2016年07月16日

7/16「青空書房」の色濃い面影

六月に訪れた時はパワフルに聡明に永遠に続くように営業中だった「青空書房」(2016/06/08参照)。だが、店主坂本健一氏が、古本屋人生を全うされたことにより、店舗も自ずと閉店となってしまった。つい先日の大阪で、弔意を胸に抱きながらお店の跡地を訪ねてみることにした。

『天満橋5交差点』。南側を見ると、裏路地の入口に立看板は見当たらず、角のハンコ屋さんの壁に貼りまくられていた「青空書房」道案内もすべて取り払われている。一抹の寂しさを感じながら、路地に足を踏み入れると、元店舗兼住居の扉も、ぴっちりと閉じられてしまっている。さらに募る寂しさと、あっけなさ。だが、扉が開いている時には気付かなかった、異様な物が視界に入る。路地を奥へと進む。こんな物があったとは……営業時は開けっ放しだった扉裏の死角、窓下壁面に設置されていたのは、商店街旧店舗に架けられていた、大きな軒看板であった。この小さな路地には不釣り合いな、また位置も低過ぎるメタリックな店名看板。『青』の字が少し欠けてはいるが、わざわざここまで移動したのは、ここに必ず架けなければならない物だったからだろう。ここが、古本屋さんであることの、証しだったのだろう。窓の向こうの部屋に見える、まだ残る本の列を見て、ぼんやりそんなことを考える…。
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昨日は夜行バスでその大阪から東京に戻り、午後遅くに西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、一週間以上放置しなければならなかった「フォニャルフ」棚に、関西のでの収穫もちょいと含めて補充する。そして本日午後七時から神保町「@ワンダー」二階に於いて、「盛林堂」小野氏のトークのお相手を務めさせていただきます。お時間とご興味ある方は、ぜひとも夜の神保町へおいで下さい。古本屋や盛林堂ミステリアス文庫やミステリについて、ピーチクパーチクお話すると思います。ついでに関西での収穫も、ちょっと公開鑑定してもらうか…。

■7月16日(土)
【連続講座 古本屋的!! 第3回「出版する古本屋」】
出演:盛林堂書房 小野純一
古本屋業の傍ら始め、早4年目を迎えた同人誌作り。なぜ、本を「売る」だけではなく、「作る」のか。本作りの魅力と大変さ、古本屋業との意外な関係を、今までの古本屋としての経験を踏まえ、お話しします。
会場:ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
時間:19:00〜20:30
会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,500円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀(jimbo20seiki@gmail.com)までメールにてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c
残席ありなので、飛び込みでも恐らく大丈夫です!
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2016年04月08日

4/8ラベルで出会う未知の古本屋さん

昨日の初日に行くつもりだったのだが、強い雨に怖じ気づいて断念。そこですっかり雨の上がった二日目に、ダイヤの乱れた西武線で北西上し、「小江戸川越 ペペ古本まつり」(2015/11/19参照)に駆け付ける。午前十時を過ぎたばかりなのに、ペペ広場に並ぶ古本テントには、すでにかなりの人が群がっている。よしやるぞ!と、右側からテントの下の古本群を、上に下にぐるり360度に眺め回しながら、奥へ進んで行く。今回のお気に入りは、ワゴンの上に棚を置かず、平面的に本を広げた「ねこや」である。古めの絵本やビジュアルムック・妙な単行本に目を惹き付けられる。おっ、「血と薔薇」の2号3号が各1000円か…。そんな風に楽しみながらも、意外に素早く三十分ほどですべてを見て回る。講談社の絵本ゴールド版「セロひきのゴーシュ」新潮文庫「帽子蒐集狂殺人事件/ディクスン・カー」秋元文庫「冒険推理 ビーナスの首/菅原有一」春陽堂「法醫學教室/正木不如丘」(函ナシ)角川文庫「剃刀日記/石川桂郎」を計1620円で購入する。市は4/18(月)まで。

「剃刀日記」はすでに創元文庫版を持っているのだが、100円と安かったので買うことにした。だがあえて買った理由は他にもある。それは二枚の、古い古書店ラベルが貼り付いたままだったからである。一枚は表見返しの三宿「江口書店」(2010/03/29参照)。もう一枚は最終ページの「押鐘書店」なる、見たことも聞いたことも無いお店のもの。住所は三軒茶屋になっているので、古い古本屋地図帳で調べてみると、『三軒茶屋交差点』南寄りの246沿いに、「古書オシカネ」というお店があるのを発見した。恐らくこれが同店であろう。取扱分野は『学術書・文学・資料・諸雑誌』とある。「江口書店」と「古書オシカネ」で売られていたということは、この本は長らく三軒茶屋の住人に買われ、三軒茶屋で売られ、その周辺を彷徨っていたのではないだろうか。それが今、埼玉で買われて(浦和「利根川書店」(2010/08/07参照)ワゴンより購入)、東京に帰還。いずれまた、まるで故郷に戻すかのように、三茶の何処かに売りに行こうか…。

そして古書店ラベルと言えばもうひとつ。相変わらず性懲りもなく、日々「ヤフオク」内も彷徨っているのだが(2015/11/10参照。それにしても最近落とせないことが多くなった気が…)、最近落札した本にも見慣れぬ古書店ラベルが貼り付いたままであった。本は日曜世界社「賀川豊彦童話集 馬の天國」(昭和八年初版。背に虫食い跡があるが元パラ付き。これはラッキーなことにライバルが誰も現れず、無事に1000円で落札)である。後見返しの元パラ巻込み部分に、正方形に近い緑のラベルがうっすら隠れている。パラフィンを優しく捲ると、店名は「ミツビシ」。コピーは『學生諸君の店』とあり、場所は『京都同志社前』と書かれている。同志社前ということは、『烏丸通』沿いの「澤田書店」(2015/12/25参照)近くにあったのだろう。だが、こちらはいくら調べてみても、何の情報も浮かび上がらない。同じ京都の「そろばんや」(2016/03/30参照)は、あんなにも簡単にたくさんの情報が掴めたというのに。相当に古いお店で、遥か昔に商売を辞めてしまったからだろうか。よし、次京都に行った時に、「善行堂」さん(2012/01/16参照)に質問してみよう。

それにしても、本をまだ読み切らずに、小さな小さな古本遺跡のような三枚の古書店ラベルだけで、これだけ楽しめるのだ。もう本の元は取ったようなもだが、さらにいったいどんな店構えで、棚造りや店主まで妄想し始めると、なんだかいてもたってもいられなくなってくる。……ちょっと散歩がてらフラフラ足を延ばし、古本屋さんに古本でも見に行くとするか…。
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2015年01月05日

1/5金町と亀有を彷徨い電子の古本屋遺跡に虚無を見る

早起きして、去年から持ち越しの仕事に決着をつける。ふぅ、間に合ったと肩の荷を下ろした気分で、午後になって外出する。ではさらに気楽に、気にかかる古本屋さんを見に行くことに決め、頭の中の古本屋データドラムをグルグル回す。そうだ、久々に金町の「書肆久遠」(2009/12/04参照)に行って棚に溺れ、同時に近隣のお店の消息を確かめておこうと、千代田線から常磐線。

まずは北口に出て「三宅書店」(2009/04/06参照)を目指してみるが、すでにお店は煙のように消え失せていた。かなり長い間見に来なかったからなと、パトロールしなかったのを軽く反省し、そのまま以前と変わらぬ泰然自若な「五一書房」(2009/04/06参照)に入る。
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店主とお客さんの『船橋の方で古本市があった…』などの地元情報に、ついつい耳をそばだててしまいながら、鶴書房「新奇術/千田松緑」を600円で購入。続いて裏通りの「文福」(2011/02/09参照)が健在なのも喜び、凍るような寒さの店内を眺め回して、ちくま文庫「文豪怪談傑作選 柳田國男集/東雅夫編」を430円で購入。
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そのままさらに東に足を延ばし「一草洞」(2013/04/12参照)との再開も目論むが、あえなくシャッターに弾かれてしまう。続いて線路下を潜って南側に出て、本日のメイベントである「書肆久遠」に向かうが、こちらでは残念ながらカーテンに弾かれてしまう…定休日か。一月四日から営業する旨の貼紙が出されたままなので、しっかりと営業していることだけは確認。…よし、こうなったら隣りの亀有の古本屋さん事情も探って行くか。

結果からいえば、以前ツアーした亀有のお店は壊滅状態であった。北口のビルディング一階にあった「古書アーバンブックス」(2009/06/09参照)はカフェと化しており、「ブックセンター亀有」は消滅。学校前のクリーニング屋兼業の「ブックセンター亀兎」のあった場所にも、なにやら事務所が入ってしまっていた。ふぅとため息をつきながら、道の先に視線を飛ばすと、ビルの壁から電光掲示板が飛び出し、ピロピロと文字を映し出し流し出している。どうやらこの通りの『亀四商店会』の宣伝掲示板らしく、次々と通りに並ぶお店がスピーディーに宣伝されて行く。そこに突然「ブックセンター亀兎」もピロピロと出現!『年中無休』『名作 古本』『クリーニング』『カメトウ』(マニトウみたいだ…)などの言葉が、俺の心を惑わせる!
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お店、あるのか?移転しただけなのか?そう掲示板に思わされ、通りと脇道を行ったり来たりするが、店舗の姿は影も形もない…これはどうやら、無くなったお店の広告も、そのまま流しっ放しにしているのであろう。現役感満点の電子の世界の古本屋遺跡に、砂上の楼閣のような虚無を感じ取る…。

最後に駅北口の古本も扱う特殊新刊書店「栄眞堂書店」(2013/12/10参照)にヨロヨロとたどり着き、至文堂「人身売買 海外出稼ぎ女/森克己」旺文社中一文庫「わんぱく中学生/原作トーマ」を計1200円で購入し、本日の彷徨にどうにか決着をつける。
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2013年12月29日

12/29古本屋遺跡納め「あんなにはっきりと!」

トマソン社『BOOK5』連載の取材を、今年のうちにどうにか済ませておこうと、夕暮れの南千住駅。しかしまずは、確かめておかねばならぶことがあるのだ!西口に出て、奇怪に複雑な歩道橋で線路の上を越えて、『泪橋交差点』に向かうように南へ。ひとつ目の信号を東に曲がり、二股の直線道の南寄りを選択し、さらに真東へ…しばらく寂しく歩けば、左手にモルタル造りの、アパートのような小さな工場のような倉庫のような、奥行きの深い二階建てが見えて来る、これは、2010年におよそ四十四年の歴史に幕を下ろし、閉館してしまった元「東部古書会館」である!…建物がそのまま残っている。そして一階軒上には、看板文字の痕跡さえも、しっかりと浮かび上がっているではないか!『東・部・古・書・会・館』。
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今はもう、どこかの会社が作業場か何かとして使っているようだが、かつてはこの中で、様々な古本が店や人の手に渡って行ったかと思うと、誠に感慨深いものがある。近年には『泪橋古書展』と言う良い名の古書市が開かれていたようだが、残念なことに私はその存在すら知らず、一度もここに足を運ぶことはなかった…。かようにこの会館には縁の薄い私が、何故生意気にも感慨を深くしてしまったのかと言うと、それはひとえに、東京古書籍商業協同組合東部支部「東部支部二十周年記念誌 下町古本屋の生活と歴史」を熟読していたおかげなのである!台東・荒川・足立・葛飾・墨田・江戸川・江東の古本屋さんが書いた、会館にまつわる話と越し方の話や、素敵な支部員アンケートを読み込むことにより、妄想と幻視を可能としたのである!…でも、でも、やっぱりここで一度は、古本を買ってみたかった…。
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取材をどうにか終えて駅に戻る途中に「大島書房」(2009/03/18参照)に立ち寄り、青心社「映画人烈伝/関本郁夫」を1500円で購入する。すると女性店主に「映画の面白いところをた仕入れておきますので、またお立ち寄りください」とニッコリ。自信溢れるPRがとても清々しい一瞬。
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2013年10月13日

10/13ざらつく降灰の中で古本屋遺跡を

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色々諦め切れずに、鹿児島市街の古本屋さんをダメ元で巡ってみるが、やはり無情の日曜定休シャッターアウトばかり。「つばめ文庫」「あづさ書店」「糸書店」「廣文館」「庄内書店」…。突如噴煙を上げ始めた桜島に背を向け、火山灰に巻かれながら街を彷徨い続ける。あぁ、「満遊書店 鹿児島店」は、名も知らぬリサイクルショップに取って代わられていた…。灰混じりになりながら鹿児島本線を跨いで、街の西側に抜け出る。そこには、寂れてシャッターに鎧われた、一本の通りがあった。寂しく独り道を歩いて行くと、その半ばに一軒の廃墟が建っていた。壁は一部崩れ、サッシのガラスは無惨に割れている。しかしその中を注意深く透かし見ると、本の入っていない本棚が、三面の壁を埋め尽くしていた!ここがやはり「竹中貸本中古卸店」だったと言うわけか…売本コーナーもあった、子供のための貸本店さん。この様子では、すでに廃業されたのだろう。身を低くして、割れたガラスの隙間から、元店内を覗き込むと、本棚がハッキリと薄暗い店内に浮かび上がった。何も並ばぬ面陳棚は、意外なほどキレイで、ついさっきまで本を並べていたかのような雰囲気を纏っている。しかし実際は、現実は、肉を削ぎ落とした骸骨のようで、もう二度と、本をその身に収めることはないのである。口の中にいつの間にか入った火山灰を、ペッと吐き出し帰り始めると、頭上には想像以上に巨大な噴煙。巨大生物のように、街の上を覆いながら、蠢き流れて行く。見慣れぬ鹿児島の日常に、思わずたじろぐ。

※またもやひと月お休みしましたが、WEBゴーイングマガジンで連載中の『均一台三段目三番目の古本 第十七冊』が更新となりました。今回は、神保町「一誠堂書店」にて、相応しくないジャック・ヒギンズを購入。神保町とヒギンズに興味のある方は、ぜひとも読んでみて下さい!

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2013年07月20日

7/20夏の準備と古本屋遺跡

昨日、あるイベントに行くために買った『週末パス』が、一週間日時を間違えていたことに気付く。慌てて変更しに、JR『みどりの窓口』へ。ついでに今日から使える夏の『青春18きっぷ』も購入することにし、もはや心は遠い地の古本屋さんにバタバタと飛翔…今年の夏も、お尻が鉄板になりそうだ…。まだ見ぬ“古本屋ドリーム”に溺れたまま、午前十時から開いている「都丸書店 支店」(2010/09/21参照)の壁棚を覗き込み、中国の古い家の写真ハガキ集「OLD HOUSES」青土社「ユリイカ12月臨時増刊号 総特集・永野護」誠文堂新光社「月刊天文ガイド臨時増刊 写真で見る月面観測」を計800円で購入する。今日は自由に動けるのは、残念ながらここまで。と言うわけで、少し溜まった、古本屋遺跡レポートをお届けします。

●「まだある」
高円寺の『ルック商店街』に2011年3月まであった「勝文堂書店」(2010/01/18&2011/03/12参照)。お店はとうにその姿を消しているが、何と阿佐ヶ谷・河北総合病院近くの裏路地には、お店の広告看板が未だに残っているのだ。しかし、その母体であるコインランドリーは板で封鎖され、もはや解体寸前!ここに古本屋さんの広告看板があるのも不思議だが、それも今や風前の灯火!果たしていつまで遺跡として存在出来ることやら…。
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●「まだいる」
つくばに爽やかな風を巻き起こす新店「PEOPLE」(2013/06/14参照)を訪ねた折、同じ建物に入っていた古本屋の先輩「筑波学園文庫」が食堂になってしまっているのを目撃する。が、しかし!その二階の手摺には、「筑波学園文庫」の青い店名看板が、しっかりと残っているのであった。…これは、二階の人はどう思っているのだろうか?単なる撤去し忘れ…ハッ!もしや、二階だけはまだ「筑波学園文庫」と言うことなのだろうか?だとしたら、これは遺跡ではなく立派な看板と言うことか。良く見ると、窓には『買入』の文字も残されている。やはりこれは、まだいる!
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2013年07月02日

7/2眠らない街に眠っていた古本屋遺跡!

午前中から「古本ナイアガラ」(2011/12/10参照)最下段の「フォニャルフ」補充入替に挑む。通常の一列モードに戻り、今月もテーマ無しでガシガシ補充しまくる心づもり。湘南探偵倶楽部「白魔/ロージヤー・スカーレツト」「ポプラ社 少年探偵冒険小説 書影集」(共に新刊)を計2800円でひゃっほうと購入し、さらに調子に乗って欲しくて欲しくてヨダレを垂らしまくっていた、月の輪書林「古書目録10 美的浮浪者・竹中労」を4000円で購入する。よ〜し、読むぞぉ〜!

一旦家に戻り、夕方になって買い物のために新宿へ出る。すっかり用を済ませてから、雑踏の流れに乗って東口へ。『スカウト通り』で、今日は何だかお店が小さめな「路上古本販売」(2011/06/16参照)を冷やかしてから、すでに怪しい人々が集い路上に蠢く歌舞伎町。この街にはかつて「一草堂書店(明治物絶版書、稀書の蒐集)」なるお店があったことは、2013/06/26に記したが、私はこのお店については古い「古書店地図帖」などで知るのみで、見たことも入ったこともないのであった。しかしある日、記事を読んだ「古書現世」(2009/04/03参照)向井氏より連絡があり、お店のあった場所には、未だにお店の名を冠したビルが残っていることを教えられる。お店の痕跡が少しでも残り、取り戻せない時を越えてそれと接触出来るならば、意地でも訪ねなければならない!今は亡き『コマ劇場』に向かって進み、一本手前の脇道を東へ。ちょっと歩いただけなのに、「DVDあるよ」「ソープどう?」「遊んでって」などと、矢継ぎ早に囁きが身に降り掛かって来る。弁財天のある小さな『歌舞伎町公園』前を通り過ぎれば『さくら通り』。さらに北に進み、左手の毒々しい雑居ビル群を注視して行く。すると、地下にマッサージ店、一階にドレスショップ、二・三階に炉端焼き屋の入った、白い小さな雑居ビル…ビルの名は、地下への入口にも上階への入口にも、何処にも書かれていない。しかし、壁面右側に突き出す、ビル案内看板を上へたどって行くと、あぁ!その一番上に『一草堂ビル』とあり、確かに古本屋さんの名が燦然と残っているのであった!
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決して関わることの出来なかった過去のお店に、今ここで人生がかろうじてクロス!欲望渦巻く歌舞伎町で、ひとり古本屋への欲望に身を焦がし、感動する。ここの二階では、かつて市が開かれたこともあったとのこと…こんな場所で…。感動ついでに、雑居ビル群のヤバ目な裏通りに入り込み、『一草堂ビル』の裏側も堪能する。遥か遠くの、ビルに切り取られた通りと空の光が、心を一瞬だけ、古本屋の裏手に佇ませてくれた…。
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2013年03月11日

3/11古本屋遺跡 一草園

昼から、見ないフリをしていて放置し過ぎた、確定申告の書類作成に挑む。紛失した書類を捜索したり、複雑怪奇な計算をしたり、文字を書き過ぎて指が痛くなったりして、長時間たっぷりと格闘。どうにか形にすることが出来たので、自転車で外出…その途端に後輪がパンクしてしまった…何てこった。近所の自転車屋までゴロゴロと運んで見てもらうと、パンクではなくタイヤが寿命であることを告げられる。都内の古本屋さん目指して、たくさん走ったもんなぁ…仕方無いか。タイヤの交換をお願いすると、四十五分後に取りに来てくれとのことである。閉じこもりっ放しだった家に戻るのもなんなので、取りあえずは何処かでヒマを潰すとするか。と言うことで、当然の如く足が向いたのは古本屋さんである。これぞヒマ潰し古本屋ツアー!まずはテクテクお馴染み「銀星舎」(2008/10/19参照)。店頭で二冊を見出して、さらに店内両翼をじっくりと。神奈川県県民部広報課「文学の中の神奈川」中公文庫「テキサスから来た男/アーネス・ヘイコックス」「青い絵具の匂い/中野淳」講談社江戸川乱歩文庫「うつし世は夢」を100円引きの計800円で購入。いつもありがとうございます。続いて裏通りをクネクネ進んで「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)。店頭に釜ヶ崎関連資料を発見し、その勢いのまま店内に突入。釜ヶ崎差別と闘う連絡会「釜ヶ崎からの現場報告」春陽文庫「怪奇・伝奇時代小説選集(3)新怪談集/田中貢太郎」角川文庫「日本女地図/殿山泰司」を計850円で購入。さらに駅に近付いて、かなり久々の「今井書店」(2009/08/31参照)。店内のピカピカの文庫棚から、双葉文庫「本棚探偵の回想/喜国雅彦」中公文庫「六本指のゴルトベルク/青柳いづみこ」を計550円で購入。ちょっとしたヒマ潰しのはずだったのに、あっという間に九冊の本がバッグの中に収まってしまった…あぁ、これでまた、家の容積が減少してしまう…。

最後に阿佐ヶ谷駅北口、東側の高架沿い商店街に残っている、古本屋遺跡と化している「川村書店」を見に行ってみる。お店を閉めてずいぶんと経つが、シャッターの下りた店頭は、まだ往時の姿をしっかり留めている。このお店に入ったことは、残念ながら無い。入るチャンスは何度もあったのに、何故入らなかったのだろうか?そう改めて考えてみると、実はその答えはお店の裏手にあったのかもしれない。脇道を高架に向かって行くと、今は緑が力強く野性的に生い茂る、秩序を失った庭が目に入る。かつてこの裏庭は、私設ミニ植物園『一草園』であった。古本屋店主が様々な草木を植え、一般公開していたのである。その手作りパラダイス感は独特なものがあり、それが当時さほど古本屋に興味を持っていない私を、躊躇させた原因だったのではないだろうか。荒れるに任せた庭を目にすると、今だったら大喜びでツアーするのに…と時々派手に後悔しているのである。
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そんな風に古本と古本屋に溺れていたら、あっという間に四十五分。よし、自転車を取りに行くとするか。
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2013年03月05日

3/5古本屋遺跡 スナイパー

先日の甲府行で、初期の目的を無事に果たして市街に戻る途中に、実はもうひとつの行程が挟まっていた。それは甲府駅から南に向かう身延線の甲斐住吉駅の南、およそ一キロにあるかもしれない古本屋さん「ゴルゴ」の存在を、この目で確かめるためである。ちょっと遠いのだが、この電動アシスト自転車ならヘトヘトになる前にたどり着けるはずだ!そう確信して、高い山々に囲まれた甲府盆地を、清々しく走り続ける。少し迷ったが、そこにあるはずの古本屋さんへの脇道を見付け、大通りから田舎の住宅街に進入して行く。すると行く手の二階建て建物に、堂々たる『古本』の看板を発見する!しかもひとつは大通りから目が届くよう、屋根の上に設置されている!ドキンと心臓が跳ね上がった。ぬぉっ、あるじゃないか!ちゃんとお店があるじゃないか!とスピードを上げてお店に近付く…むぅ?様子が何かおかしいぞ…。『古本』の看板は前述した通り屋根の上にひとつ、二階側壁に店名入りがひとつ…しかし、建物正面の軒看板には、残念ながら『デイサービス』と言う文字が!店舗部分にも、古本の気配は微塵も感じられない。古本屋さんは、とっくに無くなっていたのか。それにしても、目立ち過ぎる看板を残したままなのは、どう言うわけなのか?元のお店の名は『ゴルゴ』…超一流スナイパーのコードネーム…その由来はキリストが磔刑にされた『ゴルゴダの丘』からである。デイサービスを生業とする施設には、いささか不釣り合いな不吉な名なのである。古本屋遺跡を発見出来たのは嬉しいが、早めに撤去した方が良いのではないかと、いらぬお世話を焼きたくなってしまった。あぁ、それでもやはり、古本が並んでいるところは、見てみたかったなぁ…。しばらく建物の前で、在りし日の姿を想像したりして、一休み。再び力を溜め込んから、ペダルをグッと踏み込んでその場を離れる。さらば、超一流スナイパーの名を持つ、古本屋さんよ!
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2012年11月27日

11/27古本屋遺跡 荒川を越えて募集中と工事中。

東西線に乗って、隅田川の下を通り、荒川の上を通って、ニョキニョキと高層マンションが建つ江戸川区。一応近場で本命と予備のお店を設定出来ていたので、安心して歩んで行くと、そこで待っていたのは……。

●「募集中」
西葛西駅北側の『葛西橋通り』沿いにある。通りの対岸から見つけた時、すでにシャッターは閉まり貼紙がされているので、即座に『ああ、やってないんだな…』と判断。歩道橋を渡って近付いてみると、歩道際にはまだ店名鮮やかな看板が立ち、二度と点かない電光掲示板付き。その奥のお店の軒看板には、店名がうっすらと残っている。そしてシャッターには『テナント募集中』の貼紙が…。
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●「工事中」
東西線で二駅移動して南行徳。『東京湾側』に出て、江戸川区を中心に展開するマイナーチェーンの古本屋さんを目指す。遠目にお店の姿を捉えると、店前にはトラックが停まり、中から『ダガダガダガデデデデデ!』と豪快な破砕音が響いて来る。…店頭が削岩機で解体真っ最中。店内も工事中で、お店の名残はプラ日除け看板のみ…状況から見てこれも風前の灯火か…。もはや改装と言うレベルではないので、写真を一枚撮って別れの挨拶とする。
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このまま帰るのはシャクなので、今日も「新宿西口古本まつり」に顔を出し、昨日買おうかどうか迷いに迷いまくった、小山書店「敵中横断三百里/山中峯太郎」(表紙から挿画まで、梁川剛一のイラストワークにドキドキ)を500円で購入。そのまま中野に向かい、『ブロードウェイ』四階の「まんだらけ記憶・大予言」(2008/08/28参照)の105均棚で、朝日ソノラマ文庫「怪獣大陸/今日泊亜蘭」を発見し、『まんだらけがこれを何故105均に!』といぶかしみつつ遠慮なく購入させていただく。
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二冊並べると何とも勇ましくインパクト大…私は何を買っているのか…。
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2012年07月05日

7/5古本屋遺跡をドラQで補填

お昼に『古本ナイアガラ』の入替に向かう。今回のテーマは『裸だワッショイ!裸本だワッショイ!』の裸本祭!カバーや箱が無いだけで不遇な目に遭う、剥き出しのブルブル震えている本たちを、一瞬でもスターダムに!の思いを込めて、最下段にギュッとセッティング!…ぬぬっ、意外にも重厚な棚になってしまった…。
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背だけではどんな本か判り難いので、久々に目録擬きも作成!四十部ほど用意してあるので、新しく誕生した奇祭“裸本祭”の記念にどうぞ。お祭の記念に、大家の「盛林堂書房」(2012/01/07参照)で角川書店「愛についてのデッサン/野呂邦暢」を大胆購入する。

一旦家に戻って些事を済ませ、午後三時に出立。高崎線で埼玉県を北上し、熊谷から県の北端をなぞるようにして本庄駅着。駅の北一キロ強のお店に着くと、看板は健在だが、すでに営業している気配は感じられない…念のため、シャッター脇に近付き電気メーターを注視してみる…ぴくりとも動かない…やはり…。
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以前から気になっていたお店ではあったのだが、これで去就がはっきりしたわけだ。重い足を引き摺り、駅へペタペタと戻って行く。雪駄で歩き詰めているので、足裏は火が点いたように熱くなっている。この暑さのためか、街中の様々な場所で、犬や猫が死体のように五体を投げ出している。やがて午後六時を迎え、街頭スピーカーから巨大な音量で『夕焼け小焼け』が流れ出す。見知らぬ土地で、寂しい曲を聴かされ、猛然と子供のように寂しさが湧き上がる。歩を早めて、足裏に熱を帯びながらペタペタ…古本に出会えなかった腹いせに、駅近くのお菓子屋『こまつや』で『ドラQ』と言う名の、キュウリ入りどら焼きを買い込む。パッケージに河童とキュウリの絵が描かれた、まったく食欲の湧かぬ一品である。味は、硬めの衣に甘じょっぱいみそあん。そしてその中に緑色のキュウリが…うぅ、何だか甘いお通しを食べているような…ポリ…明日こそはちゃんと古本屋に…ポリポリ…たどり着いて…ポリ…。
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2012年06月07日

6/7古本屋遺跡・ガード横の幻影

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代々木駅前の交差点から、西に坂を下って行く。下り続け、たくさんの人々と行き交い、やがて道は平坦になる。行手には道路を跨ぐ、低い小田急線のガード…皆足早に駅へと急ぎ、ガードの傍らに建つ、古本屋には無関心だ。「白紙堂書店」。調べてみると、1967年出版の「古書店地図帖」では、現在と同じ場所ですでに営業しているのが確認出来、それは2001年出版「全国古本屋地図」でも同様である。私がこのお店の存在を知ったのは、2008年のツアー初期であるが、お店が開いているのを一度も見たことは無い。と言うことは、2001年〜2008年の間に、お店を閉めてしまったのだろうか?このお店にシャッターは無く、ガラス戸の向こうを、小さな青い花柄のカーテンが隠している状態。端には、棚の一部がチラリと見えたりしている…これがまた、いつか開くことがあるんじゃないかと、淡い幻想を抱かせるのだ。だから、小田急線の下りに乗っている時は、いつも左側のドアに張り付き、一瞬の車窓に目を凝らしている。万が一開いていたなら、次の駅で即座に途中下車し、ダッシュで駆け付けるために…。
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2011年10月05日

10/5磯子の近接古本屋遺跡『痕跡と幻影』

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根岸湾の形をなぞる『国道16号』を、磯子駅から北に向かって600mほど進むと『磯子旧道入口交差点』に到る。ここに二種の古本屋遺跡の姿。ひとつめの「池田書店」は交差点手前の16号沿い、時間の停まった古い商店建築群の中に沈んでいる。閉ざされっ放しの錆びたブリキの雨戸。その表面は丹念に育てられているのか、繁茂したほおずきに覆われてしまっている。小さな店頭が、在りし日の古本屋稼業の様子を伝えることはもはや無さそうだ。唯一の痕跡は、軒のモルタル壁に染み残る、看板文字だけ…。目を凝らして、その古代壁画のような白と灰色の模様を解読すると、『池 田 書 店』の四文字が浮かび上がった。2005年あたりまでは確実に営業されていたようだが、今はその役目を終え、静かにほおずきを育てている…。そして二つめは、交差点を北に越えると左手に賑やかに現れる闇市の名残り『浜マーケット』。この中にあった「磯子文庫」と言う名のお店である。光文社文庫「ミステリファンのための古書店ガイド/野村宏平」によると、元は貸本屋さんで昭和二十〜四十年代の小説や漫画が、かつては並んでいたと言う。こんな出会った瞬間に気絶してもおかしくない状況で、2007年まで現存していた。しかし!2007年4月にマーケットが火災に見舞われ、その後は仮店舗で営業されていたようだったのが、いつかお店を畳んでしまったのである。よってこの場には痕跡すら残っていないのだ。しかし、賑やかな入口から、狭く少し坂になって左右に角度を付ける、そのマーケット内を遡上して行くと、『あぁ、この先にはまだ古本屋さんがあるのではないか…』と心の中の幻影に繰り返し幻惑される。およそ200mほどのアーケードを抜けると、今度は『私は隙間にあったお店を見逃しているのではないだろうか…』の疑惑に捉われ逆戻り…。永遠に古本屋さんを求めて行きつ戻りつ…しかしいくら歩いても、その幻にたどり着くことは出来ない。今その痕跡を確認出来るのは、『浜マーケット』公式HP内の『店舗紹介』で、『2007年4月頃』のマップにある「磯子文庫/折紙」の文字。そこをクリックして、歩いてたどり着けなかった、在りし日の店内と店主の姿を、モニターに浮かび上げることだけなのである…。
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2010年07月06日

7/6夏の古本屋遺跡

歩いた果てに見つけたモノと、ふとした偶然に気付いたモノをひとつずつ。その労力は違えども、私の中では遺跡として等価値なのである…。


book_land.jpg●「あぶり出し」
東武伊勢崎線新町駅の一キロほど東方にある。暑い日差しに炙られ、街道を驀進するトラックにホコリを浴びせられ、ベンチに半裸で座る地元老人に不審の目を向けられながら、お店があったであろう場所に立つ。もぬけの殻であった。不動産会社の人がシャッターを開け、空気を入れ替えていた。『ブックランド草加』と言う名とは不釣合いな小ぶりな店舗で、リサイクル古書店の残り香がフワリ。潔くあきらめて踵を返すと、店前の駐車場横に複合看板を発見。その一部のほぼ白の部分に近付くと、薄〜くあぶり出しのような店名が残っていた。『本の国』は果たして何処へ姿を消したのか…この儚い極薄な遺跡も、強い紫外線に焼かれ、いずれスゥ〜っと消える運命か…。


cocuty.jpg●「コクティ」
夜に飲み屋から出て徒歩で家路に着く。高円寺駅北口、東寄りのタクシー乗り場に差し掛かった時、柵に取り付けられた町内地図を発見。古本屋ツアーにとってこの手の地図は重要な情報源!容易に時間を飛び越えられたりするので、見ることがすでにクセになっているのだ。ほろ酔いでグッと覗き込むと、『あづま通り』を含んだ地図であることが判明。…もしや!?と思い視線を通り沿いに滑らせて行く。おっ!先日『中通り』沿いに移転した「コクテイル」の名がしっかりと残っている!これも立派な遺跡であるな!とひとりごち、しゃがみ込んでカメラを向けた瞬間に、店名がおかしいことに気付く。そこには建物を象った枠線の中に「古本酒場コクティ」の文字……“ミキティ”みたいになっちゃってます!文字数が入りきらなかったのだろうか?その割にはちょっと余裕があるし、“イ”は完全に“ィ”だ。…ウフフフ、面白い。とタクシー乗り場でタクシーに乗り込むことなく、しゃがみながら地図を連写する男がひとり…あぁ、いい夜だ。

古本屋ツアーの副産物である哀しい遺跡類だが、その輝きはいぶし銀で、やはり捨て難い魅力を持っている…と言うか、もはや打ち捨てられた状態なので、さらに捨てることなど到底出来ません!当ブログをご覧の皆様も、もし遺跡を見つけることがあれば、記録と保全に務めていただくよう、お願いいたします。
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2010年04月28日

4/28春の古本屋遺跡フェアー

また少し遺跡が貯まったので、まとめてご報告。


f_iseki_suzuran.jpg●「黒猫」
川崎の武蔵白石、『国道一号』を越えた住宅街の中にある。見つけた時は『開いている!』と思ったが、近付いてよく見てみると、すでにお店ではない。看板・日除けは健在だが、お店の前面が壁で埋められている…。かつてはガラス戸の入口だったのだろうが、その枠にピッタリはまるカタチで、新たな壁が設置されているのだ。出入口は無く窓のみの、まさに壁なのである。さながら古本屋を隠すために、壁を埋めてしまったかのよう!おぉ、これではまるでポーの「黒猫」!壁の向こうからドサドサと古本の落ちる音が…。元のお店は「すずらん古書店」。側壁の店名看板は、住宅街にあるまじきドデカさです。


f_iseki_aikidou.jpg●「将棋愛」
足立区の大師前にある。去年の夏に見付けた物件であるが、再訪してみたら変わらぬ姿で佇んでいた。麗しい名のお店「愛書房」が、ただ閉店しているだけのように見えるが、シャッターにグッと近寄ると、『棋道館西新井道場』の文字が!恐らく現在は将棋道場なのであろう。一度開いているところを見てみたいのだが、その夢は未だ叶わず。頭の中では。ガラス窓の向こうで熱心な棋士たちが、盤上で静かに愛ある棋道を突き進んでいるのだが…。



f_iseki_soubundo.jpg●「気配ゼロ」
十条から東に下ると東十条。すでに先ほど見付けた古本屋は、日除けがボロボロで営業している気配はゼロ。もう一軒を求めて夜の街をウロつくが、影も形も見当たらない。住所の場所を行ったり来たりして、万策尽きて天を仰ぐと…そこに『本』の文字!雑居ビルの壁看板の頂点である。『本』とあるからには、何処かで本を商っていなければならない!元のビルをじっくり眺め、郵便受も見てみるが、古本屋さんの気配はゼロ…「宋文堂書店」は忍者のように気配を絶っている…私の能力ではもはや追跡出来ず。ただポカンと口を開け、暗闇で夜空にうっすら浮かぶ『本』を眺めている。


f_iseki_furinkazan.jpg●「武田信玄」
千葉の妙典にある物件。元の名、「風林火山」に相応しく勇ましい幟が林立する店頭だが、現在はマンガ喫茶と化している。お店の名残りは軒に残る看板のみで、そのほとんどが白く塗り潰されているが、左端に『本』の文字が雄々しく残っている。十中八九リサイクル古書店だったのであろう。
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2010年03月16日

3/15古本屋遺跡・車窓に流れた幻


books-sanwa.jpg先日、府中から国分寺に向かうバスの中で発見した古本屋さん、「books SANWA」(2010/03/09参照)。その日はシャッターが閉まっていたので、要再訪物件となっていた。そして再び府中を訪れた日、またまたバスに乗りながら、ついでにお店をチェック。すると…あっ!開いてる!しかも本棚らしきものが見えたぞっ!焦って降車ボタンを連打し、『東元町』で途中下車。カバンからカメラを取り出しながら、『やった、やったぞ!』『どんなお店なんだ?』『これはスゴイぞ』『もしや掘り出し物が』などと瞬時に考えながら、喜びと功名心が胸の中を飛び回る。狭過ぎる歩道で車をやり過ごし、車道に出て写真撮影開始…ってあ〜、古本屋じゃないっ!扉から覗く室内は何だか事務所っぽい…先ほど見えた本棚も、普通の書類が並ぶのみ…良く見るとパソコンスクールであった。あぁ〜っと肩を落とし、古本屋の名が残る日除けを、未練がましく見上げる始末…と言うようなことがあり、新たな古本屋遺跡発見の運びとなりました。
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2010年03月02日

3/2古本屋遺跡・繁華街の盲点


bunkido_dogenzaka.jpgある日の夜、渋谷円山町での仕事を終えて、疲れた足を引きずりながら『百軒店商店街』を抜けて行く。渋谷には仕事と古本屋以外では、もはや足を踏み入れなくなった。そんな街の道を歩いていると、商店街入口の前に道玄坂が現れる。いつもはすぐに左へ曲がってしまうのだが、この時はお腹がすいているせいか、向かいにあるはずのうどん屋を探し、正面を見据えていた。すると、道路の対岸に闇のように暗い廃墟…あれ?なんでだ?あの看板建築群は『マークシティ』の建設とともに取り壊されたはず……え〜っ!?残ってる!まだ残ってる!焦りながら左右を確認し、道路を飛鳥のように横断。三階部分にマンサール屋根が連続する、古めかしい看板建築群。往時の面影を充分に残しているが、壁面にはブルーシート、建物上階には剥落防止のグリーンネット、そしてシャッターは汚れまくっている。お店が次々と撤退したのは2000年前後。勝手に消滅していたものと記憶を捏造していたが、よもや現存しているとはっ!それならば何か残っているはずだ!と左から四軒目の店頭にダッシュ。ここは、現在は池ノ上に移転した「文紀堂書店」(2008/09/02参照)があった場所なのだ。な、何か痕跡は?まずは上階を見てみると、スクラッチタイルの壁面や窓ガラスには何も残っていない。右側に看板を取り外した跡がある。青とオレンジのだんだら日除けにも無し。シャッターにも無し。軒の看板を見ると、無残にも白い塗料で塗り潰されている…が、あった!右端に!そこには塗り残された『買入』と電話番号の一部。そして青い『全古書連加盟店』のシール!お店の名はないが、ここが確かに古本屋さんであったことを証明してくれる、小さな薄い遺跡である。あぁ、果たしていつまでこの姿を留めていてくれるのだろうか…。この喧しい渋谷の街に、残っていたエアポケット(今まで気付かなかった私がいけないのだが)。出来ればこのままひっそりと佇んでいて欲しいものである。なお、この看板建築群の現役時の雄姿は、三省堂選書「看板建築/藤森照信」の見開き写真で確認可能。もちろん古本がぎっしりと並んだ「文紀堂」も、バッチリ写り込んでいる。
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2010年02月04日

2/4東京最奥部古本屋

2009/12/06へのコメント&その後の情報提供者とのやり取りを基に、奥多摩方面へ向かうことを決意。目指すは『日向和田駅』近くにあると言う、恐らくは東京最奥部の古本屋「はらしょう古書店」である!『土間部分に本棚を置いた狭いお店で、古い本も多く表の均一文庫にも珍しいものが混ざっていた』とのこと…何と胸躍る説明であろうか!googleストリートビューでお店の姿を確認した時は、何だかゲームの隠しダンジョンを見つけたように興奮!しかし五年前に訪れた時はシャッターを閉ざしていたそうで、無論閉店している可能性も…しかしそんなことで怯んではいられない。もし何らかの痕跡が残っていれば、「古本屋遺跡」に認定出来るはずだっ!と言うわけで、青梅線は山間を走っている。『青梅駅』からは四両の電車に乗り換え、ドアの開閉も乗客自らがボタンを押して乗降する。駅は片側ホームのみの無人駅で、目の前には小さく山道のようになった『青梅街道』。そこを北へ向かい、すぐに西に現れる『神代橋』を渡る。眼下では多摩川が、深い谷底を『ゾゾゾ』と音を立て流れている。橋を渡り街を進むと『吉野街道』に行き当たるので、そこを北へ。もうすぐにお店の場所である。急ぎ足に歩道を進む……が、お店は無かった。古本屋は無かった。ただ普通の住宅が建っているだけであった。あぁ…やっぱり間に合わなかったのか…今回はとにかく遅かった、大遅刻であった。その住宅の周りと近所をウロウロキョロキョロするが、何の痕跡も発見出来ない…谷間を吹き抜ける風が、ことさら肌を凍てつかせる。…私は一体ここで何をしているのか…いや、まぁ確認しただけでも良しとしなければ…。トボトボと来た道を戻って行くと、『梅郷四丁目交差点』の向こうに“へそまんじゅう”と言う看板が見えている。せめて古本が買えなかった腹いせに、まんじゅうを買って行こうと思い立ち、寂しい売店で八ヶ入り(帰宅後に食すと超美味なのでビックリ!)を購う。再び交差点に戻り信号待ち。その時何気なくまんじゅう屋の方を振り返ると、金網に取り付けられたボロい手描きの町内地図が目に入った。もしや!と思い近付いてみると、酷いシミから逃れたギリギリの部分に「はらしょう古書店」の名を発見!ああぁぁぁぁっ!あったんだ!ちゃんとあったんだ!と汚らしい地図の前で、小さな感動に打ち震えてしまう。これが現在、東京の西・最奥部にある、脆く儚い古本屋遺跡なのです。

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2010年01月11日

1/11古本屋遺跡・生きた化石編

先日板橋で出会った物件を紹介するために、予想以上に早い第二回目。あまりにもインパクトある都市の異次元…以下三店をご紹介。


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●「跡形も無く…」
根津にあった木造商店の貸本屋「なかよし文庫」である。その凛とした姿は、時代を高く飛び越え過ぎていた。私はこのお店が営業しているのを見た事が無い。扉には貸本屋を閉店し、在庫を放出して古本屋として再スタートすると宣言した、立派なプレート掲げられていた。しかしこの宣言は中々実現することなく、時は坦々と過ぎて行った…。そして去年の9月に訪れてみると、そこは杭に囲まれた更地と化していた。ガラスのカケラがキラキラと輝く…古本屋として開店したところをぜひとも見てみたかった…そして古本を買いたかった!お店の跡地が、それでも昭和の風景に見えるのは、まだお店の魔力がかろうじて効力を発揮しているのだろうか…。お疲れさまでした。


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●「柳丁木書」
市谷柳町の交差点近くに佇むその姿は、異様な迫力に満ちている。肌色の壁が風雨のために、斑に黒く変色。一階店舗のシャッターも雨戸も閉ざされたままである。かろうじて生活の気配があるような…。そして軒下にあるボロボロの欠落した看板文字…これが無ければ、この建物が書店と言うことには到底気付かなかっただろう。元は「柳町 鈴木書店」だったのが「柳丁 木書」と成り果てた、造作の美しい木製の看板文字。“鈴”“店”の文字の運命や如何に?ある日突然店頭に落ちていて、無事に回収されたことを願いたい。


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●「塵芥箱」
板橋の大山駅から板橋区役所前駅に向かう途中、『中山道』手前の氷川神社前で偶然発見。その崩壊寸前の建物が、在りし日の古書店の姿であることに気付き、激しい衝撃を覚えた。平屋の側面を見ると、剥がれ落ちる下見板、垂れ下がる雨樋、歪んだ根太、傾いたガラス戸…そして壁際に懐かしいコンクリ製の塵芥箱…随分と人の手から離れた雰囲気なのである。表に回るとピッチリと閉じられた木枠のガラス戸。中もカーテンが閉め切られている。そして板ガラスに、古風な「末広書房」の文字。かつては金色に光輝いていたことを伺わせる。それにしても何と旧世代の古本屋の姿を、見事に留めていることかっ!外の塵芥箱も含め、「東京たてもの園」に移築する価値ありなのは間違いない!

「なかよし」文庫以外は、ネット検索にしっかり引っ掛かるので、この建物の内部で、今もしっかり営業中なのかもしれない。過去の古本屋地図では「鈴木書房」は“即売会が中心”、「末広書房」は“閉まっていることが多い。倉庫形式”などと書かれている。今回の物件は、完全なる店舗の姿なので“生きた化石”ということにしておこう。それにしても「東京たてもの園」さん、そろそろ園内に古本屋(もしくは本屋)を移築しませんか?不景気なので予算は苦しいと思いますが、建物は姿を消して行く一方です!
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2010年01月01日

1/1古本屋遺跡

古本屋さんを巡っていると、自然と数多くの閉店したお店にも出会うことになる。辛く切なくガックリと肩を落とす瞬間…。しかしそんな中でも、時たま面白い光景を目にすることがある。お店はすっかり跡形も無いのに、その名残りが輝きを放っているのだ!徒労と悲哀が、わずかな喜びとおかしさに変化する!古本は手に入らないが、この“古本屋遺跡”と呼べるモノたちは、幾許かの満足感をもたらせてくれるのである……。


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●「本 買 い ま す」
東急東横線大倉山駅近くの、『大倉山交差点』脇のお店に残る日除けの文字である。『店名じゃなくキャッチコピーだから消さなくてもいいか…』そんな投げやりな思いが感じ取れる光景である。元は「大倉山古書店」、今は洋服屋さん。どうか本が持ち込まれませんように。


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●「自転車置場?」
以前も紹介した、東武亀戸線東あずま駅前の物件。辺りをグルグルと徘徊しても「雄文堂書店」を発見することは出来なかった。それにしてもこれは何のために!?あまりにも立派な造りである。もしやこの下に平台を置いていたとか…。


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●「上を見よ」
池袋駅西口の池袋仲通り商店会にひっそりと佇む。この商店会共通のお店の標示板である。もちろんお店はすでに無く、ここに存在していたことを、頭上高くで教えてくれているのが何だかいじらしい。思わず「正林堂書店」に電話したくなってしまうアピール力がある。







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●「夜に輝く」
阿佐ヶ谷駅の北、中杉通り沿いのビルに残る看板。夜の方が輝きを放ち、存在感がいや増す。お店は今は電子部品の会社となっている。ところでこの「石田書房」は神保町の綿華通り沿いに移転したのだが、そこも今はもぬけの殻…一体何処に?




別にこれらの物件を残して欲しいと言う訳ではない。と言うか限りなく見過ごされがちな透明な存在で、やはりいずれは消滅するモノたち…。しかし目にしてしまったからには、この中途半端な状態を記録に残したくなってしまった。数はあまり多くないだろうが、これからも発見次第ご報告して行くつもりである。
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