2017年04月29日

4/28「たけうま会」と「推理小説ブック」

すでに昨日のことである。昼過ぎに家を出て、荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)で岩波写真文庫「本の話」小学館「アダンの画帖 田中一村伝/南日本新聞社編」を計210円で購入し、毎度お馴染み西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。「フォニャルフ」に補充した後、帳場脇に席を作っていただき、オレンジ色の表紙が艶やかで眩しい「中央線古本屋合算地図」に、一心不乱にサインを入れ続ける。その数二百五十冊。およそ二時間かけて書き終えると、岡崎武志氏が「どぅも〜」と軽快に登場。交代して帳場脇に腰を下ろして、サインをさらりさらりと書いて行く。は、早い。相変わらず早い。「バランスがとれててええのよ。こっちはさらさら軽く書いて、古ツア君は紙に彫るみたいに書いて」とのこと。あっという間に五十冊が終わったところで「ほな、後は詩集にハンコ捺していくわ」とすっかり一仕事終えたつもり。すかさず盛林堂・小野さんが「何言ってるんですか。あと二百冊あるんですよ」と切り込むと「えぇ〜!まだそんなに!もう終わったと思ったんやけどなぁ〜」とオトボケ返答。そんなこんなでいよいよ本日発売ですので、どうかよろしくお願いいたします!「盛林堂」以外では、今のところ椎名町「ますく堂」国分寺「まどそら堂」八王子「むしくい堂」神保町「古書いろどり」京都「善行堂」大阪「梅田蔦屋書店」で販売予定。
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西荻窪を離脱して神保町に至り、夕方の本の街をパトロールする。「丸沼書店」(2009/12/17参照)でちゃんと著者紹介ペーパー入り(書いているのは高木彬光と植草甚一)の桃源社書下ろし推理小説全集「ぺてん師と空気男/江戸川乱歩」を500円で購入。「アムール」(2011/08/12参照)では改造文庫「ダーウィン傳/駒井卓」創元推理文庫「血の収穫/ダシール・ハメット」(再版。元パラ付き)を計100円で購入。さらに「ブンケン・ロック・サイド」(2014/08/28参照)の店内レジ前の付録山の中から、小学館小学五年生昭和四十二年12月号ふろく「犯人当て推理小説ブック」を表紙絵に惹かれて1080円で購入し、パトロール終了。チラホラ閉店準備が進み始める『靖国通り』を東に向かい、「東京古書会館」(2010/03/10参照)一階ロビーで「たけうま書房」さんと落ち合う。今日は神保町で『たけうま会』が開かれるのである。お相手は意外な人選、鎌倉「公文堂書店」さん(2010/03/28参照)と調布「古本 海ねこ」さん(2012/12/17参照)!古本屋さんなのに古書会館に緊張気味のたけうまさんが、たけうまさんらしくておかしい。しかし金曜午後六時の会館は、確かにたくさんの古本屋さんが目の前を通過して行くので、何となくその気持ちが分かる気もする。やがて姉御二人と合流して、近くのラーメン屋なのに夜は飲み屋になるお店に飛び込む。「何でこの四人?」と最初は言っていた海ねこさん。だが、全員三月生まれということで意気投合し、次第にお酒も進めばメートルが上がり、陽気な楽しい場と化して行く。公文堂さんは笑顔の眩しい『哭きの竜』みたいな方だが、旅と古本屋と樺太の話が面白い。いつか訪れた日野店(2009/11/07参照。現在は倉庫となっているそうである)の話をすると、恥ずかしそうに顔を伏せ「なんであんなとこまで来るのぉ〜。あの後、チキンラーメンの時計は本当におかしいんで外しました」とのこと。何か…すみません。でもまた今度、入れてもらおう。あのお店は、何かありそうな予感がプンプンするのだ。海ねこさんは目録製作と、あのレベルの高い本集めの苦しみを、世間話のように話してくれる。その中で外国の古本屋さんでの仕入れは、同業者ということなら(そのための英字名刺を作っている)、ちゃんと値引してくれるという事実にビックリしてしまう。へぇ〜、同業者割引は、世界万国共通なんだ。二人はたくさん日本酒を飲みながら、たけうまさんの私生活にもズバズバ切り込んだりして行く。フフフフ、愉快愉快。そんな風に神保町の夜は更け、明日のためにたけうまさんに後を任せて、一足先に失礼する。
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素敵に酔っ払う姉御二人と、何故かピースサインの陽気なたけうまさん。

すっかり酔っ払って乗り込んだ中央線車内では、気になっていた「推理小説ブック」を引っ張り出し、ビニールをもどかしく破って目次を開く。うわっ!宮敏彦!梶竜雄!氷川瓏!やった、当たりだ!岡田圭右風の男が描かれた石原豪人のイラストに惹かれ、一か八か買ってみたのだが、これは嬉しい!冒頭に『この本には、長編の推理小説が七本のっています』とあるが、みな18ページほどの短篇である。楽しい飲み会と収穫の余韻に浸り、電車は東京の夜の町を西にガタゴト走って行く。
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2017年04月27日

4/27買取バイトからの帰還を「中央線古本屋合算地図」に出迎えられる。

本日は早起きして「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の軽井沢買取に、下っ端バイトとして同行する。その役割は、道中の眠気を吹き飛ばすお喋り相手と、大量の本を素早く移動させる肉体労働者である。午前七時半に西荻窪を出発し、高速道路を経由して、順調に北関東の山奥へと分け入って行く。途中、六年前に北軽井沢の「麦小舎」(2011/05/14参照)ツアー時に、自転車で苦しみに苦しみ抜いて上がった山道を、なぞるようにたどっているのに気付き、車でもハードな勾配とカーブを筋肉でクリアした、六年前の自分に戦慄を覚えてしまう。白い水蒸気噴煙をポカポカ上げる浅間山や、鬼押出しの奇岩に歓声を上げたりしながら、三時間ちょっとの車旅で目的の別荘地に到着。勤勉にすぐに書庫内の査定と整理に取りかかる。涎を垂らしても垂らし足りない探偵小説類に蕩けながら、まだ必要な本と買取本に分けた後、書庫の片付けや拭き掃除にも従事し、玄関にダンボール箱詰めした本と結束した本をキッチリ積上げ一段落。ドライブインで買って来た釜飯で昼食を摂りながら、宅急便の到着を待ちわびる。今回すべての本を一度に持ち帰るのではなく、キモの本だけは盛林堂号に載せて帰り、後のそれなりの本が詰まったダンボール十三箱は宅急便に運んでもらうことにしたのである。ほどなくして時間通りにトラックが到着。手続きをした後に、ダンボールの運び出しを手伝うと、そのドライバーさんは重さ15〜20kgのダンボール箱をひとつ持った後「上にひとつ載せて下さい」と笑顔でお願い。遠慮なくドスリと載せると、涼しい顔で二箱を抱え、あまつさえ階段を駆け下り小走りにトラック荷台へと向かうのであった…す、すげぇ。そして何度も「ひとつ上に載せて下さい」を繰り返し、運び出して行く。まるで江戸時代の拷問、『石抱き(別名・算盤責め)』を涼しい顔で受け流しているみたいに…。そんな風にして無事に三時間ほどで買取作業は終了し、すぐさま東京への帰路に着く。
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写真は別荘のベランダからの枯れ林の景色である。軽井沢はまだ雪もちょっとだけ残っているし、桜はキレイに咲いているし、やはりまだ寒かった…。

往きと同様に三時間強で西荻窪に無事たどり着き、荷物の運び出しを済ませて無事に買取バイト終了。番台のあちらとこちらでお互いに、さすがに疲れを溜めながらも、本日の総評や汲めども尽きぬ古本話など。さらに最近の入荷本を見せてもらっていると、おぉ!東京ライフ社「亡霊怪猫屋敷/橘外男」の帯付きが!と興奮。私も裸本だけは所持しているので、即座にカバーと帯のコピーを懇願してしまう。帯背の『新東宝天然色超大作映画化』の惹句が素晴らしい。
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家に帰って本にコピーを巻いたところ。完品モドキ本であるが、やっぱりジワジワ嬉しいぞ。黒猫ニャニャニャ〜ン!

とそんなことをやっていると、印刷所から待望の「中央線古本屋合算地図」が届けられた。いゃっほう!ついに出来たんだ!包み紙を剥がして一冊取り出して、うっとりと眺める。思った以上に表紙の中央線カラーが美しく再現されているではないか。中央線沿線古本屋のみなさま、執筆者のみなさま、そして古本屋を愛してくれるみなさまのおかげで、ついにこんなマニアックな本が、この世界に生まれ落ちました。本当にありがとうございます!4/29(土)の発売をお楽しみに!
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巻末には復刻の地図グラビアが!どうです、段々と欲しくなって来たでしょう!

追伸
先日購入した山田風太郎「風眼抄」(2017/04/24参照)は、やはり署名本であることが判明しました。改めて高らかに叫ばせていただきます!どひゃっほう!
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どひゃっほう記念に、署名ページから裏の写真ページを透かして撮影。
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2017年04月26日

4/26最初は「キュノポリス(犬狼都市)」であった。

本日色々終えて流れ着いたのは、武蔵関と吉祥寺の中間辺りであろう関町…というか、自分が今どこにいるのかいまいち理解していない状態…。取りあえずは吉祥寺駅を目指して、何となく当てずっぽうに住宅街の中を南に向かって歩いて行く。すると、突然背後から声をかけられる。おっ!やけに実用的な自転車に乗ったトマソン社社主の友泉君じゃないか。聞けば車を駐車場に置き、お店に戻るところらしい。そうか、この辺りは「松田書店」(2016/11/27参照)の近くなのか。渡りに船と吉祥寺までの道のりを何となく教えてもらい、お互いにちょっと人見知りしながらも二言三言言葉を交わして、スッと別れる。かなり長く歩き詰め、やがて見覚えのある『五日市街道』に出たので、久しぶりに「すうさい堂」(2009/05/02参照)に寄ろうとするが、残念ながらお休み。仕方なく繁華なアーケード商店街に足を向け、私とはそれほど相性の良くない「外口書店」(2010/02/22参照)に入り込む。
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お店の雰囲気は昔ながらだが、棚に並ぶ本は新古書が多いので、古本心がそれほど燃え上がらないのである。ぐるっと一回りして、講談社文庫「探偵小説辞典/中島河太郎」を400円で購入すると、帳場の老婦人は立ち上がりながら本を受け取り、ピンク色のオリジナル書皮を丁寧に掛けてくれる。背の折目は爪でピシッと付けて、文庫との一体化を図る。そして最後に「ありがとうございました」と深々とお辞儀。今や東京では珍しくなった感のある、賑わいの巨大アーケード商店街の古本屋さんは、今日も元気に営業中であった。

阿佐ケ谷に帰り着き、習慣として「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)の前で足が止まる。珍しく左側のムック&絵本&雑誌箱に引き寄せられると。丸善発行の古い季刊文芸雑誌「聲」(1958年創刊。全十巻。大岡昇平・中村光夫・福田恆存・三島 由紀夫・吉川逸治・吉田健一編集)が五冊ほど放り込まれているのを発見する。一冊一冊目次を確認して行くと、1960・春の7号に、澁澤龍彦の『犬狼都市』が掲載されているのに目が留まる。
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初出は『犬狼都市(キュノポリス)』じゃなく、『キュノポリス(犬狼都市)』なんだ。文字のような前衛的カットは、福澤一郎の仕事である。私は澁澤の書くものは、評論やペダンチックなエッセイより、小説の方が断然好きなのである。言葉や文章は美しいが、物語の流れ方が、まるで硬質で正確な歯車で押し出されるように、大きくギクギク、小さくキクキクと、機械的に動くところに陶然としてしまうのである。言わば、非小説家が書く小説というところに、物凄くときめいてしまうのである。そんなことを瞬時に店頭で思いながら、103円で購入する。

そしてちょっとお知らせ。
岡崎武志氏との渾身の古本屋本第三弾「中央線古本屋合算地図」は、絶賛予約受付中ですので、何とぞよろしくお願いいたします!店頭発売日は4/29(土)となっております。
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca11/304/p-r-s/

そしてその岡崎武志氏の、5/6(土)還暦祝いトーク&ライブですが、予約がズンズン増えてしまったので、会場が『ビリヤード山崎』から、同じ西荻窪の『こけしや別館2階』に変更となりました。さらにたくさんの人で祝えるようになりましたので、ぜひ面白いお祭りと思って奮ってご参加ください!

★《緊急開催!》第98回西荻ブックマーク 山本善行presents 岡崎武志還暦記念トーク&ライブ 「風来坊 ふたたび」東京篇
■日時:2017年5月6日(土曜日)
■開場:15時30分
■開演:16時
■終演:18時30分 (予定)
★【ご注意ください!】予約者多数のため会場が変更となります。
× ビリヤード山崎 2階 (東京都杉並区西荻北3-19-6、西荻窪駅北口徒歩1分)
                ↓↓↓
〇こけし屋 別館2階 (東京都杉並区西荻南3-14-6、西荻駅南口徒歩2分、TEL03‐3334−5111)
  地図はコチラ 
*本館横のみずほ銀行の後ろにお回りください
■出演:岡崎武志 山本善行 荻原魚雷 小山力也 島田潤一郎
■特別ゲスト:世田谷ピンポンズ
■料金:2,000円 (おみやげ付き)
■定員:50名
http://nishiogi-bookmark.org/2017/
☆ 緊急開催! 東京でもやります!!! ☆
西荻ブックマーク最多出演の岡崎武志還暦記念。
京都から山本善行さんを迎え、さらに古本者三人衆もお呼びいたします。
また特別ゲストに世田谷ピンポンズさんが参戦!
みなさまもこの機会にお祝いにいらっしゃいませんか?
すてきなお土産もご用意いたします。
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2017年04月22日

4/22「ささま」を出たら雨が降る。

曇り空の下の夕方、荻窪北の妙正寺近くに流れ着く。ここまで来たならばと、荻窪の街を南に切り裂くように歩き出し、『日大二高通り』も『青梅街道』突破して、線路下を地下道で潜れば、そこはもはや大好きな「ささま書店」(2008/08/23参照)の至近である。さすがは土曜の夕方で、雨仕様の店頭もいつも通りの店内も、古本を求める人で賑わっている。のんびりと寛ぐように店頭と店内で古本の背を追いかけ、今日も古本に触れられる幸せにブクブクと溺れる。早川書房「古き良きスペース・オペラ時代 SF英雄群像/野田昌宏」人間の科学社「樺太と日本の悪縁/太田典礼」日本経済新聞社「俳優になろうか/笠智衆」を計525円で購入。だが表に出ると、いつの間に降り始めたのか、本降りの冷たい雨がお出迎え。春なのに春雨という感じではなく、ちょっと冷たく寂しい夕方の雨である。
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街がたちまち水気に覆われてしまった、その激変ぶりにしばし呆然としてしまうが、覚悟を決めてそのまま阿佐ケ谷目指して歩き始める。五十メートルも進まぬうちに、たちまちメガネは雨粒に覆われてしまったので、降り掛かる雨を避けるように下を向いて歩み続ける。視界の大部分を占めるアスファルトは、雨水で鈍い鏡のようになり、低解像度の見上げた空と建物の影をボンヤリと映し出し、濡れ鼠となった私の侘しい魂を、嘲笑っている。…早く家に帰って、暖かくしてから、読みさしの古本を紐解こう…家に帰り着くまで、後五百メートル弱…。
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2017年04月21日

4/21爆心地発行の写真集を手に入れる

昨日は下高井戸に流れ着き、フラリと駅踏切際のアーケード市場を潜り抜け、サッシ扉になってしまったが、それでも昔ながらの営業スタイルを保持している「豊川堂」(2016/07/04参照)へ。
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漂着の疲れを癒すために一冊を選び、ご婦人の座る番台に差し出す。第二書房「花とメノコと/竹内てるよ」(献呈署名入り。300円。アイヌ系ロマンス小説…)である。本を受け取るや否やご婦人は「あら?野坂さんかしら?」「いえ、竹内…」「あっ!てるよさん!てるよさんの本じゃなぁい。てるよさんね、この近所に住んでらしたのよ。ウチにも良く来ていただいて、奥で一休みしてもらったりしてたわぁ。わぁ〜懐かしい。晩年は身体壊して、で、拝み屋さんになっちゃってね〜」などと、一冊の本から飛び出す、予想もしなかった文学者話。瞬時に心と身体が、シュワッと癒されてしまう。

本日は野暮用で西東京方面に出没。帰途、西八王子に立ち寄り、以前素敵な本が安値で買えた「ガレージランドHarps」(2017/01/24参照)を訪ねてみる。だが、右から三列目通路に集まる古本は、すっかり枯れ果てた状態である。三ヶ月前の高揚を虚しく未練たらしく反芻しながら、諦め悪く薄暗い店内をウロウロ。すると、左奥の壁際のアイドル写真集コーナーに、違和感バリバリの一冊を発見してしまう。「HIROSHIMA 戦前 原爆 復興 写真輯録」である。昭和三十年発行の、42ページに『被爆前の広島』『原爆をうけた広島』『復興の広島』『原爆をうけた長崎』の写真を掲載したモノクロ写真集である。戦前と復興後の姿は平和そのものだが、やはり原爆投下後の写真は、ただただ街と人が被った恐るべき惨状ばかりで、まさに原民喜が言うような『新しい地獄』が克明に映し出されている。450円で購入し、帰りの電車内で改めて写真と対峙して行く。そして奥付を見ると、発行者の名に“吉川清”とある。あれ?これ特殊な閃光火傷をした背中を見せている写真の被写体が、この人ではなかったか…。気になり色々調べてみると、吉川清氏は『原爆一号』と呼ばれた被爆者で、戦後は原爆ドーム側で土産物屋を営み、訪れる観光客に背中の火傷を見せ、原爆の非道さを訴えていたそうである。写真集の奥付住所を良く見ると、『広島市 細工町 爆心地』となっている。もしやこの写真集、自費出版し土産物屋で販売されていたものではなかろうか…。
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そんな物を手に入れて、西荻窪で途中下車する。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に立ち寄り、ある緊急作業の打ち合わせ。その報酬は……古本…買おうと思っていた古本、春陽堂 世界大都會最尖端ジャズ文學第四巻「モン・パリ變奏曲・カジノ/フィリップ・スーボウ フランシス・ミオマントル」(カバーナシ)である。分かりました。やりましょう。早急に一日で仕上げてみせましょう。がんばります!
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2017年04月19日

4/19「中央線古本屋合算地図」!

午前中に宣言通り、どうにか「中央線古本屋合算地図」のフルデータを入稿し、ホッと一息。だが間髪入れず夕方に、早速印刷所が神速で出してくれた簡易刷り出しを見るために外出。日射しと風の強い中、ついつい「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)前に立ち止まり、パロル舎「贖罪のアナグラム 宮崎勤の世界/蜂巣敦」金剛出版「木々高太郎詩集 渋面」を計618円で購入し、西荻窪へと急ぐ。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)では素早く「フォニャルフ」に付録本を多数補充し(須知徳平のジュニアミステリや加納一朗のミステリ&スリラー小説や翻訳ジュニアミステリなど!)、帳場横で刷り出しをチェックする…いやぁ、ついに岡崎武志氏と二人三脚で、今年もここまで漕ぎ着けたか!と言うわけで、「中央線古本屋合算地図」は4/29(土)から販売開始!みなさま、何とぞ新たなこの古本屋本を、よろしくお願いいたします!

★「中央線古本屋合算地図」
中央線の一部である三十七キロの鉄路には、いつの頃からか常に古本屋さんが寄り添い、沿線の特徴ある文化的色合いを、どっしりと支える役目を担って来た。担うことで町と複雑に絡み合い、更なる“中央線カラー”を生み出し、沿線と人を深く育んで行った。それは今でも変わらず、またこれからも変わらないであろう。この本は昭和三十年から平成二十九年までの、新宿〜八王子間に出現したほとんどの古本屋を、長い長い時を飛び越え、駅ごとに一枚の地図に収めた“古本屋合算地図”である。様々な大小のお店の栄枯盛衰は、同時に中央線沿線のひとつの重要な歴史でもあり、現存するお店たちは、その膨大な積み重ねの上に成り立っているのである。本を紐解き、見たことのない過去の店舗群と、思い出のお店を楽しみ、現在と重ね合わせてそれぞれの町を見透かせば、朧げながら未来の町と古本屋の姿が、そこに見えてくるのかもしれない。

■岡崎武志×古本屋ツアー・イン・ジャパン編著
■B6版 全114ページ モノクロ 定価1300円(税込)
■2017年4月29(土)発売
■発売:盛林堂書房

驚異の「古本屋合算地図」に加え、竹中書店×岩森書店と水中書店×古書サンカクヤマの「古本屋座談会」、「中央線古本屋アンケート」、八王子「佐藤書房ものがたり」、「阿佐ケ谷 千章堂書店のアルバムより」、「青春の中央線古本屋」(荻原魚雷・北原尚彦・十松弘樹・南陀楼綾繁・林哲夫・北條一浩)、古ツアによる「中央線百均の旅」、すでに姿を消したお店の写真を集めた「中央線古本屋レクイエム」、岡崎による思い出エッセイ「つれづれなるままに中央線愛をつづりて」、それに「中央沿線古書店案内図 昭和三十年六月」を付録グラビアとして掲載。

「書肆盛林堂」での通販予約開始は4/23(日)17時より。盛林堂購入特典あり!また、「古本屋写真集」に続き、今回ものこの古本屋本をたくさんの方にお届けしたいと切に願っていますので、取り扱っていただけるお店も絶賛募集中!詳しくは「盛林堂書房」にお問い合わせ下さい!
『書肆盛林堂』→http://seirindousyobou.cart.fc2.com/
『盛林堂書房』→TEL:03−3333−6582 MAIL:seirindou_syobou-1949●yahoo.co.jp (●を半角@にして下さい。)
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2017年04月17日

4/17まだまだ見つかる未知の古本屋

『中央線古本屋地図(仮)』改め『中央線古本屋合算地図』の制作作業が、本当に本当の大詰めとなる。恐らく水曜日には入稿し、そして四月最終週には本が刷り上がってくる予定である。というわけで詳細情報もここ二三日で発表出来ると思うので、どうかご期待下さい!とまぁ、朝からそんな細かい作業をしていたので、息抜きに外出。ブラブラ歩いてたどり着いたのは阿佐ケ谷駅近くの「穂高書房」(2009/02/15参照)である。店主のオヤジさんは、相変わらずビルの横っ腹の出入口を開け放し、そこに陣取って色々作業中である。半ば放置されたような店頭台を順繰りに覗き込んでいくと、左端の台にちょっと古い本が並んでいるのが目に入る。
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歴史・発掘・人類創世史などなど…その中から函ナシの新光社「人類物語〜書き直された世界史〜上巻/ヘンドリック・ウイレム・ヴァン・ルーン 神近市子譯」を400円で購入する。表見返しを開くと、そこには見慣れぬ古書店ラベルが一枚。利休鼠の地色に白抜きで文字や絵が刷られている。上部にはエジプト古代絵文字であるヒエログリフ(手持ちの資料で懸命に調べてみると、どうやら『マンポウ』と書いてあるらしい…)があり、その下にはローマ字表記の店名。“マンポウショボウ”…おそらく「萬宝書房」と書くのではなかろうか。さらにその下に小さく“Kichijoji・Kunitachi”とあるではないか。これは両方の駅にお店があったと考えるのが自然だろう。だが、家に帰ってあらゆる資料をひっくり返しても、そんなお店の記述はどこにも見当たらない…いったいいつ頃のお店なのだろうか?調べても調べても調べ尽くせずに、ポロッと未知のお店が出現してしまうのが、恐ろしき古本屋天国とも言える、中央線沿線の実態である。いったい時代の陰に、どれだけの古本屋さんが一瞬の光跡を残し、流星のように燃え尽きてしまったのか…。今回の本は、昭和三十年以降のお店を扱っているが、いつの日か戦前の沿線古本屋に対しても、調査の触手を伸ばしてみたいものだ…。
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さて、話は変わりイベント出演のお知らせです。来る5/6(土)に『西荻ブックマーク』にて、岡崎武志氏の還暦祝いトーク&ライブイベントが開催されます。何と当日は、氏の親友であり京都の古本屋さんでもある「善行堂」(2012/01/16参照)古本ソムリエ・山本善行氏も勇んで上京。私は荻原魚雷氏・島田潤一郎氏とともに末席トークゲストとして参加予定。世田谷ピンポンズさんも風のように現れ、ミニライブを開催いたします。GWの一日に、詩と歌と本と古本ヨタ話に身を委ね、お土産をもらって過ごしましょう!

《緊急開催!》第98回西荻ブックマーク 山本善行presents 岡崎武志還暦記念トーク&ライブ 「風来坊 ふたたび」東京篇
■日時:2017年5月6日(土曜日)
■開場:15時30分
■開演:16時
■終演:18時30分 (予定)
■会場:ビリヤード山崎 2階 (東京都杉並区西荻北3-19-6、西荻窪駅北口徒歩1分)
■出演:岡崎武志 山本善行 荻原魚雷 小山力也 島田潤一郎
■特別ゲスト:世田谷ピンポンズ
■料金:2,000円 (おみやげ付き)
■定員:50名
☆ 緊急開催! 東京でもやります!!! ☆
西荻ブックマーク最多出演の岡崎武志還暦記念。
京都から山本善行さんを迎え、さらに古本者三人衆もお呼びいたします。
また特別ゲストに世田谷ピンポンズさんが参戦!
みなさまもこの機会にお祝いにいらっしゃいませんか?
すてきなお土産もご用意いたします。
http://nishiogi-bookmark.org/2017/
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2017年04月15日

4/15昭和四年の川端康成に一刀両断される。

本日色々こなして漂着したのは吉祥寺の北…武蔵野の風景の真っただ中と言えば聞こえは良いが、風が吹く度に黒土が舞う畑の間である。口の中をじゃりつかせながらそこを抜け出し、幸福そうな住宅街の中を長い間潜り抜け、どうにか吉祥寺の繁華街にたどり着く。思いついて寄ったのは、東急デパート脇の二階の古本屋さん「百年」(2008/09/25参照)である。
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先日のトークでも店主さんにはお世話になったのだが、今日は帳場の中に姿は見えず。たくさんのお客さんと通路を譲り合いながら、講談社現代新書「明日、機械がヒトになる/海猫沢めろん」を432円で購入する。好きな作家の一人だが、いつの間にこんな科学系の新書を出していたんだ…。階下におりて駅に向かい、駅ビルの『LEMON DROP』で今夜の贅沢なデザート・チーズケーキを購入して帰路に着く。

家に帰り着くと今日もヤフオク落札本が到着している。新潮社「文學時代 昭和四年七月特集探偵小説号」である。191ページ以降が落丁し、表紙にも穴が開いているジャンク本なのだが、国会図書館にも所蔵されていないようなので資料用に購入したのである。なんたって今秋に編集予定の探偵小説集の、目当ての作家の未知の小説が掲載されているのだ。だがそれ以外にも、『探偵小説座談会』『探偵劇のポスタア』『探偵小説發達史』などが載っており、大変に読み応えあり。惜しむらくはやはり、落丁部分の探偵小説、甲賀三郎「發聲フィルム」内田百閨u影」(ともに竹中英太郎畫!)が読めないことであろうか。だが嬉しい誤算もあり、川端康成の小品「都會の手帳」「逗子・鎌倉 ロマンス以前」は、まさに新感覚派の真骨頂とも言える、ギリギリまで尖った意味喪失寸前の文章で、現実を麻酔するほどの力を発揮している!詩が小説となり、小説が詩と化す、才気の暴走が、文章に感化され鋭敏になった心を、一刀両断!他にも龍胆寺雄の映画評や浅原六朗のエッセイなどがあり、当分この一冊で昭和初期を楽しめそうな予感を、ヒシヒシと感じている。
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2017年04月11日

4/11雨の日に行った俺が馬鹿だった

外は四月とは思えぬ冷たい土砂降りの雨。そういえば本川越の『PePe』前では「小江戸川越 ペペ古本まつり」(2015/11/19参照)が開かれているはずだが、この雨の中どんな大変なことになっているのであろうか。もしかしたらライバルがほとんどおらず、雨さえ我慢すれば、ウハウハの入れ喰い状態になるのかもしれない…。そんな都合の良い淡い期待を抱いて、西武新宿線で一路埼玉へ。ホーム北端の改札を抜け、ほぉ!西側に抜けられるように新しく出口が出来たのか。これで東武東上線・川越市駅に向かうのが、劇的に便利になったな。などと感心しつつ駅前の広場に向かうと、ああっ!居並ぶすべてのテントが、ブルーシートとビニールカーテンで、厳重に梱包されてしまっているではないか!
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外側のテントにノートの切れ端が貼付けてあるので、近寄って確認してみると『4/11(火)古本まつり雨天のため中止致します』と書かれていた…。淡い期待は、無惨にも春の氷雨に打ち砕かれてしまったのである。古本のまったく見えないテント群と対照的な、雨に濡れそぼった赤い『古本市開催中』の幟を虚しく眺める。だがそれでも、どうにかしてこの地で古本を買っていきたいものだ。そう即座に決意して、すでに純粋な古本屋さんの消え去った地を、諦め悪く歩き始める。こうなったら、リサイクル系のお店に助けを求めよう。駅から東に向かい、川越の近代的メインストリートでもある長い長い商店街『クレアモール』を南進する。そしてたどりついたのは、「古本市場」のチェーン店である「ふる1 川越クレアモール店」である。
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ゲームやコミックのお店であるが、明るく白く奥深い店舗の左壁には、これもまた奥深い古本壁棚が続いている。93円単行本・一般単行本・実用本・一般文庫・93円文庫と棚の数は多いのだが、かなり白っぽいのが連続するので、茶色い本好きとしてはあまり気分が乗って来ない。それでもどうにか最後の93円文庫棚で、講談社文庫「津和野の殺人者/中町信」を見つけ出し、税込の100円で購入する。…よし、今日はこれでいだろう!と己に言い聞かせ、足元をビシャビシャに濡らしながら、たった一冊の文庫本を携え、再び西武新宿線にたくさんの学生とともに乗り込んで、早々と帰路に着く。
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2017年04月10日

4/10大正時代の北園克衛!

本日午前中、ようやく「中央線古本屋地図(仮)」のレイアウト作業を終える。そしてここに至り、初めて全ページ数が判明…思えば本作りの基本を無視した、不安定な長い闘いであった…。後は一括校正をして修正を反映させ、いよいよ入稿となる。これまで作業工程ばかり綴ってきたが、完成まであともう少し!刮目して待たれよ、全国の愛しき古本修羅たちっ!

他にも色々作業していたら、すでに時刻は夕方である。所用のために中野に外出するとともに、ちょっとした開放感に包まれつつ『中野ブロードウェイ』に吸い込まれる。二階の「古書うつつ」(2008/06/18参照)前に立つと、通路のミニ100均コーナーには、映画パンフ・「こどものとも」・「面白半分」などが多めに並んでいる(ただし100円以上もあり)。「こどものとも」を丁寧に繰り、二冊を選び出して店内へ進む。こちらでも入って直ぐ左のほぼ100均コーナーにへばりつく。福音館書店「ごろごろにゃーん/長新太」「かわとかくれんぼ/司修」角川文庫「ロールスロイスと銀の銃/チェスター・ハイムス」学風書院「笹をたずねて/高嶋雄三」(笹が好きで好きでたまらない文学者の、笹そのものや笹に関する伝説類を集めた紀行集である、千葉『八幡の薮知らず』潜入記もあり!)を計600円で購入する。そのままブロードウェイを通り抜けるようにして『早稲田通り』に脱出。相変わらず客気の多い「中野古本案内処」(2015/08/23参照)へ。やっぱり店頭左側の新書サイズ本は、大いに好みであるな!と改めて確信して一冊抜き取り、明るい店内に進む。奥側中央通路の文学棚からも一冊。カッパノベルス「大怪盗/九鬼紫郎」かたりべ叢書17「牧野信一と結城信一/保昌正夫」を計540円で購入する。安値の本ばかりで無邪気な古本心を満足させて帰宅すると、そこには一冊のハードカバー本が届いていた。最近敗退癖のついているヤフオクで、久々に落札出来た古本である。大正時代の俳句を核に据えた文藝雑誌「鹿火屋」の合本…もちろんそれだけだったら、いくら大正時代好きとは言え、とても入札などしなかったのだが、執筆陣の中に『橋本健吉』の名があったのでドキリ!とし、即座に出せる金額をキーボードで叩き込み、数人のライバルは現れたが、どうにか無事に2520円で落札出来たのである。青い布表紙の本はズシリと重く、大正十二年の一月號〜四月號の合本となっている。急いで各冊の目次をチェックしてみると、橋本健吉の詩が一月號に『毒薬』三月號に『火葬場』四月號に『電柱』が掲載されている。『橋本健吉』とは、詩人・北園克衛の本名である。つまりここに載っている詩は、二十一歳の北園が書いた初期作品ということ!モノが俳句雑誌であり、北園も俳句を作っていたので、てっきり載っているのは俳句作品だと思っていたのだが、これは実に嬉しい誤算である。別に新発見とかいうわけではなく、きっと何処かの本で読めるのだろうが、やはり当時の雑誌で、時代の手触りと活字を味わい読む文章は、とても感慨深いものがある。各詩は、後の北園作品から想像出来ぬ程の、オーソドックスな抒情詩風。これが進化に進化を遂げて、プラスティックポエムにたどり着くのだから、人間とはなんとも底知れぬ生き物である。そんなことを偉そうに考え、いつものように古い本を楽しみながら、次第に夜は更けていく…。
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2017年04月08日

4/8奇跡のゼッケンそろい踏みと“五人だけのジキル”!

すでに昨日のことである。朝起きて、夕方の古本トークのことを思うと、いてもたってもいられなくなってしまったので、午前十一時過ぎに家を出て荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)に向かい、古本を買って心を鎮める。河出書房新社「アインシュタイン・ショック 1・2/金子務」電電公社「もしもし文化史 電信電話発達と九州」世田谷区俳句連盟「世田谷名所俳句集」(昭和三十四年の世田谷の名所をモチーフにした俳句集。東宝撮影所・野犬抑留所・球体瓦斯溜・団地地区なども含まれており楽しい。西東三鬼の句もあり!)を計420円で購入する。一旦家に戻ってから、午後三時過ぎに神保町へ向かう。だが水道橋駅に総武線が滑り込んだ時は、頭の中にあったのは楽しい楽しい『神保町パトロール』のことばかり。思わず『白山通り』でスキップしそうになる足を押さえ込みつつ、「日本書房」(2011/08/24参照)で幸先良く、春江堂「滑稽茶ばなし」(従軍将士慰問用の恤兵本!)を千円でまずは購入。さらに「小宮山書店 ガレージセール」(2013/07/12参照)では、講談社「孤独のアスファルト/藤村正太」と朝日新聞社「ゼッケン8年/金子徳好」を計500円で購入する。この「ゼッケン8年」は、以前持っていた本なのだが、読了後にいつかの古本市であっさりと手放してしまった。だが先日、続編とも言える「反核でゼッケン」を手に入れたことから(2017/03/20参照)、『あぁ!売らなければよかった!』と今更ながら大後悔していたのである。それが一ヶ月も後悔の念に塗れぬうちに、再び我が手に収まってくれるとは!やはり古本の神は、何処かに実在するに違いない!と大いに確信する。
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これが決して他では見られぬ、奇跡のゼッケン本ツーショットである。

そしてパトロールの終りに「三茶書房」(2010/10/26参照)の店頭ワゴンに張り付くと、右端の百均ワゴンに、何だか能天気な中文児童書の仙花紙本「太陽系警察」を発見してしまう。読めるわけもないしそれほど欲しかったわけでもないのだが、何気なく手に取り見返しを開くと、そこには1991年当時の石川英輔への謹呈署名が入っているではないか!このままここに転がしておくわけにはいかぬと、心を入れ替え喜んで購入する。
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その後、午後六時半からの『東京古書会館』での古書山たかし氏&盛林堂・小野氏とのトークを無事完遂。とにかく古書山氏の、探偵小説と怪書への底無しな愛と所有欲に圧倒されっ放しの、楽しく泥沼のように深過ぎる一時間半でありました。ご静聴いただいたみなさま、ありがとうございました!そして嬉しいことに、古書山氏の著書「怪書探訪」で「醗酵人間」の次辺りに位置するであろう怪書、清華書房「怪人ジキル/波野次郎」のカラーコピー手製本をプレゼントしていただく。今回のトーク登壇相手と、展示紹介の文をしたためた、新保博久氏・喜国雅彦氏・北原尚彦氏・小野純一氏、そして私の五人の男に送られた、スペシャルな『五人だけのジキル本』なのである。元は仙花紙本なのに、堅い!厚い!所々のページの隅に古書山氏の指が映り込んでいる!と、色んな意味でとことん楽しめる一冊なのである。でもこれ本当に読みたかったので、古書山氏にひたすら感謝感謝である。
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2017年04月06日

4/6エルヴィスと明治探偵小説

昨夜は打ち合わせ飲みのため、閉店間際の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)を訪れ、閉店作業を見守りつつ、何となく左側通路の「古本ナイアガラ」棚を眺めていると、ぬぬっ!塩山芳明氏の棚に、晶文社「エルヴィスが死んだ 小林信彦のバンドワゴン1961→1976」がひっそりと挿さっているではないか。まぁちゃんとした値付なのだろうと、はなっから諦めながら取り出して後見返しの特徴ある字で書かれた値段札を見ると、これが千円!五六ヶ所にボールペンによるラインが入っているようだが、この値段なら問題ナシ!読めればいいんだ!と遠慮なく買い上げることにする。実は去年の大阪での取材時に、「善行堂」(2012/01/16参照)山本善行氏から、その昔千林「山口書店」(2016/08/21参照)で400円でこの本を釣り上げた、羨まし過ぎるエピソードを聞いた時から、秘かに欲しくて読みたくてしょうがなくなっていたのである。塩山さん、ありがとうございます!おかげで夢が叶いました!

本日は流れ流れて三鷹に漂着。だが、すっかり疲労を蓄積してしまい、古本屋に立ち寄ることもなくスゴスゴと阿佐ケ谷に引き揚げてしまう。帰り道にどうにか「銀星舎」(2008/10/19参照)に足を留め、花粉症に苦しむ旦那さんと近況報告&古本屋話をしながら、集英社文庫「壺中庵異聞/富岡多恵子」ちくま文庫「日本探偵小説傑作選4 城昌幸集」を計700円で購入し、蓄積した乳酸を少しだけ分解する。こんな体たらくで、すみません。まぁ一日にが無事に過ぎて、良かった。そして明日はいよいよ、「怪書探訪」著者・古書山たかし氏と盛林堂・小野氏との三つ巴三竦みトーク!どうか四月初めの金曜日に、古本と怪書と古本屋と古本マニアと探偵小説に興味のある方は、ぜひともお越しください。恐らく当日受付でも大丈夫ですので、思い立ったら吉日でよろしくお願いいたします!ちょっとトークにかこつけて、この際だから色々聞いてみなければと、家にあった明治探偵小説を集合させる。この謎の多い本たちを明日持参して、いったい何が聞き出せ話がどう広がるのか、さぁさぁお立ち会い!
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「ある怪書好き会社員の軌跡」 トークイベントvol.1
■『怪書探訪』著者 古書山たかしさん、古本屋ツアーインジャパンの小山力也さん、盛林堂書房店主 小野純一さんによるトークイベントを開催!
http://www.kosho.ne.jp/news/news_info170213.html
■日時:2017年4月7日(金)開場18:00 開始18:30〜20:00
■場所:東京古書会館 7階会議室
〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3丁目 東京古書会館
■入場料1000円(現金のみ) 事前申込 先着100名様
■予約 http://www.kosho.ne.jp/event/2017/s/page2.html
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2017年04月05日

4/5吉田謙吉に喜び、古本殿上人の痕跡をたどる。

早起きして、昨日からエンジンフル回転でやっつけている「中央線古本屋地図(仮)」のレイアウト作業。どうにか完成率八割くらいには達した感じがするので、少し安心する。今回の本は、かなりイレギュラーな作り方をしてしまったので、常に気が気じゃなくフワフワしていたのであるが、やっとそんな軛からも解放されたようだ。詳しいことは、近々に迫って来た情報解禁とともにお知らせする予定。モニターから視線を剥がしとり、ウンと椅子の上でひとつ背伸びする。そして今回も面白そうな本に仕上がりそうだと手応えを感じつつ、頭の中ではすでに『次はどんな古本屋の本を岡崎氏と作ろうか』などと考えてしまっている。中央線沿線が出来たのなら、他の古本屋街である『早稲田』や『本郷』も面白そうだ。だが『早稲田古本屋街』に関しては「古書現世」(2009/04/04参照)の向井氏が、すでに二冊の名著をものしている。ならば、『本郷』…いや、ものすごくアカデミックな本となりそうな上、様々な高いハードルが立ちはだかる予感がする。いや、そもそも『本郷古本屋街』に、まったく造詣が深くないのが大きな難点であるな…。そんな風に、あてどもない思考に耽りながら、ふと机の横の本の山に目をやると、ちょうど目線の辺りに背を向けていた「弘文荘待賈古書目 第二十九號」が目に留まる。古本神…いや、もはや古本殿上人である古書鑑定の権威・反町茂雄が出した昭和三十二年の目録である。引っ張り出してパラパラ捲っていると、巻末のお店の地図が目に飛び込んでくる。それは、『本郷古本屋街』に向かい合った、まだ都電が走っている『本郷通り』沿い『東大正門前』からの案内図であった。突然ムラムラとそこに行きたくなってしまったので、関係各位への連絡を済ませてから、すっかり春めいた四月の屋外に飛び出す。南北線で『東大前下車』。北から『本郷通り』を南下する形で、途中「第一書房」(2011/08/16参照)の外棚にへばりつく。すると、美術出版社「絵本ヨーロッパ 舞台装置家の眼/吉田謙吉」を発見する。
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築地小劇場から出発した舞台装置家であり、また考現学者・今和次郎と「モデルノロヂオ」を著した著者が、1950年代のヨーロッパを、紀行・演劇・都市・町・風俗・雑貨類から紹介して行くビジュアル本である。大量の著者撮影のモノクロスナップ、堀内誠一を先取りしたような洒落たデザイン、日用雑貨や紙物の紹介が、古本心をいとも容易く穴だらけにしてしまう。値段は2000円だが、相場よりは遥かに安め。少し迷っただけで、あっさり購入してしまう。早々に満足して『東大正門前』。件の目録を徐に取り出し、地図通りに街の中に分け入って行く。
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まずは通りから西に向かい、少しさびしい商店街らしきものを奥に進むと、広場のような五叉路が待っている。昔はここに交番があったのか…う〜ん、この道と街の形、何処かで見たことあるような…湧き上がって来たのはかなり強い既視感だったので、しばらく記憶の検索を路上で行ってしまう…あっ、そうだ!確か木村伊兵衛の『本郷森川町』だ!これから進む道は、まさにあの写真の奥へと進んで行くことになるんだ。道に立つ人&道行く人の物語が勝手に頭の中で交錯する名作白黒写真と目の前の景色を重ね合わせ、予想外の出会いにちょっと感動しながら北西に進路を採る。五叉路に、昔の街の面影は残っているが、進む地の両側はほとんどがマンションなとなり、なんだか味気ない風景。そして進行方向は下り坂になっているのに、地図では陸橋の上を通過することになっている。不思議に感じながら坂道を下って行くと本当に陸橋が現れ、さらにその下に道と街が存在していた。この辺りの高低差は、こんなにも激しいのかと今更思いながら、やがて上り坂となる道をスタスタ突き進むと、街は途端に高級住宅街と化して行く。そして道の先に、地図では『児童遊園』と書かれた『西片公園』が姿を現す。子どもたちが嬌声を上げながら、全力で遊んでいる。ここでは『大椎樹』というかなりロマンチックでユニークな目印が、地図上に葉っぱマークでプロットされているが…そこで公園の豊かな植栽を順繰りに確認して行く。まずは杉、そして満開の桜、さらにその横に確かに椎の木!うわ、本当にあった。残ってるんだ。スゴいぞ!と、かつて「弘文荘」を目指して来た人たちも見上げたであろう樹の下に立ち、無邪気に喜びまたもや感動してしまう。この後、無事に「弘文荘」の跡地である反町邸にもたどり着くのだが、それよりなにより今日のクライマックスはやはり、今から六十年前の地図に引き寄せられて出会うことになった『大椎樹』だったのである。フフフフフ。やっぱり、街をちゃんと歩いて現地に来てみると、何か色々面白いことに出会えるものなんだな。
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2017年04月01日

4/1「盛林堂書房」均一の聖戦!

昨日の話から始めると、色々終わらせつつ午後からの早過ぎる雨に祟られて、濡れ鼠で流れ着いたのは夜の荻窪。疲れて冷えた身体を引き摺るようにして、看板の灯の消えた「竹陽書房」(2017/02/19参照)にズルリと入り込む。
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奥の帳場では、助っ人の老男性が何かをボリボリ齧りながら、ラジオの野球中継に耳も身体も傾けている。微かな暖をとりながらお店を一周し、小学館文庫「実録・死体農場/ビル・バス&ジョン・ジェファーソン」東京出版センター「東京の文学散歩/電電東京文藝同好会」を計300円で購入し、北口に出てバスにて帰宅。そして家では身体を伸ばしながら、いよいよ迫って来た4/7(金)のトークの予習を兼ねて「怪書探訪」を読み込み、気になるところに付箋を貼付けて行く。みなさま、金曜夜にお時間ありましたら、ぜひとも夜の神保町にお越しください!ともに古本と探偵小説に溺れる夜を過ごしましょう!
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そして本日は、四月とは思えない、冷たくなかなか止まない雨の中、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ向かう。資料の返却を兼ねて、土日に行われているという店頭均一祭を、この目で現認し体感するためである。だが残念ながら今日は、このしつこい雨模様である。店頭は恐らく雨仕様になっているはずなので、目当てに押し寄せる古本修羅の数も少なく、もしかしたら祭など開いていない、通常営業状態なのでは…などと憂慮しながら店先に到着する。思った通り、厚く重いビニールカーテンが巡らされた雨仕様だ。だが、そのカーテンの影に、もこもこと何かが蠢く気配!
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そっと通りから覗き込んでみると、うぉっ!カーテンの中にも、今日は店内通路に配置された100均箱&棚にもたくさんの人…いや古本修羅が取り憑いている!そこには悪天候などに臆することのない、修羅たちの聖戦が展開していたのであった!まだ開店したばかりの午前十時三十五分なのに、この完全に出遅れた気分はどうだ。慌ててカーテンの中に潜り込み、朱に交われば赤くなり、本に目を血走らせて行く。確かに良い本が並んでいる。恐らくダブり本や瑕疵のある本を、惜しみなく投入しているのだろう。相場が千〜二千円クラスの本がゴロゴロ。むむむむと心の中で唸りながら、店内外で三冊を手にする。帳場で小野氏と挨拶を交わし、精算。文藝春秋新社「親馬鹿始末記/尾崎一雄」桃源社「バック・ミラー/新章文子」新潮社ヱルテル叢書「海の嘆き ポオルとヴルジニイ/サン・ピエル」を計300円で購入。ふと帳場横に積み上がった本の山を見ると、乱歩本などが含まれた、わりと上質な古本の山。新しい買入本かと思ったら、先客が大量に買った均一本だと言う。そりゃ目当てに修羅が来るはずだと納得しつつ、あまりの大盤振る舞い加減に寒気が走る…俺も、来週から参戦しようかな…。

帰りは、まだしつこくポツポツ落ちる小雨に対抗するように荻窪まで歩き、「ささま書店」(2008/08/23参照)で白水社「墓地/中井英夫」を105円で購入。さらに意地になって阿佐ヶ谷まで歩き、家まで後一歩というところで「J-House」(2015/12/26参照)の土日100均朝市に捕まってしまう。よっ!アニメ系ソノシートとともに、古い地図類が出されているじゃないかと、即座に喜色満面。ところがソノシートにはすべて800円の値段が付けられているのでサッサと諦め、地図類のみを掴む。成文社「東京都管内粁程図」(昭和二十四年出版の、東京各地の鉄道を基準にした距離表である。折込の距離入り鉄道路線図や東京全図付き)日本研究社・日本旅行社「東京及近郊交通詳図」(昭和二十二年発行。まだ物質が豊かではない時代の、粗悪な紙なりに地図を丈夫に作り、懸命な色刷りが涙ぐましい薄っぺらな交通地図である。その交通の中心が都電であることが、さらに時代を感じさせてくれる)京都市役所「京都 KYOTO」(昭和二年出版。表紙には太田喜二郎の版画が貼付けられ、中はコロタイプ印刷・全三十九枚の京都名所写真で構成された、手帖サイズの写真集である)を計300円で購入する。
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やはり嬉しいのは「京都」。寺社仏閣だけではなく、新京極の街頭風景や、近代建築も挿入されている。写真は蹴上インクラインの風景で、まだ現役バリバリで使用されている。

というわけでこちらも何とぞ、次の日の喜国雅彦氏&北原政彦氏のトークとともに、よろしくお願いいたします!「醗酵人間」と大阪圭吉話が炸裂必至!
「ある怪書好き会社員の軌跡」 トークイベントvol.1
■『怪書探訪』著者 古書山たかしさん、古本屋ツアーインジャパンの小山力也さん、盛林堂書房店主 小野純一さんによるトークイベントを開催!
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■日時:2017年4月7日(金)開場18:00 開始18:30〜20:00
■場所:東京古書会館 7階会議室
〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3丁目 東京古書会館
■入場料1000円(現金のみ) 事前申込 先着100名様
■予約 http://www.kosho.ne.jp/event/2017/s/page2.html
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2017年03月30日

3/30「浩仁堂」で科学絵本に目尻を下げる。

道を歩いていると、擦れ違った老人が引き返して来て「突然すみません。不躾ですみません。その頭で結んであるのは、髪の毛ですか?」(私は長過ぎる髪を常日頃から頭の上に丸く結び上げているのである)と突然聞かれて面食らうが、素直に「はい」と答えると「では相当長いんですな。いや、髪を大事にするのは良いことです。昔の人も、髪を大事にしたもんです。いやいや、ありがとう。これからも切らずに大事にして下さい」と笑いながら去って行った…なんだ、この昔話のようなひと時は…そんなことがありながら、今日は夕方の武蔵境に流れ着く。昔話の余韻を引き摺りつつ、午後六時前の「浩仁堂」(2011/02/15参照)。ビル越しの薄く儚い夕陽を、店頭の絵本ラックが浴びている。
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今日は果たして100円で何が買えるのか、期待しながら絵本の列をギロリと眺める。新刊系に対抗するように、大好きな絶版絵本も個性豊かに自己主張している。五冊ほど欲しいものが見つかるが、セコく三冊に絞って店内へ。小さな店内の棚と足元の箱を一巡し、さらに古書を二冊。福音館書店「くうきはどこにも/ブランリー文・ガルスター画」「うみのがくたい/大塚勇三さく・丸木俊え」「月刊たくさんのふしぎ79号 ノラネコの研究/伊澤雅子 文・平出衛 絵」矢貴書店「愛染かつら/川口松太郎」警醒社書店「星座の親しみ/山本一清」(函ナシ。大正十五年五版。見返し裏に鉛筆で『昭和二年九月上旬、城志堂ニテ買フ』と記述あり)を計500円で購入する。帰りの中央線の中でシートに腰を下ろし、五十歳のオッサンが絵本のページを次々紐解いて行く。「うみのがくたい」は、おはなしも絵も珠玉の名品。船乗りの楽隊に感化され、ついに楽器を口にして演奏する魚類の未知のシンフォニーシーンは、紙面から音が湧き上がって来る臨場感!そして「くうきはどこにも」は、独特の六十年代センスを発揮する児童用翻訳科学絵本である。イラスト・色彩・デザインがとにかくスタイリッシュ!帯の見返しを見ると、シリーズは他に二十二冊出ており、中でも「地球はまるい」「たねのりょこう」「ダーウィンの世界一周」「つきのせかい」などが特に気になってしまう。
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2017年03月28日

3/28原稿の合間の空振りを年季の入った回転ラックに癒してもらう

本日は「中央線古本屋地図(仮)」のレイアウトではなく、原稿書きに腰を据えて挑みかかる。一気にドバッと書き上げたいところだが、集中力が途中で途切れ、心が古本屋を欲してしまう。と言うわけで午後に発作的に外出し、前回空振りした大崎広小路の古本を売る電機製品小工場(2017/03/01参照)を見に行くことにする。今回は東急池上線には乗らずに、五反田駅から歩いて目指すことにする。良く考えれば、わざわざ電車に乗らずとも良いほどの短い距離なのだ。暗緑色の目黒川を越えながら、池上線の高架が普通より高いことに目を瞠る。あっという間に件の工場の前に到着するが、あっけなく空振りしてしまう。今日も扉は閉じられ、ガラス戸の向こうに本棚を見せているだけなのだ…これは、もしかしたら案内を乞うてから、買わなければならないのだろうか。それとも古本販売は、すでに辞めてしまっているのだろうか。いつまでも坂の途中で考えていてもしょうがないので、トボトボ歩いて五反田駅へ戻る。そのまま山手線外回りに乗って、渋谷駅で途中下車。宮益坂に足を掛け、ついに『宮益坂ビルディング』の巨体が姿を消したことを改めて寂しく感じ、坂の上の「中村書店」(2008/07/24参照)。空振りの虚しさとビルが消えた悲しさを紛らわすために、今、どさくさに紛れて告白しよう。実は俺は、このお店の金属製回転ラックを、心から愛しているのだ。思いっきり人様の物なのだが、愛して止まないのだ。
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年季が入って傷んで歪み、アルミニウム合金と思われる表面には白サビさえ浮かんでいる。軽やかなフォルムだが、装飾性など皆無なシンプル過ぎる姿形。機能性重視のはずなのに、ラック部分全面中心に太いフレームパイプが縦に走る残念さ。中心のパイプを軸にして、上下それぞれ二段ずつで四面に分かれたラックは、重心がすでに不安定になりながらも、キィキィと細かな軋みを立て、わりとスムーズに回ってくれるのだ。このラックから100均文庫を買ったことは一度もないが、いつでも店先で、もしくは店内でしっかりと回し、数多の古本を搭載して、長い年月を回転しながら飛び越えて来たその偉大さを味わうことに、腐心してしまうのだ。今日も上段をくるくる回し、見覚えのある文庫で一周を判断し、続いてしゃがんで下段も一回し。まるで、公園にあった『回転ジャングルジム』を、巨人になって手の中で回しているようだ。人間は何故こうも、回転する物が好きなのだろう…。それから隣の100均台と箱をゆっくりと漁るのが、いつもの流れなのである。俺だけかと思ったら、次にラックの前に立ったオジさんも、上下共しっかりクルクル回している。やはり楽しいのだろう。世の中に回転ラックは数あれど、俺にとってはこのラックが、この世で一番の物なのだ。と、そこまで思考を暴走させ満足したところで、中央公論社「忘れられた日本〈沖縄文化論〉/岡本太郎」(裸本)を100円で購入する。見返しに『沖縄観光協會之印』があるのが感慨深い。昭和三十六年の初版なので、復帰前の沖縄にあった本なのだろう。それを東京で手に入れる、この不思議さ!そんな風に色々満足した後、家に戻って原稿を無事に書き上げる。これが終わったなら、さぁ、再びレイアウトだ。
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2017年03月27日

3/27まだまだ古本準備中。

雨上がりの夕方に流れ着いたのは永福町である。七色の職種に新たに『プリントハウス』というのが加わっており、もう完全に古本屋の原型を留めていない「ドエル書房」(2015/07/16参照)をバスの車窓に眺め、高円寺駅まで移動する。昨日来たばかりなのだが、永福町から杉並区を家の近くまで縦に切り裂いてくれるのだ。一駅離れているが致し方ない…。そのまま西側の高架下に吸い込まれ、「藍書店」(2014/01/14参照)の外壁棚と対峙する。
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思えば、この外にある壁棚とは不思議なもので、本来は商品を内蔵する店舗の一部なのだが、店舗空間を拡張するために裏返り、まるでゴシック建築のように内部が露出してしまっているのだ。店内に入ればそこは、古本と向かい合いつつも、店主の視線や存在が加味される、独特な緊張感の漂う空間である。だがこの外壁棚(外に出されている棚やワゴンもそうだ)は、これから始まる店主との関係を心の中で準備し意識しながらも、まだ今だけは、ただただ古本とだけ向き合える開放感に包まれた、淡い境界なのである。開放感があるということは、店主の視線が届き難いということである(時に監視カメラというテクノロジーを通して、視線を感じることはままあるが)。だからリリースされたように境界に大量の本が並んでいると、開放感とともにお得感が倍増するのであろう。とりとめもなくそんなことを思考しながら、二冊を掴んで店内へ。中央通路の文学棚を観測した後、女性店員さんに精算していただく。有斐閣「物語の迷宮 ミステリーの詩学/山路龍夫・松島征・原田邦夫」新潮社「絵のなかの散歩/洲之内徹」を計500円で購入する。

夜道を歩いて家まで帰り、夕飯を食べる。その後は腹ごなしに、いつか見た光景のような古本の準備に取りかかる。近日中に「フォニャルフ」棚を大幅入替するためと、月末までに(もう月末だ!)大阪「梅田蔦屋書店」のフェア用追加本を大量に準備しなければならないのである。必死に山を掘り起こしてソファーに積み上げて行くが、道はまだまだ半ば…今年はもしかしたら、古本を売って売って売りまくる年なのだろうか…。
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2017年03月26日

3/26三庫文色!

寒く冷たい雨降りの日曜日なので、終日机に齧りついて仕事を進めるのが今日の主な予定。だが、古本を買って心の安定を図っておきたいので、細かい雨に傘を差しかけ、ヒタヒタ濡れた路面を踏み締め踏み締め、午前十時二十分に高円寺の「西部古書会館」へ。
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昨日今日と開催されているのは「中央線古書展」(2014/01/25参照)である。ガレージに古本修羅の影はなく、静かに古本が集まり、雨垂れの音と古本屋さんの話し声だけが聞こえてくる。たったひとりで、白い息を吐きながら、畳んだ傘を杖として、足元に並ぶ古本を眺めて行く。途中「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)さんと挨拶を交わし、続いて館内へ。こちらには修羅影がチラホラ。そして、二日目ということと、雨が腰を重くしていたのか、時間の経過とともに館内は通常の賑わいを取り戻し始める。だがそれでも各棚を、じっくり時間を掛けてみることが出来たので、いつもより長時間滞留してしまう。選びに選んだ計六冊を1600円で購入。春陽堂「科學探偵/小酒井不木」(函ナシ)武侠社「犯罪科学 1931 五月號」西荻書店三色文庫「野球の科学(上)ピッチングの手引/三石巖」日本出版協同株式會社「よしわら/大河内昌子編」書肆ユリイカ「鋼鉄の足 滝口雅子詩集」(カバーナシ)文書堂「最新手工 趣味の厚紙建築/岡山秀吉」(函ナシ)。嬉しかったのは「趣味の厚紙建築」で、大正十五年出版の、タイトル通り厚紙で簡易住宅・小學校假校舎(何故“假”なのだろうか。その理由は本文にも書かれてはいない)・食料雑貨店・三階建大商店・或る學者の住宅・某実業家の別荘・消防署・旅館兼洋食店・停車場・瓦斯製造所などなどの模型の作り方が、展開図と作例と完成図で丁寧に解説されているのだ。住宅に付属する犬小舎なんか、可愛くてもう!元々は小学校の教材として作られたものらしいが、その細工はなかなか精緻で大掛かりである。もう一冊の収穫は、西荻窪にあった出版社「西荻書店」が出していた子ども用の文庫・三色文庫である。
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昭和二十六年の出版で、住所が西荻窪2-69とあるから、北口を出てすぐの辺りにあったのだろうか。レーベル名通り、赤・青・スミの三色(もしかしたらスミは赤と青の掛け合わせかもしれないが)で刷られた、恩地孝四郎デザインの表紙が愛らしい。だが、巻末の広告を見ると、何だかとんでもないことが起こっていた!
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ああっ!すごい誤植だ。間違っていないようで盛大に間違っていて、もはや芸術性すら感じてしまう…。
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2017年03月23日

3/23「死人の掌」の到着を歓迎する。

色々終えて流れ着いたのは、三鷹『禅林寺』の塀の前。この長く白い塀の向こうの何処かに、太宰治が眠っているのかと想像しつつも、足は自然と『中央通り』へ向かい、夕方の「古書上々堂」(2008/07/17参照)に滑り込む。100・300・500均一本とネット管理本(ビニールに包まれ値はほぼ書かれていないが販売中である)と「岡崎武志堂」の三ゾーンに大きく分かれる静かな店内を、静かに静かにうろつき回る。日本エディタースクール出版部「書店ほどたのしい商売はない/上村卓夫」(「書原」社長の本!)桃源社「東洋武侠団/押川春浪」を計600円で購入する。
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阿佐ヶ谷に帰り着き「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、店頭では購入&読了メモが扉に書かれているため103円のフィルムアート社「天使のまなざし ヴィム・ヴェンダース映画を語る」を。店内ではこちらは裏表紙裏に日付け記入アリだが激安とも言える講談社青い鳥文庫「消えたおじさん/仁木悦子」を309円で購入する。

気持ち良く古本を買って帰宅すると、二冊の本が届いている。一冊は「散歩の達人」4月号『大特集:東京ディープ案内』である。屋敷直子さんと楽しく対談しておりますので、書店でお見かけの際はぜひ手に取っていただければ。そしてもう一冊は、待ちに待ったヤフオク落札本!今古堂分店「探偵文庫 死人の掌/丸亭素人譯」(明治三十二年六版)である。明治探偵小説本にしては安値の三千円スタートだったのだが、入札すると結局ライバルは一人も現れず、そのままラッキーにも落札してしまったのである。そして出品者と取引連絡を取ってみると、何とお相手は旧知の「聖智文庫」さん(2013/05/16参照)であった…。うわっ!と思い、早速こちらの正体を明かし、恐縮しつつ取引を進めると、昨日携帯に店主・有馬氏から「発送したよ」の連絡をわざわざいただきつつ、「なんであれが三千円なんだよ〜」とボヤかれ「表紙に“こんちくしょう”って書いといたから」と毒舌を吐かれてしまう。いや、もう本当にありがとうございます!憧れのひとつである丸亭素人の探偵小説を読める日を迎えることが出来たのは、紛うことなき「聖智文庫」のおかげです!…というようなことがあり、本日夕方、「死人の掌」到着を大歓迎しているわけである。本はザラ紙A5変型の、まるで漫画雑誌のような分厚さで、私にとっては初めて見るタイプの明治本である。それにしてもこの色刷り鮮やかな表紙が素敵!『探偵文庫』の文字も素敵!下に小さく描かれた大変な事件の様子も素敵!巻末の今古堂(恐らく「コンコ堂」なのである!)広告を見ると、他に九冊の『探偵文庫』が出ている。くぅ、読みたいなぁ〜手に入れたいなぁ〜どこかで三千円で売ってないかなぁ〜………。
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2017年03月22日

3/22深く静かにデザイン潜航中…

早起きして、必死に「中央線古本屋地図(仮)」のデザイン作業を進める。これをちゃんと完遂しなければ、本当の春はやって来ないのだ!とばかりに、家に閉じこもって地味な作業をチクチクと。お昼前にちょっと気晴らしに、荻窪までタッタカ歩き、開いたばかりの「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭を楽しむ。手にしたのは一冊だけだったが、実はこれが満足に値する一冊なのであった。サッポロビール株式会社「サッポロ納涼特集号」(昭和四十三年八月刊)を105円で購入する。名前の通り、サッポロビールのPR小冊子である。五十人ほどのビールやお酒にまつわるエッセイを掲載しているが、驚くほど文学度が高いのである。しかも、城昌幸・鹿島孝二・城戸禮・萩原秀夫・大林清・宮本幹也などが、堂々と紛れ込んでいるのだ。特に城の「哀れ」は、かつての恋人を巡るエッセイとも怪談ともつかぬ佳品である。編集後記にも和服でビヤホールに出入りする城のエピソードが登場している。うむ、この表紙だけ見ると、なんだか札幌の郷土冊子みたいだが、騙されずに中を開いてみて、本当に良かった。
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帰りは北口に出て、ビルの間から小さな『教会通り』をたどる。かつてこの通りには何軒かの古本屋さんがあったはずなのだが、残念ながら私はすべて未見なのである。頭の中に作った地図を立ち上げ、あったはずの小さなお店たちを幻視しながらの、帰り道。家に戻って再びデザイン作業に従事。そして夕方に再び気晴らしに外出。高円寺までタッタカ歩き、「越後屋書店」(2009/05/16参照)で草思社「ビートルズ/ハンター・デヴィス」を100円で購入する。この『あづま通り』でも、出現しては消えて行った、数々のお店たちを幻視してしまう。なんだ、中央線沿線は、古本屋さんの亡霊だらけじゃないか。だから今、岡崎武志氏と、お店の魂を慰め記憶に留めるために、本を作っているのではないだろうか。では、早く帰って作業の続きに取りかかるとするか。
posted by tokusan at 18:40| Comment(4) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする