2022年06月22日

6/22不思議な「くノ一忍法帖」。

午前はわりと涼しかったのに、不快指数が明らかに上がり蒸し暑くなった午後二時過ぎに、梅ヶ丘に流れ着く。商店街で「ツヅキ堂書店 梅ヶ丘店」(2008/10/08参照)の古本遺跡を発見した後、まるで温い水の中を泳ぐような感じで、右側に『羽根木公園』の緑陰を感じながら北上して、東松原に出る。
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「古書瀧堂」(2014/05/01参照)にたどり着き、先客の老婦人とともに店頭棚に熱い視線を注ぐ。すると驚くことにその熱心な姿勢がすぐに報われ、TOTO出版「銭湯へ行こう/町田忍編・著」(二刷)英宝社「月曜日か火曜日・フラッシュ/ヴァージニア・ウルフ」を掘り当てる。
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さらに店内では、ちょっと不思議な講談社「くノ一忍法帖/山田風太郎」(初版)を見付け、計710円で購入する。この単行本「くノ一忍法帖」は何が不思議かと言うと、後見返しにまるで連名血判状のように、読んだ人の名が書き連ねてあるのだが、これが何と名立たる財界の大物ばかりなのである。鮎川義介(日産コンツェルン創始者)・西園寺不二男(銀行家)・石坂泰三(財界総理)・瀬木博親(博報堂社長)……いわゆるハイソサエティで、山田風太郎の忍法帖をを回し読み(しかも「くノ一忍法帖」とは!)…実に恐ろしきは、風太郎忍法帖ブームと言ったところか。それにしても古本屋さんには面白い古本が潜んでいるものだ。
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2021年09月24日

9/24チャンスは後一回!

午前九時半、ゲラを発送した勢いを駆り、中央線→山手線→都電荒川線と乗り継ぎ、午前十時半に梶原駅下車。道路を渡って反対側停留所ホームに直結した古本屋さん、「梶原書店」(2008/08/31参照)を見に行く。今月末に閉店を予定しており、現在半額セール中なのである…だが、開いていない。シャッターが下りてしまっている。実は今月にここを偵察に来るのは二度目で、その時は夕方だったのだが、見事シャッターアウトの憂き目に遭い、入店叶わなかったのだ。ここは古本以外にも、煙草や新聞や週刊誌も扱っており、駅のスタンド的役割も果たしているので、この時間なら開いていると思ったのだが、当てが外れてしまった。九月が終わるまで後六日…まだもう一回ぐらいはチャレンジして、どうにかお店の最後を見届けたいものである。しばらく駅前の商店街などをウロウロして時間を潰すが、まったく開く気配はなし。潰しついでに、もう随分前から開かなくなっていた「ろここ書店」(2008/08/31参照)にも足を向けると、店舗はたくさんの蔦に絡まれ、古本屋遺跡と化し現存していたが、フェンスが立てられ完全封鎖状態なってしまっていた。シャッター前に野放図に生い茂る夏草が寂しい。
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仕方なく再び都電に乗り込み、帰ることにする。だが往きとはルートを換え、終点ひとつ前の面影橋まで行き、そこからは神田川沿いに歩いて高田馬場へ。ついでに頼りになる「ブックオフ高田馬場北店」(2012/11/15参照)に寄り道し、ロマン・ブックス「七姫伝奇 若さま侍捕物手帖/城昌幸」を550円で購入し(ここの古書コーナーに出て来る「若さま侍」は全部俺が買っているのではないだろうか…)、昼間は空いている西武新宿線急行に乗って帰宅する。昼食後、郵便を出すためにちょっと外に出るが、いつものように「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)にまで足を延ばし、講談社 傑作長編全集14「女王蜂/横溝正史」を530円で購入する。
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2021年06月29日

6/29神保町の極小古本屋遺跡。

雨が上がったのを見極め、電車に乗って御茶ノ水へ。そう言えば代々木駅を通過する時、もうあの廃墟のような『代々木会館』(2009/11/03&2015/10/27「東豊書店」参照)は跡形も無くなり、新しいビルが当然のように建っていた。あのエンジェルビルに会うためには、TVドラマ『傷だらけの天使』かアニメ映画『天気の子』を観るしかなくなってしまったのだ。街から、印象深いランドマークが消えるのは、なんとも切ないものである。そんなことが頭を過りつつ、やがて掘り下げられた崖の緑と対照的な、油粘土のような深緑色の増水した神田川を下に見ながら御茶ノ水駅着。暗いまだまだ普請中の駅舎から明るく白い外に出て、坂を下って神保町に入り込んで行く。午前十時半の神保町は、さっきまで降っていた雨のために、店頭は雨仕様である。そのためか開店の動きが鈍くなっているようで、まだ閉まっているお店が断然多い。ブラブラと、開いているお店や開店作業中のお店を伝って行く。すると「澤村書店 東京古書店」の店頭棚に、五種類ほどのジュニア系のホームズ本とホームズ関連書が、ドバドバ並べられて行くのに出くわす。興味を惹かれたので並べるそばから吟味を施し、ハヤカワポケミス455「シャーロック・ホームズの冒険/アーサー・コナン・ドイル」を440円で購入する。そして『靖国通り』から『すずらん通り』に入り、移転した「永森書店(2012/11/28参照)を確認しておこうとしていると、ビルの間に作られたコイン駐車場にあった、ブリキ板の街の地図がふと目に留まる。古本屋さんは界隈に余りに多いためか表記されていないが、唯一「文省堂」だけが書かれているのを確認する。この位置にあった「文省堂」は、大衆的で大きなお店だったはず。何とも小さな“古本屋遺跡”を発見してしまった。そう思いながら、『東京堂書店』の文庫売り上げランキングで、ちくま文庫「愛についてのデッサン 野呂邦暢作品集」が今週は二位なのを目撃し、『すずらん通り』の西側出口に至ると、「荒魂書店」(2011/03/31参照)の入る、メタリック・ペンシルビル一階に、新しい「永森書店」の姿があった。まだ開いていないので、改めて見に来ることにしよう。
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その後は『白山通り』に入り、「日本書房」(2011/08/24参照)にて春陽堂「菊池寛戯曲全集」を500円で購入して帰宅する。
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2020年01月31日

1/31「修文書房」がいつの間にか古本屋遺跡に…。

めんどくさい用事で新宿の家電量販店へ。四半時で片を付け、表に出ればそこは新宿西口高層ビル街の足元である。そうだ、久しぶりに「修文書房」(2010/06/08参照)の様子を見に行くか、と『小滝橋通り』を北上して行く。大ガードを通り過ぎると、通りの両端にあるのは、ほとんどが飲食店となり、どこも良い匂いを路上に漂わせ、道行く人のお腹をグウグウ鳴らしている。やがて『税務署通り』も通り過ぎ、段々と大久保が近付いて来る。『北新宿一丁目交差点』前の脇道にフイと入り込むと、おっ「修文書房」の看板を発見する…だが、様子がおかしい。慌てて近付くと、元は古本棚が並んでいた店内は、別の会社に為り変わり、大小さまざまなダンボールを積み重ねているのであった…あぁ、これはもう古本屋さんじゃない。果たして移転したのか閉店したのかは不明だが、この様子だと随分前にここから撤退してしまったようだ(私が最後に訪れたのは、恐らく2016/01/27である)。ただ、看板だけが、古本屋遺跡として残されているのみなのである。新宿近辺に、唯一残っていた正統派の古本屋さんだったのに…。
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古本屋さんの消滅を確認してしまった心の寂しさを埋めるために、俄然古本が買いたくなってしまった。というわけで急ぎ足で新大久保駅に向かい、池袋まで西武池袋線に乗り込んで保谷駅へ。あるかなきかの歩道を車に気をつけて伝いながら「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)へ。そして店頭棚に目を凝らし、古書を掴み取って行く。南江堂書店「學校内救急處置/葛西明」毎日新聞社「ダンヒルたばこ紳士/アルフレッド・H・ダンヒル」ポイントライン「吉野繁樹作品集」東宝株式会社 東宝シナリオ選集「浮雲」を計440円で購入する。表紙周りが傷んでいるが、成瀬巳喜男監督の「浮雲」シナリオが嬉しい。表紙絵の女性像が、主演の高峰秀子というより、なんだか原節子に見えなくもない。
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2019年03月19日

3/19視線を上げたら古本屋遺跡。

本格的な春が背後霊のように後に立っていると実感出来る、三月後半の午後二時。国立の西南に流れ着いたので、『富士見通り』を伝って駅へと向かう。今日は火曜だから「飛葉堂」(2018/10/24参照)は定休日か…そんなことを考えながら、『音大付属高校』前に差し掛かる。駅は、まだまだ遠いなぁと、バス停に並ぶ人を避けながら歩を進め、何気なく対岸の建物群に視線を向けると、背中にビリッと電流が奔ってしまった。『書房』?『古書』?足を停め、丸まっていた背を伸ばし、忙しなく行き交う車越しに、向かいの店舗兼住宅を凝視する。視線の先にあるのは、『古書買入 国立書房』と書かれた、年季の入った日除けテントである。ずいぶん前に閉店したお店なので、無論シャッターはガッチリと下りているのだ。だが、まさか、こんな風に未だにお店が残っていたとは、思ってもみなかった。ここは何度も通っているはずだが、こんな立派な“古本屋遺跡”があったとは、まったく気付いていなかった。いつも足元ばかり見て歩いているからだろうか…視線を上げると、こんな良いこともあるんだな…。一度も入ったことはないし、現役時代も見たことはない、縁の薄いお店であるが、色褪せた日除けが、まだ鮮やかに緑色だった往時の姿をボンヤリと想像してみる。通路は二本で、奥に番台がある、真面目寄りなお店であろうか(後で「21世紀版 古本屋地図」を引いてみると、『社会科学書、文学などを扱う』とあった)。そんな突然の出会いに、ついつい人目を気にせず、ニヤニヤしてしまいながら、お店の姿を撮影する。当然古本は買えていないが、心地良い満足感をたっぷりと覚え、駅まで軽やかに歩く。「みちくさ書店」(2009/05/06参照)でハヤカワポケミス「黄色い部屋/ガストン・ルルウ 日影丈吉訳」を100円で購入し、車内で日影の解説から読み始めた後、本編を繙いて行く。
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2017年12月01日

12/1「山口書店」仮店舗と辰野九紫とオルメス!

午前中に阿佐ヶ谷駅頭で受け渡しを済ませ、そのまま混み合う中央線で御茶ノ水へ出る。冷たい空気を切り裂いて、駿河台下から神保町パトロールを始めると、珍しく「慶文堂書店」(2012/01/14参照)店頭箱に引っ掛かり、弘學社「カムチャッカ探検記/ステン・ベルグマン」を900円で購入する。『神保町交差点』まで出て『白山通り』に入り「アムール」(2011/08/12参照)店頭…あっ!歩道に沿った右の壁際が、DVD棚ではなく二本のスチール棚になり、文庫・新書・雑誌が並んでいるではないか!
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新書の量は変わらずだが、これで店頭文庫本の量は、今までの二倍くらいになっているはずだ。棚を増やしたということは、「アムール」にとって、とても重要な収入源なのだな。などと勝手に推測して、創元推理文庫「創元推理文庫解説目録 付・座談会〈海外ミステリ・ベスト12〉」角川文庫「城塞(ザ・キープ)上下/F・ポール・ウィルソン」を計200円で購入する。そのまま北上を続けていると、すっかり解体されて更地になった「山口書店」跡地に(2017/10/07参照)、オレンジ色の派手な幟が立てられている。そこには『仮店舗営業中』と大書され、地図も描かれていた。敷地真裏の裏路地で営業しているようなので、小さなブロックをグルッと回り込んで見に行くと、まるで以前からあったような仮店舗が存在していた。表と同じ幟が立ち、『やってます』と書かれた小さな立て札も置かれている。
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中を通りから覗き込むと、入口近くに棚が密集し、赤本・参考書・問題集がピカピカの背を並べている。とにかく廃業ではなくて、よかったよかった。いずれ表通りにお店を新築し、改めてそこに収まるのであろう。当然何も買えずにお店を離れ、再び『靖国通り』へと戻って西進して行くと、しんがりの「山本書店」(2012/04/25参照)前で塩山芳明氏に遭遇。同じ場所で狩りをする者としての情報交換を、一瞬の交錯で交わす。

その後は九段下まで歩き、東西線に乗り込み早稲田まで移動。西に坂を上がって下って、一本裏の『地蔵通り』に入って「古書現世」(2009/04/04参照)へ。以前私好みの黒い本が入ったと聞かされていたので、ようやく拝見に参上した次第である。通路状店内の壁棚にワクワクしながら視線を投げ掛けて行くと、あるある!本当だ!水島爾保布・石黒敬七・徳川夢声・大町桂月・江見水蔭・柳家金語樓・榎本健一・松崎天民…あぁ。いいなぁいいなぁ〜…ややっ!そこに並ぶは大好物の辰野九紫じゃないか!しかも三冊!胸躍らせて手に取ると、どれも昭和十五年前後の出版だが、比較的安値なので思い切って三冊一気に引き受けることにする。その勢いを借りるようにして、近くに並んでいた薄いオルメスも手にしてしまう!あぁ、散財だ。奥の帳場で向井氏に、先月の「みちくさ市」打ち上げで勃発した血の惨劇について聞かされたり、来年の「みちくさ市」のあれこれを教えてもらったりしながら、長隆舎書店「ひとり愉し」代々木書房「万引一代女」大白書房「かみなり教育」以上すべて辰野九紫、芸術社 推理選書3「名探偵オルメス/カミ」を計7000円で購入する。う〜む、たくさん買ったのに、まだ欲しい本がたくさん棚に並んでいるのは、とても狂おしい状況である…う〜ん…。
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2017年04月16日

4/16交差点際で「三茶書房」の実体的な幻を見る。

素晴らしき春の日曜に漂着したのは、神泉と池尻大橋の間に挟まれた『氷川神社』。近くの小さな高台の小公園で、高低差の激しい谷底の景色を慈しんだ後、その谷に階段を下って入り込み、246号を伝って「山陽書店」(2014/04/09参照)をまずは目指すが、ややっ!オレンジ色の日除けの下のお店は、残念ながらシャッターを下ろしてお休みであった。踵を返して『三宿交差点』を南に渡り「江口書店」(2010/03/29参照)に助けを求めると、小さな百均台をしっかり表に出し、頼もしく営業中であった。
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サッシ扉を開けて中に滑り込むと、意外なことに数人のお客さんが店内通路を行き来しているではないか!…このお店にはちょくちょく寄らせてもらっているが、こんな賑やかな光景は初めて見るぞ。他のお客の邪魔にならぬよう、譲り合い気をつかい合い、主に右側通路で発掘作業を進める。講談社文庫「シャーロック・ホームズの冒険/コナン・ドイル 鮎川信夫訳」創元推理文庫「ポオ小説全集4/エドガー・アラン・ポオ」こども世界第五巻第六号附録こども世界文庫(5)「りゃく画と工作の本」(昭和二十五年刊の全32ページA5サイズ小冊子。そのすべてがチープでプリティ)を計300円で購入する。

そんな300円で得られた小さな幸福を胸に抱えて、交差点を東北に曲がり込んだ時、何度も通っている道なのだが、今初めて心と記憶に引っ掛かるものが、前のめりの足をピタッと止める。振り返ると、交差点際にひっそりと建つ、古い三階建てのビルが目に留まる。今まで何気なく見過ごしていただけの建物である。営業感や生活感は遥か昔に遠退いた雰囲気で、タイル張りの壁には剥落防止のネットが掛けられている…私はこの建物に、いったい何を感じたというのだろうか。元は店舗らしいのだが…と気にかけながら、引き込まれるように横道に入り込み、建物の側面も観察していく…するとあぁっ!陶製の小さな表札らしきものが奥の壁に埋め込まれているのだが、そこに書かれた名に『岩森亀一』とあるではないか!ということは、荻窪「岩森書店」(2008/08/23参照)創業者のお兄さんであり、「三茶書房」(2010/10/26参照)の創業者!つまりここは、三軒茶屋時代の「三茶書房」ということになるのか。その表札だけに、かろうじて痕跡が残っているのだが、まさか元店舗が現存しているとは…。突然の奇妙な出会いに興奮しながら、しばらくお店のシャッター前に佇み、勝手に当時のお店の様子を夢想する。遅過ぎる出会いであったが、今日始めてこの偉大な古本屋遺跡に気付けたことを、ただただ嬉しく思ってしまう。
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2016年07月16日

7/16「青空書房」の色濃い面影

六月に訪れた時はパワフルに聡明に永遠に続くように営業中だった「青空書房」(2016/06/08参照)。だが、店主坂本健一氏が、古本屋人生を全うされたことにより、店舗も自ずと閉店となってしまった。つい先日の大阪で、弔意を胸に抱きながらお店の跡地を訪ねてみることにした。

『天満橋5交差点』。南側を見ると、裏路地の入口に立看板は見当たらず、角のハンコ屋さんの壁に貼りまくられていた「青空書房」道案内もすべて取り払われている。一抹の寂しさを感じながら、路地に足を踏み入れると、元店舗兼住居の扉も、ぴっちりと閉じられてしまっている。さらに募る寂しさと、あっけなさ。だが、扉が開いている時には気付かなかった、異様な物が視界に入る。路地を奥へと進む。こんな物があったとは……営業時は開けっ放しだった扉裏の死角、窓下壁面に設置されていたのは、商店街旧店舗に架けられていた、大きな軒看板であった。この小さな路地には不釣り合いな、また位置も低過ぎるメタリックな店名看板。『青』の字が少し欠けてはいるが、わざわざここまで移動したのは、ここに必ず架けなければならない物だったからだろう。ここが、古本屋さんであることの、証しだったのだろう。窓の向こうの部屋に見える、まだ残る本の列を見て、ぼんやりそんなことを考える…。
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昨日は夜行バスでその大阪から東京に戻り、午後遅くに西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、一週間以上放置しなければならなかった「フォニャルフ」棚に、関西のでの収穫もちょいと含めて補充する。そして本日午後七時から神保町「@ワンダー」二階に於いて、「盛林堂」小野氏のトークのお相手を務めさせていただきます。お時間とご興味ある方は、ぜひとも夜の神保町へおいで下さい。古本屋や盛林堂ミステリアス文庫やミステリについて、ピーチクパーチクお話すると思います。ついでに関西での収穫も、ちょっと公開鑑定してもらうか…。

■7月16日(土)
【連続講座 古本屋的!! 第3回「出版する古本屋」】
出演:盛林堂書房 小野純一
古本屋業の傍ら始め、早4年目を迎えた同人誌作り。なぜ、本を「売る」だけではなく、「作る」のか。本作りの魅力と大変さ、古本屋業との意外な関係を、今までの古本屋としての経験を踏まえ、お話しします。
会場:ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
時間:19:00〜20:30
会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,500円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀(jimbo20seiki@gmail.com)までメールにてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c
残席ありなので、飛び込みでも恐らく大丈夫です!
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2016年04月08日

4/8ラベルで出会う未知の古本屋さん

昨日の初日に行くつもりだったのだが、強い雨に怖じ気づいて断念。そこですっかり雨の上がった二日目に、ダイヤの乱れた西武線で北西上し、「小江戸川越 ペペ古本まつり」(2015/11/19参照)に駆け付ける。午前十時を過ぎたばかりなのに、ペペ広場に並ぶ古本テントには、すでにかなりの人が群がっている。よしやるぞ!と、右側からテントの下の古本群を、上に下にぐるり360度に眺め回しながら、奥へ進んで行く。今回のお気に入りは、ワゴンの上に棚を置かず、平面的に本を広げた「ねこや」である。古めの絵本やビジュアルムック・妙な単行本に目を惹き付けられる。おっ、「血と薔薇」の2号3号が各1000円か…。そんな風に楽しみながらも、意外に素早く三十分ほどですべてを見て回る。講談社の絵本ゴールド版「セロひきのゴーシュ」新潮文庫「帽子蒐集狂殺人事件/ディクスン・カー」秋元文庫「冒険推理 ビーナスの首/菅原有一」春陽堂「法醫學教室/正木不如丘」(函ナシ)角川文庫「剃刀日記/石川桂郎」を計1620円で購入する。市は4/18(月)まで。

「剃刀日記」はすでに創元文庫版を持っているのだが、100円と安かったので買うことにした。だがあえて買った理由は他にもある。それは二枚の、古い古書店ラベルが貼り付いたままだったからである。一枚は表見返しの三宿「江口書店」(2010/03/29参照)。もう一枚は最終ページの「押鐘書店」なる、見たことも聞いたことも無いお店のもの。住所は三軒茶屋になっているので、古い古本屋地図帳で調べてみると、『三軒茶屋交差点』南寄りの246沿いに、「古書オシカネ」というお店があるのを発見した。恐らくこれが同店であろう。取扱分野は『学術書・文学・資料・諸雑誌』とある。「江口書店」と「古書オシカネ」で売られていたということは、この本は長らく三軒茶屋の住人に買われ、三軒茶屋で売られ、その周辺を彷徨っていたのではないだろうか。それが今、埼玉で買われて(浦和「利根川書店」(2010/08/07参照)ワゴンより購入)、東京に帰還。いずれまた、まるで故郷に戻すかのように、三茶の何処かに売りに行こうか…。

そして古書店ラベルと言えばもうひとつ。相変わらず性懲りもなく、日々「ヤフオク」内も彷徨っているのだが(2015/11/10参照。それにしても最近落とせないことが多くなった気が…)、最近落札した本にも見慣れぬ古書店ラベルが貼り付いたままであった。本は日曜世界社「賀川豊彦童話集 馬の天國」(昭和八年初版。背に虫食い跡があるが元パラ付き。これはラッキーなことにライバルが誰も現れず、無事に1000円で落札)である。後見返しの元パラ巻込み部分に、正方形に近い緑のラベルがうっすら隠れている。パラフィンを優しく捲ると、店名は「ミツビシ」。コピーは『學生諸君の店』とあり、場所は『京都同志社前』と書かれている。同志社前ということは、『烏丸通』沿いの「澤田書店」(2015/12/25参照)近くにあったのだろう。だが、こちらはいくら調べてみても、何の情報も浮かび上がらない。同じ京都の「そろばんや」(2016/03/30参照)は、あんなにも簡単にたくさんの情報が掴めたというのに。相当に古いお店で、遥か昔に商売を辞めてしまったからだろうか。よし、次京都に行った時に、「善行堂」さん(2012/01/16参照)に質問してみよう。

それにしても、本をまだ読み切らずに、小さな小さな古本遺跡のような三枚の古書店ラベルだけで、これだけ楽しめるのだ。もう本の元は取ったようなもだが、さらにいったいどんな店構えで、棚造りや店主まで妄想し始めると、なんだかいてもたってもいられなくなってくる。……ちょっと散歩がてらフラフラ足を延ばし、古本屋さんに古本でも見に行くとするか…。
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2015年01月05日

1/5金町と亀有を彷徨い電子の古本屋遺跡に虚無を見る

早起きして、去年から持ち越しの仕事に決着をつける。ふぅ、間に合ったと肩の荷を下ろした気分で、午後になって外出する。ではさらに気楽に、気にかかる古本屋さんを見に行くことに決め、頭の中の古本屋データドラムをグルグル回す。そうだ、久々に金町の「書肆久遠」(2009/12/04参照)に行って棚に溺れ、同時に近隣のお店の消息を確かめておこうと、千代田線から常磐線。

まずは北口に出て「三宅書店」(2009/04/06参照)を目指してみるが、すでにお店は煙のように消え失せていた。かなり長い間見に来なかったからなと、パトロールしなかったのを軽く反省し、そのまま以前と変わらぬ泰然自若な「五一書房」(2009/04/06参照)に入る。
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店主とお客さんの『船橋の方で古本市があった…』などの地元情報に、ついつい耳をそばだててしまいながら、鶴書房「新奇術/千田松緑」を600円で購入。続いて裏通りの「文福」(2011/02/09参照)が健在なのも喜び、凍るような寒さの店内を眺め回して、ちくま文庫「文豪怪談傑作選 柳田國男集/東雅夫編」を430円で購入。
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そのままさらに東に足を延ばし「一草洞」(2013/04/12参照)との再開も目論むが、あえなくシャッターに弾かれてしまう。続いて線路下を潜って南側に出て、本日のメイベントである「書肆久遠」に向かうが、こちらでは残念ながらカーテンに弾かれてしまう…定休日か。一月四日から営業する旨の貼紙が出されたままなので、しっかりと営業していることだけは確認。…よし、こうなったら隣りの亀有の古本屋さん事情も探って行くか。

結果からいえば、以前ツアーした亀有のお店は壊滅状態であった。北口のビルディング一階にあった「古書アーバンブックス」(2009/06/09参照)はカフェと化しており、「ブックセンター亀有」は消滅。学校前のクリーニング屋兼業の「ブックセンター亀兎」のあった場所にも、なにやら事務所が入ってしまっていた。ふぅとため息をつきながら、道の先に視線を飛ばすと、ビルの壁から電光掲示板が飛び出し、ピロピロと文字を映し出し流し出している。どうやらこの通りの『亀四商店会』の宣伝掲示板らしく、次々と通りに並ぶお店がスピーディーに宣伝されて行く。そこに突然「ブックセンター亀兎」もピロピロと出現!『年中無休』『名作 古本』『クリーニング』『カメトウ』(マニトウみたいだ…)などの言葉が、俺の心を惑わせる!
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お店、あるのか?移転しただけなのか?そう掲示板に思わされ、通りと脇道を行ったり来たりするが、店舗の姿は影も形もない…これはどうやら、無くなったお店の広告も、そのまま流しっ放しにしているのであろう。現役感満点の電子の世界の古本屋遺跡に、砂上の楼閣のような虚無を感じ取る…。

最後に駅北口の古本も扱う特殊新刊書店「栄眞堂書店」(2013/12/10参照)にヨロヨロとたどり着き、至文堂「人身売買 海外出稼ぎ女/森克己」旺文社中一文庫「わんぱく中学生/原作トーマ」を計1200円で購入し、本日の彷徨にどうにか決着をつける。
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2013年12月29日

12/29古本屋遺跡納め「あんなにはっきりと!」

トマソン社『BOOK5』連載の取材を、今年のうちにどうにか済ませておこうと、夕暮れの南千住駅。しかしまずは、確かめておかねばならぶことがあるのだ!西口に出て、奇怪に複雑な歩道橋で線路の上を越えて、『泪橋交差点』に向かうように南へ。ひとつ目の信号を東に曲がり、二股の直線道の南寄りを選択し、さらに真東へ…しばらく寂しく歩けば、左手にモルタル造りの、アパートのような小さな工場のような倉庫のような、奥行きの深い二階建てが見えて来る、これは、2010年におよそ四十四年の歴史に幕を下ろし、閉館してしまった元「東部古書会館」である!…建物がそのまま残っている。そして一階軒上には、看板文字の痕跡さえも、しっかりと浮かび上がっているではないか!『東・部・古・書・会・館』。
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今はもう、どこかの会社が作業場か何かとして使っているようだが、かつてはこの中で、様々な古本が店や人の手に渡って行ったかと思うと、誠に感慨深いものがある。近年には『泪橋古書展』と言う良い名の古書市が開かれていたようだが、残念なことに私はその存在すら知らず、一度もここに足を運ぶことはなかった…。かようにこの会館には縁の薄い私が、何故生意気にも感慨を深くしてしまったのかと言うと、それはひとえに、東京古書籍商業協同組合東部支部「東部支部二十周年記念誌 下町古本屋の生活と歴史」を熟読していたおかげなのである!台東・荒川・足立・葛飾・墨田・江戸川・江東の古本屋さんが書いた、会館にまつわる話と越し方の話や、素敵な支部員アンケートを読み込むことにより、妄想と幻視を可能としたのである!…でも、でも、やっぱりここで一度は、古本を買ってみたかった…。
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取材をどうにか終えて駅に戻る途中に「大島書房」(2009/03/18参照)に立ち寄り、青心社「映画人烈伝/関本郁夫」を1500円で購入する。すると女性店主に「映画の面白いところをた仕入れておきますので、またお立ち寄りください」とニッコリ。自信溢れるPRがとても清々しい一瞬。
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2013年10月13日

10/13ざらつく降灰の中で古本屋遺跡を

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色々諦め切れずに、鹿児島市街の古本屋さんをダメ元で巡ってみるが、やはり無情の日曜定休シャッターアウトばかり。「つばめ文庫」「あづさ書店」「糸書店」「廣文館」「庄内書店」…。突如噴煙を上げ始めた桜島に背を向け、火山灰に巻かれながら街を彷徨い続ける。あぁ、「満遊書店 鹿児島店」は、名も知らぬリサイクルショップに取って代わられていた…。灰混じりになりながら鹿児島本線を跨いで、街の西側に抜け出る。そこには、寂れてシャッターに鎧われた、一本の通りがあった。寂しく独り道を歩いて行くと、その半ばに一軒の廃墟が建っていた。壁は一部崩れ、サッシのガラスは無惨に割れている。しかしその中を注意深く透かし見ると、本の入っていない本棚が、三面の壁を埋め尽くしていた!ここがやはり「竹中貸本中古卸店」だったと言うわけか…売本コーナーもあった、子供のための貸本店さん。この様子では、すでに廃業されたのだろう。身を低くして、割れたガラスの隙間から、元店内を覗き込むと、本棚がハッキリと薄暗い店内に浮かび上がった。何も並ばぬ面陳棚は、意外なほどキレイで、ついさっきまで本を並べていたかのような雰囲気を纏っている。しかし実際は、現実は、肉を削ぎ落とした骸骨のようで、もう二度と、本をその身に収めることはないのである。口の中にいつの間にか入った火山灰を、ペッと吐き出し帰り始めると、頭上には想像以上に巨大な噴煙。巨大生物のように、街の上を覆いながら、蠢き流れて行く。見慣れぬ鹿児島の日常に、思わずたじろぐ。

※またもやひと月お休みしましたが、WEBゴーイングマガジンで連載中の『均一台三段目三番目の古本 第十七冊』が更新となりました。今回は、神保町「一誠堂書店」にて、相応しくないジャック・ヒギンズを購入。神保町とヒギンズに興味のある方は、ぜひとも読んでみて下さい!

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2013年07月20日

7/20夏の準備と古本屋遺跡

昨日、あるイベントに行くために買った『週末パス』が、一週間日時を間違えていたことに気付く。慌てて変更しに、JR『みどりの窓口』へ。ついでに今日から使える夏の『青春18きっぷ』も購入することにし、もはや心は遠い地の古本屋さんにバタバタと飛翔…今年の夏も、お尻が鉄板になりそうだ…。まだ見ぬ“古本屋ドリーム”に溺れたまま、午前十時から開いている「都丸書店 支店」(2010/09/21参照)の壁棚を覗き込み、中国の古い家の写真ハガキ集「OLD HOUSES」青土社「ユリイカ12月臨時増刊号 総特集・永野護」誠文堂新光社「月刊天文ガイド臨時増刊 写真で見る月面観測」を計800円で購入する。今日は自由に動けるのは、残念ながらここまで。と言うわけで、少し溜まった、古本屋遺跡レポートをお届けします。

●「まだある」
高円寺の『ルック商店街』に2011年3月まであった「勝文堂書店」(2010/01/18&2011/03/12参照)。お店はとうにその姿を消しているが、何と阿佐ヶ谷・河北総合病院近くの裏路地には、お店の広告看板が未だに残っているのだ。しかし、その母体であるコインランドリーは板で封鎖され、もはや解体寸前!ここに古本屋さんの広告看板があるのも不思議だが、それも今や風前の灯火!果たしていつまで遺跡として存在出来ることやら…。
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●「まだいる」
つくばに爽やかな風を巻き起こす新店「PEOPLE」(2013/06/14参照)を訪ねた折、同じ建物に入っていた古本屋の先輩「筑波学園文庫」が食堂になってしまっているのを目撃する。が、しかし!その二階の手摺には、「筑波学園文庫」の青い店名看板が、しっかりと残っているのであった。…これは、二階の人はどう思っているのだろうか?単なる撤去し忘れ…ハッ!もしや、二階だけはまだ「筑波学園文庫」と言うことなのだろうか?だとしたら、これは遺跡ではなく立派な看板と言うことか。良く見ると、窓には『買入』の文字も残されている。やはりこれは、まだいる!
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2013年07月02日

7/2眠らない街に眠っていた古本屋遺跡!

午前中から「古本ナイアガラ」(2011/12/10参照)最下段の「フォニャルフ」補充入替に挑む。通常の一列モードに戻り、今月もテーマ無しでガシガシ補充しまくる心づもり。湘南探偵倶楽部「白魔/ロージヤー・スカーレツト」「ポプラ社 少年探偵冒険小説 書影集」(共に新刊)を計2800円でひゃっほうと購入し、さらに調子に乗って欲しくて欲しくてヨダレを垂らしまくっていた、月の輪書林「古書目録10 美的浮浪者・竹中労」を4000円で購入する。よ〜し、読むぞぉ〜!

一旦家に戻り、夕方になって買い物のために新宿へ出る。すっかり用を済ませてから、雑踏の流れに乗って東口へ。『スカウト通り』で、今日は何だかお店が小さめな「路上古本販売」(2011/06/16参照)を冷やかしてから、すでに怪しい人々が集い路上に蠢く歌舞伎町。この街にはかつて「一草堂書店(明治物絶版書、稀書の蒐集)」なるお店があったことは、2013/06/26に記したが、私はこのお店については古い「古書店地図帖」などで知るのみで、見たことも入ったこともないのであった。しかしある日、記事を読んだ「古書現世」(2009/04/03参照)向井氏より連絡があり、お店のあった場所には、未だにお店の名を冠したビルが残っていることを教えられる。お店の痕跡が少しでも残り、取り戻せない時を越えてそれと接触出来るならば、意地でも訪ねなければならない!今は亡き『コマ劇場』に向かって進み、一本手前の脇道を東へ。ちょっと歩いただけなのに、「DVDあるよ」「ソープどう?」「遊んでって」などと、矢継ぎ早に囁きが身に降り掛かって来る。弁財天のある小さな『歌舞伎町公園』前を通り過ぎれば『さくら通り』。さらに北に進み、左手の毒々しい雑居ビル群を注視して行く。すると、地下にマッサージ店、一階にドレスショップ、二・三階に炉端焼き屋の入った、白い小さな雑居ビル…ビルの名は、地下への入口にも上階への入口にも、何処にも書かれていない。しかし、壁面右側に突き出す、ビル案内看板を上へたどって行くと、あぁ!その一番上に『一草堂ビル』とあり、確かに古本屋さんの名が燦然と残っているのであった!
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決して関わることの出来なかった過去のお店に、今ここで人生がかろうじてクロス!欲望渦巻く歌舞伎町で、ひとり古本屋への欲望に身を焦がし、感動する。ここの二階では、かつて市が開かれたこともあったとのこと…こんな場所で…。感動ついでに、雑居ビル群のヤバ目な裏通りに入り込み、『一草堂ビル』の裏側も堪能する。遥か遠くの、ビルに切り取られた通りと空の光が、心を一瞬だけ、古本屋の裏手に佇ませてくれた…。
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2013年03月11日

3/11古本屋遺跡 一草園

昼から、見ないフリをしていて放置し過ぎた、確定申告の書類作成に挑む。紛失した書類を捜索したり、複雑怪奇な計算をしたり、文字を書き過ぎて指が痛くなったりして、長時間たっぷりと格闘。どうにか形にすることが出来たので、自転車で外出…その途端に後輪がパンクしてしまった…何てこった。近所の自転車屋までゴロゴロと運んで見てもらうと、パンクではなくタイヤが寿命であることを告げられる。都内の古本屋さん目指して、たくさん走ったもんなぁ…仕方無いか。タイヤの交換をお願いすると、四十五分後に取りに来てくれとのことである。閉じこもりっ放しだった家に戻るのもなんなので、取りあえずは何処かでヒマを潰すとするか。と言うことで、当然の如く足が向いたのは古本屋さんである。これぞヒマ潰し古本屋ツアー!まずはテクテクお馴染み「銀星舎」(2008/10/19参照)。店頭で二冊を見出して、さらに店内両翼をじっくりと。神奈川県県民部広報課「文学の中の神奈川」中公文庫「テキサスから来た男/アーネス・ヘイコックス」「青い絵具の匂い/中野淳」講談社江戸川乱歩文庫「うつし世は夢」を100円引きの計800円で購入。いつもありがとうございます。続いて裏通りをクネクネ進んで「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)。店頭に釜ヶ崎関連資料を発見し、その勢いのまま店内に突入。釜ヶ崎差別と闘う連絡会「釜ヶ崎からの現場報告」春陽文庫「怪奇・伝奇時代小説選集(3)新怪談集/田中貢太郎」角川文庫「日本女地図/殿山泰司」を計850円で購入。さらに駅に近付いて、かなり久々の「今井書店」(2009/08/31参照)。店内のピカピカの文庫棚から、双葉文庫「本棚探偵の回想/喜国雅彦」中公文庫「六本指のゴルトベルク/青柳いづみこ」を計550円で購入。ちょっとしたヒマ潰しのはずだったのに、あっという間に九冊の本がバッグの中に収まってしまった…あぁ、これでまた、家の容積が減少してしまう…。

最後に阿佐ヶ谷駅北口、東側の高架沿い商店街に残っている、古本屋遺跡と化している「川村書店」を見に行ってみる。お店を閉めてずいぶんと経つが、シャッターの下りた店頭は、まだ往時の姿をしっかり留めている。このお店に入ったことは、残念ながら無い。入るチャンスは何度もあったのに、何故入らなかったのだろうか?そう改めて考えてみると、実はその答えはお店の裏手にあったのかもしれない。脇道を高架に向かって行くと、今は緑が力強く野性的に生い茂る、秩序を失った庭が目に入る。かつてこの裏庭は、私設ミニ植物園『一草園』であった。古本屋店主が様々な草木を植え、一般公開していたのである。その手作りパラダイス感は独特なものがあり、それが当時さほど古本屋に興味を持っていない私を、躊躇させた原因だったのではないだろうか。荒れるに任せた庭を目にすると、今だったら大喜びでツアーするのに…と時々派手に後悔しているのである。
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そんな風に古本と古本屋に溺れていたら、あっという間に四十五分。よし、自転車を取りに行くとするか。
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2013年03月05日

3/5古本屋遺跡 スナイパー

先日の甲府行で、初期の目的を無事に果たして市街に戻る途中に、実はもうひとつの行程が挟まっていた。それは甲府駅から南に向かう身延線の甲斐住吉駅の南、およそ一キロにあるかもしれない古本屋さん「ゴルゴ」の存在を、この目で確かめるためである。ちょっと遠いのだが、この電動アシスト自転車ならヘトヘトになる前にたどり着けるはずだ!そう確信して、高い山々に囲まれた甲府盆地を、清々しく走り続ける。少し迷ったが、そこにあるはずの古本屋さんへの脇道を見付け、大通りから田舎の住宅街に進入して行く。すると行く手の二階建て建物に、堂々たる『古本』の看板を発見する!しかもひとつは大通りから目が届くよう、屋根の上に設置されている!ドキンと心臓が跳ね上がった。ぬぉっ、あるじゃないか!ちゃんとお店があるじゃないか!とスピードを上げてお店に近付く…むぅ?様子が何かおかしいぞ…。『古本』の看板は前述した通り屋根の上にひとつ、二階側壁に店名入りがひとつ…しかし、建物正面の軒看板には、残念ながら『デイサービス』と言う文字が!店舗部分にも、古本の気配は微塵も感じられない。古本屋さんは、とっくに無くなっていたのか。それにしても、目立ち過ぎる看板を残したままなのは、どう言うわけなのか?元のお店の名は『ゴルゴ』…超一流スナイパーのコードネーム…その由来はキリストが磔刑にされた『ゴルゴダの丘』からである。デイサービスを生業とする施設には、いささか不釣り合いな不吉な名なのである。古本屋遺跡を発見出来たのは嬉しいが、早めに撤去した方が良いのではないかと、いらぬお世話を焼きたくなってしまった。あぁ、それでもやはり、古本が並んでいるところは、見てみたかったなぁ…。しばらく建物の前で、在りし日の姿を想像したりして、一休み。再び力を溜め込んから、ペダルをグッと踏み込んでその場を離れる。さらば、超一流スナイパーの名を持つ、古本屋さんよ!
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2012年11月27日

11/27古本屋遺跡 荒川を越えて募集中と工事中。

東西線に乗って、隅田川の下を通り、荒川の上を通って、ニョキニョキと高層マンションが建つ江戸川区。一応近場で本命と予備のお店を設定出来ていたので、安心して歩んで行くと、そこで待っていたのは……。

●「募集中」
西葛西駅北側の『葛西橋通り』沿いにある。通りの対岸から見つけた時、すでにシャッターは閉まり貼紙がされているので、即座に『ああ、やってないんだな…』と判断。歩道橋を渡って近付いてみると、歩道際にはまだ店名鮮やかな看板が立ち、二度と点かない電光掲示板付き。その奥のお店の軒看板には、店名がうっすらと残っている。そしてシャッターには『テナント募集中』の貼紙が…。
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●「工事中」
東西線で二駅移動して南行徳。『東京湾側』に出て、江戸川区を中心に展開するマイナーチェーンの古本屋さんを目指す。遠目にお店の姿を捉えると、店前にはトラックが停まり、中から『ダガダガダガデデデデデ!』と豪快な破砕音が響いて来る。…店頭が削岩機で解体真っ最中。店内も工事中で、お店の名残はプラ日除け看板のみ…状況から見てこれも風前の灯火か…。もはや改装と言うレベルではないので、写真を一枚撮って別れの挨拶とする。
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このまま帰るのはシャクなので、今日も「新宿西口古本まつり」に顔を出し、昨日買おうかどうか迷いに迷いまくった、小山書店「敵中横断三百里/山中峯太郎」(表紙から挿画まで、梁川剛一のイラストワークにドキドキ)を500円で購入。そのまま中野に向かい、『ブロードウェイ』四階の「まんだらけ記憶・大予言」(2008/08/28参照)の105均棚で、朝日ソノラマ文庫「怪獣大陸/今日泊亜蘭」を発見し、『まんだらけがこれを何故105均に!』といぶかしみつつ遠慮なく購入させていただく。
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二冊並べると何とも勇ましくインパクト大…私は何を買っているのか…。
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2012年07月05日

7/5古本屋遺跡をドラQで補填

お昼に『古本ナイアガラ』の入替に向かう。今回のテーマは『裸だワッショイ!裸本だワッショイ!』の裸本祭!カバーや箱が無いだけで不遇な目に遭う、剥き出しのブルブル震えている本たちを、一瞬でもスターダムに!の思いを込めて、最下段にギュッとセッティング!…ぬぬっ、意外にも重厚な棚になってしまった…。
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背だけではどんな本か判り難いので、久々に目録擬きも作成!四十部ほど用意してあるので、新しく誕生した奇祭“裸本祭”の記念にどうぞ。お祭の記念に、大家の「盛林堂書房」(2012/01/07参照)で角川書店「愛についてのデッサン/野呂邦暢」を大胆購入する。

一旦家に戻って些事を済ませ、午後三時に出立。高崎線で埼玉県を北上し、熊谷から県の北端をなぞるようにして本庄駅着。駅の北一キロ強のお店に着くと、看板は健在だが、すでに営業している気配は感じられない…念のため、シャッター脇に近付き電気メーターを注視してみる…ぴくりとも動かない…やはり…。
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以前から気になっていたお店ではあったのだが、これで去就がはっきりしたわけだ。重い足を引き摺り、駅へペタペタと戻って行く。雪駄で歩き詰めているので、足裏は火が点いたように熱くなっている。この暑さのためか、街中の様々な場所で、犬や猫が死体のように五体を投げ出している。やがて午後六時を迎え、街頭スピーカーから巨大な音量で『夕焼け小焼け』が流れ出す。見知らぬ土地で、寂しい曲を聴かされ、猛然と子供のように寂しさが湧き上がる。歩を早めて、足裏に熱を帯びながらペタペタ…古本に出会えなかった腹いせに、駅近くのお菓子屋『こまつや』で『ドラQ』と言う名の、キュウリ入りどら焼きを買い込む。パッケージに河童とキュウリの絵が描かれた、まったく食欲の湧かぬ一品である。味は、硬めの衣に甘じょっぱいみそあん。そしてその中に緑色のキュウリが…うぅ、何だか甘いお通しを食べているような…ポリ…明日こそはちゃんと古本屋に…ポリポリ…たどり着いて…ポリ…。
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2012年06月07日

6/7古本屋遺跡・ガード横の幻影

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代々木駅前の交差点から、西に坂を下って行く。下り続け、たくさんの人々と行き交い、やがて道は平坦になる。行手には道路を跨ぐ、低い小田急線のガード…皆足早に駅へと急ぎ、ガードの傍らに建つ、古本屋には無関心だ。「白紙堂書店」。調べてみると、1967年出版の「古書店地図帖」では、現在と同じ場所ですでに営業しているのが確認出来、それは2001年出版「全国古本屋地図」でも同様である。私がこのお店の存在を知ったのは、2008年のツアー初期であるが、お店が開いているのを一度も見たことは無い。と言うことは、2001年〜2008年の間に、お店を閉めてしまったのだろうか?このお店にシャッターは無く、ガラス戸の向こうを、小さな青い花柄のカーテンが隠している状態。端には、棚の一部がチラリと見えたりしている…これがまた、いつか開くことがあるんじゃないかと、淡い幻想を抱かせるのだ。だから、小田急線の下りに乗っている時は、いつも左側のドアに張り付き、一瞬の車窓に目を凝らしている。万が一開いていたなら、次の駅で即座に途中下車し、ダッシュで駆け付けるために…。
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2011年10月05日

10/5磯子の近接古本屋遺跡『痕跡と幻影』

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根岸湾の形をなぞる『国道16号』を、磯子駅から北に向かって600mほど進むと『磯子旧道入口交差点』に到る。ここに二種の古本屋遺跡の姿。ひとつめの「池田書店」は交差点手前の16号沿い、時間の停まった古い商店建築群の中に沈んでいる。閉ざされっ放しの錆びたブリキの雨戸。その表面は丹念に育てられているのか、繁茂したほおずきに覆われてしまっている。小さな店頭が、在りし日の古本屋稼業の様子を伝えることはもはや無さそうだ。唯一の痕跡は、軒のモルタル壁に染み残る、看板文字だけ…。目を凝らして、その古代壁画のような白と灰色の模様を解読すると、『池 田 書 店』の四文字が浮かび上がった。2005年あたりまでは確実に営業されていたようだが、今はその役目を終え、静かにほおずきを育てている…。そして二つめは、交差点を北に越えると左手に賑やかに現れる闇市の名残り『浜マーケット』。この中にあった「磯子文庫」と言う名のお店である。光文社文庫「ミステリファンのための古書店ガイド/野村宏平」によると、元は貸本屋さんで昭和二十〜四十年代の小説や漫画が、かつては並んでいたと言う。こんな出会った瞬間に気絶してもおかしくない状況で、2007年まで現存していた。しかし!2007年4月にマーケットが火災に見舞われ、その後は仮店舗で営業されていたようだったのが、いつかお店を畳んでしまったのである。よってこの場には痕跡すら残っていないのだ。しかし、賑やかな入口から、狭く少し坂になって左右に角度を付ける、そのマーケット内を遡上して行くと、『あぁ、この先にはまだ古本屋さんがあるのではないか…』と心の中の幻影に繰り返し幻惑される。およそ200mほどのアーケードを抜けると、今度は『私は隙間にあったお店を見逃しているのではないだろうか…』の疑惑に捉われ逆戻り…。永遠に古本屋さんを求めて行きつ戻りつ…しかしいくら歩いても、その幻にたどり着くことは出来ない。今その痕跡を確認出来るのは、『浜マーケット』公式HP内の『店舗紹介』で、『2007年4月頃』のマップにある「磯子文庫/折紙」の文字。そこをクリックして、歩いてたどり着けなかった、在りし日の店内と店主の姿を、モニターに浮かび上げることだけなのである…。
posted by tokusan at 18:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 古本屋遺跡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする