2017年05月25日

5/25文紀堂書店で月に懐かれる

本日は仙川の北の『白百合女子大学』がある緑ヶ丘に流れ着いたので、これ幸いと南側の「文紀堂書店」(2015/03/31参照)にそそくさ駆け付ける。最近森英俊氏から「棚に探偵小説が増えていますよ」と教えられていたのである。しかし直ぐ駆け付けても、古本神が通ったばかりなので惨憺たる有様だろうと想像し、三分の二ヶ月ばかり我慢しての、放置中だったのである。これくらい時間が経過すれば、色々変化が起こっているはずだ!そう信じてお店にたどり着くと、おぉ!店頭に100均文庫をタワーにして抱えているオジさんがいるではないか。これは負けておられんぞ!と横に並んで棚に視線を注ぐ。すると調子良くたちまち三冊を手にしてしまう。よし、店頭はこれくらいにしておこうと中に進み、左側通路の探偵&ミステリゾーン…ぬぅ、なんだか影も形もなくなっているぞ…では帳場右側の古書棚&古書箱を…あっ!杉山茂丸の「百魔 續編」が函ナシで二千円…装幀&古書の魔力に取り憑かれ、思わず買いそうになるが、『お前、これ本当に読むのか?』と心の声が聞こえて少し正気に返り、そっと棚に戻してしまう…何だか今日は腰が引けてるなぁ…。それに目的の探偵小説類は思ったより少ない…確かに棚に色々変化が起こったようだが、予想外の方向へ進んでしまったようだ…だが児童書棚に紛れ込んでいた黄色表紙バージョンの「フープ博士の月への旅」が五百円なのに喜び、ちくま文庫「ピスタチオ/梨木香歩」中公文庫「肌色の月/久生十蘭」岩崎書店エスエフ少年文庫5「うしなわれた世界/コナン・ドイル」青林社「フープ博士月への旅/たむらしげる」を計1000円で購入する。気付けば月に関わる本を二冊買い、表でお店の看板を見上げれば、そこにも三日月が輝いている。ほんの一瞬だが、なんだか月に懐かれたような時間であった。
bunkidou0525.jpg
そんな一日を過ごしながらつらつら考えていたのは、昨日書いた左川ちかのこと。勝手にしっくり来る“二つ名
”をあれこれ思い悩んでいたのだが、ようやくたどり着いたのは、『絶対零度のモダニズムの幽霊』であった。ちょっと幼稚で俗っぽいが、あの熟れて病的な冷たさが昭和初期から突然立ち上がって来る感覚は、まさにそんな感じとしか、今の自分には言いようがないのである。
posted by tokusan at 20:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月15日

5/15昨日と同じ経堂に来てしまう

二十二時間後に、同じ古本屋の中に、馬鹿みたいに立っていた……そこは昨日訪れたばかりの、経堂の「大河堂書店」(2009/03/26参照)である。何故こんなに早くお店に舞い戻って来たかというと、欲しい本があったからである。もちろん昨日買っていれば、こんな馬鹿みたいな二度手間を踏まなくとも済んだわけだが、残念ながら買うべきか買わざるべきか悩んでしまったのである。挙げ句、愚かにも棚に戻してしまったのである。結局昨日の帰宅中電車内から悩み始め、家に着く頃には買いに行こうと決め、本日打ち合わせを終えた後に、駆け付ける次第となったのである…みなさん、やはり欲しい本が見つかったら、懐の許す限り、その場で買いましょう!何故なら、どうせ買うことになるのだから。などと相変わらず懲りずに身に付かない重要な古本理論を反芻しながら、焦って目的の本棚の前に急行し、目指す本を探し求める…売れてませんように売れてませんように売れてませんように…あった!大正十五年刊の金星堂「モダンガール/清澤洌」である。函ナシだが、驚愕の800円の手書き値段帯が巻かれているのだ。これを買わないなんて、俺は本当に馬鹿だった。棚に置いてけぼりにしてゴメンよ…と詫びつつ、ついでに昨日は目につかなかった日本推理作家協会「推理小説研究11号 戦後推理小説総目録/中島河太郎」を見つけてしまったので、観念して一緒に帳場に差し出す。計2900円で購入し、『気まぐれプレゼント 謎の文庫本』(2017/03/17参照)をお土産にいただく(今回は新潮文庫「果心居士の幻術/司馬遼太郎」であった…)。「モダンガール」は「暗黒日記」で有名なジャーナリストが、様々な婦人問題と風俗を硬軟取り混ぜ扱った研究書である。そして巻末広告を見ると、おぉっ!イナガキ・タルホ「一千一秒物語」が載っているじゃないか!
issenichibyou_monogatari.jpg
『童話の天文學者、セルロイドの美學者、ゼンマイ仕掛の機械學者、奇異な官能的レッテルの蒐集家。そしてアラビヤンナイトの荒唐無稽をまんまと一本の葉巻に封じこめたのがこれだ。』の惹句に、ビリビリ痺れてしまう。痺れたまま、目的を完遂した気分の良さを引き摺り、北口側の「遠藤書店」(2008/10/17参照)を久々に見に行く。
endou0515.jpg
すると、店頭長テーブル100均単行本台で、ちゃんと箱付きの東方社「狂った海/新章文子」と予想外の出会いを果たし、大喜びで購入する。さらに気分が良くなったところで、そうだ、さらに久しぶりに、住宅街のプレハブ古本屋「小野田書房」(2011/06/30参照)の様子も見に行ってみよう。ちゃんと営業しているのだろうか…いやそれより何より、お店はちゃんと残っているのだろうか…と心配しながら再び南口側に出て、うろ覚えの細道をしばらくたどり、見覚えのある中央緑地帯のある閑静な道路に出る。道路を小田急線高架方面に進んで行くと、あっ!営業している!しかも店頭に大判美術本棚が増えて、パワーアップしているじゃないか!
onoda0515.jpg
その相変わらずの突飛さと小ささと、しっかり開店している誠実さとしぶとさに、大いに胸を打たれる。だが今日は、何も買わずにお店の無事だけを確認して駅へと戻る。ちょっと予想外の「戦後推理小説目録」を買ってしまったからな。だがこれが本当に面白いので、買わずにおられなかったのだ…へぇ、寺島珠雄もこんなに推理小説を書いていたのか。ぬぅ、竜胆寺雄も三編…よ、読みたい。下村千秋も!などとしばらくの間楽しめそうな予感が背中を走る…。
posted by tokusan at 18:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月11日

5/11新中野のブックオフは5/21まで!

今日は笹塚の北に位置する南台辺りに流れ着く。京王線に戻るにしても、場所が何とも中途半端なので、思い切って北に進めばたどり着くはずの丸ノ内線まで歩くことに決める。『中野通り』を、まだ強い日射しに炙られながら、ヒタヒタ密やかに北上して行く。一旦谷に下りて涼し気な神田川を越え、結構角度のある坂を爪先で上がり、『青梅街道』に近付いて行く…ふと、右手に現れたビル一階の「ブックオフ新中野店」(2010/05/16参照)が目に入る。おやおやおや、閉店しちゃうのか…と貼紙に気付くと、いつ閉店するのかどこにも見当たらないのだが、どうやら70%オフセールであることだけは把握する。細長い店内に進み数段のステップを下りながら、棚の多くに空きが目立ち、レジ周りもありえないほどスッキリしていることに、ブックオフとはいえ、ちょっとした寂しさを感じてしまう。一般文庫や一般単行本はかなり圧縮されてしまっているが、100均文庫やコミックや安売本はまだまだ大量に残されている。思えば七年前にここで買った思潮社「自伝から始まる70章/田村隆一」がきっかけで、まだコンセプトを決めて棚を作っていた初期「フォニャルフ」で『田村隆一と早川書房(とその特異な仲間たち)』を開催したこともあったっけ(2012/02/08参照)。棚を作るんで、わざわざ勝手に、鎌倉の田村隆一に墓に参ったりも、したっけな。などと、数少ないお店との思い出に浸りながら店内を一周。350円の光文社文庫「神津恭介、密室に挑む/高木彬光」を70%オフの105円で購入する。お釣りやレシートともにクーポン券を渡されると、そこに5月21日(日)に閉店することが書かれていた。後十日か…。
bookoff_shinnakano.jpg
posted by tokusan at 20:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月12日

4/12青空の下の青梅で別れを告げる。

ポカポカ陽気の街に弛緩しながら、補充用の古本を携え、テクテク歩いて荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)を定点観測する。店頭棚前をニジニジ移動し、単行本を二冊掴んだ後、文庫棚の前にしゃがみ込む。表側には欲しい本は何もナシ。ビル袖壁との間の裏側に潜り込み、再びしゃがみ込む。中段辺りの文庫列の上に置かれた横置きの黒い文庫が二冊…講談社文庫の昭和五十年代推理&SF小説シリーズである。ともに風見潤編訳。おっ、一冊はE・D・ホックじゃないかと手に取ると、開いた扉部分に訳者の献呈箋が挟み込まれていた。しかもちゃんと署名入り。もう一冊は著者献呈カードのみであるが、二冊一緒に抱え込んで店内で精算する。浪速書房「非情の顔/佐賀潜」河出書房新社「私語/田村隆一」講談社文庫「こちら殺人課!/E・D・ホック」「ユーモアミステリ傑作選/風見潤編」を計420円で購入する。ヘヘッとほくそ笑みながら西荻窪に向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)「フォニャルフ」棚に補充する。森村誠一のジュニアミステリ付録本など並べて来ましたので、読みたい方は西荻窪へ!補充を終えて顔を上げると、本棚探偵の「ひとたな書房」に憧れの春陽堂探偵双書が何冊か並んでいるのが目に入ってしまう。逸る気持ちで震える手を、エメラルドグリーンが特徴的な小型本に伸ばし、徐に値段を見てみると、ウギャッ!千円!「悪霊島/香山滋」を即座に購入してしまう。
akuryoutou_kazami.jpg

その後は中央線→青梅線と乗り継いで、山塊が迫る東京の西へ。河辺駅で下車し、雲が光る広い空の下を歩いて、4/16(日)に閉店してしまう「ブックセンターいとう 青梅店」(2012/07/21参照)にたどり着く。五年前のツアーで一度来たきりの巨大倉庫型店舗だが、地域外から来る人間にはともかく、地元の人にとってここがなくなるのは、大きな痛手ではないだろうか…。駐車場内の入口横には白いテントが建てられ、中ではセットコミックの大量販売が行われている。閉店セールは20%オフである。広大な横長の店舗に入ると、♪てってれてるるる〜てるれ〜♪の『いとうグループ』お馴染みの曲とともに、閉店のアナウンスが繰り返し放送されている。それに加えて上階からは、ドスンドスンと大きな振動音が響いてくる…恐らく閉店撤収作業が、すでに始まっているのだろう。そんな中で、左奥の長い長い古本通路を、幽鬼のようにユラユラと彷徨い続ける。すでに荻窪と西荻窪で満足行く獲物を手に入れているためか、文庫にも単行本にもなかなか手を伸ばせず、ただ時間だけがゆるゆると過ぎ去っていく。最奥の文学・映画・音楽・紀行ゾーンで、ようやく軽いスイッチが入り、雄山閣「妖怪学入門/阿部主計」を20%オフの320円で購入する。精算を済ませ、駄菓子コーナー脇を抜けて、外に出る。駐車場から出て、道路際でお店を見上げると、青空の下には大きな大きな『本』の文字。こののんびりとした光景も、しばらくしたら呆気なく消え去ってしまうのだろう。これでさらば、青梅のリサイクル系巨大古本屋さん。
itou_oume0412.jpg
posted by tokusan at 18:42| Comment(4) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月02日

4/2歩行者天国と小村雪岱

今日の漂着地は白昼の新宿二丁目…特徴ある繁華街は、まだ夜の余韻を引き摺りつつ、穏やかな日射しに照らし出されている。裏道を伝い、閻魔像のある太宗寺脇から、元「昭友社書店」(2016/07/02参照)前に出る。未練たらしく来てしまったが、もはやここで古本を買うことは出来ないのだ。なのでセカセカ新宿駅方向に歩みを進めると、『新宿通り』が途中から開放感満ちあふれる歩行者天国となっている。ここぞとばかりに車道の真ん中を歩きながら、新宿で気軽に古本を買っていきたいなと考える。だが「ブックオフ」では味気なさ過ぎるし、「Brooklyn Parlor」(2010/02/25参照)「エジンバラ」(2015/01/19参照)ではちょっと気軽にというわけにはいかない…そうか、「bookunion SHINJYUKU」(2011/11/10参照)なら、どうにかなるだろと、『新宿通り』沿いの、昭和なビルの三階に駆け上がる。お店ではどうやら、ロックやプログレ本の放出セールらしい。音楽本がずいぶん進攻していると感じつつ、その上音楽関連紙物(レコード会社が出していたカタログ類や、コンサートチケットなどなど)がずいぶん集められているマニアックさに、軽い驚きを覚えてしまう。お店はどうやら、かなり音楽的に進化している模様。というわけで何だか小さくなったフロア棚のサブカルゾーンに神経を集中すると、むっ!講談社「ニューヨークの次郎長/篠原有司男」が、ちゃんとプラカバー&トレペ帯付きで、350円!安い!と即購入し、歩行者天国で記念撮影した後、開放感を持続させつつ地下の『ベルク』にて、黒ビールで古本に乾杯してしまう。
newyork_no_jirochou.jpg

阿佐ヶ谷に着いて、フラッと「古書コンコ堂」82011/06/20参照)に立ち寄ると、右端日本文学通路棚で黒い本を発見する。函ナシの國文堂書店「亜米利加紀念帖/水上瀧太郎」であるが、隠しても隠し切れないたおやかさと上品さを併せ持つこの本は、小村雪岱装なのである!雪岱フォントの金背文字、黒い表紙に薄く浮かび上がるさらに漆黒な繊細植物群、そして本扉前には再び雪岱フォントで『永井荷風先生にささく』の言葉が!これが515円なんて!とコンコ堂に感謝しながら両手に大事に抱えて喜び、購入する。ちなみに雪岱フォントのタイトル以外は、すべて「亜米利加記念帖」となっている。
america_kinenchou.jpg
posted by tokusan at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月29日

3/29「比良木屋」で古本を買って最後の挨拶を。

「フォニャルフ」補充入替用の本を携え、夕方の陽光が眩しい西荻窪へ。そのまま「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かえば、ズッシリ重い古本からすぐさま解放されるのだが、バッグを提げる腕に力を込めたまま、北口東方にテクテク歩を進める。やがてビル一階ミニミニ商店街の古本屋さん「古書 比良木屋」(2008/09/12参照)にたどり着く。三月一杯でお店を閉めてネット店に移行するため、現在閉店セール中なのである。店頭には古本屋さんにあるまじき派手な黄色の『大売出し』幟が翻り、扉には『全品2割引セール』が『全品5割引セール』に書き換えられた貼紙が、哀しく白く輝いている。
hirakiya0329.jpg
店頭に溢れ出たボロい古書を、ついつい慈しんでしまう。大正12年とある、本革の手帖はキリスト教信者の使っていたもので、ページは敬虔な事象や事柄の記録にあふれている。文庫も改造文庫や戦前新潮文庫が出されているので、かなり夢中になってしまう。そして入口横の本棚から、とても喜ぶべき大判の一冊を掴み取り、本を詰めたバッグを扉横に放置し、重い扉をスライドさせて店内へ。即座に奥でダウンコートを着込んだ店主が、明るく「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。ぺこりと会釈して、直ぐ横の漫画カルチャー棚に熱い視線を注ぎ、そのままの熱さを維持しつつ、向かいの文学棚にも集中する。それにしても、店内はこんなに魔窟の如き本の山だったろうか。左の詩集や音楽棚は深く健在。その棚には『値段のない本は千円』の貼紙あり。時々山や棚から本を取り落とし、奥の店主に謝罪しながら、最終的に右側通路の古い文庫棚に食らいついて一冊を抜き取る。春陽堂少年文庫「家庭用兒童劇/坪内逍遥」THE JUNIOR LITERARY GUILD and THE JOHN DAY COMPANY「SKYSCRAPER」を計1100円で購入し、あっけなくお店に別れを告げる。十七年間、西荻窪で古本を売って下さり、ありがとうございました。そのうちの九年間で、時々店頭を眺めて、時々安い本を買うたいしたことないお客でありましたが、それでも感謝に堪えません。今中央線沿線で、古本屋さん集合地帯として一番ホットとも言える西荻窪から、ひとつの古本屋さんの灯が消えてしまうとは…。だがそんな悲しみをグッと飲み込めるほど嬉しかった収穫は、店頭棚から100円で買った大判の洋書「SKYSCRAPER」。1934年出版の、ニューヨーク『エンパイア・ステート・ビル』の建設を克明に追った写真集なのである。しかもこの本は見返しに貼られたラベルから推察すると、1938年の9月に、ミセス・カーティスから日本のアメリカンスクールに送られたものらしい。よくもまぁ、こんな本が遥々アメリカから昭和十三年に日本に送られた後、二十一世紀の西荻窪にたどり着いていたものである…。
skyscraper.jpg

お店を出て「盛林堂書房」に向かい、「フォニャルフ」棚をどうにか三分の一ほど入れ替える。少し目新しくなりましたので、お近くにお寄りの際は、ぜひとも覗きに来ていただければ。帳場前ではでは北原尚彦氏や横田順彌氏に謁見しつつ、店主・小野氏と色々打ち合わせる。
posted by tokusan at 20:10| Comment(6) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月13日

3/13夕暮れ前の古本屋に立ち寄る。

本日色々こなした後に漂着したのは東松原。完全に曇っているのだが、まだ夕暮れには間がある時間帯である。踏切の音が聞こえてくる「古書瀧堂」(2014/05/01参照)前から、本を熱心に立ち読み座り読みしている地元のおば様たちに紛れ込む。外から来た身には暖房が効き過ぎているためか、たちまち古本棚の前で上気。だが顔をほてらせながらも、熱心で力のある棚造りに、次第に見蕩れて行く…ヒロシマ・ナガサキ・原爆棚は、他店では余り見かけぬ独特な光と重さをたたえている。昭和風俗棚も古書が時代の証言者となっており、ツボをひたと押さえている。文学棚も日本文学〜海外文学幅広く通路一面を占拠。その文学棚からわりと美本な一冊を選び、帳場に声を掛け差し出す。新潮社「空に浮かぶ騎士/吉田甲子太郎」を500円で購入する。レシートを受け取り、「そのままでいいですよ」と袋を辞退。だが店主が本を手にした瞬間、背から表紙にかけて元セロファンが少し剥がれているのに気付き、「あっ…」と声を上げて動きを止めてしまった…このままカバンに入れると破れが広がる、悲しい可能性を感じているのだろう。そんな気持ちを勝手に察し「やっぱり袋に入れて下さい」とこちらから改めてお願いする。すると店主は爆発物でも扱うように、指先で本を掴み、ゆっくり丁寧に袋の中に本を差し入れてくれた。…分かりました、これからも同様に丁寧に扱い、破れをこれ以上広げないよう、保護に努めます…。
takidou17.jpg

さて、来週3/20(月)に発売になる、交通新聞社「散歩の達人」4月号の特集『東京ディープ観光入門』で、二月に本屋ルポ連載をまとめた著書「東京こだわりブックショップ地図」を上梓した屋敷直子さんと、古本屋や本屋や本について対談させていただきました。全3ページを、予告編的にパパッと分かり易く紹介すれば、お店や本に対する欲望や役割を話し合い、初対面なのに当然の如く意気投合してしまう、楽しく奇妙な時間が流れております。そしてこの対談で、私はもはや未来には目を向けずに、古いものや過去に向かってひたすら突き進んでいることを認識してしまいました…。こんな私をご指名いただき、感謝であります。『個性派書店の深みにハマる』を、どうぞお楽しみに。
posted by tokusan at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月06日

3/6中央線の古本屋店頭を巡りながら「古本センター」の変化に気付く。

昼過ぎから中央線を駆使して、「中央線古本屋地図(仮)」の取材に勤しむ。中野駅からスタートして、気になるお店の店頭100均棚で、気になる本を集めて行こうという、たわいもない息抜き的企画ページである。しかしさすがは中央線の古本屋さんたち!結果はなかなか豊穣なものとなったので、この小さな旅の様子は、どうか鋭意制作中の本誌でお確かめいただければ。

そんな風に100均本ばかり買っていたのだが、時々はテーマから外れた、それ以上の値の本も、我慢出来ずにやはり買ってしまっていたのである…。荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)では315円棚から函ナシの中央公論社「有頂天/内田百閨vを。見返しには『貸本 文泉堂 大湊書店』(青森のお店だろうか…)とあるが、革背も天金もちゃんと残っており、それほど酷い状態ではない。西荻窪「音羽館」(2009/06/04参照)では潮出版社「宝石を見詰める女/稲垣足穂」(月報付き)を300円で。吉祥寺の「よみた屋」(2014/08/29参照)では、『俗天使』刊行委員会「俗天使/持丸良雄」を300円で購入。偕成社のレア少年探偵小説「夜行虫の謎」を書いた作者による、童話風青春小説。東都書房から出ていた単行本を、2008年に復刻したものである。三鷹の「水中書店」(2014/01/18参照)では、津軽書房「秋田雨雀紀行 1905〜1908/工藤正廣」を600円で購入。そして最後に八王子の「佐藤書房」(2009/08/26参照)では、角川文庫「樽/クロフツ 田村隆一訳」を150円で購入する。三浦朱門が訳していたのは知っていたが、田村隆一も訳していたとは不覚にも知らなかった…。
0306syukaku.jpg

そんな慌ただしい取材の途中で、ふと吸い込まれた吉祥寺の「古本センター」(2013/07/01参照)では、驚きの光景に出くわす。以前は忙しない狭いバス通りから、ビルの通路に入り込んで行くと、左にプレミア本ガラスケースがあり、その前に図録やビジュアル誌のラックが置かれ、右階段脇には100均棚が置かれ、さらに中に入り込むと帳場横から店内へ、という構造であった。ところが今日訪れてみると、ガラスケースが奥へ引っ込み、見たこともない小部屋的スペースが出現していたのである。恐らく帳場裏のバックヤードを改造し、売場として解放したのだろう。壁際は左奥がガラスケースとなっており、他は料理やファッションや自然・趣味などの大判本が収まる本棚となっている。ガラスケースの膝元には浅い古書平台があり、正面にはグラビア誌などが積み上がる山が形成されている。ガラスケース横にはカーテンが貼られ、空いた隙間からチラリと帳場の様子が垣間見えたりしている。突然起こった、ちょっとした変化であるが、何だか今までまるで気付かなかった秘密の小部屋に迷い込んだようで、そんなシチュエーションに古本心と探偵心が、やたらとトキメキを覚えてしまう。
furuhon_center.jpg
posted by tokusan at 21:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月02日

3/2長崎の息の長い老舗を知る。

日中傘を持っていなかったので、雨に降られたりと悲しい目に遭いながら、午後六時の祐天寺。まだ雨はちょぼちょぼと降り続けているのだが、もはや濡れることも厭わず、駅東側の「北上書房」(2009/02/21参照)で古本休息をとることにする。店頭は完全防備の雨仕様だが、店内に入れば、通路狭めで古書多めのいつもの空間。棚上段〜中段と、その前に大量に横積みになった本を、時に頭を横にして背文字を見ながら、ゆるりと通路を一周。店主は真剣な表情と漲る気合いを発し、古書の値付に勤しんでいる。いつもはほとんど見向きもしない歴史棚から一冊、さらに右側通路のエンタメ文庫棚から一冊抜き取り、精算をお願いする。宮本書店「長崎の史蹟と名勝 雲仙及其附近/仁尾環」ケイブンシャ「うわさの恐怖体験大百科」を計750円で購入する。表に出ると、商店街の先の高架を、東横線がンガァ〜と走り抜けて行く。明かりを灯す古本屋の店頭と相まり、詩情豊かな一瞬が目の前に出現。
kitagami17.jpg

「長崎の史蹟と名勝」は昭和七年刊の、地元の本屋さんが出版した、写真豊富な史蹟名勝観光ガイドである。その本文も充分魅力的なのだが、それより素晴らしいのは本文の合間に、計28ページの地元企業や店舗の広告が挟まれていることである。旅館・ホテル・文房具屋・食料品店・からすみ・洋傘・自動車屋・写真機&活動写真機屋・運動具&玉突臺屋…あっ!大好きなカステラの『福砂屋』もあるじゃないか!むむっ、高級食堂長崎名物『カフェー クロネコ』なんてのもあるが、銀座の『クロネコ』とは似ても似つかぬしょぼい店舗で、盆踊りみたいな飾り付けが悲哀を誘う。看板に目を凝らすと可愛いクロネコの絵が見えるのもご愛嬌。
kuroneko.jpg
おぉ!そして古本屋さんの広告もあるじゃないか。『遠近にかかわらず参上』の「長崎書店」と『書店と良友とは近づくほど益多し』の「大正堂書店」である。長崎書店は今昔古本と新古雑誌や美術紙物を扱い、大正堂書店は古典稀書・各種資料とある。…この書店たち、いつまであったのだろうか?と手持ちの古本屋地図などで調べてみると、昭和五十三年の時点で長崎書店はすでに見当たらないが、ぬぉっ!大正堂書店はある!さらに時代を新しくして、1981年版や21世紀版で探してみると、ちゃんと載ってる!スゴい!創業が明治四十三年とあるのもスゴい!さらに最新の「古本屋名簿」にあたってみると…の、載ってる…さらにネットで調べてみると、げ、現役バリバリで営業中だ…すげぇ老舗だったんだ。今から八十五年前の広告には、『弊店は創業以来誠實を以て、今日の榮を得感謝に絶へません』『尚一層讀書界に盡す事を只管念願する次第であります』と、熱い言葉が掲載されている。長い年月を貫き、その純な心意気が、ビシバシと伝わって来るではないか!いつの日か長崎のこのお店に、この広告をそっと懐中に忍ばせて、訪れてみたいものである。
nagasaki_taisyou.jpg
posted by tokusan at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月16日

2/16またもや夕暮れの最中の古本屋

国立近辺で野暮用をこなしていると、いつものように夕暮れを迎えてしまう。家路をたどる途中に、『旭通り』の東南端から駅へ向かっていると、都合の良いことに夕暮れの中の「ユマニテ書店」(2009/06/22参照)前を通りかかる。最近、夕暮れの古本屋に行き着くことが多くなっているが、どのお店もなんだかホッとする、昼間のお店とは微妙に異なる、美しい店頭光景になっていると感じてしまうのは、古本屋好き故の贔屓な視点のせいであろうか…。
yumanite17.jpg
歩道が狭いために100均ラックしか出ていない侘しい店頭。だが中に進むと、古書多めの棚がふわりと古本心を気前よく受け止めてくれるのだ。帳場付近に近付くと初めて「いらっしゃいませ」と小さく声をかけるご婦人に、ぺこりとお辞儀しながら静かな静かな二本の通路を行き来する。ここは値段はしっかり目だが、所々鉛筆で値段が書き換えられた値下げが敢行されているので、そこに望みを賭けて、面白そうな本を手に取って行く。十分ほど滞店した結果、千円から五百円に値下げされた弘文堂世界文庫「樺太島紀行(上)/チエホフ」(ちなみにこの文庫、(上)とあるが(下)は未刊行である)を購入する。ご婦人は帳場下をガサゴソしながら、「すいません、ウチの袋じゃないんですが…」と照れながら、『国際交流海外視察団派遣計画』という袋に文庫を収めていただく。帰りの電車でボヤボヤしながらも、18ページまで読み込む。まだ樺太に着いてもおらず、『樺太は島ではなく半島説』という過去の誤りを列挙している段階で阿佐ヶ谷駅に着いてしまう。

家では色々やりつつ、相変わらず古本市用古本束の作成に勤しむ。ようやく四十本を越えたところだが、どうせ盛林堂さんには「全然まだまだ足りないよぉ〜」と怒られるに違いない…。そんな風に打ちひしがれながらの今日の発掘本はこちら。私のバイブルでもある「ミステリーファンのための古書店ガイド」作者である野村宏平氏の異色推理小説、エニックス文庫「ピースランド殺人事件」である。動物たちの楽園で、大富豪であるキタキツネが殺され、真相解明のため動物たちが珍騒動を繰り広げる…と折り返しの解説にはある…すみません、まだ読んでいません。だが『あとがき』だけチラッと見てみると『それにしても動物の世界を舞台にした推理小説というのはむずかしい。だって、動物の世界には、人間の世界とは違ったルールがあるでしょ。そこをちゃんと説明しておかないと、推理小説のフェアプレー精神に反することになっちゃうもんね』と、とてもファンシーな設定なのに、ミステリマニアとしての筋を通そうとしているところが、真面目で何かおかしい。実はこの本、ちょっとしたレア本なのであるが、近々野村氏にお会いする予定があるので、さらなるレア本にしてもらおうといやらしく画策中なのである。
peaceland.jpg
posted by tokusan at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月14日

2/14「神楽坂サイクル」は健在であった。

珍しく雑誌対談の仕事が入ったので(もちろん古本屋についてである)午後に神楽坂へ向かう。『1番出口』から地上に出ると、対談場所に指定されたブックカフェ『神楽坂モノガタリ』はすでに目の前なのだが、まだそちらには足を向けずに、逆側の西へテクテク。するとすぐに古びた自転車屋「神楽坂サイクル」(2012/07/10参照)が見えると同時に、うほっ!店頭には未だ頼もしく継続している、小さな古本販売箱が視界に飛び込んでくる。近付き見下ろすと、相変わらず硬めと言うか、融通の利かなさそうな函入本のラインナップ。
kagurazaka_cycle17.jpg
だがせっかく足を留めたのだ。何か買っておきたいと、潮出版「透明な時の中で/島尾敏雄」を200円で買おうとすると、料金缶に放り込むべき小銭がないことに気づく。慌てて先のコンビニまで足を延ばし、チョコを買ってお金を崩す。そして自転車屋まで戻り、百円玉二枚を缶に落とし込む。そうこうしいるうちに、対談の時間が近付いて来てしまったので、さらに慌てながら『モノガタリ』へ。古本屋や書店について、ペラペラと熱く楽しく語り合ってしまう。当対談については後日詳細をお知らせしますので、どうか発売日に書店に駆け付けていただければ幸いです。

帰りは『神楽坂』を東に下り、飯田橋より帰路に着く。家に帰ってからは、仕事をしながら再びの古本束作り。だが、500均〜自由値付けゾーンに入ってからは、本の選択に時間がかかり、あまり山を切り崩せない状況が続く。仕方ないので、再び均一本候補をある程度掘り出しつつ、そのスピードと勢いでアンコになりそうな古本をジワジワッと選び続ける。結局二本の束を作ったところで、あっという間に疲労してしまったので、本日の作業を終了とする。今日の再読したかった発掘本は、ちょっと手こずっている、なかなか高さの減らない仕事部屋左側の山から出て来た二冊を紹介しよう。一冊目は港雄一の「犯し屋ブルース」。最低のタイトルだが(“犯し屋”は港の男優としての異名でもある)、ポルノ映画男優・港の駆け抜けて来たマイナー映画世界の貴重な記録であり、抜群な面白さを誇っている。大和屋竺の名作『荒野のダッチワイフ』主演時のエピソードが載っているのも高得点。二冊目は薄手の自費出版本で、有名切手マニアが、切手を題材にした珍しい小説と言うことだけで昭和六十三年に復刻した「探偵小説 切手の奇遇」である。昭和三年に講談社「キング」に掲載された、ゆったりとした二段組み十ページの短篇で、大阪と東京を舞台に『キ半銭』という稀少なエラー切手を巡るストーリー。作者の此木久山は切手マニア界重鎮のペンネームで(他に『洒落録保留無寿』という筆名も)、挿絵は松野一夫。解説は基本的に、コレクターとしての作者と切手のことばかりなのが、ただただ素敵である。
okasiya_kitte.jpg
posted by tokusan at 22:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月06日

2/6「澤口書店 小川町店」は閉店セール20%off中!

午前十一時過ぎに水道橋駅に降り立ち、古書街のパトロールに取りかかる。ガード下から『白山通り』を南下し始め、初っ端の「有文堂書店」(2010/09/03参照)でまだ開店準備真っ最中のオヤジさんから宝文館「随筆集 植物學九十年/牧野富太郎」を500円で購入する。そのまま南に早足で下り続け、愛しの「日本書房」(2011/08/24参照)では先客のライバルが店頭和本タワーに執拗に挑んでいるのを目撃し、ハラハラしてしまう。彼が退いた後に慌てて飛びつくと、ちょっと良さげな仙花紙本が、しっかり残っていたじゃないか。良文堂書店「江戸自慢 風流伊達姿/桑野桃華」(桑野は探偵小説「ジゴマ」の訳者でもある。この本は二代目市川團十郎の小説で、装幀や口絵を伊藤晴雨が担当している)を300円で購入する。
furyu_date_sugata.jpg
そのまま通りを下り、今日はいやに長い焼肉屋の行列横を通過しながら、「アムール」(2011/08/12参照)でコロナ社コロナ・シリーズ「人工衛星/新羅一郎」「渦/鬼頭史城」を計100円で購入。『靖国通り』では西に東にと行き来するが、結局何も買えずじまいだったので、すぐさま古書街から離れるようにして『靖国通り』を東へ東へ…。そうしてようやく『小川町交差点』を過ぎると、地下鉄出入口の横のビルの谷間に挟まれた、コメントタレコミ近々の閉店を知った「澤口書店 小川町店」(2008/08/14参照)が見えて来た。あっ、確かに店頭新書棚の脇には、赤い『閉店セール20%off!!』の貼紙がある。セールは二月末まで…今後は、神保町の「神保町店」(2011/08/05参照)「巌松堂ビル店」(2014/04/12参照)と「東京古書店」(2014/12/17参照)に、すべての機能を集中させるということだろうか。ビルの谷間の青空をバックにした、『安い本』やドデカい『本』の看板を仰ぎ見て、四角い洞窟のような店内に足を踏み入れる。右には文化系の専門書が並び、左は文庫を中心に文学や歴史が続く。主に文庫棚に意識を集中して、恐らく最後になるであろうお店での買物を楽しむ。店内には「巌松堂ビル店」の詳しい店内見取り図あり。しかし、入口近くと、奥の曲がり込み少し上がり込んだアダルトコーナーの、蛍光灯の明滅具合は、なかなか激しいものがある。大都会のど真ん中なのに、無闇に場末感を覚えてしまうほどである。…今がこの状態ということは、恐らく閉店までこのチカチカ状態で、乗り切るつもりだな…。新潮文庫「幻花/梅崎春生」を20%オフの160円で購入する。そしてこのお店での心残りと言えば、今はもう入れぬアダルトだらけの二階に、一度くらい勇気を出して上がってみるべきだったかなということ。いったい外から様子をうかがえぬ階上は、どんな構造になっていたのだろうか…。
sawaguchi_ogawachou17.jpg
posted by tokusan at 15:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月03日

2/3「雲波」復活!久米元一!! 中川信夫!!!

昨年店主の急逝により、休店を余儀なくされていた国分寺の「古本 雲波」(014/09/05参照)が、いよいよ本日から奥さまが店を継がれ、再始動!新たなるお店の門出を目撃するために、中央線で西へ。巨大タワーマンション建築の槌音が響く北口を抜け、商店街を通って『国分寺街道』の坂道に出る。北にグイグイと向かい、ベーグル屋の前を通り、右手前方に今日も「才谷屋書店」(2012/05/07参照)が開いていないのを確認すると、青い日除けの下の「雲波」は、以前と同じ姿で営業中であった。
fukkatsu_unpa.jpg
均一壁棚を眺めてから店内に上がり込むと、すでに先客が三人ほど。恐らく本日の再開を待ち望んでいた方々ではないだろうか。棚には変わりなく本が詰まり、安値で良書を並べていた雲波らしさを保持している。つまりは、左側の絵本や児童文学関連(絶版漫画が繁殖中…)以外は、元のままなのである。だがこれからは、奥さまが棚を整理したり補充したり買取したりして、古本屋を営んで行くことにより、ゆっくりゆるゆると変化し続け、新たな雲波の展開を見せて行くのだろう。それにしても、いつの間にか店内には、本棚や床板の木の香りではなく、古本の匂いが満ち満ちている。…う〜む、とても良い香りだ…。じっくりと店内を一周している間に、先客はみな古本を買っていく。奥さまは活版印刷について聞かれたり、「これからもう、ずっと開いてるの?」などと聞かれたりしながら、新たな営業日と営業時間を伝えている(12:30〜19:00で金土日月営業。夏休み&冬休みあり)。くさぶえ文庫「子どものための科学の本/吉村証子」毎日新聞社「餓鬼一匹/山中恒」を計650円で購入し、新たな門出をささやかに祝う。

再び中央線の人となって、西荻窪下車。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に立ち寄り「フォニャルフ」に補充する。すると同じ「古本ナイアガラ」の「本棚探偵のひとたな書房」が、入替補充したばかりなのにもはやスカスカになっている、背筋も凍る状況が目に留まる。だが!スカスカでもそこには、素晴らしき本がナナメになりつつも、まだ並んでいた!偕成社「白髪鬼/久米元一」である!貸本仕様で、落書き(文字の落書きで『ガンテツ』『くそたれ』『ニクリロ』などの言葉が見返しに書かれている)はあるが、それでもカバーはキレイだし、見返しがテープで補強してあり、糸かがりされているとは言え、本文ページはいたってまとも。それが値段を見ると、何と2000円なのである!本棚探偵に膝を屈するように、購入を決意する。聞けば棚には同様のジュニア探偵小説が並んでいたそうだが、二人の古本神が神速でかっさらっていったとのこと。ところがこの「白髪鬼」は、神たちがすでに所持していると言う理由で、奇跡的に残されていたのであった。
hondanatantei_hakuhatsuki.jpg
というわけでお店に許可を採り、本棚探偵棚札とともに、喜び悶えながら記念撮影。

その後は帳場にて店主・小野氏と、仕事の打ち合わせや月末に予定している個人古本市(近日中に詳細発表いたします)の話をしていると、先日手伝った買取本が、整理も値付も終わって棚に並んでいるというので、より充実した映画棚を、わが子を見るように観察する。ところがその中の一冊に、おかしな気を感じ取る。映画監督・中川信夫の詩集?中川信夫が詩集を出していた?思わず苦笑いしながら、その詩集を手にして開いてみると、途端に本扉裏に筆で書かれた識語署名が現れた。それを隣で見ていた小野氏が「あっ…」と微かな声を上げる。こちらも「これ…」と、思わず時間が停まる。値段は激安の千円なのだが、このまま購入してよいものか逡巡すると、小野氏は即座に覚悟を決め「いいよ、千円で。いいよ」と男気を見せてくれた。ありがとうございます!雑草社「中川信夫詩集 業(ごう)」を購入する。奥付を見てみると、発行所と著者である中川信夫の住所が一緒なので、ほぼ自費出版本であることが分かる。ビニカバが付いて、何故か小豆色と紺色の帯二種(表1表4のアオリやキャッチが異なる)が巻かれている。長らく絶版だったらしく(自費出版本だから当然か…)、2009年に『中川信夫偲ぶ会酒豆忌』により復刻されたことを後で知る。
nakagawanobuo_gou.jpg
再び喜び悶えながら記念撮影。今日は何だか、素晴らしい古本日和であった。
posted by tokusan at 18:11| Comment(4) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月01日

2/1小山清に喜び六本木に古本屋さんの幻を視る。

午前から細かい仕事に集中していたら、ムラムラと古本が買いたくなってしまい、キリの良いところで家を飛び出し、早足で開店直後の荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)に駆け付ける。店頭はそれほどでもないが、店内にはすでに多数の古本修羅の侵入を許してしまっている…。買うぞ買うぞと意気込んで、店頭で四冊を掴んでから店内文庫棚にベタづきする。どこかに動きはないものかと、一棚ごとに視線をゲーム『ドンキーコング』の樽のように左から右→一段下→右から左と走らせることを繰り返し、結構下方の“こ”のコーナーに小山清の文庫が二冊並んでいるのを発見する。共に新潮文庫の「落穂拾ひ・聖アンデルセン」なのだが、一冊は平成復刻版でカバーに汚れがあるため420円。あれ?こっちは…元パラ&白帯…ということはオリジナル版か!そっと手に取り奥付を見ると、昭和三十年十一月二十日の初版である!初めて古本屋さんで出会ったぞ!では値段は?最終ページに貼付けられた値段札を見ると、これが525円!もちろん遠慮会釈なく買わさせてもらいます。今日もありがとう、「ささま書店」!桃源社「黄金バット 天空の魔城 彗星ロケット/永松健夫」芳賀書店「破滅SF 破滅の日/福島正美編」未来社「すねこ・たんぱこ 第二集 岩手の昔話/平野直編」大陸書房「日本の妖怪/早川純夫」山と渓谷社「現代の探検 創刊号」等とともに計1365円で購入する。
ochibohiroi.jpg
喜びを記録しておくために、向かい側の歩道からお店とともに記念撮影。

満足したのでスタスタ家に戻り、しばらく真面目に仕事する。午後に再び外出し、先日の古本神と古本魔神の響宴に参加した折に耳にした、六本木にあった「竦書店誠志堂」(2008/12/16参照)が秘かにビル階上で営業しているらしいという情報を確かめに行く。深い深い大江戸線ホームから地上の『六本木交差点』に脱出し、早速交差点近くの古本屋さんのあったビルを見に行く。ビル入口や壁面には、店舗については何も情報が出ていない。だが、細く昭和の通路に踏み込み、ビルの案内板に目を凝らすと、五階部分に「竦書店誠志堂」の表示があるではないか。せっかくここまで来たんだ。とりあえずエレベーターで向かってみようと、通路奥のこれまた昭和なカゴに乗り込んで上階へ。扉が開くと、静かで人の気配はない。階段室から左側の通路の様子をうかがうと、奥に確かに古本屋さんが存在していた。
seishidou5f.jpg
壁に立て掛けられているのは、何処かで使っていた看板を外し、そのまま使用しているようだ。でもやっぱり、これは明らかに事務所店である。常連さんや、予約をしてから入店するのが、正しい作法であろう。忍び足でエレベータに引き返し、階下へ。

せっかくここまで来たので、歩いて渋谷方面を目指し、『宮益坂』上の古本屋さんを観測して行くことにする。交差点近くの『六本木通り』は、街にも道行く人にも生活感はにじんでおらず、ただリッチでハイソなライフスタイルの潤いのみに満ちあふれている。北側の歩道を西に歩いて行くと、首都高越しにかろうじて日光が降り注ぎ、少しだけ暖か。テクテクテクテク大都会を、蟻になった気分で歩き詰め、結構急な『霞坂』を下れば、そこが西麻布。谷底から、これも角度のきつい急坂を上がってさらに西に進み、化粧品広告ばかりがディスプレイされた『富士フィルム』ビル前を過ぎ、およそ一キロの『骨董通り』に入り込む。途中、現代的なビル一階に小さな本屋があるのに気付き、いそいそと近付いてみると、「BIBLE HOUSE」という、多種多様な聖書を集めて販売しているお店であった。そして七車線の『青山通り』を渡り、左に『青山学院大学』キャンパスを臨みながら渋谷方面に進んで行くと、まずは「巽堂書店」(2008/07/04参照)が出現。いつもとは逆のルートなので、なんかちょっと新鮮なアプローチである。牧神社「鳥葬 梅原彬暉詩集」講談社「燃える薔薇/中村真一郎」(函ナシ)能登印刷出版部「ふるさと文学探訪 鏡花・秋声・犀星」日本出版協同株式会社「ミッキー・スピレーン選集3 復讐は俺の手に」(元パラ帯付きで、帯文と解説は大下宇陀児である)を計400円で購入。続いて「中村書店」(2008/07/24参照)に飛び込み、角川文庫「JAMJAM日記/殿山泰司」朝日文庫「魔都/久生十蘭」を計830円で購入する。後は『宮益坂』をグングン下り、人が渦巻く谷底の駅へと向かう。
posted by tokusan at 18:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月18日

1/18侘しい古本屋犬走り

高円寺近辺でお仕事。本当は今日から始まる銀座『松屋』の「第33回 銀座古書の市」に行くべきなのだが、残念ながら疲れて、踵が軽やかに地を蹴られぬのだ。なので日和ってあきらめて、高円寺の古本屋を彷徨おうと思ったのだが、折り悪く今日は定休日の多い水曜日。だが、あそこならば盤石の営業をしているはずだと、『あづま通り』を進んで「越後屋書店」(2009/05/16参照)前。もうここ十年ほどは、お店も店主も、いつ来てもそのままの変わらぬお店である。ほとんどの人が立ち止まることなく、お店の前を素通りして行く。だが珍しいことに、木の文庫ワゴンを眺めていると、隣りでアグレッシブに若者が身を突然乗り出し、本を眺め始めたのだ…もしかしたら定点観測店なのだろうか…あ、何も買わずに離脱した。店頭をすぐに見終わり、店舗兼住宅脇の犬走り的通用口への細道に滑り込む。ここに入ると、途端に世俗から離れ、近距離に外棚が迫ってくる。ほとんど動かぬ並び、奥へ行くほど薄暗くなる住宅と住宅の隙間、奥から聞こえるテレビの音、吹き抜ける冷たい風、一瞬で通り過ぎるスリット状に切り取られた通行人の姿…ここの侘しさは本当に格別で、じっと望みの薄い古本ばかり眺めていると、世間から脱落した背徳感さえ漂ってくる…あっ!、だが今日は、立風書房「じんじろげの詩/愛川欽也」を発見!これはちょっとした拾い物である。外棚は三冊買っても200円なので、他に岩波新書「明治大正の民衆娯楽/倉田喜弘」(生人形師・松本喜三郎の章が!)関東図書株式会社「盆栽捷径/日本盆栽会編」を掴んで店内へ。久々にすべての通路を見て回ると、ブランクの部分が徐々に増えてきているような気が。老店主は相変わらず時々唸り声を上げ、帳場で小さくなっている。精算をお願いすると、天眼鏡で本の地を確認。そこにペンで付けられた×印を確認すると「200円ですね」。お金を払い、袋を断り、「大丈夫ですか。ありがとうございます」の声に送られ通りに戻る。ここの古本犬走りで本を買うのは、月に一二度だが、もしかしたら私が一番多く、この外棚から古本を買っているのかもしれない。決してオアシスではないのだが、心がプルプルゼリーのように震える、なくてはならない、大都会の侘しいエアポケットである。
echigoya_sotodana.jpg
posted by tokusan at 18:35| Comment(4) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月12日

1/12早稲田で古本屋さんと打ち合わせる

正午を目標に外出し、早稲田駅で学生の波に揉まれながら地上に出る。『早稲田通り』を西に進んで坂を上がって、最初に見に行ったのは、『早稲田大学』西門前の「畸人堂 W大学西門前店」(2012/09/14参照)。コメントタレコミですでにもぬけの殻であることを教えられたので、ダメ押しに確かめに来たのである。…あぁ、本当に空っぽだった…。「畸人堂」は、ツアーを始めてから新宿南口のお店は間に合わなかったが、新大久保の「古書畸人堂 百人町店」(2008/07/22参照)と同じ早稲田の「畸人堂 ガレージ店」(2012/10/17参照)は滑り込めている。変転の多いお店であったが、今は果たしてどうなっているのであろうか。
kijindou_seimon17.jpg
そのまま『早稲田通り』を西に進み、「三幸書房」(2012/09/05参照)で今日の話題社「「七人の刑事」と幻の刑事ドラマ 1960-1973/羊崎文移」を100円で買ったりしながら、「古書現世」(2009/04/04参照)に到着。本を真剣に選びながら次第に帳場に近付き、店主・向井氏に気づかれたところで挨拶を交わす。実は来る1/27(金)に神保町「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)二階の「ブックカフェ二十世紀」で氏とトークをすることが急遽決まったので、挨拶がてら軽く打ち合わせに来たのである。思えば最近の向井氏は、イベントの司会や聞き手で登壇することはあったが、自身についてメインで話すのは、実に実に久しぶりのことなのである。なのでいったい何を話したら聞いたら良いのやらと、直接聞きに来たのだが、たちまち話はボインボイン弾み、何も心配する必要はないことが判明する。どうやら二代目としての古本屋稼業の始まりや、驚異の古本屋バブル時代の話や、古本屋なのに全力で手広く定期的に開催するイベント類について語ることになる予定。「NG話はありません!」とのお墨付きもいただく。恐らく、いつまでもいつまでも話せることでしょう。私はそのブレーキ役を、楽しく務めるつもりである。詳細は追ってお知らせするが、みなさま1/27金曜夜のスケジュールを、ぜひぜひ空けておいてください!向井氏も、ずっと「@ワンダー」鈴木氏の口説きを躱し続け、ようやく二年がかりで口説き落とされたところで「ひとりじゃとても喋れない」と言っていた筈なのに、突然大きく出て「四十人くらいは集まって欲しいな」とつぶやいております。二見書房「機動戦士ガンダムプラモ改造法」光書房「プロデューサーの仕事/高瀬広居」双葉社「推理ストーリー 昭和三十八年10月号」を計700円で購入する。
posted by tokusan at 15:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月10日

1/10古本屋本第三弾制作始動!

「盛林堂書房」出版部より、2015年に「野呂邦暢 古本屋写真集」2016年に「岡崎武志×古本屋ツアー・イン・ジャパン 古本屋写真集」と、岡崎武志氏と共編で出してきた、超マニアック古本屋本を今年も出版するために、アイデアを固めてすでに動き始めている。前二作とは違ったタイプの、古本屋愛に塗れた本になるはずなので、古本屋好きのみなさまは刮目してお待ちください。発売は今のところ春先になる予定。
furuhonya_gide.jpg
制作作業の一環として、このようなガイドブックを駆使し、様々な古本屋さんと日々格闘中である。

そんなガイドブックの山から、ふと目を上げて、ちょっと実地に地図上の古本屋さんを見たくなり、作業のスピンオフとして中央線で西へ向かう。まぁただ、久しぶりの古本屋さんに、会いたいだけなのだが…。武蔵境で下車して、北口の「浩仁堂」(2011/02/15参照)に向かうと、店頭にラックや細長台を出し、健康的に営業中。ラックから一冊抜き出し、店内でも二冊を抜き取り精算する。すると応対してくれた女性が、「まぁ!この本懐かしいわね。あら、訳が渡辺茂男じゃない!」と本を見て大喜び。渡辺茂男…スゴいピンポイントだな…。学研「サムくんとかいぶつ」(函ナシ)裳華房「犯罪鑑識の科学/小沼弘義」ヤマハ音楽振興会「だれも知らなかったポール・マッカートニー」を計300円で購入する。そのまま西側にあるはずの「BOOKS VARIO」(2011/01/18参照)に立ち寄ると、嗚呼!すでに現代的ピンク色の鍼灸院になりぬるか…さらば。コンクリの高架を南に潜って「境南堂書店」(2009/02/11参照)も見に行くが、やはりいつも通りシャッターを下ろしたままである…このお店に限っては、もはや営業している時より、シャッターを下ろしている時を見た方が遥かに多い。またいつか、ガシャリと上げてくれると良いのだが。さらに果樹園のある通りを南に下り、「プリシアター・ポストシアター」(2015/01/03参照)前。残念ながら店舗営業はお休みであったが、ドアに営業日が貼り出されているので、だいたい水〜金辺りに営業しているのを把握する。そのまま西に歩き続けて、見たこともない住宅街の中の間延びした商店街を踏破し、東小金井駅。『くりやま通り』の駅前商店街にある「BOOK・ノーム」は、テント看板の店名文字を、よりおどろどろに劣化させながらも、元気に営業中であった。小さな町の古本屋感も相変わらずで、リサイクル的棚造りも健在である。帳場のご婦人は、薄暗い帳場の奥で、仕入れた本を丁寧にチェック中である。講談社「青い鳥文庫ができるまで/岩貞るみこ」を400円で購入する。武蔵境から武蔵小金井までは、数は少ないが古本屋がちゃんとあるのに、中央線的には余り途中下車せぬ“古本屋間隙地帯”のイメージが強い。まぁ中野〜三鷹間の光が強烈過ぎて、うっすら霞んでしまうのも確かに仕方のないことである。だからこそ時々、とても見に行きたくなってしまうのである。何か素晴らしい獲物が、スヤスヤと人知れず眠っているのではないかと、愚かに楽しく妄想して…。
posted by tokusan at 18:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月08日

1/8やはり「プラハ書房」は不動の良質を誇っていた。

今日も午前十時に部屋着に厚着して外に飛び出し、「帰ってきたJ-house」(2015/12/26参照)の朝市へ。鈍い曇天の下の、雨が降り始める前の店頭は寒過ぎるのか、猛者もなんだか少なめである。南雲堂「映画&英会話 駅馬車」を100円で購入する。懇切丁寧な解説入りの英和シナリオと、映画から直接録られた音楽(つまりセリフも効果音も入っている)カセット一本が付いている。1973年刊で、当時の値段が2500円……。

ちゃんと着替えて午後に外出し、大好きなはずなのに、あまりに足を運んでいない至宝の古本屋さん「プラハ書房」(2010/12/22参照)を訪ねることにする。もう一年以上もほったらかしているなんて、なんと愚かな!その間に、どれほど良い本が売れてしまったのかと考えると、身体がたちまち古本嫉妬の業火に包まれてしまう。そして、久々にあの空間を堪能出来る期待と、ちゃんと開いているだろうか?という不安をないまぜにしつつ、もしかしたらあんな本やこんな本が並んでたりして…などと都合の良い妄想全開の愚かな男を乗せ、高架列車は冷たい雨の中を北へ走り続けている…。東武スカイツリーラインの、立派なのにとても寂しい蒲生駅で下車し、駅東口の巨大自動車教習所の向こうに、テクテク回り込む。ガレージの柱に取付けられた『本』の文字が見えてきた。そのガレージには車が停められており、外棚は既になく、ワゴンすら出ていない。だが、お店の中には、黄金の明かりが煌煌と輝いているではないか!
plaha17.jpg
サッシ扉を開けて中に入ると、左の帳場に座るオヤジさんは、手を擦り合わせて指先の暖を取っている。なんだか店内に本とダンボールのタワーが、かなり増殖している。正面の100均文庫台上のほとんどは横積み単行本タワーに覆われてしまっており、右側通路の手前はダンボールや本の山に塞がれ、通行不可となっている。それにしてもこの大量の本は、いつもいったい何処から買い入れてくるのであろうか…本タワーの中には古い大衆小説がチラホラし、その無尽蔵とも錯覚する豊かさに、盲目的に感心してしまう。早速そんなお店の雰囲気に飲まれながら、各棚を検分して行くと、どこもしっかり風が吹いており、やっぱりとても良い感じ。狭い通路にも入り込み、積み重なる本の背にも目を凝らし、楽しい時間があっという間に過ぎ去って行く。気になる本を何冊も何冊も手にして行くと、冷たい本の表面温度に体温を奪われ、終いにはオヤジさんと同じように、手を擦り合わせて暖をとる、自分がそこにいた。そして中央通路の棚下平台に、大日本雄辯會講談社「無敵日本軍/武藤貞一」が千円で売られているのを発見する。昭和十三年刊の、主に中国大陸での進撃を、大日本帝国の偏った視点のみから取り上げた、旧日本軍礼賛の児童書である。補修はしてあるが、ちゃんとカバーも付いている。こんな本が、ポロッと安値で置かれてるんだもんな。そんな風に、久々の「プラハ書房」に大いに感心しながら、その一冊を購入する。やっぱりここには、もう少し、マメに足を運ぶべきだな。
posted by tokusan at 19:07| Comment(5) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月30日

12/30恐らく今年最後の古本屋さんの閉店を看取りに行く。

コメントタレコミにより、三十日で閉店のお店を知る。今年ラストとなるであろうお店への挽歌を歌い上げるには、ぜひともその最後の姿を見届けておかねばならない!と、埼京線で板橋駅下車。西口に出て、まずは道すがらの「板橋書店」(2009/07/18参照)を開いてるかな?と見に行くと、嬉しいことに営業中。静謐で混然とした店内通路を彷徨って、縦横に積まれた本の中から抜き出した、気になる薄手の一冊は、やった!嬉しいことに書肆ユリイカ本!もしかしたらこれが、今年最後の素晴らしい獲物かもしれないと喜び、さらに一冊。書肆ユリイカ「蒼い馬 滝口雅子詩集」(カバーナシ)新潮社「黒い顔の男/新田次郎」を計500円で購入する。早速路上で128mm×172mmの鼠色小型変型本を慈しみニヤニヤしながら、おぼつかない足取りで裏路地を西に向かって進んで行く。やがて板橋区役所前の『高田道』に入れば、半地下の「いのいち」(2010/01/09参照)が、『閉店のおしらせ』や『文庫&マンガ105均セール』の貼紙を、階段やドアに貼り出しているのに行き当たった。
inoichi2016.jpg
均一文庫棚に視線を走らせ、階段を下りきって店内に入ると、そこは通常と変わらぬ、コミックと文庫とアダルトが元気な、古本的に凪いだ世界。奥の単行本棚や右側手前の絶版漫画棚は時間を停めっ放しなのだが、ここにもセールは適用されるのだろうか…あっ、袋入りの本はセール対象外のようだ。奥のレジではお客である若者が、古本屋人生の越し方を店主から拝聴中。床板をギチギチいわせながら、店内105均棚から一冊抜き取り、さてこれだけでは何だか寂しいと思うので、思い切って袋入りのコミックを一冊セレクトする。話に割り込み精算をお願いすると、袋入りのコミックを見たオヤジさんは「おっ!いいの?買うの?」と軽く驚く。「ハイ」と答えると「ん〜、じゃあもう店じまいだから、全部で千円でいいよ」と大胆に値下げを断行してくれた。「ありがとうございます。そしておつかれさまです」と喜びながらも、ちょっと文章のような言葉でお礼を伝えてしまう。すると「これ、初版だからね。初版っていうのはね、一番最初に刷られたものってこと。だから価値があるの。汚したり、お茶こぼしたりしちゃダメだよ。大事にしてね」と教えられる。函館春秋社「3等客■アメリカを■鈍走/村上卿」講談社コミック金田一探偵シリーズ3「悪魔の手鞠唄/いけうち誠一」(こちらがその初版本コミック。帯が付いており『横溝正史の世界に挑戦しよう』『金田一名探偵はどうさばく!』などのキャッチがたまらない)を購入する。半地下の板橋的NYスタイルのお店がここにあったことを、忘れません!

夕方に再び外出し、今年最後の「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭にかぶりつく。が、寒さに震えながら何も見つからず。代わりに店内奥のミステリ関連棚から、朝日文化手帖3「誰にも言えない/大下宇陀児」を525円で見つけ、ささやかな幸せを噛み締める。その後は西荻窪に赴き、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内の「フォニャルフ」棚に強力な本を補充する。何たって、来春から、本棚探偵が「古本ナイアガラ」に参戦されるのだ。ウカウカしているわけには、決していかない!と思っていたら、すでに喜国雅彦氏の本棚探偵棚が出現していたので、大いに驚いてしまう。…やっぱりすげぇ…。みなさま、様々な古本マニアの棚とともに、「フォニャルフ」を引き続きよろしくお願いいたします!さらにその後は、某編集氏宅である『本の家』に向かい、岡崎武志氏・盛林堂小野氏ご夫妻とともに作戦会議忘年会。来年も古本屋世界に精一杯のさざ波を起こすべく、年の瀬ギリギリまで奮闘する。だが途中から、何故か東映動画アニメーションの話題にはまり込み、岡崎氏の『わんわん忠臣蔵』への愛が、ダダ漏れになってしまう。
posted by tokusan at 23:03| Comment(4) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月26日

12/26驚きの閉店延期理由に接する!

さて、今年閉店してしまうお店として、最後に気になっていたのが新中野〜東高円寺間の「プリシラブックス」(2012/02/14参照)である。今日はもう二十七日…年内にお店を閉めるという話だったので、もしかしたらもうやっていないかもしれない。そんな遅刻の危惧を抱きつつ、阿佐ヶ谷から冷たい冬の中をトボトボ歩き始め、五十分ほどかけて東高円寺着。『青梅街道』から住宅街の中に入り込んで、街の中に隠されたような生活道路に面した、お店の前に到着する。ウィンドウのブラインドは、すべて下ろされている…間に合わなかったか…おや?中には本棚やラックが残っており、ちゃんとそこに本も並んでいる。看板もそのままか…そして何処にも閉店のアナウンスはなく、変わった物と言えば、ドアの上に吊るされたてるてる坊主のみ…これはいったいどういうことなのか?お休みなのか、もはや閉店後なのか?考えても答えは出ないので、お店の動向をちょっとネットで調べてみることにする。来た道を戻りながら、小さな画面を注視していると、驚くべきお店の現状が発覚!なんと店主のツイッターによると、十二月閉店予定を公言していたが、閉店するための資金が不足してしまっているので、今しばらく営業を続けることになった、と書かれていたのだ。…スゴい、スゴい理由だ。スゴい現状だ。喜んでいいんだか悲しんでいいんだか、まったく混乱してしまう営業状態だ。客が本を買えば買うほど、恐らく閉店は早まるのだろう。とにかく、が、がんばれ!プリシラブックス!しかしということは、今日はお休みということになるのか。これはまたしばらくしたら、ちゃんと様子を見に来なければ…。

狐につままれたようになりながら、高円寺へ足を向ける。「アニマル洋子」(2014/03/14参照)で六興出版「料治熊太の見直し文庫◉日本の雑器五十章◉」を100円で購入すると、『ルック商店街』のスクラッチカードをプレゼントされる。削ってみたら外れであったが、裏面を見ると加盟店印の枠に、ちゃんと「アニマル洋子」の判が捺してあったので、古本屋ファンとして少し嬉しくなってしまう。『庚申通り』の「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)では、店頭で「らく N0.2 APRIL1989/都市のフォークロアの会」を見つけて100円で購入する。民俗学者・大月隆寛が出していた民俗学同人誌である。『バックミラーの中の都市 タクシー・ルポルタージュの視線』『女子プロレスの戦後史・序説』『浅羽通明×大月隆寛対談』『「消えるヒッチハイカー」ブックレビュー』などなど、なかなかバラエティに富んで刺激的。突然こんな物と出会える古本屋さんの店頭も、とても刺激的なのである。最近この「サンカクヤマ」店頭では、見知らぬ、だが、グンと興味を惹く小冊子に出会うことが多く、ちゃんと探せば何か見つかるので、もはや欠かせぬ定点観測店と化している気が。
raku_animal.jpg
「らく」とスクラッチカード裏面。
posted by tokusan at 18:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする