「竹陽書房」(2008/08/23参照)の広済堂ブルーブックス「獄門島/横溝正史」100円であろうか。色々打ち合わせてから家に戻ると、おぉぉぉっ!ポストに待望の「古書 善行堂」(2012/01/16参照)からの郵便物が投げ込まれているではないか。ワクワクソワソワしながら家に駆け込み、ペリペリと封を切る。中から出て来たのは、表紙の色も鮮やかな四六書院 通叢書「探偵小説通/松本泰」(蔵印と、後半に探偵小説既読リストの古い書き込みあり)である。
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…話は二十日前の京都でのイベント「古本屋ツアー・イン・善行堂」(2016/11/13参照)に遡る。その日、開店と同時にお店に入るや否や、挨拶もそこそこに店内の棚にいやらしいほど素早く目を走らせる…目的は、その十日余り前に善行氏がブログ『古本ソムリエの日記』に書いていた「探偵小説通」であった。買取で手に入れ、パラパラと読んでみたら面白い、というような記述が目を惹いたのだ。長らくこの本を探し求めていたので、それをきっちり脳髄に刻み込んで、必死にその書影を追い求めたのである。だが、何処の棚にも見当たらない。一応もう一度チェックしてみるが、残念なことに見つからない。やがて混み合う店内で、善行氏の対面に座ってサインや歓談をしながら、思い切って聞いてみる。「善行さん、前ブログに書いていた「探偵小説通」はありますか?、もし売れてなかったら、ほ、欲しいんです!買います!」と言うと、「あぁ、まだ棚に出してないよ。何処かこの机の周りの山の中にあるはずや。見つけたら、今日のバイト代として、あげるよ」「ほほほほ、本当ですか!」と驚き喜び、イベントに集中しながらも、合間の時間に動き回って必死に探索する。…だが、見つからない。次第に探索範囲を広げ、「そこにはないで」と言われながらも諦め切れずに、時間切れまで探し続けるが、ついに見つけることは出来なかった。氏も「おかしいなぁ。確かにここら辺にあるはずやけど…何処行ったんやろ。まぁ見つけたら送らせてもらうわ」…というようなことがあったのである。だがあの様子からして、今年中に見つけるのは難しいかな、と諦めモードに入っていたところ、善行氏から「見つかった!箱に入れてしまってました。それも奥の一番下でしたので、よく見つけたと褒めてください」というメールが三日前に届き、さらに首を長くして待っていた本日、我が手の中にかなり早いクリスマスプレゼントとして「探偵小説通」が無事に収まることとなったわけである。翻訳家&探偵小説家の松本泰が、探偵小説の歴史・考察・探偵列伝・探偵小説と動物・日本探偵文壇などについて書き連ねている。最初はモノクログラビアページで、一番最初に現れるのが、肩を並べたポーと涙香の肖像!その次が俳優が演じる完璧に近いホームズ像!し、しびれる!
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いや、もう一生「善行堂」に足を向けて寝られません。みなさま年末年始に京都に帰省&旅行に行く際は、ぜひ「古本屋ツアー・イン・京阪神」を携えて「善行堂」へ!そして西のみなさま、「善行堂」では「京阪神」とともに「神保町」と「首都圏沿線」も販売されていますので、引き続き愚かな古本屋本たちを、よろしくお願いいたします。

それにしても「京阪神」を出したからこそ、追い求めていた「探偵小説通」を手に入れられたという奇縁。そんな大切な自著に感謝しながら、実はその本の一部がすでに過去のものになりつつあることも実感するここ最近である。十二月末の「駒鳥文庫」(京阪神p86)閉店、「古書さろん 天地」(p120)閉店、進む神戸『モトコー商店街』(p184〜185)再開発、来年の「阪急古書のまち」移転、「本は人生のおやつです!!」(p72)に故「青空書房」(p108)の棚や立看板が引き継がれていること、古本好きの口に悔しいほど必ず上がった六月オープンなのに見逃した大阪の「古書からたち」…あぁ、悔しい。だが、閉まってしまうお店については、本の中にある日の姿を封じ込められたことに、満足している自分がいたりもするのだ。そう言えば、制作作業中にも、閉店してしまったお店が二軒あった。すでに原稿は書いていたのでお蔵入りになってしまったのだが、もったいないので、ちょっとお蔵出しいたします。

元町「ポレポレ書舗」
南京町の南側の裏通り、古いビルの四階にある。海岸通り近くのこの一帯は、ファッション関連のお店が多く、ビル内もそんなお店ばかりである。大きな音と揺れのエレベーターで上がり、青いドアのお店に入ると、そこもまたお洒落なお店であった。ところが大きな壁棚に並ぶのは、少年少女コミックばかりで、特に「ボンボン」や「コロコロ」系の少年コミックに力が入っている。一般文庫も少々あり。店舗の半分ではアクセサリーや写真作品なども販売している。

なんば「天牛堺書店 ekimoなんば店」
大阪府内に十五店舗を持つチェーンの一店。地下商店街なんばウォークとクロスする、御堂筋線なんば駅構内ekimo northにある。見た目は完全に新刊書店だが、右奥に約七本の古本棚がある。訪れた時は『古本均一1700円』という、奇妙で見たことも聞いたこともないセールが行われており、人文&学術本・大判本を硬めに並べていた。
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2016年11月30日

11/30閉店に遅刻して、腹いせに古本屋さんをハシゴする。

下北沢の「July Books」(2011/11/28)が十一月一杯で実店舗を閉店するので、その様子を最後に駆け付けるようにして見に行く。…だが、緩やかでお洒落な商店街の坂を上がってたどり着いたお店は、すでに閉店してしまった後の祭であった…大大大遅刻か。それでもお店のエントランスにまだ残っていた、丸い手作り感溢れる『本』の看板を見られたことに、ひとまず心和ませる。
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最後に本を買えなかったことを、多少負い目に感じながらも、その後は近辺の古本屋さんを、巡り&歩き倒して行こうと、自らの両足にハッパを掛けて、闇雲に歩を進める。「古書ビビビ」(2009/10/15参照)では朝日ソノラマ「責任鑑定-霊の実体に迫る!心霊写真/ルネ・ヴァンダール編」を200円で購入し、「ほん吉」(2008/06/01参照)では新潮文庫「フレップ・トリップ/北原白秋」を400円で購入する。下北沢を離脱して三宿方面にテクリテクリ向かい、「山陽書店」(2014/02/18参照)では平凡新書「書店の近代/小田光雄」ともだち文庫「アルハンブラ宮殿の秘密/アーヴィング」東光出版社「花物語/西條八十」を計2000円で購入。そして最後は夕闇の中の渋谷に出て、人波に揉まれながら宮益坂を懸命に上がって、「中村書店」(2008/07/24参照)で潮出版社「さみしいネコ/早川良一郎」(献呈署名入り)を100円で購入し、その先の「巽堂書店」(2008/07/04参照)では筑摩書房「いまやアクションあるのみ!/赤瀬川原平」(献呈署名入り。どひゃっほう!)角川ホラー文庫「うろこの家/皆川博子」を計300円で購入。あ〜、買った買った。
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写真は本日の嬉しい収穫。プチ古本屋ツアーの最後に畳み掛けるように登場した、署名本を手に入れたことで、ひとつのアイデアが頭の中にピコンと閃く。来る12/10の古本市には、棚一列くらいの、自然に手元に集まった署名本を並べ、販売したいと思います!よ〜し、家中から、署名本を掻き集めてやる!

夜は「盛林堂書房」小野氏と、金曜日のトークについて、酔っぱらいながらじっくりと打ち合わせる。どうやらお互いの古本屋観を派手にぶつけ合うことになりそうな予感…12/2(金)は、どうか神保町の古本屋さんにディープな古本屋さん話を聞きに来て下さい!お席はまだ余っているらしいので、当日飛び入り参加も可能だと思われます。
■12月2日(金)
■ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
■19:00〜20:30
■会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,500円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀(jimbo20seiki@gmail.com)までメールにてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c
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2016年11月26日

11/26「小宮山書店」の包装紙

急な仕事で身動きが取れなくなり、予定をちゃぶ台返しにして家に閉じこもる。だが近所で古本を買うのは良いだろうと、己自身に甘く許可を下し、タッタカ急ぎ足で高円寺へ向かう。午前十時半の「西部古書会館」(2008/07/27参照)に息を切らして到着し、「中央線古書展」(2014/01/25参照)に突入する。ガレージ部分がいつもと異なり、右側にスチール棚で作られた二本の通路があるのだが、結構狭いので大混雑中!…これはやはり長机平台型式の方が見易いなぁ…。カバンを預けて中へ進むと、いつもより混み合う雰囲気に圧倒される。そして棚には、ガレージ部分から引き続き、外国文学&語学関連が多い模様。心が家に戻りたくないのか、今日は何だか細かく小冊子や紙物にまでチェックを入れてしまう。途中、左奥の「かぴぱら堂」棚に熱中していると、いつの間にか隣りにいたのは北原尚彦氏。挨拶を交わし、氏が私の手元を見た途端「あ、その本、さっき見た時に、小山さん向きだなぁって思ってたんですよ」とにっかり笑う。春陽堂少年文庫「ロビンソン漂流記 後編/デフォー」…いや、後編だけなんですけど、いつの日かまたこんな風に安値で、前編を手に入れられたらと思って…。結局一時間近く粘ってしまい、他には小学館「女学生の友」昭和38年1月号付録「長編小説 白いあざみ/三木澄子」東成社「へのへのもへじ/林二九太」新潮社「ジャングル放浪記《アフリカの幽鬼と幻想》/A・デュテュオーラ」日本評論社「満洲國読本」三一書房「竜二・ちょうちん/金子正次」日本精神醫學會「惑溺と禁慾/寺田精一」(函ナシ。大正十年刊。人間のあらゆる行動や反応を、精神科学で独善的に解き明かして行く妙な本。その対象は、宗教・恋愛・性・カニバリズム・空腹・排泄・犯罪・祭・銭湯・刺青・幽霊・綽名などなど多岐に渡る)「小宮山書店」包装紙を計1650円で購入する。みな300円以下のものばかりであった。

本日のささやかな収穫は、中央通路の地べたに置かれた「秋桜書店」の紙物箱から掘り出した、古い「小宮山書店」(2014/05/31参照)の包装紙(100円でした)。電話番号の市内局番が二桁なので、恐らく1960年以前のものであろう。現在のアート&写真に力を入れたお店とは異なる、銅鏡をモチーフにした古代史的デザインが、アカデミックな趣きを見せている。だがこういう包装紙は、継承して現在でも使っているかも…と思い、家に戻って自家製古本屋関連ファイルを調べてみると、あっ!100円文庫を数冊買った時に巻いてもらったのり巻き包装紙が、同じモチーフではないか。だがこちらは白色で、鏡と店名文字をピッタリ重ね合わそうとしても、結構大きなズレが生まれてしまう。市内局番が三桁そして四桁と変わった時に、刷り直している可能性はあるので、その時に多少の変更を施したのかもしれない。
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写真は白と茶の包装紙を重ね合わせたところ。驚いたのは、紙の横幅がピッタリ同じなのである。両方とも片側がザクザクと粗く切られているので、長き時を経てお店で受け継がれている裁断サイズがあるのではと、勝手に妄想してしまう。
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2016年11月24日

11/24店主からレア本を示唆されどひゃっほうと成す。

雪の中を、傘を開いてテクテク出かけ、開いていれば新規開店のお店に行こうかと企んでいると、途上で今日は開店しないことを知り、がっかりする。仕方なく手をかじかませながら、『いつもお世話になってます』の「ささま書店」(2008/08/23参照)に到達…もはや五日と空けずに訪れている気が…。この寒さと雪のためか、珍しい誰もいない店頭の景色である。そこではまるで復刻版のように新品同様で、手の切れそうなほど紙がピンとした昭和二十年代の時刻表を見つけ、表紙絵の愛らしさやグラビアページの『つばめ号』のスチームさに惹かれ、門外漢なのだが抱え込んでしまう。さらに店内に引き込まれた文庫&新書店頭棚から一冊選び取り、静かなレジで精算する。日本交通公社「主要驛 時刻表 第23巻 第六號」「日本國有鉄道編集 時刻表 第二十六巻 第十號 大改正號」徳間書店「アニーメジュ」昭和56年11月号ふろく「スタジオぬえのデザイン・ノート」を計315円で購入する。お店を出た後は、寒さに敗れて電車に一駅乗って、西荻窪で降りて「盛林堂書房」(2012/01/06参照)にたどり着き「フォニャルフ」に補充する。ちょうど「黒死館殺人事件」徹底研究家の素天堂氏が納本に見えており、早速新刊の黒死館附属幻稚園「生者の埋葬/フランツ・ハルトマン」を購入する。生き埋め…というよりは、埋葬前後(もしくは火葬寸前)に生命活動を終えているはずの死者が、現世に生者として蘇生する事象を多数蒐集し、紹介研究(科学的&オカルト的に)している楽しい本である。…ここで話は飛ぶが、明治期の探偵小説を読んでいると、良く人が簡単に死ぬ。そして驚くほどすぐに生き返るので、大いに面食らうことが多い(本当に嫌になるほど多い)。例えば、頭を鉄棒で絶息するほど殴られ昏倒し、以降『息も絶えしに』『死骸』と表現されるのだが、活を入れると、さもそれが当然と言わんばかりに息を吹き返すのである。恐らく死んだのではなく、『気絶』もしくは『仮死』状態ということなのだろうか、それにしても…。

その後は高架下を北に抜けて「音羽館」(2009/06/04参照)へ。ちくま文庫「大東亞科學綺譚/荒俣宏」創元社科學の泉10「磁石/三橋鐵太郎」を計200円で購入し、店主・広瀬氏と四方山古本屋話。その最中に、氏が帳場前に立つ私の背後に注意を促す。振り返ってみるが、知り合いがいるわけでもない。「えっ?」と訝し気に問い返すと、もう一度「ほら後に本が…」と言われる。振り返ると、本の山の上に一冊の本が立て掛けられていた。ユニコンブックス「推理 名探偵40人に挑戦/加納一朗」(カバーに補修、本体に記名あり)…私向きの本と喝破し、思いっきり示唆してくれていたのだ。インチキ臭い名探偵風外国人の写真が、パチ物感を呼び起こす一冊である。加納一朗は多くのミステリ系児童入門書を手掛けてはいるが、これは見たのは初めて。千円と比較的安値だったので、迷わず購入を決める。お土産に高知の蜜柑をいただき、家へとスゴスゴ舞い戻る。早速蜜柑を食べながら「名探偵40人に挑戦」について調べてみると、これが予想以上のレア本らしく、思わずどひゃっほうとつぶやいてしまう。音羽館に感謝を捧げながらページを繰り、五十前のオッサンが児童書の名探偵推理に挑戦開始!
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と言うわけで本日の収穫二冊です。
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2016年11月21日

11/21思い直して古本を買いに行く。

今日はゆっくり目に過ごそうと思っていたのだが、朝から雑事をこなしているとエンジンがかかってしまい、郵便物を出しに行くついでに、正午前の荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)に足を延ばしてしまう。雨は降っていないが雨仕様の店頭で、早速古本修羅の群れに混じって三冊を抜き出し、そのままヌラリと店内へ。ちょと店頭文庫棚に妙な文庫が紛れていたので、店内の文庫棚にも変化がありそうと予測して、入口近くの壁棚を、作家五十音順の終りから注視して行く。あまり変化がないようだが…ちょっと気負い過ぎたか…むっ?なんだこの古い文庫は?と、乱歩のゾーンで一冊の古く煤けた文庫本が目に引っ掛かり、ソッと抜き出してみる。河出書房市民文庫の「心理試験」である。さして珍しいものではないが、何かがおかしい…こんな装幀だったか…?市民文庫は確か、表紙が黄色と白のツートンカラーが普通だが、これは利休鼠色の地に菊の花がパターンのように連続プリントされ、小豆色の文字でタイトルや作家名が刷られている。そして裏表紙を見ると、そこには『学生サーヴィス版 定価¥40』とあるではないか。
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あ、これ、袖は糊付されているが、カバー装なんだ。カバーをちょっと捲ると、下にはお馴染みの黄色と白のツートン表紙が隠れていた。どうやら通常版に、特別の安売用カバーを掛けて、販売していたものらしい。最終ページには『宣傳特売売上カード』というものが貼り付いており、『定価と特売価を較べて下さい。驚くほど安くなっております』『特賣価四拾円』と書かれている。奥付の定価は『定價九十圓』となっている…なんと半額以下の安さ!それにしても本当にこれは、学生だけが買える文庫だったのだろうか…う〜む、面白いものを見つけたぞ。桃蹊書房「をさない記憶/徳永直」筑摩叢書「聴耳草紙/佐々木喜善」早川書房「来訪者/ロアルド・ダール」と共に計840円で購入する。

家に戻って色々済ませた後に、二週間前から気になっていた本を、やはり買いに行くことにする。南北線で本郷台地下を疾走して、本駒込駅下車。地上に出ると、ちょうど雨が降り始めたところだが、構わず坂を駆け下りて、白山下の「誠文堂書店」(2011/08/19参照)に飛び込む。そして脇目も振らずに奥の壁棚に向かい、目的の本を探し求める。………あった!日本出版協同株式会社の異色探偵小説選集10「青列車殺人事件/アガサ・クリスチイ 松本恵子訳」(セロハン・帯ナシ)である。値段は1100円。あの時は迷ったが、今回は躊躇なくレジに差し出し購入する。何故こんなに必死になってこの本を買いに来たかと言うと、実は訳者・松本恵子の献呈署名入りなのである(良く見ると「あとがき」の誤植に、署名と同じブルーブラックのインクで、直しが入れてある。もしかしたら筆蹟が似ているので、訳者本人が入れたものかもしれない…)
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何故前回これを買わなかったのか、自分でもよく分からないのだが(情けないことに手元不如意だったかも…)、とにかく本がまだ残っており、結局は手に入ったので、めでたしめでたしとする。松本恵子は探偵小説家&翻訳家・松本泰の妻であり、また自身も同一の肩書きを持っている。心に棘のように刺さっていた獲物を首尾良く手に入れて、とんぼがえりで帰宅する。夜は大市のために上京して来た「舒文堂河島書店」さん(2008/12/22参照)を囲む会に参加するため、夜の雨の高円寺へ歩いて向かう。
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2016年11月20日

11/20「第35回 鬼子母神通り みちくさ市」に便乗した態になる。

走り続けて色んなカタチで古本屋さんに関わって来た、十一月半ばの一週間の最後の締めは、ポカポカ陽気の雑司が谷にて「みちくさ市」に参戦。朝から重い本を引き摺り、すでに体力が限界を迎える中、会場の活気漲る『鬼子母神商店街』に到着。出店場所に案内されると、そこは都電の踏切北側の、通りより少し離れた場所…こ、これはお客さんが来るのだろうか?振り向いてくれるのだろうか?あまりにも離れ小島感があるので、まるで「みちくさ市」に便乗して、勝手に古本を並べて売っているオッサンに見えなくもない恐れが…。そして確かに目の前に人通りはあるのだが、五メートルの距離が無関心さとめんどくささを引き起こし、もしや売り上げナシなんてことに…。こんなに不安と怯えに包まれながらスタートした「みちくさ市」は初めて。だが眦を“キッ”と音がするほど決し、素早くシャッターの閉まった店舗前の二段のステップに、古本をディスプレイして行く。
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(右の古本市幟は、売り上げを心配した退屈男君が途中立ててくれたもの)
最初は順調に顔見知りの方や古本仲間が訪れ、ホットな古本屋バイト話に花を咲かせたりしていたが、やはり一般のお客さんはこちらまで寄って来ない。昼食時の凪ぎタイムを経た後、このままではジリ貧だ!と覚悟を決めて、ついに通りを歩く人々の列に向かって、声を出すことにする。「いらっしゃいませ〜。古本売ってまぁ〜す」。都電が五分に一本訪れ、踏切音がその声を無惨にもかき消す。だが、遮断器が上がり、新たな人の流れが生まれる瞬間に、めげずに声を投げ掛け続ける。すると、少しは効果があるのか、時々前を見て歩いていた人が、ふいと顔をこちらに向けて近付いて来てくれることがあるのだ。もちろん来てくれた人が必ず本を買ってくれるわけではないのだが、それでもなにもしないで手をこまねいているよりは百倍マシだ!と声を出し続ける。途中、古本神・塩山芳明氏の実家にあるエロ本蔵(仕事で作ったり献本されたエロ本をたっぷりと溜め込んでいるのだ)の話に笑い、ずっと岡崎武志氏の話をする方と丁々発止のやり取りで岡崎氏に関する蘊蓄をぶつけ合い、駄々猫舎さんからはつい最近神戸に出来た古本と駄菓子のお店についてタレ込まれ、何故か「推理・名探偵クイズ」を「こっちの方が難しそうだ」と真剣に悩みながら買ってくれたうら若き女性に胸を打たれ、その後に一足違いでそのクイズ本を買いそびれたテストが間近に迫る古本中学生ケンタロウ君を慰めたりして、五時間の時は過ぎて行った。結果、声を涸らした甲斐があったのか、四十八冊を売り、「古本屋ツアー・イン・京阪神」も無事に三冊を旅立たせるのに成功する。本を買って下さったみなさま、声をかけて下さったみなさま、そして“わめぞ”のみなさま、楽しい時間をありがとうございました。達成感はあるのだが、さすがにかなり消耗してしまったので、打ち上げはパスして、売れ残った本を引き摺って、夕闇迫る目白台地から撤収する。ゼエゼエ帰り着いた、すっかり暗くなった地元阿佐ヶ谷では、ついつい「銀星舎」(2008/10/19参照)に立ち寄り、河出文庫「黄夫人の手/大泉黒石」(この文庫のプロフィールで、大泉滉が黒石の息子であることを初めて知る。顔が、顔がそっくりだ!)筑摩書房「グリコのおまけ」を計400円で購入し、ここでも古本屋バイト話に花が咲く。それにしても古本屋さんたちは、この古本屋バイト話をことのほか喜んでくれる。だからそれだけでも、やっぱりやって良かったと、切に感じ入る。よし、受け入れてくれる所があれば、また何処かのお店で働いてみようか。これはもしかしたら、新しい別角度の古本屋ツアーとなって行くのかもしれないという予感が、少しだけピリッと背中を走る。
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2016年11月17日

11/17準備でせっかくの休日を台無しにする

今日はバイトはお休み。たった三日勤めただけで、疲労を極度に溜めまくった身体には、やすらぎの二十四時間…だが、そうは言ってられないのである。土曜のバイト勤め終了後の日曜は、「みちくさ市」に参戦することが決まっているのだ。古本を、古本を準備しなければ!と朝から結局バイトと酷似した作業に奔走する…俺はいったい何をやっているんだ…古本と戯れるにも、ほどがあり過ぎ、秋の日々…。新ネタを家中の山からガサゴソ掻き集め、全体の構成を微調整した後、本のクリーニングに入る。
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そして昼食後、BSプレミアム放送の映画『悪魔の手鞠唄』に集中力を奪われながら値付に入る。だが途中で息抜きに外出。テクテク歩いて「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に入り、徳間書店「みなとまち・異人館/原田伴彦監修」ハタリ「座頭市映画手帖」文藝春秋「斉藤栄のミステリー作法/斉藤栄」を計721円で購入し、そのままカウンターでECD闘病応援のためにカンパし、『ガーンECD』ステッカーを一枚いただく。お店を出たらいつもの通り道をたどり、いつもの荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)。春陽文庫「東京暗黒街/島田一男」(昭和三十七年四刷)新潮文庫「終編金色夜叉/小栗風葉」三省堂「新版SFの世界/福島正美」桃源社「地獄横丁/渡辺啓助」を計840円で購入する。続いていつもとルートを変えて吉祥寺に電車で向かい、久々の「よみた屋」(2014/08/29参照)へ。すると店頭棚から、岩谷書店が出していたB6サイズの『天狗文庫』という本分三段組みの仙花紙本を見つけ出し、こんなの見たことなかったぞ!と喜び頭上に掲げる。岩谷書店天狗文庫「胡堂捕物傑作選/野村胡堂」講談社「単線の駅/尾崎一雄」を計400円で購入する。その後は西荻窪までトボトボ歩き、「盛林堂書店」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」棚にちょちょいと補充しつつ、店主・小野氏と意外に近くに迫っている、十二月の二つのトークイベントについて軽く打ち合わせる。そして古本屋バイトを大いに冷やかされてしまう。

家に帰って再び準備作業に取りかかり、夕食前には無事完了。よし、これで日曜の準備は万端だ。ふぅ、と背筋を伸ばして、今日の嬉しい収穫二冊を愛玩する。
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天狗文庫の最終ページと表3は岩谷書店の広告で、かたや『岩谷選書』十九冊の広告、かたや「獄門島」「眼中の惡魔」「木乃伊の戀」となっている。選書の広告では「赤痣の女/大坪砂男」「眞福寺事件/久生十蘭」「鬼火/横溝正史」「緑衣の女/高木彬光」「J・ハリス/幻妖夢」「文學少女/木々高太郎」「人形佐七捕物傑作集」などもラインナップされているが、タイトルが変更になったり出版されなかったり…。
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2016年11月10日

11/10謎の魚雷芸に頭を悩ませる

遅めの朝食を摂り、午前九時半に外出。腹ごなしにと高円寺までスタスタ歩き、以前から「アバッキオ」(2008/10/14参照)の看板が外されているのを気にしながら(店内には物が残っている気配がある)、「西部古書会館」(2008/07/27参照)に到着し「BOOK&A」開催五分前のオープンガレージに突入する。昨日に続き、来るべき古本市に備えての、個人的古本補給活動の一環である。すでに二十人ほどの古本修羅が、サッシ扉が開けられるのを、今か今かと待ちかねている。その列にはつかずに、長テーブルと平台と壁棚の、それほどカオス感も量感もないスッキリした古本の列に集中して行く。均一と言うわけではなく、大体500円以下の本たちである。扉が開き、修羅の群れが中に流れ込み、手早く本を見終わった私も、一冊だけ掴んでそれに続く。三本の幅広な通路をほどほどの修羅ラッシュに揉まれながらしげしげ眺めて行くと、歴史・郷土・民俗学関連が多い模様。丁寧に棚に目を凝らして行くが、なかなか心に滑り込んで来る古本と出会えないので、焦燥感と失望感を、徐々に胸の内に溜め込んで行く。だが最後に右端通路で「天心堂書店」の棚から、建築史家・長谷川尭が大阪で出していた雑誌群を見つけ、興奮。一緒に並んでいた、十九世紀末〜二十世紀初頭のロンドン街頭の写真を集めた古い洋書にも痺れまくるが、三千円の値が付いていたので今回は断念する。そして最後の帳場脇の棚下に集まる、A5サイズの雑誌&ムック列に惹き付けられて、しゃがみ込んで気になる本を確認して行く。そこに一冊、版型は同じだが、不思議なパンフレットが紛れ込んでいた。1938年のベルリンで発行された、劇場型老舗キャバレーの50周年記念冊子である。表紙に『日劇ステージショウ』のハンコが捺されているので、文芸部などが資料として架蔵していたものであろうか。中を見ると写真が満載で、その上150円の激安値!喜んで家に持ち帰るべき一冊とし、帳場で精算に入る。ベストブック社「血染めの怨霊/中島河太郎編」コスモ・テン・パブリケーション「妖精物語/A・コナン・ドイル」博文館少年少女譚海昭和四年六月號別冊「孝子美談哀話集」日本板硝子株式会社「SPACE MODULATOR48 特集:北の港町から」Winter Garten「FESTSCHRIFT BERLIN1938 NOVEMBER-MAGAZIN Winter Garten 1888-1938」を計1650円で購入する。
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本日の収穫「Winter Gareden」50周年記念パンフ。表紙は美しいカラーで、踊り子・空中ブランコ・道化師・猛獣使い・楽師・曲芸師などが描かれている。本文はアート紙でモノクロ印刷(中ほどに四色の歴代ポスター観音開きグラビアあり)の全114ページ。写真やイラストが豊富で、ドイツ語が読めなくても十分昭和十三年のドイツの一端に触れることが出来る。驚いたのが、祝辞を一番最初に述べているのが、プロパガンダの天才ゲッペルス。他にもナチ親衛隊のヒンケル(SSの稲妻型活字があるのにもビックリ)や、後半にはキャバレーを訪れたヒトラーの写真も掲載されている。そんな風に、悲惨な戦争に向かいつつある時代のきな臭さも、とっぷりと封じ込まれているのだが、やはり曲芸師や踊り子や動物使いたちの写真は、能天気で奇怪で楽しい。特に、砲弾を使う曲芸師たちのコーナーがあるのだが、大きな魚雷を携えている男の一枚が、とても気になってしまう。いったいこの大きな弾薬を使い、どんな芸をステージで披露したのだろうか?
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一旦家に戻り、夕方には「古書ますく堂」(2014/07/20参照)の広島カープ背番号籤割引セールに行こうと思っていたのだが、仕事をこじらせて出かけられず、仕方なく「Winter Garden」のモノクロ写真の世界に耽溺する。頭の中では、この本を市で見た時から、NHK『映像の20世紀』のオープニングテーマが、エンドレスで流れてしまっている…。
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2016年11月09日

11/9古本を一層求め、風太郎貸本漫画をデザインで言祝ぐ。

朝から大量の古本を大阪に向けて送り出す。「梅田蔦屋書店」で十二月に開催予定のフェアに照準を合わせた行動である。他にも今月は20日の「みちくさ市」にも参戦するし、来月は岡崎武志氏との合同古本市もある。少し、手元に古本を集めておかなければ、危うい枯渇状態に陥りそうな予感…ふぅ、いったい私は何をしているのか…。だが、古本不足の焦燥感には抗えず、午後に外出して東村山の「なごやか文庫」(2012/01/10参照)に飛び込む。受付で計算機を叩く音だけが響く店内をじっくり観察し、福音館書店かがくのとも85号「おおきいちょうちん ちいさいちょうちん」かがくのとも30号「ごむのじっけん」共に加古里子、学研「三人のおまわりさん/ウィリアム・ペン=デュボア作」現代企画室「白球は見た!/近藤唯之」講談社現代文庫「ファンタジーの世界/佐藤さとる」徳間文庫「人間臨終絵巻T/山田風太郎」旺文社文庫「にっぽん快人物烈伝/紀田順一郎」ちくま文庫「生きるかなしみ/山田太一編」を計420円で購入する。

少し満足して一旦家に戻って荷を下ろし、寒風が一向に治まらない夕方に再び外出。まぶしい夕陽に向かって歩いて荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)にたどり着き、予想以上の低温に震えながら店頭棚を捜索。角川文庫「乱菊物語/谷崎潤一郎」(通常帯の上に映画化帯が巻き付けてある)芸術生活社「幼児に聞かす日本怪談集/西本鶏介」(基本コンセプトが惨い気が…)潮出版社「男と土曜日と水平線 開高健全対話集成2」晶文社「ある手品師の話 小熊秀雄童話集」青土社「失楽園測量地図 種村季弘のラビリントス」淡交社「伊藤大輔シナリオ集W 別巻戯曲集」を計840円で購入する。そんなお決まりのルートをたどりつつ、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の「フォニャルフ」棚に別口で用意して来た古本を補充する。するとそこに、A5判の新刊が搬入され始めた。アップルBOXクリエートが出す、山田風太郎原作の貸本漫画「甲賀忍法帖」の復刻本である。実は今回盛林堂ミステリアス文庫チームが制作をお手伝いしており、その流れから表紙のデザインを担当させていただいたのである。この俺が、山田風太郎のデザインが出来るなんて!と、一も二もなく承諾した次第。イメージはもちろん、甲賀対伊賀!…いや、思いっきりといえば思いきりですが、良い感じに仕上がりました。それにしても、「バジリスク」の遥か先駆者として、全三巻(復刻本では一冊に合本)のこんな貸本漫画が存在していたとは…。本を手にしてニヤニヤしてしまい、あまりの嬉しさに「フォニャルフ」棚にあった原作本と、ナイアガラ棚「我刊我書房」に挿さっていた貸本漫画「甲賀忍法帖1」(カバーはカラーコピー)とともに、奇蹟のスリーショット。
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よし、今夜は一気読みするぞ!と意気込み盛林堂を後にして、そのままフラフラと夜の「音羽館」(2009/06/04参照)へ。店頭で裸本で後見返しが切り取られている「珍客名簿/上林暁」を500円で購入し、寒風に首を竦めてトボトボ家へ引き返す。
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2016年11月06日

11/6未知の作家に手を出してしまう

午後よりトマソン社「BOOK5」最終号の取材にて、本郷の白山坂上〜坂下をウロウロ。東京の急峻な高低差をフットワーク軽く味わいつつ、坂下の古本屋さんに立ち寄る。『京華通り』南側入口近くにある「誠文堂書店」(2011/08/19参照)は、新刊+古本のお店なのだが、どうも古本の割合が、以前よりも増している気がする。少しずつ通路が野放図になりかけてきているのも、古本屋さんに傾倒している兆候ではないだろうか。裸本の光文社「赤い殺意/藤原審爾」を320円で購入しようと入口側レジに近付くと、奥さまは電話の真っ最中。「それはね、amazonに出してる本なんですよ。だから、amazonで買えますよ。えっ?amazonの使い方が分からない?だから直接振り込みたい?分かりました。では本があるかどうかまず確認してから…」とネット非対応のお客さんとのやりとりに苦心している。長〜いやり取りを終えて電話を切ると、こちらに笑顔を見せ「ごめんなさいね」と精算していただく。お店を出たら通りを北に向かい、もうひとつの「誠文堂書店」(2012/08/13参照)へ、こちらは四年ほど前にお店を建て直した、純然たる古本屋さん。だが白く新しい通路は、月日が流れるとともに本の山並みが所々に隆起しており、新店舗を昔日の壮絶な旧店舗の姿に(2010/07/23参照)、ジワジワと近付けてしまっていた。う〜む、これは、もはや逃れられぬ、このお店の宿命なのか。そんな風に感じ入り、それでも極細通路はちゃんと行き来出来るよう整備されているので、すべての棚にがんばって目を通す。面白い本や珍しい本も多いが、値段がスキ無しなのでなかなか手が出ない…結局250円の角川文庫「青蛙堂鬼談/岡本綺堂」を購入し、辛くも古本迷路から脱出する。

地下鉄を乗り継いで中野まで戻って来ると、気まぐれに途中下車してしまい、「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)に足を向けてしまう。そして探偵小説棚で見つけた、南旺社「ダイヤル110番シリーズU 血ぬられた欲情/萩原秀夫」…これ、古本神・森英俊氏の書庫をツアーした時に、貸本小説コーナーに固まってた未知の作家だ…いや、あれから、気になってたんだ。この本はどうやら犯罪実録ものらしく、そのせいか値段は二千円と安めなのである。よし、ここは思い切って買ってみよう。一緒に昭和三十八年刊の講談社「孤独のアスファルト/藤村正太」が500円の激安値だったので、迷わず購入する。中野から家までトコトコ帰って、「ダイヤル110番シリーズ」のビニール袋を開けると、巻頭には『犯罪地帯』というモノクログラビアページがあり、昭和三十年代の、主に酒場と盛り場の写真が並び、『酒を、食べものを、そして刺戟を求めて人々は街へ!バチルスのうごめいている街へ!』と扇情的な文章が踊っている。ビクビクしながらそんな暗闇の割合が多い危険な盛り場を、ほろ酔いで彷徨する愚かな己を想像してしまう。
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posted by tokusan at 20:11| Comment(4) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする