2018年04月08日

4/8さらば「五一書房」、そしてどひゃっほう。

原稿を書かねばならぬのだが、今日で金町の「五一書房」(2009/04/06参照)が閉店してしまうというので、我慢し切れず午後に外出する。750円の都区内パスで、一時間強をかけて低層高架のホームに降り立ち、駅頭の雑踏に紛れ込む。すると北口の駅前商店街にある古本屋さんは、大きな閉店セールの模造紙を貼り出し、店内も驚くほど混み合っていた。
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あっ、閉店日が本日八日から十日の火曜日に修正されている…。本はすべて半額となっており、狭い通路を譲り合いながら本棚に意識を集中して行く。中央通路には絶版漫画類が惜しげもなく放出されている。奥の帳場横には、古書コーナー&古書箱もあり、ちょっと高値の本たちが詰め込まれている。下町の小さな古本空間を地元客たちと存分に惜しみ楽しみ、尚文堂「抒情小詩 静かなる眉/西條八十」(函ナシ)西北書房「名人全集 松の操美人の生理/三遊亭圓朝演」東考社「声なき目撃者/辰巳ヨシヒロ」スポーツニッポン新聞社出版局「軟派昭和史」を計3750円で購入する。長い間おつかれさまでした。まだ四〜五年前にはたくさんの古本屋さんがあった金町だが、これで残るは南側の「書肆久遠」(2009/12/04参照)だけになってしまった…。

というわけで高架下を潜って「書肆久遠」へ。店前に立つと、看板は出ているがカーテンがほとんど閉じられているの。『お休みか?』と焦るが、ドア一枚分だけカーテンが開けられており、そこから中を透かし見ると蛍光灯が点いているので一安心。ちょっと重めのサッシを引いて店内へ。棚は整然だが、通路には本が箱入りや低層で積み上がっている。上下に視線を振りまきながら、相変わらず質の良い並びを満喫して行く。むぅ〜、児童SF類が安いなぁ…幻想文学も充実安値…文学も良いなぁ…児童文学もわりかし古いのが…はぅん!積み重なった本の中に、東都書房「白鳥座61番星/瀬川昌男」が混ざり込んでいるじゃないか!少し箱が経年汚れだが、中はキレイで二刷。値段は…はぅぅん!300円!あぁ、原稿を放り出して金町に来て、本当に良かった。最大級の喜びを体中に秘かに溢れさせながら、森脇文庫「人蟻/高木彬光」ハヤカワ文庫「機械探偵クリク・ロボット/カミ」とともにオヤジさんに差し出すと、「白鳥座61番星」を箱から取り出したところで手が止まる。あぁ!もしや『この値段じゃないんです』って言われるのでは!と一瞬絶望の淵に立つが、「これはその奥にあったヤツだよね。じゃあ100円だ」と何とプライスダウン!もう本当に何と言えばよいのやら!後ろめたさを感じるほどの、どひゃっほうであります。というわけで本来ならば、オヤジさんとは久しぶりの再会なのでちゃんと挨拶するべきなのだが、予想外の大物を引き当ててしまった小心物らしく、計700円を支払いコソコソとそのまま引き上げる。オヤジさん、不義理ですみません!そして本当にありがとうございます!
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うわぁ〜い、憧れの本が、また一冊手に入った!
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2018年04月07日

4/7荻窪周辺古本屋MAP

今日は午後四時前に吉祥寺の南に流れ着いたので、大変な賑わいのもはや祝祭的空間である『井の頭公園』を、缶ビールを傾けながらダラダラと通り抜け、「バサラブックス」(2015/03/28参照)の店頭棚前にしゃがみ込む。ふぅむ、『古い本古い本…』と呪文のように唱えていると、創元社「野火/大岡昇平」の帯付き初版とともに光文社「長編小説 迷子の天使/石井桃子」を呪い通りに発見したので、200円で購入する。続いて「よみた屋」(2014/08/29参照)では講談社「地下室からのふしぎな旅/柏葉幸子」エルム「ムーミン ほしのこのなみだ/原作 トーベ・ヤンソン」(ソノシートナシ)東宝映画「病院坂の首縊りの家」パンフを計400円で購入する。昨日に比べれば、安くて軽い軽い。

その昨日と連続する一昨日の京都では、実はこの地に居を移した、ミステリ評論家&乱歩研究家の新保博久教授と再会を果たす。その嬉しさついでに河野成光館 世界探偵傑作叢書18「廢人團/ヴアル・ジールガツド」を強奪するとともに、ある一枚の地図をいただく。「荻窪周辺古本屋MAP」という名の、A3のオレンジ色の紙に荻窪・西荻窪・井荻・下井草・鷺ノ宮駅周辺の二十店の古本屋地図が刷られた、『東京古書籍商業協同組合荻窪班』の作成物である。2000年創業の「音羽館」(2009/06/04参照)がまだ存在せず、その場所にあるのは「よみた屋」だったり、ランドマークとして1992年〜2001年営業の『さくら銀行』が描かれているので、恐らく1990年代のものであろう。鷺ノ宮・下井草・井荻・荻窪北側・西荻窪北側の十一店はすでに亡い。またお店によっては、特徴を表すキャッチコピーが掲げられているのだが、「盛林堂書房」は『頑固な親父のいる店』、「よみた屋」は『読書人の悦楽の園』、「大村書店」(2011/02/27参照)は『女性でも気軽に入れる店』などとなっており、「ささま書店」(2008/08/23参照)はこの時からすでに『広くて楽しい古本屋』を標榜している。見ているだけでとっても楽しい。教授、結構なものを、ありがとうございました!
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2018年04月06日

4/6京都・出町柳 El camino

昨日から次々号の「本の雑誌」の特集記事取材のため京都入り。無事にミッションを完遂したので、本日は夕方まで晴れて自由行動となる。雨雲が午前から垂れ込める古都の中で、まずは二月に新しく出来た古本屋をツアーした後、古本屋を巡りまくって古本を買いまくることにする…。

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『5番出口』から地上に出て、西に河合橋を渡り、『目玉の松ちゃん』胸像のある『糺の森』の尻尾を掠め、南に『鴨川デルタ』を眺めながら『出町橋』をさらに渡り、地下駐車場への入口をやり過ごしてから、横断歩道を渡って、懐かしい雰囲気の充満する『出町枡形商店街』のちょっと薄暗いアーケードに突入する。ひとつ目の小さな十字路を過ぎると、南西角に『出町座』という小さな映画館が誕生しており、さらにその隣りに目標とする新たな古本屋さんがしっとりと存在していた。店頭に看板などは掲げられていないが、頭上を見上げると、商店街共通の小さな電灯吊るし看板に、『USED BOOK』の言葉と共に店名が刻まれている。店頭には水色のプラケースが二十四ほどドバドバ置かれ、100〜300円の文庫・児童文学・単行本・地図・大型本・絵本などが詰め込まれている。少し段差の高い店内に進むと、左に小さな時代劇文庫棚、右に児童文学椅子が置かれ、左は一面の壁棚となっており、下部に美術図録を豊富に集め、他に児童文学・料理・人生・文学・文化・旅・暮らし・ビジネス・韓国&中国文学・自然などを並べている。中央に細長い平台を備えた棚がデンと据えられ、下に映画パンフ箱が置かれたりしながら、ビジュル本・映画雑誌・洋書・DVD・漫画アニメ評論&研究を揃えている。奥の帳場周りには、古めの児童文学・文学文庫が固まり、右側通路はレコード箱が中央に数多く置かれ、右壁にカルチャー&美術棚と、大型ビジュアル本ラック張り付いている。激安値の雑本が中心だが、美術図録や作品集や映画特撮アニメ関連には、しっかり値の良い本が多く混ざり込んでいる。京都の古本チェーン「コミックショック」が開いた新店で、タイミングが良ければ雑本の中に煌めく本を見出せる可能性がありそうだ。だが今回はその機会に恵まれず、ポプラ社「少年探偵41 一寸法師/江戸川乱歩」を100円で購入するに留まる。

続いてすぐさまその先の「上海ラヂオ」(2016/04/19参照)に飛び込み、奥の古書棚にぴったりと取り憑く。すると期待していた通りに、素晴らしい本を発見!薔薇十字社「アップルパイの午後(新装版)/尾崎翠」が二千円!そして河出書房「燈台鬼/南條範夫」の初版が五百円で並んでるぅぅ〜!と店内で気付かれぬよう小躍りしながら購入する。
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合わせ技どひゃっほうです。

さらに或るお店に早めの連載取材に向かった後、雨に祟られながら「富山房書店」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」p44参照)に逃げ込み、偕成社「のらねこたいしょうブー/神宮輝夫さく 池田龍雄え」を500円で購入すると、帳場カウンターの上に堂々たるオッドアイの白猫が横たわっているのに遭遇。あまりのプリティーさに我を失いそうになるが、猫がひたすら驚いた表情を披露しているので、指先の匂いを嗅いでもらう光栄に浴すだけで我慢する。次は京都市役所付近に出没し、『村上開新堂』でロシアケーキなどのお土産を買った後、「尚学堂書店」(2009/09/05参照)で表紙絵が脱力の日本書房「アメリカ民話 ジャングルのターザン/中正夫・文 花山信吉・画」(えっ?民話じゃないよね…)を700円で購入し、
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「アスタルテ書房」(2015/12/25参照)では裸本の創元社「掘り出しもの/井伏鱒二」を1200円で購入。最後に「大学堂書店」(「古本屋ツアー・イン・京阪神」p24参照)の店頭台から改造文庫「風俗/石坂洋次郎」を300円で購入し、束の間の久々の京都古本屋ツアー終了する。玉石混淆買いまくった半日。あぁ、本当に楽しかった。
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2018年04月04日

4/4今日はあの蔵書に呼ばれてしまう。

初夏のような暑さに体力を奪われて、立川の南に流れ着く。駅にあえぎあえぎたどり着き、そのまま帰ればよいものを、勢いで反対方向の電車に乗り込んでしまう。美しい川を二本越えて、八王子駅で下車。北口の雑踏に紛れ込み「佐藤書房」(2009/08/26参照)に入り込む、体力の回復は図れぬが、古本心に栄養は行き渡るはずだ!そう信じて各通路を楽しく徘徊する。そして右端通路のガラスウィンドウを、唾を飲み込みながら覗き込んでいると、とても気になる一冊を発見してしまう。大和出版「甦える疑惑/飛鳥高」である。帯はないが、函はキレイで何故だか値段は四千円…安い!安過ぎるではないか!値付を間違えているのだろうか?それとも何か重大な瑕疵があるのだろうか?…だが、探偵&推理小説好きとしては、こんなチャンスを、ウカウカと逃すわけには行かないはずだ!と心中で雄叫びを上げ、番台脇で作業していた大柄な男性に「すみません、この飛鳥高をいただきたいんですが…」と言うと、「あぁ、これね」と鍵を開けて本を取り出し、「向こうで見てみて下さい」と番台のオヤジさんに本を渡した。横を擦り抜け番台前に立つと「中を確認された方が良いですよ」とオヤジさん。こちらはいつもの癖で「あぁ、特に見なくとも大丈夫ですよ」と返すと「いえ、見た方が良いですよ。はい」と本を手渡される。「ありがとうございます」と受け取り、素早く通り一遍見てからすぐ買ってしまおうと、函から取り出す。状態の良い本である。後見返しに古書ラベルの剥がし痕…続いて本扉を見る。ほぉ、写真が配置されているのか…と、白黒の画像から昭和三十年代の薫りが立ちのぼった瞬間、上に捺された紫色のスタンプ印に気付いてしまう…あぁ、そうか、“T蔵書”なのか。ミステリマニア泣かせの、書物破壊症とも言える有名なコレクターの元蔵書本である(2014/01/29参照)。本扉・目次・最終余ページ・天・地・小口にスタンプ印が捺され、奥付は残っているが検印紙は剥ぎ取られており、そこにわざわざ同様のスタンプが捺されている。「これ…有名な“T蔵書”じゃないですか」「そう、この人は、本に色々した人でね。こんな風じゃなかったら、値段もこの倍は付けていいんだけど。これじゃあね…」…なるほど、本の確認を慎重に薦めた訳である。やはり一瞬がっかりしてしまうが、奥付ページが残っていることに希望を見出し、『貸本屋の本だって、同じくらいハンコが捺してあるけど、喜んで買うじゃないか。そう考えれば、わりとキレイな本だし、何よりオリジナルで読めるのが大事なことだ』と考えた末に、「いただきます」と口をついてしまう。あえてババ抜きのババを引くような心境だが、まぁ今日は、この本に呼ばれてしまったんだろう。オヤジさんは「そうですか。ありがとうございます。すいません」と代金を受け取り本を袋に入れ、再び申し訳なさそうに「ありがとうございます。すいません」と渡してくれた。実はこれが、三冊目の“T蔵書”だったり、するのです…。
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2018年04月03日

4/3愚かにも心残りを買いに行く。

午後にブラッと西荻窪に赴き、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内「フォニャルフ」に補充する。ほほぅ、署名識語入「古本屋探検術」二十五部が、無事に全部捌けているではないか。西荻窪まで足を運び、お手にしていただいた皆様、ありがとうございました。と自分の棚から目を上げて、本棚探偵の「ひとたな書房」に目玉を泳がせると、あぁっ!シムノンの「自由酒場」が函ナシだが、キラキラピカピカ並んでいるじゃないか!素早くキレイでしっかりした本を手にして、昔の活字に目を走らせながら、後見返しに挟まれた値段を確認する…六千円…パタンと閉じて一旦棚に戻す。しかしバカみたいにすぐに取り出し、帳場へ一直線。アドア社「探偵小説 自由酒場/ジョルジユ・シメノン著 伊東鋭太郎訳」(函ナシ)を六千円で購入する…あぁ、もはや月に一冊、「ひとたな書房」から古本を購入している気が…俺はもうこの棚の呪縛から、逃れることが出来ないのか…。
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この昭和の洋菓子屋の包装紙のような装幀が、たまりません!

その後新宿まで出て小田急線に乗り込み、昨日訪れたばかりの祖師ケ谷大蔵に降り立つ。実は『これは買わなくてもいいか…』と諦めた本が、やはり愚かにもどうしても欲しくなり、二十二時間後の再訪を実現させてしまったのである。ところがお店の前に着くと、横溝正史風オヤジさんが戸締まりをし、自転車で颯爽と出かける場面に出くわしてしまう。…どうしよう…だが、店内内側の白いカーテンが閉められていないので、これはすぐに帰って来るはずと判断し、近くの団地横のベンチに座って三十分弱ボ〜ッと過ごしてから、お店を再々訪する。…ホッ、開いている。すぐに店内に身を捻入れ、左壁の文学棚に対峙する。よかった、売れてない!二日連続で本を買いに来た奇妙な恥ずかしさをぶっ飛ばし、新潮社長編文庫「惱める太陽/佐々木味津三」を二千円で購入する。
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巻末の広告を見て、この『新潮社長編文庫』シリーズの二冊をすでに所持していることに初めて気付く。というわけで家に戻ってからまとめて記念撮影。「黄金草/岡田三郎」(岩田専太郎装畫)「霧の夜の客間/浅原六朗」(佐野繁次郎装畫)。ちなみに「惱める太陽」は山六郎装畫である。作家も装畫も当時の豪華なラインナップ。他には「しかも彼等は行く/下村千秋」「電話を掛ける女/甲賀三郎」「水晶の座/牧逸馬」「曉の鐘は西北より/國枝史郎」が装畫も含め、とてもとても気になるところ…。
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2018年04月02日

4/2おぉ、トラゴロウ!

昨晩NHK『ダーウィンが来た!』で放映された、モンゴルに生息する“マヌルネコ”の可愛さに思考の半分を支配されながら、今日は夕暮れのは祖師ケ谷大蔵に流れ着く。フラフラと商店街に向かい、愛する「祖師谷書房」(2009/03/05参照)に到着。右のサッシ扉から入り、児童文学の山に懸命に目を凝らして行くと、やった!理論社・童話プレゼント「目をさませトラゴロウ/小沢正・作 井上洋介・え」が、1967年の第五刷だが、ちゃんとカバー付きで置かれているではないか!後の見返しを見ても値段は書かれていないが、何はともあれ買うことにする。極狭通路を、左右の棚に丁寧に視線を振り分けながらジリジリ移動して、左側通路でさらに二冊を手にする。「お願いします」と極狭帳場のオヤジさんに差し出すと、なんと「目をさませトラゴロウ」は百円にしてくれた。ありがとう、オヤジさん!文武書院「漫画漫遊 世界一周/岡本一平」暮しの手帖社「暮しのなかで考える/浦松佐美太郎」(カバーナシだが300円!)とともに計1400円で購入する。
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可愛く格好良い斬新なトリミングの装幀!ちなみにトラゴロウは猫ではなく、立派な虎なのです…。
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2018年04月01日

4/1「洋行堂」は素早い撤収を始めていた。

コメントへのタレコミにより、辻堂の「古書 洋行堂」(2010/10/03参照)が四月で閉店することを知る。恐らく二度ほどしか訪れていないのだが、質の良いお店だった印象が強いので、湘南新宿ラインにガタゴト乗って、様子を見に行くことにする。その前に通り道である阿佐ヶ谷「J-house」(2015/12/26参照)の日曜朝市を覗いてみると、カゴにたくさんの映画館チェーン『テアトル』の週報(1950年代)が出されていた。丁寧に繰り、『復讐は俺に任せろ』『ギャングを狙う男』を抜き取った後、さらに後へと探索の手を伸ばして行く。すると、210mm×290mmの紺色で12ページの、大型パンフレットが出て来たではないか。昭和三十一年十一月刊の日本国有鉄道「東京縦貫複々線工事完成記念 田町⇔田端」である。混雑緩和のため京浜東北線と山手線を複々線化し、独立した路線として運用するための、工事完成記念冊子である。新装された各駅舎や鉄道施設の写真や、工事中の様子も掲載されており、こりゃ素晴らしい!と計324円で購入する。
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キャプションに『複々線となった山手・京浜東北線』とある写真。見た瞬間に、どうも電車の縮尺に違和を感じたので良く目を凝らすと、何と左の三本は切り抜き合成されているではないか!捏造された複々線そろい踏みの図…。

そして風の強い辻堂の白っぽい街をテクテク歩いて、久方ぶりの「洋行堂」前。扉には長年のご愛顧感謝の言葉と共に、四月初旬の閉店に向けての閉店セール中(文庫本50円、新書&単行本一冊100円三冊200円)である旨が貼り出されている。文庫ワゴンに視線を落とすと、欲しい文庫がたちまち二冊三冊と手の中に。ガラリと店内に進むと、ありゃりゃりゃ。すでにたくさんの本棚は空となり、早くも閉店撤収の準備が進行してしまっている。棚に残る本は、ほぼ文庫ばかり。中央棚の両面と棚下平台にそれらは集まり、入口左側に単行本が固まり、50円絵葉書カゴもあり。右端通路には映画チラシやパンフが残され、奥に残る映画本はセール除外品となっている。また空いた本棚は、引き取り手を募集中。残った本を真剣に見ていると、店頭以上にたちまち本が手の中に収まって行く。途中地元のお客さんが訪れ「おつかれさま。寂しくなるね」などと話しかける一幕も。結局文庫本九冊単行本五冊を、遠藤周作風店主にぐいっと差し出す。すると、一冊一冊丁寧に本を拭きながら「単行本は三冊で二百円だから、もう一冊いいよ」と言われたので、「ありがとうございます」と講談社書き下ろし探偵小説全集2「見たのは誰だ/大下宇陀児」をそこに加える。特に嬉しかったのは、三笠書房「逆光線/岩崎邦枝」(『日活映画化』の帯付き献呈署名入り)と、「金井書店」(2016/08/10参照)が出していた非売品の文庫本「八重洲のおはなし」であろうか。いや、最後の最後で、良い買物をさせてもらいました。ありがとうございました!…それにしても湘南方面の古本屋事情は、ここ最近寂しくなる一方だな…。
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2018年03月31日

3/31倉庫はまた後日…。

春の深大寺に流れ着き、ちょうど散り際の『国際基督教大学』の桜吹雪を呆然と眺めた後、武蔵境駅方面に向かいつつ、午後五時の「プリシアター・ポストシアター」(2015/01/03参照)に寄り道。店頭で二冊掴み店内に進み、店主に「近くに来たので」と挨拶をすると、「倉庫を見に来たんじゃないですか?」と返される。だが、倉庫を見学出来るのは、午後七時の閉店間際なので、多少『もしかしたら見せてくれるかな』と期待しながらも「いやぁ、今日はお店を見に来たんですよ」と真面目に答える。「じゃあ今度ね。お店を閉めてからね、ゆっくり見せて上げるよ」と店主はニコニコ顔で、値付仕事に舞い戻る…くぅ、そう甘くはないか…というわけで早速倉庫見学はあきらめ、店内に意識を集中する。薄く流れるクラッシック音楽を追い出すように、外から子供が激しく繰り返す縄跳び・二重跳びの音が、間断なく静かな空間に飛び込んで来るが、気にせず古本の背を楽しんで行く。風俗文化の棚から一冊抜き取り、さらに前回来店時から気になっていた本を、意を決してぐいっと抜き出す。「今日はずいぶん真面目にお仕事してますね」「明後日から、柏で古本市なんですよ」などと話しつつ、精算に入る。気になっていた本は、未央書房「妖怪の世界 怪奇映画への招待/児玉数夫」(昭和43年初版)。それを手にした店主は、「おおっ、これは!いや、ありがとうありがとう。嬉しいなぁ」と三千円の本が売れたことの喜びを、無邪気に放出している。さらに光文社カッパブックス「日本女地図/殿山泰司」河出書房「極楽鳥の島々/ウォーレス」山渓山岳新書「山の隣人/長尾宏也」とともに、計4536円で豪気に購入する。「最近倉庫をちょっと片付けて、スムーズに通り易くなったよ」と言われたので、次回は閉店間際に来ます!と宣言してお店を後にする。
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「妖怪の世界」は、何故か“妖怪”とあるが、フランケンシュタイン・ドラキュラ・ミイラ・透明人間・傴僂男・透明人間などを図版たっぷりに紹介した、愛情溢れる怪奇映画研究本である。袖の推薦文で都筑道夫が『この楽しい一冊が、児玉さんの情熱をかたむけた怪奇映画・推理映画のリスト出版への呼び水になることを、私は心から願っている』と書いている。
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2018年03月29日

3/29さすがに三時間は待てなかった。

竹ノ塚の「永瀬書店」(2010/04/10参照)が駅前の再開発により三月末で閉店してしまうので、見に行くことにする。東に向かう総武線で、神田川が桜の花びらに覆い尽くされているを見ながら、浅草橋駅で下車し、テクテク歩いて「御蔵前書房」(2008/11/08参照に寄り道する。あぁ!右端の通路奥が古書の山で塞がれてしまい、手前の文庫棚くらいしか見られなくなっている!…これは、ずっとこのままなのだろうか。それとも一時的に置いているだけなのだろうか?なので店頭の様子も変わり、右側に棚類は出ておらず、ただ地面に一枚の板が置かれ、そこに一列本が並んでいるだけの、実に寂しい状況である。中央通路と左端通路に変化はないようで、中央通路にあった、十冊ほどの水木しげるが手掛けた『小学館入門百科シリーズ』に惹き付けられる。だがどの本も値段が付いていない…というわけで、表でコミック本の整理をしていたご婦人に値段を聞くと「それは1080円」とのこと。安いではないかと、「悪魔くんの悪魔なんでも入門」「妖精100物語」の二冊(知らない悪魔と妖精が目白押し!)を計2160円で購入する。

その後押上まで出て東武線に乗り込み竹ノ塚駅下車。橋上駅舎がいの間にか地下駅舎となっているに驚き、西口に出るとそこはすでに再開発の嵐が吹き荒れており、白い工事壁の迷路と成り果てていた。苦労して壁の向こうに見える古い雑居ビルの向こう側に回り込む。すると見覚えのある細路地があり、「永瀬書店」もまだそこに存在していた。だが、閉まってるじゃないか!もしやすでに閉店してしまったのか?と焦りながらシャッターに近付き、何枚も貼られた貼紙に目を通して行く。…閉店のお知らせ…買取の中止…『本日は午後6:30より営業いたします』…なんてこった。今は午後三時半。さすがに三時間も待つわけにはいかない。以前お店の開店を張り込んだ喫茶店も(2015/05/09参照)、すでに赤土の更地となってしまっている。さすがに、三時間も待つわけにはいかない。残念ながら、尻尾を巻いて帰ることにする。なんとも締まらない最後だが、「永瀬書店」よ、さらば!
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2018年03月28日

3/28「本に呼ばれたんですよ」

まだ明るい夕方に国立に流れ着く。駅南口から南に延びる大通りは、満開の桜に覆い尽くされ、お花見に来た人々の期待に百パーセント応えるような、脳味噌の蕩ける景色となっている。舞い散る桜吹雪に思考を止めて溺れ、『旭通り』の「ユマニテ書店」(2009/06/22参照)に到達する。帳場奥にいるのはいつものご婦人ではなく、初めて見る石井光三風男性である。彼が本来の店主なのだろうか…?桜吹雪を脳内に引き摺りつつ、左側通路をダラダラ眺め、棚前に積まれた本の山にあった、500円の新書サイズ坂口安吾「堕落論」に目星を付ける。だが手には取らずに、右側通路もダラダラじっくりと。通路棚を見ながら入口まで到達し、壁棚を見ながら折り返し、帳場近くの海外文学棚に何故か引っ掛かってしまう。中段辺りにひっそりと挟まっていた、156mm×116mmの小型本が気になったので引き出してみる。表紙も本文紙も厚手の紙で造られた、第一書房HOLIDAY LIBRARY「白紙/ジヤン・コクトオ 堀口大學譯」であった。古いパラフィンの掛かった昭和七年の本を捲ると、四十歳の大學が、いつも以上の尖った譯を披露し、コクトオが斬りまくる当時の芸術の第一線を、鮮やかに活字の中に爆発させている。たちまち虜になってしまい、3500円とちょいと高値だが、ここで会ったが百年目と、迷わず帳場に差し出してしまう。するとオヤジさんが「いらっしゃいませ」と本を受け取った後、本を見て、海外文学棚を見て、再び本を見て、また海外文学棚を見る。そして「これ、良く見つけましたね。いや、以前これを買いに来たお客さんがいたんですが、棚にあるはずなのに見つからなくてね。結局そのお客さんは、買うのを諦めたんですよ」「普通にそこに挿さってましたよ。でも、それはそのお客さんに悪いことしちゃったかな」「いえ、いいんです。多分、あなたが本に呼ばれたんですよ。こういうのは出会いですからね」と笑うオヤジさん。「これ、ちょっと版型が特殊ですからね。このサイズをちゃんと認識していないと、見逃す恐れはありますよね」などと適当な答えを返しつつ、精算して本を受け取る。何だか心躍る古本購入であった。桜の下でちょっと立ち止まり、大學による冒頭の「譯者のノオト」に目を通す。『長谷川巳之吉君が云ふ、「--コクトオを譯すことは無駄だからおよしなさい。コクトオのよさは日本人には分かりません。コクトオの本ばかり出してゐたんではあなたも私も破産します。」その長谷川君の手で今度また白紙が出る。』…とても痺れる出版事情である。おかげで今この手に「白紙」があり、古い活字に目を通すことができるわけだ。
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2018年03月27日

3/27早い者勝ち!

午前十一時過ぎに西荻窪に赴き、「盛林堂書房」(2012/01/06参照)内「フォニャルフ」にドッサリと補充する。と同時に「フォニャルフ」棚最上段左端に、裏表紙に識語署名入りの「古本屋探検術」25部をそっと置く。25部すべて識語違い。お一人様一部のみで早い者勝ち。無料配布物なので、お店への問い合わせや取り置き願いは、ご遠慮いただければ幸いです!
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そして店頭100均文庫台から、大藪春彦「火制地帯」の元ネタである創元推理文庫「青いジャングル/ロス・マクドナルド 田中小実昌訳」を購入した後、すぐさま客からバイトである『盛林堂イレギュラーズ』に変身。そのまま店主・小野氏の運転する盛林堂号に同乗し、関東某所の買取へと向かう。午後十二時半から午後五時半まで、本の移動に肉体と魂を費やし、文庫本束五十八本・単行本束二十三本とともに、高層の十四階から地上までの行き来を繰り返す。帰りは環八の恐ろしいほどの渋滞に巻込まれ、ようやく午後七時過ぎに西荻着。倉庫とお店に本をダカダカと下ろし(縦長カーゴでの文庫束のキレイで無駄のない積み方を学習。奥一列を縦に立たせて並べ、後は手前に横積みして行く。そうするとしっくりピッタリ頑丈な積み上げとなる)、無事に盛林堂イレギュラーズとしての半日を終える。
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2018年03月26日

3/26東京・阿佐ヶ谷 古書・雑貨 雨前

午前中は色々雑事を片付けながらジリジリ荻窪に移動し、午前十一時半ぴったりの「ささま書店」(2008/08/23参照)店頭。ビニカバはないが、思潮社「アレン・ギンズバーグ詩集/諏訪優訳編」(1965年第一刷)が嬉しい発見。他に東京堂出版「滯歐印象記/本間久雄」(函ナシ)三一書房「灰とダイヤモンド/イェジイ・アンジェイフスキー」創元推理文庫「失踪当時の服装は/ヒラリー・ウォー」(初版白帯ナシ)を掴み、計432円で購入する。

午後は連載の取材をこなした後、本郷三丁目の「大学堂書店」(2009/01/06参照)で白川書院「夢野京太郎のシナリオ 浪人街/天明餓鬼草紙/竹中労」を600円で購入してから丸の内線で神保町に移動。晴れやかに着飾った大学卒業生の人波をかき分けながら、「アムール」(2011/08/12参照)では三一書房「エヌ氏の遊園地 ショート・ミステリー/星新一」(第一刷)東洋書館「顔の診断/高間直道」を計100円で購入し、「神田古書センター」入口の「みわ書房」露店(2013/01/18参照)で教文社「童話 水車/童話研究會編」を310円で購入し、最後に「羊頭書房」(2014/05/02参照)に吸い込まれる。右側の文庫本通路より左側の単行本通路を念入りに見てしまい、SF棚からアルス・ポピュラアー・ライブラリー10「モロオ博士の嶋/エツチ・ジイ・ウエェルズ」が二千円売られているのを見つけ、ニヤニヤと購入する。大正十三年刊。“嶋”の字がたまりません。巻末の広告を見ると、このシリーズは探偵小説をわりと多く含んでいるようだ。シリーズ装幀を記憶しておいて、発見に努めることにしよう。
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写真は本扉である。

そんな風に簡易にパトロールを終えて、古本神の一人・塩山芳明氏と待ち合わせる。氏とは神保町で何度も偶然に行き合っているが、ちゃんと約束して会うのは初めてのことである。しかも今日は古本絡みではなく、漫画編集者としての塩山氏と仕事の打ち合わせ。全く持ってありがたや。

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阿佐ヶ谷に帰るとすでに夕闇の街。駅北口に出て『中杉通り』西側歩道を、ぐんぐん北に歩いて行く。夕暮れでもそれと分かる、芽吹き始めたけやき並木の下で、家路をたどる。400m強で、緩やかな谷底の交差点を通過して、緩やかな上り坂。そろばん塾やバイク屋や自転車屋や飲み屋や「ゆたか。書房」前や不動産屋前を順調に通過して行くと、ひとつの信号に行き当たる。左の脇道には、満開の桜の樹。そして歩道際のお店が、本当に超絶珍しく開いていた。ここが、もう何ヶ月も前に『阿佐ヶ谷に新しい古本を扱うお店が出来た』と入って以来、開いているのをず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと楽しみにしていたのが、いつ何時前を通りかかっても、シャッターががっちり下ろされ『もう開くことはないのでは?』と思っていた、幻過ぎる古書と雑貨のお店なのである。思わず涙で滲む、緑色のテント日除け下の店頭には、キャリーバッグや古着や100円洗剤とともに、300均のガイド・暮し・コミックエッセイが置かれている。表を見ても、窓から中の様子を窺っても分かることだが、完全に女性寄りのお店である。だが、ここで開店しているところに逢ったら百年目!えいやっと扉を開けて中に踏み込む。小さな店内には、右に古着が集まり、正面に白いカウンターが据えられ、表の立看板やショップカードに小さく描かれた猫の絵に似た女性が本を読んでいた顔を上げ「いらっしゃいませ」。入口右の窓際にはテーブル状の台が置かれ、道路側は絵本ラックで、上部にカントリーアンティーク雑貨を陳列している。そして左壁に大きく白い本棚が据えられ、民話&児童文学・コミックエッセイ・旅・犬&猫・人生・国内女性文学・国内男性文学・店主オススメ本・海外文学と収まる。棚の下部には絵本・未整理本・ムックなど。新しめのキレイな本がほとんどで、優しくふんわりのほほんとしたジャンル構成である。値段はかなりお安め。新潮文庫「義男の青春・別離/つげ義春」岩波文庫「シベリア民話集/斎藤君子編」を帳場に差し出し、たどたどしい精算後にショップカードをいただくと「ウチは不定期営業なんです」と話しかけられたので、開店したことを知ってもなかなかお店に入れなかったことを伝えると、笑いながら「仕事のない時に開けているんで…でもなかなか開けられなくて…すみません!」と教えてくれる。このダブルワーク店に入るには、幸運と根性が必要らしい。また開いてるところをラッキーにも見かけたら、寄らせてもらいます!
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2018年03月24日

3/24古書はそれほど売れないことが三回目にしてわかる。

本日は第一回目から皆勤賞でもある三回目の「本のフェス」(2016/03/23&2017/03/12参照)。同じく『本の雑誌商店街』に参加する「盛林堂書房」(2012/01/06参照)小野氏と作家&ホームズ研究家・北原尚彦氏が乗る盛林堂号に同乗し、神楽坂の『日本出版クラブ会館』へ向かう。少し奥まった三階の会場は薄暗い照明で、窓を背にしているとセッティングした本が非常に見づらい。なのでカーテンを閉め、さらなる部屋の薄暗さより、本が見易い状況を優先し、午前十時にフェスがスタートする。たちまち隣りの盛林堂ブースに人が鈴なりになり、こちらのブース前もその余波を受ける…ただし皆盛林堂ブースしか見ていない…まぁそうなることは分かっていたので、早速缶ビールを開けながら、本を買いに来る人と本を売る人と本を読む人のウォッチングと洒落込む。さらに隣りの北原氏ブースもホームズファンが間断なく訪れ、自著&古本に関して懇切丁寧に説明を施し、堅調な売り上げを見せていく。こんな状況がおよそ八時間ダラダラと続く……うぅ、もう、酔っ払うしかねぇ……。そして四本の缶ビールを楽しく飲みながら思い至った結論は、このイベントではいわゆる黒っぽい古書は、あまり売れないということである。つまり「フォニャルフ古書部」での参加は、完全なる作戦ミスを犯してしまった状態となり、ずるずると午後七時までを駆け抜けてしまう。訪れる方々は、出版関係や一般の本好きが多いようなので、もう少し並びに普遍性を持たせないと、スルーされてされてされまくってしまうようだ。結局売れたのは二十四冊で、どうにか出店料と一日の労働代を叩き出せた態。だが、「古本屋探検術」だけが思いの外好調で(まぁ無料だから当然か)、持って行った七十冊はほとんど捌けてしまったので、古本屋布教活動に少しは貢献出来たことにささやかな満足を覚える。それでも例え売り上げ冊数が少なくとも、こういうイベントに参加出来、色々な人に出会えるのは楽しく刺激的な時間であった。最後の方で、みんなが秘かに欲しい欲しいと囁いていた東京創元社ブースに置かれた非売品のマスコットぬいぐるみ『くらり』が、いつの間にかブースから持ち出され幼児の手に握られているのを目撃した瞬間、会場内が『あっ!くらりが!あの子が、貰ったのか!?羨ましい!』と騒然となる。だがそれは、ブース前を通りかかり、くらりを気に入ってしまったその子に、会場内でお母さんの精算が終わるまで持っていていいよと、創元社スタッフが束の間の独占を許す優しさを見せたことから起こった、可愛らしい『くらり誘拐事件』だったのである。お母さんが無事に精算を終え「ほら、じゃあ返さなきゃね」と、まずは脱がされた白い帽子を渡し、次に黒いぬいぐるみ本体を渡してしまうと、案の定その子は、火の着いたようにように泣き始めてしまった…。会場を出た後も、泣き止まぬ悲しみの叫びが遠くから聞こえて来る。すると北原氏がすっくと立ち上がり、「創元社さんが人でなしみたいになってますが、決してそんなことはないですから」と優しい言葉をかける。各ブースに広がる和やかな笑い。あぁ、こんな悲劇を二度と起こさないためにも、早く量産型のくらりを造り、人々の手に渡すのがよいのではと、良い感じに酔いの回った頭で考える…。そして売り手として参加しているにも関わらず、しっかりと古本は手に入れる。盛林堂ブースから、講談社 少年少女世界探偵小説全集「魔の宝石ぶくろ/ビガーズ」学研中学二年コース冬休み臨時増刊第2付録「推理名作 首つり男の絵/G.シムノン」旺文社中一文庫10「地下鉄サム/作・マッカレー 文・中島河太郎」を計3300円で、「古書ますく堂」(2018/01/04参照)ではつはもの叢書「或る兵の手記」(昭和九年刊。一歩兵による満州行手記)を300円で購入する。まぁ結局、良い古本が買えれば、それだけでも充分満足なのである。お越しの皆様、本を買ってくれた皆様、「古本屋探検術」を貰ってくれた皆様、ありがとうございました!
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右は自ブースを眺める盛林堂・小野氏と「古書いろどり」(2015/12/11参照)彩古氏の古本オーラが見えてしまいそうな後姿。左はシャーロック・ホームズ伝道師の北原尚彦氏である。
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2018年03月23日

3/23「フォニャルフ古書部」準備完了。

明日の「本のフェス」の参加のため、ついさっき「フォニャルフ古書部」の形をどうにか整え終わる。変な本から真面目な本や探偵小説と付録本に探検小説や映画パンフまで揃えて、みなさんの来るのを弛緩してビールを飲みながらお待ちしております。「古本屋探検術」も忘れずに持って行きますので、どうかどうか受け取りに来て下さい!それでは明日、神楽坂にてお会いいたしましょう。
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2018年03月22日

3/22古本屋探検術!

今日は多摩霊園近くに流れ着き、古代の川が削った河岸段丘を足の裏でたっぷりと味わう。西武多摩川線で武蔵境に出て、お決まりのように「浩仁堂」(2011/02/15参照)にたどり着く。医療図書出版社「複刻版 公衆衛生/丸山博」(レッドパージで絶版にされた本の昭和四十七年復刻版である)岩波同時代ライブラリー「内田百閧ニ私/中村武志」を計300円で購入し、外に置かれた『ご自由にお持ち下さい』箱から童心社「野の花は生きる/いぬいとみこ・文 司修・画」を頂戴する。

そしてついに出来上がりました!全国古書籍商組合連合会との共編で、古本屋さんを楽しむための入門解説書「古本屋探検術」という全8Pのリーフレットを作成!……いや、驚くほど極薄なので、リーフレットというよりは、もはや紙物の域…。だが、中身はシャキッと、超然としております。前半が私による古本屋についての小論考、後半が全古書連推薦の古本屋が書いた本&古本屋についての本十一冊のミニブックガイドという構成。「東京古書会館」や連盟所属の古本屋さんや催事などで配られると思いますので、お見かけの際はぜひ手に入れて読み込み、その後古本屋さんに足を運んでいただければ、もう言うことなしです。まずは土曜の「本のフェス」に持参しますので、ご興味ある方は会場に足をお運び下さい。本当に薄いですが、署名でも何でもいたします!古本屋、バンザイ!
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ちなみにこの青い表紙は、春陽堂・探偵小説全集の不思議な素材のクロス装表紙をスキャンして使用している。最初は革装本を利用しようと思ったのだが、何だかありふれているので、それならもうちょっとチープな古本感が出せれば良いなと、この本に行き着いた次第である。汚れがとても良い感じに出ているのが嬉しい。
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2018年03月21日

3/21東京・中村橋 古本屋 古書クマゴロウ

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『ウルトラセブン』のポール星人が、また攻めて来たんじゃないかと思うくらい、季節外れの雪が降っている。傘を差し、家に近いバス停から混み合う関東バスに乗り込んで、終点の『中村橋駅』に向かう。コメントタレコミで新しい古本屋が出来たことを知ったので、早速駆け付けてみたのである。高架駅の下を通り、南は『仙川通り』北は『目白通り』に抜ける商店街『サンツ中村橋』を北へ進む。すると100m弱で右手に一階が店舗になった集合住宅が現れ、そのうちの一店が店頭に古本棚を出し、雪の日でもしっかり営業してくれていた。入口の右側にはコンビニコミック棚があり、左に108円からの文庫&200円からの単行本棚が連続している。店内は基本的にシックな設えであるが、どことなく親しみを感じる混乱と柔らかさが含まれている。入口左の最近刊ミステリ&エンタメ棚を見てから、広めの三本の通路が奥へと延びる店内へ。右端通路は壁棚にコミック・絶版漫画・少女漫画・新書・探偵小説(とは言ってもミステリ評論や文庫本が中心)・ハーレクインが並び、向かいに日本純文学文庫・海外文学文庫・ミステリ&エンタメ文庫・時代劇文庫が収まっている(棚上段に全集揃いもあり)。中央通路は、右に料理・女性実用・カルチャー・映画・音楽・世界・宗教・民話・自然科学・心理学・みすず出版&法政大学出版本、左にコミックセット・絶版漫画・古本関連・文芸・歴史・近代・戦争の構成となっている。左端通路は、入口横から200円掘出し物単行本棚が連続し、一部にデザイン・美術・図録類が固まっている。ここは途中からカーテンで仕切られており。奥は現在バックヤードとして使用されている模様。最奥には、中央に帳場があり、マスク姿の若々しい文化系青年が本のクリーニング中。右には絵本・児童文学・復刻文学・水木しげる棚が展開。左にはバックヤードに飲み込まれているがショウケースがあるので、いずれは開放されるものと思われる。基本スタンスは街の古本屋さんであるが、硬いみすず&法政大学出版をガッチリ並べていたり、真面目ジャンルの細かい揃えや、絶版漫画の蔓延りが気になるお店である。三月に開店したばかりなので、棚の空きをセットコミックや絶版漫画や200円棚(実用書やビジネス、ノンフィクション系が多い)で取りあえず埋めている節があるので、空きが解消された時にどのように変貌するのか、ちょっと楽しみである。値段は定価の半額前後が中心である。200円棚で今やレア本の講談社「兼高かおる 世界の旅」(3刷だがビニカバ&帯付き!)を見つけて小さく喜び、講談社文庫「都築道夫のミステリイ指南/都筑道夫」と一緒に購入する。ところでこのお店は、街の新刊屋さん『中村橋書店』の斜向かいにある。南口側にも四軒の新刊屋さんと一軒の古本屋さんがあるので、これで駅周辺には七軒の本屋さんが集まっていることになった。おぉ、ミニ・ブックシティ中村橋よ!この知られざる小さな本の街に、これからも幸あれ!
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2018年03月20日

3/20雨上がりに森下雨村

風邪は治り切っていないので、ハァハァ息切れしながら立川の北にある泉体育館近くに流れ着く。たまたま『古書買入』の看板を掲げた「えるく書房」の建物を目にするが、どうやら倉庫+印刷工房だけで、店舗ではない模様…。仕方なく西武拝島線を目指して、多摩モノレール線路の足下をたどって行く。冷たい雨は、いつのまにか上がった。行く手にモノレールと西武線がクロスする、玉川上水駅が見えて来たところで、道の東側に意識を集中させる。…おぉ、「清水書店」(2009/06/04参照)が営業しているではないか!ウィンドウに並ぶ和本や洋古書に視線を走らせ、入口に近い位置にある帳場を盗み見ると、オヤジさんが本の値付の真っ最中である。これは、入れるな。そう確信して扉を開けると同時に、こちらに顔を向けたオヤジさんに会釈する。什器は以前のままだが、通路は和本と洋古書の膝高山により、なんとも言えない古本屋的にエレガンスな空間と化している。和本の中には、雑誌や絵本や単行本なども混ざっているようだ。決してやわっとした本や、崩壊しそうなハードカバー本を足に引っかけぬよう注意を払い、通路を前進して行く。右奥の文庫棚から二冊を抜き取った後、奥の通路で帳場前まで引き返し、その前に溜まるエレガンスな山の構成を読み取って行く…すると、なかほどに二冊の「少年倶楽部」を発見する。両方とも戦前の発行で、一冊は切り取りありで二千円、もう一冊は裏表紙がなく千五百円…で、目次を見る。おっ、裏表紙のない方には、森下雨村の少年探偵小説「懸賞尋ね人」が掲載されている!よし、買おう!大日本雄辯會講談社「少年倶楽部 昭和十年二月號」ハヤカワ文庫「グルメのためのシネガイド/淀川長治・田中英一・渡辺祥子」光文社文庫「少年探偵手帳/串間努」を計1850円で購入する。
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「探偵小説 懸賞尋ね人」は、算術とボールと探偵小説好きの小学五年生・村井昌太郎君が、新聞の尋ね人欄に載っていたのと、似た人を近所で発見したことから始まる、全十六ページの日常ワールド冒険探偵譚である。奇しくも大阪圭吉に同じタイトルの作品があるが、雨村の方が昭和十年で先の発表である(内容ももちろん違う)。
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2018年03月19日

3/19人差し指の栞

無様に風邪をひいてしまったので、大事をとって今日一日を臥せって過ごすことにする。だから出来ることと言えば、寝ることと栄養を摂ることと本を読むことくらい。本は蘭郁二郎の探偵小説短篇集「黒い東京地図」を読了した後、何を読み出そうかしばらく迷う。松崎天民は熱が籠った頭ではクセの強い文章が少し面倒。「ウスリー地方探検記」は読みでがあるが、本文が細か過ぎる。「ムーミン谷は大さわぎ」は文字が大きくて読みやすいが、仰向けでは本が重いのと、余りに病気で臥せっていた子供時代にシンクロしてしまうので、何だか妙に切なくなってしまう。ということで、中央公論社の浅原六朗のモダニズム小品集「都會の點描派」を読み継ぐことにする。前半のハギレの良い新感覚派的都会小話群を楽しんだ後、後半の恋愛遊戯的文章や懐郷エッセイなどに興味を持続出来ず、しばらく放り出してしまっていたのだ。だが、短い恋愛小話とエッセイとノスタルジーに満ちた文章が、今は熱ばんだ頭の中に、スッと清涼剤のように忍び込んで来る。二三編読み、うたた寝をし、また起きて続きを読み耽る。そんなことを、何度も繰り返し、時間が曖昧に過ぎ去って行く。文章を目で追っている途中で、睡魔が不意に襲い掛かり、あっという間に意識が混濁する。本に人差し指を栞代わりに挟み込んだまま、布団の上にドサリと投げ出してしまっている。やがて、身体感覚が希薄になり、夢の中へと落ち込んで行く。一時間ほどの浅い眠りで短い夢を見た後、ふと身体が覚醒し始める。その時、一番最初に感覚を取り戻すのは、決まって左手の人差し指で、すぐさま現実世界の本を物体として感知する。「あぁ、寝た時と同じ姿勢のままだな」と気付きつつ、そのまま本を持ち上げ続きを読み出すこともあれば、だらしなく再び眠ってしまうこともある。こんな風に本を読めるのは、なかなか幸せなことであるが、早く風邪を治して、明日は是が非でも読むべき本を手に入れるために、古本屋さんに行きたいものである。
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2018年03月18日

3/18次は土曜日『本のフェス』!

本日は雑司が谷「みちくさ市」に、衣装ケース一箱+リュック一杯の文庫を背負って見参。春の暖かさの中、最初から終りまで満遍なく老若男女に古本が緩やかに売れて行く幸せなひと時を過ごす。だが次第に下がり始めた気温にやられたのか、体調も仲良く下降線をたどってしまう。…花粉症だと思っていたら、どうやら風邪をひき始めた模様。体調の変化にブルーになりながらも、計四十四冊を売り上げたことには大いに気を良くする。道端でふれ合ったみなさま、ありがとうございました!勝手に個人的な独断で今日のお買い上げベストを決めると、ワイルドな風貌にイメチェンしたハニカミ王子の「自殺直前日記/山田花子」と「氷の海のガレオン/木地雅映子」(元本)であろうか。疎外と孤独と他者への嫌悪と恐怖が入り交じる、切なく切実な本のコンボ買いであった。かく言う私は一冊の古本も買わずに、隣りで古本を紙袋に包みぶら下げて販売していた奇天烈なブースから、手作りの文庫カバーを購入したのみであった。だがこれは素晴らしいブツ!暖簾に“古書”と染め抜かれた図案が入る、紛う事なき古本グッズ!この世の中に古本屋さんのノベルティは数多くあれど、純粋な商品としての古本屋&古本グッズはそう多くない。こういうのは、古本好きとしては見かけたら買っておかねばならぬのだ!
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そして本日に続いて、今週土曜は神楽坂で『本のフェス』に見参いたします!こちらはいつもと多少趣を変え、久々に「フォニャルフ古書部」と銘打ち、古い古書(何だかクドい表現)を中心にラインナップする予定。みなさまのご来場を、またも心よりお待ちしております!

■日時:2018年3月24日(土)10時〜19時
■場所:日本出版クラブ会館
〒162-0828 東京都新宿区袋町6
http://www.shuppan-club.jp/
■本の雑誌商店街@3階パピロス:古書ますく堂、盛林堂書房、古書いろどり、小山力也、北原尚彦、森英俊、東京創元社、国書刊行会、酒とつまみ社、140B、しまぶっく、カンゼン、古本と手製本 ヨンネ、コトノハ、東京美術、あうん堂本舗、本の雑誌社の17店舗が出店
■主催:本のフェス実行委員会/読売新聞社
https://ja-jp.facebook.com/honnofes/
http://www.cpfine.com/honnofes.html
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2018年03月16日

3/16日曜日は雑司が谷で。

朝、置きた瞬間から『えぇい!面倒くさいが一気に片付けてしまえ!』と気合いを入れて、日曜「みちくさ市」に並べる古本の準備に取りかかる。ある程度準備していた本を、固めて背を上にして並べ、そこに新たにあちこちから本を加えたり外したりして、小さなお店としての形を整えて行く。そんな風にして決まったら、本をクリーニングし、その後に値札を作り、本に挟み込んで行く。気合いを入れたおかげで、午後にはすべての準備が完了し、急降下して行く気温とともに、心に安寧が訪れる。ミステリ・文学・児童書・付録本・絵本・漫画・おかしな本・最近買った本・昔から持っていた本と揃えていますので、日曜日の雑司が谷で、午前十一時から、古本好きの皆様の来訪を、心よりお待ち申し上げております!
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『第41回 鬼子母神通り みちくさ市』
◆2018年3月18日(日)
◆11:00〜16:00(雨天中止。当日8:00に天候による開催の有無を決定)
◆雑司が谷・鬼子母神通り(東京都豊島区雑司が谷2丁目・鬼子母神通り周辺・東京メトロ副都心線・雑司が谷駅1番出口または3番出口すぐ)
◆お問い合わせ michikusaichi●gmail.com(●をアットマークに変えて送信してください)
みちくさ市本部 携帯電話:090−8720−4241
http://kmstreet.exblog.jp/
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