2017年01月10日

1/9東京・駒込 BOOKS青いカバ

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駅のホーム西側は、丸く植栽されたツツジの法面に挟まれた、浅い谷底になっている。その西の階段を上がり、改札を抜けて南に跨線橋を渡り、大きな『本郷通り』に出て、南に進む。すぐに鬱蒼とした林を抱える『六義園』のレンガ門を右に見てから、冷たいビルの足下をさらに南進して行く。右側からは常に、『六義園』の偉大な気配が、ビル越しに漂ってくる。やがて『上富士前交差点』で『不忍通り』にぶつかるので、南側に渡って通りを西へ。ちょっと歩くと、左手ビル一階に、本日オープンした古本屋さんが姿を現す。鮮やかな水色のテント看板には、店名通りの青いカバが、ロゴの一部として描かれている。その下には開店祝いの立花と共に、右に単行本棚、左に文庫棚が設置されている。値段は100〜300円の振れ幅圴一である。スライドドアを左に動かして店内へ入ると、どの通路にもお客さんが立つ、初日盛況状態。大変目出度いことである。床には板が張られ、棚はスチール棚とオリジナル木棚が共存している。手前は真ん中に平台+棚を置き、両壁は本棚。右側半ばの帳場を過ぎると、奥は右側に少し広がり、壁棚に囲まれた通路が三本形成されている。奥の通路はわりと狭く、一人が立つと譲り合わなければ擦れ違えない幅になっている。左壁には日本文学文庫・海外文学文庫・時代劇文庫・新書・ノートラック。右壁には絵本・児童文学・図鑑類・セレクト新刊が収まっている。中央の平台には夏葉社本などの新刊と共に、おぉ!城左門の署名入り豪華詩集が七千円!連結した棚はまだほぼ空いている状態で、赤瀬川原平・自由価格の珍本全集、それに大判のバンド・デシネが面陳されている。奥に進むと、左端通路には女性実用・食・生物・科学・建築・エッセイ・本&出版・詩集・辞典・笠井潔・ミステリ&エンタメ・日本文学が並ぶ。中央通路には、海外文学・美術・映画・サブカル・現代思想・政治・社会・資格・ビジネス。右端通路はコミック・民俗学・歴史が集まっている。開店当日だけあって、まだまだ棚にブランクが目立ち、奥壁棚には大きなバンド・デシネパネルが飾られていたりするのである。なので棚の構成は暫定的なものである可能性大。だが、ジャンル全方位で本を並べているようなので、通りがかりの人にも、地元の人にも、わざわざ訪れてきた人にも、古本修羅にさえも、楽しんでもらえる古本屋を目指していることは明らかである。値段はちょい安〜普通。書肆ユリイカ 今日の詩人叢書1「山本太郎詩集/編集大岡信」(300円!)南進社「南進叢書1 ニューギニア」洋々社「アイヌの歌人/湯本喜作」(カバーナシ)を購入すると、店主とは去年のわめぞ忘年会で擦れ違っていたので「古ツアさんですよね」と声をかけられてしまう。「山本太郎詩集」に無地の書皮を手際よく掛けてもらい、そこに『青いカバ』ハンコを捺していただく。恐らく今年初の古本屋開店、おめでとうございます!これから棚にさらにどんな本が並び、お店がどう変化&進化して行くのか楽しみにして、また必ず古本を買いに来ます!

店内でたくさんの古本を抱えた南陀楼綾繁氏と合流し、肩を並べて路線バスに乗り込み護国寺方面へ。夕闇迫る裏通りを歩き、三角寛の血族が経営する渋く立派な料理屋『寛』の存在を教えてもらったりしながら(敷地の角には、薄れて『三角寛』としか読めぬ棒杭の標識が!)、「JUNGLE BOOKS」(2010/08/20参照)の『MUSIC FAIR2017音盤市』を偵察する。居合わせた吉上恭太氏や文庫善哉さんと挨拶を交わし、市に熱中する南陀楼氏をほったらかし、この三日間気になっていた自分のCDカゴをチェックすると、何と九枚も売れている!うひゃぁ!小玉和文や『集団左遷』と『傷だらけの天使』のサントラやゲーム音楽やフィッシュマンズやTHRILLまでが売れている!いや、なんでも出してみるもんだなと、ホッと胸を撫で下ろす。その後はだるま市を絶賛開催中の「旅猫雑貨店」(2008/07/19参照)さんに顔を出したり(戦前の、目玉と口が飛び出る神戸のミニだるまが、すごく欲しい!…だが値段は五千円…)、「往来座」(2009/01/09参照)で駿河台書房「傳説パトロール/戸川幸夫」を300円で買ってのむみち嬢に挨拶したりした後、南陀楼氏と餃子屋でグビグビ数杯傾ける。年末の北海道トークツアーで雪に苦しめられた話や、雑誌「ヒトハコ」の未来について耳を傾けつつ、色々手札を見せ合って、お互いに何か出来そうなことをぶつけ合う。今年こそは、もっと二人で何かやりたいものである!すっかり酔っ払った後は、「JUNGLE BOOKS」さんまで夜道を引き返し、音盤市の打ち上げに紛れ込む。半地下の古本屋さんで、フロアに大きなテーブルを出し、古本棚に囲まれてお酒を嗜むのは、とても愉快でおかしな時間である。
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階段上から、陽気な皆さんを激写。「CD市」の次は「切手市」という噂あり。本当に開催されるのなら、必ず出品いたします!
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2017年01月08日

1/8やはり「プラハ書房」は不動の良質を誇っていた。

今日も午前十時に部屋着に厚着して外に飛び出し、「帰ってきたJ-house」(2015/12/26参照)の朝市へ。鈍い曇天の下の、雨が降り始める前の店頭は寒過ぎるのか、猛者もなんだか少なめである。南雲堂「映画&英会話 駅馬車」を100円で購入する。懇切丁寧な解説入りの英和シナリオと、映画から直接録られた音楽(つまりセリフも効果音も入っている)カセット一本が付いている。1973年刊で、当時の値段が2500円……。

ちゃんと着替えて午後に外出し、大好きなはずなのに、あまりに足を運んでいない至宝の古本屋さん「プラハ書房」(2010/12/22参照)を訪ねることにする。もう一年以上もほったらかしているなんて、なんと愚かな!その間に、どれほど良い本が売れてしまったのかと考えると、身体がたちまち古本嫉妬の業火に包まれてしまう。そして、久々にあの空間を堪能出来る期待と、ちゃんと開いているだろうか?という不安をないまぜにしつつ、もしかしたらあんな本やこんな本が並んでたりして…などと都合の良い妄想全開の愚かな男を乗せ、高架列車は冷たい雨の中を北へ走り続けている…。東武スカイツリーラインの、立派なのにとても寂しい蒲生駅で下車し、駅東口の巨大自動車教習所の向こうに、テクテク回り込む。ガレージの柱に取付けられた『本』の文字が見えてきた。そのガレージには車が停められており、外棚は既になく、ワゴンすら出ていない。だが、お店の中には、黄金の明かりが煌煌と輝いているではないか!
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サッシ扉を開けて中に入ると、左の帳場に座るオヤジさんは、手を擦り合わせて指先の暖を取っている。なんだか店内に本とダンボールのタワーが、かなり増殖している。正面の100均文庫台上のほとんどは横積み単行本タワーに覆われてしまっており、右側通路の手前はダンボールや本の山に塞がれ、通行不可となっている。それにしてもこの大量の本は、いつもいったい何処から買い入れてくるのであろうか…本タワーの中には古い大衆小説がチラホラし、その無尽蔵とも錯覚する豊かさに、盲目的に感心してしまう。早速そんなお店の雰囲気に飲まれながら、各棚を検分して行くと、どこもしっかり風が吹いており、やっぱりとても良い感じ。狭い通路にも入り込み、積み重なる本の背にも目を凝らし、楽しい時間があっという間に過ぎ去って行く。気になる本を何冊も何冊も手にして行くと、冷たい本の表面温度に体温を奪われ、終いにはオヤジさんと同じように、手を擦り合わせて暖をとる、自分がそこにいた。そして中央通路の棚下平台に、大日本雄辯會講談社「無敵日本軍/武藤貞一」が千円で売られているのを発見する。昭和十三年刊の、主に中国大陸での進撃を、大日本帝国の偏った視点のみから取り上げた、旧日本軍礼賛の児童書である。補修はしてあるが、ちゃんとカバーも付いている。こんな本が、ポロッと安値で置かれてるんだもんな。そんな風に、久々の「プラハ書房」に大いに感心しながら、その一冊を購入する。やっぱりここには、もう少し、マメに足を運ぶべきだな。
posted by tokusan at 19:07| Comment(5) | TrackBack(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月07日

1/7午前中の三手で満足を得る

■一手目:午前九時二十分
今日はどのように動こうか思案していると、小箱のゆうパックが届く。楽しみにしていたヤフオクの落札品である。品目はざっくりした『昔の子供の本』。十冊ほどの学習雑誌や歌本や付録などがまとめて出されていたのだが、その中に心を突き動かす一冊が、さりげなく紛れ込んでいたのを、しっかり見逃さなかったのである。おかげでライバルなく千円にて落札。その一冊とは小学館「女学生の友」昭和三十三年7月号付録「電光ヤマネコ娘/城戸禮」である。あの多作大衆活劇小説家の長編少女明朗小説!読みたかったんだ!つまりはこの一冊のためだけに十冊余の本を買ったわけであるが、嬉しさの方が遥かに大きく、後悔の念はまるでない。今晩ビールでも飲みながら楽しく読もう。
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■二手目:午前十時五分
そういえば、ご近所の古道具屋「帰ってきたJ-house」(2015/12/26参照)では、今年初めての土日店頭朝市が開かれている。これを見ずに年は明けないので、すでに猛者が群がるお店に向かってみると、端っこに猛者が見向きもしない一冊100円映画パンフラックが置かれていた。五十センチ左横の戦闘を他人事のように涼しく眺め、パンフを一冊一冊繰って行く…七十年代の物が多く、有望な鉱脈の予感…ぬぉっ!昭和四十年公開の東宝映画「クレージー・キャッツ結成10周年記念映画 大冒険」が出てきた!やったぞ!特技監督は円谷英二だ!今年も初っ端からありがとう、J-house!他にヘラルド「11ぴきのねこ」と小学館・音の教材「歌のおばさん・松田トシ・シリーズ」(四角いピクチャーレコード)を選び、計300円で購入する。
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■三手目:午前十時四十五分
一旦家のポストに戦利品を放り込み、そのまま手ぶらでテクテク歩いて高円寺。すでに「西部古書会館」(2008/07/27参照)の「杉並書友会」が、恐ろしいほどの新年古本市初めの熱気を漲らせていた。古本修羅の間に分け入り、あっという間に己も修羅の一員となる。だが、すでに「大冒険」パンフを掘り出した喜びが、心に異様なほどの余裕を齎しているので、たくさんのライバルに揉まれようがぶつかられようが、まったく意に介さずほとんど本も手にせず、通路を擦り抜けて行く。だが最後チェックした右壁棚手前の一本で、二人の修羅の尻越しに、気になる一冊を発見してしまう。手を伸ばして取り出すと、それは労働運動系の児童小説なのだが、帯には『少年探偵』の文字が!目次を開くと、そこにも『なんとか探偵をしたいもんだ』『五人の探偵はそろった』『もうひとり女の探偵がいた』『いよいよ探偵らしくなってきた』『ぼくらは探偵をしたんです!』と、やたらに“探偵”の二文字が踊っているではないか。これはもう、探偵小説好きにはたまらん!と抱え込む。新潮社「鉄の町の少年/国分一太郎」文芸評論社「近代作家/楠長之助・神津久人」紀元社「大陸をのぞく/寺本五郎」(函ナシ。銀行頭取の満州見聞記。滿鐵『あじあ號』についても、“流線汽關車流線型”との記述あり)を計1300円で購入する。ちなみにこの工場内少年探偵団、工場で起こった盗難事件を、地道で真面目で綿密な捜査をして証拠を集め、犯人を理詰めで追い詰めて行きます…。
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というように、幸せな古本三手を午前中に打ち終わってしまったので、「古書 赤いドリル」那須氏と「なごみ堂」(2016/08/14参照)店主と年始の挨拶を交わした後は、すっかり満足を得てそのまま家へと帰ってしまう。
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2017年01月06日

1/6音盤市に飛び入り参戦することになる

今日の古本的行動は、まず午前九時過ぎに家を出て、西武新宿線で東村山「なごやか文庫」(2012/01/10参照)の、文庫10円・単行本30円の棚卸しセールに向かうことから始まる。車中の読書は押川春浪「東洋武侠團」なのだが、主人公の蠻勇侠客・段原劒東次が、常軌を逸した強さを誇るのが愉快でたまらない。恐らく軍隊一個中隊(歩兵約200人)ぐらいは、一人で軽く蹴散らしてしまうだろう。あまりの狂った強さに、ついつい互角に闘える大人物を、頭の中で検索してしまう。…『刃牙シリーズ』の範馬勇次郎、『魁!男塾』の江田島平八、それに『北斗の拳』のラオウなら、充分に対抗出来るかもしれない…。そんな脳内与太話にうつつを抜かし、棚への補充真っ最中のお店に到着。
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見境なければバカバカ買えるかもしれないが、真剣に選ぶとそれほど多くは手が出ない。結局、新潮社「殿さま生活/星新一」山と渓谷社「バックパッキング入門/芦沢一洋」白揚社「数学マジック 数学を使う奇術全書/マーチン・ガードナー」光文社文庫「少年の眼/川本三郎選」を計100円で購入する。本は新たに作られたであろう、オリジナルビニールバッグに入れてもらう。

一旦家に戻り、昼食を摂りながら死蔵している音楽CD二十枚を、家の中から掻き集める。午後に再び外出。「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)で店主・天野氏と年始の挨拶を交わしつつ、ゼラチンシルバーセッション2008「SAVE THE FILM」東京こども図書館「おしらせ 東京こども図書館1〜20」(1974〜79年の四ページのペーパー群。石井桃子・瀬田貞二・中川李枝子・渡辺茂男らが一ページ目のコラムを執筆している)文藝春秋「文藝春秋六十年の歩み」を計309円で購入する。新宿を経由して雑司が谷へ向かい、『弦巻通り』の奥の奥の「JUNGLE BOOKS」(2010/08/20参照)にたどり着く。半地下の店内に入り込むと、ジャングルユキさんは占いの真っ最中で、ジャングルケンさんは明日の市準備の真っ最中であった。ここで明日から三日間「MUSIC FAIR2017音盤市」という、大の音楽好きたちがCDやレコードなどを放出するお祭りが開かれるのである。昨年のわめぞ忘年会時に、ジャングルユキさんが誘ってくれたので、畑違いではあるが、飛び入り参加することになったのである。それにしても、届いた荷物に目を凝らすと、己の持ち込んだ二十枚が、なんと貧弱なことか!そのほとんどが、八十〜九十年代のマイナー&忘れ去られた日本人アーティストやおかしなCDなのである。せめて一枚でも売れれば嬉しいのだが…というわけで、いつものように「フォニャルフ」の札入りで並べていますので、ご興味ある方はぜひとも雑司が谷へ!ハヤカワ文庫「日本SF古典集成U/横田順彌」を800円で購入する。
「MUSIC FAIR2017音盤市」について詳しくは→http://jbooks.exblog.jp/

CDを託してお店を出た後は、テクテク目白方面まで歩いて久しぶりの「貝の小鳥」(2009/06/14参照)。日本児童文学の良い出物はないかと、瀟洒な店内を一周するが、結局そんな思いとは真逆のような、なにわ塾叢書「われらが古本大学/天牛新一郎」を684円で購入してしまう。大阪「天牛書店」創始者の対話講座録である。塾生全員に配られたという『古書籍賣買生活八十年』の自筆色紙が羨ましくてたまらない…。大阪といえば、大阪「梅田蔦屋書店」の『4thラウンジ』壁面古書棚にて、場違いに変な本・おかしな本・良い本・ミステリなどが激しく自己主張する「古ツアお蔵出しフェア」が、ありがたいことに新年も奇跡的に継続中なので、引き続き可愛がってやってください。よろしくお願いいたします!
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2017年01月05日

1/5古本年賀を貰い、二種の二笑亭に頭を捻る。

戻ってきた冬の冷たい風に吹かれて、「ささま書店」(2008/08/23参照)で広済堂「蠅男/海野十三」を315円で買ったりしながら西荻窪に駆け付け、まずは「盛林堂書房」(2012/01/06参照)で「フォニャルフ」に補充。あ、どひゃっほう本の宮本幹也が売れているじゃないか。などと喜び、店主・小野氏と、そろそろ本腰を入れなければならない古本屋本第三弾制作についてと、今年前半の『盛林堂ミステリアス文庫』デザインスケジュールなど、色々打ち合わせる。そしてもったいないことに、「年賀です。今年もよろしく」と古本をいただいてしまう。日本小説文庫「細君行状記/辰野九紫」!大好きな作家のひとりである。…これは、あれだな…今年も色々手伝えと、言うことだな…。というわけで、お店の前で嬉しい文庫を記念撮影。
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まだまだ家には帰らずに、中央線でさらに西に向かって立川下車。北口に出て『フロム中武』三階で行われている「立川フロム古書市」に向かうと、建物内が新建材でピカピカになっている。以前の地方デパート感は消え去り(2011/04/22参照)、古本市が開かれている場所も、階段近くの新たなL字型催事場であった。
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武蔵野近辺のお店が出店しており、およそ三十台のワゴンが並ぶ古本市…なんだか年末の松戸の古本市(2016/12/28参照)と似てるな…ということはもしかしたら……あぁ!やっぱり!付録漫画箱の中に「バスカヴィル家の犬」の翻案じゃないかと疑った捕物漫画が、ちゃんとあるではないか。ここで会ったら百年目ということで、一か八か買うことにする。スペースが少し小さいためか、ワゴン下にもたくさんの古本プラケースが置かれているので、しゃがんでいる時間が結構長くなってしまう。昭森社「二笑亭綺譚/式場隆三郎」桃源社「地球SOS/小松崎茂」講談社少年クラブ九月号ふろく「へのへの茂平次 白い魔犬/ふるさわひでお」を計2200円で購入し、粗品の黒ボールペンを一本いただく。今日は古本屋さんに、色々いただく日だな…。市は1/22(日)まで。そして「白い魔犬」は、残念ながら「バスカヴィル」の翻案ではなく、生類憐れみの令の禁を犯した籠屋が、島流しの途中に脱走して江戸に舞い戻り、逆にお上が手を出せない犬を手なずけて犯罪に使役するというストーリーでした…。

さらに「二笑亭綺譚」である。私はすでのこの本を所持しているのだが、会場で見かけた本に違和感を覚え、思わず購入してしまった。家にあるものとは、異なる感じがしたのである…。あ、やっぱり全然違う。まず大きさが違う。そして色が違い、片や赤系で片や緑系。そしてさらに函も違い、片やしっかりした函であり、片やホチキス留めのボール紙。本体も違い、表紙に箔押しタイトルがあったりなかったり。背の色も、片や柿色、片や青緑。意匠も微妙に違っている。見返しの紙も、片や青緑、片やカーキ。本文紙の質も違い、目次の位置も違っている。それでいて、両方とも昭和十四年九月五日再版のB版となっている。全体的には、今日購入した本の方が、遥かに質の良い造り…これはいったいどういうことなのであろうか?
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2017年01月04日

1/4思い直して踵を返し、本当に良かった…

正月明けに、なんとなく遠くに行きたくなってしまうが、どうやら遠くに行きたいというよりは、長い時間のんびりと、電車にガタゴト揺られたいのである。そこで片道三時間かかる長期的定点観測店、千葉県飯倉「クルクル」(2011/01/10参照)に狙いを定め、午前九時過ぎに家を出る。中央線と総武線を乗り継いで千葉駅に着いてから、三十分の待ち時間をクリアして、ガラガラの総武本線銚子行きに乗り込み、望み通りのガタゴトガタゴト。枯れ色の広大な田んぼをの中を、これも枯れ色な春陽堂文庫を読書し、成東駅を過ぎてからは、九十九里浜の六キロ内陸を北東に進んで行く。
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そして午後十二時半、ちょうど文庫を読了し終えたところで、無人駅に到着する。そもそも正月明けの四日に「クルクル」が営業しているかどうか定かではないのだが、とにかくちょっとした旅情を味わいたくて、ついついここまで来てしまった。まぁ開いている可能性は低いが、閉まっていたら茂原の「ブックセンターあずま 茂原店」(2010/03/21参照)に行けば良いと思っているので、気は楽なのである。小さな駅舎の外に出て、いつでも変わらず繁茂する四角い笹薮の間の道路を通り、坂道を上がって国道へ出て、おぉそこには「クルクル」…むっ、入口横に古いゲーム筐体が出ているな…右側にもなんか出ている…厚いガラスから天井を透かし見ると電灯が点いている…バンザイ!やってるぞ!とまずは見慣れぬ入口右横の長テーブル店頭台に接近する。
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ソフビや雑誌やムックなどが犇めいてるが、虫プロ制作の「ジャングル大帝」の紙芝居が500円だと!…紙芝居などまったく必要ないのだが、ついついお店がやっていた喜びに煽られて、調子に乗って抱え込んでしまう。広い店内に進み、レジ前50均ワゴンで仙花紙本を一冊掴み、奥の児童書コーナーに食らいつく…う〜む、やはりここは良いお店だ。そんな来る度に思っていることを改めて噛み締め、本を次々手にして行く。新入荷コーナーには、城昌幸時代物が、函入り単行本と仙花紙本を合わせて五冊ほど…仙花紙本は千円と安値である。単行本壁棚や、長い文庫棚+その上に積み上がる単行本山、それに左奥の古書ワゴンや、右端通路の古書ワゴン&ガラスケースもたっぷり捜索していると、あっという間に一時間が経過してしまった。一泉社「名作落語集」小学館入門百科シリーズ25「名探偵入門/加納一郎」講談社「Gen VoL.37 1977 推理・探偵トリック大全集」秋田書店まんが王8月号(昭和44年)ふろく「よみきり怪奇秘境まんが 吸血の谷/浜慎二」講談社カラーテレビ版ムーミン名作絵ばなし9「ほをあげろムーミンごう」ユニカ「原色版教育紙芝居 虫プロ名作劇場 ジャングル大帝下巻 レオの消防隊/原作・手塚治虫」(ちゃんと十六枚揃っているが、本当にこれどうするつもりなんだ…)を計2850円で購入する。満足してお店を出て、交差点のコンビニで昼食を買い、駅への坂を下っている…この時点でお店からは300mほど離れており、本当にこのままちゃんと帰るつもりであった…だが!やはりあの本がとても気になってしまう!むくむくと心の中で存在が大きくなって行く!その文庫棚の上にあった本は、薄手だが二千円と、ちょっと値の張るものであった…今日は買わなくてもいいだろう…だけど、いつまたここに来るか分からないんだから、買っておいた方が…そうか?また何処かで見つかるんじゃないか?…でも、でも、見かけたことないよな…と毎度の葛藤を繰り返すうち、ええい!悩んでいるなら買ってしまってから後悔すればいいんだ!とようやく決めて、思い直して踵を返してお店へ向かう。多少気恥ずかしいが、素早く入口ドアを開けて中の自動ドアを潜り、素早く目的の本を抜き出し、素早くレジへ。レジの女性が目を丸くしている。そして背後の下條正己風店主が「忘れ物ですか?」とニッコリ。「いや、すみません。途中でどうしても欲しくなってしまったもので…」と言い訳するように照れてしまう。新星書房「バリケード・一九六六年二月/福島泰樹」を2000円で購入する。店主はその黒い本を改めて手にして「「バリケード」…学生運動の頃のですか」「そうです。確か第一歌集です」「お近くですか?それとも千葉県外から」「東京からです。時々来て買わせていただいてます」「そうですか。毎度ありがとうございます。今度来る時は、電話されてから来て下さい。なにせ、老人なものですから、休んでることもあるんですよ」「ありがとうございます。次回はそうします。それにしても、正月明けから開けていただいて、ありがとうございます」「いやいや。またどうぞ」などとやり取りしてお店を辞去し、再び坂道を下る。今日はここに小さな旅をしに来て、本当に良かった。

そして帰りの車中で、すぐさま「バリケード」を紐解くと、何と献呈書名&歌入りであることが判明し、仰け反る。そのまま興奮しながら、一気に読了。校舎のバリケードの向こう側に、寒さに震えながら眠りを貪り、思想と恋愛と青春が、流れ蕩けて行く…。そして家に帰って調べてみると、昭和四十四年刊のオリジナル本は、桁がひとつ違うかなりのレア本であることが判明する…かっ、かっ、かっ、買っておいて良かった!偉いぞ、俺!無論、文句なしのどひゃっほうである。
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2017年01月03日

1/3ニワトリブンコ新春100円均一大会参戦!

昨日寝る時から&寝ている間も夢心地にずっと楽しみにしていた、西荻窪の「にわとり文庫」(2009/07/25参照)主催の店頭100均古本大会へ。ちょっと早めの午前十一時四十五分に店頭に到着すると、すでに古本神と古本修羅と古本中学生が入り乱れ、緑のシートに覆われた棚や箱を透視する勢いで、正午のスタートを今か今かと待ち構えている。ペコペコと十人弱の列と挨拶を交わしながら、その最後尾に付き、風は冷たいが日射しの暖かさに救われながら、じっと正午を待ち続ける。隣の八百屋の白黒猫デコポンも、ただならぬ気配を感じ取っているのか、落ち着きなく店頭と皆の足元を、チョロチョロと走り回っている…。
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そして時間が経つごとに、ライバルの列が後へと伸びて行く…ちゃんと何か買えればいいのだが…。やがて正午になって、にわとりさんが入口に立ち「今年は酉年なので……がんばります!」の素敵な脱力合図とともに、狂乱の大会がスタートする。入口付近には絵本机と新書棚、その右側を単行本棚が囲い込み、さらに右の『三人灯』店頭にも文庫箱列や紙物箱列、それに雑誌ラック・洋書椅子などが並んで行く…もちろんすべて100円となっている。まずは文庫箱に食らいつき、とにかく古い文庫を掴み取り、お気に入りを高速で選別して行く。目当ての文庫箱に必死に手を伸ばしていると、奇しくも前でしゃがんで小型本に血眼の北原尚彦氏を抱きしめてしまうカタチに…。文庫ゾーンである程度の満足を得て、入口側の単行本ゾーンへ。濃密な人垣の間から懸命に棚の古い本に照準を定め、ここでも手をピンと伸ばしてのチェックを繰り返す。こちらも一段落したところで、本を抱えながら、棚の上に乗った付録漫画や雑誌に注意を払いつつ、同じく小休止に入った方たちと、ひとしきりの感想戦に入る。森英俊氏・北原尚彦氏・松坂健氏・新保博久氏・古本中学生ケンタロウ君・トマソン社社主などなど。森氏からは嬉しいことに、香山滋関連を二冊分けていただく。そして松坂氏の浅草にあった古本屋「協立書店」の羨まし過ぎる話(国際劇場の向かいにあった、探偵小説関連が、恐ろしく安値で売られていたエロ主力店)に歯がみする。日本小説文庫「若き日の悩み/藤森成吉」「愛情の彼方に 前・後編/中村武羅夫」「紅蝙蝠 前・後編/長谷川伸」春陽堂文庫「花骨牌/湊邦三」春陽堂日本探偵小説全集「ソロモンの桃/香山滋」「短篇集/渡辺啓助・海野十三」(共にカバーナシ)錦城出版社「鯨の町/梶野悳三」(カバーナシ)「香山滋書誌/竹内博編」偕成社「海底牢獄/海野十三」(自家製改装版)映畫春秋社「映畫春秋 第四號」春陽堂「両美人/村井弦斎」博文館「東洋武侠團/押川春浪」(表紙&扉ナシ)を計1400円で購入する。大会は明日四日(水)も十二時から開催される。北原氏が店主に、明日どのくらい補充されるのか、さりげなく探りを入れていたが、すでに棚と箱の半分は消え去りガタガタになっているので、補充は必至であろう。
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今日の収穫の中でことの外嬉しかったのは、表紙や扉は取れてしまっているが、明治オリジナル本の押川春浪「東洋武侠團」!口絵から後はすべて残っているので、ちゃんと通読することが出来るのだ。書き出しが『空中戦闘艦は彗星の如く、神侠の英雄を乗せて雲間を飛行し、海底戦闘艇は奔龍の如く、稀代の怪傑を潜めて浪裡を駛馳す』となっており、初っ端からのトップスピードにシビレまくる。さらに嬉しかったのは、三度目に単行本棚を見た時にまだ残っていた、和本の村井弦斎「両美人」。何気なく手に取り、どうせ食関連の話だろうと高を括ってページを紐解くと、何とこれが謎の美人の復讐殺人から始まる、明治探偵小説風の、二人の美女の波瀾万丈ジェットコースター的物語。これが100円とは!無論二〇一七年最初のどひゃっほうである。今年もありがとう、にわとり文庫!
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2017年01月01日

1/1早稲田通りで古本初め

起き抜けに日本映画専門チャンネルで岡本喜八監督の映画『殺人狂時代』(原作は都筑道夫「飢えた遺産」。後に「なめくじに聞いてみろ」に改題)を堪能。原作の週刊誌連載的盛り上がり&引っ張りをズバズバッと削ぎ落とし、奇想天外な殺人テクニックが果敢にぶつかり合う、スタイリッシュブラックコメディに仕上げた怪作である。世にも独創的な髪型を誇る、天本英世の日本人離れしたマッドなダンディさは、いつ見ても素晴らしい。白黒映画世界に溺れ、お屠蘇を過分に聞こし召してから、重くなった体を持ち上げ、正午過ぎの『早稲田通り』をトボトボ東へ。車は疎らに走り、初詣に向かう歩行者とも擦れ違うが、時たま車も人も遥か彼方に遠退き、まるで街の静止画のような一瞬が、通りに誕生する。道路に刻印された街路樹の黒い影が、非現実感をたくましく増幅し、『地球最後の男』がいる世界を、ちょっとだけ垣間見せてくれたりする。そんな妄想に正月早々囚われながら、中野にたどり着く。去年同様元日から営業を開始している「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)と「古本案内処」(2015/08/23参照)で、厳かな“古本初め”を敢行するためである。まずは『ブロードウェイ』内に入り込み、エスカレーターと階段を使い、ガランとした四階へ。
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季節感から隔絶された建物内で、お店の店頭棚に視線を走らせ二冊を手にする。お正月と言うことで、なんだかお祝いに高い本を買ってしまいそうになるが、ここはやはり我慢我慢。そんな財布の紐の緩いことでは、この一年が思いやられてしまう…レジでコスプレ女子に、体温低くクールに精算してもらう。読売新聞社「こじき袋/森繁久彌」中央公論社ともだち文庫「小川の葦/坪田譲治」を計216円で購入し、二〇一七年のスタートを切る。再び『早稲田通り』に出てちょっと東に向かい、「古本案内処」を楽しむ。中で棚を眺めていると、通りがかった人の五割が「おっ、古本屋だ」と口に出し、そのうちの三分の一ほどが「入る?入ってみる?」と言いながら入店してくるのが、なんだか繰り返される芝居のようで、不思議な味わいがある。アーバン・コネクションズ「映画史探訪 よみがえる幻の名作 日本無声映画篇」を864円で購入する。というわけで、さらっと“古本初め”が出来たわけだが、このままでは去年の元日とまったく同じでつまらない。そこでお店を出たら、さらに歩を進めて『早稲田通り』を東に150mほど。古書も扱う異色店の「ブックオフ中野早稲田通店」(2012/11/15参照)である。おっ、さっきテレビCMで見た通り、全品20%オフになっている。
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店内でレトロコミックワゴンと古書コーナーと100均古書コーナーに目を通し、二冊を手にしてレジに向かおうとすると、ここで初めて入口近くに固まるラック群に目が留まる。そのうちの一台が、三段に古本を二重に収めた『古書市315円均一』であった。つい懸命に掘り起こしてしまい、さらに二冊を手にしてしまう。光文社文庫「本格推理マガジン 特集・幻の名作 鯉沼家の悲劇/鮎川哲也編」朝日新聞社「浅草六区はいつもモダンだった/雜喉潤」新書館「アメリカ黄金時代 禁酒法とジャズ・エイジ/常磐新平」リブロポート「倫敦幽霊紳士録/J・A・ブルックス」を計830円で購入する。こんな風に早速新しい一年が始まりましたが、本年もよろしくお願いいたします。
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2016年12月31日

12/31八十ぐるい

ついに二〇一六年の十二月三十一日である。ご近所の阿佐ヶ谷近辺をぶらついても、開いている古本屋さんはもはや「千章堂書店」(2009/12/29参照)のみである。店頭と店内を、今年最後と気合いを入れて目を血走らせるが、残念ながら胸ときめく出会いはなく、何も買わずにお店を出てしまった…古本も買わずに、年がグングン暮れて行く。だが、そんな風にだらしなくなし崩しに新年を迎えてしまうのも、古本屋ツーリストとして心苦しいので、ここ最近ずっと追いかけながらも、さらに火のついた感のある古本について語ることにする。

最近とみに恋い焦がれているのは、西條八十の児童小説である。さらにその中でも、探偵小説に心奪われてしまっている。詩人で著名な作詞家である八十だが、少女小説を手掛けるうちに、やがて手を出してしまった少女探偵小説&少年探偵小説という魔のジャンル。狂っていてそれでいてしっかりしていて面白い、などという噂は聞いていたのだが、ゆまに書房が復刊した「人食いバラ」を読んだ時に、まず噂の正しさを実感し、即座に魅入られてしまった。面白い!本当にクレイジーだ!読者を喜ばせると同時に、ハラハラドキドキさせるために、悪党側のイメージが恐ろしいほど強い!数々の悪だくみが、良識をゴミのように扱っている!それに対抗する正義も、手段を選ばずぶっ飛んでいる!だから、八十の書いた児童探偵小説を、もっともっと読んでみたい!と、最初に読んだものが強烈だっただけに、さらに彼の手による、新たなクレージー物語を欲するのは、至極当然な成り行きと言えよう。だが現在では、八十の児童探偵小説は、少年少女問わず、ほとんどが読めない状況である。仮に古本で見つかったとしても、それは恐ろしいほどの高値をつけていることが多い。だからこそ、困難を極める蒐集にさらに変態的に燃えてしまうのだが、もちろん大枚を払うことは避けて通りたいのが人情である。となると、基本は安く!を信条として、長い時間をかけてチャンスをうかがい、一冊一冊気長に手に入れて行くしか、方法はないのである。そんな風にして正攻法ではなかなか手の届かぬ八十本を、時に日下三蔵邸の買取バイトの報酬として(2014/12/10参照)、また日夜ヤフオクに目を光らせ、苦心して猛者たちから見逃された八十本を落札したり(2016/10/28参照)、少しずつ少しずつコレクションを増やして行く、じれったい日々。そして最近またもやラッキーにもヤフオクにて、探し求めていた一冊である、講談社少女クラブ12月号ふろく「すみれの怪人/西条八十・作 谷敏彦・え」を3300円で落札することが出来た。本来だったら入札値急上昇の一冊であるが、作者が“谷敏彦”とあり、八十の名がなかったために猛者たちの鋭い爪を逃れ、弱者がどうにか落札出来たのである。このように、牛歩の入手であるが、これからも色々手を替え品を替えて八十本を入手し、未知のクレージーなストーリーに耽溺する所存である。来年あたりはどうにかして蒐集をもっと微速前進させ、「魔境の二少女」か「長崎の花賣娘」のどちらか一冊を、読んでみたいものだと、秘かな野望を抱いている。
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さて、ここから話は横道に盛大に逸れる。「すみれの怪人」は、『ひとりで身の上相談所を開いている』『まだ中学生くらいの頭のよい少女』扇谷町子が主人公の少女探偵小説である。彼女はタイトルにもなっている『すみれの怪人』こと、元悪人の仲間だった青年『すみれのジョオ』に助けられ、悪漢たちの組織『東京の黒い五本指(なんという魂震える洒落た組織名!思わず名乗りたくなる格好良さ!八十センセイ、素敵!)』が起こす事件に立ち向かって行くのである。上の写真右下の表紙絵をご覧いただきたい。何か違和を感じないであろうか。私は感じた。それは『すみれのジョオ』の菫色の覆面にである。それは目の部分が刳り貫かれ、口の上までを隠すあまり見かけぬ代物である。覆面は四角く紐は耳に掛けられ、まるで風邪のマスクをズリ上げたような格好である。…なんだかちょっと格好悪い…。覆面と言えば、普通は怪傑ゾロのような目の部分を隠すマスクとか、顔全体を月光仮面のようにぐるっと巻いて目だけが出ているとか…近いものを強いて上げれば、横山光輝の漫画『鉄人28号』には帽子を被り顔全体に覆面布を垂らした悪党が出てきたはずだが、それでもやはりだいぶ違っている。一番格好良い助っ人が、このスタイルで良いのだろうか。どうしてこれを選んだのであろうか…。だが、これを目にした時から、記憶の何処かに、この珍妙なスタイルに近い覆面が、うっすら浮上してきたのである。確か写真だったような気が…古い探偵小説の表紙だったような気が…翻訳物だったような気が…と記憶をたどりつつ、必死に古本屋の目録を調べ始めてみる。すると案の定、見つかったのである。落穂舎の2013年春苑号「落穂拾い通信」のグラビアページに、その印象的な単行本は載っていた。日本公論社「エヂプト十字架の秘密/クヰーン」の表紙写真がまさに、同様の覆面を被った男のバストアップなのである。こちらはどうやら革製で丸みを帯び、耳に掛ける部分も少し違っているようだが、こういうタイプの覆面があったことは確かなようだ。製品として作られ販売され、犯罪者やマフィアが、愛用していたのであろうか?とにかく何とも不思議な覆面である。
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登場人物紹介ページのジョオと、目録の表紙写真。

このブログの毎回がそうとも言えますが、この忙しい年の瀬に、やくたいもない無駄話にお付き合いいただき、ありがとうございました。二〇一七年も引き続きよろしくお願いいたします!それではみなさま、良いお年を!
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2016年12月30日

12/30恐らく今年最後の古本屋さんの閉店を看取りに行く。

コメントタレコミにより、三十日で閉店のお店を知る。今年ラストとなるであろうお店への挽歌を歌い上げるには、ぜひともその最後の姿を見届けておかねばならない!と、埼京線で板橋駅下車。西口に出て、まずは道すがらの「板橋書店」(2009/07/18参照)を開いてるかな?と見に行くと、嬉しいことに営業中。静謐で混然とした店内通路を彷徨って、縦横に積まれた本の中から抜き出した、気になる薄手の一冊は、やった!嬉しいことに書肆ユリイカ本!もしかしたらこれが、今年最後の素晴らしい獲物かもしれないと喜び、さらに一冊。書肆ユリイカ「蒼い馬 滝口雅子詩集」(カバーナシ)新潮社「黒い顔の男/新田次郎」を計500円で購入する。早速路上で128mm×172mmの鼠色小型変型本を慈しみニヤニヤしながら、おぼつかない足取りで裏路地を西に向かって進んで行く。やがて板橋区役所前の『高田道』に入れば、半地下の「いのいち」(2010/01/09参照)が、『閉店のおしらせ』や『文庫&マンガ105均セール』の貼紙を、階段やドアに貼り出しているのに行き当たった。
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均一文庫棚に視線を走らせ、階段を下りきって店内に入ると、そこは通常と変わらぬ、コミックと文庫とアダルトが元気な、古本的に凪いだ世界。奥の単行本棚や右側手前の絶版漫画棚は時間を停めっ放しなのだが、ここにもセールは適用されるのだろうか…あっ、袋入りの本はセール対象外のようだ。奥のレジではお客である若者が、古本屋人生の越し方を店主から拝聴中。床板をギチギチいわせながら、店内105均棚から一冊抜き取り、さてこれだけでは何だか寂しいと思うので、思い切って袋入りのコミックを一冊セレクトする。話に割り込み精算をお願いすると、袋入りのコミックを見たオヤジさんは「おっ!いいの?買うの?」と軽く驚く。「ハイ」と答えると「ん〜、じゃあもう店じまいだから、全部で千円でいいよ」と大胆に値下げを断行してくれた。「ありがとうございます。そしておつかれさまです」と喜びながらも、ちょっと文章のような言葉でお礼を伝えてしまう。すると「これ、初版だからね。初版っていうのはね、一番最初に刷られたものってこと。だから価値があるの。汚したり、お茶こぼしたりしちゃダメだよ。大事にしてね」と教えられる。函館春秋社「3等客■アメリカを■鈍走/村上卿」講談社コミック金田一探偵シリーズ3「悪魔の手鞠唄/いけうち誠一」(こちらがその初版本コミック。帯が付いており『横溝正史の世界に挑戦しよう』『金田一名探偵はどうさばく!』などのキャッチがたまらない)を購入する。半地下の板橋的NYスタイルのお店がここにあったことを、忘れません!

夕方に再び外出し、今年最後の「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭にかぶりつく。が、寒さに震えながら何も見つからず。代わりに店内奥のミステリ関連棚から、朝日文化手帖3「誰にも言えない/大下宇陀児」を525円で見つけ、ささやかな幸せを噛み締める。その後は西荻窪に赴き、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内の「フォニャルフ」棚に強力な本を補充する。何たって、来春から、本棚探偵が「古本ナイアガラ」に参戦されるのだ。ウカウカしているわけには、決していかない!と思っていたら、すでに喜国雅彦氏の本棚探偵棚が出現していたので、大いに驚いてしまう。…やっぱりすげぇ…。みなさま、様々な古本マニアの棚とともに、「フォニャルフ」を引き続きよろしくお願いいたします!さらにその後は、某編集氏宅である『本の家』に向かい、岡崎武志氏・盛林堂小野氏ご夫妻とともに作戦会議忘年会。来年も古本屋世界に精一杯のさざ波を起こすべく、年の瀬ギリギリまで奮闘する。だが途中から、何故か東映動画アニメーションの話題にはまり込み、岡崎氏の『わんわん忠臣蔵』への愛が、ダダ漏れになってしまう。
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2016年12月29日

12/29築地を経由して今年最後の神保町パトロールに向かう

ちょっと早起きして、深くコンパクトな大江戸線で、東京の地下を軽く南回りして築地へ向かう。築地にとっては、もはや充分遅い時間の午前九時前。低空を海鳥が飛び交い、魚臭に満たされた巨大な市場は、それでも歳末の賑わいを遺憾なく見せ、何処も殺人的大混雑となっている。気をつけて歩きながら、四分の一円形の大屋根の下の、『水産仲卸業者売場』に入り込んで行く。長く細く常に飽和状態の通路では、多種多様の魚貝類・深海魚の水晶のような目玉・氷・冷気・発泡スチロール・鱗・血・魚の頭・白熱電球・白い看板・海水に濡れた古いアスファルトとコンクリ・恐い電動ターレ・優しい電動ターレ・赤色・銀色などに、激しく眩惑される。そして円弧を描く通路は、いつでも己の現在地を見失う魔力を秘めている。買物を済ませながら、市の活気に部外者としてすっかり飲み込まれた後、中心部の車とスクーターとターレが激しく乱雑に行き交う大通りに出て、屋根の外に脱出。続いて『魚がし横丁』にある、場内唯一の新刊書店を見学に行く。8号館一階角にあるその書店は、とても小さく、通りに大きな平台と棚を出し、そこに主に本を並べていた。
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料理や食、それに魚類のムックが大量に面陳されている。台の上には築地の本が集められ、背後の棚には料理関連の単行本が並べられている。目立つところに置かれた『寿司トランプ』は、おそらくこのお店の重要な売れ筋なのだろう。専門的な本に混じり、競馬&スポーツ新聞や漫画雑誌も置かれているのが微笑ましい。記念に「築地場内地図」を求め、大喧噪の市場を後にする。

森下で都営新宿線に乗り換え、午前十時半の神保町。陽があまり当たらず、あんなに氷の多かった築地市場よりちょっと寒いくらいだ。古本屋さんの三分の一ほどは今年の営業をすでに終了し、四分の一ほどが大掃除仕事納め状態。残りの営業中のお店やようやく開き始めたお店の店頭を、震えながら順に覗いて行く。市場も閉まった年の瀬で、忙しくはあるが品物が落ち着いているせいか、心にクイッと引っ掛かる本があまり見つからない。ようやく「ブンケン・ロック・サイド」(2014/08/28参照)店頭で、プレイブックス「ミステリー入門/佐賀潜編」(鮎川・日影・陳・樹下ら十人の推理作家競作の推理ゲーム本。ただしエロ度高め。挿絵は石森章太郎である)を見つけて購入しようと店内へ。帳場前で立ち止まり、清算前に脇の文庫棚をチェックしてみると、春陽文庫に微妙な動きが出ているのを発見。じっくり吟味して、春陽文庫「自殺を売った男/大下宇陀児」(昭和39年初版)を選び、合計1188円で購入する。さらに「澤口書店 巌松堂ビル店」(2014/04/12参照)では大成建設「タワークレーン・立ち話」(大成建設の週刊新潮&文春連載コラムをまとめたもの)を200円で購入する。古本を買ってようやく落ち着くと、なんだかお腹がすいてきたので『すずらん通り』の天婦羅屋『はちまき』に入り、奮発して天丼をパクつく。食事中はずっと、壁に飾られた東京作家クラブ「廿七會」の集合記念写真に釘付けとなる。なんたって、江戸川乱歩・鹿島孝二・大平陽介・長谷健・田邊茂一らが、嬉しそうに写り込んでいるのだ。
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今日の獲物である、怪しいカバーの春陽文庫と築地場内地図。地図上部の『11月閉場、ありがとう築地!』の文字が複雑な感情を呼び起こす…。
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2016年12月28日

12/28千葉・松戸 年末古本市

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日暮里から常磐線快速に乗ると、十七分で松戸駅。陽の当たらぬ底冷えするホームから橋上改札を抜けて、西口に出て空中広場を彷徨いながら、ビル街の樹冠に『ISETAN』のロゴを探す。すると、南西端の道の先に件のデパートを発見出来たので、階段を下り、コンクリ正方形タイルの敷き詰められた歩道を伝い、冷たいビル風に嬲られながら南に歩き、広場を通過して大きなデパート『ISETAN 松戸店』に吸い込まれる。一階大売場の隅にあったエレベータに乗り込み、十階の催物場へ。すると箱から出ると同時に、右側に細く長く奥へと延びる、古本ワゴンの列が視界に飛び込んで来た。昨日から始まっている、シンプル&ストレートな名が付けられた、四日間限りの(つまり三十日まで)、ワゴン約三十台の中規模古本市である。武蔵野辺の古本屋さんを中心にして、千葉と東北の古本屋さん九店が参加している。細長く連なるワゴン通路を、前後ろと交互に見ながら、ジワジワ奥へ進んで行く。市各所にはお粧しした古本屋さんが直立し、会場内のサービスに勤めている。お客さんは疎らな入り。郷土・美術・歴史・近代・風俗・雑本・絶版漫画・付録漫画・大判美術本・サブカル・芸能・映画・社会・人文・絵本・雑誌・文庫…ガラスケースもあり、文学・風俗・漫画関連のプレミア本が飾られている。会場の表側には銀フレーム飾り棚が巡らされ、そこには大判本を中心に、プレミア本や揃い本がディスプレイ。…生まれて初めて目にする肩書き“探偵将軍”とある本に心惹かれるが三千円か…この付録捕物漫画、“白い魔犬”とあり、表紙に大きな白犬が描かれているが、もしや「バスカヴィル家の犬」の翻案じゃ…ガラスケースの上の哈爾浜小冊子特集が素晴らしい。でもやっぱり高いな…この前の古本市で500円で売ったカルピスのオリンピックソノシート、二千円もするじゃないか…などと楽しみながらウロウロ。二冊を手にしてさぁ精算…あれ?何処のレジに行けばいいんだろう?近くに立つ古本屋さんに声をかけると、ガラスケース脇から奥まるバックヤード風小部屋に案内される。そこが催物場のレジになっていた。コミック・ペット異色名作シリーズ「恐怖のミイラ/楠高治 原作・高垣眸」(森下仁丹提供の昭和三十年代トラウマTVドラマのコミカライズ作品を復刻したもの。私は子供の時に懐かしの番組特集などで目にしたくらいだが、暗くて不気味で本当に恐かった。今でも思い出す、おどろおどろしい不吉なオープニングや、望遠鏡で目撃する無音の死体遺棄シーンは、眠れなくなるほど恐ろしいものであった。漫画は「少年クラブ」に同時連載されていたもの。当然子供っぽく恐さは微塵もないのだが、その恐怖の遺棄シーンがちゃんと描かれていたので、ちょっとだけ喜んでしまう)村松書館「地獄譚/長野祐二」(恐らく自費出版の私娼窟&悪所巡り短編小説集)を購入する。今年最後の古本市をありがとう!と心の中でお礼を言い、デパートの外に出て再びビル風に巻かれながら、そのまま裏手の線路際に出る。陽の当たる暖かな跨線橋を渡って「阿部書店」(2009/06/28参照)を見に行くが、残念ながらシャッターが下りてしまっていた…店内の蝙蝠、元気でいるかな。
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2016年12月27日

12/27東京・荻窪 Title 2Fの古本市

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二度目の雨が上がってから、表に飛び出す。今日もテクテクテクテク二本の足を存分に使い、雨上がりの『日大二高通り』を南西に下って、『青梅街道』と合流。そこは荻窪駅北口から西に500mほどの『四面道交差点』である。ここからさらに、北側歩道を西に400mほど歩き続けると、『八丁交差点』手前に、青い日除けを持つ瀟洒な新刊書店が現れる。青梅街道の光景を反射して、輝くような大きなガラスウィンドウから、ディスプレイラックや店内の様子をうかがい、扉を開ける。そこは、熟れ練られた新刊の並びが興味深い、奥に向かう空間である。面陳を効果的に使う壁棚が向かい合い、奥に向かってテーマ新刊島→両面文庫棚→左奥にレジ→最奥のカフェと連続して行く。だが、目的は新刊ではなく、二階で今日から始まった古本市なのである。左側半ばの、リトルプレス壁面ラックに囲まれた一階踊り場から、ミシギシ急階段を気をつけて上がると、普段はギャラリーの小部屋に、愛しの古本が密集していた。まずは上がった所に「えほんやるすばんばんするかいしゃ」(2014/09/11参照)棚があり、洋書絵本を中心にレア児童文学・絵本・安売絵本を並べている。そのまま窓際を見ると古いラックが置かれ、「Lospapelotes」(2008/07/14参照)がレア雑誌を「洋酒天国」などともに飾っている。そのまま「トムズボックス」や旧世代の女子本を極めたように切っ先が鋭い「ひるのつき」、今度駒込にお店をオープンする「BOOKS 青いカバ」、刺繍裁縫関連に特化したような「古書玉椿」と続く。左の壁際には、まだ木の香りが匂いたつ箱に本を詰めた「一角文庫」が、気合いを入れて洋書・本関連・コア文藝・映画・カルチャー関連を並べている。背後の壁際には、階段近くに「ハナメガネ商会」(2014/04/26参照)が乙女+子供+レア絵本+奇妙な本をバランスよく並べ、パンチを効かせている。その横には立体的に展開する「にわとり文庫」(2009/07/25参照)が、古書・復刻本・新東宝映画チラシ・乙女・絵本・詩集・昭和初期・風俗などを美しくカオスに並べている。キュッと凝縮された感じの、少ない冊数でそれぞれのお店の特色を最大限に打ち出した、なかなか濃厚な古本市である。傾向としては、女子濃度の方が高めであろうか。値段はピンキリで、良い本にはそれほど見逃しなくしっかり値が付けられているが、所々隙もちゃんと設定されているので、目を皿のようにしてお気に入りの一冊を見つけるべし。結局二回見直したので、結構長居してしまった。「一角文庫」と「ハナメガネ商会」のショップカードが手に入ったのも嬉しい。一冊を抜き取り、再び気をつけて階下へ。厚生閣「趣味の地理 學習旅行文庫 山めぐり/西亀正夫」(函ナシ。見返しには神田「三省堂」と「松屋呉服店」のラベルが貼付けられている。昭和初期に良家のお坊ちゃんが買ってもらったのだろうか)を500円で購入する。市は来年1/8(日)までだが、12/31(土)〜1/4(水)はお店自体がお休みなので注意が必要である。
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2016年12月26日

12/26驚きの閉店延期理由に接する!

さて、今年閉店してしまうお店として、最後に気になっていたのが新中野〜東高円寺間の「プリシラブックス」(2012/02/14参照)である。今日はもう二十七日…年内にお店を閉めるという話だったので、もしかしたらもうやっていないかもしれない。そんな遅刻の危惧を抱きつつ、阿佐ヶ谷から冷たい冬の中をトボトボ歩き始め、五十分ほどかけて東高円寺着。『青梅街道』から住宅街の中に入り込んで、街の中に隠されたような生活道路に面した、お店の前に到着する。ウィンドウのブラインドは、すべて下ろされている…間に合わなかったか…おや?中には本棚やラックが残っており、ちゃんとそこに本も並んでいる。看板もそのままか…そして何処にも閉店のアナウンスはなく、変わった物と言えば、ドアの上に吊るされたてるてる坊主のみ…これはいったいどういうことなのか?お休みなのか、もはや閉店後なのか?考えても答えは出ないので、お店の動向をちょっとネットで調べてみることにする。来た道を戻りながら、小さな画面を注視していると、驚くべきお店の現状が発覚!なんと店主のツイッターによると、十二月閉店予定を公言していたが、閉店するための資金が不足してしまっているので、今しばらく営業を続けることになった、と書かれていたのだ。…スゴい、スゴい理由だ。スゴい現状だ。喜んでいいんだか悲しんでいいんだか、まったく混乱してしまう営業状態だ。客が本を買えば買うほど、恐らく閉店は早まるのだろう。とにかく、が、がんばれ!プリシラブックス!しかしということは、今日はお休みということになるのか。これはまたしばらくしたら、ちゃんと様子を見に来なければ…。

狐につままれたようになりながら、高円寺へ足を向ける。「アニマル洋子」(2014/03/14参照)で六興出版「料治熊太の見直し文庫◉日本の雑器五十章◉」を100円で購入すると、『ルック商店街』のスクラッチカードをプレゼントされる。削ってみたら外れであったが、裏面を見ると加盟店印の枠に、ちゃんと「アニマル洋子」の判が捺してあったので、古本屋ファンとして少し嬉しくなってしまう。『庚申通り』の「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)では、店頭で「らく N0.2 APRIL1989/都市のフォークロアの会」を見つけて100円で購入する。民俗学者・大月隆寛が出していた民俗学同人誌である。『バックミラーの中の都市 タクシー・ルポルタージュの視線』『女子プロレスの戦後史・序説』『浅羽通明×大月隆寛対談』『「消えるヒッチハイカー」ブックレビュー』などなど、なかなかバラエティに富んで刺激的。突然こんな物と出会える古本屋さんの店頭も、とても刺激的なのである。最近この「サンカクヤマ」店頭では、見知らぬ、だが、グンと興味を惹く小冊子に出会うことが多く、ちゃんと探せば何か見つかるので、もはや欠かせぬ定点観測店と化している気が。
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「らく」とスクラッチカード裏面。
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2016年12月25日

12/25佐左木俊郎に心の隙を突かれる。

白い息を吐きながら、もはや土日の参戦恒例行事となっている、超ご近所の「帰ってきたJ−ハウス」(2015/12/26参照)の朝市に向かう。今日は歩道側のダンボール箱に八十〜九十年代映画パンフが詰め込まれていたので、そこのみに没頭する。五冊で100円。拾い物はサム・ペキンパー監督の早過ぎたタランティーノ的バカアクション映画「キラー・エリート」と、キネカ大森が出来た時に出した小冊子の創刊号「KINECA」(1984年刊。ミニシアターのプログラムマガジンなのに、造りも執筆陣も驚くほど豪華。西武の広告が入っていたり、映画館が『西友』内にあるので、セゾン系の芸術文化活動であることがみてとれる)であろうか。土日市は今年最後の開催であるが、いや、本当に結構良いもの楽しいものを、恐ろしいくらいの安値で買わさせていただきました。来年もこの調子で、ひとつよろしくお願いいたします!

午後に本格的に外出し、まずはスタスタ「ささま書店」(2008/08/23参照)へ向かう。おんどり・ぽけっと・ぶっく「わがアメリカ映画史/筈見恒夫」宮沢賢治研究会「四次元1968年1月号 二百号記念特集」を計210円で購入し、続いて西荻窪「盛林堂書房」に向かい、今年最後(恐らく)の「フォニャルフ」補充を行う。そして帳場に近寄ると、おわぁ!最近仕入れたという垂涎の探偵小説本たちが、クリーニングを終え商品と化すのを待ちながら、店主の周囲を囲み、様々な事件の瘴気を纏いながら黄金に輝いているではないか!特に惹き付けられたのは、博文館文庫と日本小説文庫&春陽堂文庫!その中に、何故かしら最近頓に恋い焦がれしまっている、佐左木俊郎の文庫を発見してしまい、懐が寒いはずなのに購買欲がギュギュンと急上昇してしまう。聞けば純粋な探偵小説ではないので(それに近くはあるのだが、より文学&大衆小説的なアプローチで書かれている。でもそのタイトルは『謀殺罪』『密會綺譚』『錯覺の拷問室』『或る犯罪の動機』などで、ほとんどが昭和初期の東京を舞台にして、怪奇な事件で幕を開けているではないか…はぁっ!読みたい!)値段はそれほど高くないとのこと。…で、迷う。思いっきり迷う。う〜ん、欲しくて読みたくはあるのだが、ここでこんなミニ大物を買うつもりは、まったくなかったのだ…これを買ったら、この先の、ちょっと来年のある企画のために、何軒かの古本屋さんを見ておこうという予定が、崩れてしまうではないか…。いや、ここはやっぱり、きっぱりと仕事を優先させるべきだろう。そうだ、それでいいのだ。別に今買わなくてもいいんだよ。「きょ、今日はやめておきます。三十日にまた来るので、その時にあったら買おうかなと…」「そっかぁ、なくなってるかもね。でもそうなったら、諦めがつくってわけか…」「いや、そんな佐左木がそう簡単に、売れるわけはないでしょ。残ってますよ、きっと」「だといいよねぇ」「…すみません、やはり佐左木をいただいていきます!」とあっけなく陥落してしまう。春陽堂文庫「仮面の輪舞 外四篇/佐左木俊郎」を三千円で購入してしまった……バカ!俺の、古本バカっ!突然出会ってしまった佐左木俊郎に、弱い心の隙を見事に突かれてしまった…でもいいか。これを自分への、ささやかなクリスマスプレゼントとしよう。メリー・古本・クリスマス!

そんなわけで心と財布を軽くしながら、予定を大幅に変更して、駅からバスに乗って井荻駅→都立家政と移動する。踏切を渡って店頭でクリスマスツリーがペカペカ点灯している「ブックマート都立家政店」(2011/12/13参照)に到着。お店宣伝メタルテーマ曲&オリジナルMVがエンドレスで流れ続ける店頭棚から、幻想文学出版局「ブックガイド・マガジン BGM 創刊号」を300円で購入。テンチョーさんとちょっとお話ししたかったのだが、残念ながら不在であった。
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※再びのお知らせ
大阪「梅田蔦屋書店」のカフェ『4thラウンジ』壁面で、『古本屋ツアー・イン・ジャパンのお蔵出しフェア』が堂々開催中です。九月に開かれた「夏の古書市」より、遥かに蔵書量が増殖しておりますので、梅田駅駅ビル『ルクア イーレ』に接近の際は、ぜひとも苦労して九階まで上がり、カフェをどうにか探し当てて、辺りの雰囲気から逸脱したような、意外過ぎる並びの古本群を楽しんでいただければ!何とぞよろしくお願いいたします。
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2016年12月24日

12/24「立石書店」はやがて“兄弟倉庫”となる。

今日もわめぞ忘年会でのタレコミを基に動き始める。東西線に乗って早稲田駅下車。地上の『早稲田通り』坂下から西に歩いて行くと、『穴八幡宮』がお祭りの賑わいなので、無抵抗に吸い寄せられて急階段を上がり、露店の屋根が被りトンネル状と化した狭い参道を、クリスマスイブ気分をぶっ飛ばすように情緒を楽しみ、勢いで行列に並び参拝した後に『一陽来復御守』も勢いで購入してしまう。参道に戻って、甘酒を飲みながら、清酒ケースで作られた露店の椅子に腰を下ろし、屋台の向こうを行き交う人を、漫然と眺めてしばらく過ごす…服装やスマホなどにギュッと目をつぶれば、江戸時代とそう変わらぬ、一場面のようだ。『みぎひだり 楽しみ行く顔遥かなる 時間をねじ曲げ 未知既知投影』…ダメだ。デタラメ過ぎるな。もっとこう、ちゃんとスムーズにてらいなく気持ちを……ハッ!俺は、いつまでも、こんな現実逃避の世捨て人モードに浸っているわけにはいかないのだ。あの古本屋さんを、見に行かなければ!甘酒を飲み干し立ち上がり、「ごちそうさま」と大きなゴミ箱に紙コップを投げ入れ、西寄り奥の社横の坂道から『早稲田通り』に舞い戻る。そして少しだけ道を引き返すと、あぁ、店主本人の口から笑いながら教えられた通り、「立石書店」(2009/12/11参照)は看板を撤去済みで、すでに店舗を閉店していたのであった。
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それはそれは、清々しいほどの撤収っぷり。早稲田から、またひとつの星が、流れ落ちたか…。そして店主が言うところ、弟さんが経営する「古書英二」(2012/06/15参照)も近々早稲田のお店を畳んでしまうらしい。その後は兄弟で大きな倉庫を借り、倉庫事務所の「立石書店」「古書英二」としての活動を予定しているのだ。よし、決まって落ち着いたら、どうにかしてツアーさせてもらおう。それにしても兄弟で倉庫…兄弟倉庫…なんだか鳥羽一郎の『兄弟船』みたいな…♪駅から遠いが、在庫は豊富〜♪。

そのまま『早稲田通り』を西に歩き続け、「ブックス・アルト」(2016/01/13参照)もついにその面影をすっかりなくしているのを確認して、「江原書店」(2011/02/22参照)。増田精神顕彰会「巡査大明神全傳/内田守」(明治時代のコレラ流行時に、その防疫のために身を呈して決死の活動をし、ついに自身がコレラに倒れてしまった警察官の伝記と、その警察官を神として祀る神社由来記)を100円で購入する。冷たく通りを吹き荒れる風に喘ぎ喘ぎ抗いながら、続いて「二朗書房」(2011/03/14参照)で桃源社「捕物そばや 十手往来の巻/村上元三」晶文社「黄色い部屋はいかに改装されたか?/都筑道夫」を計300円で購入。それにしても、今日は早稲田古本屋巡りをしている人がたくさんいるような…そんなことに気づきながら、さらに冷たくなった風に吹かれていると、いつしか体力を奪われてしまい心も折れてしまい、後は数店の店頭を撫でるだけで呆気なく敗走してしまう…うぅ、ガタブルガタブル…。今日は昨日に比べて、なんて寒い日なんだ。
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2016年12月23日

12/23女子に怖じ気好き酒屋の軒先に救われる。

昨夜はわめぞの大忘年会に参戦。様々な人に様々な古本屋タレコミを囁かれ、非常に刺激的な夜となるが、一番過激に刺激的だったのは、石丸元章氏に子母澤寛について説明したり、トイレにたどり着けぬ氏を素早く案内した瞬間であった…。

明けて本日、駅に向かう途中の「千章堂書店」(2009/12/29参照)100均ワゴンで文春文庫「落城記/野呂邦暢」を見つけて喜んでから、「「白樺書院」(2008/06/01参照)は、すでに十二月初めにお店を閉めちゃいましたよ」と、忘年会で隣席だった「むしくい堂」さんにタレ込まれていたので、悔恨の念を噛み締めながら下北沢に到着する。『下北沢一番街』のお店の前に立つと、あぁぁぁぁぁ、本当だ。シャッターは下ろされたままで、看板が、看板が取り去られている…。2016/11/01にお店に入ったのが、最後となってしまったか。長い間、本当におつかれさまでした。そしてやはりどうしても思い出すのは、店の中を我が物顔に飛び交っていた、あのインコのこと。幸い三年前の「南部支部報第48号」に、その強烈な出会いをレポートした拙文があるので、お店の追悼のつもりで、ここに少々抜粋する。

『…大きく日除けが張り出しているせいか、ここだけ商店街の中で少し闇をまとっている。その薄暗い領域に踏み込むと、確実に何かの視線に射抜かれているのを感じてしまう…決して店主のものではない。もっと、純粋で凶暴な…それは、入口近くに居座る、緑色のインコの視線であった。このインコは店内で放し飼いににされており、足下の文庫本をおもちゃにしている。店内に入って棚を見ていると、横で『ピィーッ!ピ〜〜ッ!』と激しく鳴き立てる。あぁ、愉快で素敵な古本屋さんだ…そのとき突然奥の帳場で店主が立ち上がり「ダメだよ!」「えっ?」「いや、その子が今飛びかかろうとしていたもので…」。危うく古本屋さんでインコに襲われるところであった。可愛い凶暴な店番がいるお店、それが「白樺書院」である』
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これは三年前に店の外から激写したインコ。その足が掴むのは、啄んでボロボロになった文庫本である!

インコの感慨に耽りながら、人波の多い方に引き返し、途中「ほん吉」(2008/06/01参照)に立ち寄る。古書混じり気味の店頭棚から、岩谷選書「綺堂怪奇小説集/岡本綺堂」(表紙破れアリ)学研4年の学習2月教材「おもしろ交通館」を計200円で購入した後に、南口商店街の終りにある、これもタレ込まれた本を少々扱っているらしい「三叉路」に到着。…だが、思いっきり入りづらい。完全に女子向けの三階建て小店!ぬぅん…このプリティーな祝日の女子空間に、オヤジが闖入するわけには、ちょっといかぬ。とすっかり怖じ気づき、また別の日にチャレンジするかと、逃げるように歩き出し、横道に入って久々の「オムライス」(2013/09/19参照)に入店。なんだか貸本漫画が増えているなと思いつつ、古本ゾーンをガサゴソする。値段の付いてない二点、帝國教育出版部「コドモノヒカリ第五巻第二號 カゾヘカタ號」(ページ欠け。昭和十六年刊の教育絵本)婦人画報社「男のお洒落実用学/石津謙介」を店主に差し出すと、絵本は1000円だが石津本は破格の300円!ということなので、喜んで購入する。さらに坂を東に上がって池ノ上に向かうと、南側商店街の閉店した酒屋の軒先で、無人ガレージセールが行われているのを発見。
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一冊十円古本箱(当然両方とも酒の空き箱)が二つも出ているじゃないか!と無邪気に喜び、五木寛之・吉行淳之介・石川達三・語学関連の多い並びを集中して眺め、角川新書「一万一千メートルの深海を行く/J・ピカール R・S・ディーツ」を購入する。
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本日のささやかな収穫。下に敷いてあるのが「コドモノヒカリ」で、武井武雄エの『ウメノセック(ケンコクサイノウタ)』である。欠けのページがあるのが誠に残念だが…と表4の『本編の内容について(お母様方へ』を読んでいると、欠けたページの詳細が書いてあった。そしてその中に恐るべき名が!何と『動物の駆けっこ』を描いているのは谷中安規!ええっ!と驚き慌ててないはずのページを繰ってみると、なんと半分だけがかろうじて残されているではないか。あぁっ、悔しい!でも、嬉しい!動物が、やっぱりかわいいっ!
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2016年12月21日

12/21今日も懐かし物屋に足を運んでしまう

昨日の懐かし物屋での、軽いがそれなりに甘い古本の夢が忘れられず、同じような店を自力で探し出してたどることにする。だが空振りに終わる恐れも充分にあるので、確実に最初に買うべきだと、高円寺『座・高円寺』のロビーで今日から始まる「本の楽市」(2010/07/18参照)にまずは立ち寄る。薄暗く天井が高くだだっ広い空間で、六つの古本島の周りをグルグルグルグル。絵本や紙物雑貨が多めだが、「rhythm_and_books」(2011/08/10参照)が箱に詰め込んでいる、六十年代周辺パンフ&小冊子類に釘付けになる。他には「にわとり文庫」が大量に並べていた、B5二つ折り一色刷りわら半紙の、チープ過ぎる新東宝映画チラシに惹き付けられる。もしや「九十九本目の生娘」(原作は大河内常平「九十九本の妖刀」)があるのではと、一枚一枚丁寧に繰ってみるが、期待に反して見つからずじまい。その代わり、同じ曲谷守平監督作品のヒドそうなヤツを見つけたので握り締める。「今日のNHK」(1963年刊のNHKの宣伝パンフレット。東京オリンピックを前に、ますます放送施設と番組の充実を図るNHKの野望が各ページに踊る。当時人気の番組「事件記者」や「夢であいましょう」「若い季節」などのスチールも掲載)トムズボックス「ねずみ花火 さしえ集/茂田井武」新東宝映画単色チラシ「「妖蛇荘の魔王」「明治天皇と日露大戦争」」(「妖蛇荘〜」のキャッチが卑しい想像を逞しくする。『半獣人の毒牙か邪教の呪いか?恐怖の惨劇を操る人物は誰?』『!地上百米を飛ぶ半獸人!』)を計1150円で購入する。この市は25日(日)まで。
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さて、古本…というか妙なモノたちも買ったし、これで安心して電車に乗り、改めて秋葉原駅で下車する。『電気街口』から雑踏中に踊り込み、『中央通り』を真っ直ぐ北に進んで行くと『蔵前橋通り』にぶつかる手前のビル一階に「ゴールデンエイジ」というお店があった。
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通路奥の扉を開けて中に入ると、“P”字型の通路を取り囲むように、懐かしのヒーロー系玩具がドッチャリ。『ニセウルトラマン』の玩具風ソフビが秀逸…うむ、古本は古本は…おっ、出っ張った“P”の下部に少し集まっているぞ。ヒーロー系児童書・特撮資料本・コミックがほとんどか…ううぅっ!ガラスケースの中に、小松崎茂大先生の「怪獣の描き方教室」オリジナル本が、函ナシだが並んでいるじゃないか!欲しいなぁ…高いんだろうなぁ…でも恐くて値段を聞けないなぁ…とそのまま表に出てしまう。何だかスキ無しな感じに、すっかり気圧されてしまった…。そのまま『蔵前橋通り』を西に歩き、坂を上がって『清水坂下交差点』。ここから北に進んで行くと、道はすぐさま急峻な『清水坂』となり、心拍数を倍に跳ね上げる。苦労して坂上にたどり着くと、道ばたに雑貨店案内立看板が置かれている。指示に従い脇道を東に入ると「王冠印雑貨店」は目の前だった。
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明らかに女子向けなお店であるが、チャレンジしてみて損はないはずだ…しかしどうも、キレイなデッドストックや、復刻&オリジナルもの&猫ものが中心で、古物独特の深度感や高揚感はそれほど味わえない。思わず心中の失点を取り返すために、復刻千代紙の男の子SFモチーフを買ってしまいそうになるが、必要ないだろ!と己を叱り、我慢してお店の外へ。残念ながら古本は見つからず…やはりそう甘くはなかったか。

大晦日に『夏越の祓』を行う『妻恋神社』に参拝し、坂を下って、坂を上がって、御茶ノ水方面へ。すると聖橋の上で、午後三時の夕陽が一瞬優し気に煌めく。思わず立ち止まり、厚みと丸みのある欄干越しに下を覗き込むと、神田川の谷底には、すでに冬の寂しい闇が立ち込めていた…早く帰るとするか。
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2016年12月20日

12/20埼玉・与野 三輪車

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古本神・森英俊氏より、本も少し売っている懐かし物系ショップを教えてもらったので、期待に胸を躍らせながら大慌てで駆け付ける。東口に出ると、小さく見どころなく雑駁とした駅前。すぐの駅前商店街を南南東に迷い無く進んで行くと、右手にほどなくして白い小ビル一階を、すっかりパッキングされた玩具で覆ったような店頭が現れる。それは、雑然としているわけではなく整然としているのだが、それでも何処か異様な光景となっている。たくさんのソフビ人形やフィギュアや企業ノベルティを並べたウィンドウには『古いおもちゃ買います!!』『1980年代までの!ソフビ・怪獣・ヒーロー物・超合金・ブリキのオモチャ◉旧玩具全般!』『あなたの家の押し入れや、倉庫に!古いオモチャが眠っていたら、お電話ください!』と、変なところに“!”が入る貼紙。手動扉を開けて中に入ると、結構広く通路が何本にも枝分かれし、上から下まで玩具に埋め尽くされた空間である。通路は広く歩き易く、棚やガラスケースや物の集合体が形作っているのだが、天井からは繋げた玩具や駄玩具が多数吊り下がり、棚下の通路には大判の本やブツが置かれているので、境目が曖昧な洞窟状となっている。左側奥の通路では、椅子に座った麿赤児風オヤジさんが、『あしたのジョー』最終回のようなポーズでスウスウ幸せな寝息を立てている…しばらくはソッとしておこうか。それにしても、恐るべき玩具に満ちあふれた店内で、触れたらそこからこの身も玩具と化してしまいそう。ソフビ・フィギュア・メンコなどの駄玩具・キャラ物・ヒーロー物・豆本漫画・ぬりえ・カルタ・ノート・ブロマイド・プラモデル…足元に絵本はあるが、古本はいったい…と奥へ入り込んで行く。すると左奥の中央の島の周辺に、付録漫画・特撮本・カード類・ヒーロー図鑑&百科事典・カバヤ児童文庫・「キンダーブック」・旧教科書・図鑑などが取り込まれているのを発見する。ふむふむ、おっ、野村胡堂の「悪魔の王城」がある…この少女クラブ付録の大判時代劇冒険漫画は読んでみたいなぁ…観光絵葉書もあるぞ…などとこっそり楽しんでいると、オヤジさんが「アッ!」と目を覚まし、こちらににこやかに駆け付けてきた。「すいません、寝ちゃってました」「いえいえ、大丈夫ですよ」「何かお探しですか」「あ、古い本を…」「本ですか。本は…この辺りですねぇ」「そうですね。ここに集中していますね」「どうぞゆっくりご覧になってください」…と言うわけで、しばらくじっくりと丁寧に掘り起こしたりしてみる…。基本は懐かし系玩具屋さんだが、少し本もあり。紙物は大いにあり。タイミングが良ければ、良い出物に出会えそうな予感を与えてくれる品揃え。相場より安めの値がまた嬉しい。…おっ、ここには和本が少々。すると値は付いていないが気になる一冊を見つけたので、すでに手にしていた本とともにオヤジさんに差し出してみる。すると「あぁ、値段ないですね。ちょっと待ってて」と奥の入り込めない通路に向かい、電話をかけ始めた。ところが相手は出ない模様。戻ってきて「いや、本はね、弟がやってるのよ。だから聞かないと値が分からなくて。う〜ん、どうしようかな。じゃあ近くなんで、ちょっと聞いて来ようか」と、一旦お店を閉めて自転車で急行することに。その間私は、入口外の椅子に座り、看板の上から顔をひょっくり出し、見知らぬ街を十分ほど眺めて暮らす。お!オヤジさんが自転車を華麗に疾走させ、カーブを曲がってきたぞ!自転車を停め、階段を駆け上がり、鍵を開けながら「すいませんでした」とにっこり笑う。聞けば作家物と言うことなので、値段は1500円。安くもあるし、せっかく自転車で行き来していただいたので、迷わず買うことにする。富里昇進堂 少女文庫「はかなき生立/ゆかり草著 紫峯画」小学館「機械の図鑑」を購入する。すると突然、「どっか悪いとこないですか?」と唐突に聞かれる。「い、いえ…」と答えると「いやなにね、気功をやってるもんで。体にいいんですよ。もし悪いとこが出たら、来て下さい」「ハイ。また何か買うついでに、参ります」と、当たり障りのない返答をしておく。うむ、楽しかった。こういうお店に出会うと、またレトロ玩具屋巡り(もちろん目的は古本である)に火が点いてしまいそうだ。

収穫はもちろん大正三年刊の「はかなき生立」であるが、奥付にあるシリーズ『少女文庫』の説明が可笑しくてたまらない。『少女文庫はお伽文庫の姉さんで悲惨、不幸等有とあらゆる各冊おもしろき事柄を涙の出るような著者独特の筆にて成りたるもの家庭教育として頗る趣味あり実益ある良書であります』とあるのだ。あらゆるおもしろき事柄を説明する語が、“悲惨”と“不幸”しかないのが、何とも恐ろしい…。ちなみに妹である『お伽文庫』のラインナップを見ていると、「探偵少女」「探偵少年」の気になる二冊を発見してしまったので、頭の中の『読みたい本リスト』に刻み込んでおく…いつか出会えるかなぁ…出会えない可能性の方が高そうだなぁ…。
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2016年12月19日

12/19東京・阿佐ヶ谷 ZAGURI

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大阪「梅田蔦屋書店」での『古ツアお蔵出しフェア』に、さらなる追加古本を発送し、そのまま外出モードに入る。とは言っても遠くに行くわけではなく、『旧中杉通り』の谷底に出来た、新しいカフェ&アトリエが目的地である。駅からは北口ロータリーを突っ切って『北口アーケード街』を通過し、レンガタイルの敷き詰められた『旧中杉通り』をさらに北へ。スタスタ歩いて「古書コンコ堂」(2011/06/20参照)前を通過し、一段高いが空の抜けがとても良い墓地の脇を、緩いカーブを描いて谷底へ。足下のレンガタイルが終わってもさらに北へ進んで、貸本屋の「ネギシ読書会 中杉通り店」(2009/08/12参照)も過ぎると、右手に韓国料理屋→飲み屋→汁もの屋と変遷を繰り返し、現在カフェに落ち着いた小さな店舗が現れる。工事をしている時から、次に何が出来るのか気になっていたのだが、通りかかった時にふと店内に目をやると、壁際に本棚のようなものが造作されていたので、俄然興味を持ち続けていたのである。だが、明るく洒落たカフェが開店しても入るわけではなく、時々ドアの腰高ガラスから、ちゃんと本の並んでいる棚を眺めるだけに留まっていた。だがある日、店頭に置かれたショップカードを手に取ると、カフェの他に『グラフィックデザイン』『フォント開発』『WEB』『オーダメイド名刺』『活版印刷』などの言葉が並び、その中に『タイポグラフィ古書』とあるのを発見してしまったのである。ここは、古本を扱っているんだ!そう確信して、小さなお店の木製スライドドアを開け、ちょっと高い敷居を跨いで中に入る。縦長の、カウンター席+テーブル席二つの明るい空間。カウンター内には、若い人がいるのかと思いきや、壮年のファッショナブルな夫婦(想像である)が、落ち着いた佇まいで働いていた…これは想定外であった。最近、タイポグラフィ古書専門店や、デザイン事務所も兼ねた古本屋がポツポツ出現しているのだが、それらはどれも若い人の手によるものであった。良く注意すると、カウンターにいた先客二人は、男性店主と印刷物やWEBについて言葉を交わしているようだ…ただのカフェのお客さんというわけではなく、そちらのお客さんでもあるわけか。テーブル席に腰を下ろし、甘酒を注文して正面の壁に目を据える。細身の鉄鋼と木板で出来た壁棚や飾り棚が設置されている。上部には古い明治〜大正の教科書類がズラッと並び、中段には文房具・帆布トートバッグ・カメラ&カメラレンズ・タイプライター・旧式LSI電子卓上計算機・手回し計算機・計算尺・小型活版印刷機などが存在感大きく飾られ、下段二段に文字・タイポグラフィ・活字・篆書・レタリング・などが大型本を中心に多数並んでいる。壁面の飾り棚にもヘルベチカ専門書や作家作品集が飾られている。あの左の方の壁面にたくさん取付けられた、細長い木箱はいったい何だろうか?今はその表は閉じられているが、すべてに蝶番が付いているので、カッパリと開くのだろう。中にはいったい何が……。並ぶのはすべてはタイポグラフィ&文字関連の本である。そしてカウンター席背面の通路が狭いので、お客さんが座っていると、おいそれと気軽に見られないのが残念である。気を使い過ぎて、値の付いている本を見つけることが出来なかった…すみません。しかしこのお店の面白さは、むしろ並んでいる古本より、古い型の機械式計算機や重々しく分厚いLSI電子計算機にあるのではないだろうか。テクノロジーの激しい発達の中で打ち捨てられてきた、頼もしく頑丈な嵩張る未来的ボディたち。漆黒の小さく横長ディスプレイに浮かび上がる、緑の数字。その中に隠された、熱を持った電子装置群。すっかり古本のことなど忘れ、狭い通路を擦り抜けて、甘酒代450円を支払う。おっ、レジスターは、モスグリーンの重々しいがスリムな機械式。背に『Kunimatsu』のローマ字が踊っている。ジャカジャカ、チィ〜ンの音にドキリとし、LSI電卓に物欲を覚えてしまう己を、厳しく戒める。
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