2017年02月05日

2/5東京・新宿 ホホホ座 at BEAMS JAPAN

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野暮用で横浜方面の実家に里帰りし、夜になって東横線で帰京する。東横線に乗り続けて渋谷駅を通過し、電車が各駅の副都心線に成り代わった後に、午後七時前の『新宿三丁目駅』で下車したところで、昨日から京都の「ホホホ座」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」P45参照)が『新宿丸井本館』裏の『BEAMS JAPAN』にて、3/5までの期間限定ショップを開いているのを思い出す。果たして古本が売っているかどうか定かではないが、念のため足を運んでみるかと『A2出口』から丸井前に出て、『明治通り』からその裏側に回り込み、若者で賑わいを見せるガラス張りの『BEAMS JAPAN』ビル前。通り側のウィンドウには、路面電車・嵐電が写る大きなポスターが貼り出され、横にはコラボショップのロゴマーク。そのガラスの向こうには、商品を品定めする、お洒落な若者たちの楽しそうな顔・顔・顔。角面の入口から中に入ると、異様にジャポニズムを意識した、モダンシンプル和匠な空間。入口近くのウィンドウ際には、ホホホ座がセレクトした独特な京都商品や雑貨・ZINEなどが集められ、ほぼ若者のためのニューウェイブなミニ京都が出現中。入口右側のカフェスペース前には、三方(切腹するときお尻を乗せるやつ)が巨大化して重層化したような台があり、京都の銘菓や新刊本などが並べられている。その裏側に回り込むと、おっ!三十冊ほどだが古本がちゃんと並んでいるではないか。すべては京都に関する本で、歴史・史蹟・寺社・人間・風土・祭事・庭・文化財・動物園などなど。値段はほとんどが千円以下で、リーズナブルな印象である。下の段には「月刊京都」というローカル雑誌が、三十冊ほど横積みされている。ふむふむと一冊選び、奥の全国を象徴的記号的に並列化したようなジャポニズム商品を集めた棚にぐるりと囲まれた、奇妙な神殿的レジで精算をしようとすると、お客をひとりずつ、丁寧過ぎる過剰な接待&包装を施しているので、大いに神殿外で待たされてしまう。京都新聞社「京都 滋賀 秘められた史跡」(京都と滋賀がワンセットになっているコンセプトがワンダフル!)を購入し、ホホホ座作製の『ホホホ座の考える京都エリア地図』も手に入れる。レジ待ちで瞬時にちょっと疲れてしまったが、古本をちゃんと売ってくれていて、本当に良かった…。
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2017年02月04日

2/4夜の「バサラブックス」で一日の疲れを癒す

日中を吉祥寺近辺で仕事して過ごす。気づけばすっかり夜となり、疲れた身体から気力を絞り出してズルズルと歩み、週末の賑わいを見せる駅周辺にたどり着く。すると突如、古本が買いたくなり、中央線高架南側に出て、ついこの間訪ねたばかりだが、棚の印象がすこぶる良かった「バサラブックス」(2015/03/28参照)に立ち寄り、己を慰めることにする。
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三角形の店内に入り、集中力をすっかり欠いたまま、棚に漫然と視線を注ぐ。河出文庫「贋作吾輩は猫である/内田百閨v洋泉社「ボンクラ映画魂/杉作J太郎」「幻の怪談映画を追って/山田誠一」を計1600円で購入し、お店のオリジナルプラ袋に三冊を入れてもらい(結婚式を迎えた花婿&花嫁の間に天上への階段が伸び上がるシュールなイラスト。こんなのあったんだ)、フラフラと帰路に着く。

もうこの『映画秘宝コレクション』の単行本1と3を、私は何冊買ったことだろうか。ともにもう二十年前の本なのだが、未だにこの二冊は、我が心の中に作るべき本のバイブルとして、燦然と輝いているのだ。片や東映映画出演男優の極私的&偏執的エンサイクロペディア(後に徳間書店からA5版の増補本として復刻されるが、本としては断然こちらの方が素敵なのである)で、片や大蔵映画や新東宝の怪談映画をマニアックに追跡したノンフィクション。この人たちが取り上げなければ、きっと時代の片隅に永遠に忘れ去られたであろう人や事柄についての集積が、見事な本になっているのである。己の独自の視点で、まさにその己にしかまとめえない仕事…いつか、いつの日か、この二冊に比肩する本を作ってみたいと、常に目指し願っているのである。だがやはり、その道のりは、まだまだ果てしなく険しく遠い…。
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2017年02月03日

2/3「雲波」復活!久米元一!! 中川信夫!!!

昨年店主の急逝により、休店を余儀なくされていた国分寺の「古本 雲波」(014/09/05参照)が、いよいよ本日から奥さまが店を継がれ、再始動!新たなるお店の門出を目撃するために、中央線で西へ。巨大タワーマンション建築の槌音が響く北口を抜け、商店街を通って『国分寺街道』の坂道に出る。北にグイグイと向かい、ベーグル屋の前を通り、右手前方に今日も「才谷屋書店」(2012/05/07参照)が開いていないのを確認すると、青い日除けの下の「雲波」は、以前と同じ姿で営業中であった。
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均一壁棚を眺めてから店内に上がり込むと、すでに先客が三人ほど。恐らく本日の再開を待ち望んでいた方々ではないだろうか。棚には変わりなく本が詰まり、安値で良書を並べていた雲波らしさを保持している。つまりは、左側の絵本や児童文学関連(絶版漫画が繁殖中…)以外は、元のままなのである。だがこれからは、奥さまが棚を整理したり補充したり買取したりして、古本屋を営んで行くことにより、ゆっくりゆるゆると変化し続け、新たな雲波の展開を見せて行くのだろう。それにしても、いつの間にか店内には、本棚や床板の木の香りではなく、古本の匂いが満ち満ちている。…う〜む、とても良い香りだ…。じっくりと店内を一周している間に、先客はみな古本を買っていく。奥さまは活版印刷について聞かれたり、「これからもう、ずっと開いてるの?」などと聞かれたりしながら、新たな営業日と営業時間を伝えている(12:30〜19:00で金土日月営業。夏休み&冬休みあり)。くさぶえ文庫「子どものための科学の本/吉村証子」毎日新聞社「餓鬼一匹/山中恒」を計650円で購入し、新たな門出をささやかに祝う。

再び中央線の人となって、西荻窪下車。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に立ち寄り「フォニャルフ」に補充する。すると同じ「古本ナイアガラ」の「本棚探偵のひとたな書房」が、入替補充したばかりなのにもはやスカスカになっている、背筋も凍る状況が目に留まる。だが!スカスカでもそこには、素晴らしき本がナナメになりつつも、まだ並んでいた!偕成社「白髪鬼/久米元一」である!貸本仕様で、落書き(文字の落書きで『ガンテツ』『くそたれ』『ニクリロ』などの言葉が見返しに書かれている)はあるが、それでもカバーはキレイだし、見返しがテープで補強してあり、糸かがりされているとは言え、本文ページはいたってまとも。それが値段を見ると、何と2000円なのである!本棚探偵に膝を屈するように、購入を決意する。聞けば棚には同様のジュニア探偵小説が並んでいたそうだが、二人の古本神が神速でかっさらっていったとのこと。ところがこの「白髪鬼」は、神たちがすでに所持していると言う理由で、奇跡的に残されていたのであった。
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というわけでお店に許可を採り、本棚探偵棚札とともに、喜び悶えながら記念撮影。

その後は帳場にて店主・小野氏と、仕事の打ち合わせや月末に予定している個人古本市(近日中に詳細発表いたします)の話をしていると、先日手伝った買取本が、整理も値付も終わって棚に並んでいるというので、より充実した映画棚を、わが子を見るように観察する。ところがその中の一冊に、おかしな気を感じ取る。映画監督・中川信夫の詩集?中川信夫が詩集を出していた?思わず苦笑いしながら、その詩集を手にして開いてみると、途端に本扉裏に筆で書かれた識語署名が現れた。それを隣で見ていた小野氏が「あっ…」と微かな声を上げる。こちらも「これ…」と、思わず時間が停まる。値段は激安の千円なのだが、このまま購入してよいものか逡巡すると、小野氏は即座に覚悟を決め「いいよ、千円で。いいよ」と男気を見せてくれた。ありがとうございます!雑草社「中川信夫詩集 業(ごう)」を購入する。奥付を見てみると、発行所と著者である中川信夫の住所が一緒なので、ほぼ自費出版本であることが分かる。ビニカバが付いて、何故か小豆色と紺色の帯二種(表1表4のアオリやキャッチが異なる)が巻かれている。長らく絶版だったらしく(自費出版本だから当然か…)、2009年に『中川信夫偲ぶ会酒豆忌』により復刻されたことを後で知る。
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再び喜び悶えながら記念撮影。今日は何だか、素晴らしい古本日和であった。
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2017年02月01日

2/1小山清に喜び六本木に古本屋さんの幻を視る。

午前から細かい仕事に集中していたら、ムラムラと古本が買いたくなってしまい、キリの良いところで家を飛び出し、早足で開店直後の荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)に駆け付ける。店頭はそれほどでもないが、店内にはすでに多数の古本修羅の侵入を許してしまっている…。買うぞ買うぞと意気込んで、店頭で四冊を掴んでから店内文庫棚にベタづきする。どこかに動きはないものかと、一棚ごとに視線をゲーム『ドンキーコング』の樽のように左から右→一段下→右から左と走らせることを繰り返し、結構下方の“こ”のコーナーに小山清の文庫が二冊並んでいるのを発見する。共に新潮文庫の「落穂拾ひ・聖アンデルセン」なのだが、一冊は平成復刻版でカバーに汚れがあるため420円。あれ?こっちは…元パラ&白帯…ということはオリジナル版か!そっと手に取り奥付を見ると、昭和三十年十一月二十日の初版である!初めて古本屋さんで出会ったぞ!では値段は?最終ページに貼付けられた値段札を見ると、これが525円!もちろん遠慮会釈なく買わさせてもらいます。今日もありがとう、「ささま書店」!桃源社「黄金バット 天空の魔城 彗星ロケット/永松健夫」芳賀書店「破滅SF 破滅の日/福島正美編」未来社「すねこ・たんぱこ 第二集 岩手の昔話/平野直編」大陸書房「日本の妖怪/早川純夫」山と渓谷社「現代の探検 創刊号」等とともに計1365円で購入する。
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喜びを記録しておくために、向かい側の歩道からお店とともに記念撮影。

満足したのでスタスタ家に戻り、しばらく真面目に仕事する。午後に再び外出し、先日の古本神と古本魔神の響宴に参加した折に耳にした、六本木にあった「竦書店誠志堂」(2008/12/16参照)が秘かにビル階上で営業しているらしいという情報を確かめに行く。深い深い大江戸線ホームから地上の『六本木交差点』に脱出し、早速交差点近くの古本屋さんのあったビルを見に行く。ビル入口や壁面には、店舗については何も情報が出ていない。だが、細く昭和の通路に踏み込み、ビルの案内板に目を凝らすと、五階部分に「竦書店誠志堂」の表示があるではないか。せっかくここまで来たんだ。とりあえずエレベーターで向かってみようと、通路奥のこれまた昭和なカゴに乗り込んで上階へ。扉が開くと、静かで人の気配はない。階段室から左側の通路の様子をうかがうと、奥に確かに古本屋さんが存在していた。
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壁に立て掛けられているのは、何処かで使っていた看板を外し、そのまま使用しているようだ。でもやっぱり、これは明らかに事務所店である。常連さんや、予約をしてから入店するのが、正しい作法であろう。忍び足でエレベータに引き返し、階下へ。

せっかくここまで来たので、歩いて渋谷方面を目指し、『宮益坂』上の古本屋さんを観測して行くことにする。交差点近くの『六本木通り』は、街にも道行く人にも生活感はにじんでおらず、ただリッチでハイソなライフスタイルの潤いのみに満ちあふれている。北側の歩道を西に歩いて行くと、首都高越しにかろうじて日光が降り注ぎ、少しだけ暖か。テクテクテクテク大都会を、蟻になった気分で歩き詰め、結構急な『霞坂』を下れば、そこが西麻布。谷底から、これも角度のきつい急坂を上がってさらに西に進み、化粧品広告ばかりがディスプレイされた『富士フィルム』ビル前を過ぎ、およそ一キロの『骨董通り』に入り込む。途中、現代的なビル一階に小さな本屋があるのに気付き、いそいそと近付いてみると、「BIBLE HOUSE」という、多種多様な聖書を集めて販売しているお店であった。そして七車線の『青山通り』を渡り、左に『青山学院大学』キャンパスを臨みながら渋谷方面に進んで行くと、まずは「巽堂書店」(2008/07/04参照)が出現。いつもとは逆のルートなので、なんかちょっと新鮮なアプローチである。牧神社「鳥葬 梅原彬暉詩集」講談社「燃える薔薇/中村真一郎」(函ナシ)能登印刷出版部「ふるさと文学探訪 鏡花・秋声・犀星」日本出版協同株式会社「ミッキー・スピレーン選集3 復讐は俺の手に」(元パラ帯付きで、帯文と解説は大下宇陀児である)を計400円で購入。続いて「中村書店」(2008/07/24参照)に飛び込み、角川文庫「JAMJAM日記/殿山泰司」朝日文庫「魔都/久生十蘭」を計830円で購入する。後は『宮益坂』をグングン下り、人が渦巻く谷底の駅へと向かう。
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2017年01月31日

1/31東京・下北沢 古書明日

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様々な方から「何故初日にちゃんと行かないんだ」とお叱りの言葉をいただいていた、元々都立大学にあった時々入れる事務所店(2013/01/22参照)の新実店舗に、冷たい風に巻かれながら駆け付ける。北口に出ると、仮改札はいつの間にやら北東に向いており、目の前はフェンスに囲まれた味気ないアスファルトの広場になっている。かろうじて懐かしい面影を残す『下北沢北口駅前食品市場』の無惨な残滓を横目に見ながら、狭く賑わう商店街を北東に進む。途中鍵の手に曲がりつつ、さらに歩き続けて短い坂を下ると、目前の小ビル二階に「CLARIS BOOKS」(2013/12/01参照)の強い明かりが輝く『下北沢一番街』である。緩い坂道の商店街を東南に下り、『茶沢通り』とつながる元小田急線踏切を目指して歩いて行く。すると左手の、ついこの間まで下北沢老舗の「白樺書院」(2016/12/23参照)が入っていた店舗に、カラフルな立花に祝されている古本屋さんが、すでに誕生していた。おぉ!出入口が、左右二ヶ所になっている!店頭ワゴンには木箱が所々はめ込まれ、100均文庫・安売本・変な新書・猫本などが並び、茶色く古い本が紛れ込んでいるのが特徴的。ガラス扉には店名含め、お店の情報が貼り出されているが、それはすべて半紙に墨で柔っと書かれている。左側から中に入ると、正面奥が帳場となっているのだが、白樺時代とずいぶん違い、後がぶち抜かれ、すっきりと広くなった印象である。その帳場には昭和の雰囲気をたおやかにまとう女性が店番中。左右の両壁は本棚で、左奥壁も本棚。そして真ん中に背中合わせの棚が一本立ち、すべての棚下に低めの平台が付属している。店内には、香水なのか花の香りなのか、古本屋さんにはあまり似合わぬ香しき匂いが漂っている…。左壁は新書サイズ本と文庫(大藪春彦多し)から始まり、少しカオス気味にサブカル・カルチャー・文学・社会・民俗学・近現代史・映画などが混ざり合い、続いて行く。平台は棚と近い並びで、単行本が背を見せて並んでいる。向かいは文庫棚で、講談社学術・岩波・ちくま・ハヤカワSFが幅を利かせ、平台にはちょっと古めのはみ出し文庫や、おかしな新書サイズ本が集まっている。右側通路へ移動すると、奥壁棚は民具や骨董・文学古書・歴史資料系古書・園芸古書がなどが集まり、一部は面陳となっている。右壁には映画・演芸・美術・思想・海外古典文学・西洋宗教が並び、下には紙物箱や雑誌や小冊子が置かれている。通路棚は、戦争・植民地・アジア・沖縄・東京・文学評論&評伝・大判本・図録類となっている。小さなお店である。そして結構な硬さを誇っている。まさか若者文化溢れる下北沢に、こんな硬めの正統派古本屋さんが誕生するとは、思ってもみなかった。新書・古書・紙物に奇妙なところがあり、どちらかと言うと軟派な私は、そこに惹き付けられてしまう。値段は普通。三井物産株式會社機械部「ライブラリ・ビウロウ 鋼鐵製書架 並ニ圖書館用品各種」大月書店「神奈川県の戦争遺跡/神奈川県歴史教育者協議会編」を購入する。凶暴インコはいないけど、店舗を引き継いで下さり勝手に感謝!そして開店おめでとうございます!

字面が物々しい「鋼鐵製書架」は恐らく昭和十年代の、米國ライブラリ・ビウロウ製造品の棚を中心とした商品カタログである。使用例の『大阪毎日新聞社圖書室』の写真や、強固で巨大な本棚やレミントンのタイプライターまでが掲載されている。中でもまるで巨大なビルディングのような『鋼鐵製カード凾』と青銅&ガラス製陳列箱の見開きページには、尋常ならざる魅力を感じてしまう。これはカッコいい!
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2017年01月30日

1/29「音羽館」の楽しくもハードな長い一日

まずは28日土曜日の話から。仕事を終えて午後六時半過ぎの中野に駆け付け、駅近くの居酒屋で古本怪気炎を上げまくっている、古本神&魔神であると同時にド級のミステリマニアたちの飲み会に、畏れ多くも参加させていただく。新保教授の難問、親指と人差し指で作る小さい丸に通るポケミスは存在するのか…答えは、マーガレット・ミラーの「狙った獣」が、驚くほどクナクナシナシナの軟体本で、キュキュッと丸めると容易に通ってしまうのである…こんなおかしな紙のポケミスが、存在していたとは…(ちなみに教授は、この本だけが特殊なのかと思い、もう一冊「狙った獣」を買ってみたところ、やはり同様にクナクナだったという)。さらに話は北原氏のホームズ狂に及ぶや否や、東京メトロのCMで、すぐ近くの『中野ブロードウェイ』を探索するホームズ姿の石原さとみポスターの話になったのだが、目の前の三人(新保博久氏・三橋暁氏・北原尚彦氏)の三人ともが、まったくその名を思い出せない事態に陥っていた!「ほら、あの『シン・ゴジラ』でアメリカ帰りの変な英語を話す女の子!」などと、名は思い出せないのに、イメージだけを共有し合い、納得しているのである。しかも何故かみんな笑顔で、とてつもなく楽しそうなのである。仕方なくヒントとして「石!」と一言叫ぶと、「あ〜!石原さとみだ!」と北原氏が満面喜悦で記憶を引きずり出すのに成功した。古本やミステリに関する話題は、即座に回路が直結するのに、疎いところは大いに疎い…全く持って愉快な方々である。楽しくビールを飲み過ぎたが、明日は西荻窪「音羽館」で一日バイトしなければ!と、遅れて来たのに早めに退散してしまう。
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明けて29日、西荻窪に向かう前に、道すがらの「J-house」(2015/12/26参照)に当然の如く立ち寄ると、むぅ、今日も古めの映画パンフが少々出ているではないか!と途端に色めきたち、急いで繰ってみる。すると「ウエストワールド」と「夜の大捜査線」に目が留まり、計200円で購入する。早速電車内でパンフを開いてみると、「夜の大捜査線」の方には様々な当時のものが、楽し気に挟み込まれているではないか。フランス映画のチラシ二種、吉祥寺東映のガリ版ニュース。中でも嬉しかったのは、「007カジノロワイヤル」(丸の内東宝)の三つ折りチラシである!すぐさま頭の中に、バート・バカラックのあの軽快な曲が流れ始める…今日は何だかいい日になりそうだ。

正午前に「音羽館」(2009/06/04参照)に到着すると、店はまだシャッターを下ろして沈黙しており、待っていたのは古本屋内装のエキスパートである中村敦夫氏だけであった。挨拶を交わしつつ、何故か去年の「七七舎」バイト時に続き、またまた頑丈な特製木箱をいただいてしまう。木箱の差し入れ…決して通常では体験出来ない、異常な出来事である…。そうこうするうちに、店主・広瀬氏が現れ、先輩バイト氏も自転車で颯爽と登場し、ついに長い長い「音羽館」の一日がスタートする。シャッターを上げ、まずは店の中から店頭棚や箱類を引きずり出し、開店準備が進められて行く。その間、私は店頭を掃き掃除し、その後店内の木床に掃除機を満遍なくかけるのを、初めての「音羽館」仕事とする。
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するとたちまち開店を待ちかねたお客さんが姿を見せ始め、半開店状態の店内を、鋭い目で容赦なく観察し、本を買って行く。その後もお客さんは、ひっきりなしに訪れ、分かっていたつもりなのだが、「音羽館」が凄まじい古本屋であることを、改めて思い知らされてしまう。いわゆる古本好きの方々も多いが、メインの客層は二十代〜三十代の男女なのである。そして100均だけではなく、惜しみなく高額の本を買う人もコンスタントに登場する。葱を提げた主婦も本を買って行く。このお店に寄らないと調子が狂うと言う方や、地方から訪ねて来た人も登場し、結局店内は、常に活気を見せているのである。そんな怒濤の営業時間の中、主に受け持った仕事は、広瀬氏が次々値付けする本を、店内と店頭に補充することであったが、これがキリなく間断なく継続し、営業中はずっとずっと果てしなく続くお仕事なのである、特に均一棚の補充は、入れても入れてもブランクが生まれて行く、恐るべき回転率を誇っていた(そして本を並べるところを間違うこと、多々あり。均一と店内を間違え、さらには店内でジャンルは何となく分かるも、微妙な本を何処に並べたらいいのか迷うことしきり。普段は偉そうに店内棚のジャンル分けなどをしているが、とても一筋縄では行かぬことに、お店というものの奥深さを切々と感じ取る…)。
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途中そんな作業をずっと続けながらも、外に出した買取本の山を、先輩バイト氏と連携プレイで見易く整理した上に、ちょっとこの中からすぐ棚に並べられそうな本と、100均に並べる本の選別作業をいきなり任され、面食らってしまう。
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だがその作業は当然の如く楽しく、軽く偉そうに疑似古本屋さん的気分を、充分に味わってしまう。「サヨナラだけが人生だ」や木村伊兵衛の戦後すぐの粗悪紙写真集「TOKYO FALL 1945」(ただいま驚異の7000円で販売中。ヒィ〜ッ!)などを見付けて、大いに興奮してしまう。選別したそれらを、すぐ値付けしてもらい店頭に並べると、「ミコのカロリーBOOK」や写真家・井上青龍の図録が瞬く間に売れたりして、小さな感動を体感する。その後は品出しを続けつつも、帳場で本のクリーニングにも従事。
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そこから次第に恐るべきレジ作業にも参加して、緊張しながら慎重に愚直に売買の基本を取り扱う。夕方十五分、夜に一時間の休憩を終えると、今日初めて、店内にお客さんが誰もいない一瞬が生まれる。その間に広瀬氏と古本屋さんについて大いに話し込む。高原書店時代や近所の過ぎ去っていた古本屋さんの話、新しく出来るお店の話、などなど。先輩バイト氏とは、故郷いわきの古本屋話で盛り上がる。晩ご飯が済んだ頃とおぼしき午後八時過ぎには、昼間ほどではないのだが、再び人の流れが生まれ始める。その人の波が再び凪いだところで、お店の横で本の結束作業。不器用&不手際ながら五本ほどをグルグル縛る。そんな風にまじめに仕事し、気づけばいつのまにやら午後十時半。広瀬氏と先輩バイト氏は、車への結束本積み込み作業に従事、その間だけ、たった一人で心細くありながらも、ひとりでレジを受け持つ。
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いやぁ、古本屋さんの仕事はとても興味深く肉体労働も存分に混じりながらも、やっぱり楽しいものであるな。最後のお客さんを無事に送り出し、午後十一時を過ぎ、ついに店頭を撤収してシャッター下ろして、本日の営業終了。
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バイト代をいただく前に、さり気なく抜け目なく目を付けていた本を買うことにして、バイト代から遠慮なくさっ引いてもらうことにする。函ナシだが、春秋社「浜尾四郎随筆集」を1000円で並べたのに頭をかち割られたようなショックを受け、棚に並べた時点から「どうか売れないでくれ!」「ミステリファンなど、今日は一切「音羽館」に来ないでくれ!」と真剣に願い、無事に売れずに誰の目にも留まらずに、十一時間を駆け抜けたのである。さらに函ナシの國際文献刊行會「怪奇草雙紙畫譜/尾崎久彌」(和本の幽霊&妖怪絵盛りだくさん!)と一緒に計2000円で購入する。当然高らかに、どひゃっほうと叫べる案件である。

本日お越しいただいたみなさま、言葉を交わしていただいたみなさま、差し入れをいただいたみなさま、本当にありがとうございました。今後とも新生と言いつつ、それほどの変化はないがスッキリとして良い本をドドドと次々品出しし始めている「音羽館」さんを、何とぞよろしくお願いいたします!というわけで本日の嬉しい収穫を、いただいた木箱の中に収めてみました。…でも、やっぱり疲れたな。毎日これをやるのは、身体が慣れるまでは、とても大変なことである。しばらくは身体の奥にこの疲労を抱え、日々を過ごすことになるだろう。
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2017年01月28日

1/27阿佐ヶ谷〜南阿佐ヶ谷〜神保町経由、トークイベント

夜の「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏とのトークイベントに照準を合わせつつ、午後三時過ぎに家を出る。手始めに「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)に立ち寄り、日曜の「音羽館」でのバイトに従事する旨を、先輩たる天野氏にお伝えする。講談社文庫「ブラックウッド怪談集」創元推理文庫「恐怖の愉しみ 上・下/平井呈一編訳」を計309円で購入する。その後は駅前に出て『中杉通り』をグッと下り、区役所で野暮用を済ませた後、地道に閉店セールを続けている「あきら書房」(2016/03/28参照)に顔を出す。誠文堂新光社「忘れえぬ広告人/森崎実」(電通創始者の評伝。最近話題となった『鬼十則』を提唱した人でもある)東都書房「翳ある落日/戸川幸夫」創元社「岡倉天心 東洋の理想」ヨネザワ「ギミア・ぶれいく 史上最強のクイズ王決定戦」(ファミコンカセット。ちゃんと箱と取説付)を計200円で購入し、夕暮れの神保町に乗り込む。ブラブラとすっかり陽の落ちた街をパトロールするも、なかなか古本に手が伸びず、何も買えない時間が過ぎ去って行く。そんな午後六時に、生物科学と工学の殿堂「明倫館書店」の前を通りかかると、お店にそぐわないケイブンシャの大百科別冊や、八十年代の飛び出す絵本が店頭台に置かれているのに出くわす。誰も見向きもしないそれらに飛びつき、サンリオポップアップえほん「めいろ スヌーピーのうちゅうたんけん」「めいろ キキとララのうみのぼうけん」を計500円で購入し、奇妙な満足感を得る。共に新品同様で、壊れている箇所は見受けられない。スヌーピーは300円、キキララは200円と、安くはあるのだが、しっかりと値付しているのがなかなかニクい。
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その後は「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)二階の「ブックカフェ二十世紀」にて、ちょっと声の掠れた向井氏と一時間半トーク。氏のスリリングなイベントに賭ける半生を、たっぷりとマシンガンのように語っていただきました。花の金曜日においで下さったみなさま、本当にありがとうございました。荻原魚雷氏と浅生ハルミンさんが列席下さったのも、大変に嬉しかったです!トーク終了後、ハルミンさんに『俳画カレンダー』という、ハルミンさんと南伸坊氏と嵐山光三郎氏のコラボによるカレンダーを「もう、一月が終わろうとしているのにすみません!」を謝られつついただきました。
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とまぁ、こんな風に楽しく一日を過ごさせていただきました。帰りは懇親会ですっかり酔っぱらい、阿佐ヶ谷に帰りたかったのに、中央特快に乗ってしまい、気がついたら三鷹駅で呆然としている始末…。ではみなさま、次回は1/29の「音羽館」バイトでお会いいたしましょう。ひとまずはおやすみなさい〜。
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2017年01月25日

1/25色々お知らせと、あるひとつの決意

今日は仕事で様々な所を駆けずり回っていたので、悔しいことに古本屋さんに行けず終い…。そこで代わりと言ってはなんですが、これからの活動予定を少々お知らせいたします。

まずは近いところで1/27(金)に、「古書現世」店主であり、本を触媒としてつながる組織『わめぞ(早稲田・目白・雑司が谷』の首領である向井透史とトークいたします。神保町の「ブックカフェ二十世紀」で定期的に開催されるトークイベント『古本屋的!』の一環ですが、私は主に聞き役を務め、向井氏が何故あんなにイベントを行うのか?あの凄まじい人脈とブッキング力の秘密は何か?古本屋バブル時代はそんなにすごかったのか?などなど、根掘り葉掘り聞きまくるつもりです。お店ではいつも楽しく長話させてもらってますが、向井氏と公の場で話すのは初めて。何処まで深く切り込めるか、大いに楽しみなのです!恐らく当日直接会場に来ていただいても大丈夫なので、お時間あれば是非ともお越しください!

連続講座 古本屋的!! 第五回「店から街へー広げる古本屋」
■向井透史(古書現世)×小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
■1月27日(金)
■ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
■19:00〜20:30
■会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,000円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀まで、メール(jimbo20seiki@gmail.com)か電話(03-5213-4853)にてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c
「早稲田青空古本祭、外市、月の湯古本まつり、みちくさ市、LOFT9 BOOK FES. などなど、あれこれやってきた実感について話しますんでお願いいたします」とは向井氏の言。普段は早稲田に思いっきり腰を据え、出不精の向井氏を神保町で見るのもレアな機会ですので、私からも何とぞよろしくお願いいたします!

続いて1/29(日)に、本日25日にリニューアルオープンした西荻窪「音羽館」を自分なりに祝うために、お店で終日バイトさせていただきます!恐らく広瀬氏に鞭でピシンピシンしばかれながら労働していますので、みなさま新しく船出したお店と古本を楽しむとともに、哀れな私を冷やかしに来て下さい!あっ、良く考えれば、これで私は阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」や三鷹「水中書店」の後輩となるわけか…。

名付けて「勝手に古本屋ツアー・イン・音羽館!」
■1/29(日)12:00〜23:00(予定)
■西荻窪「音羽館」東京都杉並区西荻北3丁目13−7 ベルハイム西荻窪 1F

そしてさらに、昨年十二月から続いている大阪・梅田の「梅田蔦屋書店」での『古ツアお蔵出しフェア』は、未だに奇跡的に継続中です!そろそろ良い本からポロポロ売れ始めていますが、まだまだまだまだ相場より安めの良書や変な本がたくさん揃っております。古書コンシェルジェが、停滞せぬよう棚に風を吹かせていますので、引き続きよろしくお願いいたします!

『古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也のお蔵出しフェア』
■ルクア イーレ九階「梅田蔦屋書店」内カフェ『4thラウンジ』壁面

そして最後に、あるひとつの決意をお知らせします。大阪だけで『お蔵出しフェア』を行っていては、日頃お世話になりまくっている東京に申し訳ないので、二月の終り辺りに、超絶的な古本お蔵出しフェアを開こうと考えております。これは、自分自身への挑戦であり、また古本で埋まりつつある住居を、再び人間の住み易い空間に少しでも戻すための、決意なのであります。どこまで掘り起こせるか、どこまで値付出来るか、何処まで運び出せるか…すべては私の努力如何となるでありましょう。理想的には、掘れるだけ掘り出して、なるべく安値で販売しようと思っていますが、果たしてこの一月余で、何処まで出来るかが鍵…嗚呼!揺るがないでくれ、俺の決意!怠けないでくれ、本の準備!詳細は決まり次第お知らせいたします。そして、準備や古本発掘の様子は、当ブログでもお伝えしていくつもりである。…とこういう風に言ってしまえば、もうやるしかないので、粉骨砕身突き進みます!

閑話休題。お知らせだけでは味気ないので、先日買った古本「藝術寫真 作品と作法」(2017/01/20参照)の余話をひとつふたつ。伝説の写真家・安井仲治の写真技術論考掲載を大いに喜んでいたのだが、良く見るとちゃんと安井の写真も掲載されていた。しかも大胆な自画像が!その写真を使い、当時の最先端に近い加工技術を伝えているのである。これは、嬉しさ倍増である。
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もうひとつは久野久という作家について。目次に有名無名の作家の名が、ズラズラと羅列されいてるのだが、この名だけが妙に心に引っ掛かった。記憶を必死に探ったり、ネットで調べてみると、以前、日本の昭和初期の新興&前衛作家展のカタログで、この人の作品を見ていたことを思い出した。タイトルは確か『イルフ逃亡』となっており、腰まである草原の真ん中で、外に向かって円陣を組んだ背広姿の男たちが、四方に前傾して走り始める瞬間を捉えた、不思議で幻想的な味わいを持つモノクロ写真である。そのカタログを持っているはずなので必死に探したが、残念ながら見つからない…フェアのために掘り出して行けば、いずれ見つかるかも…。確か作家データは詳細不明で、ネットで調べても個人的な情報はほとんど浮かび上がって来ない。その代わりに、彼が所属していた九州の写真倶楽部は『ソシエテ・イルフ』ということが判明する。この倶楽部の結成は1939年。「藝術寫真 作品と作法」は1937年発行で、結成以前のものである。だからまだ尖る前なのか、写真に前衛的なところはなく、夜の家族団らん晩ご飯風景を写したほんわかした作品に仕上がっている。あの、まるでルネ・クレール監督の、シュルレアリストが大勢出演する実験映画「幕間」のような写真を期待していただけに、大いにがっかりしてしまう。だが、最後に掲載された『制作データ及び解説』を読むと、『展覧会用作品としてかねて考へて居た晩餐二部作の内の一枚である。小市民的な暖かい気分の晩餐と、シヤンデリア輝く豪華な然し冷たい上流家庭の晩餐とを以て二部作となすのであるが〜』などとあるではないか。おぉ!何だかやはり前衛が萌芽していたのではないだろうか!こうなると俄然その二部作で見たくなってしまう。ちなみにこの写真は、四晩通い詰め、ようやく撮れた一枚とのこと。背景は久野自身が手を入れているらしく、良く見ると、確かにこの日本間には似合わぬ、妙な写真や物体が、写り込んでいる。
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ああやっぱり、こんな風に昭和初期とダイレクトにつながれる古本は、素敵だな。まるで何時でも何処でも乗り込める、精神的タイムマシンじゃないか。
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2017年01月24日

1/24東京・西八王子 ガレージランドHarps

前回の記事にあるように、西八王子「一歩堂」(2015/05/11参照)に何やら大変な変化が訪れているようなので、確かめに向かう。北口に出て、未だに銀杏の踏み付け痕が残る歩道を進んで『八王子市役所』方面へ。緩やかな坂を下り、交通量の多い『陣馬街道』を越えてさらに進むと、右手に『古本』の文字が見えて来た…サッシ扉にそっと近付くと、硝子に小さい貼紙があり、営業時間と“営業中”の文字を確認する。店内に100均棚が引き込まれているが、ちゃんと営業中のようだ…多数の猫の気配もとりあえずはナシ(古本神・森氏は誰もいない店内を歩き回る多数の猫を目撃したそうである)。扉を開けて中に入ると、お香の匂いが微かに漂い、店内は風がないだけで、外気温と変わらぬ極寒の室温である。帳場奥には老婦人が座り、小声で何やら話しかけているので、どうやら猫たちと会話をしているようだ。…まぁ、しっかり営業していて良かった。震えながらも棚に集中し、二冊を手にして帳場に向かい、奥に横向きに座る老婦人に声をかける。そしてそのスキに、奥の間に目を凝らすと、おぉ!いるいる。以前からいる白黒猫に加え、黒の多い白黒猫が毛を膨らませてジッと屈み、白地に虎柄猫が室内を闊歩しながら、こちらの様子をうかがっている…か、可愛いな。老婦人はにじり寄りながら本を受け取り、値段を確認。そして「今日はとても寒いですね。もうお仕事終りなんですか?」「いえ、今日は休みなんです」「そうですか。ずいぶんと早くからいらっしゃるから。ホホ、休みなのに、ちょっと寄って下さったのね」などとやりとり。すると、帳場の下に猫がスルリ。「そこ寒いでしょ。寒いでしょ」と老婦人。書肆ユリイカ「ユリイカ 特集・自殺 19587月号」講談社「鳥/庄野潤三」(帯はないが函も本もキレイで、これが200円とは拾い物!)を計700円で購入する。

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『日吉町交差点』のある『陣馬街道』まで引き返し、そのまま街道を『追分町交差点』に向かい東に歩いて行く。しばらく歩くと右手に黄色い看板が見え、そこが森氏にチラと教えられた、古本も少しあるリサイクルショップであろうか。店舗手前はガレージ状になっており、そこにすでに様々な物品が飾られている。右はアンティーク家具や古道具をお洒落にディスプレイし、左には工具や大工道具などが賑々しく置かれている。どうやら、アンティーク+古道具+リサイクル要素を併せ持つお店のようだ。中に入ると薄暗く、まずはアンティークショップの雰囲気。それが左に行くほど日用品度がアップし、左奥の駐車場側出入口へとつながって行く。何気ない風を装いながら、古本を激しく求めてあちことに視線を飛ばす。右端通路には、面子やソノシートやレコードなどを確認。紙物も幾つか飾られている。だが、ここではない。第二通路は物品ばかり…では第三通路は…右側に絵葉書などの紙物をを発見。おっ!そしてその向かいの棚の上に、古そうな小型本や大型雑誌が二十冊ほど集まっているじゃないか。ほくそ笑みながら手を伸ばし、セロファン袋に入った薄手の本を確認して行く。駄菓子漫画・雑誌付録・付録漫画・児童雑誌…幸せなラインナップだ。値段も800〜1000円
となかなかお手頃価格になっている。ずいぶん古い北田卓史の付録海賊絵物語が三冊あるが、続き物か…う〜む、榎本書店のターザン駄菓子漫画も気になる…しかしこれにしておこう!と一冊だけ選び、奥の方も一応見に行く。そこは生活用品+家具+楽器の世界で、古本はバンドスコアやグラビア雑誌を確認するのみであった。みくに書房「長編ポケット漫画 怪奇探検 冒険児/竹田文吾作」を購入する。
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「冒険児」の表紙はなかなか凛々しい紅顔の美少年。
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だが中身はやっぱりこんな感じ。一ページに上下二コマで、全32ページ。その中に探検地図争奪戦、船の難破と島への上陸、ライバルとの格闘、人食い人種との戦闘、巨大猛獣や未知の類人猿との出会いが、ギュギュッギュギュッと詰め込まれている。表3には広告が掲載され、1.魔島征服記 2.密林の王者 3.冒険児 4.古塔の魔王 5.白假面 6.ノンビリ名探偵 7.冒険太郎など、何処かで聞いたようなタイトル含めラインナップされている。
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2017年01月22日

1/22東京・吉祥寺 吉祥寺パルコの古本祭り

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駅北口からお洒落な人波に乗って、西にある『吉祥寺パルコ』にユラユラ向かい、セールで華々しく飾り立てられた一階女子世界を、何食わぬ顔で堂々進んでから、地下への一人幅エスカレーターに飛び乗る。地下一階でステップから離れ、ぐるりと上りエスカレーター側に回り込むと、その脇の一角で、およそ二十ほどのワゴンを並べた、『パルコブックセンター』主催の古本市が開催されていた。キャッチコピーは『若手店主が営む個性派古書店12店舗が吉祥寺パルコに集結!』である。それにしても『吉祥寺パルコ』は古本市が好きであるな。ついひと月前にも、七階で「ART BOOK BAZAR」(2016/12/12参照)が開かれたばかりなのに、またもやの古本市開催に加え、開催期間が2/20(月)までと長めなのである。あっ!良く見ると奥のレジに立つエプロン姿の男性は、「ARt BOOK BAZAR」で、たった一人で広い会場を守っていた人と同じ人じゃないか…恐らく永遠の古本市担当なのかもしれない…ありがとうございます。古本がいつもお世話になっております。会場内には家族連れや若い男女がワゴンに向かっており、なかなかの盛況を見せている。洋書絵本や近刊文庫が人気のようだが、映画系文庫や美術やCDやレコードも幅を利かせ、小さいながらもバラエティに富み、キレイ目な古本世界を展開している。一番心惹かれたのは代々木八幡「rythm_and_books」(2011/08/10参照)のワゴンで、完全にカルチャー変態度全開な新書サイズ本の並びに、この世の中におかしな本を撒き散らしてやる!という素敵な気概を勝手に感じ取る。そんな中から一冊を選び取ったのだが、なんと値段が付いていない。近くに並ぶ本の間や周辺を見回すが、スリップが落っこちている気配はない。だがその本がとても欲しかったので、あえて永遠の古本市担当男性に値段を聞くことにする。するとしばらく待たされたが、方々に電話を掛けていただき、およそ七分後に500円であることが判明する。「あっ、じゃあいただきます。お手数かけてすみませんでした」「いえ、こちらこそ申し訳ございませんでした。では税込で540円になります。今スリップを作りますので、少々お待ちください」などとやり取りし、新興音楽出版社「口笛の吹き方/金井セツヲ」を購入する。

この本、文庫サイズの音楽独習&名曲集の一冊なのだが、他はみなちゃんとした管楽器打楽器洋楽器和楽器なのに、これだけが何故か異色の人体楽器の一冊(附録として他にも「柴笛(木の葉を利用)」や、裏聲を必要とする「聲笛」、口の中に手を叩いた音を響かせ演奏する「マウス・シロホン(口の木琴)」の技法も紹介)として滑り込んでいるのである。内容はもちろん技術的なことにページが割かれているのだが、冒頭や合間合間に口笛の市民権を高めるための文章がしつこく挿入されており、それが悲哀を誘いつつおかしくてたまらない。口笛に関する石川啄木の短歌を引き合いに出し、口笛に潜むロマンチシズムを熱く語ったり、「二十有餘年來この口笛を吹き通して來たが未だ一度も泥棒に見舞われたこともなければ、又蛇が出て來たといふこともない」などと、口笛が好き過ぎて民間伝承などにも立ち向かう始末なのである。フフフフ、今日も古くて面白い古本が買えたぞ。
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ついでに最近開いているところにお目にかかれなかった、南口側凶悪極狭バス通り沿いにある「バサラブックス」(2015/03/28参照)を見に行くと、今日はちゃんと開いている!よかったと胸を撫で下ろし、小さな三角形店内の豊穣な棚を慈しむ。双葉社「ルパン殺人事件/野坂昭如他」の帯付きを400円で購入する。その後はテクテク西荻窪まで歩き、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)にちょこっと補充すると、帳場脇に古本神・森英俊氏がヌゥッと立っており、挨拶を交わしつつ古本屋情報交換。千葉・松尾「サティスファクション」(2012/12/19参照)移転や、西八王子「一歩堂」(2015/05/11参照)の猫多頭飼いに驚かされる…これはちょっと確かめに行かなければ…。
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2017年01月21日

1/21東京・水道橋 古書たなごころ

高円寺『西部古書会館』二階で、岡崎武志氏とともに、例の古本屋本第三弾のお仕事に従事。そこで、お店が出来てからずっと正体がバレていないと思っていた「古書サンカクヤマ」さん(2015/02/02参照)に、とっくに見破られていたことを知り、ガ〜ン!とショックを受ける。さっきもここに来る前に、100均雑誌を何喰わぬ顔で買って来たばかりなのに…これからはちゃんと挨拶することにしよう。買った雑誌は昭和三十年の「松竹歌劇 SKDファンの雑誌」二冊である。バタ臭い表紙写真に惹かれて思わず手に取ると、薄い冊子ながら小説も少々掲載されている。一冊に「新宿怪談/ミス・マナコ」というちょっと面白そうな一編が載っていたので、残りの数冊も詳しく見てみる。すると一冊に、山崎俊夫の「写真物語 レモン色の靴」なる小説を発見したので、慌てて購入した次第である。SKD女優が登場人物を演じた写真が添えられているが、内容は青春物語の皮を被った見事なまでの“足フェチ”の話……いいのか、松竹歌劇団!
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仕事を終えたら、そのまま駅から総武線に乗り、ガタゴト各駅で水道橋駅。東口改札から南にガード下を抜けると、背後から『東京ドームホテル』が、まるで自身が太陽であるかのように日光を反射している。だが、最初の交差点で西に入ると、たちまち日光は遠ざかり、雑居ビルの谷間の寒冷地帯。二番目の脇道を南に向かうと、右手に二つの入口が並んだ雑居ビルが現れる。一階のガラスウィンドウの向こうでは、大量の古本横積みタワーが丸見えになっている…だが目的はここではなく、左側の入口からビルの通路に入り込み、エレベーターで四階を目指す。扉が開いて通路を右に進むと、奥でガンメタ色の鉄扉が静かに待ち構えていた。
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ここは元来『紅茶研究所』という、その道のオーソリティーが紅茶のすべてと美味しい淹れ方を追い求める場所なのだが、何故だか去年裏路地十字路のお店を閉じた、ミステリ&SF&幻想小説の「古書たなごころ」(2010/11/24参照)が移転開店し、研究所と同居しつつ週末営業を行っているのである。今日はその貴重な営業日。小さな店名札がかかった扉をガチャリと開けると、たなごころさんがすぐ「いらっしゃいませ」と応対に立ち、土足厳禁の店内に招いてくれた。左三分の二が紅茶研究所で、右三分の一が小さな古本屋となっている。たなごころさんが笑顔全開で、早速店内を説明しながら案内してくれる。まず入って正面には細いプレミア本棚があり、左の研究所内に進むと、右が質の良い文庫と単行本が並ぶ100均棚となっている。小林信彦・ちくま文庫・中公文庫・ミステリ文庫が、かなり勇ましい輝き。すぐさま四冊を抜き取ってしまうが、100均棚は一月限りらしく、その後はポケミスで埋め尽くす計画を立てている。その裏側は探偵小説&ミステリ文庫棚で、一本の短い通路の右側には棚が奥の壁棚を合わせて三本横向きに置かれている。手前棚の上には仙花紙雑誌の「LOCK」や「MEN」が飾られ、その間の地帯は棚に並べられないSF&幻想文学結束本の山が占領している。向いの棚には古く茶色い探偵小説&雑誌が収まり、そのさらに奥には、翻訳探偵小説・ミステリ文庫&ノベルス・探偵小説評論、それにパソコンの置かれた作業スペースが展開している。お店は以前より遥かに小さくなり、本もだいぶ処分したそうであるが、あのレジ周りの濃密ぶりは健在で、エッセンスをギュギュッと濃縮した形を採っている。「値段のないものは聞いて下さい。付いてるものでも、ものによっては勉強しますよ」と、とても嬉しい甘い囁きが繰り返される。値段の付いてない一冊を選び値を聞くと、お手頃だったので購入を決意する。そして研究所スペースに移り、珈琲をごちそうになりながら、楽しくもある苦しくもある古本屋話に耳を傾ける。色々あってここに移転して来たわけだが、以前の実店舗一点に全力を注ぐ形ではなく、営業日は少なくとも、一人一人のお客さんに、丁寧にたくさん話をしながら本を譲って行く方が、性に合っているらしい。そこから、自分の古本屋人生(「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)に勤めていた時代から、「いにしえ文庫」「古書ひぐらし」とともに生きた小さな十字路時代まで。十字路店舗時代は、実質六年である)を楽し気に一気呵成に語っていただき、最終的には「古本屋よりおにぎり屋をやりたい!ごはん作るのが大好きで、古本よりそっちの方が絶対に楽!」との結論にいたる。それでも今現在売っているのが、やはり古本だと言うことが、古本好きとしてはとても嬉しいのである。珈琲を飲み干し、さて精算と、東京創元社「創元 海外推理小説特集」(新書サイズで、まだ創元推理文庫の出ていない時代のものである。)光文社文庫「絢爛たる殺人/芦辺拓編」「硝子の家/鮎川哲也編」「ミステリーファンのための古書店ガイド/野村宏平」集英社文庫「洲崎パラダイス/芝木好子」を差し出すと、全部で千四百円。ところが二千円を差し出すと、お釣りがないことが判明する。こちらも小銭の持ち合わせがなかったので、外まで崩しに行こうか、それとも百均の四冊を諦めるかと逡巡していると、「じゃあこういう時はしょうがない。千円で!」と予想外の嬉し過ぎる提案をしていただく。そしてそれを即座に飲み、改めて来店して、このご恩をリカバーするほどの客になることをその場で誓う。みなさま、たなごころさん来店の際は、小銭持って行きましょう。そしてまた、こんな形のお店を開いていただき、本当にありがとうございます!
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2017年01月20日

1/19古本屋の買取を手伝い、古本市に行き、古本屋さんたちと呑む!

週ごとの慣例として、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の「フォニャルフ」棚に色濃く補充(只今意外にレア本を相場より安く並べておりますので、みなさまぜひお誘い合わせの上西荻窪へお越しください)。角川文庫「中央アジア秘法発掘記」を100円で購入する。そして今日はそのままバイトとして盛林堂さんの買取を手伝うのである。やることと言えば、主に古本束の運び出しと積み込み。家から廊下に出し、台車に乗せてエレベータ−で一階に下ろし、その後車にバンバン積み込む。それを素早く三往復繰り返し、すっかり車のサスペンションを重くして、百本ほどの結束本を午後三時前には無事に運び終える。とてもスピーディーに仕事を終わらせても、しっかりとバイト代をいただき、そのまま中央線から丸ノ内線を乗り継いで銀座に急行する。昨日が初日だった「第33回 銀座古書の市」に、館内で迷いながらもたどり着き、例年より落ち着いた感のある古本市をのんびりと楽しむ。わりと厳かで上品な会場を巡回し、「えびな書店」さんから、朝日新聞社「藝術写真 作品と作法」を800円で購入。イベントスペース最奥の、壁際に設置された本棚の最下段で見付けたものであった。昭和十二年刊で、写真作品としては桑原甲子雄などが掲載されており、アマチュアとプロを交えた作家の作品をまとめた一冊なのである。それらの様々な写真も嬉しいのだが、この本を買った最大の目的は、なんと巻末の技術紹介ページに、伝説の写真家・安井仲治の論考が入っていたのである。いや、これは嬉しい。文自体が、二人の人物が軽妙に話す対話形式なのも嬉しい。
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カバーの背はボロボロで、かろうじて一部で繋がっており、油断すると蝶の羽のように開いてしまいそうだが、丁寧に丁寧に扱い、現状をどうにか維持しながら特設レジで精算する。応対してくれたデパートのご婦人は、最初そのまま本を袋に入れようとしたが、はたとその手を止め「これは私の技術では…」とつぶやいた後、危ういカバーが切れることを恐れ、まず本自体を薄紙で厳重に梱包した後、改めて袋に入れていただく。お気遣いありがとうございます!

そして夜、西荻窪に舞い戻り、「盛林堂書房」に「ただいま!」と帰り着き、買って来たばかりの本にパラフィンをかけてもらう。その後の夜は岡崎武志氏の発案で、「音羽館」(2009/06/04参照)広瀬氏や開店準備中の「むしくい堂」さんや国分寺の「七七舎」(2016/02/06参照。もうすぐ開店一周年である)さん、それに「盛林堂」夫妻を囲み、新年会を開催。というわけで、「音羽館」さんは1/25(水)に営業再開予定なのだが、それを祝って何故だが1/29(日)に一日店員となって労働し、ちょっとでもお店を盛り上げる所存であります。みなさまどうか、お誘い合わせの上、古本を買いに来ていただければ!

とこんな風に一日を、古本屋さんにどっぷりと関わり過ごしてしまう。…私は果たして、何処へ向かおうとしているのであろうか……。
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2017年01月18日

1/18侘しい古本屋犬走り

高円寺近辺でお仕事。本当は今日から始まる銀座『松屋』の「第33回 銀座古書の市」に行くべきなのだが、残念ながら疲れて、踵が軽やかに地を蹴られぬのだ。なので日和ってあきらめて、高円寺の古本屋を彷徨おうと思ったのだが、折り悪く今日は定休日の多い水曜日。だが、あそこならば盤石の営業をしているはずだと、『あづま通り』を進んで「越後屋書店」(2009/05/16参照)前。もうここ十年ほどは、お店も店主も、いつ来てもそのままの変わらぬお店である。ほとんどの人が立ち止まることなく、お店の前を素通りして行く。だが珍しいことに、木の文庫ワゴンを眺めていると、隣りでアグレッシブに若者が身を突然乗り出し、本を眺め始めたのだ…もしかしたら定点観測店なのだろうか…あ、何も買わずに離脱した。店頭をすぐに見終わり、店舗兼住宅脇の犬走り的通用口への細道に滑り込む。ここに入ると、途端に世俗から離れ、近距離に外棚が迫ってくる。ほとんど動かぬ並び、奥へ行くほど薄暗くなる住宅と住宅の隙間、奥から聞こえるテレビの音、吹き抜ける冷たい風、一瞬で通り過ぎるスリット状に切り取られた通行人の姿…ここの侘しさは本当に格別で、じっと望みの薄い古本ばかり眺めていると、世間から脱落した背徳感さえ漂ってくる…あっ!、だが今日は、立風書房「じんじろげの詩/愛川欽也」を発見!これはちょっとした拾い物である。外棚は三冊買っても200円なので、他に岩波新書「明治大正の民衆娯楽/倉田喜弘」(生人形師・松本喜三郎の章が!)関東図書株式会社「盆栽捷径/日本盆栽会編」を掴んで店内へ。久々にすべての通路を見て回ると、ブランクの部分が徐々に増えてきているような気が。老店主は相変わらず時々唸り声を上げ、帳場で小さくなっている。精算をお願いすると、天眼鏡で本の地を確認。そこにペンで付けられた×印を確認すると「200円ですね」。お金を払い、袋を断り、「大丈夫ですか。ありがとうございます」の声に送られ通りに戻る。ここの古本犬走りで本を買うのは、月に一二度だが、もしかしたら私が一番多く、この外棚から古本を買っているのかもしれない。決してオアシスではないのだが、心がプルプルゼリーのように震える、なくてはならない、大都会の侘しいエアポケットである。
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posted by tokusan at 18:35| Comment(4) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月16日

1/16実相寺饅頭本!

夕方まで三鷹で長仕事。無事に終わらせ、疲弊して夕暮れの街を行く。北口に出て「水中書店」(2014/01/18参照)に誘い込まれる。ここのテント看板は、いつ来てもキレイで、ピンと張っているな、と感じつつその下で店頭棚を眺めてから店内へ。木床をギチギチと鳴らして歩き、棚から棚へ。映画棚から探し求めていた一冊を抜き取り、帳場にて精算する。「星の林に月の舟/実相寺昭雄」を600円で購入。通路でお客さんにお薦め本を尋ねられ、懇切丁寧に応えている店主・今野氏に、失礼ながら割り込んでご挨拶。あることをお願いしているので、とにかくよろしくとお伝えする。外に出ると、釣瓶落としに暗くなって行く時間帯。夜になる前にと、慌てて買った本を取り出し、お店の前で記念撮影。
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この本、ただの「星の林に月の舟」ではないのである。装幀や内容はほぼ同じなのだが、実は出版社名が無く、薄めで軽め。それに新たな写真や年表が加えられているのだ。これは、ウルトラシリーズや『帝都物語』の映画監督・実相寺昭雄が死去した時に、記念として復刊されて配られた、いわゆる“饅頭本”なのである。この本をひょんなことから知ったのは、去年の「しのばずくんの本の縁日2016」(2016/11/03参照)であった。本の雑誌社ブースにて、必死に「古本屋ツアー・イン・京阪神」を販売していると、やって来たのは日本古典SF研究会会員の妖怪大大大大大大大好きナカネ君。本を買っていただき、ちょっと話し込んでいると、お互いの古本成果を見せ合うことになった。そこで彼から見せられたのが、この饅頭本だったのである。境内横の古本台で目にした記憶があり、よくある普通の「星の林に月の舟」だと思って、当然スルーしていた。だから最初は何故これを?と訝しんでいたのだが、手渡されると感触がおかしい。薄くて軽いのだ。そして「これを見て下さい」とページを開いて取り出したのは、実相寺夫人からの挨拶葉書であった。うわっ!完全にやられた!こんなスゴい本を見逃していたなんて!と大いに悔しがり、頭の中に古本傷としてしっかり刻み込まれていたのである。あれから二ヶ月…こちらは残念なことにハガキは無いが、それでも確かに同じ饅頭本!ようやく我が手に落ちた本を開き、新たに追加されたグラビアページの、円谷プロ・怪獣倉庫前の階段に座る実相寺のモノクロ写真に再会の喜びを覚え、感慨深く見入ってしまう。
posted by tokusan at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月15日

1/15昨日をなぞり、違う一日となる。

昨日と同パターンで行動を開始する。まずは午前十時に「J-house」(2015/12/26参照)にいそいそと駆け付け、朝市箱の中に大正四年の雑誌を見出す。大正天皇御大礼の特集本、富山房「新日本 御大禮特集号」である。表紙の杉浦非水デザインは美しいが、普段だったら食指の動くものでは決してない。だが、この本の目次を見た瞬間『これは買わねばなるまい!』と心を躍らせ、結局100円で購入する。B5サイズの古雑誌を自宅ポストに投函しておいてから、軽く走りながら高円寺へ向かう。今日は昨日より寒さが厳しい。そして今日は誰にも会うことなく、「西部古書会館 大均一祭」(2013/09/08参照)二日目の100均祭会場に到着する。始まったばかりの祭の人出は、昨日より遥かに落ち着いており、各棚を容易に見ることが出来る。まぁほとんどが昨日の残りなのだ。さもありなん。だが今日もカゴ一杯に古本を詰め込んでいる人は、たくさんいる。なんたって全品100円なのだ。見たことのある棚をチェックしながら、昨日『100円だったら買ってもいいな』と思った本を探すが、案の定そのほとんどが姿を消していた。野田宇太郎編集の雑誌「文学散歩」、やはり買っておけばよかった…。後悔の念をぐっと飲み込みながら、無理せず二冊を手にしてウロウロしていると、ミステリ評論家・新保博久氏と遭遇。さらにカゴ一杯に本を詰め込み「タガが外れちゃった」と言いながら松坂健氏も合流。二人のミステリの鬼に挟まれ、昼食を共にすることとなる。騒人社「名作落語全集 第六巻 滑稽道中篇」スポーツ新書「プロ野球三国志 青春篇/大和球士」を計200円で購入する。「コクテイル書房」(2016/04/10参照)狩野氏は、今日は帳場で大忙し。駅前のルノアールに場を移し、昼食を摂りながら古本&ミステリ四方山話に花を咲かせる。新保教授、何と先日宇都宮の古本市に行かれた際に、ついでにと雀宮の「すずめ書房」(2010/04/10参照)を、ちゃんと電話して訪問したとのこと。店頭で風雨にさらされた本の山は消え去り、キレイになっていたが、二階から下りてきた店主は、そろそろ閉店するようなことをつぶやいていたらしい。そんなことになったら、宇都宮近辺の古本屋事情は、より一層寂しくなってしまうであろう。それにしても、教授のアグレッシブな行動には感心してしまう。普通の人は、あのお店絶対に行かないですよ!さすがは古本神!その後も書庫の話や007の話やミステリの話を間断なく続ける。このミステリ深度の深いお二人の話しにはとても付いていけず、曖昧な笑みを浮かべたまま、話に加われず目を白黒させてしまう。なんたって、ある作家名が出ると、すぐに作品名が羅列され、次にそれぞれの物語の内容、さらにはトリックの種類までが、ツルツルと淀みなく排出されるのだ。しかもそれらを、ちゃんと共通の情報として、即座に認識し合うのである。いったいどれだけ本を読んだら、こんなことになってしまうのだろうか…。一時間半ほどで解放され、二人と駅で別れ、昨日と違いタッタカそのまま家へと戻る。そしてさらに昨日をなぞるように、ワンクッション置いて西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)を目指すのだが、昨日「フォニャルフ」棚がわりと減っていたので、補充の本を抱えて家を出る。もちろんテクテク歩いての「ささま書店」(2008/08/23参照)経由は欠かせない。すべて昭和二十五〜六年の岩谷書店「宝石」三冊を計315円で購入し、さらに行進して西荻窪へ。「にわとり文庫」(2009/07/25参照)店頭に正月均一祭の名残のような100均棚が設置されているのを目撃し、ようやく盛林堂に到着する。キリッと補充をすませ、ちょっと印象が変わる。レア本、そこそこ並べていますので、引き続きよろしくお願いいたします!店主・小野氏とひとしきりお話しした後、今日は何処にも寄らずに阿佐ヶ谷に戻り、そのまま帰宅する。昨日をなぞったような一日だったが、買った本も、出会った人も違う、これは、今日という日であった。

ここで話は冒頭の古雑誌に戻る。いったい何を目次に見つけ、買ってしまったのか。それは、こんな赤いハンコが、ペタリと捺されていたからである。
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雑誌とはまったく関係ない、他社のハンコ。しかもそれは探偵小説「フアントマ」三版出来の宣伝ハンコだったのである!『村上静人編 探偵奇談フアントマ 定價金四十五銭 郵便六銭 大好評三版出来 東京神田裏神保町 發行所芳文堂』とある。もしかしたら「フアントマ」が載っているのか?と色めきたってページを繰るが、もちろん載ってはいなかった。芳文堂の人が、たまたま手元にあった雑誌に、試し捺しでもしたのだろうか。とにかくこんなハンコが存在したのにまず驚き、続いてハンコ本体をかなり欲しいと思ってしまう(「フアントマ」のハンコ!それだけで、うっとり)。国立国会図書館のデジタルライブラリーで検索すると、大正五年の本で290ページ。デジタルデータ(モノクロ)で全文読むことが出来るようになっている。…あぁ、いつか何処かの古本屋さんで、本物の実物に、お目にかかりたいものだ。それにしてもこのハンコは、どのような用途で使われたのだろうか?出版案内の郵便物や広告に捺されていたのだろうか?それとも書店などで、袋にペタペタ捺していたとか…?その「フアントマ」つながりで、現在所持の「ファントマ」を集めてみた。とは言ってもコーベブックスのものは見つからなかったので(取り出せなかったとも言う)、二冊だけである。博文館「新青年」附録の「ファントマ」と博文館文庫の「フアントマ」である。もちろん美文文語体の久生十蘭譯。両方ともちゃんと松野一夫の素晴らしい挿絵入りで、博文館文庫は「第二ファントマ」も合わせた分厚いものとなっている。
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2017年01月14日

1/14均一小僧に連れ回される

土曜日は、決まりきったいつものパターンで行動開始。外は極寒だが、だらしない部屋着に少しだけ上着を羽織っただけで飛び出し、まずは午前十時に阿佐ヶ谷の古道具屋「J-house」(2015/12/26参照)。朝市箱の中を覗き込み、郷土玩具の山の下から、PAN AMのトランプ二種(MoroccoとEngland)を発見し、200円で購入する。手ぶらで出てきたので、後ポケットにトランプを突っ込み、軽く走りながら高円寺へ向かう。これならそんなに厚着でなくとも、寒くならないのだ。途中『庚申通り』で、ぱりっとした身なりの「コクテイル書房」(2016/04/10参照)狩野氏と擦れ違いざまの挨拶を交わす。そんな風に「西部古書会館 大均一祭」(2013/09/08)に到着すると、ガレージはそれほどでもないのだが、館内は通常の二倍ほどの大混雑!これが『全品200円均一』の力なのか!棚前は古本修羅垣が二重になっているので、背伸びして透かし見たり、腰を屈めて覗き込んだり、隙を見つけて入り込んだり、素直に順番を待ったりと、200円の古本への接近をあれこれ試みる。すると入口近くで肩を叩かれたので振り返ってみると、そこには古本神・岡崎武志氏の姿があった。現在の時刻は午前十時二十分。こんなに早く氏が混雑を極める会場に姿を現すとは…さすが均一小僧!と思わず懐かしいニックネームで呼びたくなってしまう。その場で昼食を共にすることを約束し、一時間ほどフリー状態で会場を彷徨う。小冊子や古本屋の目録が目につく一日目である。洪洋社「アメリカ土人藝術」(函ナシで大正十五年刊。南米〜北米〜アラスカまでの主に仮面や人形の民具を集めた写真集である)日本建築学会「日本建築学会80年略史」(造家學會の「建築雑誌 第一號」縮刷版付き)福音館書店「日本伝承のあそび読本/加古里子」輝文館「薄化粧/武田麟太郎」(裸本で貸本印アリ)大同出版社「裸体ポーズ集/寺田政昭編」(出版自体は昭和三十二年だが、中の裸体写真はどうみても戦前のものである。しかも雑誌からの切り抜きが多く、まるで個人的なスクラップブック的合成具合が、雑過ぎて逆に面白い)を計1000円で購入する。嬉しかったのは「日本建築学会80年略史」のグラビアページ。なんたって、日本建築学会のレジェンドたちが、ズラリと掲載されているのだ。辰野金吾・横河民輔・佐野利器・岸田日出刀・妻木頼黄・片山東熊…たまらん!
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それにしても、見事にオッサンばっかりだな…。

出口で岡崎氏と合流し外に出ると、再びコクテイル狩野氏と鉢合わせ。二度目の挨拶を交わして歩き始める。さて、これから昼食に行くのかと思ったら、氏は「当然これから西荻窪に行くんやろな?」「えっ?いや、そのつもりはなかったんですが…」「この流れで、西荻窪行かないのは、あかんやろ」「はい。行きます…」ということで、電車に乗って西荻窪に向かうことになる。ちょっと出てきただけのつもりだったのに…。西荻窪では『日高屋』でまずは昼食を摂る。対面に座る氏は、注文した後は泰然自若としながら、買ったばかりの古本のクリーニングに入る…まるで目の前だけが、古本屋になってしまったようだ…。つるっと麺をたいらげた後は「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、たまたま店内にいた芦辺拓氏や、大山の「ぶっくめいと」(2009/08/05参照)店主と新年の挨拶を交わす。小野氏からは、まだ棚に並べぬレア本をホレホレと見せびらかされ、無様に心中に涎を垂らす。國枝史郎の日本小説文庫「隠亡堀」!こっちは保篠龍緒の「白狼無宿」!うわっ、なんだこの二重厚着カバーの同じく保篠の「七妖星」はっ!ぬぬっ?改造文庫クロス装の「血染めのパイプ」だっ!などと切歯扼腕。魂を弄ばれるひと時を過ごす。
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クロス装版の探偵小説文庫!初めて見た!初お目見え記念に、お願いして写真を撮らせてもらう。なので買ったわけではないのである。

もろもろ打ち合わせをして、氏とともにお店を辞去する。「せっかくだから、「音羽館」(2009/06/04参照)の様子、見にいこかぁ。広瀬くん、おるかなぁ」と、高架下を潜って北側に出て音羽館前に到着すると、ちょうど音羽館号がお店の前に横付けされるグッドタイミング!運転席から滑り出した広瀬氏と、これも新年の挨拶を交わし、休業中のお店にちょっとだけ入れてもらう。すると店内通路は、結束本の山となっていた。荷物が詰まり、左室には進めぬ状況である。そしてちょっと広くなった帳場スペースを見せてもらい、リニューアル開店日は1/25(水)であることを教えていただき、さらにコンビニ袋に入って積み上がった買入本の山を、「この辺古い本ありますから、どうぞ袋から出して見ちゃって下さい」と勧められる。お言葉に甘えて、十弱の袋から本を取り出し、浅ましく検分。毎日新聞社「チョップ先生/今日出海」を100円で購入する。するとお店に、見慣れぬ若者が入って来た。聞けば新しく入ったバイトさんとのことである。何となく「コンコ堂」(2011/06/20参照)天野氏や「水中書店」(2014/01/18参照)今野氏と雰囲気が似ている。もしや背が高く面長で丸眼鏡という容貌は、音羽館バイトの必須条件なのでは…。氏と二人で音羽館の未来を新バイトさんに託し、お店を出る。『西友』内を通って駅前北口に出ると、空から粉雪が舞い始めた。「岡崎さん、雪ですよ!」「ほんまや。雪や。初雪やなぁ」とオッサン二人が、しばし空から舞い落ちる雪片に見蕩れてしまう。

ホームで氏とお別れして、ようやく家に帰れると、電車に乗って阿佐ヶ谷駅。『中杉通り』を震えながら歩いていると、「ゆたか。書房」(2008/10/19参照)がちょうど開店準備中で、オヤジさんとばったり。これもまた新年の挨拶を交わしながら、ついでにお店を見せていただく。創元推理文庫「フレンチ警部最大の事件/F・W・クロフツ 長谷川修二訳」を300円で購入し、ようやく朝の古本散歩を終えて帰宅と相成る。
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2017年01月13日

1/13神保町トーク『古本屋的』詳細判明!

お昼から吉祥寺で野暮用をこなし外に出ると、いつの間にやら夕闇が迫り、空には冬の雲が濃紺の宇宙をバックにして、美しく鮮やかに広がり、気温がとてつもなく急降下中。服の隙間から入り込む冷気に閉口しながら、久しぶりの「百年」(2008/09/25参照)。安売棚から一冊抜き取り、児童文学棚と対峙していると、ぬぉっ!これまた久しぶりに講談社「カポンをはいたけんじ/槇ひろし」を古本屋さんで見かけてしまう(恐らく2008/08/27にツアーした三鷹台の今は亡き「B-RABBITS」以来。実に七年ぶりの再会というわけか…)。愛らしい薄緑のミュータン人と、アイテムである姿を消す服が巻き起こす騒動を描いた、児童文学の名作である…だが、値段はしっかりか…さすが本の価値を見逃さぬ百年!取りあえず久しぶりのお店で、久しぶりの本を見られたのは幸せであった。雪華社「毒薬/保刈成男」を324円で購入する。そのまま13日の金曜日で賑わうアーケード商店街を抜けて、『五日市街道』沿いの「藤井書店」(2009/07/23参照)へ。城壁のように結束した本が美しく積み上がる店内をスルスル抜けて、奥の階段に足を掛けて踊り場の棚から文庫を一冊。徳間文庫「新・日本SFこてん古典/横田順彌 會津信吾」を180円で購入する。電車の中でようやく暖をとって阿佐ヶ谷に戻り、「千章堂書店」(2009/12/29参照)であかね書房「いたずらラッコのロッコ/神沢利子」(初版でちゃんとビニールカバー付)を100円で購入。最後に『中杉通り』の「銀星舎」(2008/10/19参照)に立ち寄り、店主ご夫婦お二人と新年の挨拶を交わす。二人とも古本屋の話が大好きなのでたくさんそんな話をするのだが、時々二人がお互いの記憶を巡り、軽く口喧嘩を始めるのが何とも微笑ましい。まったく新年早々仲の良いことである。ハルキ文庫「コナン・ドイルの心霊ミステリー/コナン・ドイル」を300円で購入し、何の変哲もなく古本を安く買った感じで、ようやく家に帰り着く。

そして着替えるや否やかぶりついたのは、昨日買ったばかりの雑誌「推理ストーリー」。宮野村子や樹下太郎や千代有三の読切りを楽しみつつ、ミニコラムの渡辺啓助が海女映画を撮った話などに驚きながら、一番楽しんでいるのは長編読切の「ふし穴/島久平」!アパートの二階に住む貧乏サラリーマンが、畳を上げた床板の節穴からのぞく、直下の部屋の、めくるめく女と金の世界!なんだこりゃ、まるで乱歩の「屋根裏の散歩者」を思わせる背徳&窃視な導入部じゃないか!と大喜びし、続きが読みたくてしかたなかったのである。いや、持ち歩いて電車の中などで読んでもいいのだが、雑誌はB5版で表紙がこんな感じなので、とてもとても車内で開く勇気は…。
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※昨日お知らせした、わめぞの首領「古書現世」向井氏とのトークですが、詳細が判明いたしました。
連続講座 古本屋的!! 第五回「店から街へー広げる古本屋」
■向井透史(古書現世)×小山力也(古本屋ツアー・イン・ジャパン)
■1月27日(金)
■ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
■19:00〜20:30
■会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,000円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀まで、メール(jimbo20seiki@gmail.com)か電話(03-5213-4853)にてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c
「早稲田青空古本祭、外市、月の湯古本まつり、みちくさ市、LOFT9 BOOK FES. などなど、あれこれやってきた実感について話しますんでお願いいたします」とは向井氏の言。普段は早稲田に思いっきり腰を据え、出不精の向井氏を神保町で見るのもレアな機会ですので、私からも何とぞよろしくお願いいたします!
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2017年01月12日

1/12早稲田で古本屋さんと打ち合わせる

正午を目標に外出し、早稲田駅で学生の波に揉まれながら地上に出る。『早稲田通り』を西に進んで坂を上がって、最初に見に行ったのは、『早稲田大学』西門前の「畸人堂 W大学西門前店」(2012/09/14参照)。コメントタレコミですでにもぬけの殻であることを教えられたので、ダメ押しに確かめに来たのである。…あぁ、本当に空っぽだった…。「畸人堂」は、ツアーを始めてから新宿南口のお店は間に合わなかったが、新大久保の「古書畸人堂 百人町店」(2008/07/22参照)と同じ早稲田の「畸人堂 ガレージ店」(2012/10/17参照)は滑り込めている。変転の多いお店であったが、今は果たしてどうなっているのであろうか。
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そのまま『早稲田通り』を西に進み、「三幸書房」(2012/09/05参照)で今日の話題社「「七人の刑事」と幻の刑事ドラマ 1960-1973/羊崎文移」を100円で買ったりしながら、「古書現世」(2009/04/04参照)に到着。本を真剣に選びながら次第に帳場に近付き、店主・向井氏に気づかれたところで挨拶を交わす。実は来る1/27(金)に神保町「@ワンダー」(2009/01/21&2014/05/22参照)二階の「ブックカフェ二十世紀」で氏とトークをすることが急遽決まったので、挨拶がてら軽く打ち合わせに来たのである。思えば最近の向井氏は、イベントの司会や聞き手で登壇することはあったが、自身についてメインで話すのは、実に実に久しぶりのことなのである。なのでいったい何を話したら聞いたら良いのやらと、直接聞きに来たのだが、たちまち話はボインボイン弾み、何も心配する必要はないことが判明する。どうやら二代目としての古本屋稼業の始まりや、驚異の古本屋バブル時代の話や、古本屋なのに全力で手広く定期的に開催するイベント類について語ることになる予定。「NG話はありません!」とのお墨付きもいただく。恐らく、いつまでもいつまでも話せることでしょう。私はそのブレーキ役を、楽しく務めるつもりである。詳細は追ってお知らせするが、みなさま1/27金曜夜のスケジュールを、ぜひぜひ空けておいてください!向井氏も、ずっと「@ワンダー」鈴木氏の口説きを躱し続け、ようやく二年がかりで口説き落とされたところで「ひとりじゃとても喋れない」と言っていた筈なのに、突然大きく出て「四十人くらいは集まって欲しいな」とつぶやいております。二見書房「機動戦士ガンダムプラモ改造法」光書房「プロデューサーの仕事/高瀬広居」双葉社「推理ストーリー 昭和三十八年10月号」を計700円で購入する。
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2017年01月11日

1/11『本棚探偵の補充』と「ひるねこBOOKS」開店一周年!

午前中にまずは定番のコースと言っても良い、徒歩で「ささま書店」(2008/08/23参照)に向かい、駒込書房「石川善助作品集」青土社ユリイカ叢書「錬金術/R・ベルヌーリ 種村季弘訳論」文藝春秋「百日物語/中谷宇吉郎」を計315円で購入してから西荻窪に至る。「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に気合いを入れて補充しつつ、店内にいた、もはやヤフオク古本神と化している塩山芳明氏(この時はグラビア誌「写楽」の転売について熱く激しく語られる)と新年の挨拶を交わす。小山書店少年少女世界文庫「街の少年/豊島與志雄」「アンデルセン マッチ賣の少女」「ピーターパン/ヂェイ・エム・バリ」(すべてカバーナシ)を300円で購入し、店主・小野氏と少し打ち合わせをしてから、今日は滞店時間短く、家へ引き返そうとスパッと別れを告げる。駅方面に向かって緩い坂を上がり、横断歩道を渡って歩道屋根の架かる駅前商店街に差し掛かると、あっ!正面から本棚探偵・喜国雅彦氏が、スカジャンの上に笑顔を乗せて歩いてくるではないか。聞けばこれから「本棚探偵のひとたな書房」の補充に向かうところだと言うので、貴重な『本棚探偵の古本補充』を目撃すべく、あっけなくお店に引き返すことにする。道すがら、手作りの箱に包まれた「紙魚の手帖」全揃いや「TOMOコミック名作ミステリー」などをチラ見させていただく。店頭にたどり着くと、喜国氏は何故か店内には向かわずに、店頭文庫台に対峙して一冊の文庫に手を伸ばす。それは、何の変哲もない春陽文庫の乱歩「緑衣の鬼」…「持ってるけど、何冊でも欲しくなっちゃうんだよな」…いや、もう絶対完全に買う必要ないでしょう!そんな突然の、古本者にしか分からぬ店頭ミニコントを終えて店内へ進み、いよいよ補充を目の当たりにする。床に赤いトートバッグを下ろし、TOMOコミックをガバッと掴み、収めた!小酒井不木原作の「少年科学探偵 消えたプラチナ」がっ!続いて「笑う肉仮面」(コピーカバー)やカーター・ディクスン原書を並べて行く。それを左斜め後ろから息を詰めて注視し、『本棚探偵が、探偵小説を並べている!』と秘かに欣喜雀躍してしまう。途中、函入り本を懸命に押し込もうとして、バコン!と言う音とともに函が壊れる悲しい一幕も。おぉ、本棚探偵の悲劇!などとそれすら一瞬楽しんでしまう。さらにそこに小野氏が顔を出し、「あっ、「笑う肉仮面」のカバー、コピーさせてもらえばいいじゃん」などと、私が裸本を所持しているのを知っているので(2016/11/19参照)、強制的アドバイス。だが、カラーコピーをさらにカラーコピーすれば、劣化するのは必至…それはまるで海賊版の様相を呈してしまうのではないかと逡巡すると、喜国氏が「コピーは100円ね」と追い討ちをかける。うぅん、どうしよう…。それにしても、本棚探偵がこんなにマメに補充を行うなんて、まったく想定していなかった出来事である。…いつかこっそり何か買おう…。

夜に再度外出し、根津の裏路地の、開店一周年を迎えた古本屋さん、「ひるねこBOOKS」(2016/01/11参照)に駆け付ける。するとお店では、これから始まる一周年記念パーティー準備の真っ最中であった。厚かましく中に入り込み、本棚をたっぷり眺めた後に、さらに厚かましくパーティーに参加してしまう。平日なのに、続々と集まる奇特で素敵な方々。「ひな菊の古本」(徳利&お猪口持参の日本酒担当)・パワフル「雨の実」一家・「レインボーブックス」・「ベランダ本棚」・「あおば堂」(2016/12/11参照)などなどなどなど(敬称略)が一堂に介し、平和な祝祭的時間を形成。そしてお店は、時間を追うごとにギュウギュウになって行く。そこはまるで一周年記念と言うか、お店の誕生日を心から祝うような優しさに満ちあふれた、幸福な空間と化して行く。そんな中で、「古本屋さんにおにぎりを置きたかった」と、新し過ぎる古本屋へのアプローチを試みる女子の登場に、大変カルチャーショックを受けてしまう(その試みは見事実現し、おにぎりは小ぶりで種類多数で美味)。日本酒をパカパカ飲みながら、存在をまったく知らなかった講談社「スイッチョねこ/朝倉摂・絵 大佛次郎・文」を800円で購入する。安泰・絵のバージョンはもちろん最強なのだが、全ページに白猫が躍動するこちらも、なかなか捨て難いものがある。頃合いを見計らい、まだまだ続くパーティーから離脱し、箱入大判絵本が入った袋をぶら下げて、冷たさを増す風が吹き付ける根津の街から、フラフラ帰路に着く。
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そんな楽しいパーティーの様子。みな幸せそうに食べ物に群がっています。
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2017年01月10日

1/10古本屋本第三弾制作始動!

「盛林堂書房」出版部より、2015年に「野呂邦暢 古本屋写真集」2016年に「岡崎武志×古本屋ツアー・イン・ジャパン 古本屋写真集」と、岡崎武志氏と共編で出してきた、超マニアック古本屋本を今年も出版するために、アイデアを固めてすでに動き始めている。前二作とは違ったタイプの、古本屋愛に塗れた本になるはずなので、古本屋好きのみなさまは刮目してお待ちください。発売は今のところ春先になる予定。
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制作作業の一環として、このようなガイドブックを駆使し、様々な古本屋さんと日々格闘中である。

そんなガイドブックの山から、ふと目を上げて、ちょっと実地に地図上の古本屋さんを見たくなり、作業のスピンオフとして中央線で西へ向かう。まぁただ、久しぶりの古本屋さんに、会いたいだけなのだが…。武蔵境で下車して、北口の「浩仁堂」(2011/02/15参照)に向かうと、店頭にラックや細長台を出し、健康的に営業中。ラックから一冊抜き出し、店内でも二冊を抜き取り精算する。すると応対してくれた女性が、「まぁ!この本懐かしいわね。あら、訳が渡辺茂男じゃない!」と本を見て大喜び。渡辺茂男…スゴいピンポイントだな…。学研「サムくんとかいぶつ」(函ナシ)裳華房「犯罪鑑識の科学/小沼弘義」ヤマハ音楽振興会「だれも知らなかったポール・マッカートニー」を計300円で購入する。そのまま西側にあるはずの「BOOKS VARIO」(2011/01/18参照)に立ち寄ると、嗚呼!すでに現代的ピンク色の鍼灸院になりぬるか…さらば。コンクリの高架を南に潜って「境南堂書店」(2009/02/11参照)も見に行くが、やはりいつも通りシャッターを下ろしたままである…このお店に限っては、もはや営業している時より、シャッターを下ろしている時を見た方が遥かに多い。またいつか、ガシャリと上げてくれると良いのだが。さらに果樹園のある通りを南に下り、「プリシアター・ポストシアター」(2015/01/03参照)前。残念ながら店舗営業はお休みであったが、ドアに営業日が貼り出されているので、だいたい水〜金辺りに営業しているのを把握する。そのまま西に歩き続けて、見たこともない住宅街の中の間延びした商店街を踏破し、東小金井駅。『くりやま通り』の駅前商店街にある「BOOK・ノーム」は、テント看板の店名文字を、よりおどろどろに劣化させながらも、元気に営業中であった。小さな町の古本屋感も相変わらずで、リサイクル的棚造りも健在である。帳場のご婦人は、薄暗い帳場の奥で、仕入れた本を丁寧にチェック中である。講談社「青い鳥文庫ができるまで/岩貞るみこ」を400円で購入する。武蔵境から武蔵小金井までは、数は少ないが古本屋がちゃんとあるのに、中央線的には余り途中下車せぬ“古本屋間隙地帯”のイメージが強い。まぁ中野〜三鷹間の光が強烈過ぎて、うっすら霞んでしまうのも確かに仕方のないことである。だからこそ時々、とても見に行きたくなってしまうのである。何か素晴らしい獲物が、スヤスヤと人知れず眠っているのではないかと、愚かに楽しく妄想して…。
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