だがこの日は、午後になって雨が一時降る予報だったので、片時も油断が出来ぬ販売状況だったのである。おかげで小野氏は、十五分ごとにスマホで天気予報をチェックし、周囲の仲間と相談し、いつでも雨で本を濡らさぬよう対処出来るよう、栗鼠のように目まぐるしく動き続けるのであった……。だがなんと、そんな予報は当たらずに、結局午前十一時から午後五時まで、無事に古本を売り続けることが出来たのは、上出来であった。盛林堂ワゴンは最終日半額セールだったので、常に本が売れ続ける状況が続き、文庫本とノベルスだけとは言え、この日だけで八百冊近くを販売…おかげで初日より二倍精算した感じになったので、極度に疲労する(精算も足し算の暗算に加え、最後に割る二があるので、脳味噌の違う部分を酷使した感触が…)。そして終了と同時に雨が降り始めてしまったので、二人で力を合わせて決して本を濡らさぬよう、神速で撤収作業を終える。うぉぉぉぉぉぉぉぉ、大変にお疲れさまでした!そんなハードな一日の労いのボーナスとして、文華新書「黒い版画 推理小説/鮎川哲也」ガッケン・ブックス ミステリー9「ガラスの檻/飛鳥高」を拝受される。とても嬉しい役得である。西荻窪で荷物を下ろした後は、お店番をしていたフミさんも加わり、大衆居酒屋で打ち上げ。美味しい焼きトンにパクつき、瓶ビールをグビグビ飲み続ける。
そして本日はデザイン仕事に頭をすっかり悩ましてから、正午過ぎに外出。総武線にひたすらガタゴトガタゴト揺られて、千葉県は本八幡へ。三月末で閉店してしまう、京成本線踏切際の「山本書店」(2010/06/29参照)にお邪魔する。扉には『閉店セール 合計¥1000以上は2割引』の貼紙あり。今日は雨のためか、線路側の外棚は残念ながら開けられていない。入口脇の棚のみを見て、店内に進む。先客は二名。相変わらず街の古本屋さんでありながら、アカデミックな文化の薫りが馨しく漂っている。歌舞伎などの伝統芸能本や郷土関連に圧倒されながら、四本の通路をじっくりと精査し、角川書店「美少年映画セミナー/長沢節」を2割引の800円で購入する。表に出ると、至近の踏切の遮断機が下り、カンカンと警笛を鳴らし始めた…踏切により足が停まり、少しの時間潰しに店頭棚を眺める状況に、この街のふくよかな文化的豊かさがあったのは、確実である。だがそれも、後少しでできなくなってしまうのか……長い間、踏切の音をBGMに、古本を売っていただき、ありがとうございました。
また長い時間掛けて阿佐ヶ谷にガタゴト戻り、「千章堂書店」(2009/12/29参照)で翔泳社「ドイル傑作選T ミステリー篇/アーサー・コナン・ドイル 北原尚彦・西崎憲編」を800円で購入して帰宅する。

