2022年01月20日

1/20「田村書店」の日本書バーゲンセール。

和同出版社「見なれぬ顔/日影丈吉」を読了する。戦争の荒廃と混乱が色濃く残る東京で、その中から一歩でも抜け出そうともがく人間の、切なくやるせなく残酷な犯罪絵巻。その切なさを日影が、硬質に装飾された文章で淡々と綴って行くので、静かに興奮。短篇『赤い夜』では、主人公と敵が緊張感のある会話を交わした後に「多田の射ちこんだ銛の痛手を、その時はじっと怺えて、海底に沈んだ」とか。『月はバンジョオ』では「蒸し暑い日が続いて、時どき頭の痛くなるような雷が、乾いた空で鳴った」とか。もはや詩の域なので、否応無しに痺れます。この時代の日影を、もっと読むようにしよう…。

そして今日1/20は、明大前から豪徳寺に移転した「七月堂古書部」(明大前時代は2018/01/13参照)がオープンする予定だったのだが、どうやら二月にずれ込んでしまった模様。しかたない、後半月余、首を長くして待つことにしよう。というわけで午前のうちに神保町に出る。古本屋さんをフラフラ辿りながら向かったのは、名物の店頭ワゴンを廃止し、1/31まで開かれている「田村書店」の『一般書:50%引き+消費税』『全集・揃いもの:30%引き+消費税』『初版本・稀覯書:30%引き+消費税』日本書バーゲンセールである(ショーウィンドウ内はセール対象外とのこと)。元木製ワゴンの上には列の先頭を指示する貼紙があるので、セール開始当初はかなり混み合ったようだ。現在は静かにいつものような「田村書店」(2010/12/21参照)が佇んでいるばかり。京都『安井金毘羅宮』のお札が貼られた石状態の、黄色い値段札がペタペタ貼られた入口から店内へ。すると忙しく働く店員さんが「いらっしゃいませ」と気軽な感じで迎え入れてくれた。パラフィンに包まれた古書が居並ぶ空間は健在で、空きはほとんど見られない。どうやら売れるそばから補充しているようだ。稀少な古書もまだまだたっぷりとお客の来訪を待ち構えている。セールなのだがやはり緊張しながら、パラフィン越しの背文字を必死に見極め店内を一周。東西出版社「笑ガス/P・G・ウツドハウス 黒豹介譯」を30%引きの2840円で購入する。それにしてもこのセール後、お店はどうなってしまうのだろうか。とても気になるところである。
tamura_sale.jpg
その後は『靖国通り』を西に進み、「光和書房」(2021/02/19参照)で創元推理文庫「エラリークイーンの新冒険/エラリー・クイーン 井上勇訳」を300円で購入する。この文庫は白帯verが初版だが、再版として新社から出された黒背カバーverがとても貴重である。その後は白背黒文字&黒小父さんマークカバーverが普及するのだが、この1965年5刷は何と白背なのだが、文字が赤で小父さんマークが銀刷りなのである。へぇ〜、再版黒カバーから普及版白背カバーの間に、こんなミッシングリングがあったのか。初期創元推理文庫カバーの世界は、全く持って奥が深い、深過ぎる!
queen_na.jpg
posted by tokusan at 15:20| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月10日

1/10またもや途中下車して古いミステリ文庫を。

陽が落ちた途端に、魔法のように鋭い冷気が街を覆って行く。なのでポケットに手を突っ込み、背を丸めて高田馬場に出て用事を済ませた後、すぐにとんぼ返りするが、新井薬師前駅で途中下車する。改札を抜けて西を見ると、おっ、今日は「文林堂書店」(2008/08/04参照)が開いている。年末には二度ほど振られてしまったので、さほど期待していなかっったのだが、開いてくれていてありがとう!今年もよろしくお願いします!と店頭を眺めてから左側通路にドアを開けて入店する。通路棚に視線を巡らすも、狙うはやはり帳場前面の値下げ絶版ミステリ文庫たちである(2021/12/13参照)。今日は何を買って帰ろうか?と買う気は満々。並ぶ数冊に手を伸ばそうとしたその時、ひとりの男性が右側通路から入って来て、一直線に帳場を無言で目指して来る。どうやら帳場に座る店主と話したいようなので、仕方なく場所を開ける。二人は「よお」と挨拶した後「戦争のビデオない?明治の戦争の」「ないね〜。太平洋戦争のならそこに一本あるでしょ」「戦争のビデオない?明治の。だって、太平洋戦争って、日本が負けちゃうからつまんないんだよ。明治時代のない?」「明治のはね、ないよ。映像自体も少ないんだから。あの当時、カメラも貴重で映すの大変だったんだから。そんなに残ってないんだよ」「そうか〜。ああぁ、戦争のビデオ買いに来たのになぁ…」などとやり取りしている。まったく、色んなお客さんが来るもんだ。やり取りがしばし途絶え、諦め切れずにビデオタワーを探る男性客の隙を突き、創元推理文庫「わが子は殺人者/パトリック・クェンティン」を500円引きの二千円で購入する。1961年の初版本で、東京創元旧社で、初版をカバー装幀で出版した最初の作品と目される一冊である(湘南探偵倶楽部「初期創元推理文庫 作品&書影目録」によると、他に「赤毛の男の妻」「大空の死」「リトモア少年誘拐」もその可能性ありとのことである。
myson_murderer.jpg
日下弘によるグリーンを基調にした装幀に大いに痺れてしまったのだ!また買いに来ようっと。
posted by tokusan at 19:12| Comment(4) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月09日

1/9「靖文堂書店」は2022年2月22日に閉店す。

午後に哀しいコメントタレコミに基づき豪徳寺へ向かう。新型車両の小田急線車内で、渋過ぎる共通男性アナウンス音声に驚かされた後、改札を抜けて巨大な招き猫に迎えられ、小さな坂道の駅前商店街を南へ進む。繁盛しているお洒落コーヒースタンドの隣りにあるのは「靖文堂書店」(2011/09/06参照)である。あぁっ、本当だ。サッシ扉に白い貼紙があり『2022年2月22日閉店 靖文堂』と書かれている……くぅ、ゾロ目続きで閉店記念日感満点の閉店日である。
seibundo0222.jpg
落葉が散り行くように、小田急線沿線の古本屋さんが、閉店したり店売りを辞めて行く現実は、とても哀しいものがある。ふぅ、とため息をつき、いつものように帳場で奥さまがミステリドラマを観ている店内へ。閉店まであと一ヶ月と二週間…果たして何回来られるだろうかと、切なく思いながら、いつも以上に棚を丁寧に見て行く。すると、文庫棚がいつも以上に入れ食い状態となったので、より一層閉店を惜しむ気持ちが心の中に広がって行く。新潮文庫「蜘蛛/トロワイヤ 福永武彦譯」「フローテ公園殺人事件/クロフツ 橋本福夫訳」河出文庫「日本三文オペラ/武田麟太郎」エッソ石油株式会社広報部 エナジー小事典・第六号「映画/蓮實重彦・山田宏一・山根貞夫」國の力新聞新年附録 つはもの叢書別冊「川柳漫画 笑倒兵/陸軍省つはもの編輯部」を計1300円で購入する。うぅむ、手応えあり!の五冊である。
0109syukaku (1).jpg
こんな掘り出し体験をさせられたならば、また来なければイカンな。まだまだ後、三回四回五回と……。

かように収穫はあれども、心は何故かズッシリと重い。気晴らしに祖師ケ谷大蔵まで足を延ばし。「祖師谷書房」(2009/03/05参照)詣でを行う。ふあっ!福音館書店「ぐりとぐら」の1963年初版絵本を見つけるが、カバーナシで扉ページが切り取られている。だから百円…惜しいなぁ。実の惜しいなぁ…。日吉堂本店「頓知裁判 大岡越前守/やなぎ生」を200円で購入する。大正元年の様々な奇態な事件を人情溢れる頓知と閃きで裁き切る全十八話。ちょっと乱丁はあるが、一回ページを行きつ戻りつすれば、容易に物語を読み継ぐことができるので、200円で購入する。
posted by tokusan at 18:56| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月08日

1/8昨日に続き荻窪で古本を買う。

夕方近くに南荻窪に流れ着いてしまったので、今日も荻窪に向かうことにする。『環八』から駅方面に近付き、まずは線路下を潜って「中央線書店」(2021/04/08参照9の様子を見に行く。だがシャッターがガッチリ下ろされ、当然店頭棚も出ていない…また古本買いたい。そして実店舗の開店を目指していたはずだが、果たしてどうなっているのか…と言うわけでトンネルを潜って再び南側に顔を出し「竹陽書房」(2008/08/23参照)へ。入口脇に新たに出現した、ポスター裏に書かれた店名紙看板が、シンプル過ぎて微笑ましいッス!
chikuyou_paper.jpg
エロ本を一心不乱にDIGする先客に気を遣いながら、フィルムアート社「陽のあたる家 小津安二郎とともに/井上和男編著」PARCO出版「少女ロマンス 高橋真琴の世界」を計500円で購入する。続いて裏路地を伝って「藍書店」(2018/12/24参照)に到達し、店頭に大量のポケミスが出ているのを眺めてから店内へ。ここでも先客と上手く狭い通路の場所を譲り合い、ハヤカワポケミス「殺人狂想曲/J・H・チェイス 田中小実昌訳」パーソナルメディア「SFコンピュータ10の犯罪/アイザック・アシモフ編」B.S.P「バカミスの世界 史上空前のミステリガイド/小山正とバカミステリーズ編」を計440円で購入し、優しい柿色の夕焼けにうっとりしながら帰宅する。
posted by tokusan at 18:40| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月07日

1/7一番客。

午前十一時過ぎに家を出て、凍った道や雪が融けかけた道を伝い(前後に滑るのはどうにか対処出来るが、横滑りすると何もできないのでひやっとする)、荻窪へ。「古書ワルツ荻窪店」(2020/07/30参照)で埼玉獣医師会「狂犬病予防の栞」(巻頭の『眼で見る狂犬病』の罹患して暴れ狂う犬たちの写真が生々しくて可哀相)トッパン「青い鳥/文・若月紫蘭 画・堀文子」を計440円で購入する。続いて「岩森書店」(2008/08/23参照)前を通りかかると、店頭入口脇の外壁棚にほるぷ出版 名著復刻 日本児童文学館「繪入お伽噺 王様の背中/内田百闕 谷中安規畫」がさり気なく挿さっていたので、安めの330円で購入する。そして往き同様苦労して阿佐ヶ谷にペチャペチャ戻り、『旧中杉通り』を北に遡上する。うわっ、なんだ?まだお休み中の「ネオ書房」(2019/08/11参照)の前に、たくさんの雪で造形された、小さな何かが大整列している!
neo_nazo.jpg
明らかに自然に出来たものじゃない…もしかしたら、象の像?…それとも虎の像の融けかけだろうか?いったい誰が……。不思議に思いながらさらに歩き続けると、十二日ぶりにお店を開けている「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)である。この日を待っていたんだ。店前で娘さんが、ハアフウと可愛く雪掻きするのを微笑ましく思いながら、テント看板から垂れる雫を頭に受けつつ店頭棚を眺める。するとそこに店主の天野氏が姿を見せたので、互いに年頭の挨拶を交わす。函ナシの筑摩書房「來訪者/永井荷風」と竹書房「甦れ!ウルトラ黄金時代Qマンセブン!!/BAD TASTE編・堤哲哉著」を計640円で購入し、コンコ堂今年最初のお客となる。本年もたくさん買ったり売ったりいたしますので、よろしくお願いいたします。
posted by tokusan at 14:25| Comment(2) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月31日

12/31地元・阿佐ヶ谷にて古本納め!

午前中は、部屋を丸く掃くぐらいのズボラな大掃除に従事し、午後に今年の古本納めをするつもりで、ちょっとだけ外出する。すると外は服の間から冷気が入り込むほどの極寒状隊。見上げればそこには冷たい銀色の巨大な雲が覆い被さっている。心も身体も挫けそうになりながら、三鷹…それとも中野に向かうべきか?と思案しながら阿佐ヶ谷駅へ向かう。「ネオ書房」(2019/08/11参照)は、1/8までお休みだが、9日はトークイベントで、通常営業は10日からとなっている。そんなことを確認しながら、次第に冷えつつある身体を縮こめながら、駅北口の短いアーケードに入り込む。お正月の飾り付けや、年越し蕎麦を売る賑わいの中で、「千章堂書店」(2009/12/29参照)もしっかりと営業中であった。当然の如く立ち寄り、店頭では食指が動かなかったので、店内の文庫棚に向かい、そこで取りあえず一冊。そしてさらに左側通路の壁棚とじっくり対峙して行く。すると帳場も近づいた棚下に並ぶ古本列の中から、広論社 探偵怪奇小説選集「美少年の死/戸板康二」が、献呈署名入りの1200円で売られているのを発見する。本を抜き出し、パラリと捲ると、本扉に確かに万年筆の献呈署名が入っている。よし、これこそ探偵小説狂いの、古本納めに相応しい一冊だ!と角川文庫「鹿島茂が語る山田風太郎」とともに計1450円で購入する。
senshoudo_toita.jpg
というわけで、今年も最後の最後まで、馬鹿みたいに古本を買いまくることが出来ました。来年も同じように生きて行く所存なので、みなさま、この愚かなる古本屋さん&古本狂いを、何とぞよろしくお願いいたします。来年こそはコロナ騒動が収束し、平穏に古本屋を訪れ古本を買える日々がやってきますように。
posted by tokusan at 15:03| Comment(2) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月26日

12/26愛しの「アカシヤ書店」が今年最後の営業日だった。

空は青く、雲は雄大に流れるが寒過ぎる日曜日。午前のうちは家の中で震えながらウダウダするが、午後に勇を鼓して外出。窓がほぼ全開の極寒バスで西武池袋線中村橋駅まで向かい、そこから電車に乗り込み、まずはひばりケ丘へ。駅北口に出ると、ゴチャゴチャした小ビルと商店の街路が一掃され、開けたロータリーが生まれているのに驚いてしまう。そして目指すはわりと駅近住宅街にある小公園前の「近藤書店」(2014/09/22参照)…あった。そしてしっかりと営業中である。
kondou_shoten21.jpg
この唐突に現れる感じの異空間ぶりが、いつ来ても古本心を和ませてくれる。店頭ワゴン上の古本タワーも健在。一冊抜き取り中に進むと、各所の高層古本タワーもまた健在であった。それにしても、次々とお客が飛び込んで来るのはどういうわけだ。地元民に愛される人気店というわけなのか。しかもみなしっかりとした値段の本を買われて行く。などと感心しながら、角川書店「双生児は囁く 横溝正史〈未収録〉短篇集」BL出版「プフとユピーのクリスマス/さく・ピエール・プロブスト」を計300円で購入する。続いて一駅東に戻って保谷駅へ。そそくさと愛しの「アカシヤ書店」(2008/12/17参照)に駆け付ける。すると入口に年末年始の予定が貼り出されており、12/27〜1/4までお休みとなっていた…ということは今日が今年最後の営業日…あ、危なかった。と思いつつ、店頭&店内の百均本と、ハッシハッシと斬り結ぶ。海と空社「商船の形態/上野喜一郎」小壺天書房「料理小説 愛すべき舌/清水桂一」河出書房新社「江戸戯作文庫 腹筋逢夢石/山東京伝作 歌川豊国画」実業之日本社「山中貞雄作品集1」を計440円で購入し、満足して震えながら帰宅する。
posted by tokusan at 17:45| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月22日

12/22色々古本を買いながら挨拶する。

午後三時過ぎに上井草の南端に流れ着いたので、今川を突破して「モンガ堂」(2012/09/15参照)に推参しようかと思ったが、よく考えたら今日は水曜日で定休日…しかたなくシンプルに上井草駅方面に向かい、「井草ワニ園」(2019/01/05参照)で古本を買うことにする。冷たい風が吹き荒び始めた店頭から一冊、グラノーラの薫り漂う店内で一冊を選ぶ。いそっぷ社「しりとり/谷川俊太郎+和田誠」(1965年に私家版として500部出版された本の復刊)河出書房新社「物しか書けなかった物書き/ロバート・トゥーイ 法月倫太郎編」を計950円で購入しつつ、店主に「今年も色々古本をありがとうございました」と挨拶すると「いえいえいえいえ」と恐縮の態。「また来年もよろしくお願いします」と挨拶してお店を後にする。年もすっかり押し迫って来ているが、自らこのように押し狭めてもいるのだなと感じながら帰宅する。一旦家に落ち着いた後、すっかり暗くなりさらに冷たくなった午後六時前に阿佐ヶ谷の街に出て「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)へ。主婦の友社TOMOコミックス「カリガリ博士/原作カール・マイヤー 劇画・浅井まさのぶ」を530円で購入する。本を受け取りつつ店主の天野氏に「今年は営業いつまでですか?」と聞くと、驚きの「25日までです」との答えが!「25日!? 早過ぎませんか?」と問い質すと「いや、26日から三日間、また撮影が入ってるんですよ」とのこと…もはや映画やドラマの中の古本屋さんは「コンコ堂」がスタンダードになりつつあるような気が。そしてさらに「年始は7日からです。久々に帰省するんで」とのことであった。ということは、十二日間も「コンコ堂」で古本を買えないのか…それはなんとも寂しいなぁ。今年最後の営業日には、また何か買いに来ることにしよう。
caligali.jpg
表1袖には『ドイツが第一次大戦後、世界に大きな影響を与えた表現派映画の原作を、悪夢のようなイメージでおくるスリラー・アクション!』と、加納一朗先生の的確な説明が!

その後はさらに「銀星舎」(2008/10/19参照)に立ち寄り、集英社文庫「地獄の館/柴田錬三郎」を600円で購入しつつ、旦那さん店主と「野呂邦暢 古本屋写真集」の話。何と二冊もお買い上げいただいたそうで、感謝感謝である。「銀星舎」の年末営業は成り行き次第とのことだが、「28日くらいまでかなぁ〜」と呟いておられた。ところで、19日の読売新聞にその古本屋写真集の短評が掲載されたのだが、編者名は『古本屋ツアー・イン・ジャパン』が長過ぎたせいか、『岡崎武志ら編』になっていた……ちょっと面白いじゃねえか、ウフフフフフフフ。
posted by tokusan at 19:16| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月20日

12/20「古書現世」に暮れのご挨拶。

水たまりに氷の張った寒い月曜日。夕方遅くに高田馬場に出たついでに、タッタカ白い息を吐きながら『早稲田通り』を東に進んで、『子育て地蔵尊』で小さな『竹恵の輪』というものを潜って、お地蔵さんにコロナ終息を力の限りお願いしてから「古書現世」(2009/04/04参照)に至る。先客がひとりおられたが、しばらくしてその先客が去った後に、店主・向井氏が帳場から、「フフフ、今日は一発で気付きましたよ」と勝ち誇りながら声を掛けて来た。というわけで気付かれているのを飲み込みながら棚をすべて見渡し、玄文社「亜米利加見物/八木與三郎」(大正九年刊、裸本、本扉に献呈署名アリ、さらに都立大学隣りにあった「都立書店」の古書ラベルアリ)を1200円で購入する。亜米利加・ワシントンで開かれる國際労働会議出席者に帯同し、百日間亜米利加を見て回った男の旅行記である。それにしても現世にある大正〜昭和初期にかけてのアメリカ関連本は、旅行記が多く動きが少ないので、少しずつ私が買い集めているカタチになっている。元は一人の方の蔵書なのだが、それを一冊一冊ジリジリと買い集めているということは、その方の旧蔵書を少しずつスライドさせて受け継いでるというわけである。だがいずれ、この本たちも何処かに流れて行くのは必定の理…まぁ手元に置ける間は、たっぷりと慈しむことにしよう。そして向井氏からは、十二月に入ってから半分はお店を臨時休業するほどの、買取ジェットコースターに乗り続けている話に、小一時間ほど花を咲かせる(何と明日もお店は臨時休業!)。いや、大変でしょうが、古本屋さんは買取が命!喜ばしいことですよ。そして現世に来るのは恐らく今年はこれが最後なので、ちょっと早いが今年一年お世話になったお礼とともに暮れの挨拶を伝え、来年も早々に古本を買いに来ます!と約束する。
america_kenbutsu.jpg
今日の収穫を『子育て地蔵尊』の『竹恵の輪』前で記念撮影。

そして家に帰ると、筑摩書房さんから何やら届いていた。封筒を開けると、「野呂邦暢 古本屋写真集」の書評が掲載された『赤旗』と、ちくま文庫新刊の「林静一コレクション 又吉直樹と読む/林静一 又吉直樹編」が出て来た。ありがとうございます!
akahata_hayashi.jpg
posted by tokusan at 20:48| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月14日

12/14あったあった。

昨晩寝床の中で、昭和十六年刊の今日の問題社「ちりめん蜘蛛/城昌幸」を読んでいると、突然文章がtwitter的になったので思わず吹き出してしまう。
chirimengumo.jpg
「どうしませう! ああ! どうしませうぞなう!」…こんな言い回しあるのだろうか?私が無知なだけか、単なる誤植か……。

そして本日も昨日に引き続き仕事で夕方に高田馬場に出たので、寒さに震えながら坂を下り川を越え、「ブックオフ高田馬場北店」(2012/11/156参照)に入り込む。いつもは静かなのに、今日は人の姿の絶えない奥の古書コーナーから、新宿書房「エイリアン・ネイションの子供たち/野崎六助」を330円で購入し、下りて来た坂を上がって駅前の喧噪に巻込まれる。そうだ、あの古本屋さんはまだあるのだろうか?と思いつき、『早稲田通り』のガードを西に向かい、地下鉄入口脇の道にするっと入り込む。あったあった。「BookTaste」(2009/07/01参照)が暗い裏路地に明るく浮かび上がっていた。
booktaste21.jpg
前面に扉や壁はないので、ほぼ街路と直結の寒〜い店内に入り、優雅に流れるジャズを耳にしながら、お店の主力である週刊誌&漫画雑誌ゾーンを素通りし、奥の動きの少ない文庫&単行本ゾーンに身を沈める。何か良いものあるだろうか?と考えながら、まさに人の読み終えた本が並ぶ棚を端から端まで眺めて行く……文庫は九十〜二千年代で止まっている感じなので、うむむむむ。ポプラ社「ほんまにオレはアホやろか/水木しげる」を150円で買って退散する。

そう言えば「梅田蔦屋書店」から連絡があり、十二月前半の売り上げが好調なので、もっと本を送れ!と言って来たのだった。西の古本好きのみなさま、ありがとうございます!よし、クリスマスに間に合うように、古本小箱を用意することにしよう。木曜辺りに発送出来るよう、頑張らなければ。
posted by tokusan at 19:27| Comment(3) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月11日

12/11つまりは函を買ったわけである。

「少年騎士傳/浅原六朗」を興奮の内に読了したのであるが(二篇が少年探偵小説、一編が友情もの、一編が少年大陸冒険ものであった)、最後に収録された冒険小説『太陽の輝く處』に大変な誤植があるのを発見してしまう。物語では、敵の策略により無線機が据え付けてあった第二テントが大爆発を起こすのだが、その章タイトルがこうなっているのだ!
tent_bakusyou.jpg
こっちが笑っちゃったよ。何故か目次も『第二天幕爆笑』になっているのが、また面白い。それにしてもこれが見過ごされているということは、昭和十七年に、もう『爆笑』という言葉があったんですな…。

そして本日は午後イチに恵比寿に流れ着いたので、『恵比寿ガーデンプレイス』の隅にモニュメントとして保存されている、建築家・菅原栄蔵作の水盤(2009/12/03参照)をうっとりと眺めてから、渋谷に向かって歩き始める。ビルが櫛比し続ける賑やかな『明治通り』を北に遡上し、『ウィンズ渋谷』のある坂を上がって『六本木通り』を横断し、『青山通り』に出ると、目の前が『酸素ステーション』が設置されていた旧『こどもの城』前。今は役に立ったんだか立たなかったんだか判らずじまいでその役目を終え、封鎖されてしまっている。そこから『宮益坂』方面に進み、「巽堂書店」(2017/12/16参照)の跡地が枕屋さんになっているのを確認した後、「中村書店」(2008/07/24参照)にたどり着く。
nakamurasyoten21.jpg
ようやく営業中の姿に巡り会えた…さり気なく感激しながら、店頭木箱と店頭文庫ワゴンから一冊ずつ掴み、店内へと進む。奥の棚を支配する古書で眼の保養をしていると、小山書店「維納の殺人容疑者/佐藤春夫簒述」が目に留まる。抜き出して本体を函から取り出すと、どうも様子がおかしい。何と裏表紙と奥付が欠けており、最終ページのイラストが丸出しになっているのだ。そのため値段は格安の千円となっていた。ぬぉう、これはチャンスだ。実は先日の日下三蔵氏邸お片づけ手伝い時に、お礼としていただいた本の中に、この「維納の殺人容疑者」の裸本が含まれていたのだ。つまりこれを買ってあの本と合体させれば、完本の誕生となるわけだ!これは素晴らしき巡り逢い巡り会い。そう喜んで、河出文庫特装版「海潮音/上田敏」晶文社「パパは神様じゃない/小林信彦」とともに計1200円で購入する。大急ぎで家に帰り、早速本を入れ替える。やった!完全なる「維納の殺人容疑者」が、この瞬間に誕生したのである。
wien_satouharuo.jpg
左端が函、真ん中が日下氏よりいただいた裸本、右端が裏表紙と奥付の欠けた今回購入本。
posted by tokusan at 16:32| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月04日

12/4「ピリピリ電車」続報。

さて、昨日届いた「ピリピリ電車/川崎大治」であるが、一気に読了してしまったのだが、所々に鉛筆の書き込みがあるのを発見する。だがそれはただの書き込みではなく、誤字の修正や、一部文章の改変を記しているものであった。これはもしや、著者自身の筆なのでは…そうでなければ意味のない書き込みなのである。ふぅ、何だか夢が広がるなぁ。
piripiri_kousei.jpg
そして本日は午後二時に千歳烏山に流れ着いたので、まずは駅北口にあるアナーキーな無人古本屋さん「イカシェ天国」(2008/09/23参照)を偵察するが、相変わらずドアは閉じられたままである。いつの日かまた店内に入れることを願いつつ、仙川まで電車で移動する。子供たちで大賑わいの「文紀堂書店」(2015/03/31参照)ではワニの豆本「世界の幽霊怪奇 なぞの四次元現象/佐藤有文」を550円で購入する。続いて「石本書店」(2017/07/02参照)に移動し、徳間文庫「惜別の宴/横田順彌」を250円で購入する。この辺りに出没するのも、今年最後だろうか…などと早くも年の瀬を感じつつ、京王線〜井の頭線〜すぎ丸と乗り継いで帰宅する。
posted by tokusan at 18:40| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月14日

11/14久々の高円寺『あづま通り』にて。

ワクチン接種後暫く苦しめられた倦怠感が、ようやく立ち去ってくれたので、その喜びを噛み締めるように、ブラブラ午後の散歩に出かける。するといつの間にか高円寺『中通り』にたどり着き、駅に向かって歩き続けている。ややっ、店舗営業を終了した「都丸書店」のシャッターに、デザインさせて貰った東京古書組合のポスターが貼り出されているではないか。浅生ハルミンさんの展覧会チラシと併せ、何だか素敵なアンバランスレイアウト感に喜ぶ。
tomaru_poster.jpg
そしてそのまま駅北口を横切り、東の『あづま通り』に入り込んで行く。…おっ!「中央書籍」(2011/11/15参照)が開いているのに、久々に出くわしたぞ。お祭りの縁台のように古本を並べた店頭を眺めてから、暖房が効き過ぎている店内へ。昔と変わらず人文や思想が幅を利かせる棚を眺めた後、ペヨトル工房「銀星倶楽部5 ★特集★幻獣・機械」を200円で購入する。丸尾末広の『日本人の惑星』と杉浦茂の『砂の星DUNE』がぶっ飛び過ぎていて凄まじい破壊力…。お店を出たら通りを北に遡上し、「越後屋書店」(2009/05/16参照)の様子をうかがいながら(残念ながらシャッターアウト…もしかしたらもう開くことはないかもしれない…)「十五時の犬」(2011/11/22参照)前で立ち止まる。店頭棚を一通り眺めてから、手指を消毒して店内に進む。相変わらず棚が複雑に高く立て込んだ、濃縮迷宮的な空間…それにしても海外文学幻想ミステリ系に、ものすごくデッドストック的ダブり本が多いことに、改めて気付いてしまう…何故?右側通路に身体を横にして進み、大量の本の背と至近距離で闘い続ける…なんと、梶龍雄のハードカバー単行本が一冊あるぞ!講談社「ぼくの好色天使たち」の帯付きである。そっと引き出し値段を見ると、思わずほくそ笑んでしまう1500円だった!すぐさま帳場に差し出し購入し、今日たまたま散歩気分で久々に『あづま通り』に足を向けた己に、『でかしたっ!』と精一杯の馬鹿みたいな謝辞を捧げる。
kousyoku_kaji.jpg
posted by tokusan at 16:12| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月24日

10/24「なごやか文庫」と志村けん像。

本日は、ちょこちょこ色々ノンビリ取りかかりながら過ごし始める。午後に鷺ノ宮に買いものに出たついでに、古本も買いたくなって来てしまったので、西武新宿線に飛び乗り、一路東村山へ。緊急事態宣言が解除されたので、ようやく営業を再開してくれた「なごやか文庫」(2020/04/07参照)を訪れる。自動ドアを潜ると森閑とした館内…誰もいない…。手指を消毒して、店前に蔓延る箱の中を覗いて行く…棚以外にも、左奥に古本箱&レコード箱島があり、左のレジ周りも古本箱で覆われている。リニューアル時より、だいぶ古本屋さんらしくなった光景に気を良くしながら、箱と棚を順繰りに眺めて行く。右奥の古書コーナーでは何も掴めなかったが、左側レジ脇の『昭和の押入れに入っていそうな本』コーナーはちょっと魅力的で、安値も相まり二冊を掴んでしまう。結局三十分近く古本群とにらめっこし、誰もいない事務室前の呼び出しボタンを押し、二階から慌てふためいて下りて来た職員さんに精算していただく。池田書店「日曜木彫/牧田正雄」講談社ミリオンブックス「センスのよくなる本/小林重順」PLANETA DeAGOSTINI「SIETE YAKUZAS/JEAN-DAVID MORVAN・HIKARUTAKAHASHI」真誠「THE SESAME BROTHERS/BY TAKASHI YANASE」小学館「星の旅行記/たむらしげる」を計370円で購入する。素敵な奥さんが表紙写真の「日曜木彫」は昭和三十三年刊。こういう古いDIY本はめっけものである。おっ、写真を「張り込み日記」の渡辺雄吉が撮っているじゃないか。「SIETE YAKUZAS」はフランスの漫画“バンド・デシネ”のスペイン語版。的確な資料を基に、浅草・表参道・新宿・府中・築地(フランスの漫画の中に、無惨に消滅させられた築地市場の面影が残されているなんて!)・中野など、東京を詳細に描写しているのが楽しい。そして「THE SESAME BROTHERS/BY TAKASHI YANASE」は、やなせたかしが絵を描き、小野耕世が英訳を担当している、愛知県のゴマ食品会社が胡麻の啓蒙活動のために出した非売品の一冊。洋書のコーナーに紛れ込んでいたが、見事救出に成功した、嬉しい収穫である。
1024syukaku.jpg
そんな収穫たちを抱えて東村山駅に戻り、地下通路で線路を潜って北口に出る。するとロータリーの西端には、新型コロナウイルスの犠牲になった、志村けんの銅像が建立されていた。人々が入れ替わり立ち替わり訪れ、写真撮影をしている。私も近づいて一枚パチリ。ポーズは『アイーン』のポーズであるが、その顔はあくまでも紳士で優し気な笑顔である。まぁあまりふざけた像を造るわけにはいかないので、こういうことになったのだろうが、やはりどうも釈然としない。せめて興福寺の阿修羅像のように、真ん中はこの顔で良いが、右に『アイーン』の顔、左に『だっふんだ』の顔を付けてくれれば、コメディアン・志村けんの功績がより伝わる銅像になったのでは……などと愚かに夢想しながら帰路に着く。
shimurazou.jpg
posted by tokusan at 17:24| Comment(6) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月23日

10/23引っ越すお店とジャズ特集。

午後イチに上北沢に流れ着いたので。京王線で明大前まで出て、踏切近くの「七月堂古書部」(2018/01/13参照)を訪れる。ドアが開いて、やってるやってる。そして入口には一枚の貼紙が…豪徳寺に移転することと十二月初旬まで営業することが書かれている。いよいよこの地でこのお店を楽しめるのも、後一ヶ月と二週間余りか…何回来られるだろうか。そして移転ということは、それは大量の本の引っ越しなのである。無事に済みますように、とそっと祈りつつ、店内をウロウロ。棚の間に差し込まれていた、大正八年刊の布装本、洪洋社「東京府史蹟」を三千円で購入する。
tokyofu_shiseki.jpg
東京の武家屋敷の門や武家長屋やお寺や神社など、所謂史蹟の写真がたくさん載っているのだが、史蹟と言えども江戸の面影を色濃く残す風景写真なので、手の届かぬ百年前の世界に(無くなった風景多し。しかも編纂者の一人が鳥居龍蔵だ!)、魂が急遽燃え上がってしまったのである。ちなみに本に挟んでもらったオリジナル栞にも移転情報あり。非常に細やかな対応である。そんな風に散財した後に、代田橋まで『甲州街道』の強風に吹かれながら前のめりに歩いてバスに乗り、阿佐ヶ谷に帰り着く。北口の短いアーケード商店街に入り、昨日から設置されている「千章堂書店」(2009/12/29参照)の店頭ジャズ棚を眺める。エルスケンのジャズの写真集かぁ…植草甚一のジャズエッセイもある…あっ!「唄えば天国ジャズソング 命から二番目に大事な歌/色川武大」のミュージック・マガジンの元本発見!これは初めての出会い!と興奮しながら手に取り、表見返しに貼られた値札を見ると、なんと1200円なのである!これは買いだ!と勇んでスパッと購入する。
jazz_song.jpg
なんかちょっと散財しちゃった感じだが、二冊とも良い本で相場よりお手頃価格だったので、まぁこれでいいじゃぁないか。今日も楽しく愉快に古本が買えたことを、とにかく喜ぼう。
posted by tokusan at 18:06| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月20日

10/20ジャズストリートはなくともジャズ本は並ぶ。

朝からワチャワチャと過ごしながらも、ひと塊の古本を準備し、午後に外出する。風は強いが、日射しが暖かで気持ち良い。阿佐ヶ谷駅北口の「千章堂書店」さん(2009/12/29参照)は今日は定休日だが、シャッターとフェンス壁に貼紙がされている(隣りには『次の百年のために』ポスターも貼られている)。
senshoudo_jazz.jpg
『22・23・24日(日)の3日間店頭にジャズの本を並べます。ジャズス二本ほどのインスタント棚が出現する『千章堂ジャズ本祭』は今年も開催されるのだ!心中でその心意気に拍手を送りながら、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。「フォニャルフ」にスパスパ補充しながら(今月は売れてるぞ。嬉しい!)、店主・小野氏と色々打ち合わせる。ヴィクトリア・ホルトの文庫を買おうかどうしようか大いに迷うが、まぁ急がなくともいいだろう、とひとまずパス。何も買わずにお店を後にする。そして帰路、荻窪で「竹陽書房」(2008/08/23参照)に立ち寄る。棚に建築本の気配を濃厚に感じつつ、TNプローブ/大林組「ヘルツォーク&ド・ムーロン展:知覚への覚醒」メタローグ「シュルレアリスムとは何か 超現実的講義/巖谷國士」を計800円で購入する。「シュルレアリスムとは何か」は献呈署名入り。署名の上に描かれた流れ星が落書きっぽく、シュルレアリスムとは裏腹に何ともプリティーである。
iwaya_sign.jpg
posted by tokusan at 16:52| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月02日

10/2左側通路であっという間に五冊。

午後二時前に、昨日の台風と寒さが嘘みたいな、日射しが強烈な残暑の経堂に流れ着く。経堂から古本屋さんが消えて、もうすぐ一年か…全く持って寂しい限りだが、実は秋から冬にかけて、松陰神社前の「nostos books」(2013/08/10参照)が祖師ケ谷大蔵に、明大前の「七月堂古書部」(2018/01/13参照)が豪徳寺にと、それぞれ移転予定なのである。経堂は古本屋的に沈黙したままであるが、その周囲が賑やかになるのは、古本屋巡りのし甲斐があるというものである。そんな楽し気な未来を想像しながら、シャッターを下ろしっ放しの大好きだった「大河堂書店」(2020/10/27参照)前を通過し、テクテクテクテク歩いて、世田谷線の踏切を渡って「靖文堂書店」(2011/09/06参照)に姿を現わす。おっ、入口入ったすぐのカラーボックス棚に、『次の百年にために』ポスターが貼られている。なかなかぞんざいですが、嬉しいです!
seibundo_hyakunen.jpg
店内には先客がいたので、狭い帳場前を通過して左側通路から見始める。すると、あっという間に五冊を棚から抜き出してしまう。イカンイカン、調子に乗り過ぎてはイカン。今日はこのくらいでいいだろう…と帳場に差し出す。岩谷書店「1955年版 探偵小説傑作選上/探偵作家クラブ編」(帰りの車中で最初に掲載されている朝山蜻一『僕はちんころ』を読むと、乱歩や谷崎の衣鉢を継ぐような、戦後の新しいマゾヒズム幻想小説なので、不意打ちを食らったように感銘を受ける)創元推理文庫「チャイナ橙の謎/エラリー・クイーン」(初版白帯)教養文庫「宇宙旅行の話/原田三夫」博文館文庫「東海に叫ぶ/富田常雄」(ネットで調べてもほとんど情報が浮かび上がって来ないなぁ…)新潮社 日本小國民文庫「世界の謎/石原純編」を計1300円で購入する。「世界の謎」は、自然界の謎や人間界の謎を科学的に読み解く、昭和十一年刊の児童本。なんと武井武雄の『漫畫 赤ノッポ青ノッポ(音樂部)』が四ページ載っていてビックリする。
takei_noppo.jpg
そして家に帰ると、ひとまとめのゲラが届いていた。よし、このお仕事、あと二息くらいだ!
posted by tokusan at 17:34| Comment(4) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月28日

9/28「梶原書店」に悔いを残す。

すでに日の落ち始めた夕方、青がどんどん深くなって行く秋の空を見上げながら、『学習院下』停留所から都電荒川線に乗り込む。都電のボディの中で、東京の特徴ある高低差を味わいながら向かうのは、三度目の、いや、これが最後のチャレンジとなる9/30でお店を閉じてしまう「梶原書店」(2008/08/31参照)である。三度目の正直でお店が開いていることを祈りながら、およそ三十分の乗車時間を創元推理文庫「月長石」を読み進めながら過ごし、すっかり暗くなった『梶原』停留所に到着する。三ノ輪橋行き方面行きのホームに降り立ち、踏切を渡って横断歩道を渡って、早稲田行き方面のホームを目指す…あぁ、暗いな。自動販売機の灯りが煌々と目立つばかりだな。そんな風にすでに失望しながら、停留所のスロープを上がると、やはり停留所に近接するお店は、暗く冷たくシャッターを下ろしていた。非常に残念だが、入れずじまいの、古本買えずじまいでお別れとなる。ここに最後に来たのは、とみさわ昭仁氏・柳下毅一郎氏・安田理央氏の「せんべろ古本ツアー」に同道した時となってしまった(2017/06/29参照)。東京にかろうじて残る貴重な都電網の名残である停留所に近接した、大変にロケーションのユニークな、昭和を引き摺りまくっていた大衆的な下町の古本屋さん。店内の足元に見えていた、排水溝を思い出しながら、さようなら。
kajiwara_last.jpg
寂しく虚しく帰りの都電に乗り込み、『学習院下』で下車。高田馬場駅にトコトコ向かいつつ、それでもやっぱり古本は買いたしと「ブックオフ高田馬場北店」(2012/11/15参照)に立ち寄る。すると、古本女神が哀れに思ったのか、嬉しい一冊を安値でこの手に掴ませてくれた。栄光出版社「愛よよみがえれ 大量後遺症 この悲劇に生きる妻の叫び/田原総一朗・清水邦夫」である。昭和42年刊のテレビドキュメンタリーから生まれた、三池炭坑の炭塵爆発に巻込まれ、CO中毒に冒され、記憶や人間としての生き方を失ってしまった、数百人の炭坑夫たちの物語である。これはなかなかお目にかかれない一冊で、すげぇ、帯が付いている。新潮社「雪のひとひら/ポール・ギャリコ 矢川澄子訳」とともに計440円で購入する。
aiyoyomigaere.jpg
posted by tokusan at 21:50| Comment(2) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月12日

9/12期待に応える「ぶっくめいと」!

朝起きたら、なんだか無性にミステリー(古本)が買いたくなっていた。しかも安く!というわけで、重苦しく多少暑苦しくもある九月の曇天の下を、大山に急行する。「ぶっくめいと」(2009/08/05参照)なら、この贅沢な希望に充分応えてくれるはずだ!と盲信し、外棚のシャッターが閉められ、ビニールカーテンが入口付近を覆う、雨仕様のお店前。店頭棚に軽く視線を這わせてから、手指消毒して狭い通路に突入する。すると、店内には四人の先客がおり、みな文庫ハンターらしく、じっくりと整然と大量に並ぶ文庫を吟味している…なので、奥の帳場横にあるミステリコーナーには近付けない…ならば!と中央通路に突入し、ひとりのお客の後を「すいません」と擦り抜けさせてもらい、帳場前を経由して左側通路に戻り、奥のミステリコーナーに到達。うむ、文庫と新書サイズ本を中心に、目を惹く品揃えが、やはり期待を裏切らない。右側帳場横棚の春陽文庫&新潮文庫探偵小説群も気になるが、ここらはわりとちゃんとした値が付けられているのだ。あくまで今日狙うのは、安値のお得な古本である。カバーナシの文藝圖書出版社「恐怖王/江戸川乱歩」はカバーナシなので500円。まずはこれを確保。続いて新書サイズに真剣な眼差しを注いでいると、文華新書「リラ荘殺人事件/鮎川哲也」を見つける。昭和41年刊の、初出版の単行本である。後見返しに前所有者の購入日付けが書かれているが、お値段は嬉しいトキメキの300円!というわけで二冊を800円で購入し、欲望を見事に昇華する。やはりここは、良いお店だ。
rila_kyoufu.jpg
そして「恐怖王」巻末の『乱歩長編選書』の自社広が、なかなか大仰で楽しい。『日本探偵小説界の大御所』『日本探偵小説空前の金字塔』『大乱歩が嘗ての黄金篇に加えて最新作を選出した、これは日本探偵小説の代表作である』などなど。ちなみに最新作というのは翻案小説の「三角館の恐怖」のことである。
rampo_ad.jpg
posted by tokusan at 17:20| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月10日

9/10大井町で閉店作業を目撃する。

朝から大きいゲラとくんづほぐれつ…色々な資料を引っ張り出して突き合わせたり、必死に赤字を入れたりしていると、ついさっきまで秋だったのが、夏が突然笑って振り向いたような陽気になり、あっという間にお昼に。そうだ、あのお店に行かなければ!と思い出し、昼食後に身支度を整え外出する。中央線で神田駅まで出て、京浜東北線に乗り換えて南へ。途中、初めて停まった『高輪ゲートウェイ駅』と『品川駅』の馬鹿らしいまでの近さに愕然としながら、大井町駅で下車する。駅前の通りに広がる歩道屋根付きの商店街を進み、横断歩道を渡って9/12(日)に閉店してしまうという「海老原書店」(2008/08/26参照)へ。お店に近づいて行くと、何か様子が変だ。シャッターが2/3下ろされ、青いビニール紐で結束された本束が、店頭台の上や路上に置かれている…こ、これはもしや……はぁぁっ!シャッターの下に一部覗いた店内の様子をうかがうと、もはや閉店後の撤収作業中の光景が展開してるではないか。通路では三人ほどが働いており、結束本を次々と造り出していく…これはもはや入れる状態ではない。つまりは間に合わなかったということか。だが、その閉店の様子を見られただけでも、有り難く思っておこう。古本は買えなかったが、今結束されている本たちは、やがて市場に出され、それを何処かの古本屋さんが落札し、その店先でいずれ出会うことになるのかもしれない…。しかしこれで大井町からは古本屋さんがなくなってしまった。この街から、映画館も古本屋さんも消える時が来るなんて、思ってもみなかった事態である。
ebihara2021.jpg
そんなお店の最後の姿を眼に焼き付けて、電車に乗ってトンボ帰り。だがそのまま真っ直ぐ帰らず、高円寺で途中下車して「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)でJICC出版局「人生万才/寺山修司編集」工作舎「PSIサイ・パワー 意識科学の最前線/チャールズ・T・スタート」を計400円で購入した後、店主の粟生田さんとワクチン接種についてあれこれお話しする。
posted by tokusan at 16:35| Comment(2) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする