2017年01月14日

1/14均一小僧に連れ回される

土曜日は、決まりきったいつものパターンで行動開始。外は極寒だが、だらしない部屋着に少しだけ上着を羽織っただけで飛び出し、まずは午前十時に阿佐ヶ谷の古道具屋「J-house」(2015/12/26参照)。朝市箱の中を覗き込み、郷土玩具の山の下から、PAN AMのトランプ二種(MoroccoとEngland)を発見し、200円で購入する。手ぶらで出てきたので、後ポケットにトランプを突っ込み、軽く走りながら高円寺へ向かう。これならそんなに厚着でなくとも、寒くならないのだ。途中『庚申通り』で、ぱりっとした身なりの「コクテイル書房」(2016/04/10参照)狩野氏と擦れ違いざまの挨拶を交わす。そんな風に「西部古書会館 大均一祭」(2013/09/08)に到着すると、ガレージはそれほどでもないのだが、館内は通常の二倍ほどの大混雑!これが『全品200円均一』の力なのか!棚前は古本修羅垣が二重になっているので、背伸びして透かし見たり、腰を屈めて覗き込んだり、隙を見つけて入り込んだり、素直に順番を待ったりと、200円の古本への接近をあれこれ試みる。すると入口近くで肩を叩かれたので振り返ってみると、そこには古本神・岡崎武志氏の姿があった。現在の時刻は午前十時二十分。こんなに早く氏が混雑を極める会場に姿を現すとは…さすが均一小僧!と思わず懐かしいニックネームで呼びたくなってしまう。その場で昼食を共にすることを約束し、一時間ほどフリー状態で会場を彷徨う。小冊子や古本屋の目録が目につく一日目である。洪洋社「アメリカ土人藝術」(函ナシで大正十五年刊。南米〜北米〜アラスカまでの主に仮面や人形の民具を集めた写真集である)日本建築学会「日本建築学会80年略史」(造家學會の「建築雑誌 第一號」縮刷版付き)福音館書店「日本伝承のあそび読本/加古里子」輝文館「薄化粧/武田麟太郎」(裸本で貸本印アリ)大同出版社「裸体ポーズ集/寺田政昭編」(出版自体は昭和三十二年だが、中の裸体写真はどうみても戦前のものである。しかも雑誌からの切り抜きが多く、まるで個人的なスクラップブック的合成具合が、雑過ぎて逆に面白い)を計1000円で購入する。嬉しかったのは「日本建築学会80年略史」のグラビアページ。なんたって、日本建築学会のレジェンドたちが、ズラリと掲載されているのだ。辰野金吾・横河民輔・佐野利器・岸田日出刀・妻木頼黄・片山東熊…たまらん!
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それにしても、見事にオッサンばっかりだな…。

出口で岡崎氏と合流し外に出ると、再びコクテイル狩野氏と鉢合わせ。二度目の挨拶を交わして歩き始める。さて、これから昼食に行くのかと思ったら、氏は「当然これから西荻窪に行くんやろな?」「えっ?いや、そのつもりはなかったんですが…」「この流れで、西荻窪行かないのは、あかんやろ」「はい。行きます…」ということで、電車に乗って西荻窪に向かうことになる。ちょっと出てきただけのつもりだったのに…。西荻窪では『日高屋』でまずは昼食を摂る。対面に座る氏は、注文した後は泰然自若としながら、買ったばかりの古本のクリーニングに入る…まるで目の前だけが、古本屋になってしまったようだ…。つるっと麺をたいらげた後は「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、たまたま店内にいた芦辺拓氏や、大山の「ぶっくめいと」(2009/08/05参照)店主と新年の挨拶を交わす。小野氏からは、まだ棚に並べぬレア本をホレホレと見せびらかされ、無様に心中に涎を垂らす。國枝史郎の日本小説文庫「隠亡堀」!こっちは保篠龍緒の「白狼無宿」!うわっ、なんだこの二重厚着カバーの同じく保篠の「七妖星」はっ!ぬぬっ?改造文庫クロス装の「血染めのパイプ」だっ!などと切歯扼腕。魂を弄ばれるひと時を過ごす。
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クロス装版の探偵小説文庫!初めて見た!初お目見え記念に、お願いして写真を撮らせてもらう。なので買ったわけではないのである。

もろもろ打ち合わせをして、氏とともにお店を辞去する。「せっかくだから、「音羽館」(2009/06/04参照)の様子、見にいこかぁ。広瀬くん、おるかなぁ」と、高架下を潜って北側に出て音羽館前に到着すると、ちょうど音羽館号がお店の前に横付けされるグッドタイミング!運転席から滑り出した広瀬氏と、これも新年の挨拶を交わし、休業中のお店にちょっとだけ入れてもらう。すると店内通路は、結束本の山となっていた。荷物が詰まり、左室には進めぬ状況である。そしてちょっと広くなった帳場スペースを見せてもらい、リニューアル開店日は1/25(水)であることを教えていただき、さらにコンビニ袋に入って積み上がった買入本の山を、「この辺古い本ありますから、どうぞ袋から出して見ちゃって下さい」と勧められる。お言葉に甘えて、十弱の袋から本を取り出し、浅ましく検分。毎日新聞社「チョップ先生/今日出海」を100円で購入する。するとお店に、見慣れぬ若者が入って来た。聞けば新しく入ったバイトさんとのことである。何となく「コンコ堂」(2011/06/20参照)天野氏や「水中書店」(2014/01/18参照)今野氏と雰囲気が似ている。もしや背が高く面長で丸眼鏡という容貌は、音羽館バイトの必須条件なのでは…。氏と二人で音羽館の未来を新バイトさんに託し、お店を出る。『西友』内を通って駅前北口に出ると、空から粉雪が舞い始めた。「岡崎さん、雪ですよ!」「ほんまや。雪や。初雪やなぁ」とオッサン二人が、しばし空から舞い落ちる雪片に見蕩れてしまう。

ホームで氏とお別れして、ようやく家に帰れると、電車に乗って阿佐ヶ谷駅。『中杉通り』を震えながら歩いていると、「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)がちょうど開店準備中で、オヤジさんとばったり。これもまた新年の挨拶を交わしながら、ついでにお店を見せていただく。創元推理文庫「フレンチ警部最大の事件/F・W・クロフツ 長谷川修二訳」を300円で購入し、ようやく朝の古本散歩を終えて帰宅と相成る。
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2017年01月13日

1/13神保町トーク『古本屋的』詳細判明!

お昼から吉祥寺で野暮用をこなし外に出ると、いつの間にやら夕闇が迫り、空には冬の雲が濃紺の宇宙をバックにして、美しく鮮やかに広がり、気温がとてつもなく急降下中。服の隙間から入り込む冷気に閉口しながら、久しぶりの「百年」(2008/09/25参照)。安売棚から一冊抜き取り、児童文学棚と対峙していると、ぬぉっ!これまた久しぶりに講談社「カポンをはいたけんじ/槇ひろし」を古本屋さんで見かけてしまう(恐らく2008/08/27にツアーした三鷹台の今は亡き「B-RABBITS」以来。実に七年ぶりの再会というわけか…)。愛らしい薄緑のミュータン人と、アイテムである姿を消す服が巻き起こす騒動を描いた、児童文学の名作である…だが、値段はしっかりか…さすが本の価値を見逃さぬ百年!取りあえず久しぶりのお店で、久しぶりの本を見られたのは幸せであった。雪華社「毒薬/保刈成男」を324円で購入する。そのまま13日の金曜日で賑わうアーケード商店街を抜けて、『五日市街道』沿いの「藤井書店」(2009/07/23参照)へ。城壁のように結束した本が美しく積み上がる店内をスルスル抜けて、奥の階段に足を掛けて踊り場の棚から文庫を一冊。徳間文庫「新・日本SFこてん古典/横田順彌 會津信吾」を180円で購入する。電車の中でようやく暖をとって阿佐ヶ谷に戻り、「千章堂書店」(2009/12/29参照)であかね書房「いたずらラッコのロッコ/神沢利子」(初版でちゃんとビニールカバー付)を100円で購入。最後に『中杉通り』の「銀星舎」(2008/10/19参照)に立ち寄り、店主ご夫婦お二人と新年の挨拶を交わす。二人とも古本屋の話が大好きなのでたくさんそんな話をするのだが、時々二人がお互いの記憶を巡り、軽く口喧嘩を始めるのが何とも微笑ましい。まったく新年早々仲の良いことである。ハルキ文庫「コナン・ドイルの心霊ミステリー/コナン・ドイル」を300円で購入し、何の変哲もなく古本を安く買った感じで、ようやく家に帰り着く。

そして着替えるや否やかぶりついたのは、昨日買ったばかりの雑誌「推理ストーリー」。宮野村子や樹下太郎や千代有三の読切りを楽しみつつ、ミニコラムの渡辺啓助が海女映画を撮った話などに驚きながら、一番楽しんでいるのは長編読切の「ふし穴/島久平」!アパートの二階に住む貧乏サラリーマンが、畳を上げた床板の節穴からのぞく、直下の部屋の、めくるめく女と金の世界!なんだこりゃ、まるで乱歩の「屋根裏の散歩者」を思わせる背徳&窃視な導入部じゃないか!と大喜びし、続きが読みたくてしかたなかったのである。いや、持ち歩いて電車の中などで読んでもいいのだが、雑誌はB5版で表紙がこんな感じなので、とてもとても車内で開く勇気は…。
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※昨日お知らせした、わめぞの首領「古書現世」向井氏とのトークですが、詳細が判明いたしました。
連続講座 古本屋的!! 第五回「店から街へー広げる古本屋」
■向井透史(古書現世)×小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
■1月27日(金)
■ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
■19:00〜20:30
■会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,000円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀まで、メール(jimbo20seiki@gmail.com)か電話(03-5213-4853)にてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c
「早稲田青空古本祭、外市、月の湯古本まつり、みちくさ市、LOFT9 BOOK FES. などなど、あれこれやってきた実感について話しますんでお願いいたします」とは向井氏の言。普段は早稲田に思いっきり腰を据え、出不精の向井氏を神保町で見るのもレアな機会ですので、私からも何とぞよろしくお願いいたします!
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2017年01月11日

1/11『本棚探偵の補充』と「ひるねこBOOKS」開店一周年!

午前中にまずは定番のコースと言っても良い、徒歩で「ささま書店」(2008/08/23参照)に向かい、駒込書房「石川善助作品集」青土社ユリイカ叢書「錬金術/R・ベルヌーリ 種村季弘訳論」文藝春秋「百日物語/中谷宇吉郎」を計315円で購入してから西荻窪に至る。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に気合いを入れて補充しつつ、店内にいた、もはやヤフオク古本神と化している塩山芳明氏(この時はグラビア誌「写楽」の転売について熱く激しく語られる)と新年の挨拶を交わす。小山書店少年少女世界文庫「街の少年/豊島與志雄」「アンデルセン マッチ賣の少女」「ピーターパン/ヂェイ・エム・バリ」(すべてカバーナシ)を300円で購入し、店主・小野氏と少し打ち合わせをしてから、今日は滞店時間短く、家へ引き返そうとスパッと別れを告げる。駅方面に向かって緩い坂を上がり、横断歩道を渡って歩道屋根の架かる駅前商店街に差し掛かると、あっ!正面から本棚探偵・喜国雅彦氏が、スカジャンの上に笑顔を乗せて歩いてくるではないか。聞けばこれから「本棚探偵のひとたな書房」の補充に向かうところだと言うので、貴重な『本棚探偵の古本補充』を目撃すべく、あっけなくお店に引き返すことにする。道すがら、手作りの箱に包まれた「紙魚の手帖」全揃いや「TOMOコミック名作ミステリー」などをチラ見させていただく。店頭にたどり着くと、喜国氏は何故か店内には向かわずに、店頭文庫台に対峙して一冊の文庫に手を伸ばす。それは、何の変哲もない春陽文庫の乱歩「緑衣の鬼」…「持ってるけど、何冊でも欲しくなっちゃうんだよな」…いや、もう絶対完全に買う必要ないでしょう!そんな突然の、古本者にしか分からぬ店頭ミニコントを終えて店内へ進み、いよいよ補充を目の当たりにする。床に赤いトートバッグを下ろし、TOMOコミックをガバッと掴み、収めた!小酒井不木原作の「少年科学探偵 消えたプラチナ」がっ!続いて「笑う肉仮面」(コピーカバー)やカーター・ディクスン原書を並べて行く。それを左斜め後ろから息を詰めて注視し、『本棚探偵が、探偵小説を並べている!』と秘かに欣喜雀躍してしまう。途中、函入り本を懸命に押し込もうとして、バコン!と言う音とともに函が壊れる悲しい一幕も。おぉ、本棚探偵の悲劇!などとそれすら一瞬楽しんでしまう。さらにそこに小野氏が顔を出し、「あっ、「笑う肉仮面」のカバー、コピーさせてもらえばいいじゃん」などと、私が裸本を所持しているのを知っているので(2016/11/19参照)、強制的アドバイス。だが、カラーコピーをさらにカラーコピーすれば、劣化するのは必至…それはまるで海賊版の様相を呈してしまうのではないかと逡巡すると、喜国氏が「コピーは100円ね」と追い討ちをかける。うぅん、どうしよう…。それにしても、本棚探偵がこんなにマメに補充を行うなんて、まったく想定していなかった出来事である。…いつかこっそり何か買おう…。

夜に再度外出し、根津の裏路地の、開店一周年を迎えた古本屋さん、「ひるねこBOOKS」(2016/01/11参照)に駆け付ける。するとお店では、これから始まる一周年記念パーティー準備の真っ最中であった。厚かましく中に入り込み、本棚をたっぷり眺めた後に、さらに厚かましくパーティーに参加してしまう。平日なのに、続々と集まる奇特で素敵な方々。「ひな菊の古本」(徳利&お猪口持参の日本酒担当)・パワフル「雨の実」一家・「レインボーブックス」・「ベランダ本棚」・「あおば堂」(2016/12/11参照)などなどなどなど(敬称略)が一堂に介し、平和な祝祭的時間を形成。そしてお店は、時間を追うごとにギュウギュウになって行く。そこはまるで一周年記念と言うか、お店の誕生日を心から祝うような優しさに満ちあふれた、幸福な空間と化して行く。そんな中で、「古本屋さんにおにぎりを置きたかった」と、新し過ぎる古本屋へのアプローチを試みる女子の登場に、大変カルチャーショックを受けてしまう(その試みは見事実現し、おにぎりは小ぶりで種類多数で美味)。日本酒をパカパカ飲みながら、存在をまったく知らなかった講談社「スイッチョねこ/朝倉摂・絵 大佛次郎・文」を800円で購入する。安泰・絵のバージョンはもちろん最強なのだが、全ページに白猫が躍動するこちらも、なかなか捨て難いものがある。頃合いを見計らい、まだまだ続くパーティーから離脱し、箱入大判絵本が入った袋をぶら下げて、冷たさを増す風が吹き付ける根津の街から、フラフラ帰路に着く。
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そんな楽しいパーティーの様子。みな幸せそうに食べ物に群がっています。
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2017年01月07日

1/7午前中の三手で満足を得る

■一手目:午前九時二十分
今日はどのように動こうか思案していると、小箱のゆうパックが届く。楽しみにしていたヤフオクの落札品である。品目はざっくりした『昔の子供の本』。十冊ほどの学習雑誌や歌本や付録などがまとめて出されていたのだが、その中に心を突き動かす一冊が、さりげなく紛れ込んでいたのを、しっかり見逃さなかったのである。おかげでライバルなく千円にて落札。その一冊とは小学館「女学生の友」昭和三十三年7月号付録「電光ヤマネコ娘/城戸禮」である。あの多作大衆活劇小説家の長編少女明朗小説!読みたかったんだ!つまりはこの一冊のためだけに十冊余の本を買ったわけであるが、嬉しさの方が遥かに大きく、後悔の念はまるでない。今晩ビールでも飲みながら楽しく読もう。
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■二手目:午前十時五分
そういえば、ご近所の古道具屋「帰ってきたJ-house」(2015/12/26参照)では、今年初めての土日店頭朝市が開かれている。これを見ずに年は明けないので、すでに猛者が群がるお店に向かってみると、端っこに猛者が見向きもしない一冊100円映画パンフラックが置かれていた。五十センチ左横の戦闘を他人事のように涼しく眺め、パンフを一冊一冊繰って行く…七十年代の物が多く、有望な鉱脈の予感…ぬぉっ!昭和四十年公開の東宝映画「クレージー・キャッツ結成10周年記念映画 大冒険」が出てきた!やったぞ!特技監督は円谷英二だ!今年も初っ端からありがとう、J-house!他にヘラルド「11ぴきのねこ」と小学館・音の教材「歌のおばさん・松田トシ・シリーズ」(四角いピクチャーレコード)を選び、計300円で購入する。
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■三手目:午前十時四十五分
一旦家のポストに戦利品を放り込み、そのまま手ぶらでテクテク歩いて高円寺。すでに「西部古書会館」(2008/07/27参照)の「杉並書友会」が、恐ろしいほどの新年古本市初めの熱気を漲らせていた。古本修羅の間に分け入り、あっという間に己も修羅の一員となる。だが、すでに「大冒険」パンフを掘り出した喜びが、心に異様なほどの余裕を齎しているので、たくさんのライバルに揉まれようがぶつかられようが、まったく意に介さずほとんど本も手にせず、通路を擦り抜けて行く。だが最後チェックした右壁棚手前の一本で、二人の修羅の尻越しに、気になる一冊を発見してしまう。手を伸ばして取り出すと、それは労働運動系の児童小説なのだが、帯には『少年探偵』の文字が!目次を開くと、そこにも『なんとか探偵をしたいもんだ』『五人の探偵はそろった』『もうひとり女の探偵がいた』『いよいよ探偵らしくなってきた』『ぼくらは探偵をしたんです!』と、やたらに“探偵”の二文字が踊っているではないか。これはもう、探偵小説好きにはたまらん!と抱え込む。新潮社「鉄の町の少年/国分一太郎」文芸評論社「近代作家/楠長之助・神津久人」紀元社「大陸をのぞく/寺本五郎」(函ナシ。銀行頭取の満州見聞記。滿鐵『あじあ號』についても、“流線汽關車流線型”との記述あり)を計1300円で購入する。ちなみにこの工場内少年探偵団、工場で起こった盗難事件を、地道で真面目で綿密な捜査をして証拠を集め、犯人を理詰めで追い詰めて行きます…。
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というように、幸せな古本三手を午前中に打ち終わってしまったので、「古書 赤いドリル」那須氏と「なごみ堂」(2016/08/14参照)店主と年始の挨拶を交わした後は、すっかり満足を得てそのまま家へと帰ってしまう。
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2017年01月06日

1/6音盤市に飛び入り参戦することになる

今日の古本的行動は、まず午前九時過ぎに家を出て、西武新宿線で東村山「なごやか文庫」(2012/01/10参照)の、文庫10円・単行本30円の棚卸しセールに向かうことから始まる。車中の読書は押川春浪「東洋武侠團」なのだが、主人公の蠻勇侠客・段原劒東次が、常軌を逸した強さを誇るのが愉快でたまらない。恐らく軍隊一個中隊(歩兵約200人)ぐらいは、一人で軽く蹴散らしてしまうだろう。あまりの狂った強さに、ついつい互角に闘える大人物を、頭の中で検索してしまう。…『刃牙シリーズ』の範馬勇次郎、『魁!男塾』の江田島平八、それに『北斗の拳』のラオウなら、充分に対抗出来るかもしれない…。そんな脳内与太話にうつつを抜かし、棚への補充真っ最中のお店に到着。
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見境なければバカバカ買えるかもしれないが、真剣に選ぶとそれほど多くは手が出ない。結局、新潮社「殿さま生活/星新一」山と渓谷社「バックパッキング入門/芦沢一洋」白揚社「数学マジック 数学を使う奇術全書/マーチン・ガードナー」光文社文庫「少年の眼/川本三郎選」を計100円で購入する。本は新たに作られたであろう、オリジナルビニールバッグに入れてもらう。

一旦家に戻り、昼食を摂りながら死蔵している音楽CD二十枚を、家の中から掻き集める。午後に再び外出。「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)で店主・天野氏と年始の挨拶を交わしつつ、ゼラチンシルバーセッション2008「SAVE THE FILM」東京こども図書館「おしらせ 東京こども図書館1〜20」(1974〜79年の四ページのペーパー群。石井桃子・瀬田貞二・中川李枝子・渡辺茂男らが一ページ目のコラムを執筆している)文藝春秋「文藝春秋六十年の歩み」を計309円で購入する。新宿を経由して雑司が谷へ向かい、『弦巻通り』の奥の奥の「JUNGLE BOOKS」(2010/08/20参照)にたどり着く。半地下の店内に入り込むと、ジャングルユキさんは占いの真っ最中で、ジャングルケンさんは明日の市準備の真っ最中であった。ここで明日から三日間「MUSIC FAIR2017音盤市」という、大の音楽好きたちがCDやレコードなどを放出するお祭りが開かれるのである。昨年のわめぞ忘年会時に、ジャングルユキさんが誘ってくれたので、畑違いではあるが、飛び入り参加することになったのである。それにしても、届いた荷物に目を凝らすと、己の持ち込んだ二十枚が、なんと貧弱なことか!そのほとんどが、八十〜九十年代のマイナー&忘れ去られた日本人アーティストやおかしなCDなのである。せめて一枚でも売れれば嬉しいのだが…というわけで、いつものように「フォニャルフ」の札入りで並べていますので、ご興味ある方はぜひとも雑司が谷へ!ハヤカワ文庫「日本SF古典集成U/横田順彌」を800円で購入する。
「MUSIC FAIR2017音盤市」について詳しくは→http://jbooks.exblog.jp/

CDを託してお店を出た後は、テクテク目白方面まで歩いて久しぶりの「貝の小鳥」(2009/06/14参照)。日本児童文学の良い出物はないかと、瀟洒な店内を一周するが、結局そんな思いとは真逆のような、なにわ塾叢書「われらが古本大学/天牛新一郎」を684円で購入してしまう。大阪「天牛書店」創始者の対話講座録である。塾生全員に配られたという『古書籍賣買生活八十年』の自筆色紙が羨ましくてたまらない…。大阪といえば、大阪「梅田蔦屋書店」の『4thラウンジ』壁面古書棚にて、場違いに変な本・おかしな本・良い本・ミステリなどが激しく自己主張する「古ツアお蔵出しフェア」が、ありがたいことに新年も奇跡的に継続中なので、引き続き可愛がってやってください。よろしくお願いいたします!
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2017年01月05日

1/5古本年賀を貰い、二種の二笑亭に頭を捻る。

戻ってきた冬の冷たい風に吹かれて、「ささま書店」(2008/08/23参照)で広済堂「蠅男/海野十三」を315円で買ったりしながら西荻窪に駆け付け、まずは「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に補充。あ、どひゃっほう本の宮本幹也が売れているじゃないか。などと喜び、店主・小野氏と、そろそろ本腰を入れなければならない古本屋本第三弾制作についてと、今年前半の『盛林堂ミステリアス文庫』デザインスケジュールなど、色々打ち合わせる。そしてもったいないことに、「年賀です。今年もよろしく」と古本をいただいてしまう。日本小説文庫「細君行状記/辰野九紫」!大好きな作家のひとりである。…これは、あれだな…今年も色々手伝えと、言うことだな…。というわけで、お店の前で嬉しい文庫を記念撮影。
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まだまだ家には帰らずに、中央線でさらに西に向かって立川下車。北口に出て『フロム中武』三階で行われている「立川フロム古書市」に向かうと、建物内が新建材でピカピカになっている。以前の地方デパート感は消え去り(2011/04/22参照)、古本市が開かれている場所も、階段近くの新たなL字型催事場であった。
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武蔵野近辺のお店が出店しており、およそ三十台のワゴンが並ぶ古本市…なんだか年末の松戸の古本市(2016/12/28参照)と似てるな…ということはもしかしたら……あぁ!やっぱり!付録漫画箱の中に「バスカヴィル家の犬」の翻案じゃないかと疑った捕物漫画が、ちゃんとあるではないか。ここで会ったら百年目ということで、一か八か買うことにする。スペースが少し小さいためか、ワゴン下にもたくさんの古本プラケースが置かれているので、しゃがんでいる時間が結構長くなってしまう。昭森社「二笑亭綺譚/式場隆三郎」桃源社「地球SOS/小松崎茂」講談社少年クラブ九月号ふろく「へのへの茂平次 白い魔犬/ふるさわひでお」を計2200円で購入し、粗品の黒ボールペンを一本いただく。今日は古本屋さんに、色々いただく日だな…。市は1/22(日)まで。そして「白い魔犬」は、残念ながら「バスカヴィル」の翻案ではなく、生類憐れみの令の禁を犯した籠屋が、島流しの途中に脱走して江戸に舞い戻り、逆にお上が手を出せない犬を手なずけて犯罪に使役するというストーリーでした…。

さらに「二笑亭綺譚」である。私はすでのこの本を所持しているのだが、会場で見かけた本に違和感を覚え、思わず購入してしまった。家にあるものとは、異なる感じがしたのである…。あ、やっぱり全然違う。まず大きさが違う。そして色が違い、片や赤系で片や緑系。そしてさらに函も違い、片やしっかりした函であり、片やホチキス留めのボール紙。本体も違い、表紙に箔押しタイトルがあったりなかったり。背の色も、片や柿色、片や青緑。意匠も微妙に違っている。見返しの紙も、片や青緑、片やカーキ。本文紙の質も違い、目次の位置も違っている。それでいて、両方とも昭和十四年九月五日再版のB版となっている。全体的には、今日購入した本の方が、遥かに質の良い造り…これはいったいどういうことなのであろうか?
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2017年01月04日

1/4思い直して踵を返し、本当に良かった…

正月明けに、なんとなく遠くに行きたくなってしまうが、どうやら遠くに行きたいというよりは、長い時間のんびりと、電車にガタゴト揺られたいのである。そこで片道三時間かかる長期的定点観測店、千葉県飯倉「クルクル」(2011/01/10参照)に狙いを定め、午前九時過ぎに家を出る。中央線と総武線を乗り継いで千葉駅に着いてから、三十分の待ち時間をクリアして、ガラガラの総武本線銚子行きに乗り込み、望み通りのガタゴトガタゴト。枯れ色の広大な田んぼをの中を、これも枯れ色な春陽堂文庫を読書し、成東駅を過ぎてからは、九十九里浜の六キロ内陸を北東に進んで行く。
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そして午後十二時半、ちょうど文庫を読了し終えたところで、無人駅に到着する。そもそも正月明けの四日に「クルクル」が営業しているかどうか定かではないのだが、とにかくちょっとした旅情を味わいたくて、ついついここまで来てしまった。まぁ開いている可能性は低いが、閉まっていたら茂原の「ブックセンターあずま 茂原店」(2010/03/21参照)に行けば良いと思っているので、気は楽なのである。小さな駅舎の外に出て、いつでも変わらず繁茂する四角い笹薮の間の道路を通り、坂道を上がって国道へ出て、おぉそこには「クルクル」…むっ、入口横に古いゲーム筐体が出ているな…右側にもなんか出ている…厚いガラスから天井を透かし見ると電灯が点いている…バンザイ!やってるぞ!とまずは見慣れぬ入口右横の長テーブル店頭台に接近する。
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ソフビや雑誌やムックなどが犇めいてるが、虫プロ制作の「ジャングル大帝」の紙芝居が500円だと!…紙芝居などまったく必要ないのだが、ついついお店がやっていた喜びに煽られて、調子に乗って抱え込んでしまう。広い店内に進み、レジ前50均ワゴンで仙花紙本を一冊掴み、奥の児童書コーナーに食らいつく…う〜む、やはりここは良いお店だ。そんな来る度に思っていることを改めて噛み締め、本を次々手にして行く。新入荷コーナーには、城昌幸時代物が、函入り単行本と仙花紙本を合わせて五冊ほど…仙花紙本は千円と安値である。単行本壁棚や、長い文庫棚+その上に積み上がる単行本山、それに左奥の古書ワゴンや、右端通路の古書ワゴン&ガラスケースもたっぷり捜索していると、あっという間に一時間が経過してしまった。一泉社「名作落語集」小学館入門百科シリーズ25「名探偵入門/加納一郎」講談社「Gen VoL.37 1977 推理・探偵トリック大全集」秋田書店まんが王8月号(昭和44年)ふろく「よみきり怪奇秘境まんが 吸血の谷/浜慎二」講談社カラーテレビ版ムーミン名作絵ばなし9「ほをあげろムーミンごう」ユニカ「原色版教育紙芝居 虫プロ名作劇場 ジャングル大帝下巻 レオの消防隊/原作・手塚治虫」(ちゃんと十六枚揃っているが、本当にこれどうするつもりなんだ…)を計2850円で購入する。満足してお店を出て、交差点のコンビニで昼食を買い、駅への坂を下っている…この時点でお店からは300mほど離れており、本当にこのままちゃんと帰るつもりであった…だが!やはりあの本がとても気になってしまう!むくむくと心の中で存在が大きくなって行く!その文庫棚の上にあった本は、薄手だが二千円と、ちょっと値の張るものであった…今日は買わなくてもいいだろう…だけど、いつまたここに来るか分からないんだから、買っておいた方が…そうか?また何処かで見つかるんじゃないか?…でも、でも、見かけたことないよな…と毎度の葛藤を繰り返すうち、ええい!悩んでいるなら買ってしまってから後悔すればいいんだ!とようやく決めて、思い直して踵を返してお店へ向かう。多少気恥ずかしいが、素早く入口ドアを開けて中の自動ドアを潜り、素早く目的の本を抜き出し、素早くレジへ。レジの女性が目を丸くしている。そして背後の下條正己風店主が「忘れ物ですか?」とニッコリ。「いや、すみません。途中でどうしても欲しくなってしまったもので…」と言い訳するように照れてしまう。新星書房「バリケード・一九六六年二月/福島泰樹」を2000円で購入する。店主はその黒い本を改めて手にして「「バリケード」…学生運動の頃のですか」「そうです。確か第一歌集です」「お近くですか?それとも千葉県外から」「東京からです。時々来て買わせていただいてます」「そうですか。毎度ありがとうございます。今度来る時は、電話されてから来て下さい。なにせ、老人なものですから、休んでることもあるんですよ」「ありがとうございます。次回はそうします。それにしても、正月明けから開けていただいて、ありがとうございます」「いやいや。またどうぞ」などとやり取りしてお店を辞去し、再び坂道を下る。今日はここに小さな旅をしに来て、本当に良かった。

そして帰りの車中で、すぐさま「バリケード」を紐解くと、何と献呈書名&歌入りであることが判明し、仰け反る。そのまま興奮しながら、一気に読了。校舎のバリケードの向こう側に、寒さに震えながら眠りを貪り、思想と恋愛と青春が、流れ蕩けて行く…。そして家に帰って調べてみると、昭和四十四年刊のオリジナル本は、桁がひとつ違うかなりのレア本であることが判明する…かっ、かっ、かっ、買っておいて良かった!偉いぞ、俺!無論、文句なしのどひゃっほうである。
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2017年01月03日

1/3ニワトリブンコ新春100円均一大会参戦!

昨日寝る時から&寝ている間も夢心地にずっと楽しみにしていた、西荻窪の「にわとり文庫」(2009/07/25参照)主催の店頭100均古本大会へ。ちょっと早めの午前十一時四十五分に店頭に到着すると、すでに古本神と古本修羅と古本中学生が入り乱れ、緑のシートに覆われた棚や箱を透視する勢いで、正午のスタートを今か今かと待ち構えている。ペコペコと十人弱の列と挨拶を交わしながら、その最後尾に付き、風は冷たいが日射しの暖かさに救われながら、じっと正午を待ち続ける。隣の八百屋の白黒猫デコポンも、ただならぬ気配を感じ取っているのか、落ち着きなく店頭と皆の足元を、チョロチョロと走り回っている…。
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そして時間が経つごとに、ライバルの列が後へと伸びて行く…ちゃんと何か買えればいいのだが…。やがて正午になって、にわとりさんが入口に立ち「今年は酉年なので……がんばります!」の素敵な脱力合図とともに、狂乱の大会がスタートする。入口付近には絵本机と新書棚、その右側を単行本棚が囲い込み、さらに右の『三人灯』店頭にも文庫箱列や紙物箱列、それに雑誌ラック・洋書椅子などが並んで行く…もちろんすべて100円となっている。まずは文庫箱に食らいつき、とにかく古い文庫を掴み取り、お気に入りを高速で選別して行く。目当ての文庫箱に必死に手を伸ばしていると、奇しくも前でしゃがんで小型本に血眼の北原尚彦氏を抱きしめてしまうカタチに…。文庫ゾーンである程度の満足を得て、入口側の単行本ゾーンへ。濃密な人垣の間から懸命に棚の古い本に照準を定め、ここでも手をピンと伸ばしてのチェックを繰り返す。こちらも一段落したところで、本を抱えながら、棚の上に乗った付録漫画や雑誌に注意を払いつつ、同じく小休止に入った方たちと、ひとしきりの感想戦に入る。森英俊氏・北原尚彦氏・松坂健氏・新保博久氏・古本中学生ケンタロウ君・トマソン社社主などなど。森氏からは嬉しいことに、香山滋関連を二冊分けていただく。そして松坂氏の浅草にあった古本屋「協立書店」の羨まし過ぎる話(国際劇場の向かいにあった、探偵小説関連が、恐ろしく安値で売られていたエロ主力店)に歯がみする。日本小説文庫「若き日の悩み/藤森成吉」「愛情の彼方に 前・後編/中村武羅夫」「紅蝙蝠 前・後編/長谷川伸」春陽堂文庫「花骨牌/湊邦三」春陽堂日本探偵小説全集「ソロモンの桃/香山滋」「短篇集/渡辺啓助・海野十三」(共にカバーナシ)錦城出版社「鯨の町/梶野悳三」(カバーナシ)「香山滋書誌/竹内博編」偕成社「海底牢獄/海野十三」(自家製改装版)映畫春秋社「映畫春秋 第四號」春陽堂「両美人/村井弦斎」博文館「東洋武侠團/押川春浪」(表紙&扉ナシ)を計1400円で購入する。大会は明日四日(水)も十二時から開催される。北原氏が店主に、明日どのくらい補充されるのか、さりげなく探りを入れていたが、すでに棚と箱の半分は消え去りガタガタになっているので、補充は必至であろう。
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今日の収穫の中でことの外嬉しかったのは、表紙や扉は取れてしまっているが、明治オリジナル本の押川春浪「東洋武侠團」!口絵から後はすべて残っているので、ちゃんと通読することが出来るのだ。書き出しが『空中戦闘艦は彗星の如く、神侠の英雄を乗せて雲間を飛行し、海底戦闘艇は奔龍の如く、稀代の怪傑を潜めて浪裡を駛馳す』となっており、初っ端からのトップスピードにシビレまくる。さらに嬉しかったのは、三度目に単行本棚を見た時にまだ残っていた、和本の村井弦斎「両美人」。何気なく手に取り、どうせ食関連の話だろうと高を括ってページを紐解くと、何とこれが謎の美人の復讐殺人から始まる、明治探偵小説風の、二人の美女の波瀾万丈ジェットコースター的物語。これが100円とは!無論二〇一七年最初のどひゃっほうである。今年もありがとう、にわとり文庫!
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2017年01月01日

1/1早稲田通りで古本初め

起き抜けに日本映画専門チャンネルで岡本喜八監督の映画『殺人狂時代』(原作は都筑道夫「飢えた遺産」。後に「なめくじに聞いてみろ」に改題)を堪能。原作の週刊誌連載的盛り上がり&引っ張りをズバズバッと削ぎ落とし、奇想天外な殺人テクニックが果敢にぶつかり合う、スタイリッシュブラックコメディに仕上げた怪作である。世にも独創的な髪型を誇る、天本英世の日本人離れしたマッドなダンディさは、いつ見ても素晴らしい。白黒映画世界に溺れ、お屠蘇を過分に聞こし召してから、重くなった体を持ち上げ、正午過ぎの『早稲田通り』をトボトボ東へ。車は疎らに走り、初詣に向かう歩行者とも擦れ違うが、時たま車も人も遥か彼方に遠退き、まるで街の静止画のような一瞬が、通りに誕生する。道路に刻印された街路樹の黒い影が、非現実感をたくましく増幅し、『地球最後の男』がいる世界を、ちょっとだけ垣間見せてくれたりする。そんな妄想に正月早々囚われながら、中野にたどり着く。去年同様元日から営業を開始している「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)と「古本案内処」(2015/08/23参照)で、厳かな“古本初め”を敢行するためである。まずは『ブロードウェイ』内に入り込み、エスカレーターと階段を使い、ガランとした四階へ。
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季節感から隔絶された建物内で、お店の店頭棚に視線を走らせ二冊を手にする。お正月と言うことで、なんだかお祝いに高い本を買ってしまいそうになるが、ここはやはり我慢我慢。そんな財布の紐の緩いことでは、この一年が思いやられてしまう…レジでコスプレ女子に、体温低くクールに精算してもらう。読売新聞社「こじき袋/森繁久彌」中央公論社ともだち文庫「小川の葦/坪田譲治」を計216円で購入し、二〇一七年のスタートを切る。再び『早稲田通り』に出てちょっと東に向かい、「古本案内処」を楽しむ。中で棚を眺めていると、通りがかった人の五割が「おっ、古本屋だ」と口に出し、そのうちの三分の一ほどが「入る?入ってみる?」と言いながら入店してくるのが、なんだか繰り返される芝居のようで、不思議な味わいがある。アーバン・コネクションズ「映画史探訪 よみがえる幻の名作 日本無声映画篇」を864円で購入する。というわけで、さらっと“古本初め”が出来たわけだが、このままでは去年の元日とまったく同じでつまらない。そこでお店を出たら、さらに歩を進めて『早稲田通り』を東に150mほど。古書も扱う異色店の「ブックオフ中野早稲田通店」(2012/11/15参照)である。おっ、さっきテレビCMで見た通り、全品20%オフになっている。
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店内でレトロコミックワゴンと古書コーナーと100均古書コーナーに目を通し、二冊を手にしてレジに向かおうとすると、ここで初めて入口近くに固まるラック群に目が留まる。そのうちの一台が、三段に古本を二重に収めた『古書市315円均一』であった。つい懸命に掘り起こしてしまい、さらに二冊を手にしてしまう。光文社文庫「本格推理マガジン 特集・幻の名作 鯉沼家の悲劇/鮎川哲也編」朝日新聞社「浅草六区はいつもモダンだった/雜喉潤」新書館「アメリカ黄金時代 禁酒法とジャズ・エイジ/常磐新平」リブロポート「倫敦幽霊紳士録/J・A・ブルックス」を計830円で購入する。こんな風に早速新しい一年が始まりましたが、本年もよろしくお願いいたします。
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2016年12月31日

12/31八十ぐるい

ついに二〇一六年の十二月三十一日である。ご近所の阿佐ヶ谷近辺をぶらついても、開いている古本屋さんはもはや「千章堂書店」(2009/12/29参照)のみである。店頭と店内を、今年最後と気合いを入れて目を血走らせるが、残念ながら胸ときめく出会いはなく、何も買わずにお店を出てしまった…古本も買わずに、年がグングン暮れて行く。だが、そんな風にだらしなくなし崩しに新年を迎えてしまうのも、古本屋ツーリストとして心苦しいので、ここ最近ずっと追いかけながらも、さらに火のついた感のある古本について語ることにする。

最近とみに恋い焦がれているのは、西條八十の児童小説である。さらにその中でも、探偵小説に心奪われてしまっている。詩人で著名な作詞家である八十だが、少女小説を手掛けるうちに、やがて手を出してしまった少女探偵小説&少年探偵小説という魔のジャンル。狂っていてそれでいてしっかりしていて面白い、などという噂は聞いていたのだが、ゆまに書房が復刊した「人食いバラ」を読んだ時に、まず噂の正しさを実感し、即座に魅入られてしまった。面白い!本当にクレイジーだ!読者を喜ばせると同時に、ハラハラドキドキさせるために、悪党側のイメージが恐ろしいほど強い!数々の悪だくみが、良識をゴミのように扱っている!それに対抗する正義も、手段を選ばずぶっ飛んでいる!だから、八十の書いた児童探偵小説を、もっともっと読んでみたい!と、最初に読んだものが強烈だっただけに、さらに彼の手による、新たなクレージー物語を欲するのは、至極当然な成り行きと言えよう。だが現在では、八十の児童探偵小説は、少年少女問わず、ほとんどが読めない状況である。仮に古本で見つかったとしても、それは恐ろしいほどの高値をつけていることが多い。だからこそ、困難を極める蒐集にさらに変態的に燃えてしまうのだが、もちろん大枚を払うことは避けて通りたいのが人情である。となると、基本は安く!を信条として、長い時間をかけてチャンスをうかがい、一冊一冊気長に手に入れて行くしか、方法はないのである。そんな風にして正攻法ではなかなか手の届かぬ八十本を、時に日下三蔵邸の買取バイトの報酬として(2014/12/10参照)、また日夜ヤフオクに目を光らせ、苦心して猛者たちから見逃された八十本を落札したり(2016/10/28参照)、少しずつ少しずつコレクションを増やして行く、じれったい日々。そして最近またもやラッキーにもヤフオクにて、探し求めていた一冊である、講談社少女クラブ12月号ふろく「すみれの怪人/西条八十・作 谷敏彦・え」を3300円で落札することが出来た。本来だったら入札値急上昇の一冊であるが、作者が“谷敏彦”とあり、八十の名がなかったために猛者たちの鋭い爪を逃れ、弱者がどうにか落札出来たのである。このように、牛歩の入手であるが、これからも色々手を替え品を替えて八十本を入手し、未知のクレージーなストーリーに耽溺する所存である。来年あたりはどうにかして蒐集をもっと微速前進させ、「魔境の二少女」か「長崎の花賣娘」のどちらか一冊を、読んでみたいものだと、秘かな野望を抱いている。
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さて、ここから話は横道に盛大に逸れる。「すみれの怪人」は、『ひとりで身の上相談所を開いている』『まだ中学生くらいの頭のよい少女』扇谷町子が主人公の少女探偵小説である。彼女はタイトルにもなっている『すみれの怪人』こと、元悪人の仲間だった青年『すみれのジョオ』に助けられ、悪漢たちの組織『東京の黒い五本指(なんという魂震える洒落た組織名!思わず名乗りたくなる格好良さ!八十センセイ、素敵!)』が起こす事件に立ち向かって行くのである。上の写真右下の表紙絵をご覧いただきたい。何か違和を感じないであろうか。私は感じた。それは『すみれのジョオ』の菫色の覆面にである。それは目の部分が刳り貫かれ、口の上までを隠すあまり見かけぬ代物である。覆面は四角く紐は耳に掛けられ、まるで風邪のマスクをズリ上げたような格好である。…なんだかちょっと格好悪い…。覆面と言えば、普通は怪傑ゾロのような目の部分を隠すマスクとか、顔全体を月光仮面のようにぐるっと巻いて目だけが出ているとか…近いものを強いて上げれば、横山光輝の漫画『鉄人28号』には帽子を被り顔全体に覆面布を垂らした悪党が出てきたはずだが、それでもやはりだいぶ違っている。一番格好良い助っ人が、このスタイルで良いのだろうか。どうしてこれを選んだのであろうか…。だが、これを目にした時から、記憶の何処かに、この珍妙なスタイルに近い覆面が、うっすら浮上してきたのである。確か写真だったような気が…古い探偵小説の表紙だったような気が…翻訳物だったような気が…と記憶をたどりつつ、必死に古本屋の目録を調べ始めてみる。すると案の定、見つかったのである。落穂舎の2013年春苑号「落穂拾い通信」のグラビアページに、その印象的な単行本は載っていた。日本公論社「エヂプト十字架の秘密/クヰーン」の表紙写真がまさに、同様の覆面を被った男のバストアップなのである。こちらはどうやら革製で丸みを帯び、耳に掛ける部分も少し違っているようだが、こういうタイプの覆面があったことは確かなようだ。製品として作られ販売され、犯罪者やマフィアが、愛用していたのであろうか?とにかく何とも不思議な覆面である。
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登場人物紹介ページのジョオと、目録の表紙写真。

このブログの毎回がそうとも言えますが、この忙しい年の瀬に、やくたいもない無駄話にお付き合いいただき、ありがとうございました。二〇一七年も引き続きよろしくお願いいたします!それではみなさま、良いお年を!
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2016年12月29日

12/29築地を経由して今年最後の神保町パトロールに向かう

ちょっと早起きして、深くコンパクトな大江戸線で、東京の地下を軽く南回りして築地へ向かう。築地にとっては、もはや充分遅い時間の午前九時前。低空を海鳥が飛び交い、魚臭に満たされた巨大な市場は、それでも歳末の賑わいを遺憾なく見せ、何処も殺人的大混雑となっている。気をつけて歩きながら、四分の一円形の大屋根の下の、『水産仲卸業者売場』に入り込んで行く。長く細く常に飽和状態の通路では、多種多様の魚貝類・深海魚の水晶のような目玉・氷・冷気・発泡スチロール・鱗・血・魚の頭・白熱電球・白い看板・海水に濡れた古いアスファルトとコンクリ・恐い電動ターレ・優しい電動ターレ・赤色・銀色などに、激しく眩惑される。そして円弧を描く通路は、いつでも己の現在地を見失う魔力を秘めている。買物を済ませながら、市の活気に部外者としてすっかり飲み込まれた後、中心部の車とスクーターとターレが激しく乱雑に行き交う大通りに出て、屋根の外に脱出。続いて『魚がし横丁』にある、場内唯一の新刊書店を見学に行く。8号館一階角にあるその書店は、とても小さく、通りに大きな平台と棚を出し、そこに主に本を並べていた。
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料理や食、それに魚類のムックが大量に面陳されている。台の上には築地の本が集められ、背後の棚には料理関連の単行本が並べられている。目立つところに置かれた『寿司トランプ』は、おそらくこのお店の重要な売れ筋なのだろう。専門的な本に混じり、競馬&スポーツ新聞や漫画雑誌も置かれているのが微笑ましい。記念に「築地場内地図」を求め、大喧噪の市場を後にする。

森下で都営新宿線に乗り換え、午前十時半の神保町。陽があまり当たらず、あんなに氷の多かった築地市場よりちょっと寒いくらいだ。古本屋さんの三分の一ほどは今年の営業をすでに終了し、四分の一ほどが大掃除仕事納め状態。残りの営業中のお店やようやく開き始めたお店の店頭を、震えながら順に覗いて行く。市場も閉まった年の瀬で、忙しくはあるが品物が落ち着いているせいか、心にクイッと引っ掛かる本があまり見つからない。ようやく「ブンケン・ロック・サイド」(2014/08/28参照)店頭で、プレイブックス「ミステリー入門/佐賀潜編」(鮎川・日影・陳・樹下ら十人の推理作家競作の推理ゲーム本。ただしエロ度高め。挿絵は石森章太郎である)を見つけて購入しようと店内へ。帳場前で立ち止まり、清算前に脇の文庫棚をチェックしてみると、春陽文庫に微妙な動きが出ているのを発見。じっくり吟味して、春陽文庫「自殺を売った男/大下宇陀児」(昭和39年初版)を選び、合計1188円で購入する。さらに「澤口書店 巌松堂ビル店」(2014/04/12参照)では大成建設「タワークレーン・立ち話」(大成建設の週刊新潮&文春連載コラムをまとめたもの)を200円で購入する。古本を買ってようやく落ち着くと、なんだかお腹がすいてきたので『すずらん通り』の天婦羅屋『はちまき』に入り、奮発して天丼をパクつく。食事中はずっと、壁に飾られた東京作家クラブ「廿七會」の集合記念写真に釘付けとなる。なんたって、江戸川乱歩・鹿島孝二・大平陽介・長谷健・田邊茂一らが、嬉しそうに写り込んでいるのだ。
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今日の獲物である、怪しいカバーの春陽文庫と築地場内地図。地図上部の『11月閉場、ありがとう築地!』の文字が複雑な感情を呼び起こす…。
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2016年12月25日

12/25佐左木俊郎に心の隙を突かれる。

白い息を吐きながら、もはや土日の参戦恒例行事となっている、超ご近所の「帰ってきたJ−ハウス」(2015/12/26参照)の朝市に向かう。今日は歩道側のダンボール箱に八十〜九十年代映画パンフが詰め込まれていたので、そこのみに没頭する。五冊で100円。拾い物はサム・ペキンパー監督の早過ぎたタランティーノ的バカアクション映画「キラー・エリート」と、キネカ大森が出来た時に出した小冊子の創刊号「KINECA」(1984年刊。ミニシアターのプログラムマガジンなのに、造りも執筆陣も驚くほど豪華。西武の広告が入っていたり、映画館が『西友』内にあるので、セゾン系の芸術文化活動であることがみてとれる)であろうか。土日市は今年最後の開催であるが、いや、本当に結構良いもの楽しいものを、恐ろしいくらいの安値で買わさせていただきました。来年もこの調子で、ひとつよろしくお願いいたします!

午後に本格的に外出し、まずはスタスタ「ささま書店」(2008/08/23参照)へ向かう。おんどり・ぽけっと・ぶっく「わがアメリカ映画史/筈見恒夫」宮沢賢治研究会「四次元1968年1月号 二百号記念特集」を計210円で購入し、続いて西荻窪「盛林堂書房」に向かい、今年最後(恐らく)の「フォニャルフ」補充を行う。そして帳場に近寄ると、おわぁ!最近仕入れたという垂涎の探偵小説本たちが、クリーニングを終え商品と化すのを待ちながら、店主の周囲を囲み、様々な事件の瘴気を纏いながら黄金に輝いているではないか!特に惹き付けられたのは、博文館文庫と日本小説文庫&春陽堂文庫!その中に、何故かしら最近頓に恋い焦がれしまっている、佐左木俊郎の文庫を発見してしまい、懐が寒いはずなのに購買欲がギュギュンと急上昇してしまう。聞けば純粋な探偵小説ではないので(それに近くはあるのだが、より文学&大衆小説的なアプローチで書かれている。でもそのタイトルは『謀殺罪』『密會綺譚』『錯覺の拷問室』『或る犯罪の動機』などで、ほとんどが昭和初期の東京を舞台にして、怪奇な事件で幕を開けているではないか…はぁっ!読みたい!)値段はそれほど高くないとのこと。…で、迷う。思いっきり迷う。う〜ん、欲しくて読みたくはあるのだが、ここでこんなミニ大物を買うつもりは、まったくなかったのだ…これを買ったら、この先の、ちょっと来年のある企画のために、何軒かの古本屋さんを見ておこうという予定が、崩れてしまうではないか…。いや、ここはやっぱり、きっぱりと仕事を優先させるべきだろう。そうだ、それでいいのだ。別に今買わなくてもいいんだよ。「きょ、今日はやめておきます。三十日にまた来るので、その時にあったら買おうかなと…」「そっかぁ、なくなってるかもね。でもそうなったら、諦めがつくってわけか…」「いや、そんな佐左木がそう簡単に、売れるわけはないでしょ。残ってますよ、きっと」「だといいよねぇ」「…すみません、やはり佐左木をいただいていきます!」とあっけなく陥落してしまう。春陽堂文庫「仮面の輪舞 外四篇/佐左木俊郎」を三千円で購入してしまった……バカ!俺の、古本バカっ!突然出会ってしまった佐左木俊郎に、弱い心の隙を見事に突かれてしまった…でもいいか。これを自分への、ささやかなクリスマスプレゼントとしよう。メリー・古本・クリスマス!

そんなわけで心と財布を軽くしながら、予定を大幅に変更して、駅からバスに乗って井荻駅→都立家政と移動する。踏切を渡って店頭でクリスマスツリーがペカペカ点灯している「ブックマート都立家政店」(2011/12/13参照)に到着。お店宣伝メタルテーマ曲&オリジナルMVがエンドレスで流れ続ける店頭棚から、幻想文学出版局「ブックガイド・マガジン BGM 創刊号」を300円で購入。テンチョーさんとちょっとお話ししたかったのだが、残念ながら不在であった。
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※再びのお知らせ
大阪「梅田蔦屋書店」のカフェ『4thラウンジ』壁面で、『古本屋ツアー・イン・ジャパンのお蔵出しフェア』が堂々開催中です。九月に開かれた「夏の古書市」より、遥かに蔵書量が増殖しておりますので、梅田駅駅ビル『ルクア イーレ』に接近の際は、ぜひとも苦労して九階まで上がり、カフェをどうにか探し当てて、辺りの雰囲気から逸脱したような、意外過ぎる並びの古本群を楽しんでいただければ!何とぞよろしくお願いいたします。
https://www.facebook.com/UMEDATSUTAYABOOKS/
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2016年12月23日

12/23女子に怖じ気好き酒屋の軒先に救われる。

昨夜はわめぞの大忘年会に参戦。様々な人に様々な古本屋タレコミを囁かれ、非常に刺激的な夜となるが、一番過激に刺激的だったのは、石丸元章氏に子母澤寛について説明したり、トイレにたどり着けぬ氏を素早く案内した瞬間であった…。

明けて本日、駅に向かう途中の「千章堂書店」(2009/12/29参照)100均ワゴンで文春文庫「落城記/野呂邦暢」を見つけて喜んでから、「「白樺書院」(2008/06/01参照)は、すでに十二月初めにお店を閉めちゃいましたよ」と、忘年会で隣席だった「むしくい堂」さんにタレ込まれていたので、悔恨の念を噛み締めながら下北沢に到着する。『下北沢一番街』のお店の前に立つと、あぁぁぁぁぁ、本当だ。シャッターは下ろされたままで、看板が、看板が取り去られている…。2016/11/01にお店に入ったのが、最後となってしまったか。長い間、本当におつかれさまでした。そしてやはりどうしても思い出すのは、店の中を我が物顔に飛び交っていた、あのインコのこと。幸い三年前の「南部支部報第48号」に、その強烈な出会いをレポートした拙文があるので、お店の追悼のつもりで、ここに少々抜粋する。

『…大きく日除けが張り出しているせいか、ここだけ商店街の中で少し闇をまとっている。その薄暗い領域に踏み込むと、確実に何かの視線に射抜かれているのを感じてしまう…決して店主のものではない。もっと、純粋で凶暴な…それは、入口近くに居座る、緑色のインコの視線であった。このインコは店内で放し飼いににされており、足下の文庫本をおもちゃにしている。店内に入って棚を見ていると、横で『ピィーッ!ピ〜〜ッ!』と激しく鳴き立てる。あぁ、愉快で素敵な古本屋さんだ…そのとき突然奥の帳場で店主が立ち上がり「ダメだよ!」「えっ?」「いや、その子が今飛びかかろうとしていたもので…」。危うく古本屋さんでインコに襲われるところであった。可愛い凶暴な店番がいるお店、それが「白樺書院」である』
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これは三年前に店の外から激写したインコ。その足が掴むのは、啄んでボロボロになった文庫本である!

インコの感慨に耽りながら、人波の多い方に引き返し、途中「ほん吉」(2008/06/01参照)に立ち寄る。古書混じり気味の店頭棚から、岩谷選書「綺堂怪奇小説集/岡本綺堂」(表紙破れアリ)学研4年の学習2月教材「おもしろ交通館」を計200円で購入した後に、南口商店街の終りにある、これもタレ込まれた本を少々扱っているらしい「三叉路」に到着。…だが、思いっきり入りづらい。完全に女子向けの三階建て小店!ぬぅん…このプリティーな祝日の女子空間に、オヤジが闖入するわけには、ちょっといかぬ。とすっかり怖じ気づき、また別の日にチャレンジするかと、逃げるように歩き出し、横道に入って久々の「オムライス」(2013/09/19参照)に入店。なんだか貸本漫画が増えているなと思いつつ、古本ゾーンをガサゴソする。値段の付いてない二点、帝國教育出版部「コドモノヒカリ第五巻第二號 カゾヘカタ號」(ページ欠け。昭和十六年刊の教育絵本)婦人画報社「男のお洒落実用学/石津謙介」を店主に差し出すと、絵本は1000円だが石津本は破格の300円!ということなので、喜んで購入する。さらに坂を東に上がって池ノ上に向かうと、南側商店街の閉店した酒屋の軒先で、無人ガレージセールが行われているのを発見。
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一冊十円古本箱(当然両方とも酒の空き箱)が二つも出ているじゃないか!と無邪気に喜び、五木寛之・吉行淳之介・石川達三・語学関連の多い並びを集中して眺め、角川新書「一万一千メートルの深海を行く/J・ピカール R・S・ディーツ」を購入する。
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本日のささやかな収穫。下に敷いてあるのが「コドモノヒカリ」で、武井武雄エの『ウメノセック(ケンコクサイノウタ)』である。欠けのページがあるのが誠に残念だが…と表4の『本編の内容について(お母様方へ』を読んでいると、欠けたページの詳細が書いてあった。そしてその中に恐るべき名が!何と『動物の駆けっこ』を描いているのは谷中安規!ええっ!と驚き慌ててないはずのページを繰ってみると、なんと半分だけがかろうじて残されているではないか。あぁっ、悔しい!でも、嬉しい!動物が、やっぱりかわいいっ!
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2016年12月18日

12/18「魔法入門」と植草甚一譯!

風邪がどうにも治りきらないので、ワチャワチャと動き回らずになるべく休養することを心がけ、「フォニャルフ」のささやかな補充にだけ向かうことにする。それでも通り道の古本屋には吸い寄せられ、ボケラ〜ッとしながら「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)店頭右端の文庫棚前に立ち止まり、漫然と棚を上から順に眺めて行く…今日はちょっと暖かいな…立っているのになんだか眠いな…などと集中力を欠きながら文庫の背を追いかけていると、脳天をぶっ叩かれたような衝撃力を持つ文庫を発見!角川文庫「魔法入門/W・E・バトラー」である。『超自然の謎シリーズ』と銘打たれたオカルト文庫の中でもレアな一冊を、103円で買える日が来るとは!と気怠い風邪を瞬間吹き飛ばし、店内で四枚の硬貨と無事に交換する。初版だか、カバーは後版の異装となっている。見つけた瞬間に興奮してしまい、棚に挿さった状態を一枚。
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いつもだったらこのまま歩いて荻窪に向かうのだが、今日は日和って大事をとって電車で西荻窪入りし、「フォニャルフ」に古本の補充を果たす。そして「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とちょっとだけ来年の岡崎武志氏と共同で作り上げる古本屋本について打ち合わせる。店内が次第に混み合ってきたので、程よいところで辞去。だが改めて店頭に蔓延る100均箱に吸い寄せられてしまうと、見慣れぬ古く良さげな単行本を発見してしまう。昭和十五年発行のスタア社「亞米利加作家撰集」である。裸本らしく、中を見るとヘミングウェイやスタインベックなどの知られた作家も並んでいるが、大半が見知らぬ名である。だが、二篇の譯者に植草甚一の名を見つけたので、即座に購入を決意する。再び店内に舞い戻り、「これなんで外に出してるの?」と聞くと「売れないんだもん」とのシンプルな答えが返ってきた。そして裸本だと思っていたのが、実は中に挟まっていた薄っぺらなパラフィンのような紙がカバーであり、それならばと改めてカバーを掛けてもらい、さらにパラフィンも巻いていただくことにする。すると小野氏が「こうしたら、何だか売りたくなくなってきた」とボソリ。いや、時すでに遅し。手のひらで踊らされつつも、どひゃっほうです。
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連日の安値良書入手に、喜び戸惑いつつも、今日も上出来な古本人生を歩めていることに、どこかに潜んでいるはずの古本の神に、盛大に感謝を捧げる。
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2016年12月17日

12/17古ツアin古典SFワンダーランド!

風邪がまだ治りきらないので、今日も夜の予定までは家に閉じこもり過ごすつもり。だがやはり古本は買いたしと、午前十時の開店時間に照準を定め、今日は古本が出ているかもしれないと薄い望みを賭けながら、ご近所の「帰ってきたJ-house」(2015/12/26参照)の土日朝市に向かう。開店と同時に100均箱に群がり貪る猛者の隙を見出しながら、自分のペースで店頭のチェックを進める。おぉっ!今日は歩道反対側に置かれた箱に、ソングブック系とは言え、古本が並んでいるではないか!と色めきたち、ガサゴソガサゴソ。日本専売公社「たばこ専売五十年少史」二玄社「CARグラフィック 72号」年代不明の小学六年生1月号付録「ハッピーゲームカード」を300円で購入する。そんな風に首尾良く古本を買えたこともさることながら、「たばこ専売五十小史」に挟まっていた紙物に、午前中一番の喜びを覚えてしまう。それは昭和二十八年発行の「たばこのはなし」という日本専売公社のパンフレット。基本は二色刷りなのだが、ベラベラと開いて内側を見ると、何とカラー印刷の明治三十七年から昭和二十八年まで発売してきた、煙草のパッケージがズラズラリ!
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ぬっ、乱歩の『屋根裏の散歩者』に登場する『Air Ship』も、頻繁に探偵小説に登場する『敷島』も、しっかり掲載されているではないか!そんな小さな喜びを噛み締めつつ家にそそくさと戻り、今は夜のために、傷を負った野生動物のように身を隠し、ひたすら体力の温存に努める…。

そして午後四時半に家を出て、暮れなずんでいる神保町着。この街に来たならば、当然お気に入りの各店頭を見て回るつもりなのである。まずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)店頭で、意外な児童本を見つけて、これは幸先が良いぞと店内に駆け込んで精算する。秋田書店ジュニア版怪奇サスペンス全集4「世界の怪奇七不思議/庄司浅水」を300円で購入。続いてすっかり暗くなった「日本書房」(2011/08/24参照)の店頭で、つい先日も見たばかりの柔々和本タワーを掘り返すと、心の琴線に触れまくる薄い冊子を発見!出版社不明「人面類似集 全/宮武外骨編」(背に製版テープで補修アリ)である。ドキドキしながらページを繰ると、人間の認識能力の高さ故の本能として、無意味な図像に人の顔を見出してしまう(つまりは心霊写真と類似の現象)現象のオンパレード!
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平家蟹から始まり、人面魚や人参や人面瘡などを経由して、妖怪関連にまで至ってしまう、昭和六年刊のある意味オカルト本である。これを五百円で購入し、どひゃっほう!と『白山通り』に雄叫びを上げる。さらに「明倫館書店」(2012/04/04参照)で武田薬品化學株式會社の非売品本「化學大家略傳」を300円で購入し、本日のメインイベントである『日本古典SF研究会』の忘年会に向かう。ひょんなことから盛林堂ミステリアス文庫の新刊、横田順彌氏の「荒熊雪之丞大全」のカバー周りデザインを引き受けたことにより、研究会会長である北原尚彦氏からお誘いがかかり、恐縮しながら末席を汚すことになったのである。地下の会場に滑り込むと、畏れ多いお歴々が集合しており、ひたすら縮こまりながらも、二時間半を楽しく過ごしてしまう。それにしても、『古典SF研究会』なのに、一切SFの話が出ずに、古本話に終始したのは、どういうことなのだろうか…。
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2016年12月16日

12/16箱入り児童文学本の幸福性について

気が緩んだのか無様に風邪をひいてしまう。一晩寝て快方に向かっているのだが、今夜は万難を排して参加しなければならない「古本屋ツアー・イン・京阪神」の打ち上げがあるので、日中は大事をとって寝て過ごすことにする。というわけで、古本屋には行けそうもない…古本も買えそうにない…。そこで、布団の中でツラツラ考え出したことでも、書き留めておくことにする。

私は小学生の時は非常に病弱で、よく高熱を出しては、学校を二日三日と休んでいた。親は共働きで家にはいなかったので、午前と午後に一回ずつ、団地の三階のおばさんが様子を見に来てくれたりしていた。だから熱に魘されながら、もっぱらひとりで過ごすことが多かったのだが、寂しかったり嫌な思い出と言う印象は持っていない。何故なら誰に気兼ねするでもなく、一日中本が、心置きなく読めたからである。まず午前十時くらいまではNHK教育テレビの子供番組を視聴し、その後は学校を休んだ背徳感に襲われながらの、ひたすらの読書読書読書!しかも読んでいたのは、団地上階のお兄さんからお下がりとして受け継いだ、ポプラ社の乱歩本と偕成社のホームズ本であった。つまり一日中、焼跡の残る東京や一度も行ったことのない霧深い倫敦での、怪盗の暗躍や殺人などにうつつを抜かし、エヘラエヘラ過ごしていたのである。今日は三冊も読んだぞ!と、もう話の筋もトリックも知っているはずなのに、繰り返し同じ本を読み続ける、愚かな熱を出した小学生…。そんな風邪っぴき小学生だが、いつまでも寝ても覚めても二十面相と言っているわけはなく、ある日、ロフティングの『ドリトル先生』シリーズに出会ったことにより、さらなる読書の楽しさに開眼してしまう。恐らく最初は四年生の時に学級文庫で出会った「ドリトル先生の郵便局」だったと思うが、とにかく動物と話せる(動物語を勉強して理解している)特殊能力に羨望を覚え、話せる故そして医者故に、動物たちから頼りにされての不思議な世界治療旅行に、あっけなく魅せられてしまったのである。学級文庫にはその一冊しかなかったが、学校図書館にはシリーズ本が何冊か置かれていたので、次々と借りて貪るように読んだことを良く覚えている。さぁ、こうなってくると、当然その本が欲しくなる。いつでも好きな時に読めるように、手元に置いておきたくなってくる。だが確か一冊千円前後していたので、小遣いでおいそれと買える代物ではない。だからまずはクリスマスプレゼントとしての、長期的な計画で入手を目論んだのである。それまでは学研のひみつシリーズや漫画や玩具などが主たるプレゼントだったのだが、それがいきなりまともな児童文学本を欲しがったので、親もさぞかし驚いたことであろう。辛抱強く待ち続けた12月24日に、プレゼントしてもらうのではなく、お金をもらって自分で町の本屋へ向かった。団地の商店街の小さな本屋の片隅には、児童文学のコーナーがちゃんとあり、上の方の棚の一列を、岩波書店『ドリトル先生』シリーズの箱入り本が占めていた。怪獣や怪人やロボットや二十面相から一歩離れたことを生意気に意識しつつ(決して卒業したわけではないのだ…)、その優等生的に幸福な並びを背伸びして眺め、悩みに悩んで選んだのは「ドリトル先生と秘密の湖」…シリーズ内でも一番の厚みを誇る、ノアの方舟や進化論を搦めた、ちょっと難解な大作である。何故これを選んだのか…それはやはり厚かったからであろう。その大きな物体に、ページに広がる未知の世界と深い物語を感じ取り、選択したのであろう。しかも、文庫や図書館では無かった、箱が本には付いていたのである。

箱入り本は、子供からすれば高級な本である。もっとも児童文学の箱は、いわゆる函ではなく、ボール紙を太いホチキスで留めただけの、薄っぺらなものではあるが、それは、自分が良い本を読んでいるという優越感に浸れる、単純で幸福な装置であった。おおよその物語を感じさせる四角い物体から、丸い背を紙の匂いとともにスッと抜き出し、箱と違った絵が描かれた、読むべき本に変化した物体を展開。見返し→口絵→目次と通過して、やがて物体から離れた、印刷された文字が脳内に投影する物語に、ひたすら没入して行く、その行為。この紙の装置による厳かな儀式が、自分は今、本を読んでいる!頭が良くなるはずの、本を読んでいる!という、誰に対してなのかも判然としない優越性と、その幸福性に陶然と酔い痴れる時間を、創り出してくれていたのである。さらに読書を中断し、再び箱に収めて物語を閉じる決意と達成感が、静かなファンファーレとして、己を褒めそやしていたのである。また箱入り本は、単純に親受けもよく、ひょんなことから気まぐれに買ってもらえるということも、多かった気がする。あぁ、本好きの子供としては、これを幸福と言わずに何と言おう。

布団の中でそんな思い出に浸りながら、ちょっと起き上がって家中に散在していた箱入り児童文学本を集めてみる。悲しいことに、それはすべて大人になって買った古本ばかりであったが、こうして並べると、前述のもはや薄れてしまった幸福性が、そこはかとなく、懐かしく立ち上がってくる気がする。それにしても、やはりこの物質感は、迫力あるな。箱はまるで、勢いのある物語が弾け飛ばないよう、キュッと固めて、拘束しているみたいだ。
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そして、そろそろ発売になる、22号で惜しまれながら終刊となる「BOOK5」連載『古本屋ツアー・イン・ドリーム』最終回は、伝説の白山上の「南天堂書房」を訪ねております。巻頭のアンケートとともにお楽しみいただければ幸いです!
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2016年12月14日

12/14非情の買取を江見水蔭が吹き飛ばす!

昨日西荻窪から持ち帰った本の中には、レアなプロレス本が含まれていた。レアであるが、やはりあの古本市ではちょっと筋違いなジャンルだったので、売れ残ったのであろう。すでに読了済みの本であり、さほどプロレス本に執着はしていないので、そのまま盛林堂さんに買い取ってもらっても良かったのだが、そこはセコい欲が働き、専門店の方が高く買い取ってくれるに違いないと考え、本日某格闘技系専門店に赴く。帳場で「買取をお願いします」と声をかけて五冊の本を渡すと「しばらくお待ちください」と査定に入る。新書サイズの、相場が四千円の本が三冊、一万円前後の本が一冊、そして千円ほどが一冊…という布陣である。まぁだいたい売値の二割〜三割と考え、四〜五千円くらいであろうかと、捕らぬ狸の皮算用。店内の棚に目を凝らすと、持ち込んだ本と同じ本が並んでいたので値を見てみると、ちゃんと四千円の値段が付けられている。マニアックな本に、正当な値を付けているなら安心だと、大船に乗ったつもりで待ち続ける。だが「買取お待ちのお客様」と呼び出され帳場に向かうと、告げられた値は合計で1900円であった…予想の半分以下…だいたい売値の一割…な、なんという非情な買取なのか!派手に意気消沈しながらも、さらに他店に持ち込んで査定してもらうのは面倒くさかったので、このまま本を手放すことにする。どうか、探し求めている人に、無事に買われるんだよ…。

すっかり気持ちを腐らせながら神保町入りし、こうなったら今受け取った金で、古本を買ってやる!と小さく息巻いて店頭を覗き込み始める。店頭の右がまだ雨仕様の「丸沼書店」(2009/12/17参照)では有光書房「偏奇館閨中写影/亀山巌」を500円で購入する…これで残りは1400円。ズンズン通りを進んでこちらも未だ雨仕様の「日本書房」(2011/08/24参照)店頭木製ワゴンを吟味しつつ、店内右側通路に進んで格納された柔々和本ツインタワーに丁寧に挑みかかる。すると、左側タワーの中ほどに、分厚いしっかりした小型本が一冊(押川春浪「海底軍艦」と同サイズ)…取り出してみると「避暑の友」とあり、モノクロ写真グラビアページと三十編近い小説、超短篇的小品が三十編ほど、それに時代小説や雑文が十編ほどの構成となっている。中には奇談怪談系が多く含まれており、読み応えが…ありゃ!これ書いたの江見水蔭じゃないか!そう気づいた瞬間に、すべての憂さは神保町の果てまで吹っ飛んで行った。これは、読むのがハチャメチャに楽しみだぞ!と帳場に向かい、博文館「短編小説 避暑の友/江見水蔭」を500円で購入する…これで残りは900円。通りをスイスイ足取り軽く南に下り、今日は妙に古い文庫の多い「神田書房」(2012/02/16参照)で角川文庫「銃器店にて/中井英夫」籾山書店「春泥研究會句抄」(小村雪岱装幀!)を100円で購入する…これで残り800円。最後に『神保町交差点』を経由して『神田古書センタービル』前の「みわ書房」外売り(2013/01/18参照)で、新太陽社「連續探偵小説 詩と暗號/木々高太郎」(初版)を840円で購入する…40円オーバーだが、まぁいいか。
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今日の嬉しい収穫二冊。そして「避暑の友」には、東京の作家陣が神奈川の片瀬にある江見水蔭宅を訪れ、大騒ぎする顛末が綴られた一遍があるのだが、なんとその時の記念写真がグラビアに掲載されているのだ!
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左上から江見水蔭・巌谷小波、二列目が左から泉鏡花・石橋思案・小栗風葉、最前列が左から柳川春葉・尾崎紅葉・広津柳浪となっている。一部メンバーも参加する、もはや仮装大会の『怪談百物語』ダイジェストが、愉快愉快のどひゃっほうである。
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2016年12月09日

12/9色々フライングした後にみなさまのお越しを心よりお待ちしております。

明日の古本市のために大量に作った古本束を、盛林堂・小野氏に引き取りに来てもらい、台車に山と積んで百メートルほど移動の後に車にドサドサ放り込み、西荻窪『銀盛会館』に搬入する。すでに岡崎氏と盛林堂の分は準備万端整っている。なので私も早く荷を下ろして棚にガンガン並べて行かなければいけないのだが、身体が言うことを聞かずに、涎をジュルリと垂らしそうになりながら、フライング品定め。うううう〜ん、欲しい本がたくさんある…盛林堂さんは思ったより文学寄りだが、恐ろしい本が恐ろしい安値で…あっ、でも奥にスゴいミステリ本たちが…それにしても、棚の上にズラッと並んだ岡崎氏の描き下ろし原画イラストが壮観!大瀧詠一が欲しいぞ!などと役得ずくで、最初に思いっきり楽しんでしまう。だが途中でさすがに心を入れ替え、古本束の紐をジョキリジョキリと切り離し、棚に家から離脱して来た古本をダカンダカンと並べて行く。…ふむ、なかなか悪くないんじゃないかと、心の中で自画自賛。そして奥の上段に署名本をコーナーを作り、やった、完成!…と言いたいところだが、やっぱりちょっとだけ本が足りないじゃないか!かなり大量に用意したつもりだったのに、結局こうなってしまったか。明日少し補充することにして、後は再び二人の本を見続ける。すると嬉しいことに小野氏が、「欲しい本があったら、場合によっては先に売ってもいいよ。たいていはダブってる本だから、また補充すればいい」と宣う。いよっ!さすが在庫豊富な古本屋っ!と大喜びして即座に二冊を選ぶと「両方ともダブり本だから大丈夫」とのフライング買いお墨付きをいただく。再びの役得である。筑摩書房「小さな町/小山清」(カバー痛みで蔵印アリ)今日の問題社「天明大捕物/國枝史郎」(函ナシ)を計2000円で購入する。そして岡崎氏とともに会場に所用で顔を出した原書房の編集者さんから、岡崎氏の新刊「気がついたらいつも本ばかり読んでいた」を献本していただいたので(実は拙著「古本屋ツアー・イン・ジャパン&それから」と同じ担当編集者さんなのである)、すかさず氏に署名をお願いしてしまう。本は何処から読んでも良い感じで、そしてどのページにも確実に、真面目な・C調な・哲学的な・怒り心頭な・ニヒルな・素敵な・詩的な・大人な・子供な・精神的貴族な・低俗な・高尚な・茶目な・短気な・暢気な・愉快な・愚かな・立派な岡崎氏が顔を出しているので、まさにこれはバラエティブックの面目躍如!というわけでみなさま、明日は色々ひっくるめて楽しむ心持ちで、ぜひとも西荻窪にお出でください。よろしくお願いいたします!
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2016年12月08日

12/8今年最後の「たけうま会」!

大好きな古本屋さんと、ただお酒をのんべんだらりと呑む会「たけうま会」(2016/10/18&07/22&05/10参照)に参加するため、横浜に急行する。今日のメインゲストは、下北沢「ほん吉」(2008/06/01参照)修業時代を経て、ひょんなことから「なぎさ書房」(2016/01/10参照)の跡地を引き継ぐことになった、神奈川のホープ「馬燈書房」さん(2016/04/23参照)。開店当日にツアーした時より、だいぶお店の様子が変わっているはずなので、ちょっと早めに現地入りして、古本屋さんをたどりつつ、会合前に偵察しておこうと、まずはすでに夜の帳に包まれた『馬車道駅』地上に顔を出す。そして『県立歴史博物館』横の「誠文堂書店」(2010年02月28日参照)の階段を上がり、二階外棚を反応の良過ぎる自動ドアがひたすら開閉してしまうのに閉口しながら、一冊選んで帳場へ向かう。角川文庫「狂熱のデュエット/河野典生」を100円で購入すると、なんと店番をしていたのは、超ド級のミステリ本コレクター・石井女王様(喜国雅彦氏の本棚探偵シリーズ参照)であった。待ち合わせ時間までそれほどないので、早くお店を出なければ行けないのだが、ついつい古本屋話やミステリ本話に盛大に花を咲かせてしまう。そんな今日の女王様の名言は「このお店はミステリ本がないから、物欲が湧かないので、心穏やかにのんびり働ける」でした。意外な出会いを喜びつつも、最後に女王様の口から出た「「活刻堂」(2009年10月12日参照)が最近開いてないんだけど、もしかして…」の言葉に驚き、早速『馬車道』を駆け抜けて『イセザキモール』に突入し、暗い小道に入り込んで「活刻堂」前。ふぅ、良かった。ちゃんと営業中じゃないか。そのまま店内古書棚に耽溺してしまい、皇國青年教育協會「あすのすまゐ/山田守」(モダニズム建築の大家による戦時中の住宅研究本。個人的にどひゃっほうである)私家版「放火団/ハロルド・ディアデン」(1930年前後にイングランドで暗躍した放火団事件の自費出版的訳本。元本は1934年イギリスで出版)を計1500円で購入したところで、「馬燈書房」まで足を延ばしたら遅刻が必至となることが判明したので、そのまま待ち合わせ場所の『日ノ出町駅』に向かう。改札前に集まったのは、たけうまさん、雲雀洞さん、そして馬燈さんである。すぐさま近くの焼き鳥屋に腰を据え、楽しく愉快だがドロドロもしている、古本屋業界話に耳を傾ける。それにしてもやはりスゴいのは、いきなり伊勢佐木町の二十坪のお店を、二十代の若さで引き継いだ馬燈さんである。最初は新宿、もしくは町田辺りにお店を開こうと考えていたらしいのだが、ある日組合で働いていると、「なぎさ書房」さんがお店を閉めることになり、棚も全部壊して原状復帰してしまうという話を聞き付け、すぐさま休みを貰ってお店に駆け付け(なぎささんにはそれまで、一度も行ったことはなかったそうである)、そこで商売を始めることを電光石火で決心したのである。それからすでに八ヶ月が経過。実はただ闇雲に借りたわけではなく、お店を始めると決めた時から、あの程度の広さは必要だったと考えるほどの、堅実経営派。市では本を買いまくり、街や人と濃密に交わる実店舗営業の酸いも甘いも早々に味わいつつも、商売はまずは順調とのこと。非常に喜ばしいことである。そんな話を聞くと、やはり改めて開店時より進化した、お店を見に行かなければという思いに駆られてしまう。よし、年内にどうにかして再ツアーしに行きますと約束し、濃いめのハイボールにしたたか酔っ払って、京浜急行各駅停車で帰路に着く。
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左から雲雀洞さん、たけうまさん、馬燈さん。今年、たくさんの古本屋さんとお話しする機会をあたえてくれたたけうまさんに多謝!来年も良き「たけうま会」をよろしくお願いいたします。
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2016年12月07日

12/7部屋に古本屋の光景が出現する。

今日は古本屋にも行かずに、仕事をしながら、昨日からの古本市用準備の続き。午後にギリギリギリギリ本を縛り上げて二〜三十冊の束を十本ほど作り上げ、他に署名本や薄手の本を詰め込んだ大型バッグをひとつ。さらにはトークでの抽選プレゼント用ささやか物品を三つ…これで搬出準備が完了したわけであるが、実際に会場に運び込むのは明後日なのである。さて、それまでこれらの大物を何処に置いておくべきか…。結局部屋に薄くグイグイ積上げると、まるで古本屋さんの通路の如き光景が、我が家の中に出現してしまった。横積み本タワーとは違う緊縛な趣きが、きっとそう感じさせているのだろう。それにしてもこの束々が、かなりの量と重量なのは明白であるが、各部屋から古本が減った気配がまったく感じられないのは、いったいどうしたことであろうか。自分では、まだまだそこまで多くはないと常に思っているのが、やはり間違いの元で、各所の本の山を日常の景色とし、恐ろしいほどの量の本を、屋内に内臓していることから目を逸らしている結果が招く、だらしない悪魔のような重大な錯覚に、常に騙されているに違いない。もうこうなったら、毎月一回くらい、同規模の古本市を開いてみるか。そうすれば少しは目に見えて、古本山が削れて行くのでは……いや、そうなったらそうなったで、毎日恐ろしい量の古本を買い込むことになりそうな予感が…あぁっ!俺はいったいどうすればっ!懊悩していたその時、「だから本棚買いなよ」という北原尚彦氏の突っ込みが、耳の奥に微かに聞こえて来た…。
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