2017年02月07日

2/7「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」2DAYS!

というわけで、最近ポロポロ発言していたたったひとりの古本市を、いよいよ開くことになりました!発表したからには、これでもう逃げることは出来ない…。後はがむしゃらに古本を泣く泣く準備いたします!

★人間としての住居を取り戻すための「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」2DAYS!
■2/25(土)・26(日)
■両日共AM11:00〜PM6:00
■西荻窪「銀盛会館一階」(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
■後援「盛林堂書房」
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582
■古本に占領されつつある住居を、どうにか再び人間の住み易いように復元するための、単独極私的大古本市開催。三つの部屋にある五つの古本山を切り崩し、大量に放出! 奥の方に何が眠っているのか分からないので、発掘作業は、実は楽しみでもあります。そして懸命にがんばって、あの会館を埋めるぐらい値付けして本を運び出し、なるべく安値で販売しようと思っております。私が全国から集めて来た古本を受け継いでくれる勇者を、心の底からお待ちしております!寄ってらっしゃい見てらっしゃい。買って下さい古本を。

…いやまぁ、多少古本を売って来たとは言え(その古本販売がさらなる古本購買に拍車を掛けたとも言えるのだが…)、ブログを初めて九年目。毎日古本を買っていたら、そりゃあ部屋は恐ろしいことになってしまう。台所にも、居間にも、そして仕事部屋にも、何処にも本棚がないのに、盛大に古本が蔓延る状況は、今更ながらだが、やはり多少ゾッとせざるを得ないのだ。ある日の夜中にパッチリ目が覚めたとき、横臥したこの身に迫る高い古本タワーの影は、その人智を越えた量感を、昼間よりもまざまざと味わわせてくれた。ある時の打ち上げで本棚探偵と話している時に、集合住宅の六階に本を溜めていることを告白すると、「い〜けないんだ、いけないんだ。一階じゃないといけないんだ」と、やたら嬉しそうに注意された。ある時、古本屋さんの買取を手伝い、本を運び出していると、見た目を遥かに上回るその凶悪な量と重量に、慄然としたことも何度か。そんなことが重なり、少しは身軽にしなければと考え始めた末に、人間が住むに相応しい住居をこの手に取り戻すための、単独古本市に行き着いたのである。最初は普通に古本屋さんにドバッと引き取ってもらおうかとも考えたのだが、せっかくなのでまずは安値で販売した後、売れ残ったものを引き取ってもらえば、一石二鳥であろうと、捕らぬ狸の皮算用…。というわけで、100均・300均・500均もたくさん準備する予定である。さぁ!市までもう二十日余り!まだ100均分を少ししか用意してないので、本腰入れて商品作りに励みます!
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写真は各部屋に点在する古本山や古本タワーや古本崖や古本塊である。果たしてこれが古本市後にはどのように変化するのだろうか…。
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2016年11月19日

11/19古本屋バイト・イン・J町 最終日

いよいよ今日がバイト最終日。ところがJ町は、シトシト雨に降られている。なので店頭が雨仕様となり、入口下にワゴンをひとつと、表に看板とシートを被せた店頭棚を一本出しただけで、営業スタート。土曜日は、どうやら一番賑わう曜日らしいのだが、寒い雨のためか、客足は鈍目である。というわけでレジ対応をしながら、外の雨の様子をチェックしつつ、昨日の続きのややこし過ぎる横溝文庫整理に従事する。さらに値段札貼りや棚チェック、それに本のクリーニング+ビニカバ掛け…四日間で覚えて来たすべてをなぞるように吐き出すように、手を一生懸命動かして行く。そんな中で自分でも驚いたのが、初めてなのに箱にキレイにビニールを掛けられたこと。
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この不器用な俺が、こんなにも物質感を上昇させる保護&飾りを、古本に施せるなんて!と大げさに感動しながら、先輩店員に値付をしてもらい、ソッと売場の棚に収めておく。午後からは雨も上がり、お店は次第に混雑を極めるようになる。特に二階で行われた読書会前後は、すべての通路に人が立ち、ちょっとしたラッシュ状態に…店内が人いきれに満ちている!と驚いていると、笑顔の古本神・北原尚彦氏にふいに声をかけられる。何と本日の二階の読書会はホームズ本なので、参加しに来たとのことであった…やっぱりすげぇな、この人は。今日は他にも二三のお客さんに声をかけていただき、しっかり古本屋バイトをしているところをチラ見していただく。そのままずっと走り続けて手を動かし続けて、気づけば午後六時半となり、最終日にここから仕事を抱えると、終わらずに明日も出勤することになりそうなので、残り三十分をレジ待機だけに専念する。…ふぅ、このお店に働きに来て、勤務時間中に、初めてノンビリと過ごしている気がする。いや、五日間で合計37時間30分、基本的な仕事ばかりだったが、古本屋さんの基礎の部分って、本当に地味で大変で終りがないと痛感する。でもこの無限基礎仕事が、店に来るお客さんが棚から抜き出す、喜びの古本獲得体験へと化学変化して行くのである。本当に古本屋ツーリストとして、貴重な体験をさせてもらいました。バイトしたお店は、神保町の「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照。ただし二階は紆余曲折を経て、半分は移転して来た「ブックカフェ二十世紀」に)。突然「古本屋バイト体験させてください!」のリクエストを快く受け入れてくれた店主の鈴木氏、それに『靖国通り』側の1レジで、忙しいのにこのポンコツオヤジを何くれなく面倒を見ていただき、間断なく仕事を作り出して与えてくれた、先輩店員の藤田氏と伊藤氏には、とにもかくにも大感謝である。奥の2レジの皆さんと、二階のレジ&カフェの皆さんにも、本当にお世話になりました。最後にこのバイトの思い出に、思い切って古本を一冊購入する。初日から1レジの左前方で存在感デカく目立っており、ずっと売れ残っていた東光出版社「最新探偵小説全集10 笑う肉仮面/山田風太郎・江戸川乱歩監修」(函ナシ)を五千円で購入する。途端にレジの周りに集まっていた先輩たちから「函が…」「函があればねぇ〜」と声が上がる。…あぁこんな風にして、いつの間にか裸本が増えて行くのである…本意ではないのだが、私はいつのまにか裸本コレクターと化しているのではないだろうか…。
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今回のバイト体験は、12/2のトークイベントに充分反映させるつもりなので、みなさま12/2(金)開催『古本屋の光と影』(詳しくは2016/11/16参照)を、よろしくお願いいたします。そして古本屋雑用レベル1くらいには達していると思うので、ぜひウチでバイトしてくれと言う奇特な古本屋さんがあれば、ご連絡ください。地球の裏側からでも駆け付けて働きます!

先週土日の大阪&京都行脚からノンストップで動き続けてきて、明日は今年最後の「みちくさ市」に参戦。相変わらず妙な古本たちとともに、己の人生と魂を分譲した新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」携えて行きますので、首をニョロニョロニョロニョロ長くして、午前十一時から午後四時まで、秋の雑司が谷でお待ちしております!
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2016年11月18日

11/18古本屋バイト・イン・J町 その4

ちょっと早めにJ町に入るが、意気込んでいたわりには何も買えずにお店にたどり着いてしまい、そのまま古本屋バイトを開始する。レジ近辺にシンナー臭が漂っているのだが、昨日強力なシール剥がし液が飛び散る大惨事が発生してしまったとのこと。刺激的な匂いを始終嗅ぎながら、今日はただひたすら催事用古本作成に邁進する。もちろんその間にレジ打ちをこなすのだが、金曜日はなんだかお客さんが多く、時々てんてこ舞いになってしまう。『砂の惑星デューン』の日本語版を探しに来たフランス人カップルが、先輩店員が取り出したアメコミの『デューン』に大感動し、「ワァオ!」を連発。二人で表紙を見つめてずっとうっとりしながら、ハヤカワ文庫セットとともに購入する一幕も。そしてちょっとレジ打ちに慣れて来たのが、逆に心の油断を生んだのか、ちょこちょこ打ち間違いや誤動作を引き起こしてしまい、凹みがちになる…。昼休みに『白山通り』の和本と書のお店「誠信堂書店」(2008/07/25参照)前を通りかかると、奥の上がり框に犬がスックと立っており、お店をロケに使った映画『珈琲時光』そのままの風景が展開されていた。おかげで心が少し暖かくなる。
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「原書房」(2014/05/15参照)にて、國民書院「まじない秘密奥伝傳/石邑雲齊」(非常にインチキ臭いおまじない&薬のオンパレード!)靈響山房「んざん抄 心霊と人生雜想/宇佐美景堂編著」(分厚い文庫サイズの心霊&超能力体験や奇蹟・奇病などの体験談を集めたもの)を計700円で購入する。お店に戻って引き続き値段札貼り、貼り、貼り!結局催事用文庫を、夕暮れまでにダンボール四箱分作り出す。その後は棚出しするための本を準備するため、まずは新入荷本が棚とダブっていないか確認。大量の横溝文庫が大きな壁となって立ちはだかる。装幀・表紙絵違い、帯ありorなし…ややこしいこと甚だしい…いかん、「幽霊座」と「幽霊男」を同一視してしまいそうに…。こうして四日目は、一日中文庫本との格闘に終始したのである。

閑話休題。今読んでいるのは、相変わらず敗北気味のヤフオクにて何故か比較的安値で手に入れられた、春陽堂「探偵小説四集 五人の生命」。明治二十六年刊のA5版の100ページ強の本で、当時の定価は一冊七銭。活字も大きく、船・汽車・馬車内で暇つぶしに読まれることを想定し(だから表3&4は時刻表になっている)、尚且つ読了したなら家に持ち帰らずに、捨てることを勧めている。同シリーズに泉鏡花の探偵小説「活人形」があるはずだが、当時はやはり読み捨てられていたのだろうか…も、もったいない…。いやそんなことより、読み進めていると、あまりに驚愕のシーンにぶち当たってしまったので、ここで少し紹介しておきたい。全体的な話は端折るが、注目のシーンは、腕力知力変装力に長けた名探偵・瀬尾が、敵側の情勢を探るために老婆の物売りに変装して、アジトを偵察するところ。敵方の小娘と面談中に、今まで心安く話していたのが突然「お前は何者なんだえ?」と詰問して来たので、探偵はとぼけようとするのだが、「隠し立てしたってだめだよ」と手鏡を突きつけられる。するとなんと、探偵の変装カツラが、ずれてしまっていたのだ…「こはこは如何に…頭につけし鬘の工合の惡しかりけん、小鬢のあたりの黒髪が手拭の下より見え透くに、こはしなしたりしくじったり…」。こんな愉快な探偵小説、ありなのか?この文章を読むや否や、本当にプフッと吹き出してしまった。探偵、絶対にすれてちゃダメじゃん!
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2016年11月16日

11/16古本屋バイト・イン・J町 その3

今日も真面目にバイトします。だが出勤前に、開いた早々の「田村書店」(2010/12/21参照)店頭に齧り付き、中公文庫「西條八十/筒井清忠」岩波文庫「芥川竜之介書簡集」現代書館「異端の笑国【小人プロレスの世界】/高部雨市」講談社「枯草の根/陳舜臣」文園社「吉行エイスケ作品集」非凡閣「晩夏楼/上林暁」(カバーナシ)を計800円で購入し、いきなり六冊の古本を抱えたカタチで古本屋に出勤する。最初は奥の事務所兼倉庫にて、催事用の小ネタ文庫群作りに励む。本の山を値段ごとに分けてもらい、後はそれにひたすら値段札を貼付けて行く地味な作業である。
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その後はレジに戻ってレジを打ちつつセット本の梱包をしたり、ダンボール三箱分の映画スチールの袋開け、均一本の値段付けなどを行っていると、あっという間に夜になる…一日が経つのが、なんだかとても早い…。そしてはたと気付いたのは、今現在古本屋さんに臨時に勤めているのだが、その仕事は古本を売ることより、商品である古本を製造して行く作業の方が、遥かに遥かに多いのである。常に古本の商品化を目指し、手を忙しなく動かし続けている。だから、需要(小)と供給(大)の関係が、見事なまでのアンバランスとなって行く。つまり供給物を生み出す作業は、速攻売れる本より、遅効性のじっくり売れたり寝かしたりする本の方が(つまりは在庫である)、遥かに多いと言うことなのであろう。今さらそんな単純なことに気づいた、バイト三日目の夜であった。

時間をキュキュッと巻き戻し、正午前。ひとり催事用値札貼りをしていると、突然事務所のドアが開き「小山さん」と声がかかる。振り向くとそこに立っていたのは、古本神・森英俊氏であった。「店長に聞いたら、ここだとうかがったので」「えっ!森さん、どうして分かったんですか!」と嬉し恥ずかし色めきたつと、「なぁに、簡単な推理ですよ」とホームズみたいなセリフを口にして、ニヤリ…この人は、これを言うために、ここにやって来たに違いない、とその瞬間に確信する。名探偵的陣中見舞い、ありがとうございました!

※お知らせいくつか
ウカウカしていたら、押し迫って来る気配の年末!そんな忙しい時期に、三つほど催し物に参加したり企画したりする予定です!

1. 今年最後の「みちくさ市」に、面白&奇妙&真面目&ミステリな古本と新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」を携え参加いたします。どうか、なまった体でどうにかやりおおせた古本屋バイトの話や、関西のお店の話など、古本を買いがてら聞きに来ていただければ!もちろん識語署名捺印何でもござれ!
■第35回 鬼子母神通り みちくさ市
■11月20日(日)11:00〜16:00(雨天中止。当日8:00に天候による開催の有無を決定します)
http://kmstreet.exblog.jp/
■雑司が谷・鬼子母神通り 東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺 東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
■michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241

2. 『連続講座 古本屋的!!』第4回「古本屋の光と影」
七月の同講座のトークに引き続き、その時の立場を逆転し、盛林堂・小野氏が聞き役を務め、大好きな古本屋さんについて、様々に縦横無尽に語り尽くします。ほぼ、何処が終点か分からないフリートークとなりそうですが、意外に真面目に話すことの方が、多いかもしれません。およそ半月後に迫っていますが、スケジュールをやりくりしていただき、ぜひともお越しいただければ。もちろん「古本屋ツアー・イン・京阪神」の苦労話なども!
■12月2日(金)
■ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
■19:00〜20:30
■会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,500円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀(jimbo20seiki@gmail.com)までメールにてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c

3. 「オカタケ&古ツア ガレージ古本市&トークイベント」
今年も性懲りもなく開催させていただきます。年末の古本的棹尾を華麗に飾ります。こちらはただひたすら能天気に楽しい古本市&トークイベントとなっておりますので、みなさま頭を空っぽにして、師走の一日をごゆるりとお過ごしください!
■12月10日(土)11:00〜17:00
■西荻窪 銀盛会館1階(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
そして夜はトークイベント
■「2016年古本・古本屋総決算」
■同日18:00〜20:00
■西荻窪 銀盛会館2階
■1000円 定員25名
■予約・お問い合わせは西荻ブックマーク http://nishiogi-bookmark.org/
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582
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岡崎武志氏によるイラストモチーフは、映画『明日に向かって撃て』のラストシーン。身に余るほど格好良いのですが、恐らくこの後全身に古本弾を雨霰と浴びまくり、琴切れる予感がヒシヒシと…。
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2016年11月15日

11/15古本屋バイト・イン・J町 その2

規則正しく起床して行動開始し、古本屋バイト二日目に向かう。途中開いたばかりの「日本書房」店頭ワゴンに足を留め、六藝社「風流記/石黒敬七」(裸本)河出新書「外國拝見/門田勲」などを計400円でいそいそ購入していると、いつの間にか出勤時間が迫ってしまっている。本を受け取り慌てて駆け出し、J町某店に滑り込む…遅刻しなくて、良かった…。本日は昨日より店員さんの人数が少なく、ひとりでレジ担当をする時間が生まれるらしいので、すでに私の心臓は、早鐘のようにドキドキドキドキ…。だが当然の如く時間は容赦なく進むのでそのまま開店に雪崩れ込み、まず最初の仕事となる、大量の秋元文庫の状態チェック&クリーニング&ビニールカバー掛けに突入する。本を様々な角度から眺め、カバーを外し、本文をチェック…あぁ、ほとんどの本に値段ラベルが貼り付いているじゃないか。これはなかなか手間がかかるぞ。レジを打ちながら、黄色い本との格闘にただただ没頭して行く。それにしても、根無し草のフリーランス稼業の私が、このように体験バイトとは言え、まともな社会人として労働している奇跡的状況は、奇妙な清々しい感覚を、身の内に湧き上げている。ちゃんとした会社員デザイナーとして勤めていたのは、もう二十年以上前のことなのか…。まぁたかが二日目で、労働などと偉そうに宣ってはみたが、所詮は働いているお店のシステムや全体像も見えておらず、自分で自分がするべき仕事を作り出せない、指示待ち状態なのである。だがそれでも、働きに行く場所があるということを、なんだか新鮮な喜びとして感じてしまっているのだ。まるで映画『男はつらいよ』シリーズで、主人公の寅さんが時々、恋愛事情やええ格好しいや気まぐれから、フリーランス・テキ屋稼業を辞めて正業に就いたような感じと言えば、何となくその奇妙な喜びが伝わるであろうか。もちろんあの考えは甘々なのだが、何はともあれちゃんとした仕事をしてるんだぞ!形だけでも変わったんだぞ!と言う、子供的高揚感と清々しさが、春一番のように私の胸にも吹き荒れてしまっているのである。そんなことを考えながらも、手は動かしている…くぅ、強敵の秋元文庫が、全然終わらないぞ…。

途中妙齢のファッショナブルな女性とイタリア人のカップルがお店を訪れ「江戸川乱歩ってありますか?」と笑顔で質問される。取りあえず文庫コーナーや単行本コーナーを教えるが、私の手には余りそうなので、先輩店員さんにすかさずバトンタッチする。女性がイタリア訛の英語を通訳するには、「「江戸川乱歩の古い日本語の本が欲しい」と彼が言っている」とのことである。とにかく古いヤツを、イラストが入っているものをというリクエストが続くので、昭和初期の全集や少年探偵もの(中の挿絵を見たら「オゥ、チープ!と叫んだ)を見せて行くのだが、どうも反応が芳しくない。そして合間合間に「アランポウ」という言葉が頻出する。あれ?もしや?と思っていたら先輩もとっくに気づいていたらしく「あの、もしかしたら、江戸川乱歩じゃなくて、エドガー・アラン・ポーをお探しなのでは?」とまずは女性に日本語で聞き、さらにイタリア人に英語で質問。すると探していたのは、やっぱりエドガー・アラン・ポーであったことが判明する。途端に女性が「江戸川乱歩じゃなかったの〜!」と大笑い。彼から『エドガー・アラン・ポー』の名を聞き、ポーを知らぬ彼女はすぐさま『江戸川乱歩』と脳内変換したために起こった。お茶目な微笑ましい事件であった。先輩が江戸川乱歩はポーの名をもじった作家名であることを丁寧に説明し、一同納得してその場が優しい笑顔に包まれる。うむ、なんだか面白いものを目撃したぞ。乱歩先生、あなたの名は今日もこの地上で、たくさん囁かれていますよ!

そしてようやく秋元文庫作業にケリを着けたのは、午後三時前。
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その後は、市場で新たに仕入れた本と棚の在庫を照らし合わせ、不足分を補充して行く作業を繰り返して行く。これは棚質の恒常的な維持に関わる、地味で大事な作業である。そんな風に、バイト二日目は、本に触れまくった一日として、ジリジリと過ぎ行くのであった。
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2016年11月14日

11/14古本屋バイト・イン・J町 その1

関西での新刊キャンペーンを終え、ようやくふぅと一息…と行きたいところだが、根が貧乏性なためか、ここで立ち止まったら、刀折れ矢尽き、がっくり膝を突いてしまう恐れに囚われる。なので、取りあえずはまだまだ前に向かって歩いて行こうと、今週から六日間を新しく奇異でいて真っ当と言えなくもないチャレンジに、人生の一部を費やすことにする。そのチャレンジとは、“古本屋さんで真剣にバイトする”ということ! 日本全国の古本屋さんを、すでにおよそ三千軒近く見て回っているといえども、それはあくまでも客として体験して来た、片面…いや多面性を持つ古本屋さんの一面だけなのである。そこでもう少し、違った角度から大好きな古本屋さんを捉えてみたい、お店側に踏み込んでみたいと考えた結果、一番最初に思い浮かんだのが、古本屋さんの一部に同化してみるということだったのである。今までにも色々なお店にお願いし、店番をしたり買取に同行させていただいたりと、ほんのちょっぴり“古本屋さんのお仕事”に触れて来てはいたのだが、それはかなり優遇された客分としての、特異な一瞬の職業体験に留まっていた。それはそれで、貴重で稀有な機会ではあるのだが、そんな風に甘えていては、恐らく肝心な古本屋さんの本質と真実には、一切触れずにただのうのうと過ごすことになってしまうのであろう。もちろんたどり着きたい本質&真実に対する解答も予測も皆無なのだが、とにかく古本屋さんの中に飛び込み、身を粉にして働いてみれば、何かが掴めるかもしれない、触れられるのかもしれないという闇雲さが、今回の齢五十近くにしてのおかしな行動の出発点なのである…。と言うわけで既知のお店に無理を承知でお願いし、大きな大きなご好意により、本日からJ町に短期通勤することに相成ったわけである。

午前十時半前にお店に飛び込み、ミーティング時に先輩方にガチガチになりながらご挨拶する。すると、たちまち外に飛び出し開店準備に取りかかる彼らの素早さに圧倒されながら、手渡されたエプロンを着用するのに愚かなほど一苦労し、己の無能さと、完全なる月とスッポンレベルの社会人格差に、今更ながら愕然としてしまう…。そんなまごまごあたふたしまくりテンパリ続けているド新人の今日のメインのお仕事は、レジ兼作業場に陣取り、本の状態チェック&クリーニング&ビニールカバー掛け、それにほんのちょっとの接客とレジ打ちと棚への補充である。すべてのことに緊張しながら、懇切丁寧に教えていただいた仕事の仕方やお店についての知識で頭の中をショート寸前にパンパンにしながら、ゆっくり不器用に仕事する。だがそんな中でも、ビニールカバー掛けが次第に上達しいく小さな小さな進歩に、まずは喜びを覚えてしまう…。本に掛けるビニールは、片側がポケット状になっており、中間から少し過ぎた所にベルト状の帯があり、反対側に留めるシールが付いているもの。まずはポケットに本の袖を差し込み、ベルトに反対側の袖を通し、シールで留めるというのが一連の作業となっている。だが、ソフトカバーの本は、ぐいんと表紙をたわめられ、ベルトに袖を通すのも楽勝なのだが、ハードカバーはそうも行かぬ。その名の通り表紙が板の如き硬度を誇っているので、たわめることはまず不可能。本を思いっきり反り返し、ギリギリの危険な力技で無理な角度を作り出し、素早く巧妙にベルトに通さねばならぬのだが、これが不器用者にとっては、千メートル級の山を越える以上に難事なのである。不覚にも何枚かのビニールカバーを駄目にして落ち込んでいると、先輩が魔法のようなカバーの掛け方を教えてくれた、まずはベルトに反対側の袖を通し、こちらの袖は本体からカバーだけを外し、それだけをポケットに差し込む。そしてそのカバーに改めて本体表紙を多少反り返しながら誘うように差し込むと、嘘のようにツルンと美しく収まり掛けられた状態になるのである。なので後半戦はこの魔法の手順を次第に己のものとし、古本をキレイな商品に仕上げることに快感を覚え始める。…ここまで書いて来て、あまりのミニマムさとマニアックさと伝わらなさ(恐らく)に恐縮しながらも、明日はどんな地道な仕事を割り当てていただけるのか、恐がりながらも楽しみに感じられた、一日をどうにか過ごす。
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これはまだビニールをダメにするレベルの掛け方。この後、徐々に徐々に上達して行くのだが、次第にそのテクニックや知識が体に染み付いて来るに従い、暖簾分けしたお店が、本家のやり方(様々な業務上システム)を自然に継承して行くことについて、大いに納得してしまう。長年勤めて様々なテクが身に付いた時には、それが一番やり易いやり方になっているのだから、当然のことなのである。
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