2017年08月08日

8/8東京・西太子堂 Cat's Meow Books

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路面電車の面影を残す世田谷線のホームから出て、踏切の南に立つ。そこからすぐに西に真っ直ぐ延びて行く、住宅街の細道に入り込む。ツツツツと百メートルも進めば、本日オープンしたばかりの、猫のいる新刊屋+古本屋+カフェな新店が左に輝き現れる。すでに店内は激しく賑わっており、何やら取材も入っているらしい。その小空間の喧噪にユラッと飛び込むと、左奥の帳場に立つ男女二人が「いらっしゃいませ」と迎えてくれて、女性の方が「こちらは新刊コーナーになってまして、奥は古本を販売しています。奥は靴を脱いで入っていただくんですが、猫がおりますので逃げ出さないよう素早い開け閉めをお願いします」とレクチャーされる。ちなみにこのお店の猫は、全員元保護猫の店員さん(店長さんもいるのだが、この時は二階に籠っているらしく姿を見せず…)という位置づけである。新刊コーナーにはテーブルを真ん中にして猫本が多く並び(犬本もあり)、帳場前には洋書の猫写真集や絵本が飾られている。また帳場背後頭上には、グロテスクなほど巨大な猫の顔面ぬいぐるみアリ。狭いカウンター前を通過して、奥の木の格子戸をスラリと開けて、素早く身を入れて閉めて、靴を脱ぐ。左右が猫も遊べる壁棚(棚の棚板や側板には、猫が通れるほどの大きな穴が空いているのだ。もちろんそこに本は置かれていない)となっており、中央には大きなテーブルが置かれている。おぉ!窓際に鯵虎猫が寝ている!そしてその姿をお客さんがかわりばんこに激写している!他にも黒猫がチラチラ姿を見せ、鯵虎猫の横に身を横たえると、控え目な歓声とともに激しいシャッター音が連続して鳴り響く。完全に猫カフェ的一幕が展開され続けている。本当は私も撫でたり話しかけたりしたいのだが、この大いなる猫人気者状況ではそれも叶わぬので、一心不乱に古本を眺めることにする。並んでいるのはすべてが猫に関する本なのだが、ボックスごとにテーマが何となく設定されているのが楽しい。『猫と文学』『猫とミステリー』『「我が輩は猫である」と猫』『猫と美術』『猫と科学』『猫と民俗学』『猫と歴史』『猫と怪談』『猫とパリ』『猫と海』『猫と島』『猫と町』『猫と犬』『空飛ぶ猫』etc.etc.etc.…と、かなりバラエティ豊かに展開して行くのである。私的には『猫と怪談』ブロックに注目し、もしや橘外男の怪猫物がしれッと紛れ込んでいるのではと、視線を何度も往復させるが、残念ながら最初から一ミリたりとも存在していなかった…。中には値段の付いていない本があるので、棚の整理をしているお姉さんに聞いてみると「今値付けしているところなんです。気になったのがあったらお調べしますよ」と言われたので、さっき目ざとく見つけておいた、サンリオSF文庫「猫城記」を差し出してみると、ネットでしっかりと調べられてしまい、4500円の値付が為されてしまった…大体ネット値付の中位を参考にしているらしい。と言うわけで、値付はわりとしっかりしております。裏表紙に値札の貼られた「猫城記」をそっと棚に戻し、別な本を取り出して、早々にスヤスヤ眠る猫店員さんたちに別れを告げて、格子戸の向こう側へ。人文書院「のら猫トラトラ/鴨居羊子」を購入する。まるで星新一の短編小説のように、猫にすべてが支配されているお店である。可愛い猫たちに振り回されたければ、この西太子堂の新店へどうぞ!

帰りに寄り道して、渋谷で『宮益坂』を上がり、「巽堂書店」(2008/07/04参照)で広済堂ブルーブックス「不連続殺人事件/坂口安吾」を100円で購入する。
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2017年08月07日

8/7「暮しのなかで考える」

仕事の答え待ちの隙を突いて外出。だがそれほど多くの時間を自由には出来ないので、近所の古本屋さんを見に行くに留まる。風が強くなり、段々と灰黒色の雲がハイスピードで動き始めた空の下を早足で歩き、まずは阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)。ちょうど店主・天野氏が出入口のガラス戸を、キュッキュッと磨いていたので挨拶を交わす。時間は無いのに冷房が涼しい店内にわりと滞留し、中公文庫「日本妖怪変化史/江馬務」本の雑誌社「本の雑誌風雲録/目黒考二」マガジンハウス「BRUTUS 137 特集:ブルータスの古道具三昧」を計356円で購入する。まだ少し、天気にも時間にも余裕がありそうだと、さらに足を早めて『七夕祭り』で地獄の釜のような賑わいを見せる駅周辺を突破し、そのまま荻窪まで歩いて「ささま書店」(2008/08/23参照)。ちょうど店頭を雨仕様にチェンジする場面に出くわす。こちらでも店内冷房の恩恵にたっぷりと預かり、徳間書店「町の案内図/河野典生」を105円で購入する。そんな感じで、あっという間に時間一杯になったので、さらに足を早めて『日大二高通り』を北東に遡上して、雨の降り出す前に家に帰り着く。

さて、ここ二日ほど私の頭は何をしていても、すっかり一冊の本の魅力に捉えられてしまっている。それは「書肆スーベニア」(2017/08/05参照)で購入した、暮しの手帖社「暮しのなかで考える/浦松佐美太郎」によって齎されているものだ。この本が珍しいものであることは、ぼんやりと門外漢的にも知っていたのだが、改めて調べてみると、思っていたより稀少な本であることが分かったのである(ただ本に関する情報は、それほど浮かび上がって来ないのが残念)。長い間絶版になっている一冊らしく、所持しているのは昭和三十八年四月刊の三刷である。変わった名を持つ著者の浦松佐美太郎(うらまつ さみたろう)はジャーナリストで登山家。この本は「暮しの手帖」に三年間連載した十五篇の随筆を収録。装本はもちろん花森安治で、表紙絵のフライパンとそこに乗る食材の線画装飾具合が、果てしなく懐古的にプリティーである。さらに角背で132mm×186mmの、正方形に近づくような少し寸詰まりの変型サイズが、物質として手に馴染む愛らしさを演出している。肝心の内容は“考える”をテーマに据え、日常に潜む問題(お金、読み書き、家族関係、人口、洋服、生活リズム、文章、言葉、愛情、政治、人格、願望、欲望などなど)を真面目に掘り下げて行くのだが、それはいわゆる“思想”や“哲学”などの形而上での難しい思考実験ではなく、あくまでも形而下、つまり生活の中で思考し暮らすことを提唱し展開して行く。難しく考えるのではなく、まず暮しがあり、その中の身近なことをはっきり意識して考えて行くための、様々な例と方法と気付きが書かれているのだ。“考える”を、大きな世界の真理や秘密を探るものとしてではなく、小さな暮しをよりよくするための道具として、使用しているのだ。傾向としては花森安治の「さかさまの世界」と似た匂いが漂っているのだが、この“暮し思考”が何だかとても新鮮なのである。本来ならこういう超地味真面目な本は肌に合わないので、ほとんど読まずに「ヒヒ、高い本を安く買えたぞ。すぐに「フォニャルフ」で販売だ!」と卑しく売ってしまう可能性大だったのだが、まず造本に捉えられ、次いで本文に捉えられ、あげく「暮しの手帖」ワールドに引き込まれてしまい、真剣に読み続けてしまっている。こんな予想外なこともまた、古本屋さんで、この本と出会えたおかげなのである。あぁ、世の中には、まだまだまだまだ、知らない本が満ち満ちている。
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2017年08月06日

8/6「獏の店」の野望を嗅ぎ付ける。

本日は三鷹台に流れ着いたので、『神田川』を渡って「絵本&アート 獏の店」(2015/08/10参照)の様子を見に行くことにする。途中おばあさんが店番をする、お洒落さゼロの余りに日本的なアンティークショップの50%OFFセールに惹き付けられつつも、記憶をガツガツ掘り起こして水色の日除けのお店にたどり着く。店頭絵本箱をまずは漁り、300円の福音館書店ものがたりえほん36「あな/谷川俊太郎作・和田誠絵」をパスポートとして店内に突入。中央テーブルには絵本空間に似合わぬオッチャンが店番をしており「いらっしゃいませ」とボソリ…のっぴきならぬ理由で頼まれての店番中だろうか…。主に右壁棚の箱入児童文学本に熱心な視線を注ぐが、本日は出物なし。ということであっさりと表から持ち込んだ絵本を購入することに。そこに外から戸川昌子風マダム店主が帰還し、いきなり「何?何買ったの?」とフレンドリー過ぎる距離感で、心の垣根をを飛び越えて来た。谷川俊太郎&和田誠コンビの絵本であることを告げると「そっかー。俊太郎さんかぁ」と感心し始める。そしておもむろに「今は絵本が多いんだけどね、近々絵の展示を始めようと思うの」「はぁ…」「現代美術なんだけど。その壁に飾ってあるリトグラフ、いつ頃のだか分かる」「う〜ん、1950年代くらいでしょうか…」「生まれたのは1885年生まれの人の作品よ。ドローネ。ソニア・ドローネ」「あっ、知ってます!(何故知っているかと言うと、昔録画したNHK『日曜美術館』の鴨居玲特集で、本編終了後の展覧会紹介ミニコーナー『アートシーン』の初っ端が、ソニア・ドローネ展だったのである。…ただそれだけなのだが、何度もその録画番組を見ているせいか、名前だけが頭の中にこびり付いていたのである…)」と答えると「ちょっとアナタ時間ある?」と奥に引っ込んでしまった。すかさずオッチャンが「時間、なくてもいいですよ」と助け舟を出してくれるが、ちょっと面白そうなのでマダムの話を拝聴する覚悟を決める。持ち出して来た、しっかりと作成された自分史のファイルを紐解きながら長いお話がスタート。聴けばその昔、神保町でギャラリーを開いており、ソニア・ドローネのコーディネーターもされていたとのこと。上野の『西洋美術館』での展覧会も、彼女が当時の美術館館長にフランス語を教えていた縁で、ドローネ展(1979年)の企画が通ったとのことであった。うむ、それはスゴい。その他にも前衛芸術運動『コブラ』の話(こちらの日本への紹介にも大いに貢献していた模様)などの数々を、学生気分でおとなしく聴き続ける。と言うわけで「獏の店」は、いずれソニア・ドローネとコブラ派の作品で、埋め尽くされることになりそうです。最後の最後に「あなたは学生さん」「いえいえいえいえ、もう全然とっくのとうに卒業してますよ」と言うと「あら、やぁねぇ〜。もう年取ると、年下はみんな学生に見えちゃうのよ」とひとり大笑いされている。この場所の旧店である「B-RABBITS」(2008/08/27参照)の女性店主も面白い人だったけど、「獏の店」も負けず劣らずだなと感じ入り、雲がモクモク広がる青空の下を、京王線浜田山駅からすぎ丸に乗り込んで帰路に着く。
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2017年08月05日

8/5東京・とうきょうスカイツリー駅 書肆スーベニア

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昨日向島方面に古本も扱う書店が出来たことを察知し、地下鉄を乗り継いで、スカイツリーの足元にひょっこり顔を出す。ここまで来たならまずは「イセ屋」(2014/07/13参照)に向かわねばと、押上駅から人気の少ない東北方向に足を向けるが、残念ながらお店はお休みであった…ちぃっ。慌てて北西に足を向け、「甘夏書店」(2014/10/22参照)の入るカフェ前から『水戸街道』に入る。駅からは『言問通り』を経由して『水戸街道』に入り、北側の歩道を北東に進んで行けば、歩道橋を過ぎたところ右手のマンション一階に、小さなお店が姿を現すだろう。その前に差し掛かると、ちょうど若くさっぱりした髪の毛の強いうじきつよし風青年が店頭の小さな100均棚に補充をしているところ。バチッと目が合ってしまったので、覚悟を決めてお辞儀しながらお店へと近づく。その100均棚から二冊を抜き取り、ビニールカーテンの掛かった入口から小さな店内に入り込む。ほぼ正方形の空間の壁際には木製の壁棚が巡らされ、入口左横から、世界文学全集・「現代思想」・「彷書月刊」・A5サイズ雑誌・面陳新刊絵本・絵本・「美術手帖」・昆虫・動植物・自然・食&料理・都市&場所&土地・言葉・出版&本・散歩・写真集などが左壁を経由して奥壁まで続く。右壁には「暮しの手帖」関連・セレクトコミックと新刊が並び、わりと大きく採られたコミックゾーンは、そのジャンルに寄せた文学本が唐突に混ざり込む個性的な並びを見せている。未だこれが完成形ではないだろうが、複雑多様化した世界に様々な方法で向き合うための健全な並びが、古本にも新刊にも展開するお店である。冊数は多いとは言えないが(今のところは意外に古本多め)、その目指すべき個性はすでにじわりとにじみ始めている模様。値段は安め。右奥の小さな帳場に向かい、国際空港ニュース社「空の旅一万時間/青木正雄」(何故か奥付が天地逆に印刷されている…)暮しの手帖社「暮しのなかで考える/浦松佐美太郎」(これはなかなか見かけない良書!嬉しい!)愛宕書房「日本の面影/小泉八雲作」(カバーナシ)を計500円で購入する。開店おめでとうございます!どうか末永く、こちらの本&古本文化を支える一端になっていただければ、とても幸いです!

そのまま『とうきょうスカイツリー駅』方面に歩き続け、駅前で「業平駅前書店」(2009/04/20参照)に差し掛かると、そのドアには『あと数年でなくなるお店』の寂し過ぎる貼紙が!
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慌てて店内に飛び込み、ロマン・ブックス「黒いトランク/鮎川哲也」安田書店「福井名探偵実話集 第一集/安田輝雄編」を計800円で購入しつつ、しばし店主さんと話し込む。聞けば今年の一月に、一帯の再開発が本格始動する話が役所から持ち込まれたのを機に覚悟を決めて、貼紙を出したそうである。だがそれ以来役所からは何の音沙汰なく、何となく中途半端な宙ぶらりん状態に陥っているそう。しかし再開発はいずれ確実に行われるので、そろそろ色々考え行動を起こさなければいけないとのことであった。何とも差し迫った話であるが、だがここで頼もしい言葉が店主の口から飛び出した。何処に移ろうが店舗はしっかり継続したいそうである。営業形態はネットに比重が傾いているが、それでもお客さんと話し対面で古本を売ることは、とても手放せぬ楽しさに満ちているとのこと。それを聞いて一安心し、また近々去就を確かめに来店することを約束する。

そこからまたまた地下鉄を乗り継ぎ池袋に出て、二代目「ますく堂」(2014/07/20参照)最後の「スナックますく堂」(2012/09/14参照)に参戦する。持参した差し入れ缶ビールを飲みながら、結局いつも通りの「ますく堂」で、居合わせたお客さんたちと楽しくワイワイと過ごす。講談社「君は花の如く/藤澤桓夫」青林堂「沈黙の弾機 上野昂志評論集」(「暮しのなかで考える」に続く本日二番目の収穫!ますくさんありがとう!)を計600円で購入。缶ビール二本を空けて、お店に居合わせた『ポエカフェ』終りの近代詩伝道師・ぴっぽさんと小説家志望の山梨青年とともに帰路に着く。「ますく堂」の引越しはどうやら八月中旬に行われそうだが、引越し後の新店舗では8/31(木)にそれを祝し、岡崎武志氏×世田谷ピンポンズさんトークと、ピンポンズさんのミニライブが開かれるとのこと。この池袋にへばりつく守り神的魔窟を応援するために、みなさまどうか奮ってご参加ください。予約&問い合わせは「ますく堂」まで。
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2017年08月04日

8/4古本を買い込み発散する。

掛かりっきりでめんどくさいことをこなし続け、本日夕刻に作業を終える。即座にセレクトした古本を抱えて家を飛び出し、まずは「ささま書店」(2008/08/23参照)の店頭にむしゃぶりつく。すると、なんだか探偵&推理小説関係文献が散見されるので、ついつい次々と抱え込んでしまい、最終的には自分へのご褒美的大発散となる。日本放送出版協会「趣味の世界1 推理教室」(中島河太郎&山村正夫による推理小説入門&研究)高文社「推理小説の謎/村田宏雄」双葉社「幻の傑作ミステリー 怪奇探偵小説集/鮎川哲也編」パシフィカ「シャーロック・ホームズ事典/ジャック・トレイシー」N.C.Y「さらば長州力/長州力」町田書店「小山内薫と築地小劇場/水品春樹」(カバーナシ)三菱地所株式會社「縮刷 丸ノ内今と昔」(カバーナシ。昭和二十七年再版の非売品。一丁倫敦や丸ビルを中心に、東京の中心であった『丸ノ内』という街の歴史が、江戸から太平洋戦争後まで写真資料豊富に語られている)毎日新聞横浜支局「横浜今昔」(昭和三十二年発行の、横浜に関わる有名無名人たちが語る、土地の風俗&歴史&思い出アンソロジー集)春陽堂少年文庫「ほら物語/佐々木邦」(佐々木による「ほらふき男爵」の翻案少年小説。キップリングの「いかさまばなし」も収録。これが一番嬉しかった!)を計1785円で購入する。指に、古本がたっぷり入った袋の持ち手を存分に食い込ませながら西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。「フォニャルフ」にスパパッと補充して、先月分の売り上げを受け取りつつ、さらに表紙デザインを担当した盛林堂ミステリアス文庫の新刊「活劇絵小説 暗黒街の群狼/ジェームズ・B・ハリス文 伊勢田邦彦」を受け取る。うむ、なかなか良い出来ではないか。「少年少女譚海」に連載された、ロバート・ハリスの父“ジェームズ・バーナード・ハリス”による、都市に巣食う強大なギャング団と正義の少年&新聞記者の対決をみっちりたっぷりと描いた、楽しい良い子の読み物である。全ページに二色刷りで花開く伊勢田のイラストワークにはウットリするばかり。今月のコミケで先行発売された後、8/19から店頭&ネット販売予定である。ニヤニヤしながらページをめくりながらも、少し色々と今後の作業予定について打ち合わせる。
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2017年08月02日

8/2こ、こ、こ、こ、こ、こ、こ、「幸福論」!

所用で高田馬場に出たついでに、『早稲田古本街』のパトロールに取りかかる。だがまずは「ブックオフ 高田馬場北店」(2012/11/15参照)に立ち寄り、東峰書房「一筆対面/清水崑」を108円で購入してから、細かい雨の降る中を神田川沿いに東へと向かう。静かな裏通りをひたすら歩き続け、『明治通り』の坂を上がって『早稲田通り』に到達する。北側歩道→南側歩道と古本街を巡るつもりで、まずは「平野書店」(2010/01/12参照)。桃源書房「若さま侍任侠剣/城昌幸」を100円で購入して表に出ると、偶然に自転車で坂を上がって来た「古書現世」(2009/04/04参照)向井氏に声をかけられる。まさか巡り初めの初っ端に、最後にたどり着く予定のお店の店主にお会いしてしまうとは…区役所に向かう氏と後ほどお店で会うことを約束して、しばしのお別れ。そのまま疎らに続く店頭をたどって行く。だがなんだかあまり買うことなく、ようやく「三幸書房」(2012/09/05参照)でちくま少年文学館1「ユリアと魔法の都/辻邦生」を100円で買い、谷底に下って行くと、またも偶然区役所から帰還した向井氏と遠目に遭遇する。氏は颯爽と片手を上げてこちらに合図を送りながら、お店への横丁に曲がり込んで行った。遅れて店頭に到着すると、お父様と店番を交代しながら「さぁ、どうぞ」と店内に招き入れてくれた。左壁沿いには、古本市から戻って来た本や未整理本が積み上がるが、久しぶりに見た棚はその様相を変えて輝いており、たちまち何かないかと鼻をピクつかせて探索モードに。凸凹と同じ棚に様々なサイズの本が肩を並べるお店独特の景色を楽しみながらも、決して眩惑されて見逃さぬよう、本と本の間の影のような隙間にも視線を通して行く。すると、右壁中ほどの棚に、恐るべき本を発見してしまった!筑摩書房「幸福論/小山清」である。昭和三十年発行の新書サイズの、清貧小説家の随筆集であるが、その姿をお店で見られるのは大変に稀なことである。うぉぉぉぉ!と興奮しながら、これは万難を排してでも買わなければいけないのでは?と、こういう時にだけ発現する『男らしい古本心』が早速気弱な心に囁きかけて来るではないか…まぁしかしこの場合の『万難』というのは、概ね価格のことなのだが…。そういうわけで、何はともあれ値段を確認してみようと決めて、後の見返しを開いた瞬間、嬉しいことに万難は、いとも容易く排されてしまったのである!三千円!買える!読める!家に来てもらえる!そのまま奥の帳場に直行し、絞り出すようにして「これをくださいっ」と氏に差し出す。「小山清、こんな本出してたんですね」と精算してもらい本を受け取る。そして我慢し切れずに「向井さん、この本きっともっと高いですよ」と言うと「あぁ、そうでしょうね。でも自分そのくらいしか付けられないんですよ。まぁ古ツアさんに買ってもらえるなら、それで充分です」と嬉しさ倍増のお言葉をいただく。即座に、どひゃっほう!読みます!大事にします!このことは一生忘れません!これからは何でも言いつけて下さい!と盛大に心の中で謝辞を並べてしまう。それほど、とてもとても嬉しい一冊なのである。うぅむぅ、やっぱりお店には労を厭わずに足を運んでみるものだと、改めて思ってしまった、八月最初の古本的慶事体験!俺は今日、この本に出会うために、古本の神に、早稲田へと導かれたのだ…。その後は、鞄の中の「幸福論」の存在を、大きく幸せに感じながら、帳場前に立ち尽くして一時間ほど色々お喋りしてしまう。
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2017年08月01日

8/1安泰について言葉を交わす。

雨が酷くなる前に代田橋に流れ着いたので、環七で関東バスに乗り込み、高円寺方面をブンブン目指す。車窓の向こうが、高円寺に近づくごとに、激しく濡れそぼって行く。『新高円寺バス停』で途中下車し、『青梅街道』から長い長い『ルック商店街』を北に遡上して行く。「アニマル洋子」(2014/03/14参照)は残念ながらシャッターアウト。「大石書店」(2010/03/08参照)はライトを眩しく輝かせ、雨仕様の店頭を夜店のような雰囲気に変えている。厚いビニールをまくり上げ、けいせい出版「ギャンブル人生論/阿佐田哲也」を150円で購入する。帳場に座っているのは、珍しく老店主御大であった。そのまま商店街を進まずに遊歩道を西に曲がり込むと、長毛系の猫が、雨に濡れるのも構わずに煉瓦上に寝そべっている…ずいぶん風変わりなヤツだなぁ。と訝しがりながら、すっかり雨模様の「えほんやるすばんばんするかいしゃ」(2014/09/11参照)に到着する。
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傘を畳んで狭い急階段をギコギコ上がり、BGMに流れる『はっぴいえんど』の日本語ロックに身を任せながら、児童文学と絵本に満たされた小空間を舐るように味わい尽くし、すっかり今は大人の自分と子供時代の自分が角突き合わせて散々悩んだ末に、童心社「きんいろのあしあと/椋鳩十・文 安泰・画」1200円を選んで、帳場に座るお姉さんに差し出す。すると精算しながらお姉さんが「安泰の絵は本当に素敵ですよね」と呟くように発言したので、色めきたちながら同意して「もう本当に、彼の描く動物の絵は、可愛くて仕方ないですよね」と返す。すると「可愛い中にも険しさがちゃんとあって…そう、最近安泰の熊の絵本も見たんですけど、それもやっぱりいつも通りに素敵で…」「そんな本があるんですか!いや、私も安泰が大好きで、見かけるとつい買ってしまうんです。「スイッチョねこ」を見て以来もう…」「そう!「スイッチョねこ」!」とお姉さんは破顔して大喜び…いや、決してデレデレしているわけではない。まさかこんな風に安泰の話を普通に出来る日が来るなんて…安泰の描く動物たちは、フォルムと仕草が完璧とも言える仕上がりを見せながら、リアルとはまた異なる独自のタッチが、超絶なプリティーさを紙面に常に降臨させているのである!この動物画の可愛さ素晴らしさにタメを張れるのは、方向性はまったく異なるが、恐らく森やすじや宮崎駿くらいではないだろうか…。
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※これはシンボリックな絵本の見返し部分。THE・月に吠える!
それにしても「えほんやるすばんばんするかいしゃ」は、常に買った本に対して、ぼそっとコメントをしてくれるので、それが何とも楽しみなお店なのである。児童文学や絵本について語りたい方は、ぜひとも高円寺を目指すべし!きっと「えほんやるすばんばんするかいしゃ」が、堂々と受けて立ってくれることでしょう!雨なので二重に袋に入れていただき、狭い階段をエッチラオッチラ下って、いつの間にか雨の激しくなった午後五時半の高円寺。雨の飛沫に身体を濡らしながら阿佐ヶ谷方面へ徒歩で向かう。ふとアスファルトに視線を落とすと、そこにはかなりちゃんと映っている、己の影法師…まるで足の下に別の世界があり、その世界の自分と、足の裏を接して、相対しているようではないか…。
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2017年07月31日

7/31非情の京成本線!

朝早くから色々作業し、すべてが片付いたので大いなる開放感に包み込まれ、午後に外出。久々に千葉の名店「キー・ラーゴ」(2009/11/25参照)だ!と、すでに素晴らしい古本を見つけた気分になり、電車に揺られまくる。だが一時間四十分かけて到着した、午後四時前の長い商店街のお店は、冷たくシャッターを閉ざしていた…うぉぉぉぉぉ、「キー・ラーゴ」では初めてお店を訪ねて以来、一度もシャッターアウトはなかったはずなのに、ついにこの日を迎えてしまったか…。こぼれ落ちそうになる涙を我慢しながら、駅にサッサと引き返し、ならば八千代台の「雄気堂」(2009/05/30参照)だ!と二駅移動する。何事もなかったかのように胸をときめかせながらお店に向かうと、ぐぬぅ、無情のガラス戸アウト…よもや千葉の名店が二店ともお休みとは…考えもしなかった…。まだまだ強い日射しと、暑いアスファルトの照り返しに嬲られながら、これからどうするかを思案する。高根公団の「鷹山堂」(2009/05/17参照)…それともかなり引き返して京成八幡「山本書店」(2010/06/29参照)に…いや、そう言えばまだこの京成本線の先の駅に、古本屋があったはずだな…そうだ、志津の「日置書店」(2014/04/29参照)だ。おばあさんが切り盛りしている、街の小さな激安リサイクル系古書店であるが、その去就が気になるので、ここはひとつ良い本を買うという方針を変えて、消息を尋ねに行くとするか。そう決めて再び京成本線に乗り込み、意外なほど千葉の奥地へ来たのを実感しながら志津駅着。北口に出て、朧げな三年前の記憶と現実の街を縒り合わせ、小さな居酒屋ばかりが集まる鄙びた駅前を進む。すると駅から一本裏通りに、以前と変わらず閉店して自然に取り込まれつつある商店と肩を並べ、元気に立派に営業している黄色いお店が目に飛び込んで来た。正直に言うとその瞬間、閉店していないのが不思議なほど、寂しくちょっと荒れた通りで、よくも健気にお店が続いているものだと、大いに感心してしまったのである。嬉しくなって、コミックと文庫とエロ本ばかりの店内に入り込む。店主のおばあさんは健在で、帳場で大量のコミックの値付中。扇風機が涼風を流し込む、狭い通路にしゃがみ込み、棚を隅から隅までチェックして行く。さらには新しめの文庫の裏に、古く汚れた単行本が横積みになっているのを発見し、本を引き出し背をチェックして行く。集英社文庫「ダメをみがく/津村記久子・深澤真紀」NTT出版「第10回・NTTふれあいトーク大賞100選」ワニの本「恐怖びっくり毒本/ビートたけし編著」ニッポン放送出版「これが噂のヒランヤだ/三宅裕司のヤング・パラダイス編」情報センター出版「いちど尾行をしてみたかった/桝田武宗」を選び出し、おばあさんに差し出すと、たちまち本を仕分けた挙げ句、値段の付いていない四冊を積み重ねて「こっちは上げる!」と宣言。結局「ダメをみがく」の五十円だけを精算することに。う〜ん、たぶんこのお店には、時々来るだけでは分からない、何かが潜んでいそうな気がしてならない。地元民にしか分からぬ、このお店の役割と良さとお店の続く秘訣が、きっと何処かに隠れているのだろう。そんなことを思いつつ、相変わらず人影の無い表に出る。七月最後に訪れた古本屋さんは、まぶしく爽やかなレモン色で、小さな街に密やかに、大衆的雑本を振りまいていた。
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2017年07月30日

7/30復刻「死靈」!

本日は午後三時過ぎに浜田山駅の南に漂着し、緩やかな傾斜の上に広がる『柏の宮公園』の、午前に上がったはずの雨を彷彿とさせる、本当に降るような耳を覆うほどの蝉の多重鳴き声に圧倒され、コミュニティバス・すぎ丸に乗り込み、阿佐ヶ谷にただ逃げ帰る。その阿佐ヶ谷では、「千章堂書店」(2009/12/29参照)でハヤカワ・ミステリ文庫「二壜の調味料/ロード・ダンセイニ」を400円で購入し、表1袖に鉛筆で書かれた値段を消してもらい、いつもの書皮をかけていただく。

家に帰って一息ついてから、ある本の捜索に取りかかる。確か居間の古本山脈の何処かに…と朧げな記憶で当たりを付けて、ひたすら居並ぶ古本タワーを下層へ下層へ…。すると案の定、三つめのタワーを最深部まで退けたところで、捜索対象を無事発見する。やった!と喜びつつ、せっかくここまで久々に上の本を退かしたのだ。この際最深部に何があるのかちゃんと確認しておこうと、さらに底部まで掘り下げると、おおっ!「埴谷雄高全集」の別巻と久方ぶりの対面を果たす。全集最終刊の資料集成本で、値段は高い高い9500円(税別)である。2001年の刊行当時に、他の全集は一冊も買っていなかったが、これだけは何としても手に入れなければならないと、思い切ってちゃんと新刊で購入していたのである。なぜなら、その分厚い函の中には、資料集成本とともに、あの超難解ド級陰鬱探偵小説風形而上実験小説の金字塔「死靈」の「近代文學」掲載時の復刻版が、一冊の本としてまとめられ、挿さっていたからである!
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日本の三大奇想探偵小説「黒死館殺人事件」「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」の斜め上に恐らく屹立しているであろう、この世界の真理をとことんしつこく独自の思考で追求しまくる「死靈」!この未完の大小説がなければ、竹本健治の「匣の中の失楽」もこの世には生まれていなかった!その「死靈」のオリジナルを、雑誌を綿密に再現した二色刷りで、挿絵も含み四章までを収録している。単行本収録時には手直しが施されているので、これでしか読めない原初のオリジナル版なのである。いやぁ、またこのバージョンで読みたかったんだ。その難解さ故に、突如強暴に襲い来る睡魔と激しく戦いながら、どんなに脳をフル回転させても、決して百パーセント理解出来ない埴谷雄高の崇高で気高く、人生のすべてを費やした独自の思考の記録。恐らく、こちらが今後の人生すべてを賭けて、何度チャレンジしても、同じ挫折を味わうことになるであろう。だがそれでも、これを読み込んだ後に、何か開けるのか待ち構えているのか、馬鹿故にまったく想像つかないのだが、懸命に読み進めれば、何かが脳髄の何処かに痕跡を残すものと信じて、時々眉間に皺を寄せながら、読み返しているのである。せっかく見つけたんだ。これを機に、久々にチャレンジしてみるか…。
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写真は第四章までをまとめた復刻本と、昭和二十四年発行の眞善美社の単行本「死靈」。こちらは第三章までを収録している。
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2017年07月28日

7/28昭和九年の日本寫眞年鑑!

午前十一時からの『東京古書会館』(2010/03/10参照)での打ち合わせに照準を合わせ、早めに水道橋ルートから神保町入りを目指す。大体古本街が動き出す午前十時過ぎに到着し、店頭を覗き込みながら駿河台下まで移動するつもりなのだが、古本パトロールに身を入れ過ぎると、時間はあっという間に過ぎ去り待ち合わせ時間を迎えてしまうこと必至。なので普段よりピンポイント&スピーディーに気になるところをたどるのだが、それでも古書会館に着いたのは時間ギリギリであった。後は打ち合わせ後にじっくり見て回ろう。午前十時台では、まだ開いていないお店もあるからな。「日本書房」(2011/08/24参照)にて学習研究社 中学生名作文庫「たった一日の事件/R・マクドナルド・原作 水沢伸六・文」中学生傑作文庫3「消えた宝石 /E・クィーン(原作)福島正美(文)」を計千円で購入する。「日本書房」でこんな付録本が買えるとは、思いもよらなかった…。さらに「明倫館書店」(2012/04/04参照)ではオリオン社「動物園日記-これは不思議な物語-/林寿郎」を三百円で購入する。

一時間ほどの打ち合わせ後、再び古本の街に解き放たれる。正午過ぎの神保町は、昼食と古本を求める人間たちの坩堝と化している。『神保町交差点』を西に越えたところで、「南海堂書店」(2012/05/08参照)の木製ワゴンに珍しくつかまる。何たってフト目に飛び込んで来たのが、昭和九年の「日本寫眞年鑑」なのである。あまりにも無造作に本の上に置かれているのに驚きながら、写真作品と論考&名簿が半々の、重く大きな本を開いてみる。野島康三・ハナヤ勘兵衛・中山岩太・福原信三・渕上白陽…あぁ、これは買わなければならない。値段を見ると千円だったのでニンマリしながら買わせていただく。朝日新聞社「日本寫眞年鑑 昭和九年版」を購入する。さらにその後も街をぶらつき、『すずらん通り』で骨董関連に強い「風月洞書店」(2013/03/25参照)のワゴンを雑に流していると、右手から風のようなスピードで「こんにちは〜」と言いながら一人の男が接近して来た。慌ててそちらを向くが、男はすでに背後に回り、さらにそちらに首を捻ると、たちまち左手に移動してしまった。身体を反転させて正対すると、風のような男の正体は、本の雑誌社編集長の浜本茂氏であった。ご無沙汰の挨拶を交わしながら「この時間に出勤とはさすが重役」と冷やかすと「家でちゃんと仕事してから来てるんですよぉ〜」と返される。そして「ここ最近十日分ぐらいのブログを一気に読んだんですが…あぁ、気になったのがなんかあったんだよなぁ〜。なんだったけかなぁ〜思い出せないなぁ〜」と路上でパワフルに懊悩し始めた。相変わらず愉快な編集長さんである。そんな突然の出会いがあったため、氏と別れた後も何故か普段はそれほど用の無い「風月洞」ワゴンを丁寧にチェックしてしまう。すると右手の大判本ワゴンの隙間に、妙な気配を湛えた本を発見する。取り出すと、青林堂「櫻画報永久保存版/赤瀬川原平」であった。ダンボール箱付きでビニールカバーはないが、背に付けられた値段は300円!編集長が与えてくれた嬉しい出会いに感謝しながら、長細い店内奥で購入する。久しぶりのパトロールなのに、なかなかの成果を上げられるとは、さすがさすがの神保町であった。

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「日本寫眞年鑑 昭和九年版」。表紙はアールデコ調で、裏表紙はロシア構成主義風のデザイン。
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2017年07月27日

7/27三鷹の跨線橋に陶然とする。

ようやく一息つけるような、涼しい曇り空の下、三鷹駅近くの上連雀一丁目に流れ着く。目の前のフェンスの向こうには、大きな電車庫が広がり、黄色が輝く総武線や、用途の分からぬ特殊車両が、長い身体を線路の上に横たえている。その線路の上を少し見上げると、およそ百メートルの長さを誇る、古く実用的な跨線橋が美しくシンプルな骨組みを、空の中に浮かび上げている。これが、太宰治も愛したという、古い戦前から架かる陸橋か。靴底に削られ、何だか丸みを帯びた礫を含むコンクリ階段を上がると、古いレールをフレームとして再利用した、長い長い橋が、北と南の街をつなげてくれている。橋の真ん中辺りには家族連れが佇み、行き交う列車を飽きもせず眺め続けている。
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橋の南側に渡ると、その階段上がり口に、階段に太宰が佇む写真のある文学説明板がちゃんとある。思わず時空を飛び越え、昭和四年の創建当時まで心身が大胆にも遡ってしまうが、同時にガイナックスの名作オリジナルアニメ『フリクリ』の、ベスパが駒撮りで動き回る実写エンディングが撮影されたのも、ここら辺りの線路際ではなかったかと、思い至る。文学とアニメをしばしの間堪能し、ツラツラ歩いて「水中書店」(2014/01/18参照)へ。日本放送出版協会「趣味の世界8 奇石珍石」講談社文庫「悦楽王/団鬼六」140B「西加奈子と地元の本屋」を計300円で購入。三鷹駅始発の総武線にゆっくり座って阿佐ヶ谷駅へ。「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)にてサンリオSF文庫「流れよ我が涙、と警官は言った/フィリップ・K・デイック」岩波文庫「春昼・春昼後刻/泉鏡花」虫プロ COM名作コミックス「弁慶/手塚治虫」を計515円で購入し、おとなしく家に帰り着く。
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2017年07月26日

7/26「ますく堂」は引越し予定!

雨の降りしきる正午に西荻窪へ向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)にて「フォニャルフ」に古本を補充する。夏の西荻窪にお寄りの際はぜひとも冷やかしてやってください。早川書房「海外探偵小説作家と作品/江戸川亂歩」を100円で購入しながら店主・小野氏より、ある作業のお礼として新潮社長編文庫「黄金草/岡田三郎」をいただく。「どうせ同じ岡田三郎なら、赤爐閣の「誰が一番馬鹿か?」が良かったなぁ」などと憎まれ口を叩くが、お店を出て移動の電車内でページを紐解くと、銀座のカフェーから始まる大衆的女給悲愁物語にぐんぐん取り込まれてしまう。そんな風に見事なくらいに「黄金草」に夢中になっていたので、あっという間に雨上がりの池袋着。西口に出て道すがらの「夏目書房」(2008/07/05参照)に立ち寄り、店内に引き込まれた安売棚から河出文庫「白骨の処女/森下雨村」を200円で購入。そこから裏町に入り込んで、大きな道路を渡って椎名町方面に向かって住宅街を進んで行く。「古書ますく堂」(2014/07/20参照)が近々三度目の引越しをするらしい噂を耳にしたので、様子を見に来たのである。わりといつでも人の流れがある生活道路から、ひょいと曲がり込むと、おっ!ちゃんと木枠の格子戸が開いているじゃないか。営業中だ。狭く開いた戸を潜り、箱の積み上がる店内に滑り込む。するとますく堂さんがいつも通りの元気な声を出し、先客さんとお喋りをしている。「あ、古ツアさん」と気付かれるや否や、即座にその先客さんを「「おひさまゆうびん舎」さんです」と紹介される。あの姫路の!と驚き挨拶を交わしつつ、まだお店に行けてないことを、思わずお詫びしてしまう…これで店主さんにも挨拶してしまった。いつか、絶対にツアーするぞ。などと秘かに決心しつつ、ますく堂さんに引越しについての探りを入れる。何と引越し先は、同じビルの一軒挟んでのほぼ隣りで、「駅に近くなった」とますく堂さんが虚しく喜ぶ超近距離。そこは普通の事務所状態で、飲み屋を居抜きで古本屋として使用して来た伝統が、ついに途切れてしまうこと。ただし前二軒と同じく住居付きなので、取りあえずますく堂さんは路頭に迷わなくて済むこと。引越し時期はアバウトにお盆前後になりそうなこと。現店舗とそのカウンターを名残惜しむために、8/5(土)に久々に「スナックますく堂」(2012/09/14参照。古本修羅や古本無頼や古本一匹狼たちが、夜の古本屋に酒を持ち寄り、楽しく怪気炎と雄叫びを上げるイベント…ご興味ある方はぜひ!)を開催すること。などを次々聞き出す。すでに店内には、次のお店のために様々な所から拾って来た什器が置かれ、ますく堂さんのやる気がヒシヒシと伝わって来る。もしかしたら、次のお店が「ますく堂」の歴史上、一番古本屋さんらしい古本屋さんになるのかもしれない…。ひばり書房「呪われたふたつの顔/さがみゆき」レモンコミックス「頭脳線甦ったミイラ/好美のぼる」を計400円で購入し、8/5に再び来店することをあやふやに約束し、お店を後にする。
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写真はお店がテレビ撮影に使われた時に使用された小道具を、ますく堂さんがスタッフにねだっていただいた物。これを店先に下げ「古本屋らしくなったでしょ」とご満悦なのである。逞しいというか何というか…いや、これでこそ「ますく堂」!まるで諸星大二郎の「生物都市」のように、様々な物品が融合し、『古本屋』という店舗の体を成しているのだ!なので来店時は、お店に取り込まれないよう、細心の注意が必要なのである!
posted by tokusan at 17:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月25日

7/25 190km離れた古本屋さんの閉店を思う。

今日は久我山の北側に流れ着いたので、重く暑苦しい空気を掻き分けるようにして、ヒタヒタオアシスを求めるように歩き続け、荻窪「田中商店」(2013/07/26参照)にたどり着く。よし、今日はここで古本を買って行こう。頭上では不穏な雷鳴が響き始めたので、蒸し暑く薄暗く古道具の並ぶ店内に慌てて飛び込む。以前と変わらぬ左手前隅の暗がりに、50均文庫&単行本棚が潜んでいる。そこに神経を集中し、下がる古着はちょっと退かし、背の読めぬ本は取り出して明るいところで確認したりもする。河出書房「ダルタニャン色ざんげ/小西茂也譯」を50円で購入する。

…本当は、今日はこんなことをしている場合ではなかったのだ。長野・上田の「斉藤書店」(2010/04/24参照)が本日限りで閉店してしまうので、どうしても駆け付けたかったのだが…。清冽な青空の下、ダラダラと続く大きな坂を上がりるとたどり着ける、青く昭和的に古く静かな広い古本屋さん。店頭頭上に掲げられた『入手困難な貴重な本・珍しい本・定価よりぐんとお安く買える本』に心トキメキ、整頓はされているがわりと雑駁な棚造りが、そのトキメキをさらに加速させ、何かに出会えそうな予感を際限なく肥大させて行く…。私はこのお店で初めて、“掘出し物”を探し当てる体験を味わったのである。それまでは、読みたい本や、ちょっと安い本や、面白そうな本を買うだけの初心者的古本修羅であった。だが、いつかは自分もたくさん読んだ古本本の中にあったスゴい話のように、貴重な本を安く掘り当てたいと、常に思い願っていたあの頃の切ない日々。それがこの店を訪れ、右奥のちょっと安い古書が並ぶ棚の中から、大好きな作家・龍胆寺雄の新鋭文學叢書「放浪時代」を600円で見つけ出したのである。経年の汚れなどはあるが、古賀春江装幀の表紙もキレイ。昭和五年出版の、作家が生きた時代のオリジナル本を手に入れることは、とても重要で興奮する事態である。ついに自分にも掘出し物を見つけたぞ!そう感激すると同時に、古本屋に通い一生懸命探せば、いつかは探し求める本と出会えるんだ!という思いが、強く心に刻み込まれたた瞬間であった。つまり、私のある種の原点が、古本をいつでも貪欲に求めてしまう心が、この「斉藤書店」で生まれてしまったのだ。こんな気持ちを体験し、その後のブックハンティング人生を決定付けた古本屋さんが、今日閉店してしまうのである。慚愧の念に耐えない事態であるが、今は遠い190km離れた東京で、買わせていただき大事にしてる「放浪時代」を手にして、感謝の念を送ることしか出来ぬ、愚かな私なのである。「斉藤書店」さん、本当に長い間ありがとうございました!
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2017年07月24日

7/24団地に対する妄想を祓いに行く。

朝から大量の古本を箱詰めして、無事に大阪に送り出す。ひとまず役目を果たして、ホッと一息。仕事も緊急の案件に素早く対処し、ホッと二息目。落ち着いたところで、ここ最近頭の中に渦巻いてしまっている妄想を、軽く検証して実地調査に当たることに決める。その妄想とは、練馬『光が丘』の古本屋事情である。超巨大団地地帯である光が丘には、今やリサイクル系の古本屋さんが二軒あるだけである。ならば、あの超立体的集合密集住宅内にある古本は、主に二店にドバドバと集まっているのではないだろうか。その中には当然古書も含まれているはずで、そうなるとお店では恐らく持て余し、廃棄か安値で販売している可能性があるではないか。もしかしたら通路の片隅に、安値の古書コーナーが設けられているかもしれない…。こんな馬鹿なことを考え始めたら、どうにも止まらなくなってしまい、もはやこの目で確かめるしか、妄想を止める手だてはなくなってしまったのである。と言うわけで鷺ノ宮駅から西武新宿線に乗り込み中井駅で下車。一旦地上に出て商店街を伝った後、名物書店「伊野尾書店」横の大江戸線への地下階段を深く下る。そこからおよそ十六分で、終点の光が丘へ。『A1』出口から蒸し暑い地上に出ると、街に張り巡らされた道路にはすべて街路樹が生い茂り、その緑越しに巨大で横にも長い団地群が胸から上を覗かせている。まるで大友克洋の超能力漫画「童夢」のような光景であるが、ブロックごとに団地のフォルムが異なるのは、統一感のない奇妙な印象を与える。東に向かい『東大通り』を北に進んで行くと、巨大な街の外周をなぞる形になる。道なりにグインと東に曲がり込み、交差点に到達すれば、対岸にもう第一のお店の姿が見えていた。

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●「古本市場 光が丘店」
マンション一階のワンフロアを占める店舗前には、物凄い数の自転車が停まっている。楽しい嬉しい夏休み中の子供たちだな…。中に入ると、倉庫のように広く明るい空間が広がり、華やかなゲームソフトコーナーや、左手前側奥にあるカードデュエルコーナーに、自転車の持ち主である子供たちのほとんどが群がっている。古本を目指し、人気のない左奥にズンズン入り込んで行く。背の高い棚で作られた五本の通路に古本は集められている。新刊のミステリ&エンタメと文庫を中心に、模範的なリサイクル店的並びを見せているが、量がとにかく多い。ちょっと「ブックセンターいとう」っぽい雰囲気である。最新入荷本がプラスチックカゴに詰め込まれて、棚に大量に並んでいるが、これを掘って見ろと言うのか…。そして驚いたのは、驚異の80円コーナーが存在すること。80均の単行本と文庫で、通路が一本成立してしまっているのだ。すでに妄想していた古書がないことは確認済みだが、この80均通路がこのお店の目玉だな、と勝手に決定し、目が痛くなるほど隅から隅まで眺めてしまう。ちくま文庫「七時間半/獅子文六」原書房「カニバルキラーズ/モイラ・マーティンゲイル」を計172円で購入する。

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●「BOOKOFF 練馬光が丘店」
まるで城のない城下町のような団地の外周を伝い、『東大通り』をそのまま下って、歩いて歩いて南端に出る。さらに団地沿いに西に向かい、『公園通り』を越えてからの信号で南の住宅街に入って行くと、なんだかゴルフ用品店のようなブックオフがこつ然と現れた。結果から言うと古書は皆無で、ちょっと大きめワンフロアのスタンダードなブックオフである。なのでじっくり棚を見た割には食指動かずに、何も買えずにお店を後にする。唯一琴線に引っ掛かったのは、通路の奥にあった古いスーファミソフトワゴンであった…。

とこのように現場に当たり、己の目で現状を把握すれば、酷く甘い妄想もあっけなく祓えるものなのである。ふぅ、スッキリした!
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2017年07月23日

7/23東京・吉祥寺 ホホホ座吉祥寺店 1日限定の本屋さん

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京都「ホホホ座」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」P45参照)の山下賢二氏が上京し、本日だけの「ホホホ座吉祥寺店」を、ひとり出版社の『夏葉社』で開店するとのこと。古本も売られるらしいので、午後に様子を見に行くことにする。「ホホホ座」は緩くて奇妙なフランチャイズ展開を続け、現在西日本を中心に七店を数えているが、これがもしや東京進出の布石となるのだろうか…(ちなみに今年の二月には、新宿の『BEAMS JAPAN』で限定ショップを開いたことも(2017/02/05参照))。北口の雑踏を擦り抜け、『PARCO』前から『吉祥寺通り』をグングン北北東に進んで行く。雨がポツポツ落ち始めて来たが、本降りになりそうな気配はないので、構わず歩みを進める。『八幡宮』の白壁前に、スマホを操作しながら集まるたくさんの人を目撃し、「昆虫屋台やってま〜す」と呼び掛ける『昆虫食』イベントを開くギャラリー前を通過して、やがて『武蔵野第四小学校バス停』を過ぎると、マンション半地下の店舗ウィンドウに「ホホホ座吉祥寺店」と白い紙が貼り出されているのが目に飛び込んで来た。おぉ!駅前のワンルームマンション(以前の社の様子の一部は2013/08/29参照)から引っ越した夏葉社は路面店…いや、路面社になったのか!とその出世ぶりに感心し、しばし何処から入ったらいいのか逡巡した後、素直に左端の磨りガラス扉を恐る恐る開けてみる。するとそこに立っていたのは笑顔の夏葉社・島田氏で、お客さんが輪になった店内では、なんと世田谷ピンポンズさんがライブの真っ最中…うわ、失礼しました。慌てて右壁に寄り添うように逃げ出して、そのままピンポンズさんの熱唱に耳を傾けながら、壁棚を目力入れて注視する。社に備え付けられた壁棚の、最上段&最下段以外を使って、山下氏の古本が並べられている。文庫と単行本と雑誌が主で、ジャンルはカルチャー&サブカル・純文学・海外文学など、硬さと軟らかさがセンス良く交錯している。値段はかなり安めなので、とても嬉しい。フロア中央には雑誌類やリトルプレスや新刊が面陳され、左端には夏葉社の本も勢揃いしている。ライブ終了と同時に三冊をスパッと選び、奥の社長机で精算をお願いする。山下氏とは別府以来の挨拶を交わし(2011/11/27参照)、「ずいぶん頭が白く…」と言われる。あれからあっという間に六年…色々色々あったので、すっかりブラックジャックみたいな半分白になってしまいましたよ…。小学館入門百科シリーズ9「プロレス入門/監修■ジャイアント馬場」角川文庫「横溝正史読本/小林信彦編」旺文社文庫「アンクル・トリス交遊録/柳原良平」を計800円で購入する。島田氏とは最近の「大河堂書店」(2009/03/26参照)での功績の話をひとしきりしてから、新社屋の案内をしていただく。「前々から、ここで何かやりたいと思っていたんですよ」。確かにほとんどお店のような感じで、イベントを行う広さも充分にある。「ホホホ座吉祥寺店」で、イベント開催に先鞭を付けた夏葉社には、今後は出版物とともに、社屋の動きにも要注目である。
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2017年07月22日

7/22一冊の目録から八年前が甦る。

今日は午後三時過ぎに荻窪北側の天沼に流れ着く。熱風に包まれたまま、すっかり衰えてしまった最後の体力を振り絞り、荻窪駅の南側を目指す。線路際に到達すると、おぉ!遥か彼方に暑くてもお客が店頭に群がる「ささま書店」(2008/08/23参照)の姿が臨めるではないか。
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わりと深い線路下の地下道を潜り、店頭棚前着。学研「愉しき夫婦/小島信夫」光風社「悪魔の系図/島田一男」毎日新聞社「新戦後派 野坂昭如 寺山修司 永六輔 野末陳平」流行通信「Studio Voice vol.132 江戸川乱歩-ミステリアス・フリーク」を計630円で購入する。この1980年代丸出しの江戸川乱歩特集は、目次には男装の甲田益也子がモノクロで登場し、次を開くと見開きで車の中で張り込み中の少年探偵風の戸川純がドン!
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その時代でしか出来なかった乱歩の捉え方が、もはやノスタルジーの域に突入してしまっている。乱歩+八十年代の二重のノスタルジーは、偉大なノスタルジー+消費され失われた時代的ノスタルジーとも言え、素敵に軽薄なのだが、妙な相性の良さも紙面からふうわりと立ち上がって来る…。

そのまま勢いで阿佐ヶ谷まで歩き通し、夏の夕方の「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)。
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するとたちまち店頭左脇の雑誌&ビジュアル本箱の中に、「古本 海ねこ」(2012/12/17参照)の古書目録第一号を発見したので、すぐさま店内に飛び込み「今日はこれだけで」と103円を支払い購入する。2009年七月発行で、最初から図版多めで文字ビッシリの、絵本&児童文学に特化した全98ページの気合いの入った目録である。やはり古書絵本の図版は見ているだけでワクワクしてくる。ところが冒頭のこれまた細かい案内文を読んでいると、目録を出す同時期に、「絵本、そして、本にまつわる人形・雑貨たち 古本 海ねこ 6日間限定ショップ」を開くとあるではないか。その瞬間、熱を持ち鈍った脳髄の奥底で、古い記憶が生意気にもスパークする!…そうか、これは青山の「日月堂」さんの隣の、元「銀鈴堂」で限定ショップを開店した時の目録なのか!行った、これ確か最終日に行ったはずだ!(2009/08/01参照)と、ちょっと興奮してしまう。開催期間は7/21〜8/1の飛び飛びの六日間なのだが、ちょうど八年前のことなのである。奇妙な符号に驚きながらも、八年という月日の経つ早さに、しばし唖然としてしまう。
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2017年07月20日

7/20近所で大量の古本を見られるのは?

今日は仕事でほぼ一日中家の中に雪隠詰め…つまりは古本の山に閉じ込められ過ごしているわけだが、昼食後に一時間ほどの間隙を見出して屋外に脱走。そして近場で短時間にたくさんの古本が見られるのは、「本の楽市」(2010/07/18参照)が24日まで開催中の高円寺!そう決めてJR高架下に向かい、強い陽を避けながら直線に高円寺へと向かう。ガッツリ買うと言うよりは、気晴らしの『古本散歩』気分なのである。だがそれでも、買えるものは見つかった方が良いし、それも安く見つかるなら尚更だ。だからたくさんの古本に接する方が、願いが叶う確率は高くなるだろう。そんなことを考えて、まずは「藍書店」(2014/01/14参照)にたどり着く。外壁棚から、茶と珈琲社「寫眞で見るコーヒーの知識」(昭和三十一年発行の、コロンビアのコーヒーを紹介する小冊子。栽培・品種・運送方法・いれ方・最新式ミル&ロースターなどなど)を100円で購入する。続いて同高架下の「都丸書店」(2010/09/21参照)の外棚にも張り付くが、欲しい本&気になる本はみな500円だったので、今日のところはセコくパスする。そのまま駅前を通り越し『座・高円寺』へ向かう。エントランスホールに入ると、二列に縦列するお洒落な古本島のお馴染みの光景が、薄暗いエントランス内に浮かび上がっていた。たまたま補充に来ていた「古書 コンコ堂」天野氏(2011/06/20参照)と挨拶を交わす。今回は「一角文庫」さんも良いのだが、「rhythm_and_books」(2011/08/10参照)さんがだいぶ好み。古書に奇妙なサブカル本…というわけで駸々堂「冗談/滝大作」を500円で購入する。駅方面に引き返して『あづま通り』に入り込み、今日は開いてる「越後屋書店」(2009/05/16参照)へ。家と家との隙間通路壁棚を、隅から隅までじっくり眺め、博通「現代スパイ論/中薗英助」を見つけて、たたまた表に出て来たオヤジさんに100円を支払う。この本、装幀挿絵が中村宏なのでとても不気味。内容は、日本における国際スパイ小説の開拓者による、スパイを通した現代文明論である。これが今日一番のめっけものであろう。それにしても聞いたこともない出版社の『博通』が何だか気になる。まるで『博報堂』と『電通』を合わせたかのような名ではないか。
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2017年07月19日

7/19東京・国分寺 胡桃堂喫茶店

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コメントタレコミで知ったお店が、朝八時から営業していることを知り、まだそれほど気温が上がらぬ前に悠然と訪れてみることにする。ダイヤが乱れ気味の中央線で西へ向かい、巨大な駅コンコースから、これまた巨大な空地が目の前に広がる北口へ出る。北にそのまましばらく進んで、『本町二丁目交差点』で東へ曲がり込む。新しい街並の中を迷わず直線に進むと、やがて『国分寺街道』に合流する『本町一丁目交差点』にたどり着く。その北側角地に、炭色の壁を持つ開放的な喫茶店が出来ていた。右側は扉が大きく開け放たれ、路上と地続きのようなカフェ的雰囲気だが、左側は昭和アンティーク調な扉とウィンドウを備え、喫茶店然としている。そしてウィンドウの向こうには本棚が見えている…こういうお店で毎度困るのは、本を買うだけでも利用出来るのか、ということである。ここも店構えは完全に喫茶店なのであるが、取りあえずは様子を見るために突入して、本棚にまずは張り付いてみよう。喫茶利用が必須なら、いずれは声を掛けられるはずだ…。そう予想して、右側の開放的な入口から、左側の本棚を目指してナナメに店内に切り込んで行く。エプロンを着けた店員さんが「いらっしゃいませ」「いらっしゃいませ」と迎えてくれるが、席には着かずに窓際の本棚前に立つ。ここは自社出版の本と新刊、それにテーマ別の新刊と古本が並べられている。さらに隠れるようにして左奥に進むと、壁際から二階への階段壁が本棚になっており、およそ二十ほどの棚段とボックスが連なっている。ここも新刊と古本が混ざり合い、民俗学・映画・絵本・児童文学・料理・天文・自然・博物学・詩集・出版・本&古本・東京・散歩などを細かく端正に並べている。古本は挟まれているデータスリップの飛び出し部分が、三角カットになっているので、わりと分かり易い。本の量はそれほど多くはないが、知性と教養を芯にしたセレクトがすべての棚に行き渡っている。値段はしっかりの高めが多い。一冊を選んでカウンターに差し出しながら「本買うだけでも大丈夫なんですか?」と聞くと「もちろんです。ここは書店でもありますから。水金土は、夜遅くまで書店としても営業していますので、またぜひいらして下さい」と教えてもらう。ふぅ、良かった。勁草出版サービスセンター「神戸の本棚/植村達男」を購入する。外に出ると通りがかりのおば様が、カウンターの店員さんに向かって話し掛け始めた。「突然ごめんなさいね。でも素敵なお店ね〜。後で絶対来ますわ〜」。

7/16にジョージ・A・ロメロが死んでしまった。映画監督であの現代的なゾンビ(死んだ時の姿の普段着で登場。動きはゆっくり。人の肉を求める。頭を吹き飛ばされると行動が停止。ゾンビに噛まれると潜伏期間を経てゾンビとなる。などなど…)を発明し、映画・ゲーム・漫画・ドラマ・小説の世界に、数多のエピゴーネンとリスペクトとパロディとパスティーシュが現在進行形で蔓延し続ける状況を作り出した、偉大なる人物である。そこで、家にあるロメロに直接関わる物を集めて追悼。LPレコード「ZOMBIE DAWN OF THE DEAD」はGoblinによる映画のサントラで、下北沢にある曽我部恵一経営のお店『CITY COUNTRY CITY』で購入。ABC出版「ゾンビ/ジョージ・A・ロメロ+スザンナ・スパロウ」は映画のノベライズ本。意外にレア本であり、安く手に入れようとすると、結構苦労すること必至。他にも講談社X文庫「死霊のえじき」があるはずなのだが、残念ながら文庫の山に埋もれて発見出来ず…。
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posted by tokusan at 12:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月17日

7/17夏の「あきら書房」

今日は早い時間に初台辺りに流れ着くが、古本屋さんを行動の基準とする私にとっては、どうにも動きの取り難い場所である…いや、いつの日からかそうなってしまったと言うべきか。ちょっと『甲州街道』に立ち尽くし、過ぎ行く車が巻起こす排ガス臭い風さえも涼しく感じながら、かつてはたどれた近辺のお店を思い出してみる。幡ヶ谷ではまずは『六号通り商店街』の「小林書店」(2008/07/09参照)。可愛い鳩的店名ロゴと、右側の隠し部屋的ゾーンが印象的であった。そして商店街を抜け、さらに『水道道路』も渡って坂を下ると「なつかし屋」(2008/09/28参照)。通路にうずたかく積み上がる本やプラモに苦心しながらも、勇気を胸に本の隙間を進む、そんなスリリングなお店であった。笹塚まで移動すれば、『甲州街道』沿いの「一新堂書店」(2008/06/24&2011/02/07参照)が、常に逸る古本心を優しく受け入れてくれたものだ。美術系に強かったが、私的には文庫でお世話になっていた…。この三店を巡るだけでも、だいぶ心は燃え上がるはずなのだが、今はもうそれも叶わない。現存する「BAKU」(2012/05/28参照)や「DORAMA」(2012/03/16参照)で代用しようにも、代用出来ない味が、なくなったお店には厳然と存在していたのである。右頬をツツッと流れたのは、汗かそれとも悲しみの涙か…。

いつまでも女々しく思い出に浸っていても仕方ないので、京王バスに乗り込んで阿佐ヶ谷方面へ戻り始める。だが終点の駅までたどり着くことなく、『青梅街道』沿いの『梅里中央公園入口』で途中下車し、北側の路地に入って、夏の「あきら書房」(2016/03/28参照)の様子を見に行くことにする。おぉ、この蒸し暑い中、草木の咲き誇る庭の向こうに、ちゃんと古本屋部屋が開放されているではないか。
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間髪入れず店内に入り込み、あまり動きの見られない手前ゾーンはササッと流して、右奥の床に置かれた本の山と本棚中段の古書ゾーンを集中的に漁る。その間に、俊敏な蚊にブスブス刺されてしまい、気がつけば右頬も刺されており、かゆみに悶絶してしまう。だが、牧神社「夢みる人 エドガー・アラン・ポーの生涯/マリー・N・スタナード」白鳳社「婦人職業戰線の展望/東京市役所編纂」(箱ナシで背は傷んでいるが、昭和七年発行の職業婦人についての資料集。巻頭のグラビア『婦人職業の尖端を往く女性』が最高!エアガール・ガソリンガール・マーリンガール・パラシュートガール・ニュースペーパーガール・マネキンガールなどなど)を見つけたので、計100円で購入することにする。奥のガラス障子前に立ち「すいませ〜ん」と何度か声を出すが、応答がまったくない。大丈夫だろうか…もしかしたらこの暑さで老婦人は…などと不吉なことを考えつつ、棚の横に大振りな鈴が下げられているのに気付く。そうか、呼ぶ時はこれを盛大に鳴らすのか。紐を引っ張りンガランガラ…するとすぐに障子が開いて、老婦人が元気な姿を見せてくれた。ホッとしながら百円玉を手渡し、「今日は暑いですね〜」「ええ、本当に」と他愛無い会話を交わし、庭に脱出する。家に帰ってからは、大阪へ再び送る古本の準備に手をつける。
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posted by tokusan at 17:39| Comment(4) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月16日

7/16暑さに挫けて大いに怠ける。

朝から仕事をこなした後、予定をしっかり立てて正午過ぎより外出行動を開始する。色々飛び回るつもりで、駅では『都区内パス』を750円で購入。まずは荻窪に向かい「ささま書店」(2008/08/23参照)で外棚に対峙。それにしても暑い。そして珍しく誰もいない…湿気の籠った暑さに舐られていると、体力とともに思考能力も行動力もグングン低下して行くようだ…。だが幸いにも、青木書店「どれい狩り 快速船・制服 安部公房創作激集」(カバーナシ)東峰書房「随想 鼠の王様/椿八郎」(中野・新井薬師の眼科医であり推理作家の随筆集。巻末に中島河太郎による作品目録アリ)を発見出来たので、ニヤニヤと計210円で購入する。暑さに足を重くし続いて西荻窪に向かい、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に補充しつつ、晶文社「幻の探偵作家を求めて/鮎川哲也」杉山書店「人形佐七捕物文庫 春色眉かくし/横溝正史」を計200円で購入しながら店主・小野氏と打ち合わせや無駄話などを進め、昨日買った「黄いろい楕圓」を化粧直ししてもらったりしながら冷房の効いた店内で、盛大に楽しくだらしなくだべってしまう。すると、これからの行動予定が涼しい店内から、すべて熱いアスファルトの上にドロリと流れ出てしまい、たちまち雲散霧消してしまった…古本もちゃんと買えたし、今日のところは、予定を返上してもう帰ることにするか。そんな風に怠け心に火を点けて、『都区内パス』が無駄になったことに多少心を痛めながらも、早々に帰宅してしまう…あぁ情けない。
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すると長野県上田市を訪れている南陀楼綾繁氏から、上田の古本屋ルポがメールで届いており、喜ぶとともに、己のだらしなさを大いに反省してしまう。…7/25には閉店してしまう「斉藤書店」(2010/04/24参照)には、どうにかして滑り込みたいものである…そして不定期営業の「ほその書店」(2012/04/30参照)に、たった一度のチャレンジで入れたとは!南陀楼氏はなんというラッキーボーイ!とモニターを前に羨ましがることしきり。やはり古本屋さんは、労を惜しまず足を運んでなんぼの空間なのであろう。
posted by tokusan at 16:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする