2017年07月17日

7/17夏の「あきら書房」

今日は早い時間に初台辺りに流れ着くが、古本屋さんを行動の基準とする私にとっては、どうにも動きの取り難い場所である…いや、いつの日からかそうなってしまったと言うべきか。ちょっと『甲州街道』に立ち尽くし、過ぎ行く車が巻起こす排ガス臭い風さえも涼しく感じながら、かつてはたどれた近辺のお店を思い出してみる。幡ヶ谷ではまずは『六号通り商店街』の「小林書店」(2008/07/09参照)。可愛い鳩的店名ロゴと、右側の隠し部屋的ゾーンが印象的であった。そして商店街を抜け、さらに『水道道路』も渡って坂を下ると「なつかし屋」(2008/09/28参照)。通路にうずたかく積み上がる本やプラモに苦心しながらも、勇気を胸に本の隙間を進む、そんなスリリングなお店であった。笹塚まで移動すれば、『甲州街道』沿いの「一新堂書店」(2008/06/24&2011/02/07参照)が、常に逸る古本心を優しく受け入れてくれたものだ。美術系に強かったが、私的には文庫でお世話になっていた…。この三店を巡るだけでも、だいぶ心は燃え上がるはずなのだが、今はもうそれも叶わない。現存する「BAKU」(2012/05/28参照)や「DORAMA」(2012/03/16参照)で代用しようにも、代用出来ない味が、なくなったお店には厳然と存在していたのである。右頬をツツッと流れたのは、汗かそれとも悲しみの涙か…。

いつまでも女々しく思い出に浸っていても仕方ないので、京王バスに乗り込んで阿佐ヶ谷方面へ戻り始める。だが終点の駅までたどり着くことなく、『青梅街道』沿いの『梅里中央公園入口』で途中下車し、北側の路地に入って、夏の「あきら書房」(2016/03/28参照)の様子を見に行くことにする。おぉ、この蒸し暑い中、草木の咲き誇る庭の向こうに、ちゃんと古本屋部屋が開放されているではないか。
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間髪入れず店内に入り込み、あまり動きの見られない手前ゾーンはササッと流して、右奥の床に置かれた本の山と本棚中段の古書ゾーンを集中的に漁る。その間に、俊敏な蚊にブスブス刺されてしまい、気がつけば右頬も刺されており、かゆみに悶絶してしまう。だが、牧神社「夢みる人 エドガー・アラン・ポーの生涯/マリー・N・スタナード」白鳳社「婦人職業戰線の展望/東京市役所編纂」(箱ナシで背は傷んでいるが、昭和七年発行の職業婦人についての資料集。巻頭のグラビア『婦人職業の尖端を往く女性』が最高!エアガール・ガソリンガール・マーリンガール・パラシュートガール・ニュースペーパーガール・マネキンガールなどなど)を見つけたので、計100円で購入することにする。奥のガラス障子前に立ち「すいませ〜ん」と何度か声を出すが、応答がまったくない。大丈夫だろうか…もしかしたらこの暑さで老婦人は…などと不吉なことを考えつつ、棚の横に大振りな鈴が下げられているのに気付く。そうか、呼ぶ時はこれを盛大に鳴らすのか。紐を引っ張りンガランガラ…するとすぐに障子が開いて、老婦人が元気な姿を見せてくれた。ホッとしながら百円玉を手渡し、「今日は暑いですね〜」「ええ、本当に」と他愛無い会話を交わし、庭に脱出する。家に帰ってからは、大阪へ再び送る古本の準備に手をつける。
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2017年07月08日

7/8閉店する無人店から追い出される

本日は広い広い世田谷区の僻地の如き『祖師谷公園』に流れ着く。生まれて初めて来た場所で、今年初めての蝉の鳴き声を耳にして夏を実感するが、公園の北側部分に、あの『世田谷一家殺人事件』の事件現場となった住宅が、緑色の防護シートに包まれて保存されているのに気付き、慄然としてしまう。しかし家屋に接する公園では、子どもたちが遊具で無邪気に遊ぶ光景が展開している…凄惨な未解決事件の記憶とほのぼのとした日常が混ざり合う奇妙な状態に戸惑いながらも、しばしの黙祷を捧げて、バスで京王線の千歳烏山駅へと向かう。

駅北側に出て、もう午後七時前だがまだやっているだろうか?と、無人で素敵にクレージーな古本屋「イカシェ天国」(2008/09/23参照)に足を向ける。まだ営業中だ!と喜び飛び込み、ほぼ動かぬ態の棚に視線を注ぎ始めると、渡辺竜王のようなネクタイ姿の男性が、表の小ワゴンを中に運び入れてきた。どうやら斜向いの本の料金を支払う不動産屋の方らしいのだが、この様子ではどうやらもう閉店らしい。「お店、終りですか?」と聞くと「ハイ、閉店です」ともはや本を買わせてくれぬ模様である。「そうですか、すみません」とそのまま表に出ると、竜王は音楽を止め、電気を消し、立看板を素早く取り込み、あっという間に閉店してしまった。古本を買えなかったのは残念であるが、無人古本屋で店員さんと接するレアケースに出会えたので、今日のところは良しとしておこう。
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その後阿佐ヶ谷に帰り、「千章堂書店」(2009/12/29参照)にて光文社知恵の森文庫「冒険手帳/谷口尚規著・石川球太画」を100円で購入する。
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2017年07月06日

7/6そして十二人目の太宰が登場する

「江戸川乱歩の本名って知ってる」「…乱歩?」「太郎って言うの」「…じゃぁ、江戸川太郎?」「ギャハハハ、ちげーよ!」などと、登校中の女子高生が交わす奇跡の会話を耳にした後、一日を過ごす。…それにしても、期末試験で乱歩の問題でも出るのであろうか…。そして本日流れ着いたのは上連雀…おぉっ!偶然にも目の前に「book&cafe Phosphorescence」(2008/08/01参照)が現れたではないか。何か買うというよりも、今日は珍しく何かを飲みたい気分である。外の壁沿いに点在する安売箱たちを覗き込んだ後、小さな店内に入り古本の背を追いかけて一回り。相変わらず非売品の太宰初版本棚がスゴいことになっている。ぬ?その棚の新しい住人として、先日取り壊されてしまった(大分県に移築される予定)、太宰が一時下宿した天沼の『碧雲荘』の欠片が仲間入りしているではないか!茶色の蜂の巣型タイルが何とも可愛らしい…俺も拾いに行けば良かったなぁと、棚前で羨みながら後悔する。そしてその棚裏の小さな机席に腰を下ろし、せっかくなので『太宰ラテ』なる飲み物を注文する。いったいどの辺りに太宰要素が入っているのであろうか?もしや玉川上水の水を蒸留して……。そんな想像を巡らしながら、ちょっと薄暗い棚の裏に視線を据える。そこには、太宰に関わる新聞や雑誌の記事が多数貼り出されており、たくさんの太宰の肖像写真や似顔絵が視界に入り込んで来る。壁の写真や肖像画も合わせると、総勢十一人の太宰が、主に頬に手を当て憂い顔を晒しているのだ。そんな記事群を読みながら待つこと十分。「お待たせしました」とカップが机に置かれる。「なるほど、こういうことだったんですね」「ウフフ、そうなんです」…カップの中にはラテアートで描かれた太宰の瓜実顔が、フワフワと浮かんでいたのである。正面を向いた太宰の顔に意表を突かれ、しばしにらめっこするが、いつまでもそうしているわけにはいかないので、砂糖を入れてスルスルっと啜り込む。あっという間に十二人目の太宰はお腹の中へと流れ落ち、疲れた身体を労り癒し始めてくれた。椅子に深く沈み込み、夕方の三鷹の古本カフェの本棚の裏で、気持ちよく弛緩する。何だか、珍しく古本を買わずとも、幸せになってしまった…。
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2017年07月03日

7/3俺にとっては開かずの「えびな平和書房」

午後に思い立ち、湿った熱い空気を掻き分けて、鮎川哲也「黒いトランク」を頭を懸命にフル回転させて読書しながら神奈川県・海老名に向かい、バスで丘に上がってそして下る途中の、移転後の「えびな平和書房」を見に行く。だが「今日こそは!」と期待度満点でたどりついたお店は、店頭のワゴンや棚にブルーシートが掛かったままで、『本日の営業は終了しました』の看板が立ちっ放しの状態なのであった。…うぅ、俺はいつになったらこのお店に入れるのだろうか。もう四回は見に来ているはずだが、毎回見事なまでに袖にされているのだ。くそぅ、だがいつか開いている時に巡り会わせて、しっかりと古本を買ってやる!と、丘の上の住宅街に圧し掛かるような雲の多い青空に、遠吠えする。そして潔く丁度来たバスに乗り込み、たちまち馬鹿みたいに駅へと引き返す。小田急線上りに乗り込むが、悶々とした気持ちを鎮めるために町田駅で途中下車し、ビル一杯の古本屋さん「高原書店」(2009/05/03参照)に急行する。
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ほほぅ、今は100均本を50均でサービス中なのか。というわけで店頭小庭&店内の100均棚&ワゴンを集中的に漁り、ますます古本の山でカオス化が進む室内&店内に好意を抱きながら、講談社「透明な季節/梶龍雄」面白半分12月号臨時増刊号「さて、田村隆一」を計108円で購入する。再び電車に乗り込み、あっさりそのまま帰るつもりだったのが、シートの上で段々とまだ何か買いたい気持ちが膨れ上がってしまい、衝動的に下北沢駅で下車。「ほん吉」(2008/06/01参照に一直線に向かい店頭にむしゃぶりつく。
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やっぱり良い本が挿し込んであるなぁ。得に今日は左の300均本にそれが多い。ここはやはり古本を求める気持ちをちゃんと受け止めてくれる…そんな風に感じて喜び二冊を手にする。講学館 日本の子ども文庫1「たぬき学校/今井誉次郎」(カバーナシ。そうてい・さしえが安泰なので、動物的プリティーさが大爆発!)東京・大阪朝日新聞社 アサヒカメラ臨時増刊「人物寫眞術」(表紙に丸窓があるデザインで昭和十二年刊。木村伊兵衛・中山岩太・野島康三・岡本東洋・堀野正雄の写真も掲載され、それぞれの技術記事もアリ)を計600円で購入する。途中下車で古本を購い、空振りした気持ちをどうにか鎮めた、三時間余の小田急線行であった。
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2017年07月02日

7/2いつの間にやら「石本書店」

重苦しく暑苦しい空気の中、仙川の南西にある若葉町に流れ着く。ここは意外に高低差のある土地で、谷底には緑陰濃く涼しい『武者小路実篤公園』があったりする。近くには実篤の記念館もあり、その案内版がふと目に留まる。下部に『桐朋学園』前にある書籍と文具の『神代書店』の広告があるのだが、そこに実篤から書店に送られた識語が書かれているのだ。『雨が降った それもいいだろう 本がよめる』…なんだか七十年代CMのコピー的だが、今の時期にピッタリなので見事に胸に沁み入ってしまう。もしかしたら、この言葉が書皮に印刷されているのではないかと思い、記念に文庫でも一冊買って行こうとお店を探し当てるが、残念ながら定休日であった。当てが外れながらも、そのまま「文紀堂書店」(2015/03/31参照)に向かい、チャイルド本社 おはなしチャイルド26号「まいごのロボット/作・大石真 絵/北田卓史」を500円で購入する。そのまま西にスライドするようにして、いつの間にか全滅してしまった「ツヅキ堂書店グループ」(2016/11/11参照)の最後の生き残りとも言える、裏路地の元「ツヅキ堂書店 仙川店」(2009/08/20参照)である「石本書店」を訪ねる(何だか文章がややこしくてすみません…)。店名の入っていた黄色いテント看板を見上げると、何もかも旧店のままであるが、元の店名だけは黒テープで消されている。
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そして自動ドアにのみ「石本書店」の名が掲げられている。店頭に立っていると、すぐさま店主の石本氏に発見され、挨拶を交わしてポツポツお話しさせていただく。「それにしてもお店が賑わってるじゃないですか」と見たままの感想を伝えると「今日は選挙だからたまたまですよ。いつもは閑古鳥が…」などと返される。いやいや、これだけの人が、この分かり難い裏路地に入り込んでくるんだから、地元に充分認知されている証拠ですよ。そのまま店内を回遊し、最奥の良書が紛れ込む充実雑本棚を楽しむが、値段になかなか隙が見つからぬので、何を買うか決め切れない。しかし美術棚にてようやく国文社「ダダ論考/山中散生」(帯&崩壊寸前の元セロ付)を900円で発見したので、よっしゃっ!と購入する。

家に帰ってしばらく身体を休めた後に、日が暮れ切る前に都議選の投票へ向かう。
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2017年07月01日

7/1あっ!「BASARA BOOKS」が開いている!

雨に湿った街を彷徨い、吉祥寺の北に流れ着く。バスには乗らずに『吉祥寺通り』を南下して駅方面を懸命に目指す。途中「午睡舎」(2009/09/10参照)前を通りかかるが、案の定シャッターが下りている。午睡どころか、もはや冷凍冬眠の域に突入している…恐らくもう、開くことはないのかもしれない。そう言えば「百年」(2008/09/25参照)が、今度新しいお店を開くんだっけ。もしかしたらお店周りに何か新店の情報が出ているかも知れない!と向かってみるが、一階の立看板にも二階の店内にも情報はナシ。店主も不在なので為す術無く、ただただ若者で賑わう店内を楽しみ、ちょっと表紙が傷んだ小峰書店少年少女のための世界文学選(5)「鍛冶屋と悪魔/ゴーゴリ」を1080円で購入して退散する。このままL字を象るように、古本屋さんを訪ねて行くか。そう決めて駅南口へ切り込んで行くバス通りに曲がり込むと、小さな打ちっ放しコンクリビルの前に人の気配が漂っている…おっ!久々に「BASARA BOOKS」(2015/03/28参照)が開いてるじゃないか!感激しながら近寄ると、店頭も店内も相変わらず三角形で小規模ながら、「百年」に負けず劣らず若者で賑わっている、扉横には『店内で本を一冊でも買った方には、店頭の均一本を一冊プレゼント』なんて貼紙も。そんな五ヶ月ぶりの再会を喜び、熱心なカップル客に割り込むようにして、店頭の箱や棚を覗き込む。すると棚の上段で、浪速書房「好色党奮迅録 紅雲の巻 緑雨の巻/宮本幹也」の二冊を発見。中巻の「紫山の巻」が見当たらないのは残念だが、ちゃんと箱付き(広告には『上製函入』とあるが、完全にホチキス留めのボール紙である)元セロ付きである。買取本が山と積まれた帳場にて計200円で購入。ここで充分満足してしまったので、早く家に帰って昨日の続きとばかり、百年前の巴里にファントマの暗躍を見物しに行くことにする。
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※追伸
先日大阪の「梅田蔦屋書店」に補充分の古本を送付。近日中に古書コンシェルジェの手により、棚がジワッとリフレッシュする予定なので、お近くの方や大阪に立ち寄る予定のある方は、ぜひとも巨大駅ビル『ルクア イーレ』九階をお訪ね下さい!
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2017年06月24日

6/24街と一体化した古本屋さんと本屋さん。

今日は豪徳寺で外仕事をしており、どうにか解放されたのは午後六時前。「靖文堂書店」(2011/09/06参照)に行きたいのはやまやまだが、それではあまりにも能がないので、南下して世田谷の住宅街に分け入り、上町の「林書店 上町店」(2008/12/04参照)に至る。
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およそ九年前に訪れた時と変わらぬ佇まいで(世田谷ボロ市の出張店舗では毎年お世話になっているが(2011/12/16&2013/01/15参照)、店舗を訪れるのは本当に久しぶりである)アダルト&文庫&コミックを中心に、純粋に地元民のための街の古本屋さんとして、変わらず機能しているようだ。だがまだ六月なのに、この店内の蒸し暑さは異常である。まるでサウナに入ったかのような、日本の夏的不快さに懸命に耐えつつ、ちくま文庫「木村伊兵衛 昭和を写す 1 戦前と戦後」を400円で購入する。表に出て斜向いを眺めると、同じく古くから街に溶け込んでいる焼肉屋さん『双葉』があり、お店同様昭和的に古めかしい安値の食品サンプルが並ぶウィンドウに、目とともに空きっ腹と連結した舌が釘付けとなる…いつか入ってみるか…。
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さて、ではこの後は豪徳寺の「靖文堂書店」に…あぁ!もう午後六時を三分過ぎているので、入店を店主に厳しく止められるのが関の山である。おとなしく帰るとするか…、だが代わりと言っては何だが、みなさんは世田谷線『山下』駅前の小さな小さな『山下商店街』にある「暁星堂書房」をご存知であろうか?
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本当に小さな新刊書店なのだが、機能しているのはほぼ新刊雑誌を並べた店頭だけで、店内はいつも小さな佐々敦行風店主が表に立ちはだかっているために、ちょっと時の経った文庫やコミックや雑誌が放置されている中には、未だかつて一度も入れていないのである。今日は入れるかも…と思って店頭に立つが、やはり店主のプレッシャー厳しく、スゴスゴと尻尾を巻いて、武蔵野方面へ逃げ帰ることにする。
と言うわけで、いよいよ明日は西荻窪にて、古本販売とトークの日!みなさま、ぜひとも「盛林堂書房」(2012/01/06参照)での少数精鋭個人的古本販売と、夜のトークに照準を合わせ、恐らく空模様の怪しい西荻で楽しく元気にお会いいたしましょう!
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2017年06月10日

6/10気付いたらアイス屋になっていた

本日は疲労困憊し、祖師ケ谷大蔵に流れ着く。だがこの地には、大好きな「祖師谷書房」(2009/03/05参照)があるのだ!と、最後のエネルギーを振り絞り、駅からだいぶ離れた『祖師谷通り』沿いの店前に立つと、あぁ!オヤジさんがサッシ戸を全開にして、本の山や棚にはたきを掛けまくっている!…もしかしたら本日の営業は終了なのか?と思ったら、古本の埃を払ったオヤジさんは、戸を閉めた後に帳場にチンマリと収まったのであった。良かった。ただ掃除をしていただけだったのか。改めて思うと、古本屋さんがはたき掛けをしているシーンって、なかなかお目にかかれないような気がする。などとマニアックな喜びに浸りつつ店内に潜入し、本が押し迫る短い通路を丹念に行き来する。光栄「18人の金田一耕助/山田誠一」を千円で購入する。『必殺FCとらの会』の元締めによる、歴代金田一演者本…元締めは、こんな本も出していたのか…。
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写真は丁寧に包んでいただいた本。その包装紙は、草原と一部が刳り貫かれた大木と本の、朴訥なイラストが描かれている。

せっかくなので駅の南側まで足を延ばし「文成堂書店」(2012/09/11参照)の行く末をこの目で確かめることにする。横目で「ツヅキ堂書店祖師ケ谷大蔵店」(2015/06/19参照)の跡地がヤマハの音楽教室になっているのを目撃した後、「文成堂書店」が大繁盛のアイス屋に成り代わっているのを目撃してしまう。そうか、お店は辞めてしまったのか…寂しいなぁ…。
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2017年06月09日

6/9東京の片隅の変哲のない古本屋さん

仕事をパパッと済ませてから、午後にのんびりと外出。久々に大崎広小路の古本を売る町工場に再々チャレンジしてみるかと、山手線大崎駅で下車する。だがなんだか見覚えのない景色が続くことから、前回降りたのは五反田駅だったことにハッと気付き、街路地図を見つけて行動修正。少し迷いながら記憶した地図と己の動物的勘を頼りにして、結構急な坂道を上り下りし、どうにか自然の谷でもあり巨大ビル群の谷間でもある目的地にたどり着く。だが、町工場は森閑としており、あまつさえ古本棚のある片側のシャッターが下ろされてしまっている…むぅ、鉄とガラスを挟んではいるが、数センチ先に古本が並んでいるというのに、掴み取ることの出来ぬこの理不尽さよ…と嘆きながら、ここはもう古本を売っていないのかも知れないという疑いが、心の中にジリジリ広がって行く。またいつか、思い出した時にでも見に来ることにしようと、結局は空振りだったことを心の中にそっと静かに折り畳み、早速近くの古本屋さんを見に行くことにする。だが近くと言っても、それはニキロほど南東にある、下神明の「星野書店」(2009/06/11参照)である。地名的に言えば、大崎から西品川を抜け二葉へと至るコースを採ることになる。この辺りの街路は細かく高低差もあり、延びる方向も不規則なので、一本道を間違えれば、たちまち方向感覚を失い、迷うこと必至な迷路的地帯となっている。だが、大崎の非人間的なサイズの大通りから離れた途端、身体にぴったりと合う服を纏ったように、歩くのも見回すのも人間サイズに変化したことに、心なしかホッとする。そして、家や建物は新しいが、道の在り方と小さな神社や、痕跡のように現れかろうじてつながる商店街とに、昔の街の面影を感じ取ることが出来る。人影は少なく、熱い午後の初夏の街は凪いでいるが、広範囲に『貴船神社例祭』の幟が立ち、目に見えぬ地域の絆が網の目のように張り巡らされていることを実感する。大崎の丘から一旦戸越銀座の谷に下り、また丸い急坂を上がって西品川を抜け、東海道線と東急大井町線がクロスする下神明にたどり着く。小さな変哲のない「星野書店」は、静かな東京の片隅で、今日もしっかり営業中であった。薄暗いコンクリ土間の店内に滑り込むと、奥からガラス障子を開けてご婦人が現れ、帳場に腰を下ろして新聞を読み始める。こちらは、半分は時の停まり気味な棚を読み続け、街の古本屋を存分に楽しんで行く。講談社「影を燃やせ/黒岩重吾」を500円で購入。明るく小さな歩道から、この薄暗い空間に入る瞬間、何故こんなにも期待がドロドロ轟いてしまうのか…全く持って魔法のような不思議さと不可解さに満ちた境目である。
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2017年06月07日

6/7セイレーンの歌声が消える日

どよんとした雲に覆われた空の下、正午前に家を出てまずは店頭が雨仕様の荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)へ。文藝春秋「ぼくが狼だった頃/寺山修司」TBSブリタニカ「街に顔があった頃/吉行淳之介vs開高健」雄山閣「講座日本風俗史別巻七 妖異風俗」平凡社「世界猟奇全集3 女怪/ゴーチェ著 江戸川亂歩譯」(函ナシ)カッパノベルス「日本アパッチ族/小松左京」(10版だが帯付き)集英社「コバルト文庫'92解説目録」を計840円で購入し、荷物を増やして西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。判で捺したようなお決まりの、徒歩で切り抜けるマイ・古本ロードである。「フォニャルフ」に補充した後(今回特に奇妙な本あり。果たしてあれは売れるのだろうか…)、小野氏に色々市場での仕入本を特別に見させてもらいながら、色々打ち合わせる。店内ショウウィンドウでは『水玉蛍之丞のお仕事展』が慎ましく濃密に開催されており、生きているような気持ちの良い線と鮮やかな原色の色合いに、しばし見惚れてしまう。
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お店を出たらコメントタレコミに導かれ、バスで上石神井まで移動した後、西武新宿線で武蔵関駅下車。南口側にあるリサイクル系古本屋さん「古本工房セイレーン」(2008/10/18参照)が六月一杯で営業を終了してしまうらしいのだ。集合住宅の間の道路をカクカク抜けて、久々のお店をようやく探り当てると、営業前のガラス扉には、情報通り閉店のお知らせが貼り出されていた。…うむむ、残念。しかし正直に言うと、私はこのお店を愛したわけではなく、入口上に架かる恰好良い看板文字を愛したのである。…あぁ、この他には類を見ない、大きくヒーロー番組的な『SiREN』の文字…見よ、“S”の頭もお尻も華麗な曲線を描き、触れたら血が出そうなほど鋭く尖っているではないか。
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白いビルにまったく不釣り合いな、この看板が下ろされる時、街から『古本セイレーン』の歌声も、フッと消えてしまうのだろう。そんなちょっと狂ったような思考に走りながら、開店時間の午後三時まで、見知らぬ街をグルグル歩いて時間を潰す。午後三時十分に店前に戻って来ると、店内の蛍光灯が点いていた。即座に中に滑り込み、アダルトゾーン手前の左端古本通路に入り込む。棚の各所から『半額』の札が大きく飛び出している。コミックとアダルトメインのお店なので、古本棚は気が抜けたようになっているが、100均棚から三冊を選び、まだ閉店まで三週間強あるのだが、恐らく最後の買物とする。創元推理文庫「ブラックウッド傑作選/A・ブラックウッド」「M・R・ジェイムズ傑作選/M・R・ジェイムズ」「怪奇小説傑作集5/エーベルズ他」を計150円で購入する。さようなら、セイレーン。愛しの看板文字よ。
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2017年06月06日

6/6雨仕様はより欧風であった。

本日は新代田〜代田橋辺りに流れ着くが、またもや小田急線沿線を楽し気に巡っても能がない気がするので、天の邪鬼に渋谷方面に向かい、駒場東大前で下車。ヒタヒタ歩いて「河野書店」(2008/09/08参照)前に到着すると、その店頭はどんよりした曇り空を警戒したのか、日除けをグンと張り出してすっかり雨仕様になっている。
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普段から西洋を感じさせる瀟酒なお店であるが、なんだか今日はより一層欧風で、まるでフランスの古本屋の店先を覗き込んでいるような錯覚に、見事に陥ってしまう。だがそれはあくまでも雰囲気を味わうだけで、読めぬ右側店頭の洋書ゾーンはあっけなくスルーし、左側の単行本や文庫本に神経を集中する。いつ来ても、小さなお店一軒分に相当する濃密な店頭に感心し、通路をじっくりと回遊し、岩波文庫「かくれんぼ 白い母/ソログープ」実業之日本社「ハリガミ考現学/南伸坊」を計300円で購入する。帰りは浜田山まで出て、小型コミュニティバス『すぎ丸』にて阿佐ヶ谷に帰還。今回も運転手さんは『すぎ丸』のテーマソングに合わせ歌うのかと(2017/06/01参照)車中でドキドキしながらその時を待つが、残念ながら歌声唱和はナシ…あの運転手さんが、特別な人だったのか…。その代わり、途中で降りた五人の少女が、降車時に全員で声を合わせて「ありがとうございましたっ!」と叫んだのに、心和んでしまう。あぁ、人間はこんな簡単で他愛ないことで、幸せになれるのだな。などと純粋な行動にすっかり降伏しながら帰宅する。

※お知らせ
もはや開催まで二週間を切っている「みちくさ市」に出店いたします。二月にたくさん本を売りましたが、まだまだ家にはたくさんたくさんたくさん古本が犇めいているので、雑司が谷まで運び込み、汗水垂らして販売いたします!
■第37回 鬼子母神通り みちくさ市
■2017年6月18日(日)11:00〜16:00
■雑司が谷・鬼子母神通り 東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺 東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
■お問合わせ michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください) みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
http://kmstreet.exblog.jp/
■雨天中止
特典などはまだまったく考えていませんが、何か作れるようであれば、追って発表いたします。どうか、雨天中止になりませんように!…もしなったらその時は「盛林堂」さんの通路でも厚かましく間借りして、たったひとりの市を開かせてもらおうか…。
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2017年05月31日

5/31小さな「ブックサーカス」と壹圓札

今日で「ブックサーカス 戸塚モディ店」(2010/09/20参照)が閉店するのを思い出し、午前中の湘南新宿ライナーに乗って、わりと早い時間に駆け付ける。ビルの山脈に挟まれたような戸塚駅のホームに立つと、東口側のビル壁面には、すでに『古本閉店セール中』の横断幕が看板横に掲げられ、大変に寂しい光景を作り出している。お店は目の前に横っ腹を見せているのだが、遠回りするように深めの地下改札を抜けると、そこにも柱広告に『掘り出し物チャンス!売り尽くし古本セール』とあるではないか。下部に小さく書かれた『トツカーナ店は平常営業しております』の文字に、少し救われる。地上に出て、さらにビル二階の白いデッキ通路に上がると、お店全面を『閉店』と『50%OFF』の文字と、これももちろんセール対象のラックが覆い尽くしている。
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店内の様子は、何だか暗くてよく見通せない…。だが店内に進むと、まだ午前十時半過ぎだと言うのに、多くの人で賑わっているではないか。その客層は、若者と主婦と古本修羅である。ここはコミックや文庫に強い、どちらかというとリサイクル店的な色合いの強い小さなお店であったが、それでも絶版文庫棚があったりして、マニアックな古本好きも多少楽しめるようになっていた。だが今はどうだ、100均棚にチラホラ古書が混ざり、右奥通路の単行本にも多く古書が進出し、大体410均の値付がされているのである…いつのまにこんなことになっていたのだろうか。古書的変化を知らずに過ごしていた己をちょっとだけ呪いつつ、「さぁ、50%オフだ。古本を買って行こうじゃないか」と棚に神経を集中させる。春陽文庫「鍔鳴浪人 前後編/角田喜久雄」(昭和三十年初版)講談社文庫「ミステリイ・カクテル/渡辺剣次」ちくま文庫「イギリス恐怖小説傑作選/南條竹則編訳」三崎書房「幻想と怪奇 創刊号」を計665円で購入し、お店との別れと為す。さらば、小さな「ブックサーカス」!

そのまま橋上駅舎を西に渡り、大きな「トツカーナ」に潜り込み、四階の「ブックサーカス トツカーナ店」へ向かう。こちらは駅の閉店ポスター通りに、平常営業中である。むむ、右奥古本ゾーンの第一通路が、いつの間にか100均通路になっており、かなり見応えがある。元々奥の通路に古書は多かったが、ここにもだいぶ蔓延っているようだ。以前はDVD+映画・戦争通路のはずだったが、いつの間に転身を遂げていたのだろうか?やはり本店が閉店(2015/12/29参照)してから、その機能の一部を移植されたのではないだろうか…などと考えつつ、その魅力の虜となり、心と時間を奪われて行く。櫻井書店「植物記/牧野富太郎」(函ナシ)大日本雄辯會講談社「百萬兩の秘密/白雲齊樂山編著」を計715円で購入する。「百萬兩の秘密」は昭和二十年十一月発行の、見たこともない文庫サイズの本。文庫レーベル名などは何処にもなく、装幀は恩地孝四郎が手掛けている。だが購入した本は貸本仕様で、その華麗であろう装幀図案もすっかり掠れて悪夢のようにボンヤリしてしまっているのが残念。そして「植物記」を帰りの車中でパラパラ捲っていると、おぉ!ページの間から、二宮尊徳の壹圓札が登場!古本にお金が挟まっていた話はよく聞くが(そういえば野呂邦暢「愛についてのデッサン」にもそんなエピソードがあった)、自身で体験するのは初めてのことである。ウフフフフ、一円か…。
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2017年05月28日

5/28成城で西荻を手に入れる。

本日は高級住宅街である成城に流れ着く。そして流れ着いた途端、たった五分の間に日本を代表する映画監督や指揮者を目撃してしまい、この街のハイソサエティぶりを、たっぷりと思い知らされる。そういえば、横溝正史もこの街に住んでいたんだよなぁと、トリックを考え街を歩く和服の探偵小説作家を、熱い太陽の下についつい勝手に幻視してしまう。…イカン、何だかボ〜ッとしてしまった。古本を買って、我を取り戻そう。そう決意して向かった先は、北口側にある「キヌタ文庫」(2009/10/25参照)である。
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店内には優雅なジャズが流れ、棚は古書を織り交ぜ深く華麗に構成された、知の見本市となっている。昔と変わらず、本当に良いお店である。老店主は帳場に立ち尽くし、古い写真アルバムと火花を散らしながら鍔迫り合い中。おっ!文学棚に西荻書店の童話本を発見。あの『三色文庫』(2017/03/26参照)を出していた西荻書店の出版物に、こんな所で出会えるとは!と喜び、値段も600円とリーズナブルだったので、世田谷区から杉並区に連れ帰ることにする。西荻書店「ふくろうチーム/岡本良雄」を購入。最初裸本と思っていたが、ページを開くと折り畳まれてちょっとボロくなってはいたが、ちゃんとカバーが出て来たので、ちょっとだけ得した気分。
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というわけで、同じ杉並区ではありますが、西荻窪ではない所に集まってしまった西荻書店コレクションを記念撮影。
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2017年05月25日

5/25文紀堂書店で月に懐かれる

本日は仙川の北の『白百合女子大学』がある緑ヶ丘に流れ着いたので、これ幸いと南側の「文紀堂書店」(2015/03/31参照)にそそくさ駆け付ける。最近森英俊氏から「棚に探偵小説が増えていますよ」と教えられていたのである。しかし直ぐ駆け付けても、古本神が通ったばかりなので惨憺たる有様だろうと想像し、三分の二ヶ月ばかり我慢しての、放置中だったのである。これくらい時間が経過すれば、色々変化が起こっているはずだ!そう信じてお店にたどり着くと、おぉ!店頭に100均文庫をタワーにして抱えているオジさんがいるではないか。これは負けておられんぞ!と横に並んで棚に視線を注ぐ。すると調子良くたちまち三冊を手にしてしまう。よし、店頭はこれくらいにしておこうと中に進み、左側通路の探偵&ミステリゾーン…ぬぅ、なんだか影も形もなくなっているぞ…では帳場右側の古書棚&古書箱を…あっ!杉山茂丸の「百魔 續編」が函ナシで二千円…装幀&古書の魔力に取り憑かれ、思わず買いそうになるが、『お前、これ本当に読むのか?』と心の声が聞こえて少し正気に返り、そっと棚に戻してしまう…何だか今日は腰が引けてるなぁ…。それに目的の探偵小説類は思ったより少ない…確かに棚に色々変化が起こったようだが、予想外の方向へ進んでしまったようだ…だが児童書棚に紛れ込んでいた黄色表紙バージョンの「フープ博士の月への旅」が五百円なのに喜び、ちくま文庫「ピスタチオ/梨木香歩」中公文庫「肌色の月/久生十蘭」岩崎書店エスエフ少年文庫5「うしなわれた世界/コナン・ドイル」青林社「フープ博士月への旅/たむらしげる」を計1000円で購入する。気付けば月に関わる本を二冊買い、表でお店の看板を見上げれば、そこにも三日月が輝いている。ほんの一瞬だが、なんだか月に懐かれたような時間であった。
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そんな一日を過ごしながらつらつら考えていたのは、昨日書いた左川ちかのこと。勝手にしっくり来る“二つ名
”をあれこれ思い悩んでいたのだが、ようやくたどり着いたのは、『絶対零度のモダニズムの幽霊』であった。ちょっと幼稚で俗っぽいが、あの熟れて病的な冷たさが昭和初期から突然立ち上がって来る感覚は、まさにそんな感じとしか、今の自分には言いようがないのである。
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2017年05月15日

5/15昨日と同じ経堂に来てしまう

二十二時間後に、同じ古本屋の中に、馬鹿みたいに立っていた……そこは昨日訪れたばかりの、経堂の「大河堂書店」(2009/03/26参照)である。何故こんなに早くお店に舞い戻って来たかというと、欲しい本があったからである。もちろん昨日買っていれば、こんな馬鹿みたいな二度手間を踏まなくとも済んだわけだが、残念ながら買うべきか買わざるべきか悩んでしまったのである。挙げ句、愚かにも棚に戻してしまったのである。結局昨日の帰宅中電車内から悩み始め、家に着く頃には買いに行こうと決め、本日打ち合わせを終えた後に、駆け付ける次第となったのである…みなさん、やはり欲しい本が見つかったら、懐の許す限り、その場で買いましょう!何故なら、どうせ買うことになるのだから。などと相変わらず懲りずに身に付かない重要な古本理論を反芻しながら、焦って目的の本棚の前に急行し、目指す本を探し求める…売れてませんように売れてませんように売れてませんように…あった!大正十五年刊の金星堂「モダンガール/清澤洌」である。函ナシだが、驚愕の800円の手書き値段帯が巻かれているのだ。これを買わないなんて、俺は本当に馬鹿だった。棚に置いてけぼりにしてゴメンよ…と詫びつつ、ついでに昨日は目につかなかった日本推理作家協会「推理小説研究11号 戦後推理小説総目録/中島河太郎」を見つけてしまったので、観念して一緒に帳場に差し出す。計2900円で購入し、『気まぐれプレゼント 謎の文庫本』(2017/03/17参照)をお土産にいただく(今回は新潮文庫「果心居士の幻術/司馬遼太郎」であった…)。「モダンガール」は「暗黒日記」で有名なジャーナリストが、様々な婦人問題と風俗を硬軟取り混ぜ扱った研究書である。そして巻末広告を見ると、おぉっ!イナガキ・タルホ「一千一秒物語」が載っているじゃないか!
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『童話の天文學者、セルロイドの美學者、ゼンマイ仕掛の機械學者、奇異な官能的レッテルの蒐集家。そしてアラビヤンナイトの荒唐無稽をまんまと一本の葉巻に封じこめたのがこれだ。』の惹句に、ビリビリ痺れてしまう。痺れたまま、目的を完遂した気分の良さを引き摺り、北口側の「遠藤書店」(2008/10/17参照)を久々に見に行く。
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すると、店頭長テーブル100均単行本台で、ちゃんと箱付きの東方社「狂った海/新章文子」と予想外の出会いを果たし、大喜びで購入する。さらに気分が良くなったところで、そうだ、さらに久しぶりに、住宅街のプレハブ古本屋「小野田書房」(2011/06/30参照)の様子も見に行ってみよう。ちゃんと営業しているのだろうか…いやそれより何より、お店はちゃんと残っているのだろうか…と心配しながら再び南口側に出て、うろ覚えの細道をしばらくたどり、見覚えのある中央緑地帯のある閑静な道路に出る。道路を小田急線高架方面に進んで行くと、あっ!営業している!しかも店頭に大判美術本棚が増えて、パワーアップしているじゃないか!
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その相変わらずの突飛さと小ささと、しっかり開店している誠実さとしぶとさに、大いに胸を打たれる。だが今日は、何も買わずにお店の無事だけを確認して駅へと戻る。ちょっと予想外の「戦後推理小説目録」を買ってしまったからな。だがこれが本当に面白いので、買わずにおられなかったのだ…へぇ、寺島珠雄もこんなに推理小説を書いていたのか。ぬぅ、竜胆寺雄も三編…よ、読みたい。下村千秋も!などとしばらくの間楽しめそうな予感が背中を走る…。
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2017年05月11日

5/11新中野のブックオフは5/21まで!

今日は笹塚の北に位置する南台辺りに流れ着く。京王線に戻るにしても、場所が何とも中途半端なので、思い切って北に進めばたどり着くはずの丸ノ内線まで歩くことに決める。『中野通り』を、まだ強い日射しに炙られながら、ヒタヒタ密やかに北上して行く。一旦谷に下りて涼し気な神田川を越え、結構角度のある坂を爪先で上がり、『青梅街道』に近付いて行く…ふと、右手に現れたビル一階の「ブックオフ新中野店」(2010/05/16参照)が目に入る。おやおやおや、閉店しちゃうのか…と貼紙に気付くと、いつ閉店するのかどこにも見当たらないのだが、どうやら70%オフセールであることだけは把握する。細長い店内に進み数段のステップを下りながら、棚の多くに空きが目立ち、レジ周りもありえないほどスッキリしていることに、ブックオフとはいえ、ちょっとした寂しさを感じてしまう。一般文庫や一般単行本はかなり圧縮されてしまっているが、100均文庫やコミックや安売本はまだまだ大量に残されている。思えば七年前にここで買った思潮社「自伝から始まる70章/田村隆一」がきっかけで、まだコンセプトを決めて棚を作っていた初期「フォニャルフ」で『田村隆一と早川書房(とその特異な仲間たち)』を開催したこともあったっけ(2012/02/08参照)。棚を作るんで、わざわざ勝手に、鎌倉の田村隆一に墓に参ったりも、したっけな。などと、数少ないお店との思い出に浸りながら店内を一周。350円の光文社文庫「神津恭介、密室に挑む/高木彬光」を70%オフの105円で購入する。お釣りやレシートともにクーポン券を渡されると、そこに5月21日(日)に閉店することが書かれていた。後十日か…。
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2017年04月12日

4/12青空の下の青梅で別れを告げる。

ポカポカ陽気の街に弛緩しながら、補充用の古本を携え、テクテク歩いて荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)を定点観測する。店頭棚前をニジニジ移動し、単行本を二冊掴んだ後、文庫棚の前にしゃがみ込む。表側には欲しい本は何もナシ。ビル袖壁との間の裏側に潜り込み、再びしゃがみ込む。中段辺りの文庫列の上に置かれた横置きの黒い文庫が二冊…講談社文庫の昭和五十年代推理&SF小説シリーズである。ともに風見潤編訳。おっ、一冊はE・D・ホックじゃないかと手に取ると、開いた扉部分に訳者の献呈箋が挟み込まれていた。しかもちゃんと署名入り。もう一冊は著者献呈カードのみであるが、二冊一緒に抱え込んで店内で精算する。浪速書房「非情の顔/佐賀潜」河出書房新社「私語/田村隆一」講談社文庫「こちら殺人課!/E・D・ホック」「ユーモアミステリ傑作選/風見潤編」を計420円で購入する。ヘヘッとほくそ笑みながら西荻窪に向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)「フォニャルフ」棚に補充する。森村誠一のジュニアミステリ付録本など並べて来ましたので、読みたい方は西荻窪へ!補充を終えて顔を上げると、本棚探偵の「ひとたな書房」に憧れの春陽堂探偵双書が何冊か並んでいるのが目に入ってしまう。逸る気持ちで震える手を、エメラルドグリーンが特徴的な小型本に伸ばし、徐に値段を見てみると、ウギャッ!千円!「悪霊島/香山滋」を即座に購入してしまう。
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その後は中央線→青梅線と乗り継いで、山塊が迫る東京の西へ。河辺駅で下車し、雲が光る広い空の下を歩いて、4/16(日)に閉店してしまう「ブックセンターいとう 青梅店」(2012/07/21参照)にたどり着く。五年前のツアーで一度来たきりの巨大倉庫型店舗だが、地域外から来る人間にはともかく、地元の人にとってここがなくなるのは、大きな痛手ではないだろうか…。駐車場内の入口横には白いテントが建てられ、中ではセットコミックの大量販売が行われている。閉店セールは20%オフである。広大な横長の店舗に入ると、♪てってれてるるる〜てるれ〜♪の『いとうグループ』お馴染みの曲とともに、閉店のアナウンスが繰り返し放送されている。それに加えて上階からは、ドスンドスンと大きな振動音が響いてくる…恐らく閉店撤収作業が、すでに始まっているのだろう。そんな中で、左奥の長い長い古本通路を、幽鬼のようにユラユラと彷徨い続ける。すでに荻窪と西荻窪で満足行く獲物を手に入れているためか、文庫にも単行本にもなかなか手を伸ばせず、ただ時間だけがゆるゆると過ぎ去っていく。最奥の文学・映画・音楽・紀行ゾーンで、ようやく軽いスイッチが入り、雄山閣「妖怪学入門/阿部主計」を20%オフの320円で購入する。精算を済ませ、駄菓子コーナー脇を抜けて、外に出る。駐車場から出て、道路際でお店を見上げると、青空の下には大きな大きな『本』の文字。こののんびりとした光景も、しばらくしたら呆気なく消え去ってしまうのだろう。これでさらば、青梅のリサイクル系巨大古本屋さん。
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2017年04月02日

4/2歩行者天国と小村雪岱

今日の漂着地は白昼の新宿二丁目…特徴ある繁華街は、まだ夜の余韻を引き摺りつつ、穏やかな日射しに照らし出されている。裏道を伝い、閻魔像のある太宗寺脇から、元「昭友社書店」(2016/07/02参照)前に出る。未練たらしく来てしまったが、もはやここで古本を買うことは出来ないのだ。なのでセカセカ新宿駅方向に歩みを進めると、『新宿通り』が途中から開放感満ちあふれる歩行者天国となっている。ここぞとばかりに車道の真ん中を歩きながら、新宿で気軽に古本を買っていきたいなと考える。だが「ブックオフ」では味気なさ過ぎるし、「Brooklyn Parlor」(2010/02/25参照)「エジンバラ」(2015/01/19参照)ではちょっと気軽にというわけにはいかない…そうか、「bookunion SHINJYUKU」(2011/11/10参照)なら、どうにかなるだろと、『新宿通り』沿いの、昭和なビルの三階に駆け上がる。お店ではどうやら、ロックやプログレ本の放出セールらしい。音楽本がずいぶん進攻していると感じつつ、その上音楽関連紙物(レコード会社が出していたカタログ類や、コンサートチケットなどなど)がずいぶん集められているマニアックさに、軽い驚きを覚えてしまう。お店はどうやら、かなり音楽的に進化している模様。というわけで何だか小さくなったフロア棚のサブカルゾーンに神経を集中すると、むっ!講談社「ニューヨークの次郎長/篠原有司男」が、ちゃんとプラカバー&トレペ帯付きで、350円!安い!と即購入し、歩行者天国で記念撮影した後、開放感を持続させつつ地下の『ベルク』にて、黒ビールで古本に乾杯してしまう。
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阿佐ヶ谷に着いて、フラッと「古書コンコ堂」82011/06/20参照)に立ち寄ると、右端日本文学通路棚で黒い本を発見する。函ナシの國文堂書店「亜米利加紀念帖/水上瀧太郎」であるが、隠しても隠し切れないたおやかさと上品さを併せ持つこの本は、小村雪岱装なのである!雪岱フォントの金背文字、黒い表紙に薄く浮かび上がるさらに漆黒な繊細植物群、そして本扉前には再び雪岱フォントで『永井荷風先生にささく』の言葉が!これが515円なんて!とコンコ堂に感謝しながら両手に大事に抱えて喜び、購入する。ちなみに雪岱フォントのタイトル以外は、すべて「亜米利加記念帖」となっている。
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2017年03月29日

3/29「比良木屋」で古本を買って最後の挨拶を。

「フォニャルフ」補充入替用の本を携え、夕方の陽光が眩しい西荻窪へ。そのまま「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かえば、ズッシリ重い古本からすぐさま解放されるのだが、バッグを提げる腕に力を込めたまま、北口東方にテクテク歩を進める。やがてビル一階ミニミニ商店街の古本屋さん「古書 比良木屋」(2008/09/12参照)にたどり着く。三月一杯でお店を閉めてネット店に移行するため、現在閉店セール中なのである。店頭には古本屋さんにあるまじき派手な黄色の『大売出し』幟が翻り、扉には『全品2割引セール』が『全品5割引セール』に書き換えられた貼紙が、哀しく白く輝いている。
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店頭に溢れ出たボロい古書を、ついつい慈しんでしまう。大正12年とある、本革の手帖はキリスト教信者の使っていたもので、ページは敬虔な事象や事柄の記録にあふれている。文庫も改造文庫や戦前新潮文庫が出されているので、かなり夢中になってしまう。そして入口横の本棚から、とても喜ぶべき大判の一冊を掴み取り、本を詰めたバッグを扉横に放置し、重い扉をスライドさせて店内へ。即座に奥でダウンコートを着込んだ店主が、明るく「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。ぺこりと会釈して、直ぐ横の漫画カルチャー棚に熱い視線を注ぎ、そのままの熱さを維持しつつ、向かいの文学棚にも集中する。それにしても、店内はこんなに魔窟の如き本の山だったろうか。左の詩集や音楽棚は深く健在。その棚には『値段のない本は千円』の貼紙あり。時々山や棚から本を取り落とし、奥の店主に謝罪しながら、最終的に右側通路の古い文庫棚に食らいついて一冊を抜き取る。春陽堂少年文庫「家庭用兒童劇/坪内逍遥」THE JUNIOR LITERARY GUILD and THE JOHN DAY COMPANY「SKYSCRAPER」を計1100円で購入し、あっけなくお店に別れを告げる。十七年間、西荻窪で古本を売って下さり、ありがとうございました。そのうちの九年間で、時々店頭を眺めて、時々安い本を買うたいしたことないお客でありましたが、それでも感謝に堪えません。今中央線沿線で、古本屋さん集合地帯として一番ホットとも言える西荻窪から、ひとつの古本屋さんの灯が消えてしまうとは…。だがそんな悲しみをグッと飲み込めるほど嬉しかった収穫は、店頭棚から100円で買った大判の洋書「SKYSCRAPER」。1934年出版の、ニューヨーク『エンパイア・ステート・ビル』の建設を克明に追った写真集なのである。しかもこの本は見返しに貼られたラベルから推察すると、1938年の9月に、ミセス・カーティスから日本のアメリカンスクールに送られたものらしい。よくもまぁ、こんな本が遥々アメリカから昭和十三年に日本に送られた後、二十一世紀の西荻窪にたどり着いていたものである…。
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お店を出て「盛林堂書房」に向かい、「フォニャルフ」棚をどうにか三分の一ほど入れ替える。少し目新しくなりましたので、お近くにお寄りの際は、ぜひとも覗きに来ていただければ。帳場前ではでは北原尚彦氏や横田順彌氏に謁見しつつ、店主・小野氏と色々打ち合わせる。
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2017年03月13日

3/13夕暮れ前の古本屋に立ち寄る。

本日色々こなした後に漂着したのは東松原。完全に曇っているのだが、まだ夕暮れには間がある時間帯である。踏切の音が聞こえてくる「古書瀧堂」(2014/05/01参照)前から、本を熱心に立ち読み座り読みしている地元のおば様たちに紛れ込む。外から来た身には暖房が効き過ぎているためか、たちまち古本棚の前で上気。だが顔をほてらせながらも、熱心で力のある棚造りに、次第に見蕩れて行く…ヒロシマ・ナガサキ・原爆棚は、他店では余り見かけぬ独特な光と重さをたたえている。昭和風俗棚も古書が時代の証言者となっており、ツボをひたと押さえている。文学棚も日本文学〜海外文学幅広く通路一面を占拠。その文学棚からわりと美本な一冊を選び、帳場に声を掛け差し出す。新潮社「空に浮かぶ騎士/吉田甲子太郎」を500円で購入する。レシートを受け取り、「そのままでいいですよ」と袋を辞退。だが店主が本を手にした瞬間、背から表紙にかけて元セロファンが少し剥がれているのに気付き、「あっ…」と声を上げて動きを止めてしまった…このままカバンに入れると破れが広がる、悲しい可能性を感じているのだろう。そんな気持ちを勝手に察し「やっぱり袋に入れて下さい」とこちらから改めてお願いする。すると店主は爆発物でも扱うように、指先で本を掴み、ゆっくり丁寧に袋の中に本を差し入れてくれた。…分かりました、これからも同様に丁寧に扱い、破れをこれ以上広げないよう、保護に努めます…。
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さて、来週3/20(月)に発売になる、交通新聞社「散歩の達人」4月号の特集『東京ディープ観光入門』で、二月に本屋ルポ連載をまとめた著書「東京こだわりブックショップ地図」を上梓した屋敷直子さんと、古本屋や本屋や本について対談させていただきました。全3ページを、予告編的にパパッと分かり易く紹介すれば、お店や本に対する欲望や役割を話し合い、初対面なのに当然の如く意気投合してしまう、楽しく奇妙な時間が流れております。そしてこの対談で、私はもはや未来には目を向けずに、古いものや過去に向かってひたすら突き進んでいることを認識してしまいました…。こんな私をご指名いただき、感謝であります。『個性派書店の深みにハマる』を、どうぞお楽しみに。
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