2019年11月10日

11/10百円ばかりで古本を買う。

昨日は家の近くの面白古物ショップ「J-house」(2015/12/26参照)に夕方出向く。兵どもがすっかり荒らしまくった百均プラ箱を漁ると、おぉ、ちょっと古めの函入り本が二冊出て来た。舞臺すがた社「坂東三津五郎舞臺写真集」舞臺展望社「市川寿海舞臺写真集」を計220円で購入する。そして本日は午後二時過ぎに荻窪に流れ着いてしまったので、一日早く「ささま書店」(2018/08/20参照)を定点観測する。ほぅほぅ、店頭棚に光文社「点と線/松本清張」があるじゃないか…四刷だが、やはりこれは買っておかねばと110円で購入する。するとなんと、中にちゃんと帯が挟まっていた。喜び取り出し、本に巻き付けると、何とも言えない素敵な発売当時の姿に!こりゃあいい。おかげでウキウキしながら阿佐ヶ谷までテクテク歩く。『ラピュタ阿佐ヶ谷』では石井輝男特集が始まるようだ。『地帯(ライン)』シリーズは『セクシー地帯』だけか…『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』はちゃんとラインナップに入っている…これは観に行かなければ…などと心に刻みながら『旧中杉通り』に入って行くと、通りの北側では、フリーマーケットの『ゆうやけ市』(2019/05/12参照)が、賑々しく開催中であった。人波を掻き分け掻き分け進みながら、ついつい道の両側に広がったシートに視線を落とし、習性として古本の姿を追い求めてしまう。すると若いカップルのお店が文庫本をたくさん並べている。立ち止まり、うう〜んと選んで、角川文庫「〈吸血鬼〉の影/L・G・ブッファリーニ」を100円で購入する。さらに通りを遡上して行くと、今度はヒッピー風な熟年カップルが、一冊〜四冊100円で本を売っているのに遭遇する。すかさず立ち止まり、むむ〜んと選び、ちくま文庫「夜の終る時/熱い死角」「あるフィルムの背景」ともに結城昌治、創元推理文庫「猫のまぼろし、猫のまどわし/東雅夫編」を計200円で購入する。これはなかなか良い買物が出来たぞ!とお店を離れて行くと、後から「すいません」と声を掛けられる。振り返ると、先ほどのヒッピー風店主ではないか。「あの、本は四冊まで100円だったんですよ。なのですみません、200円受け取ってしまったので、100円お返しします」。な、なんと律儀な!「わざわざありがとうございます」と感動&恐縮しながら百円玉を受け取る。さらにまたもや「J-house」に立ち寄ると今日も古本が出されていたので(それにしても兵や一般の人は、古本に見向きもしないのだ)求龍堂「美しい本 ケルスティン・ミウラの製本装幀芸術入門」を110円で購入する。あぁ、百円前後で本を、買った買った。家に戻ってからは、「みちくさ市」のための本や、新たに大阪に送り出す本を、少しずつ準備し始める。
1110_19syukaku.jpg
posted by tokusan at 16:43| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月08日

11/8「冷蔵庫の中の屍体」は「張り込み日記」と一緒に読め!

正午過ぎに家を出て、かなり久しぶりの武蔵小山「九曜書房」(2009/03/26参照)へ。表に山田風太郎文庫箱が出ているのを確認してから、店内の五百均棚に縋り付く。右上から左下まで三本の棚を三度ほど見返し、弘學社「空の話題/伊原俊夫」(昭和十七年の飛行機エッセイ本だが、冒頭に80ページの「小説 見えざる翼(成層圏未來航空戰記)」アリ)九藝出版「大衆小説の世界 幻想怪奇・探偵・SF/荒俣宏・石上三登志 小隈黎・谷口高夫」を計千円で購入する。続いて電車を乗り継ぎ、高田馬場駅下車。テクテク東に歩いて『早稲田古本屋街』入りし、「古書現世」(2009/04/04参照)へ。山雅房「吉田一穂詩集 羅甸薔薇」(カバーナシ)を購入しつつ、いつものように店主・向井氏と長話。本の雑誌スッキリ隊のこと、古本の値段のこと、来週月曜から始まる「早稲田青空古本市」のこと、「みちくさ市」のこと、原一男のことなどを話していると、店猫・コトがニャオニャオ鳴きながら姿を現し『お前らいい加減うるさいんだよ!』って感じで裏のトイレに行き、スッキリして再び寝床に収まったりする。あぁ、可愛い。そして夜、阿佐ヶ谷駅頭で善渡爾宗衛氏と落ち合い、出来立てホヤホヤのカバーデザインを担当したNoir Punk Press「事実探偵小説 冷蔵庫の中の屍体/楠田匡介」を受け取る。昭和二十七年に「読物と講談」に連載されたシリーズを、当時の単行本「犯罪の眼」とは異なり連載順に並べた、ベテラン刑事と若手刑事の名コンビが、巷で次々湧き起こる生々しく陰惨な殺人事件を、聞き込みして張り込みして推理して捜査して解決する短編小説集。なのでデザインコンセプトは、昭和二十〜三十年代の、いかがわしいスリラー小説風とした。この時代の同種の本は、写真を印象的に使うか、どぎつい抽象画で怪しい雰囲気を醸し出すかのどちらかである。最初は都会の写真をモチーフにして…と思っていたのだが、実は同時進行の別デザインでそのパターンを採用してしまったので、こちらは抽象画風で乗り切ることに決めたのである。だが、勝呂忠みたいな素敵な絵が、早々簡単に作れる訳が無い…それっぽくするには、さて、どうする?と悩んでいた時に、ボヤ〜ッとBSの映画を見ていたのだが、外では物凄く強い雨が降っていたので、突然画面がガジガジ激しく乱れ始めた…その瞬間に、これだ!と閃き、ガバと跳ね起き、慌ててそのぶっ壊れたようなデジタル画面を撮影する。その不気味な写真を基にして、さらに昔撮った『根岸競馬場』の廃墟スタンド写真を合成。そしてさらにゴニョゴニョ色々と調整…おぉ、なんだかそれらしくなったぞ!と、プリ・コラージュなデザインを施した訳である。うぅ、楠田匡介のデザインが出来るなんて、生きてて良かった。そしてこの事実探偵小説の楽しみ方であるが、思いついたことがひとつある。それは渡部雄吉の写真集「張り込み日記」を近くに置きながら読み進めれば、当時の風俗や世界観をより楽しめるということである。「張り込み日記」は昭和三十三年の撮影で、ちょっと年月に開きはあるが、なんたってバラバラ殺人事件の捜査をする二人の刑事(警視庁捜査一課のベテラン刑事と茨城県警の若手刑事)を密着して追いかけた、フォトルポルタージュなのだ。もはや二つの世界には差異など認められず、まるで楠田の小説を写真化したかのような、臨場感しか感じられなくなってくる。発売は明日からで、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店頭や通販サイトでお求めくださいませ。
reizouko_harikomi.jpg
「冷蔵庫の中の屍体」と「張り込み日記」(これはギャラリー出版の図録である)の、魂の震える最強コンボ。

そしてお知らせをふたつ。
1. もうすぐ発売の「本の雑誌 積ん読すす払い号」の連載『毎日でも通いたい古本屋さん』では上井草のグラノーラと古本を商う異色店「井草ワニ園」を潜入レポート。もはや古本に美しく占拠されている店内には、素敵な絵本がたくさん犇めいていた!お楽しみに!
2. 今年最後の「みちくさ市」に、いつも通り大喜びで参上いたします。探偵小説・変な本・面白い本・古い本・珍しい本・誰もいらない本・ブログに載った本などを掻き集め販売いたしますので、買う気満々で秋の雑司が谷に来ていただければ!
■「第49回 鬼子母神通り みちくさ市」
■11月17日(日)11:00〜16:00 雨天中止(当日午前八時に天候による開催の有無を決定)
■東京都豊島区雑司が谷二丁目・鬼子母神通り周辺
https://kmstreet.exblog.jp/
posted by tokusan at 19:07| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月07日

11/7「きりんの本」、揃う!

暖かい風が吹く秋の正午過ぎに、高井戸に流れ着く…この付近に古本屋さんはないのだが、京王線に乗り込み、安値で古本を買い漁って行こう!とまずは東松原の「瀧堂」(2014/05/01参照)へ。表にいやにポケミスが並んでいたので、中に入るとやはり中央通路にもポケミスの姿が。むむむむ、と目を凝らし、ハヤカワポケミス「メグレと老婦人/ジョルジュ・シムノン 日影丈吉訳」を300円で購入する。滑り出しはまずまずな感じなので、再び京王線の人となり、次は下北沢にて下車。愛しの「ほん吉」(2008/06/01参照)に一直線に向かうと、店頭棚にPHP「子どもの言いぶん/竹中郁」が輝いているではないか!詩人・竹中郁が、伝説の児童詩雑誌「きりん」とともに並行して行っていた『こども詩の教室』の授業と作品を元にして編まれた本である。こりゃあ素晴らしい。そう喜び手にして、視線をそこから左に流して行くと、うわぁ〜〜〜〜〜〜イ!探しに探していた「きりんの本」も、豪気に並んでいるじゃないか。しかも、一冊…二冊…三冊…!全部揃ってる!大慌てでドサドサと抱え込む。欲しかった本が、信じられない安値で手に入った、高揚しまくる瞬間であった。前述の竹中郁の本とともに、理論社「きりんの本 1・2年/坂本遼序」「きりんの本 3・4年/竹中郁序」「きりんの本 5・6年/井上靖序」(5・6年のみカバーナシ)「おかあさん/きりん編集部編」学研「少年少女サスペンス 赤いUの秘密/W=マッティーセン」を計880円で購入する。大・大・大・大満足!「ほん吉」最高!下北沢バンザイ!
honkichi1107.jpg
この後はさらに「古書明日」(2017/01/31参照)にも足を延ばし、ペヨトル工房「夜想 参 夢野久作/竹中英太郎」を安値の千円で購入する。
kirin_no_hon3.jpg
家に帰り、以前「りんてん舎」で購入した「きりんの本 5・6年」(2019/08/02参照。本の感想は2019/08/04に詳しい)のカバーを、今回の購入本に移植する(本の状態は、今回の裸本の方が良かったのだ)。これで三冊パーフェクト。「1・2年」をパラパラ読み始めると…やはりスゲェ。純真さがもはや文中にバリバリと張り裂けている!それは、ページを捲るごとに、80%の確率でゾッとするほど、感動を覚えてしまうほどである。…こうなると、次は本誌の「きりん」が見たくなって来たぞ…。
posted by tokusan at 17:01| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月05日

11/5謎の署名について二人で考えてみる。

つい先日、中野ブロードウェイの「古書うつつ」(2008/06/18参照)で、見返しに何やら書かれている講談社「ミステリアーナ/長沼弘毅」を見つけた。1500円で購入し、どうにか己で解読を試みようとしたのだが、どうにもこれが難しい。
mysteriana.jpg
写真のように書かれているのだが、一番右端のちょっと花押のようなものは、長沼氏の超変形サインである。これは別の署名本を所持しているので、特徴を確認済みである(“長”と“沼”の二文字が流れるように絡み合っているのだ)。問題はその左に書かれた二つの名前である。名字が無く、名前だけと言うのもおかしいが、二つあるのもまたおかしい。中央のものは『◯光』、左端は『清張』と読める気も。だが調べてみると、『清張』のサインは、ペンでも筆でもこんな感じに書かれたものは見つけることが出来なかった…よし、ここは専門家に聞いてみることにしよう。というわけで数冊の古本を抱え、毎度毎度の西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ。まずは、ちょっと売れていて嬉しい「フォニャルフ」に軽快に補充を行った後、まつりの撤収本に囲まれた、疲れ切った態の店主・小野氏に近付き、二三の用事をこなした後に、件の「ミステリアーナ」を取り出す。「これ、ちょっと見てもらえます?なんて書いてあるんでしょうね?右端の小さなヤツは、長沼さんのサイン」「うん、そうだね」「後のやつは、なんで名前が二つも?真ん中の下の字は“光”って書いてるように見えるんだけど…」「あぁ、これはね、“兄”って書いてあるんだよ。“御兄”って書いてあるの」「ええっ!?」「目上の人に献呈する時に、付ける言葉だよね。ほら、この上のところをよく見てご覧。毛羽立ってるでしょ。献呈名部分が消してあるんだよ」「あああああぁっ!ホントだ。全然気付かなかった!」…さすがはプロである。なるほど、献呈署名本の名前が消されたものだったのか…もしかしたら『高木彬光』の『彬光』って書いてあるんじゃないかと、都合よく夢見ていたのだが、残念!だが、謎はもう一つある。何故、その献呈署名本に、もうひとつ名が書かれているかだ…。「じゃあ、この左端のはいったい何だろうね……あの、ちょっと『清張』って読めるんだけど…」「それは確かに。ぼくも最初は『清張』って書いてるように思った。でも、こんなサインじゃないんだよなぁ。書いている筆も違うみたいだから、後から書いたんじゃないかなぁ…」「ここに書いてあるのも良くわからないよねぇ」「でももしかしたら、清張がもらった本を、為書みたいに入れて、他の誰かに譲ったのかもね。稀にそういうことする人、いるんだよ」「いや、それが本当だったら、献呈名部分が消されていても、凄く嬉しいけど…」などと、一冊の本の上に額を寄せ集め、しばし笑いながら語り合う。結局そこまで詳しいことは分からなかったが、一冊の古本で、ここまで想像出来るのが、なんともはや楽しい限りである。さすがは古本!そして古本屋さん!これだけでも、この本を買った甲斐があるというものだ。
posted by tokusan at 18:58| Comment(2) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月04日

11/4まつりの最終日と定点観測。

朝、布団の中でパッチリ目を開けて思う。そう言えば今日は「神田古本まつり」の最終日ではないか。始まるのは午前十時からだから、月曜定例の定点観測の前に覗けるな…そう決めて、午前九時過ぎに家を出る。日射しは眩しく熱いほどだが、風は冬のように冷たい。中央線で御茶ノ水駅まで出るが、長年の習慣で車両の最後尾に乗ってしまう…もう、ホーム端の階段はないというのに…。エレベータでホーム上に上がり、改札を抜けて信号が変わりそうなスクランブル交差点を走って横断し、神保町へと向かう。午前十時過ぎと始まったばかりなのに、まつりはすでになかなかの人出である。ブースとお店を交互に覗きながら、『靖国通り』を西へと向かう。まずは「慶文堂書店」(2012/01/14参照)の地べたに置かれた小さなダンボール箱から、鹿島出版会SD選書「モデュロール?/ル・コルビュジエ」を見つけて百円で購入する。続いて「小宮山書店ガレージセール」に久々に出会ったので、無条件に惹き付けられる。長テーブルにズラリと並んだ古本の背に視線を落とすと、早速、東都書房「すれすれ探訪/吉行淳之介」(吉行がジャーナリストの如く様々な場所に出没・潜入して書いた探訪ルポ。もちろん色っぽい方面が多い)を見つけたので、これは買わなければ!と掴み取る…ということは後二冊…だがその後、なかなか欲しい本が見つからない。こんなに本がたくさんあるのに、何故だ!とジワジワ焦りを覚えながら、ようやく国書刊行会「ク・リトル・リトル・神話集/H・P・ラヴクラフト他」を抜き出すが、ここでギブアップ。二冊を500円で購入する。「一誠堂書店」(2010/03/27参照)脇の硬い本が犇めく駐車場で、お茶目に手を振る番頭さんと挨拶を交わし、まつりのお話アレコレ。その後は目の前の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)ブースに張り付き、文芸評論社「臨時ニュースを申上げます/山田風太郎」(カバー痛み)朝香屋書店「血の記録/ジヤツク・ロンドン」を計3000円で購入し、盛大に満足してしまう。なんたって、ブースとブースの間の帳場にはまり込んだような店主・小野氏が、目の前で値札を書き換え、本を安くしていくのだ。これは買わないわけにはいかない!などと、ひとしきり興奮する(思い出せば毎年同じように興奮している気が…)。さて、そろそろ時間だ。足を早めて水道橋駅に向かい、総武線に乗り込んで、各駅停車で荻窪を目指す。車中読書は買ったばかりの「臨時ニュースを申上げます」。第三次世界大戦が始まってしまった、大変気になるところで駅に着いてしまったため、後ろ髪引かれながら本を閉じ、「ささま書店」(2018/08/20参照)へ。おっ、こっちも人がたくさん来ているじゃないか。そう感心しながら、みすず書房「世界シナリオ選集1」大昭印刷株式会社「国際社交エチケットについて/外務省講師 友田二郎編」(東京オリンピック開催や、海外旅行自由化に合わせて出された、世界標準の西洋マナー&エチケット集)あかね書房「科学のアルバム19 食虫植物のひみつ/清水清」(献呈署名入り)を計330円で購入する。実は店内でも気になる本を見つけたのだが、まぁ今日はもうだいぶ買っている。もし次来た時に残っていたら、それを運命として買うことにしよう…。
1104syukaku.jpg
嬉しい本日の獲物たち。まさか「臨時ニュースを申上げます」を買うとは思わなかった。そして大正時代のジャック・ロンドンが殊更嬉しい!
posted by tokusan at 14:47| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月03日

11/3かなり久々の「古本はてな倶楽部」

本日は武蔵小金井の遥か北西にある“回田(めぐりた)”という街に流れ着く。…住んでいる所からはそう遠くないのに、一度も足を踏み入れたことのない街…いや、そんな街は数え切れぬほどあるはずだ。さして珍しいことはない。だがここからは、「古本はてな倶楽部」(2013/12/18参照)が近いはずだ!そう気付いて、『玉川上水』をススッと渡り、南に歩いて行くと、横断歩道の前にお店が見えて来た。うわっ、ずいぶん来なかった間に、店頭が目覚ましく発展を遂げている。店頭右側には50均木箱と多数の100均箱が置かれ、左側にはとても立派で立体的な安売店頭棚が二本据えられている。しかもその棚の真ん中辺りには、看板同様のフォントの立体文字が、素敵に貼付けられているではないか!
furuhon_hatena19.jpg
うぅん、これはイカしている。そんな風に古本屋さんのアピールに身悶えしながら、二冊を掴み取る。岩波書店「長いお長いお医者さんの話 チャペック童話集」(昭和三十八年二刷りの函入り本)と、東洋経済新報社「柳原良平の船の博物館」(献呈署名&自画像入り。献呈名部分は消されているが、これが二百円とはっ!)である。後は小さな木造りの店内をぐるぐるぐるり。各ジャンル、深くマニアックに掘り下げる棚造りが、古本心をジワジワ陶酔に導いて行く。古書が散見されるのも好ましい。詩集ゾーンから宝文館出版「稲垣足穂全詩集」を選び、先述の二冊とともに計1900円で購入する。ここは、ちゃんと定期的に見に来なければいけないお店だなぁ…。帰りの車内で早速タルホ詩集を繙きつつ、あっという間に阿佐ヶ谷。よし、「ネオ書房」(2019/08/11参照)に寄って行くかと、パラつき始めた小雨の中、『旧中杉通り』をズンズン突き進んで行くと、おや?お店の様子がなんだかおかしい。サッシ扉全面に暗幕が張り巡らされ、店内からは何か音声がゴニョゴニョ聞こえてくる。
neo_shobou_theater.jpg
右上の貼紙を見ると、今日は「ネオ書房シアター」と銘打ち、自主制作映画を上映しているらしい。なので、古本屋さんとしての営業は、この瞬間はしていないらしい。がっかりしつつも、薄暗い古本屋さんの店内で、古本棚に囲まれながらの映画鑑賞を想像し、そのシチュエーションにちょっと憧れを覚えてしまう。それにしても、ネオ「ネオ書房」は、二階でワークショップを開いたりもするし、ハロウィンの時も子供用イベントを開催していたし、とにかく活動が多角的である。
posted by tokusan at 18:02| Comment(0) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月01日

11/1二冊の「恐怖の〜」

やたらとやる事が多い金曜日。アタフタと過ごしながらも、神保町の「第60回神田古本まつり」に超遅ればせながら一瞬駆け付け、どうにか「一誠堂書店」(2010/03/27参照)前の「盛林堂書房」(2012/01/06参照)ブースを覗き込む。うぅぅぅっ、もうまつりが始まって一週間経つのに、良書が気持ち悪いほどの安値でまだ売られている…そう驚きながら、渾身の一冊を探して古本・アイをビカビカと光らせる。すると右端の棚に、怪し気な翻訳探偵小説を発見。文園社「探偵小説 恐怖の假面/アーサー・リーヴ」。こ、これは大正時代に刊行された『探偵文藝叢書』(2018/05/23参照)の、戦後仙花紙復刊版ではないか。状態はあまり良くないが、それでも千円は安いはず。そう信じてブースとブースの間で精算してもらっていると、さっきまでは影も形も見えなかった盛林堂・小野氏が、いつの間にか姿を現す。そして買っている本を見るなり「ごめんね。状態があまり良くなくて。でもそれ、横田順彌さんの旧蔵書だから」と教えてもらう。そう聞かされると、途端に本の魅力が倍増した感じである。ブースの裏に足を運び、少しの間立ち話する。まつりは11/4(月・祝)まで。帰り道、高円寺「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)に立ち寄ると、店頭棚に蔵印はあるが久保書店Q-TブックスSFシリーズ「恐怖の火星争奪戦/リイ・ブラケット」が出されていたので、迷わず百円で購入する。店主の粟生田さんと「今日あったかいですよね〜。あたし、半袖で来ちゃいましたよ」「夜、絶対に寒くなりますよ!風邪引かないように気をつけて下さいね」「アハハハハハ〜〜〜〜」などと他愛もない会話をする。気付けば今日買った二冊は、両方ともタイトルが『恐怖の〜』であった…。
kyoufu_no.jpg
家に戻ってから、少々の古本を抱え、夕暮れ時に再び家を出る。もはや十一月になったので、西荻窪「盛林堂書房」『フォニャルフ』棚にストトトと補充を行う。貸本仕様のカバーナシだが、島田一男の強烈少年探偵小説「七色の目」など並べてありますので、お近くにお立ち寄りの際は、ぜひとも小さな棚を覗いてみて下さい。
posted by tokusan at 18:49| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月31日

10/31「洋酒天国」再び!

今日はお昼過ぎに国立に流れ着くが、疲労の蓄積がすぐさま足を駅に向かわせる。ほぉ!赤い三角屋根の駅舎が見事に復元され、優雅な姿を見せ始めているではないか!と感じながら中央線の人となる。だが途中、先頭車両辺りが、荻窪駅のホームに滑り込み始めた電車の車窓から、開店している「竹陽書房」(2008/08/23参照)が見えてしまったので、思わず途中下車してしまう。ほどなくしてお店にたどり着き、新潮社「現代脚本叢書 第三編 法成寺物語/谷崎潤一郎」を800円で購入する。大正十年刊の谷崎脚本集で、表題作の他に『十五夜物語』『春の海邊』を収録。そこからテクテク歩いて阿佐ヶ谷に帰り着き、思いついて再び「千章堂書店」(2009/12/29参照)店頭台の「洋酒天国」井戸(2019/10/28参照)を掘り進む。『SF特集号』以外にも、もう一冊欲しい号があったのを思い出したのである…目指すは26号。稲垣足穂のエッセイが掲載されている号である!掘り進む途中から、冊子が号数順に積み重なっているのに気付く…36,37,38…ありゃ、もう通り過ぎちゃってるなぁ…あ、でも、改めて23・24合併号が出て来た。ということは、,25…26号!あったぁ〜!セロファン袋から取り出しページを開き、足穂の見開きエッセイ『ダンセーニ卿の「酒壜天国」』(目次は“ダンセーニ”だが、本文タイトルは“ダンセニー”になっており、本文中では“ダンセーニ”となっている…)を確認。900円で購入する。そしてこの「洋酒天国」、目次部分に青インキの丸スタンプが捺されている。『阿佐ヶ谷トリスバー マン 一番街』…どうやら阿佐ヶ谷にかつてあったトリスバーで売られていたものらしい。それが地元の古本屋さんで、長い年月を経て売られているなんて、ロマンチック!とひとり興奮する。興奮ついでに、駅東の高架南側にある、闇市的雰囲気を素敵に引き摺る『阿佐ヶ谷一番街』に足を向け、「洋酒天国」を里帰りさせる。さぁさぁ、ここが、お前の故郷なんだよ!
man_ichibangai.jpg
posted by tokusan at 16:37| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月30日

10/30古本屋さんからの絵ハガキ

お昼過ぎに上連雀に流れ着いてしまったので、この時間ならもう開いているなと、いつものように「りんてん舎」(2019/03/30参照)に足が向いてしまう。すると店頭箱を覗き込むと、たちまち四冊が腕の中に飛び込んで来た。創元社「シャガール自傳 夢のかげに/中山省三郎訳」現代思潮社「ニジンスキーの手記」(口絵モノクログラビアが豊富で嬉しい。晩年に部屋内で高く跳躍するあの写真も載ってる!)文藝春秋「夢の街 その他の街/小林信彦」(解説が野呂邦暢!)リブロポート「ワイルド・ウェスト物語/海野弘」を計440円で購入する。…ぬぅぅぅ、イカン。古本魂に火が点いてしまった…欲しい、古本が欲しい!もっと欲しい!…これはちょっとやそっとじゃ治まりそうにないので、思い切って保谷まで出ることにする。そう、保谷と言えば「アカシヤ書店」である。ほほぅ。今日は表のテーブルに、たくさんの児童学習グラビア雑誌「よいこのがくしゅう」(昭和五十年代)が積み重なっているなぁ、と興味深気に一冊一冊捲って行く。この鉄道特集の『ふろくずかん』は買っておこう…おや、変なものがその下から出て来たぞ。フライシャー兄弟の漫画映画を、英和対訳付きで絵本化した冊子である。これも買っておこう。続いて棚からは面白そうな日本の洋食器の歴史本と、おや!大正時代の「ホトトギス」!という感じで色々喜び、学習研究社「でんしゃがいっぱい」世界文庫「彩色長編漫画 ガリヴァー旅行記」(絵はバタ臭いが日本人が描いている)ほととぎす發行所「ホトトギス 大正十二年八月號」(表紙は小川芋銭だ!)叢文社「日本洋食器史 燕が歩いた六十年/捧吉右エ門」(著者献呈署名入り)を計440円で購入し、満足を得る。
hototogisu_gulliver.jpg
そして家に帰ると、ポストに一枚の古めかしい絵ハガキが舞い込んでいた。おぉ、これは熊本行でお世話になった「舒文堂河島書店」(2008/12/21参照)若旦那からの、礼状ではないか。古い古い、昭和十五年の参拝スタンプが捺された、阿蘇山の写真ハガキとは、古本屋さんらしい粋な演出である。
hagaki_jyobundou.jpg
posted by tokusan at 19:33| Comment(2) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月29日

10/29東京・吉祥寺『喜国雅彦のそれはオカズだ展』

朝から原稿を書き続け、一応すっかり書き上げて、一旦時間をおいて見直すことにする。昼食を摂った後外出。冷たい雨に上着を着込んで傘を差し、吉祥寺『リベストギャラリー創』で10/30(水)まで開かれている、本棚探偵・喜国雅彦氏の『喜国雅彦のそれはオカズだ展』を観に行く。人混みを擦り抜けギャラリーまでの道をたどりながら、「外口書店」(2010/02/22参照)を覗き、何も買えずに「藤井書店」(2009/07/23参照)まで行くと、残念ながらお休みであった…あぁ、そうだ。俺は古本を買いに来たのではなく、個展を観に来たのだ!と、古本への妄念を振り切り、北の対岸へ素早く渡り、傘をすぼめてギャラリーに飛び込む。おぉ、こんな雨の日なのに大賑わいである。入口で出迎えてくれたのは喜国氏の奥さまの漫画家・国樹由香さんの満面の笑顔。促されて芳名帳に記帳し、会場内に流れるバンド・大島渚のBGMを聴きながら、壁一面にズラリドバリと貼り出された、その下の台にもズラズラ置かれ並べられた「傷だらけの天使たち」と「悪魔のうたたね」の、赤黒二色の生原稿に熱い視線を注ぐ。原稿なので、誌面より遥かにデカイ!そして懐かしい!なのに面白い!やはり下品だ!と、つい、素敵にひねられたくだらないギャグにニヤニヤしてしまいながら、まるで一冊の漫画本を読むように展示を楽しんで行く。原稿はすべて販売されており、9900円(星印)6600円(無印)3300円(黄丸マーク)の値に分けられている(表紙絵やスペシャルカットや『館』シリーズのジークレ版画などは別値である)。大好きな漫画家さんの生原稿が手に入る機会など、そうあるわけではない…さ、3300円のやつから選んで買って行こうと、隅に貼られたもはや残り少なくなっている黄色いスマイルマークを目印に、原稿を吟味する。散々悩み、結果選んだのは『うたかた』である。同じ場所で、それぞれ待ちぼうけを食らった別々のカップルの男女が、その偶然の出会いをきっかけにデートしようとすると……結末が気になる方は、原典に当たってみて下さい。サブタイトルは『ふはははは あと5本描いたらローリング・ストーンズだ』となっている。90年の初来日公演あたりか…後五本、頑張れ!喜国先生!と過去の本棚探偵を応援しつつ、目の前にいる現在の本棚探偵に挨拶をし、会場を後にする。生原稿は紙物だ。これを買えば、今日はもう古本を買わなくとも大丈夫だろう。そう決めて、家路を急ぐ。
sore_wa_okazuda.jpg
家に帰って取り出して見たら、もっと大きく見えてくる生原稿(右下が個展の案内ハガキ)。そして本物の持つ力はやはり素晴らしい。それにしてもよくあんなにたくさん、ちゃんと保管してあったものだなぁ。
posted by tokusan at 18:20| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月28日

10/28探していた「洋酒天国」!

昨日は夕方にブラリと地元の「千章堂書店」(2009/12/29参照)を何気なく覗く。店頭には、土曜日に終わった『阿佐ヶ谷ジャズストリート』仕様のジャズ専用棚が、まだ燦然と輝いている。いつものように均一文庫台を見て、均一単行本台を見て…おっ、中央の均一台の後に、大量の「洋酒天国」が重なっているのに気付く。どうやら三十冊ほどあり、値段は一律900円の適価である。以前から探している号があるので、もしかしたら…と丁寧に一冊ずつ掘り返して行く。すると十冊目くらいで、探し求めていた表紙にたどり着いた。洋酒天国社「洋酒天国 numero10」(昭和三十二年刊。編集兼発行人はもちろん開高健)…『ミステリー特集号』なのである。早速900円を支払い購入し、ようやくの出会いを記念して、お店の前で写真撮影。
yousyu_tengoku.jpg
『アモンティラッドの樽/E・A・ポウ 谷崎精二訳』『顔を知られていない貴族/E・C・ベントリー 長谷川修二訳』『二人のピーター卿/D・セイヤーズ 黒沼健訳』の、ぶどう酒を扱ったミステリー三作を収録。なかでもベントリーは、江戸川乱歩推薦の初訳とのこと。すでにすべて読了してしまったが、柳原良平のそれぞれの作品のテイストに合わせたイカしたカットと相まり、お酒を飲みながらも楽しめる軽めの佳品たちであった。よし、次は『SF特集号』の「洋酒天国」を見つけるぞ!

本日は朝から仕事をタラタラ進めつつ、月曜定例午前十一時に家を出て、荻窪「ささま書店」(2018/08/20参照)を定点観測する。するとこの日の店頭は、早くも素晴らしき賑わいを見せており、何かあったのかと思うほど。岩波写真文庫「日本の映画」弓書房「一角獣・不死鳥・魔女/船戸英夫」をまだまだ5%引きの計210円で購入する。
posted by tokusan at 17:05| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月26日

10/26今日の「よみた屋」は買えたっ!

久々と思える穏やかな秋の午後に、吉祥寺北町に流れ着く。吉祥寺北町と言っても随分広く、今いる場所はほとんどもう三鷹である。ならば「りんてん舎」(2019/03/30参照)に顔を出して行くかと『三鷹通り』を南へ下る。昨日の大雨のために、今日から開催の気分である『神田古本まつり』の午前十時スタートに駆け付けられなかった己を呪い、腹いせに店内でミステリー棚に目を血走らせる…よし、今日はこれを買って行こう。東都ミステリー「湖上の不死鳥/野口赫宙」を1650円で購入する。結局そのままテクテク吉祥寺まで歩き、つい先日来たばかりの「よみた屋」(2014/08/29参照)店頭にも、まつりに駆け付けられなかった思いをぶつける。すると店頭棚が、そんな虚しい気持ちに素晴らしく呼応してくれ、今日はなんだかとても買えるぞ!買えるぞ!とかなり興奮。店頭棚をバックにポーズをとりまくり、モデル風写真を撮りまくっている中国人女子二人を尻目に、恐らくファインダー内に見切れながら本をズバズバ抜き出して行く。木材新聞社「ジェットに乗って/国吉大」(昭和三十六年に派遣された『第一回日本航空 全日本産業人欧米視察団』の一人が書き上げたジェット機による世界一周旅行記)ガゼット出版社「ボクシング展望/川島清」(カバーナシ。昭和三十三年刊の、会話形式ボクシング啓蒙書)集英社「ニューヨークひとりぼっち ミュージカル留学記/松島トモ子」(水ヌレ痕アリ。昭和四十年再版。可憐な少女歌手の、まだこの時は将来ライオンやヒョウに襲われることなど微塵も知らぬ、無邪気なアメリカ見聞録。当時の音楽関連の話が面白い)福音館書店「かがくのとも170号 とんとんとん/あまのゆうきち さく」「かがくのとも201号 こんなおみせしってる?/藤原マキ さく」「こどものとも いかだはぴしゃぴしゃ/岸田衿子さく・堀内誠一え」を計990円で購入する。
1026_yomitaya.jpg
やはり嬉しいのは松島トモ子。寄宿舎のテレビで『エド・サリバンショー』に出るビートルズを観る話とか、ビートルズが来米し大旋風が吹き荒れる話など、時代性がたまりません。藤原マキの絵本も頬が緩む拾い物であった。…あっ、しまった!吉祥寺では本棚探偵・喜国雅彦氏の個展が始まってたんだっけ…寄ればよかった…ら、来週駆けつけることにしよう…。
posted by tokusan at 18:29| Comment(3) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月25日

10/25「うつぎ書房」の行方を確認する。

昨日は上石神井に流れ着いたので、西武新宿線で帰路に着き、鷺ノ宮駅に降り立つと、自然と最近あまり開いていなかった妙正寺川沿いの「うつぎ書房」(2008/08/06参照)に足が向かってしまう。文庫とコミックとエロ以外にほとんど動きはないので、古本屋さんとしてそれほど好みではないのだが、それでもお店の動きが鈍くなると、気になって仕方ないのである。とぼとぼ歩いてお店に近付くと、おやおや、ちゃんとシャッターが開いている。良かった営業中だ。だが店内に電気は点いておらず、奥はかなり薄暗い模様。それでもせっかく足を運んだので、サッシ扉を開けて店内に滑り込む。入口近くの文庫やコミックは確認出来るが、やはり奥の不動の古書たちの背は、かなり読み難い。それでも一通り棚を見渡すことにする。店内の整頓は行き届いているが、なんでこんなに靴が多く蔓延っているのか!しかも上がり框下にまとまっているのではなく、そこかしこに!などと不思議に思いながら、玄関的古本屋さんをウロウロ。文春文庫「中野のお父さん/北村薫」を選び、丸見えの奥の住居空間に声を掛けると、「おっ、これは気付きませんでした。すみません」と長身の老店主が座敷テーブルを回り込み、ゆるゆると近付いて来る。なんだ、だから電気も暗かったのか。と300円で購入する。
utsugi_19.jpg

そして本日はヒドい雨の音を聞きながら、朝から懸命にお仕事。途中ちょっと古本の整理をしていると、角川文庫「ボロ家の春秋/梅崎春生」が出て来た。カバーがいい感じ…と思いつつ、何気なくそのカバーを剥がしてみると、驚くことに厚着本であった。帯とパラフィンだけの裸本角川文庫に、そのまま後刷りのカバーを掛けたものである。創元推理文庫以外にも、厚着本は存在したのか…。
boroya.jpg
などなど色々やった後、雨と風が小康状態になった午後四時に駅頭で打ち合わせをする。超超スピードのカバーデザイン依頼だが、これはとても燃えるお仕事。家に帰るまでにデザインの骨子を固め、家に帰って机の前に座り、ゲラを読みむや否や早速デザインに取りかかる。……うむ、なかなか思った通りの、昭和三十年代スリラー小説風な、いかがわしいものが出来たぞ。と喜び、早速クライアントにラフを送付する。
posted by tokusan at 19:06| Comment(2) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月23日

10/23東京・吉祥寺 mounga吉祥寺店

maunga.jpg
午後二時過ぎに下連雀に流れ着いたので、井の頭公園周辺にやけに多い外国人たちと足並みを揃え、吉祥寺駅に向かって進んで行く。『吉祥寺通り』を歩き続け、北東へ進んでいた道が、北にグインと曲がり込み、すぐに『井の頭通り』が見える所で、予想外の古本に遭遇する。通り南側のビル一階には店舗が並んでいるのだが、そのうちの一軒が、アウトドア&登山&キャンプ中古用品のお店で(何と本店は奥多摩の御岳の麓にあるそうだ)、その店頭にワケアリ格安品とともに、鉄籠と木箱に入った二十冊ほどの古本も並んでいるのだ。慌てて近付くと、フフフ、見事に山と登山の本ばかりだ。店長さんの蔵書なのだろうか。値段はシールで表紙に貼付けられており、大体100〜300円である。せっかくばったり出会ったのだ、何か買わなければ…と、山と渓谷社「続山野いで湯行脚/美坂哲男」を選び、200円で購入する。その後は「バサラブックス」(2015/03/28参照)に立ち寄り、店頭雑誌カゴの脇に潜んでいた数冊の付録漫画本の中から、小学館「小学五年生」昭和三十年六月号付録「万次郎の冒険/木の実和(画)」を200円で購入する。そのままいつものように「よみた屋」(2014/08/29参照)に向かい、入口新書サイズ百均棚の下部に、番号の大きいポケミスがズラッと並んでいるのを目撃する。番号が大きいからって、おろそかにしてはいけない。そう思い、しゃがみ込んで細い背に目を凝らして行く。するとほどなくして、“日影丈吉”の文字が飛び込んで来た。やった!というわけでハヤカワポケミス「そそっかしい暗殺者/ルネ・レウヴァン 日影丈吉訳」を110円で購入する。今日も吉祥寺は、楽しい古本日和である。
posted by tokusan at 17:38| Comment(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月22日

10/22昨日は大乱歩の誕生日。

雨降りの朝から仕事のための読書に埋没する。昼になって雨が上がり始め、皇居の方角から遠く響いて来る礼砲の音を耳にしてから、気晴らしに少し表に出る。ブラブラと、文字を詰め込んだ頭を冷やしながら、近所をウロウロ。高円寺「大石書店」(2010/03/08参照)でビニールシートを掛けられたダンダラ屋根の安売ワゴンに、先週に引き続き講談社のゴールド絵本が補充されているのを認める。シートを捲って手を入れ、「セロひきのゴーシュ/絵・黒崎義介 文・槇本ナナ子」を100円で購入する。帰りは高架下を伝い阿佐ヶ谷方面へ。潰れてしまってもぬけの殻の元『阿佐ヶ谷アニメストリート』を抜け、駅へ至る前に高架から離脱する。閉店した「穂高書房」(2019/09/17参照)の前を通りかかるが、まだ店内に本は、ギッシリ残されたままとなっている。…行方が気になるなぁ…。

そういえばボ〜ッとしていたが、昨日十月二十一日は、探偵小説界の巨人・江戸川乱歩の誕生日であった。もし生きていれば125歳か…いや、乱歩の探偵小説“魂”と探偵小説の“鬼”は、今でもそこかしこで、人の心の中に息づいているのだ。もちろんこの私の中にも。記念に何か珍しいものでもアップしておこうか…と思ったのだが、乱歩に関してはさして珍しいものなど持っていない。チープではあるが、河出市民文庫の学生サーヴィス版カバーが掛けられた「心理試験」(2016/11/21参照)くらいであろうか。そんな風に思いながら、机の前でふと目を上げると、そこには小さな乱歩の姿が…おぉ、そうか、これがあったか。壁に飾られているのは、随分前に思い切って購入した、人形作家で写真家・石塚公昭氏のオリジナルプリントである。仕事場の一角に雑然と収納された、乱歩人形・黒蜥蜴人形・二十面相人形・黄金仮面マスク、人間椅子、それに『三人書房』の模型看板などを写したものである。あぁ、これを疲れた時に見ると、乱歩世界がたちまち頭の中に立ち上がり、ニュルッと癒されるんだよなぁ。江戸川乱歩先生、125歳+一日の誕生日、おめでとうございます。
kimiaki_ishiduka.jpg
posted by tokusan at 21:54| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月21日

10/21旅からたちまち日常へ。

昨日は荻窪の西にお昼過ぎに流れ着く。たちまち戻って来た日常を、旅を楽しんだこの身に味わいながら、テクテク歩いて西荻窪へ。あっ、古本も売っていたアイス屋さん「BOBOLI」(2012/03/07参照)が閉店している。表には不要品を並べ『ご自由にどうぞ』。古本も詰み上がっていたが、残念ながら雑誌やムック本ばかりであった。そこからゆるゆると緩い坂を下って「盛林堂書房」(2012/01/06参照)へ、店主・小野氏に「お帰り」と言われながら、出来上がったばかりの表紙周りを担当した「Re-Clam eX vol.1」を受け取る。うむ、ちゃんと格好良いぞ!そして続いて、こちらも出来立てホヤホヤの盛林堂ミステリアス文庫「大阪圭吉単行本未収録作品集3 沙漠の伏魔殿」を献本していただく。うひゃぁっ、大阪圭吉の本なのに、表紙絵がプリティーさマックス!「まるで「あらしの白ばと」じゃあないですか」というと「だって、『沙漠の伏魔殿』がそう言う話なんだもん」と小野氏。10/25(金)から、盛林堂店舗と『神田古本まつり』の盛林堂ブースで販売開始とのこと。首を長くして刊行を待っていた人は、万難を排してどちらかに駆け付けるべし!日本出版協同株式会社「深夜の告白(原題 倍額保険)/ジェームス・ケイン」と新刊の新紀元社「幻想と怪奇傑作選 特別収録同人誌「THE HORROR」全巻復刻/紀田順一郎・荒俣宏監修」を計2500円で購入する。帰りの道中で、ちょっと気を抜いて昼ビールを飲みながらテクテク。阿佐ヶ谷では「千章堂書店」(2009/12/29参照)を覗き、パロル舎「いやなことは後まわし/パトリック・モディアノ」を100円で購入する。続いて混雑している「ネオ書房」(2019/08/11参照)を覗くが、ぐるりと一渡り棚を見ただけで、何も買わずに出て来てしまう。すると後から帳場にいた切通氏の奥さまが素早く駆け寄り「あの…」と声を掛けて来た。一瞬勝手に『いや、万引などしていません』と妄想を膨らませて身構えてしまうが、「小山さんですよね」と言われ、正体がばれていたことにようやく気付く。色々勝手にお店を取り上げたことについて、身に余るお礼などを伝えられ、大変に恐縮してしまう。せっかくなので店内に再突入し、切通氏にも名乗りを上げてご挨拶する。突然の展開に、ビールと恥ずかしさで顔を鬼のように赤くしながら、少しお話しさせていただく。これからもちょくちょく寄らせていただきますので、引き続き面白い本を阿佐ヶ谷に供給、よろしくお願いいたします!そして本日は朝から仕事をバリバリ進めた後、午前十一時に家を出て、荻窪「ささま書店」(2018/08/20参照)を定点観測する。店頭で三冊掴み、店内の棚下平台ミステリゾーンに目を落とすと、おっ!講談社「黒い白鳥/鮎川哲也」の函の背が、ピカリと輝いている!抜き出し値段を確認してみたら、各安の千円だったので迷うことなく購入を決める。沖積社「夢野久作ワンダーランド」時事通信社「活字狂騒曲/倉阪鬼一郎」講談社現代新書「東京情報コレクション」とともに、嬉しい5%引きの計1360円で購入する。また、古本買いの日常が戻って来たことを、強く実感する。
hakucyou_keikichi.jpg
ほうほう、「黒い白鳥」の装幀は池田竜雄(龍雄)なのかぁ。
posted by tokusan at 15:37| Comment(3) | 古本屋消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月20日

10/20熊本〜島原〜博多・古本屋行 三日目

午前九時に隠れ家の宿をそっと抜け出る。本日は初っ端は所用のある岡崎氏とは別行動。曇りだが雨上がりの大通りを、大橋方面に向かって歩いて行く。午前九時十分、まだ静かに眠る「本々堂」に挨拶。
1019-1.jpg
背負ったリュックには、『鶴屋』の「本々堂」均一ワゴンから買った「虹男」が入っているのです。そんなことを思いつつ、テクテク歩き続けて行くと、妙に興が乗り始めてしまい、西鉄大牟田線に乗車することなく、午前十時半に天神までたどり着いてしまう…ゼイゼイ。やはり素直に電車に乗ればよかったか…。『警固神社』脇を通過しつつ、北の『親不孝通り』を目指し、トーク時にタレコミのあった『古本を売る立体駐車場』を探す。だが探し方が悪く、どうにもこれが見つからないので、泣く泣く諦め、急ぎ次の目的地を目指す。午前十一時、天神駅から地下鉄貝塚駅経由で、西鉄香椎駅を目指す。車中で「ゆがめられた昨日」を6ページだけ読み進む。黒人探偵、雇用主との距離感に四苦八苦している…事件以外にも、黒人故の境遇で業務でもなかな苦しむ探偵さんなのである。終点前に地下鉄が地上に出て、いつの間にか晴れつつある空から、明るい陽光が飛び込んで来る。乗り換えた西鉄貝塚線は、ヤクルト色に赤いラインの入った二両編成。貨物列車の通る博多臨港線としばし並走したりしながら、午前十時半に西鉄香椎駅着。そう、ここは、松本清張の名作推理小説「点と線」の舞台の一つとなる場所なのである!…あぁぁぁぁ、しまった。物語に沿うならば、本当はJRの香椎駅に行かねばならなかった事件の核となる怪しい二人連れのカップルは、国鉄香椎駅から西鉄香椎駅の方向に歩いて来るんだったぁ〜!思わぬ凡ミスを大いに嘆くが、もはや後の祭りである。仕方ない、ここはまず、事件の発端となる心中場所の海岸を見に行くことにしよう。そう決めて、駅から西へ西へと歩き始める。ところが、焦り過ぎて駅の地図などを確認して来なかったのがまずかった。行けども行けども集合住宅ばかりで、海も見えないし海の匂いもして来ない…これはまずい。こんなことで限りある時間を食っている場合ではないのだ…見知らぬ土地での手違いは、心に過剰なほど焦りを生み出していく…さっさと諦め駅方向に戻り、西鉄駅を通過してJR香椎駅へ…うぎゃぁ、な、なんだ、この巨大な駅は!
1019-2.jpg
もはや小説の面影など何処にもなく、『ずいぶんさびしい』と言われた駅前も、寂しさの欠片も見られない…あぁ、「点と線」の時代は、遠くになりにけり…。二人連れあ歩いたであろう駅からの通りも、ビルに挟まれた二車線の道路になっている。行く手の西鉄線路も、踏切ではなく高架に……砂を噛むように、虚しく香椎駅から西鉄線路に向かい、ゆっくり歩き、ただその距離感だけに小説の面影を追い求める…。
1019-3.jpg
鹿児島本線内で、昼食代わりのパンを齧りながら、博多に戻る。午後十二時二十分、地下鉄で六本松へ向かう。やることはやった。ここからは古本屋さんを目指して突き進むのみ。天神で七隈線に乗り換えようと、長過ぎる理不尽な連絡通路を(一キロくらいあるのではないか)歩いていると、岡崎氏から電話が入る。用事が無事に済んだので、合流できるとのこと。六本松駅で待ち合わせることにする。午後十二時五十分、六本松駅着。まだ氏が到着するまで間がありそうなので、目的店の裏路地にある「徘徊堂 六本松店」(赤坂の旧店については2008/06/29参照)を見に行ってみる。ところがこれが開いていない!うぎゃぁ!これはイカン。急ぎ岡崎氏にメールを送り、お店が閉まっていることを告げ、隣駅・別府(“べっぷ”ではなく“べふ”と読む)にある同じ「徘徊堂」の別府店で待ち合わせることにする。…ぐぅぅぅ、もういい加減古本禁断症状が発症し始めている…。地下鉄には乗らず歩き、別府団地沿いの小さな小さな商店ゾーンにあるお店前に到着する。うぎゃぁ、閉まっている!こりゃぁ、さらにイカンぞ…だが、入口のシャッターがちょっとだけ開いている。これはもうすぐ開くのかもしれない。ここは一旦駅に向かい、岡崎氏を出迎え、再びお店に舞い戻ることにしよう。その時にはもう開いているかもしれない。ということで岡崎氏と駅で落ち合い、氏に事情を説明して、ともにお店を目指す…だが、状況は変わらず、シャッターちょっと開き状態のまま。だが氏が「中にいるかもしれんよ」と、突然大きな身体を開いているシャッター部分に潜り込ませる。そして徐に入口木戸を開けたようで、何やら話し声が聞こえて来る。しばらくすると「いいで、入り」と氏の笑顔。
1019-4.jpg
同じくシャッター潜って中に入り込むと、店主と奥さまとプリティー過ぎる娘さんが、汗をかきかき、息を弾ません、店内溢れる古本の片付けに従事していた。実は岡崎氏と徘徊堂さんは以前からの顔見知り。そして明日に迫ったイベントのために片付けの真っ最中。うぅ、ありがとうございます。きっと一人じゃ、お店に入れませんでした。そして忙しいのに入れてくれてありがとうございます。とその場にいるみなさんに感謝する。店主や奥さまや、あまつさえ小さな娘さんとも話を弾ませるお世話になった岡崎氏をよそに、早速古本を見まくって行くことにする。店内は横長で、右に絵本や児童文学や暮らしが集まり、中央に文庫や新書、そして左に文学・美術・歴史・郷土(夢野久作あり!)・サブカルなどが集められている。ギロギロと飢えた視線を四方に放ち、久々の獲物を追い求める。その合間に、娘さんが蚊が帳場近くにいることを報告したり、奥さまが「音羽館」と「汽水社」の匂いは同じで石鹸と炭を調合した芳香剤らしい(そう言えば、「コンコ堂」も「水中書店」も似た匂いがする。あれを、芳香剤の匂いと思ったことは一度もなかった、ただ古本と本棚の匂いだと思っていた…と、奥さまの斬新な視点に感心する。もしかしたら「音羽館」広瀬氏が、店員さんがお店から独立する際、秘伝として伝えているのかもしれない…)、などの楽しい話が耳に飛び込んで来る。研究社「わたしのなかの童話 随想集」を500円で購入する。すると店主さんが「六本松の方も見てみますか?」と嬉しい申し出をしてくれた。もちろん一も二もなくお願いすると「もう一年は開けてないんですよ。でも、なにもないですよ」と謙遜。だが、古本修羅の常として、未知のお店に対する期待は、そんな謙遜の言葉では揺るがない。お店の自転車を総出で借りることになり、何故か娘さんも「アタシも行くぅ〜!」と同行することになり、都合四台の自転車が、六本松店に向かって疾走することに。まったく、人生は何が起こるか分からないなぁ〜、あぁ楽しい。
1019-5.jpg
ほどなくして十分ほどで、先ほどシャッターに弾かれたばかりのお店に到着する。その憎いシャッターがガラガラと上げられたので、遠慮なく店内に踏み込むと、おぉ、そこは本だらけの空間!
1020-6.jpg
足の踏み場がかろうじて残る、古本に満たされた空間!ここは店舗として入れるのは右側部分の四本ほどの通路で、帳場を境に後は広大なバックヤードとなっているのだが、そのほとんどの通路に古本が積み上がり、入れぬところがほとんどとなっている。現在店舗部分で見られるのは、入口付近と右端の通路二本のみ。だがそこも、かなり険しい状況になっている。まだ見られる棚部分を見て行くと、文庫本・児童文学・ジュブナイルミステリ・映画・サブカル・詩集・文学・ミステリなどなど…別府店よりマニアックドが深く、古書も多いのが嬉しい。しばらく手の届くところを可能な限り検分し、二冊を選ぶ。文藝市場社「ナポリの秘密博物館」(函ナシ)児童憲章の会「学習図鑑 宇宙旅行」を選ぶ。「宇宙旅行」の方は値段が付いていなかったので「お幾らですか?」と聞くと「うぅぅぅ〜〜〜〜〜ん、いいところを選びますねぇ。くぅ〜〜〜」と盛大に悩んだ挙げ句「千円でどうですか」「ではそれで!」と計1500円で購入する。ここは、福岡に来ることがあったら、また来よう。そして開いてなくても、どうにかして開けてもらおう!あぁ、最後の最後で、何だかいい思いが出来ました。ありがとうございました!お店の前で、可愛く小さな手を降る娘さんに見送られながら、駅方面へ。『シアトルコーヒー』でしばらく身体を安め、午後四時過ぎに空港へ向けて出発。賑わう空港では、羽田空港の混雑により出発の遅れた飛行機にようやく乗り込み、午後五時五十分に福岡を離陸する。飛行中も静岡上空で待機させられたりしながら、長くなるフライト時間を有効活用すべく、読書灯を点滅させ「ゆがめられた昨日」を読み続ける。はめられた黒人探偵は、身の証を証明出来るのか…クライマックス直前の午後七時三十五分に羽田着。リムジンバスで帰るという岡崎氏とはここで別れ、ひとり電車を乗り継ぎ阿佐ヶ谷を目指す。もちろん車内では読書の続きを。すると高円寺駅で読了。旅の終わりと物語の終わりがが見事に重なった、カタルシス溢れる瞬間をこの身に味わう。そして、ハヤカワポケミスは、その名の通りポケットにスッと入って、スッと取り出せるから、至極便利な形態だなと感じた、長旅でもあった。下の写真はこの旅の収穫である。
kumamotofukuoka_syukaku.jpg
posted by tokusan at 20:14| Comment(4) | 九州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

10/20熊本〜島原〜博多・古本屋行 二日目

曇り、気温二十度。午前九時半に岡崎氏とロビーで落ち合い、まずはお世話になった「舒文堂河島書店」さんに挨拶に向かう。すると閉まったガラスアコーディオンシャッターの向こうには、ミーティング中の若旦那の姿が。しばし店頭で開店を待つ。
1018-1.jpg
やがて開店作業に取りかかった御大にも挨拶。先年の大地震で、土地が少し隆起し、シャッターが開き難くなったことや、店内後部の和本ゾーンは、昔の店舗を柱や梁をそのままに移築したことなどを教えられる。さらには若旦那の案内で、めったに見られぬ店奥の中庭に入れてもらい、柿の木を見上げた後、庭奥の昔から残る家屋など見せていただく。
1018-2.jpg
玄関に掛かる大昔のぼんぼり風看板が印象的であった…というか、これ、欲しい!
1018-3.jpg
お世話になったお店を離れた後は、まずは岡崎氏のリクエストで、小泉八雲旧居を見に行く。手製の詳細な説明パネルが迫り来る日本家屋を堪能。中でも『熊本善意銀行』から寄贈された、数種類の八雲全集を並べた古い本棚が素敵であった。
1018-4.jpg
午前十時二十六分、水道町から可愛い一つ目の路面電車・熊本電鉄に乗り込み、ガタガタチンチン熊本駅まで揺られる。分厚い木板の床が無性に懐かしい。
1018-5.jpg
午前十時五十分、熊本駅着。ここから岡崎氏がアグレッシブに活動し始め、熊本港から出ている島原行きのフェリーと連動している無料バスの席を、予約もしていないのにどうにか確保。駅構内の「ふく泉」で美味しい丸天うどんを啜ってから、そのバスに乗り込み熊本港へ向かう。市街を離れると、農地がただただ広がるだだっ広い南の大地である。三十分ほど走り、港に到着。バスの中でフェリー到着を待機し、長いスロープを上がり、三階ほどの高さから『九商フェリー』に乗船する。このフェリーは最上階の客席以下が車両の格納スペースになっており、遥かにそちらの方が利用客が多かった。午後十二時二十五分に出港。海の男たちのテキパキした正確で危険な出港作業を感心して眺めていると、古いフェリーは、どんよしりした粘土色の海に白く泡立つ軌跡を描いて、ズンズン進み始める。離れ始め、やがて霞んで行く熊本。フェリーには常に可愛過ぎるカモメたちが並走し、近距離で滑空しながらエサを強請り続けている。
1018-6.jpg
一時間ほどの航海で、島原港着。雲仙の山々が猛々しく聳え、その足元に町が広がる奇観に、しばし圧倒される。だが港町に人影は少なく、侘しく寂れている。二人で顔を見合わせ「スゴい所に遥々来たなぁ〜」と旅情を盛大に感じ取る。近くには案内版も何もないので、勘を頼りに島原鉄道の島原港駅まで歩いて移動する。踏切の向こうに現れたのはさらに鄙びた感を加速させる、単線ディーゼルカーの終着駅であった。
1018-8.jpg
ここから十分ほど鉄道に乗車し、島原駅で下車。待望の古本屋さん探しに取りかかる。駅舎は屋根の両側にしゃちほこも備える、本格的なお城スタイルである。その屋根の下を離れ、折り悪く雨が降り始めたここも寂しい町を行き、まずは「吉四六」というお店を目指す。だが、当該住所には、お店など影も形も見えなかった…。念のため島原城沿いも探索してみるが、猫がたくさん棲みつく古民家を見つけたくらいで、成果ナシ…。雨が酷いので一旦駅へ引き返し、もうひとつのちょっと駅から離れたお店「月光堂」に岡崎氏が電話を入れる、もし営業していれば、レンタサイクルを借り、駆け付けようと言う算段であった。だがお店は現在はネット中心で、本も見せられないということで、けんもほろろに断られてしまう。あぁ、これにて島原古本屋さん探索、あえなく終了…しばし駅横の瓦屋根の重厚な自転車置場を眺め、無聊を慰める。
1018-9.jpg
だが今は、ここで挫けている訳にはいかないのだ。今日の宿泊地は博多近辺なので、夜までには電車を乗り継ぎ、そこまで移動しなければならない。というわけで、早々に午後三時十四分の島原鉄道に乗り、博多へと向かうことにする。岡崎氏が手に入れた、ちょっと旅費が安くなる『二人きっぷ』を握り締め、有明海と古く鄙びた土地が連続する車窓を眺め、まずは終点の諫早へ。
1018-10.jpg
午後四時二十分に到着した諫早は、さっきまで居た寂し気な島原と比べると、恐ろしいほどの大都会である。ここでJRの特急かもめ30号に乗り換えつつ、一瞬だけ野呂邦暢の故郷に足を踏み入れたことに小さく感動する。自由席に席を確保し、ここから博多駅まで猛スピードで一直線。少しだけ「ゆがめられた昨日」の続きを13ページ読む。主人公の黒人探偵『トゥセント』は、地味な尾行をこなし、慣れない業界人パーティーに激しく戸惑っている…。午後六時十五分、博多駅着。乗物に乗っているだけで、すっかり疲れてしまった。だが宿は、中心街から離れた、井尻という駅近くにとっているのだ。夜の博多は、東京並みの帰宅ラッシュを見せている、人波を掻き分け掻き分け、慣れない電車を必死に乗り継ぎ、午後六時半に井尻駅着…乗物に乗りまくった一日であった…しかも古本屋さんには行けず終い…。そして大きな道路沿いにに探し当てた宿泊場所は、ワンルームマンションをありのままにホテルとしている、恐ろしく場末感が充満した建物であった。…こ、ここまでとは…ここを予約したのは私なので、岡崎氏に恐縮することしきり。だが氏は優しく「いや、こんあところに泊れるのは貴重やで。面白いなぁ〜」と面白がってくれた…うぅ、すいません。受付には誰もいなかったが、やがておば様が車で駆け付け、一階のワンルームフロントで受付を済ませる。その際おば様は、近所の激安食べ物屋を何軒も何軒も紹介してくれた…ホテルの説明そっちのけで…。階段を上がってお互いの部屋に向かい、住居そのままの古い鉄扉を開ける。なんだか、逃亡犯が身を隠すような宿なのである。旅情とは別の侘しさが、胸の内に込み上げて来る。荷物を整理してから、氏と近くの中華屋に晩ご飯を食べに行き、陽気過ぎる台湾娘の接客を受ける。黒チャーハンと生ビール。料理は美味であった。ホテルに引き返し、しばし岡崎氏とテレビを見ながら部屋飲みする。
1018-11.jpg
深夜、車の音、何故か定期的にユサっと揺れる建物…寝ながらも侘しさを深めて行く…。
posted by tokusan at 20:09| Comment(2) | 九州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

10/20熊本〜島原〜博多・古本屋行 一日目

午前八時過ぎに家を出て、地獄のような満員電車を乗り継ぎ、曇り空の羽田空港へ。『保安検査場』では、上着も脱いで調べられるようになったことを初めて知る。搭乗口ロビーで、三日間旅を共にする岡崎武志氏と合流。遠くからこちらの姿を見つけ、大きく手を振っている。口では「電車だけでもう疲れたわ。帰りたいわぁ〜」などと言っているが、その瞳は熊本行きの飛行機を見つめ、小さく燃え上がっている。フライトはおよそ一時間半。機内ではハヤカワポケミス「ゆがめられた昨日」を読み進める。田中小実昌の読みやすい訳文に引き込まれ、パラパラとページが捲れて行く。『簡易食堂』のルビが『キヤフテリア』とはイカしてるな。黒人の主人公が、私立探偵を続けるか、安定のために郵便配達夫になるか、悩みに悩んでいる58pまで。正午に“火の国”熊本に到着し、今回我々を東奔西走して呼んでくれた「舒文堂河島書店」(2008/12/21参照)の若旦那に出迎えられる。駐車場でしばし舒文堂号を見失う微笑ましいハプニングもあったが、無事に車は市内に向かって突き進み、午後一時に市内『上通り』に到着する。雨が落ち始めているが、まずはお店に向かいつつ「汽水社」さんに挨拶をする。その昔、よく「なごやか文庫」の古本市の開始待ちの列で、お会いしたものである。後でまた見に来ることを約束し、まずは昼食を摂る。近くのラーメン屋さん『こむらさき』で、あっさりクリーミーとんこつの『王様ラーメン』+餃子を美味しくいただく。さぁ、お腹が満ちたら古本屋さんだ!と、仕事に戻る若旦那と一時別れ、この『上通り』のアーケード無し部分に集まる三軒のお店に向かう。まずは新進気鋭の、先ほど挨拶を済ませた「汽水社」へ。
1017-1.jpg
縦長で奥深く天井が高く、洒落た空間である。各ジャンルは品揃え&棚造りしっかりで、マイペースな雰囲気と若めの傾向がこの街ではなかなか新鮮な印象を受ける。奥のカウンター前のレコード軍艦島が異彩を放つ。他にも張り子の人形や、アンティークなショウケースや、オバQの鉛筆削りや、崎陽軒の醤油入れ『ひょうちゃん』などが売られている。散々何を買おうか悩んだ挙げ句、初っ端なのに古本ではない、件の醤油入れを500円で購入する。だがこれは、スタンダードな横山隆一作ではなく、何と原田治の絵入りなのである。うぅむ、これは嬉しい。こんな奇妙な物が出ていたのか。ミスマッチも甚だしいところが、全く持って愉快愉快。続いて「天野屋」(2008/12/21参照)に向かい、雑然とした空間と、頻出する古書をウハウハ楽しむ。
1017-2.jpg
ボール紙表紙本、おぉっ!九鬼紫郎の時代物!渡辺啓助!などと目の保養を済ませてから、河出市民文庫「上林暁集/山本健吉編」を300円で購入する。熊本に所縁ある作家の本が早々に買えたのが嬉しく、ちょっとした役目を果たした気分になる。「ちょっと地元喫茶店に入って一休みしよう」と岡崎氏が提案。賑やかなアーケードの下に入り、地下の喫茶店『珈琲人』に腰を据える。金沢碧のようなご婦人が一人で優しく切り盛りしているお店である。心と身体を小休止させた後に、「舒文堂河島書店」へ。
1017-3.jpg
来るのは三度目だが、相変わらず豊かな古本屋さんである。店頭+店内前部+店内中央部+店内後部と、まるで四つの異なるお店が連結しているような豊潤さなのである。特に熊本の歴史郷土関連はピカ一。店内前部の棚から、戦前の子供雑誌「幼年倶楽部」などからセレクトした物語をハードカバー合本にした私家本を千円で購入する。その後は近くのホテルにチェックインし、またも一休み(ちなみにこの間、岡崎氏はビールを飲み、サンドイッチで腹ごしらえし、トークに備えていた…)。ベッドに寝転び「上林暁集」の『天草土産』を読む。おぉ、旅先で収穫の古本を読み耽る幸せよ…。午後五時半、ロビーで岡崎氏と落ち合い、アーケード街をそぞろ歩きで抜け、地元デパート『鶴屋』の本館6階で開催されている「第50回鶴屋古書籍販売会」に突入する。ダンス衣装売場と紳士服売場と分け合った場所に、40弱のワゴンを並べ、右と左で老舗と若手がせめぎ合う感じの中規模の古本市である。
1017-4.jpg
老舗の郷土本の強度も凄まじいが、若手のデパート古本市には珍しい均一ワゴンも魅力的。「本々堂」が出す200均のワゴンから、雄山閣出版「虹男/角田喜久雄」(箱ナシ)を220円で購入する。買物を無事に済ませ、連絡通路からトーク会場へ向かい、午後七時から岡崎氏と縦横無尽に古本屋さんについて話しまくる。いや、やくたいもない古本屋大好きオッサンたちのバカ話をご静聴いただいた、三十人弱の素敵なみなさま、本当にありがとうございました。
1017-5.jpg
打ち上げでは新鮮なお魚をたくさん食べつつ、「河島書店」御大&若旦那「エターナルブックス」さん「タケシマ文庫」さん「汽水社」さん「グエル書房」さん「古書ワルツ」妹さん(2010/09/18参照。実家が佐賀で帰省中だった)「西海洞」さんらとワイワイガヤガヤ。そしてなんと、北九州からわざわざ古本乙女・カラサキアユミさんも駆け付けていたので、場は更に無闇矢鱈と古本話で盛り上がる。カラサキさんからは、古本市でさっき買ったばかりの、昭和の地元商店広告の裏に丁寧に書かれ綴られた郷土士伝を見せてもらう。もちろん目的は郷土士伝ではなく、その裏の広告チラシたちなのである。相変わらず古本&紙物好きにメーターを振り切っていて、期待を裏切らぬ活躍っぷり。また「西海洞」さんからは、「紙物の山の中に入ってたんだけど…」と、突然古い平成八年の中学生の生徒手帳をプレゼントされる。中を開くと、名前がなんと“古本”さん。嬉しいけど、私はこれをいったいどうすりゃいいんですか!と苦笑しながらありがたく拝受する。
posted by tokusan at 20:01| Comment(4) | 九州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月17日

10/17いざ熊本へ!

午前五時四十分起床。旅の準備をわちゃわちゃと進める。荷物は小さなリュック一つにまとめ、結局持って行く本は二冊にする。先述通りのハヤカワポケミス「ゆがめられた昨日/エド・レイシイ」と春陽堂文庫「メリメの手紙/平井呈一譯」。というわけで、これから一路羽田へ向かい、そこで岡崎武志氏と合流し、久しぶりに九州に上陸予定。それでは今晩の出張古本屋トーク、みなさまよろしくお願いいたします!
1017_tabi.jpg
■オカタケ&古ツアの古本屋を語り尽くす夜 in 熊本
■10月17日(木)19時より
■くまもと県民交流館パレア10階 第7会議室 熊本市中央区手取本町8-9
■入場無料・申し込不要
kumamoto_talk.jpg
posted by tokusan at 07:35| Comment(0) | 追記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする