2016年12月31日

12/31八十ぐるい

ついに二〇一六年の十二月三十一日である。ご近所の阿佐ヶ谷近辺をぶらついても、開いている古本屋さんはもはや「千章堂書店」(2009/12/29参照)のみである。店頭と店内を、今年最後と気合いを入れて目を血走らせるが、残念ながら胸ときめく出会いはなく、何も買わずにお店を出てしまった…古本も買わずに、年がグングン暮れて行く。だが、そんな風にだらしなくなし崩しに新年を迎えてしまうのも、古本屋ツーリストとして心苦しいので、ここ最近ずっと追いかけながらも、さらに火のついた感のある古本について語ることにする。

最近とみに恋い焦がれているのは、西條八十の児童小説である。さらにその中でも、探偵小説に心奪われてしまっている。詩人で著名な作詞家である八十だが、少女小説を手掛けるうちに、やがて手を出してしまった少女探偵小説&少年探偵小説という魔のジャンル。狂っていてそれでいてしっかりしていて面白い、などという噂は聞いていたのだが、ゆまに書房が復刊した「人食いバラ」を読んだ時に、まず噂の正しさを実感し、即座に魅入られてしまった。面白い!本当にクレイジーだ!読者を喜ばせると同時に、ハラハラドキドキさせるために、悪党側のイメージが恐ろしいほど強い!数々の悪だくみが、良識をゴミのように扱っている!それに対抗する正義も、手段を選ばずぶっ飛んでいる!だから、八十の書いた児童探偵小説を、もっともっと読んでみたい!と、最初に読んだものが強烈だっただけに、さらに彼の手による、新たなクレージー物語を欲するのは、至極当然な成り行きと言えよう。だが現在では、八十の児童探偵小説は、少年少女問わず、ほとんどが読めない状況である。仮に古本で見つかったとしても、それは恐ろしいほどの高値をつけていることが多い。だからこそ、困難を極める蒐集にさらに変態的に燃えてしまうのだが、もちろん大枚を払うことは避けて通りたいのが人情である。となると、基本は安く!を信条として、長い時間をかけてチャンスをうかがい、一冊一冊気長に手に入れて行くしか、方法はないのである。そんな風にして正攻法ではなかなか手の届かぬ八十本を、時に日下三蔵邸の買取バイトの報酬として(2014/12/10参照)、また日夜ヤフオクに目を光らせ、苦心して猛者たちから見逃された八十本を落札したり(2016/10/28参照)、少しずつ少しずつコレクションを増やして行く、じれったい日々。そして最近またもやラッキーにもヤフオクにて、探し求めていた一冊である、講談社少女クラブ12月号ふろく「すみれの怪人/西条八十・作 谷敏彦・え」を3300円で落札することが出来た。本来だったら入札値急上昇の一冊であるが、作者が“谷敏彦”とあり、八十の名がなかったために猛者たちの鋭い爪を逃れ、弱者がどうにか落札出来たのである。このように、牛歩の入手であるが、これからも色々手を替え品を替えて八十本を入手し、未知のクレージーなストーリーに耽溺する所存である。来年あたりはどうにかして蒐集をもっと微速前進させ、「魔境の二少女」か「長崎の花賣娘」のどちらか一冊を、読んでみたいものだと、秘かな野望を抱いている。
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さて、ここから話は横道に盛大に逸れる。「すみれの怪人」は、『ひとりで身の上相談所を開いている』『まだ中学生くらいの頭のよい少女』扇谷町子が主人公の少女探偵小説である。彼女はタイトルにもなっている『すみれの怪人』こと、元悪人の仲間だった青年『すみれのジョオ』に助けられ、悪漢たちの組織『東京の黒い五本指(なんという魂震える洒落た組織名!思わず名乗りたくなる格好良さ!八十センセイ、素敵!)』が起こす事件に立ち向かって行くのである。上の写真右下の表紙絵をご覧いただきたい。何か違和を感じないであろうか。私は感じた。それは『すみれのジョオ』の菫色の覆面にである。それは目の部分が刳り貫かれ、口の上までを隠すあまり見かけぬ代物である。覆面は四角く紐は耳に掛けられ、まるで風邪のマスクをズリ上げたような格好である。…なんだかちょっと格好悪い…。覆面と言えば、普通は怪傑ゾロのような目の部分を隠すマスクとか、顔全体を月光仮面のようにぐるっと巻いて目だけが出ているとか…近いものを強いて上げれば、横山光輝の漫画『鉄人28号』には帽子を被り顔全体に覆面布を垂らした悪党が出てきたはずだが、それでもやはりだいぶ違っている。一番格好良い助っ人が、このスタイルで良いのだろうか。どうしてこれを選んだのであろうか…。だが、これを目にした時から、記憶の何処かに、この珍妙なスタイルに近い覆面が、うっすら浮上してきたのである。確か写真だったような気が…古い探偵小説の表紙だったような気が…翻訳物だったような気が…と記憶をたどりつつ、必死に古本屋の目録を調べ始めてみる。すると案の定、見つかったのである。落穂舎の2013年春苑号「落穂拾い通信」のグラビアページに、その印象的な単行本は載っていた。日本公論社「エヂプト十字架の秘密/クヰーン」の表紙写真がまさに、同様の覆面を被った男のバストアップなのである。こちらはどうやら革製で丸みを帯び、耳に掛ける部分も少し違っているようだが、こういうタイプの覆面があったことは確かなようだ。製品として作られ販売され、犯罪者やマフィアが、愛用していたのであろうか?とにかく何とも不思議な覆面である。
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登場人物紹介ページのジョオと、目録の表紙写真。

このブログの毎回がそうとも言えますが、この忙しい年の瀬に、やくたいもない無駄話にお付き合いいただき、ありがとうございました。二〇一七年も引き続きよろしくお願いいたします!それではみなさま、良いお年を!
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2016年12月30日

12/30恐らく今年最後の古本屋さんの閉店を看取りに行く。

コメントタレコミにより、三十日で閉店のお店を知る。今年ラストとなるであろうお店への挽歌を歌い上げるには、ぜひともその最後の姿を見届けておかねばならない!と、埼京線で板橋駅下車。西口に出て、まずは道すがらの「板橋書店」(2009/07/18参照)を開いてるかな?と見に行くと、嬉しいことに営業中。静謐で混然とした店内通路を彷徨って、縦横に積まれた本の中から抜き出した、気になる薄手の一冊は、やった!嬉しいことに書肆ユリイカ本!もしかしたらこれが、今年最後の素晴らしい獲物かもしれないと喜び、さらに一冊。書肆ユリイカ「蒼い馬 滝口雅子詩集」(カバーナシ)新潮社「黒い顔の男/新田次郎」を計500円で購入する。早速路上で128mm×172mmの鼠色小型変型本を慈しみニヤニヤしながら、おぼつかない足取りで裏路地を西に向かって進んで行く。やがて板橋区役所前の『高田道』に入れば、半地下の「いのいち」(2010/01/09参照)が、『閉店のおしらせ』や『文庫&マンガ105均セール』の貼紙を、階段やドアに貼り出しているのに行き当たった。
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均一文庫棚に視線を走らせ、階段を下りきって店内に入ると、そこは通常と変わらぬ、コミックと文庫とアダルトが元気な、古本的に凪いだ世界。奥の単行本棚や右側手前の絶版漫画棚は時間を停めっ放しなのだが、ここにもセールは適用されるのだろうか…あっ、袋入りの本はセール対象外のようだ。奥のレジではお客である若者が、古本屋人生の越し方を店主から拝聴中。床板をギチギチいわせながら、店内105均棚から一冊抜き取り、さてこれだけでは何だか寂しいと思うので、思い切って袋入りのコミックを一冊セレクトする。話に割り込み精算をお願いすると、袋入りのコミックを見たオヤジさんは「おっ!いいの?買うの?」と軽く驚く。「ハイ」と答えると「ん〜、じゃあもう店じまいだから、全部で千円でいいよ」と大胆に値下げを断行してくれた。「ありがとうございます。そしておつかれさまです」と喜びながらも、ちょっと文章のような言葉でお礼を伝えてしまう。すると「これ、初版だからね。初版っていうのはね、一番最初に刷られたものってこと。だから価値があるの。汚したり、お茶こぼしたりしちゃダメだよ。大事にしてね」と教えられる。函館春秋社「3等客■アメリカを■鈍走/村上卿」講談社コミック金田一探偵シリーズ3「悪魔の手鞠唄/いけうち誠一」(こちらがその初版本コミック。帯が付いており『横溝正史の世界に挑戦しよう』『金田一名探偵はどうさばく!』などのキャッチがたまらない)を購入する。半地下の板橋的NYスタイルのお店がここにあったことを、忘れません!

夕方に再び外出し、今年最後の「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭にかぶりつく。が、寒さに震えながら何も見つからず。代わりに店内奥のミステリ関連棚から、朝日文化手帖3「誰にも言えない/大下宇陀児」を525円で見つけ、ささやかな幸せを噛み締める。その後は西荻窪に赴き、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内の「フォニャルフ」棚に強力な本を補充する。何たって、来春から、本棚探偵が「古本ナイアガラ」に参戦されるのだ。ウカウカしているわけには、決していかない!と思っていたら、すでに喜国雅彦氏の本棚探偵棚が出現していたので、大いに驚いてしまう。…やっぱりすげぇ…。みなさま、様々な古本マニアの棚とともに、「フォニャルフ」を引き続きよろしくお願いいたします!さらにその後は、某編集氏宅である『本の家』に向かい、岡崎武志氏・盛林堂小野氏ご夫妻とともに作戦会議忘年会。来年も古本屋世界に精一杯のさざ波を起こすべく、年の瀬ギリギリまで奮闘する。だが途中から、何故か東映動画アニメーションの話題にはまり込み、岡崎氏の『わんわん忠臣蔵』への愛が、ダダ漏れになってしまう。
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2016年12月29日

12/29築地を経由して今年最後の神保町パトロールに向かう

ちょっと早起きして、深くコンパクトな大江戸線で、東京の地下を軽く南回りして築地へ向かう。築地にとっては、もはや充分遅い時間の午前九時前。低空を海鳥が飛び交い、魚臭に満たされた巨大な市場は、それでも歳末の賑わいを遺憾なく見せ、何処も殺人的大混雑となっている。気をつけて歩きながら、四分の一円形の大屋根の下の、『水産仲卸業者売場』に入り込んで行く。長く細く常に飽和状態の通路では、多種多様の魚貝類・深海魚の水晶のような目玉・氷・冷気・発泡スチロール・鱗・血・魚の頭・白熱電球・白い看板・海水に濡れた古いアスファルトとコンクリ・恐い電動ターレ・優しい電動ターレ・赤色・銀色などに、激しく眩惑される。そして円弧を描く通路は、いつでも己の現在地を見失う魔力を秘めている。買物を済ませながら、市の活気に部外者としてすっかり飲み込まれた後、中心部の車とスクーターとターレが激しく乱雑に行き交う大通りに出て、屋根の外に脱出。続いて『魚がし横丁』にある、場内唯一の新刊書店を見学に行く。8号館一階角にあるその書店は、とても小さく、通りに大きな平台と棚を出し、そこに主に本を並べていた。
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料理や食、それに魚類のムックが大量に面陳されている。台の上には築地の本が集められ、背後の棚には料理関連の単行本が並べられている。目立つところに置かれた『寿司トランプ』は、おそらくこのお店の重要な売れ筋なのだろう。専門的な本に混じり、競馬&スポーツ新聞や漫画雑誌も置かれているのが微笑ましい。記念に「築地場内地図」を求め、大喧噪の市場を後にする。

森下で都営新宿線に乗り換え、午前十時半の神保町。陽があまり当たらず、あんなに氷の多かった築地市場よりちょっと寒いくらいだ。古本屋さんの三分の一ほどは今年の営業をすでに終了し、四分の一ほどが大掃除仕事納め状態。残りの営業中のお店やようやく開き始めたお店の店頭を、震えながら順に覗いて行く。市場も閉まった年の瀬で、忙しくはあるが品物が落ち着いているせいか、心にクイッと引っ掛かる本があまり見つからない。ようやく「ブンケン・ロック・サイド」(2014/08/28参照)店頭で、プレイブックス「ミステリー入門/佐賀潜編」(鮎川・日影・陳・樹下ら十人の推理作家競作の推理ゲーム本。ただしエロ度高め。挿絵は石森章太郎である)を見つけて購入しようと店内へ。帳場前で立ち止まり、清算前に脇の文庫棚をチェックしてみると、春陽文庫に微妙な動きが出ているのを発見。じっくり吟味して、春陽文庫「自殺を売った男/大下宇陀児」(昭和39年初版)を選び、合計1188円で購入する。さらに「澤口書店 巌松堂ビル店」(2014/04/12参照)では大成建設「タワークレーン・立ち話」(大成建設の週刊新潮&文春連載コラムをまとめたもの)を200円で購入する。古本を買ってようやく落ち着くと、なんだかお腹がすいてきたので『すずらん通り』の天婦羅屋『はちまき』に入り、奮発して天丼をパクつく。食事中はずっと、壁に飾られた東京作家クラブ「廿七會」の集合記念写真に釘付けとなる。なんたって、江戸川乱歩・鹿島孝二・大平陽介・長谷健・田邊茂一らが、嬉しそうに写り込んでいるのだ。
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今日の獲物である、怪しいカバーの春陽文庫と築地場内地図。地図上部の『11月閉場、ありがとう築地!』の文字が複雑な感情を呼び起こす…。
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2016年12月28日

12/28千葉・松戸 年末古本市

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日暮里から常磐線快速に乗ると、十七分で松戸駅。陽の当たらぬ底冷えするホームから橋上改札を抜けて、西口に出て空中広場を彷徨いながら、ビル街の樹冠に『ISETAN』のロゴを探す。すると、南西端の道の先に件のデパートを発見出来たので、階段を下り、コンクリ正方形タイルの敷き詰められた歩道を伝い、冷たいビル風に嬲られながら南に歩き、広場を通過して大きなデパート『ISETAN 松戸店』に吸い込まれる。一階大売場の隅にあったエレベータに乗り込み、十階の催物場へ。すると箱から出ると同時に、右側に細く長く奥へと延びる、古本ワゴンの列が視界に飛び込んで来た。昨日から始まっている、シンプル&ストレートな名が付けられた、四日間限りの(つまり三十日まで)、ワゴン約三十台の中規模古本市である。武蔵野辺の古本屋さんを中心にして、千葉と東北の古本屋さん九店が参加している。細長く連なるワゴン通路を、前後ろと交互に見ながら、ジワジワ奥へ進んで行く。市各所にはお粧しした古本屋さんが直立し、会場内のサービスに勤めている。お客さんは疎らな入り。郷土・美術・歴史・近代・風俗・雑本・絶版漫画・付録漫画・大判美術本・サブカル・芸能・映画・社会・人文・絵本・雑誌・文庫…ガラスケースもあり、文学・風俗・漫画関連のプレミア本が飾られている。会場の表側には銀フレーム飾り棚が巡らされ、そこには大判本を中心に、プレミア本や揃い本がディスプレイ。…生まれて初めて目にする肩書き“探偵将軍”とある本に心惹かれるが三千円か…この付録捕物漫画、“白い魔犬”とあり、表紙に大きな白犬が描かれているが、もしや「バスカヴィル家の犬」の翻案じゃ…ガラスケースの上の哈爾浜小冊子特集が素晴らしい。でもやっぱり高いな…この前の古本市で500円で売ったカルピスのオリンピックソノシート、二千円もするじゃないか…などと楽しみながらウロウロ。二冊を手にしてさぁ精算…あれ?何処のレジに行けばいいんだろう?近くに立つ古本屋さんに声をかけると、ガラスケース脇から奥まるバックヤード風小部屋に案内される。そこが催物場のレジになっていた。コミック・ペット異色名作シリーズ「恐怖のミイラ/楠高治 原作・高垣眸」(森下仁丹提供の昭和三十年代トラウマTVドラマのコミカライズ作品を復刻したもの。私は子供の時に懐かしの番組特集などで目にしたくらいだが、暗くて不気味で本当に恐かった。今でも思い出す、おどろおどろしい不吉なオープニングや、望遠鏡で目撃する無音の死体遺棄シーンは、眠れなくなるほど恐ろしいものであった。漫画は「少年クラブ」に同時連載されていたもの。当然子供っぽく恐さは微塵もないのだが、その恐怖の遺棄シーンがちゃんと描かれていたので、ちょっとだけ喜んでしまう)村松書館「地獄譚/長野祐二」(恐らく自費出版の私娼窟&悪所巡り短編小説集)を購入する。今年最後の古本市をありがとう!と心の中でお礼を言い、デパートの外に出て再びビル風に巻かれながら、そのまま裏手の線路際に出る。陽の当たる暖かな跨線橋を渡って「阿部書店」(2009/06/28参照)を見に行くが、残念ながらシャッターが下りてしまっていた…店内の蝙蝠、元気でいるかな。
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2016年12月27日

12/27東京・荻窪 Title 2Fの古本市

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二度目の雨が上がってから、表に飛び出す。今日もテクテクテクテク二本の足を存分に使い、雨上がりの『日大二高通り』を南西に下って、『青梅街道』と合流。そこは荻窪駅北口から西に500mほどの『四面道交差点』である。ここからさらに、北側歩道を西に400mほど歩き続けると、『八丁交差点』手前に、青い日除けを持つ瀟洒な新刊書店が現れる。青梅街道の光景を反射して、輝くような大きなガラスウィンドウから、ディスプレイラックや店内の様子をうかがい、扉を開ける。そこは、熟れ練られた新刊の並びが興味深い、奥に向かう空間である。面陳を効果的に使う壁棚が向かい合い、奥に向かってテーマ新刊島→両面文庫棚→左奥にレジ→最奥のカフェと連続して行く。だが、目的は新刊ではなく、二階で今日から始まった古本市なのである。左側半ばの、リトルプレス壁面ラックに囲まれた一階踊り場から、ミシギシ急階段を気をつけて上がると、普段はギャラリーの小部屋に、愛しの古本が密集していた。まずは上がった所に「えほんやるすばんばんするかいしゃ」(2014/09/11参照)棚があり、洋書絵本を中心にレア児童文学・絵本・安売絵本を並べている。そのまま窓際を見ると古いラックが置かれ、「Lospapelotes」(2008/07/14参照)がレア雑誌を「洋酒天国」などともに飾っている。そのまま「トムズボックス」や旧世代の女子本を極めたように切っ先が鋭い「ひるのつき」、今度駒込にお店をオープンする「BOOKS 青いカバ」、刺繍裁縫関連に特化したような「古書玉椿」と続く。左の壁際には、まだ木の香りが匂いたつ箱に本を詰めた「一角文庫」が、気合いを入れて洋書・本関連・コア文藝・映画・カルチャー関連を並べている。背後の壁際には、階段近くに「ハナメガネ商会」(2014/04/26参照)が乙女+子供+レア絵本+奇妙な本をバランスよく並べ、パンチを効かせている。その横には立体的に展開する「にわとり文庫」(2009/07/25参照)が、古書・復刻本・新東宝映画チラシ・乙女・絵本・詩集・昭和初期・風俗などを美しくカオスに並べている。キュッと凝縮された感じの、少ない冊数でそれぞれのお店の特色を最大限に打ち出した、なかなか濃厚な古本市である。傾向としては、女子濃度の方が高めであろうか。値段はピンキリで、良い本にはそれほど見逃しなくしっかり値が付けられているが、所々隙もちゃんと設定されているので、目を皿のようにしてお気に入りの一冊を見つけるべし。結局二回見直したので、結構長居してしまった。「一角文庫」と「ハナメガネ商会」のショップカードが手に入ったのも嬉しい。一冊を抜き取り、再び気をつけて階下へ。厚生閣「趣味の地理 學習旅行文庫 山めぐり/西亀正夫」(函ナシ。見返しには神田「三省堂」と「松屋呉服店」のラベルが貼付けられている。昭和初期に良家のお坊ちゃんが買ってもらったのだろうか)を500円で購入する。市は来年1/8(日)までだが、12/31(土)〜1/4(水)はお店自体がお休みなので注意が必要である。
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2016年12月26日

12/26驚きの閉店延期理由に接する!

さて、今年閉店してしまうお店として、最後に気になっていたのが新中野〜東高円寺間の「プリシラブックス」(2012/02/14参照)である。今日はもう二十七日…年内にお店を閉めるという話だったので、もしかしたらもうやっていないかもしれない。そんな遅刻の危惧を抱きつつ、阿佐ヶ谷から冷たい冬の中をトボトボ歩き始め、五十分ほどかけて東高円寺着。『青梅街道』から住宅街の中に入り込んで、街の中に隠されたような生活道路に面した、お店の前に到着する。ウィンドウのブラインドは、すべて下ろされている…間に合わなかったか…おや?中には本棚やラックが残っており、ちゃんとそこに本も並んでいる。看板もそのままか…そして何処にも閉店のアナウンスはなく、変わった物と言えば、ドアの上に吊るされたてるてる坊主のみ…これはいったいどういうことなのか?お休みなのか、もはや閉店後なのか?考えても答えは出ないので、お店の動向をちょっとネットで調べてみることにする。来た道を戻りながら、小さな画面を注視していると、驚くべきお店の現状が発覚!なんと店主のツイッターによると、十二月閉店予定を公言していたが、閉店するための資金が不足してしまっているので、今しばらく営業を続けることになった、と書かれていたのだ。…スゴい、スゴい理由だ。スゴい現状だ。喜んでいいんだか悲しんでいいんだか、まったく混乱してしまう営業状態だ。客が本を買えば買うほど、恐らく閉店は早まるのだろう。とにかく、が、がんばれ!プリシラブックス!しかしということは、今日はお休みということになるのか。これはまたしばらくしたら、ちゃんと様子を見に来なければ…。

狐につままれたようになりながら、高円寺へ足を向ける。「アニマル洋子」(2014/03/14参照)で六興出版「料治熊太の見直し文庫◉日本の雑器五十章◉」を100円で購入すると、『ルック商店街』のスクラッチカードをプレゼントされる。削ってみたら外れであったが、裏面を見ると加盟店印の枠に、ちゃんと「アニマル洋子」の判が捺してあったので、古本屋ファンとして少し嬉しくなってしまう。『庚申通り』の「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)では、店頭で「らく N0.2 APRIL1989/都市のフォークロアの会」を見つけて100円で購入する。民俗学者・大月隆寛が出していた民俗学同人誌である。『バックミラーの中の都市 タクシー・ルポルタージュの視線』『女子プロレスの戦後史・序説』『浅羽通明×大月隆寛対談』『「消えるヒッチハイカー」ブックレビュー』などなど、なかなかバラエティに富んで刺激的。突然こんな物と出会える古本屋さんの店頭も、とても刺激的なのである。最近この「サンカクヤマ」店頭では、見知らぬ、だが、グンと興味を惹く小冊子に出会うことが多く、ちゃんと探せば何か見つかるので、もはや欠かせぬ定点観測店と化している気が。
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「らく」とスクラッチカード裏面。
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2016年12月25日

12/25佐左木俊郎に心の隙を突かれる。

白い息を吐きながら、もはや土日の参戦恒例行事となっている、超ご近所の「帰ってきたJ−ハウス」(2015/12/26参照)の朝市に向かう。今日は歩道側のダンボール箱に八十〜九十年代映画パンフが詰め込まれていたので、そこのみに没頭する。五冊で100円。拾い物はサム・ペキンパー監督の早過ぎたタランティーノ的バカアクション映画「キラー・エリート」と、キネカ大森が出来た時に出した小冊子の創刊号「KINECA」(1984年刊。ミニシアターのプログラムマガジンなのに、造りも執筆陣も驚くほど豪華。西武の広告が入っていたり、映画館が『西友』内にあるので、セゾン系の芸術文化活動であることがみてとれる)であろうか。土日市は今年最後の開催であるが、いや、本当に結構良いもの楽しいものを、恐ろしいくらいの安値で買わさせていただきました。来年もこの調子で、ひとつよろしくお願いいたします!

午後に本格的に外出し、まずはスタスタ「ささま書店」(2008/08/23参照)へ向かう。おんどり・ぽけっと・ぶっく「わがアメリカ映画史/筈見恒夫」宮沢賢治研究会「四次元1968年1月号 二百号記念特集」を計210円で購入し、続いて西荻窪「盛林堂書房」に向かい、今年最後(恐らく)の「フォニャルフ」補充を行う。そして帳場に近寄ると、おわぁ!最近仕入れたという垂涎の探偵小説本たちが、クリーニングを終え商品と化すのを待ちながら、店主の周囲を囲み、様々な事件の瘴気を纏いながら黄金に輝いているではないか!特に惹き付けられたのは、博文館文庫と日本小説文庫&春陽堂文庫!その中に、何故かしら最近頓に恋い焦がれしまっている、佐左木俊郎の文庫を発見してしまい、懐が寒いはずなのに購買欲がギュギュンと急上昇してしまう。聞けば純粋な探偵小説ではないので(それに近くはあるのだが、より文学&大衆小説的なアプローチで書かれている。でもそのタイトルは『謀殺罪』『密會綺譚』『錯覺の拷問室』『或る犯罪の動機』などで、ほとんどが昭和初期の東京を舞台にして、怪奇な事件で幕を開けているではないか…はぁっ!読みたい!)値段はそれほど高くないとのこと。…で、迷う。思いっきり迷う。う〜ん、欲しくて読みたくはあるのだが、ここでこんなミニ大物を買うつもりは、まったくなかったのだ…これを買ったら、この先の、ちょっと来年のある企画のために、何軒かの古本屋さんを見ておこうという予定が、崩れてしまうではないか…。いや、ここはやっぱり、きっぱりと仕事を優先させるべきだろう。そうだ、それでいいのだ。別に今買わなくてもいいんだよ。「きょ、今日はやめておきます。三十日にまた来るので、その時にあったら買おうかなと…」「そっかぁ、なくなってるかもね。でもそうなったら、諦めがつくってわけか…」「いや、そんな佐左木がそう簡単に、売れるわけはないでしょ。残ってますよ、きっと」「だといいよねぇ」「…すみません、やはり佐左木をいただいていきます!」とあっけなく陥落してしまう。春陽堂文庫「仮面の輪舞 外四篇/佐左木俊郎」を三千円で購入してしまった……バカ!俺の、古本バカっ!突然出会ってしまった佐左木俊郎に、弱い心の隙を見事に突かれてしまった…でもいいか。これを自分への、ささやかなクリスマスプレゼントとしよう。メリー・古本・クリスマス!

そんなわけで心と財布を軽くしながら、予定を大幅に変更して、駅からバスに乗って井荻駅→都立家政と移動する。踏切を渡って店頭でクリスマスツリーがペカペカ点灯している「ブックマート都立家政店」(2011/12/13参照)に到着。お店宣伝メタルテーマ曲&オリジナルMVがエンドレスで流れ続ける店頭棚から、幻想文学出版局「ブックガイド・マガジン BGM 創刊号」を300円で購入。テンチョーさんとちょっとお話ししたかったのだが、残念ながら不在であった。
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※再びのお知らせ
大阪「梅田蔦屋書店」のカフェ『4thラウンジ』壁面で、『古本屋ツアー・イン・ジャパンのお蔵出しフェア』が堂々開催中です。九月に開かれた「夏の古書市」より、遥かに蔵書量が増殖しておりますので、梅田駅駅ビル『ルクア イーレ』に接近の際は、ぜひとも苦労して九階まで上がり、カフェをどうにか探し当てて、辺りの雰囲気から逸脱したような、意外過ぎる並びの古本群を楽しんでいただければ!何とぞよろしくお願いいたします。
https://www.facebook.com/UMEDATSUTAYABOOKS/
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2016年12月24日

12/24「立石書店」はやがて“兄弟倉庫”となる。

今日もわめぞ忘年会でのタレコミを基に動き始める。東西線に乗って早稲田駅下車。地上の『早稲田通り』坂下から西に歩いて行くと、『穴八幡宮』がお祭りの賑わいなので、無抵抗に吸い寄せられて急階段を上がり、露店の屋根が被りトンネル状と化した狭い参道を、クリスマスイブ気分をぶっ飛ばすように情緒を楽しみ、勢いで行列に並び参拝した後に『一陽来復御守』も勢いで購入してしまう。参道に戻って、甘酒を飲みながら、清酒ケースで作られた露店の椅子に腰を下ろし、屋台の向こうを行き交う人を、漫然と眺めてしばらく過ごす…服装やスマホなどにギュッと目をつぶれば、江戸時代とそう変わらぬ、一場面のようだ。『みぎひだり 楽しみ行く顔遥かなる 時間をねじ曲げ 未知既知投影』…ダメだ。デタラメ過ぎるな。もっとこう、ちゃんとスムーズにてらいなく気持ちを……ハッ!俺は、いつまでも、こんな現実逃避の世捨て人モードに浸っているわけにはいかないのだ。あの古本屋さんを、見に行かなければ!甘酒を飲み干し立ち上がり、「ごちそうさま」と大きなゴミ箱に紙コップを投げ入れ、西寄り奥の社横の坂道から『早稲田通り』に舞い戻る。そして少しだけ道を引き返すと、あぁ、店主本人の口から笑いながら教えられた通り、「立石書店」(2009/12/11参照)は看板を撤去済みで、すでに店舗を閉店していたのであった。
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それはそれは、清々しいほどの撤収っぷり。早稲田から、またひとつの星が、流れ落ちたか…。そして店主が言うところ、弟さんが経営する「古書英二」(2012/06/15参照)も近々早稲田のお店を畳んでしまうらしい。その後は兄弟で大きな倉庫を借り、倉庫事務所の「立石書店」「古書英二」としての活動を予定しているのだ。よし、決まって落ち着いたら、どうにかしてツアーさせてもらおう。それにしても兄弟で倉庫…兄弟倉庫…なんだか鳥羽一郎の『兄弟船』みたいな…♪駅から遠いが、在庫は豊富〜♪。

そのまま『早稲田通り』を西に歩き続け、「ブックス・アルト」(2016/01/13参照)もついにその面影をすっかりなくしているのを確認して、「江原書店」(2011/02/22参照)。増田精神顕彰会「巡査大明神全傳/内田守」(明治時代のコレラ流行時に、その防疫のために身を呈して決死の活動をし、ついに自身がコレラに倒れてしまった警察官の伝記と、その警察官を神として祀る神社由来記)を100円で購入する。冷たく通りを吹き荒れる風に喘ぎ喘ぎ抗いながら、続いて「二朗書房」(2011/03/14参照)で桃源社「捕物そばや 十手往来の巻/村上元三」晶文社「黄色い部屋はいかに改装されたか?/都筑道夫」を計300円で購入。それにしても、今日は早稲田古本屋巡りをしている人がたくさんいるような…そんなことに気づきながら、さらに冷たくなった風に吹かれていると、いつしか体力を奪われてしまい心も折れてしまい、後は数店の店頭を撫でるだけで呆気なく敗走してしまう…うぅ、ガタブルガタブル…。今日は昨日に比べて、なんて寒い日なんだ。
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2016年12月23日

12/23女子に怖じ気好き酒屋の軒先に救われる。

昨夜はわめぞの大忘年会に参戦。様々な人に様々な古本屋タレコミを囁かれ、非常に刺激的な夜となるが、一番過激に刺激的だったのは、石丸元章氏に子母澤寛について説明したり、トイレにたどり着けぬ氏を素早く案内した瞬間であった…。

明けて本日、駅に向かう途中の「千章堂書店」(2009/12/29参照)100均ワゴンで文春文庫「落城記/野呂邦暢」を見つけて喜んでから、「「白樺書院」(2008/06/01参照)は、すでに十二月初めにお店を閉めちゃいましたよ」と、忘年会で隣席だった「むしくい堂」さんにタレ込まれていたので、悔恨の念を噛み締めながら下北沢に到着する。『下北沢一番街』のお店の前に立つと、あぁぁぁぁぁ、本当だ。シャッターは下ろされたままで、看板が、看板が取り去られている…。2016/11/01にお店に入ったのが、最後となってしまったか。長い間、本当におつかれさまでした。そしてやはりどうしても思い出すのは、店の中を我が物顔に飛び交っていた、あのインコのこと。幸い三年前の「南部支部報第48号」に、その強烈な出会いをレポートした拙文があるので、お店の追悼のつもりで、ここに少々抜粋する。

『…大きく日除けが張り出しているせいか、ここだけ商店街の中で少し闇をまとっている。その薄暗い領域に踏み込むと、確実に何かの視線に射抜かれているのを感じてしまう…決して店主のものではない。もっと、純粋で凶暴な…それは、入口近くに居座る、緑色のインコの視線であった。このインコは店内で放し飼いににされており、足下の文庫本をおもちゃにしている。店内に入って棚を見ていると、横で『ピィーッ!ピ〜〜ッ!』と激しく鳴き立てる。あぁ、愉快で素敵な古本屋さんだ…そのとき突然奥の帳場で店主が立ち上がり「ダメだよ!」「えっ?」「いや、その子が今飛びかかろうとしていたもので…」。危うく古本屋さんでインコに襲われるところであった。可愛い凶暴な店番がいるお店、それが「白樺書院」である』
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これは三年前に店の外から激写したインコ。その足が掴むのは、啄んでボロボロになった文庫本である!

インコの感慨に耽りながら、人波の多い方に引き返し、途中「ほん吉」(2008/06/01参照)に立ち寄る。古書混じり気味の店頭棚から、岩谷選書「綺堂怪奇小説集/岡本綺堂」(表紙破れアリ)学研4年の学習2月教材「おもしろ交通館」を計200円で購入した後に、南口商店街の終りにある、これもタレ込まれた本を少々扱っているらしい「三叉路」に到着。…だが、思いっきり入りづらい。完全に女子向けの三階建て小店!ぬぅん…このプリティーな祝日の女子空間に、オヤジが闖入するわけには、ちょっといかぬ。とすっかり怖じ気づき、また別の日にチャレンジするかと、逃げるように歩き出し、横道に入って久々の「オムライス」(2013/09/19参照)に入店。なんだか貸本漫画が増えているなと思いつつ、古本ゾーンをガサゴソする。値段の付いてない二点、帝國教育出版部「コドモノヒカリ第五巻第二號 カゾヘカタ號」(ページ欠け。昭和十六年刊の教育絵本)婦人画報社「男のお洒落実用学/石津謙介」を店主に差し出すと、絵本は1000円だが石津本は破格の300円!ということなので、喜んで購入する。さらに坂を東に上がって池ノ上に向かうと、南側商店街の閉店した酒屋の軒先で、無人ガレージセールが行われているのを発見。
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一冊十円古本箱(当然両方とも酒の空き箱)が二つも出ているじゃないか!と無邪気に喜び、五木寛之・吉行淳之介・石川達三・語学関連の多い並びを集中して眺め、角川新書「一万一千メートルの深海を行く/J・ピカール R・S・ディーツ」を購入する。
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本日のささやかな収穫。下に敷いてあるのが「コドモノヒカリ」で、武井武雄エの『ウメノセック(ケンコクサイノウタ)』である。欠けのページがあるのが誠に残念だが…と表4の『本編の内容について(お母様方へ』を読んでいると、欠けたページの詳細が書いてあった。そしてその中に恐るべき名が!何と『動物の駆けっこ』を描いているのは谷中安規!ええっ!と驚き慌ててないはずのページを繰ってみると、なんと半分だけがかろうじて残されているではないか。あぁっ、悔しい!でも、嬉しい!動物が、やっぱりかわいいっ!
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2016年12月21日

12/21今日も懐かし物屋に足を運んでしまう

昨日の懐かし物屋での、軽いがそれなりに甘い古本の夢が忘れられず、同じような店を自力で探し出してたどることにする。だが空振りに終わる恐れも充分にあるので、確実に最初に買うべきだと、高円寺『座・高円寺』のロビーで今日から始まる「本の楽市」(2010/07/18参照)にまずは立ち寄る。薄暗く天井が高くだだっ広い空間で、六つの古本島の周りをグルグルグルグル。絵本や紙物雑貨が多めだが、「rhythm_and_books」(2011/08/10参照)が箱に詰め込んでいる、六十年代周辺パンフ&小冊子類に釘付けになる。他には「にわとり文庫」が大量に並べていた、B5二つ折り一色刷りわら半紙の、チープ過ぎる新東宝映画チラシに惹き付けられる。もしや「九十九本目の生娘」(原作は大河内常平「九十九本の妖刀」)があるのではと、一枚一枚丁寧に繰ってみるが、期待に反して見つからずじまい。その代わり、同じ曲谷守平監督作品のヒドそうなヤツを見つけたので握り締める。「今日のNHK」(1963年刊のNHKの宣伝パンフレット。東京オリンピックを前に、ますます放送施設と番組の充実を図るNHKの野望が各ページに踊る。当時人気の番組「事件記者」や「夢であいましょう」「若い季節」などのスチールも掲載)トムズボックス「ねずみ花火 さしえ集/茂田井武」新東宝映画単色チラシ「「妖蛇荘の魔王」「明治天皇と日露大戦争」」(「妖蛇荘〜」のキャッチが卑しい想像を逞しくする。『半獣人の毒牙か邪教の呪いか?恐怖の惨劇を操る人物は誰?』『!地上百米を飛ぶ半獸人!』)を計1150円で購入する。この市は25日(日)まで。
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さて、古本…というか妙なモノたちも買ったし、これで安心して電車に乗り、改めて秋葉原駅で下車する。『電気街口』から雑踏中に踊り込み、『中央通り』を真っ直ぐ北に進んで行くと『蔵前橋通り』にぶつかる手前のビル一階に「ゴールデンエイジ」というお店があった。
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通路奥の扉を開けて中に入ると、“P”字型の通路を取り囲むように、懐かしのヒーロー系玩具がドッチャリ。『ニセウルトラマン』の玩具風ソフビが秀逸…うむ、古本は古本は…おっ、出っ張った“P”の下部に少し集まっているぞ。ヒーロー系児童書・特撮資料本・コミックがほとんどか…ううぅっ!ガラスケースの中に、小松崎茂大先生の「怪獣の描き方教室」オリジナル本が、函ナシだが並んでいるじゃないか!欲しいなぁ…高いんだろうなぁ…でも恐くて値段を聞けないなぁ…とそのまま表に出てしまう。何だかスキ無しな感じに、すっかり気圧されてしまった…。そのまま『蔵前橋通り』を西に歩き、坂を上がって『清水坂下交差点』。ここから北に進んで行くと、道はすぐさま急峻な『清水坂』となり、心拍数を倍に跳ね上げる。苦労して坂上にたどり着くと、道ばたに雑貨店案内立看板が置かれている。指示に従い脇道を東に入ると「王冠印雑貨店」は目の前だった。
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明らかに女子向けなお店であるが、チャレンジしてみて損はないはずだ…しかしどうも、キレイなデッドストックや、復刻&オリジナルもの&猫ものが中心で、古物独特の深度感や高揚感はそれほど味わえない。思わず心中の失点を取り返すために、復刻千代紙の男の子SFモチーフを買ってしまいそうになるが、必要ないだろ!と己を叱り、我慢してお店の外へ。残念ながら古本は見つからず…やはりそう甘くはなかったか。

大晦日に『夏越の祓』を行う『妻恋神社』に参拝し、坂を下って、坂を上がって、御茶ノ水方面へ。すると聖橋の上で、午後三時の夕陽が一瞬優し気に煌めく。思わず立ち止まり、厚みと丸みのある欄干越しに下を覗き込むと、神田川の谷底には、すでに冬の寂しい闇が立ち込めていた…早く帰るとするか。
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2016年12月20日

12/20埼玉・与野 三輪車

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古本神・森英俊氏より、本も少し売っている懐かし物系ショップを教えてもらったので、期待に胸を躍らせながら大慌てで駆け付ける。東口に出ると、小さく見どころなく雑駁とした駅前。すぐの駅前商店街を南南東に迷い無く進んで行くと、右手にほどなくして白い小ビル一階を、すっかりパッキングされた玩具で覆ったような店頭が現れる。それは、雑然としているわけではなく整然としているのだが、それでも何処か異様な光景となっている。たくさんのソフビ人形やフィギュアや企業ノベルティを並べたウィンドウには『古いおもちゃ買います!!』『1980年代までの!ソフビ・怪獣・ヒーロー物・超合金・ブリキのオモチャ◉旧玩具全般!』『あなたの家の押し入れや、倉庫に!古いオモチャが眠っていたら、お電話ください!』と、変なところに“!”が入る貼紙。手動扉を開けて中に入ると、結構広く通路が何本にも枝分かれし、上から下まで玩具に埋め尽くされた空間である。通路は広く歩き易く、棚やガラスケースや物の集合体が形作っているのだが、天井からは繋げた玩具や駄玩具が多数吊り下がり、棚下の通路には大判の本やブツが置かれているので、境目が曖昧な洞窟状となっている。左側奥の通路では、椅子に座った麿赤児風オヤジさんが、『あしたのジョー』最終回のようなポーズでスウスウ幸せな寝息を立てている…しばらくはソッとしておこうか。それにしても、恐るべき玩具に満ちあふれた店内で、触れたらそこからこの身も玩具と化してしまいそう。ソフビ・フィギュア・メンコなどの駄玩具・キャラ物・ヒーロー物・豆本漫画・ぬりえ・カルタ・ノート・ブロマイド・プラモデル…足元に絵本はあるが、古本はいったい…と奥へ入り込んで行く。すると左奥の中央の島の周辺に、付録漫画・特撮本・カード類・ヒーロー図鑑&百科事典・カバヤ児童文庫・「キンダーブック」・旧教科書・図鑑などが取り込まれているのを発見する。ふむふむ、おっ、野村胡堂の「悪魔の王城」がある…この少女クラブ付録の大判時代劇冒険漫画は読んでみたいなぁ…観光絵葉書もあるぞ…などとこっそり楽しんでいると、オヤジさんが「アッ!」と目を覚まし、こちらににこやかに駆け付けてきた。「すいません、寝ちゃってました」「いえいえ、大丈夫ですよ」「何かお探しですか」「あ、古い本を…」「本ですか。本は…この辺りですねぇ」「そうですね。ここに集中していますね」「どうぞゆっくりご覧になってください」…と言うわけで、しばらくじっくりと丁寧に掘り起こしたりしてみる…。基本は懐かし系玩具屋さんだが、少し本もあり。紙物は大いにあり。タイミングが良ければ、良い出物に出会えそうな予感を与えてくれる品揃え。相場より安めの値がまた嬉しい。…おっ、ここには和本が少々。すると値は付いていないが気になる一冊を見つけたので、すでに手にしていた本とともにオヤジさんに差し出してみる。すると「あぁ、値段ないですね。ちょっと待ってて」と奥の入り込めない通路に向かい、電話をかけ始めた。ところが相手は出ない模様。戻ってきて「いや、本はね、弟がやってるのよ。だから聞かないと値が分からなくて。う〜ん、どうしようかな。じゃあ近くなんで、ちょっと聞いて来ようか」と、一旦お店を閉めて自転車で急行することに。その間私は、入口外の椅子に座り、看板の上から顔をひょっくり出し、見知らぬ街を十分ほど眺めて暮らす。お!オヤジさんが自転車を華麗に疾走させ、カーブを曲がってきたぞ!自転車を停め、階段を駆け上がり、鍵を開けながら「すいませんでした」とにっこり笑う。聞けば作家物と言うことなので、値段は1500円。安くもあるし、せっかく自転車で行き来していただいたので、迷わず買うことにする。富里昇進堂 少女文庫「はかなき生立/ゆかり草著 紫峯画」小学館「機械の図鑑」を購入する。すると突然、「どっか悪いとこないですか?」と唐突に聞かれる。「い、いえ…」と答えると「いやなにね、気功をやってるもんで。体にいいんですよ。もし悪いとこが出たら、来て下さい」「ハイ。また何か買うついでに、参ります」と、当たり障りのない返答をしておく。うむ、楽しかった。こういうお店に出会うと、またレトロ玩具屋巡り(もちろん目的は古本である)に火が点いてしまいそうだ。

収穫はもちろん大正三年刊の「はかなき生立」であるが、奥付にあるシリーズ『少女文庫』の説明が可笑しくてたまらない。『少女文庫はお伽文庫の姉さんで悲惨、不幸等有とあらゆる各冊おもしろき事柄を涙の出るような著者独特の筆にて成りたるもの家庭教育として頗る趣味あり実益ある良書であります』とあるのだ。あらゆるおもしろき事柄を説明する語が、“悲惨”と“不幸”しかないのが、何とも恐ろしい…。ちなみに妹である『お伽文庫』のラインナップを見ていると、「探偵少女」「探偵少年」の気になる二冊を発見してしまったので、頭の中の『読みたい本リスト』に刻み込んでおく…いつか出会えるかなぁ…出会えない可能性の方が高そうだなぁ…。
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2016年12月19日

12/19東京・阿佐ヶ谷 ZAGURI

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大阪「梅田蔦屋書店」での『古ツアお蔵出しフェア』に、さらなる追加古本を発送し、そのまま外出モードに入る。とは言っても遠くに行くわけではなく、『旧中杉通り』の谷底に出来た、新しいカフェ&アトリエが目的地である。駅からは北口ロータリーを突っ切って『北口アーケード街』を通過し、レンガタイルの敷き詰められた『旧中杉通り』をさらに北へ。スタスタ歩いて「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)前を通過し、一段高いが空の抜けがとても良い墓地の脇を、緩いカーブを描いて谷底へ。足下のレンガタイルが終わってもさらに北へ進んで、貸本屋の「ネギシ読書会 中杉通り店」(2009/08/12参照)も過ぎると、右手に韓国料理屋→飲み屋→汁もの屋と変遷を繰り返し、現在カフェに落ち着いた小さな店舗が現れる。工事をしている時から、次に何が出来るのか気になっていたのだが、通りかかった時にふと店内に目をやると、壁際に本棚のようなものが造作されていたので、俄然興味を持ち続けていたのである。だが、明るく洒落たカフェが開店しても入るわけではなく、時々ドアの腰高ガラスから、ちゃんと本の並んでいる棚を眺めるだけに留まっていた。だがある日、店頭に置かれたショップカードを手に取ると、カフェの他に『グラフィックデザイン』『フォント開発』『WEB』『オーダメイド名刺』『活版印刷』などの言葉が並び、その中に『タイポグラフィ古書』とあるのを発見してしまったのである。ここは、古本を扱っているんだ!そう確信して、小さなお店の木製スライドドアを開け、ちょっと高い敷居を跨いで中に入る。縦長の、カウンター席+テーブル席二つの明るい空間。カウンター内には、若い人がいるのかと思いきや、壮年のファッショナブルな夫婦(想像である)が、落ち着いた佇まいで働いていた…これは想定外であった。最近、タイポグラフィ古書専門店や、デザイン事務所も兼ねた古本屋がポツポツ出現しているのだが、それらはどれも若い人の手によるものであった。良く注意すると、カウンターにいた先客二人は、男性店主と印刷物やWEBについて言葉を交わしているようだ…ただのカフェのお客さんというわけではなく、そちらのお客さんでもあるわけか。テーブル席に腰を下ろし、甘酒を注文して正面の壁に目を据える。細身の鉄鋼と木板で出来た壁棚や飾り棚が設置されている。上部には古い明治〜大正の教科書類がズラッと並び、中段には文房具・帆布トートバッグ・カメラ&カメラレンズ・タイプライター・旧式LSI電子卓上計算機・手回し計算機・計算尺・小型活版印刷機などが存在感大きく飾られ、下段二段に文字・タイポグラフィ・活字・篆書・レタリング・などが大型本を中心に多数並んでいる。壁面の飾り棚にもヘルベチカ専門書や作家作品集が飾られている。あの左の方の壁面にたくさん取付けられた、細長い木箱はいったい何だろうか?今はその表は閉じられているが、すべてに蝶番が付いているので、カッパリと開くのだろう。中にはいったい何が……。並ぶのはすべてはタイポグラフィ&文字関連の本である。そしてカウンター席背面の通路が狭いので、お客さんが座っていると、おいそれと気軽に見られないのが残念である。気を使い過ぎて、値の付いている本を見つけることが出来なかった…すみません。しかしこのお店の面白さは、むしろ並んでいる古本より、古い型の機械式計算機や重々しく分厚いLSI電子計算機にあるのではないだろうか。テクノロジーの激しい発達の中で打ち捨てられてきた、頼もしく頑丈な嵩張る未来的ボディたち。漆黒の小さく横長ディスプレイに浮かび上がる、緑の数字。その中に隠された、熱を持った電子装置群。すっかり古本のことなど忘れ、狭い通路を擦り抜けて、甘酒代450円を支払う。おっ、レジスターは、モスグリーンの重々しいがスリムな機械式。背に『Kunimatsu』のローマ字が踊っている。ジャカジャカ、チィ〜ンの音にドキリとし、LSI電卓に物欲を覚えてしまう己を、厳しく戒める。
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2016年12月18日

12/18「魔法入門」と植草甚一譯!

風邪がどうにも治りきらないので、ワチャワチャと動き回らずになるべく休養することを心がけ、「フォニャルフ」のささやかな補充にだけ向かうことにする。それでも通り道の古本屋には吸い寄せられ、ボケラ〜ッとしながら「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)店頭右端の文庫棚前に立ち止まり、漫然と棚を上から順に眺めて行く…今日はちょっと暖かいな…立っているのになんだか眠いな…などと集中力を欠きながら文庫の背を追いかけていると、脳天をぶっ叩かれたような衝撃力を持つ文庫を発見!角川文庫「魔法入門/W・E・バトラー」である。『超自然の謎シリーズ』と銘打たれたオカルト文庫の中でもレアな一冊を、103円で買える日が来るとは!と気怠い風邪を瞬間吹き飛ばし、店内で四枚の硬貨と無事に交換する。初版だか、カバーは後版の異装となっている。見つけた瞬間に興奮してしまい、棚に挿さった状態を一枚。
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いつもだったらこのまま歩いて荻窪に向かうのだが、今日は日和って大事をとって電車で西荻窪入りし、「フォニャルフ」に古本の補充を果たす。そして「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏とちょっとだけ来年の岡崎武志氏と共同で作り上げる古本屋本について打ち合わせる。店内が次第に混み合ってきたので、程よいところで辞去。だが改めて店頭に蔓延る100均箱に吸い寄せられてしまうと、見慣れぬ古く良さげな単行本を発見してしまう。昭和十五年発行のスタア社「亞米利加作家撰集」である。裸本らしく、中を見るとヘミングウェイやスタインベックなどの知られた作家も並んでいるが、大半が見知らぬ名である。だが、二篇の譯者に植草甚一の名を見つけたので、即座に購入を決意する。再び店内に舞い戻り、「これなんで外に出してるの?」と聞くと「売れないんだもん」とのシンプルな答えが返ってきた。そして裸本だと思っていたのが、実は中に挟まっていた薄っぺらなパラフィンのような紙がカバーであり、それならばと改めてカバーを掛けてもらい、さらにパラフィンも巻いていただくことにする。すると小野氏が「こうしたら、何だか売りたくなくなってきた」とボソリ。いや、時すでに遅し。手のひらで踊らされつつも、どひゃっほうです。
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連日の安値良書入手に、喜び戸惑いつつも、今日も上出来な古本人生を歩めていることに、どこかに潜んでいるはずの古本の神に、盛大に感謝を捧げる。
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2016年12月17日

12/17古ツアin古典SFワンダーランド!

風邪がまだ治りきらないので、今日も夜の予定までは家に閉じこもり過ごすつもり。だがやはり古本は買いたしと、午前十時の開店時間に照準を定め、今日は古本が出ているかもしれないと薄い望みを賭けながら、ご近所の「帰ってきたJ-house」(2015/12/26参照)の土日朝市に向かう。開店と同時に100均箱に群がり貪る猛者の隙を見出しながら、自分のペースで店頭のチェックを進める。おぉっ!今日は歩道反対側に置かれた箱に、ソングブック系とは言え、古本が並んでいるではないか!と色めきたち、ガサゴソガサゴソ。日本専売公社「たばこ専売五十年少史」二玄社「CARグラフィック 72号」年代不明の小学六年生1月号付録「ハッピーゲームカード」を300円で購入する。そんな風に首尾良く古本を買えたこともさることながら、「たばこ専売五十小史」に挟まっていた紙物に、午前中一番の喜びを覚えてしまう。それは昭和二十八年発行の「たばこのはなし」という日本専売公社のパンフレット。基本は二色刷りなのだが、ベラベラと開いて内側を見ると、何とカラー印刷の明治三十七年から昭和二十八年まで発売してきた、煙草のパッケージがズラズラリ!
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ぬっ、乱歩の『屋根裏の散歩者』に登場する『Air Ship』も、頻繁に探偵小説に登場する『敷島』も、しっかり掲載されているではないか!そんな小さな喜びを噛み締めつつ家にそそくさと戻り、今は夜のために、傷を負った野生動物のように身を隠し、ひたすら体力の温存に努める…。

そして午後四時半に家を出て、暮れなずんでいる神保町着。この街に来たならば、当然お気に入りの各店頭を見て回るつもりなのである。まずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)店頭で、意外な児童本を見つけて、これは幸先が良いぞと店内に駆け込んで精算する。秋田書店ジュニア版怪奇サスペンス全集4「世界の怪奇七不思議/庄司浅水」を300円で購入。続いてすっかり暗くなった「日本書房」(2011/08/24参照)の店頭で、つい先日も見たばかりの柔々和本タワーを掘り返すと、心の琴線に触れまくる薄い冊子を発見!出版社不明「人面類似集 全/宮武外骨編」(背に製版テープで補修アリ)である。ドキドキしながらページを繰ると、人間の認識能力の高さ故の本能として、無意味な図像に人の顔を見出してしまう(つまりは心霊写真と類似の現象)現象のオンパレード!
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平家蟹から始まり、人面魚や人参や人面瘡などを経由して、妖怪関連にまで至ってしまう、昭和六年刊のある意味オカルト本である。これを五百円で購入し、どひゃっほう!と『白山通り』に雄叫びを上げる。さらに「明倫館書店」(2012/04/04参照)で武田薬品化學株式會社の非売品本「化學大家略傳」を300円で購入し、本日のメインイベントである『日本古典SF研究会』の忘年会に向かう。ひょんなことから盛林堂ミステリアス文庫の新刊、横田順彌氏の「荒熊雪之丞大全」のカバー周りデザインを引き受けたことにより、研究会会長である北原尚彦氏からお誘いがかかり、恐縮しながら末席を汚すことになったのである。地下の会場に滑り込むと、畏れ多いお歴々が集合しており、ひたすら縮こまりながらも、二時間半を楽しく過ごしてしまう。それにしても、『古典SF研究会』なのに、一切SFの話が出ずに、古本話に終始したのは、どういうことなのだろうか…。
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2016年12月16日

12/16箱入り児童文学本の幸福性について

気が緩んだのか無様に風邪をひいてしまう。一晩寝て快方に向かっているのだが、今夜は万難を排して参加しなければならない「古本屋ツアー・イン・京阪神」の打ち上げがあるので、日中は大事をとって寝て過ごすことにする。というわけで、古本屋には行けそうもない…古本も買えそうにない…。そこで、布団の中でツラツラ考え出したことでも、書き留めておくことにする。

私は小学生の時は非常に病弱で、よく高熱を出しては、学校を二日三日と休んでいた。親は共働きで家にはいなかったので、午前と午後に一回ずつ、団地の三階のおばさんが様子を見に来てくれたりしていた。だから熱に魘されながら、もっぱらひとりで過ごすことが多かったのだが、寂しかったり嫌な思い出と言う印象は持っていない。何故なら誰に気兼ねするでもなく、一日中本が、心置きなく読めたからである。まず午前十時くらいまではNHK教育テレビの子供番組を視聴し、その後は学校を休んだ背徳感に襲われながらの、ひたすらの読書読書読書!しかも読んでいたのは、団地上階のお兄さんからお下がりとして受け継いだ、ポプラ社の乱歩本と偕成社のホームズ本であった。つまり一日中、焼跡の残る東京や一度も行ったことのない霧深い倫敦での、怪盗の暗躍や殺人などにうつつを抜かし、エヘラエヘラ過ごしていたのである。今日は三冊も読んだぞ!と、もう話の筋もトリックも知っているはずなのに、繰り返し同じ本を読み続ける、愚かな熱を出した小学生…。そんな風邪っぴき小学生だが、いつまでも寝ても覚めても二十面相と言っているわけはなく、ある日、ロフティングの『ドリトル先生』シリーズに出会ったことにより、さらなる読書の楽しさに開眼してしまう。恐らく最初は四年生の時に学級文庫で出会った「ドリトル先生の郵便局」だったと思うが、とにかく動物と話せる(動物語を勉強して理解している)特殊能力に羨望を覚え、話せる故そして医者故に、動物たちから頼りにされての不思議な世界治療旅行に、あっけなく魅せられてしまったのである。学級文庫にはその一冊しかなかったが、学校図書館にはシリーズ本が何冊か置かれていたので、次々と借りて貪るように読んだことを良く覚えている。さぁ、こうなってくると、当然その本が欲しくなる。いつでも好きな時に読めるように、手元に置いておきたくなってくる。だが確か一冊千円前後していたので、小遣いでおいそれと買える代物ではない。だからまずはクリスマスプレゼントとしての、長期的な計画で入手を目論んだのである。それまでは学研のひみつシリーズや漫画や玩具などが主たるプレゼントだったのだが、それがいきなりまともな児童文学本を欲しがったので、親もさぞかし驚いたことであろう。辛抱強く待ち続けた12月24日に、プレゼントしてもらうのではなく、お金をもらって自分で町の本屋へ向かった。団地の商店街の小さな本屋の片隅には、児童文学のコーナーがちゃんとあり、上の方の棚の一列を、岩波書店『ドリトル先生』シリーズの箱入り本が占めていた。怪獣や怪人やロボットや二十面相から一歩離れたことを生意気に意識しつつ(決して卒業したわけではないのだ…)、その優等生的に幸福な並びを背伸びして眺め、悩みに悩んで選んだのは「ドリトル先生と秘密の湖」…シリーズ内でも一番の厚みを誇る、ノアの方舟や進化論を搦めた、ちょっと難解な大作である。何故これを選んだのか…それはやはり厚かったからであろう。その大きな物体に、ページに広がる未知の世界と深い物語を感じ取り、選択したのであろう。しかも、文庫や図書館では無かった、箱が本には付いていたのである。

箱入り本は、子供からすれば高級な本である。もっとも児童文学の箱は、いわゆる函ではなく、ボール紙を太いホチキスで留めただけの、薄っぺらなものではあるが、それは、自分が良い本を読んでいるという優越感に浸れる、単純で幸福な装置であった。おおよその物語を感じさせる四角い物体から、丸い背を紙の匂いとともにスッと抜き出し、箱と違った絵が描かれた、読むべき本に変化した物体を展開。見返し→口絵→目次と通過して、やがて物体から離れた、印刷された文字が脳内に投影する物語に、ひたすら没入して行く、その行為。この紙の装置による厳かな儀式が、自分は今、本を読んでいる!頭が良くなるはずの、本を読んでいる!という、誰に対してなのかも判然としない優越性と、その幸福性に陶然と酔い痴れる時間を、創り出してくれていたのである。さらに読書を中断し、再び箱に収めて物語を閉じる決意と達成感が、静かなファンファーレとして、己を褒めそやしていたのである。また箱入り本は、単純に親受けもよく、ひょんなことから気まぐれに買ってもらえるということも、多かった気がする。あぁ、本好きの子供としては、これを幸福と言わずに何と言おう。

布団の中でそんな思い出に浸りながら、ちょっと起き上がって家中に散在していた箱入り児童文学本を集めてみる。悲しいことに、それはすべて大人になって買った古本ばかりであったが、こうして並べると、前述のもはや薄れてしまった幸福性が、そこはかとなく、懐かしく立ち上がってくる気がする。それにしても、やはりこの物質感は、迫力あるな。箱はまるで、勢いのある物語が弾け飛ばないよう、キュッと固めて、拘束しているみたいだ。
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そして、そろそろ発売になる、22号で惜しまれながら終刊となる「BOOK5」連載『古本屋ツアー・イン・ドリーム』最終回は、伝説の白山上の「南天堂書房」を訪ねております。巻頭のアンケートとともにお楽しみいただければ幸いです!
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2016年12月15日

12/15車窓に流れた「一信堂書店」最後の繁盛の勇姿!

先日買った藤子不二雄「二人で少年漫画ばかり描いてきた」を楽しく読み進めているのだが、途中意外な人物の名を文中に見つけてしまい、驚いてしまった。ある一ページに、絵物語全盛期の昭和二十八年の芸能者(ここでは絵描き・挿絵画家・漫画家など)の課税番付が、表で掲載されている。
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一位が「少年ケニヤ」などの山川惣治で、二位が挿絵の大家「岩田専太郎」。他横山泰三や清水崑や小松崎茂などが続き、漫画家の手塚治虫はまだ十位に留まっている。ところがなんと九位には、花森安治の名があるではないか!「暮しの手帖」のイメージばかりが先行しがちだが、それだけ装釘・挿画やカットなどの仕事を、驚異的にこなしていた証と言えよう。それにしても、恐ろしく稼いでたいんだなと、あまりスポットの当たらぬ金銭的一面を見出したことに、読書する喜びをじんわりと実感する。

そして今日十二月十五日は、練馬「一信堂書店」閉店の日(2016/10/26参照)なので、様子を見がてら最後の古本を買いに行くことにする。関東バスに乗り込んで中村橋に向かい、西武池袋線で練馬駅下車。二階東側の改札を抜けると、エスカレーター脇に大きな「一信堂書店」の看板があり、そこにもすでに閉店のお知らせが貼り出されていた。
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南口に出て、消防署の前を通過してお店にたどり着くと、店頭棚には何人かの人が張り付いている。おっ!店内にも各通路&スペースに二三人の人の姿があり、寂しくも賑やかな営業最終日の花道を歩んでいる真っ最中!棚にまだ本はしこたま並んでおり、以前の営業時からそれほど変わっていない模様。だが、通路のそこかしこに、見慣れぬ質の良さげな古書の古本タワーが出現しているので、そこを集中的にチェックして行くことに決める。しゃがみ込んで覗き込んで、時たま本を移動させたりして、一冊一冊書名をチェックする…このお店で、こんなにアグレッシブに血眼になるのは、初めてだな。値段の付いてないものが散見されるが、これは帳場で勇気を持って値を聞くことにしよう。ご婦人の座る帳場では、精算するお客さんがそれぞれに、労いつつお礼を述べているので、タイミングを見計らって本を差し出す。「これ値段が付いていないんですが…」するとご婦人はインターホンで、階上の店主を呼び出してくれた。すぐさまワイルドな店主が現れ、パラパラと本を観察…「こっちは1500でこっちは500」と、己の知識と勘と心意気だけで、値を即座に叩き出してくれた。「いただきます!」と快く了承し、最後の精算に入る。光文社文庫「少年探偵手帳/串間努」日新閣「燈影奇談/村松梢風」(函ナシ。大正九年刊の怪談奇談集)信濃郷土史刊行會「信濃怪奇傳説集 全」を二割引の計1620円で購入する。駅に戻ってバスに乗り込むと、高架下を潜って消防署の通りに曲がり込み、車窓には別れたばかりの一信堂が流れて行く。壁棚の前には、さっきよりたくさんの人。これで練馬駅近辺からは、純粋な古本屋さんは、ついに姿を消してしまうのだ。こんな眺めは、もしかしたらここいらでは二度と見られなくなるのかもしれない。そんな絶望と、もしかしたら誰かが何処かで小さな古本屋さんを始めるかもしれないじゃないかという微かな希望を胸に抱えて、バスは青い排ガスをを吐き出し、練馬をブルブル離れて行く。

※お知らせ
昨日より、「夏の古書市」(2016/09/01参照)や関西トークツアー(2016/11/13参照)でお世話になった、大阪の『梅田蔦屋書店』にて『古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也のお蔵出しフェア』が、ひっそりと華々しくスタートしました。実は細々と販売され続けていた「夏の古書市」の残りに加え、新たに厳選した古本百冊強を迷惑にも送りつけ、壁棚を占領する勢いで展開していただいております!今年盛大に世話になった関西で、ちょっと大きな古本市を開けるのは、望外の幸せであります!ミステリ・文学・映画・漫画・美術・建築・おかしな本・雑本を中心に、フレッシュな並びを見せているはずなので、どうか西のみなさま、『ルクア イーレ』九階まで足を運び、競技場型書店片隅のカフェ『4thラウンジ』の超絶分かり難い壁面にどうにかたどり着き、周りの賑わいをものともせずに、古書の世界に耽溺していただければ!
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近日中にさらにフレッシュな新ネタも投入しますので、同居する新刊書の『古本屋ツアー』シリーズ単行本ともに、よろしくお願いいたします。
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2016年12月14日

12/14非情の買取を江見水蔭が吹き飛ばす!

昨日西荻窪から持ち帰った本の中には、レアなプロレス本が含まれていた。レアであるが、やはりあの古本市ではちょっと筋違いなジャンルだったので、売れ残ったのであろう。すでに読了済みの本であり、さほどプロレス本に執着はしていないので、そのまま盛林堂さんに買い取ってもらっても良かったのだが、そこはセコい欲が働き、専門店の方が高く買い取ってくれるに違いないと考え、本日某格闘技系専門店に赴く。帳場で「買取をお願いします」と声をかけて五冊の本を渡すと「しばらくお待ちください」と査定に入る。新書サイズの、相場が四千円の本が三冊、一万円前後の本が一冊、そして千円ほどが一冊…という布陣である。まぁだいたい売値の二割〜三割と考え、四〜五千円くらいであろうかと、捕らぬ狸の皮算用。店内の棚に目を凝らすと、持ち込んだ本と同じ本が並んでいたので値を見てみると、ちゃんと四千円の値段が付けられている。マニアックな本に、正当な値を付けているなら安心だと、大船に乗ったつもりで待ち続ける。だが「買取お待ちのお客様」と呼び出され帳場に向かうと、告げられた値は合計で1900円であった…予想の半分以下…だいたい売値の一割…な、なんという非情な買取なのか!派手に意気消沈しながらも、さらに他店に持ち込んで査定してもらうのは面倒くさかったので、このまま本を手放すことにする。どうか、探し求めている人に、無事に買われるんだよ…。

すっかり気持ちを腐らせながら神保町入りし、こうなったら今受け取った金で、古本を買ってやる!と小さく息巻いて店頭を覗き込み始める。店頭の右がまだ雨仕様の「丸沼書店」(2009/12/17参照)では有光書房「偏奇館閨中写影/亀山巌」を500円で購入する…これで残りは1400円。ズンズン通りを進んでこちらも未だ雨仕様の「日本書房」(2011/08/24参照)店頭木製ワゴンを吟味しつつ、店内右側通路に進んで格納された柔々和本ツインタワーに丁寧に挑みかかる。すると、左側タワーの中ほどに、分厚いしっかりした小型本が一冊(押川春浪「海底軍艦」と同サイズ)…取り出してみると「避暑の友」とあり、モノクロ写真グラビアページと三十編近い小説、超短篇的小品が三十編ほど、それに時代小説や雑文が十編ほどの構成となっている。中には奇談怪談系が多く含まれており、読み応えが…ありゃ!これ書いたの江見水蔭じゃないか!そう気づいた瞬間に、すべての憂さは神保町の果てまで吹っ飛んで行った。これは、読むのがハチャメチャに楽しみだぞ!と帳場に向かい、博文館「短編小説 避暑の友/江見水蔭」を500円で購入する…これで残りは900円。通りをスイスイ足取り軽く南に下り、今日は妙に古い文庫の多い「神田書房」(2012/02/16参照)で角川文庫「銃器店にて/中井英夫」籾山書店「春泥研究會句抄」(小村雪岱装幀!)を100円で購入する…これで残り800円。最後に『神保町交差点』を経由して『神田古書センタービル』前の「みわ書房」外売り(2013/01/18参照)で、新太陽社「連續探偵小説 詩と暗號/木々高太郎」(初版)を840円で購入する…40円オーバーだが、まぁいいか。
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今日の嬉しい収穫二冊。そして「避暑の友」には、東京の作家陣が神奈川の片瀬にある江見水蔭宅を訪れ、大騒ぎする顛末が綴られた一遍があるのだが、なんとその時の記念写真がグラビアに掲載されているのだ!
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左上から江見水蔭・巌谷小波、二列目が左から泉鏡花・石橋思案・小栗風葉、最前列が左から柳川春葉・尾崎紅葉・広津柳浪となっている。一部メンバーも参加する、もはや仮装大会の『怪談百物語』ダイジェストが、愉快愉快のどひゃっほうである。
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2016年12月13日

12/13京浜東北線で小さな箱をたどる

足を引き摺り、午前十時過ぎの寒い西荻窪。『銀盛会館』に赴き、古本市で売れ残った本の整理に従事する。持ち帰る分、再販売する分、手放す分にスパパパと仕分け、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏に査定してもらった後、小さなリヤカーでお店まで本を運び、まずは「フォニャルフ」をドバドバ補充入れ替えする。その後に「古本屋ツアー・イン・京阪神」に識語署名捺印。いよいよ盛林堂では残り六冊となりましたので、未入手のみなさま、何とぞよろしくお願いいたします!重い本を手に提げ背負ってお店を出て、西荻窪駅のホームに立った瞬間、日曜夜の打ち上げ後に酔っ払いながら、唐突に『あらしの白ばと會』を結成したことを思い出す。何をする會なのかまったく考えていない上に、本当に結成されたのか定かではないのだが、入会条件だけはとても厳しく、偕成社版「あらしの白鳩」を所持しているかどうかということになっている。しかし、結成を宣言し入会者を募ると、その場にいた四人が早速手を挙げてしまう…おかしい、まるで「あらしの白鳩」が、そこらの100均棚に転がっているかのようではないか…。こうなったらもうひとつ厳しい条件として、『白ばと組の歌』を歌えるというのはどうであろうか。盛林堂版編者の芦辺拓氏がそらで歌える(楽譜も存在するので、再現演奏してもらい覚えたそうである)ので、今度伝授していただこう。そんな他愛もないことを考え続けて古本の重さをごまかし、一旦家に戻って荷を下ろす。

午後に再び外出し、雨が降り出す前にと大森駅へ急いで向かう。東口に出て外階段を南に下り、さらに南へ進むと、二車線が仕切られた低空ガードとアーケード商店街『Milpa』が向かい合う異種交差点。東の『Milpa』に入り、すぐの脇道から南に出ると、歓楽街の裏通りといった雰囲気。そこを五十メートルほど進めば、右手に新しいお酒とお食事のお店「柴猫軒」が現れた。
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ここの店頭で小さな古本市が開かれているらしいのだが…恐る恐る入口に近付き、開店祝の花が置かれた辺りに視線を注ぐ。おっ、108均の古本箱を無事発見。だが中を覗き込むと、桜木紫乃・ムーミンシリーズ・伊集院静などの新しめの文庫が、十冊ほど並んでいるだけであった…ぬぬぬっと十五秒ほど凝視するが、どうしても手が伸びない…す、すみません、今回は、何も買えません!と懸命に詫びながら、お店から即座に離脱してしまう。だがその箱に貼付けられた『大森でもっと古本市をひらこう!』と書かれた小さくソフトなアジビラに、本への熱い愛を秘かに感じ取る。そのまま街中を南に下り「アート文庫」を一応確認してみるも、いつも通りのシャッターを下ろした姿であった…あぁ、俺は多分ここには、一生は入れないのかもしれない。すぐさま西に向かって踏切を渡り、商店街を遡上して「松村書店」(2009/09/25参照)に到着し、その煤けていじらしい店頭にホンワカ心を和ませる。値付中のおばさま店主に「いらっしゃいませ」と声をかけられ、ゆっくり極狭店内を四歩で制圧。池田書店「映画入門/双葉十三郎」雄鶏社「戀愛古事記/神崎清」日本文芸社「実録・女刺青師匠/彫純こと松島純子」を計450円で購入する。商店街に響き渡る霧笛のような時報を聞きながら駅に戻り、一駅南に進んで蒲田駅下車。まずは駅前の「一方堂書林」(2009/08/13参照)に飛び込み、早川書房「BAR酔虎伝/酒口風太郎」を700円で購入し、西の京急駅方面にどんどん雲が厚くなる空の下を、急いで向かう。アーケード商店街『京急蒲田あすと』に潜り込み、タレコミで店頭で一箱の古本が売られている洋品店を目指すが、残念ながら目的の古本は販売されていなかった…元々気まぐれな販売らしかったので、ちょっと時間の経ってしまった今、存在せぬのもむべなるかな…。あっさりと諦めて、アーケード中ほどにある中古ビデオ店と中古DVD店の間にある、おおらか過ぎる100均古本棚(店名不明)を見に行くことにする。
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…最近のコミックと、ちょっと前のエンタメ本ばかり…いや、何も買えないのは、とうに分かっていたのだ。でもどうにかして、店頭で小さく古本をささやかにひさぐお店を、京浜東北線上で、つなぎたかったのだ。だから、今日も古本を売ってくれていて、ありがとう…やっぱり買えないけど…。
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2016年12月12日

12/12東京・吉祥寺 さまよえる「ART BOOK BAZAR」

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朝、不注意からガスファンヒーターに左足爪先を強打し、「けぇ〜〜〜〜〜〜ん!」と上げたことのない叫び声を上げて、三十秒ほどうずくまる。どうにか痛みが去り、足指に力を入れてみると動くので、骨折はしていないようだ。それでも痛いことにかわりはないのだが、この程度なら大丈夫だろうと外出する。十二月のイベントが終わったので、日常に戻り荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)へテクテク向かう…だが、やはり左足中指が痛むな…この容態だと、長距離を歩くのは控えた方が良いだろうと、駐日ソ連通商代表映画部「ソビエト映画のすべて」土屋書店「日本の滝《東日本編》/佐藤安志」山梨シルクセンター出版部「うつむく青年/谷川俊太郎」(初版帯付き)を計315円で購入し、すぐさま電車に乗って吉祥寺へ。北口の『吉祥寺PARCO』に入り込むと、当然の如くクリスマス一色な、激しくきらびやかな店内である。エスカレーターを折り返し折り返し上がり、七階フロアに到着すると、以前は地下で開かれていたはずの古本市が、白枠ガラスの向こうで、静止写真のように静かに開催されていた。この市は、以前は池袋や渋谷で開かれ、ついに吉祥寺にたどり着いたのだが(2015/10/22参照)、ここでもまだ彷徨うように、移動を余儀なくされているのか…。閑散としてだだっ広い洋書バーゲン売場を経由して、右の角地に面した小部屋に進入する。ワゴンと木箱とプラ箱で形作られた空間である。中央台を中心に、壁際のワゴンと窓際の箱を見ることが出来る、短い一本きりの回遊通路。芸術雑誌&芸術ムック・洋書写真集・洋書絵本・アートブック・マッチラベル・絵本箱・「ミステリマガジン」箱・「かいけつゾロリ」箱・女性&子供実用…右側通路を進み、大判の本がほとんどなのを認識する。だが左側通路に進むと、嬉しいことに普通サイズの単行本も顔を出す。児童文学・漫画関連・幻想文学・落語・江戸風俗・役者・芸人・東京・映画・映画美術関連新書&文庫などなど。「文紀堂書店」(2015/03/13参照)と「古書明日」が『アートブック』という括りを多少無視しているようで、なかなかに頼もしい。毎日新聞社「二人で少年漫画ばかり描いてきた/藤子不二雄」を、バーゲン会場のレジにて精算。これが帯付きで千円とは、嬉しい拾い物である。バザールは今月25日まで。サッサと家に帰って痛む足指を観察してみると、派手にアザになっており、どうやら捻挫している模様…いや、突き指というのが、この場合正解か…。
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2016年12月11日

12/11東京・根津 あおば堂

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古本屋さんに対する抑え切れない情熱を、一風変わった形でゴウゴウ燃やしている「ひな菊の古本」さんからのタレコミにより、根津に新しいお店が出来たことを知る。昨日盛況だった古本市+トーク(お越しいただいたみなさま、毎度コンビを務めていただいた岡崎武志さま、そして主催の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)と『西荻ブックマーク』スタッフのみなさまに、心より感謝いたします!)の心地良い余韻と疲労を纏いながら、家を出る。駅に向かう途中「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に吸い寄せられ、国書刊行会「定本 何かが空を飛んでいる/稲生平太郎」(献呈署名入り。二年前に行きたくて行けなかった『東京堂書店』トーク時のものであろうか。読み始めたら案の定止まらなくなってしまった…現実と歴史の中に潜む隠秘学的世界を、輝ける理知のメスで生きたまま解剖する稲生平太郎は、やはり面白い!)岩波文庫「摘録 劉生日記/岸田劉生」「鏑木清方随筆集」を計2163円で購入する。…昨日あれだけ本を売って減らしたのに、早速三冊も増やしてしまった…。そして仕入れていただいた「古本屋ツアー・イン・京阪神」がついに売り切れたことを喜びつつ、オマケに商店街配布のキッチンペーパーをいただき、ようやく改めて駅へと向かう。電車を乗り継ぎ目的駅で下車し、『根津交差点方面改札』から強風に巻かれて地上に出ると、緩やかな谷底の街の上部に、白く日が当たっている。目の前の交差点から『言問通り』を北東に向かう。強い日射しに目を細める人々と擦れ違い、歩くほどに角度を増す『善光寺坂』をグイグイ上まで上がり切る。『谷中六丁目交差点』を通過すると、『デニーズ』向かいの新築小ビル一階に、スッキリした明るいお店がポカッと開店していた。表には店内で開かれている個展の立看板と、足の長い100均&300均箱。扉を開けて中に進むと、新しい木の匂いが漂う、こじんまりとした空間。右壁に四×八のボックス棚、入口左横にはディスプレイ棚。左壁は上部がギャラリースペースとして空けてあり、下に二×五のボックス棚が設置されている。フロア中央には個展主の着いたテーブルがあり、奥右側に帳場スペース。そこにはカジュアルな奥さま店主が座り、個展主と歓談中である。その左側にある、大きな白布で覆われた物体は、いったい何であろうか…未整理本だろうか?右壁にはハリーポッターシリーズ・猫・洋書・柳原白蓮・般若心経・本・書店・ビジネス・女性実用・自己啓発・社会・文学・塩野七生・「蟲師」など。左のボックス棚は、絵本・開店セール300均文庫・コミック・新刊となっている。ほぼ最近の本で固められ、量もそれほど多くはないのだが、値段が安めで実用系の本に強いこだわりが感じられる。これは古書店としてだけではなく、ショップカード裏に刷られた『コントラクトブリッジ教室』『プレゼン教室』『英文購読会』『速読教室』『読書会』などが関係しているのではないだろうか。集英社「タイタニックは沈められた/ロビン・ガーディナー&ダン・ヴァンダー・ヴァット」を購入し、捧げ持つトレイに丁寧に並べられた十枚弱のお釣りコインを摘み取りながら、ささやかな開店祝とする。それにしても、2016年の谷根千地帯の古本屋さん開店ラッシュは、とてもとても素晴らしかった。

お店を出て来た道を戻り、今度は自分が目を細めて坂を下って谷底に至り、そのまま『言問通り』を南西に歩き続けて、『弥生坂』の「緑の本棚」(2016/02/13参照)に立ち寄る。表で植物と混ざり合うようにして増殖した100均箱をのぞき込んでから、中へ。入口周りに小さな棚が増え、古本屋感が増している。ナカザワ「アルプス妖怪秘録/山田野理夫」を700円で購入すると、壁面の展示を観るよう店主に勧められる。…それは、多肉植物と海の生物が優雅に違和感なく融合したイラスト…聞けば海洋大学に通う娘さんに、『多肉植物』をテーマに描いてもらったら、こんな不思議な作品が生まれたとのこと…あぁ!前は多肉植物を食べさせられたが、今回は多肉植物イラストを観せられた!多肉植物ゴリ押しの揺るがぬ姿勢に、呆れながらも大いに感心する。
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