2016年11月16日

11/16古本屋バイト・イン・J町 その3

今日も真面目にバイトします。だが出勤前に、開いた早々の「田村書店」(2010/12/21参照)店頭に齧り付き、中公文庫「西條八十/筒井清忠」岩波文庫「芥川竜之介書簡集」現代書館「異端の笑国【小人プロレスの世界】/高部雨市」講談社「枯草の根/陳舜臣」文園社「吉行エイスケ作品集」非凡閣「晩夏楼/上林暁」(カバーナシ)を計800円で購入し、いきなり六冊の古本を抱えたカタチで古本屋に出勤する。最初は奥の事務所兼倉庫にて、催事用の小ネタ文庫群作りに励む。本の山を値段ごとに分けてもらい、後はそれにひたすら値段札を貼付けて行く地味な作業である。
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その後はレジに戻ってレジを打ちつつセット本の梱包をしたり、ダンボール三箱分の映画スチールの袋開け、均一本の値段付けなどを行っていると、あっという間に夜になる…一日が経つのが、なんだかとても早い…。そしてはたと気付いたのは、今現在古本屋さんに臨時に勤めているのだが、その仕事は古本を売ることより、商品である古本を製造して行く作業の方が、遥かに遥かに多いのである。常に古本の商品化を目指し、手を忙しなく動かし続けている。だから、需要(小)と供給(大)の関係が、見事なまでのアンバランスとなって行く。つまり供給物を生み出す作業は、速攻売れる本より、遅効性のじっくり売れたり寝かしたりする本の方が(つまりは在庫である)、遥かに多いと言うことなのであろう。今さらそんな単純なことに気づいた、バイト三日目の夜であった。

時間をキュキュッと巻き戻し、正午前。ひとり催事用値札貼りをしていると、突然事務所のドアが開き「小山さん」と声がかかる。振り向くとそこに立っていたのは、古本神・森英俊氏であった。「店長に聞いたら、ここだとうかがったので」「えっ!森さん、どうして分かったんですか!」と嬉し恥ずかし色めきたつと、「なぁに、簡単な推理ですよ」とホームズみたいなセリフを口にして、ニヤリ…この人は、これを言うために、ここにやって来たに違いない、とその瞬間に確信する。名探偵的陣中見舞い、ありがとうございました!

※お知らせいくつか
ウカウカしていたら、押し迫って来る気配の年末!そんな忙しい時期に、三つほど催し物に参加したり企画したりする予定です!

1. 今年最後の「みちくさ市」に、面白&奇妙&真面目&ミステリな古本と新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」を携え参加いたします。どうか、なまった体でどうにかやりおおせた古本屋バイトの話や、関西のお店の話など、古本を買いがてら聞きに来ていただければ!もちろん識語署名捺印何でもござれ!
■第35回 鬼子母神通り みちくさ市
■11月20日(日)11:00〜16:00(雨天中止。当日8:00に天候による開催の有無を決定します)
http://kmstreet.exblog.jp/
■雑司が谷・鬼子母神通り 東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺 東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ
■michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241

2. 『連続講座 古本屋的!!』第4回「古本屋の光と影」
七月の同講座のトークに引き続き、その時の立場を逆転し、盛林堂・小野氏が聞き役を務め、大好きな古本屋さんについて、様々に縦横無尽に語り尽くします。ほぼ、何処が終点か分からないフリートークとなりそうですが、意外に真面目に話すことの方が、多いかもしれません。およそ半月後に迫っていますが、スケジュールをやりくりしていただき、ぜひともお越しいただければ。もちろん「古本屋ツアー・イン・京阪神」の苦労話なども!
■12月2日(金)
■ブックカフェ二十世紀(@ワンダー2階) 東京都千代田区神田神保町2-5-4
■19:00〜20:30
■会費:1,500円(1ドリンク付) 懇親会1,500円(軽飲食20:30〜21:30 ※自由参加です)
■予約申込はブックカフェ二十世紀(jimbo20seiki@gmail.com)までメールにてお願い致します。お名前と参加人数をお知らせください。詳細はブックカフェ二十世紀サイト「EVENT」よりご確認いただけます。→http://jimbo20seiki.wix.com/jimbocho20c

3. 「オカタケ&古ツア ガレージ古本市&トークイベント」
今年も性懲りもなく開催させていただきます。年末の古本的棹尾を華麗に飾ります。こちらはただひたすら能天気に楽しい古本市&トークイベントとなっておりますので、みなさま頭を空っぽにして、師走の一日をごゆるりとお過ごしください!
■12月10日(土)11:00〜17:00
■西荻窪 銀盛会館1階(JR西荻窪駅南口徒歩五分 杉並区西荻南2-18-4)
そして夜はトークイベント
■「2016年古本・古本屋総決算」
■同日18:00〜20:00
■西荻窪 銀盛会館2階
■1000円 定員25名
■予約・お問い合わせは西荻ブックマーク http://nishiogi-bookmark.org/
■古本市のお問い合わせは盛林堂書房 seirindou_syobou-1949@yahoo.co.jp 03-3333-6582
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岡崎武志氏によるイラストモチーフは、映画『明日に向かって撃て』のラストシーン。身に余るほど格好良いのですが、恐らくこの後全身に古本弾を雨霰と浴びまくり、琴切れる予感がヒシヒシと…。
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2016年11月15日

11/15古本屋バイト・イン・J町 その2

規則正しく起床して行動開始し、古本屋バイト二日目に向かう。途中開いたばかりの「日本書房」店頭ワゴンに足を留め、六藝社「風流記/石黒敬七」(裸本)河出新書「外國拝見/門田勲」などを計400円でいそいそ購入していると、いつの間にか出勤時間が迫ってしまっている。本を受け取り慌てて駆け出し、J町某店に滑り込む…遅刻しなくて、良かった…。本日は昨日より店員さんの人数が少なく、ひとりでレジ担当をする時間が生まれるらしいので、すでに私の心臓は、早鐘のようにドキドキドキドキ…。だが当然の如く時間は容赦なく進むのでそのまま開店に雪崩れ込み、まず最初の仕事となる、大量の秋元文庫の状態チェック&クリーニング&ビニールカバー掛けに突入する。本を様々な角度から眺め、カバーを外し、本文をチェック…あぁ、ほとんどの本に値段ラベルが貼り付いているじゃないか。これはなかなか手間がかかるぞ。レジを打ちながら、黄色い本との格闘にただただ没頭して行く。それにしても、根無し草のフリーランス稼業の私が、このように体験バイトとは言え、まともな社会人として労働している奇跡的状況は、奇妙な清々しい感覚を、身の内に湧き上げている。ちゃんとした会社員デザイナーとして勤めていたのは、もう二十年以上前のことなのか…。まぁたかが二日目で、労働などと偉そうに宣ってはみたが、所詮は働いているお店のシステムや全体像も見えておらず、自分で自分がするべき仕事を作り出せない、指示待ち状態なのである。だがそれでも、働きに行く場所があるということを、なんだか新鮮な喜びとして感じてしまっているのだ。まるで映画『男はつらいよ』シリーズで、主人公の寅さんが時々、恋愛事情やええ格好しいや気まぐれから、フリーランス・テキ屋稼業を辞めて正業に就いたような感じと言えば、何となくその奇妙な喜びが伝わるであろうか。もちろんあの考えは甘々なのだが、何はともあれちゃんとした仕事をしてるんだぞ!形だけでも変わったんだぞ!と言う、子供的高揚感と清々しさが、春一番のように私の胸にも吹き荒れてしまっているのである。そんなことを考えながらも、手は動かしている…くぅ、強敵の秋元文庫が、全然終わらないぞ…。

途中妙齢のファッショナブルな女性とイタリア人のカップルがお店を訪れ「江戸川乱歩ってありますか?」と笑顔で質問される。取りあえず文庫コーナーや単行本コーナーを教えるが、私の手には余りそうなので、先輩店員さんにすかさずバトンタッチする。女性がイタリア訛の英語を通訳するには、「「江戸川乱歩の古い日本語の本が欲しい」と彼が言っている」とのことである。とにかく古いヤツを、イラストが入っているものをというリクエストが続くので、昭和初期の全集や少年探偵もの(中の挿絵を見たら「オゥ、チープ!と叫んだ)を見せて行くのだが、どうも反応が芳しくない。そして合間合間に「アランポウ」という言葉が頻出する。あれ?もしや?と思っていたら先輩もとっくに気づいていたらしく「あの、もしかしたら、江戸川乱歩じゃなくて、エドガー・アラン・ポーをお探しなのでは?」とまずは女性に日本語で聞き、さらにイタリア人に英語で質問。すると探していたのは、やっぱりエドガー・アラン・ポーであったことが判明する。途端に女性が「江戸川乱歩じゃなかったの〜!」と大笑い。彼から『エドガー・アラン・ポー』の名を聞き、ポーを知らぬ彼女はすぐさま『江戸川乱歩』と脳内変換したために起こった。お茶目な微笑ましい事件であった。先輩が江戸川乱歩はポーの名をもじった作家名であることを丁寧に説明し、一同納得してその場が優しい笑顔に包まれる。うむ、なんだか面白いものを目撃したぞ。乱歩先生、あなたの名は今日もこの地上で、たくさん囁かれていますよ!

そしてようやく秋元文庫作業にケリを着けたのは、午後三時前。
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その後は、市場で新たに仕入れた本と棚の在庫を照らし合わせ、不足分を補充して行く作業を繰り返して行く。これは棚質の恒常的な維持に関わる、地味で大事な作業である。そんな風に、バイト二日目は、本に触れまくった一日として、ジリジリと過ぎ行くのであった。
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2016年11月14日

11/14古本屋バイト・イン・J町 その1

関西での新刊キャンペーンを終え、ようやくふぅと一息…と行きたいところだが、根が貧乏性なためか、ここで立ち止まったら、刀折れ矢尽き、がっくり膝を突いてしまう恐れに囚われる。なので、取りあえずはまだまだ前に向かって歩いて行こうと、今週から六日間を新しく奇異でいて真っ当と言えなくもないチャレンジに、人生の一部を費やすことにする。そのチャレンジとは、“古本屋さんで真剣にバイトする”ということ! 日本全国の古本屋さんを、すでにおよそ三千軒近く見て回っているといえども、それはあくまでも客として体験して来た、片面…いや多面性を持つ古本屋さんの一面だけなのである。そこでもう少し、違った角度から大好きな古本屋さんを捉えてみたい、お店側に踏み込んでみたいと考えた結果、一番最初に思い浮かんだのが、古本屋さんの一部に同化してみるということだったのである。今までにも色々なお店にお願いし、店番をしたり買取に同行させていただいたりと、ほんのちょっぴり“古本屋さんのお仕事”に触れて来てはいたのだが、それはかなり優遇された客分としての、特異な一瞬の職業体験に留まっていた。それはそれで、貴重で稀有な機会ではあるのだが、そんな風に甘えていては、恐らく肝心な古本屋さんの本質と真実には、一切触れずにただのうのうと過ごすことになってしまうのであろう。もちろんたどり着きたい本質&真実に対する解答も予測も皆無なのだが、とにかく古本屋さんの中に飛び込み、身を粉にして働いてみれば、何かが掴めるかもしれない、触れられるのかもしれないという闇雲さが、今回の齢五十近くにしてのおかしな行動の出発点なのである…。と言うわけで既知のお店に無理を承知でお願いし、大きな大きなご好意により、本日からJ町に短期通勤することに相成ったわけである。

午前十時半前にお店に飛び込み、ミーティング時に先輩方にガチガチになりながらご挨拶する。すると、たちまち外に飛び出し開店準備に取りかかる彼らの素早さに圧倒されながら、手渡されたエプロンを着用するのに愚かなほど一苦労し、己の無能さと、完全なる月とスッポンレベルの社会人格差に、今更ながら愕然としてしまう…。そんなまごまごあたふたしまくりテンパリ続けているド新人の今日のメインのお仕事は、レジ兼作業場に陣取り、本の状態チェック&クリーニング&ビニールカバー掛け、それにほんのちょっとの接客とレジ打ちと棚への補充である。すべてのことに緊張しながら、懇切丁寧に教えていただいた仕事の仕方やお店についての知識で頭の中をショート寸前にパンパンにしながら、ゆっくり不器用に仕事する。だがそんな中でも、ビニールカバー掛けが次第に上達しいく小さな小さな進歩に、まずは喜びを覚えてしまう…。本に掛けるビニールは、片側がポケット状になっており、中間から少し過ぎた所にベルト状の帯があり、反対側に留めるシールが付いているもの。まずはポケットに本の袖を差し込み、ベルトに反対側の袖を通し、シールで留めるというのが一連の作業となっている。だが、ソフトカバーの本は、ぐいんと表紙をたわめられ、ベルトに袖を通すのも楽勝なのだが、ハードカバーはそうも行かぬ。その名の通り表紙が板の如き硬度を誇っているので、たわめることはまず不可能。本を思いっきり反り返し、ギリギリの危険な力技で無理な角度を作り出し、素早く巧妙にベルトに通さねばならぬのだが、これが不器用者にとっては、千メートル級の山を越える以上に難事なのである。不覚にも何枚かのビニールカバーを駄目にして落ち込んでいると、先輩が魔法のようなカバーの掛け方を教えてくれた、まずはベルトに反対側の袖を通し、こちらの袖は本体からカバーだけを外し、それだけをポケットに差し込む。そしてそのカバーに改めて本体表紙を多少反り返しながら誘うように差し込むと、嘘のようにツルンと美しく収まり掛けられた状態になるのである。なので後半戦はこの魔法の手順を次第に己のものとし、古本をキレイな商品に仕上げることに快感を覚え始める。…ここまで書いて来て、あまりのミニマムさとマニアックさと伝わらなさ(恐らく)に恐縮しながらも、明日はどんな地道な仕事を割り当てていただけるのか、恐がりながらも楽しみに感じられた、一日をどうにか過ごす。
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これはまだビニールをダメにするレベルの掛け方。この後、徐々に徐々に上達して行くのだが、次第にそのテクニックや知識が体に染み付いて来るに従い、暖簾分けしたお店が、本家のやり方(様々な業務上システム)を自然に継承して行くことについて、大いに納得してしまう。長年勤めて様々なテクが身に付いた時には、それが一番やり易いやり方になっているのだから、当然のことなのである。
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11/13「古本屋ツアー・イン・京阪神」発売記念 大阪→京都ミニミニキャンペーン!

新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」は、関西の古本屋さんを集めた本である。だから、無事に発売になったからと言って、東京で「ふぅ、出来た出来た。終わった終わった」と、のうのうとしているわけにはいかない。取材でお世話になりまくった西に、お礼と本の普及を兼ねて再び乗り込まなければ、義理が立たぬし何だか寂しい!と、本の雑誌社さんにお願いし、大阪と京都で小さなキャンペーンを決行する。12日(土)は「梅田蔦屋書店」にて、『著者と話そう 古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也さん×古書コンシェルジュ』というトークを貸し会議室にて。翌13日(日)は「古書 善行堂」(2012/01/16参照)にて五時間店番イベント『古本屋ツアー・イン・善行堂』を連続開催。

まずは12日、こだま号にて東京を離れ、四時間後に大阪着。旅行パックの宿泊先である『ホテルニューオータニ大阪』に」チェックインすると、これが無駄に豪華で、客室一面硝子窓の向こうには、大阪城と大阪城ホールがドドン!
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優雅で壮大な景色に、気分だけは大作家になったつもりになるが、実は編集さんと相部屋なのである…。ちょっと休んでこだま号移動の疲れを癒し、午後五時に大阪駅駅ビルのひとつ『ルクア イーレ』9Fの「蔦屋書店」入りし、まずは店内をツアーする。迷いまくるというか、己の現在位置を見失うこと必至の、楕円形のトラック型通路に沿って作られた、だだっ広くお客が驚くほどあふれる店内。通路は『マガジンストリート』と名付けられており、その外側のひとつである写真集コーナーには、洋書・和書ともに古本が紛れ込んでいる。特に日本作家のコーナーは、1900年から始まる、古い時代から写真の歴史をなぞるように作られた棚が、絞り込んだ輝きを見せている。夏に古書市も開かれた古書コーナーは、非常に分かり難い場所にあり、『4thラウンジ』という名のカフェスペースの壁面に、ひっそりと設置されている。十一本の天井まである棚には、左から文学・カラーブックス・「宝島」・「洋酒天国」・「あまカラ」・アート・デザイン・写真集、そして販売継続中の恥ずかしながらの古ツア棚・「ジグソーハウス」(2016/06/11参照)棚・「古書鎌田」棚・「口笛文庫」(京阪神p164)棚・「メンズクラブ」・「VOGUE」などが続き、右下には木箱が並び、雑誌やビジュアル本、それに「トンカ書店」(京阪神p170)出品の本も少々並んでいる。貸し棚以外は、アート系ビジュアル本が多い。値段はしっかり目だが、かっちりきっちり知識と教養が込められた芯のはっきりした並びは、眺めていて清々しさあり。ローヤルホテル「随筆集 大阪讃歌」を手にして、集中レジまでテクテク歩いて精算する。
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これはその時に書いたメモ。トーク時に配られる予定だったが、手違いにより温存されてしまった。当日トークに参加された方や、以降「京阪神」お買い上げの方々に配布予定である。詳細は古書コンシェルジュにお問い合わせを。

トークは午後七時からスタートし、狭い会議室に二十名弱を集め、一時間強を必死に完走。驚いたのは滑り込みセーフで、神戸の「トンカ書店」さんと大阪・北新地の「本は人生のおやつです!!」さん(京阪神p72。この奇天烈な店名の略称は、大阪では『本おや』さん、東京では『おやつ』さんであることを知る。マクドナルドが『マクド』と『マック』に分かれるようなものか…)が駆け付けてくれたこと!紹介されつつ、お互いにうわうわキャーキャー叫んでしまう。何はともあれ、当日集まって下さったみなさま、ありがとうございました!招いて下さった蔦屋書店コンシェルジュのみなさまにも感謝し、もはやどうやってたどりついたのかも判然としない、梅田の路地裏の中華料理屋にて打ち上げをする。

明けて13日。午前のうちに京都に移動し、ちょっと早めのお昼ゴハンを食べてから、出町柳西の吉田山ふもとの「古書 善行堂」へ。するとまだ正午前なのにお店はしっかり開店しており、第一号のお客さんとともに、ちょっといつもよりシックにお粧しした善行氏が笑顔で迎えてくれた。おっ、店内も通路が片付き椅子が出され、お客さんが腰掛け寛げるようになっている。だが、今日こそは五時間店員の特権を利用し、二階の倉庫を見せてもらおうと意気込んでいたのだが、店内を片付けた故、二階への階段は積み重なった荷物に阻まれてしまっていた…しょんぼりして諦め、帳場向かいの極細通路に作っていただいた席に腰を下ろし、嬉しくなるほどひっきりなしに訪れるお客さんたちと、会話を交わし識語署名捺印し、善行氏を交えディープな古本話を楽しく繰り返す。神保町のオタどんさん・マサキングさん・強力ミステリコレクターさん・青山光二コレクターさん・オーディオ雑誌コレクターさん・昨日に引き続きの「キンモクセイ文庫」さん、それに恐縮の大大先輩・高橋輝次氏に世田谷ピンポンズさん・「ヨゾラ舎」さん(2016/04/22参照)などなど、善行堂オールスターが押し寄せた感じに圧倒される。中でも、京都市内の若手古本屋の立地を調査し、大学の卒論に仕立て上げようと奮闘中の女子大生には、そのテーマの意外性とマイナーさと真面目さとのめり込みっぷりに、大いに感心&感激する。
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※善行堂入口近くの古本屋ツアーシリーズゾーン。特別フリーペーパー『私が京都へ行く理由』は、まだ残部がありますので、ご希望の方はぜひ善行堂へ。

あぁ、こんな風に、今回たくさんの古本好きの方々と接し、関西の本を作り、そして再び関西に来られて良かったと、切に思える二日間であった。これで本当に、去年から続けて来た長い旅が、ようやく終りを告げた気がする。だがまたいつか、『まだまだあるぞ古本屋』に掲載したお店は、詳しくツアーしなければならないと分かっているので、いずれは新たな気持ちで調査に赴くつもりである。とにかくありがとう!京都大阪神戸阪神間奈良滋賀!そして善行堂でちゃんと本を買うつもりだったのだが、店員バイト代の換わりとして、過分な古本をいただいてしまう。白黒書房「トレント最後の事件/E・C・ベントリイ」(本体背にテープ補修あり)新潮文庫「相思樹/牧逸馬」春陽堂探偵小説全集「血染の鍵・叛逆者の門/エドガア・ウオレス著 松本泰譯」「XYZ 他十七編/横溝正史譯」…ありがとうございます!善行さん!
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本当に嬉しい二冊。トレントの松野一夫装釘はモダンでバタ臭くてビリビリ痺れる。そして、横溝譯の「地下鐵サム」が読める日が来るなんて、幸せ以外のなにものでもない!
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2016年11月11日

11/11ツヅキ堂チェーンの終焉を目にした後、古本屋ツアー再び西へ!

コメントタレコミにて、ついに「ツヅキ堂書店」の全店が閉店したことを知る。思えば小田急線沿いに、ちょっと深めな棚のリサイクル系店舗を何店も展開し、東京〜神奈川の古本屋文化の一端を支えてくれていたのだが…唯一仙川のお店だけが「石本書店」(2009/08/20参照)として生き残り、梅ヶ丘(2008/10/08参照)・祖師ケ谷大蔵(2010/07/15参照)・登戸(2010/04/05参照)・鶴川(2009/09/16参照)・小田急相模原(2011/03/09参照)のお店は、無念にも消滅してしまったのである。天気予報通りには降り止まなかった霧雨を浴び、取りあえず登戸店だけでも、現在どうなっているか確認してみようと、小田急線でガタゴト。高架駅を飛び出て、下がって行く高架線路沿いに西に歩いて行くと、あぁ!無惨にも登戸店はすでに何もかもが撤去され、広い壁棚があったとは信じられぬほどの、大きな硝子ウィンドウが、爽やかに露出してしまっていた…。
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すっかり現状復帰されたがらんどうの店内では、中田翔似のお兄ちゃんが、至極真面目に壁を塗り直していた…はぁ、せめてはもう一度、あの『古書キャビネット』(2015/06/03参照)を慎重に漁ってみたかった…。

小田急相模原のお店はまた後日看取ることにして、メガネを細かい水滴で濡らしながら早足で駅に引き返し、古本を買って閉店したお店を勝手に弔うために、経堂駅で下車。「大河堂書店」(2009/03/26参照)に雨宿りし、入ってすぐの右壁棚新入荷コーナーから新潮社「二青年図ー乱歩と岩田準一/岩田準子」(署名入り)を抜き出して900円で購入する。再び小田急線に乗り込んで豪徳寺駅で下車し、「靖文堂書店」(2011/09/06参照)にさりげなく入店。粗相のないよう、だがしつこく棚に食らいつき、広済堂出版「現代任侠道入門/栗原裕 滝川和巳」婦人公論昭和46年11月号特別付録「あなたとどこかへ/永六輔」小峰書店 少年少女のための世界文學選(6)「キイゲスと魔法の指輪/ヘッベル 中谷博・著」(昭和26年刊のカバーナシ文庫サイズ本。巻末の広告を見ると「ガリヴァ旅行記」を書いているのは小沼丹!これ欲しい!読みたい!)を計600円で購入する。時刻は午後四時になろうとしているが、お昼過ぎに止むはずだった雨は、まだシトシト東京に降り続いている。

そして明日から、新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」発売ミニミニキャンペーンのために、再び関西へ!12日(土)は午後七時から大阪「梅田蔦屋書店」にてトークイベント(満員御礼になりました。ありがとうございます!)。13日(日)は京都の「古書善行堂」(2012/01/16参照)にて、正午〜午後五時まで滞店し、一日店員として労働予定!当日、善行氏の仕事を間近で見られる上に、今は夢広がり様々な方にお会い出来るのも本当に楽しみなのだが、結局一番楽しみにしているのは、店員として一番に飛び込んだ善行堂で、どんな本が買えるのかドキドキしている、愚かで哀れな私なのです…。ではみなさま、関西にてお会いいたしましょう!
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2016年11月10日

11/10謎の魚雷芸に頭を悩ませる

遅めの朝食を摂り、午前九時半に外出。腹ごなしにと高円寺までスタスタ歩き、以前から「アバッキオ」(2008/10/14参照)の看板が外されているのを気にしながら(店内には物が残っている気配がある)、「西部古書会館」(2008/07/27参照)に到着し「BOOK&A」開催五分前のオープンガレージに突入する。昨日に続き、来るべき古本市に備えての、個人的古本補給活動の一環である。すでに二十人ほどの古本修羅が、サッシ扉が開けられるのを、今か今かと待ちかねている。その列にはつかずに、長テーブルと平台と壁棚の、それほどカオス感も量感もないスッキリした古本の列に集中して行く。均一と言うわけではなく、大体500円以下の本たちである。扉が開き、修羅の群れが中に流れ込み、手早く本を見終わった私も、一冊だけ掴んでそれに続く。三本の幅広な通路をほどほどの修羅ラッシュに揉まれながらしげしげ眺めて行くと、歴史・郷土・民俗学関連が多い模様。丁寧に棚に目を凝らして行くが、なかなか心に滑り込んで来る古本と出会えないので、焦燥感と失望感を、徐々に胸の内に溜め込んで行く。だが最後に右端通路で「天心堂書店」の棚から、建築史家・長谷川尭が大阪で出していた雑誌群を見つけ、興奮。一緒に並んでいた、十九世紀末〜二十世紀初頭のロンドン街頭の写真を集めた古い洋書にも痺れまくるが、三千円の値が付いていたので今回は断念する。そして最後の帳場脇の棚下に集まる、A5サイズの雑誌&ムック列に惹き付けられて、しゃがみ込んで気になる本を確認して行く。そこに一冊、版型は同じだが、不思議なパンフレットが紛れ込んでいた。1938年のベルリンで発行された、劇場型老舗キャバレーの50周年記念冊子である。表紙に『日劇ステージショウ』のハンコが捺されているので、文芸部などが資料として架蔵していたものであろうか。中を見ると写真が満載で、その上150円の激安値!喜んで家に持ち帰るべき一冊とし、帳場で精算に入る。ベストブック社「血染めの怨霊/中島河太郎編」コスモ・テン・パブリケーション「妖精物語/A・コナン・ドイル」博文館少年少女譚海昭和四年六月號別冊「孝子美談哀話集」日本板硝子株式会社「SPACE MODULATOR48 特集:北の港町から」Winter Garten「FESTSCHRIFT BERLIN1938 NOVEMBER-MAGAZIN Winter Garten 1888-1938」を計1650円で購入する。
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本日の収穫「Winter Gareden」50周年記念パンフ。表紙は美しいカラーで、踊り子・空中ブランコ・道化師・猛獣使い・楽師・曲芸師などが描かれている。本文はアート紙でモノクロ印刷(中ほどに四色の歴代ポスター観音開きグラビアあり)の全114ページ。写真やイラストが豊富で、ドイツ語が読めなくても十分昭和十三年のドイツの一端に触れることが出来る。驚いたのが、祝辞を一番最初に述べているのが、プロパガンダの天才ゲッペルス。他にもナチ親衛隊のヒンケル(SSの稲妻型活字があるのにもビックリ)や、後半にはキャバレーを訪れたヒトラーの写真も掲載されている。そんな風に、悲惨な戦争に向かいつつある時代のきな臭さも、とっぷりと封じ込まれているのだが、やはり曲芸師や踊り子や動物使いたちの写真は、能天気で奇怪で楽しい。特に、砲弾を使う曲芸師たちのコーナーがあるのだが、大きな魚雷を携えている男の一枚が、とても気になってしまう。いったいこの大きな弾薬を使い、どんな芸をステージで披露したのだろうか?
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一旦家に戻り、夕方には「古書ますく堂」(2014/07/20参照)の広島カープ背番号籤割引セールに行こうと思っていたのだが、仕事をこじらせて出かけられず、仕方なく「Winter Garden」のモノクロ写真の世界に耽溺する。頭の中では、この本を市で見た時から、NHK『映像の20世紀』のオープニングテーマが、エンドレスで流れてしまっている…。
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2016年11月09日

11/9古本を一層求め、風太郎貸本漫画をデザインで言祝ぐ。

朝から大量の古本を大阪に向けて送り出す。「梅田蔦屋書店」で十二月に開催予定のフェアに照準を合わせた行動である。他にも今月は20日の「みちくさ市」にも参戦するし、来月は岡崎武志氏との合同古本市もある。少し、手元に古本を集めておかなければ、危うい枯渇状態に陥りそうな予感…ふぅ、いったい私は何をしているのか…。だが、古本不足の焦燥感には抗えず、午後に外出して東村山の「なごやか文庫」(2012/01/10参照)に飛び込む。受付で計算機を叩く音だけが響く店内をじっくり観察し、福音館書店かがくのとも85号「おおきいちょうちん ちいさいちょうちん」かがくのとも30号「ごむのじっけん」共に加古里子、学研「三人のおまわりさん/ウィリアム・ペン=デュボア作」現代企画室「白球は見た!/近藤唯之」講談社現代文庫「ファンタジーの世界/佐藤さとる」徳間文庫「人間臨終絵巻T/山田風太郎」旺文社文庫「にっぽん快人物烈伝/紀田順一郎」ちくま文庫「生きるかなしみ/山田太一編」を計420円で購入する。

少し満足して一旦家に戻って荷を下ろし、寒風が一向に治まらない夕方に再び外出。まぶしい夕陽に向かって歩いて荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)にたどり着き、予想以上の低温に震えながら店頭棚を捜索。角川文庫「乱菊物語/谷崎潤一郎」(通常帯の上に映画化帯が巻き付けてある)芸術生活社「幼児に聞かす日本怪談集/西本鶏介」(基本コンセプトが惨い気が…)潮出版社「男と土曜日と水平線 開高健全対話集成2」晶文社「ある手品師の話 小熊秀雄童話集」青土社「失楽園測量地図 種村季弘のラビリントス」淡交社「伊藤大輔シナリオ集W 別巻戯曲集」を計840円で購入する。そんなお決まりのルートをたどりつつ、西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)の「フォニャルフ」棚に別口で用意して来た古本を補充する。するとそこに、A5判の新刊が搬入され始めた。アップルBOXクリエートが出す、山田風太郎原作の貸本漫画「甲賀忍法帖」の復刻本である。実は今回盛林堂ミステリアス文庫チームが制作をお手伝いしており、その流れから表紙のデザインを担当させていただいたのである。この俺が、山田風太郎のデザインが出来るなんて!と、一も二もなく承諾した次第。イメージはもちろん、甲賀対伊賀!…いや、思いっきりといえば思いきりですが、良い感じに仕上がりました。それにしても、「バジリスク」の遥か先駆者として、全三巻(復刻本では一冊に合本)のこんな貸本漫画が存在していたとは…。本を手にしてニヤニヤしてしまい、あまりの嬉しさに「フォニャルフ」棚にあった原作本と、ナイアガラ棚「我刊我書房」に挿さっていた貸本漫画「甲賀忍法帖1」(カバーはカラーコピー)とともに、奇蹟のスリーショット。
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よし、今夜は一気読みするぞ!と意気込み盛林堂を後にして、そのままフラフラと夜の「音羽館」(2009/06/04参照)へ。店頭で裸本で後見返しが切り取られている「珍客名簿/上林暁」を500円で購入し、寒風に首を竦めてトボトボ家へ引き返す。
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2016年11月08日

11/8今日もフライング気味に閉店予定のお店に向かう。

ex「猫額洞」さん(2014/05/10参照)よりいただいた、悲しいコメントタレコミ…十二月をもって、孤高の「プリシラ古書店」(2012/02/14参照)が閉店してまうというのである。「伊呂波文庫」(2016/09/30参照)が店を潜めた今、この辺りの孤塁の古本屋さんとして、今後の孤軍奮闘を期待していたのだが、まさかほぼ同時期にお店を閉めてしまうなんて…来年には、丸ノ内線の中野坂上〜新中野近辺は、ついに古本屋さんが皆無となってしまうわけか…。というわけで閉店にはまだ早いのだが、気が急いてしまい、ついつい偵察に向かってしまう。東高円寺〜新中野のほぼ中間に位置する、『女子美術大学』近くの坂の上のお店にたどり着く。一応生活道路沿いではあるのだが、ほとんど住宅街と言っても過言ではない立地である。しかし、今日も立派に営業をしている。そしてやはり早過ぎたためか、閉店のアナウンスは店外にも店内にも見受けられない。どうせまた十二月に見に来るのだが、もしかしたら色々事情が変わり、このまま来年も何事もなく営業し続けてるかもしれない…そんな不確実な妄想に囚われながら、主に右側の文学棚に集中する。朝日新聞社「紀信快談 篠山紀信対談集」を500円で購入する。
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裏道を伝って東高円寺方面に向かっていると、先日訪れたばかりの「「女と本のあるふうけい」1day bookstore」(2016/10/30参照。実はその後も小さな古本市は継続中らしい)の開かれていた『喫茶店[ε]』前を通過し『青梅街道』が近付いてくると、右手にビル建築の『新中野キリスト教会』が現れ、その入口前で手作り雑貨類とともに、絵本や児童文学のチャリティー販売が行われていた。
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三箱ほどに、絵本・「こどものとも」・新書サイズ児童文学が並んでいる。だがそのほとんどが九十年代以降の新しいものだったので、食指動かず、何も買わずにおとなしく離脱する。

思わぬところで古本と出会ったせいか、ちょっと古本が買いたくなってきた。そのまま新高円寺まで歩き、さらに商店街を遡上して「アニマル洋子」(2014/03/14参照)に到達。店長さんと挨拶を交わしつつ新潮社「随筆集 苺酒/尾崎一雄」を100円で購入する。さらに遡上して「大石書店」(2010/03/08参照)の屋根付き店頭ワゴンから、映画秘宝コレクションの初期の名作のひとつである、洋泉社「幻の怪談映画を追って/山田誠一」を300円で購入する。よし、それなりに満足だ。家に帰って原稿の続きを書くことにしよう。
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2016年11月06日

11/6未知の作家に手を出してしまう

午後よりトマソン社「BOOK5」最終号の取材にて、本郷の白山坂上〜坂下をウロウロ。東京の急峻な高低差をフットワーク軽く味わいつつ、坂下の古本屋さんに立ち寄る。『京華通り』南側入口近くにある「誠文堂書店」(2011/08/19参照)は、新刊+古本のお店なのだが、どうも古本の割合が、以前よりも増している気がする。少しずつ通路が野放図になりかけてきているのも、古本屋さんに傾倒している兆候ではないだろうか。裸本の光文社「赤い殺意/藤原審爾」を320円で購入しようと入口側レジに近付くと、奥さまは電話の真っ最中。「それはね、amazonに出してる本なんですよ。だから、amazonで買えますよ。えっ?amazonの使い方が分からない?だから直接振り込みたい?分かりました。では本があるかどうかまず確認してから…」とネット非対応のお客さんとのやりとりに苦心している。長〜いやり取りを終えて電話を切ると、こちらに笑顔を見せ「ごめんなさいね」と精算していただく。お店を出たら通りを北に向かい、もうひとつの「誠文堂書店」(2012/08/13参照)へ、こちらは四年ほど前にお店を建て直した、純然たる古本屋さん。だが白く新しい通路は、月日が流れるとともに本の山並みが所々に隆起しており、新店舗を昔日の壮絶な旧店舗の姿に(2010/07/23参照)、ジワジワと近付けてしまっていた。う〜む、これは、もはや逃れられぬ、このお店の宿命なのか。そんな風に感じ入り、それでも極細通路はちゃんと行き来出来るよう整備されているので、すべての棚にがんばって目を通す。面白い本や珍しい本も多いが、値段がスキ無しなのでなかなか手が出ない…結局250円の角川文庫「青蛙堂鬼談/岡本綺堂」を購入し、辛くも古本迷路から脱出する。

地下鉄を乗り継いで中野まで戻って来ると、気まぐれに途中下車してしまい、「まんだらけ海馬」(2015/02/06参照)に足を向けてしまう。そして探偵小説棚で見つけた、南旺社「ダイヤル110番シリーズU 血ぬられた欲情/萩原秀夫」…これ、古本神・森英俊氏の書庫をツアーした時に、貸本小説コーナーに固まってた未知の作家だ…いや、あれから、気になってたんだ。この本はどうやら犯罪実録ものらしく、そのせいか値段は二千円と安めなのである。よし、ここは思い切って買ってみよう。一緒に昭和三十八年刊の講談社「孤独のアスファルト/藤村正太」が500円の激安値だったので、迷わず購入する。中野から家までトコトコ帰って、「ダイヤル110番シリーズ」のビニール袋を開けると、巻頭には『犯罪地帯』というモノクログラビアページがあり、昭和三十年代の、主に酒場と盛り場の写真が並び、『酒を、食べものを、そして刺戟を求めて人々は街へ!バチルスのうごめいている街へ!』と扇情的な文章が踊っている。ビクビクしながらそんな暗闇の割合が多い危険な盛り場を、ほろ酔いで彷徨する愚かな己を想像してしまう。
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2016年11月05日

11/5京浜地帯を北上して古本を漁り寺島メモに魅入られてしまう。

早めに始動して電車を乗り継ぎ、反町の『神奈川古書会館』で「11月の古本まつり」に飛び込む。まだ午前十一時なのに、なかなか盛況である。ほほぅ、今回も大きな200均台が二つ出ているのか。じっくりと上半身を台の上に突き出すようにしながら、他のお客さんとの平和な間合いを計りつつ、一巡。すると奥は棚&台が珍しく横向きに連なり、奥の壁際まで三本の通路を造り出しているスタイル。ここからは通常値ゾーンで、「公文堂書店」(2010/03/28参照)の棚が古くて雑誌多めで秀逸。だが私は左奥隅の「古書 水曜堂」(無店舗)の、ダンボール箱に適当に詰められた古本に興奮。良い新書を二冊掴み取り、釣果あり!と心の中で宣言する。コバルト社ラッキー文庫「アメリカ新聞讀本/細入藤太郎」(戦後すぐ発行の中綴じ文庫本!)あまとりあ社「昭和猟奇秘録 愛慾怪盗伝/三谷祥介」原書房「都市ゲリラ/市川宗明」ハヤカワ・ライブラリ「メンズ・マガジン入門/小鷹信光」朝日新聞社「文句の言いどおし/吉田健一」改造社日本探偵小説全集5「谷崎潤一郎集」を計1250円で購入する。居合わせた顔見知りの古本屋さんたちと言葉を交わし、まつり会場を後にする。このまつりは明日も開催される。

目の前の『反町公園』を突っ切って線路沿いに北東に向かい、東神奈川駅から京浜東北線に乗車。すぐさま鶴見駅で降車し、「西田書店」(2010/01/07参照)の店頭棚にかぶりつく。今日は大した収穫なく、文春文庫「昭和のエンタテインメント50編 上」講談社手塚治虫全集別巻「手塚治虫対談集2」を計270円で購入するに留まる。駅に戻り、鶴見線に乗りたくなる誘惑を振り切り、再びの京浜東北線で川崎駅下車。今日の「近代書房」(2008/09/07参照)は店頭棚がプチ豊作で、大和書房「傷だらけの天使/市川森一」毎日新聞社「ひげとちょんまげ/稲垣浩」(市川崑装幀がビューティフル!)住まいの図書館出版局「室内の都市/海野弘」早川書房「ローズマリーの赤ちゃん/アイラ・レヴィン」を計400円で購入する。その先の「朋翔堂」(2008/09/07参照)では、左側通路の100均棚から東京創元社「夜明け前の時/シーリア・フレムリン」双葉文庫「推理文壇戦後史1/山村正夫」を計200円で購入…あぁ、ただ欲望に任せ、小春日和の中、行きたかったお店を巡り古本を買いまくるのは、なんという幸福であろうか。重い本を担いでいても、顔には自然と笑顔が浮かび、足取りもまだまだ軽いまま。そのまま都内に戻り、最後の〆にと武蔵小山「九曜書房」(2009/03/26参照)へ向かう。店内500均棚からは、稀少な昭和三十年代のゲイボーイ作家小説を発見。こういうのは、見かけた時に買っておかないとと迷わず確保しつつ、左側の通路へ。垂涎の古書が並ぶ棚を、丁寧さを心がけつつ遠慮なく蹂躙していると、セロファン袋に入れられた中綴じの雑誌を発見。「労務者通信」…詩人・寺島珠雄が編集に関わっていたミニコミ誌じゃないか。袋から恐る恐る取り出してページを開くと、二つ折りの厚めの紙に鉛筆でしたためられたメモ書きが挟まっていた…ゲゲゲゲゲゲゲッツ!これ、寺島珠雄直筆のメモじゃないか!途端に前頭葉が麻酔されて理性が吹っ飛び、値段を見ると四千円なのだが、もう買うことに決めてロボットのようにギクシャクと帳場へ向かう。東京ライフ社「もうひとつの夜/小野善弘」(帯・スリップ付き)労務者渡世編集委員会「労務者渡世 第26号 特集:昔の釜ヶ崎」を計4500円で購入する。お店の外で、早速そのメモを穴が空くほど見つめてしまう。「いまや定着してしまって、やめるにやめられないところにきています。700ぐらい印刷。毎号ほぼ完売。委託店で一番よく捌く店は200部を売ります。(7掛)」などと、雑誌制作の内情がつぶさに書かれていて、興味深い。最後の◯に“寺”の文字が、とにかく嬉しい。作家の書いたオリジナルって、何でこんなにパワーに満ちているんだろう。雑誌本体にも「これは私の書いたもの」などのメモ書きもあり。
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よし!家に帰ったら読み進めつつ、月の輪書林古書目録十二「特集・寺島珠雄」を引っ張り出して、さらに深く詩とアナキズムと釜ヶ崎世界にのめり込むとしよう。ちなみに私は、詩人というよりは、労務者(この言葉は現在差別用語としても認識されているが、寺島自身がメッセージを込め、誇りを持って使っていた言葉なので、その意志を大いに尊重し、ここでもそう表記させていただきます!)として寺島の書く文章が大好きなのである。おっ!巻末の販売店に、山谷にあった古本屋「長瀬書店」が載っている!日本古書通信社「21世紀版全国古本屋地図」からその説明をひくと「山谷のドヤ街の真ん中にあって、チリ紙洗剤からカップラーメンまで扱う」とある。その昔、もしやと思ってと山谷までビクビク行ってみたが、残念ながらお店は残っていなかった思い出が…。
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2016年11月04日

11/4「何」は探偵小説であった。

ポカポカ陽気なのに、またもや仕事で家に閉じ込められている。今夜中にカタはつきそうなのだが、予断を許さぬ状況が続いているので、おとなしく縮こまっている。空き時間の手慰みに、フリーペーパーの作成を進めたりしていると、すべてにハンコを捺し終わったところで、タイトルが間違っていたことに気づいてしまう。ええぃ、しょうがない。もう、このままでいいや。11/13(日)に「古書善行堂」で配布するフリペのタイトルは「私が京都へ行く理由」となりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

これだけで今日が終わってしまうのは何だか切ないので、先日読了した古書の話をひとつ。2016/10/30に300円で購入した、明治三十四年刊の青木嵩山堂「小説 何/武田仰天子」。冒頭に烏有先生という方の序文があり、『探偵談でも妖怪小説でもない』と書かれているのだが、嬉しいことに結局思いっきり探偵小説であった。時は明治。名僧がいる名刹に隣接する空き屋に、お茶とお華の女宗匠が引っ越してくる。すると引越し当日の夜、魚屋の小僧が玄関で死体を見つけ、驚き逃げ帰った後に警察を連れて戻ると死体は消失し、その痕跡すら残っていない。さらにその後、密室状況の二階で教え子がこつ然と消失。また、男出入りはゼロのはずなのに(様々な人の証言により証明される)、寄宿していた教え子がいつの間にか妊娠。さらに事件の謎を解こうと、女宗匠が夜逃げした後に入居した教え子の親は、奇怪な家全体のポルターガイスト的蠢動に毎夜脅かされ、あっけなく敗走。そこに剛胆な一人の大工が登場し、怪異の原因を突き止めたら懸賞金百円というのに釣られ、その家を借りることとなる。彼の技術と経験と観察力、魚屋の小僧から汚穢屋に職を替えた冒頭の男の情報網が、すべての怪異の核心に迫って行く…。いっそのこと、最後の謎解きまですべて書いてしまいたいのだが、まぁ埋もれたマイナー明治探偵小説とは言え、いつか誰かが読むこともあるだろう。しかしここまで書くと、大体ネタバレしている感はあるが…。武田仰天子は調べてみると、明治から大正にかけて活躍した関西出身の小説家で、東京朝日新聞社社員として新聞にも連載小説を執筆。歴史小説、大衆小説を主にものしたそうである。
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これは表紙と裏表紙をつなげたもの。お歯黒の化け物が廃屋に現れ、周りを人魂が飛んでいる。内容には一切関係ないのがお茶目なところ。だがこの表紙じゃなければ、気になり手を伸ばしてはいなかっただろう。また巻末の広告には、大好物の探偵小説らしき本が、たくさん列記されている。「奇美人」「怪物屋敷」「汽車之大賊」「水の魔術」「神出鬼没」「女装の探偵」。他にもSFらしき「空中飛行器」に、江見水蔭の「地中の秘密」「秘密の使者」「秘密世界」などなど…いつか全部読んでみたいものである。
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2016年11月03日

11/3東京・本駒込 しのばずくんの本の縁日2016

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雨は何処かに去り、午前中から気持ちの良い秋晴れの空が広がっている。『本郷通り』から『向丘2丁目交差点』で東へ歩みを進め、団子坂方面へテクリテクリ。道幅は広く、チラホラと商店もあるが、ここいらは丘の上の寺町で、門柱の上に対の象がいる参道があったり、『墓地にいます。お急ぎの方は墓地にお越しください』と宮澤賢治的(下ノ畑ニ居リマス…)貼紙があったりと、多数のお寺が左右に連続して行く。『駒込学園前交差点』脇にある『光源寺』が会場だと思っていたのだが、広く爽やかな芝生の境内には、子供用イベントの準備が進んでいるだけで、本や古本の気配は皆無。裏の墓場まで行ってみたが、もちろんそんな所で本は売られていなかった…。少し焦りながら道に戻り、塀に貼られた本の縁日のポスターを良く見てみると、交差点から敷地沿いに北へ進むと、会場にたどり着けるらしい。会場のお寺の名は『養源寺』であった…。学園と塀に挟まれた道を奥へ進むと、やがて右手に大木を冠した境内が現れ、しのばずくんのボードを持ったスタッフが、にこやかに出迎えてくれた。中に進むと、本堂前の境内には出版社ブースが多数並び、落ち着いているが華やかな雰囲気。お客さんもたくさんである…あっ!正面に『本の雑誌社』のブースがあり、経理さんと編集さんが、こちらに向かい手を振っている!…取りあえずペコペコと頭を下げ、こうなったら仕方ない。後でまたもや売り子として参加することを約束し、目的の古本売場をキョロキョロと探す。石畳を伝って本堂左側に向かうと、まずは長テーブルの集中レジがあり、広場に十二の大きな平台を並べた、古本市会場が広がっていた…奥は墓場か。なかかなかイカすロケーションではないか。参加店の「たけうま書房」(2016/10/18参照)「古書ほうろう」(2009/05/10参照)「古書信天翁」(2010/06/27参照)「喜多の園」(2011/07/21参照)さん等と挨拶を交わし、気合いを入れて古本に齧りついて行く。映画・音楽・アート・海外文学・洋書ビジュアル本・洋書絵本・カウンター&サブカルチャーなどが目につくが、一際強力なのは詩集をたくさん並べていた「ソオダ水」と「書肆田高」で、特に「田高」はボロくて函ナシだが、堀口大學「月下の一群」が千円で売られているのに度肝を抜かれる。私は一冊城左門を抜き出し、ニヤリ。そして最後の「bangobooks」(2011/07/28参照)が古書を安値で多く並べているのに魂を奪われ、裸本だが怪談や探偵小説が収録された未知の本を一冊。集中レジで精算すると、顔見知りの古本屋さんたちが顔を寄せ集め、「何を買ったんですか?ちょっと見させてください。勉強させて下さい」と買った本を興味津々検分され、とても気恥ずかしい事態に…勉強になんて、なるわけないじゃないですか!真善美社「映画論入門/今村太平」湯川弘文館「秋風秘抄/城左門」大東書院「由来噺聞書/吉岡文次郎」(函ナシ。田中貢太郎の後輩が、鴻巣歌吉のペンネームで、春陽堂新小説・博文館文藝倶楽部・講談社に書いた、傳説情話・怪談・探偵奇譚・實説・怪異隠形などを集めた下衆で素敵な作品集である。大正十五年刊)を計2000円で購入する。

この後は本堂で行われる南陀楼綾繁氏と桑原茂一氏のトークを観覧する予定だったのだが、本の雑誌社ブースに飛び入りし、己の本を売ることに血道を上げてしまう。しかし『神保町ブックフェスティバル』とは真逆な幸せで落ち着いた雰囲気に、あのかけ声作戦はほとんど使えず。それでも小さく最小限の声を出し、一時間半ほどで五冊を売り、心安らかになる、南陀楼さん、スマナンダ……。かように売り子として楽しく過ごしてしまったので、会場隅の食べ物ブースで、ハヤシライスをビールで流し込んでから、昼間っからほろ酔いで帰路に着く。初めての開催のはずだが、非常に成熟して落ち着いた、楽しいイベントであった。
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2016年11月02日

11/2オリジナル「おもひで」!

仕事がたて込み、日中はひたすら自宅で待機。その余暇を生かし、今月13日に「古書 善行堂」(2012/01/16参照)で行う店番イベントに備え、フリーペーパー作成に着手する。名付けて「私が京都に行く理由」…なんだか三流演歌のようなタイトルだが、もう二十回ほど訪れた京都に、何故そんなに手を替え品を替え惹き付けられたかを自己分析する、正味原稿用紙三枚相当の駄文を配布予定。興味ある方は、当日ぜひ善行堂へ!本当は終日いられれば良かったのだが、帰りの新幹線の都合により、滞店時間は正午から午後五時くらいまでになる予定。さらに前日に催される大阪のトークイベントも、すでに定員オーバーしているが、まだ多少なら滑り込めるとのことなので、御興味ある方はぜひお申し込みを!

■『著者と話そう 古本屋・ツアー・イン・ジャパン 小山 力也さん×古書コンシェルジュ』
2016年11月12日(土)
定員 10名
時間 19:00〜20:00
講師/ゲスト 小山 力也さん
場所 梅田 蔦屋書店 コンシェルジュカウンター 主催 梅田 蔦屋書店 コンシェルジュ
参加費 無料
問い合わせ先 umeda_event@ccc.co.jp
申し込みは下記のHPからどうぞ
http://real.tsite.jp/umeda/event/2016/10/post-209.html
神保町の古本屋を全店制覇した『古本屋ツアー・イン・神保町』、首都圏各所に散らばる古本屋を沿線ごとにたどった『古本屋ツアー・イン・首都圏沿線』と、厖大な数の古本屋をめぐり続けている「古本屋ツアー・イン・ジャパン」こと小山力也氏による、京阪神古本屋ガイド発刊を期に、古書店めぐりの秘話や、古書の魅力を縦横無尽に語り尽していただきます。聞き手は、古書コンシェルジュが務めます。ご期待ください。
■『古本屋ツアー・イン・善行堂』
京都の吉田山ふもとの「古書善行堂」で、古本ソムリエの山本善行氏に一日弟子入りし、店員として必死に労働しておりますので、秋の古都の日曜日に、フラリと遊びに来ていただければ幸いです!古本の話、古本屋の話、署名捺印、なんでもござれ!ご来店の方には、フリーペーパー「私が京都に行く理由」をもれなくプレゼントいたします!
2016年11月13日(日)午後十二時〜午後五時(予定)
古書 善行堂 京都府京都市左京区浄土寺西田町82−2
http://zenkohdo.shop-pro.jp/
http://d.hatena.ne.jp/zenkoh/ 

そして夕方から外出し、荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)に立ち寄り、店頭店内で古本を購入。一番の収穫は函ナシで十五刷だが、大正十年刊の東京東雲堂「抒情小曲集 おもひで/北原白秋」が五百二十五円!他に小學館「大川端/小山内薫」中公文庫「わが荷風/野口富士男」講談社「ヤゴの分際/藤枝静男」(函ナシ)を計840円で購入する。オリジナル「おもひで」を手に入れた記念に、昔作った短歌を一首。『手品めく ダイヤのクィーン引き当てる 指先に軽いおもひでの色』…お粗末さまです。その後は西荻窪「盛林堂書房」(2012/01/06参照)に向かい、フェア棚に補充。さらに北原尚彦氏に渡さなければならないホームズグッズを託した後、函ナシの甲鳥書林「巴里心景/九鬼周造」を100円で購入しつつ、先日ヤフオクで手に入れた偕成社「あらしの白鳩/西條八十」にパラフィンを巻いてもらう。するとこの本が、かなり稀少な連載終了直後の、昭和二十九年の初版本であることが判明。さらにさらに、マイナーな古本的新発見に感動を覚えつつ、古本神・岡崎武志氏と合流し、ささやかな「古本屋ツアー・イン・京阪神」の慰労会を開いてもらう。今しみじみと思うが、本当に本が出せて良かった…。
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嬉しい「おもひで」と、改めて「あらしの白鳩」。
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2016年11月01日

11/1十一月と十二月に閉まるお店をフライング気味に観察に行く

冷たく暗い雨が上がって、嘘のように陽が射し始めたので、下北沢へ向かう。この十一月と十二月に、お店を閉めてしまうという情報のある古本屋さんの様子を、探るためである。深い地下駅から地上の雑踏に出て、北側の『下北沢一番街』へ。元踏切近くの「白樺書院」(2008/06/01参照)は何事もないように、あくまで日常的に営業中である。閉店が年内ということだからか(つまりは十二月いっぱいだろうか?)、まだそのアナウンスなどは何処にもなく、当然セールなども行われていない。従っていつものように店頭を見て、店内の棚をただ見て行く…それにしても、ある意味このお店の主でもある小鳥の姿が、今日は見られないのが心配だ。帳場裏の鳥籠や、啄まれてノドだけになった文庫本の残骸はあるが、さえずりも羽ばたきも、聞こえて来ないのである…何か、寂しい…。奥の通路に入ると、棚にブランクが生まれているのも、また寂しい。だが、棚下台にサバト館の久生十蘭を安く見出し、様子を探りに来て良かったと切に思ってしまう。中公文庫「怪/網淵謙錠」三笠書房「孤獨の人/藤島泰輔」サバト館「美国横断鉄路/久生十蘭」を店主に差し出すと「え〜と、830円ですが800円にしておきましょう」と嬉しい値引。感謝です。それにしても、ここが閉まるとしたら、「幻游社」(2008/10/03参照)に続いて、昔ながらの古いお店が、ついに下北沢から消えることになる…また十二月頭にでも、様子を見に来ることにしよう。
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そのまま商店街の坂をテクテク上がり、十一月いっぱいでお店を閉めて、営業形態を事務所店に変化させる「July Books」(2011/11/28参照)へ。あっ、真っ暗…ドア横に下げられた週間営業スケジュールを見ると、月・火はお休みであった。うむ、しくじったか。近々要再訪。
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もうちょっと古本を買いたかったので、坂を下って来た道を戻り、二階の「CLARIS BOOKS」(2013/12/01参照)への階段を上がる。ディスプレイは整頓され美しく、アート・海外文学・SF・ミステリのマニアック度を清らかに上昇させている店内。中公文庫「どんたく/竹久夢二」PHP文庫「イギリス怪奇探訪/出口保夫」日本推理作家協会「推理小説研究20号 日本推理作家協会四十年史/中島河太郎編」を計1700円で購入する。協会史が嬉しい。ちょっと読んでいてギョッとしたのが、昭和62年の『第四十二回土曜サロン』のゲストが村西とおるで『裏ビデオの演出』という講義をしている。何故…異質だ…。
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2016年10月30日

10/30東京・東高円寺 「女と本のあるふうけい」1day bookstore

今日も『神保町ブックフェスティバル』で新刊を販売するために、午前十一時半に防寒を完璧にして家を出る。ブースに入る前に、昨日の雪辱を果たすため「古本まつり」の東側を見ておこうと、御茶ノ水から神保町に進入して行く。まず足を留められたのは、「田村書店」(2010/12/21参照)まつりワゴンの平台左側である。積み重なった本の下に、古い本が固まっているのだ。瞬時にハヤカワポケミス「殺人鬼/浜尾四郎」羽田書店こども絵文庫「まどからのぞくお月さん/野尻抱影」同光社「花嫁殺人魔/横溝正史」(函付きだが貸本仕様)を抜き取り、横にいるオヤッさんに差し出すと、値段部分を奥に手前に動かし注視しながら「これなんて書いてあるんだ?最近、店主がさすがに手が震えちゃってねぇ。いいや。これ600円にも500円にも見えるんで、500円で。だから、全部で千円でいいよ」と大胆発言。ありがたくその値段で購入する。サンキュー。田村書店!これだけでもすでに満足気味だったのだが、次に足を釘付けにされたのは「みはる書房」(2014/04/17参照)のワゴンで、最初に百円の旺文社文庫「鉄仮面/黒岩涙香」を引っ掴んだと思ったら、次々怪しい本たちが視界の中に飛び込んでくる、素晴らしき棚&台造りが目の前に広がっていたのだ。一冊も見逃すまいと、横に押し込まれた本までも、一冊一冊丁寧に検分していく。ワイズ出版「定本円谷英二随筆評論集成 資料編」出版社不明「南京町/鹿目省三」(大正十三年刊。序文は鈴木善太郎。朝日新聞に大正五年に連載された、横濱・南京町(今の中華街)を舞台にした陋巷探索随筆集である。こんな見た事も聞いたこともない素晴らしい本が買えるのが、古本まつりや古本屋の醍醐味!)青木嵩山堂「小説 何/仰天子」(明治の浅草を舞台にした、作者曰く、恋愛小説でも戦小説でもなく、はたまた探偵小説でも妖怪小説でもない新しい小説。ちょっと読み始めて見ると、死んでいたはずの女が甦ってくる、なんだかただならぬ展開。表紙絵も明らかに化け物のお歯黒女が笑う、不気味なもの。これが、300円!)を計800円で購入する。こんな風に、たった二十分ですっかりまつりを堪能し切ったと思ったら、その先のワゴンに、長年探し求めていた小峰書店日本童話小説文庫2「北斗物語/宮澤賢治」を発見して狂喜。しかも二冊あって、一冊は美本で元セロファン付き!迷わずそちらを千円で購入し、本日の憑物落としは終了。
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即座にブースに向かい、「神保町」「首都圏沿線」「京阪神」と並んだ我が三兄弟を、声を出して力の限り売りまくる。ちなみに私の呼び込みは「いらっしゃいませ、本の雑誌社です」「新刊サイン本多数取り揃えております」「どうぞお手に取ってご覧下さい」が基本パターンで、これに時折「SFの本、古本屋の本、餃子の本、旅の本、読書の本、本の本など色々取り扱っております」を混ぜて絶叫を繰り返した。途中「あれ、あなたは有名な古本屋ツアーさんじゃないですか」と、完全に冷やかしモードの岡崎武志氏が陣中見舞いに訪れたり、夏葉社・島田氏が嬉しいことに本を買ってくれたりする。本日も拙著をお買い上げのみなさま、誠にありがとうございました。二日間、とてもとても楽しいフェスであった。

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およそ三時間で神保町を離脱し、地下鉄を乗り継いで、すっかり夕闇の東高円寺駅下車。『蚕糸の森公園』から流れ出す冷気を、オーバーを着込んだ身体で受け止めながら、『青梅街道』を東に歩いて行く。三百メートルほど弱で現れる二つ目の『セブンイレブン』脇の小道を南に入り、女子学生の人波に逆らいながら歩を進める。すると右手に『喫茶店[ε]』が現れ、白く暖かな店内では、本好きの女子八人がそれぞれ二十〜三十冊ほどの本を持ち寄った、一日限りの古本店がオープンしていた。窓際に、壁棚に、机上に、主に文庫を中心にして少数精鋭の古本が面陳されたり並べられたりしている。お客も本も女子度が高く、オッサンには気恥ずかしい空間となっているが、読み終えた好きな本を並べたような、読書好き原理主義的ピュアさと緩さが、ホワンと心を和ませてくれる。アピエ社「APIED VOL.11 THEME:尾崎翠」評論新社「江戸時代の女たち/柴桂子」を購入。店内にいた出店者の「ひな菊の古本」さんと言葉を交わし、新作の新聞フリーペーパーをいただきつつ、緩やかな冬のイベント(やっぱり古本屋で酒!)開催をお願いしておく。お店を出て、さらに暗くなった路上へ。女子学生の人波に乗り、駅へと戻る。
posted by tokusan at 20:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月29日

10/29すずらん通りで売り子として三時間を過ごす。

『神保町ブックフェスティバル』の本の雑誌社ブースで、命を賭けて新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」を売るために、午前十一時過ぎに気合いを入れて家を出る。水道橋から南に下り、お店や「古本まつり」を流しながらブース入りするつもりなのである。いつものようにまずは「丸沼書店」(2009/12/17参照)店頭棚に鋭い視線を走らせる。すると、薄い箱にカード状の論考や写真が入った、愛知芸術文化センター「土方巽を幻視する」が200円で売られているのを発見し、慌てて購入する。パフォーマンスとトークを組み合わせたイベントのパンフレットだが、執筆陣が、石井輝男・宇野亜喜良・大野一雄・種村季弘・赤瀬川原平・加納光於・中西夏之などとにかく豪華。特に石井輝男は映画『恐怖畸形人間』のエピソードを綴っていたので大喜びする。その後は何も買えずに『靖国通り』まで到達すると、まつりは物凄い人波に覆われており、何処のワゴン前にも人垣が密に築かれ、とても本を見られる状態ではなかった。それでもどうにか人の間に身体を差し入れ首を突っ込み、『神保町交差点』西寄りのビルの谷間の会場では集英社りぼん昭和48年6月号ふろく「ゆうれい談/山岸涼子」(もりたじゅん・萩尾望都・大島弓子などの漫画家やアシスタントの不思議体験や怪談話のエッセイ漫画)を500円で購入し、「@ワンダー」(2014/05/22参照)では集英社「宇宙船ビーグル号/ボークト作 保永貞夫」を162円で購入する。おぉ、これで児童文学の『ビーグル号』コレクションが、三冊に増えたぞ!
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※家に帰ってから撮った、勢揃いのミニコレクション。
結局あまりの人の多さにろくろく本も見られずに、『すずらん通り』に西側から進入。夏葉社ブースで新刊ホヤホヤの「神保町/得地直美」(署名入り)を購入しながら、ひとり出版社なのでブースにただひとり立つ島田潤一郎氏と言葉を交わす。そして「キントト文庫」(2009/11/28参照)前のブースに到着すると、「JUST IN SF」の著者・牧眞司氏がサイン中だったので恐縮しながらご挨拶し、隣りに腰を下ろす。後はただただひとりの売り子となり、呼び込みの声を出し、本が売れればサインをしたりお名前を書き入れたりして、暖かいが曇り空の下で三時間を過ごす。お買い上げのみなさま、声をかけて下さったみなさま、ありがとうございました!途中、大森望氏が現れ、差し入れの春巻きや唐揚げを美味しくいただいたり、新保博久氏には本をご購入いただき、北原尚彦氏には手に入れたホームズグッズがなんなのか探りを入れられたりするなど、いつもとはちょっと違う賑やかな楽しい時間を過ごす。う〜ん、これぞまさにフェス!明日も大体午後一時〜午後四時くらいまで在店していますので、お時間ある方は古本を買いがてら遊びに来て下さい!

暗くなり、ちょっと雨がポツポツ落ち始めたところでブースを辞去。落ち着いて夕闇の中の古本まつりを流そうと思ったのだが、強くなる雨足に各ワゴンはシートで防御開始。
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見えなくなった古本群にすっかり気を削がれ、そのまま帰路に着いてしまう。だが「日本書房」(2011/08/24参照)で、木製ワゴンの下段に横に突っ込まれた至誠堂書店「世界を家として/大庭景秋」を見つけ、喜んで500円で購入する。やはりここは、コンスタントに古い面白い本が買える良いお店だ…。帰りの電車の中で紐解いたのは、夏葉社のイラスト集「神保町」。独特でジリジリと引かれた黒い線が、神保町の見覚えのある街頭を、白い紙面にゆるゆると浮かび上げている(もちろん古本屋盛りだくさん!)。まるで幽体離脱して、宙空にフワフワ浮かびながら眺めたような、ちょっとだけ見下ろす視点が新鮮で、街はページの中に封じ込められているのではなく、白い余白がそのまま曖昧に街頭へとつながっているようで、電車に揺られながら少々うっとりしてしまう。個人的にはすでに閉店した、「明文堂書店」(2012/03/14参照)のある街角が、嬉しくてたまらない。僭越ながら、拙著「古本屋ツアー・イン・神保町」と対極を成す一冊と感じ入る。
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2016年10月28日

10/28古本屋ツアー・イン・ヤフオク2

昨日は夜の『不忍ブックストリーム』出演に照準を合わせ、ちょっと早めに外出。高円寺まで歩いて「古書サンカクヤマ」(2015/02/02参照)にて河出書房新社「どちらでも/小島信夫」を100円で購入すると同時に、店内の木箱で北原尚彦氏に渡さなければならない(と思われる)ホームズグッズを発見し、50円で購入する…恐らく持っていないだろう…。さらに「都丸書店」(2010/09/21参照)ではガード下壁棚から目黒書店「越後の國 拾遺 雪の傳説/鈴木直」を300円で購入する。

そして本日、仕事の締め切りがあるため、家にじっと閉じこもっている。そこに、雨合羽のオヤジさんが届けてくれた一抱えの小ぶりなダンボール…届いたか…ヤフオクでの落札品で、中身はもちろん古本である。心を逸らせながら、ベリベリバリバリとダンボールを開ける。中に詰まっているのは、一冊一冊プチプチで丁寧に梱包された、五冊ほどの古い児童文学である。ほとんどが裸本で、さして珍しいものでもない。それらには目もくれずに、動悸を早めながら緑色の一冊を抜き出す。偕成社「あらしの白鳩/西條八十」である。ついに、ついに念願の一冊を手に入れたぞ!カバータイトル部分が大胆に破れているのが残念だが、それでもこの稀本が、我が手にスルリと収まってくれたことに、大大大大感激する。去年の十二月に盛林堂ミステリアス文庫で、奇跡的に復刻されたばかりだが、やはり当時の本、当時の活字、当時の挿絵で、時を経た本の匂いを嗅ぎながら、あの奇天烈な少女たちの物語が読めるのは、歓喜の体験となるであろう。あぁっ、八十センセイ!最高!ピジョン!ピジョン!ホワイト・ピジョン!
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最近のヤフオクでは、お目当ての本を落札することが、ほぼ不可能になっていた。基本、目を皿にして探している本や欲しい本が、珍しいものであることが多いからなのだが、それでも姿の見えぬライバルたちの、強気な入札や嗅覚の鋭さに阻まれ、連続的に一敗地に塗れる日々は、砂を噛むように虚しいものであった。だからどうにかして隙や見逃しはないものかと、深く深く潜り込むのだが、それでも振り切れなかった影が、終了時間近くにドドドと現れ、たちまち値段がグングン急上昇し、「俺はやはり大甘だった」と、モニターを前にしてため息を吐くばかり…。

だが、今回は違った。なんたって出品タイトルが『昭和の古い本』だけだったのだ。入札開始値は千円。小さな写真に目を凝らすと、その中の一冊に「あらしの白鳩」が紛れており、ドギンと心臓が跳ね上がる。これは、有望だ。誰にも気付かれていない可能性が、高い。そう確信し、過大な希望を抱きながら、そっと入札する。四日…三日…二日…一日……どうか誰も気づかないでくれと願い、順調に残り少なくなる時間に胸を躍らせながら、千円で「あらしの白鳩」が入手出来た瞬間を夢見て過ごす。しかしその甘い夢は、オークション終了一時間前に、破られたのだ。ライバルが突如出現し、高値を入札して来たのである。カッと頭に血が上り、少しずつ値を上げ入札し、アドバンテージを取り返す。だが、敵も諦めようとはしない。何度かそんなことを繰り返した後、入札の詳細を確認すると、敵はどうやらひとりで、しかも入札は少しずつ金額を上げて行くタイプ…つまりは、我慢比べである。一発ずつ交代で殴り合い、どちらかが降参するまで、それを繰り返すことになりそうだ。金額を大幅に上げて来ないのならば、少しは勝ちが見込める。問題は…私自身の制約である『入札は五千円』までという決まりである。殴り合いを続けるうちに、その限界値が、少しずつ近付いて来てしまっている…よし、ちょっと落ち着いて考えよう。もし、お店でカバーの破れている「あらしの白鳩」を見つけたら、幾らぐらいまでなら出せるだろうか?…いや、お得だと、どひゃっほうだと思えるだろうか?短い時間に一生懸命試算して、七千円くらいまでだったら、そう思えるのではと考え、これっきりだと心に誓い、禁を破ってついに七千円で入札してしまう!案の定パンチが返ってくるが、それは五千八百円で、ピタリと止まった。このままこのまま、入札しないでくれ〜と見えぬ敵に許しを乞いまくり、無事にそのまま終了。その瞬間、やった!という高揚感と、やってしまった…という背徳感が、慌ただしく捩じれ合い、心の中に索漠とした苦い勝利の味が、ジワリと広がる。まぁしかし、結果オーライ。ウチに可愛い白鳩が来たのは喜ぶべきことなのである。ピジョン!ピジョン!ホワイト・ピジョン!

そして明日・明後日は『神保町ブックフェスティバル』の本の雑誌社ブースで、新刊「古本屋ツアー・イン・京阪神」販売に楽しく従事いたします(在店は大体午後一時〜午後四時くらいまで)。声出してますので、冷やかしついでに遊びに来て下さい!
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2016年10月26日

10/26練馬から古本屋が消える日

昨日の短い西荻彷徨で、開いているのにちょっと遠いから行かなかった「モンガ堂」さん(2012/09/15参照)よりタレコミが入る。店に来たお客さんから、練馬の「一信堂書店」(2008/07/08参照)が閉店セールを行っているのを、聞き込んだのである。それは由々しき事態と、本日昼食を食べてから練馬へ急行する。駅南側の警察署近くのお店にたどり着くと、おっ!ビルエントランス横の扉が開き、その前には大量の古本山が放置され、奥には初めて目にするバックヤードの様子が垣間見えていた。…むむ、本当に由々しきことになっているようだ…店頭壁棚を流しながら入口に近付くと、そこにはたくさんの白い『閉店のお知らせ』が貼り出されていた。
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七十二年の営業に十二月十五日に幕を下ろすこと、二割引の閉店セール(除外品あり)を十月十五日より初めていたことなど、が書かれている。ついこの間、講演の調査のために訪れ、その講演でも『練馬に君臨する盤石の古本屋』として紹介したばかりだったのに…盤石じゃなくなってしまった…。それにしても、先ほど目にした表に置かれた古本が、古い大衆小説や児童文学だったので、どうにも気になってしまう。しかしそれらは、すでに仕分けが開始され、縦長のカーゴに積上げられ始めていた…もはや閉店の準備は始まっているということか。あきらめて中に入ると、そこにも閉店のお知らせがペタペタと貼られている。そして今まで見たことがないほど、雑然さが消え、通路がスッキリしている。棚はほとんど通常通り。帳場からどの通路も見通せるようになっている、パノプティコン方式もどきの行き止まりを通路を三本精査し、最後の右奥の広めゾーンに入ると、あっ!真ん中がごっそりと片付けられ、かつてない広さで棚の本をスッキリと見せている…。私にとってここは、それほど相性の良いお店ではなかったが、それでも近くに来たら足を向け、棚をチェックせざるを得ない蔵書量と深さを誇っていた。そして勝手に、何だかいつまでもあるような気がしていたのだが、後一月半で閉店か…途中、玄関マットを換えに来た三十代の営業さんが「閉めちゃうんですか。僕が会社に入った時から、ずっと担当して来たのに…もう十年以上ですよ」などと帳場で話している。私も七十二年の長きに渡る営業を心中で労いながら、イザラ書房「マリリン・モンローはプロパガンダである/平岡正明」新潮文庫「聖ヨハネ病院にて/上林暁」を計720円で購入。と同時に、戦慄の事態に思い至る。このお店が閉店したならば、ついに練馬駅周辺からは、純粋な古本屋さんが一軒も無くなってしまうのだ!なんという恐るべき古本屋エアポケットが誕生してしまうのかっ!こんな大きな街に「ブックオフ」一軒では、古本屋好きはどうにもやり切れない。果たしてこの空虚さが解消される日は、やって来るのだろうか…。
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2016年10月25日

10/25曇天の下、天金は輝く

『四度目の古ツアフェア@盛林堂』+『第二回どひゃっほう本祭り』が週末を乗り越えたので、どひゃっほう本とフェア本の補充に西荻窪へ向かう。雨はまだ降っていないが、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)店頭は雨仕様となり、ビニールカーテンをぐるり巡らせている。薄くジャズが流れてくる店内に入り、補充をチャチャッと済ませる(どひゃっほう本に、宮本幹也と北村小松が新加入。詳しいどひゃっほうの経緯は、表紙側見返しに挟まった直筆メモをご覧下さい)。店主・小野氏は買取外出中らしく、番台には若奥様が座っている。ちょっと色々打ち合わせをしたかったのだが、また日を改めての来店を告げると、何とこれから「古本屋ツアー・イン・京阪神」の追加が届くので、署名捺印をぜひ、とお願いされる。おぉ!入口近くの椅子台を振り返ると、確かに先週の追加分が残り一冊となっているではないか。肝心の本はもうすぐ届くということなので、しばらく外をブラブラしてから、再びお店に戻って来ることにする。だが、今日は火曜日!私を惹き付けて止まない古本屋さんたちは、西荻窪では主に定休日なのである。「にわとり文庫」(2009/07/25参照)も「比良木屋」(2008/09/12参照)も「忘日舎」(2015/09/28参照)も「音羽館」(2009/06/04参照)も見事にグッスリお休み中。途中路地裏の猫にちょっかいを出したら、達人のような素早さで引っ掻かれてしまい、流血……だが、北西奥に歩を進めて行くと、ややや、「花鳥風月」(2009/04/28参照)はしっかり営業中のようだ。店頭ワゴンをじっくり眺めてから、かなり久しぶりの店内に進みすべての通路をゆっくりウロウロ…うむ、良い気になる本が、所々に…だがどうも、本の整理と棚の整理を粛々と進行中の、店主の視線が妙に身体に突き刺さる…まぁ、気にしない気にしない。俺は何も悪いことなどしていないのだ。俺はただ、古本を楽しく見ているだけなのだと、貫く視線を宇宙線のように無自覚にして、本に集中して行く。すると右奥の平台上に面陳された、函ナシだが金色で非常に美しい、第一書房「動物詩集/ギイヨオム・アポリネエル作 ラウル・ヂユツフイ畫 堀口大學譯」が千円だったので、少し迷った末に購入。店主には優しく栞を挟んでいただき、なんだかホッとする。通りに出て、思わず本を取り出し眺めてしまう。大正十四年の一刷で、動物や虫の短い詩が版画と対応して、見開きページで向かい合っている。表紙全体の金塗りも鮮やかだが、天金はさらに掠れもせず美しく、曇天の下でも、キラキラ輝いている。
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金色の本を小脇に抱え、裏通りを伝って盛林堂へ戻ると、小野氏が戻って来ており、ちょうどタイミング良く追加本も届いた。帳場脇に席を作ってもらい、軽く打ち合わせをしながら二十冊に五種の識語を記し署名捺印する。
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2016年10月24日

10/24ささま参りと関西イベント(ささやか)

昨日は石神井公園近くの『練馬区立南田中図書館』にて必死に講演。四十人弱の嬉しい奇特な聴衆を前に一時間半、古本屋&古本の素晴らしさと練馬の古本屋について語りまくる。図書館員さんに時折フォローされながらも、かなりひとりで喋っていたので、様々な話が加速し過ぎたり飛び飛びになったりと、高く浮き足立った部分が多かった気がする。それでも遠路遥々お集りのみなさんに、最後までニコニコ聴いていただき、ただひたすら感謝である。それにしても、普段はブログでお店と言う点を打ち、それを改めて本などにまとめると、わりとグローバルな視点(首都圏や京阪神など)になることが多いのだが、今回のように“練馬”というミニマムな括りで古本屋をまとめると、新しいルートや関係性がフワリと見えて来て、その範囲の狭さと境界線が、とても新鮮であった。しかし気になったのは、練馬には極端に新しいお店や開店するお店が少ない気がすること。「古本喫茶店マルゼン46」(2012/02/27参照)や「エコキーパーズ」(2013/01/29参照)が比較的最近のお店ではあるが、う〜ん、これだけではやはり…ところが、終了後の会場にて、ひとつの希望の光がピカリと眩しく輝いた。挨拶を交わした「ポラン書房」(2009/05/08参照)の若番頭さん・前原氏が、お店からついに独立し「古本 一角文庫」として、いずれ実店舗も開くべく奮闘中だというのである!これは素晴らしいお知らせである。ということは次のこの図書館でのトークショーは、前原氏の「練馬に古本屋を開くまで」というのが、良いのではないだろうか。

本日は講演の妙な疲労を身体にまとわりつかせながら、些事を片付けるのに奔走。隙を見て荻窪「ささま書店」(2008/08/23参照)にタタッと駆け付け、店頭棚の全面を素早く一巡する。それだけで手の中には六冊。何だか七十年〜八十年代文学づいたラインナップである。文藝春秋「草のつるぎ/野呂邦暢」「つゆ草/川崎長太郎」JICC「競馬場で逢おう/寺山修司」冬樹社「私の文学放浪/吉行淳之介」東京創元社現代推理小説全集12「その子を殺すな/ノエル・カレフ」ロマン・ブックス「濡れた心/多岐川恭」を計630円で購入し、阿佐ヶ谷にさっさと戻る。途中「古書 コンコ堂」(2011/06/20参照)にも寄り道し、正進社名作文庫「耳なし芳一のはなし/小泉八雲 平井呈一訳」を、たまたま店頭に補充に出て来た天野氏に、103円を支払い購入する。「古本屋ツアー・イン・京阪神」(識語署名捺印本)取扱開始のお礼を伝えると、「いやぁ、あの本、なんだかスゴいですよ、もう古本屋の本じゃないみたいですよ。まるで考現学とかの本ですよ」と、とても嬉しいことを言われる。ずっと目指しているところに、少しくらいは届き始めたんじゃないかと、薄めの自信が、チュワッと心の中に滲み出た一瞬であった。
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ここでお知らせをいくつか。
■今週10/27(木)に『不忍ブックストリーム』に出演し、「京阪神」についてベラベラと話す予定です。MCの南陀楼綾繁氏は、ついに今秋創刊の一箱古本市雑誌「ヒトハコ」をお披露目予定。お時間ある方は、ぜひとも御試聴下さいませ!
第120回 不忍ブックストリーム「秋の新刊&イベントまつり!」
http://www.ustream.tv/channel/shinobazubookstream
午後九時頃から配信予定。

そして「京阪神」の発売を勝手に記念して、これはもう、ちゃんと向こうで挨拶しないと始まらないと、大阪&京都で小さなイベントを二つ敢行いたします!
■『著者と話そう 古本屋・ツアー・イン・ジャパン 小山 力也さん×古書コンシェルジュ』
2016年11月12日(土)
定員 10名
時間 19:00〜20:00
講師/ゲスト 小山 力也さん
場所 梅田 蔦屋書店 コンシェルジュカウンター 主催 梅田 蔦屋書店 コンシェルジュ
参加費 無料
問い合わせ先 umeda_event@ccc.co.jp
申し込みは下記のHPからどうぞ
http://real.tsite.jp/umeda/event/2016/10/post-209.html
神保町の古本屋を全店制覇した『古本屋ツアー・イン・神保町』、首都圏各所に散らばる古本屋を沿線ごとにたどった『古本屋ツアー・イン・首都圏沿線』と、厖大な数の古本屋をめぐり続けている「古本屋ツアー・イン・ジャパン」こと小山力也氏による、京阪神古本屋ガイド発刊を期に、古書店めぐりの秘話や、古書の魅力を縦横無尽に語り尽していただきます。聞き手は、古書コンシェルジュが務めます。ご期待ください。
■『古本屋ツアー・イン・善行堂』
京都の吉田山ふもとの「古書善行堂」で、古本ソムリエの山本善行氏に一日弟子入りし、店員として必死に労働しておりますので、秋の古都の日曜日に、フラリと遊びに来ていただければ幸いです!古本の話、古本屋の話、署名捺印、なんでもござれ!プラスご来店の方へ何か特典を、などと考え中ですので、詳細は追ってお知らせいたします。
2016年11月13日(日)午後十二時〜午後八時(予定)
古書 善行堂 京都府京都市左京区浄土寺西田町82−2
http://zenkohdo.shop-pro.jp/
http://d.hatena.ne.jp/zenkoh/ 
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