2017年11月14日

11/14阿佐ヶ谷最後の貸本屋に異変あり。

阿佐ヶ谷最後の貸本屋は、駅北口に出てアーケード商店街を通過し、『旧中杉通り』に入って「ネオ書房」(2010/02/09参照)→「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)と通過し、墓場脇の緩くカーブする緩い坂道を下ってしばらく進むと、右手に『本はレンタルで』とある年季の入った電飾看板が現れる。「ネギシ読書会 中杉通り店」(2009/08/12参照)である。その店頭は、コミックカバーのカラーコピーや、激安古本漫画に相変わらず賑やかに囲まれている。…だがしかし、その中につい最近、赤い一枚の貼紙が出現したのだ。『閉店セール開催中!12月31日に店を閉じます(予定)在庫品大処分!1冊5円から!』…長らく阿佐ヶ谷の変わらぬ景色として貢献してきたお店であるが、ついに閉店してしまうのか…。だが本が貸本とは言え、一冊5円から売られているとは聞き捨てならん!と、何も見つからなかった時の保険となる50円本を一冊つかみ、サッシ戸を開けて、コミックだらけの店内に思わず突入してしまう。店頭ではすでに一部のハードカバー本の50円セールが行われているので、店内にも確かにその類いの本があるはずなのだ。そう信じて棚も床も乱雑気味なコミックだらけの空間に視線を走らせる。ほぅ、左壁棚上段に、質の良さげなクセのある本がちゃんと並んでいる。通路に積み上がったコミック越しにつま先立ち、一冊二冊と気になる本を抜き出してみる…果たして幾らで売ってもらえるのだろうか?右側ゾーンにも行ってみるが、こちらは入口横以外すべてコミックで埋め尽くされている。絶版漫画もチラホラ混ざり込んでいるな…と気にしつつ、買う予定のなかったそのコミックも二冊手にしてしまう。そして奥の帳場に座るオヤジさんに「本は売ってもらえるんですか?」「ええ」「じゃあこれお幾らでしょうか?」と五冊を差し出す。50円本をスッと除外し、残りの四冊の背を並べて眺め、しばし沈思黙考…「みんな今ない本だからね。一冊400円でどうでしょう?」「いただきます!」と言うことで無事に交渉成立。「でも、アマゾンのマケプレとか見れば、もっと安く売ってるかもよ」と優しく諭されるが、「いえ、今ここで買いたいんです」と答える。社会思想社「聖林の王 早川雪洲」王国社「不可能からの脱出 超能力を演出したショウマン ハリー・フーディーニ/松田道弘」講談社「二つの月の記憶/岸田今日子」青林堂「薔薇と拳銃/谷弘兒」ふゅーじょんぷろだくと「少年が夜になるころ/鈴木翁二」を計1650円で購入する。本には貸本仕様のビニールが掛かっていたが、セロテープで仮留めされていただけなので、簡単にキレイに剥がれてくれて、すべて見事な古本へと転身を遂げてくれた。店頭貼紙にはその他にも『長期休業中コミックス差し上げます!無料冊数無制限!』とある。もしかしたらコミックス以外の在庫も、いずれ放出されるかもしれない。しばらく経ったら、また見に来ることにしよう。
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2017年11月04日

11/4雨の夜の復活した「十二月文庫」

突然の黒雲と強風に吹き寄せられるようにして、世田谷の若林に流れ着く。うわ、なんとちゃんと雨まで降り始めてしまった…。少しだけ濡れそぼり、打ちひしがれて世田谷線駅近くの路地に迷い込むと、すぐに明るく優しい「十二月文庫」(2014/11/12参照)の灯火が目に飛び込んで来た。
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女性店主の病没により、休業を余儀なくされていたのだが、お店を愛する有志たちの奮闘により、九月から営業を細々と再開していたのである(詳しくは「十二月文庫」のコメント欄をご覧下さい)。雨の中に立ち尽くし、しばしお店のしなやかな姿を、うっとりと凝視する。続いてビニールシートの掛けられた店頭100均を一渡り眺めてから、珈琲の香り漂う店内へ。基本スタイルはほぼ昔と変わらぬ状態だが、帳場には二人の男女がおり、「棚はそのまんま?」「ちょこちょこ手を加えてるよ。眺めてみて、感想教えて」などと会話している…おぉ、彼らが、お店を継いでくれた素晴らしい人たちなのだな!この度は、古本屋さんを受け継いでいただき、誠にありがとうございます!と心の中でお礼を絶叫する。時が経ったために、皺が寄り見難くなったパラフィン越しに本の背を必死に透視し、狭い通路に次々と入り込んで行く。やはり私の興味は、以前と変わらず左奥の文庫棚にあるようだ。一冊手にして、さらにサンリオSF文庫のい二冊を抜き出すと、値段が書かれていない。ちょっと以前から読みたかった二冊なので、安かったら買おうと思い、帳場に立つ女性に「値段のない本があるんですが…」と聞いてみると「これから値付する本なんですよ。次はいついらっしゃいます?その時までに値付けしておきますよ」とのこと。ならば仕方ない。次の訪店予定は未定だが、ひとまず値付をお願いしておく。日本小説文庫「大川端/小山内薫」を500円で購入する。何はともあれ、祝復活!

帰りは環七をトボトボたどり、世田谷代田駅から小田急線に乗り込む予定。地下への長いエスカレータを下り、ようやくホームにたどり着く…だが、何かおかしい。良く見るとホームには誰もおらず、その際はすべて柵で囲まれ、線路も封鎖されている。
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これは、新しい未使用の線路とホームなのか。煌々と明かりが点いているので、危うく来ない電車を待ち続けるところだった。線路の上の仮橋を渡り、さらに地下へ下ると、そこに本来のホームが存在していた。それにしても何故新旧二つのホームが上下に…。
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2017年10月26日

10/26「ウサギノフクシュウ」に惜別と感謝を。

湘南新宿ラインで秋の鎌倉へ向かう。車中で昼食を摂るつもりだったが、意外な平日の混雑に萎縮し、結局鎌倉駅ホームで心地良い秋風に吹かれながらパンを齧る羽目に…。まずは東口に出て、街を調査中の黄色い帽子小学生軍団を掻き分け掻き分け『小町通り』を北進し、「藝林荘」(2013/02/17参照)へ。入ってすぐの良い眺めである右壁の文学棚に意識を集中して、欲しい本を何冊も見つけるが、いつものように値段に怖じ気づき、結局ガラスケース脇の小棚からダヴィッド選書「コクトー わが生活と詩/片岡美智訳編」を800円で購入するに留まる。横須賀線線路の西側に渡り、「游古洞」(2012/01/28参照)を眺めてから線路際の道に入る。そしてホームからも見える一軒の建物のドアを開け、二階への階段を静かに上がる。廊下奥左側の小さな古本屋さん「古書ウサギノフクシュウ」(2014/06/20参照)が、残念ながら今週一杯で営業を終了してしまうので、最後のお別れにやって来たのである。思い返せば三年前、ひょんなことから私に背中の一部を押されて始めてしまった古本屋さんなので、心境はとても複雑なのである。ドアをゆっくり丁寧に開き、小さく整然とした空間に滑り込む。奥の帳場に座るのは店主の小栗氏である。まずはじっくりと店主の色に染まったセレクト棚を眺めて行く。お店の形は以前と全く変わりはない。本は閉店セールで20%オフとなっている。黙りこくったまま店内を二周し、最後の買物に決めた一冊を手にして帳場へ。そして店主と久しぶりの挨拶を交わす。閉店について聞いてみると、一番の原因は経営の厳しさということであった。三年間、どうにか頑張って営業して来たが、現実的に色々考えた末、ここで一旦立ち止まり、古本屋の世界から身を引くことを決断したのである。「つまりは、自分が商売下手だったということです」と笑いながら、明け透けに包み隠さず話し続ける。「苦しかったけど、もちろん楽しい時間でしたし、たくさんの人にも出会えました。だから後悔はしていないんです。ただ、同じ時期にお店を始めた人でも、頑張っている人は多いので、通ってくれたお客さんには申し訳ないなぁと」と忸怩たる思いも吐露するので、聞いているこちらがぐっと切なくなって来る。そしてまだこの先は、何をするか考えていないので、ちょっとゆっくりしつつも、襲い来る現実と不安と焦燥と闘う覚悟は決めているとのこと。「まぁこの状況も、取りあえず楽しみますよ」と再び笑う。そんな風に話している間も、わかり難く入り難いこのお店に、人がフラフラ迷い込み、きれいに並んだ古本を息を詰めて眺めて行く。そんな不思議な吸引力を持つ“場”を作れるのは、ある種ひとつの才能と言えるので、今後もぜひ何処かで生かしていただきたいものである。この観光古都・鎌倉に、奇妙な名を持った小さな古本屋さんがあったことを、私は生涯忘れないであろう。ありがとう「ウサギノフクシュウ」!めるくまーる社「ウィダの総督/ブルース・チャトウィン」を20%オフの二千円で購入し、お店最後の買物とする。
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その後は「books moblo」(2011/10/10参照)にも立ち寄り、店主と久しぶりの挨拶を交わし、あまり見かけぬ本が棚の所々に頻出するのに感心しつつ、理論社・童話プレゼント「ノコ星ノコくん/寺村輝夫・作 和田誠・絵」(函ナシ)を1800円で購入する。夕方東京に戻り、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内「フォニャルフ」に補充を行い、旅装新書「地下鉄サム/J・S・マッカレー」(地下鉄サム好きとして探していた一冊!)を500円で購入する。

「books moblo」で買った「ノコ星ノコくん」は1965年の第一刷。物語は主人公のドッペルゲンガー的宇宙人が現れ、様々な代役をこなしてくれる『ドラえもん』SF的な展開から始まるが、途中から時間の早さの異なるパラレルワールドが登場し、無闇にSF度が高まって行く。しかし何より素晴らしいのは、アーリー和田誠のイラスト!ちょっと『スヌーピー』のシュルツを思わせるキャラが本当にプリティ!そして一ページに広がるこの町の情景!このまま創元推理文庫の表紙に使えそうなクオリティである。
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2017年10月22日

10/22静かな静かな「貝の小鳥」

街の底で、降り続く雨を呪いつつも、この雨のせいで、頭の中では映画『ブレードランナー』のヴァンゲリスによるテーマ曲が♪デンドンデンドン…チャラッチャラッ…ピャァ〜ピャァ〜ラ〜ラ〜♪と狂ったようにリフレイン。私も、あの柄が蛍光灯のように光り輝く、未来の傘が欲しいものだ…そんな叶わぬ愚かな欲望を抱いて濡れそぼり、たどりついたのは夜の目白である。夜とは言っても、まだ午後六時前。もしやと思い賑やかな『目白通り』を離れて裏路地に入ると、絵本&児童文学古本屋さん「貝の小鳥」(2009/06/14参照)が待ってくれていたかのように、真っ暗な路地にただ一軒、明かりを灯していた。
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疲れて濡れた羽根を休めるように、台風が近づこうがいつも通りの、静かな静かな落ち着いた小鳥内に入り込む。いつもは店頭にちんまりと出されている、安売ミニ棚をチェックしつつ、右側の絵本&児童文学壁棚に接近して行く。確か営業時間は午後六時まで…この刹那に、何か良い本と出会えればラッキーなのだが…。と少し焦っているところに、一冊のパラフィンに包まれた本が目に留まる。小峰書店 こみね幼年童話15「ピストルをかまえろ/作=山元護久 絵=池田龍雄」…『ようねんどうわ』とあるのに、何だ、このハードボイルドなタイトルは。まるで創元推理文庫の一冊みたいではないか。と引き抜き、パラパラとページを繰ってみる。絵は「けむりの家族です」(2017/08/14参照)と同じ池田龍雄で、作者は『ひょっこりひょうたん島』も書いていた放送作家&児童文学家である。三話オムニバス形式のようだが、拾い読みしただけでただ事でない展開が連続しているのが見て取れる。値段は1080円。これは、買わなければ!と素早く決めて帳場に差し出し精算。「ありがとうございました」の声に送られ、表に出ようとした瞬間、何故かガラス戸を開いていると勘違いし、手をその透明なガラスにぶつけてしまう…アホか…。

「ピストルをかまえろ」(昭和45年初版)は、何故かピストル(実銃でもちろん実弾が発射される)を所持している少年・たろうが、巻込まれた事件を解決するため、大人の犯罪者相手にピストル片手に活躍する、本当に『何故これが幼年童話なんだ!』と声を大にして問いたい、強烈に奇天烈な物語である。一話目は母親誘拐事件、二話目はロボット人形盗難&人間改造事件、三話目では詐欺的脅迫事件&ついに巨大怪獣まで登場してしまう。うぅ、やっぱりメーターを振り切った作品って、魅力に溢れまくってるなぁ。あの一瞬でこんな本に出会えたなんて、「貝の小鳥」さんに大感謝!ちなみにこの本、後見返しに貸出票袋を取り外した痕があり、児童本出版社『フレーベル館』の蔵書印が捺されている。
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2017年10月20日

10/20古書と電子部品のお店の移転閉店セールに駆け付ける。

例え鈍い曇り空の下であろうと、雨に降り込められずに地上を歩くことが、こんなにも自由で痛快なアクションであったのかと、強く認識しながら新三河島駅近くの『尾竹橋通り』に曲がり込む。するとすぐ左手のビル一階に『古書・電子部品』の看板を架けた異色の古本屋さん「丹青通商」(2012/08/22参照)が姿を見せる。残念なことに、今日が移転のための現店舗での、最終営業日なのである。だがすぐに亀戸で新店を開店させるそうなので、ひとまずはホッと一安心。そして店長さんが在店していれば、移転閉店記念の(あるいは本を減らすための)店長値引セールが行われているらしいのだが…。移転の案内がある扉をガラリと開けて、本が相変わらず密集した店内に上がり込む。右側レジカウンターの様子をうかがうと、おっ!店長さんがしっかりと汗を流しながらお仕事中。そっと古本通路に引き返し、薄暗く狭めの縦長な空間に、次々と目を光らせて行く。電子部品ゾーン手前のミステリ通路は、特に念入りに見てしまう。あぁ!棚の上に架けられた渡し板の上では、恐怖小説全集が無造作に積み上がった雑誌の下敷きになっている!そして棚からは、大量のポケミスと創元推理文庫があふれ出してしまっている…「誰が駒鳥殺したか」の初版帯付きが5000円か…などと別れを惜しみつつ楽しみ、全棚に目を通してつかみ出したのは、2000円の批評社「新版大東京案内/今和次郎」(覆刻)であった。それをレジに差し出し、店長さんと少しお話しさせていただく。一見お店は何の準備もしていない有様だが、実はもうバックヤードの本やネット用の本や重要な電子部品は運び出してあるとのこと。後は今日お店を閉めたら、メインの撤収作業に取りかかるらしい。しかも土日の二日間で完遂予定…ええっ!この量を二日でっ?本だけじゃなく棚も凄い数ですよ!しかも雨はザンザン降るだろうし、台風も来るんですよ!しかし店長は、それでもやり遂げ、今月末には早々と新店をスタートさせる意志を、強く強く固めているのである…ががががが、がんばってください。住宅街の中に出来る半地下の新店では、電子部品は店舗には並べず、古本だけのお店になるらしい。う〜ん楽しみ。十一月あたりに落ち着いたらうかがいます!本は店長割引の千円で購入する。
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車中では黒白書房のシムノン「黄色い犬」を読み続け、阿佐ヶ谷駅に電車が滑り込んだ瞬間に、残り一ページを迎えてしまったので、本を持ったままホームに降り立ち、ベンチ脇に立ち尽くして読了する。メイグレの鮮やかな謎解きと、大岡裁きの如き度量の深さに、心に一陣の爽やかな風が吹き抜ける。また別府三郎の譯もよかった。『街路(まち)では、洋傘(かふもり)とレインコオトが家並に沿って動いていた』なんて少し詩的な文章が、決して物語の邪魔をせずに、ポロリポロリと絶妙のタイミングで立ち現れるのだ。ちょっと他の作品も読んでみたくなる訳者である。
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2017年09月30日

9/30日曜は展示から販売へ!

昨日全精力を使い果たした展示のこけら落としをほっぽらかし、立川市の砂川町に流れ着く。ここならば「清水書店」(2009/06/04参照)を見に行けるなと、玉川上水駅の南側に出て、小さめのロータリーで連続する鰐の腹の下のようなモノレール高架を潜ると、すぐにビル一階の大きなウィンドウを持つお店が見えて来た。外に向かった飾り棚に並ぶ洋書や和本に目を奪われた後、ガラス扉に目を戻すと、『店内ではイヤーホーンは外してください』の但し書きが目に入る。ということは、お店に入れるんだ。つまりは店舗営業しているんだ。全く持ってありがたいなぁ…とドアに手を掛ける。だが、開かない…良く見ると小さい札が置かれ『外出しています』とあるではないか…悲しく切ないバッドタイミングである。
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開かぬドアを前にくよくよしていても仕方ないので、西武線に乗り込み乗り換え鷺ノ宮へ。夕暮れの光に輝く「うつぎ書房」(2008/08/06参照)に飛び込み、本日の古本を探し求める。奥の生活空間ではオヤジさんが壁に背を預け、ゴルフの『日本女子オープン』を興奮気味に鑑賞中である。白水社文庫クセジュ「ニッポン人の生活/ピエール・ランディ」を100円で購入し、一目散で家に舞い戻る。
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いよいよ明日は「LOFT9 BOOK FES.2017」なので、その準備に勤しみつつも、昨日手に入れた上林曉「小説を書きながらの感想」をニヤつきながら精一杯愛でなければならないのだ。忙しい忙しい…というわけで、展示に続き、明日の古本販売もよろしくお願いいたします。たっぷりと良い古本おかしな古本安い古本妙な古本を並べ、円山町のラブホテル街で、みなさまのご来場を心よりお待ちしております!

★BOOKS 9 × 鬼子母神通り みちくさ市 presents
「LOFT9 BOOK FES.2017」
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/71625

■10/1(日)LOFT9 Shibuya 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS(キノハウス) 1F
■古本市:OPEN 12:00
■トーク:START 13:00
(古本市は19:00まで、古本フリマは17:00まで)
※軒先&店内の古本市は入場無料!
※トークイベントのチケットは前売り1500円/当日2000円 (+1オーダー)

【トークイベント】
■「闇を抱える読書」タブレット純×姫乃たま
OPEN 12:30 START 13:00(終了:14:30)
とても個人的で人には薦められない、心の闇に寄り添う暗くも楽しい読書経験を語る!

■「ヤクザと男色」鈴木智彦×山田参助
OPEN 15:30 START 16:00(終了:17:30)
ボーイズラブでは定番のヤクザものですが、実際はどうなのか。『ヤクザ1000人に会いました!』の鈴木智彦さん、『あれよ星屑』の山田参助さんによる男集団談義。

■「覚醒めよ!」能町みね子×サムソン高橋×石丸元章
OPEN 18:00 START 19:00(終了:21:00)
本人たちさえも当日まで何を喋るかわからない衝撃のフリートーク…

【古本市参加店舗】
ハナメガネ商会、にわとり文庫、BOOKS青いカバ、古書現世、三楽書房、立石書店、JUNGLE BOOKS、ブックギャラリー・ポポタム、ひぐらし文庫、北書店(新刊 From新潟)

【古本フリマ参加者】
小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)、とみきち屋、つぐみ文庫、ドジブックス、えほんやハコのなか、甘夏書店、レインボーブックス、雨の実、M&M書店、ロフトブックス、朝霞書林、嫌記箱(塩山芳明)
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2017年09月28日

9/28大阪「葉ね文庫」の魂がひっそり上京していたのを目撃する。

今日は雨にも負けずに、永福町南端の神田川沿いに流れ着いたので、谷から一気に脱出して『甲州街道』を経由して明大前へと向かう。首都高が重く高く圧し掛かる街道は夕方のように昏く、激しく吹き抜ける突風に身を千切られる思いを長々と味わいながら、どうにか学生さんがあふれる駅前に到着。狭いガード下を潜って目指すのは、五ヶ月ぶりの「七月堂古書部」(2017/04/29参照)である。裏路地の暖かい店の灯りが目に入った途端、雨が激しく降り始めた。
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慌てて店頭に逃げ込むと、古本屋さん度が増していて、とても良い感じである。店内は、新刊・古本ともに詩集の度合いが増しており、お店の方向性を明確に示している。むっ?右側壁棚にも詩集や歌集がいやに進出しているな…と感じて棚の上部を見ると、そこには一枚のPOPが貼付けられていた。おぉ!なんとそこは、大阪は若い短歌詠みの夜の梁山泊「葉ね文庫」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」134ページ参照)のセレクト棚であることが判明する。さすが詩集の出版社が営む会社内古本屋さん。同志の細かいネットワークをすでに構築しているのだな、と大いに感心する。セレクト棚をじっくり眺め、一年前の古ビルの夜の古本屋さんの感触を思い出しながら、結局全然関係ない、偕成社「これ、なあに?/バージニア・A・イエンセン ドーカス・W・ハラー」(目の見えない子も見える子もみんなで楽しめる絵本である)ちくま文庫「武蔵忍法旅 山田風太郎忍法帖短篇全集8」を計200円で購入する。

店の外に出ると、雨が驚くほどさらに激しくなっている。明大前から浜田山まで出て、満員のコミュニティバス・すぎ丸で阿佐ヶ谷に帰り着き、駅から家に濡れながら戻って、明日の展示準備の準備に細々と取りかかる。よ〜し、明日は、やるぞぉ〜!
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2017年09月16日

9/16ネコジャラ市の11人!

怪し過ぎる空模様がどうにかもってくれたことに感謝しながら、お洒落な人があらゆる路地を闊歩する奥沢に流れ着く。自由が丘周辺であるこの地区は、どうにかしてパリになろうとしているらしい…。そして同時に、明日の「みちくさ市」が中止になったことを知り、ションボリ肩を落とす…いや、その分、用意した古本も情熱のすべても、10/1の「LOFT9 BOOK FES.2017」にぶつけるしかない!と気持ちを新たにしながら、奥沢駅の南側に出て久しぶりの「PINNANCE BOOKS」(2012/06/11参照)を楽しむ。
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相変わらず海外文学と絶版文庫が絶景である。講談社文芸文庫「熊野集/中上健次」を300円で購入してから、お洒落人で賑わいの増す自由が丘方面に足を向ける。ちょっと迷った末に「西村文生堂」(2013/09/10参照)に到着。
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ビニールシートで守られた雨仕様の店頭を抜けて店内に入ると、なんだかとても慌ただしい雰囲気である。店内二通路には本と箱が積み上がり、若い衆がたくさん集まり、表にそれらを運び出して行く…だが、準備中というわけではないようなので、お仕事の邪魔をせぬよう通路に入り込み壁棚を眺めるが、二十秒に一度「すいません」と言われ、背後で荷物が激しく行き交っている…これはイカンと、集英社世界の文学16「黒猫/ポー作 福島正美訳」を500円で購入して、そそくさと退散する。

阿佐ヶ谷に帰り着き、例の新店の様子をうかがうが、今日も開店していない模様。だがきっといつかは見られるだろうと、さほど気は落とさずそのまま北に進んで古道具屋の「J-house」(2015/12/26参照)前に差し掛かる。最近店内リニューアルを行い、入口を二つにして、左が骨董・古道具・アンティークで、右が玩具関連と変化したのである。その右側部屋に入ると、新顔としてA4サイズの紙芝居が十種弱置かれているではないか。ほとんどがディズニー物だが、エポック社ファミリー紙芝居アイドルシリーズ「ムーミンと魔法使」「ネコジャラ市の11人(脚本は井上ひさし・山崎忠昭・山元護久)」(ともに箱型の紙芝居舞台とソノシートは欠品)を見つけたので計千円で購入する。「ネコジャラ市の11人」は、1970年から三年間NHKで放送された人形劇。残念ながら私は記憶にまったくない。放映時は三才〜六才なので、恐らく一度は見たことがあるはずなのだが…。紙芝居の一枚目がテーマ・ソングで始まっているのだが、この歌詞が本当に素晴らしく、達観と諦念と潔さと不安が単純な語彙の中にせめぎ合い、読み進めるほどに涙がこぼれ落ちそうになるくらいビリビリきてしまう!調べるとNHKアーカイブに幻のオープニング映像がアップされていたので、ご興味持たれた方はぜひご一聴あれ!
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2017年09月11日

9/11勝手にそろい踏んでもらう。

今日は国立と国分寺の間に流れ着いたので、丘の上から栗畑の間の道を抜け、国立駅を選択する。ここから向かうべきは南口駅前の「みちくさ書店」(2009/05/06参照)である。おっ!入口側左の壁棚が、下部が角度を持ったお揃いの棚になっており、収納力と見やすさがアップしている。
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そんなことに気付きながら、細長い一階通路店内を行ったり来たり…奥で箱に入れられ売られている、小さな不気味な像たちは何なのだろうか?個人的には鯨に足を絡み付かせて頭にかぶりついている蛸の像がとても気になってしまう(蛸と鯨が大幅に絡み合っているので、なんだかちょっとクトゥルーっぽい…値段は千円)…。だがぐっと我慢して無駄遣いはせずに角川文庫「寺山修司青春歌集/中井英夫解説」を200円で購入する。他には何処も寄らずに家に帰りつつ、阿佐ヶ谷で新店の様子を伺うが、今日もシャッターが下ろされたままであった。だがまぁ、そのうちに巡り会えるだろう。

家に帰ってからは色々片付けつつも、昨日手に入れた蜂須賀侯の「密林の神秘」に夢中になる。挙げ句、あるひとつのことを思い付き、大事な本が集まる特別古本タワーから、二冊を抜き取り、記念写真を一枚。
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大好きな探検家たちを勝手にそろい踏ませてみたのである。左から大谷光瑞探検隊の独り別動隊・橘瑞超「新彊探検記」(大正元年)、真ん中が探検建築家・伊東忠太(日本建築のルーツを実見すべく、中国〜中央亜細亜〜欧羅巴と経巡る)「余の漫画帖から」(大正十一年三版)、そして「密林の神秘」(昭和二十九年)である。う〜ん良い眺め。この中には、目的の違うそれぞれの命を懸けた旅路が、何千、何万キロに及び収められているのか。あぁ、これにいつの日か、自転車旅行家・中村春吉の一冊(確か「武侠世界」の別冊みたいなので出ていた気が…)を加えられれば最高なのだが…。こんなバカなことをしてうっとりしながら、愚かで幸せな古本の夜は更けて行く。
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2017年08月29日

8/29「地球堂書店」は寸分変わらない

今日は昼間の立川に流れ着く。ちょうど廣池秋子の文芸作品(残念ながら推理小説ではない)、戦後直ぐの立川が舞台の「愛と憎しみの街」をポツポツ読んでいるところなので、何かリンクする景色に出会えると思ったのだが、街は想像以上に変化発展しており、何の予備知識もない今の状態では、見事な直線の街割にしか、当時の面影を感じることは出来ない。たくさんのガードマンが早くから警備する『立川競輪場』近くから、住宅に挟まれたその真っ直ぐな細道を北へ向かう。『立川通り』に出ると、ちょうど横断歩道の向かいに、貴重なモルタル看板建築の「地球堂書店」(2008/08/30参照…ということは、ほぼ九年前の今日、このお店に初めて訪れたわけか…)が、もう何年も前から(いや、もっともっと以前から、この整然として静かな動かぬ状態なのかもしれない…)、寸分変わらぬ姿で建っていた。今日は特徴ある木製台には何も陳列されておらず、ただ大きな餅のような薄い白い直方体が、ペトリと置かれている。入口側の両壁棚を、大量の茶紙がゾロリと覆い、まるで古本屋とは異なる光景が出現している。
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帳場には誰もいないが、静かなパラフィン包みの本に囲まれた店内に入るとチャイムがピロピロ鳴り響き、いつの間にか髪をひっつめた女将さんが、帳場に横向きに座っていた。店内には入ったが、何も買わないつもりである…いや、正直に言おう。何も買えないのだ。だから一通りパラフィン越しの背を眺めただけで、静かに退店しようと思っていたのだが、棚最上段の大型本を取り出した時にアクシデントが発生。高過ぎて棚にうまく戻せないのだ。すると見兼ねた女将さんが「大丈夫ですよ」と笑顔でバトンタッチし、ヒラリと棚下の平台に飛び乗って、本を見事に戻してくれた。お手間かけてしまった…これは何か買わなければ…と言うわけでカッパ・ホームズ「この愛いつまでも/加山雄三」を350円で購入する。…まぁ、こんなこともたまにはあるだろう。さらに帰り着いた阿佐ヶ谷では「千章堂書店」(2009/12/29参照)の右側100均単行本台から桃蹊書房「年刊創作傑作集 第一篇/日本文藝家協會編」を100円で購入する。

夜になって再び家からペタペタ飛び出し、文芸寄りフォークミュージシャン・世田谷ピンポンズさんのワンマンライブ『都会、なんて夢ばかり』が開かれる『ザムザ阿佐ヶ谷』へ。当日券を求めて地下への階段を下りると、すでにかなりのお客さんが階段状の桟敷に座っているが、幸いにもチケットを手に入れることが出来、履物を脱いで会場に来合わせていた岡崎武志氏&山本善行氏古本黄金コンビの横に腰を下ろす。午後七時半から休憩を挟んで正味二時間強続いたフォークライブ。世田谷ピンポンズさんは、くどいと形容するのが相応しい演出とMCで会場を湧かせながら、初期の吉田拓郎を彷彿とさせるスタイルで歌うのだが、それはフォークと言うよりは、まるでフォークから脱却するために、常にもがいているようでもあった(しかも一曲一曲がパンクミュージックのように短くて潔い)。消え入り控え目そうなルックスとは裏腹の、魂を引きちぎって投げつけるような、驚くほど堂々たる低音の歌声は、聴き入る魂をビシリと客席に釘付けにする。フォークだから“ノスタルジー”というわけでは決してなく、まるで現代の都会の片隅の情景を、モノクロ写真でスナップしたような、奇妙な新鮮さor違和感を、その短い曲の間に、常にざらりと感じさせてくれるのだ。とにかくそれほどひねくれていて、ちょっと変わった現代的な、遅過ぎて大遅刻のフォークシンガー。興味ある方は、ぜひとも一度接触してみて下さい。
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この写真はライブ終了後の阿佐ヶ谷で、午後十時過ぎの路地裏に浮かび上がる岡崎&善行親友コンビ。この後仲間を引き連れて、夜のカラオケ大会に向かいましたとさ。
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2017年08月28日

8/28蠻島王現る!

夕方前に国分寺の北にある恋ケ窪に流れ着く。近くには「ブックセンターいとう 恋ケ窪店」(2012/03/25参照)があったのだが、実は8/6にあえなく閉店していたことが判明したので、慌てて西武国分寺線で国分寺駅に移動して、駅北口の「七七舎」(2016/02/06参照)を訪ねることにする。店頭には通りがかりの人が結構立ち止まるので、譲り合いながら本を眺める。コンパクトな間口のお店の右側に広がる、お休みの別店前に置かれた棚と裸文庫箱が良い感じ。
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一冊抜き取り涼しい店内に入ると、本の密度が以前より増した感があり、未知と知を探索する空間的としての心地良さもアップしている。日本小説文庫「陰獣/江戸川乱歩」を見つけてしまったので見境無く買ってしまいそうになるが、昨日も結構散財したじゃないか!と今日のところは我慢する。新潮社「笑学百科/小林信彦」を100円で購入する。

家に戻り、野暮用を済ますために再び外出し、中野へ。スパパパっと用事を片付けて本日二度目の帰宅を果たすと、鍵を開けたドアの向こうに宅配便の不在連絡票が落ちているではないか…これはもしやヤフオクの落札品!時間を見ると十分前の17:48分。しかも再配達依頼が出来るのは午後六時までとなっている。慌ててコールセンターに電話し、申し訳ないが再配達を手配。すると午後七時半前に、七冊ほどの様々な厚さ大きさの古書&古雑誌が詰められた、ちょっとした福袋のような物がようやく届いた。出品時は幾つかの雑誌名とともに『古書まとめ』などとされていたのだが、その中にどうも気になる一冊があったので、半ば博打のように入札してみたのである。ライバルは現れる事なく、無事に千円で落札。ガサゴソと袋を開け、その気になる一冊を手にしてみる。和本綴じで、表紙は貸本仕様の手作り物。貼付けられた題籖には手書きで「探檢小説 蠻島王 全」の掠れた文字が。詳細な情報は一切なかったので、つまりは写真の中のこの文字だけに賭けてみたのである。まぁ読めれば良いのだと思いつつ、和紙で固められた手作り表紙をめくってみると、おぉ!そこには意外なことに、美しいままのオリジナル表紙が現れたではないか!こ、これが『蠻島王』!
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どうやらボロいのは貸本仕様の和紙表紙だけで、中身はオリジナル表紙から四枚の口絵から本文まで、すこぶる状態が良い様子。これは嬉しい誤算である。物語はイギリスの冒険小説を翻訳したものらしく、英国の少年が、南洋→海軍軍人→太平洋→南亜米利加→鯨捕り→蠻島征伐者→漂流者→真珠採りなど様々な場所を様々な職種で冒険探検しつつ、最後はついにタイトル通りに『蠻島王』となるらしい。出版は明治三十九年六月に成功雑誌社(何という名の出版社だ)からで、譯者は堀内文麿。一ページ目には恐らく貸本屋の印である『笹尾』『金房堂』の文字が赤く捺されている。
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2017年08月22日

8/22一房の葡萄、そして手紙舎

今日は午後二時半過ぎにつつじヶ丘北側に流れ着いたので、そのまま駅へと向かい、いつの間にか古本も売る雑貨屋「mater」(2016/02/23参照)が消滅しているのを目撃し、結構長い五分間の踏切待ち。上り電車と下り電車が永遠に間髪入れず行き交う雰囲気に、待っている人々の眉間にいらだちの縦皺が深く刻まれて行く…。そしてたった二十秒の隙に南に渡り、そのまま『神代団地』の商店街にある「手紙舎」(2009/12/13参照)を久々に訪れることに決める。何となく方向をアバウトに定めて歩を進めて行くと、何の変哲もない礫敷き駐車場フェンスに絡まる葉っぱの大きな蔓草が目に留まる。あれ?おかしいぞ?おかしなものが、葉の裏にチラリと見えているぞ?といぶかしみ裏側を覗き込むと、そこにはたわわに実った、大きな大きな緑の葡萄の房がぶら下がっていた…これは、なんだ。辺りを見回しても、別に葡萄畑があるわけではなし、何故こんな駐車場のフェンスに、マスカット的な大きな葡萄が自生しているのか!
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とかなり大きな衝撃を受ける。衝撃を受けつつ、次に思ったのは「これは食べられるのだろうか?」ということ。写真を撮り、少しだけ逡巡した後、ついつい誘惑に負けて、大きな一粒をプチリともぎ取る。そして皮をむいて口に放り込むと、少し硬く酸味はあるが、立派な美味しい喉の渇きを潤すほどの葡萄であった…イカン、私は道端で何をしているのか。我に返って住宅街の中を抜け、『神代団地』の中庭的店舗ゾーンにたどり着く。「手紙舎」は商店街の一角で、その姿をよりシックに変化させ、しっかりと営業中であった。地元のマダム客が二人いる店内に入り、大テーブルの片隅に腰を下ろす。そしてここでも誘惑に負けて、調布ビールをオーダー。その間にも男子・女子の一人客が訪れ、スイーツと紅茶を注文している。壁棚の古本は、今は女性系雑誌がメインとなり、暮し・ファッション・パリ・料理などがきめ細かく収まっているようだ。なので今日は、グラス二杯分のビールを飲みつつ、白昼の団地風景を漫然と眺めて過ごす。
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風に揺れるヒマラヤ杉の枝と、家賃値上げ反対の幟。誰も座らぬ吹き曝しのベンチ。『30』の番号を持つ矩形の白い団地棟。自販機前の側溝蓋を外し、落ちた小銭を探す少年たち。隣りの薬屋の、安売のラップと洗剤が山積みされたワゴン。そんなものたちにボ〜ッと幸せに視線を泳がせているうちに、あっという間に飲み終わってしまったので、648円を支払い帰ることにする。

ビールに頬を染めて阿佐ヶ谷に帰り着き、今日は古本を買わぬ覚悟で『旧中杉通り』を歩いていると、あれ?定休日のはずの「古書コンコ堂(2011/06/20参照)」が開いているじゃないか。ついつい嬉しくなり店頭で三冊掴んで中に入ると、店主・天野氏とばったり。「今日は何で営業しているの?」「いや、先週休んじゃったんで…それで、ツライから…」…と言うわけで、先週のお盆休みの分を取り戻すために開けていたらしい。ファイト、我らのコンコ堂!角川文庫「能面の秘密/坂口安吾」北隆館「しだ・こけ・きのこ/牧野富太郎・監修」「新宿PLAYMAP 1969 12月号」を計309円で購入する。
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2017年08月19日

8/19古本屋さんで雨宿り

今日は石神井公園に流れ着いた途端、大粒の雨がボタボタ落ち始め、激しい本降りとなる。その雨にもめげず、シャボン玉を飛ばして遊び続ける親子三人が、次第にたがが外れたように奇声を上げ始め、土砂降りの中ではしゃぎまくり動物的に解放されて行くのを目撃…う〜む、何だか涙が出るほど美しい。てなことに見蕩れていると、傘を差していてもたちまちずぶ濡れになって来たので、急いで石神井公園駅方面に急行する。靴の中がたちまち海のようになり、頭上では雷光と雷鳴がタイムラグなく発生し続けている。仕舞いには巨大な神がまるで巨大な蛍光灯を点けたり消したりしているような、異常な状態に。練馬って、いっつもこんな感じなのか…。雷鳴がもはや“ゴロゴロ”ではなく、“ドッカン”“ガッシャン”と自動車事故のような音を立て始めたところで、駅南口の「草思堂書店」(2008/07/28参照)にたどり着く。
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びしょ濡れの下半身で店内に逃げ込み、冷房に震えながら一安心する。お客は私一人で、濡れた靴音を微かに響かせながら、店内をゆっくりと一周する。それでも、雨と雷は収まる気配がまったくない。辛抱してさらに二十分近く様子を見るが、表は雨に煙ったまま…。あきらめて評論社「ビッケと赤目のバイキング/ルーネル・ヨンソン」(箱ナシ)を300円で購入し、再び身体を派手に濡らしてしまい、雷に首を竦めながら石神井公園駅。駅前はたくさんの人が雨宿り&途方に暮れており、ちょっと非日常的な光景となっている。そんな中、駅舎下に滑り込んで来たバスに乗り込み、またもや冷房に震えながら無事に阿佐ヶ谷に帰り着く。
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2017年07月31日

7/31非情の京成本線!

朝早くから色々作業し、すべてが片付いたので大いなる開放感に包み込まれ、午後に外出。久々に千葉の名店「キー・ラーゴ」(2009/11/25参照)だ!と、すでに素晴らしい古本を見つけた気分になり、電車に揺られまくる。だが一時間四十分かけて到着した、午後四時前の長い商店街のお店は、冷たくシャッターを閉ざしていた…うぉぉぉぉぉ、「キー・ラーゴ」では初めてお店を訪ねて以来、一度もシャッターアウトはなかったはずなのに、ついにこの日を迎えてしまったか…。こぼれ落ちそうになる涙を我慢しながら、駅にサッサと引き返し、ならば八千代台の「雄気堂」(2009/05/30参照)だ!と二駅移動する。何事もなかったかのように胸をときめかせながらお店に向かうと、ぐぬぅ、無情のガラス戸アウト…よもや千葉の名店が二店ともお休みとは…考えもしなかった…。まだまだ強い日射しと、暑いアスファルトの照り返しに嬲られながら、これからどうするかを思案する。高根公団の「鷹山堂」(2009/05/17参照)…それともかなり引き返して京成八幡「山本書店」(2010/06/29参照)に…いや、そう言えばまだこの京成本線の先の駅に、古本屋があったはずだな…そうだ、志津の「日置書店」(2014/04/29参照)だ。おばあさんが切り盛りしている、街の小さな激安リサイクル系古書店であるが、その去就が気になるので、ここはひとつ良い本を買うという方針を変えて、消息を尋ねに行くとするか。そう決めて再び京成本線に乗り込み、意外なほど千葉の奥地へ来たのを実感しながら志津駅着。北口に出て、朧げな三年前の記憶と現実の街を縒り合わせ、小さな居酒屋ばかりが集まる鄙びた駅前を進む。すると駅から一本裏通りに、以前と変わらず閉店して自然に取り込まれつつある商店と肩を並べ、元気に立派に営業している黄色いお店が目に飛び込んで来た。正直に言うとその瞬間、閉店していないのが不思議なほど、寂しくちょっと荒れた通りで、よくも健気にお店が続いているものだと、大いに感心してしまったのである。嬉しくなって、コミックと文庫とエロ本ばかりの店内に入り込む。店主のおばあさんは健在で、帳場で大量のコミックの値付中。扇風機が涼風を流し込む、狭い通路にしゃがみ込み、棚を隅から隅までチェックして行く。さらには新しめの文庫の裏に、古く汚れた単行本が横積みになっているのを発見し、本を引き出し背をチェックして行く。集英社文庫「ダメをみがく/津村記久子・深澤真紀」NTT出版「第10回・NTTふれあいトーク大賞100選」ワニの本「恐怖びっくり毒本/ビートたけし編著」ニッポン放送出版「これが噂のヒランヤだ/三宅裕司のヤング・パラダイス編」情報センター出版「いちど尾行をしてみたかった/桝田武宗」を選び出し、おばあさんに差し出すと、たちまち本を仕分けた挙げ句、値段の付いていない四冊を積み重ねて「こっちは上げる!」と宣言。結局「ダメをみがく」の五十円だけを精算することに。う〜ん、たぶんこのお店には、時々来るだけでは分からない、何かが潜んでいそうな気がしてならない。地元民にしか分からぬ、このお店の役割と良さとお店の続く秘訣が、きっと何処かに隠れているのだろう。そんなことを思いつつ、相変わらず人影の無い表に出る。七月最後に訪れた古本屋さんは、まぶしく爽やかなレモン色で、小さな街に密やかに、大衆的雑本を振りまいていた。
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2017年07月26日

7/26「ますく堂」は引越し予定!

雨の降りしきる正午に西荻窪へ向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)にて「フォニャルフ」に古本を補充する。夏の西荻窪にお寄りの際はぜひとも冷やかしてやってください。早川書房「海外探偵小説作家と作品/江戸川亂歩」を100円で購入しながら店主・小野氏より、ある作業のお礼として新潮社長編文庫「黄金草/岡田三郎」をいただく。「どうせ同じ岡田三郎なら、赤爐閣の「誰が一番馬鹿か?」が良かったなぁ」などと憎まれ口を叩くが、お店を出て移動の電車内でページを紐解くと、銀座のカフェーから始まる大衆的女給悲愁物語にぐんぐん取り込まれてしまう。そんな風に見事なくらいに「黄金草」に夢中になっていたので、あっという間に雨上がりの池袋着。西口に出て道すがらの「夏目書房」(2008/07/05参照)に立ち寄り、店内に引き込まれた安売棚から河出文庫「白骨の処女/森下雨村」を200円で購入。そこから裏町に入り込んで、大きな道路を渡って椎名町方面に向かって住宅街を進んで行く。「古書ますく堂」(2014/07/20参照)が近々三度目の引越しをするらしい噂を耳にしたので、様子を見に来たのである。わりといつでも人の流れがある生活道路から、ひょいと曲がり込むと、おっ!ちゃんと木枠の格子戸が開いているじゃないか。営業中だ。狭く開いた戸を潜り、箱の積み上がる店内に滑り込む。するとますく堂さんがいつも通りの元気な声を出し、先客さんとお喋りをしている。「あ、古ツアさん」と気付かれるや否や、即座にその先客さんを「「おひさまゆうびん舎」さんです」と紹介される。あの姫路の!と驚き挨拶を交わしつつ、まだお店に行けてないことを、思わずお詫びしてしまう…これで店主さんにも挨拶してしまった。いつか、絶対にツアーするぞ。などと秘かに決心しつつ、ますく堂さんに引越しについての探りを入れる。何と引越し先は、同じビルの一軒挟んでのほぼ隣りで、「駅に近くなった」とますく堂さんが虚しく喜ぶ超近距離。そこは普通の事務所状態で、飲み屋を居抜きで古本屋として使用して来た伝統が、ついに途切れてしまうこと。ただし前二軒と同じく住居付きなので、取りあえずますく堂さんは路頭に迷わなくて済むこと。引越し時期はアバウトにお盆前後になりそうなこと。現店舗とそのカウンターを名残惜しむために、8/5(土)に久々に「スナックますく堂」(2012/09/14参照。古本修羅や古本無頼や古本一匹狼たちが、夜の古本屋に酒を持ち寄り、楽しく怪気炎と雄叫びを上げるイベント…ご興味ある方はぜひ!)を開催すること。などを次々聞き出す。すでに店内には、次のお店のために様々な所から拾って来た什器が置かれ、ますく堂さんのやる気がヒシヒシと伝わって来る。もしかしたら、次のお店が「ますく堂」の歴史上、一番古本屋さんらしい古本屋さんになるのかもしれない…。ひばり書房「呪われたふたつの顔/さがみゆき」レモンコミックス「頭脳線甦ったミイラ/好美のぼる」を計400円で購入し、8/5に再び来店することをあやふやに約束し、お店を後にする。
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写真はお店がテレビ撮影に使われた時に使用された小道具を、ますく堂さんがスタッフにねだっていただいた物。これを店先に下げ「古本屋らしくなったでしょ」とご満悦なのである。逞しいというか何というか…いや、これでこそ「ますく堂」!まるで諸星大二郎の「生物都市」のように、様々な物品が融合し、『古本屋』という店舗の体を成しているのだ!なので来店時は、お店に取り込まれないよう、細心の注意が必要なのである!
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2017年07月17日

7/17夏の「あきら書房」

今日は早い時間に初台辺りに流れ着くが、古本屋さんを行動の基準とする私にとっては、どうにも動きの取り難い場所である…いや、いつの日からかそうなってしまったと言うべきか。ちょっと『甲州街道』に立ち尽くし、過ぎ行く車が巻起こす排ガス臭い風さえも涼しく感じながら、かつてはたどれた近辺のお店を思い出してみる。幡ヶ谷ではまずは『六号通り商店街』の「小林書店」(2008/07/09参照)。可愛い鳩的店名ロゴと、右側の隠し部屋的ゾーンが印象的であった。そして商店街を抜け、さらに『水道道路』も渡って坂を下ると「なつかし屋」(2008/09/28参照)。通路にうずたかく積み上がる本やプラモに苦心しながらも、勇気を胸に本の隙間を進む、そんなスリリングなお店であった。笹塚まで移動すれば、『甲州街道』沿いの「一新堂書店」(2008/06/24&2011/02/07参照)が、常に逸る古本心を優しく受け入れてくれたものだ。美術系に強かったが、私的には文庫でお世話になっていた…。この三店を巡るだけでも、だいぶ心は燃え上がるはずなのだが、今はもうそれも叶わない。現存する「BAKU」(2012/05/28参照)や「DORAMA」(2012/03/16参照)で代用しようにも、代用出来ない味が、なくなったお店には厳然と存在していたのである。右頬をツツッと流れたのは、汗かそれとも悲しみの涙か…。

いつまでも女々しく思い出に浸っていても仕方ないので、京王バスに乗り込んで阿佐ヶ谷方面へ戻り始める。だが終点の駅までたどり着くことなく、『青梅街道』沿いの『梅里中央公園入口』で途中下車し、北側の路地に入って、夏の「あきら書房」(2016/03/28参照)の様子を見に行くことにする。おぉ、この蒸し暑い中、草木の咲き誇る庭の向こうに、ちゃんと古本屋部屋が開放されているではないか。
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間髪入れず店内に入り込み、あまり動きの見られない手前ゾーンはササッと流して、右奥の床に置かれた本の山と本棚中段の古書ゾーンを集中的に漁る。その間に、俊敏な蚊にブスブス刺されてしまい、気がつけば右頬も刺されており、かゆみに悶絶してしまう。だが、牧神社「夢みる人 エドガー・アラン・ポーの生涯/マリー・N・スタナード」白鳳社「婦人職業戰線の展望/東京市役所編纂」(箱ナシで背は傷んでいるが、昭和七年発行の職業婦人についての資料集。巻頭のグラビア『婦人職業の尖端を往く女性』が最高!エアガール・ガソリンガール・マーリンガール・パラシュートガール・ニュースペーパーガール・マネキンガールなどなど)を見つけたので、計100円で購入することにする。奥のガラス障子前に立ち「すいませ〜ん」と何度か声を出すが、応答がまったくない。大丈夫だろうか…もしかしたらこの暑さで老婦人は…などと不吉なことを考えつつ、棚の横に大振りな鈴が下げられているのに気付く。そうか、呼ぶ時はこれを盛大に鳴らすのか。紐を引っ張りンガランガラ…するとすぐに障子が開いて、老婦人が元気な姿を見せてくれた。ホッとしながら百円玉を手渡し、「今日は暑いですね〜」「ええ、本当に」と他愛無い会話を交わし、庭に脱出する。家に帰ってからは、大阪へ再び送る古本の準備に手をつける。
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2017年07月08日

7/8閉店する無人店から追い出される

本日は広い広い世田谷区の僻地の如き『祖師谷公園』に流れ着く。生まれて初めて来た場所で、今年初めての蝉の鳴き声を耳にして夏を実感するが、公園の北側部分に、あの『世田谷一家殺人事件』の事件現場となった住宅が、緑色の防護シートに包まれて保存されているのに気付き、慄然としてしまう。しかし家屋に接する公園では、子どもたちが遊具で無邪気に遊ぶ光景が展開している…凄惨な未解決事件の記憶とほのぼのとした日常が混ざり合う奇妙な状態に戸惑いながらも、しばしの黙祷を捧げて、バスで京王線の千歳烏山駅へと向かう。

駅北側に出て、もう午後七時前だがまだやっているだろうか?と、無人で素敵にクレージーな古本屋「イカシェ天国」(2008/09/23参照)に足を向ける。まだ営業中だ!と喜び飛び込み、ほぼ動かぬ態の棚に視線を注ぎ始めると、渡辺竜王のようなネクタイ姿の男性が、表の小ワゴンを中に運び入れてきた。どうやら斜向いの本の料金を支払う不動産屋の方らしいのだが、この様子ではどうやらもう閉店らしい。「お店、終りですか?」と聞くと「ハイ、閉店です」ともはや本を買わせてくれぬ模様である。「そうですか、すみません」とそのまま表に出ると、竜王は音楽を止め、電気を消し、立看板を素早く取り込み、あっという間に閉店してしまった。古本を買えなかったのは残念であるが、無人古本屋で店員さんと接するレアケースに出会えたので、今日のところは良しとしておこう。
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その後阿佐ヶ谷に帰り、「千章堂書店」(2009/12/29参照)にて光文社知恵の森文庫「冒険手帳/谷口尚規著・石川球太画」を100円で購入する。
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2017年07月06日

7/6そして十二人目の太宰が登場する

「江戸川乱歩の本名って知ってる」「…乱歩?」「太郎って言うの」「…じゃぁ、江戸川太郎?」「ギャハハハ、ちげーよ!」などと、登校中の女子高生が交わす奇跡の会話を耳にした後、一日を過ごす。…それにしても、期末試験で乱歩の問題でも出るのであろうか…。そして本日流れ着いたのは上連雀…おぉっ!偶然にも目の前に「book&cafe Phosphorescence」(2008/08/01参照)が現れたではないか。何か買うというよりも、今日は珍しく何かを飲みたい気分である。外の壁沿いに点在する安売箱たちを覗き込んだ後、小さな店内に入り古本の背を追いかけて一回り。相変わらず非売品の太宰初版本棚がスゴいことになっている。ぬ?その棚の新しい住人として、先日取り壊されてしまった(大分県に移築される予定)、太宰が一時下宿した天沼の『碧雲荘』の欠片が仲間入りしているではないか!茶色の蜂の巣型タイルが何とも可愛らしい…俺も拾いに行けば良かったなぁと、棚前で羨みながら後悔する。そしてその棚裏の小さな机席に腰を下ろし、せっかくなので『太宰ラテ』なる飲み物を注文する。いったいどの辺りに太宰要素が入っているのであろうか?もしや玉川上水の水を蒸留して……。そんな想像を巡らしながら、ちょっと薄暗い棚の裏に視線を据える。そこには、太宰に関わる新聞や雑誌の記事が多数貼り出されており、たくさんの太宰の肖像写真や似顔絵が視界に入り込んで来る。壁の写真や肖像画も合わせると、総勢十一人の太宰が、主に頬に手を当て憂い顔を晒しているのだ。そんな記事群を読みながら待つこと十分。「お待たせしました」とカップが机に置かれる。「なるほど、こういうことだったんですね」「ウフフ、そうなんです」…カップの中にはラテアートで描かれた太宰の瓜実顔が、フワフワと浮かんでいたのである。正面を向いた太宰の顔に意表を突かれ、しばしにらめっこするが、いつまでもそうしているわけにはいかないので、砂糖を入れてスルスルっと啜り込む。あっという間に十二人目の太宰はお腹の中へと流れ落ち、疲れた身体を労り癒し始めてくれた。椅子に深く沈み込み、夕方の三鷹の古本カフェの本棚の裏で、気持ちよく弛緩する。何だか、珍しく古本を買わずとも、幸せになってしまった…。
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2017年07月03日

7/3俺にとっては開かずの「えびな平和書房」

午後に思い立ち、湿った熱い空気を掻き分けて、鮎川哲也「黒いトランク」を頭を懸命にフル回転させて読書しながら神奈川県・海老名に向かい、バスで丘に上がってそして下る途中の、移転後の「えびな平和書房」を見に行く。だが「今日こそは!」と期待度満点でたどりついたお店は、店頭のワゴンや棚にブルーシートが掛かったままで、『本日の営業は終了しました』の看板が立ちっ放しの状態なのであった。…うぅ、俺はいつになったらこのお店に入れるのだろうか。もう四回は見に来ているはずだが、毎回見事なまでに袖にされているのだ。くそぅ、だがいつか開いている時に巡り会わせて、しっかりと古本を買ってやる!と、丘の上の住宅街に圧し掛かるような雲の多い青空に、遠吠えする。そして潔く丁度来たバスに乗り込み、たちまち馬鹿みたいに駅へと引き返す。小田急線上りに乗り込むが、悶々とした気持ちを鎮めるために町田駅で途中下車し、ビル一杯の古本屋さん「高原書店」(2009/05/03参照)に急行する。
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ほほぅ、今は100均本を50均でサービス中なのか。というわけで店頭小庭&店内の100均棚&ワゴンを集中的に漁り、ますます古本の山でカオス化が進む室内&店内に好意を抱きながら、講談社「透明な季節/梶龍雄」面白半分12月号臨時増刊号「さて、田村隆一」を計108円で購入する。再び電車に乗り込み、あっさりそのまま帰るつもりだったのが、シートの上で段々とまだ何か買いたい気持ちが膨れ上がってしまい、衝動的に下北沢駅で下車。「ほん吉」(2008/06/01参照に一直線に向かい店頭にむしゃぶりつく。
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やっぱり良い本が挿し込んであるなぁ。得に今日は左の300均本にそれが多い。ここはやはり古本を求める気持ちをちゃんと受け止めてくれる…そんな風に感じて喜び二冊を手にする。講学館 日本の子ども文庫1「たぬき学校/今井誉次郎」(カバーナシ。そうてい・さしえが安泰なので、動物的プリティーさが大爆発!)東京・大阪朝日新聞社 アサヒカメラ臨時増刊「人物寫眞術」(表紙に丸窓があるデザインで昭和十二年刊。木村伊兵衛・中山岩太・野島康三・岡本東洋・堀野正雄の写真も掲載され、それぞれの技術記事もアリ)を計600円で購入する。途中下車で古本を購い、空振りした気持ちをどうにか鎮めた、三時間余の小田急線行であった。
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2017年07月02日

7/2いつの間にやら「石本書店」

重苦しく暑苦しい空気の中、仙川の南西にある若葉町に流れ着く。ここは意外に高低差のある土地で、谷底には緑陰濃く涼しい『武者小路実篤公園』があったりする。近くには実篤の記念館もあり、その案内版がふと目に留まる。下部に『桐朋学園』前にある書籍と文具の『神代書店』の広告があるのだが、そこに実篤から書店に送られた識語が書かれているのだ。『雨が降った それもいいだろう 本がよめる』…なんだか七十年代CMのコピー的だが、今の時期にピッタリなので見事に胸に沁み入ってしまう。もしかしたら、この言葉が書皮に印刷されているのではないかと思い、記念に文庫でも一冊買って行こうとお店を探し当てるが、残念ながら定休日であった。当てが外れながらも、そのまま「文紀堂書店」(2015/03/31参照)に向かい、チャイルド本社 おはなしチャイルド26号「まいごのロボット/作・大石真 絵/北田卓史」を500円で購入する。そのまま西にスライドするようにして、いつの間にか全滅してしまった「ツヅキ堂書店グループ」(2016/11/11参照)の最後の生き残りとも言える、裏路地の元「ツヅキ堂書店 仙川店」(2009/08/20参照)である「石本書店」を訪ねる(何だか文章がややこしくてすみません…)。店名の入っていた黄色いテント看板を見上げると、何もかも旧店のままであるが、元の店名だけは黒テープで消されている。
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そして自動ドアにのみ「石本書店」の名が掲げられている。店頭に立っていると、すぐさま店主の石本氏に発見され、挨拶を交わしてポツポツお話しさせていただく。「それにしてもお店が賑わってるじゃないですか」と見たままの感想を伝えると「今日は選挙だからたまたまですよ。いつもは閑古鳥が…」などと返される。いやいや、これだけの人が、この分かり難い裏路地に入り込んでくるんだから、地元に充分認知されている証拠ですよ。そのまま店内を回遊し、最奥の良書が紛れ込む充実雑本棚を楽しむが、値段になかなか隙が見つからぬので、何を買うか決め切れない。しかし美術棚にてようやく国文社「ダダ論考/山中散生」(帯&崩壊寸前の元セロ付)を900円で発見したので、よっしゃっ!と購入する。

家に帰ってしばらく身体を休めた後に、日が暮れ切る前に都議選の投票へ向かう。
posted by tokusan at 19:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする